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リレー小説「中国大恐慌」

1 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 05:01:20.00 ID:Ll07jrjG.net
2018年11月21日、中国東部を超巨大規模の停電が襲った。
北京周辺から上海周辺にかけて、地上から電気が消え、人々はパニックに陥った。
これはそんな架空の中国が舞台の物語である。

主人公の名前は李青豪(リー・チンハオ)。
29歳の青年である。通称は「ハオさん」。 
愛称は「ハオ」。

2 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 05:07:19.38 ID:Ll07jrjG.net
「スマホが見られないなら死んだほうがましだ!」
ハオはそう叫ぶと外へ飛び出した。
夜の町は漆黒の闇に包まれ、一寸先も見えない。
コンビニに饅頭と飲み物でも買いに行きたかったが、スマホがないと買い物も出来ない。
仕方なく部屋に戻ったハオは、呪いの言葉を吐いた。
「習近平が全て悪いのだ」

3 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 08:50:34.77 ID:jKf+NAnX.net
その頃、習近平は項垂れていた。
「日本の文明が崩壊し、美国(アメリカ)が滅亡しかかっている今、我ら中華人民が世界の盟主となる機会だったのに……
なぜこんな時にこんなことが起こるんだ!」

4 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 09:01:40.38 ID:Yv6xMOxX.net
そこへ突然、歪んだデザインの着ぐるみを着たアンパンマンやミッキーマウスやらがぞろぞろと入って来た。

5 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 10:17:16.43 ID:bc1Znsad.net
天皇皇后両陛下がご覧になっておられます。

6 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 13:10:06.08 ID:Yv6xMOxX.net
着ぐるみ達は声を揃えてそう言ったが、習主席には何のことやらわからなかった。
「もしかして敵国のお飾り人形のことか?」

7 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 15:09:47.76 ID:7HUHRqUN.net
ファンシーな見た目の着ぐるみたちだったが、よく見ると股間には生々しい生殖器が痛々しいほど怒張していた。

8 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 19:30:16.38 ID:wfgGz7QR.net
「斬れ、メイファン」
習が命じると、どこからともなく現れた女の子が、青龍刀で汚ならしい逸物どもを薙ぎ斬った。

9 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 19:38:08.32 ID:/Qi1lut7.net
習の逸物も切り落とされた。彼は性欲から解放されたのだ

10 :創る名無しに見る名無し:2018/11/21(水) 19:43:04.70 ID:wfgGz7QR.net
メイファン「アイヤー……。トゥイブチ(ごめんなさい)」

11 :創る名無しに見る名無し:2018/11/22(木) 04:52:40.15 ID:nc2SZZ3e.net
習「ごめんで済んだら中国共産党は要らないんだよ!」

12 :創る名無しに見る名無し:2018/11/22(木) 08:48:24.11 ID:hTDhuSyK.net
「もう上海は駄目だ。広州に移り住もう」
恋人のシューフェンを抱きながら、ハオは言った。
「広州へ行ってどうするの? 仕事は? あっちに知り合いでもいるの?」
「知っての通り、俺の生まれはド田舎の村だよ。他のどの町へ行ったって知り合いも親戚もいない」
「じゃあ……」
「散打をやる。俺が強いのは知ってるだろう? チャンピオンになってお前に綺麗な服を着せてやる」
「何甘いこと言い出してんの!?」
「これはチャンスだと思うんだよ。神様が俺に散打をやれと告げているんだ」
そう言いながらハオはシューフェンに挿入した。
「バっ……! バカにも程がある……っ! ハオ……! ハオ! ハオっ!」

13 :創る名無しに見る名無し:2018/11/22(木) 10:06:27.07 ID:EY6IFJ2a.net
                                    /⌒⌒⌒\
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...ヽ    ヽ  ヽ ----、   /        /
.. .\    \   ヽゝ    ̄シ       /

14 :創る名無しに見る名無し:2018/11/22(木) 17:23:12.83 ID:ieS2VDDN.net
ハオ「そうだシューフェン、お前もこれを機会に女優デビューしろよ」
シューフェン「な、何を言い出すの!?」
ハオ「演劇やってたって言ってたじゃないか」
ハオはそう言いながら、入り口あたりを擦っていたのを突然奥まで突いた。
シューフェンは悲痛な叫びを上げ、天国へ逝きそうになったが何とか戻って来ると、答えた。
「高校生の頃の話よ」
「いいじゃないか。お前、綺麗だし、なれるよ、女優。やってみろよ」
「そんなにあたし、綺麗かな」
「あぁ、綺麗だ」
シューフェンは暫く下半身の快感と照れ臭さの両方と闘っていたが、やがて聞いた。
「ファン・ビンビンより綺麗?」

15 :創る名無しに見る名無し:2018/11/22(木) 17:28:29.69 ID:ieS2VDDN.net
ファン・ビンビン
https://i.imgur.com/WTlpQRH.jpg
https://i.imgur.com/Qa61FPq.jpg
https://i.imgur.com/TPugUeg.jpg
https://i.imgur.com/njGY3MK.jpg

16 :創る名無しに見る名無し:2018/11/22(木) 20:16:22.61 ID:cg1UNq6s.net
ハオ「んなわけないだろ!w 何? お前、ファン・ビンビンより自分が綺麗だとか思っちゃってたわけ?w」

17 :創る名無しに見る名無し:2018/11/23(金) 07:52:37.88 ID:8H5RPPal.net
ハオ「種類が違うっていうかそもそも違う生き物だろw ファン・ビンビンがCGならお前は素人の描いたマンガ、
ファン・ビンビンがエルフならお前はドワーフ、
ファン・ビンビンが白馬ならお前はネズミ色のネズミ、
ファン・ビンビンが……えーと」

18 :創る名無しに見る名無し:2018/11/23(金) 08:11:18.23 ID:FwHkK0i2.net
シューフェン「おい」
ハオ「うん?」
シューフェン「ちんぽ抜け」
ハオ「は?」
シューフェン「いいから抜け」
ハオ「なんで? これから一番いいとこだy」
シューフェン「いいからその汚いちんぽを早く退かしやがれ」

19 :創る名無しに見る名無し:2018/11/23(金) 09:36:40.82 ID:pLASGkDQ.net
ハオはシューフェンの部屋から追い出され、白昼の街を歩いていた。
「何だってんだ? 意味がワカラナイ……」

見上げたビルの巨大モニターは灰色だった。
バッテリーで動くものを除いてすべてのものから電気が消え去っている。
いつもは騒がしいディスカウントショップの店頭にも音楽はなく、スマホやパソコンの用品を買う客は誰もいなかった。
乾電池式の充電器を使えばスマホは立ち上がるのだが、電波を受信しないのでは単なるオフライン専用のゲーム機にしかならない。
スマートフォン決済が常識化しているこの国では買い物をするのにも不便が大きかった。

20 :創る名無しに見る名無し:2018/11/23(金) 09:50:35.89 ID:pLASGkDQ.net
固い布団を棍棒で殴りつけるような音が聞こえて来た。
その音がするところを民衆が取り囲み、荒い歓声を上げている。

「これ何だ?」
ハオが観衆に尋ねると、斜視の男が答えた。
「散打の試合だ」
「こんな所でか?」
「TV中継も不可能な御時世だからな。青空の下でやってる。観戦料は任意だ」
「よく見えないな。闘ってるのは誰と誰だ?」
「リウとチョウ・グヮンドンだ」
「リウ!? 散打王のリウか!?」
「そうだ」
「あのリウがこんな所で試合してるのか!?」

