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絵を投下して物語を考えるd=(^o^)=b

1 :創作創作創作創作創作創造的:2016/04/19(火) 14:18:15.47 ID:efTDk1TC.net
タイトル通り絵を投下して物語を考えよう
創作創作

2 :名無し募集中。。。:2016/04/19(火) 16:13:05.29 ID:efTDk1TC.net
『砂漠と巨大な遺構』

http://i.imgur.com/fQswELbh.jpg

3 :創る名無しに見る名無し:2016/04/19(火) 16:49:01.00 ID:FJpqMWYJ.net
投下された絵についてSSを考えるのかな?

4 :名無し募集中。。。:2016/04/19(火) 22:54:19.30 ID:efTDk1TC.net
自分で投下してSSでもいいし
絵だけならその絵にSS付けるってことで

5 :創る名無しに見る名無し:2016/04/20(水) 12:19:29.54 ID:6QGp0Ulu.net
なるほどなあ

6 :創る名無しに見る名無し:2016/04/21(木) 07:06:11.73 ID:VxPXWrg5.net
これ面白いよ、たまにやるわ

7 :創る名無しに見る名無し:2016/04/21(木) 19:51:29.67 ID:fKu8KLdS.net
イッチなんかあげて盛り上げてや

8 :創る名無しに見る名無し:2016/04/23(土) 10:14:43.49 ID:c1PJ7vUb.net
良い絵ですね。
触発されました。
お昼までに誰も出さなかったらSSを投下します。

9 :『Flower of Desert』:2016/04/23(土) 12:19:33.01 ID:c1PJ7vUb.net
>>2
1/5


――私がここで生きるようになって、どれほどの月日が流れたのでしょう。
――今はもう、思い出せません。

気がつけば、私はこの隊商の中で、この広大な砂漠を行ったり来たりするようになっていました。
毎日毎日。
昼も夜も。
2つの大きな街の間を、ひたすらに往復していくのです。

変わることのない繰り返しの日々でしたが、私にはちょっとした楽しみがありました。
時折隊商の護衛に雇われた『旅人』の方々とお話をしたり、『彼ら』に私の舞を披露することです。
『彼ら』が旅の仲間に加わった時だけ、私は決まって、決まった時間に舞を踊るのです。
これまで何十回、何百回と踊ったことでしょうか。
自分の舞を見てもらうことが、私にとっての生きがいでした。

私には、名前がありませんでした。
両親の顔すらも覚えておりません。
ただ、『旅人』の方々は私のことを単に「隊商の娘」とか、親しさを込めて「踊り子さん」と呼んでくれました。

将来のことを考えたことはありません。
ただ、こんな日常がこれから先もずっと続いて欲しいと……そう、思っておりました。

そして、【あの人】は現れたのです。

10 :『Flower of Desert』:2016/04/23(土) 12:20:51.34 ID:c1PJ7vUb.net
2/5


「私の舞、如何でしたか? 楽しんでいただけたならいいのですけど……」
「うん、とっても良かったよ。ありがとう」

砂漠の夜はとても冷えます。
いつもの様に、舞を披露した私は『旅人』と焚き火を囲んで、温かいスープを飲みながらお喋りを始めました。
周囲には巨大な遺構の群れが蒼ざめた月に照らされて、さながら墓標のようです。

「……旅人さんはこの遺構について知っていますか?」
 何百年も前からこの砂漠にあるのに、何処の誰が、一体何のためにコレを建てたのか、誰もご存知ないんですよっ!」
「へえー」
「偉い学者さんによれば、大昔に滅んだ龍人の一族が作ったとも、神々に敗れた巨人族の墓場だとも云われているとか……」

いつもの様に、私はここの遺構について知っていることを滔々と語りました。
『旅人』さんは、ただ微笑んで私の話を聞いてくれます。
やがて、私がひとしきり話し終えると、今度は『旅人』さんが口を開きました。

