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  〜〜 彼の鐘が鳴る 〜〜

1 :せっかちな名無しさん:2015/06/18(木) 21:07:03.90 ID:h8B64bft6
夜の世界は長い。それが雨の降る灰色ののちの漆黒の暗雲の世界ならばなおさらであろう。誰もが家に隠れて延々と空が晴れてこの長い夜が明けるのを待つのである。
誰かが外に出るとき、外には冷たく冷ややかな雨風が当たり、頬をかすめ、すべてを凍てつかせんとばかりに張り切って汝らを誘うだろう、この世の死に絶える道へと。
だが誰もが知っている通り、この世の夜はしとしとと流れ落ちる雨の中でも静かに愛と詩作と交錯を育み芸術を生み出す至高の境地であり、誰もが思っている程の狂気
ではないのである。あるとしたら何もかもがすべてが幻想のさ中に支配された偶像の冷酷さを被った人間たちの衆の為せる低俗で野蛮さに満ちたおろかな手品であり、
誰もがこの冷たく悲しげな暗い静かな夜とはまったく関係のない、軽率で軽薄な事の次第であり、失笑を誘う程度の滑稽さでしか足りえないのである。すべては空想で
あり、何者も、これらの幻想に誑かされる事に是といった意味はないのであろう。すべては幻想であり、まやかしなのだからね。おっとトーストが焼きあがったな!ふん。
まあ、何はともあれ、これらの夜が長い事はまったく言うまでもないな。これらは今の僕が垂れ流してるのと同意義のすなわち妄言であり、大した出来合いではない。
だが、そのさ中にいらっしゃる主人の皆々様を楽しませる物語を用意するには持って来いの話だろう?誠、僕は何を言っているんだろうか?まあ、どうでもいいけどね?
さて、この雨の降る夜に誰か来たようだ!彼を見てみよう。どれどれ・・・?何々・・・?あ、車か。金持ちの中には不思議な事に馬車で来るという酔狂なやつがたまに
いるのだが、やはり大体金のある現実的なカルトに腰を落ち着けるリベラリストとかいうのは、この国でも当然のごとく自動車を使うんだね?ふむ、非常に珍しい事だ。(?)
何て言ったって、この州では田舎者の中世史観以外のものが当然のようにあるからね。現実的でなくては!

2 :せっかちな名無しさん:2015/06/18(木) 21:08:11.59 ID:h8B64bft6
けっこう書き込めるもんだな?AAモードでやってるんだけどさ。面白いぜ!

3 :せっかちな名無しさん:2015/06/18(木) 21:42:33.63 ID:h8B64bft6
さて、いい車だね?ふむ、こりゃあ僕がけなすまでもないな。傷が一つもまるでない!
うん、かなり洗練された車のようだね?これなら何もこの居酒屋の近くでなくてもいい!
もっと洗練された空間に行ってきて楽しく社交クラブで呑みに行って来るといいだろうね。
何て言ったって、人間にはそれぞれの個性がつきものだ。個性があるならば、洗練された
その感性を持って己の個性を気持ち好く発揮できるところに行くのがオススメだ。ん?何故
この酒場で呑ませるのを避けたがるのかって?そりゃあお前さんよ!この僕が悪い事をし
ているとでも思っているのかい?何、あれは別段何も公正さを欠いた隠密機動部隊なんか
でも羽根のない法曹家くずれの美青年なる狡知の利く公安警察なんかでも何でもないよ。
あれはただの一介の警察官、つまりこの街のお巡さんさ。何でそんなの分かるかって?僕が
知らないのが分からないのかい?だって勝手に頭に浮かんでは色んな言葉が去り行くのだ
から、これ以上の説明できない事柄は僕の人生では一度たりともないよう!ともかく彼は警
察官なんだ。ほら君も敬いたまえ!あの帽子をご覧よ、国のバッジが帽章となって僕らの愛国
心をこころの彼方まで見透かして面白く眺めていてくれているんだよ。脱線したらあの帽章が
僕らの乗っている機関車『戦後パトリオッタァ』をもと走っていたこの線路(こう言って僕は自分
の股の下を指さしたのだった。彼は僕が何を言っているのか理解していないようだった。まっ
たく!この愛国心が分からないのかね!?)に引き戻してくれるんだ。どうだい?最高だろう?

黒い無地の車から拳銃とともにさくさくと降りて、男は雨を避けるように街の日除け兼雨除けに
駆け込んだ。そこでペン付きの手帳を取り出して出しやすい位置にしまっておく事にしたようだ
った。みすぼらしい身なりの酒くさい多くの客人たちはそんなのを目にもかける事もなく、ただ自
分らの酒と賭博と談話の世界に入り浸っていた。何にしたって、今は夜中の2時を回っている。
酒場の全域に漂うタバコの煙のゆらめきですら、まるでアヘン窟の麻薬の香りのような趣向を
思い起こさせる空間になっていもいたのであるから、娯楽に酒のこのタバコ臭い空間に誰が入
って来ようが、割とどうでもよかったのである。この来客者自体も身なりは雑で着崩した格好だ
った。とはいえ、何処か真面目で小奇麗な着こなし方をしており、巷の恍惚感を誘うような感じ
ではあったので、この後の印象受けがかなり良かったのである。店と客側、どっちからも異論は
なかったという。誰が行っていたって?この俺だろ。この俺が誰かって?俺に訊かれても答えら
れないな?だって何も分からないんだものな!はははははははははは!!!俺は誰でもない
からね。くく・・・。

