2ちゃんねる スマホ用 ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part328

1 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/15(土) 12:41:42.96 ID:c5GjywDw.net
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。

(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part327
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1434426540/l50

まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.shitaraba.net/otaku/9616/


     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'    ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!

     _
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし    内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ     ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l     ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。


.   ,ィ =个=、     ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉    ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|       ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ     ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
                 ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
               SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
               レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。

2 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/15(土) 23:33:16.48 ID:EWgOX74e.net
スレ立てお疲れ様です。

皆様、お久し振りです。
よろしければ、23:35頃から続きを投下させてください。

3 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/15(土) 23:34:58.54 ID:ncy94+/q.net
スレ立て乙です。焼き鮭です。今回の投下をさせてもらいます。
開始は23:38からで。

4 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/15(土) 23:36:00.12 ID:ncy94+/q.net
うわ被った。お先にどうぞ。

5 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/15(土) 23:39:30.83 ID:EWgOX74e.net
 
ここは学院長秘書ミス・ロングビルこと、『土くれ』のフーケの私室。
部屋の主であるフーケの前には今、彼女の“主人”であるディーキンと、上司であるオスマンが立っていた。

フーケは先程ディーキンが出ていってから、酒を飲む許可が出たのをいい事に、彼のおいていったワインばかりか自室の酒もだいぶ乾した。
その中には、彼女自身が盗み出した高価な年代物なども含まれていた。
操られているとはいっても潜在意識下での不安や精神的な疲労は強く、飲んでいいといわれれば飲まずにはいられなかったのだ。

そうして床に空き瓶を散乱させ、机に突っ伏してぐったりしていた時に、部屋の戸がノックされた。

……そろそろ、舞踏会もお開きになっている頃だ。
そういえば食事や酒を持ってこようとか言っていたし、余り物でも持って私の“主人”が戻ってきたのだろう……。

フーケはそう考えて、ふらつく足で立ち上がると、部屋の戸を開けた。

そこに立っていたのは、案の定食事や酒瓶などをまとめた大きな包みを頭の上に乗せたディーキン。
だがそれだけではなく、彼の隣には、いささか複雑そうな顔をした学院長オールド・オスマンもいたのである。

フーケはオスマンのその表情を一目見て、彼が既に自分の正体をディーキンから聞かされているのだと悟った。

(やれやれ、これのどこが悪いようにはしないってんだい。
 私もいよいよ、年貢の納め時か……)

精神制御を受けた上にアルコールの回った頭には、感情の荒波が押し寄せることもなく。
彼女は他人事のように、ぼんやりとそう考えていた。

「ええと、お姉さん。何か羽織った方がいいと思うよ?」

ディーキンはそういうと、『見えざる従者』にベッドの脇に置かれていたガウンを持って来させて、フーケに差し出した。

今のフーケは、汚れた服を脱ぎ棄てて薄布の寝間着姿になっている。
最低限の生存本能と命令の遂行以外の欲求がほとんど欠落している以上、その振る舞いにいささかの不自然さが生じるのは避けがたい。
いくら酔っているにせよ、妙齢の女性がそんな格好のままで平然と来訪者に応対し、胸元を隠そうとすらしていないのだ。
観察力の鋭い者ならば、少し注意して見ればすぐに何かがおかしいと気が付くだろう。

うっすらと紅色に染まったフーケの白い肌は豊かな色香を湛え、茫洋としたその表情はあまりにも無防備である。
普段から彼女にセクハラを仕掛けているオスマンはしかし、そのあられもない姿に気が付くとすぐ顔を逸らして、ガウンを着るのを待った。
ちらちらと横目で様子を伺う、というような無粋な真似も一切しない。
女好きとはいえ、自分の意志で抵抗もできないような状態の相手に手を出すほど下衆ではないらしい。

「ふうむ、ミス・ロングビル、……ひとまず今まで通りそう呼ばせてもらうが……、大分飲んでおるようじゃな。
 ちと大事な話があるのじゃが、ちゃんと聞けるかね?」

オスマンは穏やかな声でそういうと、ガウンを羽織ったフーケを促して座らせ、自分も彼女と向かい合う席についた。
ディーキンは、立ったまま脇の方に控えている。

「さて、事情はここにおるディーキン君から聞いたが……。
 君の今後の処遇について、わしと彼とで話し合った結論を説明しよう」

オスマンは咳払いをすると、フーケの顔をじっと見て、言葉を続けた。

「本来ならば当然犯罪者として捕え、裁判にかけるべきところではあるが、彼がそれはやめてほしいと申し出てくれておる。
 君を裁判にかけて処刑や禁固刑などにすれば、罪のない君の身内や孤児までが路頭に迷うことになろう。
 わしも、それは望むところではない。君には随分と、世話にもなっておるしの」

未だに精神を掌握されているフーケは、無表情なままでその言葉を聞いていた。内心で、何を思っているのかは分からない。

「……とはいえ、いうまでもなく盗賊などを続けることを見逃すわけにはゆかぬ。
 だが、残念ながら学院の秘書の役職では、遠方にいる大勢の子を養えるほどの給金を出すのも難しかろう。
 かといってただ野に放り出せば、君は金を稼ぐために早晩盗賊に戻るか、それ以上にも悪い仕事に手を染めざるを得なくなるであろうな」

6 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/15(土) 23:42:10.02 ID:EWgOX74e.net
 
そこで一旦言葉を切ると、オスマンは促すようにディーキンの方に目をやった。
ディーキンが頷いて、フーケの傍にとことこと進み出る。

「オホン……。そこで、ディーキンの出番なの。
 ディーキンはあんたが盗賊の仕事を止めてくれるなら、代わりに必要なだけのお金を稼げる仕事を紹介するよ。
 もちろん、あんたのことを死刑にする人たちに引き渡したりもしないの。どう?」

ディーキンはそう言って、じっとフーケの顔を見つめながら……。
彼女に施した《人物支配(ドミネイト・パースン)》の術を、解除してやった。
術の影響を受けたままでは彼女自身の正しい意思で判断を下すことはできないだろうから、当然のことだ。

フーケは二、三度まばたきをしたり、首を傾げたりして怪訝そうにしていたが……。
じきに自分が術から解放されていることを悟って、はっとした顔になった。

今まで術を掛けたままにしておいたのは、彼女が説明を終える前に自棄を起こして逃げようとしたり飛び掛かってきたりしないためだ。
彼女の杖はまだこちらが預かったままだし、既に学院長にも事情を伝え、彼女自身が書いた告白書まで押さえてある。
一旦こちらの提案を聞けば彼女も冷静になり、およそ事態を改善できる見込みのない無謀な行為に及んだりはしないであろう。

さておきフーケは、一時の戸惑いから回復すると、胡乱げな目をしてディーキンを睨んだ。
酒の回った頭を、一生懸命に働かせながら。

「……あんた、一体何を考えてるんだい?」

一方ディーキンは、それを聞くときょとんとして首を傾げた。

「ええと……、何をって、今言った通りだよ。
 ディーキンはあんたが盗賊の仕事を止めてくれるなら、代わりに――――」

「はっ、あんたを潰そうとした私の命を取るどころか、金になる仕事を紹介するだって?
 そりゃまた、何ともうまい話だね。酔い過ぎて、私の耳がおかしくなってるんでなけりゃあさ!」

フーケはディーキンの言葉を遮ると、肩を竦めて鼻を鳴らした。
そんな都合のいい話を素直に信じられるほど、恵まれた人生は送っていない。

「それが、君の地かね? ……ううむ、こりゃまた、見事に騙されておったのう……」

あの時居酒屋で尻を撫でても怒らなかったのも、わしに取り入って学院へ潜り込むための芝居だったというわけか……、
などとしかめ面で呟くオスマンの方に、冷たい一瞥をくれてから。
フーケはディーキンの方に向き直って足を組むと、不敵な笑みを浮かべて彼を見下ろした。

今の彼女の立場からすれば、相当に豪胆な態度だといえるだろう。

彼女とて元は高貴な貴族の生まれであり、堕ちぶれて歪んでいるとはいえ、相応のプライドがあるのだ。
我が身可愛さに人に卑屈に媚びへつらったり、顔色を伺ったりするのは、まっぴらごめんだった。

まあ、酔っているのでその影響も多少はあるのだろうが。

「……で、本当のところは一体何が望みなんだい。その仕事とやらで、私に何をさせるつもりさ?
 どうせこっちは受けるしかないんだ。さっさと教えてくれてもいいだろ、亜人の坊や」

ディーキンはちょっとむっとしたような顔をして、フーケを見上げる。

「坊やじゃないの、ディーキンはとっくに、ちゃんとした大人のコボルドだよ!
 ……ンー、やって欲しいことはね、お姉さんに何ができるのかにもよるけど……」

フーケは、胡散臭そうな、怪訝そうな目でディーキンを見つめた。

「何ができるかって?
 ふん……、まさか居酒屋で働いてた経験を活かして夜の仕事をやれなんてわけじゃないだろうね、大人の亜人さん。

7 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/15(土) 23:45:19.76 ID:EWgOX74e.net
 盗賊の経験を活かして、何か大きな金になるような、ヤバい仕事をさせようってつもりかい?
 お宝探しとか、情報収集とか、スパイの真似事とか……」

フーケの問いに首を横に振って少し考えると、言葉を続けた。

「そんなのじゃないよ、ええとね。
 たとえば、歌とか、踊りとか、楽器の演奏とか……。
 ディーキンが聞きたいのは、お姉さんはそういうのができるか、ってことなの」





「………はあ。あんた、本気で言ってるのかい?」

「もちろんなの。ディーキンはしらたまさんと同じくらい真剣に、あんたを勧誘してるよ」

「知らないよ、そんな名前。……ったく、」

ディーキンの話を一通り聞き終えたフーケは、大きな溜息を吐いた。

彼の提案は、要するに「今自分が働かせてもらっている、『魅惑の妖精』亭という居酒屋で一緒に仕事をしないか」というものだった。
最初フーケは、所詮は世間知らずな亜人かと、その提案を一笑に伏そうとした。
居酒屋で働いていた経験もある彼女には、そんな仕事で大勢の孤児を養うだけの仕送りができるはずがないと考えたのだ。

ところが彼が言うには、その居酒屋は客層がよく、給仕をしている少女たちは、非常に高額のチップをもらっているのだという。
まあ所詮はチップ、高いと言ってもたかが知れているだろう、と最初は思ったのだが……。
なんとその店でトップの人気を誇る少女などは、繁盛期にはものの一週間で百エキューを優に超えるチップを稼げると自慢しているらしい。

最下級の貴族であるシュヴァリエに与えられる年金は、おおよそ五百エキューほど。
自給自足の農村部などは別として、必要品を店で購入する生活を送っている市民ならば、一人あたり年間百二十エキューほどは必要になる。
平民の一家四人が、まずまず不自由なく暮らせる額だ。領地を持たない、下級貴族の収入はそんなものである。
だというのに、かきいれ時とはいえものの一週間で、それもチップだけで百エキュー以上も稼げるとは。
それなら確かに盗みなしでも、どうにか孤児たちを養えるだけの収入が得られるかもしれない。
自分が勤務していた大衆向けの安酒屋とは、えらい違いであった。

ディーキンはさらに、自分は毎日店で働いているわけではないが、出勤したときは主に詩歌などの芸を披露して、相応に人気を博している。
自分が店に出る日には、一緒に歌や演奏や、演劇などの芸を客に披露しないか、とも持ちかけた。

「お姉さんは貴族だったんだから、きっと楽器とかダンスとかもいくらかはできるでしょ?
 それにきれいだし、演技力やアドリブも凄いと思うの。ディーキンも小屋ではすっかり騙されて、ゴーレムに一発殴られたからね。
 あんたならきっとチップがいっぱいもらえると思うし、ディーキンと芸をしたら、もっと大人気になって、もっともっとお金を稼げるよ!
 もちろん、スカロンさんに頼んでみないとわからないけど、あの人なら駄目だとは言わないはずなの」

さらに、万が一上手く軌道に乗らなくてお金が不足するようなら多少は援助もできるといって、手持ちの金を見せてくれた。
金貨に延べ棒に宝石類などで、数千エキュー分は軽くあった。
フーケは当然驚いたが、よく考えてみれば、確かにこいつならそのくらいの金は稼げそうだとじきに納得した。

「わしも、なかなかよい話だと思うぞ。君がいなくなるのは寂しいが、酒場で給仕をするのなら、飲むついでに顔を見に行けるしの」

そんなことを言うオスマンの方を半目で見てから、フーケはどうしたものかと考え始めた。

命を助けるからには相応の条件を突き付けるつもりだとばかり思っていたが、どうもこいつらの様子から見て、冗談ではないらしい。
自分を殺そうとした、それも異種族に対して、よくもまあそんな態度が取れるものだと、安堵するよりも先に呆れた。
こいつは底抜けに人がいいのか、無邪気なのか、脳天気なのか……。
まあ亜人だから、人間とはそもそも考え方も違うのかもしれないが。

だとしても、学院長までがそれを承認しているあたりが、輪をかけて不思議だった。
こいつはたかが生徒の使い魔だ。それがなぜ、犯罪者を自分の判断で見逃すなどという戯言を認められているのか。
エルフもかくやというほどの力を持っているのは先に見たが、その力を背景に圧力をかけている、というわけでもなさそうだし……。

8 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/15(土) 23:47:28.02 ID:EWgOX74e.net
 
本当に、こいつは一体、何者なのだろうか?

(……まあ、考えても仕方ないか)

フーケは頭を振って、そんな答えの出ない疑問を一旦振り払った。

どの道、自分には受け入れる以外に道はなさそうだ。
こいつらの態度からして、断ったからと言って今更やはり官憲に付き出すなどと言われるとは思えないが、心証は悪くなるだろう。
断った後のアテがあるわけでもないし、それに話を聞く限りでは、条件も悪くない。

酒場で客の気を引くのには慣れている。別に今更、大した苦痛とも思わない。
この亜人の詩歌の腕前が素晴らしいのは知っている。一緒に芸をやればその演奏を傍で聞けるし、きっと金にもなる。
盗みを止めねばならないのは痛手だし、もう貴族どもを悔しがらせてやれないのは残念だ。
しかし、とりあえず安全で落ち着いた暮らしができて、それでいて当面必要な金も手に入るのならば……。

「分かったよ、なかなかいい話じゃないか。その仕事、受けるよ」

「オオ、受けてくれるの? どうもありがとう、ディーキンはお姉さんに感謝するよ」

嬉しそうに頭を下げるディーキンに、フーケは苦笑した。
どう考えても望外の扱いを受けているのはこちらの方だというのに、感謝とは。
一体どこまでお人好しな考え方をしているのか。

「こちらこそ、私のようなものに寛大な処置を頂き、感謝します。
 ディーキンさん、それに、オールド・オスマン」

フーケは言葉遣いを丁寧にすると、2人に礼儀に則って御辞儀をする。

秘書ミス・ロングビルの覆面を被り直したというわけではなく、貴族マチルダ・オブ・サウスゴータとして感謝したつもりだった。
まだ何も裏が無いと完全に信じたわけではないが、これだけ寛大な処置を受けたのだから、とりあえず礼は言っておかねばならないだろう。

その後は、ディーキンとオスマンとマチルダとで部屋の机を囲み、ささやかな宴が催されることになった。

ディーキンもオスマンも、決してマチルダの過去の行いに言及して咎めたり、何か探りを入れたりするような無粋なことはせず。
純粋に舞踏会に参加できなかった彼女を楽しませようと、たわいのない笑い話をしたり、互いに歌やダンスを披露したり。

そうして、終始和やかな雰囲気で、夜は更けていった……。



-------------------------------------------------------------------------------



舞踏会の片付けも終わり、皆が寝静まった真夜中の学院。

タバサは一人とぼとぼと、2つの月の明かりに照らされながら、中庭を歩いていた。
いつも通り無表情ではあったが、どこか沈んだような、それでいて、内に何か激しいものを秘めているような、そんな様子であった。

ディーキンは舞踏会が終わる頃、参加できなかったミス・ロングビルのために、食事などを届けて様子を見てくると言い出した。
ルイズらも同行を申し出たのだが、彼は明日も授業があるし、もう遅いから自分だけで、と断ったのである。

さて、タバサは当然、それを聞いて、ディーキンに密かに声を掛けるよい機会だと思った。
だからディーキンが出ていった後、自分も早々にルイズらと別れると、彼の後を追ってロングビルの私室の方に向かった。
彼には是非、聞いておきたいことがあったからだ。

タバサがディーキンを発見したとき、彼はいつの間にかオールド・オスマンと合流して、物陰で何か話していた。
流石に学院長と話している最中に割り込むわけにもいかず、彼女は足を止めて待った。

9 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/15(土) 23:50:13.28 ID:EWgOX74e.net
だが、途中で何か様子がおかしいことに気が付いた。

その時、オスマンはディーキンから受け取ったらしい羊皮紙の束を読んでいたが、ただならぬ厳しい顔付きをしていたのだ。
そして、2人で手近の空き教室に入っていったきり、しばらく出てこなかった。

タバサは少しためらったが、好奇心が勝り、そっと部屋の傍に寄って聞き耳を立ててみた。
そして優秀な風メイジである彼女には、部屋の中での2人の会話の大筋を、しっかりと聞き取ることができた……。

(……私には、わからない)

今、タバサの胸の中には、もやもやとした不快な感情が渦巻いていた。

自分を殺そうとした相手を、法律違反を犯してまで許すなど。
どんな事情があったか知らないが、そのために非の無い他人を殺していいわけがない。
同情の余地はあろうとも、そこまでして助ける必要がどこにあるというのか?

(彼は、甘すぎる)

彼女は、身内に対する復讐心で動いている。

タバサの叔父は魔法が使えず、優秀な弟に対する憎悪と王の座に対する欲望から、彼女の父を殺した。
しかもタバサの母を薬で廃人にし、それを人質に、彼女に従姉妹が命じる気まぐれの“任務”に命がけで従うことを強要しているのだ。
少なくとも、タバサはそう信じている。

彼女にとって、叔父は絶対に許すことのできない相手だった。
フーケだって、貴族社会に対する復讐心で動いていると言うではないか。

別にタバサには、フーケが処刑になろうがなるまいが、正直言ってどうでもよかった。
自分と無関係な盗賊の運命などに、そこまで興味はない。だから今立ち聞きしたことを、誰かに密告するようなつもりもない。
だが、逆恨みで貴族全般に牙をむくような凶賊に過剰な情けをかけたところで、いつかは裏切られるに決まっているとは思う。
そんなに世の中は甘くはないのだ。優しくさえすればきっと改心するだろうなんて、幼稚な子供の幻想に過ぎない。

なのに、あの亜人ときたら……。

(あれは、現実が見えていない、ただの子ども―――)

……いや、だが。
本当に、そうなのだろうか?