「ねえ、踊り子さん。僕はね、『違う世界』から来たんだ……」
「違う世界?」
「うん、ここへ来てもう5年ぐらいになるかな。色んな所を冒険して、沢山の人と仲間になった……楽しかったな」
「素敵な毎日を過ごされたんですね……旅人さんが羨ましいです」
「うん。初めてここに来た時、僕にはこの世界の何もかもが輝いて見えたよ。
 いつまでもずっと、そんな毎日が続いて欲しいと思ったんだ」

私は驚くと同時に、とても嬉しく思いました。
『旅人』さん達の中に私と同じ気持ちの人がいてくれた事を、生まれて初めて知ったのですから。

「踊り子さん。本当はね、僕がここに来るのは初めてじゃないんだ。
 もう何度も君の舞を見せて貰ったことがあるし、さっき教えてくれた話も、本当は既に知っていたんだ。黙っててごめんよ……」
「ええっ……? そ、そうだったんですか……すみません。私、そうとは知らず同じ話を延々と……」
「いいんだ。これまで君は大勢の『旅人』を見送って来ただろうからね。僕のことを覚えてなくても、仕方ないと思うよ?」
「そうでしょうか……」

【あの人】はもう一度微笑み、夜空を見上げました。

「もう一度、『君』に会いたいと思ってここへ来たんだ……いい思い出が出来た。ありがとう、僕はそろそろ行くね」
「はい。またいつか、お会いしましょうね」

街についてから、私達はお互いに手を振ってお別れをしました。この世界でお会い出来たのは、それが最後です。

11 :『Flower of Desert』:2016/04/23(土) 12:22:50.48 ID:c1PJ7vUb.net
3/5


――それから数日後のこと。
『世界』は突然、何の前触れもなく崩壊を始めました。

いつも見てきたはずの夜明けが、砂漠を照らす眩い太陽が、昇ってこなかったのです。

そして、漆塗りのような真っ黒な空が、硝子のように割れ砕けました。
崩れゆく空の欠片はバリバリという音をたてて虚空に溶けていきます。
続いて大地が次々に空へ剥がされ、古びたタイルのように壊れていきました。
これまで私が生きてきた広大な砂漠は、歴史ある遺構は、全部お芝居の為の書割……素材〈テクスチャー〉だったのだと言わんばかりに。

隊商の誰もが戸惑っていました。勿論、私もです。
けれど、もう誰にも止めることなど出来ません。

何もかもみんな消えてしまうのです。
今まで往復した街も、見せてきた舞も、遺構の昔話も、そして……『旅人』さん達との思い出も。
何もかも。

12 :『Flower of Desert』:2016/04/23(土) 12:24:06.53 ID:c1PJ7vUb.net
4/5


――暗闇の中にひとり、私だけが残されました。
靴のつま先や髪の毛先、指の先端から、自分の存在〈データ〉がサラサラと零れていくのを感じます。無へと還るのです。
怖くはありません。

……けれど、
………………けれど、
ただ、穏やかな日常が続いて欲しい。
そんなささやかな願いすら叶えてもらえなかったことに、泣きたくなるほどの寂しさ感じました。

――誰か。――――――誰かっ!!

応えはありません。
砂漠よりも暗く冷たいこの無の世界において、私の叫びが何の助けになるでしょう。
嗚呼、死に至る孤独が私を消し去る前に、せめてもう一度……もう一度……!

「見つけた」

その時でした。
何もない暗闇の中に、突如【あの人】の姿が現れたのです。

「こんな所にいたんだね……」

コレはもしかして、夢なのではないでしょうか? ええ、きっと夢なのでしょうね。

「君にかけられていたプロテクトをたった今、解除した。著作権的に違法行為ギリギリだけど……許可は、後で貰う!
 署名だって集めたんだ!! 後は――――君の自由だよ、『砂漠の踊り子』さん」

【あの人】が手を伸ばすのと同時に、私は私が自分の輪郭〈かたち〉を取り戻していくのを感じました。
嬉しいという言葉だけでは足りないぐらいの「何か」が胸に溢れて……気が付くと涙を流していました。

