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ロスト・スペラー 13

1 :創る名無しに見る名無し:2016/02/12(金) 22:00:46.81 ID:whtF4XjE.net
そろそろ時間軸を未来へ。
後、テンプレは元に戻します。

過去スレ
ロスト・スペラー 12
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1442487250/
ロスト・スペラー 11
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1430563030/
ロスト・スペラー 10
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418203508/
ロスト・スペラー 9
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1404902987/
ロスト・スペラー 8
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1392030633/
ロスト・スペラー 7
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1377336123/
ロスト・スペラー 6
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1361442140/
ロスト・スペラー 5
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1347875540/
ロスト・スペラー 4
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1334387344/
ロスト・スペラー 3
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1318585674/
ロスト・スペラー 2
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1303809625/
ロスト・スペラー
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1290782611/

409 :創る名無しに見る名無し:2016/06/01(水) 20:00:10.91 ID:Za1dKEkI.net
テルーシアも又、コバルトゥスと同じ物を見て、驚愕した。

 「何これ……?
  どう言う事なんですか、コバルトゥスさん?
  リベラちゃんは生きているんですよね?」

 「俺に聞かないでくれよ……。
  こっちだって全く訳が解らないんだ。
  無事だと良いけど……」

2人共、唯々混乱するばかり。
取り敢えず、2人して近くに痕跡が残っていないか、更に細かく調べてみる。
だが、コバルトゥスがテルーシアから離れた、その時!

 「わわぁーっ!?」

少し間抜けな悲鳴が響いた。

 「テルーシア!」

コバルトゥスが振り返ると、テルーシアは黒い影に沈み込んで行く所だった。
既に彼女は腰まで埋まっていて、駆け寄っても間に合いそうに無い。

 「L3L56B4、精霊よ!」

コバルトゥスは地面に手を突き、精霊魔法で地中からテルーシアを押し上げ、救出しようとした。
しかし、土の中には何の反応も無い。

 (何っ、地面じゃない!?)

彼が驚いている間に、テルーシアは完全に影に呑まれて、姿を消してしまう。
テルーシアを呑み込んだ影は、小さくなりながら、道沿いの木立の影に紛れてしまった。

410 :創る名無しに見る名無し:2016/06/01(水) 20:02:39.77 ID:Za1dKEkI.net
全く理解不能な出来事に、コバルトゥスは呆然と立ち尽くし、懸命に知恵を働かせる。

 (2人共、あれで死んだとは思いたくない。
  ……じゃあ、何だ?
  探知に掛からないと言う事は、空間転移?
  そんな大逸れた魔法が?
  どこに運ばれたんだ?
  どうにか場所さえ判れば……。
  リベラちゃん……)

彼は両目を閉じ、精霊に語り掛けた。

 (守護精霊よ、応えてくれ。
  君の居場所を教えてくれ。
  I1N5・F1E1J2H、I1EE1・J3K1B7――)

風がコバルトゥスの思念を運び、彼の魔法資質を超えて、遠く拡散して行く……。

411 :創る名無しに見る名無し:2016/06/02(木) 20:17:28.38 ID:t5UdLUt5.net
所変わって、攫われたリベラとテルーシアは、薄暗い部屋の中、気絶した状態で、同じ牢の中に、
閉じ込められていた。
牢は鉄格子の1面を除いて、他の3方は壁になっている。
先に気が付いたのは、リベラ。
彼女は現状を確認する。
特に枷の様な物は無く、手足は自由に動くが、魔力の流れが乱れており、弱い共通魔法は使えない。
密かに鉄格子を抜ける事は不可能だ。
番人は見当たらないので、思い切って壊しても良いかも知れないが……。
その前に、リベラはテルーシアの体を揺すって起こした。

 「起きて下さい、テルーシアさん」

壁に凭れて眠っていた彼女は、小さく呻いて目を覚ます。

 「ううーん……、ママ……リベラちゃん?」

少し寝惚けていたテルーシアは、リベラの姿を認めると、飛び起きた。

 「はっ、リベラちゃん!
  大丈夫?
  何もされてない?
  ここは?
  一体何が、どうなったの?」

 「落ち着いて下さい、テルーシアさん。
  恐らくは、誘拐犯の拠点ではないかと。
  とにかく目的通り、犯人に近付く事は出来た様です」

この状況で前向きなリベラに、テルーシアは感心するが、同時に危機感も抱く。

 「それより自分の身の安全を考えなよ!」

412 :創る名無しに見る名無し:2016/06/02(木) 20:18:52.07 ID:t5UdLUt5.net
彼女が声を上げた直後、部屋の中に人が入って来た。
リベラとテルーシアは息を呑む。
2人の前に現れたのは、フード付きのローブを着た小柄な男性……。
ラントロックだとリベラは直感した。
薄暗い部屋の中で、彼の目が濃い赤に妖しく輝く。

 「ラント!」

リベラが呼び掛けると、小柄な男性は一瞬身を強張らせた。
その反応から、リベラは確信する。

 「ラントロック!
  やっぱり貴方なのね!
  どうして、こんな事を……」

彼は観念して、リベラに素顔を見せた。

 「……義姉(ねえ)さんには敵わないな」

気取った物言いに、リベラは反感を抱く。

 「自分が何をしているか、解っているの!?
  若気の至りや、悪巫山戯じゃ済まないんだよ!」

彼女が怒鳴り付けると、ラントロックは真顔で答えた。

 「知らないね」

413 :創る名無しに見る名無し:2016/06/02(木) 20:22:27.91 ID:t5UdLUt5.net
冷淡に返されて、リベラは益々激昂する。

 「はぁ!?
  知らないって!?」

 「本当に知らないんだ。
  俺は奴等に言われた事をやってるだけだし」

 「何の為に?
  その『奴等』に協力しなくちゃ行けない理由って何?」

ラントロックはリベラから目を逸らして答える。

 「……この世界を変えるんだ。
  共通魔法使いの常識に縛られた、矮小な世界を」

 「馬鹿気てる!
  そんなの無理に決まってるじゃない!」

否定するリベラに、ラントロックは自信に満ちた声で反論した。

 「無理じゃないさ」

その力強さに、リベラは胸の高鳴りを覚える。
魅了の魔法か、それとも怒りか、将又不吉な予感を働かせたのか、彼女自身にも判らない。
心の動揺を抑える為、リベラは実力行使に出た。

 「好い加減にしなさいよ!!
  A4L4B2!!」

魔法で鉄格子を錆びさせ、蹴り飛ばして破壊する。

414 :創る名無しに見る名無し:2016/06/02(木) 20:29:52.20 ID:t5UdLUt5.net
ラントロックは苦笑いした。

 「義姉さん……。
  変わってないね」

 「何でも良いから、帰って来なさい!!」

 「『あいつ』が居る限り、それは出来ない」

「あいつ」とは彼の実父にして、リベラの養父、ワーロック・アイスロンの事だ。
事毎に実の父親を嫌厭するラントロックが、リベラは許せない。

 「お父さんに対して、そんな言い方!!」

声を荒げるリベラに、ラントロックは悲し気な目を向けて零す。

 「……義姉さんは何時も、親父の事になると必死なんだ」

リベラは息が止まるかと思った。
ラントは自分が養父に想いを寄せている事を知っている……?
過ぎった思考の処理に迷い、身動きが取れなくなる。
その隙を狙って、彼女の背後から何者かが襲い掛かった。

