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ドリームチームが犯罪者を追い詰める...

1 :創る名無しに見る名無し:2011/01/01(土) 21:44:53 ID:s52/D/Sn.net
捕まる側の犯罪ドリームチーム(●ーシャンズシリーズ)があって何で捕まえる側にはないのか?
様々なジャンルのエキスパートがときには対立し、ときには協力して犯罪者を追い詰めても良いのではないでしょうか?

【概要】
 暗い過去を持つ元剃刀現在飲んだくれ捜査官、トラウマを持つ元敏腕スパイパー、人の心を読む「メンタリスト」、訳あって第一線から退いてたプロファイラー、
 変人の数学・物理学者、曲者ハッカー、死者の声が聞ける能力を持つ一般人‥どっかで聞いたことある設定の登場人物が集められ協力して犯人を追いつめる

【設定】
・舞台はFBIロサンゼルス支部

【注意】
・企画の性質上、登場人物が死亡する描写や、残酷な表現が含まれています。
・スルー検定9級実施中です。荒らしは華麗スルーしてください。それが紳士淑女の条件です。
・シェアードで進行します


472 :創る名無しに見る名無し:2012/05/05(土) 22:56:54.30 ID:s0k/0xfl.net
age

473 :創る名無しに見る名無し:2012/05/22(火) 09:06:00.84 ID:162fNhNm.net
ワロタww

474 :創る名無しに見る名無し:2012/05/22(火) 22:42:46.23 ID:jpK+0kM2.net
やっと規制が解けたか。
いや、長いまきぞえ規制だった。
おかげでネタを練れたけども。
465で書いた殺人方法に関する縛りは外そう。
それから私立探偵ボブ・ラインハートを使おう。
表のネタは「本当に殺人が起こっているのか判らない」。
裏のネタは……こっちは伏せとこう。
裏ネタの方で、犯人とラインハート、それからルイが繋がる形にする予定。
では、やっとこ再開。


475 :「殺人装置」:2012/05/22(火) 22:52:01.50 ID:jpK+0kM2.net
「いっやーー、喋る喋る。こっちゃ射撃練習しようってワザワザ朝早くっから出て来てんのに、撃つヒマなんてありゃしない」
今度はエミーの喋りが止まらない。
パソコンの向こうで笑って聞いているのは、クリストファー・ウィンフィールドとキャリー・グリーン。
ルイ同様やはり先日東部から赴任してきたケヴィン・レーマンは頭痛でもするのか、こめかみを押さえ顔を顰めている。
「そんでもってコイツが…」と言いながら、エミーはルイを顎でさした「……コイツが言うのよ。『この銃、サイトがぁ狂ってるよぉ。修理してもらわなきゃ』って」
ワザとフランス風を強調した発音に、エミーの悪意が感じられる……。
「でもさあぁ……」
打たれ強いタイプなのか、ルイは笑顔を絶やさない。
「どんだけちゃんと真ん中狙ってもさ、全部左下にいっちゃうんだからさぁ。これってやっぱり……」
「あんたアカデミーで何習ってたのよ」
エミーの攻撃は容赦ない。
「…いい?アンタの銃は、DAOなの!左下に着弾すんのはDAOだからなの!」
ダブル・アクション・オンリー(=DAO)と言わないところが意地悪だ。
どう?判る??判んないでしょー?と言いたいのだ。
しかしルイスは、軽く肩をそびやかせ、笑顔のグレードを一層アップさせた。
「お生憎様、僕だってFBIのエージェントだ。DAOの意味くらいちゃんと知ってるよ。
シングルアクションで撃てない、ダブルアクションでしか撃てない仕様の拳銃のことさ」
「だったらダブルアクションの銃のクセだってちゃんと知ってるわよね?」

ドイツ警察がH&K社のP2000V5を採用したとき、射撃教官は警官たちの射撃は、一様に標的の左下にずれる傾向を示していることに気がついた。
教官ら警察側は銃の欠陥を疑ったが…………原因は射手の側にあったのだ。
ダブルアクションの引き金は重いうえにストロークが長い。
その引き金を引く人差し指の動きは、右手の場合、銃を下げると同時に左にぶらす……。
普通のオートマチックピストルでは、初弾はダブルアクションで撃ったとしても、二発目からは引き金が軽くストロークも短いシングルアクションで撃つことになるから、着弾のズレは目立たない。
しかし、P2000V5はDAO、つまりダブルアクションのみでしか撃てない仕様だった……。

「も、もちろん知ってたさぁ!」
さらに微笑みをアップグレードさせエミーに対抗するルイ。
しかし意地悪くニヤッと笑ったエミーの顔には、「うそつけ!」と書いてある。
「ねえルイ、こんな話、ディミトリィに聞かれたらた、アンタ大変よ」
「ディミトリィだって?あの元HRTの問題児がいったいなんだって……」
ルイのつくり笑顔のグレードが頂点に達しかけたとき……。
ガ、ガタンとぎこちない音とともに、部屋のドアが開いた。
「おい、オレがどうしたって?」
ディミトリィが立っていた。
具合の悪そうな大柄の男性に脇から肩を貸し、必死にその体躯を支えながら。


476 :「殺人装置」:2012/05/22(火) 22:54:36.08 ID:jpK+0kM2.net
………
「いったいぜんたい、どうしたっていうんだ?」
クリスが皆に時計を掲げて見せた。
ディミトリィが運び込んだ男が、主任のベックマンと別室に篭り切りになってから、もうまもなく一時間になろうとしていた。
「ねえディミィ、ほんとにあの人、ハープに会いに来たの?」
多数のメモのせいでミノムシのような有様のパソコンの向こうでエミーが眉寄せると、こちらも眉を寄せディミトリィが応えた。
「ああ間違いない」

……
その朝オフイスに出てきたディミトリィは、フロックコートの後ろ姿が壁にもたれかかっているのに行き合った。
大きく上下するボロコートの肩。
その向こうに、がっくり折れた後頭部が見え隠れする。
『おいオッサン、どうかしたんか?具合でも悪りいんなら医者に……』
『い、いや…………大丈夫だ』
背中を向けたまま右手を挙げて男は答えた。
『いつものことだ。もう……慣れっこさ』
『だがよオッサン……あんまり大丈夫なようにゃ……』
『ありがとよ。だけど……医者じゃ直せねえんだ。この……病気は……』
男は、「病気」という語に奇妙なアクセントをつけた。
『医者じゃ直せない?……でもあんた……』
『この病気、直せるのは病院じゃねえんだ。直せるなぁ………さんだけなんだよ』
『ん!?オッサン、いま言ったんか?ハーパー?チャールズ・ハーパーって?FBIのか?』

「……病院呼ぼうとしたら副主任の名前をだしたもんだから、ここに運びこんだんだけどよ……」
ディミトリィは時計をチラ見して腕を組んだ。
「……でもディミィ」
貼り付けられた多数の何枚かが、剥がれて落ちる。
「ハープは今日、ヴァージニアよ」
「…忘れてたんだよ」
うるさそうにディミトリィが言い返す。
「でもー」
ここで素早くキャリーがクチバシを突っ込んだ。
「副主任がお医者さんだなんて、知りませんでしたねー」
「んなわけないでしょ」
言い返した拍子にまたパソコンから2〜3枚のメモが飛んだが、エミーは拾おうともしない。
「ハープが医者のわけないでしょ」
「でもあのオジサンはー…」
「だっから、『言葉のあや』ってヤツよ!ハープに病気なんて直せるわけ……」
そのとき、予期していたのとは違う廊下側の扉が開いて、ベックマン主任が入って来た。
「……案外そうでもないよ、エミー」


