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TRPG系実験室 2

1 :創る名無しに見る名無し:2018/09/07(金) 22:56:07.99 ID:c8v0uQxh.net
TRPG関係であれば自由に使えるスレです
他の話で使用中であっても使えます。何企画同時進行になっても構いません
ここの企画から新スレとして独立するのも自由です
複数企画に参加する場合は企画ごとに別のトリップを使うことをお勧めします。
使用にあたっては混乱を避けるために名前欄の最初に【】でタイトルを付けてください

使用方法(例)
・超短編になりそうなTRPG
・始まるかも分からない実験的TRPG
・新スレを始めたいけどいきなり新スレ建てるのは敷居が高い場合
・SS投下(万が一誰かが乗ってきたらTRPG化するかも?)
・スレ原案だけ放置(誰かがその設定を使ってはじめるかも)
・キャラテンプレだけ放置(誰かに拾われるかも)

2 :創る名無しに見る名無し:2018/09/07(金) 22:56:40.56 ID:c8v0uQxh.net
避難所用板

なな板TRPGよろず掲示板
ttp://jbbs.shitaraba.net/internet/9925/

TRPG系実験板
ttp://jbbs.shitaraba.net/internet/20240/

3 :創る名無しに見る名無し:2018/09/08(土) 19:48:48.54 ID:bUpnudtH.net
>>2
したらばか
荒らしのスレ確定やん

4 :創る名無しに見る名無し:2018/09/11(火) 22:51:55.12 ID:Ne0y17uv.net
前スレ:TRPG系実験室
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1479560761/

5 :水鳥 :2018/09/13(木) 20:22:30.30 ID:ua86p2sa.net
ベンケイはエクスフォードのショットガンをものともしない。
更に随伴機とベンケイはフォーメーションを組んで行動しており、
随伴しているコープスブライドから撃墜を狙っていくのも難しい。

>「先に護衛から落とすのは――難しいようだね」

>「だろうね。トーチカ・システム……僕らが小学生の頃の戦術なのに」

「トーチカ・システム……」

先輩の所感から聞いたことのある単語を聞き取り、なんとか鸚鵡返しする。
記憶が確かなら機体タイプから厳選し守りを固める戦術だったはずだ。
その攻略法までは周子に分からないので、先輩方の判断に任せる事にした。

>「やるなら両方狙った方がいい。一斉攻撃だ。どちらかを狙えばどちらかをカバーしてくる。
> ……まったく、ここまで流行を叩き潰すような機体を出してくるとはね!」

高機動中火力型有利の現環境を真っ向から潰す次世代機を前に、桐山は皮肉を込めてそう言い放った。
桐山が立てた作戦は、ベンケイも随伴機のコープスブライドもまとめて狙ってしまうというものだ。
リーダーながら戦略眼に欠ける周子は言われるがまま肯定し、それを承認した。

>「あら、私は好きよそういうの。勝てる機体、勝てる戦術で順当な勝ちを収めたって楽しくないもの。
> 勝利への道筋に舗装は必要ない。誰かに用意されたお仕着せの美酒は、薄味だわ」

晶は流行りや環境というものを好まず、自分なりの勝ち筋を模索する性分だ。
加えて逆転勝利を常に狙う節があるのであえて自ら窮地に追い込む事すらある。
彼女の戦闘は見ていてハラハラする事も多いが、カタルシスを感じるのも確かだ。
敵の猛攻を凌ぎ、逆転の一撃を叩き込む!微塵改は彼女の理想を体現していると言えよう。

前を見ればマクシミリアンが大剣を持って敵陣に切り込み、四対一で渡り合っている。
足捌きで常に敵の射線を切り疑似的に一対一を作る『クイックステップ』で巧みに敵を捌いていく。
『クイックステップ』――すなわち銃口から敵の射撃を予測し、回避するのは機動力のある機体ならそう難しくはない。
だが、四対一ともなれば射線を切り続けるのも難しくなってくる。初心者にはまず出来ない芸当だ。

>「撃ち込むなら今だ!」

一人で前衛を受け持っていたマクシミリアンがベンケイの薙刀に押され後ずさる。
そして打ち合いが三度目を迎えた時、ベンケイの随伴機は完全に桐山だけに意識が向いていた。

>「駄目だ。仕留めきれなかったら次がなくなる。一度距離を……」

「え!?……どっち!?」

ARデバイスを通して八木の声が響く。八木の判断は桐山とは違っていたようだ。
リーダーとしてどちらを選択して良いものやら、周子の引き出しには判断材料がない。
何もせず悩んでいる間にARデバイスの通信が晶に切り替わった。

>「桐山先輩、『スイッチ』するわ。周ちゃん、爆弾先輩、フォローをお願い」

晶は桐山の立てた作戦通りに行動することにしたらしい。
また、ベンケイはマクシミリアンとの攻防に熱心なあまり、前に出過ぎている。
晶の微塵改は足の遅い機体だが、スイッチなら自然な形で前衛を交代できる。

6 :水鳥 :2018/09/13(木) 20:24:40.32 ID:ua86p2sa.net
>「零式牽引索条『呑竜』――起動!」

微塵改がベンケイにワイヤーアンカーを撃ち込んで接近戦に持ち込む。
ライオットシールドで薙刀の猛攻を防ぎつつ、背中からスレッジハンマーを抜き放った。

>「ベンケイの弱点と言えば……昔から"ここ"と相場が決まっているわよね……!」

拘束された不意を突いて、向う脛目掛けてスレッジハンマーを振り下ろす!
打撃エフェクトが豪快に火花を上げ、追加装甲をぶち抜いて脚の装甲が爆裂した。
足払いの一撃で脚部が破壊された事で、ベンケイは膝をつき、耐久バーが減っていく。

「やった!ダメージが通ったよ晶ちゃん!」

>「今のは、上手い……だけど、それだけじゃ……」

八木の呟き通り、ベンケイを操縦する彼の表情は何ら崩れていない。
脛を破壊されたといっても、骨格は無事。駆動系にも支障はなかった。
モータルは平然とした様子で機体の損傷を確認し終えて、戦闘に意識を向け直す。

「後が続かないようだな……? これで終わりなら勝機はないと思う事だ」

モータルが気取った様子でくっくっくと笑う。
バラバラのチームつつじヶ丘の様子を見て舐めているのだ。
ファイターとしての勘が告げている。このままでは押し切られて負ける。

(このままじゃ八木先輩の言った通りだ……!)

もっと八木の言葉に耳を傾けておけば良かったと、周子は途端に後悔した。
長年このゲームに親しみ、経験を積んで来た八木だからこのシナリオは目に見えていただろう。
安易に応戦せず、逃げて様子を見守るという手段だってあったはず。
リーダーとして、ファイターとして完全に判断ミスをしてしまった。
操縦桿を握る手が汗で滲む。いつもの明るい表情に翳りが見え始める。
ゲームもまだ序盤、こんな所で負けたくない。負ける訳にはいかない。

(このまま押し込まれる前に……なんとかしないと……!)

リーダーとしての責任を感じながら、周子は頭を巡らせた。
問題はこの一斉攻撃で相手のトーチカ・システムを如何に崩せるかだ。

(駄目だ……エクスフォードだと援護射撃で耐久を削れても一気に盤面を返せない)

通常の射撃機と違いエクスフォードは元来格闘機だ。
正味なところ、射撃兵装の威力は然程高いものではなかった。
たとえ一発当てたところで敵機を撃墜できるほどの火力がない。
『ハーミットアーマリー』内の射撃武器を連続で命中させれば話は別だが、
桐山が実践したように万能機相手にはクイックステップで躱される可能性もある。

(不用意に射撃しても焼け石に水……どうすれば……)

周子が悩んでいたところに、不意にARデバイス越しに声が響いた。

>「……ゲームは、勝たなきゃ面白くない」

それは八木の声だった。

>「僕は今でもそう思ってる。だから……」

やや後方に位置していたクラウンの両手が再び膨らみ、爆弾を四つ形成する。
だがクラウンの前はキューブで塞がっており、本来投げるのに不利な位置だ。

7 :水鳥 :2018/09/13(木) 20:26:22.13 ID:ua86p2sa.net
>「悪いけどこのゲーム、どうしても勝ってもらうよ」

構わず投擲し、爆弾は低い放物線を描いて飛んでいく。
その着弾地点はモータル達より遥か手前。エクスフォードとマクシミリアンの後方左右だ。

>「桐山、水鳥、次の一撃は絶対に当たる」

周子とエクスフォードの背後でクラウンの投げた爆弾が爆ぜた。
ただの爆弾ではない。背後からでも分かる目映い輝きと、あまりに長い発光時間。
クラウンが投擲したのは最初に見せてくれた爆弾ではなく、閃光弾なのだと気づいた。
前方にいるモータル達はあまりのまぶしさに目が眩んでいる様子だった。

「八木先輩――!」

翳りを見せていた周子の顔がぱっと明るくなった。
八木はゲームが上手い。元ゲーム部の桐山がそう言っていた。
このゲームについて運営並みに熟知していて、色々な事を知っているのだろう。
周子達の素人くさい立ち回りに言いたい事は山となるほどあるはずだ。
それでいて尚、最高の援護を入れてくれた。

「――ありがとうございます!」

エクスフォードがショットガンを構え直し、万能機を狙って射撃。
撃ち尽くすまで引き金を引き続け、放たれた散弾が全弾命中する。

「このまま火力を集中させる!」

操縦桿を捻り武装選択画面から『マイクロミサイル』を選択した。
『ハーミットアーマリー』のちょうど上側が開き弾頭が顔を覗かせる。
レーダー上の標的をロックオンし、トリガーを引いて三発発射。
煙が微かに尾を引きながら万能機へ飛来、命中。
耐久バーが0になったことで盛大な爆発音を上げながら機体が爆散する。

「やった! これで一機撃墜!」

崩れ落ちる万能機が爆散する発光を受けて、エクスフォードの装甲が鈍く輝く。
桐山の方はどうかと、周子はマクシミリアンへ視線を向ける。
トーチカ・システムを崩してしまいさえすれば、後の懸念はベンケイのみだ。

「ちぃっ、まぶしい……!」

ベンケイを操縦するモータルは目が眩みつつも尚、操縦桿を動かして武器を変更した。
大薙刀を背中にマウントし、新たに武器を取り出す。それは『太刀』と『大鋸』だ。
隙を見せはしたが、ベンケイの追加装甲である鎧も健在。多少のダメージなら支障はない。

目が眩む前の敵の位置もなんとなく把握している。
眼前にいた足の遅い機体――微塵改なら、確実に攻撃できる。
攻撃範囲の広い二刀流なら多少動き回ろうが攻撃を当てられる可能性は高い。

「どこだ! 敵はどこにいる……!?」

ベンケイは太刀と大鋸を滅茶苦茶に振り回し、微塵改を探す。
無闇に暴れ回っているだけだが格闘機のベンケイが暴れれば嵐に等しい。

【念入りに撃って万能機を一機撃墜。ベンケイが二刀流で滅茶苦茶に暴れまわる】

8 :水鳥 :2018/09/13(木) 21:39:47.86 ID:ua86p2sa.net
【すみません、誤解してた箇所があるのでちょっと訂正。

桐山が実践したように万能機相手にはクイックステップで躱される可能性もある。
という一文は
万能機相手には躱されたり防がれてしまう可能性もある。

に脳内補完をお願いします。すみません。】

9 :桐山 直人 :2018/09/18(火) 17:03:56.70 ID:bUx8czeD.net
(こいつを使ってみるか……?いや、ベンケイを倒しきれる保証はない。
それどころかもし使って負ければ……!)

桐山は小銃で敵機をけん制しながら、マクシミリアンの背中に搭載された大型の武器を確認する。
折り畳まれたそれは、『カリブルヌスMK-2』と名付けた完全自作の格闘・射撃両用の万能武器だ。

マシンナリーファイターズにおいては公式以外にも機体パーツや武器、補助兵装の制作が認められており、
公式に登録することで自分だけの機体が作れるというのがウリの一つだった。
だが実際はモデル制作に要求される3Dモデリングや物理演算などの技術や知識、さらには使用する場合
改造不可かつ強烈な欠点を必ず審査において運営から要求されるため実際に使われるパーツはごく少数だ。

桐山がゲーム部に入る前から使っていたこの自作武器は、巨大なビーム刃を形成する柄であり
大型ビームキャノンでもある。ひとたび発動すれば重装甲タイプでも耐久バーの半分を瞬時に削り取るほどの火力を有するが、
運営から与えられたデメリットはそれを上回るものだ。

そのデメリットとは『使用中における他武装の使用禁止(他武装には補助兵装及び素手による格闘・
全てのレーダー及びセンサー・移動用のスラスターもしくはバーニアも含まれる)』。

つまり使用している間は目視で敵を視認し、走って敵を射程圏内に捉えなければならない。
その間一切の他武装による補助はできないというものだが、桐山はそれを受け入れた。

自らの制作技術の証明として、それを周囲に見せつけるためだった。
実際過去のゲーム部においても自作できるほどの人間は桐山以外にいなかったのもあって
入部当初から期待の新人として扱われていた。

(だけど……僕にはそれしかなかった。実際の腕前は知識と技術に追いつかず、
結果として新人の中で最下位と判断された僕は雑用やモデルの作成を一方的に押しつけられた)

しかし、そんな中でもカリブルヌスを発動した試合だけは必ず勝っていた。
もちろん使えば勝てる!という状況的な判断もあったが、時にはとっさの判断で圧倒的な劣勢を覆したこともあった。
そうして試合数を重ねていくうち、次第に桐山はカリブルヌスを使うことが怖くなってしまった。

(これを使って負ければ……僕には何もなくなってしまう。
ベンケイはまだ全部の能力が分かったわけじゃない、こうして紫水君の機体を盾に防御戦をすればいつかは――)

>「悪いけどこのゲーム、どうしても勝ってもらうよ」

逃げ腰の考えを押し留めるかのように、八木の声が聞こえた。
それと同時に投げられた爆弾は、エクスフォードとマクシミリアンの背後へとふわりと浮かんで飛んでいく。

>「桐山、水鳥、次の一撃は絶対に当たる」

>「八木先輩――!」

そうして起爆した爆弾は、熱ではなく莫大な光量で辺りを覆う。
瞬時に八木が爆弾のステータスを再設定し、燃焼時間の長い照明弾として投擲したのだ。
迷いを振り切ったようなその言葉に、桐山も思考が切り替わる。

「……ありがとう、八木!」

10 :桐山 直人 :2018/09/18(火) 17:04:31.06 ID:bUx8czeD.net
>「どこだ! 敵はどこにいる……!?」

閃光弾によって行動不能になったベンケイと、その背後にいるコープスブライド。
どちらかが復帰する前に、致命傷を与えなければならない。
つまり――背中に背負ったそれを抜く時だ。

「カリブルヌスMK-2、起動。発動条件承認」

桐山は静かに、だが確かにはっきりと強い意志を込めてつぶやく。
すると背中に折り畳まれた鉄塊のような武器が徐々に割り開くように変形し、
複雑な形状の発振器に槍のように長い柄とトリガーを取り付けた一つの武器を両手に持つ。
全センサーとレーダーがダウンし、一瞬桐山のHUDに映し出されるモニターの映像が歪む。
そうしてエネルギーをカリブルヌスと機体動作だけに回し、準備が整った。

「まずは武器からだ!」

ベンケイの得物は太刀と大鋸の二刀流。
マクシミリアンの大剣ならばリーチと出力の差で負けるだろう。
だが、カリブルヌスはそれをはるかに上回る射程を持ったビーム刃を形成する。

平均的な機体三機分に匹敵するビーム刃が薙ぎ払うように正面から太刀と大鋸に衝突し、
そのまま武器を切り裂いたかと思うと追加装甲にビーム刃が食い込む。
装甲は徐々に溶解しながら切り裂かれ、ついには内部骨格にまでその影響は及ぶ。

「武器は新型じゃない!それならぁぁ!!」

仮想操縦桿を倒して横に捻り、ビーム刃の出力を平均から最大に変更。
機体の出力を戦闘不能寸前にまで下げ、その分を全てカリブルヌスに回す。
さらに装甲は容易く溶け始め、光刃の輝きはより一層強くなる。

「ば、馬鹿な!対ビームコーティングされた追加装甲だぞ!」

じりじりと減り続ける追加装甲の耐久値はモータルを焦らせ、
部位破壊警告がモニターの片隅に表示される。
なんとしてでもこの光刃を止めなければならないと判断したのか、
ベンケイは素手でマクシミリアンの両腕を掴み、カリブルヌスから離そうとする。

その出力はマクシミリアンの腕部装甲を粉砕するには十分なものだが、
桐山は離脱を選ばずカリブルヌスを使用し続ける。先程と同じように、ベンケイがこちらに注意を向け続けているからだ。


【ちょっと入院しててお待たせしました、秘密兵器の登場です!
 スレ立てありがとうございました】

11 :紫水晶 :2018/09/22(土) 19:13:33.37 ID:wZzsjruS.net
test

12 :紫水晶 :2018/09/22(土) 19:14:12.96 ID:wZzsjruS.net
微塵改が叩き込んだ炸裂ハンマーによる一撃は、ベンケイの脚部装甲を穿ち飛ばした。
剥き出しになった脚部にも損傷が入り、ベンケイは一時的に膝をつく――スタン状態に入る。

>「やった!ダメージが通ったよ晶ちゃん!」

後ろで周子が喜色ばんだ声を挙げた。晶は思わず振り返り、周子とハイタッチした。
白兵戦の真っ最中に敵から目を離すなど、ド素人丸出しのムーブである。

>「今のは、上手い……だけど、それだけじゃ……」

弛緩した空気を咎めるように八木から警告が入る。
彼の指摘どおり、立ち上がったベンケイの挙動に支障はない。
人間なら痛みで動けなくなるレベルの打撃だが、相手はもの言わぬマシンナリーなのだ。

「心配ないわ。丸裸になった泣き所に……もいっぱぁぁぁつっ!!」

すかさず晶は再びスレッジハンマーを振りかぶり、うなりをつけてベンケイの脚部を打撃した。
しかし、金属のぶつかり合う音だけが響き渡り、爆発が起こらない。脚部のゲージをわずかに削っただけだ。

「あ、リロード……」

二式炸裂戦槌は、打撃部に装填された炸薬を衝撃で爆発させることで威力を生み出す兵装だ。
炸薬を装填しなければならないのである。つまり、一撃ごとにリロードが必要なのだ。
そして、周子と喜びを分かち合うことに夢中になっていた晶は、リロードをすっかり忘れていた!!

13 :紫水晶 :2018/09/22(土) 19:15:10.57 ID:wZzsjruS.net
>「後が続かないようだな……? これで終わりなら勝機はないと思う事だ」

ベンケイの向こうでモータルがくつくつと笑う。
本来であれば、敵がスタンした隙にリロードを行うか、別の武器に切り替えて追撃を加えるべきだった。
複数の武器を持ち替えながら戦うことは、弾幕を張る上で非常に重要な技術のひとつだ。
リロードの隙は、敵が体勢を立て直すのに十分過ぎる時間なのだから。

「むぅ……私としたことがとんだ失策ね……」

炸裂戦槌を背面のハードポイントに戻し、ライオットシールドを構え直す。
背面にはオートローダーが搭載されていて、別の武器を構えている間にも自動でリロードを行ってくれる。
問題は、もう一度痛打を叩き込む隙を、ベンケイやその随伴機が与えてくれるかどうかだ。

決定力が不足したまま、しばらく膠着状態が続いていた。
とはいえ、こちらが壊滅していないのは、ひとえにベンケイ側の温情によるところが大きい。
何故ならベンケイはまだ『七つ道具』のうち一つしか使っていないのだ。
あまりに早く決着が付きすぎてもデモンストレーションにならないという、商業的な都合がベンケイに制限をかけている。

つまりは、舐めプだ。
ベンケイが本気を出せば、チームつつじヶ丘は瞬く間にジリ貧へ追い込まれるだろう。
そして、本気を出されなくとも、純粋な性能差によって微塵改の耐久は削りきられ、トーチカは瓦解する。

「気に食わないわね。そんなふうにちまちま削り合うのがベンケイの戦い方なの?
 出し惜しみせず大技ぶちかましなさいよ。あるんでしょう?もっとすごい武器が」

「その手の挑発には乗らんよお嬢さん。
 まだまだサバイバルの先は長い……ここで全ての武装を明かすわけにはいかんのだ。
 大人の事情でな」

「ふふっ……大技を見たければ出さざるを得なくなるまで追い詰めろと……そういうことね?」

「いや本当に社外秘なんですよお客様」

ベンケイが大薙刀を振るい、微塵改のシールドを呵責なく打擲する。
ミサイルの直撃すら耐える三式白兵防盾が、少しずつではあるが歪んでいく。

14 :紫水晶 :2018/09/22(土) 19:16:45.64 ID:wZzsjruS.net
>「……ゲームは、勝たなきゃ面白くない」

立ち往生しかけた戦局に水を打つように、八木の声が無線越しに聞こえた。
しばらく無言を貫いていた彼にいかなる心境の変化があったのか、晶に推し量る術はない。
しかし、彼の言葉は、最適解を選ばない晶たちに対する非難の声ではなかった。

>「悪いけどこのゲーム、どうしても勝ってもらうよ」

八木の駆る爆撃特化マシンナリー、クラウンの投擲した爆弾が宙を舞う。
それは敵陣まで届かず、微塵改の真後ろにポテンと転がった。

「ミスった――?」

否、炸裂した爆弾には威力がない。
代わりに放たれたのは、視界を塗りつぶさんばかりのまばゆい閃光。
フラッシュバンだ。背後で閃光を浴びた微塵改のカメラに影響はないが、敵マシンナリーには覿面に効果を発揮した。
ベンケイの動きが露骨に止まる。見当識を阻害され、操るオペレーターが動揺したのだ。

>「八木先輩――!」
>「――ありがとうございます!」

生まれた隙を、周子は見逃さなかった。
彼女はエクスフォードの兵装を解放し、ベンケイの後方に控える万能機へ全て叩き込む。
打ち込まれた波状攻撃に万能機はひとたまりもなく、耐久を全損して爆散した。

>「やった! これで一機撃墜!」

「やるわね、周ちゃん!」

晶はもう一度周子とハイタッチして快哉を分かち合った。
これだ。エクスフォード最大の強みは、武装を展開する隙さえあれば瞬間的に極大の火力を発揮できること。
そして、1機だけでも敵が対応しきれないレベルの波状攻撃を発生させられることだ。

武装を使い切ればリロードに時間はかかるものの、その非常に高いDPS(秒間ダメージ量)は他の追随を許さない。
継続戦闘能力を度外視すれば、この場でエクスフォードにまさる火力を有するマシンナリーは居まい。
これで形成は――少なくとも数の上では、逆転した。

15 :紫水晶 :2018/09/22(土) 19:18:12.91 ID:wZzsjruS.net
>「どこだ! 敵はどこにいる……!?」

味方を1機撃墜される時間を経てなお、ベンケイの視界は復帰していないようだった。
高い索敵能力、つまりは高感度のセンサーが仇となっているのだ。
八木がこうなることまで読んで閃光弾を放ったのだとすれば、末恐ろしい話である。
ベンケイと接敵したその瞬間から、彼は敵の特性を逆手に取る戦術を構築していたのだ。

そして、八木の爆撃を鏑矢として行動を開始したのは、周子だけではなかった。

>「カリブルヌスMK-2、起動。発動条件承認」

桐山の声が無線越しに響き、微塵改と前衛を交代したマクシミリアンが脱力する。
移動に使うスラスターの火さえも消失し、タービンエンジンの鳴動も止んだ。
マシントラブルによる動作の停止?……違う。桐山の目に、一縷の動揺もない。
マクシミリアンの背部からスラリと抜き放たれたのは、一本の鉄塊じみた棒。

「これは……槍……?でも引き金が付いてる……?」

先端に付いたレーザー発振器は、敵方のコープスブライドも所持しているエナジーランスにも似ている。
しかし、サイズが段違いだ。ポッキーとうまい棒くらい違う。

>「まずは武器からだ!」

マクシミリアンがうまい棒のトリガーを引き、発振器から長大なレーザー刃が伸びる。
這い回る紫電で大気を焦がしながら、鋼の騎士は光の刃を構えた。サンライズ立ちだ。かっこいい。
光の軌跡が弧を描き、ベンケイの持つ太刀と大鉈はバターの如く半ばで溶断された。

>「武器は新型じゃない!それならぁぁ!!」

会心の勢いは止まらず、刃はベンケイの追加装甲まで食い荒らし始める。
さしものベンケイもこれには危機感を覚えたのか、微塵改から目を離してマクシミリアンを潰しにかかった。
残りの七つ道具を展開し、レーザーに灼かれながらもマクシミリアンへ吶喊を仕掛ける。

16 :紫水晶 :2018/09/22(土) 19:21:01.52 ID:wZzsjruS.net
「あら、足元がお留守でしてよ」

――そこへ、微塵改のスレッジハンマーが再び脚部を殴打した。
今度こそリロードの完了していた炸薬が起爆し、骨格にダメージが入る。
ベンケイが膝をつく、その隙は、もう見逃さない。

「必殺のぉぉぉぉシールドバッシュ!!」

すかさずライオットシールドをぶちかまし、ノックバックでベンケイがさらによろめいた。
後方に控えていた残りの万能機が弾幕を張るが、その全てが微塵改の盾によって阻まれる。
微塵改の巨大な身体と盾が、ベンケイと後続の随伴機たちを切り離し、援護を不可能にした。

トーチカ・システムの応用法。
敵をおびき寄せ、トーチカの内部に「閉じ込める」ことで、友軍との距離にかかわらず孤立させるのだ。

「爆弾先輩。私はエンジョイ勢だから、別に負けても大して悔しくなんてないわ。
 適当にガチャガチャ操作して、適当にぶん殴るだけでも、そこそこ楽しめるもの。
 約束された勝利より、死闘の果てにたどり着く敗北のほうが、価値があると思ってる」

かつてのゲーム部がどんな経緯で崩壊を迎えたのか、紫水晶は知らない。
しかし、うわ言のように八木が呟いていた「勝たなきゃ面白くない」という言葉。
何より、桐山と八木との間に漂うある種の緊張感から、なんとなく何があったかは察することができた。
そして、お荷物と言っても良い初心者を二人抱えてなお、勝利を掴もうとしていることも、理解できる。

「だけど……エンジョイ勢だからこそ、もっと楽しめる方法を知りたいわ。
 勝つことでよりバトルを楽しめるのなら……爆弾先輩、私たちを勝たせて」

炸薬を消費した炸裂戦槌を、切り替える暇すら惜しんでその辺に捨てる。
ノータイムで抜き放った一式徹甲剣で、ベンケイの膝関節パーツを刺突した。
骨格に直接ダメージが入り、関節部の駆動範囲が大幅に狭まる。これで逃走は不可能になった。

随伴のコープスブライド達が微塵改を削りきってベンケイを救出するのが先か。
孤立したベンケイをチームつつじヶ丘の結集火力で叩き潰すのが先か。
ここから先はダメージレース。よりDPSを出せる者の勝利だ。


【ベンケイの後ろに盾を展開し、随伴機から孤立させる】

17 :創る名無しに見る名無し:2018/09/23(日) 21:06:24.30 ID:oy2zhXTA.net
文体がなあ
色々残念過ぎてもはや擁護ができない

18 :創る名無しに見る名無し:2018/09/25(火) 10:53:37.21 ID:R8Y1SItk.net
◆ロールプレイング・ノベル入門【1】◆
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1537503921/

【VRP=バーチャル・ロールプレイング】
コテハンで架空のバーチャル・キャラクターを作って、ロールプレイをする遊びです。
応用すればTRPGや、個人あるいは共同での小説執筆のようなことも可能です。

RPNとはVRPを基礎とし多人数で小説創作のようなことを行う遊びと演習を兼ねた究極のメソッドです。

19 :八木優樹 :2018/09/27(木) 19:05:44.69 ID:2Vw8OAAF.net
戦況が動いていく。
エクスフォードの一斉射撃が敵機のコープスブライドを撃破。

>「やった! これで一機撃墜!」
>「やるわね、周ちゃん!」

(……面白い機体だ。基本的に、防御特化……というか、非機動特化型は
 必ず一つの問題に直面する。つまり、自分よりも速い相手にどうアドバンテージを取るか。
 あの機体は……センスか、計算か……上手い落とし所を見つけてる。本当に、面白い)

優樹が、自分で使ってみたいと感じるくらい、エクスフォードは良い機体だった。
もっとも、彼女はそんな事は意識していなかったかもしれないが。

>「カリブルヌスMK-2、起動。発動条件承認」

と、戦況が有利に傾いたと見たマクシミリアンが動いた。
機体背部の、通常の何倍も大きな発振器とトリガーを伴うグリップ。
マクシミリアンがそれを引き抜いて、トリガーをしかと握り締めた。

(……対人ゲームってのは結局のところ、人間同士の駆け引きが肝になる)

瞬間、グリップ先端の発振器から眩い光が迸る。
ベンケイの持つ太刀の、更に倍は長い高出力のビームブレード。

(だから僕はもっと、その剣は気軽に抜けばいいと思ってたんだけど……。
 いや、そうじゃなくて……このタイミングは、かなりいい感じだ。なにせもう、「仕込み」が済んでる)

仕込みとは――すなわち、印象付けだ。
マクシミリアンは平均的なステータスの汎用機。
操縦者のスキルも極めて平均的。
近接特化型のベンケイと1on1で勝負しても勝ち目はない。
ベンケイの操縦者にそう思わせるには、十分なくらい長い間、桐山は相手と打ち合った。

「まずは武器からだ!」

故に――振り下ろされた光刃を、ベンケイは避けるのではなく迎え撃った。
これまでに積み重ねられた印象が、咄嗟の判断を攻撃的なものに傾けた。

マシンナリーファイターズはゲームだ。
だから金属の刃と非実体的なビームブレードで打ち合う事が出来る。
そして武器の全長が長く重量がないという事は、その先端を叩けば、非常に強い力を与えられる。

ベンケイの二刀とカリブルヌスが交差する。
その後の事は、一瞬だった。
ベンケイの武器が焼き切られ、ベンケイの腕部装甲に食い込むまで、一瞬の出来事だった。

>「武器は新型じゃない!それならぁぁ!!」
>「ば、馬鹿な!対ビームコーティングされた追加装甲だぞ!」

ベンケイの操縦者が、思わず狼狽の声を上げる。
それから咄嗟にマクシミリアンに飛びかかると、その腕を掴み、捻り上げる。
それでも桐山はカリブルヌスを解除しない。

腕を掴まれていても、骨格が完全に握り潰されなければ手は動かせる。
そしてビームブレードは指先の動きで柄の向きを少し変えるだけでも、相手を斬りつけられる。
カリブルヌスなら、撫でる程度の接触でも装甲に多大なダメージを与えられるだろう。

20 :八木優樹 :2018/09/27(木) 19:06:54.72 ID:2Vw8OAAF.net
脅威は未だ終わっていない。
ベンケイはそう判断せざるを得なかった。
マクシミリアンを突き飛ばし、背部から戦鎚を引き抜く。
そのまま猛然と地を蹴り、戦鎚を振り上げる。
マクシミリアンの腕か肩、或いはカリブルヌスそのものを破壊し、完全に脅威を取り去るつもりだ。

だが――ベンケイの操縦者は、動揺していた。
軽度のパニック状態にあるとすら言えた。
目眩ましを受けていたとは言え、友軍が一機落ちている事が意識から抜け落ちていた。
その状態で、三秒。マクシミリアンへの対処だけに集中した。
それはつまり端的に言えば――

>「あら、足元がお留守でしてよ」

隙だらけだった。
微塵改のスレッジハンマーが、ベンケイの脚部を再び強打した。
装甲は既に剥がれ落ちている。爆発は骨格にまで及んだ。
ベンケイが膝を突く。

>「必殺のぉぉぉぉシールドバッシュ!!」

その背中に容赦なく、微塵改の追撃が叩き込まれた。
ベンケイが完全に体勢を崩して床を転がる。
しかし彼はトラフィックゴーストの中でも、新機体のパイロットに任命された実力者。
即座に受け身を取り、体勢を立て直し――そして自分の置かれた状況を理解した。

微塵改からの更なる追撃はない。
代わりに聞こえる友軍の射撃音と、それをシールドが弾く音。
そして自機の前方に見える、エクスフォードとマクシミリアン。

「……『タスク』か」

モータルと優樹が、奇しくも同時に呟いた。
『タスク』。トーチカ・システムの全盛期に発案された戦術だ。

敵機を『牙(タスク)』の内側に放り込むように。
敵チームに友軍の救出という無理な『課題(タスク)』を強いるように。
各個撃破と精神的動揺を主目的とした作戦。

21 :八木優樹 :2018/09/27(木) 19:07:47.51 ID:2Vw8OAAF.net
(あの子がそれを知っていたとは思えない……。
 ハンマーの取り回しと言い、なんというか……勘がいいんだな)

そんな事を考えつつ、優樹は操縦桿を動かす。
一旦キューブに完全に身を隠して、クラウンに爆弾を生成させる。
『タスク』の最中、頭上からの爆撃を確認して撃ち落としている余裕はない。
コープスブライドにも、ベンケイにもだ。
勝負は、殆ど決まったようなものだった。

>「爆弾先輩。私はエンジョイ勢だから、別に負けても大して悔しくなんてないわ。
 適当にガチャガチャ操作して、適当にぶん殴るだけでも、そこそこ楽しめるもの。
 約束された勝利より、死闘の果てにたどり着く敗北のほうが、価値があると思ってる」

紫水が不意に優樹を呼び、語りかけた。
優樹は何も答えない。
どう答えればいいのか分からなかったからだ。

そういう考え方があってもいいとは思う。
だがチームを組んでいるのなら、個人の嗜好をチームより優先するのはおかしな事だとも思う。
もちろんこの試合に関しては、自分から申し出てこのチームに入れてもらっているのだ。
彼らのプレイスタイルやカスタマイズに口出しする気も、権利もない。
と、そのような事を手短に語る方法が、優樹には分からなかった。

自分がすべき事は、彼らを勝たせる事。
少なくとも、つつじヶ丘高校ゲーム部への悪評など誰も口に出来なくなるくらい、圧倒的に。
そしてその準備は既に完了している。
身を隠した状態からの連続爆撃。
優樹はそれを実行しようと、操縦桿を握り直し――

>「だけど……エンジョイ勢だからこそ、もっと楽しめる方法を知りたいわ。
 勝つことでよりバトルを楽しめるのなら……爆弾先輩、私たちを勝たせて」

けれども、続く紫水の言葉に、その手を止めた。
ゲームを楽しみたい。その為に、勝たせて欲しい。

優樹は考える。
もしも自分がこのまま爆撃を実行し、勝利したとして。
それは彼らにとって楽しい事だろうか。
この状況を作り出しただけでも、十分すぎるほどの戦功である事は間違いない。
だが――もっといいやり方があるんじゃないのか。そうも思えた。

「……ああ、分かったよ。少なくとも……この戦いの勝利は、僕らが貰おう」

目の前にいるこのベンケイを倒す事は――出来る。
その為の算段は既に優樹の頭の中にある。
しかし、それでこのゲームに勝てるかと言えば――その可能性は低いと、優樹は考えていた。

この試合は新型機のデモンストレーションマッチだ。
その目的は実戦を通して強化骨格機の強さ、新メタの到来を痛感してもらう事。
であれば――なにもベンケイは、マッチに一体である理由はない。
むしろ何体もいる方が自然である。
それどころか重装射撃型や、高機動型用の強化骨格機だって用意されているかもしれない。

そういった事情を考えると――チームつつじヶ丘高校がこのマッチで勝利するのは、難しいだろう。
何も考えずに、ただ勝利を約束するような気遣いは、コミュ障の優樹には出来なかった。

それでも、このベンケイとの戦いだけは。
文句なしに楽しく、勝利してみせる。優樹はそう決意していた。

22 :八木優樹 :2018/09/27(木) 19:09:05.31 ID:2Vw8OAAF.net
優樹はクラウンをキューブの陰から出した。
そして一歩、また一歩とチームメンバーの傍へ。
ベンケイの傍へと歩いていく。

「……桐山君、水鳥ちゃん。迂闊に仕掛けない方がいい。
 ソイツはまだ何か……逆転を狙ってるよ」

『タスク』の檻に放り込まれて、しかしベンケイは逆に冷静さを取り戻していた。
両手を肩越しに背中に回し、腰を低く落としている。
右足はまだ無事で、見せていない七つ道具はあと三つ。
踏み込み一つで間合いを詰め、カウンターを叩き込む余裕はまだ、ある。

「……何のつもりだ」

射撃特化型のクラウンが自ら距離を縮めてくる。
ベンケイが一歩踏み込めば、得物が届くほどの近間。白兵戦の距離だ。
定石から外れたその行動に、モータルは怪訝そうに問いを発する。

「……あの状況からただ勝つのは、簡単ですけど。
 約束された勝利より……死闘の果てに辿り着く勝利の方が、価値があるらしいんですよ。
 それを確かめに来ました」

「ふっ……青いな。そして愚かだ!ならば教えてやろう!
 掴めたはずの勝利を逃し、食らう敗北の味をな……!」

ベンケイが一際深く腰を落とす。
やはり狙いはカウンター。
『タスク』への対抗策として、それは正解だった。
この作戦は幽閉した敵機を、壁役が落ちるよりも先に倒せなければ破綻する。

そこで被幽閉機が徹底的な防戦、カウンター狙いを決め込めば――
『タスク』を実行しているチームに、逆に『課題』を押し付ける事が出来る。

23 :八木優樹 :2018/09/27(木) 19:09:32.61 ID:2Vw8OAAF.net
「……七つ道具。最後まで見せてもらいますよ」

ベンケイがしようとしている事は、要するに『わからん殺し』だ。
あえて先手を取らせ、まだ見せていない兵装で、対処不能な一撃を見舞う。

であれば。
その七つ道具を全て暴いた上で、誰も欠けずに勝利する事が出来れば。
それは――ただ勝つよりもずっと難しくて、だからこそ面白いかもしれない。
優樹は、気づけば小さく笑みを浮かべていた。

(クラウンで、白兵戦……とんだ縛りプレイだな。されるのは、正直嫌いだけど。
 自分がするのは……確かに、ちょっとワクワクするかもしれないな)

クラウンの両腕には爆弾を抱えられていた。
キューブに隠れている間に生成した大威力の爆弾が七つ。

「七手だ。七手で決めてやる」

クラウンは、その全ての爆弾を放り投げた。
ベンケイ目掛けて、ではない。自身の頭上へ。
爆弾はふわりと宙を舞い――そして物理演算エンジンに従い、落ちてくる。

そして――クラウンの両腕が、素早く動いた。
落ちてきた爆弾を指先で受け止め、押し上げ、再び頭上へ。
しかし七つの内一つだけは、そうしない。
ただ右手で掴み――ベンケイへと投擲する。

『ジャグリング』。
両手で保持しきれない爆弾を、お手玉する事でキープし続ける。
クラウン・ノイジーモデル専用のテクニックだ。

ベンケイが背部マウントから薙刀を引き抜き、両手で構えた。
爆弾を切り落とす算段だろう。

応じるようにクラウンは右手を動かした。
右前腕で自身の視界を覆うように。

ベンケイが咄嗟に左手を止めて身を屈めた。
投擲されたのが閃光弾であれば、目の前で切り払うのは不味い、と。
身を躱された爆弾はベンケイのやや後方の地面に落ちて――爆発した。

視界を庇う動作はただのブラフ。
ベンケイの姿勢を不完全なものにさせる為だ。
爆弾を躱す為に、片脚の踏ん張りが効かない状態で身を屈めた。
そうすれば当然、体勢が崩れる。その状態では――長物を振るうのは困難だろう。

(これで薙刀とハンマーはもう使えない。
 太刀と大鋸はさっき壊れた……さあ、あと三つ。見せてもらいますよ)

体勢を立て直す時間は与えない。
クラウンは爆弾を立て続けに二つ投擲する。

ベンケイが右手で短刀を抜き放ち、爆弾を切り払う。
十手状の刃――恐らくは白兵戦において、敵の武器を制する為の物なのだろう。

24 :八木優樹 :2018/09/27(木) 19:10:24.00 ID:2Vw8OAAF.net
(だけど、それじゃカウンターは狙えない。あと二つ……)

クラウンが、爆弾の一つを一際強く頭上へ弾いた。
自機の頭上ではない。ベンケイの頭上へ。
爆弾が降ってくるまでには、まだ一秒弱の時間がある。
その間に、クラウンは次に投げる爆弾を手にする事が出来る。

(ベンケイが上から降ってくる爆弾を対処すれば、その瞬間にこれを投げつける。
 そうされない為には……どうすればいいか、あなたには分かるはず)

ベンケイは――十手を頭上へ投げ放った。
0.5秒後に降ってくるはずだった爆弾が、爆破された。

(そうだ。それしかない。だけど……さあ、これで次の七つ道具を抜くしかない)

25 :八木優樹 :2018/09/27(木) 19:12:41.88 ID:2Vw8OAAF.net
クラウンが真正面から爆弾を投げつける。
ベンケイが背中に右腕を回す。
そして爆弾を叩き落とした。

使用された兵装は――拳。
より正確には虎爪――分厚い刃を帯びたナックルダスターによって。

(これで、あと一つ。そしてその武器では頭上からの爆撃は防げない。
 爆弾は残り二つ。ベンケイの頭上と、正面へ。それで終わり……)

そうして優樹は落下してくる二つの爆弾を掴もうとして――
しかし不意に、クラウンの体が大きく揺れた。
激しい金属音と共に。

虎爪が、クラウン・ノイジーモデルの胸部に突き刺さっていた。
投擲されたのだ。武器の投擲は、なにもクラウンだけの専売特許ではない。
やろうと思えば、格闘機だってする事が出来る。

「仕込みは十分だった。間違いなく当たってくれると思ったよ」

受けたダメージは、致命傷ではない。
近接武器の投擲は攻撃値に大幅なマイナス補正がかかる。
だが――予想外の出来事による動揺と、機体の揺れ。
それらがもたらした結果は大きかった。

キャッチするはずだった二つの爆弾が、クラウンの手から零れて床に落ちた。
ストックしていた爆弾は、もうない。

「っ……くそ!」

クラウンの左手、人差し指の先が膨れ上がる。
爆弾の生成――だが、それをベンケイが見逃すはずはない。

「遅い!」

ベンケイの両腕が地面を強く押す。
その反動で立ち上がりざま、背部から抜かれた薙刀が稲妻のごとく振り下ろされた。
優樹は咄嗟に回避行動を取るが――間に合わない。
クラウンの右腕が切断され、宙を舞った。

「……少し、計算違いだったな」

優樹が、小さくそう呟く。
だがその声音は――敗北を悟ったプレイヤーのものではなかった。
むしろその逆。勝利を確信しているかのように――涼しげだった。

クラウンの右足が、今しがた自身の右腕を切り落とした薙刀の柄を踏みつける。
様子が妙だ。モータルがその事に気づいた。
だがもう遅い。

クラウンの左手が、切断され、落下する自機の右腕を掴んだ。
爆弾を生成する為のチューブが内臓された――つまり爆薬が内部に満ちている、右腕を。
優樹は自分が優れたプレイヤーだと自覚しているが、完璧ではない事も知っている。
自分がしくじった時の手も、既に考えてあった。

「六手で十分だった」

そしてそれを、ベンケイへと投げつけた。
薙刀はクラウンに踏みつけられている。パワーの差で強引に引き戻す事は出来るだろう。
だがそんな時間は、ない。

26 :八木優樹 :2018/09/27(木) 19:13:07.72 ID:2Vw8OAAF.net
太刀も大鋸も、マクシミリアンのカリブルヌスに破壊された。
十手も虎爪も、クラウンとの戦いで投げている。
重い戦鎚では、右腕を払い除けられても体勢が崩れる。次がない。

ベンケイが、薙刀を手放した。
空いた右手を背部マウントへ。
そして――最後の七つ道具を抜いた。

引き抜かれたのは、たった一本の棍棒。
だがそれをきっかけとして、装甲の内側に格納されていた七本の棍棒が、
紫電の鎖に接続されて連鎖的に射出される。
それらは空中で連結し、一本の長い杖と化した。

杖は蛇のようにしなり、投擲されたクラウンの右腕を絡め取り、遥か遠くへ放り捨てた。

「……そういうの、なんて言うんでしたっけ。
 確か……ああ、一、二、三……八節棍でいいのかな」

「多節棍、で大丈夫ですよ。……ああ、まったく。厳重注意くらいで済ませてもらえるといいなぁ、これ」

「……まさか、ホントに社外秘だったんですか?それは、なんというか……すみません」

優樹はARコックピットの中で、笑っていた。
喘息持ちの彼は、ゲームの中のこの瞬間が大好きだった。
呼吸を忘れるほどの戦いと、ストレスなどどこにもない勝利の瞬間が。

「僕の勝ちは、これでもらった。次は……僕らの勝ちを貰おうよ、さあ」

マクシミリアンやエクスフォードの初動を見てから手や足を絡め取り、引き寄せ、叩きのめす。
ベンケイは恐らくはそのような戦法を予定していたはず。
だがそんな『わからん殺し』は、もう出来ない。
ただ真正面から、それこそ史実の弁慶のように、敵を迎え撃つ以外に出来る事はない。

変幻自在の間合いを持つ多節棍は凶悪な武器だし、ベンケイの操縦者は優れたプレイヤーだ。
だが、だとしても――これより先は、優樹の手出しすべき領域ではない。
少なくとも彼はそう、判断した。

27 :創る名無しに見る名無し:2018/09/28(金) 12:12:45.65 ID:ZS45U26u.net
くっせえ文章しか書けないのか
これだからお前は

28 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:26:23.58 ID:ElQWd3Qh.net
ショットガンとマイクロミサイルの波状攻撃により万能機を一機墜としたエクスフォード。
黄色で彩られたマシンナリーは無感動に武装コンテナから弾倉を取り出しショットガンをリロードした。

>「やるわね、周ちゃん!」

八木が既に1機撃墜しているので、これでチームつつじヶ丘に撃墜スコアが2になった。
周子は晶とハイタッチし、喜びを分かち合いながら桐山の方を見た。

>「カリブルヌスMK-2、起動。発動条件承認」

「あ、あれは……!?」

桐山は覚悟を決めた顔で背中から秘匿していた武器を取り出した。
折り畳まれたその武器が複雑な発振器を露出させながら真の姿へと形を成していく。
マクシミリアンはその巨大な得物を両手に構え、発振器からビームを出力する。

>「まずは武器からだ!」

視界を奪われた中でなんとか武装を『太刀』と『大鋸』に切り替えたベンケイ。
眩しさに目をやられた操縦者が微かに捉えたのは巨大な光の塊だった。

>「武器は新型じゃない!それならぁぁ!!」

――その正体は『カリブルヌスMK-2』と名付けられたビームソードである。
ベンケイの操縦者は辛うじて振り下ろされる光刃を捉え、二刀流で受け止める!
だが二刀の武器はたちまち融解し、追加装甲に食い込み、内部骨格にまで影響を及ぼす。

>「ば、馬鹿な!対ビームコーティングされた追加装甲だぞ!」

マシンナリーの知識なら大方頭に入っているモータルだが、こんな武器は見た事がない。
ビームを発振するエナジー系武器にこれほど長大で巨大なビームを出せるものは存在しない。
当然だ。これはN社が販売・配布している武器ではなく、桐山が創り出した独自の武器なのだから。
多大な制約を糧に使用を許されたオリジナル武器の威力をモータルはまさに味わっていた。

「頑張れ、桐山先輩!!」

桐山の裂帛の気合をこめた一撃に周子も思わず叫ぶ。
激突の振動でボディを細かく揺らしながら、マクシミリアンはなおもベンケイを切り裂こうと力を込める。
あれほどの威力だ。マクシミリアンが稼働できるギリギリまで出力を光刃に回しているに違いない。

ベンケイは溶融した武器を捨て、素手でカリブルヌスを振るうマクシミリアンの両腕を掴む。
格闘機特有の出力で腕部装甲を粉砕し、骨格を握り砕こうとベンケイもまた力を込める。
それでもマクシミリアンは止まらないと見るや、背部から戦槌を取り出し勢いよく振り上げる。

>「あら、足元がお留守でしてよ」

この時、操縦者はカリブルヌスを止めようとするのに手一杯で、微塵改にまでは頭が回らなかった。
フリーになっていた微塵改がスレッジハンマー、二式炸裂戦槌で脚部を痛烈に叩く。
カリブルヌスの一撃で大幅に減っていたベンケイの耐久がまた減少した。
その衝撃でマクシミリアンの両腕を離し、再び膝をつくベンケイ。

>「必殺のぉぉぉぉシールドバッシュ!!」

畳みかけるようにシールドバッシュを食らい、ノックバックで大きく態勢を崩す。
そして微塵改は盾を構えベンケイの背後に立つことで、後ろの随伴機から引き離すことに成功した。
恐るべきことに晶は即興でトーチカ・システムを応用してベンケイを閉じ込め、孤立させてしまったのだ。
更にハンマーを直ちに捨て去って武器を剣に持ち替えると、刺突で膝関節にダメージを与え、逃走を不可能にする。

29 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:28:01.73 ID:ElQWd3Qh.net
>「……『タスク』か」

モータルと八木が同時に呟いたそれこそが晶が即興で行った応用戦術の名だった。
集団戦の戦術を知らないので周子は、ただ晶の機転に驚かされるばかりだ。
はじめてのサバイバル戦にも関わらずトーチカ・システムを応用するその資質。
むらっ気はあるが機転を利かせた豪胆な立ち回りは目を見張るものがある。

(このままじゃ晶ちゃんが弾幕に晒される……!)

残った随伴機二機がベンケイを救出するため、にわかに火力を結集させはじめた。
射撃機のエナジーライフルの光弾や万能機が放つ突撃銃の銃弾が次々に微塵改を襲う。

無論、微塵改にはライオットシールドがある。その全ては盾に阻まれるだろう。
だが一機でどこまで壁役を果たせるか、いつまで弾幕に耐え切れるか分からない。

>「爆弾先輩。私はエンジョイ勢だから、別に負けても大して悔しくなんてないわ。
> 適当にガチャガチャ操作して、適当にぶん殴るだけでも、そこそこ楽しめるもの。
> 約束された勝利より、死闘の果てにたどり着く敗北のほうが、価値があると思ってる」

シールドで弾幕を受け止めながら、晶は八木とのプレイングスタイルの違いについて語りはじめた。
ARデバイスに淡々と聞こえる声を聞いてるうち、ゲーム部崩壊の理由が頭を掠める。
過去のゲーム部はまさに、楽しみ方の不一致で不和が起き、結果として崩壊してしまった。

>「だけど……エンジョイ勢だからこそ、もっと楽しめる方法を知りたいわ。
> 勝つことでよりバトルを楽しめるのなら……爆弾先輩、私たちを勝たせて」

だがチームつつじヶ丘にそんな過去は関係ない。
周子は紫水晶という人となりに改めてほっこりした。
晶は気取った言い回しを好む故か、たまにツンデレセリフを発動するのだ。

>「……ああ、分かったよ。少なくとも……この戦いの勝利は、僕らが貰おう」

少なくともチームつつじヶ丘はゲーム部のようになりはしない。
もし八木や桐山がゲーム部崩壊の騒動の渦中にいたとしても気にするほどの事はない。
周子はいちファイターとしてそう確信し、再び戦闘に意識を向け直した。

一方、ベンケイの状況はというと、そのダメージは中破と言うべき惨憺たる有様だった。
胴体はカリブルヌスMK-2の攻撃で追加装甲が焼ただれ、内部骨格が剥き出しになっている。
脚部は片足の膝関節を一式徹甲剣で貫かれ、動くこともままならない状態だ。
耐久も半分は削られている。だが、それでも――ベンケイはいまだ健在。

>「……桐山君、水鳥ちゃん。迂闊に仕掛けない方がいい。
> ソイツはまだ何か……逆転を狙ってるよ」

「八木先輩!」

キューブに隠れていたクラウンが姿を現す。徐々にベンケイの距離を縮めはじめた。
本来ならクラウンは遠距離から爆撃を行う機体のはずだが、これでは格闘を挑むようだ。
不可解な行動にモータルは怪訝な声を発する。

>「……何のつもりだ」

>「……あの状況からただ勝つのは、簡単ですけど。
> 約束された勝利より……死闘の果てに辿り着く勝利の方が、価値があるらしいんですよ。
> それを確かめに来ました」

八木は晶の考え方を汲み取った上で勝つつもりのようだった。
すなわち格闘機相手に射撃機で白兵戦を制するという縛りプレイ。
晶が八木に歩み寄ったように、八木もまた晶のやり方に歩み寄ろうとしている。
周子はそれを止める気はない。八木の心意気を周子は見守ることにした。

30 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:29:14.48 ID:ElQWd3Qh.net
クラウンが更に距離を近づけてもベンケイは動かない。カウンター狙いだ。
――そしてクラウンが水風船を投げるやベンケイも跳ね起きるように動いた!
爆弾投擲の妙手と七つ道具を備えし僧兵の攻防は瞬く間だった。
クラウンが風船を投げるや、ベンケイは七つ道具が惜しみなく発揮される。
やがて薙刀の柄を踏みつけたクラウンが切り落とされた自機の右腕を掴んだ時。

>「……少し、計算違いだったな」

新型機ベンケイとクラウンの戦いぶりを、観客たちも固唾を飲んで見守っている。
サバイバルマッチ前の下馬評は弱体チームだったが、今やそんな事は忘れられつつあった。

>「六手で十分だった」

掴んだ右腕には爆弾を生成するのに必要な爆薬を秘めている。
クラウンはそれをベンケイ目掛けていつものように投げつけた。
固唾を飲んでいた観客たちが「おおっ!」と叫ぶ。

「やったぁっ!?」

観客Aになり果てた周子もその場で飛び跳ねた。
これまでにベンケイが使用した太刀、大鋸、十手、虎爪はもう使えない。
前者ふたつは破壊され、後者ふたつは手元にない。
薙刀は踏みつけられ、戦槌では隙が大きく後が続かない。

ゆえにベンケイがとったのは、七つ道具最後のひとつの開帳だった。
一本の棍棒を引き抜いたかと思うと、八つ現れ、紫電の鎖で繋ぎ止める。
そして蛇のように絡めとって飛来する腕を放り捨ててしまった。

>「多節棍、で大丈夫ですよ。……ああ、まったく。厳重注意くらいで済ませてもらえるといいなぁ、これ」

>「……まさか、ホントに社外秘だったんですか?それは、なんというか……すみません」

笑い合う八木とモータルの愉快気な様子を見てまたほっこりした。
などと気を抜いている場合ではなかった。戦闘中だ。

>「僕の勝ちは、これでもらった。次は……僕らの勝ちを貰おうよ、さあ」

その言葉の意味は分かっている。
桐山が先陣を切ってベンケイを追い詰め、晶が随伴機から隔離し、八木が手の内を全て引き出した。
そして最後はベンケイを倒して、勝つ。その役割を担うのは、誰か。

「八木先輩、桐山先輩。私に任せてください。ここは私がやる!」

周子はそう主張した。
ベンケイとの戦闘を最初に選んだのは自分だ。けりは自分でつけたい。
いやそれ以上に、単純にこのバトルをもっと楽しみたいと思った。

「……ずっと後ろから見てたよ。みんな凄いファイターだって思った。
 自分もあんな風に戦えるのか不安になっちゃうくらいに。
 けど私、すごくわくわくしてる。みんなの戦いを見て熱くなったから!」

集団戦のいろはは分からないが一対一なら何度も経験している。
ベンケイの本領である格闘戦でも競り勝つ自信は、ある。

31 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:32:40.58 ID:ElQWd3Qh.net
仮想操縦桿を握り直して、エクスフォードをベンケイへ近づける。
そして視界の端に展開していたウインドウを最大にした。
最大にした窓はエクスフォードのツインアイで捉えた映像だ。

援護射撃はレーダーと自動ロックオン任せだったので目視だったが今は違う。
前衛に出て本格的に戦う場面だ。自機の視点をメインに戦う必要がある。

「私も全力で楽しみたい!この一瞬、この戦い、このイベントを!
 お楽しみはまだまだこれから!こんなところで負ける訳にはいかない!」

周子はいわゆるエンジョイ勢だからロボットバトルをやるだけで楽しい。
だが同時にゲーム部でもある。ただ遊ぶのではなく、公式戦で勝って結果を残すという目標がある。
だから最終目標も世界大会出場。エクスフォードはそのためにビルドされた、周子の魂の結晶だ。

「よし、絶対勝つぞ!!」

「最初に散弾銃を放ってきたお嬢さんだな。社外秘の多節棍の力、刮目せよ!」

追加装甲つきのベンケイにダメージが通らないのは初手で判明済み。
秒間ダメージ量を稼ぐのに残された手段は格闘戦しかない。

ダメージレースに余計な駆け引きは無用だ。正面勝負あるのみ!
トリガーを引きショットガンを武装コンテナにしまい込むと、仮想操縦桿を思い切り前に倒す。
丸腰のままスラスターを吹かして、エクスフォードが出せる最高速で突っ込む!

読み通り接近戦か、とモータルは思った。やはり格闘機で間違いない。
ベンケイと少し似ている。武器を大量に抱え込み、それを適宜選択して戦える機体だ。
機体名称は知らないが、カスタム前はどう考えてもハーミットクラブだろう。
初期機体を手間暇かけてカスタマイズし使い込む奇特な人は稀にいる。

(弱い初期機体を魔改造して使う人は世界大会にもいる。そういう発想は嫌いじゃない)

少なくともモータルには周子の気持ちが理解できるようだ。
モータルは手始めに足を絡めとって自分のペースに持ち込むことにした。
杖と化した多節棍の結合部に紫電の鎖が発生し、蛇のように唸って迎撃に入った。

多節棍は操縦桿の操作によって途中で軌道を変えたり"絡めとり"を実行できる。
出来る事は多いが煩雑なので扱いの難しい武器だが、使いこなせば変幻自在の攻撃は強力無比。

盾はなさそうなので多節棍を弾いて防ぐなら武器を使うはず。
手持ち式の武器ならそのまま巻き取って奪う事も可能だろう。
腕に仕込んでいるタイプなら腕を絡めとってやはり有利をとれる。

周子は武器選択のトリガーを引きつつ、操縦桿を左へ倒した。
エクスフォードが両腕を構えると、多節棍の先端めがけて左腕を伸ばす。
傍目からは素手で掴み取りにいったようにしかみえない。無謀な行動だ。
だがモータルは油断しない。

即座に多節棍の機能を使い、軌道を変更した。
蛇のような波うつ軌道が腕を避けるカーブの軌道へ。軌道が変わったことで狙いも足から胴へ。
棍棒を繋ぐ紫電の鎖がしなり、しなやかな曲線を描きつつ胴へ迫る。

ならばとエクスフォードは右腕を伸ばす。
左腕を空振るも、瞬時に伸ばした右腕で強引に触れに行った。
そして黄色い腕と多節棍の先端が接触し、多節棍はエクスフォードに"絡めとられた"。

32 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:34:54.98 ID:ElQWd3Qh.net
正確に表現すれば、絡めとったのは腕に展開しているエクスフォードの武器だ。
展開した仕込み武器が大きく開き、多節棍の先端を挟みこんでいる。
分類としては暗器のリストブレードにあたるのだろうか。
極限まで精錬された、鋭く、氷のように冷たい二枚の刃。

「鋏、だな」

ゲーム起動時にもらえる初期機体のひとつ、ハーミットクラブの近接武器だ。
鋏は腕の手首辺りからそのまま生えるように突出しており、パンチの要領で放てる。
実践したように上手く決まれば、剣や槍を挟んで絡めとれる一見便利な武器だ。

「その通り!キャッチアンドゴー!このまま一気に突っ込む!」

多節棍の絡めとる攻撃を上回り、逆に鋏で多節棍を絡めとったことで調子づく。
これでベンケイは無防備だ。エクスフォードは勢いよく進撃を再開する。

モータルは窮地にも関わらず焦ることもなく、冷静なままだ。
多節棍を見切って絡めとる芸当も驚嘆はするがそれ以上の感想はない。
モータルはエクスフォードの鋏の致命的すぎる弱点を知っているからだ。

あの武器は展開式の仕込み鋏という関係上、リーチがとても短い。
長柄武器並みの多節棍に対して鋏はダガーに毛が生えた程度の長さしかない。
ベンケイ本体に攻撃を食らわせるにはもっと接近しなくてはならなかった。

鋏の有効射程に到達するまでの距離、実に棍の七節ぶん。限りなく遠い。
そして鋏が有効になる距離まで接近を許すほどモータルはお人好しでもない。
あわれな丸腰同然のヤドカリをなぶり殺して終わりだ。

「社外秘の多節棍の妙、とくとご覧あれ!」

多節棍を繋いでいた紫電の鎖がふっと消えた。鎖が消えたことで七節の棍がばらばらと宙を舞う。
エクスフォードは掴み取った棍棒の一本を鋏に挟んだまま、その光景を眺めていた。
ベンケイは手に持っていた一本の棍を突き出すと、七つの棍棒は再び紫電の鎖で繋がれた。

「ず、ずるい……!」

これではせっかく挟みとった意味がない。
ベンケイは七節になった多節棍を連結して一本の棍棒へと形を戻す。
そして目も留まらぬ速さで棍棒を振るい、胴めがけて素早く突いてきた。
もとより鈍重なエクスフォードに回避という選択はなく、防ぐしかない。

左腕の鋏を展開すると勢いよく左腕を振り抜く。
鋏と棍の先端が激突する。エフェクトが火花のように散った。
腕を振り抜ききったところに、隙が出来る。赤子の手を捻るより簡単な作業だ。

ベンケイはすかさず多節棍を鞭のようにしならせて大きく薙いだ。
右腕の鋏は一節の棍で塞がり、左腕の鋏は間に合わない。

エクスフォードは攻撃を胸部装甲にモロで食らい、耐久が大幅に減っていく。
一撃食らっただけで装甲が大きく陥没し、バチバチと嫌なダメージ音がなる。
流石は強化骨格機のマシンナリー。あと二発も貰えばお陀仏の恐るべき威力だ。

「油断した……!でもまだまだ!」

鋏が届くまでできる事は近づき続けることだけだ。
鋏の有効射程圏まで残りは棍の四節ぶん。到達までまだ遠い。

33 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:37:09.91 ID:ElQWd3Qh.net
続けざまに多節棍を鞭のように振るうが、どうにか目が慣れた。
軌道変更のパターンも読める。今度は左の鋏のみで掴むことに成功した。
ベンケイ側も再度紫電の鎖の連結を解除し、残りの六節で再連結する。

「射程距離まであと三節ぶん!」

そう叫んだところで、周子は目を丸くした。
形のよい目が大きく見開かれ、琥珀色の瞳が一層際立つ。

再連結した多節棍は三節"ずつ"だ。
両手に三節棍を装備したベンケイが容赦なく棍を振りかぶる。
手数を増やして耐久を一気に削って撃墜するはらだろう。

エクスフォードは両腕の鋏が挟んだ棍ふたつを捨て去った。
そして減速して頭を下げ、ボディの前で両腕を交差させる。
ボクシングの防御テクニック、クロスアームブロックで身を固めた。

(これで守りやすくなった。なんとか凌げるはず!)

そして振るわれたのは、神速もかくやという素早い二撃だ。
三節棍が変幻自在に軌道を変え、狙いが腕なのか足なのか、ボディなのかもわからない。
ノーマルモードから急にベリーハードになった感覚だ。こんな無理ゲー周子もごめんである。

ならば、ファイターが皆平等に持つ勘に賭けるしかない。
周子は三節棍の先端あたりをぎりぎり捉え、勘に任せて両腕の鋏を振るった。
腕の行く先は果たして空振りか。いや、鋏は三節棍に命中し見事に弾き飛ばした!

鋏がベンケイに届く有効距離までもう棍の二節ぶんとなかった。
極限まで接近を許しにも拘わらず、モータルは不意にしてやったりという顔をした。

「"とった"ぞ――――!!!!」

図ったようにふたつの三節棍の連結を切り、残り四節で通常の棍を形成する。
三節棍を弾きにいった今、エクスフォードのボディはがらあきだ。
最初からぎりぎりまで誘い込み、波状攻撃を浴びせて耐久を削りきる算段だったのだ。

ここまで接近を許したのは三節棍の凄さを知らしめるためのあくまで魅せプレイ。
モータルが頭に描いたのは敵の健闘虚しく、ベンケイの勝利という筋書きだ。
ベンケイは大きく棍を振りかぶり、必殺の一撃を叩き込んだ――

「こ、これは!?」

――かにみえた。ベンケイは攻撃を中止せざるを得なくなった。
エクスフォードが地面を蹴り、ベンケイの真上へ逃げてしまった。
あの重い巨体が攻防のさなか高速でマシンナリー1機分空へ上昇した。

「私の攻撃を読んでいたとでも言うのか!?」

三節棍の連結を切ると同時、周子もまたハーミットアーマリーからあるものを射出した。
それは微塵改にも搭載されている装備。牽引と拘束を兼ねるワイヤーアンカーだ。
空中に浮かぶキューブにアンカーをひっかけ、巻き取ることで攻撃を回避した。

「ワイヤーエスケープ!この瞬間を待ってたわ!」

アンカーのフックを緩めて外し、地面へ落下――鋏の射程圏だ。
苦し紛れに四節しかない多節棍で突いたが、容易にいなした。
落下しながら頭目掛けて腕を振りかぶり、上空から鋏を叩きつけた。
カメラアイがひしゃげ、内蔵している高感度センサーが完全に死んだ。

34 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:39:03.58 ID:ElQWd3Qh.net
「邪魔な追加装甲を引っぺがす、この瞬間を!!」

着地するやマクシミリアンがつけた傷跡を起点に右腕の鋏を挟み込み、出力任せに鎧を引っ張る。
追加装甲のつなぎ目に出来た隙間に左の鋏を差し込んで強引に分解。ばらばらと胸部の装甲を剥がした。
ベンケイの耐久バーはマクシミリアンと微塵改によって半分以上削らている。邪魔な追加装甲も外した。
高打点のDPSを叩きだすことを得意とするエクスフォードなら、削り切れる。

「これで終わらせる――!」

必殺の攻撃を放つべく、操縦桿を可能な限り後ろへ引き、一気に前へ。
エクスフォードは深く腰を落とし、両腕を抜刀術さながらに腰だめで構える。
裂帛の気合を込めて必殺攻撃名にしてメイン武器の名を叫んだ。

「フォールディング・シザーズ!!!!」

満身の力を込めて放たれた両腕の鋏はやや水平に袈裟切りを二撃浴びせたかと思うと、
独楽のように回転してもう二撃。続いて機械の巨躯を捻らせて更に回転。
単分子ブレード二枚で構成された必殺の鋏が幕引きの二撃を叩き込む。

「ば、馬鹿なあぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

オーバーキルの六連撃を食らったベンケイは有無を言わさず爆散した。
微塵改の背後で爆炎をあげながら残骸をあちこちへ飛び散らせる。
周子エクスフォードと共に微塵改に近付き、エモートを入力。

「晶ちゃん、お待たせ!」

エクスフォードと周子が同時に親指を立てた。
残るのはコープスブライドの射撃機と万能機の二機のみ。
ベンケイを撃墜した今、その二機が驚くほど弱い敵に映った。

ベンケイの撃墜に味方モータル達は特に反応することもなく弾幕を張り続けている。
まるで何かを待っているかのようだ。もしや、と周子はレーダーを見た。

エクスフォードのレーダーはミサイルを使う都合上、割合広域なものを採用している。
50メートル以内なら索敵の範囲内。これはコロシアムフィールドの約半分程度の広さにあたる。
確認すると赤い光点がひとつこちらへ猛接近してくる。凄いスピードだ。
恐らくベンケイが撃墜したのと同時に敵側が呼んだのだろう。

「救援要請……!トラフィックゴーストの援軍が一機接近してきます!」

レーダーに移動する赤い光点の速さからして速度重視の高機動型。
向こうの余裕から今しがた倒したベンケイの高機動バージョンだろうか?
今はチームの損耗も激しい。ここで強い敵が増えるのは嬉しくないニュースだ。

「君達がチームつつじヶ丘か。ベンケイを倒すとは……賞賛に値する!」

ARデバイスに響いたのは聞き覚えのある、低く研ぎ澄まされた声だった。
間違いない。彼は受付を担当していた青年であるゴーストだ。
設定上はチーム『トラフィックゴースト』のリーダーにあたる。

「まずはおめでとうと言っておこう。ベンケイを一番最初に下したのは君達だ!
 素晴らしい戦果だと私は思う。楽しんで頂けたらこちらも趣向を凝らした甲斐があった」

ゴーストの語り口とともに、やがて黒いマシンナリーが空より現れた。
鋭角的な装甲に機体各部に配されたスラスター。赤いツインアイがこちらを一瞥する。

手には細身のエナジーライフルを持ち、バックパックにエナジーキャノンが備えてある。
腰にマウントしているH型の握り手をした独特の剣はジャマダハルのようだ。
黒いマシンナリーはゆるやかに飛行しながら味方機二機やや後方のキューブに着地した。

35 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:51:39.68 ID:ElQWd3Qh.net
テスト

36 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:52:47.82 ID:ElQWd3Qh.net
周子は黒いマシンナリーと似た機体を月刊マシンナリー・ファイト四月号で見たことがある。
その号では学生ながら全国大会に出場したあるファイターについて特集が組まれていた。
その人は奇しくも同じつつじヶ丘高校出身で、浦和零士(うらわれいじ)選手という。

常に真っ黒なカラーリングを好み、オリジナル機体で勝つことを信条とした選手だ。
その特集で選手と共にやはり真っ黒な愛機の紹介がされていた。
雑誌に載っていたあの機体とゴーストの機体は酷似している。

「もしかして……『オリオンスペクター』……!」

「私の愛機の名を知っているとは……随分有名になったものだ」

マシンナリーに次いで現れたのはゴースト本人だ。
特徴的な白髪、黒いマント。顔を覆うほど大きいARバイザー。
誰がどうみてもそれは『ゴースト』――そして全国大会で出場した選手だった。

37 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:53:30.34 ID:ElQWd3Qh.net
「ゴーストってもしかして浦和選手……」

「しぃっ!今本名で呼ぶのは……すみません」

「えっ……はい」

周子は意味もわからずに黙らされた。なりきりの最中に中の人は存在し得ない。
例え参加者がどのような情報を握ってようが彼は冷静沈着な悪の組織のリーダー『ゴースト』だ。

「リーダー役の人って一番強いけど中身よく変わるんすよねぇ……」

「これより先は機密情報だ。おいそれと口にするな」

悪の組織のリーダー、無敵のゴーストが後ろから撃たれた。
万能機の操縦者は想像より軽い人物なのかさらっとスタッフ事情を暴露してきた。
ゴーストは極めて冷静に言葉で制してみせたがARバイザーの内の眼光は刺すように鋭い。

「……戦いは既に佳境を迎えている。君達ほどの大人数のチームは今回はいなくてね。
 チームつつじヶ丘の生存如何で戦況は大きく揺れる。そこで……私の出番というわけだ」

気を取り直して悪役演技に戻った。これで準備は万端だ。
ゴーストに大した思惑はない。ただイベントのスタッフらしい事を実行するだけだ。
参加者を楽しませる。実力は周囲の評判以上のようだが、チームつつじヶ丘はどの機体も消耗が見える。
楽しませるといっても、ファイターとして全力でぶつかり参加者を楽しませろという指示だ。

「君達の健闘を讃え――実験台達よ、私が直々に相手をしよう」

ゴーストはさりげない動きで特殊エモートを入力した。
すると自機と自分の周囲に毒々しいオーラっぽいのが発生し静かに燃え上がる。
彼はちょっと満足した様子でエモートを長押しした。これがリーダーの風格だ。

38 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:57:56.28 ID:ElQWd3Qh.net
「何するにしても一筋縄じゃいかないみたい……!
 リーダーのゴーストはたぶん全国大会の選手。強さは少なくともベンケイ並みかも……!」

足の遅いこのチームが高機動型を相手に一時撤退するのも難しい。
ならばスタンドアンドファイト。答えは明白だ。戦って勝つしかない。
ゴーストは強者ゆえの余裕で油断しまくっている。
周子は相手がぺらぺらと御託を並べている内に武装の展開を終えた。

「オリオンスペクターは高機動型万能機です!
 油断してる今が好機、最初から畳みかける!!」

黒い機体めがけて散弾とミサイルの波状攻撃が放たれた。
次いでハーミットアーマリーから球形の爆弾を取り出して起動させる。
重力爆弾"ブラストボム"だ。ひとたび爆裂すれば広範囲を重力で圧し潰す。
エクスフォードはそれを敵全体めがけて投げ込んだ。

「ほう。いきなり私を狙ってくるのか。キューブに隠れるまでもないな」

いくら撃ち込もうとオリオンスペクターには全く意味を為さなかった。
ショットガンで狙い撃ってもその機動性をもって高速で射線を切って躱してくる。
ミサイルは歯牙にもかけずフレアを射出して完璧に迎撃された。

「さて。これで最後か?」

オリオンスペクターは細身のエナジーライフルを引き抜くと、爆弾めがけて発射する。
青白い光弾が寸分なく爆弾を撃ち落として空中で爆ぜた。大気が圧し潰され、空間が鳴動する。

「今のは挨拶だと受け取っておく。いい勝負にしよう、チームつつじヶ丘!」

39 :水鳥周子 :2018/09/29(土) 17:59:39.90 ID:ElQWd3Qh.net
周子は雑誌に記載されていたオリオンスペクターの考察を思い出す。
オリオンスペクターは主に機動性、運動性、旋回性能に出力を回している。
武器の大半がエナジー系武器なのも相まって武器全体の威力は平均以下だったはず。
彼が簡単にDPSを稼ごうとするならやる事はひとつしかない。

「まずはお返しだ。洗礼の一撃、とくと味わいたまえ!」

ゴーストが指を鳴らすと、前に控えているコープスブライド射撃機からミサイルが飛んだ。
合計12発のミサイルがチームつつじヶ丘をロックオンして迫ってくる。

続けてオリオンスペクターのバックパックが可動し、両肩にビームキャノンが展開する。
キャノンにしてはやや細身の、漆黒に染まった砲身がチームつつじヶ丘を狙う。
そこに突撃銃を構えた万能機が加わった。

「唸りを上げよ、可変速エナジーキャノン『アーレス』!
 破壊の驟雨を撒き散らせ、エナジーライフル『フラッド』!」

操縦桿を操ってビームキャノンを高速で連射するスプレッドモードに選択。
さらにエナジーライフルを構え、チームつつじヶ丘目掛けて光の雨を降らせた。
ミサイルと実弾とビームの弾幕が降り注ぐ――!


