あなたの文章真面目に酷評します Part108
- 370 :創る名無しに見る名無し:2018/11/18(日) 04:49:06.30 ID:7aMqaU5e.net
- 速い時間の流れの中で
駅の改札を出ると、真正面にいい匂いがするベーカリーのお店がある。
朝一番で小川ゼミのある火曜日は、このお店で朝食を済ませてから大学へ向かう。講義は九時開始なので、七時には家を出て、七時半にはいつもここにいる。
コーヒーと惣菜パンを二つとリンゴのデニッシュを一つ買って会計を済ませて、なるべく街が見渡せる席に座る。あまり苦くないアメリカンに砂糖を一つ入れてかき混ぜて、先ず一口啜る。
甘いパンを齧って、またコーヒーを啜る。デニッシュを胃袋に収めながら、スマホをいじる。
しばらく店内を観察する。ボウっと街を見渡していると人が流れていくのがわかった。私の隣にいたサラリーマンが店を出ると、今度は中年の女性が隣に座る。
その女性も十分程で店を出て、同い年くらいの女の子が店内に入って来て、一つしか空いていない席に腰を落ち着けた。店内の状況は刻一刻変わっていった。
ふと気づくと八時を過ぎていたので、トレーにゴミをまとめて席を立ち、お店を出ようとしたとき、白く丈の長いスプリングコートを着たボブカットの若い女の後ろ姿が目にとまった。しばらく見ていると、それは野原悦子、ノンちゃんだということがわかった。
小走りで追いかけて、背後から声を掛けようとしたちょうどそのときに、長い髪を束ねた松尾陽子が偶然にも、先にノンちゃんに声を掛けた。
「おはよう」と私が二人の背後から挨拶をすると、声をそろえて「おはよう」を返してくれた。空は快晴だった。なんて言うんだろう、空は無限に蒼く見えた。
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