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THE IDOLM@STER アイドルマスター part8

1 :創る名無しに見る名無し:2012/05/20(日) 21:05:13.00 ID:NrondMdg.net
アイドル育成シミュレーションゲーム「アイドルマスター」の創作発表スレです。
○基本的になんでもありな感じで。SSでなくてもOKです。
○原作ワールドが多岐にわたっています。「無印ベース」「アイマス2世界」、
 「漫画Relations設定」「シンデレラガールズ」などと前置きがあると親切。
○エロ/百合/グロは専用スレがあります。そちらへどうぞ。
○「鬱展開」「春閣下」「961美希」「ジュピター」などのデリケートな題材は、
 可能な限り事前に提示しましょう。
○クロスSSも合流中ですが、同様になるべく注意書きをお願いします。




前スレ
THE IDOLM@STER アイドルマスター part7
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1316595000/


過去スレ
THE IDOLM@STER アイドルマスター part6
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1286371943/


THE IDOLM@STER アイドルマスター part5 (dat落ち)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1270993757/


THE IDOLM@STER アイドルマスター part4
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1257120948/


THE IDOLM@STER アイドルマスター part3
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1246267539/


THE IDOLM@STER アイドルマスター part2
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1241275941/


THE IDOLM@STER アイドルマスター
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221366384/


アイドルマスタークロスSSスレ
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1228997816/




まとめサイト
THE IDOLM@STER 創作発表まとめWiki
ttp://www43.atwiki.jp/imassousaku


202 :創る名無しに見る名無し:2014/12/02(火) 15:40:41.72 ID:G18n2ui3.net
よつば「はるかも、ただおどってうたえばいい それがいい」

春香「…」

よつば「はるか、げんきないな?よし、よつばのとっておきをやろう」ゴソゴソ

春香「?」

よつば「はい!」

春香「…リボン?」

よつば「このリボンはすごいぞ かっこいいとらがかわいくなった あさぎもいってたから、まちがいない!」

よつば「だから、はるかもこれをつけて もっとかわいくなるといい!」


よつば「あ!いまなんじ?」

春香「え?今、三時過ぎだけど…」

よつば「さんじなってる?とーちゃんしごとおわった?!」

春香「え?え?」

とーちゃん「よつばー!」

よつば「あ!とーちゃんだ!とーちゃーん!」

とーちゃん「お前、こんなとこにいたのか。おばちゃんすごく困ってたぞ。ほら、謝りにいくぞ」

よつば「とーちゃん、はるかだよ! よつばといっしょにおどってくれたー」

春香「よつばちゃんのお父さんですか?すみません、私が連れ出したんです」

とーちゃん「あ、いやむしろ見ていてくださったようで助かりました。こいつ、よく勝手にどっか行くもんで。なにかご迷惑を…」

春香「いえ、とんでもないです。それに、助けてもらったのは私の方ですから」

とーちゃん「?」

春香「よつばちゃん、ありがとう!いろんな人に上手だねって言われるように、私ガンバるから!」

よつば「おー!ガンバれー!」

203 :創る名無しに見る名無し:2014/12/02(火) 15:41:34.26 ID:G18n2ui3.net
…しばらく経ち

― 小岩井家

TV♪追いかけて 逃げるふりをして そっと潜る私マーメイド

ジャンボ「やっぱ、はるるん可愛いよなー」

とーちゃん「はるるん?」

ジャンボ「天海春香。知らねーのかよ、大人気のトップアイドルを」

とーちゃん「知らん。つかお前、この前はしんかんナントカがいいとか言ってなかったっけ」

よつば「♪あたしまーめ」

ジャンボ「お、よつばもはるるん好きか。それに引きかえ、とーちゃんはダメだなー!」

よつば「なー!とーちゃんはダメだー!」

とーちゃん「…」

end

204 :創る名無しに見る名無し:2014/12/02(火) 15:42:03.37 ID:G18n2ui3.net
以上です

ご意見ご感想お待ちしてます

205 :メグレス ◆gjBWM0nMpY :2014/12/20(土) 02:04:24.61 ID:eri9ab3b.net
あーテステスお久しぶりです。
ちょっと短いの投下します。
アイマスシリーズも色々増えてきたのでここらで全部ぶちこんだのを書いてみようかなと。
軽く読める短いのを書いてみました。

206 :混ぜm@sその1:2014/12/20(土) 02:08:02.03 ID:eri9ab3b.net
事務所に入ったらカエルの着ぐるみが踊っとった。しかもニ体仲良く。
やたらと楽しそうにしとるけど表情が無いのでちょっと怖い。
動きそのものは達者と言ってもええレベルやけど一言も発しないために中身がだれだかさっぱり見当がつかない。
というかさして広くもない事務所の仲で踊るな。
いや確かに視界の狭い着ぐるみのまま備品や家具に一切触れずに踊りきるその実力は大したものだとは思うけどなあ。

あ、動きが止まった。
ピシ
ガシ
グッグッ
(ジョジョ三部のアレ)
意気投合したみたい。
あ、アカン目が合うてしもうた。
当然近づいてくるわな。中身が泥棒やったりしたらどないしよ。

片っぽのカエルが頭を外して中から出てきたのは……
「貴音さん!?」
765プロの先輩四条貴音さん。この人やったらまあ納得できてしまう。なんでかは自分でもようわからんけど。
じゃあもう片方は響さんやろか。亜美真美ちゃんやとちっとばかり背が足りひんもんなぁ。
ほんで出てきたのは……
「誰!?」
いや私の記憶にないでこんな顔、こんな言うたら失礼やけど。
どっちかっていうと可愛い系のめっちゃ美形の顔と金髪碧眼にボブカット、肌も白い。
明らかにこの国の人や無い。ていうか、
「男やないですか!?」
一応ここは年頃の女の子が集まる765の事務所や。そこに謎の男の人とかちょっと考えてしまう。
けどもそこはやっぱり貴音さんやった。動じた様子も無く手を差し出す。
「初めまして。私は四条貴音と申します」
ちょお待った貴音さん、初めましてって相手の事何も知らんと一緒に事務所の中で踊とったんですか。
「ボクはピエールだよー」
着ぐるみの手が固い握手を交わす。うわぁ……めっさシュールや……
ようやく名前の判明したピエールさんは未だに着ぐるみを脱ごうとしない。
もしかしてあの下は裸やなかろうか。あかん一瞬想像してしもた。
「すいませんけどその着ぐるみ脱いでもらってええですか?」
「いいよー」
ああよかったちゃんと服着とった。いや普通の服やなくまるでお話の中の王子様が着るようなのやったけど全裸よりはよっぽどマシやからこの際気にせえへん。
てゆうかよく見たら多分ステージ衣装や。ステージ衣装着たまんま着ぐるみに入っとったんか。勇気あるなぁ……

207 :混ぜm@sその1:2014/12/20(土) 02:09:46.41 ID:eri9ab3b.net
しかしどこから聞いたものかなぁ。どうやって知り合ったんとか、何で踊っとったんとか、
色々気になることが多過ぎて逆に何から聞いたものかさっぱりわからへん。
ポン、と肩に手が置かれる。貴音さんがめっちゃ悟った顔でこっちを見とる。
「奈緒。よいではありませんか」
「アッハイ」
どうせ聞いたところでわかるはずもないし。そんなわけで現実逃避バンザイ。

「さてピエール。お近づきの印に何か共に食べようではありませんか。何か所望の物はありますか?」
「コナモノ!」
即答かい。しかもその王子様みたいな面で粉モノて。
粉モノってあれやろか。お好み焼きとかその類の。
あ、なんか嫌な予感してきた。
貴音さんがじーっとこっちを見てる。
ついでに隣のピエールさんもこっちを見てる。めっちゃワクワクした顔で。
いや確かに私はこっちに来る時家からたこ焼き用の分厚い鉄板を持ってきたけど。
ちょっと前にここで披露してそのまま置きっぱなしになってるのがあるけど。
作れとおっしゃいますか。
今この場で。

参ったなぁ。あーこれはNOとは言えんわ。
「わかりました。不肖ながらこの横山奈緒、精魂込めてたこ焼き作らして貰います」
よっぽど嬉しいのか二人で踊りだした。
そこまで喜んでもらえるならこっちも手ぇ抜いたのは作れんわな。
どうせそのうち他のメンツも帰ってくるだろうし、久しぶりに関西人の誇り見せつけてやろうじゃないですか。