21 :創る名無しに見る名無し:2018/11/23(金) 10:02:29.68 ID:FwHkK0i2.net
シューフェンは部屋で一人、甘いお菓子をヤケ食いしていた。
「女心のわからんダメ男は死ね。あとちゃんと仕事しろ」
しかしハオの言った冗談なのかよくわからない言葉は頭にこびりついていた。
「女優……、か」

22 :創る名無しに見る名無し:2018/11/23(金) 10:10:48.50 ID:tNTmmB4e.net
ハオは人波を掻き分け、ようやく仮設リングの見えるところまで出た。
茶色い短髪に相手を馬鹿にするような笑いを湛えた大男が踊るようにステップを踏んでいた。
「リウ・パイロン! 本物だ!」ハオは思わず叫んだ。

挑戦者のチョウは背が高く、長い脚を活かしてチャンピオンを牽制し、なかなか間合いに入らせない。
しかしリウは困っているというよりは面白がっているように見えた。

「リーチのやたら長い相手……。俺だったらどう闘う?」
ハオは考えた。
「接近戦だ。距離を詰めればあの長い手足は逆に邪魔になる。そこへ俺の速い打撃を連続で打ち込めば……」
ハオがそう考えた時、リウが仕掛けた。
リウは襲い掛かる挑戦者の長い脚の上を飛び越え、飛び蹴りをその顔に食らわした。

「カウンターの飛び蹴りだと……!?」
ハオが度肝を抜かれる中、一発KO勝ちを決めたチャンピオンは、勝利のポーズを決めるのは後回しと、挑戦者を抱き起こしていた。
「大丈夫か? ちと荒っぽかったな、すまない」
顔面にまともに蹴りを食らった挑戦者は、鼻血を流しながらもしっかりと意識を取り戻した。
「お前、強かったぜ。散打をやめるなよ?」
王者リウはそう言うと立ち上がり、沸き立つ観衆に向かいようやくガッツポーズを決めた。

23 :創る名無しに見る名無し:2018/11/23(金) 12:28:24.21 ID:HBkJph+Q.net
「リウ! リウ!」
迎えの車に乗り込もうとするリウをハオが呼び止めた。
リウは立ち止まり、振り返ると無表情に言った。
「誰?」
「アンタの次の挑戦者だ」
「聞いてないな」
無視して行こうとするリウの後ろからハオは質問を投げた。
「一つだけ聞かせてくれ。チョウの弱点は接近戦だとわかってて、なぜ遠距離からの飛び蹴りで決めた?」
それに対しては答えたくてウズウズしていたとでも言うようにリウは、振り向くと言った。
「相手の弱点につけこむようなことを俺はしない。相手の得意な土俵で勝負して勝つ、それこそが王者というものだ」
ハオはその言葉にひどくびっくりした。
「ハァ……。ひとつの負けで伝説に傷がつく立場のアンタなんだから、相手の弱点を徹底的に分析してでも勝つことを優先するもんだと思ってたよ」
「そんなセコい伝説は作らん」
「しかしあんな無茶なカウンター、相手が死んじまうかもとか思わないのか?」
「遠くへ蹴りを出す時、頭は後ろへ下がる。わかるか? そうした意味ではあれはカウンターですらない」

24 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 00:13:37.46 ID:mkqENFSK.net
『リウ・パイロン……。俺が倒すに相応しい相手だ』
ハオ(29歳無職)は鼻を指でピンてするブルース・リーの物真似をしながら見送った。

25 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 07:30:23.84 ID:4leC11RG.net
ハオは自宅に帰る途中、どこからか悲鳴が聞こえた。

26 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 08:18:32.90 ID:zogRko7E.net
「男の悲鳴……か」
ハオは構わず帰ろうとしたが、さっき見た試合の興奮が彼を動かした。
「まぁ、いっちょ助けてやるか」

27 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 10:02:37.23 ID:j3drlpLU.net
角を曲がるとそこは血の海だった。

目の前には虎。その足元には頭部の大部分を囓られた死体が横たわっている。

大きな虎はハオに向かって咆吼した。

28 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 12:16:40.40 ID:GUDKR+V2.net
「うひゃいひゃあぁぁ!?」
ハオは情けない声を上げると小便を漏らしながら逃げ出した。
ななななんで大都会上海に虎なんかいるんだ? 動物園から逃げ出したのか?

29 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 14:16:35.21 ID:7YnJQoTo.net
|┃三ガラッ!_____
|┃      |どっきり |
|┃ ≡/⌒\ ̄||  ̄ ミ
|┃  ( ____) || サッ
|┃≡ (_》 ^ω^)E)
|┃= ⊂   ノ

30 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 15:05:40.50 ID:+5Pz0wjw.net
人食い虎は高度な知能と残虐性を持っていた。

ドッキリと見せかけてハオを誘う作戦だ

31 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 18:47:22.67 ID:mXAaDFWi.net
逃げ込んだ路地は行き止まりだった。
虎は立ち止まったハオ目がけて一直線に襲い掛かって来る。
まずはその獰猛な爪で肉を抉ろうとした。
「ハイッ!」
ハオは器用にそれを捌いた。虎の前脚が宙を掻き斬る。
怒り狂った虎は反対の前脚をすぐに繰り出して来た。
「ハイッ!」
ハオはまた捌くが虎の体勢は崩れない。
虎はムキになったかのように両前脚を交互に振り回す。ハオはそれを素早く捌きまくる。
「ガオッ! ガァッ! グワワワァッ!」
「ハイ! ハイ! ハイ! ハイッ!」
死に物狂いでハオは捌き続けた。
しかしこれじゃジリ貧だ、ハオは思っていた。そのうち俺のほうが先にくたびれるに決まってる。
どうか……頼むから牙で襲い掛かって来てくれ。それを捌いてコンクリートの壁に頭をぶつけてやる。
その隙に俺はあそこの梯子を伝って上に逃げてやる。

32 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 20:06:03.56 ID:mXAaDFWi.net
しかし虎は、ハオの魂胆を見抜いているかのように同じ攻撃を繰り返した。
「あぁ……もうダメだ。走馬灯が見えて来た」
「シューフェン、さよなら。愛しているよ。君は俺には過ぎた恋人だった。綺麗だった……ファン・ビンビンほどではないけど」
「あぁ……なんか……走馬灯の向こうからくるくる飛んで来る女の子が見えて来た。こりゃ、いよいよ……」
と、虎の顔が一瞬で近づいて来た。両脚はまだ同じところで攻撃を続けているというのに。
虎はハオと熱烈なキスをすると、ずるずると地面に落ちた。辺り中、血の海だ。
気づくとチャイナドレスを着たまだ10歳代ぐらいの女の子が立っている。手には青竜刀を持っていた。

33 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 20:16:49.16 ID:mXAaDFWi.net
女の子は『超級成功!』と書かれたプラ板を掲げて言った。
「すまん。ドッキリだ」
「は!?」
「しかしあんたの太極拳は凄いな。よくあそこまで捌きまくれるものだ」
「は!? は!? ちょ……ドッキリって!?」
「気にするな。ところであんた、私の所で仕事をしないか?」
「いや『気にするな』て……。何!? これ、お前の飼い虎!?」
「そうだ。名前は小松」
「は!? ドッキリで、飼い虎の首、飼い主が斬り落として、ハァ!?」
ハオは地面に転がった虎の首と少女を交互に見ながら口からビックリマークを飛ばしまくった。
「私の名前はメイファン。お前の名は?」
「ハァ!?」
「変わった名だな」

34 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 20:40:14.54 ID:yV3gzLIs.net
よく見ると少女はアイドルグループにでもいそうな美少女だ。