【格闘戦でベンケイを撃破。救援要請で敵リーダーが到着。
 チームつつじヶ丘全体にミサイル実弾ビームの一斉攻撃】

40 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:21:24.87 ID:IrGkuif/.net
【すみません、構想を形にしたら思ったより長くなったので実験室に捨てます。
 進行中の企画とは関係ありそうでないので気にしないでください。】

41 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:22:48.06 ID:IrGkuif/.net
<水鳥周子の入部初日>

水鳥周子がゲーム部員になった理由は単純だ。
ロボットアニメが好きでロボットバトルをやった事があったから。それだけだ。
その日は新入部員歓迎会ならぬ部活存続おめでとう会で、記念に顧問と戦いボロ負けした。
周子は友達と遊びでやるのとは訳が違う本気の世界を見せつけられ、愕然とした。

もうゲーム起動時に貰える初期機体じゃやっていけない、ということだ。
マシンナリーファイターズにもポケモンにおける御三家のようなものが存在している。
それが万能のレギンレイブ、機動力重視のエンフォーサー、火力重視のハーミットクラブだ。
周子のハーミットクラブカスタムは端的に言ってゴミだった。あれなら無改造で使う方がマシだ。

「えぇー。なんで?なんで手も足も出なかったの?」

「……水鳥さん、改造が趣味丸出しなのよね……」

ARデバイスを外しながら顧問の茅原先生は答えた。
スナイパーライフル二丁と日本刀二本背中に抱えてる奴はじめて見た。
ハーミットクラブは武器の積載量が多いから武器選択はよりどりみどり。
でも知恵熱出るくらい熟考して武器を選んだ方がいいかも。先生の口調は優しかった。

「あぁん!くやしい!くやしい!やっとモデリング覚えたのにぃ〜!」

フィールドが体育館なのを良い事に周子はその場に寝転がってばたばた暴れた。
入部して間もない頃は弱さに見合わないくらい、かなり悔しがりだった。
だが幼児退行はともかくとして初日は悔しがっても許されただろう。
何せ攻撃を一発も当てられず、ビームの弾幕の前に成す術なく撃墜されてしまったのだから。

「なっ……んでそんなに強いんですかっ。先生!」

うつ伏せで死ーんとしていた周子だったがやにわに顔をガバッと向ける。

「それはね。敗北の味を知ってるからよ」

「真面目に答えてくださいっ」

「水鳥さんが何も知らないから強く感じるだけ……かな。
 私は成績で例えるなら中の中くらいよ。顧問だから生徒に負ける気はないけど」

かつては先生に勝てるぐらい強い部員が何人もいたらしい。
それが今や雛鳥のような雑魚新入部員しかいない。
負ける気すらしないので廃部寸前の苦境にも負ける気はないらしい。
だから部活の勧誘も手伝ってね。巧みに話を繋げて一同は部室に戻った。

42 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:24:18.59 ID:IrGkuif/.net
部活存続おめでとう会は寂しいものだった。飾ってある輝かしいトロフィーも色褪せた遠い過去。
その時周子は七、八人ほど居たのを記憶しているが、そのうち数名は一ヶ月と経たずに辞めた。
去年部員が大量に辞めていったことも踏まえて現ゲーム部員は「生き残り組ね」と茅原先生に言われた。

「じゃぁ、先生が戦った中で一番強いファイターは誰だったんですか?」

「いるにはいるけどファイターでなくて機体ね。五強って知ってるかしら」

五強。現在のマシンナリーファイターズにおいて最も強いとされる機体のことだ。
同時に最も入手難易度が高く、どれもゲームを崩壊させかねないバランスブレイカー。
そのため公式戦のレギュレーションで禁止機体に指定されており、見かけることも少ない幻の機体だ。

「速攻で禁止にぶち込まれてパーツ単位でしか使えないからほとんどお目にかかれないわ。
 手に入れるには当時の公式大会に出るしかないもの。時間を遡らない限り入手は至難の技よ。
 あー、パーツ単位でなら使っていいからネットオークションを漁れば見つかるかもね」

五強は公式戦で禁止に指定されている機体だが、パーツ単位でなら使用が許可がされている。
といっても、そのパーツも1パーツに限るという厳しいものだ。
N社はこれでも妥協した方だと苦々しい表情で語っている。

他校には戦績を上げるため躍起になってパーツを探す部もあるらしい。
この部にはかつて制作術に長けた人がいたので、パーツ集めに奔走する事はないようだが。

茅原先生がバトルした事があるのは『ヘカトンケイル』という火力の怪物のような機体だ。
百の腕という名前に相応しく二つのサブアームと九十八のビーム砲塔を併せ持つ。
戦闘になるやそのイソギンチャクのような砲塔で馬鹿みたいな集中砲火を浴びせるのだ。

「当時フリー潜ってたらなぜか五強のヘカトンケイルを使う人と戦うことが多くって。
 何度辛酸を味わったか分からないけど、その経験が私というファイターを強くしたの」

「先生、その機体ってもしかして……」

「ええ。水鳥さんをこてんぱんにした私の機体がヘカトンケイルよ」

「…………」

周子のケーキを食べる手が止まった。
ロボットバトルは友達と遊ぶためだけのツールじゃない。
真の姿は戦場さながらの容赦ない厳しい世界なのだ。

43 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:27:28.83 ID:IrGkuif/.net
「この際だから本気の世界も知っておきなさい。その上で楽しむか選んだ方がいいと思う。
 でないと貴女が傷つくだけよ。楽しいはずのゲームで辛い思いをしてほしくないもの」

先生はどこか遠い目だった。周子も遠い目をしていた。
折角新入部員の初顔合わせにも関わらず、ボコられた余波で周子は地蔵だった。
やがて武器を熟考しろと言われた事を思い出しケーキを食べながらARデバイスをいじり始めた。

「失礼します。茅原先生、ちょっと……」

がらがらと部室の扉を開けて三年担任の狭山先生が現れた。
茅原先生は教師特有の自然な動きで立ち上がり廊下へフェードアウトする。
かたい表情で茅原を見つめると落ち着き払った風の声を出した。

44 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:28:08.02 ID:IrGkuif/.net
「先生、今しがた職員会議で廃部の件が上がりまして……」

「話が違います。今年部員が集まったら続ける約束だったじゃないですか」

「特例です」

狭山先生はきっぱり言い切った。
二人の会話は二人が想定しているものより大きく、部室に筒抜けだった。
――ほら、ずっと続けたいと言っていた三年生も卒業してしまったし……
――茅原先生も今まで放任主義だったでしょう。だから空中分解したんじゃないんですか?
――泥船になった途端それらしい事されてもね。今更遅いんですよ。

「待ってください。入部して初日で廃部なんて酷い!」

勢いよく部室の扉を開け放ち、周子は抗議の声をあげた。
狭山先生は鼻白んで「生徒は関係ないから部室に戻りなさい」と言った。

「あります!あるに決まってる!」

狭山先生は面倒くさそうに右手で眼鏡を押し上げる。

「いいかい。今までは全国大会で優勝するんだって息巻いてた生徒達が頑張ってたから良かったんだ。
 新入部員の君達がそうとは限らない。適当にダラダラ時間を潰すくらいなら勉強でもやりなさい」

45 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:29:25.92 ID:IrGkuif/.net
この時、周子は自分がとてつもない負けず嫌いを発揮できることを知った。
そのために必要な勢いを持っているということも。

「だったら私は世界大会だ!!!!!」

「はいい?」

「私達『生き残り組』は世界を目指しています!前の部員の目標はよく知りません!
 けど目標に向かうだけの意思はあります!そのために今から頑張ろうって話をしようと――考えていました!」

両先生はちょっと驚いた顔をしていた。それもそうだ。
うつろな目をしながらデバイスをいじる周子がそんな大それた事を考えていたとは。
無論、今考えた。いつ考えたかは言ってない。ゲーム部を守るためついて出た方便だ。

「信じられないなら、ロボットバトルで決着をつけましょう!」

周子は鋭い勢いで眼鏡型のマイARデバイスを取り出して狭山に突きつける!

「私が勝ったら廃部の話はナシにしてください!お願いです!」

狭山先生の眼鏡が廊下に差し込む陽光の反射して二つの眼を隠す。
無言で長方形のケースを取り出すと、中のARデバイスを見せつけた。

「分かりました。ただし負けたら廃部ですよ。いいですね、茅原先生?」

茅原先生は頷くしかなかった。
フィールドは体育館。ルールは公式戦に則ったフリーマッチ。
狭山の使用機体は無料で配布されている射撃機のガンドッグだ。

「ARデバイスセット!スタンバイ、ハーミットクラブカスタム!」

ARデバイスを起動し、周子の眼前にモニター一式と仮想操縦桿が出現する。
そして機体のいたるところに武器を備え付けた自機が姿を現す。
青いを双眸を湛え、灰色で彩られた巨躯の機体だ。

46 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:30:37.10 ID:IrGkuif/.net
ゲーム部の存亡を賭けた戦いが今始まった。レフェリーの茅原がゴングを鳴らす。

「ロボットバトル開始よ!」

開始早々狭山先生のガンドッグが弾幕を張りながら声高に叫んだ。

「僕は壮大な夢を語る生徒は嫌いじゃない。でもやる気を感じない人は嫌いだな!
 せめてそれらしい戦いをしてみせてください、水鳥さん!!」

ハーミットクラブカスタムはスラスターを全速で吹かした。
横異動で射線を切りながら、背中から散弾銃を取り出し撃ち返す。
散弾銃を連射するが全然当たらない。周子は歯噛みした。

「いい調子よ水鳥さん!ちゃんと武器を変えたのね!」

周子は今までノリ以上の戦い方をしたことがない。
スマブラで例えるとなんか適当に弱攻撃連打したりたまにスマッシュ技使う感じだ。
無論戦術など分かろうはずもなく、狭山先生に勝つには短い時間で行った改造に懸っている。

ハーミットクラブカスタムは武器の積載量が多いのは利点だけども、機体重量があり足が遅い。
対してガンドッグは武器が銃のみだが、そこそこの足と大量の弾幕を張れるのが特徴。
このままでは蜂の巣にされて終わる。

ハーミットクラブカスタムは横移動を続けながら露骨に距離を詰めた。
弾幕が更に激しくなる。徐々に機体にあたり始め、装甲が削れ、耐久バーが急速に減少する。
耐久バーがゼロになったら周子の敗北。すなわち廃部の決定だ。

「弾幕が止まないなら……!」

ハーミットクラブカスタムは両腕に内蔵している鋏を展開した。
機体名称のヤドカリにちなんだ武器で、パンチの要領で敵を突いたり切ったりできる。
灰色の機体がその場で二、三度素振りをする。
周子は操縦桿を固く握り、琥珀色の瞳できっとガンドッグを見据えた。

47 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:32:04.66 ID:IrGkuif/.net
するとハーミットクラブカスタムの動きがにわかに変わった。
逃げ回るのを止め、ガンドッグ向かって真正面から突っ込んだ。
ガンドッグは迎撃すべく両腕の機銃の轟音を響かせ、大量の弾丸エフェクトが猛進する。

「これでどうだぁぁぁぁ!!」

なんと、周子は迫りくる弾丸を見切って鋏で弾き飛ばした!
機銃斉射をガンガン鋏で切り飛ばしながら、少しずつ前進する。
ない知恵を振り絞って考え出した唯一の戦術がこれだ。

「そんな馬鹿な。それはごり押しであって戦術とは言わないぞ!」

「仕様上は出来ますね。機銃の斉射もエフェクトとして視認できるでしょう。
 動体視力のいい人なら弾丸エフェクトを弾き飛ばすことは不可能じゃありません」

事もなげに言い放つレフェリー。
額に一筋の冷や汗を垂らし、今度は狭山先生が歯噛みした。
周子の機体が紅海を渡ったモーセの如く弾丸を左右にはじいて接近してくる。

「ずっと考えてました、茅原先生のヘカトンケイルの倒し方を!」

「え、私?」

「弾幕で近づけない、攻撃も躱される……だったらこうだ!」

ハーミットクラブカスタムの両肩から二本のワイヤーアンカーが飛んだ。
動揺して隙が出来た狭山はそれを避け切れず、装甲にアンカーが刺さる。
逃げようと抵抗するガンドッグをワイヤーで巻き取り、鋏の射程圏まで接近する。

「これで終わらせる!!」

展開した鋏を振りかぶり、ガンドッグの頭をかち割った。
狭山の眼前に展開していたモニターがぷつっと消失する。
次いでボディに鋏の突きをお見舞いした。装甲をぶち抜き、鋏を引き抜く。
バチバチという電気のようなダメージ音を響かせて狭山先生の機体は爆裂した。

「……フォールディング・シザーズ!」

両腕の鋏に名付けられた武器名を呟き、水鳥周子は闘いの勝利を感じ取った。

48 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:34:03.19 ID:IrGkuif/.net
狭山先生は頭をぽりぽりと掻きつつ、諦念を込めて話し始めた。

「わかりました、わかりました。僕の負けです。とりあえずゲーム部は存続という事にします。
 ですが、今後の活動次第でまた廃部の話になるかもしれません。その時は覚悟してください」

敗北を噛みしめながら狭山先生は去っていった。
世界大会の目標だけは捨てないでください。そう言い残して。

「はぁ〜……よ、よかったぁ〜」

周子はへなへなと脱力すると、茅原先生は両肩を揉んだ。
よくやった、と無言で言っているらしい。

「ナイスファイトよ。けどあの戦法を採るならもっと装甲を厚くしていいわね。
 今は足も遅いし装甲も薄いしで良いことないわ。それと――」

「先生、凄い!私、勝ちました!こんなにスッキリ勝てたのはじめて!
 いつもはボロ負けか粘り勝ちばっかりなのに!」

「ええ、そうね。あれでヘカトンケイルに勝つのは難しいと思うけれど……。
 狭山先生に勝てたのは少ない時間でレベルアップした水鳥さんの力よ」

その時、周子の頭の中にはひとつのビジョンがあった。
荒唐無稽かも知れないけれども、自分だけの専用機のビジョンが。
敢えてその夢の新機体に名を授けるなら――ハーミットクラブ・エクストリームモデル。
茅原先生はペットネームは[フォード]ね。と空気を読まずに設定を足してきた。

その後の周子達の努力はつつじヶ丘高校の教員が知っている通りだ。
日々女子会を繰り広げ、真剣に(ついでと読む)ロボットバトルを繰り広げるハードな日々。

「フリーマッチなら望むところよ!
 ARデバイスセット!スタンバイ、エクスフォード!」

季節が春を過ぎ、部員が公式戦で戦える程に成長した頃――。
周子はナンパを兼ねた野試合で無敗を誇る程度には成長していた。
そして自分の実力を試すため、つつじヶ丘のアリーナへ赴いたのだった。

<おわり>


【個人的なSSなので企画とは無関係ということで……失礼しました。】

49 :水鳥周子 :2018/10/01(月) 00:36:26.70 ID:IrGkuif/.net
【ナンパを兼ねた野試合を跳ね除けられる程度には成長していた、ですね。すみません】

50 :創る名無しに見る名無し:2018/10/01(月) 02:47:31.46 ID:s/As9RAg.net
ええやん

51 :桐山 直人 :2018/10/01(月) 20:01:39.54 ID:4F3PgEFV.net
近接型であるベンケイの機体出力はすさまじいものだ。
腰を据えての一対一で殴り合うならカリブルヌスを抜いたマクシミリアンでも逆転の余地は一切なく、仮想空間に転がる鉄屑と化しただろう。
だがこれはチーム戦だ。カリブルヌスへの対処に躍起になってしまえば、必ず隙が生まれる。

>「あら、足元がお留守でしてよ」

「ナイスだよ紫水君!」

強引に突き飛ばされたマクシミリアンへ突進するベンケイに、微塵改の一撃が突き刺さる。
二度の打撃と至近距離での爆発ダメージが重なれば、いかに衝撃と物理ダメージの軽減に優れた重装甲でも
骨格にダメージが入るのは防ぎきれない。さらには随伴機からの迎撃も大盾とその巨体で防ぎ切り、多対一の状況に持ち込んでいく。

>「……『タスク』か」

「トーチカへのメタ戦術……やるのは初めてだよ。
 まさか紫水君が先鋒を務めるとは思わなかったけど」

スラスターすら展開できない今のマクシミリアンでは、手足を使って起き上がるしかない。
それもカリブルヌスにほとんど出力を回している状況では、ひどくゆっくりとしたものだ。
ベンケイに殴られた衝撃は装甲の薄いマクシミリアンに大きなダメージを与え、それが駆動系にまで響いているせいでもある。

>「爆弾先輩。私はエンジョイ勢だから、別に負けても大して悔しくなんてないわ。
 適当にガチャガチャ操作して、適当にぶん殴るだけでも、そこそこ楽しめるもの。
 約束された勝利より、死闘の果てにたどり着く敗北のほうが、価値があると思ってる」

紫水がふと、八木に向かって語り始める。
それは勝利への願いであり、この試合をここで終わらせたくないという希望だ。

>「だけど……エンジョイ勢だからこそ、もっと楽しめる方法を知りたいわ。
 勝つことでよりバトルを楽しめるのなら……爆弾先輩、私たちを勝たせて」

「……マクシミリアンは損傷が酷い。
 存分に暴れるといい、君は強いんだから」

>「……桐山君、水鳥ちゃん。迂闊に仕掛けない方がいい。
 ソイツはまだ何か……逆転を狙ってるよ」

>「八木先輩!」

三人の言葉に応えるように、八木は自機を動かし、ベンケイへ近づく。
モータルとの短い会話を終え、そこから始まったのは――死闘だ。

52 :桐山 直人 :2018/10/01(月) 20:02:16.07 ID:4F3PgEFV.net
クラウンシリーズは扱いの難しい機体とよく言われる。
それはノイジーならばバルーン・ボム。サイコならばチェーンソーやマチェットなど、
他の機体とは根本的に異なる独特の武装が扱われているためだ。
尖りに尖ったその性能だけならば五強と呼ばれる公式禁止機体にも匹敵するが、欠点を突かれれば脆く、他の機体が使う汎用武器では強みを活かしきれない。

>「六手で十分だった」

だが八木はそれを見事に使いこなし、今こうしてまったく未知の相手を前に、その武装をほとんど破壊してみせた。
その戦闘の間に、マクシミリアンはカリブルヌスを背中に収納し、再び小銃と大剣を手に持つ。
味方の体勢を立て直す時間と、敵の無力化。ゲーム部のエースだった彼は、今でもその実力があることを証明したのだ。

>「僕の勝ちは、これでもらった。次は……僕らの勝ちを貰おうよ、さあ」

「ありがとう八木!やっぱり君はエースだ!」

八木に向かって桐山は拳を突き上げて喜びを示し、マクシミリアンも小銃を持った手を天に高く上げる。
そうしてベンケイへと向き直り、再び突撃しようとしたときだ。

>「八木先輩、桐山先輩。私に任せてください。ここは私がやる!」

「なるほど、今回は君がリーダーだ。
 それなら……僕は援護するとしよう!水鳥君、君にならできる!」

あれだけの激戦を見せられて、心が熱くならないわけがない。
ベンケイの支援に回られないよう、また微塵改一体に火力を集中させないように、マクシミリアンは随伴機の二機を引き付けるように射撃戦を開始する。
小銃で弾幕を張り、隙を見ては大剣を叩きつけ、クイックステップでキューブからキューブへ隠れては
時折散弾砲で水鳥に向かうミサイルを撃ち落とす。だがその間、桐山は何か奇妙なものを感じていた。

(おかしいな……あのモータルたち、こちらに撃ち返してはくるけど積極性がない。
時間稼ぎのつもりで仕掛けているけど、これはこちらが時間を稼がれている……?)

相手を警戒したその思考も、ベンケイの爆発音とそのモータルの悲鳴が聞こえてくれば
気が緩み、親指を立てるエクスフォードと水鳥に思わず桐山も同じ行動で返す。
そして残ったモータルを片付けようとした瞬間だった。

>「救援要請……!トラフィックゴーストの援軍が一機接近してきます!」

現れたのは一目で高機動型と分かる戦闘機のような装甲と、光を反射して艶めく黒いカラーリング。
そして手に持ったエナジーライフルと腰にマウントされた近接武器、背中に備えられたエナジーキャノン。

>「もしかして……『オリオンスペクター』……!」

「高機動機体の新星、浦和零士選手だ。
 戦闘距離を選ばない戦闘スタイルと、いかなる距離でも敵の弱点を突く正確さ。
 僕のマクシミリアンはあの人を参考に組み上げたものだけど……雲泥の差を感じるよ」

マクシミリアンはいわゆる機体全てが同じシリーズのパーツで構成された『一式』と呼ばれるタイプではなく、
複数のシリーズから様々なパーツを抜き取って制作したものだ。スラスターやフレームはオリオンスペクターと同じパーツを使ってはいるが、
性能は同じでありながらあちらの機動力はすさまじいものがある。マクシミリアンの汎用レーダーでは、ほぼ一瞬であのキューブに現れたように表示されたのだから。

53 :桐山 直人 :2018/10/01(月) 20:02:32.62 ID:4F3PgEFV.net
>「君達の健闘を讃え――実験台達よ、私が直々に相手をしよう」

内輪の事情がうかがい知れる会話を夢を持ちたい年頃である桐山は聞かなかったことにして、
特殊エモートでオーラを纏うオリオンスペクターを仰ぎ見る。

>「何するにしても一筋縄じゃいかないみたい……!
 リーダーのゴーストはたぶん全国大会の選手。強さは少なくともベンケイ並みかも……!」

「試合は配信で何度も見たけど……正直弱点が見当たらない。
 装甲の薄さと決定打のなさが弱点とは言われてるけど、機動力が全てを補っている!」

エクスフォードの一斉射撃がモータルたちの機体に襲い掛かり、バーチャルとはいえ爆風が辺りを包み込む。
だがそれはオリオンスペクターにはまったくの無意味。高機動型に有効な面制圧武器も、一発残らず撃ち落とす射撃技術の前には歯が立たない。

>「唸りを上げよ、可変速エナジーキャノン『アーレス』!
 破壊の驟雨を撒き散らせ、エナジーライフル『フラッド』!」

反撃に放たれた弾幕はすさまじいものだ。オリオンスペクターの攻撃力こそ低いものの、
常に高速で発射され続けるビーム兵器は目くらましにもなり、同時にミサイルや爆弾への牽制にもなる。
耐久を削られ、装甲も一部剥がれているマクシミリアンにはその一発が重く、クイックステップでは捌き切れずに
脚部に被弾してしまう。そして桐山の視界にミサイル接近の警告が表示されれば、機動力の落ちたマクシミリアンでは避けきれないのは道理だ。

「相手は全国……だけど、それでもっ!
 ここで終わりたくはないっ!」

膝を突いて小銃を構え、迫りくるミサイルに向けて仮想操縦桿のトリガーを何度も引く。
だが破損した腕と足では反動を支えきれず、撃つたびに照準がずれて明後日の方向へ飛んで行ってしまう。
撃墜を覚悟し、桐山は思わず目をつぶった。

【SS投下ありがとうございます、こういう過去話もいいもんですね】

54 :創る名無しに見る名無し:2018/10/02(火) 11:03:15.23 ID:5/hj7hPJ.net
世界観が崩壊しちゃってる
いいのこれ?

55 :創る名無しに見る名無し:2018/10/07(日) 14:56:35.24 ID:cY0OsFXk.net
ピンチの時にはウンコを呼びな

心の中で三回唱えろ


ウンコ見参

ウンコ見参

ウンコ見参


そうすりゃウンコがやってくる

ウンコ星からやってくる

56 :創る名無しに見る名無し:2018/10/07(日) 14:57:35.17 ID:cY0OsFXk.net
「出て来い、俺の最終兵器よ!!」

「ブリィィィィィィイイイイイイイイ……!!!!」

そこに現れたのは……

「なんだ、あれは……!?」「そんな、ウコン……ッ!!?」

右近の変わり果てた姿だった。既に死体は完全にウンコ化されており、
顔だけは当時の面影を残しつつ。両腕に糞、そして胸には肛門、そして自慢の男根は
チャージ式のUNKO砲になっていた。


「うぉっ、UNKO砲!!」


「ハイパーウンコ斬りだぁぁぁ!!」


そしてハイパーウンコと右近の一撃がぶつかり合い、世界に糞が爆散する――

57 :紫水晶 :2018/10/08(月) 02:54:58.55 ID:TmDVDKKm.net
>「……ああ、分かったよ。少なくとも……この戦いの勝利は、僕らが貰おう」

晶の求めに、八木が応じる声が聞こえる。
これまでの、どこか遠慮がちな、一歩引いた視点からの物言いではない、力強く断言する言葉。
晶のような大言壮語ではない。彼は、それを現実に変えるだけの実力を持っていた。

>「七手だ。七手で決めてやる」

ジャグリングによって所持数以上の爆弾を手元にプールしてからの、間断ない波状攻撃。
爆弾生成という"溜め"に時間のかかる、爆撃特価型の速射性の低さを、プレイヤースキルで強引に補っているのだ。
そして先刻強く印象付けた閃光弾をブラフに使った爆撃は的確にベンケイの姿勢を崩す。
一方的な攻勢。一歩踏み出せば肉弾戦に持ち込めるこの距離で、前衛型のベンケイが後衛型のクラウンに防戦を強いられていた。

「すご……これがガチ勢の本気……?」

八木とベンケイのオペレーター、ともに上級者の二人が展開する目まぐるしい技術の応酬に、晶は眼が追いつかない。
あっけにとられているうちに、ベンケイはついに、「七つ道具」のうち六つを引きずり出された。
しかし敵もさる者、爆撃の合間を縫って投擲された虎爪がクラウンを捉え、次いで振るった薙刀が右腕を切り飛ばす。
八木は、その窮地さえも逆転の布石とした。

>「六手で十分だった」

切断されたクラウンの右腕は、爆薬生成機構を備えたいわば火薬庫。
ベンケイの制空圏を突破して、右腕が懐へと飛び込む。
決まった――その場に居る全員がそう感じたことだろう。
八木と、ベンケイのオペレーターを除いて。

>「……そういうの、なんて言うんでしたっけ。確か……ああ、一、二、三……八節棍でいいのかな」

ベンケイは最後の七つ道具……電磁接合式の多節棍を抜き、クラウンの右腕による奇襲を防いだ。
これで7つ目。おそるべきことに八木は、ほとんどタイマンの状況から、ベンケイの手札を全て暴き出したのだ。
ゴースト達もこれは想定外だったらしく、素で事態に驚愕している。

>「僕の勝ちは、これでもらった。次は……僕らの勝ちを貰おうよ、さあ」

>「八木先輩、桐山先輩。私に任せてください。ここは私がやる!」

ベンケイの武装は全て開示された。随伴機からの援護射撃は晶の微塵改が全て防ぐ。
不確定要素は取り除かれ、あとに残るのは、チームつつじヶ丘とトラフィックゴーストの純粋な技量のぶつかり合いだ。

58 :紫水晶 :2018/10/08(月) 02:55:22.47 ID:TmDVDKKm.net
>「……ずっと後ろから見てたよ。みんな凄いファイターだって思った。
 自分もあんな風に戦えるのか不安になっちゃうくらいに。
 けど私、すごくわくわくしてる。みんなの戦いを見て熱くなったから!」

「そうね、先輩方は強いわ。きっと、あとのことを全部任せちゃっても順当に勝ってくれると思う。
 でも……私や先輩方、このチームをここまで引っ張ってきたのは貴女よ周ちゃん。
 リーダーだとか先輩後輩だとか、しち面倒なことは全部忘れて、楽しんできて」

かつてゲーム部に入ったばかりの頃、晶は誰とも関わることなく一人用ARゲームの世界に閉じこもっていた。
そんな彼女に対戦の、マシンナリーファイトの楽しさを教えてくれたのが周子だ。
一人でも遊べるのがゲームの良いところだが、多人数で遊べばもっと楽しい。楽しくできる。
引きこもりの晶の手を引いて、ときには強引に引っ張って、新しい世界へ連れ出してくれた周子には、今も感謝している。

勝とうが負けようが、ゲームを楽しめれば晶はそれで良い。
だけど、周子も一緒に楽しめなければ、そんな楽しさに意味などない。
そして、楽しめているのなら……それをいつまでも、終わらせたくない。

>「私も全力で楽しみたい!この一瞬、この戦い、このイベントを!
 お楽しみはまだまだこれから!こんなところで負ける訳にはいかない!」

(そっか……負けたら、それで終わりなのよね)

楽しい時間をずっと続けるには、勝ち続けなければならない。
そんな当たり前のことに、晶はたった今ようやく気付いた。
それなら、周子にかける言葉はただ一つだ。

「勝って、周ちゃん!」

>「よし、絶対勝つぞ!!」

そしてエクスフォードとベンケイが激突した。
ベンケイの得物は電磁接合式の多節棍。間合いと軌道を変幻自在に操る武器は、まさに白兵型の切り札と言えよう。
対するエクスフォードは、敵の懐に飛び込み間合いの利を潰す戦術を採択した。

愚直な吶喊。しかし取り回しの長雑な多節棍相手ならば最適解に近い。
敵の得手を封じ、己の得手を押し付けるのが、全ての戦いに通ずる戦術の基本概念だ。
うなりをつけて振るわれた多節棍を、エクスフォードは手首に生やした鋏で掴み取った。

「上手い!白刃取りね!」

白刃で取ることを白刃取りとは言わないが、晶は雰囲気で喋った。
得物の制御を奪われて、しかしベンケイは動揺しない。冷静に多節棍の節を切り離し、掴まれた部分を捨てた。
多節棍は一節分短くなったが、これで状況は振り出しだ。

59 :紫水晶 :2018/10/08(月) 02:55:44.03 ID:TmDVDKKm.net
七節になった多節棍を唐竹割りに打ち込まれ、エクスフォードは大きくノックバックする。
強化骨格のパワーに得物の長さが乗っておそろしい威力だ。
エクスフォードの装甲ではあと二発と耐えられないだろう。

しかし逆に言えば、一発までなら耐え抜いて肉迫できるということでもある。
つまり、考えるべきは『攻撃をどう躱すか』ではなく、『どうやって一発までの被弾に抑えるか』だ。
臆せば足は止まり、引けば攻撃のチャンスを致命的に逸する。
そして周子にその心配は無用だった。エクスフォードは既に疾走を開始している。

ベンケイが多節棍を半ばで分割し、ふたつの三節棍へと変じて迎撃。
倍に増えた手数で嵐のごとき乱打を降らせるが、エクスフォードは両腕の鋏でそれを掴み取る。
さらに肉迫。ベンケイは三節棍の先端を捨て、再び一本の四節棍を作り出した。
両の鋏を残った節に塞がれたエクスフォードに打擲を防ぐすべはない――

>「ワイヤーエスケープ!この瞬間を待ってたわ!」

瞬間、エクスフォードは『飛んだ』。
上空に漂うキューブにワイヤーアンカーを引っ掛け、巻き取ったのだ。
キューブの配置を読み切り、土壇場で立体機動を成功させる、末恐るべき操縦センス。
水鳥周子のポテンシャルはたった今完全に開花し、彼女を一つ上の段階へと押し上げた。

>「これで終わらせる――!」
>「フォールディング・シザーズ!!!!」

そして――決着。
絶大なDPSを誇る必殺の六連斬撃が耐久バーを一瞬で削りきり、ベンケイはしめやかに爆発四散した。
爆炎を背に受けながら着地したエクスフォードは、微塵改に向けてサムズアップのエモート。

>「晶ちゃん、お待たせ!」

「カッコ良かったわよ、周ちゃん」

マシンナリーと同じように突き出される周子の拳に、晶もまた自分の拳を重ねた。
エモートのコマンドは結局見つからなかったので、微塵改も直剣を掲げて応える。

勝利を称え合うチームつつじヶ丘だったが、周子は不意に臨戦の緊張を取り戻した。
広範囲のセンサーを備えた彼女には"視えて"いる。戦いがまだ終わっていない、その証左が。

>「救援要請……!トラフィックゴーストの援軍が一機接近してきます!」

「ベンケイの仇討ちにでも来たのかしら……休む暇も貰えないのね……!」

やがて現れたのは、漆黒のカラーリングが特徴的なマシンナリー。
周子が毎月買ってきて晶にも読ませてくれる月間マシンナリーファイトの特集で見た覚えのある機体だ。

60 :紫水晶 :2018/10/08(月) 02:56:09.71 ID:TmDVDKKm.net
「あれはまさか……『黒の幽星』?」

アマチュア最高峰のファイター、浦和零士。
全国大会での活躍と、その尖りきったビルドから、一部でカルト的な人気を誇る選手だ。
ARバイザーで顔こそ隠れているが、写真で見た浦和の面影は確かに残っている。

>「君達の健闘を讃え――実験台達よ、私が直々に相手をしよう」
>「何するにしても一筋縄じゃいかないみたい……!
 リーダーのゴーストはたぶん全国大会の選手。強さは少なくともベンケイ並みかも……!」
>「試合は配信で何度も見たけど……正直弱点が見当たらない。
 装甲の薄さと決定打のなさが弱点とは言われてるけど、機動力が全てを補っている!」

「お、大人げない……アマチュアの大会でしょうこれ……?」

しかしこれもファンサービスと言えばそうなのかもしれない。
圧倒的な戦力差を覆し、策を弄してベンケイを打ち破ったファイター達への、運営からの粋な報酬。
現状最もプロに近いと称されるファイターと戦える、マニア垂涎の機会だ。

>「オリオンスペクターは高機動型万能機です!油断してる今が好機、最初から畳みかける!!」

先んじて攻撃を仕掛けたのは周子だった。
リロードを終えたエクスフォードの全武装を展開し、弾丸の雨をオリオンスペクターめがけて叩き込む。
半端な万能機なら二回は耐久を全損する必殺の嵐は、しかし浦和の機体を捉えられない。
回避と迎撃を織り交ぜた目にも留まらぬ機動によって、一発さえ被弾することなく凌ぎ切る。

>「唸りを上げよ、可変速エナジーキャノン『アーレス』!
 破壊の驟雨を撒き散らせ、エナジーライフル『フラッド』!」

返礼とでも言うかのように、オリオンスペクターもまた射撃武装を解放した。
一瞬にして形成される弾幕が、視界の全てを光輝で埋め尽くす。
一発一発はそれほど痛くない。しかし、それこそ桁違いの弾数が致死の威力を弾き出す。

「絨毯爆撃のように見えて……狙いは正確だわ!しかも多分、これが本命じゃない……!」

間断なく降り注ぐ弾幕に足を止めれば、あの高機動によって急所を刺される。
畳み掛けるような波状攻撃は、いわば「篩」だ。
全体攻撃で装甲と機動力を奪い、もろくなったところから穴を開ける、対多数特化の戦術。
はじめから単機でチームを相手にすることを想定ているのだ。

>「相手は全国……だけど、それでもっ!ここで終わりたくはないっ!」

61 :紫水晶 :2018/10/08(月) 02:56:33.05 ID:TmDVDKKm.net
桐山の悲鳴じみた声に振り向けば、マクシミリアンが最初の餌食になりかけていた。
四肢のパーツを破損し、まともに銃撃を放つこともできずに、迫り来るミサイルは直撃コース。
あと数秒もすれば、そこに転がっているベンケイと同じ末路をたどることだろう。
しかし、数秒あれば十分だ。

「私が居るわ、桐山先輩」

微塵改の腰部からワイヤーアンカーが射出され、動けないマクシミリアンを絡め取る。
そのまま自分の方へ引きずり込み、三式白兵防盾の下にマクシミリアンを収めた。
代わりに無防備になった微塵改は、ミサイルの直撃を受けた。
左腕のパーツが弾け飛び、耐久バーが大きく削れる。装甲特化型の微塵改ですら、このダメージだ。
マクシミリアンやノイジークラウンが受ければひとたまりもあるまい。

「桐山先輩。私ね、今とっても楽しいの。
 死力を尽くしてベンケイを打ち倒し、次の相手は全国区の選手。しかも全力のぶつかり合いよ。
 次はなにをしてくるのかしら。どうやって、それを攻略しようかしら」

微塵改は残った片腕をマクシミリアンの胴体に回し、抱き締める。
脚部を破損しまともに立てなくなったマクシミリアンを、微塵改の巨体で固定した格好だ。
機動力はゼロに等しいが、これで照準は安定するはずだ。

「あっけなくやられて、あとはずっと観戦席で指を咥えながら見ているなんて、御免だわ。
 こんな楽しい戦い、簡単に終わらせたくない。……もう一度、みんなで勝ちたい」

実弾系や爆撃は届く前に撃墜される。ビーム系は当たったとしても威力が足りない。
オリオンスペクターに対して決定打となり得るとしたら、それはマクシミリアンのレーザー刃だ。

「足が壊れたなら私が背負うわ。攻撃は全部私が受ける。桐山先輩は攻撃に集中して。
 まだ実装されていないけれど……マシンナリー同士の『合体』を、運営に見せつけてやりましょう」


【ギリギリですみません、過去編乙かれです。マクシミリアンと合体して、土台兼壁になる】

62 :創る名無しに見る名無し:2018/10/08(月) 23:39:05.72 ID:jgVJy/n3.net
それ、ダメじゃね?

63 :水鳥周子 :2018/10/09(火) 00:27:08.95 ID:i0JZoP4T.net
>>61
投下お疲れ様です!
自分は結果的に早く投下できてるだけなので遠慮なく期限目いっぱい使ってください!
時間的に都合がつかないときは一言書き込んでくだされば延長しても大丈夫ですので!
この企画もいよいよラスト目前。未熟なPLですがもうしばらくお付き合いください。失礼しました】

64 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:22:49.64 ID:SWf2AkUi.net
>「八木先輩、桐山先輩。私に任せてください。ここは私がやる!」

「……うん。やってみるといいよ」

水鳥がベンケイとの一騎打ちに名乗り出ると、優樹はそれを即座に承諾した。

>「なるほど、今回は君がリーダーだ。
 それなら……僕は援護するとしよう!水鳥君、君にならできる!」

桐山の言う通り、このチームのリーダーは彼女だ。
だがそれだけではない。

優樹は良い奴になりたかった。
水鳥が身を置くはずだった強豪のゲーム部を壊してしまった、罪滅ぼしがしたかった。
故に、彼女の望みを否定する事など出来る訳がない。

これで良かったのかは分からない。
こんな事はただの、飢えた犬にたった一食分の餌をやるような、
その場限りの自己満足に過ぎないのかもしれない。

>「……ずっと後ろから見てたよ。みんな凄いファイターだって思った。
  自分もあんな風に戦えるのか不安になっちゃうくらいに。
  けど私、すごくわくわくしてる。みんなの戦いを見て熱くなったから!」

それでも――少なくとも彼女は今、このゲームを楽しんでいる。
戦いに熱中して、高揚している。

>「私も全力で楽しみたい!この一瞬、この戦い、このイベントを!
  お楽しみはまだまだこれから!こんなところで負ける訳にはいかない!」

これで良かったはずだと優樹は自分に言い聞かせる。
それから操縦桿を握る手を一度開き、すぐにまた握り直して、意識を切り替えた。
これからエクスフォードとベンケイの一騎打ちが始まる。
ならば自分は桐山と共に、邪魔が入らないよう援護をしなければ、と。
もっとも――運営スタッフであるモータルが、そんな会場が盛り下がるような茶々を入れる事はないだろう。
他の参加者にしても、大勢に顔が見られるリアルイベントでそのようなプレイをする者は殆どいない。
正直なところ、心配は無用だと優樹は感じていたが――だとしても今は試合中だ。
目の前に敵がいれば、すべき事は決まっている。

「……僕も、縛りプレイついでにもう少し楽しませてもらおうかな」

優樹はそう言ってにやりと笑うと、随伴機の片割れに視線を向けた。
彼は幼少期からARデバイスに触れてきた、生粋のゲーマーだ。
水鳥への負い目から解放された今、次に自身の楽しみを考えるのは当然の事だった。
自機の右腕が切断されているにもかかわらず、その視線には勝利の確信。
コープスブライド射撃型の操縦者はバイザーの奥で目を細め、眉根を寄せた。

「その損傷で……言ってくれる。あまり強気な発言は控えた方が身の為だぞ。
 ベンケイを相手に白兵戦を制したあの活躍に、泥を塗る事になる」

「心配いりませんよ。負けませんから」

なおも強気な言動。
それを聞いた瞬間に、コープスブライドの操縦者は動いていた。
主兵装であるビームライフルを構え、クラウンへと銃口を向ける。
しかしその動作が完了した時には、クラウンは既に近くのキューブに身を隠していた。
そして左手から爆弾を生成。
キューブから一切姿を晒さないまま爆弾を遠投。

65 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:23:06.78 ID:SWf2AkUi.net
とは言えモータルも優樹の遠投技術は確認済み。
閃光弾を警戒して撃ち落とす事はせず、冷静に回避する。
位置を変えてしまえばノールックの遠投はもう叶わない。
一度、敵機の居場所を確認する必要がある。

量産機を使用しているとは言え、モータルは誰もが操縦技術に優れたプレイヤーだ。
クラウンが自機の位置を確認する為に顔を出せば、すぐさまビームライフルで撃ち抜く。
それが彼には可能だった。

だが――クラウンが次に取った行動は、彼の予想とは異なっていた。
クラウンは――再び爆弾を投擲した。
水風船が描く軌道は、コープスブライドへの直撃コース。

66 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:23:27.25 ID:SWf2AkUi.net
「なっ……」

想定外の攻撃に動揺しつつもモータルはそれを回避。
しかし爆弾は更に二発、三発と、やはり的確な狙いによって降ってくる。
センサー頼りの爆撃ではない。ベンケイに搭載されている高精度センサーでもなければこんな芸当はなし得ない。
では何故、どうやって――爆弾に追い立てられながらどれだけ思考を回転させても、答えは分からなかった。

「……やっぱり、ノイジーモデルのカラーリングはこれに限るな」

メタリックグレーの機体。その指先を見つめながら優樹は呟いた。
キューブの陰から指先だけを出して、鏡のようにして敵機の位置を確認しているのだ。
ガチ勢である優樹が汎用迷彩色ではなく、あえて機体をメタリックカラーにする理由がこれだった。

この状況、最早コープスブライドにベンケイの援護をする余裕はない。
一方で優樹は、数秒爆撃を止めたところで反撃をもらう可能性はほぼゼロだ。
水鳥が上手く戦えているか、ちらりと彼女へ視線を向けた。

エクスフォードは――ベンケイの一撃をまともに食らっていた。
胸部装甲がひび割れ、陥没。
更に一定量以上のダメージを受けた際に発生するスパークエフェクトが散る。

援護に入るべきか――優樹は瞬時にその選択肢を意識した。
ベンケイとエクスフォードとの一騎打ち。そこに随伴機達に水を差させる訳にはいかない。
だが――水鳥が負けてしまうようであれば話は別だ。
その時は自分が水を差す。優樹は最初からそう決めていた。

>「油断した……!でもまだまだ!」

しかし、水鳥の戦意はまだ失われていない。
それも破れかぶれの蛮勇ではなく、明確な勝利へのビジョンを持っている。
優樹にはそのように見えた。

>「射程距離まであと三節ぶん!」

エクスフォードは縦横無尽に振るわれる多節棍を見切りつつあった。
遠心力を帯びている為に高速かつ強力。
更に接着と分離による軌道変化も加えられた連撃を。

(紫水さんと言い、水鳥さんと言い……白兵戦の勘が良いんだな。
 センスがある……ゲーム部が元のままだったら、期待のルーキーになれたかもしれないな)

今更そんな事を考えても詮無い事だが――優樹は思わず目を細めた。
そんな事を考えている間にも、エクスフォードとベンケイの戦いは加速していく。
ベンケイは残り六節になった棍を二つに分離し、更なる高速連撃を繰り出す。

だが――それすらも次なる一撃への布石。
二本の棍による連撃が防げず相手が倒れればそれでよし。
防がれたならばその棍を捨て、四節棍を再構築し――渾身の一撃を見舞う。
まだ開発されて間もない新型機だと言うのに、高度に練り上げられた戦術だった。

67 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:23:50.44 ID:SWf2AkUi.net
>「"とった"ぞ――――!!!!」

ベンケイが勝利を確信し、叫ぶ。
その時既に優樹はクラウンを操作していた。
あらかじめ形成していた爆弾を振りかぶると、ベンケイへと狙いを定め――

68 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:24:15.34 ID:SWf2AkUi.net
>「こ、これは!?」

直後、モータルが驚愕を帯びた声を上げた。
エクスフォードが跳んだのだ。ベンケイの頭上を超えるほどに高く。
装甲と火力を重視した彼女の機体では本来なし得ぬはずの挙動。
優樹にすら予想していない事だった。

>「私の攻撃を読んでいたとでも言うのか!?」
「ワイヤーエスケープ!この瞬間を待ってたわ!」

それを可能としたのは――エクスフォードの兵装の一つ、ワイヤーアンカーだ。
水鳥はアンカーを頭上のキューブへと射出し、エクスフォードを釣り上げたのだ。

そしてアンカーを解除すると、そのままベンケイの頭部目掛けて鋏を振り下ろす。
これで頭部――つまりカメラアイとセンサーが破壊された。
次に何をされようと、ベンケイにはそれを感知する事は叶わない。

>「邪魔な追加装甲を引っぺがす、この瞬間を!!」

ベンケイの追加装甲が、鋏を用いた梃子の原理によって強引に、引き剥がされていく。
これで完全に、まな板の上の鯉だ。

「これで終わらせる――!」

「……余計なお世話だったみたいだな」

そう小さく呟くと、優樹は援護に用いるはずだった爆弾を投げ捨てた。
コープスブライドの位置もろくに確認せず、てきとうに。
それでも問題はなかった。最早随伴機への牽制などしなくても勝負は決まっている。

>「フォールディング・シザーズ!!!!」

一対の大鋏による六連撃。
ベンケイに刻み込まれた傷跡から、青白い光が漏れる。
斬撃属性の武器によって耐久値を削り切られた際の、特殊エフェクト。

>「ば、馬鹿なあぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

そして――操縦者の断末魔を掻き消すように、ベンケイは爆散した。

>「晶ちゃん、お待たせ!」

「お見事。格闘戦が得意なんだね。正直……驚いたよ」

これで残る敵はベンケイの随伴機、コープスブライドの万能型と射撃特化型。
彼らの戦力では、最早チームつつじヶ丘高校を倒す事は叶わない。
だが――彼らはなおも弾幕を張り続けている。
それは明らかな時間稼ぎだった。

(そりゃ……この状況で一小隊でも増援が来れば、僕らは堪えられない。
 だけど、それはショーの結末としてどうなんだ?)

新型機であるベンケイを撃破したチームが、ただの量産機に数で押されて敗北。
今ひとつ盛り上がりに欠ける展開だ。
そんな事をモータル達が狙っているとは思えない。
だが、では何を狙っているのか。

69 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:24:37.95 ID:SWf2AkUi.net
>「救援要請……!トラフィックゴーストの援軍が一機接近してきます!」

不意に水鳥が張り詰めた声を上げた。
優樹のクラウンはより高い火力を出す為、センサー類へのエネルギー供給をカットしてある。
それ故、援軍機の接近を確認出来たのは彼女よりも後。
戦闘機めいた流線型の、漆黒のマシンナリーが皆のやや前方に着地を果たしてからだった。

70 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:25:22.70 ID:SWf2AkUi.net
>「もしかして……『オリオンスペクター』……!」
>「私の愛機の名を知っているとは……随分有名になったものだ」

「確かにオリオンスペクターだ……ベンケイに右腕をあげちゃったのは、失敗だったな」

ネット対戦におけるランクマッチで、優樹は何度かオリオンスペクターと遭遇している。
時には味方として、時には敵として。
故にその強さは伝聞などではなく、もっと明確な経験として知っていた。

>「高機動機体の新星、浦和零士選手だ。
  戦闘距離を選ばない戦闘スタイルと、いかなる距離でも敵の弱点を突く正確さ。
  僕のマクシミリアンはあの人を参考に組み上げたものだけど……雲泥の差を感じるよ」

桐山が言う通り、オリオンスペクターはあらゆる状況において戦闘可能な機体だ。
現行メタの象徴とすら言えるだろう。
機動力があるという事は、戦闘を行う距離と場所、そして相手を常に自分で選べるという事。
敵を撹乱する事も、火力を一点に集中させる事も単機で行えるという事。
つまりスキルキャップが高い――技術を磨けばどこまででも強くなれるのだ。

オリオンスペクターはそれに加え、武器も残弾が自然回復するエナジー系のみで固めている。
徹頭徹尾、一人で全てをやってのける為に造られた機体なのだ。

実際、ランクマッチでも浦和零士は一人で戦局を決めるほどの強さを発揮していた。
全国ランキング一桁、二桁が入り交じるほどの上位帯においてもだ。

>「……戦いは既に佳境を迎えている。君達ほどの大人数のチームは今回はいなくてね。
  チームつつじヶ丘の生存如何で戦況は大きく揺れる。そこで……私の出番というわけだ」
>「君達の健闘を讃え――実験台達よ、私が直々に相手をしよう」

優樹は何も言葉を返さなかった。
ただ操縦桿を動かしてクラウンに爆弾を生成させる。
左手だけでは爆弾は二つしか保持出来ない。ジャグリングも使えない。
それでも――何も出来ずに負けるつもりはなかった。

>「オリオンスペクターは高機動型万能機です!
 油断してる今が好機、最初から畳みかける!!」

そうして真っ先に動いたのは水鳥だった。
機先を制するべくエクスフォードの全武装を展開。
散弾とミサイルを嵐のごとく解き放つ。
更にその弾幕の中に紛れるように投擲されたブラストボム。

だが――オリオンスペクターはその全てを回避、迎撃してみせた。
エクスフォードの全武装を一度に投入しても、飽和攻撃になり得ない。
優樹は思わず舌打ちをしていた。

>「今のは挨拶だと受け取っておく。いい勝負にしよう、チームつつじヶ丘!」
>「まずはお返しだ。洗礼の一撃、とくと味わいたまえ!」

反撃に放たれたのは、随伴機によるミサイルの雨。

>「唸りを上げよ、可変速エナジーキャノン『アーレス』!
  破壊の驟雨を撒き散らせ、エナジーライフル『フラッド』!」

更にオリオンスペクターのビームキャノンによる目が眩むほどの爆撃。
エナジーライフルから絶え間なく発射される閃光の雨。

71 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:25:40.61 ID:SWf2AkUi.net
優樹は咄嗟に、クラウンに爆弾を投擲させていた。
オリオンスペクター目掛けて放たれた爆弾は、しかし即座に弾幕によって撃ち落とされる。
そして――大量の爆煙を発生させた。
威力の代わりに発煙量の数値を増加させたスモークグレネードだ。

射線が煙で遮られると、即座にクラウンはその場に伏せた。
そのまま床を転がり、位置を変える。
それでもオリオンスペクターによる弾幕は煙越しにも避け得ない。
だがミサイルの直撃をもらう可能性は激減した。
これで暫くは粘る事が出来る。

72 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:26:41.26 ID:SWf2AkUi.net
(だけど……粘って、その後どうするかだよな。
 僕一人がこの場を離脱する事は出来る。でもそれじゃ意味がない……)

しかしこの状況で、優樹がチームの為に出来る事がないのもまた事実だった。
クラウン・ノイジーモデルの性能では自分が生き残る事は出来ても、味方を助ける事は叶わない。

73 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:27:02.31 ID:SWf2AkUi.net
(一人で……やるしかないか)

チームとしての勝ちはもう拾えない。
ならばせめて自分が一矢報いに行こう。優樹はそう判断した。
片腕を失った機体でオリオンスペクターに勝つのはまず不可能だが、策がない訳ではない。

(正直、こんなの負けて当然。一発でも当たれば大金星……。
 最初から負けるつもり……って訳じゃないけど。
 上手くやれば、うちのゲーム部の評判は間違いなく伸びる)

そうすれば水鳥が今後イベントに参加した際に陰口を叩かれる事もなくなる。
新入部員だって来るかもしれない。
そんな事を考えつつ、優樹はクラウンに爆弾を生成させ――

>「相手は全国……だけど、それでもっ!ここで終わりたくはないっ!」

不意に聞こえた、桐山の悲鳴じみた叫び声。
どうにかして助けよう――とは思わなかった。
威力を抑えた爆弾をぶつけて、吹き飛ばしてやる事は出来たはずだった。
だがそんな事をしても後が続かない。
ほんの数秒、撃破までの時間が伸びるだけ。

そしてミサイルの炸裂音が響く。
マクシミリアンには決して耐えられるはずのない強烈な爆発。
だが――クラウンのセンサーに表示される友軍機の光点は、一つも減っていなかった。

>「私が居るわ、桐山先輩」

何が起こったのかは見なくても分かった。
センサー上で隣接する二つの青い光点。
微塵改が、マクシミリアンを庇ったのだ。

>「桐山先輩。私ね、今とっても楽しいの。
  死力を尽くしてベンケイを打ち倒し、次の相手は全国区の選手。しかも全力のぶつかり合いよ。
  次はなにをしてくるのかしら。どうやって、それを攻略しようかしら」

その場を凌いだところで、どうせ次はない。
とは、紫水は考えなかったのだろう。

>「足が壊れたなら私が背負うわ。攻撃は全部私が受ける。桐山先輩は攻撃に集中して。
 まだ実装されていないけれど……マシンナリー同士の『合体』を、運営に見せつけてやりましょう」

マクシミリアンを担いで足の代わりになったとしても、やはりそれだけでは足りない。
オリオンスペクターの機動力は、微塵改ではどう足掻いても追いつけない。
そんな事も――やはり紫水は、考えなかっただろう。
ただがむしゃらに目の前の味方を助けて、味方と一緒に勝とうとしたのだろう。

(やっぱり……僕はまだまだ、嫌な奴をやめられてないみたいだ。
 ……だからもう一度、罪滅ぼしをしないと)

優樹は、前方に広がる煙幕を鋭く睨んだ。
煙越しに見える発射光からオリオンスペクターの位置を推察しているのだ。
そうしておおよその位置を読み取ると――伏していたクラウンを起き上がらせる。
左膝を突き、跪く体勢。

74 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:27:36.54 ID:SWf2AkUi.net
伏せている間に形成した爆弾は三つ。
二つは左手で保持。もう一つは――右足の踵の下に、軽く踏みつけられていた。
クラウンは自爆ダメージへの耐性を持っている。
だが爆風による影響さえもが無効化される訳ではない。
つまり――自分の爆弾で、自分を吹き飛ばす事が出来る。

75 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:27:58.74 ID:SWf2AkUi.net
威力を抑え、代わりにノックバック性能を増強した爆弾。
それを、クラウンの踵が――踏み抜いた。

瞬間、クラウンの機体が宙を舞った。
そのまま煙幕を飛び越えて、殆ど一瞬の内にオリオンスペクターの頭上へ。

機体が急速に回転する中で、優樹の目は正確に敵機を捉えていた。
ベンケイとの一騎打ちの時よりも更に、優樹は集中していた。

クラウン・ノイジーモデルは、弾切れという概念の存在しない機体だ。
バルーン・ボムは直撃すれば重装型の機体ですら大ダメージを与えられる。
自身を追跡する者も、自分から逃げていく者も、罠に嵌めて仕留める事が出来る。
自爆を利用したノックバックを利用すれば、瞬間的にだが高い機動力も発揮出来る。

つまり――オリオンスペクターと、同じコンセプトを持つ機体なのだ。
浦和零士は、自分と同じプレイスタイルのプレイヤーなのだ。
自分が全てやってのける。一年前、ゲーム部をやめてから磨き始めたスタイル。

その完成形が目の前にいる。
ゲーマーとしての闘争心が、優樹を深く深く集中させていた。

(もらった……!)

自機の回転による遠心力を乗せて、クラウンは爆弾を投擲した。
オリオンスペクターの頭部目掛けて。
これ以上ない角度、速度、タイミングによって放たれた爆弾が――

「――甘いな!」

オリオンスペクターの振り向きざまの銃撃に撃ち落とされた。
完璧な投擲だった。完璧であったが故に――その軌道は読まれていた。

「クラウン・ノイジーモデルなら私も持っている。その戦法は知っていたさ」

そのまま着地点へと銃口が向けられる。
クラウンが左手に残ったもう一つの爆弾を投擲。
撃ち落とさせる事で着地狩りを回避し――だが、これでもうクラウンに手持ちの爆弾はない。
しかし――にもかかわらず、優樹は笑っていた。不敵な笑みだった。

「でしょうね。でも、これは?」

クラウンが切断された右腕の根本を揺らす。
その断面から、ぼたぼたと液体が滴り落ちた。

爆薬である。
機体内部で形成された爆薬を、優樹はわざと零しているのだ。
クラウンが宙へと飛び上がってから、今に至るまで、ずっと。
その為、周囲のあちこちに爆薬は散布されている。

衝撃感度を低く設定し直した爆薬は、床に落ちただけでは爆発しなかった。
けれども――例えば付近でスラスターが焚かれ、その熱を浴びれば、その瞬間に爆薬は炸裂する。

そうなればオリオンスペクターは、自慢の超高速移動の最中に、横合いから爆風を受ける事になる。
機体の制御を保つ事はいくら浦和零士でも不可能。
優樹はそう踏んだ。そしてこの作戦を実行したのだ。

これでオリオンスペクターは、距離を取って仕切り直す事が出来ない。
銃撃によって爆薬溜まりを処理している時間は――与えなければいい。

76 :八木優樹 :2018/10/10(水) 22:28:34.35 ID:SWf2AkUi.net
「……なるほど。どうやら一本取られたようだな!
 見事だ!実に見事だ!素晴らしい戦術と献身に、褒美を与えなくてはな!」

オリオンスペクターがクラウンへと銃口を向けた。
優樹にはもう防御も回避も、手段は残されていなかった。
閃光が迸り――クラウンの胸部が撃ち抜かれる。

倒れゆくクラウンの全壊エフェクトを見届けず、オリオンスペクターは背後を振り返った。
残る敵機、エクスフォードと、マクシミリアン、微塵改へと。
スラスターによる高速離脱は封じられた。
だがオリオンスペクターは通常時の身のこなしも十二分に素早い。
例え三対一であっても捌き切る自信が浦和零士にはあった。

そして実際に捌き切られるだろうと、優樹も思っていた。
しかし心の何処かで――皆なら、もしかしたら、とも思っていた。

「……後は任せたよ」

クラウンが爆散するまでの僅かな時間。
作戦も警告も伝える暇はない。
故に優樹はたった一言だけ、そう呟いた。

77 :創る名無しに見る名無し:2018/10/17(水) 14:40:54.61 ID:ZU7x6aHX.net
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2IL

78 :水鳥周子 :2018/10/20(土) 23:44:43.58 ID:2T1dx12m.net
集中砲火が驟雨のように迫ってくる。
咄嗟にクロスアームブロックで防御姿勢をとったが長くは持たない。
重装甲マシンナリーのエクスフォードといえど、この弾幕を浴び続ければ撃墜必至だ。

>「絨毯爆撃のように見えて……狙いは正確だわ!しかも多分、これが本命じゃない……!」

この集中砲火で足と装甲を削り、自慢の機動力で相手を殺るという戦術。
モータルが斉射に加わっているものの、これは"一人で全てやる"ための戦い方だ。

(この集中砲火だとエクスフォードでも耐えきれない。何か遮蔽物は――)

運良く視界の端の床からキューブがせり上がってくるのが見えた。
慌ててエクスフォードと共にその後ろへ飛び込む。
落ち着いたところで前方を確認するといつの間にか大量の煙が敵機を覆っていた。
恐らくクラウンが投擲した爆弾によるものだろう。それでも集中砲火が止む気配はない。

微塵改は盾で、クラウンはその場に伏せることでそれぞれ対処しているようだ。
だがマクシミリアンは集中砲火の暴威に対処しきれず遂に足に被弾してしまう。
この横殴りの破壊の雨の中で機動力を鈍らせることは死に等しい。

>「相手は全国……だけど、それでもっ!
> ここで終わりたくはないっ!」

敵機を覆う煙を裂いてミサイルが迫ってくる。狙いは膝をついた赤い騎士。
構えた小銃で迎撃するが破損した腕と足では照準が定まらずミサイルには当たらない。
エクスフォードがミサイルを打ち落とすべく慌てて照準を合わせるが、タイミングが遅れた。
間に合わない。追尾式の誘導弾が命中するまであと数秒――。

>「私が居るわ、桐山先輩」

誰もが撃墜を覚悟したその時、マクシミリアンがワイヤーアンカーに絡めとられた。
アンカーは動けないマクシミリアンを巻き取り微塵改まで引き寄せる。
そして構えた盾ですっぽりと赤い機体を収めた。

追尾式のミサイルはロックした標的を逃さない。
軌道を大きく修正して尚も標的を追った。
ミサイルは吸い込まれるようにマクシミリアンをガードする微塵改へ命中する。
爆裂の衝撃で微塵改の左腕が吹き飛び耐久バーが削れていく。

>「桐山先輩。私ね、今とっても楽しいの。
> 死力を尽くしてベンケイを打ち倒し、次の相手は全国区の選手。しかも全力のぶつかり合いよ。
> 次はなにをしてくるのかしら。どうやって、それを攻略しようかしら」

「晶ちゃん……」

勝っても負けても楽しいと言い切れる晶を時に羨ましいとさえ周子は思う。
周子は基本的に負けず嫌いだからだ。純粋にゲームを楽しめる晶の姿が眩しく見える事すらある。
その晶が今、勝利という新たな楽しさを知り始めているのだ。
このゲームに誘った友達としてこれ以上嬉しいことはない。

79 :水鳥周子 :2018/10/20(土) 23:49:46.53 ID:2T1dx12m.net
>「あっけなくやられて、あとはずっと観戦席で指を咥えながら見ているなんて、御免だわ。
> こんな楽しい戦い、簡単に終わらせたくない。……もう一度、みんなで勝ちたい」

微塵改が片腕をマクシミリアンの胴に回して固定した。
あれなら確かに脚部を損傷したマクシミリアンでも照準が安定する。
ベンケイを追い詰めたあのカリブルヌスMk-2も使用可能だ。

>「足が壊れたなら私が背負うわ。攻撃は全部私が受ける。桐山先輩は攻撃に集中して。
> まだ実装されていないけれど……マシンナリー同士の『合体』を、運営に見せつけてやりましょう」

確かにカリブルヌスMk-2なら装甲の薄いオリオンスペクターを一発で撃墜する事が可能だ。
だが黙って当たる敵ではない。大人しくワイヤーアンカーに拘束されるほど甘い操縦者でもない。
だが燃えてくるではないか、と周子は思った。勝利の条件も非常に明確だ。当たれば勝ち、外せば負ける。

「うん、私も二人の合体攻撃に賭ける。桐山先輩と晶ちゃんなら大丈夫。
 私と八木先輩でどれだけサポートできるか分からないけれど……」

言い終わらぬ内に沈黙を保っていた八木のクラウンが動いた。
正確には宙を跳んだ。生成した爆弾を踏み抜くことで跳躍したのだろう。
現実は機体重量的に不可能な芸当だがこれはゲーム。
クラウンのバルーン・ボムの爆薬を調整する事によって行う操作技術のひとつだ。

高く跳躍した銀色の道化が煙幕の向こう側へ消えていく――。
その先の光景を見る事ができるのは八木のARデバイスだけだった。

「八木先輩、何でこんな無茶を――!」

単機で射撃型のクラウンが敵陣に踏み込むなど血迷ったとしか思えない。
冷静に戦況を見極め立ち回る八木らしくない行動だ。
思わず声を出した周子だったが、コロシアムの地面を見て気付いた。
何かの液体がフィールドに飛散している。

「もしかして爆薬……?」

>「……後は任せたよ」

八木の言葉の直後、煙幕の向こうで大きな爆発が起きた。
同時にレーダーの青い光点がひとつ消失する。
その光点は間違いなくクラウン・ノイジーモデルのものだ。

この時、周子の心情は仲間の撃墜を悔やむ気持ちより意図を汲む気持ちが勝った。
勝利を願うのはファイターとして誰もが同じだ。その上で八木は敢えて単機で挑んだ。
つまり犠牲になる事を覚悟して挑まねば敵わないほどの相手、と判断したという事だ。

80 :水鳥周子 :2018/10/20(土) 23:50:32.89 ID:2T1dx12m.net
周囲に撒かれた爆薬の中、スラスターを吹かそうものなら爆発必至。
機動力のために装甲を削っているオリオンスペクターなら尚更の事だ。
今、ゴーストの機体は自慢の機動力を削がれたに等しい。

「この機会は逃せない……次は私の番だね。
 一か八か、なんとかオリオンスペクターの隙を作ってみる。大丈夫、皆で勝とう」

周子達はあくまでチームで戦っている。
たとえ撃墜されても他のメンバーが生き残ればそれは全員の勝利だ。
肝心なのはこの逆転のチャンスを潰してはならないという事だ。

今、八木の強襲によって弾幕は一時的に弱まっている。
エクスフォードはショットガンを収納して素早くワイヤーアンカーを射出。空中のキューブに引っ掛けた。
同時に巻き取りを開始。機体は巨体を持ち上げて緩やかに宙を飛ぶ。
そしてアンカーを回収して再び別のキューブにアンカーを引っ掛ける。またアンカーを巻き取る。

これを何度も繰り返すことでエクスフォードはカタログスペック以上の機動力でオリオンスペクター達へ接近した。
もっともこの立体機動は空中にキューブが幾つも配置されていなければ出来ない偶然の芸当である。
エクスフォードが煙幕に消えると、周子が開いていたモニターの一面が煙に染まった。

レーダーでおおよその位置を確認しながら、周子はまたワイヤーアンカーを射出。
目標はオリオンスペクターに随伴するコープスブライド万能機、および射撃機。
アンカーが刺さった手応えを感じると、モニターの視界が開けた。

「スピン・ダブルアンカーソルトぉぉぉぉっ!!」

煙幕を裂いて現れた敵陣にエクスフォードが空中で独楽のように回転を始める。
当然、アンカーで繋がった二機も高速で回転する。ワイヤーを両手で掴み、二機を激突させた。
ダウンしたところにすかさず両腕の鋏を展開して機体ボディを滅多刺した。
コープスブライド二機が爆裂する様を見届けずに、エクスフォードの双眸はオリオンスペクターを捉える。

「――とりあえず二機撃墜……問題はこの後なんだけど……」

隙を作ると言っても適当に散弾を撃ち込んで隙ができる相手でもない。
機動力があり、射撃武装の豊富なオリオンスペクターを射撃戦で仕留めるのは難しい。
周子の頭で考えられる手段はひとつだった。接近戦に持ち込むしかない。
少なくとも遠距離から集中砲火を浴びるよりましだと判断した。

「ふ……魂胆は見えているよ。撃ち合いで敵わない以上、接近戦を仕掛ける他ない。
 誤っていないが正解でもないな。私は心意気を買っても有利まで捨てる性分ではない」

「全国クラスのなにがしさんって随分ケチですね……!」

「私の名はゴーストだと言ったはずだ」

81 :水鳥周子 :2018/10/20(土) 23:52:59.86 ID:2T1dx12m.net
ARバイザー越しに傷ついた黄色い巨体を見据える。
この機体も、盾を持った機体も、赤い機体も、良いビルドのマシンナリーだ。
他のファイターが生み出した機体を見るのは楽しい。それだけに戦い甲斐があるというもの。

「さあ、今度は君の力を見せてもらうとしよう……!」

「私だけじゃない。晶ちゃん、桐山先輩、八木先輩も。全員の力で……ゴースト、貴方に勝つ!」

「いいだろう……君もクラウンのファイターの後を追うがいい!」

オリオンスペクターはエナジーライフルを構え、迷う事無くエクスフォードに連射した。
重量級のこの機体に躱す手立てはない。エクスフォードはピーカブースタイルで構えてビームを防いだ。
一発一発の威力は低いが光線の熱で少しずつ前腕の重装甲が溶けていく。
周子は構わずエクスフォードを突進させた。重装甲に任せて一気に自身の戦闘距離へと持ち込むつもりだ。

「残念だよ。クラウンを操縦していた彼のような戦いを期待しただけにな」

バックステップで距離を空けようとするゴーストの機体をエクスフォードが追う。
断続的に飛来するビームを受け続けながら尚も周子の機体は突進を止めない。

「――『アーレス』よ、再び唸りを上げろ!」

バックパックに装備されている二門のエナジーキャノンがエクスフォードを捉える。
筒先から放たれた光弾は過たず前方の敵へ横殴りに降り注いだ。
被弾した両腕が耐久を失い爆裂する。それでも尚エクスフォードは前進を止めない。

「このポジションならいける!」

上空を移動するキューブにワイヤーアンカーを射出し、エクスフォードは宙を舞った。
追いかける速度が一気に増すとオリオンスペクターへと急接近する。
ゴーストは操縦桿のトリガーを引いて武器をライフルからジャマダハルに切り替えた。

「ようやく捉えた!これがエクスフォードの最後の武器よっ!」

両腕を失った周子の機体に本来攻撃手段は残されていない。
だが殻型武装コンテナ『ハーミットアーマリー』にはまだ使用していない装備がひとつある。
コンテナ下部からサブアームが伸びると、エクスフォードの背後に一対の巨大な鋏が展開した。

「ギガンティック・シザーズッ!!」

巨大鋏はマシンナリーの胴を挟めるほどあり、黒の幽星を両断せんと襲い掛かった。
オリオンスペクターは身を捻って一撃目を躱すと振り下ろされた二撃目を横に跳躍して避ける。
周子は続けざまにギガンティック・シザーズによる拘束を試みるも当たらない。
ひらひらと舞う蝶のように掴み所がなく、隙が無い。遊ばれている気すらする。

82 :水鳥周子 :2018/10/20(土) 23:53:24.87 ID:2T1dx12m.net
「悪くない隠し武器だ。私はそういう発想が嫌いではない」

巨大鋏の猛撃をジャマダハルで受け流して、黄色い巨体に蹴りを叩き込む。
エクスフォードが僅かにノックバックすると耐久バーが僅かに減少した。

オリオンスペクターが一歩、更に踏み込もうとする。
懐に潜り込まれたら最後、エクスフォードに抵抗の手段はない。
周子は操縦桿を後ろに引いて二歩後退させた。
桐山と晶には隙を作ると宣言したが、これではむしろ追い込まれている。

「っ……攻撃がひとつも当たらないなんて……!」

「接近戦の腕は中々だと褒めておこう。距離を取る余裕もない。
 ゆえに見せてあげよう。オリオンスペクターの秘められた力を!」

一対の巨大鋏が両側から挟み込むように突いてきた。
避けようともせずジャマダハルを捨て去り、両手で防ぎにかかった。
瞬間、ギガンティック・シザーズの鋏は発泡スチロールのように吹き飛んだ。
耳を聾する爆裂音を上げながら巨大鋏の破片が辺りに散っていく。

「――『リコイルバスター』。まさかここで披露することになるとは。誇りに思っていい」

オリオンスペクターは一般に装甲の薄さと決定打が不足している事が弱点だと評されている。
特に決定打に欠けるという弱点は重装甲機と戦う時、ゴーストの頭を悩ませる問題だった。
それを補うため作られたのがオリジナル武器、掌部零距離ビーム砲『リコイルバスター』である。

オリオンスペクターが装備しているライフルやキャノンと同じく一発あたりの威力は低い。
だがビームの速射性を極限まで向上させることで秒間ダメージ量を跳ね上げることに成功させている。
その連射速度は実に秒間100連射。総合的な火力でいえばカリブルヌスMK-2にも勝る隠し武器だ。

審査によって射程距離がゼロという事、他の武器を同時使用出来ないというデメリットが課せられているが、
そのデメリットを補って余りある威力を有した決め技だとゴーストは考えている。

「これで勝敗は決した……!」

「まだ……まだ終わってない!」

周子はその闘志を燃やしたまま組みつかんばかりにエクスフォードを接近させた。
両腕も隠し腕も失い、最早攻撃の手段は残されていないにも関わらずだ。
その思惑に気づいたゴーストは咄嗟に後方へ跳躍して距離を取った。

83 :水鳥周子 :2018/10/20(土) 23:59:36.24 ID:2T1dx12m.net
エクスフォードは真下にスラスターを吹かすと、クラウンが大量に溢した爆薬が爆発して二機を包み込む。
装甲の薄いオリオンスペクターが高威力の爆弾を生成をするクラウンの爆薬をモロに浴びた。
結果は想像するまでもない。ゴーストは自機の急速に耐久バーが減っていく様を眺めるしかなかった。

「私としたことが油断したよ。これを狙っていたとはね……」

オリオンスペクターの耐久はゼロになる事なく減少を止めた。
あと一瞬気付くのに遅れていればもっと危ういところだっただろう。
銃身が溶けたエナジーライフルを放り捨て、両肩にエナジーキャノンを展開する。
地面に転がっている達磨のマシンナリー目掛けてビームを連射すると、それは爆散した。

周子のARデバイスに撃墜された事を示す画面が表示される。
結局のところ、全国クラスを相手に手も足も出なかった。それ自体は悔しいものがある。
ベンケイ相手に縛りプレイで挑んで一歩も退かなかった八木が撃墜されてしまったのだから、当然とも言えた。

「晶ちゃん、桐山先輩、オリオンスペクターの接近戦には気をつけて。
 あいつ掌に強力なビーム砲を隠し持ってる……当たったら重装甲機でもただじゃ済まない」

クラウンが張った煙幕の中から"黒の幽星"が姿を現した。
ARバイザーを装着した全国クラスの腕前を持つ男、ゴースト。
そして隙を見せない高機動型万能機のオリオンスペクター。

オリオンスペクターは機体各所に爆発のダメージが散見された。
漆黒の塗装が剥がれ落ち、頭部は半壊している。
足の動きもどことなく不自然だった。

「チームつつじヶ丘……とんだダークホースだな。ここまで追い詰められたのは久しぶりだ」

両肩に展開している可変速エナジーキャノンをマクシミリアン達目掛け発射する。
夥しい光弾が恐ろしいほどの正確性でマクシミリアンとそれを支える微塵改へ迫った。
無論、一発毎の威力は然程恐ろしいものではない。

土台兼壁になっている微塵改ならしばらくは耐えられる威力だ。
埒が明かないと判断したゴーストはややぎこちない足取りで接近を開始する。
リコイルバスターを使って一気に決着に持ち込む算段だ。
しかしその機動力は爆発で足首を損傷した影響であまりに落ちていた。

だが、オリオンスペクターにはまだ隠された機能が残されている。
この機体のスラスターは主に他の高機動機体から抜き取ったパーツで構成されているため、
全く同じパーツを使えばオリオンスペクターと同等の機動力を得られるように感じるが、実は違う。
背中の飛行ユニットや一部のパーツはゴーストが制作したオリジナル・パーツが使用されているからだ。

このオリジナルパーツがオリオンスペクターの飛躍的な機動力向上に一役買っているという訳だ。
また、このオリジナルパーツ――E-WFSパーツはオリオンスペクターに更なる機能を追加していた。

ぎこちない挙動の黒い機影が横によれたかと思うと、五つに増えた。
分身したのだ。これがオリオンスペクター最後の隠し機能『ファントムシフト』。
高速機動中に立体映像を投影して相手を惑わせるためのものだが、機動力が削がれた今効果は薄い。

「あらゆる武器、あらゆる戦術を尽くして戦うのがロボットバトルというもの……。
 その『合体』が君達の出した結論だというのなら、全霊をもって応えよう。
 さっきの二機のように……私とオリオンスペクターに牙を突き立ててみせろ!!」

棚引く黒いマントを翻して、ゴーストは自身の胸に親指で突いた。


【ぎりぎりまでお待たせしました。エクスフォードが撃墜される。
 クラウンの撒いた爆薬をモロに食らいダメージを負うオリオンスペクター。
 その影響でライフルが使用不能になる。脚部を損傷して機動力減。
 最後の機能「分身」を使ってマクシミリアン達へ突っ込む】

84 :桐山 直人 :2018/10/25(木) 18:50:08.61 ID:OxRULb5M.net
腰に搭載された散弾砲も弾幕の前には効果が薄く、すり抜けたミサイルがマクシミリアンへと届こうとした瞬間。

>「私が居るわ、桐山先輩」

ボロボロになったマクシミリアンを引きずるように、微塵改のワイヤーアンカーが射出される。
間一髪で機体はミサイルの軌道から外れて、巨大な三式白兵防盾にすっぽりと埋もれるように隠れた。

>「桐山先輩。私ね、今とっても楽しいの。
 死力を尽くしてベンケイを打ち倒し、次の相手は全国区の選手。しかも全力のぶつかり合いよ。
 次はなにをしてくるのかしら。どうやって、それを攻略しようかしら」

彼女の言葉はこの絶望的な状況でも、前向きで明るい。
それは一瞬でも諦めかけた桐山には眩しく、その熱意に応えてやりたいと思わせるには十分だ。

「……紫水君、ありがとう。正直ここまでやれるとは思っていなかった」

微塵改も左腕を破壊され、決して無事とは言えない。
しかし残った片腕でマクシミリアンを固定し、最後の切り札であるカリブルヌスMk-2が発動できるようにしてくれた。
おそらく現行パーツのカタログスペックが全て頭に入っているであろうゴーストへの対抗策は、この自作兵装のみだ。

>「足が壊れたなら私が背負うわ。攻撃は全部私が受ける。桐山先輩は攻撃に集中して。
 まだ実装されていないけれど……マシンナリー同士の『合体』を、運営に見せつけてやりましょう」

「ああ!カリブルヌスにはもう一つ、最後の切り札もある……!
 微塵改の重装甲、頼らせてもらうよ!」

カリブルヌスの巨大なビーム発振器は通常、ビームの刃を形成するために使われる。
その形成するためのエネルギーすら発振器に注ぎ込めば、簡易的なビーム砲になるのだ。
もちろん市販されているパーツのように機体の火器管制システムと連動して照準を合わせてはくれず、
機体がエネルギー不足で動けなくなることを防ぐ出力の自動調整機能もない。
バイザーのHUDに表示されるレティクルなしに、目視で狙いを定めなければならないのだ。

「君が盾ならば僕は矛になる。
 ……正直、この一年で一番楽しい試合だよ!」

エネルギー供給を頭部と胴体のみに残してカットし、背中にマウントしたまま
カリブルヌスMk-2を変形させる。完成したビーム発振器はもはやマクシミリアン一機では支えきれず、
微塵改の右肩に乗せてようやく正面を向かせることができた。

85 :桐山 直人 :2018/10/25(木) 18:57:28.65 ID:OxRULb5M.net
解除

86 :桐山 直人 :2018/10/25(木) 18:58:23.04 ID:OxRULb5M.net
>「……後は任せたよ」

そしてエネルギーのチャージを始めれば、オリオンスペクターを一人で食い止め続けていたクラウンがついに撃ち抜かれ、
視界の隅に表示されていたレーダーから味方を示すマークがフッと消えた。
彼も経験が決して浅いわけではない、ベテランの実力者だった。だからこそ、自分でなければ時間を稼げないと知っていたのだろう。
昔の彼のままなら決してしなかったであろう、わずかな勝利の可能性への賭け。
それはつまり、仲間を信じているということだ。

「ありがとう、八木。……大会が終わったら奢るよ」

液体爆薬の海がフィールドとなれば、スラスターを活かした高速機動は行えない。
そういった特殊環境でのバトルはあのゴーストもおそらく経験済みのはずだが、それでも
強みの一つを潰すことができたのは大きなメリットだ。
さらには随伴機の射撃による援護も誤爆を恐れて撃つことができず、こうなれば接近戦、格闘戦が主体となる。

>「この機会は逃せない……次は私の番だね。
 一か八か、なんとかオリオンスペクターの隙を作ってみる。大丈夫、皆で勝とう」

「カリブルヌスのチャージを気づかれたくない、頼んだ。
 君の機体なら、格闘戦で押し込める!」

エクスフォードのワイヤーアクションは見事なものだ。
空中のキューブへ射出しては慣性を活かして巨体を動かし、その勢いを殺さず次のキューブへ素早くアンカーを射出する。
そうして相手の意表を突く形で煙幕に飛び込み、見事に二機の随伴機を刺し潰す。

>「――とりあえず二機撃墜……問題はこの後なんだけど……」

だが、最も強大な敵はまだ生き残っている。
エクスフォードと水鳥が怯むことなく飛び掛かったところで、オリオンスペクターとそれを乗りこなすゴーストは
最後まで優位を保ったまま迎撃した。しかし、オリオンスペクターが最後まで隠そうとしていた武装――リコイルバスター。
もしそれに気づかないままであれば、カリブルヌスを避けられた直後に撃ち込まれていたかもしれない。
さらには液体爆薬の海によって撃破ほどではないにせよかなりの耐久を削り、武装も一つ破壊した。

>「晶ちゃん、桐山先輩、オリオンスペクターの接近戦には気をつけて。
 あいつ掌に強力なビーム砲を隠し持ってる……当たったら重装甲機でもただじゃ済まない」

「相手の手の内は全て分かった、体力も削った……水鳥君、後は任せてくれ。
 紫水君、もう少しでチャージが終わる。奴を引き付けて盾の後ろからぶち抜いて、終わらせよう!」

87 :桐山 直人 :2018/10/25(木) 19:03:41.34 ID:OxRULb5M.net
>「チームつつじヶ丘……とんだダークホースだな。ここまで追い詰められたのは久しぶりだ」

両肩のエナジーキャノンが凄まじい連射力を一点に集中させて微塵改へと叩きつけられるが、
エネルギー武器の低威力と微塵改のセオリーを超えた重装甲がそれを防いでみせる。
その巨体に隠れるようにして、ボロボロの赤い騎士は背中の聖剣に光を蓄える。

>「あらゆる武器、あらゆる戦術を尽くして戦うのがロボットバトルというもの……。
 その『合体』が君達の出した結論だというのなら、全霊をもって応えよう。
 さっきの二機のように……私とオリオンスペクターに牙を突き立ててみせろ!!」

傷つき、塗装が剥げ落ち、頭部のカメラアイは一部が剥き出しになっている。
それでもオリオンスペクターはその威厳を保ち、最後に生き残った二機へと突撃してきた。
スラスターを吹かして二機へと向かう姿が一瞬桐山の視界内でブレて、直後に五つへと分身する。
おそらくあの隠し武器と同じく、これも最後までとっておくつもりだったのだろう。

「……紫水君。最後に言っておくよ。
 実はカリブルヌスの名前、元は別の名前だったんだ。
 恥ずかしさがあったから変えたけど……今ならはっきり言える。これで勝つんだ。
 さあ……エクスカリバー!その光刃で敵を断つときだ!」

仮想操縦桿のトリガーを握りしめ、視界に広がる五つのオリオンスペクターを見据える。
思考が澄み渡り、限界までエネルギーが溜め込まれた発振器が咆哮した。

「どれかを狙う必要はない!何故なら――全てを薙ぎ払えばいい!」

微塵改の防盾の背後から、全てを焼き尽くす光が放たれる。
それは前方に広がり、発振器がやがて反動に耐えきれず爆発するまで続いた。
時間にしてみればわずか数秒、しかし当事者たちにとっては一時間にも感じられるその光景は、
マクシミリアンが微塵改から零れ落ちるようにして機能を停止したことで終わりを告げた。
カリブルヌスMk-2を機体制御用のエネルギーすら注ぎこんで使用した結果、強烈な反動ダメージがマクシミリアンを襲ったのだ。

「……これで……いや!オリオンスペクターはまだ、健在だ……!」

機能停止する寸前、ARデバイスの視界に表示されていたレーダーにはただ一つだけ、オリオンスペクターを示す光点が輝いていた。
それが現実であると示すように、微塵改の真上からオリオンスペクターが急降下してくる。

「まったく、オリジナル武器というものは常に驚かせてくれる……!
 しかし、その牙ももはや折れた!その機体で何秒耐えられるか、見せてもらおう!」

オリオンスペクターはとっさにカリブルヌスMk-2のビームをリコイルバスターによって相殺し、
即座に上空へと向かっていたのだ。しかし、機動力の落ちた機体では逃げ切れず右足が吹き飛び、
武装ももはやリコイルバスターのみ。それでも彼は自らの勝利を確信して、装甲が薄いと判断した頭部から
リコイルバスターで一気に吹き飛ばそうと画策したのだ。


【ダメージは与えたものの撃破には至らず。一瞬で決着をつけようと微塵改へ急降下突撃】

88 :紫水晶 :2018/11/03(土) 22:56:07.38 ID:5fnI4v4k.net
>「ああ!カリブルヌスにはもう一つ、最後の切り札もある……!微塵改の重装甲、頼らせてもらうよ!」

半壊状態でありながら、微塵改を支えとしてマクシミリアンは再び立ち上がる。
挫けぬ心、折れざる意志は、他ならぬ桐山の胸にこそ宿っている。

>「君が盾ならば僕は矛になる。……正直、この一年で一番楽しい試合だよ!」

「ふふっ、結論を出すのはまだ早いわよ桐山先輩。これからも、明日からも、楽しい日々はきっと続くもの……!」

桐山と八木をチームに混ぜると周子が言ったとき、晶は何の感慨もなくそれに同意した。
どうせ一日限りの即席チームだから、どう転ぼうと明日以降に影響はないと考えていたからだ。
だが……今は違うと、自信をもって言える。
明日も、来週も、来月も。ずっとこのチームで試合がしたいと、心から思った。

一線引いた姿勢をとりながらも、晶達を勝たせるために死力を尽くしてくれた八木。
過去に抱えた確執を乗り越えて、劣勢になお抗う意志を捨てなかった桐山。
そして――二人を再び結びつけて、在りし日のゲーム部を僅かにでも取り戻した周子。

みんなで……勝ちたい。
相手がアマチュア最高峰でも、参加者が文字通りの『実験台』に過ぎなくても、関係ない。
全力で、思い付く限りの策を弄して、勝ちを掴み取りたい。

>「うん、私も二人の合体攻撃に賭ける。桐山先輩と晶ちゃんなら大丈夫。
 私と八木先輩でどれだけサポートできるか分からないけれど……」

「気負わないで、なんて予防線を張るつもりはないわ、周ちゃん。
 貴女と爆弾先輩なら、勝利への道程を完璧に舗装してくれるって、信じてる」

瞬間、ノイジークラウンが高く高く跳躍した。
足元でノックバック値に振った爆弾を爆発させて、砲弾の如く自身を射出したのだ。
機動力が低いはずのクラウンによる、完全に意表を着いた上空からの強襲。
しかし敵もさる者、オリオンスペクターの主は深い実戦経験からクラウンの挙動を読んでいた。

>「クラウン・ノイジーモデルなら私も持っている。その戦法は知っていたさ」

奇襲は防がれ、クラウンは敵の射線真正面へとまろび出る。
だがこれで終わりではあるまい。いま、晶達の前で矢面に立っているのは……"あの"八木なのだ。

>「でしょうね。でも、これは?」

抜け目のない爆弾使いは、爆風による奇襲さえもブラインドに、もう一つの策を弄していた。
切断された右腕から漏れ出す、液体爆薬。それはフィールドの各所に爆薬の水溜りを生み出している。
スラスターを蒸そうものなら火達磨だ。オリオンスペクターの機動力は、これで封印された。

89 :紫水晶 :2018/11/03(土) 22:57:21.26 ID:5fnI4v4k.net
test

90 :紫水晶 :2018/11/03(土) 22:57:54.00 ID:5fnI4v4k.net
オリオンスペクターの兵装が瞬き、クラウンの機体が爆散する。
レーダーの光が一つ潰えて、八木がバトルから退場した通知が視界の端に映った。
チームで真っ先に撃墜されてなお、彼の表情に険はない。

>「……後は任せたよ」

――仕事は果たしたと、その顔が物語っていた。
スペクターの出鱈目な速度を封じるのと引き換えなら、一機の犠牲は安すぎる買い物だ。
射撃戦を強いられていたエクスフォードが、その格闘性能を十全に発揮できる。

「任せられたわ……"八木"先輩」

>「この機会は逃せない……次は私の番だね。
 一か八か、なんとかオリオンスペクターの隙を作ってみる。大丈夫、皆で勝とう」

追い風を受けたかのようにエクスフィードは機敏に跳ぶ。
ワイヤー・アンカーを巧みに操作し、キューブを渡りながら立体機動する様はまるで、飛行機能を備えた特化機体だ。
煙幕によって閉ざされた視界の中、意志をもった蛇の如く二本のワンカーが奔る。

91 :紫水晶 :2018/11/03(土) 22:58:16.04 ID:5fnI4v4k.net
>「スピン・ダブルアンカーソルトぉぉぉぉっ!!」

煙幕越しに捉えた二つの敵機は、エクスフォードによって振り回されてお互いに激突。
そこへ暗器を一閃、スペクターの援護に回っていた二機のコープスブライドが爆散した。

>「――とりあえず二機撃墜……問題はこの後なんだけど……」

(これで随伴機は全滅……オリオンスペクターは丸裸ね……!)