477 :「殺人装置」:2012/05/27(日) 00:07:41.15 ID:o3mWhtTP.net
 ベックマンの話によると、男はビルの裏手にある通用口から帰ったとのことだった。
「彼の名はボブ・ラインハート。私立探偵だ」
クリス・ウィンフィールドの目線が一瞬焦点を失い天井を彷徨うのに、エミーは気づいていた。
「私立探偵?…というと商売敵じゃないですか?」
笑顔でそう言ってからフランス野郎は「……僕はルイ・フィリップ・ブラン。ルイスって呼んでください」とそつなく言い足した。
「ああ、放ったらかしにして悪かったね。はるばるロスまでようこそ」
「いえ、気になさらないでください」
差し出されたベックマンの手を、ルイはいかにも儀礼的に握り返した。
「そうだな……それじゃ此処での仕事始めってことで、君にお願いしてみようかな?」
「……は?」


478 :「殺人装置」:2012/05/27(日) 00:09:28.67 ID:o3mWhtTP.net
「ってなわけでアンタが出るのは判るとして、なんでアタシまで付き合わなきゃいけないわけ?」
「仲が良さそうに見えたからじゃない?」
「……バカ言わないでよ」
ハンドルを握ったエミーがぼやく。
「マジメに答えるとさ、キミのキャリアが買われたってことだろ」
「……へえ、知ってるんだ」
「ああ、知ってるよ」
ルイはワザとらしく、窓の外に目をやった。
外は、ヴァージニアではめったにお目に描かれない、脳天気なほどのピーカンのバカっ晴れだ。
「……キミの得意は潜入捜査なんだろ」
エミーはこの出動のために、愛用のダボダボ・ズルズルの古ジャージから、すっきりしたグレイのスーツに着替えていた。
頭のてっぺんから足の先まで、どこからどう見てもまっとうな「働く女」だ。
「捜査関係者だって判んないように動かなきゃなんないから君が……」
助手席のルイも、下はそのままだがジャケットはありふれた吊るしのものに変えていた。
「判ってるわよ、今さらそんなことアンタに言われなくたって。でも……」
エミーがハンドルを切ると車は、規格品の家の立ち並ぶ、機能的だが無個性な町並みに入っていった。
第二次世界大戦後の都市部の急激な労働人口増加に対応するため建設された家々だ。
建てられた当時はそれなりに小奇麗だったのだろうが、今ではくたびれ、疲れ、衰退の色を隠せない。
「なにをどう動きゃいいのよ……事件があったのかどうかも判んないなんて」
そのときルイが驚き声をあげた。
「ありゃりゃ、なにこれ?この街にだけ大雨でも降ったってわけ?」
行く手の路地の真ん中に水たまり……というより、池が広がっていた。
水で遮断された路地の両側に、住民たちが何人も困り顔で並んでいる。
「排水溝が詰まってるみたいね」
道路の向こうを遠望する住民たちの様子から、すでに役所への連絡は済んでおり、担当の者が到着するのを待っているのだろうと、エミーは考えた。
「渡れる?」とルイ。
「ゴミ缶が浮いてないから深さはたいたことないわ。…行くわよ」
「…なるべくゆっくりな」
車は船のように「池」を押し渡り、その向こう側に上陸しすると、目指す家は、「池」のほとりに建っていた。
排気管からの浸水を気にしたルイが車体後部を覗きこんでいるうちに、エミーはさっさと目指す家の玄関ポーチに立ち呼び鈴に指をかけていた。
暫くすると、室内から引き摺るような足音がやってきて、やがてゆっくりとドアが開いた。
「…マッケインさんのお宅ですね」
ドアの隙間からひょっこり顔をのぞかせた老婦人に、ルイと喋っていたときとはうって変わった親しげな口調で、エミーは喋り出した。
「私、一時間ほど前にお電話さしあげました、アナハイム・アドヴァタイザー誌の記者で、アナ・ウォードです」


479 :「殺人装置」:2012/05/28(月) 23:39:25.82 ID:QlxfhwYl.net
「私たちの社では…この困難な時代にあたりまして、いわゆる偉人とか有名人ではない、普通のアメリカ人の生涯をとりあげていきたいと考えておりまして……」
インチキ記者「アナ・ウォード」こと、エミーの喋りは、立て板に水だった。
「……先日お亡くなりになられたご子息さまを、その一人に……」
台本があるわけでもない。入念に演技練習してきたわけでもないのに、エミーの喋りはあくまで自然だった。
(まるで女優だな……)
ルイにはエミーのわきでカメラを膝に置いて、ただ神妙にしていることしかできない。
「ご子息さまは、伝統的価値観の大きく揺らぐこの時代にあって、揺らぐことなく郷土防衛、具体的には州兵の募兵や新兵教育に力を尽くされ……」
(……いや、女優じゃないね。彼女は詐欺師だ)
心の中でルイは舌を巻いた。
『揺らぐことなく』という部分で老婦人の口元がかすかにほころんだのに気がついたからだ。
事務的な口調で信頼感をかもしつつ随所にくすぐりも散りばめながら、エミーは会って数分も経たないうちに相手の懐に入り込んでしまっていた。
老婦人はエミーの話にしきりに頷きを返し始めた。
(この女が結婚詐欺師にでもなったら手がつけられないね……)
ルイは視線をエミーの胸元へ……。
そのとき、窓の外にドロドロドロ…と低く震動するようなエンジン音がやって来た。
(ディーゼルエンジン……道路管理事務所の作業車がやっとご到着か)
ルイは再び注意を室内に振り向けた。
小奇麗に整えられた室内は、家を管理しているであろうこの婦人の性格を端的に著していた。
ただ、窓辺に置かれた鉢植えに花の咲きがらが目立つ。
最後にハサミが入ったのはざっと一週間前だろうと、ルイは推察した。
(一週間前……つまり彼女の一人息子が死んでから、一度もハサミが入れられていないということか)
鉢植えの横におかれた皿にもうっすら埃が積もっている。
その手前のテーブルにも埃。
位置のおかしな椅子。
一つだけ、ベルトに止まっていないカーテン。
室内を更に見渡せば、同じような気配は至るところに見受けられた。
そもそも目の前の「老」婦人は、本当のところはまだ老人と形容されるような年にはほど遠いはずなのだ。
(不意に訪れた「死」が、この女性にどれほどのダメージを追わせたのか……だが)
室内に「殺人」を連想させることがらは何一つない。
確かなことは、一週間前、あの鉢植えの置かれた窓辺で、この家の一人息子ジョゼフ・マッケインが死体で発見されたということだけだ。
エミーと婦人の話しを邪魔しないよう、そっと席を立つと、ルイは窓辺に歩み寄った。
(スナップドラゴンか、コイツの茎は折れやすい。近くで何か立ち回りがあって、コイツが無事なんてことは……)
そっと鉢を持ち上げると、その下には全く埃は積もっていない。
(……あとから動かされたってわけでもなさそうだな。…でこっちの皿にも埃か)
鉢植えと並んで置かれていたのは汚れ一つない真白な皿で、その上にも窓枠と同じく埃が積もっていた。

「うわあっ!なんだこりゃあ!?」

突然、ルイの立つ窓の外で、男の野太い悲鳴が上がった。
見ると、排水孔を調べていた男が、何か泥にまみれたバスタオルのようなものを、気持ち悪げに掴んでいる。
「くたばるんなら、どこか他でくたばりやがれ!」
道路管理事務所の男は、排水孔から引き摺りだしたものを、早くも水の退きはじめた歩道に投げ出した。
手荒な扱いに抗議するように、それから異臭が立ち上る。
排水孔を詰まらせ、住宅街に池を現出させたもの。
それは、一匹の猫の死骸だった。


480 :創る名無しに見る名無し:2012/05/28(月) 23:46:00.81 ID:QlxfhwYl.net
書き手注
「スナップドラゴン」というのは、和名「金魚草」のこと。
DAOピストルのときのように、本文中に説明を入れようかとも思ったが、和名の説明を本文でするのも妙だと思ったので止めた。
金魚草って普通に書いてもいいけど、それよりは「スナップドラゴン」と書いたほうが、それっぽいかな…というわけで。