 「あっ、何を!?」

リベラを羽交い絞めにしたのは、テルーシアだった。
彼女の瞳には生気が無く、丸で操られているかの様。

 「……ラント、貴方の魔法ね!?
  卑劣なっ、恥を知りなさい!」

 「悪く思わないでくれよ、義姉さん。
  これは義姉さんの為でもあるんだ」

 「巫山戯ないで!
  私の為なら、こんな事は止めて、戻って来てよ!
  又、家族で暮らそう!」

リベラは必死に訴えたが、ラントは小さく呟いて背を向けた。

 「……嘘を吐き」

一体何が嘘なのか?
困惑するリベラを、再び黒い影が覆う。
闇の中で彼女は意識を失った。

415 :創る名無しに見る名無し:2016/06/03(金) 22:20:38.19 ID:1dOpA0vu.net
次にリベラが目を覚ましたのは、屋敷の一室、柔らかいベッドの上だった。
特に身体を拘束されてはおらず、ある程度の魔法も使える状態。
部屋は一見した所、普通の客室の様。
窓の外には木々が生い茂っており、見通しが悪い。
どこか町から遠い森の中だと推測する。

 (普通、閉じ込めたりしない?
  助かるけど……)

リベラは怪しみながら、部屋の外に出てみた。
先ず、正面に大きな吹き抜けが見える。
リベラの現在位置は、吹き抜けを囲む2階の廊下の端だ。
吹き抜けから階下を覗くと、多くの若い娘達が働いていた。

 (もしかして、連れ去られた女の子達?)

彼女等に焦りや戸惑い、恐怖は見られず、気持ち悪い位に落ち着いている。
これはラントロックの魔法の所為だと、リベラは直感した。
人を操る魅了の魔法で、少女達を逃がさない様にしているのだ。

416 :創る名無しに見る名無し:2016/06/03(金) 22:22:41.26 ID:1dOpA0vu.net
リベラは忍び足で物陰を移動し、少女達から姿を隠して、屋敷の正面玄関に向かう。
所が、そこでも少女達が番をしていた。

 (こっちからは無理か……。
  でも、一体誰が何の目的で、女の子達を?
  この屋敷で働かせる為?
  そんな訳は無いよね……)

屋敷の中を徘徊する少女達は、リベラに全く反応しない。
誤って物音を立ててしまっても、怪しむ素振りさえ無い。
リベラは大胆に行動する事にした。
正面玄関が通れないなら、勝手口を抜けようと、彼女は考える。

 (……あっ、テルーシアさん……)

厨房ではテルーシアが料理を作っていた。
そこの少女達は楽しそうに談笑している。

 「あー、良かった。
  料理作れる人が少なくて困ってたんだよね」

 「大人の人が来てくれて本当に良かった」

彼女等は他とは違い、ある程度の自我がある様子。
しかし、脱出しようとしていないので、洗脳されているとリベラは感じた。
唯々諾々と従うだけの人形も恐ろしいが、自我を持って進んで行動する物は、又別種の怖さがある。

417 :創る名無しに見る名無し:2016/06/03(金) 22:27:15.20 ID:1dOpA0vu.net
少女達の中にも、自我がある物が混ざっていると知って、リベラは慎重さを取り戻した。
勝手口は目の前だが、果たして、通り抜けられるだろうか?

 (もしかしたら、気付かれないかも?)

そう彼女が考えたのには、勿論理由がある。
先ず、服装が他の少女達と同じ、制服だと言う事だ。
それに厨房には他にも少女が出入りしている。
素知らぬ振りをして、涼しい顔で歩けば……。
リベラは意を決して、歩き出す。
所が、直ぐに1人の少女に呼び止められた。

 「あっ、待った、そこの!」

リベラは反射的に足を止める。
表面は平静を装ったが、心臓は早鐘を打っていた。

 「あんた、見ない顔じゃん?」

少女は立ち上がって、リベラに近寄って来る。
何故、判ってしまったのか?
答は「攫われた少女達は同じ公学校の制服を着ている」為だ。
然して大きくない町で、同じ公学校に通っているのだから、大抵は知り合い。
見慣れない者が混じっていれば、一発で判る。
リベラは公学校に通っていないから、その感覚が解らないのだ。

418 :創る名無しに見る名無し:2016/06/04(土) 19:57:49.26 ID:jZzyTAGi.net
少女達はリベラを取り囲もうとする。
逃げるべきか、戦うべきか、リベラは悩んだ末に、反応しないと決めた。

 「……どうしたのさ?」

 「何とか言えないの?」

何を聞かれても、白痴の様に呆っと少女達を見詰め返す。
屋敷を徘徊している他の少女達を真似て。
その作戦は上手く行った。
少女達は互いに見合って、どう言う事かと相談し始める。

 「この人ってさ、あれじゃない?
  新しく連れて来られた人」

 「あっ……何だっけ?
  何か言われてたじゃん?」

 「起きたら知らせろ?」

 「誰に?」

 「えーと、誰だっけ?
  マスターじゃなくて」

 「あの人だよ、貴族様」

 「あー、公爵様か!」

 「そうそう、公爵様!」

少女達は内輪で盛り上がる。

 (『マスター』に『公爵』?)

誰の事だろうかと、リベラは疑問に思った。
少女達を操っているラントロックが「マスター」だとして、もう1人「公爵様」と呼ばれる人物が居る。
その公爵様が、主犯格なのだろうか?

419 :創る名無しに見る名無し:2016/06/04(土) 20:01:03.87 ID:jZzyTAGi.net
思案するリベラの腕を、少女達は掴んで引っ張る。

 「……で、公爵様は?
  どこに居るの?」

 「どこだろう?」

しかし、どこへ連れて行けば良いか分からず、困った顔をするだけ。

 「取り敢えず、マスターの所に連れて行けば?」

 「でも、公爵様はマスターには知らせるなって……」

 「――言ってた?」

 「言ってた様な?」

どうも少女達は頼り無い。
洗脳される以前から、大人の注意や指示を真面に聞かないのだろう。

 「それって怪しくない?
  マスターには教えるなって?」

 「マスターと公爵様、どっちの言う事を聞くの?」

 「……マスターと公爵様では、公爵様が上じゃんね?」

 「でも、私達のマスターは、マスターだけじゃん?」

 「な、成る程」

 「頭良いじゃん」

彼女等は奇妙な忠誠心を発揮して、リベラを「マスター」の元へ連れて行く。

420 :創る名無しに見る名無し:2016/06/04(土) 20:03:19.00 ID:jZzyTAGi.net
少女達は屋敷の中央にある、主の間へリベラを連行した。

 「マスター、マスター!
  この人どうしましょう?」

彼女等が「マスター」と呼んだのは、やはりラントロック。
ラントロックは立派な椅子に腰掛け、丸でハーレムの主の様に、多数の少女を侍らせている。
魅了された少女達は、皆々恍惚の表情で、自らラントロックの側に寄り集まっている。
徐に顔を上げたラントロックは、リベラと目を合わせて、慌てて居住まいを正した。

 「わぁっ、義姉さん!?
  違うんだ、これは!」

彼を取り囲んでいた少女達は、主の狼狽振りにも惚けた儘。
リベラは軽蔑の眼差しで、ラントロックを睨み付けた。

 「最低」

 「いっ、いや、そうじゃない!
  疚しい事は何も……!」

 「マスターだって?
  結構な御身分だ事で」

2人の遣り取りを受けて、リベラを連れて来た少女達は、小声で話し合う。

 「マスターの?
  お姉さん?」

 「拙(まず)ったかな……」

 「やっぱり会わせない方が良かったんじゃ……」

 「何さ、今更」

彼女等は開き直って、傍観を決め込んだ。

421 :創る名無しに見る名無し:2016/06/05(日) 18:05:11.84 ID:c4HsEPnD.net
とにかくラントロックはリベラに弱い。
魅了の魔法が通じない事もあり、正面から挑み掛かられると、全く反抗出来ない。
体力面でもリベラは養父と旅をし、武術の手解きを受けているので、ラントロックより上。