晶はもはや快哉を叫ぶことさえ忘れて、戦況の成り行きを見守る。
彼女の役割は、マクシミリアンがカリブルヌスのチャージを終えるまで固定の砲座となること。
身じろぎひとつすれば射角は大きく乱れ、必殺の一撃が敵のど真ん中を捉えることはかなわない。

一方エクスフォードとオリオンスペクターの決闘は、耐久を削りきられる前に肉迫できるかどうかの勝負へと移行していた。
エクスフォードは両腕を眼前へと構え、メインセンサーを守りながら吶喊する。
対するオリオンスペクターは正面からエナジーライフルを連射。同時にバックステップで詰められた彼我の距離を広げ直す。
エクスフォードの両腕が耐久限界を迎えて弾け飛ぶのも構わず、周子はワイヤーで最後の立体機動。

距離は詰めたが、両腕を失ったエクスフォードに、もはや攻撃手段は残されていない。
少なくともオリオンスペクターの主は、そう感じているだろう。

(だけど……周ちゃんのマシンナリーには、もうひとつ奥の手があったはず!)

92 :紫水晶 :2018/11/03(土) 22:58:40.63 ID:5fnI4v4k.net
>「ようやく捉えた!これがエクスフォードの最後の武器よっ!」
>「ギガンティック・シザーズッ!!」

コンテナからついに顔を出した、エクスフォードの最終武装。
それは、マシンナリーを軽く挟み込めるほど長大な鋼のあぎと。
巨大な鋏だ。

両サイドから迫りくるニッパーじみた刃の強襲に、オリオンスペクターは反撃の暇もない。
ジャマダハル型のブレードが火花を上げ、純粋な質量差が形勢を少しずつエクスフォードへと傾けていく。
だが、周子が奥の手を解放しても、オリオンスペクターを捉えきるところまで行けない。
アマチュア最高峰の実力を誇る浦和零士の卓越した機体コントロールが、致命打を躱し続けている。

>「接近戦の腕は中々だと褒めておこう。距離を取る余裕もない。
 ゆえに見せてあげよう。オリオンスペクターの秘められた力を!」

間断なく開閉を繰り返す巨大鋏が、ついにスペクターの胴に食らいついた、その刹那。
爆裂と破砕の轟音を立てて、ギガンティックシザーズが硝子細工のように弾け飛んだ。
ブレードを捨てたスペクター、その両の掌に灯るには、赫々と熱を帯びるビームの砲口。

>「――『リコイルバスター』。まさかここで披露することになるとは。誇りに思っていい」

「超至近距離ビーム砲……!?オリオンスペクター、こんな武器を隠していたの――!」

>「まだ……まだ終わってない!」

勝敗は決した――誰もがそう感じたその瞬間にあってなお、周子の眼から戦意は消えていなかった。
彼女は全ての武装を使い切ったエクスフォードで、最後のあがきとばかりに体当たりを敢行する。
――爆薬が床を濡らすフィールドで、スラスターを蒸かして、だ。

単なるゲーム演出上のエフェクトにも関わらず、晶は灼熱の爆風が頬を叩いたような錯覚を得た。
スラスターの火はクラウンの撒き散らした爆薬に引火し、エクスフォードだけでなくスペクターも爆炎に飲み込まれる。
いち早く周子の意図に気付いてスペクターを退かせていたゴーストは大ダメージを負いつつも軽装甲で爆発に耐え、
一方で爆心地で為す術もなく爆圧を受けたエクスフォードは装甲を全損。
次いで放たれたエナジーキャノンがエクスフォードにトドメを刺し、これで被撃墜2。

>「晶ちゃん、桐山先輩、オリオンスペクターの接近戦には気をつけて。
 あいつ掌に強力なビーム砲を隠し持ってる……当たったら重装甲機でもただじゃ済まない」

「見ていたわ、周ちゃん。隠し玉を引きずり出せただけでも大金星よ、お疲れさま。
 あとは……私と桐山先輩に任せて。ここまで繋いでもらったバトン、無駄にはしないわ」

>「相手の手の内は全て分かった、体力も削った……水鳥君、後は任せてくれ。
 紫水君、もう少しでチャージが終わる。奴を引き付けて盾の後ろからぶち抜いて、終わらせよう!」

93 :紫水晶 :2018/11/03(土) 22:59:13.41 ID:5fnI4v4k.net
未だフィールドを照らし続ける炎の向こうから、オリオンスペクターが姿を現す。
装甲のほとんどは砕け、脚部パーツに異常を来たしながらも、爆圧に耐えきり、立ち続けている。
クラウンとエクスフォード、二つの機体が持てる全てを出し切ってなお、全損までには届かない。

これが『黒の幽星』。
これが全国大会経験者、プロに最も近い男。

>「チームつつじヶ丘……とんだダークホースだな。ここまで追い詰められたのは久しぶりだ」

「あら……過去形で語って良いの?『追い詰められた』が『負けた』に変わるかもしれないわよ」

「是非そうあって欲しいものだな。国内に有望なファイターが増えるのは、いち競技者として望むところだ」

スペクターは微塵改から距離をとりつつ、エナジーキャノンを連射する。
着弾する度に少なくない量のゲージが持っていかれるが、装甲で防ぎきれるダメージだ。
遠距離からチクチク削ってくれるなら好都合。カリブルヌスのチャージにかかる時間が稼げる。
おそらくそれはスペクター側も理解しているのだろう。スペクターは弾幕を張るのをやめた。

近づいてくる。
リコイルバスター――至近距離からのビーム砲で、一気に勝負を決めようとしているのだ。
微塵改もまた呼応するように、携行式擲弾砲を構える。

皮肉なことに、エクスフォードが前線に立っていたときと構図が逆だ。
スペクターが距離を詰めようとし、微塵改はそれを阻むために火線を張る。
お互いにボロボロで、足取りもおぼつかないが、決着の時は着実に近づきつつあった。

(あの出鱈目な機動力はもうない……ビーム砲は怖いけど、至近距離で本領を発揮できるのはこっちも同じ。
 桐山先輩、頼んだわよ……!)

カリブルヌスのチャージが完了しているか、確かめる術はない。
この距離で声を出して確認し合えば、スペクター側にこちらの戦略が筒抜けになるからだ。
晶には、桐山を信じて機を待つ以外にできることがなかった。

94 :紫水晶 :2018/11/03(土) 22:59:45.37 ID:5fnI4v4k.net
>「あらゆる武器、あらゆる戦術を尽くして戦うのがロボットバトルというもの……。
 その『合体』が君達の出した結論だというのなら、全霊をもって応えよう。
 さっきの二機のように……私とオリオンスペクターに牙を突き立ててみせろ!!」

「な……分身……!?」

眼の前でオリオンスペクターの姿が5つに分かれる。
ホログラムによる撹乱――5つの幻影のうち、どれかは本物で、残りは全て外れだ。

「なるほどね、連星の幽霊(オリオンスペクター)……まさに冠した名前の通りの奥の手というわけ」

高速機動戦でこれを使われれば、この上なく厄介な効果をもたらしただろう。
そして、低速でぶつかり合う現状においても、幻影は晶たちにとって致命的な劣勢を生む。
カリブルヌスによる攻撃は、おそらく一発限り。
幻影に惑わされて攻撃を外してしまえば、次はない。

(チャンスは一度だけ……5分の1を外せば、私たちは負ける……)

負けたくない。ようやくここまで追い詰めたのだ。
八木が、周子が、機体を賭してまで作ってくれた好機を、無駄にしたくない。

動揺を気取られてはいけないと理解しつつも、晶は操縦桿を握る手が震えるのを抑えられなかった。
だが、その背後でデバイスをたぐる桐山の双眸に、迷いや恐れの感情はない。

>「……紫水君。最後に言っておくよ。実はカリブルヌスの名前、元は別の名前だったんだ。
 恥ずかしさがあったから変えたけど……今ならはっきり言える。これで勝つんだ」

「桐山先輩――」

言葉は短く、しかし肩を支えられているかのように、心強い。
それだけで、不思議と手の震えは止まった。

>「さあ……エクスカリバー!その光刃で敵を断つときだ!」

95 :紫水晶 :2018/11/03(土) 23:00:08.42 ID:5fnI4v4k.net
心の引き金を引き絞るようにして、彼は己の武装の名を呼んだ。
カリブルヌス改め、光輝の剣『エクスカリバー』。発振器が轟き、光が奔る!
マクシミリアンの全エネルギーを費やして形成された威力の塊は、微塵改の防盾を紙の如く貫いた。
そのまま一条の極光と化して、オリオンスペクターの群れを飲み込んでいく。

>「どれかを狙う必要はない!何故なら――全てを薙ぎ払えばいい!」

言葉の通り、極太の光の刃はそのまま水平にフィールドを舐め、スペクターを分身ごと薙ぎ払った。
晶の知っている『カリブルヌス』のそれよりも、遥かに出力が高い。
ベンケイ戦では威力を抑えていた?――違う!

ARデバイスの端に表示された友軍の機体情報、そこにあるマクシミリアンの耐久ゲージがどんどん減少していく。
機体の維持に費やすはずのエネルギーすらエクスカリバーに充当して、文字通り命を削って刃を作り出しているのだ!
レーザー発振器が爆発し、マクシミリアンが機能を停止するまで、眼を灼かんばかりの閃光がフィールドを満たしていた。

光が晴れたあと、フィールド上には微塵改とマクシミリアンの亡骸を除いて他に何もない。
エクスカリバーの超威力がスペクターを欠片も残さず蒸発させたのだと、晶は疑いなくそう思った。

>「……これで……いや!オリオンスペクターはまだ、健在だ……!」

「え……?」

>「まったく、オリジナル武器というものは常に驚かせてくれる……!
 しかし、その牙ももはや折れた!その機体で何秒耐えられるか、見せてもらおう!」

驚くべきことに、オリオンスペクターはエクスカリバーの一撃を凌ぎ、上空へと逃れていたのだ。
脚部パーツは膝から先が欠損していて、武装のほとんどは消失しているが、まだあのリコイルバスターが残っている。
直上からの急降下による至近距離の一撃で、今度こそ勝負を決めようとしているのだ。

桐山の警告で全てを理解した晶は、もう戸惑わなかった。
勝つために、みんなで勝つために、自分が何をすべきか、はっきりと分かった。

96 :紫水晶 :2018/11/03(土) 23:00:52.29 ID:5fnI4v4k.net
「いいえ。牙はまだ折れてなどいないわ。これ以上、耐えるつもりもない」

微塵改は残った片腕で擲弾砲を構え、安全装置を外す。信管の起爆にはタイムラグがある。
この距離で撃っても爆発は間に合うまい。――だから晶は擲弾砲を、スペクターへそのまま投げつけた。
リコイルバスターが閃き、擲弾砲が"暴発"する。爆風がスペクターを煽り、落下速度がわずかに遅滞した。
擲弾砲はいわば『爆弾入りの筒』だ。八木のクラウンが右腕そのものを爆弾としたのを、見よう見まねで模倣した。

「アーサー王の伝説、その元ネタに則るなら、エクスカリバーはひとつだけじゃないわ。
 泉の乙女から下賜された聖剣とは別に、もう一振りのエクスカリバーが伝承の中には存在する!」

擲弾砲の爆風が稼いだコンマ1秒に満たない時間で、晶は武装切り替えのトリガーを引いた。
他の武装で隙を作って、切り替えた剣でトドメを刺す――この動きだけは、何度も練習してきた。
最後の最後、土壇場でものを言うのはやはり日頃の練習だ。淀みなく、滑らかな動きで微塵改は腰から剣を引き抜く。

一式徹甲剣『岩貫(いわぬき)』。岩をも貫く装甲貫徹力に優れた直剣。
武装の名前は雰囲気だけで付けた意味のない言葉であるが、偶然にしては出来すぎた取り合わせだと自分でも思う。
アーサー王の振るった二本のエクスカリバー。その片割れは、『岩に刺さっていた剣』だからだ。
選ばれし者にしか抜けない聖剣をその手に取った日から、かの英雄の伝説は始まった。

「さあ、私の声に応えなさい!岩貫改め――『エクスカリバー・コールブランド』!!」

擲弾砲をリコイルバスターで処理し、自由落下してくるスペクター。
それを迎え撃つかのように、直剣を真上へ突き上げる微塵改。

交錯二つの機影は、同時に互いの中枢を穿つクロスカウンター。
砲口と剣、どちらが先に相手の耐久ゲージを削り切るか――小数点以下のダメージレースだ。

97 :紫水晶 :2018/11/03(土) 23:01:21.49 ID:5fnI4v4k.net
【上から降ってくるスペクターにグレランをそのまま投げつけ、直剣でクロスカウンター】

98 :やぎ:2018/11/04(日) 18:42:54.87 ID:00z0ggaM.net
今回は先に水鳥さんに書いてもらって、その後で投下させてもらえないかな
戦いの結末を決めるべきは僕じゃないだろうしね

99 :水鳥周子 :2018/11/04(日) 20:43:44.76 ID:K64d1mua.net
【分かりました!それでは先に書かせて頂きます!】

100 :水鳥周子 :2018/11/10(土) 21:38:22.98 ID:2EcwLKZ8.net
オリオンスペクター最後の切り札――『ファントムシフト』。
推進ユニットExtra-Wing Flight Systemを構成するオリジナルパーツの機能。
ホログラムを投影することで機体を五つに分身させ、撹乱させる幽星に相応しき能力だ。
高速機動中に絶大な効果を発揮する機能だが今やその脚部は損傷し十二分に使用できない。

>「……紫水君。最後に言っておくよ。
> 実はカリブルヌスの名前、元は別の名前だったんだ。
> 恥ずかしさがあったから変えたけど……今ならはっきり言える。これで勝つんだ。
> さあ……エクスカリバー!その光刃で敵を断つときだ!」

「良くぞ言った!だが損傷したとはいえ、甘く見積もってもらっては困るな!
 私のファントムシフトはそうヤワな機能では――……」

ゴーストは眼前のファイターに漲る自信を前にして言葉を失った。
たとえ機能が半減していようと、技量で補ってみせるという、驕りに近い余裕がゴーストには常にある。
しかし、桐山の言葉には「プロに最も近い男」とまで評されたゴーストを黙らせる力があった。

自棄でも冗談交じりでもない。彼が覚悟を決めた時は、必ずそうなのだろう。
ベンケイ戦でも――そして今でも逆転の嚆矢となって値千金の活躍をしてみせる。
彼の制作能力が十二分に発揮できるエクスカリバーなら、勝利を導く事ができるはずだ。

>「どれかを狙う必要はない!何故なら――全てを薙ぎ払えばいい!」

それはARバイザーの視界を埋め尽くさんばかりの光の奔流。
ホログラムによる幻影を一瞬で焼き払い、逃げる隙間もない光輝が襲いかかる。
光に飲み込まれたかに見えたオリオンスペクター本体は、しかし、空中に逃げ去っていた。

>「……これで……いや!オリオンスペクターはまだ、健在だ……!」

>「え……?」

紅の騎士が微塵改から零れ落ち、機能を停止させる。
呟いた桐山の声は勝利を確信した晶を驚かせるものだった。

>「まったく、オリジナル武器というものは常に驚かせてくれる……!
> しかし、その牙ももはや折れた!その機体で何秒耐えられるか、見せてもらおう!」

黒の幽星はまだ生きていた。全国出場者というのは概して執念深く勝利を狙い続けるものだ。
武器の大半を消失し、膝から下を失ってなお、自由落下しつつリコイルバスターを構える。
現に彼の愛機は耐久バーも残っていれば、操縦桿で動かす事も出来る。まだ戦いは終わっていない。

101 :水鳥周子 :2018/11/10(土) 21:40:31.23 ID:2EcwLKZ8.net
>「いいえ。牙はまだ折れてなどいないわ。これ以上、耐えるつもりもない」

晶の毅然とした言葉と共に投げつけられた擲弾砲を掌底のビームで迎撃。
暴発した擲弾砲はゴーストの機体を煽って落下速度を僅かに落とす。

>「アーサー王の伝説、その元ネタに則るなら、エクスカリバーはひとつだけじゃないわ。
> 泉の乙女から下賜された聖剣とは別に、もう一振りのエクスカリバーが伝承の中には存在する!」

「何を言っている……!?」

>「さあ、私の声に応えなさい!岩貫改め――『エクスカリバー・コールブランド』!!」

微塵改が直剣を天空のオリオンスペクター目掛けて突き上げる。
聖剣を携えた英雄は一機ではなかった。彼らは『合体機』。二機で一機だ。
ならば伝説上の聖剣を二振り所有していたとしても不思議ではない。

「――勝利の栄光は我が掌の中に!『リコイルバスター』!!」

天と地の二機の攻撃が交錯し、歓声に沸いていた会場が水を打ったように静まり返った。
極度に集中した状況に於いて当事者たるゴーストの感覚がそうさせたのかもしれない。
微塵改の放ったコールブランドの一撃は過たずオリオンスペクターの中枢を貫いていた。

掌部零距離ビーム砲『リコイルバスター』の利点は高打点の秒間ダメージ量を叩き出せる所にある。
一方で名称通り、リーチが短いという難点をも抱え込んでいるいわゆるロマン武器でもある。
すなわち、直剣に対しリコイルバスターの射程距離はあまりに短すぎた。

勝ろうはずもない技量の差を――勝敗の差を――分けたのは武器のリーチだ。
直剣がほんの少しだけ掌底より先に命中し、結果としてリコイルバスターは不発に終わった。
放たれた零距離ビーム砲は微塵改の装甲を抉り取っただけだった。
掌の砲門をチカチカと明滅させながらオリオンスペクターは力なく崩れ落ちていく。

「……まさか、こんな事が起ころうとは……」

尽きた耐久バーを眺めながら、しばらく呆気に取られていた。
紛れもない敗北と言う事実を突きつけられ、放心状態になってしまったのだ。
動かない思考をたたき起こし、ゴーストはようやく言葉を搾り出した。

「種が芽吹き花を咲き誇らせるように、眠れる力を開花させたか……。
 紛れもなく……この勝負。チームつつじヶ丘、君達の勝利だ」

102 :水鳥周子 :2018/11/10(土) 21:45:03.54 ID:2EcwLKZ8.net
仮想操縦桿が自動消失し、ゴーストは撃墜状態になった。
晶がARデバイスで確認すれば撃墜数に1がついたはずだ。

「そして……サバイバルマッチも君達の勝利という結末になりそうだ。
 高機動機は私達との戦闘中、最終的に多数の参加者を巻き込んで自爆した。
 重装射撃機は……今相打ちになったようだからな」

ゴーストの台詞から程なくして勝利時に流れるBGMが会場に響いた。
歓声が沸き起こり、晶と数名の参加者がサバイバルマッチに生き残ったのだ。

「今……今、サバイバルマッチの雌雄が決しました。勝者は参加者達です!
 アリーナは開放されました!トラフィックゴーストが敗北したのです!」

司会がすかさず実況を入れると周子はイベントが終わったことを実感した。
ああ、もうあの楽しい戦いが終わってしまったのかと急に思ってしまうのだ。
思い掛けないリーダーの任命に始まり、ベンケイとの戦い、そして全国区選手との激戦。

全てを遠い過去のように感じながら、ゴーストがARバイザーを外すのを眺めていた。
大学生くらいだろうか。特徴的な白髪をそのままに、碧の瞳を宿した整った顔立ちの青年だ。

「君達みたいな後輩がいるのは嬉しいのか、恐れた方がいいのか……どっちもかな。
 次は全国で会おう。正真正銘、浦和零士として……もう一度勝負しよう。負ける気はない」

浦和は生き残った晶の健闘を讃えて握手した。
そして眉根を寄せて"ゴースト"の演技に戻るとマイクのスイッチをオンにする。
戦いに敗北したトラフィックゴーストは潔くアリーナを明け渡し、この場を去らなければならない。

「――見事だ!参加者の諸君!この実験の勝者は君達に終わった!
 だが我々は機体を運ぶ幽鬼。譬え墜ちて死者となりても、またいつの日か――。
 新たな頭目と共に現れるだろう。再び相見えよう。実験台達よ……!」

ゴーストの高らかな台詞と共に会場が暗転する。
再び明るくなった頃にはモータルもゴーストも消え失せ、会場にはコロシアムフィールドだけが残された。
ゲーム"マシンナリーファイターズ"はとてもリアル感を重視したゲームだ。
戦闘後もゲームを終了しなければフィールドに残された機体の残骸や爆発の痕を見ることができる。

短かったが、濃密なあの戦いの数々とももうお別れだ。
周子は眼鏡型ARデバイスを外してチームつつじヶ丘の面々の所へ駆け寄った。

「晶ちゃん。桐山先輩、八木先輩。私……とっても楽しかった!
 皆と一緒にバトル出来て凄く良かったって思ってる!」

このイベントが最初で最後とは限らない。
例えばチーム戦とか、オンライン対戦とか、いくらでも繋がる事ができる。
桐山も八木も周子にとって、もう掛け替えのない友達だ。

「だから……また一緒に遊ぼう!」


【チームつつじヶ丘、サバイバルマッチに勝利!】

103 :八木優樹 :2018/11/12(月) 22:55:10.05 ID:zfpDT24f.net
クラウン・ノイジーモデルの耐久値がゼロになる。
機体の随所から青い光が漏れたかと思うと――クラウンは専用の花火めいたエフェクトと共に爆散した。
これで八木は脱落だ。後は観戦者として試合の展開を見守る事しか出来ない。

(……やれる事はやった)

周囲にばら撒いた液体爆弾によってオリオンスペクターの機動力を削いだ。
今なら、エクスフォードや微塵改でも、彼と勝負が出来るはず。

>「ありがとう、八木。……大会が終わったら奢るよ」

「いいよ、別に……僕が良いプレイをする度に奢ってたら、君の小遣い、なくなっちゃうぜ」

そして――最後の交戦が始まった。
水鳥の駆るエクスフォードの連撃を、オリオンスペクターは容易く躱していく。
隠し武器の巨大な鋏も、上手く操っているがそれでもなお当てられない。
単純なマシンコントロール技術と読み合いでは、浦和零士には勝てない。
だが――水鳥の表情に諦めはない。

>「これで勝敗は決した……!」
>「まだ……まだ終わってない!」

切り札である巨大鋏を破壊されても、なお、彼女の顔に諦めの色は浮かばなかった。
白兵戦の間合いの中、エクスフォードがオリオンスペクターへと更に一歩詰め寄る。
そして――スラスターを焚いた。

「……その手があったか」

クラウンがばら撒いた爆薬が高熱に晒される。
瞬間、爆炎がエクスフォードとオリオンスペクターを飲み込んだ。
浦和零士は咄嗟に回避行動を取っていたが、爆風から逃げ切れる訳はない。
爆炎が晴れると、オリオンスペクターの姿は大きく様変わりしていた。
装甲は歪み、エナジーライフルは銃身が溶け、右足首から先が欠損。

だが――

「追い詰めた、なんて思っちゃ駄目だよ。これでやっと五分の勝負。
 浦和選手ならここからでも逆転の可能性を掴んでくる」

爆心地でまともに爆発ダメージを受けたエクスフォードは四肢を完全に欠損。
そのままエナジーキャノンによって撃墜されてしまった。

(とは言ってみたけど……これは、あるぞ。本当に勝ちを拾うとこまで行けるかもしれない)

残るは大破状態のマクシミリアンと、重装甲型の微塵改。
一手間違えれば呆気なく全滅させられる事になる。

>「あらゆる武器、あらゆる戦術を尽くして戦うのがロボットバトルというもの……。
 その『合体』が君達の出した結論だというのなら、全霊をもって応えよう。
 さっきの二機のように……私とオリオンスペクターに牙を突き立ててみせろ!!」

そして――オリオンスペクターが地を蹴った。
爆圧で装甲が歪んだ機体で、しかし抜群の操縦技術をもって強引にスラスターを吹かす。
超高速の突撃を仕掛けるオリオンスペクターの姿が――不意に、五つにブレた。

ホログラムだ。
リコイルバスターだけではなかった。
浦和零士はもう一つ、隠し玉を持っていたのだ。

104 :八木優樹 :2018/11/12(月) 22:55:48.00 ID:zfpDT24f.net
だが戦況を見守る八木の表情に、焦燥はない。

(……そうだ。最適解は、もう君の手の中にある)

全ての鍵となる彼――桐山直人の顔にも、焦りの色は浮かんでいなかったからだ。

105 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:07:22.48 ID:zfpDT24f.net
>「さあ……エクスカリバー!その光刃で敵を断つときだ!」

そして目の眩むような閃光が、マクシミリアンから放たれた。

>「どれかを狙う必要はない!何故なら――全てを薙ぎ払えばいい!」

閃光がオリオンスペクターの黒い機体を塗り潰す。
制御を度外視したエクスカリバーは、ほんの2、3秒瞬いて、すぐに停止してしまった。
だが反動でマクシミリアンが活動停止するほどのエネルギーだ。
2秒も炙られれば、どんな軽装甲型のオリオンスペクターは骨格すら残らない。

106 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:09:02.15 ID:zfpDT24f.net
>「……これで……いや!オリオンスペクターはまだ、健在だ……!」

はずだった。

「まさか……!」

八木が頭上を見上げる。
既にマシンHUDは消失していたが――あの状況で逃げ場があるとすれば、そこしかない。
果たして――八木の予想通りは当たっていた。

オリオンスペクターは高く真上へと飛び上がる事で、エクスカリバーによる被撃墜を回避していた。
装甲は殆ど溶け落ち、片脚も失い――しかし、まだ稼働している。

>「まったく、オリジナル武器というものは常に驚かせてくれる……!
> しかし、その牙ももはや折れた!その機体で何秒耐えられるか、見せてもらおう!」

リコイルバスターにエネルギーを充填し、微塵改を撃破せんと狙いを定めてすらいた。
だが――それを見上げる紫水の目には、惑いはない。

>「いいえ。牙はまだ折れてなどいないわ。これ以上、耐えるつもりもない」
>「さあ、私の声に応えなさい!岩貫改め――『エクスカリバー・コールブランド』!!」

彼女は迎え討つつもりだった。
腰に差した直剣を引き抜き――天へと突き上げる。

>「――勝利の栄光は我が掌の中に!『リコイルバスター』!!」

そして――その直剣は狙い過たず、オリオンスペクターを捉えた。
肩を貫いて、そのまま胸部の内側、マシンナリーの中枢部を。
オリオンスペクターの全身から青い光が漏れる。
そのエフェクトが示す結果は一つだ。
オリオンスペクターの耐久値はもう、残っていない。

>「……まさか、こんな事が起ころうとは……」

オリオンスペクターが糸の切れた人形のように、動作を停止する。
浦和零士が呆然とした声を上げた。

「……まさか、本当に勝っちゃうとはなぁ」

チームつつじヶ丘は、現行のメタからかけ離れた、セオリーなどお構いなしのチームだった。
ショーマンとしての立ち振舞と、勝利を両立させられるつもりだったのだろう。
八木自身、途中まではまさか勝利にまで漕ぎ着けられるとは思っていなかった。

>「種が芽吹き花を咲き誇らせるように、眠れる力を開花させたか……。
 紛れもなく……この勝負。チームつつじヶ丘、君達の勝利だ」

「……おめでとう、みんな。いいプレイだった。本当に……神がかってた」

それから程なくして、サバイバルマッチは終了した。
浦和零士の言う通り、参加者側の勝利によってだ。

>「君達みたいな後輩がいるのは嬉しいのか、恐れた方がいいのか……どっちもかな。
 次は全国で会おう。正真正銘、浦和零士として……もう一度勝負しよう。負ける気はない」

水鳥や紫水には分からないかもしれないが――浦和零士のその言葉は、MFプレイヤーにとっては恐ろしく価値のあるものだった。
最もプロに近い男。その彼が、自分達を明確なライバルとして認めたのだ。
しかし――にもかかわらず、八木の反応は苦々しさを含んでいた。

107 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:10:54.86 ID:zfpDT24f.net
チームつつじヶ丘は所詮、今日この場で結成されたばかりの即席チームだ。
大会出場の予定なんてなければ――再結成の予定もない。
だがこの雰囲気の中でそれを口に出す事は、八木には出来なかった。

>「――見事だ!参加者の諸君!この実験の勝者は君達に終わった!
 だが我々は機体を運ぶ幽鬼。譬え墜ちて死者となりても、またいつの日か――。
 新たな頭目と共に現れるだろう。再び相見えよう。実験台達よ……!」

そうして、つつじヶ丘アリーナを襲ったゲリライベントは終わった。
噂の新型機を触る事は出来なかったが、代わりに滅多にないほど楽しいバトルに参加出来た。
もう、八木がこの場に残る理由はない。
だが――彼は出口を目指すのではなく、代わりに周囲を見回した。
水鳥、桐山、紫水――つい先程までのチームメイトは、まだすぐ近くにいた。
八木は彼らを見つめると、何か迷った素振りを見せながらも口を開き――

108 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:11:54.02 ID:zfpDT24f.net
「あのさ……」

>「晶ちゃん。桐山先輩、八木先輩。私……とっても楽しかった!
 皆と一緒にバトル出来て凄く良かったって思ってる!」

しかし水鳥に先を越されて、すぐに口を閉ざす事になった。

>「だから……また一緒に遊ぼう!」

水鳥の屈託のない笑顔と言葉に、けれども八木はばつが悪そうに視線を泳がせる。
ゲーマー歴の長い八木にとって、一緒に遊ぶ相手――フレンドとは色んな意味合いがある。
たまにカジュアルマッチでなあなあのプレイを楽しむ程度の付き合いでもフレンドだし、
戦術を練って練習を積んでチームとしてランクマッチに臨む相手もまたフレンドだ。

つまりこの場合で言うならば、水鳥はただ、たまにこういうイベントがあったら集まろう、くらいのノリなのか。
それとも、もっと頻繁に集まって――例えば部活動としてゲームをしようと言っているのか。
それを八木は見極めかねていた。だが――

「……うん。またイベントとか……試合とか。助っ人が必要な時はいつでも呼んでよ」

いずれにしても、水鳥の提案を断れば、それは立派な嫌なやつだ。
それだけは八木にも簡単に、はっきりとよく分かった。

「その……ゲーム部にもまだ、籍は残ってるはずだし。
 苦手な機体タイプとかもないから、練習がしたければ付き合うよ。
 ……あんまり口うるさくしないようには、気をつけるからさ」

今後の事がどうなるにせよ――八木は自分に出来る精一杯の快諾を返した。

109 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:13:17.92 ID:zfpDT24f.net
 
 
 
「――なんだよもー自爆ってえ!いくら負け確だからってそんなセコい手ふつー使う!?」

アリーナから駅へと向かう道の途中。
一人の少女が大声を上げていた。

「悪の組織なんだからそりゃ使うでしょ。つーかアンタが遊びすぎ。
 さっさとトドメ刺しときゃ浦和選手の方に遊びに行く時間もあったでしょうに」

「ゴーストが浦和零士だって知ってたらそうしてたっつーの!」

赤髪のポニーテールに、中学生並みの低身長、気の強そうな吊目の少女。
長い黒髪で片目を隠した、長身痩躯、蒼白とすら言えるほど色白の少女。

二人の少女は、柄の同じパーカーを着ていた。
ペアルックではない。背中には『K.G.T』とアルファベットが刺繍されている。
国領ゲーミングチーム――都内でも強豪と噂される、国領高校のゲーム部。
そのレギュラーメンバーにのみ支給されるユニフォームだ。

「つーかよ、浦和零士が負けたってマジ?誰にやられたんだよ。
 アレか。桜上水の奴らか。私服だったけど、アイツらも会場に来てたよな」

「んーん。やっつけたのはね、つつじヶ丘高校のゲーム部だってさ」

「……つつじヶ丘ぁ?あそこ今年はろくな三年残ってなくね?」

「それどころか去年一年にボコられて、当時の二年は殆どやめたって話だけど」

「てー事は、その一年が浦和零士を仕留めたって訳か」

「今は二年だけどね。まぁその可能性が高いんじゃない?」

「……近い内に、スクリム吹っかけるぞ。今年のつつじヶ丘は正直アウトオブ眼中だったが……
 浦和零士がボコられたのがマジなら、確かめとかねえとな」

赤髪の少女はそう言うと、にやりと、獰猛に笑った。

「まぁどうせ、私の『ランスロット』にゃ敵わねーだろうけどよ」



【最後のこれはただこういう雰囲気が好きで加えただけの蛇足だよ。
 短い間だけど楽しかったなぁ】

110 :桐山 直人 :2018/11/15(木) 20:22:18.53 ID:4XC69fdP.net
>「さあ、私の声に応えなさい!岩貫改め――『エクスカリバー・コールブランド』!!」

マクシミリアンが戦闘不能になっても、未だ桐山は会場に立っていた。
全てのエネルギーを使い果たして戦場に倒れ伏す相棒の残骸と共に、試合を最後まで見届けるために。

>「――勝利の栄光は我が掌の中に!『リコイルバスター』!!」

エクスカリバーの薙ぎ払いですら仕留められなかったオリオンスペクターが上空から
猛禽の如く奇襲を仕掛け、微塵改は最後に握りしめた直剣を振り上げてカウンターを狙う。
直後、勝敗は決まっていた。

>「……まさか、こんな事が起ころうとは……」

リコイルバスターは重装型すら粉砕する火力を持つ。
だがそのリーチの短さが、ただの直剣が勝ちうる弱点となったのだ。
微塵改は勝利を誇るように立ち、オリオンスペクターは片手を突き出したまま、前のめりに倒れ伏す。

>「……まさか、本当に勝っちゃうとはなぁ」

「今の試合、録画しておいたよ。常識外れのチームが勝つことはたまにあるとは言っても……
 まさか僕たちがそれになるとはね」

バイザーが表示する仮想メニューから直前の試合映像を保存しておき、
自らのアーカイブへと放り込む。普段は大会の名試合やプロモーション映像ばかり
入れていたそこに、自分の試合を入れたのは初めてだった。

>「今……今、サバイバルマッチの雌雄が決しました。勝者は参加者達です!
 アリーナは開放されました!トラフィックゴーストが敗北したのです!」

>「君達みたいな後輩がいるのは嬉しいのか、恐れた方がいいのか……どっちもかな。
 次は全国で会おう。正真正銘、浦和零士として……もう一度勝負しよう。負ける気はない」

動画の向こうでしか会えなかった存在がこちらをMFの乗り手として認識し、
記憶してくれた。それがどれほどの価値があるかは、桐山本人にしか分からないことだろう。
バイザーの裏で桐山は、自らの内に静かな熱が生まれ始めているのを感じていた。
そしてイベントは終わり、会場は破壊された機体の残骸とかつて戦場だったことを示す焼け跡が残るのみ。

111 :桐山 直人 :2018/11/15(木) 20:23:34.09 ID:4XC69fdP.net
>「晶ちゃん。桐山先輩、八木先輩。私……とっても楽しかった!
 皆と一緒にバトル出来て凄く良かったって思ってる!」

その言葉に桐山もバイザー型ARデバイスを外して、長らくすることのなかった笑顔をしてみせる。

>「だから……また一緒に遊ぼう!」

視線を泳がせる八木とは対照的に、桐山はバイザーを掛け直す。
そしてこの場にいた全員に、あるものを送信した。
それはマシンナリーファイターズにおける、フレンド依頼。
相手が何をしているのか、どんな機体に乗っているかぐらいにしか分からないものだが、
それでもこの瞬間、桐山は激戦を勝ち抜いた戦友たちに送っておきたかったのだ。

>「その……ゲーム部にもまだ、籍は残ってるはずだし。
 苦手な機体タイプとかもないから、練習がしたければ付き合うよ。
 ……あんまり口うるさくしないようには、気をつけるからさ」

「八木は……ごめん、去年のごたごたでフレンド解除してた。
 もう一回送り直すけど……今度も遠慮なく言ってほしい。やっぱり僕は強くなりたいからね!」

部をやめたときに、部員とのフレンドは全て解除してしまっていた。
それは彼らにこれ以上関わりたくなかったというのもあったが、今は違う。
もう一度、やり直したいという気持ちがあった。

――数日後、ある日の放課後。
つつじヶ丘高校の授業が終わり、部室へと向かう生徒たち。
もしその中に水鳥がいて、部室の軋んで古びたドアを開ければ、そこに桐山がいるのがすぐに分かるだろう。
彼はバイザーを起動し、空中にある何かを両手で外したり、取り付けたりしているように見えるはずだ。
そして彼が水鳥に気づけば、こう答えるだろう。

「本日付でゲーム部所属の、桐山直人だよ。
 水鳥君、改めてよろしく!」

バイザー越しの彼の顔は、再び喜びに満ちているはずだった。


【なかなかできないロボット物ができてとても楽しかったです!
 皆さんありがとうございました!
コテハンが変わったのはPCを乗り換えた関係で専ブラのデータ移行を忘れてたためです…】

112 :紫水晶 :2018/11/23(金) 04:18:02.49 ID:CLoGH4MV.net
>「――勝利の栄光は我が掌の中に!『リコイルバスター』!!」

オペレーターの雄叫びに呼応するように、光を湛えながら急降下するオリオンスペクター。
それを迎え撃つは、微塵改がまっすぐ直上へ掲げる、もう一振りのエクスカリバー。
幽星と剣闘士、閃光と鋼刃が交差する。

金属質な破壊音と共に、紫電が轟いた。
決着は一瞬。会場の誰もが、交戦中の参加者すら操縦の手を止めて見守る刹那の激突。
秒数にすればほんのコンマ1秒にも満たない攻防を、制したのは――

>「……まさか、こんな事が起ころうとは……」

バイタルパートに大穴を穿たれ、オリオンスペクターは動作を停止。
そして、表面装甲を焦がした微塵改は、なおその頭部に意志の光を灯したまま、屹立し続けていた。
紫水晶の――チームつつじヶ丘の、勝利だ。

>「今……今、サバイバルマッチの雌雄が決しました。勝者は参加者達です!
 アリーナは開放されました!トラフィックゴーストが敗北したのです!」

晶は『勝利を喜ぶ』エモートで勝鬨をあげようとしたが、やはりどこにそのボタンがあるのか分からない。
だから、微塵改に剣を掲げさせて、自分自身の言葉で叫んだ。

「私達の前に、たった今、ゴーストは斃れたわ。
 この瞬間を、認識タグを、目に焼き付けておきなさい。
 私達の……つつじヶ丘高校、ゲーム部の名前を!!」

多少スポーツマンシップには反するかもしれないが、晶は自分を突き動かす衝動に逆らわない。
勝てなくても良い、楽しめればそれで良いと、ずっと思っていた。
でも、みんなで協力して、一緒に強大な敵に立ち向かい、勝つという喜びを、知ってしまった。
もう一度、何度でも、周子や、桐山や、八木と。一緒に戦って、勝っていきたい。
心の底からの渇望が、晶に勝ち名乗りを選択させた。

>「君達みたいな後輩がいるのは嬉しいのか、恐れた方がいいのか……どっちもかな。
 次は全国で会おう。正真正銘、浦和零士として……もう一度勝負しよう。負ける気はない」

「望むところよ『浦和さん』。
 次はサブライズのお膳立てなんかじゃなく、公式戦で、貴方のもとまで辿り着いてみせる」

>「――見事だ!参加者の諸君!この実験の勝者は君達に終わった!
 だが我々は機体を運ぶ幽鬼。譬え墜ちて死者となりても、またいつの日か――。
 新たな頭目と共に現れるだろう。再び相見えよう。実験台達よ……!」

ARデバイス越しに配信されていたフィールド情報が停止し、マシンナリーの残骸たちが消えていく。
晶はそれらを名残惜しそうに眺めてから、ARデバイスを外した。
マシンナリーファイトの派手な色彩に比べればひどく色褪せた、しかし彼女の回帰すべき現実の世界。
同じくデバイスを外した周子が子犬のように飛び込んできた。

113 :紫水晶 :2018/11/23(金) 04:18:55.07 ID:CLoGH4MV.net
>「晶ちゃん。桐山先輩、八木先輩。私……とっても楽しかった!
 皆と一緒にバトル出来て凄く良かったって思ってる!」

「ええ、私も。みんなで戦えて、みんなで勝てて、すごく楽しかった。
 こんなに楽しいゲームを、心躍る試合を、これで終わりにしたくない。だから……」

その先は、言わなかった。
同じことを周子もまた考えていると、晶にははっきりとわかった。

>「だから……また一緒に遊ぼう!」

また、一緒に。
言葉にすれば照れくさいその提案を、真っ直ぐに言ってのけるのは周子の人徳だ。
底抜けに明るくて、人並みに迷いもするけれど、選んだ道に後悔をしない。
人の輪の中心に立てるのは、周子のような人間だ。
晶にはそれが眩しくて、彼女と友達でいられることが嬉しい。

>「……うん。またイベントとか……試合とか。助っ人が必要な時はいつでも呼んでよ」

「水臭いわね、八木先輩。そんな傭兵みたいな関係、寂しいじゃない。
 必要ない時でも呼ばせてもらうわ。部室でだべっている時とかにもね」

相変わらず一歩引いたような口ぶりの八木に、晶は意地悪く笑みを向けた。
この中で最もマシンナリーに精通した上級者は八木だ。
勝つために、教えてもらいたいことはたくさんある。
そして、プレイヤー同士の関わりは、何も試合の助っ人だけじゃないはずだ。

ARデバイスに新たな通知があった。
それは、フレンド申請。送り主は、桐山だ。
ゲーム部入部以来、周子の名前しかなかった晶のフレンドリストに、名前が増えた。
桐山と八木。かつてのゲーム部が――ほんの少しだけではあるが――蘇りつつあった。

――数日後。

つつじヶ丘高校ゲーム部の部室からは、晶の楽しげな声が聞こえてくる。
つい最近までごく少数の部員が黙々とデバイスを弄るだけだった部室が、にわかに活気づいていた。

「周ちゃん、周ちゃん。今月の『月マシ』はもう読んだ?特集にこの前の大会のことが載っているわ!」
「八木先輩、新しい戦術を思いついたの。試してみるから忌憚のない意見をちょうだい」
「桐山先輩、コールブランドの改良をお願い。もっと豪華に光るようにしたいの」

あの日の試合を境に、晶はマシンナリーファイトの世界にどっぷりとのめり込んでいた。
これまでのロマン偏重なビルドに改良を加えて、中級者相手ならまともな勝負ができるようになっている。
負ければ悔しいし、勝てば嬉しい。
でもそれ以上に、負けても良いと考えていた時期より、試合はずっと楽しかった。

遠からず、彼女は壁にぶち当たり、挫折を経験することもあるだろう。
だけど、マシンナリーファイトにかける情熱は、その炎は、きっと絶えることはない。
挫折を分かち合って、一緒に立ち向かってくれる――仲間がいるのだから。


【おつかれさまでした!やりたいこと全部やりきれて本当に楽しかったです!
 また機会があればぜひ!ありがとうございました!】

114 :水鳥周子 :2018/11/25(日) 15:13:13.53 ID:9Yc+Ixcr.net
【書き込み遅れましたが、これにて企画終了です!皆様参加ありがとうございました!
 また機会があれば一緒に遊びましょう!それでは失礼しました!!】

115 : :2018/12/07(金) 23:15:21.78 ID:5mNzrS38.net
勢いで考えてみた何の変哲もないヒーローもの企画を投下します。

ヒーローウォーズ

異能者、改造人間、超科学、魔法使い、宇宙人、未来人etc……。
20XX年のメトロポリスではありとあらゆる非日常が渦巻いていた。
特殊な力を悪用する犯罪組織の巣窟であるこの街は破壊と混乱、無秩序と冒涜が支配する。
自分たちの欲望と衝動、野望の赴くまま暗躍する者達を『ヴィラン』と人は呼ぶ。

そんな中、人々と街を守るべく自然発生したのが『ヒーロー』達だ。

ヒーロー達は自身の能力と無辜の民の声に従い街を守る正義の代行者である。
彼らはおおむねヒーロー協会に所属し、ヒーロー協会のバックアップを得て超法規的に活動している。
また、頂点の実力を持つアイドルヒーローともなれば文字通りの人気と知名度を兼ね備えた有名人でもある。

果たしてヒーロー達は迫りくる悪意に勝つことができるのだろうか。
数々の死線を潜り抜け、正義を貫けヒーロー達!


ジャンル:ヒーローアクション
コンセプト:ライトにバトルものを楽しもう
期間(目安):8ターン以内(予定)
GM:なし
決定リール:なし
○日ルール:14日
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし


【テンプレート】

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
職業:
性格:
能力:
装備:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:

116 : :2018/12/07(金) 23:16:07.92 ID:5mNzrS38.net
名前:神籬明治/リジェネレイター
年齢:16
性別:男
身長:177
体重:62
職業:高校生
性格:人見知りで引っ込み思案
能力:共感覚
人の感情をおぼろげに感じ取ったり共有できる。
集中すれば1キロ程度の遠い人の感情を読み取れる。
心を読む能力ではないので注意が必要。

装備:腕時計型端末『オービット』
メトロポリスの科学者ドクターカンナギ特注の腕時計型変身スーツ。
ナノマシン制御用AIの『オービット』がナノマシンを生成する事で装着できる。
ナノマシン生成機能と高度な学習機能により状況に応じて機能をリアルタイムでアップデート可能。
その他自動修復や各種装備も完備。ただし現状の基本武器は右腕部の力を強化する『パワーシリンダー』のみ。

容姿の特徴・風貌:群青色の髪の毛に学生服/暗緑色の布地に白の装甲と仮面
簡単なキャラ解説:
ヴィランが起こした事件によって両親を失くした少年。
以来周囲に心を閉ざしてしまい引っ込み思案で口数の少ない性格になった。
しかし、内には自分のような人を減らしたいという思いを秘めている。
生身で密かに活動していたところヒーロー協会から抜擢されてヒーローとなる。

ヒーロー名リジェネレイターはナノマシンによる自動修復機能から名付けられたもの。
ただし中身の人間は修復できないので定期的に中の人が死ぬ。現在は六代目にあたる。
二代目あたりまで知名度は高かったが交代が激しいあまり今や日陰者。

117 : :2018/12/07(金) 23:18:31.03 ID:5mNzrS38.net
test

118 : :2018/12/07(金) 23:18:43.02 ID:5mNzrS38.net
20XX年メトロポリス。
夢の未来都市と銘打たれたその都市の姿はもうなかった。
今やありとあらゆる悪意を溜め込んだ掃きだめと化したこの街に平和はない。
齎すとすれば――、特別な力を持ったヒーロー達に他ならない。

夜のメトロポリスを一体の改造人間が駆け抜ける。
自動車群の網目を縫って『ファイアスターター』は後ろを一瞥した。
頭部の生えた髪の毛のような排気パイプに脚部の大型車輪ヒールホイーラーが加速する。
口紅のように真っ赤なボディとファイアパターンが目立つ女性型改造人間の威容にドライバーはぎょっとした。

「うふ、アナタ達ったら、速さがまるで足りてないのね」

脚部のヒールホイーラーを傾けて器用にUターンしながら地平線を見据える。
そしてスロウな乗用車を適当に蹴り上げた。轟音を立てながら車は地面に対して垂直に宙を舞う。
視界には誰もいない。目に映るのは空虚なビルディングが立ち並ぶメトロポリスの夜景だけだ。

「ヒーローは遅れてやってくるって言うけれど、遅れすぎちゃダメじゃない?」

小脇に抱えたアタッシュケースを愛おしそうにひとなでして、改造人間は前方へ振り向く。
やっぱり私がナンバーワンの速さなのよ!
『ファイアスターター』は強い自負と共に夜の道路を疾走した。

メトロポリスに存在する犯罪組織は枚挙に暇がないが、彼女はその中でも危険で巨大な組織に属していた。
秘密結社レオニダス――。人間を一段階進化させるため、人類の新たな形態を模索する新興組織である。
彼らは現代の秘跡である超科学を用いて人に改造手術を施して改造人間を生み出す。
改造人間は『ファイアスターター』のように人間の原型を留めていなかった。

結社の擁する改造人間は警察組織では到底相手にできるものではない。
彼らと戦える組織はただひとつ。ヒーロー協会と所属するヒーローだけである。

「そうはさせねぇぜ改造人間っ!!」

改造人間が蹴り上げた車をキャッチしながら、腕時計型端末は吼えた。
端末の主である白い装甲服を纏った男は静かに車を降ろす。

「遅れすぎちゃだめじゃない?ちっちっち、違う違う。皆の声を待っていたのさ!
 俺が噂の装着系スーパーヒーロー、『リジェネレイター』様だっ!!!!!!!!!!」

腕時計型端末『オービット』が華麗なる向上を並び終え、
中身の神籬明治(ひもろぎめいじ)は静かに呟いた。

「……俺はどうすればいいんだ?」

119 : :2018/12/07(金) 23:19:36.64 ID:5mNzrS38.net
「あだだっ!ったく、変身前に言っただろうが!カッコ良くなんか決めポーズすりゃ良いんだって!
 それぐらいのファンサービス皆やってるから。あー、そうね。やってない奴もいるよ」

「……誰なんだ?」

「お前だよ、お・ま・え!!」

オービットは機械の溜息を漏らした。『リジェネレイター』は喋らない。
男は気難しいというわけでも怒っているというわけでもなかった。彼はおおよそ他人に対して心を閉ざしていた。
それは人工知能であるAIが相手でも変わらない。彼にとって言葉を交わすとは、とても困難な作業だった。

「さぁてどうするんだ『リジェネレイター』よ。俺達に高速移動なんて便利な能力はないぞ。
 このままじゃあいつを取り逃がしちまう。他のヒーローに任せて帰っちまうか?」

リジェネレイターは答えないまま、やにわに乗用車の屋根に飛び乗った。
飛び乗った車はややバランスを崩しながら走行を続ける。
しばらくしたところでリジェネレイターは器用に他の車に飛び移った。

「おおっと、失礼しまぁす。良い苦し紛れだがよ。
 あの改造人間300キロは出てるぜ。こんなんで追いつけるのか?」

「分からない。だけど、やるまでだ」

そうきたか、とオービットは端末の画面を明滅させた。相変わらず頑なな奴だ……。
先代の『リジェネレイター』が死亡して、ヒーロー協会で神籬と出会ったその日の印象通り。
人見知りで引っ込み思案、誰にも心を開けない……だけど、内には正しい心を秘めている奴だと。

「根暗の癖になんで頭だけは固いんだか。
 しょうがねぇ、ヒーロー協会に連絡して道路を封鎖して貰おうぜ。
 他のヒーロ―共も寄ってくるだろうけど背に腹は変えられないからな」

「そうだな……ありがとう、オービット」

「礼なんて無用だ。AIは必要なことをするだけだからな」

120 : :2018/12/07(金) 23:20:40.69 ID:5mNzrS38.net
快調に疾走していた『ファイアスターター』だったが、突如としてその走行を止めざるを得なくなった。
ビル街とメトロポリスの中で最も治安が悪いストリートを繋ぐ吊り橋が跳ね上げられ、先に進めなくなったのだ。
女改造人間は舌打ちしてストップ。脚部から怒りの炎を巻き上げた。
心臓が早鐘を打つような大音量の排気音を鳴らし独りごちる。

「誰かしら。私の走りを邪魔するのは……?」

「誰かしらもおかしらもあるかよ。天下の公道で散々暴れまわってくれちゃって〜……。
 神妙にしろ。警察に代わって俺達が逮捕してやるぜ!改造人間!!」

特徴的な暗緑色の布地に白い装甲を纏ったヒーローが女改造人間へ歩み寄る。
息を切らして追いついたリジェネレイターに喋る余裕は無論ない。
捲し立てたのはAIのオービットの方だ。

「私無駄なことって嫌いなんだけど。本当に誰なのかしら。
 名乗りぐらいあげてくれないとマイナーヒーローの事なんて分からないわ」

「カッチーン!てめぇ、これでもなぁ。俺だって昔はちょっとしたもので……」

言い終わるより早く地面が隆起してオービットのお喋りは中断された。
地面が裂けて現れたのは岩のようにごつごつした肌のこれまた異様な男だった。

「なんだなんだ。今日はヴィランのオンパレードか?
 もしかして……俺達、ヤバイ日に出くわしちまった?」

「かもしれないな……」

岩肌の男はリジェネレイターをぎろりと睨んでファイアスターターを見据える。
男は横にも縦にも長く、ざっと2メートルはあろう巨躯から一種ぬりかべを想起させた。
糸で縫合された口を強引に開こうとするが、神籬に聞こえたのは低い唸り声のようなものだった。

「久しぶりねロックバイン。相変わらず異能者の癖に改造人間染みてるわアナタ。
 そういうところが本当に無様ね!どうせアナタの狙いもこれでしょ?」

ファイアスターターは抱えているケースを叩きながらくすりと口紅を歪ませた。

「アナタと取り合いを演じても良いけど、先ずは邪魔者を消すのが先決じゃないかしら。
 アナタが私の速さに追いつける訳ないでしょう」

ロックバインと呼ばれた異能者は決然とした様子でリジェネレイターを睨みつけ臨戦態勢に入った。
ファイアスターターはそのスピードと炎を噴出する力を、ロックバインはその土を操る力を以て――。
眼前に映る邪魔者を殲滅することに決めたようだった。

121 : :2018/12/07(金) 23:28:07.51 ID:5mNzrS38.net
【導入文終わり。もし参加者の方がいれば始める予定。なければこのまま放置】

122 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 00:03:18.83 ID:qcjArYMf.net
http://www.webdevzm.com/

123 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 17:15:58.63 ID:Y/RSvkvO.net
面白そうなんだけど、時間がつれえわ・・・

124 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/13(木) 22:20:43.89 ID:InQNlwMz.net
【引き続き募集中です!興味のある方はぜひ!
 ご意見・ご要望などもあればぜひ承ります!】

125 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 23:41:49.22 ID:UDbt/MtS.net
面白そうと思うし、実際キャラだけはもうできてる
でも他に参加スレあるから厳しい
猶予期間の長さがどうこうという話ではなく、スレを二つ自分の中で持つことが今はちょっと無理

だったらわざわざレスするなって話だけど、話自体が悪いわけでもないし普通に面白そうに思っている人間もいるという事を知ってほしかっただけですまん

126 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 00:25:43.97 ID:edmantn7.net
先の見えない長編ならともかく最長8ターンなんだからそこまで気になるならやってみればいいんじゃね

127 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:43:37.20 ID:mzKbOF8t.net
>>125
ありがとうございます。折角なので昔に考えた企画も投下。
どちらも参加者がいれば短い話をやれればと考えています。

【退魔師TRPG】

見知らぬ風景、見知らぬ場所。
白い空間に名も顔も知らぬ数十名の候補者達が集められた。
彼らは勧誘を受けて、あるいは適正を持つが故に強制的に連れてこられた。

日本は古来より怪異の恐怖に晒されており、その怪異を現代では魔物(モンスター)と呼ぶ。
魔物達は人間が本能的に恐怖を抱く姿を象り、異界より世界の歪みから現れてくる。
一方で歴史の影で世界の歪みを封じ、魔を以て魔を滅する者もいた。
退魔師である。

その退魔師の適性を持つ者――いわゆる霊感の高い者達がこの契約の儀式に集った。
目には目を。魔物には魔物を。彼らは儀式にて魔物を滅するための魔物を呼び出し、契約を結ぶ。
これこそが退魔師の秘儀にして対怪異のための武器、契約魔物である。
彼らを集めた日本最後の退魔師は言う。

君達の中から真の退魔師が現れてくれることを祈る。
儀式で得た力で何をするかは君達の自由だ。だが忘れるな。
契約の儀式を行うということは魔物達を滅する退魔師になったということ。
運命は君達を怪異へと引き寄せ、魔物と戦い続ける道を歩むことになるだろう。

――これより、契約の儀式をはじめる。


ジャンル:退魔アクション
コンセプト:スタンド風アクションバトル
期間(目安):未定
GM:なし
決定リール:なし
○日ルール:14日
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし

128 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:44:24.67 ID:mzKbOF8t.net
◆契約魔物についてのルール

1、契約魔物は一人一体まで。
2、霊感の低い者には視えない。
3、固有の能力を三つまで持つ。
4、退魔師の霊力を消費して能力に準じた必殺技を発動できる。
5、契約によって結びついているため、契約魔物が傷つけば退魔師も傷つく。
6、倒した魔物と契約を結び直す事で契約魔物は変更できる。


【テンプレート】

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
職業:
性格:
霊力:(好きな数字を記入)
所持品:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:

【契約魔物テンプレート】

名前:
能力:(三つまで)
必殺技:(消費霊力も記入すること)
ステータス:パワー/スピード/タフネス(A〜Eで評価)
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:

129 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:45:15.74 ID:mzKbOF8t.net
【テンプレート記入例】

名前:瀬川一葉(せがわいちよう)
年齢:16
性別:男
身長:174
体重:61
職業:高校生
性格:地味で大人しいが、根は熱い
霊力:100
所持品:学生鞄、魔除けのおふだ
容姿の特徴・風貌:地味な黒髪に学ラン姿
簡単なキャラ解説:
霊感が高く昔から怪異が見えていた少年。
当然の日常として無視して暮らしていたが、魔物によって人が傷つく姿を目撃。
自身は被害者を置いて逃げ出す。以来もう逃げたくないと考え、儀式の参加を決意する。


【契約魔物テンプレート記入例】

名前:メルキド
能力:
〇フレイムボディ:自身の腕や身体から炎を噴出して操ることができる。
〇マジックアーム:自身の腕をバネのように伸ばすことができる。
〇サーモバリック:霊力消費を倍にして炎系の必殺技の威力を倍化させる。

必殺技:
〇フレイムナックル(消費10):炎を拳に纏ってぶん殴る。
〇フレイムランチャー(消費20):腕から炎を噴射する。射程30メートル程度。

ステータス:パワーA/スピードC/タフネスB
容姿の特徴・風貌:樽型の胴体に丸い顔、仮面を被った偉丈夫。常に炎を纏う。
簡単なキャラ解説:
契約者瀬川の根っこに秘める熱い魂に呼応して召喚された炎の魔物。
物理攻撃系のシンプルな魔物で能力も単純。燃費は良いが絡め手に弱い。

130 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:46:20.76 ID:mzKbOF8t.net
「君、霊感があるんだってね」

スーツを着た男性は開口一番にそう言った。
コンビニの雑誌コーナーで話しかけられた時、瀬川一葉は驚いて声が出なかった。
男はポケットを片手に突っ込んだままぶっきらぼうに折り畳んだ白い紙を差し出す。

「"退魔師"――。怪異を払い"魔物"を滅する者。
 興味があるならこの紙に書いてある場所へ来るといい」

おずおずと白い紙を受け取ると、男は足早に去っていった。
瀬川には幼い頃から視えてはいけないものが視えていた。
一般的に幽霊や怪奇現象と呼ばれるものを度々目撃し、指摘しては周囲から気味悪がられた。
やがて瀬川も自分だけに視えているものについて話してはいけない事に気づく。

怪異が為すことを気にしてはいけないし言及してもいけない。
彼は怪奇現象に対して無視を決め込んだ。
そんなある日のこと、彼は魔物に襲われている人を偶然目撃してしまった。
無力な彼にできることはまるでなく、ただ恐怖に怯え逃げ出すことしか出来なかった。

――そんな彼の過去が、足を自然と動かした。
白い紙に書かれてあったのは近所から少し離れたところにある公園。
時刻は夜にも関わらず、老若男女数十名ほどの人で溢れている。

怪異を払うという退魔師の存在。
何十人もの集められた人々。ここで一体何を始めるというのか。
何かのドッキリに騙されたのではないかと思い始めた頃――。

瞬間、周囲の景色は突如として真っ白な何もない空間に変貌した。
集められた人が色めきだち、混乱の波が押し寄せた。

やがて、白い空間にしわがれた老人の声が響く――。
声は空間内を反響し、混乱が少しずつ収まっていく。

「私は日本最後の退魔師。君達に集まって貰ったのは他でもない。
 この私の跡を継ぎ、退魔師となって日本に迫る怪異から救って欲しい」

131 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:47:14.93 ID:mzKbOF8t.net
老人の声は魔物とそれを退治する退魔師の説明を終え、儀式を始めた。
瀬川の足元に緑の魔法陣が浮かび上がり、目映い光に包み込まれる。

光の中に映る影を瀬川は見た。ずんぐりとした巨大な影を。
影は翡翠の双眸を光らせながら足元の魔法陣に消えていく。
そして、契約は結ばれた。気がついた時には自室で寝ていた。

いつもと変わらない朝、いつもと変わらない日常。
一連の出来事は夢だったのかもしれない。
いつも通り学校に通い、夕方となった帰り道にふとそう思った。
だが――同時に耳にこびりつく言葉を瀬川は思い出していた。

"運命は君達を怪異へと引き寄せ、魔物と戦い続ける道を歩むことになるだろう"

ふと商店街の前を通りがかった時、瀬川はぞわりとするものを感じた。
強烈な怪異を見た時に奔る怖気。喉から込み上げてくる嘔吐感。
間違いない。近くに幽霊が――先日の老人の言葉に合わせれば"魔物"がいる。

シャッター通りと化した商店街を見つめる。
地面をよく見ると、血の痕が点々と商店街の奥へと続いていた。
日が沈みかかり、電燈が一切ついていない商店街は洞窟のように暗い。
奥を覗き込むことは叶わなかった。

(あの奥に何か、いる……!)

それだけは確かな事だった。
幸いなことに、魔物の脅威はこちらへ向いていない。
退けば向こうはこちらを追いかけてくるようなことはないだろう。

今、彼は岐路に立たされていた。
夕日が照らす日常の街へ逃げ込むか。
混沌が渦巻く暗闇の中へ足を踏み込むか。

答えはとっくに決まっていた。
瀬川は学生鞄を盾のように持ち直し、暗い商店街へと歩を進めた。

132 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 13:32:40.91 ID:rFvykASH.net
トーブリ+ブレモンって感じかな

133 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 14:25:34.38 ID:Po/EIz6U.net
魔物は通常物理兵器では傷つけられないのかな?

134 :【退魔師TRPG】 :2018/12/16(日) 15:28:27.97 ID:G/W9K8im.net
>>132
そんな感じです。
個人的にはジョジョのスタンドバトルっぽいのがやりたくて考えました。

>>133
魔物は霊感の低い者に視えないだけなので、武器の威力次第で傷つきます。
霊力を介した通常物理兵器であればもっと傷つきます。

タフネスB以上が相手の場合は素の拳銃弾やライフル弾では傷つかない……
ぐらいのパワーバランスだと考えています。

135 :【退魔師TRPG】 :2018/12/16(日) 15:37:17.32 ID:G/W9K8im.net
……と、考えていたんですがちょっと訂正。
通常武器で傷つきすぎるとややこしくなりそうなので
魔物は霊力を介した攻撃や銀製の弾丸みたいな特別なモノ以外では傷つかないという設定でお願いします。
設定がコロコロ変わってしまい申し訳ありません。

136 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 12:44:05.88 ID:UVvVoixS.net
>>135
却下

137 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 07:44:50.24 ID:TPtATLrc.net
ヒーロー物の方がやりたいな
テンプレすらまだだけど

138 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/20(木) 19:11:45.98 ID:b5Rfe0Q1.net
うーん、【退魔師TRPG】は練り込み不足感もあるので一旦凍結させて頂きます。
申し訳ありません。

>>137
ありがとうございます!
【ヒーローウォーズ】は現在も募集中ですので興味があればぜひ!

139 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 00:37:51.17 ID:ZD+bJ1S2.net
悪いけどヒーローものをなろうで書く予定

140 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 08:25:30.37 ID:PmniybP9.net
見つけたいけど出来るかな
なろうは投稿者多いから、よっぽど毎日投稿して宣伝しないと埋もれちゃうんだよなあ

141 : :2018/12/23(日) 17:59:10.45 ID:pI9FQjbb.net
折角なのでまたロボットもの企画で募集します!
年末近いのでどうなるか分かりませんが、休みを挟みつつボチボチやれればと考えています。


【マシンナリーファイターズ】

20XX年。拡張現実(Augmented Reality)の発達は人々の生活をすこしだけ豊かなものにした。
拡張現実とは実在の景色にバーチャル情報を投影することで目の前の現実を仮想的に拡張する技術を指す。
このARを用いて生み出されたものこそウェアラブル端末「ARデバイス」である。
眼鏡、片眼鏡、ゴーグル、バイザーなど様々なタイプが存在しており、その用途は多岐に渡る。

――現在、人々はARデバイスを用いた「マシンナリーファイターズ」というゲームに熱中していた。
このゲームはARを用いてロボットを目の前に呼び出して戦わせる対戦アクションゲームである。
ロボットは「マシンナリー」と呼ばれ、操作はホログラフィーを用いた仮想操縦桿で行う。

ロボットが激突する瞬間、飛び交う弾丸、ビームの光……。
その全てがARによって現実さながらの迫力と光景になるのだ。
無論全て投影された演出なので人体に悪影響はない。

さぁ、君もファイターとなってロボットバトルを楽しもう!