彼は、自分も気付けていなかったフーケの正体に気が付いていたのだ。
しかもそれを、未知の魔法を用いたとはいえ自分たちに気付かれる事もなく、一人だけで密かに捕えていた。
先日シルフィードを助けに向かった時も、武器屋などでも、ずいぶん慣れた様子を見せていた。

世間知らずな亜人の子だなどと、いまさら本気で信じられるわけがない。
それは、自分を騙しているだけだ。

しかも、学院でももっとも人生経験豊かな学院長までが、彼の提案を肯定していた。

結局彼には、自分にはまだ見えていないことが見えているのかもしれない。
彼は私よりもいろいろなものが見えていて、賢くて、強い―――。

「……違う」

タバサは僅かに顔を歪め、その考えを振り払うように首を振ると、そう呟いた。
今の彼女の顔には、キュルケでさえこれまで見たことないくらい、内心の感情がありありと浮き出ていた。

彼は鋭く、機知に富み、賢い。それは認めねばならない。
だが無垢で、単純で、すぐに人を信じる甘い面をたびたび見せる。
いくら頭が良くても、そんな純粋な者は、それこそ冒険生活などで生き延びれるとは思えない。
なのに彼は、仲間と共にあちこちを旅してきたという。そして、こうして生きている。

10 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/15(土) 23:52:16.47 ID:EWgOX74e.net
 
何から何まで理にかなっていないように、タバサには思えた。
タバサにとって、無垢さや純粋さは、賢明さや生存の才とは両立しないものなのだ。
それは、自分がガリアの公女シャルロットから『雪風』のタバサになった最初の任務の時に、ある女性から教わったことだった。

強さとは、本来は長期間の積み重ねで鍛えるもの。日々の鍛錬の積み重ねがものを言う。
数多くの犠牲を払い、命懸けの実戦を潜り抜ける過酷な日々を送ることだけが、そんな年季の差を埋め合わせてくれる。
彼女自身、強く賢くなるために、そして生き延びるために、僅かな期間の間に驚くほどの早さで、それらを犠牲にしてきたのだ。

純粋さ、朗らかさ、平和な日々、満ち足りた生活………。
他にも沢山、もっと沢山。

自分が生き延びるために支払わなければならなかった、そんな数多くの代償を、彼は一度も支払ったことなどないように見える。
どこまでも明るく、社交的で、親切で……、今の自分とは正反対だ。
純粋な者が嫌いだというのではないけれど、そんな者が自分よりも賢く、強いなどとは、信じられない。信じたくない。

しかも、彼は心底憧れる“英雄”に出会ったのだ、という。そのお陰で、今の自分があるのだと。
自分だって、そんな“英雄”に救われたかった。御伽噺の『イーヴァルディ』のような勇者が自分の元にも来てくれたら、と思っていた。
どうして、彼にばかり。

――――もちろん、タバサの中の冷静な部分は、そんなことを考えても埒もないのだと理解している。
ディーキンには何の非があるわけでもないことも、わかっている。
所詮、こんなものはただの醜い妬み、僻みの類ではないか。
彼には恩義もある。そんな相手に対してこんな感情を抱くなんて、貴族にあるまじき賤しい心根……。

それでも、どうしても認めたくなかったのだ。

彼を見ていると、自分の歩んできたタバサとしての人生を、否定されているようで。
なのに、彼の傍は居心地がよくて、暖かくて。
それに身を委ねきれば、自分はきっと弱くなって……、今までの辛苦も、無駄になってしまいそうで。

同じ友人でも、キュルケに対してはこんな気持ちになったことはなかった。

キュルケ自身に聞けばきっと、それは私はあなたと同じ女で、彼は男だからよ、とでもいうのだろうが……。
彼女とは、以前に軽い手合わせをした時は互角だったけれど、結局は命懸けの実戦でなら絶対に負けない自信があるのだ。
知識でもずっと上なつもりだ。負けている部分もあるけれど、それは彼女の方が年上なのだから、ある程度は仕方がないだろうとも思う。

では彼には、自分は勝てるのだろうか。

彼は、生まれつき強い亜人なのかとも思ったけれど、そんなことはないという。むしろコボルドは人間よりも弱い種族だと。
シルフィードと同じく、見た目に反して年長なのかとも思った。けれど、はっきりした年齢は覚えていないが多分大差ないだろうという。

自分は、希代の天才メイジと言われた父の子で、父譲りの才があると言われてきた。
事実、これまで同年代の子の誰にも、引けを取ったことはない。
相手は人間ではなく亜人だとはいえ、そういう意味でも、負けたくはなかった。

(私は、彼よりも強いはず……!)

タバサは自分にそういい聞かせると、父の形見の杖をぐっと握りしめた。

こうなったら、明日の朝にでも、彼に一度、勝負を申し込んでやろう。
渋るようなら、脅すようで嫌だが、フーケの話を立ち聞きしたことを仄めかしでもすればいい。彼から話を聞き出すのは、その後だ。
そうだ、勝った方は負けた方の言うことをひとつ聞くこと、とでも言ってやれば、頼みごとだってしやすくなるだろう……。

頭の中でそんな考えを弄びながら、タバサはひとまず自室の方へ戻っていった。
今の自分が、彼女の従姉妹であるイザベラがしばしば向けてくるのとよく似た目をしていることに、タバサは気が付いているのだろうか。

そして、そんなタバサの姿を、ガリアからの伝令である一羽の大烏が、暗闇の中からじっと見つめていた……。

11 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/15(土) 23:55:26.21 ID:EWgOX74e.net
今回は以上になります。
またできるだけ早く続きを投下していきたいと思いますので、次回もどうぞよろしくお願い痛いたします(御辞儀)

12 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/16(日) 00:01:38.06 ID:/1mKpl1l.net
乙です。改めて、投下します。
開始は0:04から。

13 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/16(日) 00:04:08.26 ID:/1mKpl1l.net
ウルトラマンゼロの使い魔
第六十九話「あっ!ドラゴンもグリフォンも氷になった!!」
ミニ宇宙人ポール星人
隕石小珍獣ミーニン
凍結怪獣ガンダー
冷凍怪獣マーゴドン 登場

 才人がふと目を開けると……自分が燃え盛る炎の中にいるのが分かった。
『な、何だこれ!? 俺は一体どうしたんだ……!』
 仰天するものの、炎に囲まれているにも関わらず全く熱さを感じず、火傷もないことを
すぐに把握した。しかも、自分の姿はグネグネと揺れ動いている。
『これは何事なんだ……?』
『地球人、ヒラガサイト! 聞こえているかね?』
 戸惑う才人の目の前に、謎の三人の宇宙人のシルエットが現れる。手の平の上に乗ってしまいそうなほどに
異様に小さな体躯で、三角形状の頭部に直接手足が生えているような、見るからの異形だ。
 才人はすぐに問う。
『お前たちは誰だ!』
『我々はポール星人! 過去に二度ばかり地球を氷詰めにしてやったことがある』
 ポール星人。それはかつてウルトラ警備隊が冷凍怪獣ガンダーによって絶体絶命の危機に陥った際に、
隊員の一人が幻覚の中で目にしたという、ガンダーの黒幕の宇宙人だ。地球の氷河期は、このポール星人が
引き起こしたものだと彼らは語った。しかしその隊員が幻覚でしか目撃しておらず、実在の証拠が一つも
ないので、その存在は大半の人間から疑われている。才人も噂でしか名前を聞いたことがなかった。
『お前たちも侵略が目的か!』
 才人が問い詰めると、ポール星人は高笑いを発した。
『ハッハッハッ! そんな低俗なことに興味はない。我々の目的は、人間への挑戦! 我々はこの
ハルケギニアに氷河時代を迎えさせる!』
『何だって!?』
『ハルケギニア上の生きとし生けるものが、全て氷の中に閉じ込められてしまうのだ! 
もちろん、お前さんも一緒だ! 寒い思いをするがいい!』
『そんなこと、ウルティメイトフォースゼロが許すものか!』
 と告げる才人だが、ポール星人はまるで意に介さなかった。
『そんな奴らは、我々の敵ではない。言っただろう、我々は人間に挑戦するのだと!』
『どういうことだ!?』
『我々はかつて地球に三度目の氷河期をもたらそうとした。作戦は完璧だった! しかし我々は負けた。
ウルトラ戦士にではない。地球人の忍耐! 人間の持つ使命感に負けたのだ! だから、今度は人間に
リベンジする! そう、地球人のヒラガサイト、君にだ!』
『な、何だって……!?』
 唖然とする才人。自分が地球人の代表として、宇宙人と戦うのか。そんなことが出来るのか。
『我々の作戦は最早止めることは出来ない。ハルケギニアを氷の星にしたくなければ、我々の仕掛ける
勝負に勝ってみせることだな、ハッハッハッハッ……!』
 そう言い残したポール星人の声がだんだんと遠ざかっていく。
『ま、待て! そんな勝手なことは……!』
 許さない、と言いかけた才人だったが、それを言い放つだけの自信が今の彼にはなかった。
 やがて炎の光景が薄れていき……。

「おいサイト! 起きやがれ! 朝だぜぇッ!」
 グレンの大音量の呼び声によって、才人は目を開いた。
 辺りを見回して状況を把握する。昨晩と同じ部屋の景色、同じベッド。どうやら先ほどまでのことは、
夢の中の出来事だったみたいだ。
「さぁ、シャキッとしな! 今日からお前の特訓を始めるぜ! すぐに支度するんだな! 
朝食を忘れるなよ! 腹ペコのままじゃ力が出ねぇぞ!」

14 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/16(日) 00:06:20.31 ID:/1mKpl1l.net
 と言われて、才人は昨日決定したことを思い出した。今日から、グレンに鍛錬をつけてもらうことに
なったのだった。とはいえ……。
「まだ外暗いじゃんかよ……」
「なーに言ってやがる! 特訓ってのは早起きしてやるもんだ!」
 才人の反論はばっさりと切って捨て、グレンは彼を引っ張り出すように外へ連れていった。
「よぉし、まずは身体を動かすぜ。最初は腕立て百回からだ!」
 グレンが何のためらいもなくそう言うので、才人は思わず目を見張った。
「いきなり百回!? そんな、俺始めたばっかりなんだから、もうちょっとお手柔らかに……」
「寝ぼけたこと言ってんじゃねぇっての! 苦しくなきゃ訓練じゃねぇよ!」
 しかし才人の言い分が超熱血のグレンに通るはずもなく、否応なくやらされる羽目になった。
 腕立て百回の後は腹筋や背筋、グレンに延々叱咤されての走り込みなど……。とにかく基礎訓練を
みっちりとやらされた。朝早くから始めたにも関わらず、終わる頃には日が頭の天辺まで昇っていた。
 さすがにへばる才人だが、グレンの熱血っぷりはそれで留まらなかった。
「サイト! へたれてる暇はねぇぞ! こんなのは準備運動だ! ここからが本番よ!」
「えぇ!?」
「本番は実戦形式の手合わせだぜ! さぁ、どこからでも掛かってこいや!」
 自分に殴りかかってくるよう手招きするグレン。さすがに待ったをかける才人。
「ち、ちょっと! 素振りとか、技の稽古とかないの!? まだ戦い方を全然習ってないんだけど……! 
それに俺はこれでも剣士だから、素手の戦いを習っても……」
 するとグレンはこう返答する。
「実戦で使える技ってぇのはな、戦いの中で身につくもんだ! それに戦いの基本は格闘だぜ! 
剣も格闘が出来るようになってから様になるってもんよ!」
「ほんとかよ……」
「ほんとだっつぅの! 俺たちいつも殴り合いで訓練してるからな! 分かったらとっとと来な!」
 とにもかくにも、手合わせをしなくてはいけないみたいだ。とんでもない人を先生にしてしまったと、
才人は若干後悔した。
 それでもグレンに遮二無二殴りかかっていくが……拳を突き出す前に殴り返されて転倒した。
「そっちから手を出してくるのかよ!」
「あったり前だろぉ!? 殴られるのを待ってる奴なんかいるかよ! さぁ、一発やられただけで
寝転んでんじゃねぇぜ! これがホントの戦いだったらお前は死んでるぞ! とっとと立ち上がって
もう一度掛かってこいやぁ!」
「くっそぉぉぉ……こうなりゃとことんやってやるぜッ!」
 才人は半ば自棄になり、グレンに挑んでいってはあしらわれるを繰り返す羽目になった。
 ぶつかり稽古の中で、グレンから様々な指摘をされる。
「駄目だ駄目だ、そんなへっぴり腰じゃ! 男はもっとどっしりと構えるもんだ! 腰から拳に力を乗せろッ!」
「俺の腕の動きだけを見るんじゃねぇ! 相手の全身を見るんだ! そうすりゃ敵の動きも見えてくる!」
「動きが見えたら、それに合わせて自分も動くようにするんだ! 一つの戦い方だけじゃ
到底やってけねぇぜ! やり方? そういうのは教わるんじゃなくて自分で感じ取るもんだぜぇッ!」
 グレンのしごきは本当に辛く苦しいもので、才人はどんどんとフラフラになっていく。
「はぁ、はぁ……薄々分かってたけど、本当に無茶させるな……」
「こんなのゼロのしごきに比べりゃ遊びみたいなもんだぜ? あいつ人と手首をつないだ状態で
崖登りさせたりとかするからな!」
「えっマジ!?」
 ゼロの意外な一面を知ったりしながらも、才人は殴り合いの中で次第に戦い方というものを
その身に吸収していった。

15 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/16(日) 00:08:58.41 ID:/1mKpl1l.net
 また、グレンは稽古の最中に、戦いに重要なことも教えてくれた。
「いいか、戦いで大事なのはいくつかあるが、一番は勢いだぜ! どんな奴が敵だろうと、
勢いのある方が戦いで勝つッ!」
「ほ、本当なのか……?」
「マジだぜ! 戦いには流れってもんが確かにあるのよ。その流れを掴んで勢いを出せれば、
多少強引にでも相手をねじ伏せられる! 逆にどんな力を持ってようと、勢いがない奴は
相手に押されちまう! どんな時も勢いを止めないことを忘れるなッ!」
 手合わせという名の殴り合いは、小休止を挟みながらも夜遅くまで続いた。日が完全に
暮れた頃になって初めて才人は解放された。
「よぉし、今日はここまでにしようか。夜はしっかりと休んで体力を戻すんだぜ。明日も
朝早くから始めるからな!」
「あ、ありがとうございましたぁ……」
 すっかりグロッキーの才人だが、礼を言うことだけはどうにか出来た。
 汗だくの才人に、タオルが差し出された。
「使って」
 タオルを持っているのはティファニアだった。上半身裸の才人を見るのが恥ずかしいのか、
頬を染めて横を向いている。
「ありがとう」
 タオルを受け取って身体を拭く才人に、ティファニアが話しかける。
「特訓をしてるところ、何度か見学したけど……あの人、ほんとに厳しいのね。ああいうのを、
鬼教官って言うのかしら」
「そうだね。でも、お陰で自分がすごい早さで強くなってるような気がするよ。そこは感謝しなきゃな」
 と語る才人の顔をまじまじと見つめるティファニア。
「どうしたの?」
「サイト……どうしてそんなに頑張れるの? あの人の課す特訓、いくら何でも無茶苦茶だわ。
一日中殴り合いさせるなんて……。わたしにはとても無理。いいえ、大の男の人でも根を上げる
くらいだと思う。それなのに、あなたのどこからそんな力が湧いてくるの?」
 その質問に、才人はしばし考えた後、次のように答えた。
「尊敬する仲間の頑張るところを、ずっと近くで見てたからかな……」
「仲間?」
「ああ。今は……側にはいないんだけどな、俺にはとても頼れる仲間がいるんだ。その人は、
どんな絶望的な逆境に置かれても、絶対に諦めることはなかった。そして懸命に戦い続けることで、
何度も奇跡の逆転を掴み取ってた。その後ろ姿を見てて、あの人みたいになりたいと心の底から
思ってるから……俺も、頑張らなきゃって思いが湧いて出てくるんだよ」
 そう語る才人を、ティファニアは感銘を覚えたように見つめる。
「あなたって、偉いのね」
「こんなの、偉くなんてねえよ。単なる憧れさ」
「その思いでどんなに苦しくても頑張れてるじゃない。偉いわ。わたしね……」
 ティファニアは、言葉を選ぶように、ゆっくりと言った。
「わたし、何かを一生懸命に頑張ったことってなかった。やりたいことはいっぱいあるはずなのに、
ただぼんやりと災いのない場所で暮らしてただけ」
「いいんじゃないの。大変だったんだから」
「ううん。それはなんか、逃げてるって気がする」
 ティファニアは才人の手を握った。
「ありがとうサイト。わたし、もっといろんなものが見てみたくなった。昔住んでたお屋敷と……、
この村のことしか知らないから、まずは世界を見てみたい。世界って、いやなことばかりじゃない。
楽しいことも、素敵なこともきっとあるんじゃないかって……。あなたを見てたら、そう思うようになったわ」
 才人は顔を赤らめた。
「ねえ、お友だちになってくれる? わたしのはじめての……、お友だち」
「いいよ」

16 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/16(日) 00:11:01.52 ID:/1mKpl1l.net
「あなたが村を出るときには、記憶を消そうと思っていたけど……、消さない。お友だちにはずっと
覚えておいて欲しいもの」
「そっか」
 二人は友情の誓いを結び合い、夕食を取ることにした。しかしその寸前、ふと才人は頭をひねる。
「そういえば……何かを忘れてるような気が……」
 グレンの非常に厳しい訓練の中で、才人の頭からは今朝見た夢の内容がすっかりと飛んでしまっていた。

 才人の特訓は三日間、ひたすら殴り合う形で続いた。才人にとっては地獄の責め苦が生ぬるく
思えるような過酷な時間であったが、グレンがつきっきりで指導し続けてくれたことで、
たった三日の中でめきめきと力をつけていった。
 そして特訓の中で、グレンは才人にこんなことを聞いていた。
「なぁサイト、お前俺の旅についてきたいって言ったけど、ルイズの嬢ちゃんのところに
戻るつもりはほんとにないのか?」
「え?」
 聞かれた才人は、ややうつむきながら肯定する。
「ああ……。俺はもうあいつの使い魔じゃないし、ゼロに変身も出来ないしな……。たとえどんなに
鍛えたところで、巨大怪獣や宇宙人はもちろん、ただの人間じゃメイジにもてんで敵わないだろ」
 才人はそう思っていた。ギーシュ並みの素人ならともかく、ワルドのような本職の戦士のメイジには、
魔法という大きな武器が相手にある以上は、ルイズを守りながら戦うなんて無理だ。
「ルイズに敵が多い以上、あいつの足を引っ張る訳にはいかないんだよ……」
 と言うと、グレンは真顔でこう告げてきた。
「そいつは違うだろ」
「え……?」
「力がどうとか、そういうことじゃねぇ。要はお前がどうしたいかっていう気持ちの問題だろうが。
お前、ほんとにこのまんまルイズに会わず終いでいいのか? きっと後悔すると思うぜ」
「そんな、気持ちがあったところで……」
「いいや、物事の一番大事なもんは、他ならぬ気持ちだぜ。どんな力があろうと、何の気持ちも
ない奴には何にも始められねぇし、何にも成し遂げられねぇ。力がないから出来ねぇっていうのは、
どんなに言い繕うと甘えの言い訳だって俺は思うな」
「……」
「強い気持ちがありゃあ、何だってやれるはずだぜ」
 そう説得された才人は、自分の本当にしたいことを考え直した。
 しかし、その時には答えは出てこなかった。

 そして四日目の朝……事件は起こった。
「は……はっくしょんッ! うぅ、寒ッ!」
 今日も今日とて朝早くから特訓に励もうとした才人とグレンだったが、今日ばかりはそれは出来なかった。
 何故なら、家の外に猛吹雪が吹き荒れているからだ。
「テファお姉ちゃん……寒い……」
「キュウ……」
「みんな、しっかり……!」
 部屋にはウエストウッド村中の子供たちが集まっていた。ミーニンを中心におしくらまんじゅうのように
固まり、ありったけの毛布にくるまって暖を取ろうとしている。しかしそこまでやっても、子供には
耐えがたいほどの寒波が襲っているのだ。
「くっそぅ、どれだけ薪をくべても全然足りねぇぜ!」
 グレンが暖炉に薪を放り続けて火力を強めているが、それでも寒さを追いやることは出来ない。
それどころか、家自体が吹雪の前に吹き飛んでしまいそうであった。天井がミシミシ音を立てる毎に、
子供たちが怯える。

17 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/16(日) 00:13:38.11 ID:/1mKpl1l.net
「おかしいわ……いくら冬だからって、この時期にこんな大きな吹雪が発生するなんて……」
「そうか。異常気象って奴だな……」
 ティファニアのひと言に、才人が深刻な顔でつぶやいた。雪山でも吹雪に遭遇したが、
今外で起きているこれは、それを上回るほどの異常な規模であった。
 グレンも才人の意見に同意する。
「こいつはただごとじゃねぇぜ……昨日までは荒天の気配なんて全然なかったのに、こんなことに
なるなんざ。何か原因があると思うな」
「でも原因ったって、外は真っ暗で何も見えないし……。デルフ、何か見えないか?」
「無茶言うなよ。伝説の剣たって、透視が出来る訳じゃねえんだ」
 グレン、才人、デルフリンガーは窓から外を眺めるが、太陽の光は完全に閉ざされているので、
全く遠くが見通せない。しかし、
「……いや待った。今何か、変な音が聞こえなかったか?」
「確かに、風の音に紛れて何かが聞こえた気がするな。何かの動物のうなり声みてぇな……」
 デルフリンガーの問いかけに、グレンが重々しい表情でうなずいた。
 すると彼らの会話に合わせたかのように、吹雪が弱まって視界が開けていく。……いや、
この急激な天候の変化は不自然だ。まるで、「意図的に視界を開けている」ような……。
「プップロオオオオオオ!」
 そして明らかに風と雪の音ではない音が、才人やティファニアたちの耳にもはっきりと届いた。
鳥とも、獣ともつかない異様な鳴き声だ。
「わああああッ!」
「お姉ちゃん、怖いッ!」
 子供たちはますます怖がり、ティファニアが懸命に慰めている。
 一方で窓の外の景色を覗く才人たちの目に、アルビオンの大地を覆い尽くした雪原の上に、
巨大生物がそそり立っている光景が飛び込んできた。
「プップロオオオオオオ!」
「あ、あいつは!!」
 驚愕する才人。雪原の大怪獣……カタツムリのように突き出た目玉、たらこのような唇、
逆三角形状の翼、ドリル状の指を持ったその容姿は、凍結怪獣ガンダーのものであった。
ガンダーには吹雪を起こす能力がある。この異常気象の原因は、奴に相違ないだろう。
 そしてガンダーといえば、あのポール星人と同時に現れ、ポール星人が操っていたという怪獣。
ということは、あの夢はただの夢ではなかったのだ!
 これはポール星人による、才人への挑戦なのだ!