あどけなさの残る風貌に大きな青龍刀が不釣り合いだった。

少女は透き通る声で言った。
「なぁ、『ハァ!?』よ。その太極拳、どこで身に付けた? あとSNH48のキクちゃんと私、どちらが可愛いと思う?」

35 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 22:13:01.87 ID:nPKXHwLo.net
ニーハオ「なにも思い出せない・・・><」

36 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 22:25:38.40 ID:OSBpedYX.net
1900年代のはじめ
中国の田舎町に黒雲のような影が落ち 一組の夫婦が行方不明になりました。

夫の名はホイ、妻の名はリン。

2年程してホイは家に戻りましたが
どこで何をしていたのかについて、
だれにも話すこともなく不思議な研究に没頭するようになりました。

妻のリンのほうは、とうとう帰ってきませんでした。

あれから数十年の歳月が流れ そんな事件も知る人もめっきり少なくなりました。

かつてホイとリンが住んでいた家には
そのひ孫にあたる少年と、双子の女の子が やさしいママと住んでいます。

町だって平和そのものです。


ところが、1988年
雨花台の山に再び不吉な黒雲がかかります。

町中の家々では ゾンビが徘徊し、地下ではゴブリンが暴れ始めるという 不可解な現象が起きているようです。
それは、ホイホンの家でも同じでした。

パパが不在のこの家で、たよりになるのは彼ひとり。

ホイホンは、大切な家族を守るため 事件の原因を突き止める旅に出ることを決意します。

37 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 23:00:15.73 ID:mXAaDFWi.net
シューフェンは一人ショッピングモールに来ていた。電車が動いていないので自転車に乗って。
コスメショップに入ると中はけたたましく軽油臭かった。ディーゼルエンジンを回して発電しているらしい。
化粧品を眺めていると店員の女性が声を掛けて来た。
「お姉さん、ヤらせてよ」
シューフェンは一瞬、意味がわからなかったが、どうやら無料で化粧をしてくれるらしい。
化粧をしてみたくて来たので丁度よかった。

「お姉さん、もったいないね。なぜ素っぴん?」
「仕事が忙しかったからね、化粧してる暇もなかったわ」
「凄いね。それは忙しすぎ。日本人みたい」
目の吊り上がった女店員は大きな声で途切れなく喋りながらシューフェンの顔に化粧を施す。
「お姉さん、土台がいいから楽しいね。いつもブサイクにお世辞言ってて気が滅入るけど、今日は気が楽」
「女優目指してるのよ」シューフェンは冗談のつもりで言った。
「女優? そりゃ当たり前ね。お姉さんぐらい綺麗なら……」
化粧を続けながら段々と女店員の口数が少なくなって行った。
「どうしたの?」シューフェンは不思議になって聞いた。「やけに集中しはじめたわね」
化粧が完成し、女店員は凄いものを見せるような動作で鏡をシューフェンのほうに向けた。
鏡の中には天女のごとき美女が映っていた。
「……これが、私?」

38 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 23:30:17.32 ID:mXAaDFWi.net
「全部で720元ね」
「えっ……と。スマホ決済は無理……よね。クレカは使える?」
「お姉さん……『現金のみ』が今の上海の常識よ」
「そ、そうよね」と言いながらシューフェンは財布の中を見た。100元札が二枚と……
「またにするわ」
苦笑しながら立ち上がったシューフェンの後ろから男の声がした。
「貸すよ」
「えっ?」
振り向いたその先、というよりもすぐそこに男の分厚い胸筋があった。見上げるとサングラスをかけた短い茶髪のニヤケ顔。
見覚えのないようなあるようなその顔を見て、シューフェンは「あ、あのっ」としか言葉が出せなかった。
「何ならプレゼントするよ。女性が美しくなるのを手助けするのは男の先行投資だ」
そう言いながら男はサングラスを外した。
「ええっ!? 散打王? リウ・パイロン!」

39 :創る名無しに見る名無し:2018/11/24(土) 23:40:11.16 ID:yV3gzLIs.net
「そうさオイラはチャンピオ〜ン」
リウはいきなり歌い出すと背後から取り巻きが現れて一緒に踊り出した。

しばらく歌と踊りが続く。

40 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 03:39:08.23 ID:QauNjFTv.net
ホイホンは仲間を探すためにブーホーヒーの酒場に行った。
「おーい、誰か俺とゾンビとかゴブリンを退治して世界を救いたいと思う奴はいないかいー?」
騒がしい酒場で一人だけそんな言葉に耳を傾けた男がいた。
「おいどんが力を貸しても良いでゴワス」

41 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 03:41:56.61 ID:LhLGTg/c.net
「俺が話せるのはこれくらいだ。後は彼女の無事を祈るしかない」
「そうですね…」
父親を殺され行方の知れない友人を思い、ミアの胸は痛んだ。

「み、見ず知らずの方にいきなり尋ねてすみませんでした、色々話していただき、ありがとうございます!」
「いいよ、友達が心配なら仕方ないさ」
慌てて謝辞を述べるミアに、男は気にするなと言外で告げた。

「では、これで失礼します!」
ミアは男に一礼してその場を立ち去った。
「君も気をつけて」
立ち去るミアの背中に男が声をかける。
リュミエプール女学院の制服を着た少女の背中は、守りたくもあり邪な衝動を抱かせる魅力をも感じさせた。


「ほら、あの男ですよ」
ミアと話していた男を、物陰から何者かが指差していた。
「アイツ、女学生に治安維持隊の悪口を言いふらしてたんですよ。セクハラしてたとかなんとか」
「ふーん」
「女の子に近づきたいからって、人の不幸をダシにして好き勝手言うなんて人間のクズですよ、まるで民主主義者だ」
「まったくそうだな、」
「私はね、ああいう輩が許せないんですよ。ですから隊長さん、民主主義からいたいけな女学生を
守るためにもあんなヤツをガンガン取り締まってくださいよ!!頼みますよ!?」
冴えない風貌の中年男は、目の前の現場隊長に熱心に訴えた。

「ああ、わかってる。不審者情報の提供、ご苦労だったな」
「いえいえ、これも愛国者の義務ですから」
「これからも不審なヤツを見かけたら何時でも通報しろよ」
「ハイ!か弱い女性を民主主義から守るためならよろこんで頑張ります!」

(何が守るだ、単にあの野郎がうらやましかっただけだろ)
中年男の言葉を隊長は内心蔑みながら聞いていた。
そもそもこの中年男も事件現場を見物に来た野次馬の一人にすぎないのだ。
不審者がいると聞いて、コソコソ隠れて見せられたのは、女学生にサヨナラしていた若い男の姿だった。
民主主義者とか関係ないだろと思ったが、中年男が聞いたという二人の会話が妙に具体的なのが気になった。

(女学生相手とはいえ、大っぴらに俺たちの批判をするとか、やはり怪しいな)
男がミアに語ったセクハラのことは事実なのだが、治安維持隊を悪し様に言うことは公然のタブーであった。
聞かされたミアも、愛国者なら治安維持隊がセクハラをしたなんて話は否定あるいは通報すべきだったのだ。