481 :創る名無しに見る名無し:2012/05/30(水) 23:17:04.16 ID:bqXF1DFJ.net
ひと通り「取材」を終え車に戻るなり、「アナ・ウォード」はエイミー・ハワードに戻った。
「息子さんの死の状況に母親は打撃を受けてたけど、不審死だとは感じてないわ」
「ジョージ・マッケイン。1975年7月16日生まれ、37歳。白人。アイルランド系……」
ルイは車窓の外に目をやりながら、事務所で目を通してきた「被害者」のプロフィールをそらんじた。
「……ちょうど一週間前の午前11時30分ごろ、自宅で倒れているのを発見。場所は…さっきのあの部屋のあの窓辺だ」
「調べてなにかあった?」
「なにも」
「なにも?……ホントに?」
エミーは気がついていた。
さっきから、ルイは一度も彼女の胸元を見ていない!
「なんか気がついたんじゃないの?」
「………答え難いこと聞かないでくれないかな?」
ルイの言葉に、エミーは微かなザラつきを覚えた。
何か気になる。
何かを見た。
そんな気がする。
でもそれが何なのか、ルイ自身にも判らない……。
(ま、たいがいそんなとこね。ホントに男ってやつらは……)
エミーはフランス野郎を好きなだけ放置することにした。
(…でも、この野郎にオッパイを忘れさせるような「何か」って、なんなのかしら?)


482 :「殺人装置」:2012/05/30(水) 23:20:18.81 ID:bqXF1DFJ.net
「そっちはどうだったの?」
エミーとルイがオフィスに戻ると、先に戻っていたディミトリィがベックマンに調査結果を報告しているところだった。
「いま主任に報告してたところさ」
ベックマンとディミトリィの表情から、不審の点は何も浮かんでこなかったのだと察した。
「ジョージが倒れてると母親から電話がかかってきたとき、医師は、自殺を疑ったそうだ。
ジョージ・マッケインにはここ何年もノイローゼ気味で、最近は特に不眠が酷かったらしい」
エミーはディミトリィの言葉の中に、何か苛立ちのようなものを感じ取った。
「ノイローゼ?原因は??」
「彼は……ジョージは州兵の募兵業務に携わってきた。ところがどうもアフガンだかイラクだかで、彼の募兵した若い兵士が何人も立て続けに死んだらしい」
エミーは、ディミトリィにもイラクでの軍歴があったことを思い出した。
「親が離婚したり、勤め先を馘首になったりして、経済的に恵まれない……そんな家庭の子供の就職先の一つが、軍隊なんだ。
募兵官の中には、そういう貧しい家庭の子供を狙い撃ちするような奴だっているんだ」
エミーは以前知り合いに無理矢理進められて見たピーター・ジャクソン監督の映画を思い出した。
「募兵官たちは言うんだ。
軍隊にはいらないか?軍に入れば、他じゃ金を払わないと覚えられないようなスキルがただでゲットできる。
それどころか給料だって貰える。家族に仕送りだってできるぞ。
なんならそれを貯金して、除隊してから大学に入り直したっていいじゃないかってさ。
もちろん募兵の連中だって悪意があるわけじゃないぜ。大昔の人買いとは違うんだ。……けどよ、9.11で状況は全部変わっちまったんだ」



483 :「殺人装置」:2012/06/02(土) 23:54:09.78 ID:X0iVgDhu.net
 「…で、結論的にゃ、医師は死因に不審の点があるとは認めなかったのね?」
脱線しかかったディミトリィの説明を元に戻すため、エミーは強引に口を挟んだ。
「ああそうさ。医師は、倒れたとき負ったもの以外、遺体に外傷を認めてない」
「でも検死は?自宅で死んだんだから、検死が行なわれたはずよね?」
病院など医師の管理下において、医師が管理していた傷病で死んだ場合以外は<変死、または変死の疑いのある死体>として検死手続きが行われる。
自宅での死亡は、一般に医師の管理下にないので検死がなされるのが原則だ。
主治医は「自殺を疑った」くらいなので、予断をもってことに当たった可能性がある。
しかし検死官はニュートラルな頭で遺体に向き合ったはずだ。
「もちろん検死は行われた」
「…そっちでも何も出なかったっての?」
「……」
ディミトリィは黙ったままムッツリと首を縦に振った。
「じゃ…外傷が無かったっていうなら、毒殺は?」
「ジョージは死亡前12時間以上、家の外では何も食べてない。最後の食事が前の晩自宅でとった夕食だった。そんでもって作ったなぁジョージの母親さ」
エミーはつい一時間ほど前、インチキ取材を行った相手の顔を思い浮かべた。
まだ50半ばのはずなのに、疲れた老女としか見えなかった。
(まさかあの母親が……ダメ!ダメ!予断は禁物よ)
頭を切り替えると、エミーは更に突っ込んだ。
「胃の内容物は?胃に何か残ってなかった??」
「なんにもねえ。前日の夕食も、それから食後に飲んだはずの精神安定剤も、就寝前に飲んだと思われる導入剤も含めて、胃の中に未消化物は残ってなかった」
遺体に外傷が無く、胃にも何かを飲食した痕跡は残っていなかった。
そして生前のジョージは、不眠その他のノイローゼ症状でかなりの衰弱を示してもいた。
(それなら……医師や検死官が病死と判定するのも無理は無い)
ここにきてエミーも、ディミトリィがどこか不機嫌に見えるワケが判った。
(それじゃ……殺人なんかじゃないじゃないの?)
不機嫌そうな上目遣いでエミーを見返すディミトリィ。
一方、ルイは車に乗っていたときと同様皆に背を向けたまま、視線を窓の外にやっている。
エミーは視線をディミトリィからベックマンに移した。
「あの…主任、今回のこの捜査指示は、如何なる根拠に基づくものだったんでしょうか?」
「…………」
ベックマンはデスクの上で組み合わせた両掌に視線を落したまま、しばらく何も言わなかった。
「エミー、ルイ……」
視線を落したまま、ようやく口を開いたベックマン。
だが彼が口にしたのは、その場の誰一人として予想もしていない事柄についてだった。
「………捜査の過程で……箱とか檻とか……そんなものに思い当たらなかったかい?」


484 :「殺人装置」:2012/06/24(日) 23:27:47.73 ID:RumeWDp6.net
出来たばかりの新チーム、Wide range investigation unit(広域捜査班)。
だがその編成理由は「旅人事件」でのFBIの失敗を糊塗するためのマスコミ対策に過ぎなかった。
そしていま、急造チームの脆い結束に、早くもヒビが入りはじめていた。
たった一人の私立探偵の出現によって……。
チャールズ・ハーパーがヴァージニアから戻ってきたのは、ボブ・ラインハートが現れてから2日後のことだった。


485 :「殺人装置」:2012/06/25(月) 23:36:47.66 ID:gGJKvM/f.net
「あんたのせいよ!ハープ!!」
「だから、さっきから尋いてるじゃないか」
北米大陸を横断する長旅の翌日……。
コンピューターのディスプレイ越しに睨むエミーの前で、ハーパーはすっかり困り果てていた。
「……なんでオレのせいなんだ?」
「あんたを尋ねて客があったのよ。名前は……」
エミーはボブ・ラインハートの出現とそれに続く捜査の顛末を、一気呵成にまくしたてた。
「ボ、ボブ・ラインハート?彼がここに来たのか?」
「そうよ!」
エミーの視線がいっそう鋭さを増す。
「そのおかげで、たった三日でチームはバラバラよ!クリスがネットで調べたら、ボブ・ラインハートって心霊探偵じゃないの!」