「プップロオオオオオオ!」
 荒れ狂う吹雪の中に仁王立ちするガンダーの姿を、各国の竜騎士、魔法騎士で構成された
混成部隊も確認していた。折しも今は戦争後の調停を執り行う諸国会議の最中。しかし突然
アルビオン全土を覆う規模の異常な猛吹雪が発生したので、急遽原因を究明する調査団が
結成されたのだった。
「やはり怪獣の仕業だったか……。ハルケギニア諸国の王が一堂に会されたこの時期に、
これ以上の狼藉は許さんぞ!」
 トリステインの部隊の隊長が早速、部下たちに攻撃の合図を出した。自分たちだけの力で
怪獣を倒すことで、会議でも有利になろうという魂胆も含まれた決断だった。幸い、万一の時に
備えて対怪獣用兵器を用意してきている。
「如何にも火に弱そうじゃないか。この特製火石をお見舞いしてやる!」
 グリフォンに跨った騎士二名が、改造ベムスターにも使用した巨大火石を運んできた。
それをガンダーの頭部に落として炸裂させ、一気に仕留める算段だ。
 しかしその時、騎士たちに向けて一層強烈な冷気が襲いかかってきた! 騎士たちがみるみる内に
凍りついていく。
「ぐわぁぁぁぁッ!? な、何事だ!?」
 ガンダーの反撃か。いや、それは違う。ガンダーはそっぽを向いているではないか。それに冷気は
別方向から飛んできている。

18 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/16(日) 00:14:35.58 ID:/1mKpl1l.net
 慌てて振り返った騎士たちは、冷気を放出している犯人の姿を目撃した。
「ガオオオオオオオオ!」
 真っ白い毛で全身を覆った、翼の生えたマンモスのような怪獣。それは恐るべき大怪獣マーゴドンであった! 
冷凍怪獣の中では最大級の能力の高さを誇り、いくつもの惑星を氷に閉ざして生物を死滅させた、まさしく
悪魔の如き怪獣なのだ!
「ほ、他にも怪獣がいたのか!」
 マーゴドンは全身から冷気を噴出している。その冷気が騎士たちを纏めて窮地に追いやる!
「ぐわああああぁぁぁぁぁッ! こ、このままでは全滅だ! 奴に火石を食らわせろぉ!」
 隊長が苦しみながらも指示を出したが、それは叶わなかった。
「だ、駄目です! 火石まで凍りついて、起爆できませんッ!」
「そ、そんな馬鹿な!? わあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
 猛烈な冷凍ガスを前にして、騎士たちは抗うことすら出来ずに凍結していく。騎士だけではない。
ドラゴンも、グリフォンもたちまちの内に凍りつき、雪に覆われた大地に向けて真っ逆さまに転落していった。
 ハルケギニア各国の精鋭部隊が、たった一瞬の内に全滅してしまったのだった。

 恐るべきポール星人の挑戦! ガンダーの、マーゴドンの冷たき脅威! アルビオンは、
いやハルケギニアそのものが、氷河期の危機に見舞われたのだ!

19 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/16(日) 00:15:38.61 ID:/1mKpl1l.net
以上です。
この冷気の十分の一でもあってくれれば、今の季節楽になるのに。

20 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/16(日) 02:28:17.57 ID:8RkQfZ6h.net
お二方連投ですか、なんという眼福!

21 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/16(日) 22:33:06.01 ID:/h+0ndlO.net
お二人とも、いやさ>>1とでお三方とも、乙です。

22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/16(日) 23:18:00.48 ID:B0O3bdpk.net
しらたまさんって、アンパンマンかいなw
最後に出てきたガリアの使いが原作のフクロウじゃなくカラスになってるのは何かの複線かな?

23 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/17(月) 21:00:11.43 ID:BRpmwNUe.net
乙、ガンダーはハトみたいな鳴き声が可愛らしくて印象に残る怪獣でしたね。しかし最期はバラバラ

24 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/17(月) 21:50:45.65 ID:nij0W/lb.net
質問なのですが、こちらで投稿したものは他のサイトに掲載しても大丈夫ですかね?

向こうで完全版を(先にこちらで小出しにして、それを纏めて後で修正して投稿)出そうと考えているのですが、ここで書いたものは外に出すなとかいう事はありますか?

25 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/17(月) 22:30:56.47 ID:dGvzqP2p.net
>>24
>>1に、「クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ」とあることからもわかるように、マルチ投稿は禁止されていない。
実際、現在作品を投下している作者の多くはハーメルンとのマルチ投稿を行っている。
ただし、マルチ先のサイトで禁止されている場合は当然駄目だし、マルチを行う旨を双方で明記しろというように規約で指定されている場合もあるので気を付ける事。

26 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/17(月) 22:40:59.57 ID:nij0W/lb.net
>>25
了解しました。
それではそのように致します。

27 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/18(火) 21:21:06.31 ID:pAB0LGOb.net
40分に投下開始します。
大量投下しようとすると毎回規制されてるので、どうしたものか分かりませんが、ちょっと試しながらやっていきます。

28 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/18(火) 22:10:39.65 ID:kD2kGFfk.net
はて、来られないな……?

29 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/18(火) 22:14:13.82 ID:pAB0LGOb.net
すいません、遅れました。
今から投下開始します。

30 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/18(火) 22:14:39.46 ID:pAB0LGOb.net
 スコールがハルケギニアに来て三日目の朝。
 スコールはルイズと共にバハムートの背に乗っていた。

「凄い早い!」
「これでも、抑えている方だがな。人間は軟弱過ぎる故の配慮だ」
「こ、これで? もっと早くできるの!?」
「容易いことだ」

 目をキラキラとさせたルイズに、スコールは何度目か分からないため息をついた。
 事のいきさつはこうだ。

1、虚無の曜日(休日のことらしい)だから、街まで行くわよとルイズに言われる。
2、この世界の事については情報収集をした方が良いと判断して承諾するスコール。
3、だったが、馬がチョコボとは違いとても乗り心地が悪い為、仕方が無いとバハムートに乗る事になる。
4、ルイズが喜んだ。うるさい。

 正直、先ほどから横でキャーキャーとうるさいルイズに何度ため息を吐いたか分からない。
 バハムートも調子に乗ってきており、「(ラグナロクがあれば……)」とどうしても考えてしまう。
 そうこうしているうちに街に着いたので、高度を落としたバハムートからルイズを抱えて飛び降りる。

「きゃっ!」
「……ふぅ…バハムート、ありがとう」
「ワレは貴様の力。貴様に呼ばれるままに使役される力だ」

 そう告げて、スコールの中へ帰っていく。

「もう着いちゃった……本当、デタラメね、あなたの使い魔」
「…竜の王と呼ばれる奴だからな」
「そんなバハムートに勝っちゃうあなたも大概だと思うけど」
「………行くぞ」

31 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/18(火) 22:16:16.93 ID:pAB0LGOb.net
 ルイズの買い物とはスコールとルイズの分の服のことらしく、まず女性物の服ということでルイズの行きつけの店へ入って行った。
 もちろん女性服専門店だったので中には女性しかいなく、スコールは入って早々に出て行こうとしたがルイズに止められて、渋い顔をしたがなんとか中に入る。
 視線が集まり、「(どこも変わらないな、これは…)」と腕を組んで眉間に皺を寄せる。
 そんなスコールにお構いなくルイズは試着をしたり服を見たりと楽しんでいる。
 まったくこっちの事を気にしてくれないルイズに「(……リノアとセルフィと行った時は、アーヴァインがいてくれて助かったんだがな…)」と普段気にもしてなかった男の友人のありがたみを思い知った。

「あなた、平民かしら?」
「………」

 声をかけられて視線を上げると、目の前に明らかに私貴族です、みたいな宝石や高級そうな服で自分を装飾した三人組がいた。

「……そうだが」
「まぁ! 聞きましたか? この神聖な場に平民の、それも男がいらっしゃいますわ!」
「汚らわしい……」

 明らかに歓迎されていないことはよく分かる。
 むっ、として睨むように見るが、余裕そうな顔を見て、視線を逸らす。厄介事の予感しかしないからだ。
 そんな態度のスコールにしつこく絡んで行く三人。

「ご主人様の付添いですの? 忠犬も大変ですわねぇ」
「(忠犬……サイファーのことか?)」
「あら、外で待つ分、犬の方がまだ利口というものですわ」
「そうですわね!」
「(ゼルが聞いたらキレて地面を殴りそうだな。あいつのパンチを見たらどんな反応をするんだ?)」
「………どこを見ていますの?」
「別に」

 こっちに来てからよく絡まれるな、と思ったが、よく考えたら向こうでも色んな人間に絡まれたもので、もしかしたら自分がそういう運命にいるんじゃないかと思う。
 もちろんスコールの態度は貴族としてのプライドに傷をつけるもので、三人の顔が怒りの色で染まる。

「………ここの貴族ってのは、一々何かに突っかからないと気が済まないのか?」
「なんですって!?」
「平民がこの場に相応しくない? なら人を無遠慮に犬扱いするあんたらはこの場に相応しいのか? 貴族とかいう存在の底が知れたな」
「あなた! 自分の言っている意味が分かっていますの!?」
「なら聞くが、黙ってこの場をやり過ごしてやろうとした俺と、それでもしつこく平民と言うだけで絡んで馬鹿にしたような発言を繰り返したあんたら、この場合人として正しいのはどちらだ?」
「…………」
「あぁ勿論、貴族というだけでやることの全てが正しくなるんなら構わん。勝手にそう思っていろ。だが俺には関係ないな」

32 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/18(火) 22:17:04.77 ID:pAB0LGOb.net
 黙ってしまう三人。
 当然だろう、言われて考えてみても、目の前の平民が言っていることは正しいし、貴族というだけで自分達の行為が正当化されるとは思えなかったからだ。

「言われなければ考えることすらしないなんてな。魔法の勉強をする前に人としての常識を弁えたらどうだ?」
「………ッ!」

 キッ、と睨んでくる。
 スコールも見つめ返す。
 30秒間くらい見つめあい、やがて貴族の女性は顔を赤く染めて走り去っていった。他の二人もあわてて追いかけていく。

「……………はぁ」

 こんなのばかりなら、この国に何度喧嘩を売るか分からないな、というため息だ。
 いつの間にかルイズが横に立っていた。

「な、なにしてるのよあんた…」
「別に…」
「別に禁止!」
「……なんでもない」
「もおおお! 貴族に喧嘩なんて売るんじゃないわよ馬鹿! 何されるか分からないのよ!?」
「そうなったら力づくで押し通す」
「なんでよ!?」
「そもそも権力の暴力で来る相手だ。それならこちらも腕力の暴力で通っても、何も問題は無い」
「あんたクールなフリして意外と沸点低いわよね…」

 キスティスとアーヴァインに同じことを言われたことがあったので、なんとなく図星を突かれた気分になってしまう。

「(俺ってそんなに怒りっぽいか?)」

 キスティスが近くにいたら確実に心を読まれて笑われただろうな、とまたため息を吐いてしまった。

「買い物は終わったのか?」
「え、えぇ。後でまとめて寮に届くようにしてもらったの」
「そうか」
「今度はあんたの服よ」
「………」
「なによ?」
「いや……なんでもない」

33 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/18(火) 22:18:30.28 ID:BkiaiebT.net
仮支援

34 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/18(火) 22:19:18.64 ID:pAB0LGOb.net
 少し街を見て分かったがスコールの服の趣味に、この世界の衣服はまったくと言って良いほど合致していない。
 衣服やアクセサリーに拘りがあるスコールにとっては、できるだけ避けたいものだ。
 シエスタには、何を来ても似合っているというようなことを言われたが、似合っているか似合っていないかではなく、好みか好みじゃないかの話である。
 スコールの反応を見て、ルイズは、「あぁ…」と納得した。

「そうね、あなたの服のようなのは売ってないかも」
「だろうな」
「うーん……とりあえず行ってみない? 色々探せば良いのがあるかも知れないし」
「………あぁ」

 男性服専門店に来たは良い物の、やはり見合ったものはなかった。
 どれもこれもシュミ族の服のようなばかりで、動きにくいことこの上ない。

「やっぱりダメ?」
「………我が儘を言っていられる状況でもないんだが、これなら自分で服を作った方がマシかも知れないな」
「もう…どうするのよ?」
「……………。ルイズ、今日は俺の服は良い。そのうち俺が勝手になんとかする」
「あぁ……うん。じゃあその時にまたお金を渡せばいい?」
「…思うんだが、給料制にした方が良いんじゃないか?」
「え?」
「必要になった時にいくらくれ、となると、そちらが不利になるかも知れないし、こちらも面倒だ。それなら一日いくらの給料を支払うことで契約とするようにした方が良いんじゃないかと思うんだがな」

 言われて、うーん…とルイズは唸る。
 使い魔に対して決まった給料をあげるということは聞いたことは無いし、ルイズだってお金を持っている訳ではない。
 スコールは有能な戦士であり、下手な金額で雇う訳にもいかないし、仮にこちらの金銭が切れたら契約終了ということになるだろう。
 それでスコールが離れてしまっては、かなり痛い。
 どうしようどうしようと頭がグルグルしてくるルイズ。

「………いや、すまない、忘れてくれ。俺もそっちの方が気が楽だと思っただけで、お前がそういうのが無理ならどっちでも良い」
「あ、うん。ごめんなさい…」
「ただ、必要になった時に頼む」
「あまり高くしないでね?」
「善処する」

35 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/18(火) 22:20:53.81 ID:pAB0LGOb.net
 少しお腹が減ったということで、どこかで外食をすることにしたルイズ。
 何を食べようかという話にスコールは「なんでもいい」と一言だけ返し、仕方なくルイズがどうしようかと考え始める。

「(あ、あそこのご飯は安くて美味しいのよね。あそこにしよ)」

 と後ろを振り返ると、そこにスコールはいなかった。
 慌てて周りを見るとナンパされているスコールが。

「ねぇ、どこに仕えてるの?」
「何歳?」
「かっこいいですぅ」

 ボインな女三人に言い寄られて、嫌そうな顔をしているスコール。
 ボインがボインボインでイラァとしたルイズが、滅茶苦茶に怒鳴り散らして追い払う。

「何してるのよあんた!」
「………べ」
「別に禁止って言ったでしょ!」
「……アクセサリー屋が無いか探していたんだ」
「アクセサリー?」

 ルイズが、チラリとスコールのつけているネックレスを見る。

「改めて見るけど、凄いわね、これ……こんなの見たこと無いわ」
「………だろ?」
「これ、マンティコア? 凄い似てるけど」
「マンティコア? いや、これはライオンという架空の動物だ」
「へぇ……スコールはアクセサリーが好きなのね」
「まぁな」
「あ、そうじゃなくて、行く所決まったから離れないでよ!」
「気を付ける」

 ルイズはスコールの手を取って、先ほど見つけた食事場まで向かう。

「(何故手を握っているんだ?)」

 疑問を浮かべていると、叫び声が聞こえてきた。

「泥棒よ! だ、誰かー!」

 辺りがざわめきだす。咄嗟にルイズを背中に守るようにして端の方に後ずさる。
 男が向こうの方に走り去っていき、女が地面に倒れている。
 ドンッ! と言う音やバチッ! という音が響いてきて、交戦中であることが分かった。

36 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/18(火) 22:22:09.99 ID:BkiaiebT.net
仮支援
規制されないでほしい支援

37 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/18(火) 22:22:17.98 ID:pAB0LGOb.net
 良く見ると倒れている女はスコールに先程の店で絡んできた女だ。
 横には不安そうな表情をしたルイズがいる。

「それで、どうする?」
「…………」

 ルイズとしては、スコールに絡んでいた女性の態度が気にくわなかったので、痛い目見て反省でもしなさい! という感情があった。
 だが貴族として見てみぬフリをしたくもない。
 少しだけの間眉間に皺を寄せる。

「……貴方なら、捕まえられる? 見たところトライアングルクラスのメイジもいるけど」
「敵は三人、一人は強力だが、他二人はライン……だったか? そのレベルだ。手こずるかもしれないが、やれないことはない」
「そう、じゃあ、お願い」
「報酬は?」

 スコールの顔がいたずらっ子のように笑っていたので、ルイズは冗談を言ってることが分かった。

「じゃあ、好きなもの一つ買ってあげる」
「了解」

 片手を上げて、ガンブレードを取り、一気に跳躍する。
 他の通行人や兵士が足止めをしていたが、どうやらそろそろ押し負けそうな勢いだった。
 その二つの勢力の間に降り立った。
 そんなことをすれば当然二方向からの魔法攻撃の板挟みになるが、剣で軌道を反らし、片方のは半歩下がって避ける。

「な、なんだお前は?」
「……下がってろ。俺が仕止める」
「はぁ? 平民風情が何を!」
「問答するつもりはない。巻き込まれたくなければ、下がれ!」
「ふざけるな!」

 交戦していた貴族側からは罵倒が浴びせられる。
 プライドの塊である彼らの前に、でしゃばってくる平民がいれば当然だろう。

「へへ、武功を挙げて士官したり貴族に取り入ろうって腹か?」
「なんなら俺らが飼ってやろーか? 色男!」

 盗賊の連中にすら煽られる始末で、沸点の低いスコール的には皆蹴散らしてやろうかとも思うが、流石に不味いか……。
 面倒だったので、イフリートを召喚した。

38 :ゼロと獅子  ◆W0F21fXmahBY :2015/08/18(火) 22:22:56.33 ID:pAB0LGOb.net
「……主よ、何をすれば良い?」
「そうだな、騒いでる奴から排除してくれ。いつか静かになるだろ」

 その言葉に貴族たちは絶句し、押し黙る。
 平民かと思ったら使い魔を使役し、しかもその使い魔は強大な力を有していることが見るだけで分かるほど。
 つまるところスコールが強力なメイジに見えたのだ。

「テメェ……国の衛士か!」
「答える義理は無い」
「ナメやがって! 死ね!」

 風の刃が襲いかかる。
 だがスコールに襲いかかる直前でそよ風へと変わった。
 空中で予めシェルをかけておいた為、霧散したのだ。

「な、なんだその魔法は!?」
「殆ど無効化されるなんてな……手加減でもしてくれたのか?」
「クソ!」

 炎の塊が突っ込んでくる。
 今度はシェルを通過してスコールを殴るが、それでも威力はかなり抑えられている。
 イフリートはその炎を見て、フンと鼻を鳴らす。

「それは……炎のつもりか? やはり人間は弱い……」

 そう言うとイフリートが炎を纏って突進した。
 炎を吐き出したメイジが一撃で吹き飛ばされると、その炎が体を燃やす。

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 断末魔が聞こえ、周りが熱風に数歩後ずさる。
 燃える盗賊にウォータをかけてやると、ショックで気絶をしたようだ。

39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/18(火) 22:24:07.60 ID:BkiaiebT.net
やっぱり無理か……

投下終了します……

40 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/18(火) 22:38:37.35 ID:OLDUbeVN.net
長めの作品はきついからなあ。前はもっと簡単だったんだが、荒らしをする奴が多くてどんどん厳しくなってしまった

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/19(水) 07:41:51.12 ID:8akzxDip.net
まだ一話の区切り分まで投下してないなら、後からでも残りを投下した方がいいぞ。

42 :ウルトラ5番目の使い魔  ◆213pT8BiCc :2015/08/22(土) 22:05:22.81 ID:6q5lhihO.net
皆さんこんばんわ、避難所のほうに31話を投稿してきました。よければご覧になってみてください

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/22(土) 22:44:03.55 ID:HW4KKRtU.net


…何故自分は今回の話で、エルフの輝石をエ○ジャの赤石と読み違えたのだろう?