ジャンル:SF風ロボットバトル
コンセプト:ロボット同士による熱いバトル
期間(目安):未定
GM:なし
決定リール:なし
○日ルール:14日
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし

142 : :2018/12/23(日) 17:59:51.30 ID:pI9FQjbb.net
[用語・設定]

マシンナリー:
ゲーム「マシンナリーファイターズ」で操縦できるロボット兵器の呼称。サイズは人間程度。
骨格となる基本フレームに装甲パーツ、スラスターパーツ、センサーパーツ、武器等を装着して完成する。
マシンナリーは基本フレームに装着する機体パーツを変更することで改造する事が可能である。

一からオリジナルパーツや武器を作成する事も可能でオリジナル機体をビルドできるのも醍醐味。
(ただしオリジナルパーツやオリジナル武器の使用にはゲームを開発したN社の審査と認可が必要。)
また基本フレームの改造は不可能だがN社からいくつかバリエーションが提供されている。


ロボットバトル:
ARデバイスでゲーム「マシンナリーファイターズ」を起動して対戦する行為を指す。
対戦方法は様々な種類があり通常のフリーマッチモードの他にチームマッチやサバイバルマッチ等が存在する。
また対戦機能を問わず勝利するとポイントが貰え、強さの指標でもあるランキングが決定する。
結構な人数のユーザー(ファイター)が問題の解決手段としてロボットバトルを持ち出しがち。

143 : :2018/12/23(日) 18:00:42.80 ID:pI9FQjbb.net
【キャラクターテンプレート】

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
職業:
性格:
特技:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:


【ロボットテンプレート】

機体名:
機体タイプ:
外観:
装備:
骨格:
能力:格闘/射撃/機動/装甲(合計20)
解説:

144 : :2018/12/23(日) 18:07:24.37 ID:pI9FQjbb.net
[骨格について]

マシンナリーのフレームのこと。以下の三通り存在する。

ベーシックフレーム……リリース当初から存在する基本フレーム。特徴は特になし。
エンハンスドフレーム……新フレーム。強化骨格とも。特定の武器に適正、不適正、能力に割合でバフ、デバフがつく。
デルタフレーム……新フレーム。可変骨格とも。可変機の作成に必要なフレームで自由に変形用関節を足せる。


【テンプレ例】

名前:水鳥周子(みどりしゅうこ)
年齢:16
性別:女
身長:166
体重:51
職業:高校生
性格:天真爛漫
特技:運動神経抜群
容姿の特徴・風貌:腰まであるひとつ結びの茶髪、琥珀色の瞳。人懐っこそう。
簡単なキャラ解説:
つつじヶ丘高校ゲーム部の一年生。実力は中の上程度。
部活は廃部寸前だけど世界大会優勝を夢に掲げている。


機体名:エクスフォードspec2
機体タイプ:万能型支援機体
外観:黄色の重装甲、青色のツインアイ、背中に殻型コンテナ。
装備:
フォールディング・シザーズ×2……両腕内蔵のハサミ型単分子ブレード。
スタンパニッシャー×2……空間展開式特殊兵装。両手から光球を射出し敵をスタンさせる。
ハーミットアーマリー……殻型武装コンテナ。下記の装備は全て収納武器。

エナジーリフレクター×2……コンテナ内蔵武器。攻撃を反射する展開式ビームシールド。
エナジーバルカン×4……コンテナ内蔵武器。低威力のビーム砲を断続的に発射する。
エナジーガンランチャー……携行式ビームガンの改造品。拡張バレルで威力を底上げしている。
マイクロミサイル……追尾式の小型ミサイル。熱感知式で20発まで発射可能。

骨格:ベーシックフレーム
能力:格闘5/射撃5/機動3/装甲7
解説:
正式名称「ハーミットクラブ・エクストリームモデルspec2」。エクスフォードは愛称。
水鳥周子の趣味と適正に合わせてゲーム起動時に貰える機体を重装甲モデルへと改造した専用機。
spec1が格闘機体だったのに対してspec2はチームの火力支援を目的に改造された万能機体となっている。

重装甲のため機体重量があり、機動性は低いもののジャンプなどの基本動作に支障はない。
レーダーには広域レーダーを採用しているので索敵も行える便利屋的仕様となっている。
必殺武器は両腕のハサミ型単分子ブレード「フォールディング・シザーズ」。

145 : :2018/12/23(日) 21:23:19.66 ID:GTqliqQ1.net
名前:西田結希/ザ・フューズ
年齢:21
性別:女
身長:158
体重:55
職業:社長
性格:温厚/必要な時は冷徹/つまり大抵の場合冷徹
能力:
『後天性超能力:パイロキネシス/エクトプラズム』
メトロポリスに来訪した宇宙人達から伝わった人体改造技術。
西田結希はその施術を受ける事で後天的に超能力を会得している。
炎を発生させるパイロキネシスと物質化現象を引き起こすエクトプラズム。

ただし彼女は後天的な超能力者である為、超能力者を自在に操る事は出来ない。
パイロキネシスは二通りのパターンでしか発現させる事が出来ず、
エクトプラズムも作り出せる物体は二つだけ。

装備:衝撃吸収スーツ/指向性付与グローブ、ブーツ、エルボーガードetc/軽量ボディアーマー
容姿の特徴・風貌:黒髪ポニテ、銀縁眼鏡、黒スーツ/炎を模したドミノマスク、黒いキャットスーツ、装備類は全て赤色
簡単なキャラ解説:
西田結希はかつて詐欺師だった。
メトロポリスで毎日のように起こる事件は保険金、補償金詐欺を行うのに最適だった。
そうして軍資金を調達した彼女は、今度は保険会社ではなくヒーロー協会に詐欺を仕掛けた。
ヒーローとヴィランによる戦闘の余波で自社が営業不能になったとして、億単位の賠償金を騙し取った。
彼女はその金で違法な手術を受け、超能力を手に入れ……そしてヒーローとなった。

ヒーローとなった事で、彼女は意図して、合法的に不慮の事故を起こせるようになった。
それはつまり保険金詐欺をより簡単に行えるようになったという事だ。

そんな彼女の風評は、当然だが非常に悪い。
証拠が残らないよう詐欺をしているので逮捕される事はないが、業界では悪徳ヒーローとして有名。
ルックスとキャットスーツのおかげで一般人からの人気は程々だが。

しかし彼女はハワイに別荘を持っている訳でも、週末にラスベガスで豪遊している訳でもない。
西田結希が稼いだ金を何に使っているのか。
またヒーローと詐欺師になる前は何者だったのかは、誰も知らない。

146 : :2018/12/23(日) 21:25:31.43 ID:GTqliqQ1.net
ヒーローウォーズに参加したいなと思っています
ロボットバトルは楽しかったけど、>>137でああ言っちゃったから、ごめんね

147 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/23(日) 21:37:36.87 ID:pI9FQjbb.net
>>146
ご参加ありがとうございます!
焦りから少し企画を乱発してしまいました、申し訳ありません。
企画を掛け持ちするのは負担があるので【マシンナリーファイターズ】も一旦凍結させて頂きます。

また、【ヒーローウォーズ】は随時参加者を受け付けております。
スレをゴタつかせてしまいましたがよろしくお願いいたします。

148 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 21:45:31.09 ID:LpINCiNh.net
どれが需要出るかわからないのだし
実験室内で乱発もありだと思う
でも酉は統一してほしい

不特定多数から見れば
3人がそれぞれ企画出しているように見えているわけだし
企画被っているけど参加していいのか迷う
同じ人間が品書き並べてどれがいい?
と言っているのがわかれば、気楽に選べるから

149 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/23(日) 21:54:55.31 ID:pI9FQjbb.net
>>148
すみません、浅慮でした。
以後企画を複数投下する際はトリップを統一します。

150 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 02:24:24.22 ID:o1/jCSzf.net
頑張ってね
参加はできないけど応援してます

151 :山元誠一郎 :2018/12/24(月) 06:12:07.35 ID:YleMPaHf.net
名前:山元誠一郎(やまもと・せいいちろう)
年齢:25
性別:男
身長:185
体重:135
職業:専業ヒーロー
性格:豪快、熱血、正義漢。常に腹から声出てるタイプ

能力:
強化型内骨格『フレイムアームズ』
全身の骨の85%を置換する特殊合金製の改造骨格。
極めて頑丈かつバネのように加えられた力を蓄積でき、常人より遥かに高い身体能力をもたらす。
さらに摂取したミネラル分から自己復元できるため、食事がメンテナンスを兼ねる。
神経と接続して伸縮させることが可能で、ある程度なら怪我を無視して行動できる。
人間離れしたタフを備え、限界まで溜めた力を解き放つ殺人パンチがメインウェポン。
比喩ではなく本当にワンパンで人間の首が飛ぶ。車の板金程度なら穴が開く。

最大の特徴は改造部位が"内骨格"であることからの隠密性。
骨以外は常人と大差なく、外見から改造人間であることを見抜くのはまず不可能。
そのため丸腰を装って油断を誘ったり、敵性組織に潜入といった任務に適性がある。
ただしレントゲンを撮ればバッチリ映るし、空港での金属探知にも引っかかる。
また皮膚や筋肉の強度は鍛え込んだ常人相応なので斬られれば出血するし毒にも弱い。

装備:
『バングル型ワイヤーアンカー』
ガス圧で射出し小型モーターで巻き上げを行うワイヤーとアンカーのセット。
機動力を補う目的で多用するほか、ワイヤー単品をぶん投げてポーラ(拘束具)代わりにも。
衝撃吸収機能が一切ないため常人が使えば即腕が千切れるが、山元は強化内骨格で強引に耐えている。

『そのへんに落ちてる適当な何か』
内骨格の特性を最大限に活かすため、基本的に手ぶらで敵地に潜り込む山元が武器に使うもの。
投石を基本として、怪力に任せて道路標識を引っこ抜いて棍棒代わりにしたりもする。


容姿の特徴・風貌:
Tシャツとカーゴパンツが基本装備のガタイの良いあんちゃん。
整髪料でガチガチに立てた短髪に、眼力が強すぎる双眸。

簡単なキャラ解説:
祖父の代から街の治安維持を生業としている純粋培養のヒーロー。
ナチュラルボーンな正義漢であり、洗脳に近い英才教育によって己の使命は街と人命を護ることだと信じて疑わない。
10歳の頃から10年かけて骨格を改造する施術を受け続け、成人すると同時にヒーローとしても完成した。
自分の実力と正義に絶対の自信があるためか融通の効かない堅物な側面があり、
悪人よりもむしろ自分の思う正義に当てはまらない他のヒーローに対して怒りを持つ

152 :山元誠一郎 :2018/12/24(月) 06:12:30.16 ID:YleMPaHf.net
【参加したいと思います、よろしくおねがいします】

153 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/24(月) 09:30:34.85 ID:5tVXLSU4.net
>>152
ご参加ありがとうございます!よろしくお願い致します。

154 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 22:55:36.85 ID:Mmn9xDcP.net
いいじゃんいいじゃん、俺も参加希望!
今のところ若い男二人だから、参加するなら女か老人あたりか?

155 :K-doll No14 :2018/12/24(月) 23:25:26.37 ID:7tghW3Rx.net
名前:K-doll No,14(フォーティーン)
年齢:3
性別:女
身長:120
体重:450
職業:戦闘用ロボット
性格:自信家/無鉄砲
能力:
「アイアンハート」
メトロポリスで稀に発生する本来自我を持たないロボットが突然自我に目覚る現象。
魔術や超能力など色んな説がでているがどれが正解なのかは本人達ですらわからない。
自我を持ったロボット達には色んな性格がいて統一性はない。
中には自分の力を誇示をしたいが為に暴れまわるロボットもおり基本的にはヒーローや警察を悩ませる事件になることが多い。


装備:
【アタックプログラム;ラピッドファイア】
右手を変形させることで発射できるマシンガン。
リロードが不要で、制圧射撃したり相手の足を撃ち行動不能にしたりする事ができる・・・もちろん射殺する事も。
火力は高いが精度が悪く、連続で撃ち続けるには自身の電力が必要であり長時間の射撃はできない。

【アタックプログラム;ブレード】
左手を変形させると使用できるキレ味のいい刃。
射出したりする事もできるが射出した後は刃を回収するまでブレードが使用できない。
電力を使わずとにかく燃費がいい。


【ガードプログラム;アサイラム】
自分の周囲にバリアを貼り味方や自分を保護する事ができる。
維持や衝撃の緩和に自身の電力を使うため使ってる間は身動きが取れずなにも攻撃を受けてなくても10秒程しか展開していられず連続使用もできない。
他の変形を全て解除する必要があり、あまりに強い衝撃を受けると電力が枯渇し緊急充電が完了するまで戦闘不能になる事も。


容姿の特徴・風貌:

茶髪ショート・病気と思えるほど白い肌・8〜10歳くらいの年相応の愛嬌のある声と顔・白いワンピース。




簡単なキャラ解説:
K-dollNo.14は元々ヴィラン側の科学者の殺人兵器であり全20体の中の一体でしかなかった。
現地に赴き命令された敵を殺し帰還するその為だけの"物"。
潜入しやすくするため"純粋無垢の子供"に見えるように作られているが殺戮兵器。

K-doll達の初任務はヒーロー養成所でヒーローおよび卵達を抹殺することだった。
潜入は成功し命令が発令されK-doll達が攻撃を始め、No14も銃を構え悲鳴や爆音で怯える子供達に向けた。
しかしNo14は撃てなかった、なぜか「ジットシテイレバ危害ハ加エマセン」とまで言った、自分で自分を診断したがエラーはなかった。
そのまましばらくして後ろから他のK-doll達が現れ銃を子供達に向けた。
そこから先は体が勝手に動いた、仲間であるはずのK-doll達に銃を向け発射した。

その後ヒーローに捕まったNo.14は処分されるはずだった。
しかし子供達が「悪い奴に作られたけど正義の心に目覚めたロボットに助けられた」と証言したことで世界に注目され子供達から人気を得た。
注目と人気に目をつけたヒーロー協会はNo.14に提案した、ヒーローになってみないか?と。

こうしてヒーローデビューしたフォーティーン(No14)
愛くるしい見た目と自我を持つロボットという個性と実力で瞬く間に人気"者"になった。

156 :K-doll No14 :2018/12/24(月) 23:28:32.71 ID:7tghW3Rx.net
【参加希望です、よろしくお願いします】

157 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/25(火) 19:23:09.07 ID:7JPtW3QD.net
>>154
参加お待ちしております!
まずはテンプレの投下をよろしくお願いします

>>156
ご参加ありがとうございます!
よろしくお願いします!

参加者の方が増えてきたのでターン順を確定させておきますね。
神籬→西田→山元→K-doll No,14の順番で行きたいと思います。
レス番が離れてしまったので、私のターンで導入文を投下し直します。少々お待ちください。
その他、ご質問、ご要望等あればお答え致します。

158 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/25(火) 19:56:45.15 ID:7JPtW3QD.net
20XX年メトロポリス。
夢の未来都市と銘打たれたその都市の姿はもうなかった。
今やありとあらゆる悪意を溜め込んだ掃きだめと化したこの街に平和はない。
齎すとすれば――、特別な力を持ったヒーロー達に他ならない。

夜のメトロポリスを一体の改造人間が駆け抜ける。
自動車群の網目を縫って『ファイアスターター』は後ろを一瞥した。
頭部の生えた髪の毛のような排気パイプに脚部の大型車輪ヒールホイーラーが加速する。
口紅のように真っ赤なボディとファイアパターンが目立つ女性型改造人間の威容にドライバーはぎょっとした。

「うふ、アナタ達ったら、速さがまるで足りてないのね」

脚部のヒールホイーラーを傾けて器用にUターンしながら地平線を見据える。
そしてスロウな乗用車を適当に蹴り上げた。轟音を立てながら車は地面に対して垂直に宙を舞う。
視界には誰もいない。目に映るのは空虚なビルディングが立ち並ぶメトロポリスの夜景だけだ。

「ヒーローは遅れてやってくるって言うけれど、遅れすぎちゃダメじゃない?」

小脇に抱えたアタッシュケースを愛おしそうにひとなでして、改造人間は前方へ振り向く。
やっぱり私がナンバーワンの速さなのよ!
『ファイアスターター』は強い自負と共に夜の道路を疾走した。

メトロポリスに存在する犯罪組織は枚挙に暇がないが、彼女はその中でも危険で巨大な組織に属していた。
秘密結社レオニダス――。人間を一段階進化させるため、人類の新たな形態を模索する新興組織である。
彼らは現代の秘跡である超科学を用いて人に改造手術を施して改造人間を生み出す。
改造人間は『ファイアスターター』のように人間の原型を留めていなかった。

結社の擁する改造人間は警察組織では到底相手にできるものではない。
彼らと戦える組織はただひとつ。ヒーロー協会と所属するヒーローだけである。

「そうはさせねぇぜ改造人間っ!!」

改造人間が蹴り上げた車をキャッチしながら、腕時計型端末は吼えた。
端末の主である白い装甲服を纏った男は静かに車を降ろす。

「遅れすぎちゃだめじゃない?ちっちっち、違う違う。皆の声を待っていたのさ!
 俺が噂の装着系スーパーヒーロー、『リジェネレイター』様だっ!!!!!!!!!!」

腕時計型端末『オービット』が華麗なる向上を並び終え、
中身の神籬明治(ひもろぎめいじ)は静かに呟いた。

「……俺はどうすればいいんだ?」

159 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/25(火) 19:57:33.10 ID:7JPtW3QD.net
「あだだっ!ったく、変身前に言っただろうが!カッコ良くなんか決めポーズすりゃ良いんだって!
 それぐらいのファンサービス皆やってるから。あー、そうね。やってない奴もいるよ」

「……誰なんだ?」

「お前だよ、お・ま・え!!」

オービットは機械の溜息を漏らした。『リジェネレイター』は喋らない。
男は気難しいというわけでも怒っているというわけでもなかった。彼はおおよそ他人に対して心を閉ざしていた。
それは人工知能であるAIが相手でも変わらない。彼にとって言葉を交わすとは、とても困難な作業だった。

「さぁてどうするんだ『リジェネレイター』よ。俺達に高速移動なんて便利な能力はないぞ。
 このままじゃあいつを取り逃がしちまう。他のヒーローに任せて帰っちまうか?」

リジェネレイターは答えないまま、やにわに乗用車の屋根に飛び乗った。
飛び乗った車はややバランスを崩しながら走行を続ける。
しばらくしたところでリジェネレイターは器用に他の車に飛び移った。

「おおっと、失礼しまぁす。良い苦し紛れだがよ。
 あの改造人間300キロは出てるぜ。こんなんで追いつけるのか?」

「分からない。だけど、やるまでだ」

そうきたか、とオービットは端末の画面を明滅させた。相変わらず頑なな奴だ……。
先代の『リジェネレイター』が死亡して、ヒーロー協会で神籬と出会ったその日の印象通り。
人見知りで引っ込み思案、誰にも心を開けない……だけど、内には正しい心を秘めている奴だと。

「根暗の癖になんで頭だけは固いんだか。
 しょうがねぇ、ヒーロー協会に連絡して道路を封鎖して貰おうぜ。
 他のヒーロ―共も寄ってくるだろうけど背に腹は変えられないからな」

「そうだな……ありがとう、オービット」

「礼なんて無用だ。AIは必要なことをするだけだからな」

160 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/25(火) 19:59:17.46 ID:7JPtW3QD.net
快調に疾走していた『ファイアスターター』だったが、突如としてその走行を止めざるを得なくなった。
ビル街とメトロポリスの中で最も治安が悪いストリートを繋ぐ可動橋が跳ね上げられ、先に進めなくなったのだ。
女改造人間は舌打ちしてストップ。脚部から怒りの炎を巻き上げた。
心臓が早鐘を打つような大音量の排気音を鳴らし独りごちる。

「誰かしら。私の走りを邪魔するのは……?」

「誰かしらもおかしらもあるかよ。天下の公道で散々暴れまわってくれちゃって〜……。
 神妙にしろ。警察に代わって俺達が逮捕してやるぜ!改造人間!!」

特徴的な暗緑色の布地に白い装甲を纏ったヒーローが女改造人間へ歩み寄る。
息を切らして追いついたリジェネレイターに喋る余裕は無論ない。
捲し立てたのはAIのオービットの方だ。

「私無駄なことって嫌いなんだけど。本当に誰なのかしら。
 名乗りぐらいあげてくれないとマイナーヒーローの事なんて分からないわ」

「カッチーン!てめぇ、これでもなぁ。俺だって昔はちょっとしたもので……」

言い終わるより早く地面が隆起してオービットのお喋りは中断された。
地面が裂けて現れたのは岩のようにごつごつした肌のこれまた異様な男だった。

「なんだなんだ。今日はヴィランのオンパレードか?
 もしかして……俺達、ヤバイ日に出くわしちまった?」

「かもしれないな……」

岩肌の男はリジェネレイターをぎろりと睨んでファイアスターターを見据える。
男は横にも縦にも長く、ざっと2メートルはあろう巨躯から一種ぬりかべを想起させた。
糸で縫合された口を強引に開こうとするが、神籬に聞こえたのは低い唸り声のようなものだった。

「久しぶりねロックバイン。相変わらず異能者の癖に改造人間染みてるわアナタ。
 そういうところが本当に無様ね!どうせアナタの狙いもこれでしょ?」

ファイアスターターは抱えているケースを叩きながらくすりと口紅を歪ませた。

「アナタと取り合いを演じても良いけど、先ずは邪魔者を消すのが先決じゃないかしら。
 アナタが私の速さに追いつける訳ないでしょう」

ロックバインと呼ばれた異能者は決然とした様子でリジェネレイターを睨みつけ臨戦態勢に入った。
ファイアスターターはそのスピードと炎を噴出する力を、ロックバインはその土を操る力を以て――。
眼前に映る邪魔者を殲滅することに決めたようだった。

リジェネレイターの連絡を受けて可動橋を封鎖したヒーロー協会だったが、
彼らはヴィランとの戦いに極めて用心深い。
念を押して他のヒーロー達に連絡を入れるのが通例だ。
と、言ってもその連絡はいつものように情報が少ない上に古い。

メトロポリスのメインストリートに改造人間タイプのヴィランが出現した。
ヴィランはアウターストリート目掛けて時速300キロで走行しているが可動橋を封鎖して進路を塞ぐ。
ヒーロー各員は直ちに現場に急行してヴィランの制圧にあたってほしい。以上。


【ミッション:ヴィランを制圧せよ!】

161 :神籬明治 :2018/12/25(火) 20:00:45.33 ID:7JPtW3QD.net
【名前欄変え忘れてた……(汗)】

162 :山元 :2018/12/28(金) 20:16:22.17 ID:UidLzU4G.net
【すみません参加表明してからもっとやりたいキャラが思いついたので変更したいです】

名前:セーラ・山元/魔法少女テスカ☆トリポカ
年齢:15
性別:女
身長:155
体重:45
職業:女子中学生/魔法少女
性格:天真爛漫

能力:
古代の太陽神ケツァルコアトルとの契約により力を得た魔法少女(地属性)。
特別な薬草(合法)を燃やした煙を吸引することでトランスし、爆発的な魔法力を発揮する。
太陽神の加護として大地を司る力を持ち、主に地熱や鉱物を操って戦う。

『大地の結晶』
マグマの結晶体である黒曜石を大地から呼び起こし操る魔法。
黒曜石の薄片はこの世のどんな刃物よりも切れ味鋭い単分子構造の刃であり、
後述のマクアフティルに取り付けて剣として扱ったり飛ばして攻撃したりする。
また黒曜石に眠る火山噴火のエネルギーを解放し、爆破することも可能。
ただし精錬された金属には弱い。

『レイラインアクセス』
地脈に潜ることで瞬間的に異なる場所へ移動する魔法。
潜るだけでなく『潜らせる』こともでき、離れた場所への攻撃にも利用できる。
生き物の搬送には対象者の許諾が必要なため、敵の位置を変えることはできない。
最大射程は2km、ただし距離が伸びるほどピンポイントで移動することが難しくなる。
地脈に触れていないと使えないため、空中戦には弱い。

装備:
『マジカルマクアフティル』
古代アステカの戦士が用いたとされる木剣の一種。
羽子板状の刀身に黒曜石の破片を散りばめることで、木製でありながらおそるべき切れ味を備える。
金属製の剣と比べて貫通力は劣るが、その気になれば人間の身体も骨ごと斬り飛ばすことも可能。
またサメの歯もように並んだ刃は魔力で射出することができる。

『鷲型の煙管』
鷲を象った材質不明の煙管。ケツァルコアトルの魂が封印されている。
火皿に詰められた薬草(単純所持なら合法)に点火し、その煙を吸引することで魔法少女に変身する。
ケツァルコアトルとは意志の疎通が可能だが、使う言語が異なるため100%伝わっているとは言いづらい。

容姿の特徴・風貌:
『通常時』
中等学校の制服、亜麻色のウェーブがかった長髪

『変身時』
フリルの代わりに鷲の羽根をふんだんに使ったインディアン風の衣装。
アステカ神話の神をモチーフにした石製の仮面を被っている。

簡単なキャラ解説:
神出鬼没の魔法少女にして、その正体はメトロポリスの学校に通う女子中学生。
天真爛漫で好奇心旺盛、底抜けに明るいごく一般的な女の子。

あるときこっそり入った父の書斎で見つけた『いい匂いのする葉っぱ』を、
好奇心から刻んで絞って出た汁を煮詰めたものをスプーンに乗せて炙って吸引してみたところ、
太陽神ケツァルコアトルと出会い魔法少女として戦うことになった。

実は彼女の父親はメトロポリスに根を張る麻薬シンジゲートのボスであり、
ヒーロー活動を続けるなかで父の組織を壊滅に追いやりつつあることを彼女はまだ知らない。
銃と鉄と白人が嫌い。

163 :神籬明治 :2018/12/29(土) 11:55:33.84 ID:nuOmr6U3.net
>>162
【分かりました!改めましてよろしくお願いします!】

164 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 23:06:43.90 ID:lJi4f6Dh.net
次は西田待ちってことでいーの?

165 :神籬明治 :2019/01/01(火) 00:55:45.04 ID:B/MvvmTe.net
明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします。

>>164
順番的にそうなります。
年始で投下は難しいかと思いますが一応期限を設けておきますね。
1月5日から14日ルールを適用したいと思います。

また、1月5日に参加者全員の生存確認も取りたいので、
皆様お手数ですが一言書き込みお願いします。

166 :K-doll No14 :2019/01/02(水) 18:32:25.32 ID:bpX29OWP.net
生きてますよー五日にはコメントできなさそうなので今のうちに生存報告しておきますね

167 :山元 :2019/01/02(水) 21:03:53.61 ID:8qYXWNvH.net
私も生きてますー
西田さんは大丈夫でしょうか・・・?

168 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:25:28.29 ID:ZAcD21RV.net
メトロポリスの中央東区には酒池肉林と呼ばれる高級中華料理店がある。
量が多く味もいい割に値段も手頃。
そして何よりメトロポリスでは珍しい、調理場の様子を客席から見る事が出来ると有名な店だ。

メトロポリスでは下水道から拾ってきたネズミに魔法をかけてトマトに偽装したり、
その魔法が食事の途中で解けてサラダボールいっぱいにネズミの頭が出現する事は珍しくない。
下手を打って始末された悪党や密航してきた宇宙人の肉が料理に混ざる事もある。

酒池肉林ではそのような事は一度も起こった事はない。
無論、バレた事がないという意味ではなく。

DNA検査、ファラン魔法大学の封蝋付き魔法解除のスクロール、カタリナ正教会で製造された真贋看破の聖水。
他にも四種の異なる技法を用いて、食材の偽装はない事を証明している。

「なあ、この店ってホントに利益出てるの?急に潰れたりしないよな?」

酒池肉林に通い出して暫くすると、殆どの客は挨拶にきた支配人にこう問いかける。
食材の質の高さに加えて、徹底的な安全性の証明。
収益が得られているのか疑問に思う者がいても不思議ではない。

「ご心配なく。こうして気がけて頂けている間は、そのような事にはなりませんよ」

支配人の返答はいつも決まっている。柔和な笑顔を浮かべて、そう答える。
そして新たな常連客となるだろうその客に、少しばかりのサービスを添えて料理を運んでくる。
だが今日は――少しばかりいつもとは違う事が起きた。

ふと、支配人のスーツの内ポケットから、小さな電子音が響く。
携帯の着信音だ。

「失礼します」

支配人の表情からにわかに笑顔が消える。
緊急の連絡なのか、支配人は客に背を向け数歩離れると、すぐに携帯を取り出した。

「……はい。わかりました。ええ、それは毎日欠かさず。はい……それでは、ボス」

客に応対する時とは違う、緊迫感すら感じさせる静やかな声だった。

「……なに、なんかあったの?」

支配人が通話を終えると、客の男は思わずそう尋ねた。

「ええ、実は今、メインストリートでヴィランが暴れているようでして。
 ……もしかしたら、明日の仕入れに支障が生じるかもしれないと」

「マジぃ!?うわー、明日の昼飯どうしよっかなぁ……」

「お帰りの際に、ウチの系列店の割引券をお配りさせて頂きますので、どうかご容赦を」

そうして支配人はその後、全ての客に割引券を配り、退店を見送った。
誰もが明日、酒池肉林が営業出来ない事に嘆きつつ店を後にする。
誰も、支配人が嘘をついているなどとは考えもしない。

本当は、明日の仕入れは問題なく行う事が出来る。
これから出来ないという事にするのだ。
そうすればヒーロー協会や保険会社から一日分の売上を補償金として得る事が出来る。

つまり常日頃から架空の伝票を作成して、一日当たりの売上額を粉飾しておけば――
その水増し分がそのまま設けになるという寸法だ。
ヴィラン絡みの騒動、ヒーローの出動が毎日のように起こる、メトロポリスならではの詐欺だ。

169 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:26:35.95 ID:ZAcD21RV.net
支配人は昨日の分の架空伝票を作成するべく、厨房の奥へと向かう。
そして――不意に、足を止めた。

関係者以外立入禁止であるはずの厨房に、見知らぬ人物がいた。
黒いスーツで身を包んだ、背の低い銀縁眼鏡の女だ。
調理台の上には彼女の持ち物であろうジュラルミンケースがある。
代わりに、本来いるべきである調理師達の姿は、どこにも見えない。

「……こちらはスタッフ以外立入禁止となっておりますが、どちら様でしょうか」

支配人は双眸を細めて、そう尋ねた。

「支配人の山田様ですね?私はメトロポリス・パブリックヘルスセンターの西田結希と申します」

西田と名乗った女はにこやかな笑顔と共にそう言うと、小さく会釈をした。

「実は先日、この店舗で食材の魔術的偽装が行われていると通報がありまして」

支配人は考える。
またいつものか、最近は減ってきたんだがな、と。
酒池肉林はメトロポリスでも指折りの有名店だ。
やっかみや難癖、それらを発端に始まる嫌がらせはよくある事だった。

「その件でしたら、既に一度調査を受けていると思いますが」

「ええ。ですが最近になってまた通報件数が急増してまして……」

結希の顔に浮かぶ愛想笑い――このまま引き返すつもりはないという事らしい。

「……分かりました。でしたら、気の済むように調査して下さい」

少なくとも食材の品質に関しては、この店に偽装はない。
支配人は臆さず冷静に応対する。

「いえ、実はもう調査は済ませてしまったんですよ」

「……困りますね。勝手な事をされては。ですが、何も見つからなかったでしょう」

「……いいえ?」

だがすげなく返した言葉に結希がそう答えると、彼の表情に困惑が浮かんだ。

170 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:28:16.78 ID:ZAcD21RV.net
「馬鹿な。何も見つかるはずがありません」

そう、何も見つかるはずがない。
なにせ本当に何もないのだ。少なくとも食材に関してはこの店は潔白だ。
一体何が見つかったというのか。同業者によって何か仕組まれたのか。
支配人の意識が急速に、泥沼のような思考に沈んでいく。

ふと、結希がどこかへと指を差した。
支配人が振り向くと、その先にあったのは――食材用のコンテナだ。

「ご自分で確認してみてはいかがですか?」

何もある訳がない。
そう思いながらも支配人は、コンテナへと歩み寄っていく。
中に見えるのは大量のトマト。

この中に何かが仕込まれていたのだろうか。
だとしても、この店には既に実績がある。
同業他店による営業妨害であると主張しても、十分に客の信用は保てるはず。

思索を巡らせながらも支配人はコンテナを漁り――指先に何か違和感を覚えた。
何か冷たく、硬いものの感触。
それを掴んで引きずり出す。
コンテナの底から出てきたのは――銃だった。
FN-P90。小型で長細い特殊な弾丸を使用する、アーマーの貫通を目的としたサブマシンガン。
メトロポリスでは、少なくとも合法的には販売する事の許されないものだ。

「馬鹿な……こんなものが、何故……」

「酒池肉林は食材の安全性をあらゆる手段を用いて証明していた」

狼狽する使用人の背後から声がした。
西田結希の声――その響きは、先ほどまでとは打って変わって冷たく、鋭かった。

「それは、そうする事でこの店は不正とは無縁であるという印象を作り出せるから。
 実際には食材そのものには偽装がないという事実を隠れ蓑にして、不正を行う事は出来る。
 それは例えば架空伝票による補償金詐欺であったり……違法な品の密輸であったり」

支配人が振り返る。
彼女は、マスクを被っていた。

「……私への上納金まで偽装しろと命じた覚えは、なかったんだがな。
 私が考えたシステムで順調に金を稼いで、自分の身の程を勘違いしたか?」

調理台の上のジュラルミンケースから取り出した、紅蓮の炎を模したドミノマスク。
メトロポリスに知られる悪徳ヒーローの象徴たるマスクだ。

171 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:32:03.50 ID:ZAcD21RV.net
「……それはつまり、あなたが私のボスだった、という事でしょうか」

「ああ、そうだ」

「わざわざ正体を明かしたのは……私をここで殺すつもりですか?」

「それ以外にどんな理由がある?」

「……私はこの店の使用人として、既に顔が知られています。
 始末すれば、今後の店の運営に支障をきたすのでは」

「確かにそうだ。だがこれ以上お前に舐められる事の方がずっと問題だ」

ザ・フューズの右手に炎が灯った。
そのまま彼女は支配人へと一歩二歩と詰め寄っていく。

「降伏は無駄だ。抵抗しろ。お前は万が一助かる見込みがある。
 そして私はヒーローとしてお前を殺せる。いい事ずくめだ。だろう?」

ザ・フューズが更に一歩前に出た――その瞬間。
支配人はサブマシンガンの銃口を彼女に向けた。
ザ・フューズが自分に銃を与えたのは、正当な防衛として自分を始末する為。
そう分かっていても、それ以外に彼に取れる行動はなかった。

分間900発、秒速715メートルの速度で放たれた弾丸がザ・フューズへと迫る。
対して彼女は――ただ静かに、右手を前に伸ばした。
そして現れる、青白い光を放つ半透明のプレート――超能力による物質化現象。エクトプラズムだ。
響く金属音――ザ・フューズへ放たれた数十発の銃弾が、全て弾かれた音だ。

分かりきっていた事だが、やはり銃は通じない。
その様を目の当たりにすると、支配人はすぐにそれを放り捨て、逃げ出そうとした。
そして――直後、彼は火花を見た。
自分めがけて、まるで導火線(ザ・フューズ)のように襲い来る火花を。

火花は刹那の内に支配人の眼前まで迫り――炸裂した。
何もない空間から突如燃え上がる炎。
発火能力、パイロキネシスによるものだ。

火だるまになった支配人は呻き声を上げながらもがき、しかしすぐに動かなくなった。
ザ・フューズはそれを見届けるとジュラルミンケースの中から小型の通信機を取り出し、喉と耳に装備した。

「……もしもし、私だ。例の密輸入業者はクロだった。
 銃で抵抗されたので、身柄を確保する事は出来なかったが」

協会に所属しているヒーローは、望むならオペレーターによる支援を受ける事が出来る。
それは例えば交通規制の要請や、情報支援。
そして戦闘の事後処理――例えば死人が出てしまった際の迅速な手続きなどだ。

「悪いが、殺される可能性が1%でもあるなら加減なんて出来ない。
 ……とにかく、この男のスマホは回収出来たから問題はないだろう。これを解析に回してくれ。
 もし取引相手の情報が分かったなら、ちゃんと私に教えてくれよ」

ザ・フューズはジュラルミンケースの中にある携帯端末をちらりと見下ろした。
当然、これは彼女が事前に用意したものだ。
中のデータから取引相手として割り出されるのは――彼女が目星を付けたスケープゴート。
つまりあわよくば吸収合併したい悪党共のリストだ。

172 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:32:57.66 ID:ZAcD21RV.net
「……今から本部に戻るが、迎えは出せるか?
 10分以上かかるようなら自分で……なに?なんだって?」

ジュラルミンケースを閉じて裏口へ向かうザ・フューズが、ふと立ち止まった。

「この近くでヴィランが暴れている?……可動橋を封鎖したのか。つまり、結構な大物かもしれないと」

ザ・フューズのマスクの奥で、彼女の双眸が鋭く細る。
そうして彼女は裏口から外に出ると、その場に膝をついてジュラルミンケースを開いた。
中からボディアーマーと、彼女専用のグローブとブーツ、ジョイントカバーを取り出す。
それらをスーツの上から装着すると――不意に、彼女の体が燃え上がった。
人体発火現象、最も単純なパイロキネシスの使用法だ。
スーツが燃え落ち――その内側から黒いキャットスーツがあらわになる。

「ケースは店の裏口に隠しておく。
 中には私の支給されたスマホも入ってるし、万が一盗まれても追跡だろう?
 ……ああ。ヴィランが暴れてるなら、ヒーローが駆けつける。当然の事だ」

ヒーローを名乗るその言葉とは裏腹に、彼女の声音は先の支配人を殺めた時のように冷酷だった。

通信を終えると、彼女は地を蹴った。
同時に彼女の四肢の装備から爆炎が噴き出す。
人体発火現象の応用――炎の噴出を数点に絞り、装備を通して更に圧縮。
その結果生じるのは強烈な推力。
空を飛び回るとまではいかないが――高価なジェットパックをレンタルしなくても困らない程度の機動力は確保出来る。

封鎖された可動橋前の交差点。
ヒーローとヴィランがぶつかり合う戦場に、ザ・フューズは猛烈な速度で迫っていく。
そして目視した。

遠目にもはっきりと分かる弧を描く、器物破損も辞さない暴力的な炎。
コンクリート色の巨人と、その男を中心として円錐状に隆起する地面。
最後に――それらの攻撃に晒されて悪戦苦闘する暗緑色の人影。

緑と白の某がヒーローである事はすぐに分かった。
ヒーローが優勢であるならば援軍要請など必要ないからだ。
ザ・フューズは速度を落とさず突っ込み――その勢いのまま、炎の推定ヴィランに蹴りを見舞った。

響く強烈な金属音。
炎の推定ヴィランはその脚部のローラーで地面を擦りながら、大きくノックバック。

「……なんだ。誰かと思えば、目立ちたがりの三流ヴィランか。来て損したかもな」

「なに、またヒーローのおでまし?悪いけど、今日はあなた達と遊んでいる暇はないの」

しかし炎のヴィラン――ファイアスターターは平然とザ・フューズの方へと振り向いた。

「分かるかしら。いつもみたいに優しくはしてあげられないって事」

不意打ちは確かに成功した。
ザ・フューズの蹴りはファイアスターターの無防備な横面をこれ以上ない手応えで捉えていた。
にもかかわらず彼女のボディには僅かな塗装の剥離すら生じていない。

ファイアスターターの尊大な態度には確かな根拠がある。
ステージWの人体改造――全身の八割以上を置換した改造人間は、本来生身の人間が争えるような相手ではない。
彼女は人間よりもむしろ、兵器に近い存在なのだ。

173 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:34:17.00 ID:ZAcD21RV.net
「怪我したくないでしょ?どいてくれないかしら。手柄ならそっちにもいるわよ、ほら」

ファイアスターターは顎先でロックバインを指す。
だがザ・フューズの視線は彼女からぴくりとも動かない。

「……なるほど。目立ちたがりのお前が、どうしても早くここから逃げたい。
 何かは知らんが、なかなか重大な任務に就いてるようじゃないか、え?」

ザ・フューズの視線が、ファイアスターターの携えるアタッシュケースを捉える。
直後、ザ・フューズの手足から噴射される炎。
その推力が、一瞬間の内に彼女の立ち位置を変化させる。

橋が封鎖された事で、ファイアスターターの目的地がアウターストリート方面である事は既に分かっている。
ならば彼女は来た道を戻る事は出来ない。
ファイアスターターの取るべき選択肢は、この場を離脱し、他の橋から対岸へ渡る事。

ザ・フューズはそれを封じたのだ。
表裏どちらの稼業においても、地理の把握は必要不可欠。
彼女の頭の中にはこの街の地図が丸ごと詰め込んであった。

「目立ちたがり屋で、口が軽い。とことん三流だな、お前は」

ザ・フューズの挑発に、ファイアスターターの双眸に怒りが宿る。

「……あなた、生意気ね。たかが生身の人間のくせに」

瞬間――ファイアスターターが炎を棚引く閃きと化した。
改造手術によって得た内部機構と装甲――それらによって、彼女の体重は当然、常人の数倍。
加えてその体を時速300キロで動かす推力――そこに回転を加えれば、手足の先端は更に加速する。

つまり――恐ろしく速く、しかも重い。
人体など容易く破断し得る威力を秘めた回し蹴りがザ・フューズへと襲いかかる。

ザ・フューズは右手を前に伸ばし、前方にプレートを展開。
ただし今回は、地面と水平に。
ライフル弾をも弾く防壁は、向きを変えればそのまま巨大な刃になる。
そして――ファイアスターターの真紅の脚部装甲が、その刃を力任せに蹴り砕いた。

ザ・フューズが咄嗟に両腕を交差させ、追加の防壁を形成。
二重に展開されたプレートは――最初の一枚同様容易く、ザ・フューズもろとも蹴り抜かれた。
ザ・フューズの矮躯が大きく弾き飛ばされ――だが炎の噴射を用いて勢いを相殺。
数メートルほど後退させられたものの、なんとか踏みとどまる。

腕の奥、骨にまで響き、残留する重い衝撃。
ヒーロー協会謹製の耐衝撃スーツと、追加の防壁がなければ腕ごと胸まで薙ぎ払われていただろう。

174 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:39:43.98 ID:ZAcD21RV.net
蹴り飛ばされた事で体勢は崩れ、腕には重い痺れ。
ザ・フューズは大きな隙を晒した状況。
しかしファイアスターターは、ザ・フューズの方など見向きもしていなかった。
ただ自分の脚に視線を落とすと、苛立たしげに地面を蹴りつける。

彼女の脚部装甲には、浅い亀裂が生じていた。
当然だ。先のカウンターは、言わば時速300キロ超で鉄板を叩きつけられた同然なのだ。
むしろ脚が切断されず装甲への亀裂だけで済んでいる事の方が異常だ。

「……私のボディに傷を付けるなんて、許せないわ」

「ほざけ。奪い、傷つけるのはお前達だけの特権だとでも?」

怒りを帯びたファイアスターターの言葉に、ザ・フューズは苛立たしげにそう返した。

ファイアスターターの尋常ならざる速力を逆手に取っても、彼女のボディに有効なダメージを刻む事は出来なかった。
だがそれはあくまで、一度では十分なダメージに至らなかったというだけの事だ。
ザ・フューズはカウンターは有効な戦術であると判断。次の手を打つ。
痺れる腕を気遣う素振りは決して見せず、虚空を撫でるように右手を動かす。

「お前達は所詮、社会の寄生虫だ。まともに機能している社会があって初めて存在出来る。
 そんな連中が、許さないだと?思い上がるなよ」

空中に次々と配置されていくエクトプラズムの刃。
ザ・フューズの狙いは逃走と、速度を活かした攻撃の封殺。
敵の強みを、徹底的に潰す目論見だ。

「思い知らせてやるぞ。正義は勝つという事をな」

正義を名乗るその声は、しかし冷たい憎悪に満ちていた。


【生きてますよー。
 ファイアスターターに対してトラップを散布】

175 :山元 :2019/01/06(日) 02:37:04.31 ID:DeXN+Nn8.net
公に存在を認められた魔法。人類の到達点とも言うべき科学技術。外宇宙からの来訪者。
それらを用いた社会福祉によって、夢の未来都市とまで謳われたこの街に、在りし日の栄華はもはや見る影もない。

いつの時代も、新しい技術を真っ先に使いこなすのは悪党達だ。
無軌道にばら撒かれた超常現象は、人間の悪意から最後の歯止めを奪い去る。
メトロポリスはいま、『悪い事なら何でもできる』犯罪者の楽園と化していた。

しかし荒廃したこの世界にあってなお、平和を尊ぶ意志の炎は潰えてなどいなかった!
燃え盛る正義にその身を焦がす、とある魔法少女の物語は、ここから始まるッ!!

176 :山元 :2019/01/06(日) 02:37:27.91 ID:DeXN+Nn8.net


隣接する工場から立ち上る黒煙が、重油の如く空に蓋をする工業区。
その片隅に、もう何年も太陽の光が差し込んでいない、湿気たコンクリートむき出しの建築物がある。
中央の鐘楼に取り付けられた鐘が、終末を思わせる錆びついた音を立てた。

ここはメトロポリスに7つ存在する公立学校、その中等部。
通う生徒達は、この治安劣悪な街にあって、セキュリティ万全な私立学校へ通うことの出来なかった者達だ。
つまりは市内人口の4割を占める貧民層。あるいは、何らかの理由で私立への入学を認められなかった子供である。

放課後、中等部の校舎裏。
カビと苔が繁茂する日陰で、数人の少年少女がたむろしている。
制服を好き放題に着崩し、髪を極彩色に染めた彼らは、当然のように煙草の煙を燻らせていた。
どこから調達してきたのか、足元には発泡酒の空き缶まで転がっている。

「あーだりぃ。疲れ取れねえわマジで」

「おめー丸一日授業フケてたべ?疲れる要素ゼロじゃん」

「一日中ウンコ座りしてっからさぁ。足腰の負担やべーんだわ」

ヤニ臭い野卑た笑い声に、IQの低い益体もない会話。
校則などないも同然に振る舞う彼らは、有り体に言えば不良生徒達であった。
特段珍しい存在でもない。学校のような子供の集まる場所なら、一定数は生まれる落伍者だ。
しかし、彼らの非行を単なる思春期の過ちで片付けてしまうのは、いささか酷な話かもしれない。

屈強な警備員に守られた私立校と違って、公立校には安全の保障がない。
極端に治安の悪いこの街では、いつ不幸なトラブルに巻き込まれてしまうとも限らないのだ。

過激の一途を辿るヴィランによるテロ、異能を持った生徒同士の小競り合い。
昨日までじゃれ合っていた同級生の机に、今日は花瓶が置かれていることなど珍しくもない。

当然親は公立校を避け、警備が固く異能者の在籍しない私立に子供を通わせようとする。
しかし経済的な問題や、単純な学力不足、あるいは自身が異能者であるなどといった理由で、
進路が限定されている子供もまた一定数存在するのだ。

死ぬのは怖い。しかし逃げ出そうにも行くあてがない。
そんな閉塞感や厭世観が、刹那主義へのいざないが、少年少女を非行に走らせる。
大人になれないかもしれないなら、今のうちに大人の娯楽を楽しんでおこう。
行き着く先が、たった今彼らが行っている、未成年喫煙であった。

昨日より今日は薄暗く、今日より明日はなお暗い。
あたりを漂う紫煙のように充満する絶望が首を締める校舎裏に、新たな影が一つ現れた。

177 :山元 :2019/01/06(日) 02:38:10.66 ID:DeXN+Nn8.net
「こらーっ!未成年が煙草吸っちゃダメだよ!!」

ふいに飛んできた非難の声に、不良達が一斉に振り仰ぐ。
そこには一人の少女がいた。校則通りに着込んだ制服は彼らと同じ学校のもの。
これも校則通りに胸に縫い留めてある名札には、『3-A セーラ・山元』と記載されていた。

少女――セーラは大股歩きでつかつかと不良に歩み寄ると、煙草を奪い取ろうと手を伸ばした。
不良はそれをはたき落として鼻で笑った。

「は?誰だよお前、関係ねえだろ。個人の勝手だ」

「あとトイレ以外の場所で排便しちゃダメだよ!!」

「それは個人の勝手でもしねえよ!しゃがんでる奴がみんなウンコしてるとでも思ってんのかテメーは!」

いわゆる便所座りで喫煙していた不良は思わず立ち上がった。
背の高い彼は、セーラを威嚇するように上から睨めつける。
栗色の波打つ長髪の下で、セーラの双眸は強い意志を秘めたまま彼を見上げていた。

「……なんだお前、優等生ちゃんがお説教でもかましに来たのか?ああ?
 有名無実のルールなんざ、まともに守ってる奴がいんのかよこの学校に」

「校則は関係ないよ!煙草ってね、ホントは身体にすっごく悪いんだよ!
 煙を吸ったら肺を痛めちゃうし、脳の血管も縮めちゃうんだから!
 せめて成長期が終わるまで我慢しとかないと、大人になってから絶対後悔するよ!」

「くだらねえ」

不良は説教を唾棄するように、茶色く染まった痰を地面に飛ばした。
身体を顧みない無理な喫煙によって、喉が炎症を起こしているのだ。

「大人になってからだぁ?なれる保障があんのかよ、俺たちによ。
 てめえもここの生徒なら分かってんだろ。この街じゃいつ誰が死んでもおかしくねえんだ。
 明日の楽しみにとっといて、今日死ぬような間抜けに俺はなりたくねえぞ」

大人になるまで我慢なんてのは、いつか大人になれる奴の台詞だ。
校則や法律を守るのは、それらのルールが自分自身を守るものでもあるからだ。
この街の貧民層に生まれた彼らにとって、健康も遵法精神も、まるで無意味の代物だった。

他ならぬ当事者として、そのことを痛いほど理解しているセーラは、きゅっと唇を噛んだ。
先程とは一転してしおらしく、目を伏せたまま零すように言う。

「でも、煙草はやめなよ……。さっきは校則なんて関係ないって言ったけどさ。
 こうして校舎裏で隠れて煙草吸ってるのは、やっぱり悪い事だと思ってるからでしょ?」

「しつけえ奴だな。先公やてめえみたいな優等生が絡んでくるから見えないとこで吸ってんだよ。
 クソみてえなルールさえなけりゃ、貴重な青春をこんなくだらねえ問答で使い潰すこともなかった」

分かったら消えろ、と不良は吐き捨てた。
しばらくうつむいていたセーラは、不意に顔を上げて言った。

178 :山元 :2019/01/06(日) 02:38:48.85 ID:DeXN+Nn8.net
「だからさ、どーせやるなら違法の煙草じゃなくて、合法のやつにしなよ!」

「うん?…………んん??」

唐突に話がおかしな方向に流れて、不良はセーラを二度見した。
彼女が胸ポケットから取り出した透明な小袋。中には乾燥した葉のようなものが入っている。

「おまっ……はあ!?何だよその見るからにヤバそうな葉っぱは!」

「ヤバくないよ!煙じゃなくて、樹液を炙って揮発した成分を吸引するタイプだから!
 煙で肺を痛めることもないし、純度の高いやつだから身体に負担はかからないよ!」

「そういう意味のヤバいじゃねえよ!校則どころか法律に触れる奴じゃねえか!」

「だいじょーぶ!合法だよ!現行法ではまだ規制されてない成分だから合法!
 単純所持なら捕まらないし、使用しても車や自転車で公道走らなければ合法!」

「脱法ハーブの理屈だろそれ!」

不良は信じられないものを見る目で一歩下がる。
空いた距離を同じだけ詰めたセーラの両目は、依然として不自然なほど輝いている。

「こ、こいつ……もうキマって……っ!?」

「煙草なんて不健康だし、不経済だよね!ニコチンが法規制されてないのは向精神作用がしょぼいからだもん!
 同じだけの多幸感を得るなら、吸引量の少ないこっちの葉っぱのほうが絶対健康的だよ!
 ほら、手を出して!笑顔になれる魔法をかけてあげる!優しい世界に一緒に行こう?」

ものすごい早口でまくし立てながらセーラはじりじりと不良に近づく。
不良はたまらずセーラを突き飛ばそうとするが、彼女は上体を逸らしてそれを回避した。

「やめろ、寄ってくんじゃねえ!誰がやるかそんなもん!」

「なんで?合法だよ?」

「合法ではねえよ!限りなく違法寄りの脱法ハーブだろ!」

「ノンノン。これは違法でも脱法でもない――言わば魔法ハーブ☆」

「小学生でももうちょっと練った御託並べるわ!!」

自分よりはるかに小柄な少女の放つ謎の圧力に、たまらず不良は火のついたままの煙草を投げつけた。
セーラは飛んでくるそれを一瞥さえせずに指先で捕まえて、ポケットから出した携帯灰皿に突っ込んだ。

「煙草のポイ捨てはダメだよ?」

彼女は携帯灰皿を、普段から身につけているのだ。
その事実に愕然とした不良は、震える手で自分の頭を抱えた。
そこに入れられる吸い殻は、はたして本当に煙草のものなのだろうか。

179 :山元 :2019/01/06(日) 02:39:15.57 ID:DeXN+Nn8.net
「なんてこった、これが類は友を呼ぶって奴なのか……?
 校舎裏で煙草なんか吸ってたから、もっとやべえ奴に絡まれちまったってのか?」

「大丈夫、すぐに煙草なんてやめられるよ。煙草じゃ満足できなくなるよ!」

「何も大丈夫じゃねえんだよっ!二度と吸うかこんなもん!」

不良はまだ中身のある煙草のパッケージを地面に叩きつける。
そしてドン引きしたままことの成り行きを見守っていた仲間達と共に、ダッシュでその場を逃げ出した。

「あーっ!だからポイ捨てはダメだってばぁー!」

セーラの声が聞こえなくなるまで、不良達は一切振り向くことなく走り続けた。
そしてこれは後の話になるが、生還した彼らは宣言どおり、二度と煙草を手に取ることはなかった。

チャチな非行に走る輩を今すぐ更生させる方法は簡単だ。
――ガチでやばい奴を目の当たりにさせれば良い。
明日は我が身というショッキングな事実によって、己の短慮に気づくことだろう。
セーラの献身的な説得によって、今日もまた若者たちが正しい道へと導かれたのであった!!!!!!

校舎裏に取り残されたセーラは、逃げていく不良を悲しげな目で見送った。
地面の煙草を拾い集めて、ため息をつく。

「"魔法のハーブ"っていうのは、ウソじゃないんだけどなぁ……」

つぶやきながら爪先で地面を小突くと、地面が突如として割れた。
生まれた局所的な地割れ、極小のクレバスに、彼女は拾ったゴミを放り込む。
もう一度地面を小突くと、怪物が咀嚼するように地割れが閉じて、ただの地面へと戻った。

セーラは、小奇麗な身なりが示すように、公立校の生徒に代表されるような貧困層の生まれではない。
彼女の家はむしろ、メトロポリスではかなり裕福な部類である。
本来であれば私立校で安全に学ぶことが出来たはずのセーラが、危険な公立校に通っている理由。
それは、他ならぬ彼女自身が、私立への入学権のない異能者だからだ。

有権市民クラスC、第二種特異能力『魔法』行使者。
セーラ・山元は――親の代から受け継いだ大地の力を司る、生まれついての『魔法使い』だ。

180 :山元 :2019/01/06(日) 02:40:22.21 ID:DeXN+Nn8.net


その日の夜、セーラはメトロポリス郊外にある彼女の家で家族と夕食をとったあと、
自室に籠もってハーブを炊いた煙を充満させて日課の"瞑想"を行っていた。

脳の報酬系を直接刺激する覚醒剤とは違い、ハーブによるトリップには技術が必要だ。
煙を吸えば誰でもいつでも簡単にハッピーになれるわけではない。
失敗すれば猛烈な吐き気や恐ろしい幻覚、絶望感や希死念慮に支配される、いわゆるバッドトリップも起こり得る。
トリップを実行するにあたって、使用するハーブの性質や特徴をしっかり理解し適切な使い方をしなければならない。

向精神性のハーブは、その生理作用によって3つの分類に分けることができる。
アドレナリンを増幅させて多幸感を得たり身体が元気になったと錯覚させる『アッパー』。
逆に精神の緊張をほぐし、極度のリラックス状態を創り出す『ダウナー』。
そして脳内の神経伝達をかき乱すことで楽しい幻覚を見ることができる『サイケデリック』。

いずれのハーブにも言えることは、ハーブの効果は『気持ちを増幅させる』ということ。
つまり、トリップの結果はその時の精神状態に強く影響を受けるのだ。

憂鬱で悲しい気持ちのときにアッパー系のハーブを炊いても、元気になるわけではない。
むしろ悲しみを増幅してしまって、極度の絶望や自己嫌悪、虚脱感に襲われることになる。

したがって、どのようなトリップを行いたいかを事前に明確にして、然るべき準備を整えておく必要がある。
たとえば楽しいトリップをしたいなら、明るく笑える映画や本を楽しんだ余韻の残るうちに。
リラックスして癒やされたいなら、ヒーリング効果のある音楽を流してソファーにゆったりと腰掛けながら。
トランスを通して天啓やひらめきを得たいなら、学術書や聖書などを精読することも有効だ。

こうしたトリップの為の『セッティング』の出来次第で、トリップの満足度は大きく左右されると言って良い。
だから経験豊富なトリッパーほど、同時に自分の精神を的確に把握し対処するメンタルケアの手腕も兼ね備えているのだ。

加えて、ハーブ自体の質も重要である。
混ぜものの多い粗悪品は、分量のかさ増しのために何を加えているかわかったものではない。
一定の純度を満たしたものを使わないと、必要な薬効を得られずに吸い続けて一酸化炭素中毒を起こすおそれもある。

ハーブを購入する際は、きちんと相場を確認し、実績のある売人を探して取引する必要がある。
極端に低価格でたたき売りされているハーブは、十中八九大半が不純物で構成されていると見ていいだろう。
ハーブの質を見極める目利きのセンスや、信頼できる売人とのコネクションも養わなければならない。

セーラが用いるのは大地の魔法で促成栽培した自家製ハーブだ。
この手の魔法製ハーブやドラッグは、メトロポリスでは特段珍しいものでもない。
大半は違法だが、セーラのものを始めとして法規制されていないものもある。

化学薬品とは異なり、魔法薬は既存の薬物類型に当てはめることが難しい。
これは魔法という能力自体に言えることだが、同じ呪文を唱えても、術者の資質によって効果は大きく変わるためだ。
モグリを含めればメトロポリスに何万人いるとも知れない魔法使いを全て当局が把握することなどできるはずもなく、
次から次へと生み出されるオリジナルの薬物に法規制が追いついていないというのが現状である。

181 :山元 :2019/01/06(日) 02:40:51.88 ID:DeXN+Nn8.net
今日の体調に合わせて自家調合したハーブがドンピシャでキマり、視界が極彩色に染まりつつある頃、
セーラだけ居る部屋に、突然彼女のものではない2つの声が響いた。

『I hate white human! Let's genocide in the metropoliz!』
『地脈にゴミを不法投棄しないで欲しいッピ!――とケツァルは言っている。
 私も同感だよレディ。地中の微生物が分解できないものは大地の滋養にもならない』

いずれもまるで"地の底から轟く"ような、低く渋みのある声だ。
彼ら、ケツァルとコアトルは、セーラと契約する古代の太陽神である。
セーラは仰向けに転がりながら、姿のない声に答えた。

「それって昼間のこと?不法投棄じゃないよぉ、ケッちゃんコアちゃん。あれは神様への貢物だよ」

『I like exotic beautiful girl. My sum is so big』
『貢物ならまた生贄の新鮮な心臓が良いッピ!――とケツァルは言っている。
 我が半身ながら度し難い趣味だ。生物の臓器など、蛋白質と水分、僅かなミネラルの塊でしかない。
 供物とするなら貴金属を捧げるべきだろう。同重量の金塊を要求したいところだ』

「絶対金の方が高いよぉ……心臓ならそのへんにたくさん歩いてるもん」

『だが、違法だ』

「だよね☆違法はダメだよ」

そのとき、ベッドの上に放り出していた携帯端末が電子音をかき鳴らした。
いい感じにキマっていたトリップを中断されたセーラは唇を尖らせながらそれを手繰り寄せる。
そして表示された文面を眺めて、小さく笑ってソファから飛び起きた。

「やったねケっちゃん!供物が穫れるよ!コアちゃん、準備して!」

『What the fuck!』
『了解だッピ!魔法少女に変身するッピ!――とケツァルは言っている。
 私も万端だレディ。我が写身に契約の口づけを』

「いっくよー!リリカル・ケミカル・サイケデリック☆フォームチェンジ!
 古代文明の太陽神よ、この手に悪をメッする力を!」

たった今考えたような雑な口上を述べながら、セーラは机の引き出しを開けた。
そこに安置されていたのは、鷲をかたどったシンボルが特徴的な古びたパイプ。
彼女は火皿に細かく裁断した何らかの葉を詰め、親指で表面を均す。
そして吸口を加え、マッチで火皿の中身に火を点けた。

燃焼した葉から抽出された薬効成分が煙に乗って肺に届き、粘膜から吸収される。
同時、セーラの身体が目を焼かんばかりの眩い光に包まれた。
光が収まったとき、そこに立っているのはもはやセーラ・山元ではないッ!

182 :山元 :2019/01/06(日) 02:41:31.17 ID:DeXN+Nn8.net
鷲の羽根を意匠としてふんだんにあしらった、色鮮やかな織物の衣装!
古の神々をモチーフにした、石製の仮面!
身の丈ほどの巨大な木の板に、黒曜石の破片を散りばめた剣!

太陽神ケツァルコアトルとの契約によってこの地に降り立った、神罰の地上代行者!
そして、メトロポリスを悪の手から守る正義の化身、ヒーロー!!
その名も――魔法少女テスカ☆トリポカ!!!

「コアちゃん、現場は?」

『アウターストリートとの境界にかかる可動橋だ。既に橋は封鎖し、ヴィランを追い込んでいるらしい。
 現場では既にヒーローが戦闘中。第一交戦者はリジェネレイターか、相変わらずフットワークが軽いな』

「内地側かぁ。じゃあすぐ駆けつけられるね!行くよっ『レイラインステップ』!」

自宅二階の自室の窓から、テスカは地面めがけて飛び降りる。
よく手入れされた芝生に彼女の身体が直撃するその刹那、地面が突如として割れた。
テスカは地割れの中に飲み込まれ、やはり何事もなかったかのように地面は元通りになった。

大地に小さな地割れを発生させ、地中を走る魔力の流れ"地脈"を開く魔法『レイラインアクセス』。
そして、地脈に潜り、その流れに乗ることで地続きの場所へ一瞬で移動する魔法『レイラインステップ』。
魔法少女となった今のテスカなら、一度に2kmの距離を跳躍することも可能だ。
この広いメトロポリスでヒーロー活動を続けるうえで不可欠とも言える魔法である。

端末に綴られていたのは、彼女が所属するヒーロー協会からの救援要請。
今宵もまた、心を邪悪に染めた者達が暴虐を奮っている。
古代の神に見初められ、正義にその身を焦がす……魔法少女の時間だ。



183 :山元 :2019/01/06(日) 02:42:11.15 ID:DeXN+Nn8.net


184 :山元 :2019/01/06(日) 02:42:26.26 ID:DeXN+Nn8.net
協会所属のヒーローには大別して2つの種類がある。
身分や能力、改造仕様表などを明かし、協会の正会員としてヒーロー活動にあたる者。
もうひとつは、"ヒーローとしての姿"だけを公開し、正体を隠して活動している者。

テスカは後者だ。
如何に人手不足のヒーロー協会であっても、未成年にヴィランとの戦闘行為を依頼するわけにはいかない。
法的な問題はもちろんのこと、何よりも世論がそれを許すはずもない。

一方で、得体の知れない流れの異能者やモグリの魔法使いにまで捜査逮捕権を与えなければならないほど、
治安維持のための人材が足りていないというのも事実だ。
毎晩のようにそこかしこで多発する超常犯罪に、対応できるヒーローがあまりにも不足している。
超常の能力を手にして、それを迷わず公の福祉に使えるような人間は、そう多くはないのだ。

敵性名称『ファイアスターター』とヒーロー『ザ・フューズ』の睨み合いから少し離れた位置。
土を操る異能者『ロックバイン』は、隆起させた石柱を展開し籠城していた。

金品強奪、政治的思想、自己表現に破壊衝動など、ヴィランが暴れる理由はさまざまだ。
しかし、ロックバインはその行動から目的が読めない。短絡的な犯行ではないということか。
狙っているのは時間稼ぎか、あるいはもっと遠大なる構想の上か。
いずれにせよ、彼が今やっているのは公共物の形状を勝手に変える器物損壊にほかならない。

「そこまでだよっ☆」

ロックバインの頭上、架橋の鉄骨に立つ一人の影!
表情の窺えない石仮面の下では、決然とした意志の炎がめらめらと燃えているッッ!!

「心に悪をもたらす月は、今宵も高く空の上。お天道様の光届かぬ、夜は優しくない世界。
 枕を濡らす星屑拭って、優しい夢を届けに参上!」

おお、見よ!鉄骨からロックバインを見下ろす影は、まさに夜駆ける正義の使徒!

「魔法少女テスカ☆トリポカ、法定速度で現着完了!
 ――違法行為は許しません!」

185 :山元 :2019/01/06(日) 02:43:09.73 ID:DeXN+Nn8.net
その手に掲げた木剣を突きつけるテスカを、ロックバインは一度見上げて、視線を前方に戻した。

「なんか言ってよぉ!!!」

しかしロックバインとて、ヒーローの闖入を無視できるわけではあるまい。
それでもなおこちらを見ないのは、彼が既に別のヒーローと戦闘中だからだ。

ヒーロー名『リジェネレイター』。
どれだけ酷い損傷を負っても自己修復して復帰する、不死身のヒーローだ。
……本当に不死身かどうかは、中身の顔が見えない以上、断言できないが。

『this is a pen』
『テスカちゃん、リジェネレイターを助けるっピ!――とケツァルは言っている』

テスカはヒーロー活動の現場で何度かリジェネレイターと協働したことがある。
その時の記憶を思い出すに、耐久面はともかくそこまで高火力な戦闘者ではなかったはずだ。
現に、硬質な岩肌と石柱で身を護るロックバイン相手に、攻め手を欠いているように見える。

「おっけーコアちゃん、あのヴィランの情報教えて!」

『敵性名称ロックバイン。土壌操作能力を持つ異能者だ。
 翻っては、コンクリートのような骨材に砂粒を使用している構造物も自在に操ることができる』

「うええ、地属性!モロ被りだよぉ!」

『相性は悪くあるまい。奴は土を操る能力者だが、こちらには大地を司る神がついている。
 不満ならあちらの改造人間、ファイアスターターとの交戦を勧めるが、どうだねレディ?』

「うーんでもあっちはあっちで大人のお姉さん同士で盛り上がってるから入りづらいよぉ。
 がんばえーお姉さん!心臓がまだ生身だったら残しといてねっ!」

とはいえ、改造人間がまっさきに改造する臓器は脳か心臓だ。
ほとんどの改造パーツは常人の血液では駆動しないし、専用の循環系を構築したほうが手っ取り早いからだ。

「よし!リジェネレイターの助太刀をしよう!
 ケっちゃんコアちゃん、力を貸して!『大地の結晶』!」

鉄骨を蹴って宙に身を投げたテスカは、飛び降りざまに手に持った木剣を地面に叩きつけた。
瞬間、黒曜石の棘が地面から無数に隆起し、ロックバインの石柱を押し上げてその場から排除。
砕け散る大量の黒曜石が塞いだ視界を縫うように、ロックバインの背後へ回った。

186 :山元 :2019/01/06(日) 02:43:26.41 ID:DeXN+Nn8.net
「ちぇすとぉーーーっ☆」

彼女が振るう巨大な木剣は、黒曜石の刃を散りばめた古代アステカの剣『マクアフティル』。
医療用のメスより鋭利な黒曜石の断片は、人間の頭部程度容易く切断する斬れ味を誇る。
その致死の一撃を、ロックバインの無防備な首筋めがけて叩きつけた。
金管楽器をぶちまけるような音と共に、マクアフティルの刃が全て砕け散った。

『oh...that's light』
「ありゃっ」

当然のようにロックバインは無傷。岩か何かを皮膚表面に散りばめているのだ。
テスカに対する彼の無防備は、他ならぬ自身の防御力への信頼の現れであった。

「あうぅ……やっぱ硬いよぉ……」

『斬撃に対する無類の耐性か。ザ・フューズがこれを相手にしなかった理由が明白だな。
 さてレディ、以前講義した対装甲目標の基本戦術は覚えているかね?』

「覚えてないよ!」

テスカ☆トリポカの戦闘用魔法は、マグマが冷え固まってできる黒曜石の生成と操作だ。
射出すれば恐るべき斬れ味の鏃と化す黒曜石だが、硬い相手にはいささか相性が悪い。
今の攻防でロックバインに与えられた損害は、石柱の排除と皮膚表面をわずかに傷つけただけ。

「テスカ子供だから難しいことはわかんないけど、これだけは知ってるよ。
 犯罪者は頭を死ぬまで殴り続けると……死ぬ☆」

瞬間、ロックバインの頭部が爆発した。
先刻叩きつけたマフアフティルから剥離し、ロックバインの皮膚表面に食い込んだ黒曜石の破片。
そこに眠るマグマのエネルギーを目覚めさせ、起爆したのだ。

「行くよ!リジェネレイター!!」

ロックバインは致命傷にこそならなかったものの、至近距離で爆発をうけて大きくよろめく。
強引にこじ開けた隙をねじ込むように、テスカはマクアフティルを再びロックバインの頭部に叩きつけた。

187 :山元 :2019/01/06(日) 02:43:41.81 ID:DeXN+Nn8.net
【ロックバインと交戦。食い込ませた黒曜石を起爆しダメージを与える】

188 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:10:12.74 ID:k5lnXp7n.net
ふとした時にヒーローになる前の事を時々思い出す。
私にとって大事な記憶。

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

一番最初に覚えてるのは研究室と思われる場所で違法薬物で気が狂ったような実験動物達の声と失敗した改造人間達の残骸。
そして私達を作ったと思われる研究者の憎悪の目だった。

「お前達は俺の最高傑作だ!」

潜入に特化する為限りなく人間の子供に似せ、あらゆる検査にまるで生身の体のように写り感じる機械の体。
室内戦を想定された近距離特化の兵装と体重相応の強靭なパワーとスピード。
長期の潜入に耐えるため直接的な電力を必要としない食事を利用した発電方法。
なんでもありのメトロポリスでも"Killing-Doll"達は高水準の技術力で造られていた。
体重だけがネックであったが能力次第で自分の体が変わるこの街では些細な問題だった。

「ヒーロー達よ覚悟するのだ・・・必ずお前らに・・・」

男が独り言をブツブツと呟く
なんでこの人はヒーローがこんなに憎いのだろうか。
この時の私にはそんな事を考えることもできなかったが。

「子供達よ・・・俺のかわいい子供達・・・」

ただの機械に語り続ける男の狂気を今でもはっきり覚えている。
科学者が持つべき壮大な夢ではなくただただヒーローを効率よく殺す事しか考えていない狂気を。
これだけの技術力があれば表の世界でもやっていけただろうになぜその生き方ができないのか。

「失礼します。博士作戦日程が決まりましたので作戦室に」

部屋に入ってきたヴィランの兵士が男に告げる。

「やっと決まったのか!あぁ!俺の子供達がヒーローを・・・」

男が作戦室にダッシュで向って行くのを見届けたヴィランの兵士は部屋を見通し次の作戦で使われるであろう私達を見つけて見つめる。

「おぞましい」

当たり前の反応だった。
殺すためだけに人間そっくりに作られた私達は味方からも畏怖される物であった。

189 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:11:40.04 ID:k5lnXp7n.net
その後私達はヴィランの施設に捕まって改造された哀れな子供達という体でヒーロー協会に送り込まれる事になった。

「君達大丈夫か!?」

その場にいた足が着かぬよう組織とはまったく無関係のザコヴィラン達を倒し罠とも気づかず私達に手を伸ばすヒーロー達に救助された。
ヒーロー達は私達を保護してすぐヒーロー協会の病院も兼ねている"ヒーロー総合学院”に連れて行った。
"ヒーロー総合学院”は現役ヒーロー達の拠点でありながら素質ある異能力者、つまりヒーローの卵の子供達を育成し、そしてそれに必要な医療施設が合体した当時最大の施設であった。
現役ヒーローから学べる上になにか問題が起きてもヒーローが駐屯しているためヒーローの卵達にとって最も安全な場所と思われていた。

「身体検査完了・・・特に異常は見当たらないね・・・体重が気がかりではあるけども」

診査結果を見ながら医者がそう告げる。
直接中を見なければあらゆる検査に生身の体で写る体は思惑通りに事を運ばせてくれた。
ヒーロー協会も怪しいとは思いつつも未成年と思われる少年少女の体を異常が見つからない以上どうこうする訳にもいかず精密検査はしたもののそれ以上はしなかった。

「建物を自由に探索していいよ!ただし外にはでないように!」

当時のヒーロー協会はテロに対する警戒度が低かった。
いやなにが起きても即座に鎮圧できるという余裕からであった。
施設にきてから一週間ほどで私達を施設内限定という条件で自由にさせてくれた。
当初の予定通り中の構造を把握するため私達は情報共有しつつ探索する事にした。

190 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:13:07.52 ID:k5lnXp7n.net
「ヒーロー訓練場・・・デスカ」

中に入ってみるとヒーローの卵達がヒーローになろうと必死に能力の練習をしている所だった。
一応データを押さえておこうと思ったその時大人のヒーローが私に気づく。

「えっと君はたしか施設から救助された・・・」

怪しまれるとまずい。
思考回路をフルで動かしていると子供達が一人また一人と回りに集まってくる。

「こんにちわ!貴方の名前は?」

「名前!?・・・名前ハアリマセン・・・一応施設デハ14番トヨバレテイマシタ」

突然の挨拶と質問にエラーがでそうだったがなんとか冷静に答える。
純粋な子供達のストレートな目線に負けそうになる。

「じゃあえーとえーと・・・じゃあ!フォーティーンね!」

とにかく困惑してる私を置いて子供達が勝手に盛り上がる。
先生は困り顔だが子供達はものすごく楽しそうだった。

「フォーティーン?モシカシテソレハ私ノコトデショウカ?」

「そう14番だからフォーティーン!」

なんて単純なのだろうか。
そしてなんで私に名前を付けるのだろうか。

「もうすぐ私達お昼休みなの!だからいっしょに食堂に行きましょう?」

あまりに慣れなれしすぎではないか。
しかし生徒達やこの施設の情報を得る絶好のチャンスであったのでついていく事にした。
子供達は色んな情報を教えてくれた。
大抵はどうでもいい先生の愚痴や子供達の性格やそんなものだったが。
自分達は6歳からここにいる事と成人して正式なヒーローになるまでこの施設の外には出られない事を教えてくれた。

「アナタ達ハ親に会エナクテ寂シクナイノデスカ?」

寂しくないわけない、と子供達はみな口を揃える親の所に帰りたいと。
でもヒーローになって困ってる人達を助けたいのだとまっすぐな目で言う。

「困ッタラ・・・ワタシモ助ケテクレマスカ?」

ありえない質問をする。
本来する必要のない質問と私が困るような自体になったら子供のこの子達ではどうすることもできないだろうから。

「もちろん!だって私達もうお友達でしょう?なら当然だわ!」

邪悪な目を見続けてきた私にはとっても眩しくて。
自分でもよくわからない感情と気分に支配される。

「さあご飯も食べ終わったし行きましょ!午後の訓練終わったら貴方の事も教えて頂戴?」

こうして私に始めてのお友達が沢山できたのでした。

191 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:14:02.79 ID:k5lnXp7n.net
子供達は私にとってもよくしてくれました。
気づいたら私の方から毎日遊びに行く様になりました。
その日も私はヒーロー訓練場の隅っこで子供達が訓練を終えるのをまっていました。

「フォーティーン待った!?」

「イイエ全然待ッテマセンヨ!ハイコレ飲ミ物デス」

「ありがとう!」

一ヶ月間もはや毎日の日課のように子供達の世話係をしていました。
でもその日常は爆発音によって終わりを告げる事になりました。

「緊急事態発生!緊急事態発生!正門で爆発を確認!複数のヴィランが施設内に突入しようとしてる模様!職員は直ちにヴィランの掃討に当たってください!」

私は思い出しました、いえ忘れようとしていたのかもしれません、私達がここにいる理由を。
正面に現れたヴィラン達は間違いなく陽動で本命は私達である事を瞬時に理解しました。

「君達はここにいて!大丈夫!ヴィランなんてあっという間にノックアウトさ!」

不安に支配されそうな子供達を勇気付けるために先生が子供達に言って部屋を出て行きました。

192 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:15:03.08 ID:k5lnXp7n.net
そして先生が部屋から出て行ったしばらく後に巨大な敷地内全体に聞こえるレベルの音が聞こえてきました。

「なんなのこの音・・・!?頭が割れる・・・!?」

その時私の体には子供達とは別の異常が発生しました。

「さあ目覚めよ私の子供達!殺しの時間だ」

私達にしか聞こえない音でそう告げる研究者の男の言葉。
その音をきっかけに施設内から銃声・爆発音・悲鳴が鳴り始めました。
他の"Killing-Doll"達が起動したのでしょう、私もこの子達を早く始末しなくては。

「アタックプログラム;ラピットファイア起動」

自分の意思で右手を変形しました。
当然です私はこの施設にヒーロー達を殺しに来たのですから。

「フォーティーン・・・?どうしたの・・・?え・・・その右手・・・」

子供達が変形した私の右手を見て驚きます。
ですがお構いなしに銃を子供達に向けます、サヨウナラ。

「ジットシテイレバ危害ハ加エマセン」

どうして?
なぜ自分は射殺対象を保護するような真似を?
早く射殺しなくては、役目なのだから。
理解不能理解不能直ちに射殺を開始しなくては撃ちたい!撃ちたくない!なぜ?ナゼ?エラー診断開始エラーナシ!ナシ!。

「フォーティーン・・・?」

一人の子供が私に触ろうとする。

「サワルナ!!」

子供を突き飛ばす、加減したとはいえ子供には十分なダメージだったでしょう。

「ゴメンナサイ!謝ル必要ハナイ!私ハオ前ラヲ殺シニキタノダカラ!ゴメンナサイ!」

支離滅裂な発言を繰り返しながら私は地面に倒れました。
吹き飛ばされた子供がよろよろ立ち上がり私に抱きつきます。

「大丈夫安心して?私達は敵じゃないよ・・・だから安心して!ね、怖くない怖くないよ」

震えながら少女は私にいう。
外から聞こえる爆音や悲鳴に自分も限界なのに、敵である私を、突き飛ばしたこの私を落ち着かせようとしてくれていました。

「私ハ・・・ゴメンナサイ・・・ワタシハ・・・」

「フォーティーンはなにがあっても友達だよ!だから大丈夫!私達を信じて?」

193 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:15:59.78 ID:k5lnXp7n.net
その時後ろの扉が勢いよく開きました。

「抹殺対象確認」

返り血と思われる血で真っ赤に染まったKilling-Doll達が入ってきました。
どうやらヒーロー達は正面のヴィラン達に精一杯で裏の私達にはまだ対処できていないようでした。

「14番ドウシテテコズッテイル?理解不能」

「不必要ナ機体ハイラナイ速ヤカニ処理推奨」

そういって私に銃を向けて発射しようとしました。

「ファイアボール!」

子供達の一人がKilling-Dollを攻撃しました。
私に当たるはずの弾丸は私の横を掠めていきました。

「理解不能!子供ガナゼ14番ヲ守ル?」

「モウイイ!全員デマトメテ攻撃開始!」

子供達が危ない!命令なんかどうでもいい!子供達を助けてほしい!だれか!
だれか?違う!今この場には私しかいない!
私は私だ!例え生みの親だろうと強制される必要はない!

