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短編小説書いたから読んでって

1 :創る名無しに見る名無し:2013/12/21(土) 16:20:28.43 ID:lbQlLA22.net
どうぞ見ていって


私が立ち寄った町に一人ぼっちのお婆さんがいた。
 一人ぼっち、ただ一匹の柴犬がいるだけである。腰は少し曲がっていて、当然のごとく白髪頭であった。それも少しだけ黒髪が混じっている。顔はしみと皺で埋め尽くされていて、唇はかつての色、艶を失い、薄黒い肌と同じようであった。

お婆さんは旅人である私に、寝るところと料理を提供してくれた。お婆さん曰く、今日は都会に二人いる息子が里帰りしてくるという。今日で八十なのよ、とお婆さんは笑った。
 それはめでたいことですね、と私は素直に言い、家族の団欒を邪魔してはいけないな、とここを立ち去ろうとしたが、お婆さんは私を引き留めた。なら、と私は言った。

「私は与えられた部屋で大人しくしています。お婆さんは御気になさらないでください」
 お婆さんは私の意志が固いのを知ると、わかりましたよ、と仕方なさげに言った。二階にある部屋に上がろうとするとき、お婆さんは、ちゃぶ台に置き切れないほどの料理を用意して息子たちを待っていた。

200 :創る名無しに見る名無し:2014/05/09(金) 18:02:26.20 ID:U/oBRauh.net
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん。」
どこから声がする。
良子が後ろを向くと、黄土色の壺を持った男の老人がいた。
「お嬢ちゃん、この壺、このメモに書いた所へ持って行ってくれないか?」
「うん、わかったわ。」
男の老人は良子に壺とメモを渡すと、何処に立ち去った。
「坂上さんねぇ。この壺、この人へ持っていくのか。でも持っていくのが大変なので、被っちゃおうかしら。」
良子はメモをショルダーバッグに入れると、ズボッと壺を頭から被った。
『あーあー。声が響くわ♪ダンスしてみたくなったわ♪』
『シャラララー♪シャラララー♪』
『ランラランラン♪ランラランラン♪』
良子は、用事をすっかり忘れて、壺を被ったまま、歌を歌いながら、長靴をカポカポ鳴らしてダンスをしていた。

201 :創る名無しに見る名無し:2014/05/09(金) 18:03:31.33 ID:U/oBRauh.net
『いけない!!壺を持って坂上さんに行かなくちゃ!!』
良子は壺を脱ごうとした。が、壺の窪みの所に良子の顎が挟まって抜けない。
『抜けない!!壺を被ったら抜けなくなっちゃったわ!!』
壺を被った良子は、必死に頭から壺を抜こうと、壺を引っ張ったり、壺を抜こうと首を大きく振ったが、抜ける気配は全くない。
『どうにかして壺を抜かないと…。』
良子は、壺を木にぶつけるなどして叩き割ろうとしたが、なぜか容易には割れない。
それもその筈、良子が被っている壺は、割れない壺なのである。
『頭の壺を何とかしないと…。真っ暗で何も見えない。でも坂上さんの家へ行かないと…。』

202 :創る名無しに見る名無し:2014/05/09(金) 18:04:49.10 ID:U/oBRauh.net
良子は、手探りしながら、雑木林の道を歩き始めた。
ガコッ!! ガコッ!!
木や電柱に頭をぶつけながら、雑木林の道を抜けると、雑木林の外れにある古い家に着いた。
コンコンコン。
 良子は玄関のドアをノックする。
『もしもし!!坂上さんですね!!』
すると、玄関のドアが開いて、男の老人が現れた。
「もしかして、先程雑木林でお会いしたお嬢ちゃんじゃね。」
『あの声、もしかして、雑木林のお爺さんね…。』
「壺を被って取れなくなったんじゃね。」
『はい、壺を被って抜けなくなってしまったんです。壺を叩き割ろうともしたんですが、全然割れないのです…。』
「その壺は、壁にぶつけるなどしても、割れない壺じゃよ。取ってしんぜよう。」

203 :創る名無しに見る名無し:2014/05/09(金) 18:06:59.32 ID:U/oBRauh.net
男の老人は、良子の頭の壺を引っ張った。
するとスポンと心地良い音を立てて、良子の頭から壺から抜けた。
「あ、取れた。壺を取ってくださって、ありがとうございます。」
「例には及ばんよ。これが私が依頼した、お嬢ちゃんの任務じゃったからね。いやっ、ご苦労じゃった!!ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ!!」
男の老人はそう言うと、壺を持って家の中の入って行った。
「えっ、そんなー…。」
良子はガッカリした表情で、家路についた。