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/25(火) 20:59:16.43 ID:SPLVchGB.net
コスモスは人気高いな。当時リアルタイムで見ていた人も多いのかもしれない

45 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/26(水) 20:20:08.21 ID:YwWjeWMy.net
皆様、お久し振りです。
よろしければ20:30頃からまた続きを投下させてください。

46 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/26(水) 20:30:02.05 ID:YwWjeWMy.net
 
フリッグの舞踏会から、一夜明けた朝。

「♪ フンフンフ〜ン、フンフン不運〜〜! イェイ!」

ディーキンは楽しげに鼻歌など歌いながら、洗濯物の籠を頭に載せて洗い場へ向かっていた。
ここ最近、忙しいが退屈しない充実した日々が続いているので、今日もまた何があるか楽しみだった。

昨夜フーケとしばし歓談した後、ディーキンは彼女にスカロンへの紹介状を書いてから部屋を辞し、ルイズの元へ戻って休んだ。
ラヴォエラへの連絡は、既に夜も遅いので翌朝に回すことにしたのである。
とりあえずシエスタといつも通り稽古を終えた後に、問題が無いようなら彼女を呼び戻して、ついでにみんなに紹介を……。

「……ン?」

頭の中でそんな風に色々と今日の予定を組みながら洗い場に到着したディーキンは、少し予想外な人物を見かけて、首を傾けた。

シエスタがいるのは、これはいつも通りだが……、彼女から少し離れた場所にタバサが立って、こちらを見ているのだ。
雰囲気から察するに、どうも彼女は自分が来るのを待っていたようだった。

「先生、おはようございます。
 その、ミス・タバサが、先生にお話があると……」

シエスタはそう言うと、話の邪魔にならないよう、2人に御辞儀をしてから少し席を外した。
ディーキンは目をしばたたかせて、近づいてきたタバサに向き合う。

「……ええと。おはようなの、タバサ。お話っていうのは、何なのかな?」

「あなたに、頼みがある」

じっとこちらを見つめるタバサは、何やらいつもにも増して表情が硬いように思えた。

「私と、勝負して欲しい」

「勝負?」

それを聞いたディーキンは、少し顔をしかめて、首を傾げた。

「……ええと、ゲームとかかな?
 ディーキンはゲームが大好きなの、ウルルポットがとりわけ得意だよ!
 石積み遊びとか、“親父の骨”とかでもいいけどね」

タバサの用件がそんなゲームの勝負などではないだろうことは無論感じとっていたが、ディーキンはあえてそう言ってみた。

ちなみに、ウルルポットというのはウルフレンドとかいう異世界のコボルドが遊ぶと言うゲームである。
裏面にドラゴンの絵が描かれたカードを伏せて他のカードと重ならないようにしながらかき混ぜ、その場所を当てるというものだ。
石積み遊びは、これまた別のフォーセリアという異世界のコボルドがするという遊びだ。
完成すると世界が滅びるとかいう物騒な迷信もあるが、まあどうということもない単純なパズルのようなものである。
最後の“親父の骨”はフェイルーンの一般的な遊戯で、鶏などの骨を積んで行う将棋崩しのようなゲームだ。

「違う」

タバサはそんなゲームの提案に乗って来ることもなく、素っ気なく首を振った。

「タバサは、ゲームは嫌いなの? 苦手とか?」

「嫌いじゃない。興味も、自信もある」

そう答えると、杖を持ち上げてディーキンの顔をじっと見つめる。

「……でも、また今度」

47 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/26(水) 20:32:14.85 ID:YwWjeWMy.net
 
「ええと、じゃあ、つまり……。
 その、この間シエスタがやってた、決闘……みたいなことを、するの?」

タバサがこくりと頷くのを見て、ディーキンは困ったような顔をした。

実際、ディーキンはいささか困惑していた。
一体なぜまた急にそんなことを言われたのか、まるで心当たりがないのだ。

彼女は年齢に見合わぬ実力の持ち主で、その実力を証立てる爵位も持っているという。
そういった者の中ではたまに見かけるいわゆる戦闘マニアで、強い相手と見れば挑みたくなる性質なのだろうか。
けれど、あまりそんな風には見えない。第一今まで何も言ってこなかったのに、なぜ今になって。

あるいは、昨日のフーケとの一件で、こちらを強いと見たのだろうか。
正直なところ、不覚をとって一発殴られただけで、少なくとも彼女の見ている前ではいい面は何も無かったように思うのだが……。

タバサはディーキンのそんな様子じっと見て、僅かに首を傾げた。

「嫌?」

「ンー……、そうだね。
 だって、ディーキンにはタバサと戦う理由なんてないもの」

シエスタに稽古をつけるのと、タバサと戦うのとでは、また違うのだ。
稽古でならともかく、仲間と訳も分からずに戦って痛い目にあわせるなんて、控えめに言ってもあまり気が進まない。
もちろん、自分が痛い目にあって喜ぶような趣味もない。

「どうしてもっていうのなら、ディーキンはお付き合いするけど……。
 タバサはどうして、ディーキンと勝負がしたいの?」

上目遣いにじっと顔を見つめられてそう問われると、タバサは僅かに顔を曇らせた。
どうしても勝負がしたい理由は何かと言われても、タバサ自身にも完全に明確な説明はできないのだ。

いや、大体のところはわかっている。
だが、それを口に出して認めるのは嫌だった。
ましてや、面と向かって人に伝えるなんて、とてもできない……。

「……あなたの実力を知りたい。私と、どちらが強いのか」

タバサはそう言って、自分とディーキンとを誤魔化した。
嘘ではないが、明らかに真実とは程遠い答えだった。

その答えを聞いたディーキンは、釈然としない様子で顔をしかめると、首を振った。

「ねえタバサ、前にも言ったけど、冒険者は役割分担をするのが大事なんだよ。
 みんな自分のできることで、チームに貢献するの。
 一人で戦った時にどっちが強いかなんて、比べても仕方がないし、状況によっても違ってくるし……」

「そんなことは、分かっている」

タバサはそんなディーキンの一般論を、そう言って遮った。
珍しく苛立った様子で、語気もやや強い。

そんな理屈は、タバサ自身にも十分にわかっている。
たとえ自分が彼に勝ったところで、彼には自分にできない様々なことができるという事実は、否定しようがない。
単に正面からの一騎打ちで自分の方が強いと証明したところで、それに何の意味がある?

それでも、わかっていても納得できないことがあるから、こうして理不尽を承知で挑んでいるのだ。

48 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/26(水) 20:35:02.47 ID:YwWjeWMy.net
 
「……私は、ずっと一人で戦ってきた。
 だから、一対一で戦った時の強さに興味があるのは当然」

迷いを断ち切るように、きっぱりとそう答える。

(要は、私が彼に勝てばいいのだ)

タバサは、自分にそう言い聞かせた。

自分の方が強いとわかれば、恩義のある彼に対して劣等感を抱くことで、自分自身を貶めることもなくなるだろう。
それですべてが解決するわけではないが、いくらかの気持ちの整理はつくはずだ。

自分はこれまでも、幾度とない困難や苦境を、結局は勝つことによって乗り越えてきたのだ。
今回も同じこと。多少、理不尽に思われようと構わない。
今はただ、勝てばいい。

「駄目?」

「ウーン……、」

ディーキンは言葉を濁して、しばし考え込んだ。

タバサに何か秘めた強い感情があるらしいことは見て取れたが、それを問い詰めるのは憚られる。
もちろん、呪文で心を読むなんてのは論外だ。
是非とも勝負をしたいと言うからには、やはり受けるしかないのだろう。

お互いにあまり怪我などをしないで済めばいいのだが……。
何やら非常に真剣な思いがあるようだし、適当にやったり、わざと負けたりなどというわけにもいくまい。

「……わかったの。
 じゃあ、どこか迷惑にならないところで……」





-------------------------------------------------------------------------------





しばしの後、学院の近くの森にあるやや開けた場所に移って、タバサとディーキンは向かい合った。
両者の間の距離は、おおよそ十五メイル程。
立会い人としてシエスタが、やや距離を置いた場所から2人を見守っている。

(きゅ、急に、先生とミス・タバサが勝負だなんて……)

シエスタはやや困惑しながら2人の身を案じていたが、同時に勝負の行方に少なからぬ興味も持っていた。
一体、タバサとディーキンのどちらの方が、より強いのだろうか?

「合図を」

「あ……、は、はい!」

そう促されて、シエスタは慌てて右手を掲げると、2人の様子を交互に伺った。

49 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/26(水) 20:37:09.74 ID:YwWjeWMy.net
 
タバサは、愛用の長杖を構えて、やや姿勢を低くしている。
彼女の並々ならぬ魔力がオーラとなって、周囲に陽炎のように漂っていた。
これは真剣勝負とはいえ殺し合いではないというのに、まるで冷徹なアサシンのような鋭い雰囲気だ。

一方ディーキンの方は、武器は持たずに大きめの盾を左手に構えている。
やや困ったような顔で対戦相手の方を見つめるその姿からは、怯えや気負いは感じられない。
タバサの鋭く冷徹なオーラに対峙してなお、良くも悪くもいつも通りといった雰囲気だった。

とにかく、両者ともに戦いに臨む準備は整っているようだ。
シエスタはそれを確認すると、一度深呼吸をしてから、右手をさっと振り下ろした。

「―――― はじめ!」

「デル・ウィンデ」

開始の宣言とほぼ同時に、タバサは呪文を詠唱し、横へ飛びながら杖をディーキンの方に差し向けて先制攻撃を仕掛けた。
可能な限り唇の動きを読ませないように小さく、そして敵よりも素早く詠唱し、攻撃の軌道を読みにくくするために移動しながら放つ。
幾多の修練と死闘を経て鍛え上げられた、実戦的な戦い方だった。

放ったのは『風』一つのドットスペル、『エア・カッター』。
不可視の鋭い風の刃を放つ、火系統と並んで戦闘を得意とする風系統の攻撃呪文の基本である。
最初は軽い切り傷を負わせる程度の威力しかなく、この呪文を覚えたての幼いメイジが、虫や小動物に放って虐める姿がよく見られる。
長じるにしたがって威力は向上し、ライン以上のメイジが用いれば人間のような大きな生物に対しても十分な殺傷力を持つのだ。

通常、殺し合いではない試合でこのような殺傷力のある呪文を使うのが危険なことは、タバサも承知していた。
しかし、彼は昨日のゴーレムとの一件を見てもなかなか頑丈なようだし、鎧もしっかり着込んでおり、自前の鱗もある。
優れた治癒能力を持つエルフのような存在も、召喚できる。
ならば多少のことは大丈夫だろう、むしろある程度強い呪文でなければ倒すには至らない、と考えたのである。

「オォ……、」

しかるにディーキンはタバサのその詠唱の所作を見逃さず、唱えた呪文の正体も的確に識別していた。
この世界の呪文についての連日の勉学と、冒険生活で鍛えられた目の良さの賜物である。

風の刃を飛ばす魔法というのはフェイルーンではあまり見たことが無いので、その点でもかなり印象に残っていた。
竜巻や突風で敵を吹き飛ばす魔法なら、フェイルーンにも存在するのだが……。
そもそも風なんかでどうやって刃を作るのか、ディーキンには本を読んでも今ひとつピンとこなかった。

だがいずれにせよ、これはほぼ不可視とはいえ、実体のある刃を飛ばす呪文であるらしい。
ゆえに火球などとは違い、鎧や盾、外皮等で防ぐこともできるようだ。

「よっ……、と」

ディーキンはタバサの杖の向きと空気の僅かな揺らぎを注視して刃の飛来する軌道を見切ると、そちらへさっと盾を向けて攻撃を弾いた。
タバサの風の刃は普通の革鎧や鎖帷子程度なら軽く斬り裂けるほどに鋭いのだが、魔法で強化された盾には傷ひとつない。

しかしタバサも、今更その程度のことで動じはしない。
今度は後ろに飛んで距離を離しながら、立て続けに呪文を詠唱する。

強力な呪文には長い詠唱が必要なため、安全に詠唱を完成できるだけの距離を離さなければ使えない。
ゆえに、まずは短い詠唱で放てるごく弱い呪文で牽制して距離を稼ぎつつ、あわよくば仕留められればそれでよし。
それが駄目でも、十分な距離を確保し次第、より強力な呪文を使って片をつけるつもりなのだ。

「ラナ・デル・ウィンデ」

空気を固めて敵を打ち倒す不可視の鎚とする攻撃呪文、『エア・ハンマー』だ。
風の刃と同様に不可視で回避は困難であり、衝撃で敵を大きく吹き飛ばして体勢を崩させることができる。
開かない扉を強引に打ち破ったりするのにも使うことができ、それ単体では殺傷力はないものの、実用性の高い呪文であるといえよう。

50 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/26(水) 20:40:12.18 ID:YwWjeWMy.net
 
「オオ! ……っと、」

ディーキンは此度もタバサの放った呪文の正体を見抜くと、咄嗟にぐっと姿勢を低くした。
そのまま地面を蹴って跳躍し、翼を広げると、余裕を持って先程まで自分の立っていた地点を通り抜けていく風の鎚を回避する。

この世界の呪文は、どうも全般的にフェイルーンの呪文に比べて有効射程が短いし、速度も遅い気がする。
広範囲を薙ぎ払うタイプの呪文はいざ知らず、単体を狙う類の呪文ならば、二十メイルも距離を離せば概ね余裕で回避できそうだった。
フェイルーンの呪文の中には、数百メイルも離れた地点にでもほぼ瞬間的に着弾し、回避が非常に困難なものがザラにあるのだ。

(このまま、タバサの攻撃を避け続ければいいかな?)

ディーキンは自分の眼下を通り過ぎていく風の流れを肌で感じながら、そんなことを考えた。

どうやったらお互いあまり傷つかずに戦いを終えられるか悩んで、タバサの攻撃をかわしても攻め込むのは躊躇していたのだが。
この調子なら、ひたすら回避し続けるのも、そう難しくはないかもしれない。
タバサの精神力が尽きるまで、このまま耐えられれば……。

(………ンッ?)

そんな考え事で一瞬タバサから注意が逸れていた間に、彼女はまた別の呪文を詠唱し始めていた。
ディーキンは注意を彼女の方に戻し、口の僅かな動きや動作から次の呪文を識別すると、ぎょっとして目を見開いた。

次に飛んでくる呪文は、『ウィンド・ブレイク』。
広範囲を風で薙ぎ払い、対峙する敵を大きく吹き飛ばす呪文である。
効果範囲が広いがゆえに回避は難しく、しかも空中では踏ん張りがきかない。

慌てて地面に降りようとしたが、間に合わなかった。

「オオオォ……、ッ!?」

体を叩きつける猛烈な突風に、ディーキンは思わず腕で顔を庇って、目を閉じた。

腕や翼をたたんでできる限り突風を受ける面積を減らし、それが通り過ぎると、今度は逆に翼を広げてブレーキを掛けようとする。
その甲斐あってか、どうにか勢いよく吹き飛ばされるのは免れ、僅かな後退のみでその場にとどまることができた。
ディーキンは小さく溜息を吐くと、首を振って地面に降り立った。

(……強い……!)

タバサはディーキンが再三の攻撃を凌ぎ切ったのを見て、杖を握る手にぎりぎりと、痛いほど力を込めていた。

まだ系統魔法に接して日が浅いはずなのに、自分の高速詠唱を看破し、不可視の風の刃や鎚を見事にかわしてみせた。
しかもあれほど小柄な体格で、しかも宙に浮いていたにも関わらず、屈強な大男さえも吹き飛ばす『ウィンド・ブレイク』に耐え切るとは。

そう言えば、武器屋では両手持ちの大斧をこともなげに片手で持ち上げていた。
外見に反して、恐ろしい怪力の持ち主ということか。

ならば次は、どんな攻撃が考えられる?

風で体を絡め取り、操るか。
地面に霜を走らせ、足を凍りつかせて動きを封じるか。
それとも、『眠りの雲』を使って眠らせるか。

51 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/26(水) 20:42:01.95 ID:YwWjeWMy.net
いや、いっそ、もっと殺傷力の高い呪文を使うべきだろうか。

とにかく、負けたくない。
彼は強い。だから負けないためには、もっと強い攻撃を使わなければ。遠慮などしている場合ではない。
向こうはまだ手も出してこないのだし、遠慮しているかも知れない。
でも、構うものか。
試合と言ってもこれは真剣勝負だ。遠慮してくれなんて頼んでいないのだし、する方が悪い。
彼なら、ちょっとくらい、きっと大丈夫だろう……。

タバサは次第に、任務で敵に対峙している時のように、とにかく目の前の相手を倒すことだけを考え始めていた。



やや離れた場所から、食い入るようにそんなタバサとディーキンとの熱戦の様子を見守るシエスタ。

その少し後方にある樹の枝に、一羽の大烏がとまって、彼女と同じ方向を見つめていた。
シエスタも、戦いを続ける2人も、その存在には気が付いていない。

それは昨夜学院に到着した、ガリアからの伝令であった。
普段ならばただちにタバサに任務を伝えるはずのそれは、なぜか任務の通達を先送りにして、2人の戦う様子を見守っていた。

(何やら、普段とは小娘の様子が違うなぁと思って、しばらく様子を見てみたが……。
 こいつは大した収穫だぁ、上手くすればオレの大手柄に化けるかもなぁ……!)