心霊探偵とは、心霊現象も科学のうちに数えられていた19世紀の後半から20世紀の初めごろ出現した職業だ。
ジョゼフ・シェリダン・レファニュの生みだした「マルチン・ヘッセリウス」。
アルジャノン・ブラックウッドの「ジョン・サイレンス」。
それからホジスンの「カーナッキ」。
このあたりが創作ものの代表的な心霊探偵だろう。
現実の心霊探偵としてはオランダのジェラルド・クロワゼットなどがいる。
彼らは心霊能力、あるいは擬似科学を用いて犯罪捜査に当たるが、そのため世間の常識派からは常に胡散臭い目を向けられる存在だった。

「クリイが心霊探偵って言った途端よ。『付き合いきれねぇな』」とか、『ボクは迷信深くは無い方でね』とかみんな言い出して……」
「それでバラバラっていうのか…」
エミーに言われて気がついた。
室内を見渡すと……ディミトリにクリス、それから小鳥か小動物のようなキャリーの姿も見えない。
部屋に居るのはエミー。
それから空気清浄機の傍のデスクでしきりに鼻をかんでいるケビン・レーマンの二人だけだ。

「(たしか留守にしてるあいだにルイとかいうのも来てるはずだぞ……)デミトリィたち四人は何処行ったんだ?」
「あたしが知るわけないでしょ!それからね、ハープ。四人じゃないわ!五人よ!!主任のトムまでどっか行っちゃったんだから!」
「ト、トムもかぁ?!」


486 :「殺人装置」:2012/06/26(火) 23:31:56.28 ID:kM/nQXLT.net
「あら?あなたこのあいだもいらした……」
「はい…」と言いかけてルイは、エミーが新聞社名をなんと言ったかド忘れしていることに気がついた。
ルイ・フィリップ・ブランは、先日エミーと尋ねたマッケイン婦人宅を今度は単独で再訪していた。
理由は……無い。
「気になって仕方が無いから」などというのはもちろん理由とは呼べないだろう。
よくわからない衝動と丸二日間にわたり睨みあったあげく、ルイはついに屈服することにしたのだ。
「……えーと、ははは……」
しどろもどろの誤魔化し笑いを、マッケイン婦人は死んだジョージへの哀悼の意味だと勘違いしてくれたらしい。
「アナハイム・アドヴァタイザー誌の方でしたね。どうぞ…」
婦人はルイを家の中に招き入れてくれた。

「あの……えーとですね…」
思ったようには言葉が出てこない。
エミーのようには……。
「(えい!畜生!!)実はですね。今日またお訪ねしたワケはですね。あの、写真を…お亡くなりになられましたご子息の、ジョージさんの、人となりを表せるようなですね、そんな写真をですね、一枚か二枚……いや、あの……」
つたない言葉を少しでも補おうと、ルイは膝のカメラをちょいと持ち上げて見せた。
「……お写真をあの、撮らせていただけないかと、あの……」
「それでしたらどうぞ」
マッケイン婦人が背を向け歩きだした瞬間、ルイは素早く冷や汗を拭った。

 再び通されたジョージの部屋は、先日訪れたときと寸分違っていなかった。
(時が止まった部屋……か)
親しい者の死を受け止めきれない遺族にとって、死者に関する時は、死の瞬間をもって停止するのだ。
「では早速失礼いたしまして…」
過剰に丁寧な言い回しをしてしまい、また冷や汗をかきつつ、ルイは窓辺に立った。
スナップドラゴンの鉢植え、ブルーの柄のハサミ、汚れ一つない白い皿。
どれも先日エミーと訪問したときのままで、ただ皿にははっきり埃がつもり、花には咲きがらばかりになっていた。
(……そうだ、間違いない。きっとそうだ。窓辺の鉢植えを手入れしていたのは母親じゃない。きっとジョージだ)
ルイの脳裏にある光景が浮かんできた。
庭に面した窓。
ハサミを手にした男が、黙って花の咲きがらを摘み取っている。
ただし、男の顔はジョージではない……。
(母と二人きりのこの家で、鉢植えの花にハサミを入れながら、ジョージは何を考えていたんだ?)
窓の外には庭とは呼べない狭い土地。
窓から手を伸ばせば届く位置にフェンス。
フェンスの向こうの道路には、見ていろ限り殆ど車も通っておらず、背の曲がった老婆がカートを押して渡っていく。
そしてその後を追って、毛のまだらに抜けた貧相な犬が……。
(犬!)
ルイの瞳孔がクワッと広がった。


487 :「殺人装置」:2012/06/26(火) 23:34:57.89 ID:kM/nQXLT.net
(犬だ、犬……そうか!この皿は……)
ルイはカメラを埃の積もった皿に向けた。
(きっとそうだ!なんで気がつかなかったんだろう。この皿はミルク皿だ)
ルイは婦人の方を振返った。
「ジョージさんは、犬を飼ってられたんですね」
「…犬?」
老婦人はなぜそんなことを聞くのか?というように首をかしげた。
「うちは犬なんて飼ってませんけど」
「…飼ってない?」
改めてルイは室内を見回した。
フローリングの床に動物の爪のあとは無い。
家具の足やドアの隅にも、動物が体をこすり付けた形跡はなかった。
(……そうか、僕の思い違いか……)
ルイは窓辺の皿にもう一目線を戻した。
(考えてみれば場所もおかしい。犬のミルク皿なら床に置くはずだ。こんな所に置いちゃあ犬は………あっ!)
そして……次の瞬間ルイの頭の中に、エミーと訪問したとき見た、ある光景がフラッシュバックした!
「マッケイン婦人、ご子息は猫を飼われていませんでしたか?」
「猫も飼ってはいません。でも……」
「……でも?」
「近所の野良ネコに懐かれてましたわ」
「ミルクもやってられましたね?」
「……ええ、そんなこともあったと思います」
(やっぱりそうだ)
何気ない光景が、目にしたときとは全く違う色合いを帯びて蘇る……。

『くたばるんなら、どこか他でくたばりやがれ!』
道路管理事務所の男が排水孔から引き摺りだした猫の死骸!

(まさか、ジョージがミルクをやってたのが、あの死んだ猫なんじゃ!?)
礼の言葉もそこそこに、ルイは時の止まったマッケイン婦人宅を飛びだした。


488 :「殺人装置」:2012/07/01(日) 23:38:37.89 ID:lYFXx4Hh.net
 ダウンタウンのオンボロアパート。
ヒスパニック系の若者が数人、入口階段わきに所在投げにたむろしている。
その何人かが、アパートに近づいてくる白人男性の存在に気付いた。
ジロリと睨む目線が、白人男性のそれとぶつかったが、白人男性は躊躇うことなくやって来る。
ついに白人男性がアパート正面に辿り着いた瞬間、ヒスパニックの若者は視線を逸らし道を開けた。
「……ありがとう」
敵意を感じさせぬ白人の声に、ヒスパニックの男は肩をすくめて言った。
「ロスの守護天使に喧嘩売るほどオレはバカじゃないぜ。ハーパーの旦那」
「なんだ知ってるのか。……それじゃついでに教えてくれよ。ここにボブ・ラインハートっていう男が住んでると思うんだが……」
「探偵のオッサンかい?いるにゃいるけど、ここんとこ帰ってねえみたいだぜ」
「帰ってない?」
「一週間ばかり姿見てねえから……おいオマエら」ヒスパニックの男は仲間の方を振返って尋ねた「今週んなって探偵のおっさん見た奴いるか?」
ヒスパニックたちは肩をすくめるなり首をふるなり、めいめいのやり方で「見てねえよ」と答えた。
「そうか……ありがとう。まあダメもとで一応上がってみるよ」
「探偵のおっさんの部屋なら、四階の突き当りだぜ」