(訂正)
>>202
 を削除

204 :創る名無しに見る名無し:2014/05/09(金) 18:33:07.76 ID:U/oBRauh.net
数日後、良子は再びあの男の老人に会おうと、グレーのハイネックセーターに、紺色のピーコートに、黒い膝下丈スカートに、ベージュ色のチェック柄マフラーに、
赤いハイソックスに、赤い長靴姿で、白いショルダーバッグを担いで、カポカポと長靴を鳴らしながら、曇り空の雑木林の道を走った。
しかし、雑木林の道を抜けると、雑木林の外れにあった筈の古い家は、後方もなく消えていた。
その代わりに、人の頭が入る程の大きさの、焦げ茶色の壺とメモが置かれていた。
メモにはこう書いてあった。
[甕川良子へ。先般の任務依頼のお礼に、この壺を差し上げよう。何かの役に立つかも知れない割れない壺なので、大切に扱うのじゃよ。爺より。]

205 :創る名無しに見る名無し:2014/05/09(金) 18:34:13.12 ID:U/oBRauh.net
「あのお爺さんたら、私が頭に物を被る癖があるのを知ってたのかしら…。」
良子は苦笑いしながらメモを読むと、メモをショルダーバッグに入れて、壺を手に取って、ズボッと壺を頭から被った。
『壺を被ると真っ暗で何も見えないので、気分が落ち着くわ。』
ところが、良子が数回瞬きを行うと、なんと一気に視界が広がり、外の風景が見えるようになった。
『すごいわ!!壺の外の様子が見えるわ。よし。壺を被ったまんまで冒険だ♪』
良子が向かったのは、雑木林の中にある洞穴だった。
『どうも、この洞穴の中が気になるのよ。さっそく洞穴の中を冒険だ♪』
良子はショルダーバッグから懐中電灯を出して、洞穴に入った。
「ポクポク・・」「キュイキュブキュル・・」と長靴が鳴る音が、洞穴の内に響き渡る。

206 :創る名無しに見る名無し:2014/05/09(金) 18:35:54.05 ID:U/oBRauh.net
10分ほど歩いた先で、洞穴は行き止まりになっていた。
懐中電灯を充てると、そこには扉があった。
『この扉の先は何だろうか?』
良子は扉を開けて、懐中電灯を照らしながら、扉の中に入っていく。
そこは倉庫のようだった。
『何か宝でもあるのかな?』
良子は、懐中電灯を照らしながら、倉庫の中を丹念に調べた。
するとそこには、かつて各地の遊園地で見られたような汽車があった。
『こんなところに汽車があったなんて…。走るかな?』
良子が汽車に乗った途端、汽車が動き出した。
『凄い!!凄い!!この汽車走ってるわ♪』

207 :創る名無しに見る名無し:2014/05/10(土) 00:08:44.48 ID:4I341IJc.net
良子を乗せた汽車は、やがて何かの乗り物の中に着いた。
すると誰かが声をかける。
「着きましたよ。」
『ここどこ?あなた誰?』
そこには宇宙人がいた。
「はじめまして。私は宇宙人。今は宇宙にいます。」
『宇宙?もしかして、ここは宇宙船?』
「そうです。ここは宇宙船です。あなたが被っている壺を渡したください。」
『わかりました。』
良子は宇宙人の言いなりにになって、脱ぎ辛そうに頭から壺を抜いた。
「そのかわり、あなたにある許可をいただきたいのです。」
「許可?」
「はい。我々は地球の人類を滅亡させ、私達の住処にしたいのです。」
「バッカじゃないの?許可するわけないじゃない!!第一、あなたたちに地球を明け渡すつもりはないわよ!!」

208 :創る名無しに見る名無し:2014/05/10(土) 00:11:09.77 ID:4I341IJc.net
「なら、映像に出しましょうか?」
ブゥゥゥーン。
コクピットのスクリーンに、赤く焼けただれた地球が映し出される。
「見えますか?私たちに従わないと、こうなりますよ。」
「これって、よく考えても、あなたたちが住めそうにないじゃん。」
「人類が滅ばなくても、あなたの人生は終わっているようなもの。もし、許可してくれるなら、あなたを私の星に連れて行ってよいでしょう。」
「その要求は一切受け入れられないわ1!お断わりよ!!」
良子は手に持っていた壺を、再び頭からすっぽり被って、汽車に飛び乗った。
『宇宙船を滅茶苦茶に壊して、脱出するわよ!!』
汽車は猛スピードで走り始めた。
「壺少女が乗った汽車を止めて、壺少女を捕えろ!!」
宇宙人は良子が乗った汽車を止めようと、レーザービームガンを発射するなどした。
だが、汽車は良子の指示に従うかのように、宇宙船の至る所を破壊しながら暴走しているため、もう誰にも止められない。
『汽車さん、もっとやれ!!』
ドーン!! ドーン!!
ドガッ!!ドガッ!!