 「『マスター』ってのは言葉の綾で……」

 「綾も何も、そう呼ばせたんでしょう?
  態々『御主人様』って、貴方そう言う願望があったのね」

実の所、ラントロックは女子に囲まれて、少し好い気になっていた。
他人を意の儘に操る快感。
それが負い目になって、益々リベラに逆らえない。

 「こんな下らない事をやる為に、家(うち)を出て行ったの?」

 「それは違う!」

ラントロックは初めて強く言い返した。

 「何が違うのよ!」

ラントロックが家出したのは、「家族」と言う関係を打ち壊す為。
義弟と義姉の関係から離れ、1人の男として、リベラと向き合う為だった。

 「おっ」

 「お?」

 「俺が好きな――」

彼が一世一代の告白をしようとした時、部屋全体が暗んで、艶のある女の声が響き渡る。

 「ホホホ、中々勇ましい娘よ……」

422 :創る名無しに見る名無し:2016/06/05(日) 18:11:35.89 ID:c4HsEPnD.net
突如、ラントロックが掛けている椅子の後ろから、擦るりと黒衣の女が姿を表した。
血色が悪いを通り越して青白い肌と、真夜青の魔法色素、そして大河の淀みの様に、
重々しく緩やかな魔力の流れは、非人間的な物を感じさせる。

 「公爵様!」

リベラを連れて来た少女達は、声を揃えて言った。
リベラは敵意を露に、黒衣の女を睨む。

 「貴女が黒幕ね!!
  女の子達を攫って、何を企んでいるの!?」

黒衣の女は余裕を持って、鷹揚に答えた。

 「影の魔物を生む素材を提供して貰おうと思ってな」

 「影の魔物?」

 「我々が共通魔法使いに対抗するには、『兵力』が足りぬ。
  魔の子は確たる肉を持たねば、この世界に存在する事すら儘ならぬ。
  そこで『卵(らん)』を頂こうと言う訳だ」

リベラは彼女の言葉を完全に理解した訳ではないが、途轍も無く悍ましい企てがある事だけは、
読み取れた。

 「そんな事はさせない!
  大人しく女の子達を解放しなさい!」

 「言われて、素直に従うと思うか?」

黒衣の女が手を翳すと、部屋中の影が無数の獣の形を取る。

 「こんな貧弱な獣ではなく、もっと出来の良い物を作る為に、人の肉が必要なのだ」

それは徐々に実体化して、リベラを取り囲んだ。

423 :創る名無しに見る名無し:2016/06/05(日) 18:18:23.50 ID:c4HsEPnD.net
ラントロックは黒衣の女に指図する。

 「義姉さんを傷付けるな」

 「解っているよ。
  君は貴重な戦力だ。
  その願いを無下にする訳が無いじゃないか……。
  あの娘には、少し眠って貰うだけさ」

影の獣は焦り焦りとリベラに躙り寄る。
黒衣の女は、これ等を「貧弱」と言ったが、とても弱い生き物には見えない。
全体が真っ黒で、輪郭以外は見分けが付かず、体格こそ小さいが、狼の様に鋭い牙と、
虎の様に鋭い爪を持っている。
リベラは魔力石を握って、徹底抗戦の構え。

 「A4H1H3C5!!」

彼女は魔力石を高く掲げて、照射の魔法を発動させた。
魔力石から眩い光が放たれる。
影から生まれた物なら、光に弱い筈だと考えたのだ。
光を浴びた影の獣は、見る見る縮んで影へと引っ込んで行く。
黒衣の女は忌々し気に呟く。

 「これだから肉を持たぬ物は役に立たぬ。
  しかし、よく光に弱いと気付いたな」

感心する彼女に、リベラは怒りを打付(ぶつ)けた。

 「影を消す物は光!
  闇の中に還りなさい!」

リベラは魔力石を黒衣の女に向けて、慎重に詰め寄る。
黒衣の女は眩しそうに、衣服の袖で顔を隠した。

 「おぉ怖い怖い……」

だが、戯けた口調からは未だ余裕が窺える。

424 :創る名無しに見る名無し:2016/06/06(月) 19:33:06.14 ID:a9ZcJr3k.net
黒衣の女の足元で、黒い影が渦を巻く。

 「しかし、その勢いも、ここまでだ」

その中心から現れたのは、瞳に生気が無いテルーシア。
彼女は全く無抵抗で、黒衣の女に抱かれる。
黒衣の女はテルーシアの喉元に、影で出来た黒い刃を突き付けた。

 「卑怯な!」

リベラは足を止めざるを得ない。

 「ハハッ、善良な娘だ。
  さあ、抵抗を止めろ。
  然もなくば、どうなるか……解っているな?」

黒衣の女はテルーシアの喉に、影の刃を静かに埋めて行く。
赤い血が滲むのを見て、リベラは慌てて魔法の発動を中断した。
魔力石が輝きを失った隙を逃さず、黒い影がリベラを包み込む。

425 :創る名無しに見る名無し:2016/06/06(月) 19:36:26.02 ID:a9ZcJr3k.net
リベラは影に手足を縛られ、直立の儘、身動きを封じられた。
更には魔力石も影に奪われ、黒衣の女の手元に。
リベラの悔しそうな顔を見て、黒衣の女は満足気に微笑んだ。

 「この娘は良い素材になりそうだ」

聞き捨てならない発言に、ラントロックは勇んで黒衣の女に命じる。

 「義姉さんには手を出すな!」

 「フフフ、安心しろ。
  君が危惧している様な事はしないよ。
  只、卵を頂くだけだ」

 「巫山戯るな!
  止めろ!」

ラントロックは尚も強く止めた。
黒衣の女は呆れた様に、溜め息を吐く。

 「生きた卵さえ採取出来れば良いのだ。
  鳥の様に卵を産ませる事は無理だが、魚の様に腹を掻っ捌く訳じゃない。
  傷付けずに済ます方法は幾らでもある」

彼女の思考は全く非人間的である。
悪意や害意無く、そう言う事が出来るのだ。
リベラは下腹部が縮み上がるのを感じた。
無意識に体を守ろうとする反応が表れ、内股になって腰が引ける。

 「止めろと言っている!」

恐怖に強張るリベラの顔を見て、ラントロックは更に強硬な態度に出た。

426 :創る名無しに見る名無し:2016/06/06(月) 19:41:10.14 ID:a9ZcJr3k.net
彼が手を掲げると、少女達が一斉に呪文を唱え始める。

 「A4H1H3C5、A4H1H3C5……」

人を操る魔法は、統一した動きをさせるには、非常に都合が好い。
少女達の個々の魔法資質は弱くとも、集まれば強大になる。
黒衣の女は顔を顰めて、小さく舌打ちした。

 「はいはい、解ったよ。
  君の協力を失う訳には行かないからな」

その言葉を聞いたラントロックは、少女達に詠唱を止めさせる。
黒衣の女は、その少女達を一覧して、邪悪な笑みを浮かべた。

 「素材は他にもある事だし……。
  1人に拘る理由は無い」

卵を奪われずに済んだリベラだが、彼女は自分だけ助かる事を良しとしなかった。

 「止めなさい!!
  人を使って実験なんて、貴女は何とも思わないの!?」

リベラは同じ女性として、黒衣の女に訴え掛けたが、それは無意味。

 「別に」

 「貴女も女性でしょう!?」

 「だから?
  私では肉ある子を産めぬ。
  こうするより他に量産の手段が無いのだから、仕方無かろう」

黒衣の女は人間ではない。
限り無く魔物に近い、邪悪な魔法使いだ。

427 :創る名無しに見る名無し:2016/06/06(月) 19:47:54.99 ID:a9ZcJr3k.net
しかし、彼女の台詞をリベラは違う形で捉えた。
魔物や旧い魔法使いに対する知識の不足から、黒衣の女は不妊症ではないかと思ったのだ。
発言を常識的に受け止めれば、そうなるだろう。
リベラが同情を面に表すと、黒衣の女は訝った。