208 :創る名無しに見る名無し:2014/12/20(土) 02:13:43.18 ID:eri9ab3b.net
以上投下終了。
てなわけで765の四条貴音さんとミリオンの横山奈緒さん、
そしてsideMのピエールさんでした。
これからこんな感じで軽いのをちょくちょく投下していけたらなと思ってますのでコンゴトモヨロシク
>>204 ようこそいらっしゃいませ。肩の力抜けてて良い感じですね。
よろしければこれからもよろしくお願いします。
それではこれにて失礼。

209 :メグレス ◆gjBWM0nMpY :2014/12/31(水) 14:53:13.73 ID:5OI/qDnw.net
あーテステス。また来ました。
今回も気軽なごちゃ混ぜシリーズです。

210 :混ぜm@sその2:2014/12/31(水) 14:55:43.50 ID:5OI/qDnw.net
その惨状を目にした瞬間に木場真奈美は己に課せられた使命をはっきりと理解した。
すなわち、この音楽以外の能力が欠如した集団に数日間人間らしい生活を行わせること。
目の前にはグランドピアノと適当に毛布を敷いただけの床に着の身着のままで眠りこけている数名の男女。
文字だけならばもしかしたら色気の欠片も期待するかもしれないがその様なものは一片たりとて存在しないことを木場はよく知っている。
カーテンを全開にすれば既に日は頂点へとさしかかる頃であるにもかかわらず誰一人として全くこれっぽちも起きる気配が無いのが木場の推測を裏付けている。
どれ、と気を取り直し大きく息を吸い込むと、
「総員起床!!」
と叫んだ。
元々ボーカルトレーナーの予定で帰国した木場である。
その恵まれた体躯と常人離れした肺活量をフルに使用した声は文字通り空間そのものを震わせ全員の目を強制的に覚ますことに成功した。
飛び起きる者、のろのろと体を動かす者、この後に及んで寝っころがったまま視線だけを向ける者と反応は様々だ。
「お早う諸君。目は覚めたかな?」
「「あ゛〜〜い」」
とりあえず声を出しただけというのが丸わかりの合唱が帰ってきた。
およそアイドルが出していい声ではなかったがこの程度いちいち気にしない。



事の発端は誰だったか。
確か如月千早がたまには音楽に集中したいと言い出したのが始まりだったように思う。
続いて同事務所に所属する最上静香が便乗し、他に誰か候補はいないのかとプロデューサーが聞いたところ、
両親をクラシック奏者に持つ梅木音葉、
海外で既にプロとして活動していた木場真奈美、
幼少よりヴァイオリン一筋で何の因果かこの業界に入ってきた神楽麗、
現代アマデウスとも呼ばれる都築圭の名を挙げ、
駄目で元々と連絡を取ってみたところ奇跡的な確率でスケジュールの空きが合致しこの合宿が実現したという事である。
街より少し離れた合宿所を手配した時点で男女を一所に押し込めて何か間違いがあったらどうするという意見も無いではなかったが、都築と神楽両名を実際に見た瞬間に周囲のその疑念は払拭された。
大丈夫だ。こいつらならばありえないとその場に居た全員が確信したのは本人達の名誉のために伏せておく。 
ところがいざ出発となった段階で木場に急な仕事が入り一人だけ遅れての参加となってしまった。
その間木場の頭の片隅には不安が残っていた。
最初に述べたように男女のどうこうではない。
問題はわずか一日の間とて彼女らが人間らしい生活をしているかどうかである。
音楽に限らず何か一つの才に恵まれた人間というのはえてして日常生活を送る普通の能力に乏しいところがある。
久々の音楽に没頭できる環境に文字通り寝食を忘れたりしてはいないだろうかという不安だ。
何度も繰り返すが彼女達はアイドルである。下手を打ってニキビや吹き出物など作ったりしたら目も当てられないのだ。
そしてその懸念は正しかった。

211 :混ぜm@sその2:2014/12/31(水) 14:58:35.51 ID:5OI/qDnw.net
「まずシャワーでも浴びて目を覚ましてくるといい。その間に食事は私が作っておく」
既にブランチの時間すら過ぎ去っているので朝食などとは間違っても言えない。
「一通りの物は作れるが何かリクエストあるかな?」
「できれば……うどん以外の物で……」
千早がおずおずと手を挙げながら呟くいた言葉に他の面々も同様に頷く。
「承知した。しかし何故」
「昨日は3食うどんだったので」
そこで不服そうな声を上げたのは先ほど頷かなかった一名。
「私は別にかまいませんけど」
そうかおまえが犯人か。
いや、この面子であれば食事を作っただけでも大したものかもしれないが。
「ところでシャワーの順番はどうしましょう?」
「女性陣が先に入ればいいい。すまないが男性陣は少し待っててもらおう」
男性陣の方を見ると特に気にした様子も無い返答が返ってきた。
「どうぞお気遣い無く」
「えー……一日くらいいじゃないかめんどうくさい」
「都築さんそれはさすがにどうかと」
木場はスタスタと歩み寄ると浜辺に打ち上げられた海藻の如く未だ床にのびたままの都築を片手で持ち上げ、
「一つ言っておくがご婦人方の前で清潔にしておくのはアイドル関係なく人として最低限の礼節だ。もしそれすらできないと言うのであれば」
「どうなるんだい?」
「私が丁寧に隅々まで洗ってやろう。何、気にすることはない。男性の裸を見たところでうろたえるような年でもないからね」
表情こそ笑顔ではあるが有無を言わせぬ凄みがある。そしてやると言ったら躊躇無く実行に移すだろう。
「わかったよ。ちゃんとするよだからこの手を離してくれないかい」
「よろしい」
木場は手を離す。放り投げるのではなくちゃんと軟着陸させるのは流石だ。
「音葉で幾らか慣れていたつもりだがこれは一筋縄では済まないな」
と、そこでなにかに気づいたようで動きが止まる。
「ちょっと失礼」
そう言うやいなや神楽の体を持ち上げる。
「うわっ」
何かを確かめたようでふむ、と一人納得すると、
「不躾な質問ですまないが神楽君、体重は?」
「この間計った時は52だったように記憶しているが」
「そうか」
再度床に寝転がったままの都築の元へ、一応気遣ったのか腰のベルトをつかみ持ち上げ2、3度と上下に動かす。
ちなみにこの間も都築はされるがままだった。
ふーっと長いため息を吐いて、
「どうして20cm近くも身長が違うのに体重がさして変わらないんだ!?」
と叫んだ。
それは神楽も思う。というか315プロの面々は皆思っている。ついでに初対面の人間からはまず例外無く心配される。
神楽の名誉の為に断っておくが断じて神楽が重い訳ではない。都築が軽すぎるのだ。
「そんな事私に聞かれても知らないよ。ずっとこうだったんだから別にいいじゃないか」
「そうはいかない。別にオペラ歌手のようになれとは言わないが、ステージに立つ以上最低限の体と体力は必要だ。ある程度は体を鍛えないと満足に声も出せないぞ」
既にプロとして活動していた者の言葉は重みが違う。
「佐竹さんに頼んでみましょうか」
「そうね。そのくらいは必要かも」
どうやら彼女らにも何か案があるらしい。
「まあ、おいおい考えていくさ。とりあえずは今の食事からだ」
木場は愛用のエプロンを身につけてキッチンへと動き出した。

212 :創る名無しに見る名無し:2014/12/31(水) 15:01:45.06 ID:5OI/qDnw.net
以上投下終了。
いやー木場さん書きやすい。
またそのうち来ますので。それではこれにて失礼。皆様良いお年を。

213 : ◆zQem3.9.vI :2015/01/29(木) 11:39:54.14 ID:LmiY0vkj.net
>>210
千早を筆頭に音楽ジャンキー(?)な面子ばかり一同に会すると
こうなるのか的な様子が何とも……
あ、あと覚えている方いらっしゃれば幸いですが、三年くらい前にここでim@s☓テイルズの
クロスの『TOWもどきim@s異聞』を書いていた者です。きつい治療のストレスを発散する意味も兼ね、書きためた
続きを投下しようかと思っているのですが、ここ最近感想を書く方がいらっしゃらないように
見えるのが気になっているのですが……。

214 :創る名無しに見る名無し:2015/01/29(木) 12:25:18.99 ID:Kj5F4z3E.net
ミテマスヨーミテマスヨー
具体的な感想とか書けないので読むばかりですが…

215 : ◆zQem3.9.vI :2015/01/29(木) 12:39:37.77 ID:LmiY0vkj.net
>>214さん
読み手が過疎ってるという訳でもないようで良かったです。
実は半端に書きましたけど、今ある病気で入院中で、きつい治療でややストレスが
たまってせん妄状態なんですよね(いや、来週退院ですけど)
それで書きためてたの少し投下して、この『感想ほしい症候群』をどうにかしようと
思ったんですが、どうしたものか……