4 :せっかちな名無しさん:2015/06/18(木) 22:29:42.77 ID:h8B64bft6
見守りて世界に声を枯らしたように高い鈴が鳴って、BAR『マロリンギ』に男が入ってきた。
店の女性が飼っている小さなカナリアが鳥かごの中で研ぎ澄まされた幼い声で時折鳴い
ているのが居心地良かった。勿論タバコの煙が店側に来ないようにと三つの小型の扇風
機を一般席が大多数を占める一階の大広間のカウンターに一つ、二階の上等席に二つず
つ対となる隅の角っこの引き出し付きの台座とともに置いてあった。一階には草原を駆ける
遊牧民の誇り高い狩りを描いた中世の絵画や、農作業をして昼間の休息を得る農民たちの
娯楽の踊りと楽器演奏の様が、中ぐらいの大きさの絵画の壁掛けに収められていた。本を
読む読書家の知性溢れる瞳がお茶を淹れに来た奥さんを日常感を込めてみつめている光景
が収められている物もあった。何にせよ、趣味は何と言っていいか分からないが、何とも上流
志向のお店であった。何だかんだでお酒は質が良く、安い物も高い物もしっかりと揃えて出し
てくれる、つまみも手作りでなおかつ美味い、究極の上流階級に嗜好が特化したお店であった。
ブルジョアジーは一階と二階で静かにもてなうのが流儀のようである。しっかりと用心棒も数人
日替わりで定期的に就いており、安全で素晴らしい夜中の賭博を提供してくれていた。

黒髪の女店主はガタイが小さい華奢な人物だが、とても理にかなった目をしていた。何とも言え
ない優しさと正義感を湛えながら、ただひたすらに他者のために笑顔を目にしていたくって平和
な日常を求める者の覇気があった。一階にも二階にもそれなりに書物が本棚に納められており、
知的な活動も在りだった。多少はガタイのいい用心棒が一階に出入りし、二階には玩具用の紙幣
と金銭でずっと酒やつまみを飲み食いしながらプラスチック製の柔らかい使い古しの入ったカルタ
でまさに黙々と博打をやっている者たちが店奥で時折休憩を取りながら遊びがてらに客を眺める
者が二人一組で二グループほどいた。女店主は真鍮製の十字架を首元に掛けながら自然な風に
波打った長い髪を後ろでまとめながら、香水をつける事もなく、ただひたすらに一人のコックの青年
とともに料理を手掛けて後で洗った食器を適当に丁寧に拭きながら、元気そうに時折口の端をにこ
やかにしていた。家族がいるらしく、結婚指輪をつけているのだが、ここで働いているのは彼女を含
め定期的に務めに来てくれている用心棒の男衆七人ほどで、料理が達者なそれなりの顔をしたそ
ばかすの少し入った赤髪の青年だけである。なお接待は女性がやるべきなのだが、ここでは用心
棒の内の二、三人ほどが嬉々としてやっていた。高給なのにも関わらず特にやる事もないので、自
分らの部屋に戻って何かをするよりもお客に何かを出す事の方がいいというものがこの二、三人
ほどいたのである。女店主の影響か、何処となく店の店員の雰囲気は好く、男ばかりの職場にも関
わらず落ち着きのある店だった。ただしタバコの臭いはきつかったかったので、やはりひとは選ぶ余
地のある上流階級向けのお店だった。

とはいえ、やはり品があったである!

5 :せっかちな名無しさん:2015/06/18(木) 22:51:04.56 ID:h8B64bft6
「ようこそ、マロリンギへ!」背格好のいい若い男性が入って来た男に
話しかけた。
「ああ。」
「一階二階どちらに致しますか?本もありますので。」
男は自分の腕時計を見てから男性店員に言った。
「そうだな、二階の席で紅茶でも。その後は酒を仲間と飲むんだ。」
「左様ですか!承知しました。」店員は自然なほころびを顔に出した。
「ああそれと、」
「はい?」
「本は勝手に持って行っていいか?」少し興味があるようである。
「ええ、二階一階どちらでも構いませんよ。お好きなものを選びくだ
さい。最近は読書をする方が減っていまして、是非お楽しみください。」
「そっか、分かった。ありがとう。」
背格好の近いこの男性店員は店の奥へと下がっていった。女店主がこの
店員に目くばせしているのを男は見逃さなかった。店員は首を少し横に
振っていたので、少し不思議な安心感があった。ただ彼にはあの黒髪の
女性が何かを隠して高潔に生きているのは感じた。目から見て違うと
分かったのである。公安に追われているのではないとはすぐに理解した。
考える事のない混じり気ない信念が垣間見えたからである。死んでいる
ようで生きている、とても高潔な鋭いおぞましい目つき、まるですべて
を見ているかのような目であった。どう口に出していいが分からないが、
まるで何かを守っている神様の下僕ような不可思議な忠実さと貢献の意識
をその目と姿全体から見て取った。何せ、動きも品正だったのだ。ふと
した瞬間の光景であったが、彼の脳内の議会では異論はまったく出なかった。彼は一階の本を手に取ると、せっせと二階へと上がっていった。階段は
ギシギシと一歩ごとに高い軋みの音を立てるのであった。相変わらず一階
での客人たちの大らかな博打と談笑は続いていた。酒も回ってきて寝ている
者もちらほらといたが、気に掛ける者は特にいなかった。まあ他人なんて
本来そんなもんである。

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