 「……ム、何だ?」

 「いえ、その……」

リベラは遠慮して口篭る。
この状況で迂闊な発言をして、怒りを買うのは賢くないと解っていた。
黒衣の女は益々気になり、強く迫る。

 「言え」

数極思案した結果、リベラは彼女を刺激しない様に、話を逸らす事にした。

 「……どうして、こんな事を?」

黒衣の女の心に寄り添う様に、努めて穏やかにリベラは尋ねる。
不気味に感じた黒衣の女は、一層怪訝な顔付きになる。

 「我等には兵力が足りぬと――」

 「何の為に兵力が?」

 「共通魔法社会を転覆させるのだ」

 「……何の為に?」

 「理由を問うのか?
  フフフ、可笑しな奴だ」

目的等ありはしない。
少なくとも、この女には……。
純粋なリベラは、それを読み取れなかった。
黒衣の女には心の最も深い部分に直隠した、大きな闇があると信じて疑わなかった。

428 :創る名無しに見る名無し:2016/06/07(火) 20:20:24.20 ID:BYheH0dn.net
彼女の説得を諦めたリベラは、今度はラントロックに訴える。

 「ラント、貴方は?
  こんな事に協力して平気なの?」

ラントロックは声こそ上げなかったが、判り易く動揺した。
これまで彼は影の魔物の量産計画を知らなかったので、黒衣の女に協力していたが、
その内容を知った今となっては、少なからぬ躊躇いがある。
沈黙して硬直するラントロックに代わり、黒衣の女が反論する。

 「卵を頂くだけなのに、何を大袈裟な。
  どうせ使い道も無く、月に1つ産んでは捨てている癖に。
  捨てる位なら、貰ってやろうと言うのだよ」

リベラは無意味に深読みして、悲しい瞳を彼女に向けた。

 「ええい、その目は何なのだ!
  先刻から何を考えている!?
  怒るなら怒れ!
  気味が悪いわっ!!」

黒衣の女が苛立って激昂した隙に、ラントロックは少女達に照射魔法を使わせた。

 「A4H1H3C5、A3H37、B3F3K4、BG46H1、A17!」

不意打ちに黒衣の女は怯み、リベラを拘束していた影は掻き消える。
黒衣の女は明かりを嫌い、俯いて顔を隠した状態で、ラントロックに抗議した。

 「裏切るのか、トロウィヤウィッチ!」

 「そうじゃない。
  目的は手段を正当化しない。
  それだけの事だ」

義弟の翻意に、リベラは喜びを顔と声に表す。

 「ラント!」

429 :創る名無しに見る名無し:2016/06/07(火) 20:21:55.77 ID:BYheH0dn.net
しかし、ラントロックは外方を向いて視線を逸らし、少女達に照射魔法を止めさせた。

 「……御免、義姉さん。
  未だ帰る訳には行かない」

黒衣の女は大きく溜め息を吐き、ラントロックを影に包む。

 「仕方の無い子だ。
  今回は許してやろう。
  しかし、それでは大義は成せぬぞ」

 「俺には俺の信念がある」

 「分かったよ。
  君の協力が得られぬとなれば、影の子の量産計画は中止だ」

黒衣の女は浅りと計画を取り止めた。
そんなにラントロックが重要なのかと、リベラは怪しむ。
黒衣の女とラントロックは、出会ってから最長でも数月しか経ってない筈。
魅了の能力が幾ら便利だと言っても、余りに対処が甘過ぎる。

 「そうと決まれば、こんな所に用は無い。
  撤退しようか」

逃げようとする黒衣の女を、リベラは呼び止めた。

 「待ちなさい!
  ラントを返して!」

 「そんなに彼と一緒に居たければ、お前も来るが良い」

黒衣の女はリベラを睨み、又も影で捕らえに掛かる。

430 :創る名無しに見る名無し:2016/06/07(火) 20:23:21.66 ID:BYheH0dn.net
再三窮地に陥り、リベラは己の無力を呪った。
テルーシアも少女達も、未だラントロックの支配下にあり、孤立無援の状態。
ラントロック一人なら、リベラだけでも何とかなるが、黒衣の女の存在が何より不味い。
リベラの懸念は人質にされてしまう事にある。
これから養父が外道魔法使いと対峙する時、或いは、ラントロックが心変わりしようかと言う時、
自分が囚われた儘では足枷になる。
特に、ラントロックが改心する可能性は高いと、リベラは信じている。
今回も、黒衣の女の真意を知って、協力を拒んだのだ。

 「放せ!」

リベラは藻掻いたが、影は黒脂の様に強く粘付いて解けない。
魔法を使おうにも、魔力石は手元に無い。
影はリベラの体を覆い尽くし、顔まで迫っている。
そう何度も気絶させられてなる物かと、リベラは必死に抵抗するが、焼け石に水。
彼女が諦め掛けた、その時、よく徹る声が部屋中に響いた。

 「A3H37、A3H37、A17!!」

黒衣の女の持つ魔力石が、激しく輝き、影を消し去る。
その声にリベラとラントロックは覚えがあった。

 「コバルトゥスさん!」

 「小父さん!?」

2人が声を上げると同時に、扉を蹴破ってコバルトゥスが突入して来る。

431 :創る名無しに見る名無し:2016/06/07(火) 20:25:51.87 ID:BYheH0dn.net
黒衣の女は余りの眩しさに、半身を吹き飛ばされていた。
魔力石が床に転がり落ちる。
しかし、外見に反して重傷と言う様子ではない。
表情は平静で、直ぐに影が寄り集まって、元の形に戻る。

 「何者だ?」

彼女の鋭い問い掛けに、コバルトゥスは余裕を持って答えた。

 「精霊魔法使い、コバルトゥス。
  この世ならざる物よ、去(い)ね!」

床に落ちた魔力石は、丸で黒衣の女を威嚇する様に、陽光を反射する水面の如く煌いている。
黒衣の女は警戒を露にして、ラントロックに覆い被さると、一瞬で影の中に沈んだ。

 「待って、ラント!」

リベラの呼び掛けも虚しく、2人は姿を消した。
肩を落とす彼女を、コバルトゥスは気遣う。

 「……リベラちゃん、大丈夫だった?」

 「は、はい、有り難う御座います。
  コバルトゥスさん、どうして場所が判ったんです?」

リベラの疑問に、コバルトゥスは魔力石を拾い上げ、ウィンクして答えた。

 「君に預けた精霊石さ」

続けて、彼は虚空を見詰めて言う。

 「……あの2人の気配は消えたよ」

リベラは安堵半分、落胆半分の溜め息を吐く。
黒衣の女の脅威は去ったが、結局ラントロックを連れ戻す事は叶わなかった。

432 :創る名無しに見る名無し:2016/06/08(水) 19:49:40.58 ID:HnSMRKrg.net
残された少女達とテルーシアは、暫し呆然としていたが、全員半角後には正気を取り戻した。
だが、彼女等に魅了されていた間の記憶は無く、何故屋敷に居たのか解らない。
テルーシアはリベラに尋ねた。