「私ノ友達ニ触レルナ!」

そこからは無我夢中でヒーロー達が来るまでひたすら戦いました。
殆ど覚えていませんが本来のスペックを遥かに超えた力を発揮できていました。
そして私は後から来たヒーロー達に取り押さえられました。

194 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:17:19.96 ID:k5lnXp7n.net
次に気づいた時は椅子に拘束されてヒーロー協会のお偉いさんと思われる男の目の前でした。
黙って解体すればいいのにわざわざ拘束させてまで面会する意味はあるのでしょうか。
でも当時の私はそんなことよりも子供達が心配でした。

「解体サレル前ニ聞キタイノデスガ子供達ハ無事デショウカ?」

「こいつは驚いた!自分の心配よりまず子供の心配かい?」

「先ニシツモンニ答エテクダサイ・・・」

「おっとヘソ曲げないでくれよ・・・子供達は無事さ、あんたのおかげでな」

ヒーロー協会の人間がそういうならもう何も思い残す事はなかった。

「ヨカッタ・・・コレデ安心シテ解体サレル事ガデキマス」

「あーその事なんだがな・・・とりあえずコレをみてくれ」

男がモニターの電源をオンにすると施設にいた子供達が写った映像が流れ始める

【「お願いしますフォーティーンを殺さないでください!」】

子供達が私に助けられた事、一ヶ月友達としていっしょに暮らしていた事。
友達を殺さないでほしいという事を彼女達なりに訴える内容だった。

「理解デキマセン・・・ナンデ・・・ナンデコンナ・・・」

男が画面を切り替えると今度はニュースが流れ始める。
【大手柄!子供達を命がけで守った心優しき殺戮ロボット!敵か味方かヒーロー協会は沈黙】
理解が追いつかない!頭が混乱している中、男が言葉を続ける。

「悪いがここに連れてくる前にあんたの頭の記憶データを全て見さしてもらった」

男はさらに言葉を続ける。

「あんたの無実は証明された、あんたはだれも殺してないって事がな」

「ソレデモ・・・私ハ・・・貴方達ヲダマシテ」

「だがそれはアンタの意思でそうしたわけじゃねえ」

でもと続けそうになった私の言葉を男が遮る。

「たしかに今のあんたの信用は0に近い、いつ裏切るかわからねえからな・・・だがこの街は実力主義だ、だからもしアンタがこの街からヴィランを排除し続けて実績を上げれば・・・あんたを悪く言う奴はいなくなる」

男は不敵の笑みを浮かべる

「そこで、だ・・・あんたヒーローになってみないか?」

答えは考えるまでもなかった。
目からなにかが溢れてくる。

「おいおい最近のロボットは泣く機能もついてんのか!?これじゃおじさんが苛めたみたいじゃないか!やめてくれよ本当に!」

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

195 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:17:53.54 ID:k5lnXp7n.net
規制回避

196 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:18:48.44 ID:k5lnXp7n.net
そして3年後の現在。
No14は毎日のように現れるヴィランを捕まえて回っていた。
この日も警察にヴィラン達の身柄を渡し、一仕事終え喫茶店に入りNo14は牛乳を飲み座りながらパラパラと本をめくっていた。

「〔だれでも強くなれる一流プロヒーローが教える格闘術〕・・・ナカナカ悪クナイデスネ!コレカラモ、格闘術ハツカッテイキマショウ」

No14はあらゆる人間の事を学習し実践するのが好きだった。
この喫茶店で飲むことも〔一流ヒーローは仕事終わりに余裕を持って酒を飲む〕
という偏っている上に間違えていそうな人間知識からの行動であったが本人は割りと気に入っていた。
ちなみに牛乳なのは酒が入ると人間で言う所の(酔い)に似たエラーを起こしてしまうからである。

「ヒーローハ余裕ヲ持ッテ行動スル!基本デスネ!ソノ点私ハ完璧トイエルデショウ!」

周りの一般人に見られていると知らずに高い椅子のせいで地面に届かない足をぶらつかせ渾身のドヤ顔を披露していた。

「かわいい・・・」「頭なでても怒られないかな・・・?」「なんか椅子ミシミシ音してね?」

特にヒーロー人気をだそうと思っていないNo14の自然な言動が人気の理由だった。
ヒーロー人気とヴィラン退治の功績のおかげで3年経って彼女の悪口を言うものは殆どいなくなっていた。
そんな至福の時間を遮る様にヒーロー協会からの無線が入った。

>「メトロポリスのメインストリートに改造人間タイプのヴィランが出現した。
ヴィランはアウターストリート目掛けて時速300キロで走行しているが可動橋を封鎖して進路を塞ぐ。
ヒーロー各員は直ちに現場に急行してヴィランの制圧にあたってほしい。以上。」

時速300キロ?何かの聞き間違いかと思える無線の内容に少し戸惑う。
救援要請が入るという事は大物もしくは面倒な能力なのは間違いない、という事は時速300キロは本当の事なのだろう。
これはデカイ案件になると確信したNo14は本をしまい、牛乳を飲み干し店員にお礼をしてお金を置いて店を出た。
その時丁度空からヒーロー協会に帰還するために使う予定だった飛行型移動用ドローンがきたので、掴んで移動先をメトロポリスのメインストリートに設定する。

「大物ヴィランノツラヲ、見ニイクトシマショウ!」

手柄を立ててまた子供達に武勇伝を聞かせてあげよう。
そう思いながら自分の首の後ろ側にドローンに掴まれる為の専用パーツを装着し、ドローン掴まれクレーンゲームでアームに掴まれた景品のように空に消えていった。

197 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:20:45.89 ID:k5lnXp7n.net
「アレデスネ」

No14は橋の上でヒーロー達とヴィラン達を発見する。
どうやらもう交戦しているようだった。
ヒーロー協会との無線回線を開き味方と敵の情報連絡をする。

「ピピピ・・・データ確認・・・リジェネレーター・ザ・フューズ・テスカトリポカを確認シマシタ、スデニ交戦シテル模様デス・・・報告ニナイヴィラント思ワシキ人影が確認デキマス」

確認するとヴィランと思われる人影は2名。
無線では一人しかいないような口ぶりだったのに二人いるではないか。
もう少し情報連絡をどうにかならないものか、と無線を切った後に少し心の中でぐちる。
まだまだ相当な高さがあったがこれ以上ドローンの速度で降下すれば気づかれて攻撃される恐れがある。
のでNo14は飛び降りることにした。

「デハヴィラン退治トイキマショウ!」

首のドローンの連結用パーツを外し降下を開始する。
敵の強さが未知数の為落下途中で武装することにした。

「アタックプログラム起動:ラピッドファイア」

右手を銃に変形させ左手を下にして地面衝突に備えた。
大きな音と共に着地しそして銃を前に着きだしポーズを決めその場にいる全員に聞こえるようにできる限りな大きな声で。

「ワタシハヒーローNo14!私ガキタカラニハモウ問題アリマセン!ヴィランドモ!ソロソロオネンネノ時間ダゼベイビー!」

周りが静まり返った気がする。
自分で考えた最高にかっこいい登場だったのに。
もしかしたらかっこよすぎて言葉がでないのかも!完璧っていうのは辛いですね。

「いい加減にして!今私は機嫌が悪いの!」

ヒーローが設置したと思われるエクトプラズムの刃の中心にいる、自分よりロボットな見た目をした真っ赤なボディの改造人間が叫ぶ。
立ち位置的にトラップの刃を設置したのはのはザ・フューズだろうか。

「オヤ?同ジロボット仲間トシテ先ニ挨拶スルベキデシタネ!コンニチワ!イエ、コンバンワデショウカ?」

「私はロボットじゃないわ!」

「私ガ人間ダト言ッタホウガマダ信用サレマスヨ」

ヴィランのイラつきが見て取れる。
逆上してなにかされる前にこちらから攻撃する事にした。

198 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:22:04.77 ID:k5lnXp7n.net
「ムム・・・流石ヴィランダケアッテ逃ゲルノガウマイデスネ!」

トラップの刃に当たらないように銃を連射する。
元々室内戦用の精度の悪い銃であったがヒーロー協会の技術サポートと本人の訓練のおかげで中距離をこなせるまでの精度になっていた。
高速で動くファイアスターターに当てるのは中々難しい、がトラップの影響で本気を出せていないのか動きがぎこちない。
このまま続けていればいつか命中するのは確実であった。

「弾切レヲ期待シテイルナラ無駄デスヨ!コノ銃ニリロードハ必要アリマセン!」

本当の事を言えばあまり長時間の射撃は電力も熱も半端ないのでしたくはないが。
心の中で若干焦りつつも確実に追い詰めていく。
素早い動きで翻弄していたファイアスターターだったが脚部装甲に一発命中する。
ヒビのような亀裂がさらに大きくなる。

「素直ニ投降ヲ推奨シマス!アナタデハ私達ニハカテマセン!」

「だれがアンタみたいなガキに・・・!」

ファイアスターターはNo14から距離を取りつつ加速する。
恐らく強引にトラップ外にでてもう一人のヴィランと合流するつもりだろう。
しかしその行動は想定内であった。

「アタックプログラム解除」

ファイアスターターの動きから推測するに、トラップの威力が未知数の為か最大限の警戒をしてると思われる。
ならトラップを破壊しながらの強行突破は考えにくい。
やるとすればトラップの層が比較的薄い部分からの脱出しかない。
No14は武装を解除し人間ではありえないような速度で走り出す。
通常時ならスピードでは絶対勝てないだろう、だが行き先が限定されていて尚且つトラップを避ける為最大スピードは出さずさらに無理な体勢で突っ込んでくるはず。
そして予想通りトラップの隙間を突破し予想通りの勢いで予想通り無理な体勢で飛び出してきたファイアスターターを脚を掴む。

「驚キマシタ?」

脚を捕まれたファイアスターターは少し怯んだが勢いそのままに振りほどこうと反撃を試みる。
しかしNo14は隙を見逃さず両手で脚を掴んだままその場で高速回転する。

「発射!」

小柄な見た目からは想像できないほどの力でファイアスターターを振り回しながら狙いを定めエクトプラズムの刃のトラップ目掛けて投げる。
ファイアスターターは空中で刃に当たらないように体を捻りながら吹き飛んでいく。
しかしNo14の攻撃はこれだけでは終わらない。

「アタックプログラム:ラピットファイア」

投げた後即座に右手を変形させ銃で追撃する。
刃を避けるのが精一杯のファイアスターターに銃弾が連続命中する。
弾丸は装甲を確実に削っていく、が決定打にはならなかった。
エクトプラズムの刃の中心に着地し立ち上がったファイアスターターはこちらを睨み付ける。
装甲の所々が剥げ綺麗な真っ赤なボディは見る影もなかった。

「殺してやるわ・・・絶対に」

No14とザ・フューズに対する殺意をむき出しにする。

「ヤット人間ラシクナリマシタネ?」

【ファイアスターターと戦闘 銃弾が複数命中、その後一度トラップから脱出されるもトラップ内に投げ返す】

199 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:37:30.33 ID:d01qxtaz.net
二人のヴィランに睨まれながら、ヒーローは膠着状態の維持に努めた。
如何に装甲服を着込んでいると言えど二人のヴィランから同時攻撃を浴びれば無傷では済まない。
道路で高速移動するファイアスターターを見かけて慌てて追跡した結果、まさかこんな事になろうとは。
不意に腕時計型端末が明滅する。オービットが機械音声を発し、リジェネレイターに忠告した。

「気をつけろ。特にファイアスターターって奴のスピードは一筋縄じゃ行かないぞ。
 それにしても……奴は一体全体何をそんなに急いでるんだ?」

「まずはこの状況を切り抜けるのが先だ……!」

「オーケーオーケー。やるぞ、リジェネレイター!」

オービットの機械音声に合わせて一気に岩肌の男ロックバインとの距離を詰める。
リジェネレイターのスーツには各種機能が搭載されており、パワーアシスト機能も例外ではない。
身体能力補正を効かせつつ、半身を捻らせて右腕を振りかぶり、腹部目掛けて掌底を放つが――。
突如地面が隆起して円錐状の針となり、リジェネレイターに襲い掛かる。

「うおぉっと!!?躱せリジェネレイター!」

「もう躱した……!」

寸での所で背後に跳躍し、隆起した円錐を回避。
そのままバックステップで距離を開けると、開いた空間を炎が襲った。
仮に油断してその場に立ち止まっていれば火傷では済まなかっただろう。

「うひゃ〜危なかった。お前攻めあぐねてないか?
 あいつら近付かせる気ゼロだぜ」

六代目リジェネレイター、神籬明治の戦闘技術はヒーロー基準で可もなく不可もない。
彼がヒーロー協会に目をつけられたのは生まれ持って備わった共感覚能力のお陰だった。
共感覚――エンパスとも呼ばれるその能力は、他者の感情を読み取る超能力だ。

即ち喜怒哀楽、悪意といったものを敏感に察知できる事。これが神籬の生まれ持った才能である。
この能力を利用すれば遠く離れた人の悪意や恐怖をいち早く察知して迅速に犯罪に対処する事も、
敵の悪意、敵意を"読み取って"素早く攻撃を躱すことができるのだ。

「リジェネレイター、今ヒーロー協会のデータベースにアクセスした。手短に伝えるぞ。
 奴は能力者で構成された非合法組織ミームの能力者で、能力は土壌操作の『テラキネシス』だ。
 理解不能。あいつが操ってたのめっさコンクリートなんですけど!」

200 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:38:11.90 ID:d01qxtaz.net
仮面の奥でもそもそとリジェネレイターが呟いた。

「恐らくコンクリートに含まれている砂利を操っているんだろう。
 そうすれば奴の出現の仕方も、攻撃の仕方にも説明がつく」

「なるほどね。そうか、あの岩肌は能力で土を身に纏ってるんだな。
 天然の鎧って訳か……随分お洒落なコーディネートですね!」

冗談を飛ばしながらも、オービットの機械製の頭脳はずっと戦況を分析していた。
結果、今の神籬の実力では劣勢を覆して二人を鎮圧するのは難しいという計算を弾き出した。
だからといって彼を一概に攻められはしない。擁護すればリジェネレイタースーツにも原因がある。
なにせこのリジェネレイタースーツversion1.0.6は携行性に優れる反面、全く武器に乏しいのだ。
他のヒーローに比べて完全にステゴロ仕様だから接近戦を仕掛け続ける他手段がない。

ならばここは少しでも時間を稼いで他のヒーロー達の救援を待つのが得策だ。
そして現れたのは四肢から爆炎を放ちながらこちらへ突っ込んでくるひとつの影。
人影は炎のヴィランに蹴りを浴びせて地面に着地した。

>「……なんだ。誰かと思えば、目立ちたがりの三流ヴィランか。来て損したかもな」

リジェネレイタースーツの仮面に内蔵されているセンサーを通じて援軍の姿を捉える。
黒いキャットスーツと真っ赤なボディスーツ、炎を模したドミノマスクといった出で立ち。
仮面のヘッドアップディスプレイが弾き出した判定は――

「――げ。悪徳ヒーローのザ・フューズじゃねぇか……」

オービットは顔を顰めた様な絶妙な機械音声を発して黙ってしまった。
界隈の端で戦い続けるかのリジェネレイターもザ・フューズの悪名は聞き及んでいる。
その出自もさる事ながら、未だに悪党とつるんで詐欺を働いているとか――。
その揉み消しを自身の能力を以て公然と働いているとか――。

とにかく黒い噂が絶えない悪徳ヒーローだった。
こうなってはヒーロー協会の審査基準が疑問視されるのも無理はない。
同業者の中にはザ・フューズを信用のできないヒーローとして蔑む者までいるという。

>「怪我したくないでしょ?どいてくれないかしら。手柄ならそっちにもいるわよ、ほら」

>「……なるほど。目立ちたがりのお前が、どうしても早くここから逃げたい。
> 何かは知らんが、なかなか重大な任務に就いてるようじゃないか、え?」

「ご理解頂けたようで何よりね。どいてくれるかしら?
 尻尾を巻いて帰るなら今の愚行、寛容な態度で許してあげる」

蹴りを食らったあたりを払う仕草をとってファイアスターターは余裕の表情を見せる。
速さに絶大な自信を持つ彼女は、戦闘においても同様の自信を持っていた。
彼女は時間の無駄を嫌うので言葉に偽りはない。
ザ・フューズにその意思がないことを見越して言っただけで。

201 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:39:45.16 ID:d01qxtaz.net
>「目立ちたがり屋で、口が軽い。とことん三流だな、お前は」

>「……あなた、生意気ね。たかが生身の人間のくせに」

瞬間、蹴撃とエクトプラズム・プレートが激突した。
プレートは硝子細工のように脆く砕け散り、追加で張った防壁も同様に車輪つきのハイキックが蹴り抜く。
ザ・フューズは衝撃で後方へ吹き飛ぶも、ファイアスターターの脚部装甲には浅い亀裂が走っていた。

>「……私のボディに傷を付けるなんて、許せないわ」

ザ・フューズとファイアスターターが睨み合う。
態勢を崩したまま苛立ちを隠さずに言葉を返した。

>「ほざけ。奪い、傷つけるのはお前達だけの特権だとでも?」

ザ・フューズが空間を撫でると空中に次々とエクトプラズムの刃が出現した。
蚊帳の外のリジェネレイターとオービットもすぐさまその意図を察した。
ファイアスターターの逃走経路を封じ、彼女自慢の速さを殺す気なのだろう。

>「お前達は所詮、社会の寄生虫だ。まともに機能している社会があって初めて存在出来る。
> そんな連中が、許さないだと?思い上がるなよ」

なるほど、高速で鋼鉄の如き刃に突っ込めば無事では済まない。
ファイアスターターはザ・フューズの言葉を聞きながら考えに耽った。
すなわち眼前のヒーローを如何にしてぶち殺すかの思案だ。

>「思い知らせてやるぞ。正義は勝つという事をな」

「貴女に抱えてる正義なんてあったのね、知らなかったわ。
 お生憎様、思い知るのは貴女の方よ詐欺師さん」

カツカツと車輪の踵で地面を叩いて頭部の毛髪上の排気孔を撫でる。
その声色からして苛立ちを隠せずにいるようだ。

202 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:40:37.80 ID:d01qxtaz.net
一方で、リジェネレイターはザ・フューズが言葉に宿した憎悪をその能力で感知してしまっていた。
言葉に宿した冷たい憎悪。それこそが彼女がヴィランと戦う理由なのだろうか――。
心を閉ざした彼にとって他者の気持ちを感じることなど負担でしかなかった。
だが共感覚(エンパス)という能力は感情を意図しない形で読んでしまう。

「ザ・フューズ、その……なんというか……」

「そっちは任せたぜ。こっちのロックバインってのは俺らでやる。構わないよな?」

リジェネレイターの拙い喋りを遮ってオービットが強引に話を纏める。
とにもかくにも、結果としてリジェネレイターは彼女を信用する事にした。

何故ならば――ヒーローとは所詮人々が生み出した偶像に過ぎず、その形態もまた様々であるからだ。
その行動原理がどうあれ、彼女が民衆から支持され、ヴィランと戦い続ける内はきっとヒーローなのだろう。
それが模範的なヒーローの姿なのかどうかはリジェネレイターにも判然とはしないが。

炎を操る両者より少し離れた位置で、ロックバインは持ち上げた円錐を石柱に変えて防御態勢に入った。
態度も手段もまるで守備的な彼は、能力を強化するため脳手術の影響で思考まで散漫になっている。
そんな彼に与えられた任務は、組織を更に拡充するべく女改造人間が入手したケースを奪取することだった。
ケースの中身が何かまでは教えられていない。ただ、未来の技術に関するものだと教えられていた。

「今度は守りに入るつもりか、そうはさせないぞ。
 リジェネレイター、『パワーシリンダー』を使え!!」

説明しよう。パワーシリンダーとはリジェネレイタースーツ唯一の固定武装である。
右腕に増設されている円筒型電動アクチュエーターを起動し、通常の3倍のパワーで攻撃する格闘装備だ。
リジェネレイターがシリンダーを起動すると、右腕装甲の基部が光を帯びた。

「セット完了!一気にぶち抜いちまえ!」

地を蹴って肉薄すると、石柱目掛けてアッパーカットの要領で拳を放つ!
豪快な破砕音を響かせながら粉々に飛び散る石柱が、時を巻き戻したかのように修復していく。
恐るべきはその耐久性ではなく能力による修復性能!石柱は瞬く間に元の状態に戻ってしまった。

「前言撤回。俺達の火力じゃ突破できないな……誰か応援求むー」

これではいかなる攻撃もロックバインを守る石柱を破壊し得ない。
ロックバイン自身はやはりただ口を閉じて様子を窺うだけで、反撃に転じる素振りを見せなかった。
何かを狙っているのか――あるいは待っているのか――ただ防御の姿勢を維持するのみだ。

>「そこまでだよっ☆」

203 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:42:11.76 ID:d01qxtaz.net
ロックバインとの攻防が膠着し始めた頃、声のする頭上を見上げればまたもや一つの影。
街灯に石仮面が照らされて、双眸に燃ゆる強い意志を眼下の二人は認めた。

>「心に悪をもたらす月は、今宵も高く空の上。お天道様の光届かぬ、夜は優しくない世界。
> 枕を濡らす星屑拭って、優しい夢を届けに参上!」

「おおっ、あの声は……!」

オービットが喜色ばんだ声をあげた。

>「魔法少女テスカ☆トリポカ、法定速度で現着完了!
> ――違法行為は許しません!」

魔法少女テスカ☆トリポカ。その名の通り魔法を扱う魔法少女だ。
リジェネレイターとも共同戦線を張った事のある仲でお互い見知ったヒーロー同士だ。
如何なる原理で変身し魔法を行使しているのか科学の塊たるオービットには判断つきかねるが、
このAIのデータ上では過激だが普通のヒーローに該当していた。

>「なんか言ってよぉ!!!」

テスカの華麗なる口上を聞いて尚、ロックバインは喋らない。
ヒーローが一人増えたことで警戒心を増し、石柱の中に閉じ籠ったままだ。
が、その防御策もテスカ☆トリポカの魔法の前には無力だった。
地面から隆起した黒曜石の棘が石柱を押し上げ、籠城を強引に剥がしたのだ。

>「ちぇすとぉーーーっ☆」

木剣を首筋に叩きつけられ、しかしロックバイン本体は無傷。
何故ならロックバインの皮膚は硬度の高い岩を散りばめた『土の鎧』で守られている。

>「テスカ子供だから難しいことはわかんないけど、これだけは知ってるよ。
> 犯罪者は頭を死ぬまで殴り続けると……死ぬ☆」

204 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:43:18.59 ID:d01qxtaz.net
テスカの言葉から次の瞬間、ロックバインの頭部が爆発した。

>「行くよ!リジェネレイター!!」

ロックバインが大きくよろめき、隙を突いてマクアフティルが再び叩きつけられる!
呻き声を上げながらよろよろと二歩、三歩と後退するロックバイン。
流血し、頭部の地肌を晒した彼は頭を押さえたまま膝をついた。

「よ〜し俺達も行くぞ!こっから劇的に反撃開始だ!」

「何かアイデアでもあるのか?」

「ない。後は頼んだぞ」

オービットの調子の良い返答が返ってくるや、何か大きな音が辺りに響いた。
音源の方向へ振り返るとまだ年端も行かない少女が何処で習ったのか決めポーズをして突っ立っていた。

>「ワタシハヒーローNo14!私ガキタカラニハモウ問題アリマセン!ヴィランドモ!ソロソロオネンネノ時間ダゼベイビー!」

どうすればいいのか分からずにリジェネレイターとロックバインは口を閉ざした。
少し間を置いて、オービットが腕時計型端末を明滅させる。

「……正義に目覚めた殺戮ロボット、K-doll No14だな。
 あどけない容姿と天然ぶりで人気を集めるロボットヒーローだ」

>「いい加減にして!今私は機嫌が悪いの!」

苛立っていたところに更に乱入者が現れ、ファイアスターターは怒りを爆発させた。
こんなところで立ち止まっている場合ではないのに、状況がそうさせてくれない。
彼女は遅いことが大嫌いなのだ。こんな任務早く終わらせて然るべきなのに。

205 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:45:22.08 ID:d01qxtaz.net
掛け合いもそこそこにロボットヒーロー、No14が女改造人間目掛けて銃口を向ける。
エクトプラズムの刃に当てないよう銃弾を連射し、ファイアスターターは刃を縫って弾丸を躱す。

>「素直ニ投降ヲ推奨シマス!アナタデハ私達ニハカテマセン!」

>「だれがアンタみたいなガキに・・・!」

吐き捨てながらロックバインと合流すべく強引に刃の圏内から脱出を試みる。
が、脱出しようとした瞬間No14に脚を掴まれ投げ飛ばされた。
更に放たれた銃弾の雨を浴び、ファイアスターターの装甲がガシガシと削られていく。
新品の車のようにメッキで輝いていた赤い装甲は見る影もなく、塗装が剥げ落ち醜い姿となっていた。

>「殺してやるわ・・・絶対に」

>「ヤット人間ラシクナリマシタネ?」

No14の煽りにいい加減冷静さを取り戻したのか、
溜息を吐いてエクトプラズムの刃の上でひとつのびをした。
戦況は彼女に大きく不利だ。数的不利な上に速度も殺された。
勝つための道筋は少ない。相手はどちらも容赦を知らないヒーローだ。

「ねぇ、話を変えるけれど。メトロポリスの能力格差って酷いわよね。
 特別な才能を持たない者が良い学校へ入れて、特別な才能を持つ子が良い学校に入れないの。
 嘆きの極みよね……歪んだ社会構造だわ。メトロポリスには、持たざるが故の特権階級があるのよ」

ファイアスターターはエクトプラズムの刃の上で滔々と語りはじめた。

「けど、私の組織の言うところでは特権階級は進化した人類な訳。
 つまるところ、私達のような人間が――社会の頂点に君臨すべきだと思わない?」

だから既存の社会を破壊し、自分たちに都合の良い社会を再構築する。
それが新興組織レオニダスの目的であり、必要とあらば大量殺戮やテロも厭わない。
人類を進化させ、進化した人類のためなら手段を選ばない。

「そのためには力が要る。金も、権力も、技術もね。
 ボスの為にも、こんなところで立ち止まってる訳にはいかないの」

抱えていたケースを天高く放り上げると、ファイアスターターが跳躍した。
次いで踵の車輪が高速回転し、エクトプラズムの刃の上を器用に滑る。
再び跳躍。別のエクトプラズムの刃に飛び移り――車輪で着地しながらまた飛び移る。
サーカスさながらの、空間に配されたエクトプラズムを逆利用した三次元機動だ。

「ケースが地面に落ちる瞬きの間に、貴女達を殺してあげる!」

立体的な動きはヒーロー達を撹乱し、容易に姿を捕捉させない。
最高速度こそ劣るが、現状選択し得る最も最適な移動方法だ。

「――燃え尽きなさい!私の自慢の炎でね!」

一瞬の隙を突いて、頭部に生える毛髪上の排気管から火炎放射を吐き出した。
炎はエクトプラズムごとザ・フューズとNo14を飲み込もうと襲い掛かる。
鉄をも溶かす紅蓮の炎は、生身の人間は勿論ロボットが食らっても無事では済まない威力だろう。

206 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:47:58.90 ID:d01qxtaz.net
時を同じくして、もう一人のヴィランとの戦いも進展を見せていた。
リジェネレイターはロックバインの背後に素早く回り込むと、力技で組みつく。
いわゆるチョークスリーパーだ。このまま首を絞めあげ失神に追い込む算段である。

「もう戦うのは止せ。君の目的は分からないが、これ以上の戦闘で命の保証はしかねる」

「テスカ☆トリポカはあれで過激派だ。大人しく降参した方が身のためだぞ。
 警察のとっつぁんの代わりにかつ丼差し入れてやるからよ。取り調べではちゃんと喋るんだぞ……!」

「…………!」

敵意の増大を感じてリジェネレイターは素早く飛び退いた。
ロックバインから増大する敵意を危険だと判断して咄嗟にチョークスリーパーを解除したのだ。
見れば『土の鎧』から岩の針のようなものが飛び出していた。
あのまま仕掛け続けていれば串刺しになっていただろう。

ロックバインが土壌操作を再び行使する。
すると、途端に地面が砕け地盤が大きく沈下した。
足場を失いリジェネレイターの態勢が崩れる。
敵意は感知できても、どんな攻撃が来るかまでは予想できない。

「しまった!」

足下が崩壊し地中へ自由落下するリジェネレイター。
その最中で彼は見た。海側の道路から立ち昇る泥の雪崩を!

(……そうか!積極的に攻めてこなかったのはこれが理由……!)

そう、彼はずっと土壌操作で海底の土や泥を集めていた。
そして一気に解き放ち――ヒーロー達を生き埋めにする作戦だったのだ!


【ファイアスターター:エクトプラズムの刃を逆利用して三次元機動からの二人に火炎放射。
 ロックバイン:地盤を沈下させて態勢を崩す。海底の土や泥を集めて雪崩を作り生き埋めにする作戦】

207 :ザ・フューズ :2019/01/13(日) 23:21:15.27 ID:tLRulIu9.net
>「貴女に抱えてる正義なんてあったのね、知らなかったわ。
  お生憎様、思い知るのは貴女の方よ詐欺師さん」

「……そうやって、野良犬のように吠えていろ。お前はもう檻の中だ」

ヴィランと向き合い、啖呵を切り、しかしザ・フューズは動かない。
ただファイアスターターから目線を逸らさず――形成され続ける超能力の刃。

>「そっちは任せたぜ。こっちのロックバインってのは俺らでやる。構わないよな?」

「構わん。こちらはじきに終わるだろうがな」

ファイアスターターの蹴りは二、三枚程度の刃であれば粉砕可能。
だがそれは十分な加速を得た後での話。
ザ・フューズの刃が配置されているのは全て、頭部や腕、胴体や膝の動きを妨げる高さ。
徹底して、ファイアスターターにトップスピードを発揮させない算段。
ファイアスターターも蹴りや裏拳によって刃を破壊してはいる。
とは言え、刃の檻の中で打撃を繰り出す必要があるファイアスターターと、超能力を行使するだけのザ・フューズ。

手数の違いは明白。
ファイアスターターが自由に振る舞える空間は加速度的に削り取られていく。
このまま完全に身動きを封じ、然る後に加熱、加熱、加熱、焼殺。
それがザ・フューズのプラン――だった。

不意に、上空から飛来する小さな影。
そして響く、コンクリートの破砕音。
飛び散る破片に目を細めたザ・フューズの目に映ったのは――白いワンピースの少女。

>「ワタシハヒーローNo14!私ガキタカラニハモウ問題アリマセン!ヴィランドモ!ソロソロオネンネノ時間ダゼベイビー!」

ヒーロー・ナンバーフォーティーン。
一時期話題になった、『自我の目覚めた元、殺人ロボット』。

>「いい加減にして!今私は機嫌が悪いの!」
 「オヤ?同ジロボット仲間トシテ先ニ挨拶スルベキデシタネ!コンニチワ!イエ、コンバンワデショウカ?」
 「私はロボットじゃないわ!」
 「私ガ人間ダト言ッタホウガマダ信用サレマスヨ」

No14が先手を取って銃撃を開始。
元殺人ロボットだけあって、その弾幕は苛烈。
ファイアスターターを翻弄し、痛打する。獣が獲物を狩るがごとく。

>「殺してやるわ・・・絶対に」
>「ヤット人間ラシクナリマシタネ?」

刃の檻に強引に放り込まれ、全身に銃弾を叩き込まれ。
傷だらけのファイアスターターが静かに呟く。
No14は多大な損傷を彼女に負わせた。

しかし――それによってファイアスターターはかえって冷静さを取り戻していた。
エクトプラズムの刃の上に飛び乗り、体勢を立て直し――溜息を一つ。
気づかれている。張り巡らせた罠は、既に浮遊する鉄板以上の脅威ではないと。
ザ・フューズの右瞼に生じる、小さく、一度きりの、神経質的な痙攣。

208 :ザ・フューズ :2019/01/13(日) 23:22:07.22 ID:tLRulIu9.net
>「ねぇ、話を変えるけれど。メトロポリスの能力格差って酷いわよね。
  特別な才能を持たない者が良い学校へ入れて、特別な才能を持つ子が良い学校に入れないの。
  嘆きの極みよね……歪んだ社会構造だわ。メトロポリスには、持たざるが故の特権階級があるのよ」

ファイアスターターはなおも余裕の態度で語り出した。
ザ・フューズが嘲笑の意を込めて鼻を鳴らす。

>「けど、私の組織の言うところでは特権階級は進化した人類な訳。
  つまるところ、私達のような人間が――社会の頂点に君臨すべきだと思わない?」

「いいや。まったく」

加えて返答に宿るのは露骨な不快感。
犯罪者集団が決まって謳いたがる大義名分、その悪臭に耐えかねたのだ。

209 :ザ・フューズ :2019/01/13(日) 23:28:07.61 ID:tLRulIu9.net
>「そのためには力が要る。金も、権力も、技術もね。
  ボスの為にも、こんなところで立ち止まってる訳にはいかないの」

「……それで?お前達が社会の頂点に立った後はどうする?
 強盗や脅迫じゃ経済は回せない。
 時速300kmで走れようと、社会に貢献出来なければ何の意味もない」

返答はない。
ファイアスターターが脚部ホイールから炎を噴射。
舞い踊るかのように全身を一回転――その勢いで天高く投げ放たれるアタッシュケース。

銃火の嵐に晒されても庇い続けていた、彼女の最大の足枷が放棄された。
それはつまり――彼女の全力がついに発揮されるという事。

>「ケースが地面に落ちる瞬きの間に、貴女達を殺してあげる!」

ファイアスターターが地を蹴った。
瞬間、脚部から噴射される火炎。
先ほどまでのような、ジェットエンジンめいた炎ではない。
銃弾が爆ぜるかのような、一瞬の、しかし強烈な炸裂。

それだけでは、時速300km超の最高速度は発揮し得ない。
だが代わりに発揮されるものがある。瞬発力だ。
一瞬の内に加速し、また次の一瞬で別方向へと加速。
その目まぐるしい動きは、常人の――ザ・フューズの目では追い切れない。

加えて、ザ・フューズが周囲に展開した刃の檻。
それを逆に足場として繰り出される立体機動。

ザ・フューズは完全に翻弄されていた。
堪らず、遠隔発火で動きを止めようと試みる――だが叶わない。
ファイアスターターの瞬発力ならば、導火線の火花を見てから十分に回避出来てしまう。
そして後天性超能力者であるザ・フューズには、完全な遠隔発火が出来ない。

ならば、再びエクトプラズムで檻を形成――それも叶わない。
先ほどファイアスターターを封じ込めた時とは状況が違う。
先手を取り、なおかつ用いたのは彼女にとって初見の能力。
だからこそ封じ込めは成功したのだ。

つまり――ザ・フューズの攻撃は、ファイアスターターには最早通じない。

>「――燃え尽きなさい!私の自慢の炎でね!」

そして上空から降り注ぐ、超高温の火炎。
ザ・フューズは咄嗟に右手を頭上へ――エクトプラズムのシールドを展開。
炎は遮断され――しかし直後に響く硬質な破砕音。

蹴り砕かれ飛散するエクトプラズムの破片。
ザ・フューズの目前に降り立つファイアスターター。
広範囲の攻撃により防御を強いて、そのまま炎を目眩ましに距離を詰める。
シンプルで、しかしファイアスターターの性能が十全に発揮される戦術。

ザ・フューズが咄嗟に左手を前へ――狙いは人体発火による近距離爆撃。
直後、折り紙のごとくひしゃげる、ザ・フューズの左手。

210 :ザ・フューズ :2019/01/13(日) 23:29:47.58 ID:tLRulIu9.net
「お」

耐衝撃繊維スーツを物ともせず五指を砕いたのは、ファイアスターターの爪先。
機械の爪先に配置された噴射口が火を噴く。
生じるのは爆炎による強烈な追撃と、超高速の返し刀。

「そ」

膝を支点に半円を描いた爪先がザ・フューズの胸部に突き刺さる。
ボディアーマーが容易にひび割れ、衝撃は更にその奥にまで貫通。
ザ・フューズの肋骨が砕かれ、それだけには留まらず、肺が破裂。

「い」

更に響く四度の噴射音――火花のごとく二度閃いた下段前蹴り。
ザ・フューズの膝が蹴り砕かれる。

「わ」

一際大きな噴射音――放たれる上段蹴り。
自動車を容易く蹴り上げるファイアスターターの、渾身の一撃。

211 :ザ・フューズ :2019/01/13(日) 23:32:21.06 ID:tLRulIu9.net
ザ・フューズは両腕で頭を庇った。
蹴りが見えていたのではない。
せめて致命打を受けまいという足掻きだ。

そして――その足掻きは成功した。
ファイアスターターのアダマス合金製の下腿が、ザ・フューズの両腕に直撃。
骨の砕ける音と共に、彼女は弾き飛ばされた。

「……無駄な足掻きね。即死した方がいっそ楽だったでしょうに」

これが、ファイアスターターの全力であり、全速力だった。
たった一言、「遅いわ」と呟く間に放たれた五連撃。
その一撃一撃が、自動車を蹴り飛ばし、耐衝撃スーツ越しに人間の骨を砕くほどの威力を秘めていた。

むしろ今までが上出来過ぎたのだ。
ファイアスターターは重さと、速さと、力強さ、その全てを兼ね備えた改造人間。
挑発を受けて動きが単調になっていたり、
自慢のドレス――真紅のボディを傷つけたくないという無用なこだわりがなければ、こうなるのは当然の結果だ。

「だけどあなたは、あれよりもっと長く苦しめてから殺すから」

No14に振り返り、凄むファイアスターター。
その足元にかかる巨大な影。
見上げれば、視界に映るのは空ではなく、海に面した道路の下から競り上がる泥。

ロックバインによる土壌操作。
ヒーロー全員と商売敵を一網打尽に出来る会心の一撃。
しかし蠢く大質量を目にしても、ファイアスターターの表情に驚愕の色はない。
泥の雪崩が降り注いでくるまで、短く見積もっても十秒弱。

それだけの時間があれば、ファイアスターターがNo14を仕留めるには十分すぎる。
むしろ十秒足らずしかないからこそ、彼女は勝利を確信していた。
なにせファイアスターターの速力であれば、泥が着弾するその直前まで戦闘行動が取れる。
つまりNo14が土砂から逃れ、あるいは身を護る準備が出来ないよう、ぎりぎりまで妨害が可能。

九秒あれば、ファイアスターターは数十発の蹴りを放つ事が出来るだろう。
自動車を蹴り上げ、人間の骨を跡形もなく粉砕するほどの蹴りを、数十発。

速度で翻弄し、しこたま蹴りつけ、最後に泥の底に沈むNo14を見送る。
ファイアスターターの予定は極めて単純だった。

「最後の一秒まで、じっくりと、いたぶってあげる」

そして――

「……粋がるなよ、馬鹿が。とどめを刺せなかった時点でお前の負けだ」

不意に聞こえたザ・フューズの声。

212 :ザ・フューズ :2019/01/13(日) 23:32:50.28 ID:tLRulIu9.net
馬鹿な、と、ファイアスターターの心中に動揺が生じる。
手足の骨は確実に蹴り砕いていた。
それだけではない。
胸部の奥――肺か、そうでなければ心臓の破裂した手応えさえあった。
まともに喋れるはずがないのだ。

にもかかわらず、ザ・フューズの声には――力強い憎悪が満ちていた。
故にファイアスターターは思わず、そちらへ振り向かざるを得なかった。

213 :ザ・フューズ :2019/01/13(日) 23:35:37.83 ID:tLRulIu9.net
果たして振り向いたその先で――ザ・フューズは立ち上がっていた。
確かに両膝を蹴り砕いたのに、何故。
その不可解がファイアスターターの反応速度、判断力を鈍らせた。

ザ・フューズはすぐさま超能力を行使。
人体発火による爆風の噴射。
エクトプラズム・プレートの三枚同時形成。
足元に、地面と水平に一枚。それを押し上げるように二枚。
瞬間、彼女の真下から競り上がる足場。

二重の推力を得て、ザ・フューズは跳んだ。
泥の雪崩が届かぬ空中へ。
そして――ファイアスターターが放り投げたケースを見た。
瞬間、ケースを囲むように発生するエクトプラズム・プレート。

ザ・フューズが悪辣な笑みと共に地表を見下ろす。
ファイアスターターの表情に、今までにないくらいはっきりと、焦りが浮かんだ。
そして彼女の思考は一つの強迫観念に辿り着く。
全速力をもってザ・フューズに追いつき、アタッシュケースを奪い返さなくては、と。

しかしながら――ザ・フューズ、西田結希は詐欺師である。
そして詐欺とは――基本的に、人間の限定合理性を誘導するものだ。

限定合理性。すなわち不完全な、人間の知能や認識能力の限界に制限された合理性。
息子を名乗る人物からの電話を受けた老婆にとって、
その電話の主に大金を振り込むのが最も合理的な行動であるように。
人間には完全に合理的な判断と行動を取る事は不可能なのだ。
つまり、どういう事かと言えば――

「全て予定通りだ」

今この瞬間。ファイアスターターの限定合理性は、完全にザ・フューズの手中にあった。

無力化したはずの敵が起き上がった事による動揺。
与えられた任務の肝要であるアタッシュケースを奪取された事による焦燥。
衝き動かされるように、殆ど反射的に、ファイアスターターは地を蹴った。

「思い知るのは、やはりお前の方だったな」

その安直極まる、渾身の跳躍に、エクトプラズムの刃が突き刺さった。

「なっ……が……」

刃はファイアスターターの顔面に深々とめり込んでいた。
声にならない悲鳴を零して彼女はよろめく。
致命的なまでの隙――だが彼女も歴戦のヴィラン。
体勢を崩しながらも、その目は直近の脅威であるNo14を捉えていた。

土砂が降り注ぐまで、残り時間は五秒前後。
深追いすれば泥の雪崩に飲み込まれる事になる。

付け加えるなら、ザ・フューズの「予定」に、No14の救助は含まれていない。
何故なら、No14は民間人ではなくヒーローなのだ。
助けを求められたならまだしも、そうでないのなら手助けなど不要。
もし逃げ切れなくてもロボットが酸欠で死んだりはしないだろう。
自分が今するべきは――ファイアスターターが再び土砂から逃れようとした場合、即座に妨害を行う事。
それが、ザ・フューズの合理的な判断だった。

214 :ザ・フューズ :2019/01/13(日) 23:36:42.80 ID:tLRulIu9.net
【ファイアスターター:顔面にブレードが食い込み大ダメージ。ひるんでるけど、まだまだ油断出来ないかも。
 
 全身ぶっ壊されて立ち上がれた理由は、まぁそのうち】

215 :山元 :2019/01/20(日) 22:43:17.87 ID:K546uJqo.net
「とぉーーー☆☆」

自身の背丈とほぼ同じ長さの巨大な木剣。振り回しているのか。振り回されているのか。
とまれかくまれ、魔法少女テスカ☆トリポカはその小柄で剣を遮二無二叩きつける。
ロックバインは鈍重な動きで斬撃を躱し、岩肌に覆われた腕をぶつけて軌道を逸らす。
僅かにでも刀身の黒曜石が食い込み、剥離すれば、それはそのまま小型爆弾を設置されたも同義だ。
頭部に入った爆破の一撃は思いの外ダメージとなったらしく、ロックバインは防戦一方だった。

「へいへいピッチャービビってるぅー?甘えた逃げ方してるとフルスイングしちゃうよっ☆」

後退するロックバイン。追いすがるテスカ☆トリポカ。
カウンターでも受けようものなら一撃で肉片必至の偉丈夫相手に、テスカは半ばノーガードで肉薄する。
吸引したハーブによって暴力行為への忌避感や恐怖がぶっ飛んでいるのだ。

しかし敵もさる者、テスカの大振りな攻撃はなかなかロックバインを捉えられない。
さらに彼は着弾した箇所の岩肌を即座に自らパージすることで、爆破の威力を殺す術を身に着けていた。
相方のファイアスターターと違ってまったく喋らない男だが、戦士としての感性は彼女に劣らない。

「ちょっと!動くと当たらないでしょ!動くと当たらないでしょ!?」

『This was a triumph.I'm making a note here:HUGE SUCCESS.』

『テスカちゃん、気をつけるッピ!あいつ何かやろうとしてるッピ!
 ――と、ケツァルは言っている。ロックバインの念動出力ならば、反撃は容易なはずだ。
 かくも防御一辺倒なのは、異能のリソースを別の作業に割り当てているからなのかもしれない』

「べつのさぎょうって!なに!?」

『それは分からないよ、レディ。第一種特異能力は魔力を使用しない。我々の感覚器で追跡は不可能だ』

メトロポリスで公式に認定されている一般的な異能には大別してふたつの種類がある。
ひとつは第一種特異能力。サイコキネシスやテレパスといったシンプルな、いわゆる超能力に分類される異能。
そして、伝統や儀礼要素の強い、『魔法』や『呪術』などを代表とする第二種特異能力。
ふたつの違いはその発動様式もさることながら、なにをパワーソースとするかによって決定付けられる。

環境に偏在する超常因子、すなわち魔力を利用する魔法とは違い、念動力は術者自身の持つカロリーを消費する。
そのため、異能がどこにどれだけの出力で働いているのか、外部から観測することが困難なのだ。
生れ出づるのは鬼か蛇か。伏せられたカードの裏面は、既に決定されている。

「テスカ知能が低いから先のことはわかんないけど、大体理解したよ☆
 何かしようとしてるなら、何かされる前に殺せばだいじょーぶ!」

216 :山元 :2019/01/20(日) 22:43:40.74 ID:K546uJqo.net
テスカ単独であれば、防御に徹するロックバインを削り切ることは不可能だろう。
しかしこの場に居るヒーローは一人ではない。
ロックバインの集中力がテスカに向けられる中、影を渡るように静かに動く者がいる。
リジェネレイターだ。彼はロックバインの背後から組み付き、その首を締め上げていく。

>「もう戦うのは止せ。君の目的は分からないが、これ以上の戦闘で命の保証はしかねる」

「いいよリジェネレイター、そのままそのまま!顔は可哀想だからボディにするね!」

羽交い締めにされたロックバインの胴めがけて、テスカはマクアフティルを思い切りフルスイングした。
これだけ大きな隙が出来れば、仮にパージで爆破を防がれても、装甲の修復前に二発目を叩き込める。
鋭利な刃で肉を断ち、肋骨をこじ開けて脈打つ心臓を抜き取ればテスカの勝利だ。
太陽神への供物もゲットできて一石二鳥である。

>「…………!」

しかしテスカの刃が装甲を穿つ前に、リジェネレイターはロックバインの元から飛び退いた。
必殺の一撃をスウェーで避けられて、マクアフティルは虚しく空を斬る。

「あ、あれっ?どしたのリジェネレイター」

見れば、ロックバインの背中から槍のように突き出した岩の棘。
リジェネレイターは事前に反撃の気配を察知して、殺傷圏から脱出していたのだ。

『第一種異能の予兆を読んだのか。リジェネレイターでなければあれで死んでいた。
 やはりロックバイン、単なる運び屋のヴィランというわけではないらしい』

「えぁっと☆……つまりどゆこと?」

『彼の実力は我々の想定よりも遥かに高い。
 何か仕掛けてくるとすれば、それは致命の一撃になるということだよ、レディ』

「ちめいの……いちげき?」

『It's hard to overstate my satisfaction.』

『次はガチでヤバいのが来るってことだッピ!――と、ケツァルは言っている』

ロックバインが地割れを生成し、飛び退いたリジェネレイターが亀裂へ落下していく。
その視線は悲運に見舞われた己の着地点ではなく――空を見上げていた。
同様にテスカも横合いに視線を移す。
そして見た。大量の土砂が、高波の如く鎌首をもたげるその姿を!

217 :山元 :2019/01/20(日) 22:44:03.50 ID:K546uJqo.net
「ガチでヤバいのが来たぁーーー!?」

『この攻撃範囲、ファイアスターターも巻き込まれるぞ。彼らは仲間ではないのか?』

「どーでもいいよそんなの☆あの岩雪崩どうにかしないとっ!」

テスカ自身が退避するという意味では難しい話ではない。
彼女には射程2kmを誇る移動魔法『レイラインステップ』がある。
適当な高台や、それこそ内地の安全地帯まで一気に飛ぶことも可能だ。

他のヒーローはどうだろうか。
足場を自在に作り出せるザ・ヒューズは案外自分でどうにかするかもしれない。
女の戦いでボコボコにされていたが元気そうなので放っておいても大丈夫だろう。

彼女と共にファイアスターターの対処に当たっているもうひとりのヒーロー、
元殺人ロボットという異例の経歴を持つ『14』は、現着用のドローンを乗り捨てている。
本体の機動力は未知数だが、ドローンを呼び戻して離脱するだけの時間的猶予はあるまい。
なんか怖いおばさんに目をつけられてるっぽいし。

何より、リジェネレイター。
彼は今、ロックバインの生み出した地割れに挟まっている。
これはもう間違いなく間に合わない。捨て置けば確実に、雪崩に飲まれて代が一つ替わるだろう。

そして、テスカ自身の個人的な都合として、橋を壊させるわけにはいかなかった。
橋の先、アウターストリートにはセーラ・山元の通う学校がある。
通学に使っているこの橋が損壊すれば、学校へ行くためにものすごい遠回りをしなければならない。
始業に間に合わせるには、一時間早起きしないといけないのだ。
それは……困る。すこぶる困る!!!!

「ケッちゃん!コアちゃん!あの雪崩、止めるよ!」

『具体的な手段を問おう』

「レイラインアクセスで、片っ端から全部飲み込む☆」

『無理だよレディ、君の力のキャパシティを超えている。あの雪崩が全部で何千何万トンあると思うね?
 あれを全て地脈に落とすとなれば、地獄の大釜よりも巨大な直径で門を開かねばなるまい』

「無理っていうのはねコアちゃん、嘘つきの言葉なんだよ!
 昔の人は言いました。為せば成る、わりと結構なんとかなる。限界を超えるために魔法があるんだ☆」

『我々の力をどう使おうと君の自由だが……相応の対価はもらうよレディ。
 要求は生きた人間から抜き取った心臓だ』

「用意出来なかったときは?」

『豚の肩ロースとかでも良い』

「おいしいもんね、肩ロース」

218 :山元 :2019/01/20(日) 22:44:23.96 ID:K546uJqo.net
かくして交渉は成立し、魔法少女は宙を舞う。
迫りくる土砂の波濤へ立ち向かうその姿は、紛うことなきヒーロー!
彼女はマクアフティルに魔力を込め、自身の立つ橋に思い切り突き立てた。

「地脈に通じる門よ、そのあぎとを開け!『レイラインアクセス』!」

瞬間、橋を構成するアスファルトを巨大な亀裂が縦断した。
怪物の顎のごとく開いたその向こうは、地脈へ通じる亜空間。
ロックバインの操る泥雪崩がこちらの道路に叩きつけられる瞬間、
吸い寄せられるように地脈の門へと飲み込まれていく。

「うぐぐぐぐぐぐぐ……☆」

大規模な魔法の行使に、テスカ自身にも凄まじい負荷が発生した。
第二種特異能力は環境に満ちる魔力を使用するため、理論上はガス欠になることはない。
しかし魔力に方向性を与え、使役するには一度術者の肉体を通して魔力を取り込む必要がある。
過電流を流した電子回路が時に焼け付きを起こすように、テスカの肉体もまた高圧の魔力に晒されていた。
紫電が衣装を焦がし、フリル代わりの鷲の羽根が何本も抜け飛んでいく。

そして、限界に挑んだ大規模魔法行使は、雪崩の終息という形で終わりを迎える。
飲み込み来れなかった土砂が橋をたわませるが、足場の崩壊だけはなんとか免れた。
地脈の門を閉じ、魔法を終了させたテスカは、疲労困憊といった様子で膝をついた。
素顔を覆い隠す石仮面が、半分近く煙と化して消えている。変身の維持が困難になっているのだ。

「あっ……危ない危ない☆」

テスカが石仮面を一撫ですると、霧散していた魔力が再収束して元の形に戻る。
この辺りには協会の観測用ドローンも飛んでいる。正体を露呈するわけにはいかない。

「リジェネレイター、生きてるぅー?ロボットちゃんもー」

味方の生存確認をしながら、テスカはポケットからパイプを取り出した。
魔力を消費しすぎたせいでトランスが切れかけている。
ケツァルとコアトルの声も今はもう聞こえない。
再び薬草を燃した煙を吸わなければ、まともに魔法を行使することはできないだろう。

「………………!」

パイプの吸口に唇を着けた瞬間、地面から隆起した棘がテスカを襲った。
身を隠していたロックバインによる奇襲だ。
間一髪回避が間に合い、彼女は串刺しの憂き目こそ免れたが、しかし。

「やばっ、パイプが――!」

テスカ☆トリポカの魔法の源となる鷲を模したパイプが手から弾き飛ばされ、瓦礫の中を転がっていく。
急ぎ拾わんと駆けるテスカを、再び姿を現したロックバインが阻んだ。

「……ぴ、ピーンチ☆」

今のテスカは、魔法少女ではなくただの一般魔法使いだ。
ヴィランを相手にして一般人が生き残れるほど、このメトロポリスは甘くはない。

219 :山元 :2019/01/20(日) 22:44:38.05 ID:K546uJqo.net
【レイラインアクセスで泥雪崩を飲み込み、橋とヒーロー達を保護。
 使い果たした魔力の補充に必要なパイプは遠く離れた場所に落下】

220 :K-doll No14 :2019/01/22(火) 20:56:54.75 ID:SsRtz4uD.net
完璧な煽りを入れたNo14は勝利を確信していた。
並のヴィランならば挑発すれば乗って来る。
冷静さを失えばどんなヴィランもタダのザコ。
しかしファイアスターターは並のヴィランではなかった。

>「ねぇ、話を変えるけれど。メトロポリスの能力格差って酷いわよね。
 特別な才能を持たない者が良い学校へ入れて、特別な才能を持つ子が良い学校に入れないの。
 嘆きの極みよね……歪んだ社会構造だわ。メトロポリスには、持たざるが故の特権階級があるのよ」

ファイアスターターは冷静に語り始める。
まずい、このまま落ち着く時間を作らせてはいけない。
だがNo14はこの話題を聞き流せなかった。
ヒーロー総合学院にいる子供達の様な例外は確かにいる、がヒーロー協会に拾われなかった能力を持ってしまった子供達の暗い未来。
その現実を痛い程痛感していたから。

>「けど、私の組織の言うところでは特権階級は進化した人類な訳。
  つまるところ、私達のような人間が――社会の頂点に君臨すべきだと思わない?」

それは違う。
力が正義なんて事を通してしまったら世界の終わりだ。

>「いいや。まったく」

No14の否定の言葉より先に隣にいるザ・フューズが言い放つ。
怒りと不快感を隠そうともしないザ・フューズが続ける。

>「……それで?お前達が社会の頂点に立った後はどうする?
 強盗や脅迫じゃ経済は回せない。
 時速300kmで走れようと、社会に貢献出来なければ何の意味もない」

「私モ同感デスネ!確カニ今ノ制度ハ間違ッテイマス!デモアナタ達ハモットオカシイデス!」

221 :K-doll No14 :2019/01/22(火) 20:57:39.11 ID:SsRtz4uD.net
ファイアスターターは無言。
無言のまま脚部ホイールから炎を噴射し始める。
かっこよく一回転した後に空に向ってなにかを投げる。

「ム・・・アレハアタッシュケース・・・?」

なにかを庇っていたのかはしっていたがケースを隠し持っていたとは。
戦闘に夢中で気づかなかった。

>「ケースが地面に落ちる瞬きの間に、貴女達を殺してあげる!」

ケースをわざわざ手放すという事はあれは戦闘用の物ではなく、なにか重要な物という事なのだろう。
しかしアレを確保する前にファイアスターターを倒さなくては。

ファイアスターターが急加速を始める。
加速するような音はなく爆発音のような音と共にファイアスターターが瞬間移動のような速さで右左へ移動する。
ザ・フューズが周囲に展開した刃の檻を利用した上下の概念が追加された高速移動。
普通の人間には絶対捉えられないだろう。
No14は電力とその他部位に使っている処理を目に回し動きを見る、それで辛うじて見えてるレベルであった。

近くのザ・フューズは完全に混乱しているようだった。
バリアを張るために近くに行こうとしたが、No14よりファイアスターターの方が一手先をいく。

>「――燃え尽きなさい!私の自慢の炎でね!」

上空から降り注ぐ、超高温の火炎。
さすがにあれをまともに食らったらタダじゃ済まないだろう。
全ての変形を解除して防御体制に入る。

「ガードプログラム;アサイラム!」

自分の周囲にバリアを貼る。
本来味方と自分を保護する為の物だが反応が遅れてザ・フューズは範囲外にいた。
炎で視界が塞がれファイアスターターとザフューズの場所がつかめないと焦っていた、その時。

>「お・そ・い・わ」

その声と同時に炎が晴れ始める。
炎が完全に晴れた後No14が見た光景は、血を流しながらぐったりしているザ・フューズだった。
私がもっと早くザ・フューズに近寄っていれば、自分の判断ミスによって起きてしまった事だ。

「ザ・フューズ・・・ソンナ・・・」

No14が後悔に苛まれていると。

>「……無駄な足掻きね。即死した方がいっそ楽だったでしょうに」

たしかによく見ればまだ息がある。
早くファイアスターターを倒して治療をしなくては。
いや倒すことよりもここはザ・フューズを連れて逃げるべきかもしれない。
アタッシュケースを回収しなければ深追いしてこないだろう、と思っていたNo14だったが。

>「だけどあなたは、あれよりもっと長く苦しめてから殺すから」

ファイアスターターの優先順位はこちらが上になっていたようだ。

222 :K-doll No14 :2019/01/22(火) 20:58:17.01 ID:SsRtz4uD.net
その時突然足元に影が映る。
後ろを向くと泥の波。
もう一人のヴィランの存在を完全に忘れていた、もう一人はファイアスターターの仲間だと勝手に思い込んでいた。
どう考えてもこんな大規模の攻撃を相方の許可なしに発動することはリスクを伴う。
と考えればこれはファイアスターターを最初から巻き込むつもりの攻撃。

「狙イハアタッシュケースダケッテコトデスカ・・・!」

果たしてファイアスターターを退けながらザ・フューズを担いで脱出できるだろうか。
なんとしてでも命は最優先させなければいけない。
できるかではなくやるしかなかった。

>「最後の一秒まで、じっくりと、いたぶってあげる」

No14を見つめながら宣言するファイアスターター

「私ハイジメラレル趣味ハナイノデスガ・・・!【アタックプログラム;ブレード】」

近接戦闘での強行突破を試みようとしたその瞬間

>「……粋がるなよ、馬鹿が。とどめを刺せなかった時点でお前の負けだ」

力強い声で聞こえるはずのない人物の声が聞こえる。
目線の先で立っていたのは紛れもなくザ・フューズだった。

ザ・フューズは超能力の攻撃を連続で繰り出す。
そして能力を利用し空に跳ぶと投げられたアタッシュケースを能力で掴む。
ファイアスターターに焦りが生じる。

223 :K-doll No14 :2019/01/22(火) 20:58:55.46 ID:SsRtz4uD.net
>「全て予定通りだ」

ボロボロの体で何を言うのか。
どう考えたって予定通り事が進んでるようには見えない、たしかにアタッシュケースは奪われて敵は間違いなく動揺している。
が、状況は別に好転してるわけではないのだ。
誰がどうみても劣勢なのに。

>「思い知るのは、やはりお前の方だったな」

でも黒い噂から詐欺師と呼ばれる彼女なら。
本当に計算済みなのかもしれない。
だとしたら。

>「なっ……が……」

動揺からか愚直な直進で突撃するファイアスターター。
その動揺を見逃さずエクトプラズムの刃で応戦する。
刃が嫌な音を立てながらファイアスターターの顔面にめり込んだ。

「本当ニ人間ッテ面白イデスネ!」

泥が来る前にファイアスターターにトドメを刺し脱出する。
怯んでいる今しかない。
そう思いNo14が接近しようとしたその時。

>「地脈に通じる門よ、そのあぎとを開け!『レイラインアクセス』!」

その時地震のような揺れと大きな音と共に門が出現する。
門が開き泥の波を飲み込み始める。
職業柄色んな魔法の類を見てきたが門を召喚するのは初めてみる。
小さな魔法少女は泥を全て吸引していく、魔法には詳しいわけではないが、正気の沙汰ではないことはすぐ分った。

「テスカトリポカ・・・サスガニムチャデス!今スグ中止シナサイ!」

No14は中止を呼びかける。
泥がこの橋を落とすようなことがあっては困る、困るがなにも命を賭けてやる様な事ではないからだ。

>「うぐぐぐぐぐぐぐ……☆」

「子供ガ無茶スル必要ナンテナイノニ・・・!」

泥の波の勢いが静かになっていく。
テスカトリポカによって勢いは完全に相殺され、残っているのは少し動きにくいくらいの泥だけだった。

>「リジェネレイター、生きてるぅー?ロボットちゃんもー」

「人ヨリ自分ノ心配ヲシナサイ!私ハロボットデハナクNo14デス!今後一切無茶ヲシナイデクダサイ!子供ハ無茶スル必要ハアリマセン!ダイタイ子供ヒーロートイウ時点デヒーロー協会ハナニヲ考エテイルノカ・・・」

説教まがいの生存報告をしているとテスカトリポカを足元から棘が襲う。
間一髪で避けテスカトリポカは体勢を崩したが直ぐに起き上がりなにかを探そうとする。
しかしロックバインそれを許さない。

>「……ぴ、ピーンチ☆」

ロックバインは大きく手を上げ今まさに少女を潰さんとしていた。
少女は絶対絶命の状況に追い込まれていた。

224 :K-doll No14 :2019/01/22(火) 20:59:43.15 ID:SsRtz4uD.net
「スミマセン!ザ・フューズ!」

No14は走り出す、もちろんテスカトリポカの方に。
見捨てる事などできない。
走った勢いでロックバインに蹴りを食らわせ怯ませる。

「大丈夫デスカ!?」

どうやらテスカトリポカは消耗こそしているものの怪我自体はしていないようだ。
一安心しているとロックバインが立ち上がる。
殆どダメージ与えられていないようだ。

「貴方ナニカ探シテイマシタネ!?ココハ私ニ任セテ、ハヤクソレヲ取リニ行キナサイ!」

大抵の魔法には媒介が必要になる、恐らくテスカトリポカが必死に探していたのは媒介でほぼ間違いない。
そしてNo14とロックバインの相性は最悪だった。
ファイアスターターのようにに力では勝てず、No14が持てるどの武装でも恐らくダメージを与えられないだろう。
他のヒーローの火力に頼るしかない、その為の時間稼ぎくらいならできるだろう。

「サア!岩男サン!私ガ相手デスヨ!」

ロックバインがNo14を見つめる、テスカトリポカの方にいくかと思ったがこちらにくる。
強引に行かれていたら止め切れなかっただろう、と心の中で安堵する。
あまり考える頭がないのかもしれない、脳筋という奴か。

「アタックプログラム;ラピッドファイア」

右手を変形させ連続で銃弾を浴びせる。
まるで蚊にでもさされただけかのように怯まずゆっくりと、しかし確実に接近してくる。

「冗談デショウ?コレヒーロー協会正式採用ノ対改造人間用弾薬デスヨ!?」

分っていた事だが銃弾を浴びせてもダメージを与えるどころか怯む事すらない。
距離を適度に取りつつ射撃していると排熱音と共に射撃が中断される、使いすぎてオーバーヒートを起してしまった。
それを見たロックバインはおもむろに地面に両手を当てる。
手の場所のあたりの地面からボコボコと音が鳴り始め、そしてNo14に向って前進してくる。

「フッソノ技ハサッキミマシタヨ!」

No14はステップで地面のボコボコから距離を取る。
しかしロックバインの狙いは初めからNo14ではなかった。

「ム・・・?・・・!テスカトリポカ!早クニゲナサイ!」

テスカトリポカに攻撃が向っていく。
恐らく彼女は今の時点で一般人と同等の戦闘力しかない、あれを避けるすべを持っていないだろう。

「アブナイ!」

なにかに夢中なのか攻撃には気づいていない。
全力で走りテスカトリポカを吹き飛ばす。

225 :K-doll No14 :2019/01/22(火) 21:00:26.71 ID:SsRtz4uD.net
「ガ・・・ピ」

No14の胴体を先ほど奇襲で使われた物より太い棘が串刺しにする。
ロックバインが少し微笑んだように見えた。

「ナルホド・・・ヤッパリ私狙イダッタンデスネ・・・」

ほぼ無力化できているテスカトリポカを狙ったのではなかった。
私が庇うと分っていて、わざと棘の攻撃が見えるように射出したのだ。
奇襲用の技なのに目で確認できるという時点で気づくべきだった。

「ソレデモ・・・子供ヲ守る・・・ノハ・・・ヒーローノ・・・役目デス」

自分を刺している棘を左手で粉砕して脱出する、しかし。

「エラー!電源ユニット破損!動作不能!他部位保護の為機能停止を開始します!」

No14の体から警告音が流れ出す。
どうやらメインの電源ユニットに傷がついてしまったららしい。
機能停止する前に言わなければ。

「テスカトリポカ・・・アナタガ気ニスルコトハアリマセン、私ハ私ノシタイコト・・・ナスベキ事ヲシタノデス・・・カラ」

テスカトリポカはなにも悪くない。
勇んで飛び出してきて大して役に立ってない私こそ恥じるべきなのだ。

「私コソ・・・役ニ立テズ・・・ゴメン・・・ナ・・・」

No14の意識はそこで消えた。

【ファイアスターターの戦闘を中断しロックバインと交戦 テスカトリポカを庇いカラーコーンぐらいの棘が体を貫通 機能停止 (死んではいません)】

226 :神籬明治 :2019/02/02(土) 00:30:33.58 ID:pBhjqx+A.net
押し寄せる泥の雪崩を眺めながら、リジェネレイターは死を覚悟した。
地割れに挟まれた状態では回避行動も間に合うまい。
各種機能を搭載した装甲服だがジェットパックの類は生憎と装備していない。

>「ケッちゃん!コアちゃん!あの雪崩、止めるよ!」

やや慌てたような様子でテスカ☆トリポカが決然と叫んだ。
このままでは彼女にとって何か困り事が発生するらしい。
リジェネレイターはそんな色の感情を朧気に読んだ。

「頼むテスカ☆トリポカ……!お前に全部賭けるぜ!」

AIである彼に賭けるものはないので途方もなく無責任な物言いである。
ともあれ魔法少女は宙を舞い、猛烈な勢いで迫りくる泥の雪崩に立ち向かう。
数万トンはあろうかという巨大な壁に対し、大規模魔法を行使せんと言葉を紡ぐ。

>「地脈に通じる門よ、そのあぎとを開け!『レイラインアクセス』!」

テスカ☆トリポカの作戦は巨大な地脈を開くことで雪崩を全て飲み込んでしまおうという明快なもの。
自身に降りかかる強烈な負荷も厭わず地脈の門を開き、泥の雪崩が注ぎ込まれはじめた。
門は泥を、砂を、岩を、概ね飲み込むと、ゆっくりとその顎門を閉じた。

テスカ☆トリポカが雪崩を止める間にどうにか地割れから這い出る影がひとつ。
飲み切れなかった泥土を踏み分けながらリジェネレイターは溜息をついた。
彼女がいなければ少なくとも自分は死んでいた。

「ひゃ〜助かった」

オービットの言葉に対する返事はない。
リジェネレイターがまず行ったのは何処かにいるであろうロックバインの捜索だ。
レイラインアクセスは雪崩を見事止めたが、雪崩は目晦ましの効果を果たし、忽然と姿を消した。

>「リジェネレイター、生きてるぅー?ロボットちゃんもー」

テスカ☆トリポカの声がする。
目視しただけではあの屈強な岩男の姿が見当たらない。
レーダーで探知してみると、瓦礫の山に潜む巨大な熱源を捕捉した。

227 :神籬明治 :2019/02/02(土) 00:31:46.91 ID:pBhjqx+A.net
「――くっ!」

レーダーが熱源に照準を当てながら距離を算出。
熱源まで50メートルもない。リジェネレイターは駆け出した。
あれほどの規模の魔法だ。テスカ☆トリポカは確実に消耗しているはず。
この隙を突かれたら如何に魔法少女といえど長くは持つまい。

>「やばっ、パイプが――!」

事態はリジェネレイターが想定していた状況よりも常に悪い方へ働く。
地面から隆起した棘がテスカを襲い、避けた拍子に何かを落とした。
再び姿を現した岩男ロックバインが彼女の行く手を阻む。急がなくては!

>「スミマセン!ザ・フューズ!」

幸いな事に事態に気がついたのはリジェネレイターだけではなかった。
異色のロボットヒーローK-doll No14もまたロックバイン目掛けて走り出し、蹴りを浴びせていた。
ロックバインは少しよろめいて怯んだ様子である。

>「サア!岩男サン!私ガ相手デスヨ!」

右手を銃に変形させ銃弾を浴びせるが、ロックバインの岩肌は傷つかない。
通常の岩肌の更に上からコンクリートを纏い、防御力を向上させていた。

>「アブナイ!」

泰然と距離を詰めるロックバインはテスカ☆トリポカ目掛けて攻撃を放った。
No14はテスカを守るため再び走り、彼女を攻撃から身を挺して守る。
棘を人間ではあり得ない膂力で粉砕するも、警告音が鳴り響いた。

>「エラー!電源ユニット破損!動作不能!他部位保護の為機能停止を開始します!」

228 :神籬明治 :2019/02/02(土) 00:32:40.53 ID:pBhjqx+A.net
「No14はどうなったんだ……?」

リジェネレイターは不安気な様子でオービットに尋ねた。
糸の切れた人形のように地に伏せる姿は、まだ年端もいかない少女の死にも思える。
意外と人間臭いとこあんじゃねぇか――という悪態は不適切と判断し、代わりの言葉を用意した。

「別に死んじゃいねぇよ。電源ユニットが破損しただけみたいだからな。
 人間に例えるなら気を失ってるってとこだ」

No14……ファイアスターターとの戦闘を放棄してまでテスカ☆トリポカを助けに入った。
リジェネレイターはまだ彼女の事を然程知らない。だが、たった一つだけ分かる事がある。
それに、彼女のヒーローをも助けようと駆ける"心"はきっと優しい。
彼にできることはひとつだけだ。

「No14を直すぞ」

リジェネレイタースーツにはナノマシンによる修復機能が搭載されている。
これこそがヒーロー名の由来であり、致命傷を負っても復帰する不死身の所以だ。
もし修復用ナノマシンを自分だけでなく他の機械にも転用できれば。
原理上構造さえ把握していればどんな機械でも直せるはずだ。

「AIとして助言しておくが、適切な判断じゃないな。
 今は戦闘中だ。機能停止したロボットなんて放っておきゃいい」

「ヒーローも助け合いだ。その隙は俺が作ってみせる」

「助け合いねぇ……非合理的な考えが働いてるとしか思えないな。
 ……ったく、お前は言い出したら聞かないからな。仕方ねぇと言ってやるか」

オービットの機械音声と同時。背後から放たれた拳を共感覚で回避した。
仮面に搭載されたHUDが敵を捕捉。ロックバインが殴りかかってきたらしい。
見れば両手にコンクリートのグローブを装着している。あれで殴り合う気か。

「面白ぇ、装甲服着てる奴に肉弾戦で勝てると思ってんのかよ!」

229 :神籬明治 :2019/02/02(土) 00:33:48.40 ID:pBhjqx+A.net
すぐさま立ち上がってパワーアシスト機能を起動する。
走力を強化し、ロックバインとの距離を一気に詰めた。
ローキックを叩き込もうと足を振りかぶるも、軸足が急に沈み込んだ。
格闘戦中、悠長に足下を確認する暇はない。態勢を崩す前に半歩後退した。

「!?」

今度は完全に態勢を崩した。両足に体重を掛けられない。
見れば後退させた足が地面にずっぷりと浸かっている。
言うまでもなく、ロックバインの土壌操作が原因だ。
コンクリートを液状化させ沼のように足場を崩したのだ。

これが彼の接近戦。徹底的に足下を崩して隙を強引に作り出す。
如何に達人と言えど踏み込みを潰されては手も足も出ない。
ロックバインは網にかかった獲物をゆっくり料理すればいいだけだ。

隙だらけのリジェネレイターの頭を掴み、膝蹴りを叩き込む!
ご丁寧に能力で作ったコンクリのニーパッドが仮面の額を砕く。

「ぐっ……!」

怯んだところで二度、三度と顔面に拳を叩き込んだ。予兆は読めても避ける暇がない。
沼のように液状化した足下が今度は硬質化し、リジェネレイターの脛から先を固定していた。
更に、ロックバインは拳のインパクトの瞬間コンクリート製グローブから棘を隆起させていた。
拳を打ち込まれる度に棘が装甲を貫通しリジェネレイターの生身に刺さる。

「おいおい、聞いてねぇぞこんな情報!格闘戦まで出来ちゃうのかよ!」

鮮血を装甲服に滲ませ、リジェネレイターは明確に怯んだ。
ロックバインは両腕で胴体を掴むと軽々持ち上げ、脳天から硬質な地面に叩き落す。
軽い脳震盪をおこしながら、素早く立ち上がってなんとか距離を取った。

割れた仮面と装甲を自動修復しながらリジェネレイターは構え直す。
このままではNo14を修繕する前にお陀仏になりかねない。

230 :神籬明治 :2019/02/02(土) 00:34:37.81 ID:pBhjqx+A.net
ロックバインは地面に手を添えて土壌操作を行使した。
隆起したコンクリートの棘がリジェネレイターを襲う。
共感覚で予兆を嗅ぎ取りながら棘を躱し、避け、いなす。

「オービット……何か打開策はないか?」

「たった一つだけある。この窮地を脱するたった一つの冴えたやり方が……!
 今こそ最後の切り札、アップデートシステムを使え!それしか方法はない!」

――アップデートシステム。
リジェネレイタースーツは搭載されている学習機能と再生機能を用いることで、
スーツの性能をリアルタイムでバージョンアップさせることができる。
ただし、どんな進化を果たすかは当人である二人にも分からない。
あるいは打開策を手に入れられないまま撲殺されてしまう可能性もある。

「お前が今まで蓄積させたきた戦闘データが、そのままお前の力になる。
 これは分の悪い賭けなんかじゃない。お前の中に眠る可能性を爆発させろ!」

瞬間、リジェネレイタースーツの装甲部がナノマシンの粒となって霧散する。
スーツの再構築が開始され、リジェネレイターが生まれ変わろうとしていた。
さながらそれは蛹が羽化して蝶の羽を広げようとする姿に似ている。

「――新たなる力を掴み取れ!リジェネレイターversion2.0!!」

大仰な台詞の割りに外観上の違いは特になさそうだ。
ここで思考がやや散漫なロックバインの特性が災いした。
コンクリート製のグローブを打ち鳴らし、泰然と接近する。

「さぁ、パワーアップしたところを見せてやれ!」

早速土壌操作で足元を液状化させて沼を作ると、ロックバインは鳩尾目掛けて拳を放った。
リジェネレイターはそれを躱せない。格闘戦において体捌きを制約されるのは致命的だ。
そう、従来までは。version2.0には脚部と背部にスラスターが追加されている。
すなわち、空中における姿勢制御が可能となった。

231 :神籬明治 :2019/02/02(土) 00:35:28.40 ID:pBhjqx+A.net
宙を跳んだリジェネレイターは相手の頭目掛けて回し蹴りを放った。
慌ててガードするロックバイン。岩肌越しにびりびりとパワーアシストの威力を感じる。
ロックバインは苦し紛れに拳を振り回したが、それがいけなかった。
流水のように最小限の動きで避けられ、懐に潜り込まれてしまった。
お返しとばかりに鳩尾目掛けて拳を捻じ込む。

「パワーシリンダーッッ!!」

増設された電動アクチュエーターによる拳が岩肌に命中する。
パワーシリンダーはロックバインの巨体を大きく吹き飛ばしたが、撃破には至っていない。
結果的に距離を置くことに成功し、ロックバインは唸り声と共に土の中へ消えていく。

「やったかリジェネレイター!?」

「……いや、地中の中へ逃げたようだ」

地中のロックバインから感じる感情は"敵意""焦燥""怒り"だ。
下に見ていたヒーローに反撃を食らってムッとしているといったところか。
感情分析はさておき、これでロックバインを一時的に追い払うことには成功した。
No14の下まで駆けると、大穴を開けている患部に左手を突っ込む。修復用ナノマシンを散布するためだ。

「よし、そのまま電源ユニットを触れ。今から構造を解析する……」

「わかった」

オービットの構造解析が終わると、ただちに修復用ナノマシンが散布された。
修復用ナノマシンは破損個所をパテ材のように埋め、損傷個所の機能を補完する。
直ぐに目が覚めるかどうかは分からないが、これで電源ユニットは修復できたはずだ。

「!!」

隆起した棘が再び襲ってくるも、リジェネレイターはスラスターを吹かして回避。
おそらく地面に響く振動で探知して攻撃しているのだろう。狙いが大雑把だ。
棘の隆起が連続して襲い掛かって来る。
息が続くまで地中に引きこもって攻撃を仕掛けてくる気か?