209 :創る名無しに見る名無し:2014/05/10(土) 00:13:44.04 ID:4I341IJc.net
「このままでは壺少女を止められません!! もう逃げられます!!ウァーッ!!グフッ。」
「壺少女よ、そろそろ宇宙船から脱出じゃよ!!つかまってるのじゃ!!」
『イエス、サー!!』
良子は汽車にしっかりつかまった。
良子を乗せた汽車は、宇宙船のコクピットを突き破って、宇宙船から脱出した。
宇宙船は良子を乗せた汽車に内部をほぼ破壊された挙句、汽車が宇宙船から脱出して間もなく爆発して、粉微塵に砕け散った。
『汽車さん、ありがとう!!地球のみんなが助かったわ!!』
良子は宇宙船が爆発して、粉微塵に砕け散ったのを見届けてから、汽車にお礼をした。
「壺少女よ、例には及ばんわよ。ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ!!」
『汽車さん、またぁその決め台詞ですかぁ?フフフ♪』

210 :創る名無しに見る名無し:2014/05/10(土) 00:16:48.95 ID:4I341IJc.net
やがて、良子を乗せた汽車は、雑木林の洞穴の前に着いた。
空は相変わらずの曇り空だが、雲の切れ間から西日が差していた。
「ありがとう、壺少女よ、そなたのお蔭で、宇宙人の地球侵略が阻止されたのじゃ。」
『その声、あの時のお爺さん、いや、坂上さんなの?』
「そうじゃ、坂上じゃ。だがそなたの目の前の汽車が、ワシの本当の姿で、老人は仮の姿だったのじゃよ。」
『ヘェ、凄いわ♪格好良かったわよ♪』
「そうそう、壺少女よ、そなたの名前は甕川良子じゃったな。黒髪のショートヘアが本当の姿じゃっな?。」
『はい、そうです♪名前♪あだ名はヨッピー♪あっ、ヨッピーっと呼んでね♪○○県○○市○○町の、○○小学校6年生の、ラブリーな女の子でーす♪』
「ほう、ヨッピーか、いい名前じゃな。」

211 :創る名無しに見る名無し:2014/05/10(土) 00:20:36.19 ID:4I341IJc.net
『ありがとう♪坂上さん、じゃ、あなたにダンスをお披露目するわ♪』
『シャラララー♪シャラララー♪』
『ランラランラン♪ランラランラン♪』
良子は、壺をすっぽり被った姿のままで、歌を歌いながら、長靴をカポカポ鳴らして、雲の切れ間から差している
西日を浴びながら、汽車の前でダンスを披露した。
「おお、素敵なダンスじゃな、ヨッピー。楽しかった。でも、そろそろ、ワシは次の任務を遂行しなければならない。
それじゃ、これで失礼するぞ。さらばじゃ、ヨッピーよ!!」
『坂上さんもいつまでもお元気で!!ありがとう!!バイバイ!!』
良子は、手を振りながら、汽車が空に飛んでいくのを見届けた。
『さあ、うちに帰らないと。ママとパパが待ってるわ♪』
良子は、壺をすっぽりと被ったままの姿で、楽しそうに「カポッカポッ・・」と長靴を鳴らしてスキップをしながら、家路
についたのだった。
だが、長靴を履いた壺少女に、世界は救われたことを知る人は誰もいない…。
                                                                 (完)

212 :創る名無しに見る名無し:2014/05/10(土) 00:21:56.29 ID:4I341IJc.net
(訂正)
>>208
× 「その要求は一切受け入れられないわ1!お断わりよ!!」
○ 「その要求は一切受け入れられないわ!!お断わりよ!!」

213 :創る名無しに見る名無し:2014/05/11(日) 23:18:44.28 ID:3vZaRcnS.net
(訂正)
>>207
× 「そうです。ここは宇宙船です。あなたが被っている壺を渡したください。」
○ 「そうです。ここは宇宙船です。あなたが被っている壺を渡してください。」

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