42 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 09:25:08.08 ID:KkWCnLJ5.net
「困ったものだ。僕達は電気が停まったら何も出来ない」
リウはシューフェンと乾杯すると、言った。
「クレカやスマホはもちろん、コンピューター管理の下、自分の口座から金を卸すことも出来ない」
ロウソクが店内を照らし、カラオケもなく客の声とグラスの音だけが籠るバーで、二人は向かい合って座っていた。
「でも僕にはこの肉体があり、君にはその美貌がある。電気がなくてもそれを武器に生きて行ける。僕達は勝ち組ってヤツだな」
薄暗い中にリウのニヤケ顔が浮かび上がる。
「散打王が言うと説得力あるわね」
シューフェンは誰かさんの顔を思い浮かべながら言った。
「突然『俺は散打王になる』なんて言い出すような人とは大違い」
「そんなヤツいるのかい?」リウは馬鹿にするように言った。
「……まぁ、私も似たようなもんか」
「ん?」リウが首をひねりながら優しく笑う。
「私……、女優になりたいの」
「何だって? まだ女優になってなかったのか? そりゃ大問題だ」
「口がお上手ね」
「本心さ。俺の連れに芸能プロダクションやってるヤツがいる。紹介するよ」
「えっ。本気で?」
「ツイ・ホークってヤツだ。知ってるかい?」
「知ってるも何も」シューフェンは目が回りそうになった。「中国映画界を代表する……あの……」

43 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 09:49:43.54 ID:oBt+fliS.net
リウとシューフェンは、いつの間にか眠っていた。
気が付くと二人は1989年6月1日の天安門広場にタイムスリップしていた。
若かりし頃のツイ・ホークが群衆を指揮し、人民解放軍と対峙していた。

44 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 09:56:12.74 ID:KkWCnLJ5.net
リウはシューフェンを送ると言った。外に待たせていた取り巻きの車があった。
どこに連れて行かれるのだろう? と内心ワクワクしていたシューフェンの気持ちを裏切って、車はいつものアパートに着いた。
「電気が無事なら僕の電話番号を教えるところだけど」
リウはそう言いながら、子供のように笑った。
「スマホがないからまた会うしかないな。いつ空いてる?」
「明日」と言おうとしてシューフェンは、なんだかがっついているような気持ちになり、「明後日なら」と言い換えた。
「オーケー。なら明後日の昼、あそこのカフェで会おう」
車の後ろからシューフェンの自転車を降ろすとリウは車の後部座席に乗り込み、ウィンクを残して帰って行った。

シューフェンは暫くうっとりしながらそれを見送っていたが、突然ハオのことを思い出した。
「忘れてた! 見られたかしら?」
しかし部屋にハオの姿はなく、帰って来た形跡もなかった。
「あの居候、どこをほっつき歩いてるのよ……?」

45 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 10:30:15.24 ID:HMYOm0r2.net
「俺が話せるのはこれくらいだ。後は彼女の無事を祈るしかない」
「そうですね…」
父親を殺され行方の知れない友人を思い、ミアの胸は痛んだ。

「み、見ず知らずの方にいきなり尋ねてすみませんでした、色々話していただき、ありがとうございます!」
「いいよ、友達が心配なら仕方ないさ」
慌てて謝辞を述べるミアに、男は気にするなと言外で告げた。

「では、これで失礼します!」
ミアは男に一礼してその場を立ち去った。
「君も気をつけて」
立ち去るミアの背中に男が声をかける。
リュミエプール女学院の制服を着た少女の背中は、守りたくもあり邪な衝動を抱かせる魅力をも感じさせた。


「ほら、あの男ですよ」
ミアと話していた男を、物陰から何者かが指差していた。
「アイツ、女学生に治安維持隊の悪口を言いふらしてたんですよ。セクハラしてたとかなんとか」
「ふーん」
「女の子に近づきたいからって、人の不幸をダシにして好き勝手言うなんて人間のクズですよ、まるで民主主義者だ」
「まったくそうだな、」
「私はね、ああいう輩が許せないんですよ。ですから隊長さん、民主主義からいたいけな女学生を
守るためにもあんなヤツをガンガン取り締まってくださいよ!!頼みますよ!?」
冴えない風貌の中年男は、目の前の現場隊長に熱心に訴えた。

「ああ、わかってる。不審者情報の提供、ご苦労だったな」
「いえいえ、これも愛国者の義務ですから」
「これからも不審なヤツを見かけたら何時でも通報しろよ」
「ハイ!か弱い女性を民主主義から守るためならよろこんで頑張ります!」

(何が守るだ、単にあの野郎がうらやましかっただけだろ)
中年男の言葉を隊長は内心蔑みながら聞いていた。
そもそもこの中年男も事件現場を見物に来た野次馬の一人にすぎないのだ。
不審者がいると聞いて、コソコソ隠れて見せられたのは、女学生にサヨナラしていた若い男の姿だった。
民主主義者とか関係ないだろと思ったが、中年男が聞いたという二人の会話が妙に具体的なのが気になった。

(女学生相手とはいえ、大っぴらに俺たちの批判をするとか、やはり怪しいな)
男がミアに語ったセクハラのことは事実なのだが、治安維持隊を悪し様に言うことは公然のタブーであった。
聞かされたミアも、愛国者なら治安維持隊がセクハラをしたなんて話は否定あるいは通報すべきだったのだ。

46 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 11:48:04.02 ID:sPs0ESdM.net
「はっ……! ここはどこだ?」
ハオが目を覚ますとうすら寒いコンクリートの部屋にいた。部屋はだだっ広く、小さな窓しかないのに明るい。
「電気が点いてる!」
天井中に無数に設置された蛍光灯群を見上げてハオは声を上げた。
「目が覚めたかブタ野郎」
いつの間にかメイファンが目の前にいて、手には鞭を持っていた。

47 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 12:23:54.04 ID:kJbllGg3.net
香港でも有名な鉄板焼の店。ここのシェフのジョニーは、中国本土から103歳の父と共に逃げてきて、婿養子。
義父はハンティングが趣味で常に猟銃をふりまわし、太っている女房はジョニーの浮気には敏感な強妻だ。
今日も店に美人がくると、ジョニーはハッスル。
ある日、そんな美人の客の一人シシーにぞっこんになり、ちょっとトイレにいってくるといって家を抜け出してシシーとテニスをしたりディスコで踊ったりと、涙ぐましい浮気作戦。
妻の方も犬を持つ女友達とこれに応戦。
そしてフィリピン・スル島へ、ジョニーはシシーと遊びに行くことになった。
しかし、それをかぎつけた義父や妻たちも同行することになる。
すったもんだで、南の島でシシーと浮気をするが、それもすべてバレてしまい、ついにシシーはジョニーにあいそをつかしてしまう。
自暴自棄になったジョニーは積年の恨みを爆発させ妻と義父にフライパン片手に反撃し二人を震えあがらせ、やがてそんなジョニーに妻も打って変って献身的となり、義父も彼のいいなりに。
やがて待望の子宝にも恵まれ、メデタシメデタシ。
だが、ジョニーの浮気の虫はおさまらなかった。

48 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 12:27:40.00 ID:PNMpFlh4.net
探偵のウォンは香港で私立探偵事務所「萬能私家偵探社」を開いているが、従業員は美人秘書のジャッキーと間抜けな助手のチョンボの3人だけだった。

不倫調査の仕事をこなしていたある日、探偵志望の青年キットが安月給で良いから雇ってくれと事務所を訪れた。
最初はこれ以上雇うつもりは無い(実際には、これ以上給料を払いたくない)と断ったのだが、直後に起きたスリ騒ぎでの鮮やかな対応を見て、渋々雇い入れることになった。

今まで以上のケチケチ振りを見せるウォンに対し、我慢するチョンボとキット。ウォンとともにキットが初めて行った不倫調査で、証拠を押さえたまでは良かったが……

49 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 13:00:21.33 ID:quEz+rCk.net
メイファンは全裸だ。

50 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 14:05:07.00 ID:IHGSl48Z.net
チョンボは小籠包を食べに行った。