そして……、
そして………………、

13 :『Flower of Desert』:2016/04/23(土) 12:26:03.67 ID:c1PJ7vUb.net
5/5


――私がここで生きるようになって、どれほどの月日が流れたのでしょう。
――今はもう、思い出せません。

気がつけば、私は【あの人】の管理するレストルームの環境データとして働くようになりました。
あれから今日に至るまで、大勢の方々がここへとやって来ます。
「踊り子さん、飲み物頂戴♪」
「踊り子さーん、久々に舞を見せてよー」

みんな【あの人】の友達や仲間、かつてあの世界を冒険していた『旅人』さん達です。

「しかし……いつまでも踊り子さんと呼ぶのも何か不便だよな」
「隊商の娘さん、も何か違うしね」
「じゃあ、みんなで名前を公募して、投票で決めようぜ」
「お、いいね。そうしようそうしよう♪」

「お待たせ。決まったよ踊り子さん! 君の名前は――――」

こうして、私は新しい日常と共に、初めて自分の名前をもらいました。
かつて住んでいた、あの真っ白な砂丘と巨大な遺構の景色を偲んで。

……砂漠に咲く一輪の花の名前を。



【Flower of Desert :終】

14 :創る名無しに見る名無し:2016/04/23(土) 12:33:34.86 ID:c1PJ7vUb.net
※一部脱字が見られましたので修正いたします。
 4/5 寂しさ感じました。 → 寂しさを感じました。[格助詞の抜け]


裏タイトル:『俺の好きだったネトゲがもうすぐ消されるらしいんでNPCのあの娘を拐かすことにした』
以上です。
表タイトルは古いアニメの主題歌からお借りしました。
お題のイラストがとても雰囲気が出てて、驚くほどすんなりと書けました。
普通のファンタジーよりも一曲入れようと思ってこういう形になりましたが、勘の良い人はすぐに気がついたことでしょう。
なろう小説とかだとMMOが結構流行ってたみたいなので、似たような話が沢山あるのではないかと思います^^;
>>2のイラスト、『MtG』の土地カードとかでも欲しいですねー。


折角なので次のお題を投下します。誰かお願いします。

『もり』 イラスト:よしづきくみち

http://imgur.com/ggp2ap8

15 :創る名無しに見る名無し:2016/04/30(土) 07:10:32.03 ID:jkmbMr0W.net
このSSのクオリティが高すぎてこの次には書けないわ

16 :創る名無しに見る名無し:2016/05/07(土) 14:38:49.61 ID:SmLofWOD.net
>>15
自演くさい。

17 :昼の娘と夜の娘:2016/05/23(月) 01:17:46.75 ID:eKdQew+5.net
……チカチカと木漏れ日が眩しい。覚醒して最初に思ったのは、その感覚だった。
体は、動く。なんだかふわふわとして頼りないが、すぐに正常に戻るだろう。
とりあえず目を擦ろうとして、手に軍手を着けていることに気付く。
どうして軍手? そう思った瞬間、断片的に記憶が蘇って来た。
そう、俺は樹海と呼ばれる深い森に入ったんだ。何かを探して……なんだっけ?
身を起こしてみると、案の定そこは何処とも知れない森の中だった。
きちんとした登山風の衣類を身に着けている。しかし、荷物のようなものは見当たらなかった。
食糧らしきものも無ければ、地図も方位磁針もない。当然の事ながら、現在地は見当も付かなかった。
とりあえず森から出なくては。そう思うが、むやみに歩いても迷うばかりに思えてならない。
俺はため息をついて立ち上がり、背中についた落ち葉を払う。
やっぱりなんだかふわふわするが、とりあえず体に異常が無い事は確認出来た。
こんなところで助けを待てども人に遭えるはずも無し、自力での脱出を試みるしかない。
そんな事を思いつつ周囲を見回していると、ふとこの森にまつわる御伽噺を思い出した。