 ハーパーはアパートの階段を上がって行った。
外から見たときは「オンボロアパート」だと思ったが、中にはいってみると「廃屋」かと思った。
ペンキが残っている面積より、剥げている面積のほうが遥かに広い。
壁には何か所も亀裂が走り、なかにはナイフが突っ込めそうなほどのもある。
試しに壁のスイッチに指を延ばしてみたが、薄暗い天井の照明は消えたままだ。
明かりが点かないのも道理で、よくよく見れば電球が嵌っていなかった。
(こりゃ、人の住むところじゃないぞ)
階段を上がって行くほど「廃墟」指数は上昇し、ボブ・ラインハートの住むという最上階でMAXに達していた。
三階までは階段から短い廊下が伸び、そこから四つのドアが並ぶ構造になっていた。
しかしボブ・ラインハートの住む四階には廊下は無く、階段の突き当りにただ一つドアがあるだけだった。
建物の道路に面した側から壁が斜めになってドアに迫っているのは、実際には此処が屋根裏に当たることを示している。
廃屋同然のアパートの屋根裏。
カリフォルニアの陽光が天井を焼き、夏場は蒸し風呂のようになるだろう。
(こりゃ……酷いな)
私立探偵の生活を想像しつつドアをノックしようとしたとき……ハーパーの拳が止まった。
(ドアが……開いてる……)


489 :「殺人装置」:2012/07/02(月) 23:22:07.70 ID:hI5hVjWg.net
 私立探偵などという職業の人間が、玄関にカギをかけないなどということはあり得ない。
外の若者たちが教えてくれたように私立探偵が戻っていないのならば………。
(…侵入者?)
そっとノブに手をかけると、嫌な音を立ててドアが開く。
その一瞬、蝶番ごしに影が動くのが見えた!
ハーパーが室内に飛びこむと同時に、ガラスの割れる音がして部屋にワッと風が吹き込んできた。
風の来る方を見れば明かりとりの窓に割れたガラス。
そして窓枠の外に消える影のかけら!
(屋根に逃げたか!)
反射的に拳銃を抜き放ち窓に駈け寄ると外はアパートの裏手になっていて、タラップ状の粗末な避難梯子が壁に据え付けられていた。
そこを一段づつでなく、消防署にあるポールのように使って、男が一気に滑りおりていく。
「…待て!逃げるな!」
…が、ハーパーの誰何に止まるどころか、男は滑り下りるスピードを更に上げた。
避難梯子は地上まで5メートルほどを残した高さで途切れている。
地上まで降りるためには、伸縮式になっている部分を地上まで延ばさねばならない。
ところが男は、梯子を降りる速度を落とさないまま、最後の5メートルほどを一気に飛びおりた!
かなりの高さを飛びおりたにもかかわらず、すぐさま男は走り出す。
(くそっ!)
ハーパーは窓越しに拳銃を向けるが、男が裏路地を折れる方が一瞬だけ速かった。



490 :創る名無しに見る名無し:2012/07/10(火) 23:08:48.09 ID:BwylDNWX.net
此処まで書きすすめたところで思い出した。
確か「トリ」とかを付けてくれって言われたっけ?

ところでトリってどんな理由で付けるの?

491 :創る名無しに見る名無し:2012/07/11(水) 00:01:44.17 ID:7Gf0TB7V.net
>>490
本人確認、なりすまし防止のための表示みたいなもんかと
(トリップのキーとなる文字列は本人しか知らないため)

文字列見れば誰か分かるってことで、ペンネーム的意味もあるのかも

492 :創る名無しに見る名無し:2012/07/11(水) 19:51:04.35 ID:QGwRqDfl.net
なるほど、了解。
でも「キーとなる文字列は本人しかしらない」とは限らないぞ。
私なら必ず忘れるからすぐ「本人もしらない」状態になる。
ところで、なりすましが出て来るくらいなら、スレが賑わう可能性もあるからむしろ歓迎なんだけども。
なりすましが書いた以上の構成で奪還すりゃいいだけだし。
「旅する死神」のときみたいに、他人が書き易いよう構成を公開しといた方がいいかな?


493 :創る名無しに見る名無し:2012/07/11(水) 22:22:45.35 ID:7Gf0TB7V.net
ぶっちゃけこの板、過疎だからなりすましすら出てこないw
むしろペンネーム的意味のほうが強いのかも
なので、
>他人が書き易いよう構成を公開
お好きなようにどぞ

494 :創る名無しに見る名無し:2012/07/17(火) 03:01:15.49 ID:ddeIilvY.net
とにかく他の書き手の方々にも頑張ってほしいですし応援しています
自分も頑張るけど作品書かないと過疎になるってジレンマorz

495 :「殺人装置」:2012/07/20(金) 20:36:44.57 ID:V9Rvviz6.net
「MIB?…MIBって、あの…これですかー」
キャリー・グリーンは唇をブルブルいわせ、光線銃を撃つ真似をしてからとってつけたような笑顔を見せた。
キャリーとしては単なるウケ狙いのつもりだったのだが……。
「それよ。そのMIB。Men・In・Black」
「え?…………」
キャリーのお喋りが一瞬フリーズした。

Men・In・Blackというのは映画のタイトルではない。
UFO=未確認飛行物体の目撃者や研究者の前に現れ、行動を監視し、あるいは脅迫を含む様々な方法で圧力をかける謎の集団のことを、黒服を着ているとされることから「Men・In・Black」と呼ぶ。
その正体については「政府機関の人間」説や「宇宙人」説などあるが、いずれにせよ都市伝説上の存在を出でるものではない。

「………………………そ、それじゃあの探偵さん、宇宙人だったんですかー!?」
とんでもないことを口走るキャリー。
一方エミーは椅子の背に上体を投げ出すと、天井に向かって言い放った。
「んなわけないでしょ!」
背もたれに思い切り体を預けると、ガランとしたオフィスが逆さまに見えた。
何処に行ったのか、ケヴィン・レーマンの姿もいまは無い。
部室にいるのはエミーとキャリーの女二人だけだ。
(でも……どういうことなの??)
天井を見上げたエミーの眉間にも自然と皺がよる……。
クリストファー・ウィンフィールドの言った通り、「ボブ・ラインハート」で検索すると、彼の関与した殺人事件が幾つもヒットする。
その多くでラインハートは、「犯人でなければ知りえない事実」、もし真犯人が捕まらなければラインハート自身が真犯人として逮捕されかねないような事実を知っていたという。
では、そんな危険な知識を探偵はどうやって手に入れたのだろうか?
エミーの開いたいくつかのHPでは、ラインハートが死者との交信によってそれら事実を知ったのではないか?と仄めかしていた。
(それから、もひとつオマケに「MIB」……。いったいなんなのよ、あの探偵…)
「…………なになにー?えーと、『ラインハートの後を追うように、この男は現れた』」
声に気がつくと、キャリーが横からエミーのパソコンを勝手に覗きこんでいた。
「ある事件ではハミガキのセールスマン、またある事件では……」
「こら!人のパソコン、勝手に覗かないでよ!!」
エミーはキャリーを邪険に押し退けたが、短く舌先を見せる表情でキャリーは応じた。
「Hサイト見てたんでもないからいーでしょー?……ところでねえエミー。心霊探偵ってオカルトよねー。でもなんでオカルトにSFのMIBが出て来るのかなー?」
「そんなんアタシに判るわけないでしょ?それにネット情報ってのはね、ウソばっかしなんだから……」