51 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 14:58:26.58 ID:dbvgFk4O.net
香港TV局マウスTVに契約をしているタレントのチ・マン。
彼は8年契約をしているのにも関わらず、1年経過しても何の仕事ももらえずにいた。

そんなある日キャットTV曲からクイズの司会の仕事を請け負う。
これが中々人気を博し、チはマウスTVに契約解除を申し出る。
しかしあと7年も残っているとこいことで即座に却下されてしまった。
そこでチは自称発明家の弟チョンボと共にマウスTVに忍び込み、金庫から契約書を盗み出す計画をする。

返送して侵入し契約書を持ち出したもののボディガードに見つかり、逃走。
チョンボは咄嗟に隠れた金庫に閉じ込められてしまう。
チョンボの彼女は兄のミヤケのロンと手品師としてショーをして稼いでいた。
チ・マンはロン兄弟のところに行き金庫を開けてくれと懇願する。

その間にもボディガードに追われているチは再び逃走、逃げ込んだ場所は生放送の番組だった。
はちゃめちゃになった番組だったが、弟が作った謎の笑いガスを仕掛けたため会場は大爆笑。
このことがきっかけでマススTVの会長から局長になってくれないかと頼まれるのだった。

52 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 17:28:36.89 ID:DnWHgd7p.net
ハオはメイファンを無視してスマホと充電器を取り出し、側にあったコンセントに差してみた。
「充電できる! 充電できるぞ!」
電波を確認するとアンテナが5本立っている。
「ゲームが出来る! SNSも出来るぞ!」
メイファンは鞭でハオの背中をぴしゃりと打った。
「あっ?」
ダイレクトな快感……いや痛みで気がついたが、ハオもまた全裸だった。
「こんな美少女が目の前に全裸で立ってるのに無視すんな」
メイファンの言う通り、ハオの股間の如意棒はだらんと垂れ下がったままだ。
「いやだってお前、高校生ぐらいだろ? 子供が男の前で全裸で立ってんなよ」
「んだと?」
「それに俺はシューフェン一筋なんだ。帰らせてくれ」
「私はこう見えても17歳だこのポンコツチンポ」
「えっ? そうなの? 意外に……」
「大人だろう?」
「やっぱ高校生じゃねぇか! 犯罪はイヤーー!」

53 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 19:33:44.48 ID:OnMVEqBD.net
そこへいきなり習近平が入って来た。もちろん全裸だ。

「やぁ、ハー君。突然聞くが、君は中国共産党が好きかね? 中華人民共和国は好きか?」

54 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 20:29:23.98 ID:lSFQX0zp.net
ウォン警備会社に勤めるチャウは、部下いびりに精を出す一方、社長にはへつらう自称鬼警備隊長だった。

しかし、社長の息子ファンが身分を隠して視察のために入社してきた。

副隊長やドジな新米隊員ロンたち対するいびりや横暴さが御曹司にばれ、やり方が時代遅れだとチャウはヒラ隊員に降格されてしまう。元部下と立場が逆転したチャウは名誉挽回に奮起するが……

55 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 21:45:37.05 ID:R9tvtMvC.net
な、なぜ国家首席がこんな所に? しかも全裸で……
ハオは思ったが、すぐに合点がいった。
ハハァ……またドッキリだな? 習近平そっくりのニセモノだ。よーし、それなら正直に言ってやろう。
「はい。私は中華人民共和国が嫌いです。中国共産党は全員死ねばいいのにと思っています」
習は眉を吊り上げ、聞いた。「ほほう、なぜかね?」
「政府の与える自由しか許されないからです。主権は人民にありません。台湾や日本のような民主国家に早くなればいいと思っています」
「貴様! それは問題発言だぞ!」
「ファッ!?」
「それに台湾が国だと言ったな? 台湾が我が国の領土ではなく、独立国家だとでも言うつもりかッ!?」
そこで習はトーンを少し落とした。
メイファンが少し悲しそうな顔をしたのだ。
「メイファンに免じて今回は不問に付しておいてやる。だがこれだけは覚えておけ、私は独裁者を志し、祖国を世界の盟主へと導く者、習近平だ」
そう言い残すと部屋から出て行った。

56 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 21:56:16.61 ID:OnMVEqBD.net
部屋から出て習は身をけねらせた。
「もぉっ! 今私が怒ったのは本気じゃないんだからねっ!」

57 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 23:26:46.65 ID:R9tvtMvC.net
習が出て行ってからハオとメイファンは暫く黙りこくっていた。
「……で、」
ハオがようやく口を開いた。
「なんで裸なの?」

58 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 23:40:43.15 ID:OnMVEqBD.net
メイファン「それは『人はなぜご飯を食べるのか?』みたいな質問だな」

59 :創る名無しに見る名無し:2018/11/25(日) 23:55:40.05 ID:hlmKTIAu.net
チョンボは高級フカヒレが
食べたくなった。
「ここが、珍門飯店か」

60 :創る名無しに見る名無し:2018/11/26(月) 11:03:01.44 ID:t4akjnPS.net
メイファンは外ではチャイナ服を着るものの、屋内では全裸と決めていた。
これはメイファンの主義であり、他人にもそれを強要していた。

61 :創る名無しに見る名無し:2018/11/26(月) 12:40:56.23 ID:mejDsbDf.net
チョンボは外では人民服を着るものの、食事では全裸と決めていた。
これはチョンボの主義であり、他人にもそれを強要していた。

62 :創る名無しに見る名無し:2018/11/26(月) 12:52:59.95 ID:WZ/cQsPB.net
チョンボ「ビール下さい」

店員「冷たいビール? それとも常温?」

チョンボ「ホットで」

63 :創る名無しに見る名無し:2018/11/26(月) 20:28:32.63 ID:nkiasuyn.net
しかしハオは不思議だった。
17歳の美少女が目の前に全裸で立っているのに、自分の如意棒はぴくりともしないのだ。
背が低いとはいえ柔らかそうなプロポーションにお椀型の胸、ぷりんとした尻、黒々と繁った陰毛、
いくら自分はシューフェン一筋と決めているとはいえ、この極上の美少女を前に欲情しないのはあまりに不自然だった。
メイファンからは女の匂いを感じない。
どちらかといえば猫、あるいはネコ科の猛獣のような匂いを感じてしまうのだった。

64 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 00:56:01.99 ID:s1Uku/bk.net
チョンボ「だから、ビール下さい!ホットで」

店員「冷たいビール? それとも常温?」

チョンボ「ホットだよ!温かいやつ!」

65 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 02:24:20.36 ID:mGROCVgP.net
没有温

66 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 06:24:52.64 ID:nec2mE2R.net
二日経ってもハオは帰って来なかった。
リウと待ち合わせの約束の時間を過ぎてもシューフェンは、部屋でハオの帰りを待ち続けた。
「何かあったのかしら……」

67 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 08:24:04.15 ID:TtkVaMhX.net
「約束の時間を守らん奴は嫌いだ」
リウはカフェのテーブルに足を組んで座り、カチカチと指でコーヒーカップを弾いていた。
「約束の時間に遅れる女は嫌いだ」
リウを囲んで立つ取り巻きの男達がハラハラしながら見守っている。
「おい」
リウは取り巻きの一人をぞんざいに見上げながら聞いた。
「有名人リウ・パイロンとの約束をすっぽかす女が存在すると思うか?」
「か、帰りましょうか」
へらへらと笑いながらそう言った取り巻きにコーヒーを投げつけ、リウは立ち上がった。
「アパートの場所、覚えてるな? 行くぞ」