……樹海には昼の娘と夜の娘が暮らしている。昼の娘は優しいが、夜の娘には気を付けなさい。取り込まれてしまうよ……

森にそんな者が住んでいたとしても、まさか出会うことはあるまい。
ここは深い深い森の奥なのだ。そもそも人間が暮らせる環境なのだろうか?
とりあえずそんなことはさて置き、とにかく見当を付けて歩いてみる。
日の向きで方位が分からないかとも思ったが、どうやら今は真昼……天高く上った太陽の向きは分からない。
それに森の木々が深過ぎて、まともに日差しの方向が確認出来ない。完全にお手上げである。
誰だよ、腕時計と太陽さえあれば方位が分かるって言った奴。こういう場合の対処法も教えろよ。
歩きながらそんな事を口走っていると、なんだか空元気だけは湧いてきた。とにかく歩くしかない。
しかし歩くと言っても、樹海の中は藪や木の根、大きな岩などで平坦な道ではない。
藪を掻き分け木の根を跨ぎ、時に岩によじ登って進むのは骨が折れる道のりだった。

そして一時間ほど経っただろうか。あまりに変わらない景色に絶望しその辺に突っ伏す。
落ち葉と土の匂いを十分に嗅いでから顔を上げると、そこには興味深そうにこちらを覗き込む少女の姿があった。

18 :昼の娘と夜の娘:2016/05/23(月) 01:19:06.89 ID:eKdQew+5.net
「……!? だ、誰? ですか?」

歳は明らかに自分より下に見えたが、驚きのあまり敬語になってしまった。
その少女はこんな森を歩けるとは思えない軽装で、不自然なこと極まりない。
……待てよ? ひょっとするともうここは樹海の出口で、気軽に遊べる範囲内なのだろうか?
だとしたらラッキーだ。森を出て自宅に帰れる! 帰って……何をするんだっけ?

「迷ったのね、家に帰りたいの? 森を出たいなら西に行きなさい。西、分かる?」

「いや、分からないが……あんたがいるってことは、出口が近いんだろ? 案内してくれるか?」

「ごめんなさい、私は案内出来ないの。方角が分からない時はね、苔を見ると分かりやすいの」

「コケ?」

「そう、苔。木の根元や岩肌に生えているでしょう? それが密集している方向が北、それさえ分かれば大丈夫よね?」

「ああ、なるほど。豆知識だな。あんた、まさかこの樹海で暮らしているのか?」

そう、昼の娘と夜の娘のように……なんて、まさかな。

「まぁ、そんな感じね。樹海で迷っている人にアドバイスするのが私の趣味なの。それより急がないと日が暮れるわ」

「確かに暗くなったら困るな……今の季節なら野宿しても大丈夫だとは思うが……」

「ううん、夜はノワールがやってくるの。見つかったら帰れなくなるわよ?」

「は? ノワール? 熊か何かか? 確かに危ないかもな」

「熊? まぁ良いわ。とにかくなるべく急いで森を抜けるか……何とかして身を隠す事ね」

「おう、ありがとうな。あんた、名前は?」

「……ブラン。私の名前なんて、どうでも良い情報だわ」

「お、おう。とにかく急げばいいんだな。じゃあな!」

「待って、そっちは東よ」

「いや、ただの冗談だからな!?」

19 :昼の娘と夜の娘:2016/05/23(月) 01:20:21.42 ID:eKdQew+5.net
不思議な少女……ブランと別れ、その指し示す方向に俺はとにかく急いで進んだ。
しかし結果的に、日没前に森を脱出するのは無理だった。
どうやら俺には方位を意識し続ける集中力が欠けているらしい。
ならどうして樹海に入ったんだと前の俺に問い詰めたかったが、その理由はさっぱり思い出せなかった。
記憶にもやがかかったような……それになんだか思い出さないほうが良いように、俺には思えた。

つるべ落としとは言ったもので、あっという間に日は落ちて森は闇に包まれた。
こうなるともう、森を歩くことは不可能である。俺は手頃な岩陰に身を置き、一晩を明かす事にした。
熊にでも襲われるのではないかという緊張感のせいか、不思議と眠気は感じない。
それどころか森を踏破した疲れすらほとんど感じなかった。これも緊張のせいだろう。
眠れなくても、とにかく体を休ませることは大事だ。とりあえず横になる事にする。
こんなくらい森の中では、出来れば焚き火の一つも用意したかった。しかしいくらポケットを探っても、ライターひとつ見つからなかったのだ。
俺はヘビースモーカーではなかったが、それでも日に数本は煙草を吸う。なのに煙草やライターが無いのは何故だろう?
まぁ、こんな大自然の中で煙草を吸うのは無粋と言うものだろう。無くて良かったのだ。