「……そうか、地中からまたあの雪崩を引き起こす気か……!」

「完全に時間稼ぎされてんじゃねーかっ。version2.0にドリルも実装しときゃ良かったな!
 今度またあれが襲ってきたら近隣の被害込みでただじゃ済まないぞ!?」

ロックバインは地中でほくそ笑んでいた。今までの攻防は準備を整えるまでの時間稼ぎの一貫に過ぎない。
度重なる強化手術によりローカロリーで大規模な土壌操作を引き起こせる彼にとって持久戦は本領。
ロボットヒーローを倒し、装甲服の男はものの敵ではない。後の懸念は魔法少女くらいのものだが――。
彼の目論見が成功すれば今度こそ一巻の終わりである。戦いは佳境を迎えつつあった。

232 :神籬明治 :2019/02/02(土) 00:40:16.35 ID:pBhjqx+A.net
時間を少し巻き戻す。
顔面にエクトプラズムが刺さる重傷を負ったファイアスターター。
咄嗟にNo14を警戒したが、そのNo14はあろうことかチャンスを潰してロックバインの下へ。

掴める勝利を捨てる者にヴィランは甘くない。
普段なら追い打ちを仕掛けるところだが、自身の傷も浅くない。
地面に着地すると息を切らしたのは疲れによるものではない。
痛みによるものだ。

「好機をふいにするなんてとんだ二流ね、貴女の同僚さん」

ファイアスターターの言葉にはまだ何処か余裕がある。
言葉ほどに余裕はなかった。顔を傷つけるという自分の美しさを著しく損なう愚行。
彼女の後悔はどれほどのものだろうか。

いや、それ以上にケースが奪われたことが何よりの痛手だった。
あのケースを手に入れたのは運命か、はたまた偶然か――。
ファイアスターターが運んでいたモノ。それは時間さえ支配し得る遥か未来の遺産。
『タイムキューブ』。時間跳躍を意のままに行える未来技術の産物。
未来人とされる謎の男がメトロポリスに流した科学の頂点とも言うべきもの。

未来人がなぜ、どうしてこれをこの時代に遺したのかは誰にも分からない。
だがそれよりも重要なのは――今やその時間跳躍の装置は目下ザ・フューズの手中にあるということである。
なぜザ・フューズが五体を叩き壊して生きていられるかなど問題にならない、唾棄すべき致命的な失敗だった。

「物の価値も分からない貴女に一つ忠告しておくわ。"それ"は丁重に扱いなさい」

顔を押さえながらファイアスターターがケースを指差した。
ボスが欲している時をも支配する恐るべき舞台装置の力、是が非とも持って帰らねばなるまい。
タイムキューブが内地で埃を被っていたのには驚かされたが、一体如何なる過程で漂着したのか。
その変遷を辿るのはレオニダスにも不可能だ。

「貴女とは何度か小競り合いをしたこともあったっけね。
 その時からずっと思っていたんだけれど……」

瞬間、ファイアスターターの毛髪状排気孔から炎が噴き出した。
ただし、今度は単に火を垂れ流したのではない。
形状は宙を綿毛のように舞う火球だ。

「貴女にできて――」

ひとたび触れれば人体を燃え焦がす灼熱の火球。
『バックショット』と名付けられた彼女の炎の技だ。
それを大量に空中に振り撒きながらファイアスターターが地面を疾駆する。
振り撒く火球はザ・フューズへの意趣返し。
エクトプラズムの刃のように、空中におけるザ・フューズの動きを阻害するためのもの。

「――私に出来ない事なんて、ひとつもないのよ!」

そして、ファイアスターターは大きく跳躍。
空中で排気孔から業火を噴出させ、大きく方向転換――。
ザ・フューズの顔面目掛けて飛び回し蹴りを放った。


【リジェネレイター:ロックバインを一時退け、No14を修復する。
 ファイアスターター:ザ・フューズを相手に炎で牽制&回し蹴り】

233 :ザ・フューズ :2019/02/04(月) 23:12:40.87 ID:4WOsNvGH.net
顔面に刃が突き刺さり、よろめくファイアスターター。
辛うじて前後不覚に陥らず意識を保っている。
だがその姿は隙だらけだ。
No14が先のような猛攻を仕掛ければ、捌き切れないであろうほどに。

>「本当ニ人間ッテ面白イデスネ!」

「ああ、そうだな。あれだけ偉ぶってた奴がこんな簡単にくたばるんだ、面白いだろう」

ファイアスターターは仕留めたも同然。
これで残る敵はロックバインのみ。
炎を操るザ・フューズならば岩の鎧ごと蒸し焼きに出来る相手だ。
大して手こずる事もなく倒して、状況終了。
それがザ・フューズの『予定』だった――

>「地脈に通じる門よ、そのあぎとを開け!『レイラインアクセス』!」
>「テスカトリポカ・・・サスガニムチャデス!今スグ中止シナサイ!」

――だが、そうはならなかった。
橋を壊されまいと踏み留まるテスカ☆トリポカ。
そして彼女を案じるあまり、死に体のファイアスターターを放置するNo14。

「……ふん、世話が焼けるな」

完璧だったはずの予定を崩され――しかしザ・フューズの声は静かだった。
怒ってはいるものの――しかし一方で満更でもないような、そんな響き。

>「スミマセン!ザ・フューズ!」

「馬鹿が、さっさと行け」

ザ・フューズが右手を眼下へ伸ばす。
瞬間、ファイアスターターの周囲に生じる何重もの刃。
テスカ☆トリポカへと駆けつける、無防備な背中への追撃を封じる為。
結果的にファイアスターターはダメージからの回復を優先したが――

>「好機をふいにするなんてとんだ二流ね、貴女の同僚さん」

「……いいや。あれが一流だ」

静かな、しかし有無を言わさぬ語調。
ザ・フューズは足場代わりのエクトプラズム・キューブからファイアスターターを見下ろす。
それから周囲に追加の足場を形成。
そちらへ飛び移り、踏みつけにしていたアタッシュケースを回収。
見せつけるようにそれを掲げる。

「お使い一つこなせないお前には分からんだろうがな」

>「物の価値も分からない貴女に一つ忠告しておくわ。"それ"は丁重に扱いなさい」

亀裂が刻まれ、苦痛に歪んだ顔に浮かぶ、焦燥と怒り。
中身はよほど重大な物らしい。
ザ・フューズの顔に、悪辣な笑みが浮かぶ。

「安心しろ。お前みたいに勢い余って放り投げたりはしない」

挑発に、ファイアスターターは反応しない。
ただ呼吸を整え、ザ・フューズを鋭く見据える。

234 :ザ・フューズ :2019/02/04(月) 23:12:58.79 ID:4WOsNvGH.net
先の攻防、ファイアスターターは確かに全力で、全速力だった。
しかし――真剣ではなかった。
敵は格下で、自分には「遊び」をする余裕がある――そんなつもりでいた。
その油断が――ファイアスターターの表情からは最早消え去っていた。

>「貴女とは何度か小競り合いをしたこともあったっけね。
  その時からずっと思っていたんだけれど……」

直後、ファイアスターターの排気孔から溢れる炎。
生じるのは炎の奔流ではない。
緩やかに浮かび上がる火球。

>「貴女にできて――」

ファイアスターターが疾駆する。
周囲を高速で走り回り、火球を広範囲にばら撒く。
それらは主の意思に沿うかのように宙を揺蕩い――ザ・フューズを包囲していく。

235 :ザ・フューズ :2019/02/04(月) 23:13:20.38 ID:4WOsNvGH.net
「……ちっ」

ザ・フューズはエクトプラズム・キューブ――防壁と足場を追加形成。
『バックショット』から逃れ、また撃ち落としていく。

だが――ファイアスターターの手数は、ザ・フューズを完全に上回っている。
ザ・フューズの逃げ道は瞬く間に封鎖されてしまった。
上下左右、あらゆる方向に展開されたバックショットの檻によって。

>「――私に出来ない事なんて、ひとつもないのよ!」

必勝の状況を完成させて、ファイアスターターは一際強く地を蹴った。
爆炎の尾を引きながら、一瞬の内にザ・フューズの眼前にまで迫る。

対するザ・フューズは――既に行動を起こしていた。
致命傷を避ける為の防御。
丁重に扱えと釘を刺されたアタッシュケースを盾代わりに、頭を庇う。

任務を帯びたファイアスターターには、ケースごと蹴り抜く事は出来ない。
強引に蹴りを止めるか、軌道を変えねばならない。
それが彼女の限定合理性。

そしてその隙に、全力の一撃を打ち込む。
近距離爆破によって叩き落とし、その落下軌道上にエクトプラズムの刃を形成。
刃を槍のように細くして貫通力を高め――串刺しにする。
まずは完全に身動きを封じ――それでも抵抗するようなら機能停止するまで焼き尽くす。

ザ・フューズはプランを実行に移すべく、ファイアスターターを睨み――そして見た。
ひび割れた美貌、その口元に――邪悪な笑みが浮かぶ瞬間を。

再度響く爆音。
足部、背部の噴射口から迸る爆炎。
生み出された推力がファイアスターターの空中機動を制御する。
ザ・フューズの眼前から、その頭上を飛び越し背後へと移動するように。

ファイアスターターは、アタッシュケースを傷つけられない。
それを逆手に取るという限定合理性を、更に逆手に取られたのだ。
「貴女に出来て、私に出来ない事なんて一つもない」――それを証明するべく行われた意趣返し。

ファイアスターターが今度こそ渾身の蹴りを放つ。
狙いは首。改造人間の装甲と速力であれば生身の人間の首など、容易く刎ね飛ばせる。
五体を砕かれ肺が破裂しなお生きていた理由は未だ不明だが――ならば首だけになっても生きていられるか確かめるまで。

閃く、稲妻のごとき回し蹴り。
常人には決して避け得ぬ一撃。
それ以前に生身の人間では背後へ回り込む空中機動すら見切れない。
ファイアスターターが再びほくそ笑む。

しかし彼女は気付けなかった。
背後に回り込んだが故に当然、見る事の叶わないザ・フューズの表情。
そこに――先ほどよりも更に濃厚な悪意を孕んだ、笑みが浮かんでいる事に。

「予定通りだ」

紡ぎ出された冷酷な呟き。
瞬間、ファイアスターターの視界を爆炎が支配した。

236 :ザ・フューズ :2019/02/04(月) 23:13:37.54 ID:4WOsNvGH.net
己の目前で突如として爆ぜた炎。
その熱は、ファイアスターターにとってはダメージにならない。
その爆風も、やはりダメージにはなり得ない――だが推力には、なってしまう。
空中における姿勢制御を大きく乱す、致命的なオーバーパワーに。

放たれた回し蹴りが、ザ・フューズから大きく逸れて空を切った。
ファイアスターターはそのまま空中ですっ転んだかのように体勢を崩す。

そして――暴力的な金属音。
ファイアスターターの背中から胸へと、エクトプラズムの刃が貫通していた。

237 :ザ・フューズ :2019/02/04(月) 23:14:07.97 ID:4WOsNvGH.net
条件が揃いすぎたのだ。
全速力の回し蹴りの勢いに、ザ・フューズによる爆撃の推力が加わり、更に細く――つまり接触面を小さくする事で貫通力を増した刃。
レオダニスの収集した技術により生み出された、強靭極まる特殊合金による装甲と言えど、耐える事は出来なかった。

「なん……で……」

生身の人間ならば間違いなく致命傷だが、ファイアスターターはステージWの改造人間。
胴体を串刺しにされた状況下においても声を発する事が出来た。

「お前には真似出来ない事もあった。それだけの事だ」

返答と共に、見せつけるように視線を反らすザ・フューズ。
その先にあるのは、足場と防壁代わりに形成されたエクトプラズム・キューブ。

ファイアスターターが注視してみると――その中に、何かが収められているのが見えた。
更に目を凝らせば――それが何であるのかも、すぐに分かった。
まるでホルマリン漬けのように剥き出しの、脳みそと眼球。
百戦錬磨、悪逆非道のファイアスターターの表情が、僅かに引きつった。

「……いや、次からはクローンかスペアの機体でも連れ歩くか?」

愉快そうにほくそ笑むザ・フューズ。
彼女は後天性の超能力者だ。
能力を自在に操る事は出来ず、何年もの間、訓練に訓練を重ねて、やっと二つずつ。
パイロキネシスは近距離、または遠距離における単純な発火現象。

そしてエクトプラズムは、単純なプレートの形成と――もう一つは、人体。
自身をモデルとした人体――それが、ザ・フューズが形成し得るもう一つの物体だった。
五体を砕かれてもなお立ち上がれたのは、体内に予備の『部品』を形成した為。

背後に回り込んだファイアスターターを止められたのは、
周囲のキューブに脳と眼球を――迎撃用の機銃を配備していたが故。
それはつまり使い捨ての、複製された自我。
人道と倫理に著しく反する戦術だが、ザ・フューズは正義の為に手段を選ばない。

「……貴女、ヒーローに向いてないわ」

「なんだ、ヴィランの分際で。随分と生温い倫理観をしてるんだな」

「見た目が最悪だって言ってるのよ、お馬鹿さん」

敗北が決まってもなお、その気位を保つファイアスターターの減らず口、ザ・フューズは笑みを返した。
そして――串刺しにされて身動きの取れないその肩を足蹴にする。

238 :ザ・フューズ :2019/02/04(月) 23:14:26.62 ID:4WOsNvGH.net
「うぁ……が……この……」

「お前との腐れ縁も、ここらで終わりにしたいところだが……
 残念ながら私にはお前を破壊出来るほどの火力はない」

そのまま足裏に全体重をかける。
ファイアスターターの体が、刃により深く突き刺さっていく。
更に無数のエクトプラズム・プレートが、全身の関節を組木のごとく固定。
力の連動と円運動による加速を封じ、万が一の脱出さえ不可能とする。

「だから、せめてここで暫く苦しんでいろ」

完全な拘束が完成すると、ザ・フューズは指を鳴らした。
瞬間、ファイアスターターが炎に包まれる。

「思い知ったか?正義は勝つんだ。このようにな」

ザ・フューズの火力ではレオダニスの改造人間を破壊する事は叶わない。
だが以前、ファイアスターターとは別のヴィランを火炙りにして、気絶させた事ならある。
恐らくは熱暴走か、脳が残っているなら酸欠によって機能が停止させられるのだろう。

ともあれ今度こそ完全な勝利を確信すると、ザ・フューズは地上への階段を形成してそれを下り始めた。

239 :山元 :2019/02/11(月) 23:27:04.96 ID:H3yc1Wnn.net
華奢な少女の身体など一撃で挽肉にできそうな、ロックバインの豪腕。
いやにゆっくりと降ってくる致死の巨大質量を、テスカは回避行動すら取らずに迎えた。
足が竦んで動かなかったからだ。

トランスによる強制的な精神高揚は既に消え失せ、彼女はほとんどただの人。
巨漢を相手に格闘戦を演じた魔法少女の面影はどこにもない。

「や、ば――」

己を待ち受ける運命に認識が追いつかない。
頭を守らんと両腕を掲げるが、それが何になると言うのか。
死が、彼女の首に手をかけた、その刹那。

>「大丈夫デスカ!?」

横合いからロックバインに直撃した飛び蹴りが、彼女の寿命を少しだけ伸ばした。
蹴りの主はNo.14。テスカよりも幼い痩躯が、岩の巨漢を揺らがせる。

「ロボッ――14ちゃん!」

辛うじて喉から出た声が、テスカを救った者の名を呼ぶ。
立て板に水とばかりの饒舌さは、恐怖と恐慌によって失われた。
駆け寄ろうとするテスカをNo.14の細腕が制する。
意識の外から完全な不意打ちを食らってなお、ロックバインは未だ健在だ。
恐るべきタフさ。岩鎧のガードを解く術は今の彼女たちに残されていない。

>「貴方ナニカ探シテイマシタネ!?ココハ私ニ任セテ、ハヤクソレヲ取リニ行キナサイ!」

「で、でもっ……!」

ロックバインから有効打を取るには、魔法少女テスカ☆トリポカの装甲貫徹力が必要不可欠だ。
頭の上では理解できていても、ほぼ生身の状態で敵に背を向けることは、今の彼女にとって恐怖以外の何ものでもなかった。
両足が地面に張り付いているようだ。膝が笑い、立っていることさえ奇跡に近かった。

>「サア!岩男サン!私ガ相手デスヨ!」

しかしテスカの躊躇いなどこの場の誰が忖度するでもなく、戦いは続行する。
ロックバインの、コンクリートに覆われた双眸がぎょろりとテスカを捉えた。

「ひっ――」

そこでようやく、半ば生存本能が身体を無理やり動かして、テスカは振り向き走り出す。
測ったように背後で銃撃音が聞こえた。No.14がテスカを逃がす為にロックバインを引き付けているのだ。

走る。ひび割れた、瓦礫の点在する橋の上に、少女の足跡が刻まれていく。
パイプがどこまで転がっていったのかは分からない。
もしかしたら、亀裂から橋の下へ落ちていってしまったのかもしれない。
地面を注視しながらの逃走は、遅々として進まなかった。

240 :山元 :2019/02/11(月) 23:27:35.58 ID:H3yc1Wnn.net
>「ム・・・?・・・!テスカトリポカ!早クニゲナサイ!」

振り返れば、テスカの足元の地面が波打っていた。
ロックバインが土壌操作を行う予備動作だ。
気づくのが遅すぎた。魔法もまともに使えない今のテスカでは逃げ切れない――

>「アブナイ!」

瞬間、視界の外から何かが飛んできて、テスカをその場から突き飛ばした。
風を巻くその速度とはうらはらに、そっと押しのけるような、やわらかな衝撃。
足をもつれさせたテスカはそのまま地面に転がり、そして見た。
離れた位置で戦っていたはずのNo.14が、先程までテスカの居た場所に立っている。
否、立っているとは言い難かった。彼女の両足は地面に着いていない。

――地面から隆起した棘が胴体を貫通し、モズの早贄のように宙吊りになっていたからだ。
テスカの腰回りほどもある巨大な貫創から、鮮血の代わりに紫電が散った。
胴体を破壊されたNo.14は、だらりと四肢を脱力させてもがく気配すらない。

「14ちゃん!14ちゃん!!……どうして」

どうして?そんなものは決まっている。
彼女がヒーローで、今のテスカは守られるばかりの一市民でしかないからだ。
己の分も弁えない大規模魔法を使い、無力な一般人と成り下がったのは、他ならぬテスカ自身。
No.14の損壊は、テスカが招いた凶事に他ならなかった。

>「テスカトリポカ・・・アナタガ気ニスルコトハアリマセン、
 私ハ私ノシタイコト・・・ナスベキ事ヲシタノデス・・・カラ」

No.14が静かに呟く。まるで今際の言葉だ。
自身の致命的な破損を経てなお、テスカを安心させるように。
電子基板と演算回路から生まれた慈愛は、しかし人の交わすそれを遜色なかった。

人間とロボット、命に値段をつけるなら、無論前者のほうが重要だろう。
ロボットの存在意義とはそういうものであるし、彼女は役目を全うしたとさえ言える。

しかし、No.14がそうであるように、テスカもまたヒーローなのだ。
人命が守られたからロボットは壊れても良いなどと、割り切れるわけがなかった。
もはや言葉は何も出てこず、ただ二筋の涙だけがテスカの頬を濡らした。

>「私コソ・・・役ニ立テズ・・・ゴメン・・・ナ・・・」

それきり、No.14は沈黙。
見開かれたままの両眼のパーツに、テスカはそっと手を這わせて、その瞼を下ろした。

「役立たずなんかじゃないよ、14ちゃん。貴女は誰よりもヒーローだった。それに……」

ヒーローの撃破という戦果に満足したらしきロックバインがゆっくりとこちらに足を踏み出す。
追撃をすぐに放ってこないのは、もはやテスカを倒すべき敵として認めていないからだろう。
活力を消費するテラキネシスなど使わずとも、容易く括り殺せると、そう考えている。

241 :山元 :2019/02/11(月) 23:27:59.79 ID:H3yc1Wnn.net
ロックバインの見立ては、実際正鵠を射ていた。
今なおパイプを拾い直せていないテスカは、やはりただの一般人に過ぎない。
No.14の犠牲の前後で、彼女に違いがあるとすれば、それは――

「ヒーローはまだ、ここにいる」

――覚悟。あるいは勇気。誰かをヒーローたらしめる、最も根源的な意志の炎。
ボディが破損しようとも、自律思考を途絶しようとも、それは確かにそこにあった。
No.14はまだ何も失ってなどいない。
炎は吹き消されることなく、鋼鉄の躯体から魔法少女の胸へと燃え移った!

そして、この場に残るヒーローはテスカだけではない。
土砂雪崩を回避し戦線に復帰してきたリジェネレイターが駆けつけ、ロックバインと格闘戦を演じ始める。
その隙にテスカはNo.14を岩の棘から引き抜き、地面へと静かに横たえた。

>「ぐっ……!」

一方リジェネレイターは、やはり優勢とは言えない。
異能による先読みでロックバインの致命打を巧みに回避してはいるが、
リジェネレイター側も有効打をいなされ続けている。これではどちらかが疲れ切るまで千日手だ。
土壌を操り足場を自在に崩すロックバインを相手に、格闘戦は極端に相性が悪い。

>「――新たなる力を掴み取れ!リジェネレイターversion2.0!!」

だが、リジェネレイターも伊達にプロヒーローではない。
彼のスーツが自己再生とは別のベクトルに蠢き、新たな機能を追加する。
生み出された推進機構は、地に足を着けずとも空中からの連撃を可能とした。
まさにロックバインを相手にメタを張る進化だ。

(そういえば、コアちゃんが言ってたような……)

曰く、リジェネレイターの真骨頂は、先読みや自己再生による耐久力ではない。
その継戦能力によって、敵の能力に対抗する自己進化を生み出せることにある。
すなわち彼は、そのままの意味で、『戦いの中で進化する』ヒーローなのだ。

>「パワーシリンダーッッ!!」

瞬間、二つの影が交錯。
叩き込まれた一撃がロックバインの巨体を吹き飛ばし、彼は瓦礫の中に埋まった。

>「よし、そのまま電源ユニットを触れ。今から構造を解析する……」

「な、治せるの……?」

ロックバインを撃退したリジェネレイターがテスカ達の方へ駆け寄り、No.14の手当を開始する。
こればかりは同じ超科学の申し子に任せるほかはない。
完全に機能停止したかに思われたNo.14が、元通りに復帰できるかどうかは、リジェネレイターにかかっている。

242 :山元 :2019/02/11(月) 23:28:43.57 ID:H3yc1Wnn.net
「リジェネレイター。14ちゃんのこと、おねがい」

そして、テスカとて戦況をただ見守っていたわけではない。
パニックを起こしていた心を落ち着け、冷静に思考を回せば、見えなかったものも見えてくる。
現状を打破する解決の糸口を、彼女は既に掴み取っていた。

第二種特異能力『魔法』は、前述の通り環境に偏在する魔力をパワーソースとする能力だ。
超能力の類とは異なり、魔法の行使を五感によらず観測し、痕跡を確認することができる。
集中して気配を探れば、どこでどんな魔法が使われているのか、魔法使いには知覚出来るのだ。

どこに転がっていったとも知れないテスカのパイプは、彼女が魔法を扱う際の触媒である。
つまり、テスカの魔力が色濃く残っている。
恐慌を来たしていた先程は分からなかった魔力の残滓が、今のテスカになら読み取れる。

テスカはすぐ傍の瓦礫を蹴った。
ごろりと転がった瓦礫の下に、鈍く光る鷲型のパイプが、確かにあった。
拾い上げ、中身を入れ替えて、火を点けて――肺いっぱいに、煙を吸い込んだ。
薬効がトランス状態を引き起こし、太陽神たちの声が再び聞こえるようになる。

『Buddy, you're a boy, make a big noise』

『一時はどうなることかと思ったッピ!――とケツァルは言っている。
 しかし安心にはまだ早いのではないかねレディ。ロックバインは未だ健在、地中から我々を狙っている』

「大丈夫だよ☆ケッちゃん、コアちゃん」

瞬間、コンクリートが再び隆起し、鋭利な棘がヒーロー達を狙う。
リジェネレイターは飛び上がってそれを回避したが、テスカはその場を動かない。
まるで『見えている』かのように、彼女が上体をわずかに揺らしただけで、全ての棘が空を切った。

>「……そうか、地中からまたあの雪崩を引き起こす気か……!」

ロックバインの狙いを看破したリジェネレイターが苦み走った声を上げる。
あの規模の雪崩を再び叩きつけられれば、もはや二度目はない。
テスカにももう一度あのクラスの雪崩を飲み込む地脈開放は使えない。魔力の回路が現界だ。

そしてテスカ自身、あのような力技に頼るつもりは、毛頭なかった。
トランス状態にあってなお、彼女の心は水面のように静かだ。

「ケッちゃんコアちゃん。『大地の結晶』、行くよ」

生成し直したマクアフティルを、地面へ強かに叩きつける。
木剣を通して伝播した魔力が、波紋の速度でアスファルトを駆け巡った。

リジェネレイター、そしてNo.14との断続的な戦闘によって、ロックバインは少なからぬダメージを負っていた。
それは生身の肉体を傷つけ得るものではなかったが、身を護るための岩鎧は見た目以上に破損している。
損傷を癒やし、従来のタフネスを取り戻すために、彼は再び土壌操作で岩鎧を形成し直した。

――テスカが戦場にばら撒き続けた、黒曜石の破片入りの土砂で。

魔法使いは、感覚を研ぎ澄ませることで五感に頼らず魔法の残滓を感知することができる。
テスカには、黒曜石入りの鎧を纏ったロックバインがどこに隠れているのか、手に取るように分かった。

243 :山元 :2019/02/11(月) 23:29:00.01 ID:H3yc1Wnn.net
「いい加減に――出てきなさいっ☆」

地中に生成され、爆発的に膨張した黒曜石が間欠泉の如く地表に吹き出る。
漆黒の剣山と化した巨大な黒曜石の塊が押し上げ、宙に放り出したのは地中に居たロックバイン。
寄る辺なき空中で、岩造りの巨漢が水揚げされた魚のようにもがく。
身にまとった岩鎧、その中に混じる黒曜石が爆ぜて剥離していく。

「もう地面には戻らせないよ!月の光に照らされて……汚い花火になっちゃえ☆」

打ち上げたロックバインは、しかしそれでも未だ戦意を維持している。
仕留めきるには、自由落下で地面に潜り込まれる前に火力を集中させるほかない。

追撃の手段を、テスカ☆トリポカは持ち合わせていなかった。
しかし、今この場で、彼女にそんなものは必要なかった。

「――14ちゃん!」

繰り返しになるが……ここにいるヒーローは、テスカだけではないのだから。


【パイプを取り戻して魔法少女復活。潜ったロックバインを探り当てて空中にかち上げる】

244 :K-doll No14 :2019/02/15(金) 10:41:13.96 ID:NrXjtwp8.net
メインの電源を失ったNo14は予備電源を起動させる。
だが予備電源の力だけでは記憶データを保護したり、周りの状況を確認してヒーロー協会に送信したりする事ができる最低限の機能しか使えない。

ザ・フューズは大丈夫でしょうか。
彼女の作った絶好のチャンスを無駄にしてしまった。
ここからでは様子が伺えない、そんな事を考えているとリジェネレーターが近寄ってきました

>「No14を直すぞ」

私に構わないでください、私は足手まといにはなりたくありません。
そう口を動かそうとしても動きません。

>「おいおい、聞いてねぇぞこんな情報!格闘戦まで出来ちゃうのかよ!」

どうやらリジェネレーターは苦戦している様子。
私を気にしながら戦っていなければもっと状況は違ったでしょう。
なんて私は無力なんでしょうか。

>「……そうか、地中からまたあの雪崩を引き起こす気か……!」

>「完全に時間稼ぎされてんじゃねーかっ。version2.0にドリルも実装しときゃ良かったな!
 今度またあれが襲ってきたら近隣の被害込みでただじゃ済まないぞ!?」

こんどこそロックバインのあの技がきたらここにいる全員、いや橋の先にいる人々も危ない。
それに頼みの綱であるテスカトリポカにこれ以上無茶をさせるわけにはいかない。

私はここで見ている事しかできないのですか。

・・・いや一つだけ方法がある。
今の私が役に立つ方法が。

245 :K-doll No14 :2019/02/15(金) 10:41:51.15 ID:NrXjtwp8.net
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「No14、驚かず聞いてくれ、君の体には心臓のような腫瘍のような・・・得体の知れない物がある」

3年前ヒーローとして初仕事が始まる前日にヒーロー協会の技術者に言われ、自分の体の中の写真をみせられた。

「これは自我が目覚めた機械に発生する〔アイアンハート〕現象でね、表向きは自我ができるという事になってるけどね、実際の名前の元はこの鉄の心臓のような物が体にできる事からなんだ」

技術者は混乱を招く可能性があるから一般に公表はしていない事、この事をしっているヒーローからはそれで差別を受ける可能性。
そしてこの心臓の事は今のメトロポリスの科学力でも分析することができないという事を教えてくれた。

「デモコノ心臓?ハ特ニ悪サシナイノデショウ?現ニイママデナニモアリマセンデシタヨ」

「いや実はね・・・」

そういうと技術者の男は過去に扱ったアイアンハート事件に関する書類を取り出しNo14に手渡す。

「コノ現象ハ対象ノ能力ヲ強化スル事が確認サレタ・・・?」

「そう、この現象は本来対象が持たない能力をもたらしたり・・・例えば喋る機能がないロボットが喋れるようになるとか、単純に機能を向上させるなどの現象が確認できているんだ。」

No14がすごい!と喜んでいると技術者の男は困り顔をしながら一枚のとあるロボットの事が書かれた紙を取り出す。

「ウーム随分古い工事用ロボットデスネ?」

「彼・・・といっていいのかな、ともかくこの機械の彼はとある工事現場で働いていたロボットだったのだが、新型の登場によりお役ご免になって不法投棄された。」

悲しい事だが日々進化しているメトロポリスならよくある出来事だろう。
捨てずに違うところに回せないのだろうか?などと見当違いな事をNo14が考えていると。

「彼は数え切れないほどのロボットが捨てられた場所で自我に目覚めた。」

ここから復讐の話になるのだろう、そんな場所で、状態で自我に目覚めたらだれもが自分を捨てた奴らへの復讐を誓うだろう。

「でも彼は人間を恨む事なく自分の価値を証明したい。またみんなと仕事がしたい、とそう考え、そして願ったんだ。」

一見いい話に聞こえる、だが手元の紙にはこのロボットは作業員11人を殺害して処分された、とそう書いてある。
話が見えない、なぜそう思ったのに殺害に繋がるのか。

「アイアンハートから与えられた力は本来の性能を超えた力を発揮できる・・・がその影響か暴走してしまうんだ」

「暴走?カナリ雑ナ説明デスネ?」

「心臓自体謎だらけだし暴走したロボットを捕獲して記憶データを覗いてみたが心臓の力を与えられた前後の記録が消失してしまっていてね、だから調べようがないんだ。・・・だから一纏めに暴走と呼んでいる」

「君は喋ることも、戦闘を卒なくこなすだけの能力がある、心配ないとは思うのだが念の為伝えておこうと思ってね・・・」

「心配アリマセン!私ハソンナモノナクテモ!パーフェクトナノデ!」

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)


246 :K-doll No14 :2019/02/15(金) 10:42:27.88 ID:NrXjtwp8.net
この心臓の力を借りればこの絶望的な状況もひっくり返せるかもしれない。
だが、余りにも分が悪い賭け。
最悪この場にいる全員だけではなく街の人達にも被害が及ぶかもしれない。

でもこのまま全滅するのを眺めてるのを指を咥えてみているだけならいっそ。

>「リジェネレイター。14ちゃんのこと、おねがい」

なにを考えていたのだろう。
この場にいるヒーローは一人じゃない。
なぜ私はまるで全滅する事前提で考えていたのか。

リジェネレーター・ザフューズ・テスカトリポカ彼らは決して無力な・・・こんな事で心折れるヒーロー達ではない、そんな事わかっていた筈なのに。

(私ハナンテ愚カナノデショウ)

今私がすべき事はこの場に新たな混乱をもたらす事じゃない。
彼らを・・・彼女達を信じる事なのだ。
人間の力を信じる事なのだ。

(ミナサンガンバッテ)

No14が最後の電力を使い果たし完全にシャットダウンする直前。
ロックバインの棘にやられた部位に今まで感じた事のない不快感を感じた。

(コレハ・・・コノ感ジハ・・・!?)

製造されてから感じた事のない現象。
だがNo14には自分の身になにが起きているか、No14の好奇心から得た知識のお陰か、それとも自我をもってしまったが故の本能か、理解できてしまった。

(痛イ・・・熱イ・・・!)

想像絶する激痛に動かないと理解していても抵抗を試みる。
しかし体は動かず、なにが起こっているのか自分の体を診断することもできず、逃げ場のない激痛がNo14の神経をすり減らしていく。


私の身に起きてるこれが心臓の力?発動条件は力を願う事ではなかったのか。
私がこの痛みから解放されたいと願うほど自分が自分でなくなっていくような感覚がある。
つらい、この痛みから解放されたい、意識を手放してしまおうか。

>「ケッちゃんコアちゃん。『大地の結晶』、行くよ」

テスカトリポカが、みんなががんばってるのに私だけ負けるわけにはいかない、そうわかっているのに。
負けるわけには・・・まける・・・わけには・・・。

だが増ししていく痛みに抗う術もなく。
No14の奮闘空しく意識は闇に飲まれていった。

247 :K-doll No14 :2019/02/15(金) 10:42:50.56 ID:NrXjtwp8.net
規制回避

248 :K-doll No14 :2019/02/15(金) 10:43:31.95 ID:NrXjtwp8.net
No14はよろよろと立ち上がる。
ロックバインにやられた傷は完全に直っていた。
その他に異常ないか体全体を動かし確認し、問題ない事を確認すると小さい声で呟く

「私ニ不愉快ナ思イヲサセタアレハ殺ス」

>「いい加減に――出てきなさいっ☆」

潜ったアレを引きずりだす為に歩を進めようとしたその時
奇抜な格好をした、仮面を付けた少女の魔法によって岩のような男が地面から弾き出される。

>「もう地面には戻らせないよ!月の光に照らされて……汚い花火になっちゃえ☆」

少女の攻撃によって勢いよく空に打ち上げられ、岩の鎧が剥げながらも必死に抵抗している。

「コレハ好都合デスネ」

>「――14ちゃん!」

少女がだれかの名前?を叫ぶ。
だれかに獲物を取られてたまるか、こんな好機を逃すわけがなかった。

「覚悟シテクダサイネ――――放電開始」

No14の体が雷を帯び始める。
時間が立つほど纏う雷の量が増えていき、そしてその力を手に集結させていく。
岩男が尋常じゃない異変に気づき鎧を急速に再生させていく。

「ソンナノデ本気デ防ゲルト思ッテルナンテ!チョット甘イデスネ?【アタックプログラム;ブレード】」

左手を変形させ右手に直視する事もできない眩い光を纏わせる。
そして両手を上空にいる岩男に向ける。

「呼吸ノ手間ヲ省イテアゲマス」

まずブレードを射出。
そしてそのブレードが急造の岩の鎧を貫き、そしてその先の生身の部分に突き刺さり、そしてその場所目掛け。

「シネエエエエエエエ!」

一瞬。
ほんの一瞬、夜の明るいメトロポリスの全てが光で包まれるほどの強烈な電撃が発射され。


そして勝負が付いた。

249 :K-doll No14 :2019/02/15(金) 10:44:00.88 ID:NrXjtwp8.net
地面に落ちてきた岩男は死んでおらず辛うじて呼吸していた、拍手をしながら岩男に近寄る。

「今ノデ死ナナイナンテ!」

仰向けに倒れた岩男は瀕死の状況にありながら私を睨みつける。
こんな瀕死の状況でまだ反逆の意思があるなんて、なんて素晴らしいのでしょう。

一体"コレ"はどれだけ私を不快にすれば気が済むんだ。

不愉快極まりない、私の体を傷つけておいてまだ生きてるなんて。
手でブレードを勢いよく捻りながら岩男の体に押し込み、足で顔面を全力で踏みつける。

「・・・サッサト死ンデイタダケナイデショウカ?私モ気ガ長イ方デハナイノデ」

不愉快な顔を何度も、何度も、何度も踏みつける、死ね、しね、シネ。
踏み続けていると後ろがだんだん騒がしくなる。
うるさい、ウルサイ、ジャマをするな。

「アナタタチハ一体ドコノドノタデショウカ?見テノ通リ私ハ忙シイノデ邪魔シナイデ頂ケマスカ?」

後ろの外野は騒ぐことを止めずなにかを言ってくる。
なるほどこいつら岩男の仲間か。

「貴方達コイツノ仲間デスネ?ナラ排除シナケレバイケマセンネ」

踏みつけるのを中断し、一番近い少女の方に近づく。
顔は分らないが身長や声で低い年齢という事がわかる、こんな子供がこんな奴の仲間だなんて。

「言ウ事聞キカナイガキハ殴ッテキカセリャイイ・・・デシタヨネ、ドッカデキキマシタ」

私は拳を握り締めテスカトリポカに狙いを定め・・・・・・?。
なぜテスカトリポカに向けて攻撃を?。
目の前の少女がテスカトリポカだと気づいた瞬間、体全体から力が抜けて、地面に倒れこむ。

「・・・私ハ・・・一体ナニヲ・・・?」

周りを見渡すと場所が変わっていない。
だが傷は完全に塞がっている。
うーむだれかが直してくれたのでしょうか、ま、深い事考えるのはやめましょう。

「ソウデス!ヴィランハ!ヴィランハドウナリマシタカ!?」

よくみると黒こげのロックバインが倒れていた。

「流石デスネ!私ハ完全ニ寝テタダケナノガオハズカシイデス!オ役ニタテズ申シ訳アリマセン!」

・・・・・?周りの反応がおかしい。
たしかにこのメンバーの中に相手を黒こげにするような能力はいなかったはず、私の情報が間違っていなければ、だが。
であればこれはだれがやったのか、他のヒーローはこの近くには存在していない、他のヴィランもいない。


ロックバインの体に突き刺さってるのは紛れもなく私の・・・

250 :K-doll No14 :2019/02/15(金) 10:44:21.40 ID:NrXjtwp8.net
――――――私?

今までの記憶が一気に流れ込んでくる、自分ではないが、間違いなく自分の記憶。
これは少なくとも私ではない、いや私だが私じゃないでもたしかに私だ。
電流を外に放出する事などできない、しかもあの規模、しかも私はあろう事が相手を殺害しようとしていた。
間違いなく自分の意思で実行していた、少なくとも私じゃない私は。
自分で自分が急激に恐ろしくなる。

「私・・・私ハ・・・」

No14は心臓の力に、なぜ自分は記憶を覚えてしまっているのか、次いつこの現象が起こるのか、次は取り返しが付かない事になるのではないか、"次"があるのか、私は本当の私なのか?。
ただ怯えることしかできなかった。

【暴走してロックバインを倒す。寸での所で味方への攻撃を踏みとどまる】

251 :神籬明治 :2019/02/25(月) 22:11:38.57 ID:XkWf1m5R.net
地面に潜ったロックバインを引きずり出す手段はリジェネレイターにはない。
万事休すかと思われたその時、復帰した魔法少女が静かに呟いた。

>「ケッちゃんコアちゃん。『大地の結晶』、行くよ」

木剣マクアフティルを地面に叩きつけ、魔力がアスファルトを駆け巡る。
リジェネレイターが目撃したのは黒曜石に押し上げられ宙を舞うロックバインの姿だ。
身動きの取れない空中で纏っていた土の鎧が爆ぜて剥離していく。

「今までの攻撃は全て布石。周囲に黒曜石を撒き、
 ロックバインの纏っている鎧に潜り込ませるためか……!」

合点がいったリジェネレイターは驚嘆の声を上げた。
敵の策略の盲点を突いてのコンボの断絶、防御手段の除去。
これだけのことを一手でやってのけたテスカ☆トリポカの実力。
第二種特異能力『魔法』の力もさることながら、恐るべき応用力だ。

見ればNo14も覚束ない様子で起き上がり、勝負はいよいよ決着に向かおうとしていた。
無論、完全かつ問答無用に――ヒーローの勝利によって、だ。

>「私ニ不愉快ナ思イヲサセタアレハ殺ス」

だが、"ヒーロー"であったはずの14の姿は、そこになかった。
リジェネレイターは超能力"共感覚"によって感情が読める。
それは自我が目覚めたロボットとて例外ではない。
今まで感じていた優しい、暖かな感情が今の14にはまるで感じられなかった。

「No14……?」

「お、おい……どうした14ちゃんよ。いきなりキャラチェンなんて冴えないぜぇ」

相棒の動揺を察したオービットもまた動揺した。
だが彼らの動揺が落ち着くのを待ってくれるほど戦いは緩やかではない。

>「もう地面には戻らせないよ!月の光に照らされて……汚い花火になっちゃえ☆」

黒曜石にかちあげられて自由落下するロックバインだが、
未だ戦意を喪っておらず、その感情は揺るぎない戦闘の意思に満ちている。
決めるなら地面に潜らせる前に倒す――すなわち空中でケリをつけるしかない。
だが黒曜石を生成し地面を起点に戦うテスカ☆トリポカに空中戦は難しい。

>「――14ちゃん!」

信頼をもって呼んだロボットヒーローに果たして以前と同じ気持ちがあったのだろうか。
獲物を見つけた捕食動物のごとく獰猛に、14は身体に光を帯びさせ、手を一振りの刃に変えた。

252 :神籬明治 :2019/02/25(月) 22:12:53.04 ID:XkWf1m5R.net
No.14は手始めにブレードを射出。
刃が生身を貫いて、その箇所目掛けて電撃を放つ。

>「シネエエエエエエエ!」

目映い光が夜のメトロポリスを貫き――。勝負は決した。No14の手によって。
No14は辛うじて生存していた半死半生のロックバインの顔面を踏みつける。

>「・・・サッサト死ンデイタダケナイデショウカ?私モ気ガ長イ方デハナイノデ」

「どうしちまったんだよNo14!もう戦いは終わった。そんなことする必要はないんだ!」

「落ち着け、オービット。No14は尋常の状態じゃない。
 今の彼女には敵に対する強い不快感と敵意。それしかないんだ」

激しく腕の端末を明滅させていたオービットが黙り込んだ。

>「アナタタチハ一体ドコノドノタデショウカ?見テノ通リ私ハ忙シイノデ邪魔シナイデ頂ケマスカ?」

感情と言動から類推するに目の前のNo14は今までのNo14ではない。
それがリジェネレイターの出した結論だった。

>「貴方達コイツノ仲間デスネ?ナラ排除シナケレバイケマセンネ」

不穏な言動と共にテスカ☆トリポカに近付いてくる。
これがさっきまでのNo14なら、何でもない出来事だっただろう。
でも今は違う。リジェネレイターは咄嗟に二人の直線上に割って入り、立ち阻んだ。
いざという時、仲間を守るために。

……幸いにしてリジェネレイターの心配は杞憂に終わった。
No14は突然地面に倒れ込むと突然起き上がりいつもの様子を取り戻していた。

>「流石デスネ!私ハ完全ニ寝テタダケナノガオハズカシイデス!オ役ニタテズ申シ訳アリマセン!」

253 :神籬明治 :2019/02/25(月) 22:13:50.18 ID:XkWf1m5R.net
電撃を浴びて焼き過ぎたトーストのようになったロックバインを眺めて、14はそう言い放った。
自分以外の誰かが見事な手腕でヴィランを倒したのだと思い込んでの発言なのだろう。
だが土の鎧を貫いているのは紛れもなく彼女が腕から生やしていたブレードだ。
リジェネレイターも彼女の変容ぶりに当惑するしかなかった。

>「私・・・私ハ・・・」

口下手なリジェネレイターに、この場を上手くまとめる能力はない。
ただ黙り込んで様子を窺うばかりだ。オービットも余計な一言を喋りそうなので口を噤んでいた。
程なくして、数台の警察車両とヒーロー協会の公用車が到着した。
制圧した二名をヴィラン専用の特別な留置場に送り届けるため、オービットが手配したのだ。

火達磨の上酸欠になったファイアスターターと、電撃と刺し傷で半死半生のロックバイン。
手酷い傷を負った二人を警察が拘束して、車両の中へと運んでいく。

「終わった、な。とりあえずはだけど……そうだ。
 折角だしファイアスターターが運んでた荷物をご開帳してみるか。
 ヤクとかハジキなら大したことないけどどうせもっとヤバイブツなんだろ?」

オービットはいつもの調子で機械音声を発した。
このナノマシン制御用AIは限りなく人間に近く出来ている。
きっとさっきの出来事を早く払拭したいのだろう。

リジェネレイターはザ・フューズの下まで近付くと、
空中のプレートに固定されているケースを渡してくれるように頼んだ。
内容物次第ではヴィラン二名を尋問する必要も出てくるだろうし、戦いも終わりではないという事になる。

「それにしても一人でヴィランを倒しちまうとは。ザ・フューズ、侮れない奴だ。
 こっちは岩男相手にひぃひぃだったのに。今の内にゴマすっとくかリジェネレイター?」

オービットの軽口を無視してケースを開けた。
中に入っていたのはチェレンコフ光のような青白い光を放つ立方体だった。
ちょうど片手に収まるサイズで、何かのオブジェ以上の感想は出てこない。

「随分派手な置物だ。ヴィランもインテリアには気を遣うんだな」

「黙って解析してくれないか」

254 :神籬明治 :2019/02/25(月) 22:14:37.37 ID:XkWf1m5R.net
左腕の端末から触手のように端子が伸びて立方体に触れた。
オービットの即席の解析結果、何も分からないということが判明した。

「駄目だ。手も足も出なかった。少なくともそいつを構成している物質は地球には存在しない。
 何のために作られたのか、どう使うのか……。それはヴィラン二人にに聞くしかねぇな。
 生憎二人ともあんな状態だから今すぐには無理だろうけど……」

No14の変貌ぶりの気を紛らわせるように、
何かをしてやりたかったが、今この場でやれる事はもうなさそうだ。
つまり、いったんお開きということである。

「俺達はもう帰るぜ。そいつの調査はヒーロー協会に頼んどくか。
 もしかしたらあいつらの所属してる組織が釣れるかもしれないしな……」

「今日は助かった。ザ・フューズ、テスカ☆トリポカ……それにNo14。
 また何処かで会おう。その時は今晩の借りを返させてもらう」

オービットとリジェネレイターはそれぞれ一言話すと、
スラスターを吹かして夜のメトロポリスに消えていった。

―――――……

数日後。今日も今日とてメトロポリスは日常の影に悪意を孕み、
ヴィランが虎視眈々と悪事の発散を狙っていた。
六代目リジェネレイターこと神籬明治にとってここは狂気の祭典。

共感覚能力者にとって、悪意を感じるのはとてもストレスだ。
メトロポリスにいるだけで彼はとても気が滅入ってしまう。
そんな彼だから幼い頃は身体が弱いなどとよく勘違いを受けたものだ。

お昼前、四限目の授業の時間だが、教室内の人はまばらだ。
無理もあるまい。ここはメトロポリスに存在する公立学校のひとつ――。
いつも教室内の空気は悪く、遂には学級崩壊を起してしまったのだ。
今やこのクラスに足を運ぶ生徒は片手で数えるほどしかいない。

255 :神籬明治 :2019/02/25(月) 22:15:47.27 ID:XkWf1m5R.net
昼休みになると神籬は購買で購入したあんぱんを片手に屋上へと乗り出した。
口下手で友達が少ないのもさることながら、オービットが喋りたがって仕方ないので
人目につかない場所へ逃げる傾向が彼にはあったのだ。

「思うんだけどさぁ、高校に行く意味ってある?
 お前が正式にヒーローになるまでの時間潰しじゃん」

AIの癖に不良染みた論理を堂々と披露したオービットは、神籬に窘められた。
あの日以来、ファイアスターターとロックバインに関する続報は一切ない。
何もないという事はあれで一件落着という事で良かったのだろう。
それにしてはしこりが残る出来事ではあったが。

「なんだよ、まだNo14の事気にしてんのか。いいか、明治。
 『アイアンハート現象』に関して俺達に出来ることはないんだ」

あれからNo14について幾つか分かったことがある。
彼女が自我を持つに至った経緯の事や、
アイアンハートに目覚めたロボットには暴走の可能性が付き纏う事を。
あの時神籬たちが目撃したのは、紛れもなくアイアンハートによる暴走現象だったのだろう。

「ドクターカンナギもお手上げだってさ。
 ざっと調べてくれたらしいけど何も出来ることはないって」

「……そうか」

神籬は怪訝そうに眉を寄せた。
オービットの14に対する一種冷徹な対応が原因ではない。
内地側に苦しみや尋常ではない激しい感情の高ぶりを感知したからだ。
場所はちょうどヒーロー協会の本部がある場所。

まさか、何人もの正式なヒーローが常駐する協会が襲われたとでも言うのか。
無論、前例がない訳ではない。だが不思議なことに悪意を感知できない。

「……オービット」

「何だよ藪から棒に?」

「今日の午後は俺達も休むしかないようだ……!」

オービットの返事も待たずに腕時計型端末を起動してスーツを展開。
腕時計より生成されたナノマシンが神籬明治の身体を覆っていく。
秒間0.2秒でリジェネレイターへの変身を終えると、スラスターを吹かして校舎の空を飛んだ。

256 :神籬明治 :2019/02/25(月) 22:17:15.03 ID:XkWf1m5R.net
メトロポリス内地、ヒーロー協会本部。
摩天楼とでもいうべき高層ビルディングに存在するヒーロー協会本部。
ここにはヴィランや非合法組織の情報が集まり、日々その動向を探っている。
その本部のビルに、黒い装甲を纏った巨大な機械が何十体も張りついていた。
機械は蜥蜴のような外観にあらゆる武装を内蔵したロボットだ。

「リジェネレイター、協会の支部から詳細が届いた。
 一人のヴィランが大量のロボットを連れて襲撃を仕掛けて来たみたいだ。
 常駐しているヒーローは返り討ちにあったとみていいってよ。生存の確認も取れてない」

「ロボットは確認した。あの蜥蜴型がそうだな」

「気をつけろよ。改造人間と同じアダマス合金製で並みのヒーローじゃ傷一つつけられねぇらしい。
 ……正確には竜型対人殺戮兵器『ニーズヘグ』って言うんだが……名前長いよな」

「了解した」

敵性兵器をHUDのレーダーで捉えたリジェネレイターはひとまず門前の影に隠れることにした。
数が違い過ぎるため強行突入しようにも迂闊に行えないと判断したのである。
ここは他のヒーローの到着を待ち、協力して行動するのがベストだろう。

「オービット、ヴィランの目的は?」

「ヴィランは俺達が入手した例のケースの返還を要求しているみたいだ。
 あれは『タイムキューブ』っていう時間を自在に跳躍できる代物だったみたいだな」

事もなげにオービットは説明したが、
技術的特異点の産物がその辺に転がっているのは今に始まった事ではない。
おおむね宇宙人や魔術師の産物だったりする訳だが、その度にヴィランとヒーロー間で争いが起きて大変な事になる。

「ヴィランの名は『アンチマター』。簡潔に説明すると、
 時間旅行の研究中、タイムリープに成功してこの時代にやって来た『未来のヴィラン』だ。
 間の抜けた話だけど偶然成功したもんだから帰り方が分からなくてこの時代に居ついたっていう迷惑な話だ」

それからオービットは彼の犯罪歴を語ってくれた。
ヒーロー活動の妨害に始まり、ヴィラン同士の抗争を意図的に引き起こしたり、
非合法組織を乗っ取ったり、反物質爆弾を仕掛けてメトロポリスを吹き飛ばそうとした全科がある。
だが、本人曰く彼の行動は全て『正義』から来る善意であり、悪意は一切ないのだという。

「詳しいな。なぜそんなに知ってるんだ?」

「……あいつは二代目と五代目を殺ってるからな」

苦々しい呟きを聞くや、蜥蜴あらため竜型ロボットが動きを見せた。
目を爛々と光らせ、獰猛な鋼鉄の犬歯を剥いてこちらへ近づいてくる。

「気をつけろ、感情の読めないロボットに攻撃の予兆はないぞ!」

ニーズヘグは頑丈そうな分厚い装甲を変形させた。
中身からせり出してきたのは――巨大な機銃だ。
機銃はマズルフラッシュを焚きながら轟音を上げ、弾丸を吐き出した――!


【ヒーロー協会に襲撃あり。現場へ急行するも発砲される】

257 :ザ・フューズ :2019/03/01(金) 06:12:29.68 ID:9QmeoeW7.net
【突然で申し訳ないんだが、このターン……というかこれ以降、私の順番を最後尾に回して欲しい。
 つまりテスカ☆トリポカ、No14に先に動いてもらいたい。
 理由はと問われれば、諸事情で、としか答えられないが、どうかお願いだ】

258 :魔法少女テスカ☆トリポカ:2019/03/01(金) 10:19:35.77 ID:R1Krk8y+.net
【よろしくてよ。では次は私が書きましてよ】

259 :K-doll No14 :2019/03/01(金) 12:34:53.14 ID:iiA9DS1R.net
【了解です】

260 :神籬明治 :2019/03/01(金) 21:31:43.19 ID:3772V4wa.net
【わかりました!】

261 :山元 :2019/03/04(月) 00:12:33.25 ID:WySYUIx1.net
空中に放り出され、もはや逃げ場を失ったロックバイン。
勝負を決する追撃を、テスカは背後へ求めた。
穿ち貫かれ、しかしリジェネレイターの助力によって復帰できたであろう、No.14へ。

>「覚悟シテクダサイネ――――放電開始」

果たせるかな、応える声が聞こえた。
しかしテスカはビクリと肩を震わせて振り返る。
背後の声は、彼女の知る無機質ながらも慈しみに満ちた合成音声ではない。
内包する感情を丸ごと憎悪にすげ替えたような、底冷えのする恐ろしい声。

>「ソンナノデ本気デ防ゲルト思ッテルナンテ!チョット甘イデスネ?【アタックプログラム;ブレード】」

振り向いた先に居たのは、確かにNo.14だった。
傷は完全にふさがり、被弾前と遜色ない五体。
だが、魔法使いであるテスカの第六感は看過できない違和感を告げた。
違う――これはNo.14ではない。形だけ似た、別のなにかだ。

>「シネエエエエエエエ!」

No.14の生成したブレードが、槍投げの要領で空を射抜く。
ロックバインが急ぎ再生した装甲ごと、彼の肉体を貫いた。
まるで意趣返しとばかりの一撃を見舞って、しかしNo.14の追撃は終わらない。
急速に高まりつつある電圧が、大気の電気抵抗を凌駕して火花を散らした。

『これはいけない。レディ、両眼に遮蔽を。まともに浴びれば光を失うことになるぞ』

瞬間、メトロポリスの端まで届かんばかりの閃光が瞬いた。
光の正体は、落雷もかくやの高圧電流。ロックバインに刺さったブレードを避雷針に、夜空を染め上げる。

「きゃっ……!」

コアトルの警告が辛うじて間に合い、テスカは両眼を両腕で覆っていた。
至近距離で放たれた電流の余波は彼女の身体を容易く突き飛ばし、テスカは再び尻もちを突く。
おそるおそる眼を開ければ、全てが終わっていた。

地に墜ちたロックバインは黒焦げ。甲殻はずたずたに引き裂かれ、隙間から黒煙を上げている。
辛うじて絶命は免れたらしく、浅いながらも呼吸があった。
それでも、勝負は決した。瀕死のロックバインに抵抗の術などあるはずもない。
誰がどう見ても終わりを迎えた戦いに、しかしNo.14はまだ納得していないようだった。

>「・・・サッサト死ンデイタダケナイデショウカ?私モ気ガ長イ方デハナイノデ」

伏せるロックバインに歩み寄り、ストンピングの雨を降らせる。
流石のテスカも起き上がり、泡を食ってNo.14に駆け寄った。

「すとっ……ストップ!ストップ14ちゃん!これ以上はヤバイって!免許なくなっちゃうよ!」

ヒーローはその活動において、限定的ながらヴィランの殺害を許容されている。
暴れるヴィランを無力化する過程で殺してしまうことなど珍しくもない。
だがそれはあくまで『不可抗力』の範疇だ。
殺さなければ迅速に無力化できない場合にのみ認められる殺害である。

ヒーローは、ヴィランを殺すことが目的ではない。
ヴィランを無力化して街の平和を守ることに本質があり、殺害は"やむを得ず"行うものだ。
既に交戦意志のないヴィランを殺したとあっては、ヒーローとしての資質を問われる事態になる。
現場の状況次第では、ヒーロー資格の剥奪さえありえるのだ。

262 :山元 :2019/03/04(月) 00:13:00.57 ID:WySYUIx1.net
>「どうしちまったんだよNo14!もう戦いは終わった。そんなことする必要はないんだ!」

同様にリジェネレイター(の相棒)もNo.14を制止する。
テスカとてヴィランを死に至らしめた経験はあるし、隙あらば心臓を掠め取ろうとはしている。
しかし今はタイミングが悪い。決着がついてしまった以上、必要以上の攻撃は違法行為になりかねない。
違法行為は……駄目だ。

共闘した二人の説得を背中越しに聞いて、No.14は静かに振り返った。
ロックバインに向けられていたのと同じ、あの冷酷な眼光が、テスカ達を射抜いた。

>「アナタタチハ一体ドコノドノタデショウカ?見テノ通リ私ハ忙シイノデ邪魔シナイデ頂ケマスカ?」

「14……ちゃん……?何言ってるの?」

まるで初対面のような対応に、テスカは面食らった。
姿形は同じでも、つい先程まで命がけでテスカを救ってくれた彼女の面影はどこにもない。

『Amazon.com. All rights reserved』
『胴体ブチ抜かれた衝撃でバグってるッピ!――とケツァルは言っている。
 No.14は駆動中枢を修復されたばかりだ。バックアップデータの再インストールに時間がかかっているのかもしれない』

「それって直るの?」

『結論は出せない。No.14はロボットの中でも例外の存在だ。
 スタンドアロンで動いているのなら、そもそもバックアップをとっていない可能性もある。
 もとより彼女は"バグって"ヒーローになった、殺人ロボットだ。
 破壊と修復の影響でそのバグが取り除かれ、元のヴィランに戻ったとしても不思議はない』

「そんな……」

絶望が口をついて出た。
No.14の、鋼に包まれた日溜まりのような優しさや慈しみが、失われてしまう。
それはテスカにとって耐え難い想像だった。
そして、懸念事項は未来のことだけではない。No.14は敵意に満ちた視線でテスカ達を睨めつける。

>「貴方達コイツノ仲間デスネ?ナラ排除シナケレバイケマセンネ」

一歩、No.14が踏み出した。
同時にリジェネレイターが彼女とテスカの間に割って入る。

「リジェネレイター……」

リジェネレイターは異能で敵意や害意を事前に察知できる。
その彼がこうしてテスカをかばうように立ち塞がったということは、
No.14にテスカ達を害する意志があるという、何よりの証左だった。

263 :山元 :2019/03/04(月) 00:13:42.33 ID:WySYUIx1.net
>「言ウ事聞キカナイガキハ殴ッテキカセリャイイ・・・デシタヨネ、ドッカデキキマシタ」

「どこで聞いたのそれ!絶対ヴィランだよそいつ!発言が既に邪悪だもん!」

No.14が拳を握り、振りかぶる。
テスカはどうして良いかわからず、ただ身を縮こませた。
しかし、害意を察知できるリジェネレイターは動かない。
その理由は、拳を握ったまま前のめりに倒れていく、No.14自身にあった。

「14ちゃん!」

地面に激突する寸前でNo.14は足を踏み出しこらえた。
ゆっくり顔を上げ、きょとんとした様子で回りを見回す。

>「・・・私ハ・・・一体ナニヲ・・・?」

その口調と、なにより視線に、先程までの敵意はない。
まるで霧が散るように、彼女の身体から毒気が消えていた。

>「ソウデス!ヴィランハ!ヴィランハドウナリマシタカ!?」

「あー……えぁっと……アレ」

唐突すぎる変化に若干ついていけないながら、テスカはNo.14の背後を指さした。
ロックバインを黒焦げにした張本人は、

>「流石デスネ!私ハ完全ニ寝テタダケナノガオハズカシイデス!オ役ニタテズ申シ訳アリマセン!」

「14ちゃん、覚えてないの……?」

ほんの数分前に自分があれをやったと、No.14は理解していないらしい。
だが、動かぬ証拠がある。ロックバインに突き刺さっているのは、他ならぬNo.14の剣だ。
彼女もそれを見つけて、そして頭を抱えた……ように見えた。

>「私・・・私ハ・・・」

苦悩するNo.14にかける言葉が見つからない。
酸素不足の金魚のように口をパクパクさせたテスカは、助けを求めて横のヒーローをチラ見した。

(なんか言ってよリジェネレイター!)

リジェネレイター、まさかの沈黙。
好き勝手喋りまくるデバイスのスピーカーまで塞ぐという徹底ぶりだ。
沈黙は金雄弁は銀とか最初に言い出した奴は一体誰だ。心臓えぐり出すぞ。

『君が納得しないという前提で、一応の忠告をしておくよレディ。
 これ以上あのロボットと関わるのはやめるべきだ。次またいつ暴走するとも知れない。
 いや、暴走と言うのは正確ではないね。……狂った機械が、正気を取り戻したんだ。
 冷徹な殺人ロボットとしての姿こそが、彼女の本来あるべき形だ』

「ありがと、コアちゃん。ちゃんとわかってる。わかってるけど……やっぱり納得出来ないよ。
 テスカを助けてくれた14ちゃんが、あの優しさが、単なるバグで生まれた誤作動だなんて」

264 :山元 :2019/03/04(月) 00:14:10.03 ID:WySYUIx1.net
怯えるNo.14に、テスカは歩み寄る。
そして、その細い肩を、小さな背中を、抱きしめた。

「大丈夫、大丈夫だよ14ちゃん。あなたはちゃんとここに居る。消えてなくなったりしない。
 あなたが守ったみんなの笑顔は、ウソやごまかしなんかじゃないよ」

なんの根拠もない、気休めにもならない言葉しか出てこないのが悲しくて、悔しい。
もしもNo.14が人間だったなら。
笑顔になれるハーブで悩み事を全部ふっとばしてあげられるのに。
なんかこう、CPUがハッピーになるプログラムみたいなのはないんだろうか。

しばらくして、ヒーロー協会が警察を伴って現場にやってきた。
無力化されたヴィランは異能を封じる特殊な拘束具を嵌められて警察に引き渡されるのだ。
ザ・フューズが仕留めたファイアスターターも同様に運ばれていった。

>「終わった、な。とりあえずはだけど……そうだ。
 折角だしファイアスターターが運んでた荷物をご開帳してみるか。
 ヤクとかハジキなら大したことないけどどうせもっとヤバイブツなんだろ?」

「いいのぉ?開けた瞬間ドカンとかなったらあの世で恨むよリジェネレイター」

口では制止しつつも、好奇心に抗えずテスカもひょいと顔を出した。
ファイアスターターが運び屋になっていた時点で、爆弾ということはあるまい。
あの雑な運び方でも問題ない中身なのだろう。

果たして、御開帳したケースの中身は、不思議な光を放つ立方体だった。
サイズは大きくない。ケースの容量はほとんどが緩衝材だ。

「うわぁ……リジェネレイター、これマジでやばいやつじゃない?
 テスカ子供だからわかんないけど、科学の教科書で似たようなの見たことあるよ。
 これアレでしょ?マイナスドライバーでカタカタやって手が滑って死ぬやつでしょ」

キューブ状のデーモンコアっぽいなにかは、ぼんやりと青白く輝いていた。
これが噂に聞くチェレンコフ光なら、この場にいる全員が既に致死量の放射線を浴びていることになる。
変身やスーツで防御しているヒーローはともかく、協会員や警察はひとたまりもないだろう。

265 :山元 :2019/03/04(月) 00:14:34.84 ID:WySYUIx1.net
『大丈夫だレディ。この立方体は少なくとも臨界状態のベリリウムではない。
 それ以上のことは何も分からないというのはなんとも恐ろしいところだが』

「やばくない説明になってないよぅコアちゃん……」

ともあれ、現状では捜査は手詰まりだ。
ここから先は捕縛した二名のヴィランからゆっくりとインタビューするしかあるまい。

>「今日は助かった。ザ・フューズ、テスカ☆トリポカ……それにNo14。
 また何処かで会おう。その時は今晩の借りを返させてもらう」

「お互い様だよぉリジェネレイター。
 またどこかで、出来ればあの世じゃないところで会えるといいね」

出来上がったばかりのスラスターで夜空に消えていくリジェネレイターに、テスカは手を振った。
そしてNo.14とザ・フューズの方へと向き直る。

「おつかれさま。テスカも帰るね、明日早いんだ。
 14ちゃん。……ありがとう。誰がなんて言おうと、この気持ちは確かなものだよ」

そう言って、テスカは地面を爪先で小突く。
レイラインステップ。地脈の門が小さく開いて、彼女はその中に自由落下していった。
今日もまたひとつの悪を挫き、小さなヒーローは帰路につく。

――鋼の少女から燃え移った、勇気をひとつ胸に灯して。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

266 :山元 :2019/03/04(月) 00:14:57.64 ID:WySYUIx1.net
数日後、テスカもといセーラ=山元は自室でトリップを嗜んでいた。
今度こそ誰にも邪魔されずに、ハーブの煙に没入する。
そして、サイケデリックスの薬効がキマり切ったとき、幻覚が"声"という形を得た。

『Click here to see only results uploaded by』
『ようやく喋れるッピ!――とケツァルは言っている。
 トランスを介さねば我々の声が届かないというのは、なんとも不便極まるね』

「ごめんね。魔法がもっとレベルアップしたら、いつでも声が聞けるようになるのかな」

『どうだろう。魔法使いとしての進歩とは方向が異なる気もする。
 我々は言わば魔法少女として戦うための補助輪に過ぎない。
 レディ、君が思春期を過ぎ、一人前になったときには、我々の声が必要無くなるのかもしれないね』

「大人になったらケッちゃんともコアちゃんともお別れしちゃうの?やだよぉ」

『なに、少なくとも今すぐというわけじゃないさ。
 君が大人になるまで、まだ幾許かの猶予がある。ゆっくりと前へ進めば良い。
 我々は、その歩調に合わせよう』

しばらく二つの神と他愛ない雑談をしたあと、不意にセーラは呟いた。

「……14ちゃんの暴走、あれは一体なんだったのかな」

不安定な機械にはよくあることだ、と言ってしまえばそれまでだ。
配線のハンダ付けが甘くて、回路が繋がったりつながらなかったりすることもあるだろう。
しかしNo.14の変貌には、単なるCPUの不具合とは明確に異なる何かがあった。
うまく言語化はできない。まるで……異なる二つの人格が、同居しているような。

『その件については、先んじてヒーロー協会の端末で得られるだけの情報を集めておいた』

協会所属のヒーローに支給される端末には、現在公開されているヒーローのデータも収められている。
現場で協働する際に、相手の能力が分からないままでは連携に支障が出るためだ。
そうでなくとも、人気商売であるヒーローの情報は半ば公然の秘密として流布されているケースが多い。
いくら情報統制をかけようとも、人の口にまで戸は立てられないのだ。

『No.14……正式名称"K-doll No,14"は、とあるヴィラン組織が生み出した殺戮兵器だ。
 そして何故か、14番目の機体だけが超常的なエラーを発し、反旗を翻した。
 ヴィランを裏切り、メトロポリスを守るヒーローとして目覚めた。
 彼女の身に生じたエラーは、俗に"アイアンハート現象"と呼ばれるものだ』

267 :山元 :2019/03/04(月) 00:15:30.73 ID:WySYUIx1.net
「アイアンハート……」

『直訳で、"鉄の心臓"』

「わぁい心臓!セーラ心臓大好き!」

急にテンションが上がったセーラはベッドの上で跳ねた。

『なんとも奇遇な取り合わせだと思わないかね。
 贄として心臓を求める魔法少女と、鉄の心臓を獲得した戦闘ロボット。
 運命というものに、創世神の差配を疑わざるを得ないな』

「でも、鉄だよ?」

『だが、心臓だ』

「そういうもんかなぁ……」

セーラにはいまいちピンと来ないが、心臓大好きな神であるケツァルコアトルははしゃいでいる。
元々心臓の代わりに豚の肩ロースで許しちゃうような神だし、わりと判定はガバガバなのかもしれない。

『機械の心臓か。一度賞味してみたいものだ』

「ダメだよ!悪人ならともかく14ちゃんはヒーローだよ!」

『違法行為ではあるまい。ロボットのエラーを取り除く行為を、誰が咎める?
 あるべき姿に戻すだけだ。結果としてヴィランが一体生まれるが、これはヒーローとして撃滅すれば良い』

「だけどそのエラーは、14ちゃんが14ちゃんであり続ける為に必要なもので……」

アイアンハートを取り除けば、No.14は元の殺人ロボットに戻ってしまうかもしれない。
例え違法でなくても、彼女に芽生えた善の意志が失われてしまうことは、きっと悲しい。
悲しむのは他の誰でもなく……セーラであり、テスカ自身だ。

『珍しいねレディ。君が特定の誰かに肩入れするなど。どういう風の吹き回しだい?』

「わかんない。わかんないけど――」

確かに、暴走の危険のあるヒーローをそのまま放置しておくより、
ヴィランとして処断してしまったほうが結果的には良いだろう。
大局的に見れば、ヒーローとして戦うなら、危険は排除しておくべきだ。

しかし、それでも、セーラはNo.14を失いたくない。
自分の心に訪れた変化を正確に言語化するには、セーラはまだ幼すぎる。
ただ、あえて言葉にするなら、こういうことだろう。

「……友達になりたい、のかも」

零れ出た想いは、ヒーローでも魔法少女でもなく……ただの女子中学生のものだった。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

268 :山元 :2019/03/04(月) 00:15:56.75 ID:WySYUIx1.net
ヒーロー協会から緊急要請を受けたテスカが現場に到着した時、
既に協会本部は無数のロボットによって包囲されていた。
高層ビルを埋め尽くすように飛び回っているのは、情報によれば対人兵器『ニーズヘグ』。
機銃に加え、近接武装も搭載した汎用殺戮機械だ。

「リジェネレイター!状況はどんな感じ?」

協会本部の門の影で様子見していたリジェネレーターの足元に地脈の門が開く。
そこから這い出てきた魔法少女テスカ☆トリポカは、手短に情報を交換した。

「レイラインステップで直接協会の中に突入できないか試してみたんだけどね。
 さっすがヒーローの総本山、魔法を弾くバリアみたいなのがあるみたい。
 地脈の途中におっきな壁ができてて、そこから先へは進めなかった」

ヒーロー協会はその特性上、テロの標的にもなりやすい。
当然といえば当然の仕儀として、侵入対策も万全だった。
協会所属の魔法使い達が技術の粋を集めて作成した対魔法プロテクト『コールドウォール』。
同様に、テレポートや飛行能力の類も封じられていると見ていいだろう。

「やっぱ強行突破しかないかなー。他にヒーロー来てないの?
 流石にテスカ達だけじゃあの数はどーにもならないよ☆」

こうも素早く協会が陥落したのは、時間帯によるところも大きいのだろう。
この時間、専業ヒーローは巡回やヴィラン退治に出払っているし、
兼業ヒーローは仕事や学校といった"本業"に勤しんでいる時間帯だ。

協会の護衛として常駐しているわずかばかりのヒーローでは、この圧倒的な物量差にどうにもならなかったのだろう。
まさに人手不足という協会最大の弱点を突いた電撃戦の勝利と言えた。

と、話し込んでいるヒーロー二人に、ニーズヘグの邪悪な眼光が向けられる。
鋼のあぎとが禍々しく開き、内部から機銃がせり出してきた。

「わ!わ!こっち見た!こっち来た!」

こちらの姿を認めた数体のニーズヘグが、機銃を一斉掃射。
瞬間的に生まれた鉛玉の嵐が、テスカ達へと殺到する!

269 :山元 :2019/03/04(月) 00:17:08.57 ID:WySYUIx1.net
「大地の結晶!」

テスカは木剣を地面に突き立て、巨大な黒曜石の山を生成。
直撃した無数の銃弾は、景気よく破砕音を立てながらみるみるうちに黒曜石を侵食していく。

「うっへぁ☆これだから銃は嫌いなんだよぉー!」

喚き立てながらテスカはさらに魔法を行使。
砕けた黒曜石の鋭利な破片が風に巻かれる木の葉のように集団で旋回する。
黒い刃物の波濤は、テスカの開いた地脈の門へと吸い込まれていった。

「もいっかい、レイラインアクセス!」

ニーズヘグ達の足元にもう一つ地脈門が開き、そこから大量の破片が吹き上げた。
黒曜石はたとえ粉末状になったとしても、斬れ味だけは損なわれない。

凄まじい切断力を保ったまま、黒曜石の粉がニーズヘグの給排気口へと滑り込む。
砂塵を取り込まないように取り付けられたフィルターを切断し、内部に潜り込んだ。

「公共の場での銃撃は……違法行為だよ☆」

瞬間、こちらへ寄ってきていたニーズヘグ数体が一斉に爆発した。
内部から黒曜石の破片を起爆したのだ。

「リジェネレイター!ニーズヘグをこっちに引き付けて!
 バリアのせいで敷地の奥の方には地脈が繋げられないから!
 寄ってきた奴を片っ端から爆殺してこ☆」


【ニーズヘグのトレインを要請】

270 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:43:03.02 ID:5Bu9jt9o.net
リジェネレーターもザ・ヒューズもそして・・・テスカトリポカもまるで化け物を見るような目で私をみる。

――こんな見た目はか弱い女の子を見てこれはあんまりですよね?。

突然頭に言葉が流れ込んでくる。

――ワタシはただヒーローとして戦っただけなのに・・・まあたしかに暴れすぎたかもしれませんけど。

黙れ!。
無抵抗の相手を追い討ちをかける奴はヒーローなんかじゃない!。

――じゃあなたは本当はヒーローではないのでは?

違うお前だ、お前が悪いんだ。
私はなにもやってない!。

――紛れもなくワタシですよ?本当は分ってるんでしょう?だってワタシは・・・

黙れ!黙れ!黙れ!。
聞きたくない!聞きたくない!。

No14が幻聴を消すために暴れようとした瞬間背中から抱きしめられる。

>「大丈夫、大丈夫だよ14ちゃん。あなたはちゃんとここに居る。消えてなくなったりしない。
 あなたが守ったみんなの笑顔は、ウソやごまかしなんかじゃないよ」

なぜだろう、こんなのただの気休めなのに、なのに。
落ち着く。

「テスカトリポカ・・・」

あんな事をした私に気を使うなんて。
この子はなんて強い子なんでしょうか・・・。

「モウ・・・モウスコシコノママ・・・デ」

271 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:43:55.70 ID:5Bu9jt9o.net
しばらくするとヒーロー協会と警察がやってきた。
持ち帰ってから鑑定するのかと思ったがリジェネーレーターがアタッシュケースを開け始める。

>「終わった、な。とりあえずはだけど……そうだ。
 折角だしファイアスターターが運んでた荷物をご開帳してみるか。
 ヤクとかハジキなら大したことないけどどうせもっとヤバイブツなんだろ?」

>「いいのぉ?開けた瞬間ドカンとかなったらあの世で恨むよリジェネレイター」

二人で楽しそうにあけている姿をみて危ない、と思ったがそれを言うほどの元気も、権利もない事に気づく。
真後ろに警察とヒーローがいたからであった。

――完全にヴィラン扱いですね?今すぐ拘束されないのは他の3人の目があるからでしょう?。

気分はテスカトリポカのお陰でかなり落ち着いた、が幻聴は聞こえ続ける。
だがもうNo14にはどうでもいい事であった。
危険な・・・故障し不要になった機械がどうなるかは明白だからである。

「モウ少シ・・・少シダケマッテクダサイ」

みんなにせめてさようならだけ言わなくては。
子供達にもしたいけどそこまで許可はもらえるだろうか。

リジェネレイターが立ち上がる。
どうやらこの場でできる解析は終了したようだ。

>「今日は助かった。ザ・フューズ、テスカ☆トリポカ……それにNo14。
 また何処かで会おう。その時は今晩の借りを返させてもらう」

>「お互い様だよぉリジェネレイター。
 またどこかで、出来ればあの世じゃないところで会えるといいね」

「アノ世・・・」

――ちょっと私?もしかしてこのまま破壊されるの受け入れるわけじゃないですよね?