216 :創る名無しに見る名無し:2015/02/01(日) 23:57:35.73 ID:66Cfklbb.net
http://asdlkj43.blog.fc2.com/

217 : ◆zQem3.9.vI :2015/02/02(月) 17:22:11.53 ID:ypQQHkBX.net
3年ぶりの長編投下致します。
・テイルズオブザワールド×アイドルマスターのクロスオーバー
・文章に大いに厨二要素(多分)がある可能性大。
・テイルズサイドの世界設定が独自のもの。
・アイマスサイドの出番は現時点で春香のみ。 (あともう一人の存在を最後に匂わせます)

以上の要素に抵抗及び拒否感を覚える方はスルー推奨。

218 :TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 27:2015/02/02(月) 17:24:49.18 ID:ypQQHkBX.net
「よし、じゃあお前は今日と明日はしっかり休め」
「――えぇっ!?だってこの後も約束あるし・・・・・・」
 懲りるということを知らないのか、コイツは。
 いつの間にやら、呼吸するように他人を手伝うことが当たり前になっている幼なじみの悪癖に、リッドは内心嘆息する。
「モンデンキント――っていうか、ロア達も久々に顔出してきたみたいだしよ。
 お前一人がそこまで気張る必要はないって」
「えっ、ロア達が!?」
 慣れ親しんだ名前に、ファラはガバッとベッドから飛び上がった。
 狩人と農婦という牧歌的な肩書きがデフォルトの筈のこの少年少女二人は、その実フロランタン村においては比肩しうる者なしと評判の腕っ節自慢である。
 自らそれを標榜していたという訳ではないにせよ、彼らがいつの間にか村の用心棒的な役割を担うようになったのは、ある意味当然の帰結だった。
 そんな感じである時、村の家畜や畑を襲う魔物退治に(独断で)赴いた際、別口の依頼で現場でかち合い合流したのが彼ら『モンデンキント』の若手三人衆だった訳で、
年が近いこともありお互い打ち解けるのにそう時間は掛からず、今では互いに何くれとなく農作業だったり魔物退治だったり、とにかく色々協力し合っている。
 古代神官語で『月の子』を意味する名を持つそのギルドは、発足して一年足らずにも関わらず既に村へやって来た時点でヴォルフィアナ中に名を馳せていたらしい。
 当初こそ何処かからフラリと現れた富豪の男性が立ち上げた道楽ギルドだのと好き勝手言われていたものの、記憶喪失だというあの万能イエスマンことロアを引き入れた時から
流れは一変した。
 彼と、桃色の髪に快活な笑顔がよく似合う魔法剣士カノンノ、そして負けん気が強く高飛車ではあるがプロ意識の高い僧侶ロッタのスリーマンセルは、採取や護衛、魔物討伐に
至るまであらゆる依頼をこなしてギルドの評判を跳ね上げている。
「まあ仕事中みてえだけど、こっちが困ってるっていや少しぐらい手伝ってくれるだろ。『うん』っていつもみたいにな」
 アニーから又聞きした、春香と彼らのいざこざのくだりには敢えて触れずに一応釘を刺す。
「・・・・・・でも、いつも助けてもらってるけど、ロア達が優しいのにつけ込んでるみたいで気が引けるよ」
 彼らには魔物退治を始め色々手伝ってもらうことも多いが、その殆どが依頼としてではなくなあなあに近い形になる上に、村全体の資産もそこまで潤ってはいないので、結果満足な
報酬も支払えないことがままあった。何だかんだ言いつつも彼らのリーダーというかギルドマスターも別に催促する訳でもないのが、ファラとしてはかえって心苦しい状態なのだろう。
 しかし、彼女とは真逆に程々に図太くラフな生き方をしている幼なじみはとえいば、その言葉をちょっと違った角度で捉えているようだった。
「・・・・・・『優しい』ねぇ」
呟かれた言葉にはどこか奥歯に物が引っかかったような、むずがゆい何かを堪えるような響きがあった。
 ほんの微かではあるものの、長い付き合いの幼なじみのそれを見逃すファラではない。
「・・・・・・私、何か変なこと言った?」
「へ。――いやちょっと待て、何でそうなるんだよ。別にまだ何も」
 言い訳めいた口調で弁明しようとするリッドだったが、生まれてこの方カーブを知らないような真っ直ぐなその視線には耐えられなかった。

219 :TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 28:2015/02/02(月) 17:28:43.58 ID:ypQQHkBX.net
 しばしの沈黙の後、ポリポリと頭を掻いて、
「・・・・・・あいつ、前に騒がれてたろ。記憶喪失のせいか知らないけど、本当に怖いもの知らずな上に普通なら無理だって言われることも本気でやろうとするもんだから。
――ディセンダーの再来なんじゃないか、って」
 脈絡なく出てきたそのキーワードに、ファラは眉をひそめる。
 ディセンダー。世界が危機に瀕した時に現れる世界樹の申し子。
 あらゆる人間を超越した可能性の塊であり、無知にして無垢なその魂はやがて種が芽吹くかの如き緩やかさで、人々に希望をもたらす救世主たる大器となっていくという。
 多分言っている連中は面白半分なのかも知れないが、リッド自身が段々ロアという人間を知っていくにつれ、その噂に見出したのは希望なんて甘い無責任な期待でなく――
 
――仮にも背中を預けあった人間に向けるものとしては、あまりにも――

「・・・・・・あの、お二人の時間を邪魔してしまうようで申し訳ないんですが」

 家主にして今この場で一番世話になっている相手であるアニー女史の存在で、直前までの空気が思い切り固まった。
「お、おおどうした? 今になって診察結果に異常あったとかはナシだぜ?」
「いえ、先程も太鼓判を押しましたけど回復さえすればファラさんは全くの健康体ですが・・・・・・」
 戸惑うように間を置いてから、彼女は躊躇いがちに窓を指さし――

「この村に来て日は浅いんですけど――お祭りに歌唱会なんて予定してましたか?」
「「へ?」」

220 :TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 29:2015/02/02(月) 17:34:29.35 ID:ypQQHkBX.net
          ※※※※※※※※※※※※※※

唐突だが、今し方診療所の二人に噂されたばかりのロア・ナシオンは、珍しく困っていた。
 村長を筆頭によく仕事を回してもらう関係からすっかり馴染みのスポットとなっているここフロランタン村は、今日も変わらず平和だ。
 そよそよと吹き抜ける風によってゆるやかに回る風車、放牧された羊達を追う牧羊犬といった肩の力の抜けるような緩やかな景観に、『祭りの準備』という非日常要素も加わって、
どこかそわそわと落ち着かない空気も添えられる。最近頼まれる前に「やる」という気の回し方をようやっと覚えてきたロアとしては、祭りの準備でも手伝ってみようかなと先程までは
思っていたのだが。

「・・・・・・あー、あー♪ ドーレーミーレードー♪」

 ・・・・・・隣で発せられる、全身の力が抜ける怪音波により、彼を始め仲間二名はヘナヘナとくずおれる寸前だった。
「・・・・・・ロア君、今何か失礼なこと考えなかった?」
「とりあえずこのまま君が発声練習し続けてるとその内力抜けて倒れそうだなとは思ったけど、それが失礼なのかまでは」
「うわぁ、悪気ないんだろうけどすっごい暴言」
「・・・・・・ねぇ、私達いつまでこの拷問に耐えなきゃいけないのかしら?」
 地面に膝をつきながらも、疲れたように言葉を絞り出すロッタが、発声練習に精を出す春香にそう問いかけた。
「あー、うん。そろそろいいかな。喉の調子も何とか整ってきたし・・・・・・」

221 :TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 30:2015/02/02(月) 17:39:28.51 ID:ypQQHkBX.net
 春香の歌を聞いてみたい――
歌い手と踊り子を合わせた職(多分)だというアイドルの役職を説明されて、何気なくそう呟いたカノンノに罪はない。
 ただ、そんな風に後押しされて発声練習を始めた春香が――実に生き生きとした表情で口を開いた瞬間、意識は白くなり遠いどこかで『ズコー』とか『音程さん仕事して』という
訳のわからない単語が脳裏を飛び交い、全身の筋肉から力が抜けるような心地を味あわされた。全く訳がわからないが、ある種の呪文攻撃だったのだろうか。
「やってくれるじゃない・・・・・・雰囲気だけは人畜無害そーな感じになった途端、今度はこんな怪呪文を」
「いやロッタちゃんも! これ、一応呪文とかじゃないんだよ!? というか、そんなに言われるほどヒドいかなぁ!?」
「悪意がないつもりなら申し訳ないけど、発声練習段階でここまで人を腰砕けに出来るなら立派に兵器よ」
「ま、まあまあ・・・・・・た、楽しみだなー、春香の歌」
 言いながら草むらにへたり込んでいるカノンノの顔と声は、あからさまに引き攣っている。
 彼女自身あれだけ気力を根こそぎ奪われたのだ、こんな流れを導いた己の言動を思い切り後悔しているのは、人生経験の少ないロアでもハッキリわかった。