夜は暗い、何も見えない。まるで自分の体が闇に溶け出したようだった。
そもそも体なんてあったのだろうかとすら思えてくる闇に、俺は恐れすら感じていた。
時折草を掻き分けるような物音がした。そのたびに思わず飛び上がりそうになる。
大丈夫だ、大方狸か何かでも通ったのだろう。そう言い聞かせて精神を慰めた。
……どれほど時間が経ったのだろうか。俺は、これまでにない草を踏み分ける足音に気付いた。
その音はまっすぐこちらに近付いて来る。熊か!? この闇の中で逃げ切れるとは思えない。
ならばどうするか……そうだ! 死んだふり! 路傍の石ころにでもなりきるのだ。
俺はその場に突っ伏し、ただひたすらに足音が遠ざかる事を祈る。
神仏なんかに頼ることは無かった俺だが、今はその分のおまけくらい良いだろうと祈り続けた。

「あら、人間ね」

……!? 今、聞き慣れない少女の声がしたような。もしかして熊じゃないのか?

「寝てるのかしら? ほら、起きて」

突っ伏していた身を起こし振り仰いでみると、そこにいたのは見知らぬ少女だった。
どことなく昼間に出会ったブランに似ている……そしてやはり、森の中とは思えない軽装である。
こんな闇の森の中をライトひとつ持ち歩かずに歩くなんて、とても常人とは思えない。

「お前は……何だ?」

20 :昼の娘と夜の娘:2016/05/23(月) 01:21:45.29 ID:eKdQew+5.net
「私のことなんてどうでも良いの。それより行くわよ、ついてらっしゃい」

「待て、どこに連れてくと言うんだ? お前の家か?」

「家? この夜の森全てが私の領土よ。そしてあなたは私のものになるの」

何を言っているのかさっぱり分からない。しかしふと、ブランと話した内容を思い出した。

「お前、ノワールか? 俺をどうする気だ?」

「私の名前を知ってるってことは、昼間ブランに会ったのね。私とブランは姉妹なの」

確かに言われてみたら、二人の容姿はとても似通っているように思えた。

「私は夜を統べる者、迷える者を導いてコレクションするのが趣味なのよ」

「コレクション?」

「そう、コレクション。あなたも私のモノになるのよ。きっと楽しいわよ?」

何を言っているか分からないが、非常にヤバい気がする。
俺は立ち上がり、ノワールの横をすり抜けて逃げ出した。
闇に包まれた深い森、かろうじて月明かりで地面が見える程度で、走る事もままならない。
それでも必死に足を動かし、時に木に衝突しながらも俺はその場から逃げる。

「あら、追いかけっこ? 私から逃げられるなんて思わないことね」

そんな声と共に、後ろから彼女が近付いて来る気配が感じられた。
こんな闇の中で目が利くのか!? とてもじゃないが、このままでは逃げ切れない!

どれだけ走っただろうか、後ろの気配に追い立てられながら、もう随分進んだ気がする。
方位なんて闇の中では分からない。いや、元から迷っていたのだ、そんなことはどうでも良い。
ただ夢中で動かしていた足が、空を踏む。そこにはあるべき地面が存在しなかった。
俺は更に深い闇の中へ転がり落ちる。不思議と痛みは感じなかった。
落ちたのは、多分そう深くない穴の中。大地に穿たれた亀裂に入ったのだろう。

「意外と逃げ足が速いのね。どこへ行ったのかしら?」

そう呼びかけるノワールの声が、すぐ上から響く。

21 :昼の娘と夜の娘:2016/05/23(月) 01:22:33.31 ID:eKdQew+5.net
どうやら穴に落ちた事で、彼女は俺を見失ったらしい。何はともあれ僥倖である。
しかし人間に対しコレクションって、一体何だったんだ?
森に迷った人間を標本にでもするつもりなのだろうか? 確かにこの森では行方不明者が多発するらしい。
そしてこの森は、確か自殺志願者のメッカのような場所だとも聞いた覚えがある。
そんな不気味な森で暮らす二人の不思議な少女……昼の娘と、夜の娘。
まさかそんな御伽噺が実在している訳が……いや、俺は間違いなく見たんだ。
御伽噺だと思っていたが、本当に存在するなんて。確か夜の娘は……。