大烏は、内心でそのような考えをめぐらすと、くっくっと声を押し殺して嘲るような含み笑いをした……。


------------------------------------------------------


短めですが、今回は以上になります。
またできるだけ早く続きを書いていきたいと思いますので、次回もどうぞよろしくお願いいたします。

52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/26(水) 22:33:49.62 ID:rXuZrOyZ.net

喧嘩売られるのはボス(主人公)の専権事項だからディーキンは対処に慣れとらんか
ボスが拾ったゴブリンに嫉妬して絡んでた事はあったけどw

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/29(土) 21:01:52.91 ID:nIKNS4dx.net
ディーキンを打ち負かすなら相手の得意分野=音楽で上回るしかないな
いや、タバサの歌唱力がどんなもんかは知らんが

54 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/30(日) 22:23:58.25 ID:si5/upea.net
皆様、こんばんは。
よろしければ、22:30頃からまた続きを投下させてください。

55 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/30(日) 22:30:13.55 ID:si5/upea.net
 
決闘開始直後のタバサからの『ウィンド・ブレイク』を耐えて、地に降り立ったディーキン。

対峙する両者の間の距離は、今はおよそ二十メイル程か。
マジックアイテムによって常時移動力を倍加させているディーキンならば、全力で疾走すれば二秒と経たずに詰められる距離だった。
しかし、一足飛びに踏み込んで間髪入れずに攻撃するには、やや離れ過ぎている。
この間合いならば、ディーキンが踏み込んで近接攻撃に移る前に、タバサもなにがしかの対応をできるはずだ。

一方で、この距離からではタバサが何か攻撃呪文を放っても、ディーキンならばそれが着弾する前に余裕を持って回避してしまうだろう。
広範囲に影響を及ぼす強力な攻撃呪文ならば別だろうが、そのような呪文は詠唱に時間がかかる。
この程度の距離では、果たしてディーキンが踏み込んで来る前に放てるかどうか怪しいところだ。

そうなると一見、この距離ではお互いに決め手を欠き、有利不利は無さそうに思えるが……。
実際は、さにあらず。

(このままの間合いで、戦い続けてはいけない)

タバサは、そのことを既に、はっきりと認識していた。

長期戦になっても、今のところ呪文を使っていないディーキンが消耗するのは、体力のみである。
しかし、自分は攻撃するにも防御するにも呪文に頼らねばならず精神力を消耗する上に、体力でもまず間違いなく彼より劣っているのだ。
このまま長引けば、こちらの方がジリ貧になるのは火を見るよりも明らかだった。

ハルケギニアのメイジ同士での戦いでは、普通、呪文には呪文で対抗する。
敵の攻撃呪文をこちらの攻撃呪文で相殺したり、防壁を張って防いだり、逸らしたり。
あるいは飛び上がって避けたり、といった具合だ。

初っ端の二、三度の呪文攻撃で簡単に勝てると思っていたわけではないが、向こうが何ら呪文も使わずに凌いだのは想定外である。
このままこちらばかりが立て続けに攻撃呪文を唱えていたら、あっという間に精神力が枯渇してしまう。
ゆえに最初の一連の攻撃が失敗した後はそれ以上強引に攻めようとはせず、相手の出方を伺いながら次の手を思案していた。

「……ン〜」

一方で、ディーキンの方もまた、今後の戦い方を検討していた。

先程はこのままかわし続けるだけでもいいかと考えたが、『ウィンド・ブレイク』の時は少し危なかった。
もし耐え切れずに吹き飛ばされていたら、次はもっと強力な呪文で、体勢を立て直す間もなく追撃を受けていたかもしれない。

やはり防戦一方ではなく、こちらからも仕掛けた方がよさそうだ。
なぜか自分と戦うことを強く望んでいるらしいタバサも、その方が納得してくれるだろう。

と、なると……。

「よーし、今度はディーキンの方もお返しをするよ!」

ディーキンはそう宣言すると、腕をタバサの方へ突き出して動かし、呪文を唱え始めた。

タバサは咄嗟に姿勢を低くして身構え、同時に自分も素早く呪文を唱える。
相手にわざわざこれから呪文を使うと宣言されて、その完成を棒立ちで待ってやるほどお人よしではない。

タバサはディーキンの呪文が完成するより先に、ほぼ一瞬にして詠唱を完成させると、彼めがけて実体化した魔法の矢を放った。

彼女の使用した呪文は、『マジックアロー』だ。
ごく低級の攻撃呪文だが、単純でクセが無いために扱いやすく、威力もなかなか侮れない。
短い詠唱で放てるがゆえに早撃ちをしたい状況にも適しており、つい先日の傭兵崩れの女頭目との、決闘もどきの際にも使用している。

しかし、ディーキンは動じる事もなく盾を持った方の腕を無造作に振るって、飛来した矢を過たずに弾き落とした。

「……っ、」

56 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/30(日) 22:32:12.58 ID:si5/upea.net
タバサはそれを見て、すぐに自分の失策を悟った。
相手の呪文の完成を妨害することを狙い、とにかく素早く放てる攻撃呪文を使ったのだが……。

冷静に考えれば、先程は不可視の風の刃ですら防いだディーキンにとって、一直線に飛んでくる矢などを防ぐのに難はなかったのである。
ディーキンとて、わざわざ呪文の使用を宣言した以上、何がしかの妨害が入ることは想定していたに違いない。
長々と考える時間が無かったとはいえ、明らかに選択ミスであった。

彼女は一瞬、悔しげに唇を噛んだが、すぐに気持ちを切り替えて、ディーキンの使用した呪文に対処しようとそちらへ注意を向け直した。

「《バーアリ・ミトネーク》」

ディーキンはタバサの妨害によって詠唱を乱す事もなく、一瞬後には呪文を完成させた。

彼が突き出した腕の前方に、直径それぞれ三十サントほどの、四つの白熱して輝く光球が出現する。
光球は、すぐさま互いに絡み合うように複雑に旋回しながら、タバサに向かって飛んでいった。

タバサはそれを冷静に観察して、これはどのような攻撃か、どう対処すればよいかを、素早く検討した。

白熱した球体を放つということは、おそらく系統魔法でいえば『火』にあたる攻撃呪文だろうか。
ならば、自分の系統である『風』で吹き飛ばすことができるはずだ。
同時にその風にディーキンを巻き込むようにすれば、吹き飛ばせないまでも不意をついて多少の隙を作れるかもしれない。

タバサはそう考え、少し横へ飛んで、ディーキンを同時に巻き込めるような角度へ移動する。
そうしてから、迫りくる一団の光球に向けて『ウィンド・ブレイク』を放った。

だが光球は、放たれた風の影響をまるで受けず、そのままタバサに向けて進み続けた。

「…………!」

後方のディーキンはというと、姿勢を低くしてぐっと踏ん張り、突風に吹き飛ばされるのを防いだ。

どうやら、攻撃が来ることを読んでいたようだ。
先程は空中でさえ踏みとどまれたのだから、不意を撃たれなければ耐えるのに難はない。

タバサはまたしてもあてが外れたことに落胆する余裕もなく、慌てて後方に飛び退き、光球から離れようとする。

だが、普通に走って逃れようにも、向こうの方が早い。
結局、『フライ』を唱えて空中に逃げた。
立て続けに精神の消耗を強いられるのは辛いが、かといって攻撃を受けるわけにもいかない。

しかし、光球はそのまま飛び去ることなく、彼女の努力を嘲笑うかのように軌道を修正して、空中に逃げたタバサを追いかけ続けた。

(……まだ、追ってくる……!?)

ということは、この呪文には火系統のラインスペル『フレイム・ボール』のように、目標をある程度追尾する性能があるのだろうか。
それとも、術者であるディーキン自身がこの光球を制御して、こちらを追わせているのだろうか。

わからないが、いずれにせよ厄介な代物らしい……。





シエスタは、はらはらしながらタバサとディーキンの戦いの様子を見守っていた。

お互いに攻撃呪文の激しい応酬をしているようだが、当たって酷い怪我などしないだろうか。
2人とも分別のある人たちなのだから、気を付けてはいると思うが……。

それにしても、どうしてミス・タバサは急に先生と戦いたいなどと言い出したのだろう。
まさか、ミス・ツェルプストーが言っていたように、本当に2人は……。

57 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/30(日) 22:34:15.25 ID:si5/upea.net
 
そんな風に考えていたところで、ふと後ろの方で耳障りな声を聞いた気がして、シエスタははっとそちらに注意を向けた。

(……あら?)

彼女はその声の主を確認すると、きょとんとして首を傾げた。
少し後ろの木に、大きな烏が一羽、とまっていたのである。
声だと思ったものは、どうやら烏の鳴き声だったらしい。

だがシエスタは、何となくその烏が気になった。

烏などどこにでもいるといえばいるが、この魔法学院ではあまり見かけないのである。
生徒らの使い魔の中には猛獣や幻獣の類もたくさんいるので、おそらくそれを怖れて近寄ってこないのであろう。

それに、この辺りに生息している烏よりも一回り大きく、よく見ると種類がちょっと違うようだ。
一体、どこからやってきたのだろう?
誰か生徒の使い魔だろうかとも考えたが、こんな烏をこれまでに見た覚えはない。

烏はシエスタが自分を見ていることには気付かず、じいっと戦いの様子を見守っているようだった。
野生動物が、激しい戦いに驚いて逃げるでもなく、じっとそれを観察しているようなのも不思議に思えた。

だが、そんな些細なことをあまり気にしていてもしょうがないだろう。
シエスタはすぐにそれらの疑問を頭の隅へ追いやると、2人の戦いに注意を戻した……。





タバサは光球から若干の距離を稼ぐと一旦地に降りて、試しに今度は氷の矢を一本、光球に向かって放ってみた。
白熱しているように見えるので、氷をぶつければ相殺できるかもしれないと考えたのである。

だが、その読みはまたしても外れた。
氷の矢は光球と互いに何の影響も与えあわず、素通りして地面に突き刺さっただけだったのである。
タバサは内心の落胆を押し隠して、再び宙に飛んだ。

そうして空中を飛んで光球から離れながらも、タバサの頭をふと疑問がよぎった。

(この攻撃は、当たったらどんな効果があるの?)

吹き付ける突風にも影響を受けず、氷をぶつけても少しも融かさずに素通りする。
かなりの速度で飛来してくるが、風の流れを乱しているような様子もない。
まるで実体が無いかのようだが、そのようなものが人間に当たって、一体どんな害を与えるというのだろう?

最初は『火』系統の魔法と似たような攻撃かと思ったが、明らかに性質が異なる。
もしや、物体ではなく精神に働きかけたり、生体の機能に影響を与えたりするような、『水』系統に似た攻撃なのだろうか。
外見はあまりそれらしくないが……。

タバサはそこまで考えたところで、小さく首を振るとその思考を振り払った。
今は、そんなことを詮索してみても仕方がない。

(それよりも、戦いに集中)

明らかな事実だけを見て言えば、この光球の速度はどうやら、並みの人間が走るよりは少し早い程度のようだ。
ならば、こうして『フライ』で逃げていれば、自分の速さなら追いつかれることはなさそうだった。

この光球の呪文も、まさか永久に効果が続くわけではあるまい。
このまま、断続的に『フライ』や『レビテーション』などを使って逃げ続け、呪文が力を失うのを待つか……。

タバサが飛びながら、そう考えているところへ。
今度はディーキン本人が、何かをベルトポーチから取り出して、彼女に向けて投げつけてきた。

58 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/30(日) 22:36:16.49 ID:si5/upea.net
 
(!! しまった……!)

予想以上に厄介な光球への対処に神経を集中させたり、考えごとに気を取られるあまり、彼に対する注意と牽制を怠っていた。
光球がこちらを追尾している間にも、彼の方は自由に動けたのか……!

投げられたのは、なにか煌めく小さな、礫のようなものだった。
飛来する礫の狙いは正確だ。タバサは咄嗟に杖を振るって、風の防壁を張った。

ギリギリのところで呪文が完成し、その礫の軌道を逸らして、彼女の体に当たるのを防ぐ。

しかし、そのために『フライ』の効果が解けてしまった。
この呪文は、他の呪文と同時には使用できないのである。

背後からは白熱した四つの光球が迫ってきている。
タバサは今から『フライ』を再度詠唱しても間に合わないと判断し、そのまま重力に身を委ねて落下することで光球群を避けた。
地面に激突する寸前に『レビテーション』を詠唱して落下の勢いを殺し、ふわりと着地する。

どうにか難を逃れたが、安堵している暇はない。
タバサはすぐに顔を上げると、再び自分目がけて襲ってくる光球の軌道を見切ろうとした。

が……、しかし。
光球は、タバサの方へ互いに絡み合いながら降下してくる途中で、不意に消え去った。

「ンー……、時間切れ、みたいだね」

ディーキンがそういうのを聞くと、タバサは視線を彼の方に向け直しながら、小さく溜息を吐いた。

どのような攻撃だったのかは分からないが、とにかく、どうにか凌ぎ切れたようだ。
逃げ続けるのに精神力を割と消費してしまったが、仕方あるまい。

タバサはディーキンに今の攻撃の正体を質問したい衝動に駆られたが、今は戦いの最中なのを思い出してぐっと堪える。

(敵に教えてもらおうなんて、甘え以外の何物でもない)

そう自分に言い聞かせて、気を引き締め直した。

とにかく、結局避け続ける以外に対処法を見いだせなかった今の呪文は厄介だ。
彼にあれをもう一度使う余力があるのかどうかなどはわからないが、ここは楽観視はせず、使えるものと想定する。
となれば、あの呪文をどうにかして使わせないようにするか、あるいは、使われても有効に働かないような状況を作る必要があるだろう。

それならば……。

(今度は、こちらの番……!)

タバサは素早く作戦をまとめると、ぐっと杖を握り直して姿勢を低くし……。
次の瞬間、ディーキンの方ではなく周囲を囲む森の方へとへ駆けだして、木々の間にその身を滑り込ませた。

「……オオ……?」

ディーキンは、タバサのその意外な行動に、いささか虚を突かれた。

実際、先程と同じ《踊る灯(ダンシング・ライツ)》の呪文を今まさにもう一度唱えようとしていたところだったのである。
それによる、更なるタバサの精神力の消耗を誘おうとして。

実のところ、ディーキンがタバサに向けて放った白熱光球には、当たったところで何の害もない。
《踊る灯》は、単に自由に動かせる灯りを作り出すだけの、最下級の呪文のひとつである。

ディーキンは、この世界の魔法については既にかなりの勉強を済ませている。
その一方で、タバサはディーキンに何ができるかを殆ど知らない。

59 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/30(日) 22:38:15.64 ID:si5/upea.net
実際にディーキンが使った呪文を見ても、その性質を短い戦闘の中で正しく把握することは困難だろう。

ディーキンは彼女のその無知を利用して、精神力を無為に消耗させようと狙ったのである。
正体不明の呪文を放たれれば、タバサはとにかくそれに対処しようと様々な行動を試さざるを得ないだろう、と踏んだのだ。
本当にタバサに当ててしまえば、その時点で何の害もないということがばれるので、不審がられない程度に時折加減して操作してさえいた。

単なる灯から真剣に逃げ惑うタバサの姿は、彼女には申し訳ないことだが、呪文の正体を知る者からすればいささか滑稽であった。
正しく知識の有無こそが、戦闘においては大きくものを言うのだ。

また、途中でディーキン自身が彼女に投げつけた煌めく礫も、実際には何の害もないものだった。
たまたまベルトポーチの中に入っていたビー玉を一個、投げただけである。

ビー玉は遊びの他にも、床に置いて傾斜の度合いを確かめたり、たくさん撒いて足止めに使ったりできる、冒険者の便利な小道具なのだ。
危険な品かも知れないと危惧したタバサが、咄嗟に呪文で防ぐのを狙ったのである。
第一本当に害のある代物を彼女に投げつけて、万一かわし損ねて痛い目にでも合わせたら自分も嫌である。

結果的に、最初級の呪文一発とビー玉一個の消費だけで、タバサに随分呪文を無駄打ちさせることに成功した。

まだばれてはいないようだし、ここはもう一回同じ手で……、と、思っていたのだが。
流石に、そんな単純な手が何度も通じるほど甘い相手ではなかったようだ。

(ウーン……、タバサは木の間を走り回って姿を隠しながら、こっちを攻撃してくるつもりかな?)

これでは木々が遮蔽になって彼女の位置が正確に把握できず、《踊る灯》に彼女を上手く追わせることはできない。
それでいて向こうは様々な角度から、思いもよらぬタイミングでこちらを攻撃できる……。

ちょうどそう考えていたところで、案の定、タバサからの攻撃が襲ってきた。





シエスタはタバサが森の中に隠れたのを見て、見る位置を変えようとそちらの方に足を向けた。
その時、先程の大烏が先に目の前を横切って、そちらの方へ向かって行くのが見えた。

(……また?)

なにかがおかしい。
あの烏は変だ。

明らかに戦いの様子を見ているような、あの動き……。
それに、今目の端に見えたあの烏の表情、あれは笑っていなかったか。
錯覚かも知れないが、確かに嘴の端が、不自然に歪んでいるように見えた。

何故か、酷く嫌な印象を与える笑みだった。
何かを嘲笑っているような、そんな悪意が感じられる気さえした。

(気のせいかもしれない、けど……)

シエスタは密かに、その烏の動向を見張ることにした。

どうしてなのか、自分でも上手く説明はできないのだが……。
敬愛する“先生”の試合以上に、今はそちらの方が気になり始めていた。





ディーキンの周りの空気が急に冷えた。
たちまち水蒸気が凍りついて、ずらりと周囲を取り囲んだ、何十本もの氷柱の矢を形成する。

60 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/30(日) 22:40:20.15 ID:si5/upea.net
 
タバサが使った呪文は、『水』、『風』、『風』の攻撃呪文、『ウィンディ・アイシクル』であった。
水が一つと風の二乗、二つの系統が絡み合った強力なトライアングルスペルであり、タバサの最も得意とする攻撃呪文でもある。

「オオ……!?」

同時に、タバサの姿が左手側の木の陰にちらりと見えた。

が、すぐに移動して、また木々の間に姿を消す。
音や気配も、巧みに隠していた。
成程、あれでは、普通の人間ではまず奇襲されるだろう。
その後に反撃しようとしても、その時にはもう彼女は姿を隠した後で、大まかな位置しか掴めまい。

だが、ディーキンにはドラゴン・ディサイプルとしての訓練によって得た、鋭い五感による“非視覚的感知”の能力が備わっているのだ。
タバサが攻撃のために遮蔽物の陰から一瞬顔を出したその瞬間には、ディーキンは彼女の所在に気が付いていた。
ゆえに、直後の攻撃に不意を撃たれて慌てふためくこともなく、冷静に対処できた。

ディーキンは咄嗟に飛び退いて一本の大きな木を背にし、背後からの攻撃を封じると、急所を盾や腕などで覆った。

これだけの数の氷柱では、回避を試みても何本かはかわし損ねてしまうかもしれない。
そのかわし損ねた攻撃が運悪く鎧や鱗の薄い急所にでも当たれば、かえって痛い目にあうだろう。
ならば思い切って、最初から防御を固めて受ける気で行く方がよい、と判断したのである。

タバサの攻撃と同時になにか反撃を投じることも考えたが、ディーキンは自分の刹那の判断力を、それほど信頼してはいなかった。
よく考えもせずに咄嗟に迂闊な攻撃を放って、彼女を傷つけては拙い。
これは実戦ではないのだし、ひとまずは彼女の攻撃に対処してその動向を伺い、よく検討してからにしようと結論した。

彼が防御態勢を取った、その一瞬後には、氷の矢が四方八方からディーキン目がけて降り注いだ。
ディーキンはしっかり体を縮めてぐっと力を入れ、攻撃に備える。

「ンン〜……!」

氷の矢が次々と体に当たり、連続的に不快な衝撃がディーキンを襲う。

しかし、「痛い」と感じるほどのものはなかった。
盾や鎧に当たった物は勿論、鱗に当たった物も角度が悪かったり威力が足りていなかったりで、肉まで通ることはなかったようだ。
鱗に多少の傷はついているかも知れないが、この程度ならかすり傷の内にも入らない。

ディーキンの読み通り、あれだけ多くの氷柱を作っている関係上、一本一本の威力はさほど高くはなかったようだ。
この程度ならごく普通の金属鎧程度でも、特に薄い個所に当たらなければ貫かれることはないだろう。

攻撃が終わると、ディーキンはほっと息を吐いて盾をおろし、体を一度大きく震わせてひとりごちた。

「ウーン……、ちょっと体が冷えたかな。
 ご主人様の洞窟や、あのさむーい、カニアほどじゃないけどね」

タバサは木の陰から、悔しげに眉根を寄せながら、その様子をじっと伺っていた。

思っていた以上に、彼の全身を覆う鱗は硬いようだ。
実体のある風の刃や氷の矢を使った攻撃を得意とするタバサにとって、その威力を削いでしまう頑丈な外皮を持つ敵は相性が悪い。

普段のタバサは、一発一発の威力よりも、手数で勝負することの方が多い。
威力そのものは低くとも、真正面からの対峙を避けて暗殺者のように相手の隙をつくことで、一瞬で勝負をつけてきた。
小さく軽い体から言っても、魔法に対する生来の適正から言っても、そのような戦い方が向いているのだ。

ところが、ディーキンは自分の利点も、こちらの戦い方も、ちゃんと心得ているようだ。
その証拠に急所だけを守り、後は自分の防具や外皮を信頼して当たるに任せていた。
この分では、自分の精神力が尽きるまで『ウィンディ・アイシクル』を撃っても、彼を倒しきることはできまい。

それ以上に驚くべきは、木々の陰に隠れながら奇襲を仕掛けたつもりが、完全に対応されていたこと……。

61 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/30(日) 22:42:20.31 ID:si5/upea.net
自分も『風』のメイジとして空気の流れや微かな音を捉える鋭い知覚力を持っていると自負しているが、彼も感覚は相当に鋭いらしい。

(もっと、別の攻撃が要る)

タバサはその後もディーキンに自分の位置を掴ませまいと木々の間を素早く移動しながら、様々な呪文で攻撃を試みてみた。

まずは、『眠りの雲(スリープ・クラウド)』を放つ。
ディーキンの頭の周りを、呪文によって変成させられた大気中の水による、青白い雲が取り巻いた。
この雲は、僅かでもそれを吸った生物に猛烈な眠気を引き起こさせるのだ。

しかしディーキンは少し首を傾げただけで、襲ってくる眠気に耐えようとする様子さえもない。

それは当然のことで、フェイルーンの竜族には、眠りをもたらす魔法的な効果に対する完全耐性があるのだ。
タバサはまた知識の欠如によって、自分の精神力を無駄にしてしまったのである。
普段彼女はその事を認識し、任務の相手に対する文献調査なども怠らないのであるが、ディーキンに関しては調べようがなかった。

彼女はさらに続けて、不可視の風の縄や地面に走らせた霜の蔦などを用いて、ディーキンの動きを封じようとした。

しかし、ディーキンはそれらの束縛を難なくかわすか、たとえ受けてもすぐに振り解いてしまう。
元々これらの呪文はあまり強いものではなく、油断している人間に対して使われる程度の代物であり、明らかに力不足だった。

そうした幾度かの失敗を経て、タバサはさらに、悔しさを募らせていた。

(遊ばれている……!)