68 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 12:31:29.04 ID:9cGBe0mL.net
アパートの前に乗りつけたリウは、運転手に聞いた。
「どの部屋だ?」
「わ、わからないよ」
返事を待たず外へ出ると、叫んだ。
「シューフェン! リウだ! リウ・パイロンだ! 心配になって迎えに来たよ! 何かあったのかい!?」
近所の人々がそれを聞いてぞろぞろと出て来た。
「リウだって?」
「リウ・パイロン?」
「本物だ!」
老若男女がリウを取り囲み、ぺたぺたと体に触れて来た。
「サインして!」
「抱っこして!」
「結婚して!」
キックをしてくる子供を軽く優しくあしらいながら、リウはイライラした口調で言った。
「シューフェンという女性がこのアパートのどの部屋にいるか知ってる者はいないか? シューフェンだ。姓は知らん」
「恋人なの?」
「わぁ、こりゃスクープだ」

69 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 12:41:34.70 ID:9cGBe0mL.net
シューフェンはリウの叫び声や野次馬の騒ぎを窓の外に聞きながら蹲っていた。
「こんな顔じゃ会えないよ……」
あの日買った化粧品はまだ一度も使っていなかった。
ハオが帰って来たらそこで初めて使い、綺麗になってびっくりさせてやろうと思っていた。
窓の外で大家のおばさんの声が聞こえた。
「シューフェンの部屋の鍵ならあたしが持ってるよ。開けよっか?」
「おばさん……! 余計なことを!?」
シューフェンはとっさに身構えた。
しかしすぐに車のドアを閉める音がし、窓から様子を窺うと、リウの車が帰って行くのが見えた。
「あ……帰っちゃうんだ……」
外もようやく静かになり、シューフェンは康福茶を淹れるとベッドにとすんと腰掛けた。
「あたし……凄いチャンスを逃しちゃったのかな……」
康福茶をこくんと飲んだ。
「でも、いいや。あたしが一番大切なのは、ハオだから」

70 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 12:47:08.42 ID:9cGBe0mL.net
「いいんですか? 帰っちゃって」
取り巻きの運転手が聞く。リウは岩のような表情で答える。
「天下の散打王が不法侵入なんぞできるか。あのババァ、面白がりやがって」
リウの頭の中はもう自分との約束をすっぽかした信じられない女のことで一杯だった。
「初めてだ、こんなに気持ちを燃え上がらせてくれた女は……」

71 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 12:51:16.96 ID:ZDyy4ahC.net
突然、空が震える程の轟音が響きわたった。
野次馬は騒ぐのをやめ、辺りは静寂に包まれる。

「なんだ?」
流石のリウも不安そうに呟いた。
次の瞬間、凄まじい地響きをたて大地が揺れ始めた。未曾有の大地震が街を襲ったのだ。

72 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 18:43:48.15 ID:132XvKri.net
超大規模な停電が襲った上での大地震に、人々は災害情報を聞くことも出来ず、孤立した。
電気が消え静まりかえっていた大都市上海は、一瞬にして瓦礫の山と化し、炎に包まれた。

73 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 21:28:08.41 ID:IymAZ9qm.net
地震が襲ったのは上海だけでなかった。
中国沿岸にある天津などの、ありとあらゆる都市が軒並み壊滅したのだ。

74 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 21:58:51.72 ID:xmFZXzn8.net
だがそれは現実ではない。
すべては共産党政府が極秘で開発している仮想空間の出来事だった。

記憶操作をされたわずかな者たちを除きすべて虚構の世界だった。

75 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 22:54:01.42 ID:knarYjhC.net
   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |   ( ●)(●) おっと そこまでだ
. |     (__人__)____
  |     ` ⌒/     \
.  |       /( ○)  (○)\
.  ヽ     /  ⌒(n_人__)⌒ \ 
   ヽ   |、    (  ヨ    | 
   /    `ー─−  厂   /
   |   、 _   __,,/,     \ ドス
    |    /   ̄   i;;三三ラ´ |
    |    |   |    ・i;j:   |  |

76 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 22:59:55.11 ID:qnUT0cXu.net
現実世界の李青豪ことハオは火事により散打生命を絶たれた元王者だった。

77 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 23:04:34.30 ID:AlU1uAEN.net
現実でのリウ・パイロンはエリート医師だ。

78 :創る名無しに見る名無し:2018/11/27(火) 23:06:10.07 ID:hsIzQ4aH.net
「チョンボ、お前はいいよな…。

なんかお前のことがうらやましいよ。

……。

おれなんかダメさ。

だけど、チョンボ…ま、いいよ。

いつまでも仲良くやっていこうぜ、な。」

79 :創る名無しに見る名無し:2018/11/28(水) 05:41:03.72 ID:BCFizywK.net
この仮想空間に来る前までのメイファンは自由と愛を渇望する女性型ミュータント。

チョンボは少数民族出身の売れない発明家。

そしてシューフェンは元散打王の李青豪のファンだった少年。

…そして、習近平。彼だけは紛れもない国家主席本人だったが今は影武者にその座を奪われ失脚してしまった。

80 :創る名無しに見る名無し:2018/11/28(水) 08:07:29.70 ID:PojtLt8p.net
シューフェンは夢を見ていた。
この世が夢である夢。
夢は未曾有の大地震に見舞われた。
アスファルトが裂け、シューフェンを飲み込もうとする。
「シューフェン!」伸ばした手を男の手が掴んだ。「助けに来たよ」
「やっぱりあなたなのね」
嬉しそうに笑う彼女が見つめるその人はーー

81 :創る名無しに見る名無し:2018/11/28(水) 08:19:37.16 ID:qm8PF92E.net
自分自身…仮想空間外のシューフェンだ。

82 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 01:50:48.84 ID:34wLR6oN.net
酔拳の使い手、ジャッキーがすべて丸く納めてくれた。
彼は栄誉を称えられこの町の市長に抜擢されんだ。
しかし、彼は自分は適任ではないとそれを辞退。
ジャッキーの答を快く思わなかったギャングの元締、チョンは必要にまで嫌がらせを仕掛けてくるようになる

83 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 02:09:47.42 ID:Sgr+My/0.net
ハオは少しずつ分かり始めた。
まず、ここはどうやら上海ではない。
かと言って、誰もが綺麗な普通話を話すので、僻地の町ではないようだ。
広東語を欠片も耳にしないのでおそらくは広州や香港でもない。
どこかわからないが、習近平はこの地に暫定政府を置き、何やら物騒なことを始めようとしている。
その計画に自分も取り込まれつつあることが何となくわかった。

メイファンは毎日ハオに稽古をつけた。
何かと言えば口癖のように「お前は中国政府の秘密兵器になるのだ」と言った。

「今日から私のことを老師と呼べ」
「お前が先生?」ハオはぷっと笑った。「呼んでたまるか」

この建物は広く、中を歩き回るのは自由だった。
研究員、偉そうなおっさん、雑用係、様々な人間がいて、普通に話も出来たが、ここはどこか? と話を振ると誰もが口をつぐんだ。
玄関は普通に解放されており、みんなはそこから普通に出入りしていたが、
ハオがそこから出ようとすると必ずどこからともなくメイファンが棍棒を持って現れ、尻やら鎖骨やらを激しく突いた。
周囲をしっかり確認しても、玄関から出ようとするとメイファンは忽然と現れるのだ。
もしかしてコイツ、瞬間移動の能力者なのだろうか? とハオはいぶかしく思っていた。