「・・・・・・何か釈然としないというか凹むけど、それじゃあいっくよーっ・・・・・・」

 バッとスカートの裾を束ねると、膝の辺りくらいまで上げて結び合わせてみる。多少不格好だが、『踊るのにこの丈では絶対に転ぶから』のことらしい。

「――何の茶番なのかしらね、これ」
 ため息をついて春香を見つめるロッタの目は相変わらず険しい。それを見かねたようにカノンノがやんわりと、
「もう、だからロッタ・・・・・・」
「別に意地悪とか仕返しのつもりで言ってる訳じゃないわよ。――貴女だって覚えてるでしょ?」
 ほんの少し戸惑いの色を見せたのも一瞬だった。
 思い当たったからだ、茶番と言い切るまた別の理由に。 
 
「あれと同じ顔が、歌なんて下らないって平然と言ってた筈なのにね」

 呆れ混じりに呟いてみても、それがいつものロッタの不平にしてはらしくない密やかなものであったのは、春香の耳に
届かないようにという配慮だったのか。

222 :TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 31:2015/02/02(月) 17:46:31.57 ID:ypQQHkBX.net
「・・・・・・色々言いたいことはあるだろうけど。やっとさっきよりは楽しそうな顔してくれてるんだし、あんまり虐めないであげてよ?」 
「ちゃんと聴かない内からケチをつける程狭量じゃないわよ」
 その一言で胸を撫で下ろせる程カノンノもバカではない。このロッタという少女の場合、聴いた後なら遠慮なくグサグサ言ってやるという言外の意思表示だというのが、
長年の付き合いでよくわかる。
「でも歌なんて久しぶりだな。――って言っても、パニールが歌ってくれた子守唄ぐらいしか知らないけどね。ロッタの方が歌には詳しいんじゃない? ――譜歌(スコア)だっけ、
教会の人がよく歌ってるのって」
「――畏れ多い間違いをしないで頂戴。賛美歌と一緒にしたら、枢機卿猊下辺りに怒られるわ」


 二人が呑気なやり取りをしていられたのもそこまでだった。
 ごうっ、と吹き荒れる一陣の風。草むらを踏む軽いステップ。そして、春香がそこにいるだけで作られた草原という『舞台(ステージ)』。
 次の風鳴りを合図にして、見えざる波が燎原に広がっていくなんて、誰も思っていなかった。


「―――いっくよー! 765プロ、ファイトーッ!!」



       ※※※※※※※※※※※※※※



 理由もわからず走り出し、こちらのコントロールも受け付けなくなった愛馬(近くの牧場から借りてきただけだが)に這々の体でしがみ着いて、ようやっと馬が足を止めた時に
クレス・アルベインが目にしたのは、自分の村とも懇意にしているフロランタン村の門前だった。額に巻いた赤いバンダナとハシバミ色の髪は汗に濡れ、平素より剣士らしからぬ
温厚さと精悍さが同居したような顔つきには、疲れの色が濃く滲んでいた。
「・・・・・・やっと、止まったか・・・・・・。おーいクレス、大丈夫か?」
 息をせき切らして追いついてきた、水色の長髪を低い位置で結った、どこか斜に構えたような顔つきの幼なじみ――チェスター・バークライトが、ちょっと気遣わしげに告げてきた。
 背中の矢筒を背負い直し、いきなり走り出した幼馴染みの愛馬を不可解な物でも見るように、しかし丁寧にその鬣を撫でてやる。
「あ、ああ・・・・・・にしてもどうしたんだろう?この子、さっきまで大人しかったのに・・・・・・」
「・・・・・・さっき魔物に襲われて鬣ちぎれた時の、『怪我はないけど、毛が無くなっちゃったね』にイラッときたんじゃねえの?」
「い、いやだってバッサリ切れた訳じゃないけど毛並みが不揃いになっちゃったし。それにチェスター、ちゃんと僕は『毛が』の前に『ちょっと』って入れたよ!?」
「そういう問題じゃねえよ! お前のダジャレ喜ぶのなんて何処かのまな板位なんだから少しは自重しろって――」
 そこで一瞬、チェスターが言葉を詰まらせたのがわかった。気づきながらも、クレスは敢えて微笑みながら指摘せずにそのまま、
「・・・・・・通じちゃう僕も同罪かも知れないけど、それ聞かれてたらもう二度と口利いてもらえなくなると思うよ」
 そんな風に締め括ってから、ふと村の様子がいつもと違うことに気づく。
 『いつも』と言えるほど頻繁に足を運んでいる訳ではないのだが、この時期なら村のそこかしこに散らばって祭の設営に精を出しているであろう村人達の姿が、今日に限って
入り口はおろか周囲の家々にも見当たらない。
「・・・・・・何だろう、まさか魔物か盗賊に襲われた訳じゃないよね?」
「いや、そんなんだったらもっと荒れ放題だろ。・・・・・・まあとりあえず、目的の村長のじーさん家にでも行けば」
「――あれ、クレスにチェスターじゃん!」

223 :TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 32:2015/02/02(月) 18:45:49.33 ID:ypQQHkBX.net
 ててて、と耳が小さな足音を捉えると同時に、マントをグイッと引っ張る微かな引力。
 見下ろしてみれば、そこでは泥だらけの格好になりながら笑顔で手を繋いだ子供達が、きらきらとした笑顔を向けていた。
「久しぶりー! なあなあクレス、時空剣士ごっこしよーぜー! チェスターは勿論魔王役ー!」
「あははは、勿論って何だこのジャリガキども」
「こらこら大人気ないってチェスター・・・・・・」
 ぶらーんと子供達の一人の襟首を持ち上げるチェスターに、しかし彼らはきゃーきゃー騒ぐばかりだ。やれやれと肩を竦めると、クレスは残る子供達に視線を合わせるように身を屈めて、
「やぁ、みんな元気そうだね。・・・・・・村の人達の姿が見えないけど、どうしたんだい?」
「あ、そうだ!」
 クレスの言葉で大事な何かを思い出したように、少年はパッと顔にひらめきを走らせた。
「こんなことしてる場合じゃなかった! 早く戻んねーと終わっちまう!」
「クレス達も! 早く広場へ急がないと見逃しちゃうよ!」
 誘導するように手招きする子供達に引っ張られる形で村の奥へと入っていくと、やがて二人の耳にさざ波のような音が響き渡ってくる。
 だが、近くに海もない村でそんな音が聞こえるわけもなく、奥へ足を踏み入れるにつれそれが人の声だと気づいた二人は、揃って首を傾げた。
 段々それが大きくなっていることに気づき、二人が顔を見合わせ首を傾いだ瞬間――



「・・・・・・すごいっ、凄いよ頑張れーっ、春香ーっ!!」
「お、おいこらあんまはしゃぐなよ! また倒れるぞ!」
「そんな野暮なこと言ってないで、ほらリッドも! さっき教えてもらった奴!」
「え、えーと・・・・・・な、765プロ、ふぁいとーっ・・・・・・?」
 テンションが真逆な聞き覚えのある声が2つ、耳に飛び込んできてクレスとチェスターは顔を見合わせた。
「・・・・・・リッド、ファラ!?」
「あ、クレス久しぶり! 今日は千客万来だね!」
「い、いやまあ久しぶり・・・・・・ていうか、この騒ぎって一体何が」
「凄いんだよ、春香! 伴奏もないのに皆がもうあんなにはしゃいじゃって・・・・・・」
 全くもって説明は期待出来そうになかった。渋面を作るクレス達の心情を察したように、リッドがクイッと顎で村の奥にある一点を示す。
「まあ、こーやって難しい単語使うのは柄じゃねーんだけどさ・・・・・・百聞は一見にしかず、ってやつだ。――聴き逃したら、絶対後悔すると思うぜ」
 人垣が円形を作った空白地帯で、一人の少女がいた。簡素な修道服の裾を膝辺りで縛り、軽やかなリズムで踊っている。
 露わになった脚のラインが視界に入って、反射的に(隣のチェスターはしれっとした顔で真っ直ぐに脚を凝視していたが)顔を背けそうになったが、それも少女の様子を
観察―――いや、歓声に紛れるその『声』が聴こえるにつれてその表情は次第に真摯なものへと変化していった。