ディーキンはこれまでの攻撃で、不意を撃たれて受けてたじろぐ様子を見せることはなかった。
明らかに、こちらの位置をある程度は掴んでいるはずだ。もしかしたら、正確に把握してさえいるのかも知れない。

なのに、先程から何も、反撃を仕掛けてこないのである。

相変わらず戦闘開始時のまま、少し困ったような顔をしているだけだ。
もっと言えば、普段通りだ。殺気はおろか、戦いに臨んでいるという雰囲気自体が無い。

攻撃を仕掛けてきたのは、先程のあの追尾する光球と、投げつけてきた礫一回きり……。
いや、そもそもあれらさえも、本当に害のある“攻撃”だったのだろうか?

もちろん、ディーキンには実際には何も悪意はないのだろうし、おそらくは別に、こちらの力を侮っているわけでもないのだろう。
ただ、彼にとってはこれはあくまでも“友人”との手合せであり、相手を傷つけずに終わりたいと思っているだけなのだ。
こちらがいくら刃を向けても、彼が向け返してくるのはいつも通りの平静で友好的な反応と、気遣いだけ……。

これでは、自分はまるで、道化ではないか。

(許せない……!)

こんな惨めなことは、許せない。
私をただ、“友人”としてしか扱わないつもりなら、どうしてでも扱いを変えさせてみせる。

自分だけが、彼に害意を向けて無理矢理要求に従わせる賤しい人間で、彼の方は、いつも通りのきれいなままだなんて。
そんな惨めなことは、嫌だ。耐えられない。どんな逆境に耐えるよりも、もっと辛い。

もっと、彼にも、自分に対して違う何かを向けてほしい。
誰にでも向けるような親しみや温かさだけではなく、特別な何かを。

それが敵意でも、攻撃でも、憎悪でもいい。
キュルケの思っているようなものでなくても、いい。

(彼にも、私に、付き合わさせてみせる……!)

今のタバサは、その『雪風』の二つ名に似合わない、感情を露わにした表情をしていた。
憎悪と切なさとのまじりあったような、ひどく歪んで醜い、それでいて、奇妙な美しさのある顔つき……。

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/30(日) 22:51:50.67 ID:2V3a35ih.net
支援が必要かな

63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/30(日) 22:59:20.22 ID:Ji+gsn6S.net
しえんしてみよう

64 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/08/30(日) 23:20:26.05 ID:si5/upea.net
 
彼女がそんな顔を見せるとは、キュルケでも、他の誰でも、想像だにしないことだっただろう。





木の上から一部始終を眺めていた大烏は、残忍な嘲笑が零れるのをこらえきれなかった。
クックッ、と鳥の声帯で、低い鳴き声を漏らす。

先程の、ただの灯に怯えて逃げ惑う、滑稽な姿も愉快だった。
あの愚かな王女気取りの傀儡娘に克明に教えてやったら、さぞや喜んで、褒美を弾んでくれることだろう。
宝石や金貨は今のところ自分にはさほどの使い道はないが、資源として蓄えておくのは悪くない。

だが、何よりもあの娘、王女気取り曰く“人形七号”、それ自体が素晴らしい。

普段は仮面を被ったように無表情を通してはいるが、今のあの無様な表情を見れば、内面の歪みはもはや瞭然ではないか。
ここ三、四年ばかりの恨み募る過酷な生活が、あの娘の中には既に重くこびり付いているのだ。

これは、上司へ報告して僅かな手柄に変えるには、あまりに勿体ない。

あの娘に上手く取り入ってその内心を吐露させ、それに見合う餌を提示して。
自由意志を持つ人間から、本当の人形に……、自分の玩具にしてやろう。
さすれば、半端な良心と憎悪で味付けされたその魂には、さぞや価値がある事だろう。手駒としても、使えるかもしれぬ。

(あの魂ひとつで、オレの昇進が買えるかもしれねぇ……!)

残忍な皮算用に夢中になり、愉悦に浸る大烏。
彼の中では既に、タバサは自分に約束された正式な報奨のための、生贄にしか過ぎなかった。

だが、少し離れた場所からシエスタがじっとその様子を伺っていることには、彼も気が付いてはいなかった。

65 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/08/30(日) 23:21:59.02 ID:si5/upea.net
ダンシング・ライツ
Dancing Lights /踊る灯
系統:力術[光]; 0レベル呪文
構成要素:音声、動作
距離:中距離(100フィート+1術者レベル毎に10フィート)
持続時間:1分(解除可)
 術者は以下の中から選んだいずれか1つのバージョンの、自在に動かすことのできる光を作り出す。
最大4つまでのランタンか松明に似た光か、最大4つまでの白熱した光の球体か、かすかに光るおぼろげな人型をした光のいずれかである。
ダンシング・ライツで作り出した光は、互いに半径10フィートの範囲内に留まらねばならない。
それ以外の点では術者の望む通りに移動させることができ、精神集中なども不要である。
これらの光は毎ラウンド、100フィートまで移動させられる。術者と光との間隔が呪文の距離を超えた場合、光は消えてしまう。
 持続時間は短いが、同時に自在に動かせる複数の光源を出すこともできるため、動き回る敵を照らし出したい際などに何かと重宝する。
 この呪文は、パーマネンシイの呪文で永続化させることができる。

非視覚的感知(Blindsense):
 微かな音や匂い、地面の振動などの各種の手掛かりから、視覚に頼らずに周囲のクリーチャーの存在に気が付く鋭い知覚能力。
所有者は<視認>や<聞き耳>の判定を行わなくても、有効距離内に居て効果線が通っているクリーチャーの存在に気付き、位置を特定できる。
透明化していようと、背後に居ようと、サイレンスなどの呪文で音を消していようと、一切関係ない。
 感知の及ぶ距離は所有者によって様々だが、ディーキンのそれは有効距離60フィート(約18メートル)である。

D&Dの竜について:
 D&Dの世界で竜の種別を持つクリーチャーは、有効距離60フィートの暗視、および夜目の能力を持つ。
暗視は完全な暗闇でも白黒の視界で物を見る能力、夜目は薄暗い中でも人間の2倍の距離まで、色や細部の識別を含めて見える能力である。
 また、麻痺の効果や魔法的な睡眠をもたらす効果に対しては完全耐性がある。


-------------------------------------------------


今回は、以上になります。
またできるだけ早く続きを投下していきたいと思いますので、次回も皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

ご支援くださった方々、ありがとうございました(深々)

66 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/31(月) 20:58:29.36 ID:qE/d/EVD.net
ディーキンの方、乙です。焼き鮭です。最新話投下させてもらいます。
開始は21:02から。

67 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/31(月) 21:02:03.86 ID:qE/d/EVD.net
ウルトラマンゼロの使い魔
第七十話「アルビオン氷河期」
隕石小珍獣ミーニン
冷凍怪獣マーゴドン
凍結怪獣ガンダー
宇宙海獣レイキュバス
冷凍怪獣シーグラ 登場

「……はい。こちらもひどい吹雪でございます、陛下」
 ウエストウッド村からそう離れていない地点。ガンダーとマーゴドンの二大冷凍怪獣の引き起こす
猛吹雪によって大地は雪に埋まり、元がどんな地形だったのかは皆目見当がつかない。
 その雪原の上に、ローブで全身を包んだ女が雪と風に煽られながらたたずんでいた。かつてアルビオンに
潜入していた謎の女、シェフィールドである。
 彼女は傍目から見たら、独り言を唱えているように見える。だが実際は違う。テレパシーとも
言うべき能力によって、ある人物と連絡を取り合っているのだ。
「ガーゴイルを用いたとしても、前に進むだけでも困難な状態です。真に申し訳ありませんが、
仰せつかった“始祖の祈祷書”の回収の任、開始できそうにありません……」
 本当に心底罪悪感を抱えている様子で、シェフィールドは謝罪した。
 彼女はルイズの持つ“始祖の祈祷書”を強奪する目的で再びアルビオンに現れたのだ。
しかし、行動に出ようと考えていた今日この日に、折悪しく怪獣による異常気象が発生した。
そのためにルイズを見失い、任務遂行が不可能な状態に陥ったのだった。
 シェフィールドの脳内に、連絡相手の声が響く。
『それは真に残念であるな。しかし、そんな巡り合わせの悪い日もある。よい、我がミューズよ。
祈祷書の奪取は打ち切り、我が元へ帰ってくるのだ』
「い、いえ。この吹雪がやんでから、改めて虚無の担い手を捜索することは出来ます。陛下がひと言
お命じ下されば、このシェフィールド、必ずや成し遂げてご覧にいれます」
『いや、余の気分が変わったのだ。単に“秘宝”と“指輪”を集めて眺めるより、“虚無”対“虚無”の
対局を指すことにした。その方が面白そうだ。故に必要はない。それに何より……そんな寒い場所に長々と
立たせて、お前が風邪を引いたりしたら心苦しい』
 相手の最後の方の言葉を聞いて、シェフィールドは顔を輝かせた。容貌に似つかわしくない、
恋をする少女の顔だった。
「あ、ありがたきお言葉です! ではすぐにあなたさまの御許に馳せ参じます……ジョゼフさま!」
 シェフィールドは懐から小さな人形を取り出し、それを足元に放った。
 人形は一瞬にして羽を生やした大型の魔法人形ガーゴイルに変化し、シェフィールドは
その背にまたがった。シェフィールドを乗せたガーゴイルは飛び上がり、風に逆らいこの場から
飛び去っていった。

 知らず知らずの内にシェフィールドに狙われていたルイズであったが、彼女は現在、行方不明の
才人を捜す旅を行っていた。自責の念から一度は自殺も考えたが、ゼロたちとの生活の中で命の
大切さを知った彼女は、自らの命を絶やすその行為が大罪であることを悟り、前を向いて生きることを
遂に発起したのだ。
 そう、まだ確実に死んだとは言い切れない才人の行方を捜し出すことを決めたのだ。そのために、
自分を心配してわざわざ様子を見に来たシエスタをお供にして、馬車の旅に出た。
 が、しかし、ウエストウッド村に近づいたところで、怪獣たちの猛吹雪に襲われてしまった。
馬は凍死してしまい、ルイズとシエスタは雪の真っ只中に立ち往生するという最悪の状況に
見舞われているのだった。
「うぅ、さ、寒いわ……」
 ガチガチと歯を鳴らすルイズ。ありったけの防寒具を着込んでいるが、それが役に立たないほど
気温が低下しているのだ。
 顔が青ざめるルイズを、シエスタが励ます。

68 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/31(月) 21:04:36.45 ID:qE/d/EVD.net
「ミス・ヴァリエール、しっかりして下さい! 眠ってはいけません。雪の中で眠ったら
命はありません!」
「う、うん……。シエスタ、あなた体力あるのね……」
「田舎育ちですから。このぐらい、なんてことありませんわ」
 と言うシエスタだが、実際にはこれは強がりであった。本当は彼女も苦しい。しかしルイズを
激励するために、平気なように振る舞っているのだった。
「この幌馬車、雪の中に埋まりかけてます。このままでは生き埋めですわ。まずは脱出しましょう」
「ええ……」
 荷物を持っていく余力はない。二人は着の身着のままで馬車から外へと抜け出した。その直後に、
馬車は幌に積もった雪の重みで押し潰された。
「危ないところでしたね。でも、ここからどうすればいいか……」
 さすがに困惑するシエスタ。自分たちの発った町から、もう大分距離があるところに来ているので、
そこに引き返すというのは難しすぎる。この吹雪の中では、方向が分からなくなって遭難することも
十分にあり得る。
 一方でルイズは、自分たちの目の前にある森の入り口を見やった。ウエストウッドの森だ。
「確か、この森の中に村が一つあるって話を町で聞かなかったかしら?」
「え? ええ……何でも、身寄りを亡くした子供たちが寄り集まって暮らしてる小さな村があるとかないとか。
でも、人の行き来が滅多になくてほとんど忘れられたところみたいですが……」
「そういう場所にいるんだったら、今の今まで行方不明のままでもおかしくないわね。いえ、それより
今は人のいる場所へ行きましょう。このままじゃ、二人とも凍え死んでしまうわ」
「そうですね……。本当に村があることに賭けましょう!」
 ルイズとシエスタは、自分たちが生き残るために森の中へと歩を進めた。

「ガオオオオオオオオ!」
「プップロオオオオオオ!」
 マーゴドンとガンダー、二体の怪獣の姿が、才人たちの目にしっかりと飛び込んだ。吹雪の中で
暴風のうなりにも負けないほどの咆哮を上げる怪獣たちの様子は、まるでこちらを挑発しているかのようだった。
 怪獣たちの威容を目の当たりにして、子供たちはミーニンやティファニアにしがみついて
大いに震え上がる。ティファニアは彼らを落ち着かせるのに必死だ。
「あいつらの仕業だったんだな……!」
 一方で、グレンと才人はガンダーたちを強くにらみつける。この吹雪は自然の天候ではない。
奴らをどうにかしない限りは、自分たちはもちろん、ハルケギニア中の人々が助からないだろう。
 しかも、ガンダーはこちらに歩み寄ってきているようであった。ウエストウッド村を踏み潰すつもりか!
「このまんまじゃやべぇぜ! 俺が怪獣を遠ざける!」
 そう叫んで家から飛び出していこうとするグレンに、ティファニアが驚愕した。
「そ、そんなの危険すぎます! こんな猛吹雪の中、無謀ですよ!」
 事情を知らない者から見れば、グレンの行動はそう見えるだろう。しかし彼の本当の姿は、
熱く燃えたぎる炎の戦士なのだ!
「任せてくれって! みんなはどうにか自分たちの身を守っててくれよ!」
「グレン! 俺も……!」
 才人が名乗り出ようとしたが、グレンに手で制された。
「お前はここの嬢ちゃんと子供たちを守ってやってくれ」
 でも、と言いかけた才人だが、続きを口に出せなかった。ウルトラマンゼロになれない
今の自分に、巨大怪獣と戦える訳がない。
 戸惑っている間に、グレンは素早く玄関から飛び出ていった。
 雪原に飛び出すと、グレンは早速変身を行う!
「うおおおぉぉぉぉぉッ! ファイヤァァァァァ―――――――ッ!」
 燃え盛る炎の勢いで一気に巨大化し、グレンファイヤーへと変貌した! 赤き戦士が
立ちはだかったことで、ガンダーは足を止めて警戒する。

69 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/31(月) 21:06:41.36 ID:qE/d/EVD.net
『とぁッ!』
『むんッ! ジャンファイト!』
 更にはミラーナイト、ジャンボットも駆けつけ、グレンファイヤーの左右に並び立った。
『お前たちも来たのか!』
『この一大事、何もしない訳にはいきませんよ』
『今変身の出来ないサイトたちには、指一本とて手出しはさせん!』
 頼れる二人の仲間の登場でグレンファイヤーの心はますます燃え上がった。
『こんな寒々しい景色、ぶっ飛ばしてやるぜ! ファイヤァァァ―――――――!』
 手の平から火炎放射を飛ばすグレンファイヤー。吹雪と極低温にも負けない灼熱の炎は、
ガンダーをひるませマーゴドンをたじろがせる。
『よぉし、行くぜぇぇぇぇぇぇッ!』
 敵をひるませたことで、グレンファイヤーは一気に畳みかけようと駆け出した! 雪原を踏み越え、
ガンダーに猛ラッシュを食らわせようと迫る。
 だが途中で、足下の雪から赤い巨大なハサミが飛び出してきた!
『うおわぁぁぁぁッ!?』
『グレン!?』
『グレンファイヤー!』
 足をはさまれて前のめりに倒れるグレンファイヤー。ミラーナイトとジャンボットは動揺する。
「グイイイイイイイイ!」
 雪の中からハサミがせり出してくる。その正体は、左右で大きさの不揃いなハサミを生やした、
角ばった甲羅を持つカニとエビを足したような甲殻類型怪獣……!
 かつてウルトラマンダイナをギリギリまで追い詰めた恐るべき宇宙海獣、レイキュバスだ!
『くっ、こんな奴までいやがったのか!』
 グレンファイヤーは足を掴むハサミを振り払うが、起き上がったところにレイキュバスが
冷凍ガスを浴びせてくる。
『ぐわあああぁぁぁぁッ!』
 その攻撃に悶え苦しむグレンファイヤー。レイキュバスの冷凍ガスはウルトラ戦士の巨体も
一瞬で凍りつかせるほどの恐ろしい威力がある。たとえ炎の戦士のグレンファイヤーといえども、
ただでは済まない!
『グレンファイヤーが危ない!』
 ミラーナイトが援護攻撃をしようとしたが、そこに吹雪の間から飛び出してきた、上顎から
太い牙を剥き出しにした恐竜型怪獣が襲いかかってきた。
「ギャァァァアアア!」
『むッ! はぁッ!』
 反射的に喉にチョップを叩き込んで返り討ちにするミラーナイト。だが恐竜型怪獣はミラーナイトの
周囲から更に三体も現れ、口から冷凍ガスを吐き出して攻撃してくる!
「ギャァァァアアア!」
『なッ! こんなに怪獣が……うあぁぁッ!』
 三方向からの攻撃にどうにも出来ずに、ミラーナイトの身体が凍りついていく。
 この怪獣たちの名はシーグラ! シーグラもまた冷凍怪獣である!
『グレンファイヤー! ミラーナイト! 今助け……!』
「プップロオオオオオオ!」
 劣勢に立たされる二人を救援しようとするジャンボットにも、ガンダーが襲いかかる。
宙を滑空しながらドリル状の爪でジャンボットの肩を切り裂く!
『ぐわッ! くぅッ、思うように動けん……!』
 ジャンボットたちの劣勢は、数の差だけが理由ではない。極低温の猛吹雪の中という、
相手に圧倒的有利な環境でその力を十全に発揮することが出来ないからだ。
『まずは吹雪をどうにかしなければ……!』
 ジャンボットは高性能センサーを働かせて、事態打開のためのデータを収集した。
 その結果、吹雪の中心がマーゴドンであることが判明。マーゴドンを叩けば、状況は好転するに違いない!