 「私が気を失っている間に何があったの?
  もしかして、全部終わっちゃった?」

 「はい、コバルトゥスさんが助けてくれました。
  事件の黒幕は、『公爵様』と言う黒衣の女でした。
  彼女の指示で女の子達は、この屋敷に集められていた様です」

 「それって、リベラちゃんが追っていた外道魔法使い?」

 「いいえ。
  でも……」

 「でも?」

 「無関係ではありませんでした」

リベラは黒衣の女と義弟ラントロックが、協力関係にある事を明かさなかった。
複雑な話なので、理解を得るのが難しくなるだけだと思ったのだ。
テルーシアは更に尋ねる。

 「その黒衣の女の目的は?
  何の為に、女の子を攫って、屋敷に集めていたの?」

 「分かりません。
  取り敢えず、諦めて逃げてくれたみたいですけど……」

リベラは何も知らない振りをして、黒衣の女の悍ましい計画を話さなかった。
ラントロックの協力を得られなくなり、魔物を量産する計画は頓挫した。
再び少女達が誘拐される事は無いだろう。

433 :創る名無しに見る名無し:2016/06/08(水) 19:51:34.56 ID:HnSMRKrg.net
女性陣はコバルトゥスに先導されて、ヘルバ町に帰還した。
全員気絶して連れ去られたので、町に帰る道を知っているのは、コバルトゥスだけだった。
当の彼は少女達に囲まれて、満更でも無い様子。

 「小父さんが私達を助けてくれたの?」

 「そうだよ。
  お姉さん2人に協力して貰って、拠点を突き止めたんだ。
  影を操る悪い魔法使いを、俺の魔法でズババババーっと蹴散らして……」

不安な状況で唯一の成人男性、それもダンディな渋味のある小父様となれば、少女達は自然に靡く。
魅了の魔法を使わなくても、少女達はコバルトゥスに寄り集まり、安心を得ようとする。
コバルトゥスは彼女等が望む様に、適当に話を捏ち上げ、物語を創作する。
ジャーナリストのテルーシアは、流石にコバルトゥスの語りを軽々には信用せず、リベラに確認した。

 「コバルトゥスさんの話、本当?」

 「大体、合ってます」

リベラは調子に乗るコバルトゥスを諌める事も、彼の話を訂正する事もしなかった。
コバルトゥスは自分が面に立つ事で、リベラが注目されない様にしている。
図々しく無神経に見えて、密かに他人を気遣える彼を、立派な大人だとリベラは感じた。
少女達に囲まれ、鼻の下を伸ばしている所には目を瞑って。

434 :創る名無しに見る名無し:2016/06/08(水) 19:53:51.53 ID:HnSMRKrg.net
少女達を町まで送り届けると、リベラとコバルトゥスは都市警察や執行者に詮索されない様に、
直ぐ出発する事にした。
後の説明は全てテルーシアに任せた。

 「何も言わずに去るんですか?」

テルーシアは2人に問い掛ける。
先ず、コバルトゥスが答えた。

 「あれこれ聞かれても面倒だからね。
  金も、物も、感謝の言葉も、自由さと気楽さには代えられない」

それを聞いたテルーシアは、リベラに目を遣る。

 「リベラちゃんは?」

 「私は外道魔法使いを追わなければなりません」

真剣な答に、テルーシアは何も言わず、2人を見送った。
暫く道を歩いて、リベラはコバルトゥスに尋ねる。

 「コバルトゥスさんは、どうして事件の解決に協力してくれたんですか?」

 「面白そうだったから……って言うのは冗談で、リベラちゃん、危なっかしいから。
  知り合いの子が危険な事に首を突っ込もうとしてたら、誰だって助けるだろう?」

 「お礼、本当に要らなかったんですか?」

 「そう言うリベラちゃんは良いの?」

 「私はラントの事がありますから。
  最初から謝礼は期待していませんでした。
  でも、コバルトゥスさんには、『どうしても』って理由は無いじゃないですか」

コバルトゥスは低く唸りながら、思案する振りをした。

435 :創る名無しに見る名無し:2016/06/08(水) 19:56:13.75 ID:HnSMRKrg.net
余り長く時間を掛けず、彼は答える。

 「世の中、損得ばかりじゃないって事さ」

それでもリベラは不信の目で、コバルトゥスを見ていた。
参ったなと、彼は頭を掻く。

 「君は俺を何だと思ってるの?」

 「余り善意の人って風には……」

リベラはコバルトゥスに助けられながら、何も返せないので、靄々していた。
彼女の側からコバルトゥスへの心理的な距離は未だ遠く、貸し借りを作りたくないと思っている。
又、少し間を置いて、コバルトゥスは小声で漏らした。

 「……お礼なら、欲しい物が無い訳じゃない」

 「何ですか?」

 「キスしてくれ」

 「え?」

 「頬っ辺で構わないから」

困惑するリベラに、コバルトゥスは小さく笑って、自らの頬を指した。
彼自身は軽い冗談の積もりだったが、リベラは数極逡巡した後、これで気が済むのならと、
軽く飛び跳ねて、口付けと言うには勢いが良過ぎた、半分頭突きの様なキスをする。
本当は、少し背伸びをして、軽く頬を掠める程度のキスをするのが理想だったのだが……、
僅かに身長が足りなかった。
コバルトゥスは吃驚して、目を白黒させる。

 「わったっ!?
  今のは……何?
  あれ、キス??」

 「……知りません」

リベラは間抜けなキスが恥ずかしくなって、無言で顔を背けた。

436 :創る名無しに見る名無し:2016/06/08(水) 20:06:54.58 ID:HnSMRKrg.net
「所で、リベラちゃん、何時まで制服着てるの? 気に入った?」

「あっ、忘れてました……。テルーシアさんに返さないと」

「今から戻ると面倒だよ? 彼女、何も言わなかったし、返さなくても良いんじゃないかな」

「えー……、でも、これを着る機会なんて二度と無いでしょうし……」

「だったら、俺が処分するよ」

「処分って?」

「良い値段で売れる所を知ってるんだ。利益は山分けで」

「はぁ……。では、お任せします」

437 :創る名無しに見る名無し:2016/06/08(水) 20:07:27.35 ID:HnSMRKrg.net
このスレは、ここまで。
次のスレで会いましょう。

438 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 14:15:07.86 ID:7ijrHxZI.net
一週間以上経ったのに、どうして落ちないのか?
仕様が変わったんでしょうか?

439 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 14:19:37.55 ID:7ijrHxZI.net
一応512KBまで書き込んでみます。
中途半端に話が切れるのは嫌なので、取り敢えず難読漢字に就いてでも。

440 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 14:24:58.82 ID:7ijrHxZI.net
漢字を多用する理由は、文章の区切りに困るからです。
平仮名で文章を繋ぐと、読み難く感じてしまいます。
漢字ばっかりでも読み難いので、そこも悩み所なんですが……。
ここで解説するのは普通は漢字にしない物や、独自の当て字です。

441 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 14:33:57.34 ID:7ijrHxZI.net
公式な文章ではないので、常用漢字や規則に縛られる必要は無いと思っています。
「こんなの読める訳が無い」って物には()で括って平仮名で読みを入れていますが……。

442 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 15:05:17.45 ID:7ijrHxZI.net
・憖(なまじ)

これ単体だと非常に使い難い漢字です。
文章の頭に来る上に、「憖、」と言う風に後の文章と読点で区切らないと行けない気持ちになります。
無駄に読点が増えるのはバランスが悪くて嫌です。


・行(い)けない

「こうしないと『いけない』」(義務)、「それは『いけない』」(禁止)の「いけない」です。
「駄目だ」と同じ意味。
「go」の意味の「行く」と区別が付き難いので、余り良くないと思います。