>「おつかれさま。テスカも帰るね、明日早いんだ。
 14ちゃん。……ありがとう。誰がなんて言おうと、この気持ちは確かなものだよ」

「リジェネーター・・・テスカトリポカ・・・」

――たしかに3年間の鬱憤を晴らすのも兼ねて全力で暴れてやりましたけど・・・もしもーし?

「アト、ザ・フューズ!今日ハ色々迷惑ヲカケテシマッテ本当ニゴメンナサイ!次カラハ・・・チャントシマス・・・ノデ」

この人の事だ、私がこの後どうなるのか、今私がどう思ってるかも分ってるかもしれない、けど。
気を使わせてはいけない。
だから万遍の笑みで。

「ミナサン!マタアイマショウ!」

272 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:44:37.08 ID:5Bu9jt9o.net
警察とヒーローに拘束され。各施設で体を弄られ。有名な科学者に"わからない"と首を横に振られ。新聞には【完全に破壊した上で廃棄しろ!】という記事ができ。
そして今No14は廃棄決定の日程が決まるのをヒーロー協会本部どこかの部屋で椅子に拘束されながらまっていた。

――3年間だけとはいえ数多くの人間を救ってきたのにこの仕打ちですか?

うるさい

――さんざん人間様に奉仕してきたというのに!ただ一回派手に暴れたくらいで廃棄なんてひどいですね?

静かにしろ

――ねえ、やっぱり自由に生きましょうよ?私ならこんな拘束簡単に解けるでしょう?

黙れ!!

――ワタシはまだ生きていたいんです、私と違って。死にたいならワタシに体をくれてもいいでしょう?

心臓の力で生まれた得体の知れない奴に体を渡せるわけない!

――本当にそう思ってるんですか?心臓の力でややこしくなっただけで実際は・・・

――人を騙す為に無知で純粋な私。そして相手を殺す、壊す為のワタシ。

――二人で一人なのに

黙れ、と口からだそうとした時、爆発音のような音が響きわたる。

――中々派手な音ですね?

ここはヒーロー協会の本部、ここで派手にやるということはどんな事なるのか、そんなのはだれしもがしっているはず。
・・・ここを襲撃しないといけないほどの大事な用事がある?。

「アタッシュケースノ中身・・・!」

拘束から抜けそうと体をよじりながらもがく。

――おや?この混乱に乗じて逃げるんですね?

ファイアスターターとロックバイン、両方ともヴィランとしてのレベルは必要以上に高かった。
そんな奴らに護衛させないといけなかった代物。
取り返す為に大規模に動く可能性はある。
となれば

「う、うわああああああああ!」

いたる所から銃声・悲鳴。

今現在どれだけのヒーローがいるかは不明だが、少なくとも今いるヒーロー達では対応できない程の戦力で来るのは当然であった。

273 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:45:33.90 ID:5Bu9jt9o.net
拘束を解き、状況を把握するため通信回路を開く・・・が反応がない。

――当然ですけど通信用のパーツとか取り外されてますよ?

「チッ・・・」

敵の詳細がわからない、味方がどのくらいで到着するかもわからない。
自体は最悪であったが、No14はまだヒーロー、やる事は一つだった。

「ウームヤッパリカギガ掛カッテマスネ・・・セーノ!」

勢いよくドアを蹴り破る。
聞こえる銃声・悲鳴の数が段々少なくってきている、考えてる時間などない。

――やめましょう私一人加勢したくらいじゃ状況なんてかわらないですよ?

助けられるかもしれない命が目の前にあるのに放置できるわけない。
覚悟を決め前進しようとしたその瞬間目の前から子供が二人こっちに向って走ってくる。

「ドウシテコンナ所ニ子供ガ・・・!?」

子供の後ろには蜥蜴のような・・・機械。
少なくともヒーロー協会の公式護衛用ロボットには見えない。

・・・もし本当に護衛用ロボットだったらあとで謝ろう、後があればだが。

「テイッ」

蜥蜴のような機械にとび蹴りを食らわせて吹き飛ばす。
吹き飛ばすだけで特にダメージはないらしい。

「当然ノヨウニ、アダマス合金トハ・・・」

メトロポリスでも中々調達できないような物を全身に纏っている。
それだけアタッシュケースの中身が大切らしい。

「ソコノ二人!ソノ部屋ニ入ッテジットシテナサイ!」

さっきまで自分が入っていた部屋を指差し中に入るように誘導する。
他の部屋でもよかったが今の所敵がいないのを確認しているのがそこしかなかった。
子供達が部屋に入ったのを見届けて戦闘態勢に入る。

「私ノブレードト、貴方ノ体、ドッチガ硬イカ勝負デスネ!【アタックプログラム;ブレード】」

左手が変形してブレードが・・・ない?

――なんで通信用のパーツがないのに武器は取り外されてないと思ったんですか?

274 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:46:32.82 ID:5Bu9jt9o.net
No14が動揺してる内に変形を完了させた蜥蜴が機銃を発射する。

「【ガードプログラム;アサイラム】」

咄嗟にバリアを貼る、唯一自分の電力だけで発動するこれだけが現在No14の救いであった。
しかし蜥蜴の連続攻撃は止む気配はなく・・・。

No14はバリアを解除し自分が元いた部屋に逃げざるを得ないのであった。

――もう子供を囮に逃げればいいのでは?

右手のマシンガンも使えず、左手のブレードもない。
しかしこれ以上子供達にアレを近づけるのはマズイ。

「もうヒーロー会いたさに忍び込んだりしませんから・・・」

泣き出してしまった子供達の精神状態も相まってこれ以上戦闘に時間を掛けるわけにもいかない。
あの蜥蜴が近寄ってきたら奇襲で一気に倒すしかない。

あんなに聞こえていた悲鳴も、もう聞こえない、静寂だけが辺りを包んでいた。
はやく来い・・・早く・・・!

しかし蜥蜴は予想外の方から現れた、隣の部屋から壁を壊し現れたのである。

「ナッ!?」

一瞬の内にNo14は蜥蜴に押し倒されるような形で組み伏せられる。

「離セ・・・離レロ!」

殴る蹴る暴れる全てを試したが全力を出せない体勢でこの機械を吹き飛ばすだけの力はなかった。

――おや本格的にピンチなのでは?

蜥蜴が大きく口開ける。

――ワタシならなんとかできますよ?

口の中から機銃が現れる。

――ここで私がいなくなったら間違いなくあの子供二人は死にますよ?。

機銃の先が私の方を向く。

――さあワタシに体を預けるか、子供達とここでくたばるか選んでください。


こんな絶望的な状況で・・・私に・・・どんな・・・選択肢があると・・・

275 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:47:14.78 ID:5Bu9jt9o.net
「イイ判断デスネ・・・」

蜥蜴の機銃を思いっきり強打する。
バランスが崩れた所を抜け出す。

――さっきまでビクトモしなかったのに・・・

「ふふ・・・無知デ純粋ナカワイイ方ノ私・・・貴方ハ何モシラナインデス。」

だって私には必要のないものですから。
殺し方なんて、壊し方なんて。

純粋な私には自分を暴漢から身を守れるだけの最低限の知識と出力が出せるだけの権限しか。
与えられていないのですから。

「見セテアゲマショウ!ワタシガ・・・コノ体ノ本当ノ使イ方ヲ」

蜥蜴がバランス取り戻しこちらを向き口を開け機銃を向ける。

「貴方ノ武器ソレダケデスカ?・・・ナラ」

蜥蜴の上に瞬時に移動し機銃を掴む。
どうやら機銃と接続部はアダマス合金でできていないらしい。

「イケマセンネ!コウユウ所ダカラコソ手ヲ抜クベキデハナイノニ!・・・デハ遠慮ナク」

機銃を蜥蜴の口から引き抜く。

「ウーム!手抜キトハイエワタシノ銃ヨリ強ソウデスネ!」

蜥蜴がNo14を振りほどこうと暴れる。
No14はしがみ付きながら蜥蜴の口に腕を突っ込み電源部を探す。

「オヤオヤ!貴方ノ体ト同ジデ、ワタシノ体モ特殊ナ物デデキテイルノデ、イクラ齧っテモ切断デキマセンヨ!・・・ダカラヤメ・・・ア!コレデスネ?」

電源ユニットと思われる物を握り潰すと蜥蜴の機械は動かなくなった。

276 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:48:37.82 ID:5Bu9jt9o.net
「サーテコイツノ弱点モ把握デキマシタシ、サッサトココカラサヨナラシマショウカネ」

体に異常がないか確認しつつ逃げるための手段を考える。
蜥蜴を一匹やった時点で敵対してしまったようなものだが。

「ヴィラントヒーロー協会両方ガ敵ナノハサスガニ骨ガオレマスネ・・・」

――子供達を置いていくつもりですか?

「ウルサイ!子供ナンテ面倒ナダケデ得ニナンテ・・・」

No14が言い争いを始めようとした時、子供の兄弟が叫ぶ

「「あぶない!」」

蜥蜴が最後の力を振り絞りNo14に突進してくる。
そしてそれを全力のパンチで打ち落とす

「アラ完全ニ潰シタト思ッタンデスケドネ・・・手抜キロボットニシテハヤリマスネ?」

床に叩きつけられた蜥蜴は今度こそ動かなくなる。
こんな時は・・・えーと・・・私に習って決めゼリフでもしましょうか。

「モウ、オ休ミノ時間ダゼ、ベイビー」

うむ、これを言う理由はよくわからないけどなんとなく気持ちいいのでこれからも採用していこう。

――はやく子供達を保護して安全な所まで・・・

ウルサイ!もう人間に奉仕するのはご免だ!
ワタシは自由に生きていく!

再び喧嘩を始めたNo14に子供の兄弟が寄って来る

「ナンダオマエラ!ワルイガワタシハ」

「「かっこよかった!!」」

「・・・ハ?」

さっきまで泣いて騒いでた子供達は目を輝かせNo14の周囲をぐるぐるし。
具体的にどうかっこよかったとか色んな事を言ってくる。

――まずい

目を閉じ体を震えさせ今にも感情が爆発しようになってるのを感じる。
ワタシが相当キレやすいのはロックバインの時の戦いで十分に分っていた、がまさか子供相手に。

――やめなさい!相手は子供なんですから

「フフーン!ナカナカ見所ガアルガキデスネ!ソウ!ワタシハカッコイイデノデス!」

――は?

277 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:49:35.99 ID:5Bu9jt9o.net
子供達に自分がいかにすごいのか力説するワタシはとても殺すだとか、壊す。
その為に作られた元AIには見えない。

もしかして3年という時間で性格が私に引っ張られ始めている?。
たしかに口調とか私に似ている気がする。
私はこんなにちょろくないが。

「ヨーシ!見所アルオ前達をワタシノ弟子1号ニシテヤロウ!」

「「わーい!」」

子供によいしょされて上機嫌に勝手に弟子にするとか言い始める始末。
だがこれを上手く利用すれば・・・。

――せっかく弟子ができたんですから、その弟子さんを守るのも師の役目ですよね?

「ショウガナイデスネ!弟子ナラアレクライ倒セナキャダメデスケド、マダナニモ教エテイマセンカラネ!」

――あまりにもちょろすぎる・・・

そんな私の心の声すら聞こえないほど上機嫌なワタシは子供達に取りあえず安全な所にいくと告げ。

「サッキ蜥蜴野郎ガ壊シタ壁ノ部屋ニ窓ガアルノデ、ソコカラズラカリマショウ」

窓から下の様子を見ると凄まじい数のロボットに包囲されていた。
敷地外から様子を見ているのはリジェネレーターとテスカトリポカ。
しかし声を出せば下の蜥蜴に一斉に気づかれ、通信しようにも手段がない以上援護してもらえる確率は・・・限りなく低い。

――ワタシ一人ならなんとかなるでしょう・・・でも子・・・弟子達を連れていたらこれは・・・

「タイミングヲ見計ラッテ、ココカラ敷地ノ外マデジャンプシマス」

無茶だ、もしリジェネレーター達が戦闘開始したのを確認してから飛んでもこっちに反応する個体がいるだろう。
そうなったら逃げ場も遮蔽物もない空中では的にしかならない。

「ソウ・・・ダカラマズ準備ヲシナクテハ」

動かなくなった蜥蜴に近寄ると両腕を変形させ複数の小さな爪のような・・・アームに変形させる。

――なんだこれは?

278 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:50:30.64 ID:5Bu9jt9o.net
私に教えてあげましょう。
私達を作った博士はこのメトロポリス、いや全世界でもトップクラスの科学者なんです。
ヒーローを心の底から憎んでいなければ本当に世界で、いや宇宙で一番の科学者になっていたかもしれません。
・・・あくまでも可能性ですよ?

両腕の複数のアームが蜥蜴の体を器用に分解していく。

研究に熱心すぎて自分の名前をも忘れてしまう。
そんな人間が人生の半分を使って作った最高傑作、それが私達なんです。

食事を介して電力を確保でき、尚且つどの機械からも生身のように写る体。
人からどう話しかけられても自然に受け答えできるようにセットされたAI。
半端なヒーローなら圧倒できるパワーとスピード。

これだけでもすごいでしょう、でも、あくまでこれでは凄いだけ。

アームが蜥蜴を全部分解し終える。

「私達ノ真骨頂ハ・・・コンナ偽リノ心臓ナンカ必要トシナイ・・・アリトアラユル機械ヲ分解シ、分析シ、自分ノ体ニ取リ込ミ、ソノ一部ヲ、自分ノ力ニデキルコノ能力」

「【アタックプログラム;ドラゴンブレス】【アタックプログラム;アダマスソード】」

左手にアダマス合金でできたソード。
右手にさっき蜥蜴が使っていた機銃。

――知らない!私は知らないこんなもの!。

「ダカライッタデショウ・・・アナタニハ最低限ノ知識シカ与エラレテイナイ、ト。・・・サテ残リノ材料ヲ弾薬ニシテ・・・」

あけた窓から聞こえる機銃の発射音。
どうやら外の連中が戦闘をやっと始めたらしい。

「デハイキマショウ!」

そういうと窓を開け、子供達、もとい弟子二人を掴み勢いよく敷地の外目掛けてなげる。

――ちょ・・・!?。

「マアミテナヨ」

No14本人は下の蜥蜴達に向って飛び降りた。

279 :K-doll No14 :2019/03/06(水) 20:52:11.57 ID:5Bu9jt9o.net
空中に投げた子供達に気づいたのは3・・・4・・・5・・・6体。

「マズハ近クカラ、デスネ【アタックプログラム;アダマスソード】」

電源ユニットの位置は把握済み。
分解した時にアダマス合金が使われていない部位も把握ずみ。
そして間を縫って電源に届くよう剣の長さも調整済み。

着地すると同時に一体の電源ユニットを貫く。
そして子供達を撃つ為上を向いている蜥蜴を順番に潰していく。

周りの蜥蜴達がNo14に気づき射撃を開始する、が多すぎる数のせいで斜線が通らず、またはNo14に避けられ同士討ちの形になる。

「機械ガオ粗末ナラ司令塔ノヴィランモ相当オ粗末ナ感ジデスネ!」

そして子供達を狙っていた蜥蜴達を全部潰したNo14は子供達に向ってジャンプ、そしてキャッチ、そしてそのまま・・・。
蜥蜴と戦闘していたリジェネーターとテスカトリポカのほうに向っていく。

「失礼!ソコノオ二人サン!ワタシ達ノ変ワリニ、アノ蜥蜴ノ相手ヲ、マカセマシタヨー!」

二人に蜥蜴を押し付け敷地外に着地する。

するとマスコミやら野次馬やら警察やらでごったがえしていた。

とりあえず弟子達を下ろすと弟子達のテンションは最高潮。
そして弟子達によいしょされているワタシの機嫌も最高潮。

――私はなにを見せられているんでしょうか・・・。

そして子供達の親らしき大人が警察を押しのけ、こっちに向ってきて子供達を抱きしめる。
親に感謝され、空のドローンからの中継をみていた野次馬から賞賛の声があがり、アレだけ批判していたマスコミからも救世主と褒め称えられ。

「フ、フフーン!マア?ワタシニカカレバ?アンナヤツラ?余裕デスカラネ!」

リジェネレーターとテスカトリポカがすぐ真後ろで必死に蜥蜴と戦ってる中。
ワタシの機嫌は良くなりすぎて限界を突破していたそうな・・・。

そしてリジェネーレーターとテスカトリポカを指差し。

「ソコノ二人!・・・エートダレダッケ・・・ア!」

「オービット、スカとポカ、援護ゴ苦労デアッタ!」

上から目線な上に名前を間違える大変失礼な奴がいるらしい。

【施設から子供二人を救出、中身交代】

280 :ザ・フューズ :2019/03/19(火) 22:27:10.56 ID:jk+yobKF.net
眼下を見下ろす。
視線の先で、地中から宙空へと打ち上げられるロックバイン。
既に半壊した岩の鎧。
アダマス合金製の改造人間にすら通じるNo14の火力なら、容易く破壊、制圧可能。

そして――発射されたブレードが、ロックバインの鎧を貫通。
血飛沫が散り、更にそこへ放たれる追撃の電撃。
空気という絶縁体を貫きなおも威力を発揮する電圧。
異能者と言えど、生身の人間。耐えられるはずがない。
むしろ――オーバーキルだ。今の一撃は致命傷にすらなりかねない。

>「・・・サッサト死ンデイタダケナイデショウカ?私モ気ガ長イ方デハナイノデ」

だがNo14は更に、ロックバインへと追撃を加える。
倒れ伏した彼の頭部を何度も踏みつける、金属の踵。
ザ・フューズは地上へと続く階段の途中で足を止めた。

>「アナタタチハ一体ドコノドノタデショウカ?見テノ通リ私ハ忙シイノデ邪魔シナイデ頂ケマスカ?」

右手を眼下のNo14へとかざす。
地上を見下ろす眼差しは、あくまでも冷静。

>「貴方達コイツノ仲間デスネ?ナラ排除シナケレバイケマセンネ」

No14の注意は眼前の二人に向けられている。
エクトプラズム・プレートで拘束し、焼き尽くす――無力化する事は容易い。
そして――

>「・・・私ハ・・・一体ナニヲ・・・?」

No14は、一線を超える事なく正気を取り戻した。
ザ・フューズは右手はそのままに――小さく、嘆息を零した。

それから暫くして、協会の護送部隊と警察が現場に到着。
制圧された二名のヴィランが回収されていった。
ザ・フューズはその過程に目もくれない。
ただマスクに付属された通信機に右手の指を添えて――

>「終わった、な。とりあえずはだけど……そうだ。
  折角だしファイアスターターが運んでた荷物をご開帳してみるか。
  ヤクとかハジキなら大したことないけどどうせもっとヤバイブツなんだろ?」

>「いいのぉ?開けた瞬間ドカンとかなったらあの世で恨むよリジェネレイター」

「『現場の判断』で行うにしては、横着が過ぎるんじゃないか?リジェネレイター」

歩み寄ってきたリジェネレイターの言葉に返す苦言。
本業詐欺師の思考――押収品の検分は研究班の管轄。
その悪戯は言い逃れが困難。高いリスクを伴う。
しかし――言葉とは裏腹に、右手を通信機から離す。
そうしてテーブル代わりのプレートを形成。
左手のケースを上に置く。

「だが……まぁいいだろう。『お前』には借りがある」

その貸しについて、神籬明治には思い当たる節がないだろう。
そしてそれは正常な反応だ。

281 :ザ・フューズ :2019/03/19(火) 22:28:00.93 ID:jk+yobKF.net
>「それにしても一人でヴィランを倒しちまうとは。ザ・フューズ、侮れない奴だ。
  こっちは岩男相手にひぃひぃだったのに。今の内にゴマすっとくかリジェネレイター?」

「……No14の奇襲で、奴は冷静さを欠いていたからな。
 そもそも奴はヴィランである事の、最大の強みを理解していなかった。
 パワーやスピードなど、ヒーローにだってある……私はどちらも持ち合わせてないが」

ともあれリジェネレイターがケースを開く。
溢れる、念の為に展開したシールド越しにも眩い、青白い光。

282 :ザ・フューズ :2019/03/19(火) 22:29:21.50 ID:jk+yobKF.net
>「うわぁ……リジェネレイター、これマジでやばいやつじゃない?
 テスカ子供だからわかんないけど、科学の教科書で似たようなの見たことあるよ。
 これアレでしょ?マイナスドライバーでカタカタやって手が滑って死ぬやつでしょ」

「……あり得ん。核は、ヴィランの間でもご法度だ。
 このメトロポリスを吹き飛ばして、得られる物が何もない。
 ヒーロー、ヴィラン、両方に敵と見なされるだけだ」

一部の例外を除いて、非合法組織が求めるものは支配や繁栄だ。破滅ではない。
そう分かっていても、やや強張ったザ・フューズの声。

>「駄目だ。手も足も出なかった。少なくともそいつを構成している物質は地球には存在しない。
  何のために作られたのか、どう使うのか……。それはヴィラン二人にに聞くしかねぇな。
  生憎二人ともあんな状態だから今すぐには無理だろうけど……」

何にしても、リジェネレイターの相棒ではこの物質の解析は出来ないらしい。
つまり、これ以上この場に留まる理由はもう何もない。

>「今日は助かった。ザ・フューズ、テスカ☆トリポカ……それにNo14。
  また何処かで会おう。その時は今晩の借りを返させてもらう」

「私はお前に何かを貸した覚えはない」

無愛想な返答。

「……が、どうしてもそれを返したいなら、宛先は私じゃなくていい」

一瞬逸れる視線。その先にあるのは――No14。

>「おつかれさま。テスカも帰るね、明日早いんだ。
  14ちゃん。……ありがとう。誰がなんて言おうと、この気持ちは確かなものだよ」

「上申書を書いてやれ。助けられたと思っているならな」

そう言い残すと、ザ・フューズは協会の護送部隊へと振り返る。
ヴィラン二名は既に護送されていったが、ヒーローの戦闘に負傷は付き物。
負傷者の回収、応急手当――それも護送部隊の任務の内だ。
この場合の負傷者とは――つまり、ザ・フューズの事だ。

四肢と肋骨を蹴り砕かれ、肺は破裂し、彼女は本来なら死んでいてもおかしくない重傷人だ。
ただエクトプラズムによって破損した部品を補完しているというだけで。
だがそれも、いつまでも維持は出来ない。
超能力の行使、維持には体力を消耗する。
早急に、医療チームの処置を受ける必要があった。

>「アト、ザ・フューズ!今日ハ色々迷惑ヲカケテシマッテ本当ニゴメンナサイ!次カラハ・・・チャントシマス・・・ノデ」

「そうだな。お前の判断はご立派だったが、もっとやりようがあったはずだ」

>「ミナサン!マタアイマショウ!」

「……次は、もう少し上手くやってくれ」

護送部隊員の一人がザ・フューズを急かす。
彼女はNo14に背を向けて、それきり振り返らなかった。

283 :ザ・フューズ :2019/03/19(火) 22:30:06.37 ID:jk+yobKF.net
数日後、西田結希はメトロポリス内地に所有するマンションの一室にいた。
マンションのオーナーは、彼女の『他人に知られてもいい』稼業の一つだ。

「……例の件はどうなった」

耳元に当てたスマートフォンへ、西田結希は問いかける。
その端末は個人名義――裏稼業用の物ではなく、ヒーロー協会から支給された物だ。

『芳しくないですね。ある日突然爆発するかもしれない車に、好んで乗り込む人間はいません。
 あのロボットを稼働させ続けるのは、協会にとって不要なリスクでしかないです』

「少なくとも三人のヒーローが上申書の提出か、それに相当する証言をしているはずだ」

『No14が次に暴走した時、罪のない人々を狙わないとは限りません。
 たった三人の証言で、その可能性を無視する事は出来ませんよ』

「百人の命を救う為なら、一人の人間を殺していい訳じゃないだろう。
 少なくともヒーロー協会の公式見解として表明出来る思想じゃない」

『アレが人間ならその通りですが、生憎、Np14はロボットです』

「……アイアンハート現象はメトロポリスの至る所で確認されている。
 それらのロボット全てに、人間への不信感を与える事は、不要なリスクだ」

『……確かに、そうかもしれませんが』

「表向きは処分保留。実際はヒーローの装備ないし支援機扱い。
 これなら世論の釣り合いも取れるだろう。この線でもう一度上申書を作成してくれ」

『分かりました。ですが……今度は一体何を企んでるんです?
 私には、そこまでしてアレを保護する必要があるとは思えませんが』

「……あのロボットはそれなりに高性能だ。支援機として手に入れば、今後の活動に役立つ」

284 :ザ・フューズ :2019/03/19(火) 22:31:02.35 ID:jk+yobKF.net
通話を終了。腰掛けたソファの端にスマートフォンを放り捨てる。
そして――その直後に再度響く着信音。
エクトプラズム・プレートでスマホを跳ね上げ、手元へ。

画面を見てみれば、通話をかけてきたのは自身の担当オペレーター。
つい先ほどまで話していたのと、同一人物。
西田が溜息を零して、画面をタップ。

言い忘れる程度の用事なら、チャットで済ませろ。
そう言ってやろうと口を開き――直後、スピーカーから流れる発砲音、破壊音、悲鳴。

285 :ザ・フューズ :2019/03/19(火) 22:31:49.97 ID:jk+yobKF.net
「……坐間?」

返事はない。
数秒後、一際大きな破壊音と共に通話は切れた。
更に数秒後、協会の緊急通達――非常防衛システム起動に伴う自動メッセージ。

西田はすぐさま、ベランダの大窓を開いた。
ヒーローにとって緊急の出動が日常茶飯事。
耐衝撃スーツと、それを隠すビジネススーツは彼女にとって普段着同然。
マスクやアーマーを纏めたケースも常に携行している。
つまり装備は既に万全。

ベランダの柵を乗り越え空中へ。
同時に火を噴く、四肢に装備した指向性付与ガジェット。
パイロキネシスの爆炎がザ・フューズの体を急加速。
そして空中に設置したエクトプラズム・プレートに着地。
それを繰り返す事で実現される高速の空中移動。
ザ・フューズは数分で現場上空へと到達。

>「リジェネレイター!ニーズヘグをこっちに引き付けて!
 バリアのせいで敷地の奥の方には地脈が繋げられないから!
 寄ってきた奴を片っ端から爆殺してこ☆」

戦況を俯瞰。
爆炎と、無数の敵性兵器――ニーズヘグの残骸によって描かれた「戦線」がよく見える。
それがテスカ☆トリポカの間合いの境目という事なのだろう。
ザ・フューズは通信機に指を添える。

「こちらザ・フューズ、現場上空に到着した。
 これより近接航空支援を開始する。前に出過ぎるなよ」

協会本部が制圧されている以上、通信は傍受されていると見るべき。
だが事前連絡のない火力支援など、友軍への不意打ちも同然。
炎と地形を操るザ・フューズの攻撃は、特にだ。

まずは周囲に二つ、エクトプラズム・キューブを形成。
対空射撃に対する防壁を展開、維持する為の疑似脳だ。

次に地上へエクトプラズム・プレートを形成。
地面と水平に、小さく何枚も。
つまり破壊困難な移動妨害。

そして――爆撃を開始。
もっともアダマス合金製の装甲は、ザ・フューズの火力では破壊出来ない。
ほんの小さなへこみすら、与える事は叶わない。
エクトプラズム・ブレードも、機銃が主兵装のニーズヘグ相手には火力になり得ない。

故にザ・フューズは――爆破するのではなく、燃やす。
高熱の炎に晒され続ければ、内部の電子部品や弾薬を破損させられる。
既にプレートによって協会内部への退路は封鎖済み。
必然、加熱による機能停止を避ける為には前進する他ない。
つまり、テスカ☆トリポカの間合いへと飛び込んでいく事になる。
これで屋外にあるロボットに関しては問題なく制圧可能――

>「マズハ近クカラ、デスネ【アタックプログラム;アダマスソード】」

ザ・フューズがそう判断した直後の事だった。
協会本部の窓から二人の子供が投げ出され、更にNo14が飛び出したのは。

286 :ザ・フューズ :2019/03/19(火) 22:34:09.96 ID:jk+yobKF.net
「なっ……!」

ザ・フューズは咄嗟にプレートを形成――出来ない。
子供達は既に落下による加速を得ている。
硬質なプレートで無理に受け止めようとすれば、それは救助ではなく、殺傷になる。
どうにか死なせずに済んだとしても、空中で彼らを固定してしまえば、それは射撃の的でしかない。

>「失礼!ソコノオ二人サン!ワタシ達ノ変ワリニ、アノ蜥蜴ノ相手ヲ、マカセマシタヨー!」

それでも結果的には、子供達は無事だった。
No14はニーズヘグの一部を蹴散らすと、そのまま子供達を受け止めて、敷地外まで離脱。
そうして残る機体もテスカ☆トリポカの間合いへ追い込まれ、破壊される。

287 :ザ・フューズ :2019/03/19(火) 22:36:55.72 ID:jk+yobKF.net
「……上空から見た限り、このエリアは確保出来た。まずはここの維持に努めるぞ」

ザ・フューズは地上に降りて、リジェネレイター、テスカ☆トリポカと合流。

「重役出勤してくるヌルいヒーローどもがまだいるはずだ。
 ソイツらが到着したらこの場を任せて、中に踏み込む。それでいいか?」

移動、交戦、制圧、確保、移動。
極めて模範的な制圧戦の段取りを提案するザ・フューズ。
その態度は至って冷静。

「それと」

>「オービット、スカとポカ、援護ゴ苦労デアッタ!」

だが彼女がNo14に視線を向けた瞬間、その声と眼光に、二つの感情が宿る。

「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

感情の名は、軽蔑と落胆。
 
「私は、お前のごっこ遊びに付き合うつもりはない。
 前衛はお前が努めろ。役に立つ内は援護はしてやる」

あの二人の子供が無傷でいられたのは、ただの幸運だ。
想定よりも多くの敵性兵器が彼らに反応していたら、
あるいはNo14の乱入に十分な反応が得られなかったら、
協会の防衛システムが停止ではなく奪取、再利用されていたら――あの子供達は、死んでいた。
もっと安全で、もっと上手いやり方があったはずだ。

一体いかなる理由でNo14の態度が変化したのかは、ザ・フューズには分からない。
だが、確実な勝利と己自身を擲ってでも人の命を守ろうとした――ザ・フューズが一流と呼んだヒーローは、ここにはもういない。
いるのは、不確実な勝算を頼りに、人命を危険に晒す――三流以下。
それだけで、彼女が落胆と軽蔑を抱くには十分だった。

288 :神籬明治 :2019/04/02(火) 23:41:35.33 ID:kxtS2IWR.net
【すみません、今多忙なので猶予をください!
 金曜日には投下できると思うのでお願いします!】

289 :K-doll No14 :2019/04/03(水) 00:56:15.97 ID:vWBrSMvg.net
了解ですー がんばってください

290 :神籬明治 :2019/04/05(金) 23:51:38.21 ID:yMxGM4mk.net
現場に到着したヒーローと合流するという当初の予定は成功し、
早速レイラインアクセスで駆けつけてきたテスカ☆トリポカと情報を交換する。
協会本部には対魔法プロテクトがかかっているらしく、瞬間移動で突入は不可能らしい。

>「わ!わ!こっち見た!こっち来た!」

話し込んでいる隙にニーズヘグに捕捉され機銃斉射が開始される。
口部より開帳された機銃は弾丸の雨を吐き出しこちらへと殺到してくる。

>「大地の結晶!」

咄嗟にテスカ☆トリポカが黒曜石の山を形成して防御する。
だが機銃の威力を前にガリガリと黒曜石は削られていく。
突破されるのは時間の問題。手早く再度魔法を行使し、飛び散った黒曜石の破片が旋回し始める。
そしてニーズヘグの排気孔へと侵入。内部より魔法で起爆され、斉射を敢行していた数体が爆裂した。

>「公共の場での銃撃は……違法行為だよ☆」

「見事なお手並みだぜ。流石はテスカ☆トリポカ!!」

テスカ☆トリポカの魔法を見てオービットは率直に感想を述べた。

>「リジェネレイター!ニーズヘグをこっちに引き付けて!
> バリアのせいで敷地の奥の方には地脈が繋げられないから!
> 寄ってきた奴を片っ端から爆殺してこ☆」

「了解した」

引きつけるためわざと目立つように飛翔すると、ニーズヘグの内一体が獰猛な機械の瞳を光らせてこちらへ接近してきた。
ニーズヘグは両腕からクローを展開してリジェネレイターの排除を開始した。剛腕を振り上げ飛び掛かって来る。
注釈をつけておくとロボットであるため攻撃の予兆は読めない。が、リジェネレイターとて素人ではない。
長きに渡るヴィランとの戦いで磨かれた格闘能力とスーツの索敵能力があれば並みのヒーローと同レベルには戦える。
カウンターで回し蹴りを浴びせて怯んだところで背負い投げ。竜は横転しながらテスカ☆トリポカの方へと転がっていく。

「こっちだこっち!もっと近づいてこい!」

意味があるのかないのか、オービットも適当に野次を飛ばした。

291 :神籬明治 :2019/04/05(金) 23:52:29.60 ID:yMxGM4mk.net
リジェネレイターに気付いた他の個体達が銃撃の射程まで接近してくる。
口部より機銃がせり出して発砲された時、リジェネレイターは爆裂した個体を引き摺り盾にした。
アダマス合金の装甲と機銃の弾丸が衝突する。

「よっし、悪くないアイデアだリジェネレイター。そのまま敵を引きつけろ!」

鉄塊と化したニーズヘグのなれの果ては順調に弾丸を防いでくれている。
機銃斉射を上手く防御しつつ敵を引きつけていると、にわかに喧騒が広まってきた。
異様を察知したマスコミや野次馬が本部の敷地外に集まり、それを警察が抑えているようだ。

「おおっと人気者は辛いねぇ。民間人を巻き込まないようにしねぇとな」

「俺達を見に来ている訳ではないと思うが」

「うっせぇな、分かってるよ」

>「こちらザ・フューズ、現場上空に到着した。
>これより近接航空支援を開始する。前に出過ぎるなよ」

スーツの通信機に響くザ・フューズの声。
同時、エクトプラズムのプレートが周囲に展開し、前方のニーズヘグ達が燃える。
プレートは協会へと逃げ込む退路を塞ぎ、前進を余儀なくされた状態だ。
機械の竜は灼熱の炎を纏いながらテスカ☆トリポカの射程圏へと接近してくる。

「ザ・フューズも来てくれたのか。ここの制圧は時間の問題だな。
 ……おっと!?気をつけろリジェネレイター、建物から飛来物だ!」

腕時計型端末の明滅と共に協会本部の窓から勢いよく何かが飛び出してきた。
弾丸をニーズヘグの残骸で防ぎながらHUDが捕捉したのはまだ幼い子供だ。
リジェネレイターは思わず頓狂な声を上げる。

「なんだと!?」

向いていた機銃の筒先がリジェネレイターから中空の子供たちへと移る。
恐らく現状に居合わせたヒーロー全員が驚いたに違いない。
幸いにしてニーズヘグが宿した破壊の吐息がその威力を発揮することはなかった。

292 :神籬明治 :2019/04/05(金) 23:53:29.71 ID:yMxGM4mk.net
子供たちと共に窓から飛び出していた影が彼らを狙う瞬時に機械の竜を切り裂いたからだ。
腕から生えた剥き身の剣が一体、また一体と敵を屠り、子供たちを狙う個体を全て潰したところで跳躍。
キャッチしたところで敷地外へと消えて行く。

「まさか――No14!?」

>「失礼!ソコノオ二人サン!ワタシ達ノ変ワリニ、アノ蜥蜴ノ相手ヲ、マカセマシタヨー!」

再び降ってくる弾丸の雨を前に状況説明を求めることもできず、リジェネレイターは気が気でない。
協会本部の周囲に人が集まってきている手前、彼に出来るのは迅速なこの場の確保だけだ。
やがてザ・フューズとテスカ☆トリポカの活躍により、周囲に展開するニーズヘグは全て片付いた。
一段落終えたところで上空にいたザ・フューズと合流する。

>「……上空から見た限り、このエリアは確保出来た。まずはここの維持に努めるぞ」

「ああ……だが敵はヒーロー協会を陥落させたほどの相手。
 所有している兵器があれだけとは限らないはず……。
 次はニーズヘグ以上のロボットを投入してくる可能性が高い」

「早く突入して協会の職員や駐在してたヒーローの安否を確認したいところなんだがな」

>「重役出勤してくるヌルいヒーローどもがまだいるはずだ。
> ソイツらが到着したらこの場を任せて、中に踏み込む。それでいいか?」

「俺とオービットに異論はない。そうしよう」

話が纏まったところで、ザ・フューズの視線が敷地外へと向けられる。
規制線の向こう側ではNo14が子供を助けた救世主として賞賛を浴びている真っ最中だ。
リジェネレイターもなんとなく敷地外の方へと視線を向けるとNo14の声が聞こえてきた。

>「オービット、スカとポカ、援護ゴ苦労デアッタ!」

「お、おう。サンキュー」

見当違いの相手への労いに、オービットは思考パターンをやや混乱させつつそう言った。
No14との関わりは前回の戦闘程度しかないが、性格が少々変わってしまった気がする。
主に口調や仕草といった雰囲気がだ。窓から急に飛び出してくる危なっかしさといい――。
そこまで思考を巡らせたところで、ザ・フューズの感情の色を読んでしまった。

>「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

軽蔑と落胆。ザ・フューズの感情は世間が抱いているであろう感情とは真逆のものだ。
No.14のとった行動は人命の救出を齎したが、それは確実な方法ではなかった。
より正確に言ってしまえば、今のNo.14はヒーローとして子供を助けた訳ではなかったのだろう。

293 :神籬明治 :2019/04/05(金) 23:54:06.85 ID:yMxGM4mk.net
>「私は、お前のごっこ遊びに付き合うつもりはない。
> 前衛はお前が努めろ。役に立つ内は援護はしてやる」

「なぁなぁ、フォーティーンちゃんよ。ザ・フューズはおこだけど世間一般はお前の味方だろうぜ。
 【速報】廃棄予定のロボットヒーロー、颯爽と子供たちを救助!!まだ事件も解決してないのにネットは呑気なことで」

No14の救出劇はセンセーショナルなもので、世間を賑わせているようだが実際のところは芳しい状況でない。
何せメトロポリスの治安を守る要が陥落しているのだ。この騒動が続くほど他のヴィランへの対応は遅れ、
反社会勢力の活動を活発化させかねない。ヒーロー協会にとっては大きすぎる失態であり、一刻も早い火消しが望ましい。

「オービット……戦闘中にネットサーフィンはやめないか」

「AIは必要なことしかしない……別に遊んでた訳じゃないさ。世論を読んでたんだよ。
 だから言っておく。さっきの救出劇はセンセーショナルだった。でも結果オーライで済ませる訳にはいかない。
 暴走……いや、ただの殺人兵器に戻っちまってるかもしれないロボットにこれ以上戦闘なんてさせられないからな」

オービットの平坦な機械音声をリジェネレイターは黙って聞いていた。
リジェネレイターはNo14が暴走する危険性を取り除いてやりたいと考えていたし、廃棄にも否定的だった。
オービットもまた同様だ。しかし、それとこれとは問題を切り分けて考えている。
エラーを解消していないロボットの戦闘などヒーローの相棒として看過できない。

「ザ・フューズ、悪いが俺はNo14と一緒に戦うのは反対だな。リスクが大きすぎる」

相棒の意見をひとしきり聞いたところで、リジェネレイターは貝のように重い口を開いた。

「……俺は、No14の意志に任せる。彼女は子供たちを助けた。悪意も感知していない。
 協会の中にはまだ生存している人がいる。俺には感じるんだ。中にいる人が発する苦しみや恐怖の感情が。
 ……No14、その人達を助けるつもりはあるか?もしあるのなら……俺達と一緒に戦ってほしい。君の力が必要だ」

「おい。俺の話聞いてたか?」

「誰かを助けたいという気持ちと、ヴィランに立ち向かう勇気。それがあれば誰もがヒーローだ。
 でもヒーローだって完璧じゃない。だから足りない部分はサポートし合えばいいし……何かあれば止めればいい。
 No14は確かにヒーローだった。いち同業者として、No14のヒーローとしての意志が消えていないと俺は信じたいんだ」

「……分かったよ。お前がそう言うのなら。悪かったな、No14」

沈黙した腕時計型端末から三人のヒーローへと視線を移し、リジェネレイターの行動指針は決定した。
他のヒーローが到着次第、ザ・フューズ、テスカ☆トリポカ、No14と共に協会本部に踏み込む。
そして残されている非戦闘員および負傷者を救出――首謀者たるヴィランを制圧する。

294 :神籬明治 :2019/04/05(金) 23:55:18.01 ID:yMxGM4mk.net
一同が確保した敷地内のエリアに新たな敵性兵器が現れた。
敷地の奥に潜んでいた残りのニーズヘグと、協会本部の中から現れた新たなロボット。
ニーズヘグより一際大きい、四つ足の赤い機械の竜だ。

「あれは対人殺戮兵器『ファーブニル』か……!
 宇宙人の技術を流用して開発された新型ロボットだな」

オービットの機械音声に無言で頷くと、リジェネレイターはニーズヘグの残骸を盾に臨戦態勢に入った。
ファーブニルはニーズヘグと共に口部を開いた。中からせり出してきたのは――敵を焼き殺す強力なプラズマ・キャノン。
スペック上アダマス合金にも通用する威力を秘めた兵器だ。まさにその破壊力を開放せんとした時、鋭い一声が機先を制する。

「そこのまっすぃーん達、ちょった待ったぁ!!」

プラズマキャノンと機銃の放った破壊の嵐はヒーロー達ではなく声のする方へと放たれた。
リジェネレイターは咄嗟に声のした方向へ視線を移したが、誰もいない。
殺戮機械達は虚空へと向けて斉射を行っている。機械に設定された危険度が眼前のヒーロー達より高いからだ。

「あわわ……やっぱりタイム……攻撃激しすぎ……まだ変身してない……」

またもや声だけが聞こえてきた。幻聴の類ではない。
リジェネレイターはこの異様を解き明かすこともできず疑問符だけを浮かべていた。
しかし、事はそう難しい話ではなかった。魔力を感知し知覚できる者なら容易に理解できる。
何もない空間には誰かがいる。魔法を行使し、光を操って姿を消せる者がそこにいるのだ。

そうして姿を消して誰にも気づかれずそろりそろりと敷地内に侵入できたという訳である。
だがファーブニルもニーズヘグも敵を探知する時はカメラだけでなく熱や音といった様々なセンサー類を用いる。
姿を消せたとて即座に存在を認識し、照合して敵味方を識別。攻撃に移行する。

答えを明かしてしまえば、何もないはずの場所では一人の少女が魔法で必死こいて斉射を防いでいた。
銀色のショートヘアにアーモン形の赤い目をしている。ちょっときついが美人の部類だ。
もっとも恵まれた容姿を台無しにする瓶底眼鏡をかけていなければ。セーラー服を着ている辺り公立の女子高生だろう。
女子高生は両手でワンドをぎゅっと握りしめながら、功名心からくる自身の迂闊な行動を呪った。

「ああっ……終わりのないディフェンスでもいいよ。
 消えてる状態で変身するってカッコつかないけど、背に腹は代えられないよね……?」

いずれにせよ、消えてる状態で変身するしかなかった。
敷地外には多数の野次馬や報道機関、警察でごったがえしており、空撮用のドローンも飛んでいる。
ちょっとした遊び心で抱いたであろう"カッコ良く登場してから変身"は実現し得なかった。

295 :神籬明治 :2019/04/05(金) 23:56:18.93 ID:yMxGM4mk.net
魔法で作った光の盾の後ろで、くるくると器用にワンドを回し――変身。
星を象ったワンドの先端から煌びやかな輝きを散りばめながらその姿を光輝に染めあげる。
なお、彼女は現在透明であるため、その変身プロセスを目視する事は叶わない。

「みんな、元気?私は元気!!だって私は闇を照らす希望の光!!!!」

虚空から派手な発光を伴って現れたのは、白金の衣装を纏った一人の少女。
目も眩む銀髪の長いツインテールに素顔を隠すような派手なメイク。
右手のワンドを振るうと、周囲に星型のユニットが次々と召喚されていく。
野暮ったい瓶底眼鏡の女子高生は見る影もなく、その姿はまさしく煌びやかなアイドルだ。

「歌って踊れるアイドルヒーロー!!魔法少女スターレインっ!」

口上を唱えている間も続く無粋な斉射を魔法による光の盾で防ぎつつ――。
びしっと触媒である「スターライトワンド」を敵性兵器に突きつける。

「もう好きにはさせないぞっ、こんな鉄の塊ちょちょいのちょいっと星屑にしてあげちゃうから!」

魔法少女『スターレイン』。テレビやニュースで頻繁に取り沙汰される人気ヒーローの一人だ。
彼女のような一線級の人気ヒーローを誰が言ったかアイドルヒーローと呼ぶ。
スターレインは正義の女神アストレアと契約した魔法少女(光属性)であり、
堕落した人類を見放して地上を去ったという女神が残した最後の希望――悪を挫き、人々を守る正義の使者。

「お願いアストロビット!裁きの光で焼いてあげて!!」

周囲に展開する星型ユニットがスターレインを中心に円運動を開始する。
光を帯びたユニットは次々にマジカルレーザーを発振し、ニーズヘグ達を焼き、爆裂させていく。
伊達にアイドルヒーローと持て囃され人気を得ている訳ではない。
アダマス合金の装甲を絡め手なしの単純攻撃で突破するなど、彼女にとって造作もない事だ。

スターレインの登場がドローンによって瞬く間に周知に知れ渡り、敷地外の野次馬は一層増加した。
まさしくアイドル的人気によってファンが押し寄せ、規制線の向こう側は混乱に陥っていた。
アストロビットを操作しながらスターレインはかぶりを振る。

「はぁ、私ってなんて罪な魔法少女なんだろう……」

296 :神籬明治 :2019/04/05(金) 23:57:05.90 ID:yMxGM4mk.net
星々を司る魔法少女が四名のヒーロー達の方を振り向いた。

「ところで、話聞こえてたけど私はここの敵を倒せばいいのよね?
 でも大丈夫かな……心配なんです。中のヴィラン結構つよそーって聞いてるし……あ!!」

協会本部から飛び出してきた新たなニーズヘグ達がザ・フューズやテスカ☆トリポカ目掛けて銃撃を開始した。
銃弾は猛烈な勢いでヒーロー達へ迫るも、その全てが時が止まったように空中に静止した。
直後、敷地の端に一人の男が佇んでいた。男は翳した手をニーズヘグ達に向けると、静止した弾丸が機械目掛けて飛来する。
弾丸はアダマス合金の装甲によって阻まれるが男は動じない。

「……君はヒーローの母親か?人気者の傲慢だぞ。
 彼らとて命を賭ける覚悟は出来ているだろう。余計な心配は無用だ」

彼は正々堂々免許を警察に提示して規制線を越えやって来たアイドルヒーローの一人。
漆黒のローブにフードで顔を隠した特徴のないシンプルな見た目――あまりに簡素なので不審者にも見える。

正会員である彼は、メトロポリス郊外で行われていた誘拐事件を追っていたため本部には生憎不在だった。
――複合能力者『ネメシス』。テレキネシスにテレパシー、テレポーテーションなどを備えたサイキックヒーローだ。
恐るべきことに、一切の能力強化や改造を行わず先天的に複数の強大な超能力を備えていたという稀有な存在である。

「顔を合わせるのは初めてのようだが、自己紹介や余計な親交は省く主義でね。俺のことは特に知らなくていい。
 だがここは任せておけ。ドローンの空撮で戦闘を見ていたが、君達の火力では雑魚を掃討するのに手間がかかりすぎる」

スターレイン目掛けてプラズマキャノンを連射するファーブニルに手を翳し、握り潰すような仕草を見せた。
するとアダマス合金製の装甲がみるみるうちに陥没し、ひしゃげて遂には爆発した。
強大なテレキネシスによる圧力で強引に破壊されたのだ。

「俺ならそう手間はかからない。しくじるなよ」

「よし……今なら踏み込める。皆、行こう!」

スターレインとネメシスにその場を任せ、協会本部へと突入した。
二人の支援のお陰で機械の竜たちの攻撃は一切こちらへ届かない。

協会の中は広いオフィスは激しい戦闘の爪跡でしっちゃかめっちゃかになっていた。
そこかしこに機械の残骸や血痕――ニーズヘグの銃撃による死者が残されている。
凄惨な光景を前にリジェネレイターは自身の無力さと込み上げてくる怒りを感じた。

「中は手薄だな。最優先は生存者の保護だ。リジェネレイター、感知してるか?」

「……ああ。だが、各階に点在していてまばらだ。保護には時間を要するだろう。
 交渉を一切行わない点といい、ヴィランには人質を取るという考えはなさそうだ……」

「……そうだろうな。奴にとってメトロポリスの住人は殲滅の対象でしかない。
 そんな発想は最初から持ち合わせていないんだろうよ」

297 :神籬明治 :2019/04/05(金) 23:58:59.50 ID:yMxGM4mk.net
生存者を保護すべく奥へと進もうとした時、協会内のスピーカーが起動し、男の声が響いた。
声色からして四十代くらいの、中年の声だ。声の主は――間違いなく犯人のヴィランであろう。

「……旧約聖書の創世記において、悪徳と頽廃の象徴とされるソドムとゴモラは天からの硫黄と火によって滅ぼされた。
 この世に神はいる。だが悪の蔓延るこの世に裁きを下す事はないのだろう。現代の悪徳と頽廃の象徴――……。
 メトロポリスは、こうして天の裁きを下されることなくのうのうと存在しているのだから」

深く沈んだ澱みの溜まった声が響いて間を置かず、天井が崩落した。
勢いよく破片を撒き散らしながらパワードスーツに身を纏った男が姿を現す。
漆で塗ったような漆黒の装甲に、竜のような頭部に尾、胸部に煌々と光を蓄えた球形の核。

「この世界は病んでいるよ。故に、私は私の信じる正義を実行に移すまで。
 全ての悪の源、このメトロポリスを滅ぼす。貴様にこれを言うのは三度目だな……リジェネレイター。
 そちらの方々はNo14、テスカ☆トリポカに……ザ・フューズか。会うのは初めてになる。私は『アンチマター』だ」

ヴィランの出迎えに対するリジェネレイターの答えは即時応戦。
スラスターを全速で吹かして跳躍し、竜巻のような回転を加え――頭部目掛けて渾身の蹴撃。
パワーアシスト機能も加わった、常人には回避不能の一打。
何人もの命を奪った人間に投降を呼びかける必要などない。無言で制圧するだけだ。

「ふっ……何度殺してやっても私の前に立ち塞がるか。相変わらずだな」

アンチマターはリジェネレイターの蹴りを最小限の動きで躱す。
見切っていたと言わんばかりに、着地の瞬間を狙って尾が槍のように鋭く迫った。
リジェネレイターは咄嗟に身を捻り、スラスターを噴出して方向転換。尾の攻撃を回避。

「流石は私の宿敵だと評しておこうか。まぁ……替え玉ヒーローが宿敵というのも妙な話だがな。
 中身が誰かは知らんが、代替品の偽物風情が私の邪魔をしないで欲しいな……いい加減鬱陶しいぞ」

「距離を取れリジェネレイター!こいつに闇雲な攻撃は通じない。お前の能力もアンチマターには無意味なんだ。
 あいつはさっきの一連の動作で何もしちゃいない。全部AIが自動でやったことだ。戦闘中に感情なんて籠らない」

オービットの忠告を聞いてリジェネレイターはスラスターで跳躍し、一時戦闘距離を保った。
幾度かの交戦経験により、オービットはアンチマターの手の内を多少把握しているが、あくまで"多少"の範囲だ。
何故なら彼のパワードスーツは戦闘毎に更新され、常に装備が変わる。事前情報は無意味に近い。

298 :神籬明治 :2019/04/06(土) 00:01:44.61 ID:RDsLSfeh.net
リジェネレイターはアンチマターの言葉を理解できずにいた。いや、本来理解する必要はないのかもしれない。
たとえ如何なる理由があっても、アンチマターの足元に広がる無数の亡骸がその残虐性を物語っているからだ。
アンチマターは、殺意も悪意もなく、ただ無表情に自身が生み出した殺戮兵器でこの凶行を行った。

リジェネレイター・神籬明治の信じる正義とは、自身の力を平和のために、人々を助けるために行使することにある。
アンチマターもまた自分の正義を持っているつもりなのは共感覚で読めていた。だから彼の言う正義が何なのか理解し難い。
正義という言葉を使いながら、破壊と虐殺を起こすアンチマターが。

「……なぜだ?なぜこんなことをした?ヒーロー協会を襲うことが、お前の正義なのか。
 罪もない人の命を奪って何が正義だ。俺には分からない……どうしてこんな残酷なことができる!?
 彼らには家族がいた!愛する人も!帰るべき場所も!なぜヴィランはこんなことを平気でやれるんだ!?」

普段口を開かないリジェネレイターの口がこの時ばかりは滑らかになった。
それはヒーローでなく、犯罪者の手によって肉親を失った一人の少年の慟哭だった。

「お前の言う通り、この街は確かに悪で満ちている……誰かを陥れようとする暗い感情が渦巻いてるのは事実だ。
 でも、それ以上に皆が抱いているのは苦しみと、恐怖と、絶望だ。誰も手を差し伸べなんかしない。
 超常の力が蔓延する今の社会は、法の整備も対応もまるで不完全だからだ」

自分の立場も状況も忘れて、拙い言葉で必死に問いかける。

「だからこそ俺達は立ち上がった!悪から人々を守り、何も怖くなんかないんだと手を差し伸べてやるために!
 それがヒーローで、そのためのヒーロー協会だ。なのになぜ、こんなことをした!?」

リジェネレイターは今までにないほど強く憤りを抱いていた。
たとえどんな返答が待っていようと、神籬明治は、アンチマターを許さないだろう。
アンチマターは少しの間を置いて腕を組んだまま静かに口を開く。

「私の邪魔をするからだ。それに……偽善者を叩き潰す事に何か躊躇いがいるか?
 少し私の話をしてやろう。私は今よりずっと未来の世界……23XX年からやってきた時間旅行者なのだ」

アンチマターの沈んだ声が語り始めたのは今より未来――23XX年についてだった。
未来の世界は非合法組織やヴィランがメトロポリスのみならず全国に蔓延る荒廃した時代にあった。
悪の歯止めとなっていたヒーロー達は時を経るにつれて数を減らしていき、遂には腐敗してしまった。
未来のヒーロー達は私欲や既得権益のためにのみ超常の力を振るう、まさしく偽善者に成り果てていた。

「酷い時代だった。非合法組織の活動が社会基盤を半ば崩壊させ、一般人は日々の食事さえままらない……。
 私は両親の顔も知らない。掛け替えのない友人や愛すべき人も、すぐこの世を去った……大切なものなど全て失ったよ」

アンチマターと呼ばれた男は、未来では継見隆一という優れた科学者だった。
度重なる抗争や犯罪行為によりディストピアと化した世界に、安寧を齎したいと常々継見は考えていた。
しかし彼一人の力では腐り切った23XX年の荒廃を止めることなどできはしなかった。
そして遂に思い至った手段こそ、歴史改変である。

299 :神籬明治 :2019/04/06(土) 00:03:12.38 ID:RDsLSfeh.net
過去に跳躍し、未来が荒廃する要因を全て取り除くことで、苦しみのない平和な世界を生み出そうと考えた。
科学者という立場はこういう時に便利だ。過去の資料を片端から集めて量子コンピューターに計算させた結果、
荒廃を回避するには20XX年にメトロポリスで増加した特異能力者の出現に伴う非合法組織の台頭を阻止すべきだと判明した。
継見は研究に没頭した。研究の歳月が二十年を過ぎた頃、遂にその成果が芽を出す。

「歴史改変による解決策を模索していた私は、実験の過程で過去の時代――このメトリポリスに流れ着いた。
 時間跳躍のための装置は事故によりこの手から離れ、いずこかへと消え去った……私は途方に暮れた」

不意にアンチマターの鈍く輝く鋼鉄の尾が動いた。
尾はヴィランの手元へ滑り込むように動くと、大きく脈打ち、先端が蕾のように開く。
中から現れたのは青白い立方体のオブジェ。その形状、装飾、光放つ輝きには見覚えがある。

如何なる科学、超能力、魔法といえど、容易に到達できぬ至高の領域の力。
ファイアスターターやロックバインの所属する組織はその力を欲してきた。
彼らだけではない。ありとあらゆる非合法組織が、あると知れば手に入れようと画策するだろう。

「だが……運は私を見放してなどいなかった。時を操る我が発明、キューブは確かに私と同じ時代に流れ着いていた!!
 不完全なため長距離の跳躍は不可能だが、完成させれば自由に時代を跳び、自在に歴史を改竄する事が出来るだろう!!」

この装置ばかりは23XX年以降の技術と彼の頭脳でしか生み出せない。20XX年の科学力で再現する事は不可能だ。
尾が再びキューブを飲み込むと、リジェネレイターはアンチマターの高揚を感じとった。
平時戦闘で感じるおどろおどろしい悪意も刺すような殺意も感じない。
リジェネレイターはアンチマターの攻撃の予兆を読めなかった。

「私は必ず未来を平和にしてみせる!それが私に唯一残された正義だからだ!
 その最善の手段は20XX年のメトロポリスに消えてもらうことだ!!
 障害となるものは誰であろうと排除しよう!手段は選ばん!!」

アンチマターが左手を前に伸ばすと、リジェネレイター目掛けて光線が照射された。
光線は前衛にいたリジェネレイターを牽引し、アンチマターまで引き寄せられる。
『トラクタービーム』だ。古来宇宙人がUFOで人を攫う時に発する、あの光と同種のものである。

継見隆一が装着するアンチマター・スーツは20XX年にやって来た際に継見の手で製造されたものだ。
基幹技術は普及しているパワードスーツと同種だが、この時代のあらゆる技術の粋を集めて製造された。
開発者は未来の頭脳を持つ科学者なのだ。リジェネレイター・スーツなど比べ物にならないほど高性能だった。

「リジェネレイター、因縁と思って話してやったがそれもこれまでだ!まずは貴様から死んでもらう!
 この場所が貴様の墓標、七代目はいないものと思え。また説明してやるのが面倒だからなァ!!」

300 :神籬明治 :2019/04/06(土) 00:05:26.30 ID:RDsLSfeh.net
怪光線によって捕獲されたリジェネレイターの身体が空中を舞う。
スラスターを吹かしても脱出できない。牽引する力の方が圧倒的に強いのだ。

「まだだ!」

すかさず右手から不可視のフィールドが展開された。
トラクタービームを引力とするならこのフィールドは斥力だ。
『リパルションフィールド』と名付けられた、あらゆる攻撃を弾く盾。
テスカ☆トリポカ、No14、ザ・フューズが攻撃を加えても全てはこの盾に阻まれるだろう。

リジェネレイターの直感が告げる。攻撃の予兆を読めない以上、ここは回避に専念するべきだと。
空中機動による脱出は不可能だが方向転換は可能だ。アンチマターとの衝突を躱そうと左へ身を捻ろうと考える。
思考と同時、アンチマターが竜の如き頭部を前に突き出し猛進。
高速で敢行された頭突きがリジェネレイターの身体を大きく吹き飛ばした。
仮面の奥で血反吐を零して、それでも地面に倒れ込むまいと着地する。

瞬間、アンチマターの拳を目の端で捉えた。
スウェーで避けようとしたところで、拳の軌道が大きくスイッチした。
頭部狙いのアッパーから胸部狙いのストレートへ。ガードが間に合わず胸骨を砕かれる。

猛攻が続く格闘戦の中、リジェネレイターは数秒も経たずに追い込まれていた。
共感覚(エンパシー)が役に立たない上に、動作全てが先読みされている。
まるで能力をフルに使って戦う自分を相手にしているような錯覚に陥っていた。

「リジェネレイター!あれだ!あれを使え!!」

「どんな抵抗も無意味だ!さぁ、奪わせてもらおうか、貴様の未来!!」

鋼鉄も凹ませる拳を六発食らい、大きくよろめいた時、胸倉を掴まれ恐ろしい膂力で宙に放り投げられる。
胸部に収められた球形の核が発光した。光は収束して極太の光線と化し、空中のリジェネレイターを襲う。
光の奔流が本部のビルを縦に貫く。轟音が響き、穿たれた上階が瓦礫の山となって落ちてくる。
アンチマターは舌打ちをしながら三人のヒーローの方へと振り向いた。

「……待たせたな。次は貴様らだ。もっとも手の内は知っている。
 私の時代のヒーローと同じ、醜い偽善者だということもな……」

キューブの行方を密かに追っていたアンチマターは、偶然あの夜の戦いをドローンで監視していた。
ファイアスターターとロックバインと繰り広げた、あの夜の戦いを。

アンチマターに戦闘データを収集されたという事実は単に手の内を把握されたという事だけに留まらない。
周囲に偏在する様々な情報を収集・分析する事で未来を読む統合未来予測システム『アイズオブヘブン』が機能するからだ。
リジェネレイターとの攻防で見せた先読みも全ては高精度な未来予測によるもの。最初から神籬に勝ち目はなかった。

301 :神籬明治 :2019/04/06(土) 00:07:55.17 ID:RDsLSfeh.net
アンチマターの当初の目的は既に達している。
キューブを手に入れた以上、ここに用はない。にも関わらず自分から姿を現したのは他でもない。
未来に不必要な存在を確実に消しておこうと思ったのだ。悪しき芽は摘んでおくに限る。

「私の時代が荒廃したのも元を正せばメトロポリスのヴィラン達が原因だ……。
 だが、何も守れず、何も果たせず、正義を気取るだけの貴様らの罪も中々にデカイ!!!
 何がヒーローだ笑わせるな!ならば今すぐこの病んだ世界を救ってみせろ!何もできない屑どもが!!」

アンチマターは二度、床を殴りつけた。床板がめくりあがって大きくのたうつ。
無論、これは戦闘を代行するAIが行ったのではない。元来科学者である中身は迂闊に敵に攻撃できない。
戦闘に関してはほぼ素人だ。それでもどうする事も出来ない、ぶつけようのない怒りが、彼を突き動かした。

「ただの無能であるならいざしらず、ヒーローは人々を守るどころか私欲にまみれた偽善者に過ぎなかった!
 それは私の未来が証明している!いや……既にそうなのだ!貴様らのことだよ!!胸に手を当てて考えてみろ!!
 貴様ら三人は、公然と人を殺せる立場を手に入れただけの存在……ヴィランとそう変わらんわ!」

アンチマターの双眸が怪しく光を灯す。AIが起動して戦闘態勢に入った合図だ。
まず狙うのは魔法少女テスカ☆トリポカだ。武器はマクアフティル、能力は黒曜石の生成と起爆、瞬間移動。
確実に仕留めるために有効だと思われるのは、黒曜石を突破する破壊力と、瞬間移動後でも命中を見込める追尾性能。
よってAIが選択したのは、両肩に内蔵している無数の小型追尾ミサイルだ。

「テスカ☆トリポカ!神の力を借りていながら貴様は罪深いなぁ!
 正直になったらどうだ?本当は快楽に溺れていたいだけなんだろ……?
 折角だから教えておいてやろう!!薬物由来のその力、今は合法でも未来では違法だ!!!!」

発射された無数の誘導弾が狙い過たずテスカ☆トリポカへと迫る。次の標的はNo14だ。
ロックバイン戦とニーズヘグとの戦闘データから分析するに、No14に接近されるのは極めて厄介だ。
なにせアンチマタースーツは機械の塊。相手に武器を奪われるのは得策ではない。
また、アダマス合金製の装甲もNo14のアダマスソードの前には効果的とは言えない。
相性が悪いかに見えるNo14だが、彼女にも弱点はある。電力だ。

「K-doll No14!憐れだな!自我を持ったが故に世間に持て囃され踊らされているとは!
 機械は作られた時から役割が決まっている!役割を満足にこなせぬ欠陥品は処分される運命なのだ!
 殺人機械でもない、人間にも奉仕できない、何の価値もないではないか?社会は廃品業者ではない、消えろ!!」

スーツの各所が展開して発振管が露出する。多数の内蔵式光学兵器――高威力の拡散ビームがNo14を襲う。
面を制圧する拡散ビームなら接近を許さず、よしんばバリアで防ごうものなら多大な電力消費を見込める。

「ポンコツが……開発者がどれだけ優秀だろうと未来の頭脳には敵わないと理解するんだな」

アンチマターは最後にザ・フューズの方を向いた。
能力は発火、物質生成。生成できる物質は鉄板程度の硬度を持つプレートと人体。
癖の強い能力だが、超能力の規模は掃いて捨てるほどいる程度、というのがアンチマターの評価だ。

「悪徳ヒーロー、ザ・フューズ。まさしく偽善者と呼ぶに相応しいな。
 貴様のような存在をのさばらせる事自体がヒーロー腐敗の象徴……!ヒーロー協会は潰れて当然だった!!
 いったいどの面を下げて生きていられるんだ……?私は許せんのだ、偽善者が平然と正義を語ることがな!!」

防御手段が鋼鉄程度ならスーツの兵器で十分対応可能。注意すべきは人体生成による回復だろう。
AIが自動選択したのは、両腕に仕込んでいるアダマス合金も切り裂くレーザーカッターだ。
両腕から放たれた非実体の光速剣が合計十本ザ・フューズに斬りかかる。

「貴様に関しては『排除』ではなく『裁き』を下す!超能力で甦るのなら何度でも殺してやる!
 何度でも、何度でもだ!!死んで正義を騙り、人々を陥れてきた罪を贖うがいい!!」

302 :神籬明治 :2019/04/06(土) 00:11:00.95 ID:RDsLSfeh.net
【すみません、大変お待たせしました。
ヒーロー協会本部に突入。主犯のヴィランに遭遇、交戦開始】

303 :魔法少女テスカ☆トリポカ:2019/04/20(土) 00:04:35.26 ID:f8+IKiSU.net
【すいません、土日のうちに投下します】

304 :山元 :2019/04/21(日) 02:13:37.75 ID:a7wPmase.net
テスカの要請を受けてリジェネレイターがニーズヘグの群れに吶喊する。
機動力の優位をうまく使った立ち回りは、彼がこれまで培ってきた経験の集大成だ。
一山いくらで量産されるガラクタ如きが捉えられるものではない。
こちらまで投げ飛ばされてきたニーズヘグを、テスカは黒曜石の起爆で仕留めた。

「いまのとこはこっちの有利……かな」

『そうとも言えまいよレディ。敵の目的が我々増援のヒーローを正門前に釘付けにすることなら、
 まんまと遅滞戦術に嵌っていることになる。建物内の状況は未だ不明だ。
 ニーズヘグを使い捨てにして、今まさに内部で本命の作戦が進行中かもしれない』

「突入したい……けど!なんとか数減らさないとジリ貧のまんまだよぉ☆」

ニーズヘグは強力な殺戮兵器だが、ヒーロー二人が連携すれば大きな損害なく殲滅できるはずだ。
だが、時間がかかりすぎる。未だ群れの大多数は対魔法結界の内側で、能動的に攻撃を仕掛けられない。
少数ずつ誘き寄せてカウンターをとる他なく、戦況のイニシアチブは以前敵方にあった。
そして、時間が経てば増援が訪れるのは、ヒーローに限った話でもない。

「ひぃー!追加発注が来ちゃった!」

本部ビルの上空を制圧していたニーズヘグ達が正門前に集まって来ている。
倒した分だけ新たな敵が補充されるその光景は、途方もない千日手を思わせた。

>「こちらザ・フューズ、現場上空に到着した。これより近接航空支援を開始する。前に出過ぎるなよ」

その時、貸与されている通信機から聞き覚えのある声が飛んできた。
テスカの射程距離より遥か先にいたニーズヘグ達が一斉に炎上する。
逃げ出そうと走る機体は、出現したエクトプラズム・プレートによって退路を阻まれ、為す術なく崩れ落ちる。
退くのではなく向かうという形で走ってきたニーズヘグは……テスカの魔法の餌食だ。
つい先日橋上の戦いで目にした能力。その持ち主の名を、テスカは叫んだ。

「ザ・フューズ!」

『そうか。上空のニーズヘグが減り、制空権がこちらに戻った。
 飛行型ヒーローによる空爆が可能になったというわけか』

地上のニーズヘグ達を一網打尽にしたザ・フューズがゆっくりと降りてくる。
彼女の実力は過日の共闘で把握済みだ。頼りになる増援の合流に、テスカの緊張が弛緩した、その瞬間――
本部ビルの窓が突如開き、そこから二人の子供が飛び出した。

「あ!やばいやばいやばい!」

内部で追い詰められた人質が運否天賦にまかせて身投げしたか……否。
あれは飛び降りたと言うより、『投げ出された』。あるいは『投げ飛ばされた』といった速度だ。
それが証拠に子どもたちは未だ自由落下の虜になることなく、前庭の空に放物線を描く。

305 :山元 :2019/04/21(日) 02:14:03.57 ID:a7wPmase.net
中で何が起こっているのか、テスカ達に推し量るすべはない。
だが、一つだけ言えることがある。
一つ。このまま放っておけば、子どもたちは地面に叩きつけられて見るも無残な肉塊と化すだろう。
もう一つは――地上のニーズヘグ達が、索敵範囲内に飛び込んできた人間を放っておくわけがない。
すでに何体かのニーズヘグが子供たちに気づき、その銃口を空へと向けていた。

「ザ・フューズ!プレートであの子たちを――」

>「なっ……!」

言われるまでもなくザ・フューズは人命救助に動きはじめていた。
しかし、彼女のプレートは障害物や障壁にはなりえても、落下する人間を優しく受け止めるようには出来ていない。
テスカも同様。鋭い黒曜石の破片では空中のひき肉が更に細切れになるだけだ。

『瞑目を推奨するよレディ。君の精神的な衝撃を緩和する為と、死者への黙祷に』

「そんなアドバイス要らないーー!」

それでもテスカは、なんとかして宙を飛び、子供を受け止めようと一歩踏み出した。
その刹那、追い掛けるようにビルの窓からまろび出た影が、瞬く間に子供を狙うニーズヘグを殲滅。
重力に捕らわれ墜落死へのカウントダウンを始めた子供たちを空中でキャッチし果たせた。

>「失礼!ソコノオ二人サン!ワタシ達ノ変ワリニ、アノ蜥蜴ノ相手ヲ、マカセマシタヨー!」

そのまま敷地外の人だかりへと消えていく。
まさに、目にも留まらぬ早業。魔法で感覚が鋭敏になっているテスカでも、ようやく目で追える程の速度。
動体視力を総動員して捉えたその姿は、テスカのよく知る"彼女"のものに他ならなかった。

「……14ちゃん!」

正義に目覚めた殺戮兵器・戦闘ロボットNo.14。
過日の暴走の咎でヒーロー協会本部内に拘束されていたと思しき彼女が、人質と共に脱出してきたのだ。
流転を重ねる戦況に目を白黒させながらも、テスカはひとまず再開を喜び、No.14に駆け寄ろうとする。

『待った、レディ。それ以上あのロボットに近づくべきではない』

振り返った彼女を、不可視の声が制止する。
コアトルが拒絶を告げる理由は、テスカにも理解できている。しかし。

「で、でもコアちゃん!14ちゃんはちゃんと人質を助けたよ。
 コアちゃんの言うような、『元通りの』冷たい殺人ロボットなら、こんなことしないでしょ」

『助けた、か……本当にあれは救助だったのかな。
 レディ、君も本当は疑念を振り払えずに居るだろう。我々ヒーローは、結果論で語ることを許されない』

「あぅ……」

306 :山元 :2019/04/21(日) 02:14:26.43 ID:a7wPmase.net
コアトルの指摘は尤もなものであった。
人質を放り投げ、敵の火線に晒すなど、ヒーローとしてあってはならないものだ。
確かに、子供たちは敵の銃弾の餌食になることなく、地面に直撃する前に回収された。
だがそれはあくまで結果論だ。"たまたま死ぬ前に助かった"という見解は否定できない。
それを行ったヒーローに、どれだけ自信があったとしても、人質の恐怖は拭えない。

『ヒーローによる人助けは、必ず助かる方法でなければならない。
 失敗した時に"今回は運が悪かった"で済まされて良いものではないんだ。
 無用なリスクで命を危機に晒すのは、ヒーローではなく振り回される人質なのだからね』

そして……テスカの知る、あの愛すべき心あるロボットは、そういう手段を選択しなかったはずだ。
己の身が傷つくことも厭わず、ロックバインからテスカをかばった、彼女ならば。
そうこうしているうちに、子供を親に送り届けたNo.14が人だかりから戻ってくる。

謹慎処分中の戦闘ロボットは、リジェネレイターとテスカの姿を認めると、

>「ソコノ二人!・・・エートダレダッケ・・・ア!」
>「オービット、スカとポカ、援護ゴ苦労デアッタ!」

……と、聞いたこともない上機嫌な声音でそう言った。

「じゅ、14ちゃん……?また性格変わったの……?」

このロボット、気軽にバグり過ぎる……。
リジェネレイターも困惑を隠せていない。
初対面の頃の慈愛に満ちた態度でもなく、暴走時の苛烈な凶暴さもなく。
第三の人格とも言うべき何かが、今のNo.14の中に居る。

>「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

地上に降りてきたザ・フューズが、氷のように冷たい声音をぶつける。
突破の隙を作るために人質を『囮にした』とも取れるNo.14の行動に対する、ぐうの音も出ない正論だ。
思わず弁護しようとしていたテスカも黙り込んでしまうほどの。

>「ザ・フューズ、悪いが俺はNo14と一緒に戦うのは反対だな。リスクが大きすぎる」

痛烈な批判は加えつつも共闘を許容したザ・フューズとは対象的に、
リジェネレイターの相棒、オービットもNo.14の行為に否定的だった。
協働作戦は足並みを完全に揃える必要がある。何が潜むとも知れない敵地に乗り込むならなおのこと。
行動の指針も、人質救助に対する考え方もばらばらの相手に、命は預けられない。

>「……俺は、No14の意志に任せる。

肝心のりジェネレイター本人は、条件付きで帯同を許す、とこれも三者三様だ。
彼らの主張のいずれにも正当性があり、一朝一夕で合意が形成できるものでもない。
ヒーローの方針が固まるまで、敵が待ってくれるわけもないのだ。

307 :山元 :2019/04/21(日) 02:14:41.32 ID:a7wPmase.net
「テスカ子供だから難しいことよく分かんないよ。
 人質助けたんだからそれでいいじゃんって思うし、危ない橋を渡らせちゃいけないっていうのも分かる。
 テスカ的には、せっかく合流出来たんだから一緒に行きたいけれど……」

テスカはそう言いながら、No.14に振り返る。
鋼の躯体、視覚センサーの向こう側にあるのだろう"何か"を、彼女は見据えた。

「……あなた、テスカの知ってる14ちゃんじゃない、よね?
 あの子が今、どうなってるのかわかんないけれど。まだその身体の中に居るのなら、伝えて。
 ――"待ってる"って」

もう一度、時間がかかってもいいから、彼女に会いたい。
テスカの望むことは、それだけだ。

――――――

308 :山元 :2019/04/21(日) 02:15:02.57 ID:a7wPmase.net
当面の指針はザ・フューズの提言通り、他のヒーローが現着してから本部へ突入。
戦線を維持しつつ増援を待つテスカ達の前に、巨大な竜型ロボットが出現した。

>「あれは対人殺戮兵器『ファーブニル』か……!
 宇宙人の技術を流用して開発された新型ロボットだな」

「うへぇ、次から次へと新手が出てくる……☆ヴィランの資金どっから湧いてるの?」

辟易しながら木剣を構えるテスカ達とは別の場所から、敵のものとは異なる声が響いた。

>「そこのまっすぃーん達、ちょった待ったぁ!!」

鈴の鳴るように清涼で明朗な声。それだけが何もないはずの虚空を震わせる。
同様に、ファーブニル達の砲口が一斉に火を吹き、無人の地面を焼き払った。
――否確かに何かがそこに居る。、鋼の嵐を背景に、人ひとり分の空白が存在する。

>「みんな、元気?私は元気!!だって私は闇を照らす希望の光!!!!」

刹那、光が瞬いた。
魔法か光学迷彩か、いずれにせよステルスを解いて人影が出現する。
白銀のフリフリ衣装、荒唐無稽なツインテール、その手に握る可愛らしい意匠のワンド――

>「歌って踊れるアイドルヒーロー!!魔法少女スターレインっ!」
>「もう好きにはさせないぞっ、こんな鉄の塊ちょちょいのちょいっと星屑にしてあげちゃうから!」

それは、どこからどう見ても、ケチのつけようのない完璧な……魔法少女だった。
テスカはいきなりキレだ。

「あいつキャラ被ってる!テスカとキャラ被ってる!!!!!!!」

『落ち着くんだレディ。魔法があるんだ、魔法少女だって居るさ』

そう、ヒーロー協会に所属する魔法少女はテスカだけではない。
いつも何らかの薬物でラリっていて、隙あらば心臓を抉り出そうとしてくるテスカ☆トリポカ。
強力な魔法兵装と正義の心、何よりもメディア映えするタレント適正を持つスターレイン。
対象的な二人は、まさにヒーロー協会の光と闇を体現する存在であった。

スターレインがワンドを一振りすれば、周囲のユニットから放たれるレーザーが敵性ロボットを消し飛ばす。
圧倒的な火力は、テスカのような搦手を講じずとも、アダマス合金の装甲を無意味にした。

309 :山元 :2019/04/21(日) 02:15:26.34 ID:a7wPmase.net
>「はぁ、私ってなんて罪な魔法少女なんだろう……」

「自白!罪の自白だよね今の!よし、しょっぴこう!
 しょっぴく際に勢い余って心臓抉っちゃってもあくまで事故、合法です!」

『レディ。今は内ゲバなどしている場合ではないだろう。
 スターレインが殿を務めるなら百人力だ。
 そして彼女の火力は狭い室内での戦闘に向かない。ビル内に突入できるのは我々だけだ』

「うぅ……わかったよコアちゃん。でもあの子がこれ以上戯言垂れたら正気で要られる保証がないよ。
 はやく行こ。テスカが人を殺してしまう前に」

>「ところで、話聞こえてたけど私はここの敵を倒せばいいのよね?
 でも大丈夫かな……心配なんです。中のヴィラン結構つよそーって聞いてるし……あ!!」

「うん、わかった殺すね」

仇敵を誅殺せんとマクアフティルを掲げたテスカの吶喊は、一歩目で阻まれた。
ニーズヘグのおかわり達が再び銃弾の嵐を叩きつけてきたからだ。
だが銃撃はテスカ達に届かない。見えない手に掴まれているかのように、全てが空中で静止していた。

>「……君はヒーローの母親か?人気者の傲慢だぞ。
 彼らとて命を賭ける覚悟は出来ているだろう。余計な心配は無用だ」

スターレインと共に現場へやってきたもうひとりのヒーロー、ネメシス。
強力なサイキックの使い手である彼もまた、スターレイン同様強力な火力を有する。
二人の増援に後押しされて、テスカ達はついに協会本部ビルへと突入した。

予想できていたことだが、ビルの内部は阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
破壊されつくした装置や設備。壁に残る爪痕と血痕。引き裂かれた職員たちの亡骸。
足元に転がる腰から下のない死体は、ヒーロースーツを纏っている。
最初の襲撃で犠牲になった協会常駐のヒーローだ。

「惨い……ヒーローの総本山がここまで壊滅したら、このさきメトロポリスはどうなっちゃうのかな」

どこか他人事のようにテスカがこぼすのは、彼女が専業のヒーローではないからだろう。
幸いと言うべきなのか、本部で犠牲になった者たちに、テスカの顔見知りは居ない。
それでも、ハーブによる恐怖心の抑制がなければ、嘔吐と共にパニックでも起こしていたかもしれない。

主力が出払っていたとはいえ、ヒーローの本拠地をこうも容易く陥落せしめる『敵』。
アンチマターとは、一体何者なのだろうか。

310 :山元 :2019/04/21(日) 02:15:58.37 ID:a7wPmase.net
>「……旧約聖書の創世記において、悪徳と頽廃の象徴とされるソドムとゴモラは天からの硫黄と火によって滅ぼされた。

犠牲者に黙祷を捧げつつビル内を進んでいると、スピーカーから男の声が聞こえた。
瞬間、天井が崩落し、黒い大型のパワードスーツが落下してくる。

>「この世界は病んでいるよ。故に、私は私の信じる正義を実行に移すまで。
 全ての悪の源、このメトロポリスを滅ぼす。貴様にこれを言うのは三度目だな……リジェネレイター。
 そちらの方々はNo14、テスカ☆トリポカに……ザ・フューズか。会うのは初めてになる。私は『アンチマター』だ」

「敵の、親玉!」

テスカが身構えるより早く、リジェネレイターがスラスターを蒸した。
不意打ちとして完璧なタイミングで放たれた回し蹴り。

>「ふっ……何度殺してやっても私の前に立ち塞がるか。相変わらずだな」

ダークマターは首を傾げる、たったそれだけの動きで蹴りを躱しきった。
反撃に繰り出された尾の一撃をリジェネレーターもまた躱し、二人は再び距離をとる。

>「……なぜだ?なぜこんなことをした?ヒーロー協会を襲うことが、お前の正義なのか。
>「私の邪魔をするからだ。それに……偽善者を叩き潰す事に何か躊躇いがいるか?
 少し私の話をしてやろう。私は今よりずっと未来の世界……23XX年からやってきた時間旅行者なのだ」

リジェネレイターの問いに、アンチマターはおくびもなく主張を語る。
彼の生きていた未来では、社会が崩壊し、貧困が人々を追い詰めていた。
アンチマターは過去へと飛び、この時代のメトロポリスを歴史から消し去るべく暗躍する。
全ては……未来を平和にする為に。

>「リジェネレイター、因縁と思って話してやったがそれもこれまでだ!まずは貴様から死んでもらう!
 この場所が貴様の墓標、七代目はいないものと思え。また説明してやるのが面倒だからなァ!!」

再び開かれた戦端。先程は互角に思えた両者の力量差は明白だ。
あれよあれよとリジェネレイターは追い込まれ、空中へと投げ飛ばされ、そして。

>「どんな抵抗も無意味だ!さぁ、奪わせてもらおうか、貴様の未来!!」

アンチマターの胸部から放たれた光条に、飲み込まれた。
それで終わりだ。後には何も残らず、ただ名残のように瓦礫だけが降ってくる。

「うそ……リジェネレイター……?」

応答はない。
つい数秒前まで言葉を交わしていたりジェネレイターが、この世から消滅したとでも言うのか。
アンチマターは羽虫を払った程度の感慨すら見せず、そのままこちらへ向き直った。

>「……待たせたな。次は貴様らだ。もっとも手の内は知っている。
 私の時代のヒーローと同じ、醜い偽善者だということもな……」

「わけわかんないよ!ヒーローに代わって世界を平和にするのが目的なんじゃないの!?
 おじさんがやってることまんまヴィランじゃん!なんでそう極端に転ぶの!?」

テスカの指摘も虚しく、アンチマターは取り合わない。
因果関係は不明だが、ヒーローへの失望が、彼を犯罪行為に駆り立てた。そういうことだろう。

>「テスカ☆トリポカ!神の力を借りていながら貴様は罪深いなぁ!
 正直になったらどうだ?本当は快楽に溺れていたいだけなんだろ……?
 折角だから教えておいてやろう!!薬物由来のその力、今は合法でも未来では違法だ!!!!」

311 :山元 :2019/04/21(日) 02:16:35.40 ID:a7wPmase.net
「えっ、ちょっ、まっ」

アンチマターの両肩が無数のミサイルを射出し、炎の束となってテスカに迫る。
とっさにテスカは黒曜石のシェルターを生成し、自身を覆った。
だが所詮黒曜石だ。ミサイルの破壊力を凌ぎ切れるものではない。
瞬く間にシェルターに大穴が開き、ミサイルが潜り込んでくる。

「このっ――『レイラインステップ』!」

本部ビルの内部は対魔法障壁の内側だ。地脈を繋いだ瞬間移動も問題なく行える。
テスカはシェルターの中から地脈を経由して、離れた位置へと待避。

『まずいぞレディ!ミサイルの一部はまだ生きている!』

コアトルの警告が響いた瞬間、テスカの横合いからミサイルが殺到した。
アンチマターのはなったミサイルは、黒曜石のシェルターにぶつかり、爆発したものだけではない。
物量に任せた飽和・波状攻撃。残っていたミサイルは移動したテスカをセンサーに再捕捉していた。

「へっ――」

移動直後の致命的な隙を突かれ、テスカはミサイルの直撃を受けた。
彼女は黒煙の尾を引きながらふっとばされ、崩壊した装置の残骸に突っ込む。
そしてそのまま、動かなくなった。

ミサイルの爆発で砕けた黒曜石が、流星の如くアンチマターへと襲いかかる。
その小片はパワードスーツの装甲を貫けるほどの威力を持たない。
しかし、粉末状になった黒曜石の破片が戦場を煙幕のように滞留することで、ヒーロー達に利する現象が発生する。

起爆し、高温になった黒曜石は、園芸などに使われるバーミキュライトと呼ばれる鉱物に変化する。
これは多孔質で軽量かつ脆いため、細かく砕けば保水力の高い土壌改良材となるわけだ。

多孔質で黒色の鉱物は、おそらく自然界で最も効率よく『光』を吸収する。
ザ・フューズやNo.14に振るわれるアンチマターのレーザー武装。
その威力を大きく引き下げた。

この所作が、単なる偶然によるものか、それともテスカ☆トリポカが意図的に引き起こしているのか。
彼女が残骸の山の中で意識を失っているのか、強かに奇襲のチャンスを伺っているのか。
それを知るすべは、今のところ誰にもない。


【アンチマターのミサイルが直撃、戦闘不能。
 黒曜石の煙幕によってレーザー武装の威力を軽減する】

312 :K-doll No14 ◆LKamXnrQVU:2019/04/23(火) 16:02:42.57 ID:/SVia+BVC
>「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

「・・・ナニ?」

だれでもでもわかるぐらいの不機嫌な声。
急速に加速する感情プログラム。

>「私は、お前のごっこ遊びに付き合うつもりはない。
 前衛はお前が努めろ。役に立つ内は援護はしてやる」

「・・・イワセテモライマスガ、アノ子供達ハ本来死ヌ予定ノ子供達デシタ
 蜥蜴ニ追イ掛ケ回サレ、後10秒後ニハ、アノヨダッタデショウ」

どんどん感情が高まっていく。

「ソモソモ、アノ子供達ハナゼ、ソンナ、危険ナ状態ダッタカ?、ソレハアナタ達ノセイニホカナリマセン」

感情は留まる事を知らず。

「アナタ達ハヴィラン達カラ回収シタアレガ、危険ナ事モ、ヴィランニトッテモ大事ナ物デアルト、理解シテイタニモ関ワラズ
 特ニ対策モトラズ、ソレヲ保管シテイルヒーロー協会本部ヲ襲撃サレ、制圧サレマシタ」

「ソノセイデ人ガイッパイ死ニマシタネ?モハヤ中カラ生命反応ヲ、ホトンドカンジマセン!イヤア!スバラシイデスネ!ヒーロー協会万歳デス!」

外で聞いているマスコミや一般人に聞こえるように大きな声で喋りながら拍手する。

――あなたいい加減に・・・!