70 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/31(月) 21:08:36.23 ID:qE/d/EVD.net
『よし! ジャンミサイル発射ッ!』
 そうと分かったジャンボットの行動は早かった。ミサイルを一斉に飛ばし、マーゴドンへと炸裂させる! 
その爆発と熱でマーゴドンにダメージを与えるはず……。
「ガオオオオオオオオ!」
 しかしミサイルの爆発はマーゴドンの身体に吸い込まれていき、火花は瞬く間に消え去ってしまった!
『な、何だと!?』
 マーゴドンの冷凍能力は数々の怪獣の中でも頂点に君臨するレベル。あらゆるエネルギーは
絶対零度の肉体に吸収され、ゼロにされてしまうのだ! マーゴドンに爆撃は効かない!
『くッ、どうすれば……ぐわぁぁぁッ!』
「プップロオオオオオオ!」
 ジャンボットが逆転の一手を考えつく前に、ガンダーが冷凍ブレスを食らわせた上に張り倒した。
横転したジャンボットは回路が凍りついて、立てなくなってしまった!
 ゼロのいないウルティメイトフォースゼロは、冷凍怪獣軍団の前に絶体絶命の窮地に追いやられた!

「み、みんなが危ない……!」
 三人のピンチを、才人も目の当たりにしていた。焦燥を覚える才人だが、彼らを助ける方法は
何も思い浮かばない。何せ、頼みの綱のゼロは未だに覚醒していないのだ。
(くそぉッ……! どんなに訓練したって、人間の身じゃいざという時に何の役にも立たない……! 
やっぱり、俺に出来ることなんて何もないのか……!?)
 激しい無力感に打ちのめされ、目の前が真っ暗になりそうな才人。
 だが、ふと倒れているジャンボットの姿が目に入る。
 その時、才人に電流が走った!
(そ、そうだ! これが上手く行けば……!)
 才人の脳内に、逆転の手段が浮かび上がったのだ!
 しかしそれを実行するのには、大変な危険がある。果たして自分に、その危険を突破する
力があるのか……。ほとんど無謀な行為なのだ……。
 悩んでいたら、後ろの子供たちとティファニアの声が耳に入った。
「テファお姉ちゃん……眠い……」
「ね、寝ちゃ駄目よ! 気をしっかり持って! お願いだからッ!」
 子供たちの体力は限界のようだ。
 それを知った時、才人は決心した!
(力があるのかとか、危険がどうとか、そんなことじゃない! あの子たちの命が消えかかってる! 
それを救わなくちゃいけない! そうしなきゃ、俺は本当に駄目な人間になる!)
 瞳に光を灯し、デルフリンガーを背負ってマントを勢いよく羽織った!
(俺は男だ! 人間だ! どんな敵が立ちはだかろうと――勇気を胸に、立ち向かってみせるッ!)
 玄関の扉に手をかける才人に、ティファニアが慌てて呼びかけた。
「サイト、何をするの!?」
「行ってくる。今みんなを救うことが出来るのは、俺しかいないんだ」
「む、無理よ! 死にに行くようなものだわ! お願い、やめて!」
 必死に制止するティファニア。だが才人の心は、もう変わらないのだ。
「無理なことなんてない! 俺は、諦めない! 不可能を可能にするッ!」
 そして一気呵成に吹雪の中へ飛び出していった!
「サイトぉぉぉぉぉ―――――――――――!」
 ティファニアの絶叫を背にして、才人は吹雪に逆らい駆けていく。暴風は彼を枝きれのように
吹き飛ばそうと襲い来るが、才人の身体は前へ前へと進んでいく。
(こんな逆風の中で、身体が動く……! グレンに鍛えてもらったからだ! グレン、ありがとう!)
 己の肉体が逆風に負けないことを、グレンファイヤーの課した特訓の成果だと才人は考えた。
しかしそれだけが理由ではない。

71 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/31(月) 21:10:37.76 ID:qE/d/EVD.net
 今の才人の心の中に、雪と氷に負けない熱い勇気と使命感が燃えているからだ!
「くッ……けれど、さすがに目を開けてるのは難しいな……!」
 足は動いても、目に雪が入ってくるのは防ぎ難い。才人が視界の確保に苦しんでいると、
背にしているデルフリンガーが呼びかけた。
「相棒、俺がジャンボットまでの方角を指示してやらあ。俺には目ン玉がないからな、雪は関係ねえのよ」
「そうか! ありがとう、デルフ!」
「こんくらいのこと、礼を言われるまでもねえぜ」
 デルフリンガーのお陰で、方向を見失うことはない。才人は感謝するとともに、デルフリンガーが
一緒にいてくれることでもっと勇気をたぎらせた。
(俺は一人じゃない……! 一人じゃないなら、何だってやれる気分だ!)
 だが、雪中を突き進む才人にガンダーが容赦なく襲いかかってきた!
「プップロオオオオオオ!」
「相棒危ねえ! 伏せろッ!」
 デルフリンガーの指示でその場に身をかがめる才人。ガンダーがその上スレスレを通り過ぎていく。
『サイト!?』
『くそッ、あの野郎サイトを……!』
 ミラーナイトとグレンファイヤーは、才人が外に出ていることに驚き、彼を狙うガンダーをにらみつけた。
しかしレイキュバス、シーグラの猛攻をしのぐのに手いっぱいで、彼を助けに行くことは出来ない。
「プップロオオオオオオ!」
 着地したガンダーはなおも才人をつけ狙う。
 巨大怪獣に狙われ、追われる恐怖。それは生身の人間には耐えられないほどの、大きすぎる恐怖だ。
心臓が張り裂けてもおかしくないような。
 しかし才人は立ち止まらない!
「相棒、走り続けろ! ジャンボットのとこまでたどりつけりゃあ勝ちだ!」
「言われるまでもないぜ!」
 才人の勇気は、巨大な恐怖を打ち払うほどに強くなっているのだ!
 そして才人は走る。執拗に追ってくるガンダーが振り下ろす爪を、吐き出す冷凍ブレスをギリギリの
ところでかわし続けながら。一歩間違ったら即あの世行きの、あまりにも危ない橋。その上を駆け抜けていく。
 苦しくない訳がない。無理のある回避行動を取りながら前に進むので、脚はパンパン、筋繊維は悲鳴を上げる。
心臓は物理的に破れそうだ。だがその苦しみを、腹にくくった思い一つで抑えつける。
「負けるか……! 人間はッ! お前たちなんかに負けなぁぁぁぁいッ!」
 そうして気がついた時には――横たわったジャンボットの顔が目前にあった!
 才人は即座にジャンボットに呼びかける。
「ジャンボット! 意識はあるか!?」
『サ、サイトか……!? よくここまで……』
「俺をお前のコックピットに入れてくれ! その力を……俺に貸してくれッ!」
 才人の言葉が届き、ジャンボットになけなしの力が宿った。
『力を借りるのは、私の方だッ!』
 転送光線が才人を包み、次の瞬間には才人の身体はジャンボットのコックピット内にあった。
「プップロオオオオオオ!」
 ガンダーは才人を内部に収めたジャンボットへ詰め寄り、鋭い爪を振り上げる。このままでは、
ジャンボットはズタズタに引き裂かれておしまいだ!
 しかしその直前、コックピットの中央に立った才人がファイティングポーズを取り、力いっぱいに叫んだ!

「ジャァァァンッ! ファァァァァァァァァイトッ!!」

 ガンダーの爪が振り下ろされる!
 ……その顔面に、ジャンボットの鉄拳がめり込んだ!
「プップロオオオオオオ!」
 仰向けに傾き、雪の上に倒れ込むガンダー。それとは反対に、鋼鉄のボディと『心』を持った武人は身を起こした!
『うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!』
 システム再起動。回路は瞬時に正常に戻り、黄色い眼に光が灯る!
「行こう、ジャンボット! みんなを救いにッ!!」
 冷凍怪獣にも消すことの出来ない勇気の炎を内にしたジャンボットが、雄々しき機体を立ち上がらせたのだ!

72 :ウルトラマンゼロの使い魔 ◆5i.kSdufLc :2015/08/31(月) 21:13:56.44 ID:qE/d/EVD.net
以上です。
狙ったんじゃありませんが、ウルトラ怪獣擬人化計画にレイキュバスが来ました。

73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/01(火) 15:11:58.55 ID:2Uc/3c/i.net
乙です

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/02(水) 20:31:42.80 ID:G5RF7vDl.net
タバサがヤンデレみたいになってやがる… ((((;゜Д゜)))

75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/02(水) 20:52:07.12 ID:jaKMNBnI.net
うおおおおおおおおおおおおお!?
きたああああああああああああああああ!!
まさかの「叫べサイト! ジャンファイト!!」が見られるとは!!

76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/04(金) 23:33:33.21 ID:mqKYy776.net
乙です。やっぱり勇気を振り絞ってピンチに立ち向かっていくのは熱くなりますね

ただ気になったことを一つ
シェフィールドというのはあくまでルイズたちに対して言った偽名で、彼女はジョゼフに対してはその名は使っていなかったように思えるのですが
原作かアニメか、どこかで言っていたらすみません

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/05(土) 09:50:31.53 ID:Cjnss3qj.net
元素の兄弟のジャネットって防空棲姫と顔が似てる気がする。あと挑発的なところとか

78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/08(火) 23:22:04.25 ID:ikvpIzIU.net
始めてきたんだけど何からすればいいのかな?

79 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/08(火) 23:29:20.76 ID:+XbxMmBG.net
作品の投下をしたいのか?
ならば>>1を読んでそれに従う事だ
作品を読みたいならまとめサイトへ行くといいぞ

80 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/09/10(木) 20:31:47.59 ID:zBI4lsfm.net
皆様、お久し振りです。
よろしければ、20:40頃からまた続きを投下させてください。

81 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/09/10(木) 20:40:27.28 ID:zBI4lsfm.net
 
タバサが木々の陰に身を隠しながらディーキンに対して激しい感情の炎を燃やしていた、ちょうどその時。

「……っ、そこの烏! こちらを向きなさい!」

やや離れた場所にいたシエスタが、突然鋭い声を上げた。

一体何事かと、ディーキンもタバサも、思わずそちらに注意を向ける。
見れば、シエスタはどうやら、木の上にとまっている一羽の烏を厳しい目で睨みつけているようだ。
彼女は懐から取り出した果物ナイフをいつでも投げつけられるように烏に向けて構えながら、もう一方の手をデルフにかけていた。

傍から見れば、正気を疑われそうな奇行だろう。

「……?」

さすがのディーキンも、彼女が一体何をしているのかすぐには理解できず、きょとんとする。

タバサもまた、一瞬怪訝そうに眉根を寄せた。
しかし、彼女はじきに我に返ると、ディーキンがシエスタの方に明らかに気を取られていることに着目した。

(好機)

もっと余裕のある精神状態の時の彼女なら、暗黙の了解の上での一時休戦として、ディーキンが自分に注意を戻すまで待っただろう。
これは所詮は試合であって、ルール無用の殺し合いとは違うのだから。

だが、今のタバサは“任務”に臨んでいる時と同様に、いやある意味ではそれ以上にも、勝つことに執着していた。
それにディーキンが、自分との真剣勝負よりもシエスタの些細な奇行の方に注意を惹かれているのも、気にいらなかった。

戦いの最中に、余所事に気を取られている方が悪いのだ。
彼女は自分にそう言い聞かせると、今まで以上に強力な攻撃呪文の詠唱を始めた。

用いる呪文は『ライトニング・クラウド』である。

単体目標に対する電撃を放つこの呪文は、これまでに用いた風の刃や氷柱の矢のように防具や外皮で防ぐことはできない。
一旦距離内の目標に放たれれば、ほぼ瞬時に着弾する雷の速度ゆえに、回避することもまず不可能である。

本来ならば、試合で用いるには危険過ぎる代物だ。

電撃は体のどこに当てても全身へ通電するため、風の刃などのように急所を外して狙うということはできない。
殺傷力も高く、並みの人間に放てばまず致命傷。即死することも珍しくはないのだ。

しかし、ディーキンの体の頑丈さから言って、死ぬことはまずないとタバサは考えていた。
それどころか、さらなる追撃が必要だとさえ踏んでいた。

(彼が電撃で動けなくなったら、『ジャベリン』で足を狙う……!)

それは、先程の『ウィンディ・アイシクル』とは段違いに威力のある、一本の太く長い氷槍を放つ呪文だ。
並みの金属鎧程度なら、胴体ごと貫けるだけの威力がある。
痺れてガード体勢が取れないうちにそれを叩き込んで足を砕き、勝負を決めるのだ。

この時、もしもタバサが本当に冷静だったなら……。
そのような危険な攻撃を仕掛けようなどとは、決して考えなかっただろう。

仮にディーキンが彼女の想定よりも頑丈でなかったなら、電撃が致命傷を与えてしまうかもしれないのだ。
その後の追撃にしても、足を砕こうなどというのはやりすぎだろう。
実戦ならばいざ知らず、友人同士の試合でやるような攻撃ではないはずだ。
たとえ無事だったにしても、そんな攻撃をした自分のことを、後で彼は何と思うだろうか?

結局、今のタバサは勝利に執着して焦るあまりに、しっかりと後先を考えられなくなっていたのだった。

82 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/09/10(木) 20:43:09.33 ID:zBI4lsfm.net
 

(なんだぁ? この女ぁ……!)

大烏は、自身の栄光に満ちた未来絵図の妄想に耽っていたところを突然邪魔されて、イラつきながらも眼下のシエスタに注意を向けた。

よりにもよって、劣等な世界の、下賤な人間の、卑しい端女ごときが。
近未来の万物の支配者、アスモデウスをも平伏させるであろう者、この大悪魔ジェベラットに対して……。

(……んぁ?)

ジェべラットはそうして妄想の続きに浸りながらシエスタを睨んでいるうちに、ふと妙なことに気が付いた。

目の前の女の、ただの黒髪とは一線を画する、金属的な光沢の髪。
それに輝くような白い肌に、黒真珠のような瞳の奥の煌めき。
先程までは別段注意も払っていなかったが、よく見るとただの人間とは少し違うような……。

(なんだぁ、こいつ……?)

彼は、胡乱げに顔をしかめてシエスタの顔を注視し、こいつは何者かとしばし考え込む。
そして突然、答えに思い当たると、ぎょっとして目を見開いた。

(な、なんで天界の下僕が、こんなところにいやがるんだ!?)

シエスタは要求通り自分の方を向いた烏に対して、一旦手に構えたナイフを下し、デルフから手を離した。
そして、じっと烏の方を見つめたまま、言葉を続ける。

「……言葉がわかるのなら、ここへ来た目的を答えてください。
 私には、あなたの悪意はわかっています。なぜ、あのお二人を見て嗤ったのですか?」

語気はやや穏やかになったものの、その顔つきは厳しいままだった。

彼女は先程、パラディンとして授かった《悪の感知ディテクト・イーヴル》の能力を、初めて試してみたのだ。
その結果は、あの不審な烏が“悪しき者”だと告げていた。

動物の属性が『悪』であることは、通常ありえない。
彼らは普通、『真なる中立』の属性だ。動物には物の善悪や、秩序と混沌の区別を判断する能力などはないからである。
つまり、あの烏はただの動物などではない、ということになる。

そして何よりも、パラディンはいついかなる時でも、その力の及ぶ限り悪に立ち向かうものなのだ。

(……畜生、セレスティアの搾りカスみてえな雌犬の分際が、偉そうにしやがって……!)

ジェベラットは、内心で忌々しげに悪態をついた。

だが、彼は感情のままシエスタに襲い掛かるほど愚かではない。
思いもかけぬ邪魔者への憎悪と苛立ちとを募らせる一方で、この状況でどう行動すべきかを、冷静に考えてもいた。

目の前の、おそらくはパラディンであろう女の強さのほどはわからない。
しかし、正面から戦って勝てるかといわれれば、正直なところあまり自信はなかった。
忌々しいことだが、自分の力は戦闘能力という面では大したものではないのだ。

ましてやここで正体を明かして戦えば、近くにいるコボルドや人形娘も、おそらくは介入してくるだろう。
それでは到底、勝ち目はなくなるし、彼らを利用する計画も台無しだ。

ゆえにジェベラットは、直ちに撤退することを決断した。

ここで死んで、地獄に送り返されてはたまらない。せっかくの美味しい狩場を、こんなことで手放せるものか。
このような馬鹿げた、ささやかな偶然ごときで、自分が躓くわけにはいかないのだ。

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/10(木) 20:43:12.69 ID:ZNXL+pjG.net
嫌です

84 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/09/10(木) 20:45:19.74 ID:zBI4lsfm.net
絶対に生き延びて、こいつらの情報を自分の手柄に変えてやろう。
なあに、逃げるだけならどうとでもなるだろう。
相手はたかが、脆弱なアアシマールのパラディン一人だ……。

「どうしたんですか、答えてください。
 それとも、話せないのですか。それなら……、」

ジェベラットはシエスタの言葉など無視してじっと精神を集中させ、自分の内に備わった魔法的な力を呼び起こす。

次の瞬間には、彼の姿はふっと掻き消えて、目には見えなくなった。

「……あっ!? ま、待ちなさい!」

シエスタは慌ててナイフを構え直すと、見えない相手が先程までいた枝のあたりへ投げつけた。

しかし、刃物は虚しく空を切る。
彼女がナイフを投げた時には、ジェベラットはとうに枝を蹴って飛び立っていたのだ。

「っ、……どこに!?」

シエスタは懸命に顔を上げて空を見回したが、まるで何も見えはしない。
そんな彼女を嘲笑うかのように、カアカアという烏のしゃがれた鳴き声が、上空から響いた。

もしここにクロスボウがあれば、シエスタは無駄を承知で、矢弾が尽きるまで盲滅法、空中へ向けて撃っていただろう。
だが彼女は、パラディンだとはいえ、普段はあくまでも学院のメイドでしかないのである。
そんな物騒なものを、日常的に持ち歩いたりはしていなかった。

(くっ……!)

何もできない己が身の無力さに、シエスタは歯噛みをした。
だがこのまま、不審かつ邪悪な存在をみすみす学院から逃すわけにはいかない。

やむなく決闘中の2人に協力を求めようと振り向く。
しかし、その時には既に、2人はシエスタの言葉を待つまでもなく、それぞれの行動を起こしていた……。



タバサは木の陰で密かに『ライトニング・クラウド』の呪文の詠唱を終えると、ディーキンの様子をもう一度確認した。
彼は相変わらず、烏に話し掛けるという奇行を続けているシエスタの方に注意を向けたままだ。

「……っ、」

タバサはその端正な顔を、僅かながら悔しげに歪めた。

私との勝負の最中だと言うのに、そんなにもそのメイドの様子が気になるのか。
私などは取るに足らない、問題にもならない相手だとでもいうのか。

彼女は内に激しい感情を秘めながらも、慎重に息を潜めて、じっとディーキンの動向を伺った。

ディーキンはシエスタが烏に向けて悪意云々と言ったあたりで、困惑したように首を傾げる。
そして、荷物袋に盾を持っていない方の手を入れて、何かを取り出そうとした。

(今……!)