「いや……それがまんざらウソってわけでもないみたいだ」

疲れた声に振返ると、ドアに手をかけクリストファー・ウィンフィールドが立っていた。


496 :「殺人装置」:2012/07/20(金) 20:39:13.56 ID:V9Rvviz6.net
振返ると、ドアに手をかけクリストファー・ウィンフィールドが立っていた。
「クリス!」
たちまちエミーが柳眉を逆立てる。
「昨日っからいままで、いったい何処ほっつき歩いてたのよ!」
「もちろん調査だよ。決まってんじゃない」
慣れぬ外仕事に疲れを隠せぬ様子で、クリスは自身のデスクに上着を投げた。
「エミー、キミが言ったようにネット情報はあてにならない。特にこの手のオカルトがらみのネタはね。それで……」
「それじゃあんた!まさかこの……」
「そのサイトで言ってる『Mem・In・Black』について調べに、事件のあった街まで行ってきたんだよ」
「えー!それでホントだったんですかー?MIBはー??」
好奇心剥き出しに身を乗り出すキャリー。
一方エミーは口元をキリリと結ぶと、催眠術でもかけようとするかのようにクリスの瞳をじっと見返した。
「ね、ねえねえ、ホントにいたんですかー??Men・In・Black!?」
……しかし、クリスが応えた相手は……。
「そうだよエミー。君の考えてるとおりだ」
「えっ!?えっ!?えーーーーっ!?」
キャリーにはなんのことだかサッパリ判らない。
だがクリスとエミーとの間ではそれでしっかり意思の疎通ができているらしい。
「君の考えてるとおりだなんて、エミーは何を考えてるってゆーんですかー?教えてくださーい!」
クリスは自分のデスクから立ちあがると、仲間外れ状態にムクれ顔のキャリーの頭を撫で、そしてゆっくりと最寄りの窓辺へと向かった。
「……エミーがいま考えていたのはこういうことさ」
明るい窓を背景に、クリスのシルエットが立った。
「ボクみたいなネット人間が進んでパソコンの前を離れて実地調査に出たのは何故かって」
語りはクリスに任せて当のエミーは何も言わないが、クリスの言葉が当たっているのはエミーの表情からも明らかだ。
「実はね、キャリー……」
思わせぶりにクリスは一度言葉を切った。
「……僕も見たんだよ。それらしい奴を」
「えーーーーーーっ!Men・In・Blackをー!?で、どんな奴だったんですかー!?」
「それがね、キャリー……」
返す言葉をクリスは濁した。
「……顔をうまく説明できないんだ。白人で配管工の服装だったのはたしかなんだけど………なにひとつ特徴の無い、記憶に残らない顔なんだ……」
「そ、そんな顔があるわけ……」
あるわけないでしょと言いかけて、キャリーも思い出した。
例のHPにも書いてあったのだ。
ラインハートの後をついて回るMIBについて「誰一人、どんな顔をしていたのか説明できない」と。
クリスは窓の方を向くと、アコーディオンカーテンの隙間から外を眺めた。
「ラインハートがここから帰ったすぐあとぐらいだよ。こんな風に窓から外を眺めたら……」
歩道の一画を指さして、クリスは言った。
「……あそこさ。車道を渡った向こうの歩道に男が立ってて、ここの窓をジッと見上げてたんだ。
服装は配管工さ。でも……顔は全然思い出せない……そんな男が蛇のような無表情さで、じっとこっちを見上げていたんだ」


497 :「殺人装置」:2012/07/26(木) 23:20:22.25 ID:W+KqFOdt.net
「……あ、あれ?ハーパーさん、いったい何時外に出たんですか?」
ヒスパニックの若者たちの目が丸くなった。
アパートに入って行ったはずのハーパーが、またも通りをやって来たからだ。
「ああ、ちょっと……」
「ひょっとして足とか引き摺ってます?」
「いろいろあってな……」
まさか「逃げた相手のマネをして非常階段から飛び降りたら、右くるぶし捻った」とは言えない。
「ところでキミたち、僕がここに上がってく前、誰かアパート住民以外の者が来なかったかい?」
「それなら……」
若者たちの中でひときわ年若い子供のような男が手を挙げた。
「ハーパーさんが来るより5分くらいまえ、配管直しのオッサン来たよ」
「顔は見たかい?」
答えには少し間があいた。
「見たと思うよ。思うんだけど……」
「……どうかしたのか?」
「白人だったってことしか思い出せないんだ。何故かな?」
ありがとうと短く礼を言い、ハーパーは再びラインハートの部屋へと上がって行った。
階段を一段上がるたび、痛めたくるぶしが泣きごとを漏らす。
(登りでこれなんだから、下りはどうなるんだ?)
暗澹たる思いに囚われながら、ハーパーは再び四階のドアを開いた。
実質屋根裏に過ぎない四階はドアも壁も実に薄っぺらな造りだった。
(僕が上がって来る音も丸聞えだったか……でもそれなら何故もっと早く逃げなかった?)
謎の配管工は、ハーパーがドア前ギリギリに来るまで、部屋に留まっていた。
窓から逃げるにしても、もっと早く逃げられたのにそうしなかった理由は……。
(……直前まで僕をラインハートと勘違いしていたから…つまり奴はここでラインハートを待ち伏せしていたんだ)
室内を見回すと、粗末な寝台の上に工具箱が放り投げてある。
蓋を開けてみると中は三段構造になっていて、上の二段には使い古しのスパナやプライヤーが奇麗に整理され並んでいる。
だが一番下の三段目の隅には、なにも置かれていない「L」型のスペースがあった。
(このサイズと形からすると銃か?)
しかしすぐにハーパーは、真昼間のしかも建物前に人の居る状況で拳銃を使うハズがないと考え直した。
(サプレッサーを収容するスペースは無いな。…ってことはテイザーか?)
テイザーとは、アメリカのTazer社製スタンガンのことだ。
通常のスタンガンとは違い、相手と距離をおいてワイヤー付きの針を飛ばし電流を流す。
さらに工具箱の中を調べると、ハーパーは一本のドライバーの柄が外れるようになっているのに気がついた。
(……これは)
外れたドライバーの柄の中は空洞で、中には短い針の付いたアンプルが収められていた。
(テイザーで抵抗を止め、薬で完全に動けなくするって寸法か……)


498 :「殺人装置」:2012/07/26(木) 23:21:56.45 ID:W+KqFOdt.net
 正体は判らないが、何物かがラインハートの身柄を拘束しようと狙っている。
証拠品として工具箱を手に階段を降りて行くと、覚えのあるヒスパニック系の若者が、ハーパーを待っていたらしく声をかけてきた。
「あのハーパーさん」
「ん?なんだい??」
「さっき言い忘れたんですけど、あの配管工が来るより三十分ぐらい前、もう一人男が来てるんです」
「もう一人?…いったいどんな奴だったんだい??」
「オレとおんなじヒスパニックで、背もオレとおんなじくらい。まるでボクサーか体操選手みたいな体格で……」
若者の描写によれば、「配管工より先に来たヒスパニック系の男」とは明らかにディミトリィだった。
(なんだ…奴もここに来てたのか)
予想できる展開だった。
ディミトリィ・ノラスコという男が、自身の関わった事件を途中で投げ出すハズがない。
彼もラインハートの行方を追っているのだ。
(……ってことは、少なくとも僕を入れて三人が、ラインハートを探してるってわけか)
ただハーパーと違ってディミトリィは「配管工」の存在を知らない。
ハーパーとの遭遇では、「配管工」は退いた。
(だが、ディミトリィと出くわしたときも、配管工が退く保証は無いか……)
ディミトリィについて知らせてくれた若者と別れると、ハーパーはすぐさま携帯をとりだした。
(気をつけろよ!ディミトリィ……)
登録済みの番号を呼び出す………しかし、携帯から流れ出たのは、ディミトリィの声ではなかった。