……樹海には昼の娘と夜の娘が暮らしている。昼の娘は優しいが、夜の娘には気を付けなさい。取り込まれてしまうよ……

まさか、な。でも、あの少女は確かにコレクションと言った。意味は分からないが、嫌な予感はする。
とりあえず、見つからないようならこの穴の中で朝を待とう。明るくなれば、逃げ出す算段も付く。
そして、どれだけの時間が経ったのだろう。ふと気付くと、枝と葉で隠れた夜空が明るくなり始めたことに気付いた。
よし、もうすぐ夜明けだ。動き出すのなら今がチャンスに違いない。
俺はようやく見えるようになった穴の中から何とかして這い上がった。
幸いにも足がかりは十分にあり、そう苦労することもなく穴から脱出出来た。
確か……そう、西に向かえば森から出れるとブランは言っていたな。
こんな樹海の中でも、不思議とブランの言葉は疑いようのないものと信じられる。
昼の娘、迷いし者を助ける存在なのだろう。それに対し夜の娘は……。

「みーつけた、うふふ」

俺は振り返らなかった。とにかく森の中をひた走る!
まだ空は暗いが、少しは視界が利く。しかし、どんなに走っても彼女を引き離すことは出来ない。
それどころか、気配はどんどん近付いて来て……。

「捕まえた。夜明けまで私から逃げるなんて、あなた大したものね」

俺の襟は、彼女に後ろからガッチリ捕まえられていた。振りほどいても、少女のものとは思えない力から逃れられない。

「さぁ、行くわよ? 大丈夫、仲間ならたくさんいるわ。寂しい思いはしないから」

「嫌だ! 頼む、助けてくれ!」

「うるさいわね、静かにして頂戴。鳥たちが目を覚ますじゃない」

「離してあげて、ノワール」

22 :昼の娘と夜の娘:2016/05/23(月) 01:24:02.43 ID:eKdQew+5.net
聞き覚えのある声が響いた。そう、昼間出会ったブランと言う少女の声だった。
顔を上げると、やはり彼女がそこにいる。いつの間にか、夜が明けていたようだ。

「あら、もうこんな時間なのね。でも獲物は渡さないわよ?」

「もう森は私の世界よ。彼をどうするかの権利は私にあるわ」

「……仕方ないわね、ブランの意地悪」

襟を掴む手が、放された。
俺は、もう大丈夫なのか? 助かったのだろうか?