・積(つ)もり

普通は平仮名で、漢字にする時は「心算」と当てるんでしょうか?
「心積もり」や「腹積もり」と言うので、普通に「積もり」で良い気がするんですが……。


・出会(でくわ)す

語源的には「出る」と「交(く)わす」で「出交わす」。
「くわす」は「かわす」の転訛。
「くわす」に「会」の字を当てたのは、古い読み方の「くわい」に合わせた物だと思います。

443 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 15:56:16.11 ID:7ijrHxZI.net
・錯(ずれ)

独自の当て字。
「隔たり」や「差異」の事。
語源は「擦れ」です。
錯を「ずれ」「ずれる」「ずらす」の意味で使うのは中国語から。
今思えば、素直に「擦れ」でも良かった。


・巫山戯(ふざけ)る

よく見る当て字なので、特に言う事はありません。
「戯ける」とも書くみたいです。
「おどける」と紛らわしいので、こちらを使いますが、一字に一音当てるのは余り好きではありません。
「うるさい」を「五月蝿い」ではなく「煩い」と書くのは、そう言う理由です。


・気(げ)

「良さげ」、「悪げ」、「不満げ」、「怪しげ」の「げ」です。
基本的に「気」で統一しています。


・責(せ)めて

「せめてもの償い」の「せめて」。
語源通り、「責めて」。


・向(む)き

「むきになる」の「むき」。
こちらも語源通り。
「向気」と書いても良いかも知れません。


・自棄(やけ)に

「やけに機嫌が良い」、「やけに張り切る」の「やけ」。
これも語源通り。

444 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 16:50:42.16 ID:7ijrHxZI.net
・嘗(な)める

「甘く見る」の意味の「なめる」です。
本来は「無礼る」と言う当て字があるみたいです。
「無礼」を「なめ」と言ったのが語源らしいですが、どうして「なめ」が「無礼」なんでしょう?
そこまで言及している所は見付かりませんでした。
「なめる」になった経緯には、「嘗」の字に「試す」の意味がある為と勝手に思っています。
元々「嘗」は「味わう」ですが、そこから「味見する」に派生して「試す」の意味が生まれました。
これが「軽んじる」や「甘く見る」に繋がった可能性があるんじゃないでしょうか?
他にも「嘗」の「味わう」は「体験する」に派生し、「嘗(かつ)て」と言う意味も生まれました。


・打付(ぶつ)ける

「打ち付ける」が「打っ付ける」になり、「打付ける」になったらしいです。
「打つける」でも良い様な気がしますし、実際過去に何度か「打つける」と表記しています。


・危(やば)い

「危(あや)ぶし」が「やばし」に転訛した物と解釈しています。
「矢場」は民間語源ではないかと。


・正(まさ)か

「まさかの出来事」の「まさか」です。
「正可」、「真逆」他、当て字は多様ですが、「本当か」の意味なので、「正か」又は「真か」で、
良いと思います。

445 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 17:16:06.87 ID:7ijrHxZI.net
・駭(びび)る

四字熟語「影駭響震」より独自の当て字。
「びびる」とは古くは鳥が羽撃く音、馬が地響きを立てて走る音、鉄砲の轟く音。
大きな音が伝わって、「びりびり」と響いて震える事です。
音の通りに字を当てるなら、「響る」です。
「駭」は「驚く」の意。


・点(ぽつ)り

独自の当て字。
「ぽつりと呟く」の「ぽつり」。
「ぽつぽつ」は「点々」。
「斑々」でも良いかも知れません。


・呟々(ぶつぶつ)

「ぶつぶつ言う」の「ぶつぶつ」。
古くは「つぶつぶ」らしいので。


・違(ち)ぐ接(は)ぐ

「鎮具破具」説や「一具逸(いちぐはぐ)」説は強引だと感じます。
少数ではありますが、「ちぐ」は「違(ち)ぐ」、「はぐ」は「接ぐ」と言う説があったので、
そちらを採用しました。

446 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 18:05:58.69 ID:7ijrHxZI.net
・転(こ)くる/倒(こ)くる/転(こ)ける/倒(こ)ける

語源から。
「こくる」は「黙りこくる」、「喋りこくる」等。
「こける」は「笑いこける」、「眠りこける」等。


・寝滑(ねそべ)る

語源から。
「滑る」に「安定を失う」と言う意味があり、そこから横になって寝ている状態の「寝すべる」が、
「寝そべる」に転訛したそうです。
「側(そば)」と関連していると思ったんですが、どうやら違う様子。


・横倒(よこたわ)る

「たおれる」の古語「たおる」、「たわる」から、「横に倒れる」で「横たわる」。
「亘(わた)る」と関連していると思ったんですが、これも違いました。


・兼(か)ねる/兼(か)ねない

「言いかねる」「分かりかねる」の「かねる」、「やりかねない」「死にかねない」の「かねない」。
辞書にあるので、特に言う事はありません。


・家逸(やさぐ)れる

語源から。
「やさ」は「鞘(さや)」の倒語で「家」の事、「ぐれる」は「外れる」事。
「やさぐれる」は家出する事。
それが「ぐれる」との混同で「拗ねている」「反抗している」様子を表したそうです。
「ぐれる」より少し軽いイメージがあるのは、「やさ」から「優」を連想するからでしょう。
家出する者が両方の意味で「やさぐれている」のは間違い無いでしょうが……。

447 :創る名無しに見る名無し:2016/06/19(日) 18:54:51.07 ID:7ijrHxZI.net
・擬古地無(ぎこちな)い

元は「骨の様だ」と言う意味の「骨(こつ)なし」から派生した語らしいです。
「なし」は「成し」で、「骨成し」。
それが「骨無し」と誤解され、「無骨」と言う語が出来たそうです。
「骨(こつ)を掴む」の様な表現もあるので、一概に「無骨」を誤りと断じるのは躊躇いがあります。
その「骨なし」に「ぎ」が付いて「ぎこつなし」になるそうですが、この「ぎ」が分からないのです。
一説には「気骨(きこつ)」との合体らしいですが、「きこつなし」と言う言葉があった訳でもなく……。
何時の間にか「ぎ」が付いて「ぎこつなし」が転訛して「ぎこちない」に。
「ぎこぎこ」「ぎいぎい」「ぎしぎし」と言った擬音語と関係しているかも知れません。
「擬古地無い」は語源からは大外れですが、では何と表記すれば良いんでしょう?
「平仮名で良いじゃん」と言われれば、それまでなのですが……。
意味に合わせて字を当てるなら、「義」、「儀」、「技」辺りで、「技骨無し」が妥当でしょうか?
どちらにせよ「擬古地無い」は苦しい所。


・端無(はしたな)い

「端(はした)」とは「余り」の事。
転じて、「詰まらない物」、「取るに足らない物」、「半端な物」。
端女(はしため)は身分の低い女、下女。
「はしたない」は元々「はしたなし」で、「端成し」らしいです。
行儀が悪い子を「はしたない」と窘めるのは、「下品だ」と言っているのでしょう。
しかし、「半端ではない」、「激しい」、「甚だしい」と言う意味で、「端無し」もあります。
どちらの意味でも行儀が悪い子は「はしたない」と言えそうです。


・仇気無(あどけな)い

無邪気な様子を意味する「あどなし」が「幼(いとけな)し」や「稚(いわけな)し」の影響で、
「あどけなし」になったそうです。
「あどなし」の語源に就いては分かりませんが、「仇なし」の字が当てられています。

448 :創る名無しに見る名無し:2016/06/20(月) 20:04:19.79 ID:OaLpqTph.net
・就(つ)いて/就(つ)き

「今日の天気について」、「つきましては」、「多忙につき」の「ついて」、「つき」。
辞書にあるので、特に言う事は無いです。
平仮名の方が良いと思ったり思わなかったりします。