84 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 02:33:42.35 ID:Sgr+My/0.net
「お前の捌きのテクニックは天才的だ」
道場でメイファンはハオを前に立たせ、言った。
「が、今はまだ動物や雑魚には通じても、たとえば私のような猛者には通用せん。磨きをかけろ」
「あー、どうでもいいから」ハオは面倒臭そうに言った。「服を着てくれよ」
全裸のメイファンは無視して命じた。
「稽古を開始する。私が棒でお前を突く。お前はそれを捌いてみろ」
「ハイハイ」
虎の猛攻をすべて捌ききった自分が小娘の棒ごとき捌けないわけないだろ、そう思いながらハオは構えをとった。
掛け声もなくメイファンの棒が襲って来た。
「痛い!」
ハオの手は空を切り、先端に布を巻きつけた棒は、鎖骨に命中した。
声もなく無表情にメイファンは棒を次々と繰り出す。
「痛い!」
「痛っ!」
「やだ!」
「もう!」
「やめてください……!」

「なぜ虎の攻撃は捌けたのに私の攻撃はすべてヒットしたのか、わかるか?」
メイファンは泣いてうずくまるハオを見下しながら言った。
「動物は嘘をつかん。攻撃しようとする部位を見ながら攻撃する。ゆえに予測がつく」
「私はお前の脇腹を払う動きをしながら鎖骨を突き、チンポコを突くと見せかけビビらせておいて脳天を叩く」
「嘘つきに簡単に騙されるお前はテクニックがあっても弱い。まるで箱入り娘の格闘家だ。まずは世間の荒波に揉まれるがごとく騙されないことを覚えろ」

85 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 02:43:09.01 ID:Sgr+My/0.net
「もう……帰してください」
ハオは鼻水を垂らしながら懇願した。
「シューフェンのところへ帰りたい」
メイファンは笑いもせずに淡々と言った。
「大丈夫だ、5日も会わなければ女は次の男を見つける。忘れろ」
「シューフェンはそんな女じゃねぇ!!」
「女なんて例外なくそんなもんだ。今頃どうせ他の男と腰の振りあっこしてる。諦めろ」
「てめぇ!!!」
「女が欲しいなら私の姉のララを紹介してやる。私と違ってフェロモンぷんぷんの21歳だ」
ハオは激怒してメイファンに殴りかかった。メイファンはその腕を取ると、自分よりも遥かに大きいハオの体を軽々と持ち上げ、ゴミのように投げ捨てた。
「己を磨け。お前は中国政府の人間兵器となるのだ」

86 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 06:12:32.60 ID:KXiVi+Dj.net
稽古が終わるとハオは汗を流すため浴室に入る。メイファンも一緒だ。

シャワーを使用する前に二人は体を寄せ合いキスをし、舌を絡ませる。
メイファンの背中に回していたハオの手が下におり、彼女の小さなお尻を撫で回した。

「俺はシューフェン一筋のはずなのに、体が勝手に動く」

87 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 06:31:50.45 ID:eCYwcLSH.net
「…はぁ、私もう我慢できない」
前戯ばかりでそこから一向に進まないハオにしびれを切らしたメイファンはハオを押し倒すと
上に跨がり、反り立つハオの男根を自分の中に入れた。

88 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 06:32:00.53 ID:34wLR6oN.net
ジャッキーはそんな少年に同情していた。
私が稽古を付けてあげられたら…
そうだ、夕食後の小一時間なら拳を合わす事ができる筈だ。
そう思い立つなりジャッキーの足は少年の居住区へ向かっていた。
そしてその現場を見てしまう。

89 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 07:33:44.54 ID:vbHuBTvG.net
「月並みな妄想だな」
メイファンはハオの頭からもわもわと浮き上がっているエロいふきだしを棒で突き、パァンと割った。
「私は死ぬまでセカンドバージンの予定だ。特に『ハァ!?』などというふざけた名前の上に、美少女の前で鼻水垂らして泣くようなアホに抱かれるつもりはない」
「俺の名前は『ハァ!?』じゃねぇ! リー・チンハオって立派な名前があるわい!」
ハオがそう言うとメイファンの顔が一際険しくなった。
「貴様……なぜ騙した?」
「騙してねぇよ! お前が勝手に…」
「まさか貴様、アメリカのスパイか?」
「何だそりゃ!!」
「その上その名前、私が追っかけをするリー・ロンハオ様に激似で腹が立つ。殺す」
メイファンは棒を捨て、手刀に凍気を漲らせた。
死んだな、俺。そう思ったところへ習近平がやって来た。

90 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 07:56:52.24 ID:34wLR6oN.net
習近平は青少年が殴り合うのを遠目からニヤニヤと笑って見ている。
「ケンカ、ダメ、分かる?」
二人の仲裁に入ったのはジャッキーだった。

91 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 12:42:31.00 ID:9k7oWmZv.net
ハオとメイファンは声を揃えて言った。
「ケンカと一方的な殺戮の違いもわかんないのかよ」
「ケンカと一方的な殺戮の違いもわからんのか」

92 :創る名無しに見る名無し:2018/11/29(木) 20:58:55.81 ID:OYWr84XD.net
ジャッキーはやれやれとため息をつくと
ハオとメイファンの秘孔を突いた。

「・・・なにをした?」
とメイファンは一瞬動揺したがすぐに平静さを取り戻した。

93 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 04:25:47.41 ID:ApFAKjTc.net
ジャッキーはニコニコ笑っている。
「あれ、体が」
メイファンは闘気を込めた手刀を突きつけようとしたが
からだに力が入らない。

94 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 04:48:45.86 ID:2Z1BrAX2.net
「ヴヴヴヴヴ…」
ハオは白目をむき泡を吹きながら、
獣のような呻き声を上げだした。

95 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 05:16:35.79 ID:Q/BowpDE.net
ハオはメイファンを押し倒すと、そのお椀型の美乳のハリと滑らかさを味わい
激しいピストンのあとたっぷり中出しした。


メイファンはハオとジャッキーを地獄の果てまで追いかけてでも殺すと誓った。

96 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 06:40:30.38 ID:hE++2oLZ.net
まず、ハオの腹部に牛尾刀で切れ込みを入れ腸を取り出します。

97 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 06:48:12.82 ID:mCXFUgAn.net
「……どうしようもなく低俗な妄想しか出来ん奴らだな」
メイファンは棒でジャッキーの妄想を突いて割った。
「そして私が使うのは闘気ではなく凍気だ。相手に殺気すら私は悟らせん」
そう言うと机の上の紙切れを1枚手に取り、それをヒュッと振った。ジャッキーの首が落ちた。
「っていうか誰だお前。しまった殺す前に聞いておけばよかったな」

98 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 06:59:44.73 ID:mCXFUgAn.net
自分に与えられた部屋でハオは休んでいた。
普通にアパートのワンルームのような部屋で、家具もベッドもTVも備え付けられている。
「アイタタタ……ちくしょう。棒であちこち突きまくりやがって」
ハオは今日も部屋中を見回し、盗聴機やら隠しカメラを探したが、やはり見つからない。
「絶対あるはずだ。くそっ、オナニーも出来やしねぇ」
すると外からドアがノックされた。
「入んなボケ」とハオは答えたが、答える前にドアが開き、オドオドしながら一人の女性が顔を覗かせた。
「入っちゃ……ダメですか?」
どこか見覚えのある知らない女性の顔にハオはうろたえた。
「あっ……ごめんなさい。どうぞ。っていうか誰……」
「っていうか。もう入ってました。ごめんなさい」
そう言いながら女性は入って来るとペコリと頭を下げ、、自己紹介をした。
「ラン・ラーラァーと申します。みんなは私のことをララと呼びます。妹が痛い目に遭わせてごめんなさい」