『おかけになった番号は、電波の届かないところにあるか……』


499 :創る名無しに見る名無し:2012/08/11(土) 16:09:11.14 ID:i8u2IRqx.net
支援

500 :「殺人装置」:2012/08/15(水) 23:45:02.13 ID:84c1kmpO.net
 「だから、連絡とりようが無いんだってば!」
大声でそう言うと、エミーは携帯をへし折るように切った。
「どうしたんだエミー?今のは社長からだろ?何をそんなに……」
クリストファー・ウィンフィールドはハーパーを「ハーパーさん」とか「副主任」ではなく「社長」と呼ぶ。
同じくベックマンのことは「大統領」だ。
「ディミトリィと連絡とりたいっていうのよ。自分の携帯からかけたら繋がんないってんだけど、そっちで繋がんないなら、こっちだって繋がるわけないじゃないの!」
「私……探しにいこうカナ?」
キャリーがそう言うと、両手でデスクを叩きエミーが立ちあがった。
「無茶言わないでよね!ロスは広いのよ!あんた一人バタバタしたって……」
「まあまあエミー」
エミーの剣幕に、素早くクリスが口を挟んだ。
「……ところで社長は、なんでディミトリィと連絡とりたがってたんだい?」
「それがね、あんたが言うMIBらしき奴が出たみたいなのよ!」
「な、なんだって!?」
今度はクリスが飛び上がった。
「MIBが現れたってのかい?ラインハルトの回りに!?」
「そうよ!それも配管工のカッコしてるんだって」
エミーはハーパーから聞いたあらましを、クリスとキャリーに手短に話してきかせた。
「…ということは、その配管工、MIBはラインハルトの身柄を拘束しようとしてるのか」
「ハープの報告だとそういうことになるわね」
うーんと唸ってクリスは再びパソコン前に腰を下ろした。
「つまりクリス、このロスの街で、ディミトリィとハープ、それからMIBがラインハルトを探し回ってるってわけよ」
「なんてこった。それじゃ一刻も早くラインハルトを……」
「わ、わたしやっぱり探しに行ってきます!」
「あ!こら待て!!」
飛び出しかけたキャリーの腕を、間一髪クリスは捕まえることができた。
「さっきエミーにも言われたろ?きみ一人で探せるような街じゃないんだ。LAPD(ロス市警)に協力を求めないと……」
「それがクリス…」
パソコンの向こうでエミーが顔を横に振った。
「…ダメなのよ」
「ダメ?……LAPDに応援もとめちゃダメだっていうのか?そんなこと一体誰が……」
ぶっきらぼうにエミーがメモを差し出した。
「……主任のデスクに貼り付けてあったの」
メモの内容は、全般には簡単な事務連絡の羅列だったが、機械打ちの文字列の最後に、一行だけ手書きで指示が追加になっていた。
「……『ラインハルトの件については、部外秘とすること。マスコミのみならず、ロス市警その他の官憲に対しても、ラインハルトの件は絶対に漏らしてはならない』……つまり主任の命令でLAPDの応援を求めるわけには………………クリス?……どうしたの??」
いぶかしむエミーとキャリーの前で、クリストファー・ウィンフィールドは口をポカンと開け、視線を空に彷徨わせていた。
「ねえクリス!いったいどうしたって……」
「まさか……」
クリスの口から呟きが漏れた。
「まさか……まさか僕の想像が当たっているなんてことは……」


501 :「殺人装置」:2012/08/18(土) 13:09:06.75 ID:eUv6gHLh.net
 (畜生……いったいどこのどいつなんだ?)
じりじり照りつける西日を避け、私立探偵ボブ・ラインハートはビルの影に身を潜めてじっと耳をすましていた。
ノッキング音にクラクション、それから怒鳴り声と足早に駈ける靴音。
表通りでは事故でもあったようだ。
ロスの街は変わらぬ喧騒に包まれている。
しかしラインハートが耳傾けるのは、そうしたものとは別の「音」だった。
巻貝に耳をあてると聞えて来るような……。
あるいは一日の放送を終えたテレビに映る砂の嵐のような……。
私立探偵が必死に耳を澄ましていたのは、そんなノイズだった。
……ラインハート……ボブ・ラインハート……
ノイズの中に探偵は、たしかに自分の名前を聞いたと感じた。
「畜生……」
ビルの壁に手を突き飛ばすようにして、ラインハートはヨロヨロ歩きだした。
「いいかげん、放っといてくれよ……」
足元がふらつくのは、ほぼ丸二日何も食べていないからだが、空腹は感じていない。
それより始末が悪いのは……。
「うっ……」
呻き声を漏らし、探偵は左手を頭にあてた。
こめかみが痛い。
頭にはジャミングがかかっているようで、思考がまとまり難くなっている。
(ダメだ!考えるんだ!なんとか考えるんだ!……)
探偵は全意思力を動員し、必死に考えようとした。
逃げる方法を。
二日前、探偵ははっきり知ったのだ。
「それ」がやって来たことを。
「それ」は、ノイズの海に現れた、あるはずのない小さな黒点だった。


502 :創る名無しに見る名無し:2012/08/22(水) 03:25:44.81 ID:YFpX+C4L.net
支援

503 :創る名無しに見る名無し:2012/09/12(水) 23:17:10.63 ID:68ZiILEk.net


504 :創る名無しに見る名無し:2012/10/10(水) 02:47:17.87 ID:DfboWcbE.net
誰もいないな…続き楽しみです

505 :創る名無しに見る名無し:2013/01/06(日) 16:25:23.91 ID:TKw+L2Mr.net
sage

506 :創る名無しに見る名無し:2013/01/28(月) 02:01:37.99 ID:KITOY0A4.net
誰も来ない

507 :創る名無しに見る名無し:2013/02/02(土) 18:38:50.57 ID:yBsnS7/R.net
……やっと規制が解除された。
まいったまいった。
なに書こうとしてたかなんて、すっかり忘れたぞ。
この手の長いのを書くのに適した場所じゃないね。

508 :創る名無しに見る名無し:2013/02/08(金) 23:39:10.29 ID:Lj8er8gD.net
単なる巻き添えなのか、それともこんな長文を連続投下してたからなのか?
半年におよぶ規制とは驚いた。
中途で投げ出すのは嫌だが、再起動させるのも結構大変。
……というわけで、「殺人装置」再起動の準備として、駄文の粗々構成を投下してみる。
その上で、完成させる意味があると思えば、再起動させるか……。

509 :創る名無しに見る名無し:2013/02/08(金) 23:42:06.57 ID:Lj8er8gD.net
「殺人装置」はルイとラインハートの顔見せ編。

ルイのキャラ設定には一つ矛盾がある。
エリート警察一家の出であれば、爆発物処理には普通いかない。
現場に出る時期を早々に通り抜けさっさと管理職になるのが普通で、通過する現場も大抵は汚職等の公務員犯罪だ。
じゃあ何故ルイは「爆発物処理」に配属されていたのか?←これを「ルイ本人が強く希望したから」ということにして駄文の構成に組みこんでしまう。

ラインハートは……米ソ冷戦のころ国家機関の造った「人間ラジオ」と設定。
少年時代、破壊活動やスパイ行為をESP的にキャッチできる人間を作り出す実験にモルモットとして参加。
驚異的な成果を上げるが、投与された薬剤の副作用?で生死の境を彷徨い、そこから生還できたときには力の大半を失っていた。
しかし完全に力を喪失しているわけでもなく、周囲の人の心をノイズとして感知。
また強烈な犯罪者人格に接触すると、ノイズを超えたフラッシュバックとして映像的にそれを感知することができる。

MIB
ラインハートには一部の力が残っているため国家機関の継続的監視下に置かれている。その監視役がMIBと呼ばれる男。
「人間ラジオ」計画の一環として、人間ラジオの対抗兵器として造られており、ラインハートにも存在をキャッチされない。
しかしラインハートは、彼の心にノイズを発生させない存在「群衆の中に開いた真っ黒な穴」としてMIBを消極的に感知することはできる。

ラインハートとMIBの関係を、ベックマンは知っている(何故知っているのかは不明とする)。
ベックマンがMIBを退かせラインハートの身柄を確保。
部下のベックマンに対する信頼が回復。
改めてラインハートから語られる「箱」のビジョン。
だが、それとジョージ・マッケインの死がどう結び付くのか??
……そのとき、悪臭ふんぷんたるありさまで事務所にルイが戻ってくる。

ジョージは窓辺で近所の野良猫にミルクをやっていた。
ルイとエミーがマッケイン家を訪れたとき、下水を詰まらせていた猫の死骸こそ、ジョージが餌付けした野良猫だ!
そう考えたルイは、清掃局まで行ってゴミの山の中からネコの死骸を探し当てたのだ。
ネコの死骸は直ちに「変人医者」ロレンゾのもとに持ち込まれる。
「知らないらしいので言っておくが、僕は獣医じゃないぞ」
文句たらたらの医師は、ネコの死骸から何を見出すのか?