224 :TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 33:2015/02/02(月) 19:09:07.91 ID:ypQQHkBX.net
 歌声が、少女の周りをきらめいて舞っていた。


 歌の名は、『ストレートラブ!』というらしいと村人から聞いた。もう恋なんてしないと思っていたはずなのにまた恋をして、その気持ちの素晴らしさと二度目の想い人への
真っ直ぐな恋心を歌っている、要約してみればそういう他愛のない歌。なのに、目も耳も離せない。身体が、その場に縫い止められる。


 その声は耳と、それ以外の体の大事などこかに染み込んでいくようだった。

「・・・・・・クレス、チェスター」
 何を言えばいいのか――いや、そもそも目の前で起こっているこの歓声の坩堝に圧倒されている二人に、再び声をかけてきたのはやはりまた顔見知りだった。
「お、ロア、久しぶり・・・・・・って、ココナッツ娘と女王サマはどうした?」
「・・・・・・それ、カノンノとロッタのこと言ってるんだったら失礼だと思うよ」
「お前も段々わかってきてるじゃねえか――って、二人は二人で盛り上がってるみてえだな」
 片やきらきらという擬音が似合いそうな程の輝きを湛える瞳で、片や口を半開きにしたいとけない姿で、歌っている少女を見つめている。
「不思議だね。――普通に知ってる言葉の筈なのに、知らない国の言葉みたいに聞こえる」 
 それはいつもと変わらない、抑揚のない彼らしいトーンの台詞。正直、ちゃんと感動してるのかも怪しいその姿につい苦笑するけど、でもすぐに気づいた。

 この少年は、胸を弾ませている。自分達と同じ物を見て、感動して、心を躍らせているのだと。

「――うん、そうだね」
 昴揚し、鼓動も高鳴っている。それでも穏やかに声を返す余裕があるのは、クレスもチェスターも知っていたからだ。いつか見た、これと同じ光景を。
 楽器による伴奏も、きらびやかな衣装もないのに、高らかに村中を満たす声とリズム。
 それだけで、歌っている少女だけでなく、周りの見えない筈の空気までもがきらめいて見えるようなえもいわれぬ感覚。
(ああ、そうか)
 覚えてる。背を向けていたけど、あの時の少女が己が目に映る世界全てに向けていた歌は、確かに自分達の心を揺り動かした。
 今ではもう、研ぎ澄まされすぎて悲鳴にも聞こえてしまう、彼女の歌は――。

225 :TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 34:2015/02/02(月) 20:23:05.64 ID:ypQQHkBX.net
  ――眩しくて逃げた いつだって弱くて あの日から――


「――ありがとう、ございましたーっ!」
 割れるような拍手と、地鳴りのような足踏みが土を揺るがす感触により、クレスは過去の記憶から回帰する。
「いいぞー春香ちゃーん!」
「アンコール!アンコール!」
「ねー、他にはどんなお歌知ってるのー!? もっともっとー!」
「さっき歌ってた『ごまえー』ももっかいやってー!」
「・・・・・・ち・・・・・・ちょっと、待っ・・・・・・て・・・・・・流石に何曲連続もやると、声が・・・・・・」 

 蝶々のような赤いリボンにシスター服。優しげな碧色の瞳にはどこか困ったような、けど確かな喜びが浮かんでいた。髪の色も長さも、陽だまりのようなその笑顔も、
似ても似つかない――でも確かに重なるのだ。

 胸が、もっと言うなら心臓の深い部分が痛む。マトモに『歌』を聞いたこと自体、久しぶりだったからだろうか。日数的にはまだ一年にも満たない、あの時の記憶が蘇る。

 「・・・・・・いい歌だな。まあ、ちぃの奴には負けるけど」
 
 あっさりと、最近は口に出すことを躊躇っていたその名前を耳が捉えたこと、そしてその主がチェスターだったことに純粋に驚く。
 でも、細められた瞳の奥を見てすぐにわかった。――敢えて、チェスターだって本当は、彼女を――千早のことを『思い出』という言葉の中に封じ込めたりしていない。
 忘れたりしないから、平気なフリを必死で装ってでも名前を出したんだと。さっきとは違って。

 あの、歌を誰よりも愛し、世界で一番歌に愛されていた筈で。
 もういない義弟との約束を守れずに、クレスがその手を離してしまった少女の名を。

 手甲に包まれた手を、ギュッと血が滲みそうな程握り締め、幼馴染みに告げる。

「チェスター」
「何だよ」
「明日の入団試験、絶対受かってみせる。そうでなきゃ、ここまで骨を折ってくれたマルスさんに合わせる顔がない」
 病床にありながら、義娘を自由にする唯一の希望を託してくれた、その想いを無駄にしない為にも。
「・・・・・・そうか」
 それきり、何も言わない。励ましの言葉なんてかけなくても、口に出した以上きっとクレスは頑張るだろうし、騎士団にだって入れる。
 そして会いに行くのだ。
 世界に歌を捧げ続けることを『誓わされ』、本来滅びるしか道のなかった筈の自分達の故郷を救った彼女に。

 不器用で努力家で、でも誰より歌を愛していた『妹』に。


(――待っててくれるかな……千早)

226 : ◆zQem3.9.vI :2015/02/02(月) 20:26:01.33 ID:ypQQHkBX.net
投下終了。
実に3年ぶりの投下となりました・・・・・・覚えてらっしゃる方はどれほどいらっしゃるでしょうか?こちらは相変わらず2chに慣れてないせいで
8回の連続投稿エラーを忘れて引っかかり、ようやく続きを投下出来た間抜けなSS書きです。
初めての方に向けて注釈をしておくと、以前の話は前スレの>>20から始まっており、まとめwikiと前スレに前回までの話が載っています。更に言うならミリマス・シンデレラ・Mマス以外
全部登場予定、要するに961・ジュピターも出ている無印・2・OFAがごっちゃになった世界観になってます。(765側の容姿は無印準拠、響と貴音は『現実』で961所属設定)
とりあえずこれからアイドルは色んな国や場所で色んなテイルズキャラと絡みつつ登場する予定です。自分に動画作成技術があればニコニコで、と思ったりもしますが、
感想なかろうとテイルズファンがいなかろうと初志貫徹でここのスレで頑張ろうと思います。(テイルズサイドがわからない方には酷ですが)
因みに筆者もテイルズの古参ファンという訳でなく、マトモに知ってるのはレディマイ2ぐらいです。(ぉい)

227 :メグレス ◆gjBWM0nMpY :2015/02/05(木) 22:36:54.01 ID:Y4GHyQKA.net
あーテステス。また来ました。
短いごちゃ混ぜシリーズ投下します。
今回は医療関係の皆さんのお話。

228 :混ぜm@sその3:2015/02/05(木) 22:39:03.79 ID:Y4GHyQKA.net
程度の違いこそあれ基本的には懐かしい人との再会は大体嬉しいものだ。
ただ、その場所がテレビ局のロビーともなると意外過ぎて少しばかりフリーズしてしまうのも仕方のない事だろう。
もし人違いだったらどうしようかとついて回る僅かな不安を押さえ込んで声をかける。
覚えていなかったら思い出してもらえばいいいだけの話だし。なんて我ながら図太くなったと考えながら。
「桜庭せーんせ」
気難しそうな顔をして考え込んでいた顔がこちらを向いて驚きに変わるのを見た。
よかった。その様子だとちゃんと覚えていてくれたらしい。
「加蓮……か?」
「そ、綺麗でかわいい北条加蓮さんですよー」
笑顔でひらひらと手を振るが目の前の人は顔を押さえて再び考え込んでしまう。
なにその反応。ちょっと傷つくんですけど。軽く蹴っとばしてやろうかな。
「いや、まさかこんな所で知り合いに会うとは思わなかったからどうすればいいかわからないんだ」
「それはこっちの台詞だよ。一体何してるの?」
とは言ってみるが衣装を見れば出演者の1人だろうというのは簡単にわかる。
事前に渡されていた台本に「元医者の異色男性アイドル」なんて文字が踊っていたけどそれが知り合いだなんて一欠片程も想像していなかった。
「見てわからないか?」
「冗談だよ」
「その様子だと君も出演者か?」
「もう。私はれっきとしたトップ集団の1人です」
私と奈緒と凛のトライアドプリムスはトップグループの中の一角に食い込むほどの人気を得ている。
文字通り今回の番組の目玉だ。
「済まない。まだ業界に入って日が浅いものでな」

