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私メリーさん3
- 1 :創る名無しに見る名無し:2010/08/05(木) 01:31:24 ID:ZyEiSLO3.net
- メリーさんの絵とかSSとかを投下するスレ。
ホラーでも猟奇でもほのぼのでも恋愛でも何でもOK
私メリーさん
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1226239443/
私メリーさん2
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1263045685/
- 271 :青空町耳嚢 〜創作発表板五周年企画SS〜 ◆ftPUzYFINd55 :2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:QKyBoSbx.net
- 青空町耳嚢 第17/21話
【M嬢の体験】
これはいたずら電話が趣味のM嬢が体験した話である。
M嬢はその日も適当に電話をかけて遊び相手を探していた。
何度目かの電話で出たのは、少年の声だった。
「はい。逆転ラーメンです」
「もしもし、私メリーさん。今、青空公園に……」
「出前ですか? それともご予約ですか?」
「え?」
M嬢はあわてた。
「あ、もしかして、まちがい電話ですか?」電話口の少年が気をきかせてくれた。
まちがいではないのだが、なんと言ってよいかわからず、M嬢はすぐさま電話をきった。
さて、M嬢には電話口にでた人間がどこに移動しても、その付近の電話にかけることができるという特技がある。
(この特技について記者が詳細を聞こうとしたところ、急に電話をきられてしまった。取材を続けるため、それ以降あえて詮索するのはやめた)
しばらくして、M嬢はふたたび電話をかけた。
長いコール。そのうちガチャリと受話器をとる音がした。
「えーっと、もしもし」少しくぐもった少年の声。「これ、二丁目の交差点の公衆電話なんですけど。誰がかけてるんですか?」
「もしもし、私メリーさん。今、青空保育園の正門にいるの」
「ああ、さっきの」と少年が言った時、ふいに別の少年の声が聞こえた。
「青空保育園の正門? あ、赤い服の女の子がいる」
思わず電話をきった。鳥肌がたった。二丁目の公衆電話から、保育園が見えるわけがない。
現にM嬢自身は、電話の先の相手の姿をしらない。
なのに、向こうは造作もなくこちらの姿を特定してしまった。
気を取り直してもう一度かけてみる。
「はい。こちら新青空駅の駅員室です。でも、駅員さんは怪獣騒ぎでみんな避難しています」
「もしもし、私メリーさん。今三丁目の……え?」
怪獣騒ぎ? 避難?
声は、たしかに最初の少年のようだった。
だが、ラーメンの出前をとるような少年が、大人のいない駅長室になぜいるのか。
「君、今外にでてると危険だよ。はやく家に帰るんだ」少年が親切にも忠告してくれる。
電話の向こうで「危ない!」という叫び声と、派手に何かが壊れる音がして、ふいにぶつっと電話が切れた。
おおかた、電話線が千切れたのだろう。
でも気にせず、すぐにかけなおしてみる。(記者はこのくだりについてもたずねたのだが、はぐらかされてしまった)
同じ場所につながったはずなのに、出たのは妙に甲高い男の声だった。
「あー、もしもし?」
「もしもし、私メリーさん。今二丁目の交差点にいるの」
「なんだ迷子か? ここは駅だぞ? 警察に110番しなさい」
「あの子はどこ?」
「ん? あの子、とは?」
「さっきここでおしゃべりしてたの」
「ああ、奴か」男がクククと笑った。「奴はこの私、ヤミノリウスV世が捕まえた」
ただものではない少年を捕まえたという謎の男。
駅でなにが起きているというのか。M嬢は混乱するばかりだった。
男の声は続く。
「今は重大な任務の途中なので、もう切るぞ。よいな。ちゃんと110番するのだぞ」
再び切られた電話。
何度かけなおしても、いっこうに電話は通じなかった。
- 272 :青空町耳嚢 〜創作発表板五周年企画SS〜 ◆ftPUzYFINd55 :2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:QKyBoSbx.net
- しかし、M嬢はあきらめずにかけ続けた。
1時間ばかりして、ようやく電話がつながった。
「もしもし、私メリーさん」
「またおまえか」さっきの男のほうにつながった。「私は今、非常に機嫌が悪いのだ」
「あの子に負けたの?」
「くうぅ……頼むから、きいてくれるな」
なんだかかわいそうになったので、居場所だけ告げて電話をきる。
そして、すぐさまかける。
「なんだ? 私は疲れているのだ」
居場所を伝えてまたきる。そしてかける。
「いたずら電話ならよそでやりなさい」
きる。かける。
「もしかして私に会うために近づいてきてくれておるのか?」
きる。かける。
「電話って案外音が響くから、ほどほどにして欲しいのだが……人間どもにばれたらどうするつもりだ?」
妙なことを言ってるが、きる。かける。
「青空小学校の正門? すぐそこではないか」
きる。かける。
「教員室? ふむ。わざわざ来てくれたところを申し訳ないが、私もう疲れて限界」
きる。
これが最後の電話になるだろう。
M嬢は理科準備室の前に立って、最後のコールをした。
先ほどからずっとかけていた、準備室の内線電話が鳴りひびく。
「もしもし、私メリーさん」
「はいはい、おやすみなさーい」
「今あなたの……」
うしろにいるの、と準備室に飛び込んだM嬢。
だが、そこには人の姿はなく。
壁からはずれた内線電話がだらんと垂れ下がり、黒い暗幕のカーテンがゆらゆらとゆれているばかりだった。
そして、カーテンにこすられてカタカタと音を立てている人体骨格標本は、ちょうど成人男性ほどの背の高さだった。
この話はこれで終わりだが、他にもいたずら電話にまつわる話はいろいろある、とM嬢は言った。
もっと話をきかせくれないかとたずねると、電話の向こうでM嬢は笑った。
「いいわよ。今、あなたのマンションの前にいるの」
とりあえず、この話はこれとして編集部におくる。
だが、M嬢との対談次第では、青空町耳嚢以外に、一冊分ぐらいの特集が組めるかもしれない。
※編集部注
この話の担当はこのメールを編集部に送ったのを最後に行方不明となったため、この話に関する問い合わせには詳しく応じることができない旨をあからじめお詫びもうしあげます。
また、M嬢に関する情報をお持ちのかたは、編集部までご一報ください。
【終】
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【8/27】創作発表板五周年【50レス祭り】
詳細は↓の317あたりをごらんください。
【雑談】 スレを立てるまでもない相談・雑談スレ34
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