510 :創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 23:14:18.96 ID:weIwfZt4.net
サンベルト・ロレンツォはネコの死因を呼吸停止と判定する。
「呼吸停止ってことは窒息死ですねー?…なぁんだ、心筋梗塞じゃないのかー」
「ジョージ・マッケインとは死因が違うってわけね。それじゃ二つの死は全く無関係……」
「まってくれみんな」
ベックマンが皆を制して言った。
「……よく聞くんだ。先生は呼吸停止と言ったんだ。窒息じゃないぞ」
「ドクター・ロレンゾがおっしゃられるには……」ソフィア・プリスキンの口調はあくまで冷静だ。
「……ロレンツォ」医師が合の手のように訂正を入れる。
「……心臓に梗塞の痕跡は見られないそうです」ソフィアはとりあわない。

ロレンツォによると猫に首を絞められた等の痕跡は見られなかったという。
気管に何かを詰まられたものでもなかった。

「そうなると他に生物を窒息死させる方法は鼻と口を何かで塞ぐとか……」
「いや、その方法だと猫は激しく抵抗するだろ?もっと瞬間的に呼吸を停止させる方法じゃないとダメだよ」
「するってぇと他の方法は……」
「そこでだ………」
おもむろに切り出すと、ロレンツォはどこからか小さな空のガラスビンを取り出した。
「……これがその方法のヒントになるんじゃないかな?」
「その空ビンがなにか?……………ん?いまなにか!?」
ハーパーが、医師から受け取ったガラスビンを何気に天井の照明に透かしたとき、空と思えたビンの中でなにかが小さく光ったのだ。
「針だよ」
短く医師が言うと、皆の視線は医師とビンとのあいだを忙しなく行き来した。
「ネコの毛の中で見つけたんだ。材質は専門外なんで断定できないが、グラスファイバーみたいなものじゃないかと思う」

511 :創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 23:17:08.27 ID:weIwfZt4.net
医師サンベルト・ロレンツォが猫の死骸から発見したのは、長さ1pにも満たない短い針だった。
「針、それから速攻の呼吸停止ときたら………皆はどう思う??」
「神経毒!」
即座にクリスが応じた。
神経毒とは神経の伝達ニューロンに作用し、筋肉を弛緩あるいは緊張が継続する状態にする毒素のことだ。
軽度であれば麻痺に留まるが、重度であれば心筋や呼吸筋に作用し、人を死に追いやる効果を発揮する。
「神経毒といえば毒蛇ですねー!例えばコブラとかー」
「いや、あの手のヤツラの毒は呼吸停止じゃなく心停止が普通だね。それに致死量もそこそこ多い」
「そっかー、こんなちっちゃな針じゃムリっぽいですねー。この針から何か検出されなかったんですかー?」
「……いや、何も」
キャリーに向かってロレンツォが顔を横にふる。
「何か付いてたとしても下水に洗い流されてしまったんだろうね」
「あのちょっと…」
そのとき、口ぐちに喋りだした皆の顔色を窺いながら、遠慮勝ちにルイが口を挟んだ。
「…盛り上がってるトコ悪いんだけど、こんな小さくて軽い針をどうやって被害者に刺すっての?」
「確かに軽すぎるわね。こんだけ軽いと……」
飛翔体が軽いと空気抵抗によりあっという間に失速するのだ。
「……吹き矢かなんかで飛ばしたって飛距離は2メートルもいかないわ」
「かといって手で持って刺せる大きさでもないよな」
デミトリィが腕組みし首をかしげる。
事件は再び暗礁に乗り上げた……かに見えたが。
それまで黙って皆の意見を聞いていたベックマンがおもむろに口を開いた。
「壊れたラジオであるラインハートにキャッチできるのは、強烈な指向性を持つ犯意だけだ。そしてそういう犯意は、単一の犯罪で終わるケースはまずない。クリス……」
ベックマンが具体的な指示を出すより先に、クリイトファー・ウィンフィールドの指はキーボードの上で踊っていた。
「同種の事案があるかどうかですね。ちょっと待ってください」

512 :創る名無しに見る名無し:2016/06/24(金) 23:55:40.98 ID:+fPv1AFf.net
支援

513 :創る名無しに見る名無し:2016/07/18(月) 15:10:15.70 ID:228ClokJ.net
夢があるよなこれ

514 :創る名無しに見る名無し:2017/04/26(水) 02:55:07.74 ID:KrAPzWt0.net
おもむろに「カクタスマン」とか。

http://ja.scp-wiki.net/scp-2800

もちろんこの世界に“財団”はないので、単にサボテンの遺伝子を持つ突然変異の人物。ただしヒーロー気取り。
ドリームチームが積極的に逮捕する必要のあるようなことはしないけど、うざい。
時々思い出したように出てきて、邪魔したり意外なヒントをくれたりする。

515 :創る名無しに見る名無し:2017/07/10(月) 04:36:18.38 ID:ugHrL6M5.net
☆ 日本人の婚姻数と出生数を増やしましょう。そのためには、☆
@ 公的年金と生活保護を段階的に廃止して、満18歳以上の日本人に、
ベーシックインカムの導入は必須です。月額約60000円位ならば、廃止すれば
財源的には可能です。ベーシックインカム、でぜひググってみてください。
A 人工子宮は、既に完成しています。独身でも自分の赤ちゃんが欲しい方々へ。
人工子宮、でぜひググってみてください。日本のために、お願い致します。☆☆

516 :創る名無しに見る名無し:2017/12/27(水) 10:25:27.33 ID:C1Z7QFDy.net
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

8S7VZDZ83B

517 :創る名無しに見る名無し:2018/05/21(月) 08:43:22.09 ID:tRZnwP6O.net
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

B0DS2

518 :創る名無しに見る名無し:2018/07/03(火) 19:13:32.28 ID:f1dClnnX.net
GXE

519 :創る名無しに見る名無し:2018/07/05(木) 21:23:11.13 ID:m0aPx8iX.net
「アメリカン・アサシン」みたいなライバルチームとか。

520 :創る名無しに見る名無し:2018/10/17(水) 15:39:16.68 ID:ZU7x6aHX.net
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

JU3

521 :名戸ヶ谷病院:2022/07/18(月) 13:19:02.51 ID:qMYniNku5
時間外手当未払いで看護師16名が名戸ヶ谷病院を提訴(千葉県柏市)

 時間外に遅くまで勤務を強要された上に時間外手当が支払われないのは労働基準法に違反するとして、
看護師16名が社会医療法人社団蛍水会名戸ヶ谷病院に対し、総額1850万円の支払いを求める訴訟を松戸地裁に起こした。
 訴状などによると名戸ヶ谷病院では看護師の勤務時間が長く、平均して21時以降でないと自宅に帰れず、
研修等に自分の休日を使って強制的に出席させられるなど過酷な勤務状況であるにも関わらず、
時間外手当は支給されていなかった。
 山崎研一専務理事は「我々は正規に賃金を支払っている。金目当ての訴訟に対しては徹底的に争う」とコメント。
         (2022年6月18日 毎日新聞)

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