昔まだ私が入院していた時に医師免許を取得したばかりの研修医の1人として赴任してきたのが目の前に居る桜庭薫先生だった。
割合年齢も近かったこともあってかそれなりに会話を交わす程度には仲が良かったんだけど、
私の病気も完治して退院すればそれっきりだと思っていたのに人の縁なんてどこで繋がるかわからないものである。

「でも偶然って怖いね。医者と患者がこうして再会するなんて。これで清良さんまでいたら何かのドラマみたい」
「清良さん?」
「うちの事務所のアイドルで元看護士さん。怒ると怖いよ?」
「……」
「何その沈黙」
「……さっき会ったが……居るんだ。僕たちが居た病院のじゃないがれっきとした元看護士が。さっき挨拶をしてきた」
「マジ?」
わざわざ苦労して取った資格を放り出して芸能界なんてヤクザな職場に来るなんて物好きもそんなに何人も居るんだろうか。話には聞くけどもしかしたら医療業界って想像以上にブラックなのかも。
しかし医者、看護士、患者と勢ぞろいになっちゃうとなるともう少し進行とか台詞考えたほうがいいのかなぁ。きっと司会の人もそのあたりは突っついてくるだろうし。

229 :混ぜm@sその3:2015/02/05(木) 22:41:20.88 ID:Y4GHyQKA.net
「おはようございます」
ステージ衣装を着た女の人が挨拶をしながらやってきた。なんかふわふわした感じの人だ。
パーマのかかった髪とか全体的な雰囲気がそんな感じ。
あと凄くおっきい。どこがってそりゃあ……
さすがに及川さんとまではいかないけど(あれはもう規格外だ)うちの事務所の中でもこれを越えるのはそうそう居ないんじゃないだろうか。
「ああ丁度よかった。今貴方の事を話していたんです」
先生が女の人へと話しかける。と、いう事はこの人が。
「彼女が豊川風花さん。今話していた元看護士の人だ」
あ、ちょっと頭の上に?マークが見える。これは説明しておいた方がいいかも。
「あ、どうも北条加蓮です。桜庭先生が居た病院に入院してた時期がありました」
「ああ、そういうことでしたか」
なんか話し方も結構穏やかな感じできっと見た目通りの人なんだろうなぁ。
しばらく3人で病院あるあるネタで盛り上がった後、ちょっとさっきから浮かんでいた疑問を聞いてみることにした。
「そういえばまだ聞いてなかったんだけど、なんでアイドルになろうなんて思ったの?」
「……」
「ちょっとその沈黙怖いんだけど」
「いや、よく思い出せない。確かに契約書に判を押したのは自分の意志なんだが、どうしてその決心をしたのかがよく……ひょっとして僕は口車に乗せられたのだろうか……」
「待って。ちょっと待って」
これはちょっとマズい流れかもしんない。隣の風花さんに話題を向けて方向転換を計らないと。
「でも、風花さんもアイドルの仕事は楽しんでるでしょ?」
「え……と……」
「ねえ風花さん待って。そこで考え込まれると私どうしていいかわかんない」
「確かに胸がおっきいからそういうお仕事が取りやすいのもわかるんだけどプロデューサーさんわざとじゃないかって時がいっぱい……
ちゃんとした普通のお仕事もあるんだけどやっぱり時々だしもしかして私の反応見て楽しんでるだけなのかしら……」

何コノ状況。16歳の女の子そっちのけで大の大人2人がウンウン唸ってるとかどうしていいかわかんない。

「ごめん30分くらい前からやりなおしていい? 桜庭先生に声かけるところあたりから」
さすがにちょっと泣きたくなってきた。藪をつついて蛇を出すってこういう事なんだろうか。
と思ったら2人ともあっさり立ち直って、
「いや大丈夫だ。どんな過程であれ自分で選んだ仕事である以上全力は尽くす」
「なんだかんだ言っても楽しいもの。私も行くわ。それじゃあ本番でね」
なんて言い残して2人とも行っちゃった。
なんだかんだ言っても切り替えが早いのはやっぱり私より大人なんだなぁとかよくわかんない感心したりして。

確かに私もそろそろ準備しないと。丁度頼りになる仲間も来たことだしね。
「ここに居たんだ加蓮。そろそろ本番始まるよ」
「何だニヤニヤして。なんかおもしろいことでもあったのか?」
「ううん、なんでもない」
「嘘付け、それがなんでもない顔かよ」
「まあ、ね。芸能界の先輩としては新人さんに恥ずかしいとこは見せられないなって」
やっぱりトップアイドルとしての実力ってのをちゃんと見せつけてあげようじゃない。

230 :創る名無しに見る名無し:2015/02/05(木) 22:49:49.33 ID:Y4GHyQKA.net
以上投下終了。まあ定番といえば定番の組み合わせ。
このシリーず全体的にキャラに興味持ってもらえればいいなーとか
世界観が広がればいいなーぐらいの気持ちなんで割りとさっくりした感じで書いてます。
とりあえずキャラだけでも調べてみようかな。とか思って頂ければ幸いです。

>>226 お久しぶりでございます。入院しておりましたか。お大事になさってください。
自分以外の書き手さんがいらして喜んでおります。
テイルズはPSで出た3作しかプレイしておりませんが両方のキャラが違和感なく共存しているので
安心して読んでいられます。
感想が欲しいのでしたら確実とはいえませんがピクシブなどに投稿するのも一つの手かと思います。
それでは今回はこれにて失礼。

231 : ◆zQem3.9.vI :2015/02/06(金) 14:57:38.28 ID:Zgvt9VNn.net
>>228
成る程、言われてみれば凄い縁のある三人が見事にシンデレラ・Mマス・ミリマスから
選出されましたね(笑)経歴聞いたら通りすがりの監督が医療ドラマでも書き上げてきそうです。
感想については、前スレでそのことについて相談してみたら
マルチ投稿みたいで歓迎されないかもという意見もあるので悩んでるところです。
此処では8レス位でしばらく投稿出来なくなるのがネックとは思っているのですが……
まだ完結までは程遠いし、定期的に更新出来るかもわからないけど、
少なくとも今までの分をpixivとかに投稿してみたいなー、という気持ちがムクムク
育っていて……あれだけ大口叩いておきながら、自分が情けないです(涙)

232 :メグレス ◆gjBWM0nMpY :2015/05/12(火) 08:11:56.48 ID:rWhRD36P.net
ども、お久しぶりです。
ごちゃ混ぜシリーズ投下しますです。今回はメイド服の4人のお話です。

233 :混ぜm@sその4:2015/05/12(火) 08:13:14.41 ID:rWhRD36P.net
「またお越しくださいませご主人さまー!」
遠くなる客の後ろ姿を見送りそれが最後の一人であることを確認して心地よい疲れと共に手近な椅子に腰を下ろす。
「休憩入りまーす!」
一人のスタッフの声と同時に周りを囲んでいた他のスタッフも散り散りになり張りつめていた空気が緩む。
今までカメラを向けられていた中心となる人物達も思い思いの行動に移る。。
満足げな水嶋咲と、対照的にどんよりとした重いものを背負ってテーブルに突っ伏す秋月涼と阿部菜々、
そしてまだ元気満々といった風情で不適な笑顔のまま立っている朝比奈りん。
以上の4名である。
ここは都内のメイド喫茶。
とある番組でさまざまな事務所からアイドルを出してメイド喫茶のウェイトレスをしようという企画が持ち上がり、
その舞台として選ばれたのが何の因果か阿部菜々さんの元職場であるこのメイドカフェだった。
ちなみに制服のメイド服は首までしっかりとボタンで止められたブラウスと膝下までのスカートと、
オーセンティックなものでいかがわしさは微塵も感じられない事は追記しておく。

「ぼくは何でここにいるんだろう……」
最早抜け殻といった体でつぶやくのは秋月涼。
「ちゃんと男だって世間に発表したはずなのに何で普通に女の子向けの仕事が入ってくるんだろう……」
衣装が似合っててなんだかんだいいつつもしっかり仕事はこなして
更に現場とファンの評判も良いのだからオファーの途切れる理由が無いのだが本人にその自覚は無い。