・狂(いか)れる

「壊れる」、「おかしくなる」と言う意味の「いかれる」です。
語源は「行く」。
意味を優先するなら「行」「逝」よりも、「狂」の方が良い様な気がします。


・可笑(おか)しい/奇怪(おか)しい

「笑える」と言う意味では「可笑しい」。
「怪しい」、「奇妙だ」、「変だ」と言う意味では「奇怪しい」。
今更ですが、「独自の当て字」と断りを入れていない物は、その表記が既にある物です。


・仮令(たとえ)

「たとえ失敗しても」、「たとえ火の中、水の中」の「たとえ」。
「仮に」の意味。
語源は漢文の「縦令」を「たとひ」と読んだ事から。
他に「縦然」、「縦使」、「縦い」とも書きます。
「たとい」で変換すれば、出て来ます。
「縦(よ)しんば」の様に、「縦」には「仮に」の意味があります。
「例え」とは意味が違うので注意。

449 :創る名無しに見る名無し:2016/06/20(月) 20:07:33.83 ID:OaLpqTph.net
・気狂(かぶ)れ

字の通り、「気が狂(ふ)れる」です。
「気触れ」とも書きます。
「破れかぶれ」位しか使い所はありません。
「西洋かぶれ」、「哲学かぶれ」等、「感化される」と言う意味では、「気触れ」の方が穏当でしょう。
「肌がかぶれる」の方も、「気触れ」だそうです。


・吐(つ)く

「嘘をつく」、「悪態をつく」の「つく」です。
辞書にあるので、特に言う事はありません。


・開(はだ)く/開(はだ)かる

「服をはだく」の「はだく」、、「立ちはだかる」の「はだかる」です。
こちらも辞書にあるので、特に言う事はありません。


・屹度(きっと)

「多分」、「恐らく」と言う意味の「きっと」です。
こちらも辞書にあります。


・屹(きつ)い/拮(きつ)い

「斜面が急だ」、「険しい」、「辛い」と言う意味では「屹い」。
「坂が屹い」、「仕事が屹い」。
「詰まっている」、「狭い」、「締める」と言う意味では「拮い」。
「服が拮い」、「拮く縛る」、「拮々(きつきつ)」。
後者は独自の当て字。
「性格がきつい」は、「屹い」だと思います。

450 :創る名無しに見る名無し:2016/06/20(月) 20:09:19.12 ID:OaLpqTph.net
・堂動(たじろ)ぐ

独自の当て字。
「怯む」、「尻込みする」、「劣る」、「傾く」、「少し動く」と言う意味。
「身動ぎ」からの類推で、「じろぐ」は「動ぐ」だと思うのですが、「た」が分かりません。
「たじたじ」との合体でしょうか?
「多動ぐ」と言う当て字も考えましたが、こちらは「多動」をイメージしてしまいます。
動揺や焦りを表すには良いかも知れません。
既に「躊躇ぐ」や「退避ぐ」と言う当て字があるみたいですが、少し意味が違うのではと感じます。


・彷徨(うろつ)く/彷徨(さまよ)う/彷徨彷徨(うろうろ)/蹌踉蹌踉(うろうろ)/踉々(うろうろ)
 /蹣跚蹣跚(うろうろ)/蹌踉蹌踉(よろよろ)/蹣跚蹣跚(よろよろ)

蹌踉(そうろう)、蹣跚(まんさん)は共に「ふらふら歩く」の意。
足取りが危うい状態、向かう先が定まっていない状態を言います。
「よろめく」にも、「蹌踉めく」、「蹣跚めく」と当てられます。
「うろつく」は「踉つく」でも良いんじゃないかと思ったりします。


・真面(まじ)/真面(まとも)

「まじまじと見る」の「まじ」と、「まともに当たる」の「まとも」。
一応、辞書にあります。


・浮(ふ)ら浮(ふ)ら

語源から。
「浮ら付く」も同じです。


・気削(きさく)

「淡白」、「脆い」と言う意味の「さくい」が語源。
「さくさく切れる」の「さく」でもあります。

451 :創る名無しに見る名無し:2016/06/20(月) 20:11:46.80 ID:OaLpqTph.net
・緩(ゆっ)くり/浅(あっさ)り

語源から。
特に言う事はありません。


・呆気無(あっけな)い

語源は「飽く気無し」で、「物足りない」、「満足出来ない」。
「呆気無い」は当て字。
「飽っ気無い」の方が良かったかなと思います。


・他愛(たわい)

他愛は当て字で、元々「たわい」と言う語があった様です。
漢字で書くと「体」でしょうか?
「正体」、「締まり」、「分別」を意味します。
「たわい無い」とは「正体が無い」、「中身が無い」、「締まりが無い」、「取り留めが無い」と言う意味。


・途(と)んでも無い

強い否定を表します。
「道筋が無い」、「道理が無い」と言う意味の「途でも無い」が語源。
似た様な言葉に、「途轍(とてつ)も無い」があります。
こちらは「度を越した」、「常識外れ」と言う意味ですが、「とんでもない」にも同じ意味があります。
「とんでもない人」、「とんでもない記録」等。


・見っ度も無い

「見たくもない」と言う意味の「見とうもない」が「見っとも無い」になったそうです。
「こうしたい」「ああしたい」の「たい」(希望)は漢字で書くと「度(た)い」です。
「見度い」「知り度い」と書きます。


・身窄(みすぼ)らしい/見窄(みすぼ)らしい

貧相な様子。
「身を窄めている様だから」、「見た目が窄まっているから」等と言われます。
「身窄らしい」と「見窄らしい」がありますが、どちらでも良いと思います。

452 :創る名無しに見る名無し:2016/06/20(月) 20:15:39.48 ID:OaLpqTph.net
・呉(く)れ

「頂戴」、「下さい」と言う意味の「くれ」です。
「呉」の字義は「大声で話したり、喧嘩したりする様子」。
それが「くれ」なのですから、何とも……。


・明(あ)から様(さま)

元は「白地」と書いて、「急に」、「一時的に」、「仮に」と言う意味を表していた物が、
語感から「明らかな様」を意味する物に変わったそうです。
それなら「明から様」で新しい言葉にすれば良いのにと思いました。


・倒(のめ)り

「前のめり」、「のめり込む」の「のめり」です。
「倒(たお)す」、「気絶させる」と言う意味の「伸(の)す」と関連しています。
倒れた人を指して「伸びている」と言えば、「気絶している」状態です。
「叩きのめす」、「ぶちのめす」は「伸めす」、「倒す」、どちらでも良いでしょう。


・礑(はた)

「はたと足を止める」、「はたと思い出す」の「はた」です。
「はった」とも読みます。
「急に止む」と言う意味の「ぱったり」とも関連しています。


・甲斐(かい)

「やりがい」、「生きがい」、「甲斐性」の「かい」です。
語源は不明です。
「甲斐」は「甲斐国(かいのくに)」から取った当て字でしょう。
「買い」、「交い」、「飼い」等、説は色々ありますが、これと言う物がありません。
「やりがい」、「生きがい」の「かい」と「甲斐性」の「かい」が同一とも限りません。

453 :創る名無しに見る名無し:2016/06/20(月) 20:21:26.79 ID:OaLpqTph.net
・感(かま)ける

「仕事にかまける」、「遊びにかまける」の「かまける」です。
「気を取られる」、「他の事を疎(おろそ)かにする」と言う意味で使われます。
辞書にあるので、特に言う事はありません。