タバサはディーキンの両手が完全に塞がった、その瞬間を見逃さなかった。
すかさず攻撃しようと、木の陰から飛び出す。

「……ン」

ディーキンは非視覚的感知の能力によって、タバサが木の陰から顔を出した瞬間には彼女の所在に気が付いていた。

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/10(木) 20:47:32.89 ID:zBI4lsfm.net
 
しかしちょっと小首を傾げただけで、タバサの方に注意を向けることはなく。
そのまま荷物袋をいじりながら、シエスタの方を観察し続けていた。

別に、ディーキンはタバサを侮ったり軽んじたりしているからそんな態度を取ったわけではない。
むしろ、彼女を信頼しているからこそだといえる。

タバサとの一件はあくまでも試合だが、シエスタの方はもしかしたら、もっと重大な事態かも知れないのだ。
と、なれば、当然そちらの方が優先されるべきだろう。

こんなアクシデントが起きたのだし、きっと察しのいいタバサなら、暗黙の了解で戦いは一時中断にしてくれるはずだ……。
ディーキンは、そのように考えていたのである。

だが実際には、タバサは今、目の前の戦いのことしか頭になかった。
今の彼女にとっては、シエスタや烏のことなどは二の次三の次であり、ほとんど眼中にない。

タバサは躊躇せずに杖をディーキンの方に差し向け、あらかじめ唱えておいた『ライトニング・クラウド』の呪文を解き放った。

途端にタバサの頭上の空気が急速に冷えはじめ、ちくちくと彼女の肌を刺す。
空気が震え、大きく弾けると同時に、タバサの周辺から発生した稲妻がディーキンに向けて走った。

「……えっ?」

空気中に作られた小規模な雷雲に導かれた電撃は、直前にやや驚いたような顔で振り向いたディーキンの体を直撃し、全身へ通電した。
彼の全身を覆うウロコの間に、バチバチと激しく火花が散る。

「オオォ……、ッ!?」

ディーキンは全身に走る不快な刺激に、顔をしかめる。

しかし、ダメージ自体は大したものではなかった。
一般人ならばほぼ確実に死ぬだろうが、ディーキンにはこれよりももっと強烈な電気を喰らった経験はいくらでもある。

だがそれは、タバサも事前にある程度は予想していたことだ。

彼女はディーキンが倒れないのを見ても動じることなく、速やかに次の呪文を唱え始める。
予定通り、『ジャベリン』を近距離から足へ放ってやるつもりだった。
体が痺れて上手く動かない間に、自分の足よりも太い氷槍を間近から受ければ、流石に彼とて……。

「……!?」

そう考えていたタバサは、しかし、次の瞬間、彼女の想定をも超える、信じがたい反応を目の当たりにした。

ディーキンは全く痺れなど感じさせない動作で、荷物袋の中から小さな弓と矢を取り出したのである。
しかもあろうことか、それをタバサに向けて構えるでもなく、彼女を無視するかのように、またシエスタの方に視線を戻した。

おまけに、弓を構える邪魔になるからか、それまでタバサからの攻撃を防ぐのに使っていた大盾を外し始めた。
タバサが今、目と鼻の先にいるというのに。

(……そこまで……!!)

そこまで、それほどまでに自分を馬鹿にするのか。
許せない、絶対に。

心が猛り狂う冷たい氷嵐で満ち、感情の高ぶりが、タバサの魔力をより高めていく。
タバサは、一層目を鋭く、冷たくすると、内心の激情を押し隠して淡々と詠唱を続けた。

「……ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ ハガラース……」

彼女は詠唱に合わせて杖を回転させ、それに伴って身体の周りを大蛇のごとく巨大な氷の槍が回り始める。

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/10(木) 20:49:58.83 ID:azzEJiX4.net
支援

87 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/09/10(木) 20:50:20.46 ID:zBI4lsfm.net
槍は回転するうちに膨らみ、どんどんと太く、鋭く、冷たい青の輝きを増していく……。

その時、ディーキンがやや首をかしげると、突然ひょいとタバサの方を振り向いた。

「ねえ、タバサ。悪いけど、ちょっとだけ戦いの続きは待ってほしいの。
 今はシエスタの方が、何だか気になるからね」

ディーキンは、タバサに向かってふるふると首を振ってそう頼むと、ひとつお辞儀をして、またシエスタの方に目を向け直した。
目の前で剣呑な氷の槍が回転している最中だというのに、まったくいつも通りの様子だった。

タバサは、その時間近でディーキンの瞳を見つめ……。
そこに宿る感情の正体を悟ると、愕然とした。

今まさに、並みの人間なら命を奪われかねないような呪文で不意討ちを受けた直後だと言うのに。
目の前で、それにもまして強力な攻撃を仕掛けられようとしているのに。

そこには敵意も憎悪も、侮蔑も警戒もなかったのである。
ディーキンの瞳の奥にあるのは、ただ、いつもとまったく変わらない信愛の感情だけだった。

タバサは、今度こそはっきりと悟った。

彼がまるで無警戒に盾をしまい込んだのも、こちらに背を向けたのも、自分を侮っているからなどでは決してなかったのだ。
彼はただ、自分を、心から友人として信頼してくれているのだ。
先の不意打ちも、彼はただ、態度で休戦の意志を示したつもりが意思疎通に不具合があったのだ、程度にしか思っていないのだろう。
こちらが彼の意志を無視して攻撃したなどとは、少しも疑ってさえいない……。

(……私、は……)

タバサは、完成した『ジャベリン』を杖の先に纏わりつかせたまま、呆然として立ちすくんだ。
怒りも憎しみも一瞬で吹き飛び、どうしたらいいか、自分がどうしたいのか、わからなくなってしまったのだった。

“だから、なんだ?
 彼が自分のことを信頼しているから、それがなんだというのだ?”

戦いは非情、油断する方が悪いのだと、自分はこれまでの戦いで嫌というほど学んだではないか。
何を躊躇う必要があろうか。
この甘い、おめでたい亜人にも、自分が否応なく味わわされてきた現実の厳しさを叩き込んでやればいいのだ。
あの一点の曇りもない脳天気な笑顔を、今度こそ崩してやりたい……。

タバサの心の一部には、確かにそう唆す昏い感情があった。

しかし、タバサにはその声に従って杖を振り下ろすことが、どうしてもできなかった。
彼女の脳裏を、今は亡き、愛する父の面影がよぎる。

(……父さま……)

タバサの父であり現ガリア国王ジョゼフの弟であったオルレアン大公シャルルは、信頼していた兄に裏切られて殺された。

(父さまは、伯父を心から信頼していた……)

なのに、伯父は恥知らずにもその信頼を裏切って、父を暗殺した。
才能あふれる弟への嫉妬と、王座への欲望がその動機だった。少なくとも、タバサはそう信じている。

……では。今自分が、ディーキンに対してしようと思ったことは何だ?

自分は、彼に身勝手な妬みや僻み、歪んだ執着を抱くあまり、彼からの信頼を無視して背後から攻撃したいと考えたではないか。
しかも、死んでも構わないというほど、本気で攻撃しようとしたではないか。
足を狙おうという考えさえ、最後の瞬間には吹き飛んでしまっていた。
そのままいけば、心臓や首筋を狙っていたかもしれない。

88 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/09/10(木) 20:52:36.70 ID:zBI4lsfm.net
聡明なタバサには、その事をはっきりと認識できた。
そして、それを自分の中で適当に誤魔化して済ませてしまうことができないほどには、彼女は高潔だった。
杖を握る手が、微かに震える。

今、自分のしようとしたことは、あの恥知らずな伯父が父に対してしたことと、一体どれほど違うというのか……。

(……自分も、父さまや母さまの仇である、あの伯父や従姉妹と同じ。
 私にも、あの恥知らずな、ケダモノの血が流れている……)

これまでずっと目をつぶってきた、否定しようとしてきたその事実を、タバサは今、痛感せずにはいられなかった。

タバサは自分の中のその黒い心そのものに対して、今はっきりと向き合った。
そのことは、命懸けの任務の最中にあっても久しく感じたことのなかったある種の恐怖にも似た感情を、彼女に覚えさせた。
今のタバサにとっては、これまでの任務で出会ってきたどんな怪物よりも、自分自身が恐ろしかった。



一方、シエスタの方に視線を向け続けていたディーキンは、そのようなタバサの内心の葛藤に気が付くことはなかった。
しばし眺めているうちに、烏の方にはっきりとした変化が見え、ディーキンは目を見開く。

じっと枝にとまっていた烏の姿が、急激に透き通り始めたのである。

(オオ……!?)

ディーキンには、その烏が《不可視化インヴィジビリティ》の疑似呪文能力を使ったのだということがわかった。
しかし、ディーキンにはその烏の姿が、半透明に浮かび上がって見えていた。
これは永続化してある、《不可視視認シー・インヴィジビリティ》の効力である。

烏はそのまま枝から飛び立ったが、シエスタに自分の姿が見えていないのに安心したのか、なかなか逃げていこうとしない。
そこらを飛び回りながら、彼女を小馬鹿にしたようにしゃがれ声で鳴きはじめた。

さてどうしたものかと、ディーキンは素早く考えをめぐらせる。

このような能力を持つ以上、この烏が普通の動物でないのはもはや疑いようもない。
しかも、シエスタは悪の存在だと言っていた。
パラディンがそう言うのだから、間違いないだろう。

ならば正体はわからないが、すぐに弓で射殺してしまうべきだろうか?

しかし……、パラディンであるシエスタには、自分の手で悪を討ちたいという思いがあるはずだ。
敵の強さにもよるが、自分だけで片付けてしまうのは彼女に申し訳ない気がした。

それに、正体がわからない以上は、捕まえて訊問してみる方がいいかもしれない。

(ウーン、上手く捕まえられるかな……?)

ディーキンはひとまず方針を決めると、弓を片手に持ち直し、空いた手でもう一度荷物を探って、『足止め袋』をひとつ取り出した。
そうしてから、すっかり油断しきって空を悠々と飛んでいる烏の方へ、翼を広げて飛び立つ。



(………はっ?)

油断しきっていたうえに、シエスタの方にばかり注意が向いていたジェベラットは、ディーキンの接近に気付くのが遅れた。
もっとも、仮に事前に気が付いていたとしても、ディーキンの方が飛ぶのは早い。

(こ、このトカゲ野郎……、俺が見えてやがるのか!?)

タバサを軽くあしらうのを見てはいたが、たかがコボルド、物質界の弱小な種族だと、心のどこかで油断していた。
慌てて身を翻そうとしたが、既に手遅れだ。

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/10(木) 20:56:16.43 ID:GoBFBwWN.net
しえん

90 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ◆B5SqCyGxsg :2015/09/10(木) 21:00:26.25 ID:zBI4lsfm.net
 
ディーキンの投げた袋がジェベラットに直撃して破れ、内部に詰まっていた粘性の高い錬金術物質が彼の、烏の体を絡め取る。
ジェベラットは必死にもがいたが、空気に触れてたちまち強靭な弾性を帯びたネバネバからは逃れられない。

翼の自由を奪われて、彼は地面に落下した。

「先生!」

そこへ、シエスタが歓声を上げて駆け寄る。

「ち、畜生! この、掃き溜めみてえな世界で生まれた、レムレーの素どもがぁ……!
 手前らなんぞ、俺が栄光を掴む役に立たねえならラルヴァにでも食われやがれってんだ!!」

ジェベラットは必死に体を起こしながら、もはやこれまでと覚悟して、透明化も変身も解除してシエスタを迎え討とうとした。
同時に、それまでは心中に留めていた口汚い罵りの言葉を、金切り声で早口に喚き散らす。

「!?」

ディーキンはその姿を確認すると、ぎょっとして目を見開いた。

ディーキンよりも一回り以上小さい、まるで血のような暗赤色をした体。
革のような質感の、蝙蝠めいた翼。
毒を滴らせる、蠍のような棘の生えた尻尾。
そしてねじまがった鋭い角の生えたその姿は、小さいが悪魔めいている。

いや、正しく悪魔なのだ。

地獄帰りのディーキンにとっては、何度となく見た姿。
間違いなく、九層地獄の狡猾なデヴィル、インプの姿であった。

だが、一体何故?
どうして、バートルのデヴィルがこの世界に……?

「来るなら来てみやがれ、てめえをバートルへ案内してやるぜ、この―――― ゲブァ!?」

駆け寄るシエスタを睨み据えて喚き散らすインプのジェベラットは、突如横から飛来した、太い氷槍に胴体を貫かれた。
我に返ったタバサが、状況を把握できないながらもとにかくディーキンを援護しようとして、準備していた氷槍を放ったのだった。

「……ア、待っ―――」

はっと我に返ったディーキンが、とにかく情報を引き出すために生かして捕えようと制止するが、時すでに遅し。
胴体を貫かれてもがき苦しむ小悪魔は、直後にシエスタの『悪を討つ一撃』によって止めを刺され、故郷の地獄へと還っていった。

死体はすぐに煙を上げて溶けはじめ、数分後には泡立つ汚泥の水たまりに変わってしまった。
これでは、屍から残留思念などを読み取ることも不可能だ。

その後には、インプが持参していた、タバサに対する出頭命令書だけが残っていた……。

91 :Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 解説:2015/09/10(木) 21:05:34.86 ID:zBI4lsfm.net
 
シー・インヴィジビリティ
See Invisibility /不可視視認
系統:占術; 3レベル呪文
構成要素:音声、動作、物質(滑石と銀粉)
距離:自身
持続時間:術者レベル毎に10分
 術者は自分の視覚範囲内にあるすべての不可視状態の物体や存在を、エーテル状態のものも含めて、視認することができるようになる。
そうしたクリーチャーは、術者にとっては半透明の姿になって見える。
可視状態のクリーチャー、不可視状態のクリーチャー、エーテル状態のクリーチャーの違いは、簡単に識別することができる。
 この呪文では幻術を見破ったり、物体を透かして見たりすることはできない。
単に隠れていたり、遮蔽物などによって視認困難であったり、その他の理由で見るのが難しいクリーチャーを発見することもできない。
 シー・インヴィジビリティは、パーマネンシイ呪文によって永続化できる。
 なお、これはバードにとっては3レベルだが、ウィザードやソーサラーにとっては2レベルの呪文である。

足止め袋:
 ネバネバした粘性の高い錬金術物質が詰まった袋。
この物質は空気に触れるとたちまち強靭な弾性のある物質に変わるので、敵に投げつければ移動を封じ、身動きを妨げることができる。
D&Dの錬金術アイテムは基本的に魔法のアイテムよりも効力が弱いが、その中では比較的よく使われる品である。

デヴィル(悪魔):
 デヴィルは『秩序にして悪』の属性を持つ来訪者の代表格とされる、九層地獄バートル出身のフィーンドである。
彼らは生前に『秩序にして悪』の行為を成して地獄に堕ちた魂から造られ、功績に応じて昇進していく。
デヴィルの社会は厳格な階級社会であり、弱者は虐げられ、個性などというものは無慈悲に踏みにじられ、上位者への反抗は許されない。
 バートルにはその名の通り九つの階層があり、各階層にはそれを統治するアークデヴィル(大悪魔)がいる。
地獄の究極の支配者は、第九階層ネッソスのアークデヴィル・アスモデウスであり、神々ですらも彼の力を怖れているといわれる。
 なお、かつてディーキンたちが戦ったメフィストフェレスは、第八階層カニアのアークデヴィルである。

インプ:
 インプはごく下級のデヴィルであり、体が小さく脆弱だが、狡猾である。
しばしば地獄に魂を売り渡した、もしくはいずれ売り渡すであろう定命の存在に相談役や密偵として仕えるべく、地獄から派遣される。
 彼らは1つないしは2つの動物の姿を取ることができ、人間ほどもある大蜘蛛や、大烏、鼠、猪などがその典型例である。
また、精神を集中するだけで自由に透明化したり、善の存在や魔力を発するものを感知したりすることができる。
人間などの耳にいかがわしい示唆を吹き込み、よからぬ方向へ行動を誘導するという能力もある。
さらには週に一回程度だが、地獄の偉大な存在にいくつかの質問をして、助言を求めることができる力も持っている。
 その他にも様々な能力を持ってはいるが、肉体的には非常に脆弱なため、戦力としては大したことはない。
とはいえ、そこらの一般人やごく平凡な傭兵程度ならば、戦う気になれば返り討ちにすることができるくらいの力はある。

悪を討つ一撃(Smite Evil):
 パラディンは1日1回、邪悪な存在に対してより命中精度と威力を高めた近接攻撃を行うことができる。
パラディンのクラスレベルが上がっていくにしたがって、1日に悪を討つ一撃を使用できる回数と威力は向上していく。


-------------------------------------------------------------------


今回は以上になります。
またできるだけ早く続きを書いていきたいと思いますので、次の機会にもどうぞよろしくお願いいたします。

たくさんのご支援をいただき、ありがとうございました(御辞儀)

92 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/10(木) 21:06:25.76 ID:ZNXL+pjG.net
            ,. -─── 、
         //  /      `ヽ        _
         /.:./  / / .:.  /     \    /__ `ヽ
       / .:.:./   / ,斗-- 、:{:. .:. ヽ    ヽ  .{ (    ヽ ',
       /  /:  イ´l .:|l.:.:∧:|.:.:.: .:斗ー   ',  ゝ' ,. -ー' ノ
       l ..:.:|:.:.   | ィチ才ミヾヽ.:.:.:/厶.: / .:  〉    / / ̄
       l.:.:.:.!:.:  ∨  }:ヘ.リ  ノ/仟テk';.:./ィ/    / /
      ノ.:.::人:.   ヽ ゝ-'      ト;'ソ//!    __`´
   /.:./.:.:.ヽ:.   ヘ       ` ` |:.: |   (__)
  /.:./.:.:.:.::.ノ.:}:.    ',     __    ,:.  |
/.:./.:.:.:.:.:.:/.:.|.:.:.  l    ´ ´ /.:  |
.:.:./.:.:.:.:.:.:.:./_ィ.:.:.:.   小    イ/:.:.:.:.  l
.:.〈.:.:.:.:.:./   ./.:.    }_,工,.´ー=〈:.:.:.:..   ヽ
 :ノ.:.:/   /.:.:.:.:   /.、 ∧ ̄入ヽ:.:.:.:.   \
/r' ─- 、/.:.:.    /  ∨_ノ´\l/ \:.:.:.:.:   ヽ
.:.:.l    /.:.:     / \  \ /ヽ/ /  ヽ:.:.:.:.:.:.:  〉
/   /.:.:     / \ \  ヽソ /    }:.:.:.:.:  /

93 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/10(木) 21:11:56.26 ID:azzEJiX4.net
乙です
デヴィルが来たか

94 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/11(金) 08:03:04.14 ID:U+Z8UNKu.net

こりゃガリアになんかやばい連中を使い魔にしちゃった人がいるみたいね

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/11(金) 12:42:30.18 ID:noGDEDrm.net
ディーキンの人乙です
ディーキンはドラゴン・ディサイプルを10レベルやりきって種別が竜になっているから麻痺はしないんですよね
汚いさすがドラゴン汚い

96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/11(金) 18:21:21.12 ID:Z3uNtKZn.net
東宝怪獣とクロスさせたらどうなるかな?
ゴジラやキングギドラは無理としてゴロザウルスや陸に上がったマンダならハルケギニアの人でもなんとかなるか?
ドゴラは弱点がわかるかどうかが問題かね

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/11(金) 19:00:32.98 ID:XhDSHYCf.net
ルイズ「あんた誰?」

ドゴラ「あーわたくし、宇宙で大怪獣やっております。ドゴラと申しますぅ」

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/11(金) 19:35:39.23 ID:lDpDzIN/.net
国中のダイヤモンド食い荒らされるじゃねえか

99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/11(金) 19:44:16.25 ID:Z3uNtKZn.net
>>97
来ましたね、さあさあこちらへ


って、茶番の世界に帰れぇぇぇぇぇ!!

100 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/09/11(金) 22:31:58.15 ID:XhDSHYCf.net
波動です。波動を感じます

514 KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
名前: E-mail (省略可) :

read.cgi ver 2014.07.20.01.SC 2014/07/20 D ★