その反対側同じように机に突っ伏すもう一名。
「おかしい……このお仕事ってこんなに疲れるっけ……」
やはり寄る年並には勝てないのか……といった呟きは幸いにして周囲に聞かれることはなかった。
どうやら旧知の仲らしいチーフらしきスタッフが笑いながらたしなめる。
「なーに情けないこと言ってんの。ステージの上じゃ歌って踊って笑顔振りまいてるんだからこれ以上の重労働やってんでしょ」
「確かに理屈はそうだけどしばらく離れてたからカンを取り戻すのに時間がかかりそう……」
何気にタメ口を利く奈々さんというのはレアである。
以前は動けていたのにというギャップも疲労の原因にあるのかもしれない。

そんな二人の様子を少し離れて見ていた咲の背中に重みがかかる。
「咲ちゃんは大丈夫かなー?」
今回のメンバーの中では一番キャリアの短い咲に小悪魔然とした笑顔で近づいてきたのは朝比奈りん。
トップグループの一つである魔王エンジェルの一人だ。
首元までキッチリとボタンで止められているにもかかわらずその豊かな二つの膨らみは強く自己主張する。
小さな背丈と相まってトランジスタグラマと呼ぶにふさわしい体つきだった。

234 :混ぜm@sその4:2015/05/12(火) 08:14:47.76 ID:rWhRD36P.net
「うーん仕事自体はこないだまでやってたのと大して変わりないから大丈夫かな。
制服も違うお店のだと新鮮で気持ちいいし。ただケーキのつまみ食いができないのはちょっと不満かも」
開店前にアスランの作る料理や東雲のケーキを食べるのは咲と同僚である巻緒の楽しみだった。
今思い返してみれば仲間意識でもあったし疑似家族のような雰囲気すらあったように思う。
撮影とはいえ、見ず知らずの他の店に入って改めて再確認する。
少し甘やかされていたと言われても仕方のない環境だったのだろう。
あそこはもうもう一つの家といっても過言ではない場所だったとそんな事を考える。
「で、ぶっちゃけどーよ。憧れの秋月涼くんと実際に競演してみたとりあえずの感想は」
「まだちょっとわかんないかな」
「およ、お話とかしてないの?」
「挨拶はしたけど涼くん楽屋でもちょっと落ち込んでたし、あんまり親しげに声かけるのもなんだかって感じだったから」
「涼くんも男の子のお仕事だってちゃんと来てるんだしそろそろ割り切ってもいいんだけどねぇ」
「そういえばえっと……」
「りんちゃんでいいよ〜。咲ちゃんは特別待遇」
「んじゃお言葉に甘えて。りんちゃんはどうしてこのお仕事受けたの? なんか飛び入りで入ってきたって聞いたけど」
咲の言葉にりんの眼が細められる。その眼光の鋭さは猛禽類のそれだ。
「そんなの」
空気が変わる。
「面白そうだったからに決まってるじゃない」
あらゆる手段を使って上り詰め、更にその後もずっとその座を維持してきたトップアイドルの一人が持つ気配だ。
まるで野生の猛獣が傍にいるかのような錯覚すら覚える。

『撮影入りまーす』
再開を告げるスタッフの声が響きわたる。

ぱしん、と背を叩かれる。
「さて休憩終わり。そろそろ次のお客さんが来るよ」
その声からは先程の気配は霧散していた。
思わず息を吐いて二人の方を見る。
そこには先ほどまで机に突っ伏していた気配など微塵も無い。
背筋は伸び、顔は引き締められ、指先まで神経を行き渡らせてすでに次のご主人様を迎えるべく所定の位置に着いている。
「どう。あれがプロよ」
りんの声には軽く挑発するような、試すような色が見える。
たとえどのような状況でも瞬時に意識を切り替える。
口にするのは容易いが自分はあそこまで行けるだろうか。あの高みへと手が届くのだろうか。
憧れや、慣れだけでどうにか出来るほど甘くはないのだ。
思い通りになんてならない。
でも、
だからこそ楽しい。
「アタシもばびっと気合い入れて頑張らないとねっ」

235 :創る名無しに見る名無し:2015/05/12(火) 08:18:26.19 ID:rWhRD36P.net
以上投下終了。
いやあウダウダやってたらSideM本編に涼くん来ちゃいましたよ。
どこも今後が楽しみです。
今回はシリーズ全部入れますのとおり漫画のリレからも一人入れてみました。
もっとこう垣根を取っ払ったお話が増えればいいなーなどと思いつつ今回はこれにて失礼。

236 :メグレス ◆gjBWM0nMpY :2016/02/27(土) 12:39:22.71 ID:jiYh/s83.net
どうもお久しぶりです。メグレスです。
また投下しに来ました。
いつも通りのごちゃ混ぜシリーズ。
今回の面子は握野英雄さん、西園寺琴歌さん、箱崎星梨花さんとなっております。

237 :混ぜm@sその5:2016/02/27(土) 12:41:11.48 ID:jiYh/s83.net
「握野、英雄さまですわね?」
収録も無事終わりさて帰ろうかと歩きだした矢先にかけられた、
ひとつひとつの音を丁寧に発したその声は握野の耳によく届いた。
「確かに俺がそうだけどアンタは?」
向きなおり声の主を確かめる。
目に入ってきたのは声を二人組の少女。
「失礼いたしました。私、西音寺琴歌と申します」
「箱崎星梨花です」
ぺこりとお辞儀をするその少女の姿をそれとなく観察する。薄い桃色をしたロングの髪と好奇心旺盛な瞳。
口調や物腰からして育ちの良さを感じさせる。
後ろに立つ灰に近い色の髪をツインテールにした少女も小さく同じよう丁寧なお辞儀をする。
自己主張はそれほど強くはなさそうだがこちらも同じように育ちは良さそうな空気を纏っていた。
二人ともここに居るということは同業者だろうと見当をつけて名前を必死に頭の中で検索してようやくその名前に思い至る。
別事務所の女性アイドルだった。
「で、俺になんか用かい?」
用が無ければ声などかける必要もないのだろうが生憎と共演した経験もなければこれといった接点すら思いつかない相手の用件は見当すらつかなかった。
「その、折り入って一つ頼みごとがございまして……」
もじもじと言いにくそうに口をどもらせる。
これが例えば数年前で放課後の学校の教室だったりしたらもしかしたらと勘違いしたかもしれないが生憎とそんな年でもない。
思わず辺りを見回すがドッキリの札を持った輩が隠れている気配もなさそうだった。
やがて意を決したように一言。
「私達と牛丼屋さんに行って頂きたいのです」
「……ハ?」
思わず、それまでの緊張した空気を無に返す間抜けな声が漏れた。

238 :混ぜm@sその5:2016/02/27(土) 12:42:19.85 ID:jiYh/s83.net
牛丼屋。
早い、安い、美味いを看板に掲げたすっかり日本にとってお馴染みとなったこの存在は警官時代の握野も夜勤明けでまともな店は開いていない時などよくお世話になったものだ。
(そーいや最近行ってなかったな)
ここのところは食事は現場で出てくる弁当だったりユニットのメンバーである信玄誠司の作る料理だったりで外食からはすっかり足が遠のいていたのは事実だ。
(さーてどこにすっかな)
一口に牛丼のチェーン店と言っても出始めた頃とは違って今はいくつかの種類がある。どれも大して違いは無いが結局スタンダードなところがよかろうと判断して吉○屋へと足を進めた。

大した距離でもないのでのんびりと三人連れ立って歩く。
「以前から行ってみたかったとは思っていたのですけれど……」
「それこそ君らのプロデューサーにでも連れていって貰えばよかったんじゃないか?」
わざわざ面識の無い人間に同行を頼むよりはそちらのほうがよっぽど気軽に思えるのだが。
だがしかし琴歌ははにかんだ顔をして、
「少しばかりはしたないところをお見せしてしまいそうで……」
成る程その表情は年頃の少女である。
納得はしたが新たな疑問が頭をもたげる。
「しかしなんで俺なんだ? これまで直接会った事はなかったはずだけどな」
「片桐早苗様からお聞きしまして」
「またあの人か……」
思わず握野の口から恨みがましげな声が漏れた。元婦警である片桐早苗とは現役警官時代の交流は無かったがこの業界に入ってから珍しい職業同士で何かと(一方的に)絡まれる機会も多かった。
どうやら今回もそのツテらしい。
ほぼ確実に後でからかわれる電話がかかってきそうだと軽いため息をつく。と、そこで先程より気になっていた事を口にする。
「そういや二人とも俺の顔は大丈夫なんだな」
握野の顔は整ってこそいるが鋭い目つきに三白眼とかなり強面の部類に入る。
怖がらないだけで十分だと冗談めかして言うこともあるが半ば本心だった。初対面の子供に泣かれたのも二度や三度ではきかない。
初対面でもそんな様子も見せずに接してくる二人にひょっとして顔つきも変わってきたのかと密かに淡い期待を抱いたりもしたのだが帰ってきた答えは、
「お屋敷にはもっと怖い顔の人も沢山しましたから」
との事である。
(確かにそりゃ慣れるよなあ)
察するにボディガードとかそれに類する職種だろう。そんなものが普通にに居るだけで相当なお屋敷であり二人共かなりのお嬢様であろう事は容易に察する事ができた。
自分にとってはごくありふれた牛丼屋でもそういったお嬢様からしてみれば珍しいものに見えるのかもしれない。