「じゃあね、ブラン。久しぶりに会えて良かったわ。でも次は渡さないわよ?」

「ノワールこそ、そんな悪趣味はもうやめたら?」

後ろのノワールの気配が掻き消えた。振り返ると、そこにはもう誰もいない。

「……ありがとう、俺を助けてくれて」

「ノワールには気をつけてと言ったでしょう? さぁ、森を出るわよ。案内してあげる」

そう言って背を向けるブランに、俺は付いて朝の森を歩いた。
彼女と歩く樹海は不思議と穏やかで、暖かい光に包まれているようだ。

「この森ではね、人は自由に成仏出来ないの」

彼女は背を向けながら、そう話し始めた。

「死者の魂は森の木々に遮られて天に昇れないの。森から出ない限り」

……何の話をしているのだろう?
そういえば、俺はこの森に何かを求めて来たのだった。人の立ち入らないこの森に。

「だからあなたみたいに彷徨う魂を、私はこうして森から出してあげるの」

23 :昼の娘と夜の娘:2016/05/23(月) 01:24:54.65 ID:eKdQew+5.net
「待て、俺は死んで……」

「忘れたの? あなたは自殺したのよ? ほら」

そう言って彼女が指し示したのは、木々に囲まれた見覚えのある首吊り死体だった。
あれは……俺、なのか? 服装は俺と同じだ。でも……。

「そう、あなたは死ぬためにこの森へ来た。そういう人は少なくないのよ」

「……そうだ、俺は確か……」

最近の出来事がフラッシュバックのように蘇る。そう、俺は何もかも嫌になって……。

「ね? だからあなたは森から出なければならない。いつまでもここに居るべきじゃないわ」

「そうか、そうだったな……ありがとう、ブラン」

「もう森の出口よ。私が来れるのはここまで。さぁ、外に出ると良いわ」

「ああ、じゃあな……最後に、お前たちは何者なんだ?」

「私たちは森を統べる者、それ以上の何者でもないわ」

「そっか……、ありがとな」

そう言って、俺はブランに見送られながら森を出た。
そこには森に沿って道路が敷かれ、森と外の世界の境界線である事を示している。
俺は空を見上げた。木々に遮られて見えなかった晴れた空は、今なら見ることが出来る。
その空に吸い込まれるように、俺の体は宙に浮かんでいた。いや、体なんて元からなかったのだ。
俺はこれからどうなるのだろう? 自殺したから地獄にでも行くのだろうか?
そんなことは大して気にならないほど、俺の心は軽かった。
あの森の中で永遠に迷うよりは、ずっとマシだ。
あばよ、クソみたいな世界。今度の人生はもっとマシに生きてやる。
そうして、俺の魂は空気に混じって溶けていくようだった。

24 :創る名無しに見る名無し:2016/05/23(月) 01:26:54.77 ID:eKdQew+5.net
お目汚し失礼しました。一応テーマには沿ったものが書けたと思います。
実は私は他所から移民してきたばかりで、この板では初投稿になります。
以前も別の形で創作を投稿する機会はありましたが、このように思う存分書けたのは初めてですね。
当初思ったより長いものになりましたが、少しでも読んで頂けたらありがたく思います。
生きていれば誰だって、自殺しようと思ったことの一度や二度はあるのではないでしょうか?
私もそんな経験を元に、今回の文章を書くことになりました。あえて詳細は語りませんでしたが。
でも木に首吊りって、紐を掛けるのに恐ろしく苦労するんですよね。先人はどうやっているのでしょう?

一応先に書かれた方の様式に従って、次のテーマとなる画像を置いていきます。
そろそろ夏の気配も近いですし、ホラーとか書いてくれなたら嬉しいな、なんて。
http://blog-imgs-42.fc2.com/a/s/a/asakusamitomo/ninngyou.jpeg

25 :創る名無しに見る名無し:2016/05/23(月) 07:22:37.59 ID:K5JM/DSd.net
絵…?
ここって自分で描いた絵以外の画像もアリなの?

26 :創る名無しに見る名無し:2017/12/27(水) 11:22:00.29 ID:C1Z7QFDy.net
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

84VEMMLPCD

27 :創る名無しに見る名無し:2018/05/21(月) 07:54:52.98 ID:tRZnwP6O.net
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

1HZYE

28 :創る名無しに見る名無し:2018/07/03(火) 19:59:06.93 ID:f1dClnnX.net
75O

29 :創る名無しに見る名無し:2018/10/17(水) 17:53:59.61 ID:ZU7x6aHX.net
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

S8P

30 :創る名無しに見る名無し:2022/05/26(木) 09:44:16.63 ID:Fk03fsHB.net
https://i.imgur.com/17bHTIw.jpg
https://i.imgur.com/G5BGocN.jpg
https://i.imgur.com/UGuRvyf.jpg
https://i.imgur.com/EFTBsnR.jpg
https://i.imgur.com/udZdQrD.jpg is
https://i.imgur.com/tOhmadj.jpg
https://i.imgur.com/0KXu5ng.jpg
https://i.imgur.com/zE7hppN.jpg
https://i.imgur.com/jruKPyR.jpg

31 :創る名無しに見る名無し:2023/10/09(月) 06:24:26.09 ID:RmlPVCeY.net
部屋が汚いのではない。私が美しいのだ。

32 :創る名無しに見る名無し:2023/10/15(日) 22:38:02.96 ID:8jhKEvjC.net
こんな遠くに行ったのは初めてやわ

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