「・・・愚カナコトニ"私"ハ、人間ニ捨テラレソウニナッテモ、全部ノ武装ヲ外サレテモ、廃棄物扱イサレテモ、人々ヲ助ケヨウトシマシタ」

「ソノ結果自分ノ命ガ危険ニ晒サレマシタ、自分ヲ捨テヨウトシタ人間ナンテ放置シテイケバイイノニ、自分ノ命ヨリ、子供ノ命ヲ優先シタノデス」

――あなた・・・

さっきまでとは違いマスコミや一般人に向けてではなく。
ザ・フューズに向って、落ち着いた声で喋る。

「"ワタシ"ガ体ヲ乗ッ取リ、ソノ場ハナントカ凌ギマシタ、ソノ後ノ事ハ大体全部ミテマシタヨネ?」

「アナタ達ガ私ヲ裏切ラナケレバ、私ニ普段通リノ装備ガアレバ、アノ子供達モアンナ危険ナ目ニハ、ワタシニ救助サレルコトモナカッタデショウ」

これはお前等のせいなんだと、念を押すように告げる。

「ワタシガ暴レタカラ、私ハ信用ヲ失ッタトカイワナイデクダサイネ?タシカニアノトキハ、オーバーパワーデシタガ、イツカ
 コノチカラヲツカワナイト、イケナイトキハ絶対ニ来テマシタノデ。
 テユーカ、コノ程度ノ不祥事、他ノヒーローモ割リト頻繁にヤラカシテマスヨネ?」

敵を殺害してしまったり、救助のやり方が雑だったり、非合法組織と繋がっていて自演をしていたり。
そんなヒーローこのメトロポリスでは大量に存在しているのだ。
それなのに私だけ死刑に近い罰を受けなくてはならないのか。

ヒーロー協会の建物へと歩を進めようとする

「弟子達ト約束シタノデ、ナカノヴィラン殲滅ヲ、ショウガナクテツダッテアゲマス。
 モチロンアナタノ盾ニナルツモリナドナイノデ、ソコノトコロヨロシク。
 ムシロオマエガ盾ニナレヨ、オマエノホウガ不死身ミタイナ能力モッテマスヨネ?ヨクワカラナイデスケド」

「アア・・・ソレト、ワタシハイクラ、嫌ワレテモ馬鹿ニサレテモ構イマセン、ソモソモ、アナタノコトハキライナノデ、イイノデスガ・・・」

「次"私"ノ事ヲ、馬鹿ニシタラ殺ス、貴方ダケデナク、全員デス」

313 :K-doll No14 ◆LKamXnrQVU:2019/04/23(火) 16:03:31.05 ID:/SVia+BVC
――ありがとう・・・でも最後のは言いすぎです

「貴方ニ感謝サレル覚エナンテアリマセンネ。
 私ハタダ、ザ・フューズガ、アマリニモウザカッタダケデスノデ」

それでも私を庇ってくれたことには違いない。
この件が終わったらゆっくりワタシと今後を話し合えばきっと・・・

ザ・フューズとの喧嘩も一段落し、さあ中に踏み込むかと思った矢先。

>「なぁなぁ、フォーティーンちゃんよ。ザ・フューズはおこだけど世間一般はお前の味方だろうぜ。
 【速報】廃棄予定のロボットヒーロー、颯爽と子供たちを救助!!まだ事件も解決してないのにネットは呑気なことで」

「マア、無能ナヒーロー協会ヨリ、ワタシノホウガ、ヨッポドヒーローニ、ミエルデショウネ」

本部を攻め落とされるという大失態。
廃棄予定だった機械に子供達を救助されるという、無能を発揮し、ヒーロー協会の信用は今まさに地に落ちている。

>「オービット……戦闘中にネットサーフィンはやめないか」

>「AIは必要なことしかしない……別に遊んでた訳じゃないさ。世論を読んでたんだよ。
 だから言っておく。さっきの救出劇はセンセーショナルだった。でも結果オーライで済ませる訳にはいかない。
 暴走……いや、ただの殺人兵器に戻っちまってるかもしれないロボットにこれ以上戦闘なんてさせられないからな」

>「ザ・フューズ、悪いが俺はNo14と一緒に戦うのは反対だな。リスクが大きすぎる」

「貴方達の許可等必要アリマセン。ドウシテモ邪魔スルナラ排除スルマデデスノデ」

やっぱり短気な性格だけはどうにもならず。

――やめなさい!そんな事をしたら私が許しませんよ!

「ウルサイデスネ・・・アナタハワタシの母親カナニカデスカ?」

>「……俺は、No14の意志に任せる。彼女は子供たちを助けた。悪意も感知していない。
 協会の中にはまだ生存している人がいる。俺には感じるんだ。中にいる人が発する苦しみや恐怖の感情が。
 ……No14、その人達を助けるつもりはあるか?もしあるのなら……俺達と一緒に戦ってほしい。君の力が必要だ」

>「誰かを助けたいという気持ちと、ヴィランに立ち向かう勇気。それがあれば誰もがヒーローだ。
 でもヒーローだって完璧じゃない。だから足りない部分はサポートし合えばいいし……何かあれば止めればいい。
 No14は確かにヒーローだった。いち同業者として、No14のヒーローとしての意志が消えていないと俺は信じたいんだ」

>「……分かったよ。お前がそう言うのなら。悪かったな、No14」

しかしオービットの考えとは反対の意見を出すリジェネレーター。
リジェネレーターはワタシを信じると言う、ヒーローだと。
ワタシの言動を長く見ていたはずなのに・・・人間というものがさっぱり理解できない。

「ワタシハヴィランヲ、倒シニイクノデス、人間ヲ救助シニイク予定ハアリマセン、アリマセンガ・・・」

「ソノ過程デ、負傷シテイル人間ガイタラ、アナタ達ガ救助スルノハ許可シテアゲマス、ソレヲ狙ッテキタヴィラングライハ、倒シテアゲマス」

まあ・・・少しくらいなら手伝ってやろう。
効率よくヴィランを退治する為に。

314 :K-doll No14 ◆LKamXnrQVU:2019/04/23(火) 16:04:10.70 ID:/SVia+BVC
「ソウイエバモウヒトリイマシタネ」

目の前にいるのはテスカトリポカ。
少女は困惑しながら、それでも真剣にNo14を見つめている。

「ドウシタンデス?サッキカラナニカイッテタヨウデスガ・・・ナニモナイナラサッサトイカセテモライマスヨ」

>「テスカ子供だから難しいことよく分かんないよ。
 人質助けたんだからそれでいいじゃんって思うし、危ない橋を渡らせちゃいけないっていうのも分かる。
 テスカ的には、せっかく合流出来たんだから一緒に行きたいけれど……」

「素早クハッキリシナサイ、今ハ戦闘中デス、アナタナンカノ想イダケデ、時間ヲ取ラレテイイ時ジャアリマセン」

――ちょっと強く言いすぎです!

「私ハチョット過保護過ギマスネ」

オドオドとした少女はNo14をまっすぐと見据え。
はっきりとした声で。

>「……あなた、テスカの知ってる14ちゃんじゃない、よね?
 あの子が今、どうなってるのかわかんないけれど。まだその身体の中に居るのなら、伝えて。
 ――"待ってる"って」

――・・・

「人間達が私ヲ、モウ一度裏切ルヨウナ事ガナケレバ・・・キット会エルデショウ。
 時間は掛かるかもしれませんが」

――それはどうゆう・・・

「話ハコレデオワリデス、私モ、スカとポカも」

こんどこそヒーロー協会の敷地内に歩進めるのだった。

315 :K-doll No14 ◆LKamXnrQVU:2019/04/23(火) 16:06:08.33 ID:/SVia+BVC
>「あれは対人殺戮兵器『ファーブニル』か……!
 宇宙人の技術を流用して開発された新型ロボットだな」

いざ乗り込むぞ!という時にまさかの新型登場。
空気の読めない事この上ない。

「ハア・・・スグ他ノ技術ヲ取リアエズ流用シヨウトスル人間達ニハホント呆レマスネ・・・」

龍とか蜥蜴とか、対人兵器の割には効率が悪すぎる。
しかも量産するためなのか作りが甘い、ワタシやワタシを作った博士なら同じコストでもっといい物を作れる自信がある。

「コンナ量産ノ安物ニ、最高級ノワタシハ負ケナイトイウコト・・・ヲ?」

戦闘を始めようとしたその時、光が敵を一掃する。

>「みんな、元気?私は元気!!だって私は闇を照らす希望の光!!!!」

>「歌って踊れるアイドルヒーロー!!魔法少女スターレインっ!」

>「もう好きにはさせないぞっ、こんな鉄の塊ちょちょいのちょいっと星屑にしてあげちゃうから!」

子供から大きな大人まで大好きそうな魔法少女である。

「・・・ナンデスカアレハ?コレカラワタシハ、ヒーローショーデモ、見ミセラレルンデショウカ?」

「命ノヤリトリの場デ、フザケテルアンナ奴ガイルカラ、ヒーロー協会ハ常日頃カラ馬鹿ニサレテルンデショウネ・・・」

呆れてしまう。
ここはメトロポリス各所でやってるヒーローショーではなく、本当に命をやり取りする場所なのだ。
決して茶化していい場所でも場面でもない、特に今は。

「今ハ、フザケテイイ時デハナイト、機械ノワタシデスラ分ルノニ、人間ガソンナコトモ、ワカラナイナンテ
 流石ご立派ナ人間様デスネ?ソウ思イマセンカ?ザ・フューズ?」

まともなヒーローがいないわけじゃない・・・が、この魔法少女のように空気の読めない奴ばっかりだ、よくも悪くも。
ザ・フューズに嫌味を飛ばしてすっきりしたから今日だけはほめてやろう。
次こんな登場のされ方されたら殺してしまうかもしれないけど。

まあ援護だけしてもらうだけしてもらって中に突入するか、そう考えた時
後ろにいたテスカトリポカが叫ぶ。

>「あいつキャラ被ってる!テスカとキャラ被ってる!!!!!!!」

「タシカニ」

――たしかに

始めて私達の意見が合った場面かもしれない。

>「はぁ、私ってなんて罪な魔法少女なんだろう……」

>「自白!罪の自白だよね今の!よし、しょっぴこう!
 しょっぴく際に勢い余って心臓抉っちゃってもあくまで事故、合法です!」

テスカトリポカが怒り狂ってる間、あまりにもしょーもないので傷が少ないファーブニルの残骸を見つけて解体する事にした。

「通信機製作ト・・・弾補充ト・・・アトハドウシマショウカネ・・・」

316 :K-doll No14 ◆LKamXnrQVU:2019/04/23(火) 16:07:14.24 ID:/SVia+BVC
別のヒーロー達の助けを借り、やっとヒーロー協会本部の中に進入を果たした。
そこに待ち構えていたのは敵ではなくヒーローやここで働いていたであろう事務員の・・・大量の死体。

>「惨い……ヒーローの総本山がここまで壊滅したら、このさきメトロポリスはどうなっちゃうのかな」

「マア少ナクトモ当面ノ間ハ正式ナ活動モデキナイデショウシ、ヴィラン共ガ暴レルデショウネ
 ドッチニシテモ、”ヒーローデハナイ”ワタシニハ、関係ナイノデ、ドウデモイイノデスガ」

嫌味をグチグチといいながらリジェネレーターを先頭に進んでいく。

>「……旧約聖書の創世記において、悪徳と頽廃の象徴とされるソドムとゴモラは天からの硫黄と火によって滅ぼされた。
 この世に神はいる。だが悪の蔓延るこの世に裁きを下す事はないのだろう。現代の悪徳と頽廃の象徴――……。
 メトロポリスは、こうして天の裁きを下されることなくのうのうと存在しているのだから」

>「この世界は病んでいるよ。故に、私は私の信じる正義を実行に移すまで。
 全ての悪の源、このメトロポリスを滅ぼす。貴様にこれを言うのは三度目だな……リジェネレイター。
 そちらの方々はNo14、テスカ☆トリポカに……ザ・フューズか。会うのは初めてになる。私は『アンチマター』だ」

「馬鹿丸出シナ自己紹介ドウモ!」

――これがアンチマター・・・!

天井破壊しながら降って来た男は名乗りを上げる。
ラスボスが行き成り登場とは、だが。

「手間ガ省ケテ楽、デスネ」

誰よりも速くリジェネレーターが奇襲攻撃を仕掛ける。
しかしそれが入る事はなく難なく防がれてしまう。

>「……なぜだ?なぜこんなことをした?ヒーロー協会を襲うことが、お前の正義なのか。
>「私の邪魔をするからだ。それに……偽善者を叩き潰す事に何か躊躇いがいるか?
 少し私の話をしてやろう。私は今よりずっと未来の世界……23XX年からやってきた時間旅行者なのだ」

男は自分がこの世界にやってきた経緯・目的を話し始める。

>「酷い時代だった。非合法組織の活動が社会基盤を半ば崩壊させ、一般人は日々の食事さえままらない……。
 私は両親の顔も知らない。掛け替えのない友人や愛すべき人も、すぐこの世を去った……大切なものなど全て失ったよ」

>「私は必ず未来を平和にしてみせる!それが私に唯一残された正義だからだ!
 その最善の手段は20XX年のメトロポリスに消えてもらうことだ!!
 障害となるものは誰であろうと排除しよう!手段は選ばん!!」

「アナタガ言ウ正義ノ先ニハ、ナニモナイト、ワカラナイホド愚カナノデスネ・・・」

しかしアンチマターは聞く耳を持たず。
アンチマターになにを言っても意味がない事なのだと理解する。

>「どんな抵抗も無意味だ!さぁ、奪わせてもらおうか、貴様の未来!!」

目では追いきれないほど早い打撃。
そしてその次の一瞬なにかがリジェネーレーターを襲った。

>「うそ……リジェネレイター……?」

リジェネレーターの姿は、もうどこにもなかった。

317 :K-doll No14 ◆LKamXnrQVU:2019/04/23(火) 16:08:14.62 ID:/SVia+BVC
>「……待たせたな。次は貴様らだ。もっとも手の内は知っている。
 私の時代のヒーローと同じ、醜い偽善者だということもな……」

>「わけわかんないよ!ヒーローに代わって世界を平和にするのが目的なんじゃないの!?
 おじさんがやってることまんまヴィランじゃん!なんでそう極端に転ぶの!?」

「言葉ガ通ジル相手デハナイ!ハヤク戦闘態勢ヲトリナサイ!」

No14が叫ぶ、しかしそれよりも速く。

>「テスカ☆トリポカ!神の力を借りていながら貴様は罪深いなぁ!
 正直になったらどうだ?本当は快楽に溺れていたいだけなんだろ……?
 折角だから教えておいてやろう!!薬物由来のその力、今は合法でも未来では違法だ!!!!」

>「えっ、ちょっ、まっ」

アンチマターの両肩から大量のミサイル。
まだ完全な戦闘状態になれていなかったテスカトリポカにミサイルが襲い掛かる。

>「このっ――『レイラインステップ』!」

瞬間移動で回避を試みる・・・しかしミサイルは無慈悲にも。

>「へっ――」

軽減には成功したようだがミサイルの直撃をいくら軽減しようと人間が耐えれるような物ではない。

「チッ、イキナリ手間ヲ掛ケサセテクレマスネ!」

テスカトリポカに向うであろう追撃を打ち落とす為にカバーに入ろうする、が。

「人間の心配をしてる場合なのかお前は?」

「――ッ!?」

背後からの突然の打撃に壁まで吹き飛ばせる。
咄嗟にガードしなかったらそれだけで戦闘不能になっていたかもしれない。

「テスカトリポカニ・・・トドメヲササナインデスカ?ハヤクシテオイタホウガ、イイトワタシハオモイマスネ・・・」

テスカトリポカにトドメを刺そうとしたらその瞬間背後から一撃を食らわせてやる。
一撃あればワタシなら突破できる。

「なに、あんなザコ何時でも狩れる・・・何度でもな、しかし残念だよNo14、実は私は今の人間を恨めしく思っている貴様とならいい関係を気づけると思っていたのだが、
 わざわざこんな奴を庇おうとするとは!」

テスカトリポカが埋まっているであろう瓦礫を指差し笑うアンチマター。
油断してくれると思ったのだが・・・。

「ワタシ的ニハドウデモイイノデスガ・・・数少ナイ"私"ノ友達ナノデネ・・・死ナレチャコマルンデスヨ・・・」

アンチマターはため息を吐き。

>「K-doll No14!憐れだな!自我を持ったが故に世間に持て囃され踊らされているとは!
 機械は作られた時から役割が決まっている!役割を満足にこなせぬ欠陥品は処分される運命なのだ!
 殺人機械でもない、人間にも奉仕できない、何の価値もないではないか?社会は廃品業者ではない、消えろ!!」

「"私"モ、アナタダケニハ絶対仕エナイデショウネ・・・!」

318 :K-doll No14 ◆LKamXnrQVU:2019/04/23(火) 16:10:10.75 ID:/SVia+BVC
スーツの各所が展開して、エネルギーを貯め発射する。

「フン!コンナ攻撃簡単ニヨケラレマスヨ!」

――まってください避けたら外に被害がでてしまいます!

拡散型とはいえ解析する必要もなく高出力のレーザービーム。
私がよければこのレーザーはヒーロー協会の壁を溶かし外に溢れるかもしれない。
ここは市街地の真っ只中、人も沢山集まっているし、近くの建物が燃えれば近くにまだいるかもしれない弟子達も・・・

「アア!?・・・クソクソクソクソ!!!!ガードプログラム;アサイラム」

バリアを展開しビームを相殺する。
心臓の力をフルに使いバリアを維持の稼動限界がきても展開を維持していく。

――すごいです!これなら!・・・!?

心臓の力も決して万能ではなかった。
この心臓の力を借りれば借りるほど人間でいう激痛に見舞われ。
本来のスペック以上の力を出している事で体全体が過度の熱を出す。

「アア・・・カラダガ・・トケソウダ・・・」

それでもレーザーは止まる気配はなく耐久するしかない。
テスカトリポカが残した黒曜石の煙幕のお陰でまだ耐久できてはいる、しかし。
体全体が人間が触れないほど熱くなり、激痛が走る。

とうとうオーバーヒートを起し、バリアを維持できなくなる。
それと同時にレーザーの攻撃が終了した。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・!」

本来機械であるNo14には必要ない呼吸という概念。
しかし体内の熱気を外に逃がすため、ひたすらに深呼吸を繰り返す。

>「ポンコツが……開発者がどれだけ優秀だろうと未来の頭脳には敵わないと理解するんだな」

「科学者ハ常ニ前ニ向ッテ歩ム者ダト・・・過去ニ向ッテ歩クオマエハ間違ッテイルノダト・・・」

「未来ノ科学ガ確実ニ先ヲイッテイルト、思イ込ンデルオマエニ・・・ハア・・・ハア・・・」

「絶対ニ私達ニハ勝テナイト!現実ヲ、オシエテヤル!」

【アンチマターと戦闘。レーザーを受け切るもオーバーヒート。深呼吸中】

319 :K-doll No14 :2019/04/23(火) 17:02:15.87 ID:+oYVdrZD.net
>「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

「・・・ナニ?」

だれでもでもわかるぐらいの不機嫌な声。
急速に加速する感情プログラム。

>「私は、お前のごっこ遊びに付き合うつもりはない。
 前衛はお前が努めろ。役に立つ内は援護はしてやる」

「・・・イワセテモライマスガ、アノ子供達ハ本来死ヌ予定ノ子供達デシタ
 蜥蜴ニ追イ掛ケ回サレ、後10秒後ニハ、アノヨダッタデショウ」

どんどん感情が高まっていく。

「ソモソモ、アノ子供達ハナゼ、ソンナ、危険ナ状態ダッタカ?、ソレハアナタ達ノセイニホカナリマセン」

感情は留まる事を知らず。

「アナタ達ハヴィラン達カラ回収シタアレガ、危険ナ事モ、ヴィランニトッテモ大事ナ物デアルト、理解シテイタニモ関ワラズ
 特ニ対策モトラズ、ソレヲ保管シテイルヒーロー協会本部ヲ襲撃サレ、制圧サレマシタ」

「ソノセイデ人ガイッパイ死ニマシタネ?モハヤ中カラ生命反応ヲ、ホトンドカンジマセン!イヤア!スバラシイデスネ!ヒーロー協会万歳デス!」

外で聞いているマスコミや一般人に聞こえるように大きな声で喋りながら拍手する。

――あなたいい加減に・・・!

「・・・愚カナコトニ"私"ハ、人間ニ捨テラレソウニナッテモ、全部ノ武装ヲ外サレテモ、廃棄物扱イサレテモ、人々ヲ助ケヨウトシマシタ」

「ソノ結果自分ノ命ガ危険ニ晒サレマシタ、自分ヲ捨テヨウトシタ人間ナンテ放置シテイケバイイノニ、自分ノ命ヨリ、子供ノ命ヲ優先シタノデス」

――あなた・・・

さっきまでとは違いマスコミや一般人に向けてではなく。
ザ・フューズに向って、落ち着いた声で喋る。

「"ワタシ"ガ体ヲ乗ッ取リ、ソノ場ハナントカ凌ギマシタ、ソノ後ノ事ハ大体全部ミテマシタヨネ?」

「アナタ達ガ私ヲ裏切ラナケレバ、私ニ普段通リノ装備ガアレバ、アノ子供達モアンナ危険ナ目ニハ、ワタシニ救助サレルコトモナカッタデショウ」

これはお前等のせいなんだと、念を押すように告げる。

「ワタシガ暴レタカラ、私ハ信用ヲ失ッタトカイワナイデクダサイネ?タシカニアノトキハ、オーバーパワーデシタガ、イツカ
 コノチカラヲツカワナイト、イケナイトキハ絶対ニ来テマシタノデ。
 テユーカ、コノ程度ノ不祥事、他ノヒーローモ割リト頻繁にヤラカシテマスヨネ?」

敵を殺害してしまったり、救助のやり方が雑だったり、非合法組織と繋がっていて自演をしていたり。
そんなヒーローこのメトロポリスでは大量に存在しているのだ。
それなのに私だけ死刑に近い罰を受けなくてはならないのか。

ヒーロー協会の建物へと歩を進めようとする

「弟子達ト約束シタノデ、ナカノヴィラン殲滅ヲ、ショウガナクテツダッテアゲマス。
 モチロンアナタノ盾ニナルツモリナドナイノデ、ソコノトコロヨロシク。
 ムシロオマエガ盾ニナレヨ、オマエノホウガ不死身ミタイナ能力モッテマスヨネ?ヨクワカラナイデスケド」

「アア・・・ソレト、ワタシハイクラ、嫌ワレテモ馬鹿ニサレテモ構イマセン、ソモソモ、アナタノコトハキライナノデ、イイノデスガ・・・」

「次"私"ノ事ヲ、馬鹿ニシタラ殺ス、貴方ダケデナク、全員デス」

320 :K-doll No14 :2019/04/23(火) 17:03:10.70 ID:+oYVdrZD.net
――ありがとう・・・でも最後のは言いすぎです

「貴方ニ感謝サレル覚エナンテアリマセンネ。
 私ハタダ、ザ・フューズガ、アマリニモウザカッタダケデスノデ」

それでも私を庇ってくれたことには違いない。
この件が終わったらゆっくりワタシと今後を話し合えばきっと・・・

ザ・フューズとの喧嘩も一段落し、さあ中に踏み込むかと思った矢先。

>「なぁなぁ、フォーティーンちゃんよ。ザ・フューズはおこだけど世間一般はお前の味方だろうぜ。
 【速報】廃棄予定のロボットヒーロー、颯爽と子供たちを救助!!まだ事件も解決してないのにネットは呑気なことで」

「マア、無能ナヒーロー協会ヨリ、ワタシノホウガ、ヨッポドヒーローニ、ミエルデショウネ」

本部を攻め落とされるという大失態。
廃棄予定だった機械に子供達を救助されるという、無能を発揮し、ヒーロー協会の信用は今まさに地に落ちている。

>「オービット……戦闘中にネットサーフィンはやめないか」

>「AIは必要なことしかしない……別に遊んでた訳じゃないさ。世論を読んでたんだよ。
 だから言っておく。さっきの救出劇はセンセーショナルだった。でも結果オーライで済ませる訳にはいかない。
 暴走……いや、ただの殺人兵器に戻っちまってるかもしれないロボットにこれ以上戦闘なんてさせられないからな」

>「ザ・フューズ、悪いが俺はNo14と一緒に戦うのは反対だな。リスクが大きすぎる」

「貴方達の許可等必要アリマセン。ドウシテモ邪魔スルナラ排除スルマデデスノデ」

やっぱり短気な性格だけはどうにもならず。

――やめなさい!そんな事をしたら私が許しませんよ!

「ウルサイデスネ・・・アナタハワタシの母親カナニカデスカ?」

>「……俺は、No14の意志に任せる。彼女は子供たちを助けた。悪意も感知していない。
 協会の中にはまだ生存している人がいる。俺には感じるんだ。中にいる人が発する苦しみや恐怖の感情が。
 ……No14、その人達を助けるつもりはあるか?もしあるのなら……俺達と一緒に戦ってほしい。君の力が必要だ」

>「誰かを助けたいという気持ちと、ヴィランに立ち向かう勇気。それがあれば誰もがヒーローだ。
 でもヒーローだって完璧じゃない。だから足りない部分はサポートし合えばいいし……何かあれば止めればいい。
 No14は確かにヒーローだった。いち同業者として、No14のヒーローとしての意志が消えていないと俺は信じたいんだ」

>「……分かったよ。お前がそう言うのなら。悪かったな、No14」

しかしオービットの考えとは反対の意見を出すリジェネレーター。
リジェネレーターはワタシを信じると言う、ヒーローだと。
ワタシの言動を長く見ていたはずなのに・・・人間というものがさっぱり理解できない。

「ワタシハヴィランヲ、倒シニイクノデス、人間ヲ救助シニイク予定ハアリマセン、アリマセンガ・・・」

「ソノ過程デ、負傷シテイル人間ガイタラ、アナタ達ガ救助スルノハ許可シテアゲマス、ソレヲ狙ッテキタヴィラングライハ、倒シテアゲマス」

まあ・・・少しくらいなら手伝ってやろう。
効率よくヴィランを退治する為に。

321 :K-doll No14 :2019/04/23(火) 17:04:20.69 ID:+oYVdrZD.net
「ソウイエバモウヒトリイマシタネ」

目の前にいるのはテスカトリポカ。
少女は困惑しながら、それでも真剣にNo14を見つめている。

「ドウシタンデス?サッキカラナニカイッテタヨウデスガ・・・ナニモナイナラサッサトイカセテモライマスヨ」

>「テスカ子供だから難しいことよく分かんないよ。
 人質助けたんだからそれでいいじゃんって思うし、危ない橋を渡らせちゃいけないっていうのも分かる。
 テスカ的には、せっかく合流出来たんだから一緒に行きたいけれど……」

「素早クハッキリシナサイ、今ハ戦闘中デス、アナタナンカノ想イダケデ、時間ヲ取ラレテイイ時ジャアリマセン」

――ちょっと強く言いすぎです!

「私ハチョット過保護過ギマスネ」

オドオドとした少女はNo14をまっすぐと見据え。
はっきりとした声で。

>「……あなた、テスカの知ってる14ちゃんじゃない、よね?
 あの子が今、どうなってるのかわかんないけれど。まだその身体の中に居るのなら、伝えて。
 ――"待ってる"って」

――・・・

「人間達が私ヲ、モウ一度裏切ルヨウナ事ガナケレバ・・・キット会エルデショウ。
 時間は掛かるかもしれませんが」

――それはどうゆう・・・

「話ハコレデオワリデス、私モ、スカとポカも」

こんどこそヒーロー協会の敷地内に歩進めるのだった。

322 :K-doll No14 :2019/04/23(火) 17:05:21.06 ID:+oYVdrZD.net
>「あれは対人殺戮兵器『ファーブニル』か……!
 宇宙人の技術を流用して開発された新型ロボットだな」

いざ乗り込むぞ!という時にまさかの新型登場。
空気の読めない事この上ない。

「ハア・・・スグ他ノ技術ヲ取リアエズ流用シヨウトスル人間達ニハホント呆レマスネ・・・」

龍とか蜥蜴とか、対人兵器の割には効率が悪すぎる。
しかも量産するためなのか作りが甘い、ワタシやワタシを作った博士なら同じコストでもっといい物を作れる自信がある。

「コンナ量産ノ安物ニ、最高級ノワタシハ負ケナイトイウコト・・・ヲ?」

戦闘を始めようとしたその時、光が敵を一掃する。

>「みんな、元気?私は元気!!だって私は闇を照らす希望の光!!!!」

>「歌って踊れるアイドルヒーロー!!魔法少女スターレインっ!」

>「もう好きにはさせないぞっ、こんな鉄の塊ちょちょいのちょいっと星屑にしてあげちゃうから!」

子供から大きな大人まで大好きそうな魔法少女である。

「・・・ナンデスカアレハ?コレカラワタシハ、ヒーローショーデモ、見ミセラレルンデショウカ?」

「命ノヤリトリの場デ、フザケテルアンナ奴ガイルカラ、ヒーロー協会ハ常日頃カラ馬鹿ニサレテルンデショウネ・・・」

呆れてしまう。
ここはメトロポリス各所でやってるヒーローショーではなく、本当に命をやり取りする場所なのだ。
決して茶化していい場所でも場面でもない、特に今は。

「今ハ、フザケテイイ時デハナイト、機械ノワタシデスラ分ルノニ、人間ガソンナコトモ、ワカラナイナンテ
 流石ご立派ナ人間様デスネ?ソウ思イマセンカ?ザ・フューズ?」

まともなヒーローがいないわけじゃない・・・が、この魔法少女のように空気の読めない奴ばっかりだ、よくも悪くも。
ザ・フューズに嫌味を飛ばしてすっきりしたから今日だけはほめてやろう。
次こんな登場のされ方されたら殺してしまうかもしれないけど。

まあ援護だけしてもらうだけしてもらって中に突入するか、そう考えた時
後ろにいたテスカトリポカが叫ぶ。

>「あいつキャラ被ってる!テスカとキャラ被ってる!!!!!!!」

「タシカニ」

――たしかに

始めて私達の意見が合った場面かもしれない。

>「はぁ、私ってなんて罪な魔法少女なんだろう……」

>「自白!罪の自白だよね今の!よし、しょっぴこう!
 しょっぴく際に勢い余って心臓抉っちゃってもあくまで事故、合法です!」

テスカトリポカが怒り狂ってる間、あまりにもしょーもないので傷が少ないファーブニルの残骸を見つけて解体する事にした。

「通信機製作ト・・・弾補充ト・・・アトハドウシマショウカネ・・・」

323 :K-doll No14 :2019/04/23(火) 17:06:11.52 ID:+oYVdrZD.net
別のヒーロー達の助けを借り、やっとヒーロー協会本部の中に進入を果たした。
そこに待ち構えていたのは敵ではなくヒーローやここで働いていたであろう事務員の・・・大量の死体。

>「惨い……ヒーローの総本山がここまで壊滅したら、このさきメトロポリスはどうなっちゃうのかな」

「マア少ナクトモ当面ノ間ハ正式ナ活動モデキナイデショウシ、ヴィラン共ガ暴レルデショウネ
 ドッチニシテモ、”ヒーローデハナイ”ワタシニハ、関係ナイノデ、ドウデモイイノデスガ」

嫌味をグチグチといいながらリジェネレーターを先頭に進んでいく。

>「……旧約聖書の創世記において、悪徳と頽廃の象徴とされるソドムとゴモラは天からの硫黄と火によって滅ぼされた。
 この世に神はいる。だが悪の蔓延るこの世に裁きを下す事はないのだろう。現代の悪徳と頽廃の象徴――……。
 メトロポリスは、こうして天の裁きを下されることなくのうのうと存在しているのだから」

>「この世界は病んでいるよ。故に、私は私の信じる正義を実行に移すまで。
 全ての悪の源、このメトロポリスを滅ぼす。貴様にこれを言うのは三度目だな……リジェネレイター。
 そちらの方々はNo14、テスカ☆トリポカに……ザ・フューズか。会うのは初めてになる。私は『アンチマター』だ」

「馬鹿丸出シナ自己紹介ドウモ!」

――これがアンチマター・・・!

天井破壊しながら降って来た男は名乗りを上げる。
ラスボスが行き成り登場とは、だが。

「手間ガ省ケテ楽、デスネ」

誰よりも速くリジェネレーターが奇襲攻撃を仕掛ける。
しかしそれが入る事はなく難なく防がれてしまう。

>「……なぜだ?なぜこんなことをした?ヒーロー協会を襲うことが、お前の正義なのか。
>「私の邪魔をするからだ。それに……偽善者を叩き潰す事に何か躊躇いがいるか?
 少し私の話をしてやろう。私は今よりずっと未来の世界……23XX年からやってきた時間旅行者なのだ」

男は自分がこの世界にやってきた経緯・目的を話し始める。

>「酷い時代だった。非合法組織の活動が社会基盤を半ば崩壊させ、一般人は日々の食事さえままらない……。
 私は両親の顔も知らない。掛け替えのない友人や愛すべき人も、すぐこの世を去った……大切なものなど全て失ったよ」

>「私は必ず未来を平和にしてみせる!それが私に唯一残された正義だからだ!
 その最善の手段は20XX年のメトロポリスに消えてもらうことだ!!
 障害となるものは誰であろうと排除しよう!手段は選ばん!!」

「アナタガ言ウ正義ノ先ニハ、ナニモナイト、ワカラナイホド愚カナノデスネ・・・」

しかしアンチマターは聞く耳を持たず。
アンチマターになにを言っても意味がない事なのだと理解する。

>「どんな抵抗も無意味だ!さぁ、奪わせてもらおうか、貴様の未来!!」

目では追いきれないほど早い打撃。
そしてその次の一瞬なにかがリジェネーレーターを襲った。

>「うそ……リジェネレイター……?」

リジェネレーターの姿は、もうどこにもなかった。

324 :K-doll No14 :2019/04/23(火) 17:07:09.32 ID:+oYVdrZD.net
>「……待たせたな。次は貴様らだ。もっとも手の内は知っている。
 私の時代のヒーローと同じ、醜い偽善者だということもな……」

>「わけわかんないよ!ヒーローに代わって世界を平和にするのが目的なんじゃないの!?
 おじさんがやってることまんまヴィランじゃん!なんでそう極端に転ぶの!?」

「言葉ガ通ジル相手デハナイ!ハヤク戦闘態勢ヲトリナサイ!」

No14が叫ぶ、しかしそれよりも速く。

>「テスカ☆トリポカ!神の力を借りていながら貴様は罪深いなぁ!
 正直になったらどうだ?本当は快楽に溺れていたいだけなんだろ……?
 折角だから教えておいてやろう!!薬物由来のその力、今は合法でも未来では違法だ!!!!」

>「えっ、ちょっ、まっ」

アンチマターの両肩から大量のミサイル。
まだ完全な戦闘状態になれていなかったテスカトリポカにミサイルが襲い掛かる。

>「このっ――『レイラインステップ』!」

瞬間移動で回避を試みる・・・しかしミサイルは無慈悲にも。

>「へっ――」

軽減には成功したようだがミサイルの直撃をいくら軽減しようと人間が耐えれるような物ではない。

「チッ、イキナリ手間ヲ掛ケサセテクレマスネ!」

テスカトリポカに向うであろう追撃を打ち落とす為にカバーに入ろうする、が。

「人間の心配をしてる場合なのかお前は?」

「――ッ!?」

背後からの突然の打撃に壁まで吹き飛ばせる。
咄嗟にガードしなかったらそれだけで戦闘不能になっていたかもしれない。

「テスカトリポカニ・・・トドメヲササナインデスカ?ハヤクシテオイタホウガ、イイトワタシハオモイマスネ・・・」

テスカトリポカにトドメを刺そうとしたらその瞬間背後から一撃を食らわせてやる。
一撃あればワタシなら突破できる。

「なに、あんなザコ何時でも狩れる・・・何度でもな、しかし残念だよNo14、実は私は今の人間を恨めしく思っている貴様とならいい関係を気づけると思っていたのだが、
 わざわざこんな奴を庇おうとするとは!」

テスカトリポカが埋まっているであろう瓦礫を指差し笑うアンチマター。
油断してくれると思ったのだが・・・。

「ワタシ的ニハドウデモイイノデスガ・・・数少ナイ"私"ノ友達ナノデネ・・・死ナレチャコマルンデスヨ・・・」

アンチマターはため息を吐き。

>「K-doll No14!憐れだな!自我を持ったが故に世間に持て囃され踊らされているとは!
 機械は作られた時から役割が決まっている!役割を満足にこなせぬ欠陥品は処分される運命なのだ!
 殺人機械でもない、人間にも奉仕できない、何の価値もないではないか?社会は廃品業者ではない、消えろ!!」

「"私"モ、アナタダケニハ絶対仕エナイデショウネ・・・!」

325 :K-doll No14 :2019/04/23(火) 17:08:09.34 ID:+oYVdrZD.net
スーツの各所が展開して、エネルギーを貯め発射する。

「フン!コンナ攻撃簡単ニヨケラレマスヨ!」

――まってください避けたら外に被害がでてしまいます!

拡散型とはいえ解析する必要もなく高出力のレーザービーム。
私がよければこのレーザーはヒーロー協会の壁を溶かし外に溢れるかもしれない。
ここは市街地の真っ只中、人も沢山集まっているし、近くの建物が燃えれば近くにまだいるかもしれない弟子達も・・・

「アア!?・・・クソクソクソクソ!!!!ガードプログラム;アサイラム」

バリアを展開しビームを相殺する。
心臓の力をフルに使いバリアを維持の稼動限界がきても展開を維持していく。

――すごいです!これなら!・・・!?

心臓の力も決して万能ではなかった。
この心臓の力を借りれば借りるほど人間でいう激痛に見舞われ。
本来のスペック以上の力を出している事で体全体が過度の熱を出す。

「アア・・・カラダガ・・トケソウダ・・・」

それでもレーザーは止まる気配はなく耐久するしかない。
テスカトリポカが残した黒曜石の煙幕のお陰でまだ耐久できてはいる、しかし。
体全体が人間が触れないほど熱くなり、激痛が走る。

とうとうオーバーヒートを起し、バリアを維持できなくなる。
それと同時にレーザーの攻撃が終了した。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・!」

本来機械であるNo14には必要ない呼吸という概念。
しかし体内の熱気を外に逃がすため、ひたすらに深呼吸を繰り返す。

>「ポンコツが……開発者がどれだけ優秀だろうと未来の頭脳には敵わないと理解するんだな」

「科学者ハ常ニ前ニ向ッテ歩ム者ダト・・・過去ニ向ッテ歩クオマエハ間違ッテイルノダト・・・」

「未来ノ科学ガ確実ニ先ヲイッテイルト、思イ込ンデルオマエニ・・・ハア・・・ハア・・・」

「絶対ニ私達ニハ勝テナイト!現実ヲ、オシエテヤル!」

【アンチマターと戦闘。レーザーを受け切るもオーバーヒート。深呼吸中】

326 :ポチ :2019/04/26(金) 00:02:42.83 ID:FvNG/ugC.net
>「・・・イワセテモライマスガ、アノ子供達ハ本来死ヌ予定ノ子供達デシタ
  蜥蜴ニ追イ掛ケ回サレ、後10秒後ニハ、アノヨダッタデショウ」

「……助けてやった命だから、なんだ。もう一度危険に晒すのもお前の自由か?」

>「ソモソモ、アノ子供達ハナゼ、ソンナ、危険ナ状態ダッタカ?、ソレハアナタ達ノセイニホカナリマセン」

>「ワタシガ暴レタカラ、私ハ信用ヲ失ッタトカイワナイデクダサイネ?タシカニアノトキハ、オーバーパワーデシタガ、イツカ
  コノチカラヲツカワナイト、イケナイトキハ絶対ニ来テマシタノデ。
  テユーカ、コノ程度ノ不祥事、他ノヒーローモ割リト頻繁にヤラカシテマスヨネ?」

不快感を露に、No14は反駁。

「ああ、そうだな。ヒーロー協会も、ヒーローも、ミスを犯す。
 だからお前も同じ事をしていい……短絡的だな。所詮、殺人機械か」

一方でザ・フューズもまた、軽蔑と落胆を隠さない。

>「弟子達ト約束シタノデ、ナカノヴィラン殲滅ヲ、ショウガナクテツダッテアゲマス。
  モチロンアナタノ盾ニナルツモリナドナイノデ、ソコノトコロヨロシク。
  ムシロオマエガ盾ニナレヨ、オマエノホウガ不死身ミタイナ能力モッテマスヨネ?ヨクワカラナイデスケド」

「殺人機械のくせに、私が前衛に向いてると本気で思ってるのか?
 とんだポンコツだな。これなら、昨日の方がまだ……」

>「アア・・・ソレト、ワタシハイクラ、嫌ワレテモ馬鹿ニサレテモ構イマセン、ソモソモ、アナタノコトハキライナノデ、イイノデスガ・・・」
>「次"私"ノ事ヲ、馬鹿ニシタラ殺ス、貴方ダケデナク、全員デス」

「……言っておくがな、今のは"現場の判断"で処分されても文句は言えないぞ。
 "私"だと?どの私の事だ。誰が見たって、お前はお前だ。殺人機械め」

ザ・フューズはNo14の胸元へ人差し指を突きつけ、釘を刺す。

「チッ……遅いな。他の連中は何をしてる」

そしてNo14から目を逸らさないまま、悪態を吐く。
ザ・フューズは悪徳ヒーローだが、だからこそ理解している。
悪事ですら、安定した社会基盤がなければ成立し得ない事を。

ヒーロー協会の力が弱まる事は、ヴィラン達の歯止めが利かなくなるという事。
全ての悪党が思い思いに社会を食い散らかせば、メトロポリスは遠からず、都市としての機能を失う。
実際には、そうなる前にヒーロー協会よりも小さな、そして複数の、自警団的組織が誕生する可能性はある。
だが――あくまでも可能性だ。
メトロポリスの終末時計は、滅亡の一分前を示していると言って、過言ではない。

327 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:03:08.13 ID:FvNG/ugC.net
>「なぁなぁ、フォーティーンちゃんよ。ザ・フューズはおこだけど世間一般はお前の味方だろうぜ。
 【速報】廃棄予定のロボットヒーロー、颯爽と子供たちを救助!!まだ事件も解決してないのにネットは呑気なことで」

「パラミリ・パラッチか。見えてるなら、さっさと現場に来ればいいものを」

>「オービット……戦闘中にネットサーフィンはやめないか」

>「AIは必要なことしかしない……別に遊んでた訳じゃないさ。世論を読んでたんだよ。
 だから言っておく。さっきの救出劇はセンセーショナルだった。でも結果オーライで済ませる訳にはいかない。
 暴走……いや、ただの殺人兵器に戻っちまってるかもしれないロボットにこれ以上戦闘なんてさせられないからな」
>「ザ・フューズ、悪いが俺はNo14と一緒に戦うのは反対だな。リスクが大きすぎる」

「……確かに、一理ある」

>「貴方達の許可等必要アリマセン。ドウシテモ邪魔スルナラ排除スルマデデスノデ」

「だが……そういう話は、他の連中が来てからにして欲しかったな。
 今始めると……こういう事になるだろ、まったく」

No14を見下ろすザ・フューズ。
白兵戦に特別長けている訳でもない彼女が、こうも強気なのは、当然理由がある。

近接航空支援の為に生成した疑似脳と眼球。
それらは今もなお上空から地上を監視している。
No14が不審な動きをすれば、二つの疑似脳が即座に、それぞれエクトプラズムとパイロキネシスを行使する。
つまり、拘束し、焼き尽くす。そして――

>「……俺は、No14の意志に任せる。彼女は子供たちを助けた。悪意も感知していない。
 協会の中にはまだ生存している人がいる。俺には感じるんだ。中にいる人が発する苦しみや恐怖の感情が。
 ……No14、その人達を助けるつもりはあるか?もしあるのなら……俺達と一緒に戦ってほしい。君の力が必要だ」

果たしてその対処が、開始される事はなかった。

>「誰かを助けたいという気持ちと、ヴィランに立ち向かう勇気。それがあれば誰もがヒーローだ。
 でもヒーローだって完璧じゃない。だから足りない部分はサポートし合えばいいし……何かあれば止めればいい。
 No14は確かにヒーローだった。いち同業者として、No14のヒーローとしての意志が消えていないと俺は信じたいんだ」

リジェネレイターの言葉に、ザ・フューズは即断する――戯言だと。
そも、ザ・フューズがNo14の同行に肯定的だったのは、戦力としての有用性故。

>「……分かったよ。お前がそう言うのなら。悪かったな、No14」

「ヒーローは夢に見られる者だ。夢を見る者じゃない。
 希望的観測に頼るな。ソイツのどこに、ヒーローの意志がある?」

この状況下で、ヒーロー同士の戦いも厭わない、と。
そのような言動を受けてなお、同行「して頂く」理由などない。
現場の判断で破壊しても、始末書を書く必要すらないだろう。

「……だが、これではただの水掛け論だな。
 加えて言えば、多数決では勝ち目が無さそうだ……好きにしろ」

しかし――結果的に、ザ・フューズは意見を曲げた。
それも極めて早期に、反論もせず。
その理由は――彼女があえて語る事はない。

その後、暫し繰り広げられた漫才にザ・フューズが深い溜息を吐いてようやく、一行はヒーロー協会本部へと突入を果たした。

328 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:03:39.40 ID:FvNG/ugC.net
>「惨い……ヒーローの総本山がここまで壊滅したら、このさきメトロポリスはどうなっちゃうのかな」
>「マア少ナクトモ当面ノ間ハ正式ナ活動モデキナイデショウシ、ヴィラン共ガ暴レルデショウネ
  ドッチニシテモ、”ヒーローデハナイ”ワタシニハ、関係ナイノデ、ドウデモイイノデスガ」

No14の執拗な嫌味。ザ・フューズは無反応を貫く。
本部の占拠に用いられたのがロボットである以上、リジェネレイターの索敵は頼れない。
センサーを用いた壁越しの不意打ちを凌ぐには、それなりの工夫と準備が必要。
幼稚な殺人機械を相手にしている暇はない。

そして――不意に、協会内部のスピーカーから、ぶつんと音が響いた。
マイクが起動された事による僅かなノイズ。
それに続くのは――救援要請か。それ以外か。

329 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:04:24.76 ID:FvNG/ugC.net
>「……旧約聖書の創世記において、悪徳と頽廃の象徴とされるソドムとゴモラは天からの硫黄と火によって滅ぼされた。
> この世に神はいる。だが悪の蔓延るこの世に裁きを下す事はないのだろう。現代の悪徳と頽廃の象徴――……。
  メトロポリスは、こうして天の裁きを下されることなくのうのうと存在しているのだから」

響いたのは――男の声だ。
死屍累々の戦場と化したこの協会において、何の価値もない神代の作り話。
放送は生存者ではなく、この事件の首謀者によるもの。

ザ・フューズは舌を鳴らし――だが直後、彼女の目の前で天井が勢いよく崩落。
瓦礫と共に降ってきたのは、漆黒のパワードスーツに身を包んだ――これ見よがしな悪党。

>「この世界は病んでいるよ。故に、私は私の信じる正義を実行に移すまで。
 全ての悪の源、このメトロポリスを滅ぼす。貴様にこれを言うのは三度目だな……リジェネレイター。
 そちらの方々はNo14、テスカ☆トリポカに……ザ・フューズか。会うのは初めてになる。私は『アンチマター』だ」

>「馬鹿丸出シナ自己紹介ドウモ!」
 「手間ガ省ケテ楽、デスネ」

No14が軽口を叩く中、ザ・フューズは一歩その場を飛び退いていた。
彼女の戦闘は状況の構築から始まる。
エクトプラズム・プレートを配置し、敵の動きを制限し、優位に立つ。
故に突発的な戦闘においてはまず守勢に回る。それが合理的な判断だった。

一方で、前へと踏み出した者もいた。リジェネレイターだ。
躊躇なしの先制攻撃――しかしアンチマターはそれを容易く捌く。
更に竜を模したスーツの尾を用い、カウンター。
リジェネレイターは辛うじてそれを躱し――そこで一度退かざるを得なかった。

>「……なぜだ?なぜこんなことをした?ヒーロー協会を襲うことが、お前の正義なのか。

>「私の邪魔をするからだ。それに……偽善者を叩き潰す事に何か躊躇いがいるか?
  少し私の話をしてやろう。私は今よりずっと未来の世界……23XX年からやってきた時間旅行者なのだ」

リジェネレイターの問いに、アンチマターは嬉々として反応した。
大義を掲げるタイプのヴィランにはありがちな事だ。

>「酷い時代だった。非合法組織の活動が社会基盤を半ば崩壊させ、一般人は日々の食事さえままらない……。
 私は両親の顔も知らない。掛け替えのない友人や愛すべき人も、すぐこの世を去った……大切なものなど全て失ったよ」

これ幸いとばかりにザ・フューズは超能力を行使。
戦闘の――否、一方的な攻撃の『仕掛け』を整えていく。

>「私は必ず未来を平和にしてみせる!それが私に唯一残された正義だからだ!
 その最善の手段は20XX年のメトロポリスに消えてもらうことだ!!
 障害となるものは誰であろうと排除しよう!手段は選ばん!!」

>「アナタガ言ウ正義ノ先ニハ、ナニモナイト、ワカラナイホド愚カナノデスネ・・・」

ザ・フューズは、何も言葉を発しない。
彼女はヴィランを嘲り、踏みにじる事を好む。
相手が嬉々として大義を語れば、戦術的な意味などなくとも、それを愚弄する。
だが――いかなる理由か、今回は、違う。
ただ強烈な敵意の炎を双眸に宿して、アンチマターを睨んでいた。

「……敵戦力は未知数だ。真っ向勝負は――」

それでも仲間に対する警告は欠かせない。
ザ・フューズが口を開き――しかしアンチマターはそれよりも早く、動き出していた。

330 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:05:05.20 ID:FvNG/ugC.net
>「リジェネレイター、因縁と思って話してやったがそれもこれまでだ!まずは貴様から死んでもらう!
  この場所が貴様の墓標、七代目はいないものと思え。また説明してやるのが面倒だからなァ!!」

リジェネレイターを怪光線で捕らえ、引き寄せ――その胸部に打ち込まれる強烈な右ストレート。
そこから続く一方的な打撃の嵐。

>「どんな抵抗も無意味だ!さぁ、奪わせてもらおうか、貴様の未来!!」

とどめと言わんばかりに放たれる、鋼鉄をも歪める拳による六連撃。
リジェネレイターはそのまま天井へと叩き付けられ――閃光が、彼の姿を塗り潰す。

331 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:05:31.67 ID:FvNG/ugC.net
その直前、ザ・フューズは咄嗟にエクトプラズム・シールドを展開していた。
だが――彼女の生成物は、単純な強度にはそこまで優れていない。
協会のビルを屋上まで貫くエネルギー兵器を遮るには、あまりに不十分だった。

>「テスカ☆トリポカ!神の力を借りていながら貴様は罪深いなぁ!
 正直になったらどうだ?本当は快楽に溺れていたいだけなんだろ……?
 折角だから教えておいてやろう!!薬物由来のその力、今は合法でも未来では違法だ!!!!」

>「えっ、ちょっ、まっ」

直後、アンチマターの放ったミサイルの直撃を受け、テスカ☆トリポカまでもが吹き飛ばされる。
魔法少女の身体強度は、人間よりかは上だろう。だが無事であるという確証はない。
少なくとも彼女は、叩き込まれた設備の残骸の山から、出てこない。

矢継早に二人目がやられ――しかし、リジェネレイターが撃たれた時、
ザ・フューズの表情に僅かに浮かんでいた動揺は、既に残滓もなく消え去っていた。
そこにはただ、憎悪だけがあった。

ザ・フューズは、真のヒーロー、その存在の尊さを知っている。
危険を顧みず、弱きを助け強きを挫く、その行為の偉大さを。
だが――それと、彼女が"一流のヒーローでない"事は、何も矛盾しない。

ザ・フューズには目的がある。
悪を踏みにじり――そしていつか『ある男』を見つけ出し、殺すという目的が。
ヒーローはその為の――金を稼ぎ、合法的な殺人を行う為の手段でしかない。

『仕掛け』は完成しつつある。
ザ・フューズの超能力強度は決して図抜けたものではない。
しかし、それでも人を殺すに足るように、彼女はずっと超能力を磨いてきた。
例え防弾ベストで、パワードスーツで、核シェルターで身を守られようと、必ず『ある男』を殺せるように。

>「K-doll No14!憐れだな!自我を持ったが故に世間に持て囃され踊らされているとは!
 機械は作られた時から役割が決まっている!役割を満足にこなせぬ欠陥品は処分される運命なのだ!
 殺人機械でもない、人間にも奉仕できない、何の価値もないではないか?社会は廃品業者ではない、消えろ!!」

アンチマターは強い。No14も長くは保たないかもしれない。
だが、それならそれで、もう構わない。
リジェネレイターを捕縛した兵器は、ザ・フューズならプレートで遮断出来る。
後は撤退戦をしつつ、『仕掛け』を終え――勝利する。それだけだ。

>「アア!?・・・クソクソクソクソ!!!!ガードプログラム;アサイラム」

それだけの――はずだった。
だがNo14の咆哮と行動が、ザ・フューズの集中力を俄かに奪った。
避けられたはずのビーム砲を、No14は防御している。

>「アア・・・カラダガ・・トケソウダ・・・」

機体の金属部分が、加熱により赤く発光を始めても、彼女は回避行動を取らない。
明らかに不合理な行動――だがその意図は明白だ。
守っているのだ。流れ弾がビルを貫き、外にいる人々を傷つけてしまわぬように。

>「ハア・・・ハア・・・ハア・・・!」

No14は波濤の如く押し寄せるビームを、凌ぎきった。
だがその代償はまさしく火を見るよりも明らかだ。
周囲に陽炎が生じるほどの発熱。No14は消耗しきっている。

332 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:06:15.06 ID:FvNG/ugC.net
>「ポンコツが……開発者がどれだけ優秀だろうと未来の頭脳には敵わないと理解するんだな」

一方で――アンチマターはまだ、この戦闘で一切ダメージを受けていない。

>「科学者ハ常ニ前ニ向ッテ歩ム者ダト・・・過去ニ向ッテ歩クオマエハ間違ッテイルノダト・・・」
>「未来ノ科学ガ確実ニ先ヲイッテイルト、思イ込ンデルオマエニ・・・ハア・・・ハア・・・」
>「絶対ニ私達ニハ勝テナイト!現実ヲ、オシエテヤル!」

威勢のいい言葉だ。だが戦況は、彼女の言葉とは反する方向へと転び続けている。
No14はもう動けない。少なくとも、すぐには。
そして動けないから、テスカ☆トリポカや地上の人々を、自分の身を、守る事も出来ない。

333 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:08:09.51 ID:FvNG/ugC.net
正義は勝つ――ザ・フューズはそう信じている。
正常な社会を望む者は、それを望まない者よりも常に多い。
当然、優れた人材や設備、資材もより多く、正義に元へと流れ着く。
仮に一人のヒーローが敗れようと、戦いは正義が勝つまで終わらない。
正義が完全に失われる時が来るとすれば、それは正常な社会の定義が代わり、新たな正義が生まれた時だ。

>「悪徳ヒーロー、ザ・フューズ。まさしく偽善者と呼ぶに相応しいな。
  貴様のような存在をのさばらせる事自体がヒーロー腐敗の象徴……!ヒーロー協会は潰れて当然だった!!
  いったいどの面を下げて生きていられるんだ……?私は許せんのだ、偽善者が平然と正義を語ることがな!!」

だが一方でこうも思っている――悪は、負けない。滅びない。
ヒーローに一度敗れようと、殺されない限り何度でも悪事を働ける。
そしてヒーローは、基本的には、ヴィランを積極的に殺せない。
加えるなら悪は、勝てなくてもいいのだ。
戦わず、勝負すらせずとも、負けながらでも、敵は殺せる。

例えば――事前の備えによって弱点を突いたり、単純に人質を取るなどすれば。

>「貴様に関しては『排除』ではなく『裁き』を下す!超能力で甦るのなら何度でも殺してやる!
  何度でも、何度でもだ!!死んで正義を騙り、人々を陥れてきた罪を贖うがいい!!」

そして、襲い来る十重の閃光。
ザ・フューズがするべき事は変わらない。最も有効な戦術は、撤退だ。
自分にとって優位な状況を作りながら逃走し続け、然る後に反撃に出る。

しかし――ザ・フューズは、そうしなかった。
アンチマターの両腕から何かの照射口がせり上がった瞬間――彼女は前に飛び出していた。
黒曜石の塵の暗幕よりも、更に前へ。
テスカ☆トリポカに、No14に、攻撃の余波が向かわぬように。

人間はその認識力の限界によって、完全な合理性に従い、動く事は出来ない。
息子を名乗る人物からの電話を受けた老婆にとって、
その電話の主に大金を振り込むのが最も合理的な行動であるように。

失われたと思っていたヒーローが、まだそこにいると感じたザ・フューズにとって
――それを巻き添えにしないように動く事は、最も合理的な行動だった。

「この期に及んで、正義に成り済ますか!!」

だがその行動は、愛の力を帯びた献身ではない。
不屈の信念に背を押された正義でもない。
ザ・フューズはそんなものに感化され、力を得るような、真のヒーローではない。
故にそれは――ただの、失策だった。

「ぐっ……!」

閃光がザ・フューズの手足を寸断。
即座にエクトプラズムを用い再生。
ミュータントさながらの再生速度は、訓練の賜物。
敵を殺す前に、殺されない――それは西田結希が戦士を志して、最初に見出した課題だった。

ザ・フューズは更にエクトプラズムを行使。
アンチマターの各関節の動きを阻害するようにブレードを大量生成。
しかし通じない。その戦法は既に見られている。
レーザーカッターの照射口はそれ単体で、フレキシブルアームのように動作が可能だった。
本体の動きを封じたところで、レーザーは防げない。

334 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:08:36.88 ID:FvNG/ugC.net
今度は腹部が輪切りにされ、上半身と下半身が両断。
上半身が床に落ちるよりも速く、再生は完了していた。
着地と同時、両手に灯る炎。
炸裂ではない。油に着火したような、激しく燃え盛る火柱だ。
アダマス合金の装甲だろうと、炎熱を完全に防ぐ事は出来ない。

だが――それは相手の動作を完全に封じられていればの話だ。
アンチマターが力強く一歩前に足を踏み出すと、彼を拘束するブレードがひび割れ、砕けた。
黒いパワードスーツの馬力は、ザ・フューズのエクトプラズムの強度を大幅に上回っている。

アンチマターはそのまま距離を詰めきり、ザ・フューズの顔面を鷲掴みにした。

「命乞いをしろ」

335 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:09:50.30 ID:FvNG/ugC.net
鋼鉄をも砕く拳が彼女の頭を掲げ、絶妙に、砕いてしまうぎりぎりで握り締める。

「私に慈悲を乞え!正義を求めろ!お前が今まで偽ってきたものの名を呼んでみろ!
 その瞬間に……殺してやる。砕けた脳髄が飛び散るその刹那に、己の罪を思い知れ!」

ザ・フューズは――答えない。
ただ右手を上げて――圧迫によって半ば砕けた仮面を、己の顔から剥いだ。
そしてアンチマターを見下ろして、

「……お前のせいだ」

そう、零した。

「覚えていないだろうな……お前は……この顔を」

アンチマターの反応も待たず、ザ・フューズは続ける。

「……昔、一人のヒーローと、ヴィランと……ただの小娘がいた……。
 ヒーローは、強く……ヴィランは追い詰められていた……だから……」

声はか細く、弱々しい。

「だから人質を取った……ヒーローは、その小娘の為に……死んだ……。
 このメトロポリスじゃ、よくある話……だが、話はそこで……終わらなかった……」

だがその眼光はアンチマターを貫き、微動だにしない。

「ヒーローが死んで……ヴィランは小娘を放り捨てた……。
 ソイツが生きてるかどうかなんて……どうでも良かったんだろう……。
 ……小娘は偉大なヒーローを一人死なせて、おめおめと生き残った訳だ」

両眼に灯る憎悪の炎は――静かに零れた涙では、消えない。
むしろより一層、火勢を増してすらいた。

「……生き残ったソイツは、償いがしたかった。自分のせいで死んだヒーローに。
 いや……本当にそうだったのか、もう分からない。
 もしかしたら、自分以外に憎む相手が欲しかっただけかもしれない」

時に――歴史の改変という命題には、必ず付いて回る一つの問題がある。
タイムパラドックスだ。

「個人的な恨みでヴィランを追うには、金と、力がいる。
 その為なら、なんだってした。最初に始めたのは、勉強だったがな。
 法律を学んだ。街のギャングに取り入る為に必要な知識だった」

歴史の改変の成功は必然的に、変えたい過去があるという動機の消失と同義。
つまり改変が成功した時点で、今度は未来における改変者が誕生しない事になる。

「ヤツらに取り入り、金を盗んで、超能力を買った。そのまま逃げおおせて、ヒーローになった。
 ヒーローとしてのし上がるのは容易かった。手柄がどこにあるか、私は知っていたからな」

となると今度は歴史の改変そのものが無かった事になり――矛盾の円環が生まれる。
しかしアンチマターはその可能性を危惧していない。
彼の時間遡行には、タイムパラドックスを超越する理論が内包されているのだろう。

336 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:11:36.00 ID:FvNG/ugC.net
「壊滅させたギャングの残党を、今度は私が手足として拾った。金を稼ぐ為に。
 ……結局、最後は偶然に助けられる事になったがな……まぁ、いいさ」

だが、だとすれば――彼はある可能性を考慮して行動すべきだったのだ。
過去の卵を潰して未来の鶏を殺す事が可能ならば――その逆も起こり得ると。
未来の鶏が現れた事で、過去に卵が生まれる事もある。

「やっと、また会えたな」

337 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:14:09.01 ID:FvNG/ugC.net
すなわち――自分の行動こそが、自分がいた未来を生み出すという可能性を。
この時代における彼自身の行いが、一人の少女の未来を変えたように。

いつか必ず、あの男を殺してやる。
だから私は『導火線(ザ・フューズ)』だ。
いつか必ず、この炎を、あの男に追いつかせてみせる、と。
己の名に復讐の誓いを刻み込んだ、悪徳ヒーローを生み出したように。

「……そして、時間切れだ」

ふと、ザ・フューズが、冷酷な声で呟いた。
同時にアンチマターと彼女を取り囲むように、エクトプラズム・キューブが発生。
拳、ミサイル、ビーム砲、レーザーカッター、どれもキューブを破壊出来ない。
否、壊れた瞬間に再形成される。

「思い知れ。正義は、勝つんだ」

何かが起こった。『アイズオブヘブン』の予測をすり抜けた何かが。
そう悟ったアンチマターは――即座にザ・フューズの頭を床に叩きつけた。
エクトプラズムによる再生は――起こらない。
だがそれでも、キューブは消えない。
『仕掛け』は既に、完成しているのだ。

悪徳ヒーロー、ザ・フューズ――西田結希は、詐欺師である。
故に言葉を用い、人の意識を誘導する術を知っている。

『……お前のせいだ』

切り口は、正義を標榜するアンチマターにとって聞き捨てならない言葉。
あえて侮辱されたと感じさせる事で、言葉の続きを待たせた。

『覚えていないだろうな……』

倒置法だ。覚えていないだろうと言われれば、人間は何の事かと思考を引っ張られる。
アンチマターの場合は、強い反抗心もそれをかえって助長させた事だろう。

『この顔を……お前は……』

続けざまに、今度は興味の対象を提示――記憶の想起に意識を向けさせる。
そこまですれば――残りの話は、相手が勝手に聞き入ってくれる。
そうして十分に時間は稼げた。

後天性超能力者のザ・フューズでも、視線の通っていない一つ下のフロアに、大量の疑似脳を生成するだけの時間が。

338 :ザ・フューズ :2019/04/26(金) 00:18:11.96 ID:FvNG/ugC.net
ザ・フューズの超能力強度は、確かに掃いて捨てるほどいる程度だ。
だが――そんな彼女でも十人いて、完全な連携が取れれば、自動車を粉々に爆破するくらいは出来るだろう。
五十人もいれば、小さなビルを一棟、超能力だけで破壊出来るようになる。
それが百人にもなれば――核シェルターの扉とて、焼き切れるほどの炎が生み出せるだろう。

そして――キューブの中に炎が渦巻く。

もっとも今回配置出来た疑似脳は、二十三基。
その内、二十基はキューブの再生成を担当している。
故に火力は今ひとつだが――それでも生み出される熱は装甲越しにアンチマターの体を、呼吸器を焼く。

アンチマターは疑問に思うだろうか。
何故、『アイズオブヘブン』がこの展開を予想出来なかったのか。
それはザ・フューズが――失策を犯したからだ。
入念な準備を行うという合理性に対する、前に飛び出し接近戦を図るという愚行。
そこに生じる矛盾が、機械による予測にノイズを植え付けた。

つまり。
例えそれが、かつて死なせたヒーローへの負い目から来た、ただの気の迷いだったとしても。
例えザ・フューズが、今までずっと愛と正義を踏みにじってきた、悪徳ヒーローだったとしても。
それでも正義は――――彼女に報いたのだ。

床に転がる、頭部の上半分を失ったザ・フューズは、その口元に笑みを浮かべていた。



【念の為:この行動が完全に防御され、無駄になっても私は気にしない。
      殺されたヒーローが誰だったのかは白紙だ。
      トリップキーの誤りについては気にしないで欲しい】

339 :一斉に送信:2019/05/29(水) 23:06:22.61
古矢聡・ふるやさとし
いじめ加担者
英語中学教師
淫行前科アリ
神奈川県横須賀市船越町4-58に住んで居る
神奈川県横須賀市不入斗中学へ逃げた

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