239 :混ぜm@sその5:2016/02/27(土) 12:43:49.62 ID:jiYh/s83.net
店内はさして混んでもいない。お嬢様二人はおそらくメニューで悩むだろうと踏んでいたので逆にありがたかった。
握野、琴歌、星梨花の順番でカウンターに並んで腰をおろす。
「ほいメニュー」
「ありがとうございます」
「わ、こんなにいっぱいあるんですね」
星梨花の驚いた声にもう一度メニューを見てああと納得した。メインの種類は大したことがなくてもサイドや時間限定の朝食まで含めると結構な量になるからだ。
二人はあーでもないこーでもないと楽しそうにしているのでわざわざ水を差すこともない。申し訳ないがバイトの店員さんにはもう少し待っていて貰おう。
軽く右手で「悪いな」の意味を込めて礼をするとそれに気づいた店員も頷き返す。

「つゆだくやねぎだく等の呪文があるとお聞きしましたが……」
「そういうのは慣れてからでもいいと思うけどな」
「確かに仰るとおりですわね」
それから更に悩むこと数分。
「並3つにA定一つB定二つ」
「少々お待ちくださーい」



「はいお待ちどう」
予想以上の早さに二人とも目を白黒させている。時計を確認するが頼んでからまだ三分もたっていない。
基本あらかじめ準備されていた物を出すだけだからこその早さなのだがそれすらも驚きのタネのようだ。

「忘れるところでしたわ」
そう呟くと琴歌は握野へと自分のスマホを手渡す。
意図を察して牛丼と二人の姿を写真に収める。二人並んで笑顔、琴歌はまたドヤ顔である。ひょっとして気に入っているのかこれが素なのか。

「いただきます」
三人一緒に手を合わせて仲良く挨拶。
久しぶりに食べたが以前と何が変わったという事もなく、取り立ててうまい訳でもないが不味くもないごく普通の味だった。
ちらりと横目でお嬢様二人の様子を観察してみるとそれなりにお気に召したようだ。
どちらかと言えば味よりもその物珍しさからだろうが楽しんでいるならそれにこしたことはない。
最悪最初の一口に手をつけただけでギブアップなどという事態も想像していただけにそうならずに済んで安堵しているのも事実だ。

ふと横に目を向けると星梨花が半分ほど残った丼を前に手が止まっていた。
「星梨花さん?」
「ちょっと多いみたいです」
握野にしてみれば普通の量でも少女にとっては少し多かったらしい。もしくは続く同じ味に飽きてきたか。
「そういうときはこうして」
自分の分の半分ほどになった牛丼に別注文の半熟卵を乗せて黄身を崩す。トロリと流れ出る黄身の上に備え付けの七味をパラリ。
「こうやって味を変えるといいぞ」
「まあ、私もやってみましょう」
琴歌もいそいそと自分の丼に同じ細工をして食べ始める。
二人の食べる姿を見てこんなチェーン展開の牛丼屋でも食べ方で品の良さは出るものだと妙な感心をする。

240 :混ぜm@sその5:2016/02/27(土) 12:45:24.14 ID:jiYh/s83.net
「「ごちそうさまでした」」
結局三人とも綺麗に完食できました。
完食したとはいえ星梨花も少しお腹をさすって苦しそうにしているので落ち着くまでしばし待つことにする。
デザートを入れる余裕は無さそうだ。
こういった時は何か会話でもすればいいのだろうが生憎とどんな話題を切り出せばよいものか。出会って数時間もたっていない相手では何を話したものか見当もつかない。
そんな悩みをよそに会話を切り出したのは琴歌だった。
「握野さまも犬の躾は得意とお聞きしましたけれど」
「よく警察犬の訓練にも顔出したりしてたからな。なんか知らないけどあいつら俺の言うことよく聞いてくれるんだよな。でも一番得意なのは犬だけど大抵の動物なら大丈夫だぞ」
「星梨花さんも犬の訓練をなさっているのでしたわよね?」
「アジリティ(犬の障害物走競技)のハンドラー(指導手)を少々」
「おお。そりゃ凄いな」
素直に感嘆の声が漏れた。
同時に星梨花の顔にも驚きと喜びが広がる。
あまり日常的に聞くでもない単語に即座に反応してきたからだ。
「そんなに凄いのですか?」
「文字通り犬と人間が一体にならないと上は狙えない競技だからなぁ。リードをつける躾とはまた違った難しさがあるぞあれ」
「もしよかったら今度見て貰ってもいいですか」
「俺でよければ喜んで。ちなみ犬種は」
「ボーダーコリーです」
「そりゃあ元気がよさそうだ」
「ハイ。とってもいい子です」
本当に彼女の犬を見ることになるかどうかはわからない。
ただ、口約束でも今は別に構わない。
目を輝かせる星梨花の顔を見ていい笑顔だと本心からそう思う。

「本日はどうもありがとうございました」
「いや、お礼を言われるほどの事はなにもしてねえんだけどな」
ただ牛丼のチェーン店に連れてきただけだ。
「何かお礼をしなくては」
「いや別にそれほどの事でも」
とは言ったがおそらくこのお嬢様はこちらが要求するまで引き下がることはないだろう。
ほんの短い時間の付き合いでもその程度はわかる。
しかし牛丼屋に連れてきただけに見合うだけの丁度いいお礼などすぐには思いつきそうもない。
(食い物だしこっちも食い物でか? いやいやそんなのすぐには……)
いや、ひとつおあつらえ向きのがあった。
「……パンケーキ」
「?」
「じゃあパンケーキの美味い店、今度教えてくれないか。好物なんだ」

241 :創る名無しに見る名無し:2016/02/27(土) 12:48:46.87 ID:jiYh/s83.net
以上投下終了。
握野君と星梨花さんの犬繋がりはあったんだけどどう始めたもんか考えてたら
お嬢様仲間の琴歌さんがやってくれました。
これから先だとパンケーキ繋がりで周防桃子さんが来ても面白くなるかも。
それではまたいつか。これにて失礼。

242 :創る名無しに見る名無し:2016/08/31(水) 04:56:18.56 ID:cOHXDcjI.net
.

243 :創る名無しに見る名無し:2016/09/24(土) 15:24:43.69 ID:G6Bsg/Qb.net
ぷちます sideM

244 :創る名無しに見る名無し:2017/07/25(火) 19:23:47.46 ID:TJT0HKS2.net
お久しぶりです、気づけば一番下だったので慌ててageました。その内何か投稿出来ればと思ってはいるのですが……。

245 : ◆zQem3.9.vI :2017/07/25(火) 21:44:05.89 ID:TJT0HKS2.net
↑お久しぶりです、◆zQem3.9.vIでした。

久々だったのでうっかりトリップの記入欄を間違えてしまっておりました。

246 :北総社員:2017/07/26(水) 21:15:31.76 ID:K0519EM7.net
25歳看護師です、女性の友達がほしいのですが。暇の方連絡まってます。good-par.shiina@docomo.ne.jp千葉県八街市八街ほ973-13椎名 教泰043-442-1501、090-3202-8219

247 :創る名無しに見る名無し:2017/12/27(水) 10:12:51.44 ID:C1Z7QFDy.net
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

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248 :創る名無しに見る名無し:2018/05/21(月) 08:54:08.62 ID:tRZnwP6O.net
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

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249 :創る名無しに見る名無し:2018/05/22(火) 17:13:32.04 ID:jK7bNdUS.net
https://www.youtube.com/watch?v=ZuBrP_dcEug
平日13時15分に公開なのに14時半の時点でもう視聴回数2600回かよ。
みんな昼休みにでも聞いてたんだな。

250 :創る名無しに見る名無し:2018/07/03(火) 18:37:29.23 ID:f1dClnnX.net
1NY

251 :創る名無しに見る名無し:2018/10/17(水) 19:51:43.99 ID:ZU7x6aHX.net
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

O2R

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