・拉(ひしゃ)げる/拉(ひさ)げる/拉(め)げる

余り使われませんが、「潰れる」や「壊れる」と似た様な意味です。
特に、押し潰された状態を言います。
「車が拉げた」と言うと、「外見に破損が表れている」状態で、大抵は原型を留めていません。
方言で「めげる」と言えば「壊れる」を意味します。
こちらは古語の「拉(め)ぐ」が語源です。
辞書にもありますが、一応解説しました。


・搗(か)ち合う/搗(か)ち上げ

辞書にあるので、特に言う事はありません。


・鵞鳴(がな)る/鵝鳴(がな)る

「怒鳴る」に倣った、独自の当て字。
口喧しく責める事、喚く事です。
「があがあ」言うので「がなる」。
「鵞」、「鵝」は共に「ガチョウ(鵞鳥、鵝鳥)」の意。
ガチョウは「があがあ」煩いので「ガ」と呼ばれ、鵞の字が当てられました。
「我鳴る」でも良いかも知れません。


・丁(ちゃん)と

語源から。
綺麗に収まっている様子、確りしている様子。
「丁度(ちゃんと)」でも良いかも知れませんが、「丁度(ちょうど)」と紛らわしいので。
意味は大して変わりませんが……。

454 :創る名無しに見る名無し:2016/06/20(月) 20:28:45.53 ID:OaLpqTph.net
・瞞(まやか)し/擬(もど)かしい/捷(はしこ)い

変換出来そうで出来ない。
それ以外に、特に言う事はありません。


・瀬々(せせ)らぐ/騒(ざわ)めく/響(どよ)めく

音に関連する動詞。
辞書にあるので、特に言う事はありません。


・曝(さらば)える

「さらされる」と言う意味の「さらぼう」が語源。
「痩せさらばえる」、「老いさらばえる」の「さらばえる」。
辞書にあるので、特に言う事はありません。


・態々(わざわざ)/態(わざ)と

語源は「業(わざ)」から。
辞書にあるので、特に言う事はありません。


・食(く)っ付(つ)く

語源は「食い付く」。
辞書にあるので、特に言う事はありません。


・栃狂(とちぐる)う/橡狂(とちぐる)う/栃目(とちめ)く/橡目(とちめ)く/栃(とち)る/橡(とち)る

「とちる」に関連した語です。
「早とちり」の「とち」も同源とされています。
人は驚くと「とちの実の様な目になる」ことから「とちめく」となり、慌てる事を「とちる」と言った説を、
個人的には推します。
「橡麺棒(とちめんぼう)」説は少し無理があると感じます。
処理に手間取ると不味くなるのは、他の麺でも同じですし、一般的には「麺棒」や「のし棒」と言う物を、
「橡麺棒」と言うかも疑問です。
「とちめく坊」から「とちめんぼう」に音変化したと考えるのが自然でしょう。
しかし、「とちぐるう」だけは古くは「どちぐるう」で、どうも「とち」との関連は薄い様です。
「どちぐるう」の意味は「馬鹿騒ぎする」、「大ふざけする」です。
江戸時代から、「どち」は「馬鹿」の意味で使われています。
「目無しどち」の「どち」や、「仲間」や「同士」を意味する「どち」と関連があるのでしょうか?
語源は不明です。
余談ですが、とちの実は決して美味しい物ではありません。
それと「とち食らう」は「とち(餅を)食らう」と「どちぐるう」を掛けた、洒落だと思います。

455 :創る名無しに見る名無し:2016/06/21(火) 18:12:58.75 ID:9jTxoP5s.net
・憊(へたば)る/憊(へば)る/憊(へた)る

独自の当て字。
体力が尽きて、疲れ果てた様子を表します。
疲労困憊の「憊」。
「草臥(くたび)れる」と「斃(くたば)る」はあるのに、「へたばる」が無いのは何故なんでしょう?
語源的には先ず「地面に座り込む」と言う意味の「へたる」があって、その後から強調の意味で、
「へたばる」が生じたのだと思いましたが、「へばる」や「へこたれる」もあって何が何やら……。
関西地方で言う「屁垂(へた)れ」は、「へたる」から派生した物だと思います。
「へばる」には「くっつく」の意味もあり、「へばりつく」の様な使い方もします。
この場合は「憊」は使えないでしょう。


・妙畜倫(みょうちくりん)/変畜倫(へんちくりん)/珍畜倫(ちんちくりん)

「みょうちきりん」、「へんちきりん」とも。
「妙ちき」や「変ちき」に拍子で「りん」を付けた物。
「ちんちくりん」は「珍しい」の「珍(ちん)」なのか「小さい」の「小(ち)ん」なのか分かりません。
「ちき」は「奴」の意。
畜倫は当て字。
他に、「ちく」には「竹」、「りん」には「林」、「厘」、「輪」を当てる事もあります。
「ちき」に「稚気」を当てる事も。
元々「りん」は拍子を取っただけなので、無理に漢字にする必要は無いでしょう。


・覚束無(おぼつかな)い

語源は「おぼつかなし」。
「おぼ」は「朧」で、曖昧な様子。
古くは、「おぼ」には「欝」や「於保」が、「つかなし」には「束無」が当てられています。
この事から、「束無し」には違い無いみたいです。
但し、「つかず」ではありません。
「おぼろげでつかみどころがない」と言う意味らしいです。


・後ろ目痛(めた)い

語源は「後ろ目痛し」。
「うしろめいたし」が略されて、「うしろめたし」になったそうです。
辞書にあるので、特に言う事はありません。


・疼痒(むずがゆ)い

独自の当て字。
「むずむず」して痒い事から、疼(うず)くの字を当てました。
それなりに読めない事は無い当て字だと思います。

456 :創る名無しに見る名無し:2016/06/21(火) 18:13:23.75 ID:9jTxoP5s.net
・萎縮(いじけ)る

独自の当て字。
縮こまって元気が無くなる事、植物等が寒さで萎(しお)れる事。
現在では主に「拗ねる」の意味で使われます。
古い意味から「縮(ちぢ)む」の変化「縮(ちぢ)ける」と関連しているのだと思います。
「いじける」となったのは、「ち」の子音が抜けて「い」になったか、「意地」との合体か?
「萎」の字を当てたのは、元の意味からです。
「縮ける」だけで「いじける」と読ませる事も出来るかも知れません。


・傾(なだ)らか

角度や変化が緩い事。
他に「崩(くず)して柔らかくする」、「解す」の意味で、「崩(なだ)らかす」があるので、
「崩らか」とも書けるかも知れません。


・箆々(べらべら)/箆々(へらへら)/箆(べら)/箆(へら)/箆(べろ)

語源は「平(へら)」から。
「舌」をその儘「べろ」と読ませる事もあるので、「舌(した)」の意味では「べろ」を「舌」と書きます。
「しゃべる」を「喋舌る」と書くのも、「べ」に「舌」を当てた物です。
軽薄な様子を「へらへら」と言うのは、「平べったい」所から。
「箆(へら)」も薄く平たい物で、「平(ひら)」が語源。
よく喋る様子、「べらべら」には「喋」の字を当てる事もあるみたいです。
「喋(べらべら)」、「喋々(べらべら)」等。
ここでは「へら」、「べら」共に「箆」を当てていますが、「平」や「舌」でも良いのではと思ったりもします。


・呆(ぼう)っと

所謂「ぼーっとしている」様子です。
特に言う事はありません。

457 :創る名無しに見る名無し:2016/06/21(火) 18:18:01.95 ID:9jTxoP5s.net
512KBに達しましたが、未だ書き込めますか?
もしかして、容量制限が変わったとか、そんな事は……

458 :創る名無しに見る名無し:2016/06/21(火) 18:23:57.89 ID:9jTxoP5s.net
あれ、520だったかな?
もう少し書き込んでみます。

総レス数 458
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