99 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 07:11:18.95 ID:mCXFUgAn.net
「あぁ……糞メイファンのお姉さん? 21歳の」
ララは頬を赤らめ、「なんで……歳まで……」とうつむいた。
メイファンと同じ顔だ。しかし雰囲気はまったく違う。
猛獣のような目をしたメイファンに比べると、ララはいつも優しく泣いているような目をしている。
何より体つきが違った。すばしっこい黒豹のような妹に対し、姉は白く、ほんのりと桃色も混じり、そしていかにも草食系だ。
乳牛のような柔らかさとインパラのような華奢さを兼ね揃えていた。
「え……と……」何をしに来たのかな? と目で聞くハオに気づき、ララは慌てて言った。
「あ、あの。ハオさんの手当てをしてあけるよう言われて……来ました。ご迷惑なら帰りますけど……」

100 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 08:03:45.87 ID:BZEhp+kr.net
香港TV局マウスTVに契約をしているタレントのチ・マン。
彼は8年契約をしているのにも関わらず、1年経過しても何の仕事ももらえずにいた。

そんなある日キャットTV曲からクイズの司会の仕事を請け負う。
これが中々人気を博し、チはマウスTVに契約解除を申し出る。
しかしあと7年も残っているとこいことで即座に却下されてしまった。
そこでチは自称発明家の弟チョンボと共にマウスTVに忍び込み、金庫から契約書を盗み出す計画をする。

返送して侵入し契約書を持ち出したもののボディガードに見つかり、逃走。
チョンボは咄嗟に隠れた金庫に閉じ込められてしまう。
チョンボの彼女は兄のミヤケのロンと手品師としてショーをして稼いでいた。
チ・マンはロン兄弟のところに行き金庫を開けてくれと懇願する。

その間にもボディガードに追われているチは再び逃走、逃げ込んだ場所は生放送の番組だった。
はちゃめちゃになった番組だったが、弟が作った謎の笑いガスを仕掛けたため会場は大爆笑。
このことがきっかけでマススTVの会長から局長になってくれないかと頼まれるのだった。

101 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 08:04:49.45 ID:RJYn/U8W.net
チョンボは高級フカヒレが
食べたくなった。
「ここが、珍門飯店か」

102 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 08:06:14.50 ID:CGzITW/9.net
チョンボ「ビール下さい」

店員「冷たいビール? それとも常温?」

チョンボ「ホットで」

103 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 09:36:50.09 ID:mCXFUgAn.net
「妹はあなたのことをかなり気に入ってるみたいですよ」
ララは手当てをしながら喋った。
「いや、俺、殺されそうになったこと何べんもあるんだけど……」
「でも殺されていないでしょう?」
「え……うん」
「それが証拠ですよ。妹が本気ならあなた程度、ものの0.5秒で首が落ちてます」
「あっ、そう」
ララの二の腕がハオの胸に当たる。黒髪から立ち昇るいい匂いが鼻をくすぐった。
「でっ、でも何で俺なんか気に入ったんだろう」
「ハオさん、彼女さんがいるんですって?」
そう言いながらララは見上げて来た。胸の先っちょがハオの膝に触れた。
ハオは一瞬、彼女などいないことにしようとして思いとどまり、「いるよ」と答えた。
「その彼女さんのことをとても大事に思っているとか」
ララはピチピチの青いチャイナ服を着ており、露出も少なめだったが、基本全裸のメイファンよりも断然エロかった。
『フェロモンムンムンって聞いて想像してたのとはタイプが違うけど、これは確かに……』
「ハオさん?」ララはハオの足に乗っかって不思議そうに見上げて来た。
「あっ、ああ……。うん、大事だと思ってるよ」
「そういうとこですよ」
ララは立ち上がるとハオの顔に薬を塗りはじめた。喋るたびにいちいち吐息がかかる。
「妹は女を道具のようにしか見られない男性が嫌いなんです」
下に降ろした指先がハオの如意棒をつんと突いたが、わざとではないようだった。
「だから彼女さんに一筋なハオさんのことをお気に入りなんだと思いますよ」
髪の毛の中を怪我していないか確認するためにララはハオに抱きつく形になった。胸の膨らみが直撃する。
『天然フェロモン娘か!!!』
そう思いながらハオはなんとか冷静な口調で言った。
「でもあいつ、俺に君を紹介するとか言ってたぜ?」
「フフ、試したんですよ」
「試した?」
「そこで『お願いします』とか答えてたら、たぶん貴方の生命はそこまでだったと思います」
「!」
「だから気をつけてくださいね、ハオさん。他の女に気を向けるようなことがあったら、妹はすぐにでも貴方の首を飛ばしますよ」
「!」

104 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 10:29:55.78 ID:U6WDhbuE.net
その頃シューフェンは病院の待合室のベンチに座っていた。
その虚ろな目で床をぼんやりと見つめている。
「…ううっ」
シューフェンの目から大粒の涙がぽろぽろ流れ出す。

105 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 10:33:49.11 ID:WVbaEscb.net
チョンボは餃子を注文した

「あと、ホットビール」

106 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 11:38:44.52 ID:mCXFUgAn.net
「やっぱりハオ君だったの?」
友達のジァティンが背中をさする。シューフェンは首を横に振った。
海岸で発見された首なし死体がハオの免許証を持っており、住所がシューフェンのアパートになっていたため、知らせが来たのだ。
検死室で対面した遺体はハオのものだとは思えなかった。
同じぐらい逞しくはあり、身長も同じぐらいだったのだが、シューフェンにはどうもはっきりとは言えない違和感があった。
しかしこれだけひどい有り様では違和感があって当然とも言え、彼女はただ泣くしか出来ないのだった。

107 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 11:55:38.57 ID:mCXFUgAn.net
シューフェンはその日から一人でいる時でも化粧をするようになった。
ハオがいつひょっこり帰って来ても綺麗な顔を見せられるように。
あれがハオではないと自分に言い聞かせるために。
それはまた自分に会いに来てくれるかもしれないリウのためではない、と言い切ることはしかし出来なかった。

108 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 12:39:43.14 ID:I2luWTbB.net
そんなシューフェンに更なる不幸が訪れる。
いつの頃からか咳や痰の症状が出るようになった。
最初は「風邪かな?」とシューフェンは気にしなかったが3週間も4週間も症状が収まる気配がなく、やがて痰に血が混じるようになったので
不安になった彼女は1度病院で診察を受けるとこにする。



検査の結果、肺癌に犯されていることが分かり、膵臓への転移も確認された。

109 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 16:36:41.84 ID:bE+u1o4L.net
メイファンは青竜刀を研いでいた。
「さすがに大の男の首をはねると刃こぼれするな」
次の瞬間、ぴくりと眉を動かすとその場から消えた。

玄関ホールでスーツ姿の男が二人会話している。
「あそこの店のビァンビァン麺、絶品だぜ」
「へぇ、是非今から食いに行こう」
そう言って玄関から出て行く二人について出ようとするランニングシャツにトランクス一丁姿の男をメイファンは背後から棒で突いた。
「懲りん奴だな」
「帰らせてくれ!」振り向いたハオは泣いていた。「よくない予感がするんだ! シューフェンに何かあったのかもしれないんだ!」

110 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 19:44:51.82 ID:7oXZKBzN.net
アリアとその家族は、表向きは夢を見て帝都にやってきたものの路頭に迷った田舎者たちに善意を施していたが
裏では彼らを相手に残虐な実験や拷問を繰り返して嬲り殺すことを楽しんでいるサディスト一家であり
その犠牲者の中に道中で離れ離れになったタツミの幼馴染サヨとイエヤスを見つける。

111 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 21:14:31.24 ID:Y8LmQnJ6.net
チョンボ「うまい!うまいよコレーーーーっ!」

112 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 21:58:53.35 ID:plo8GArp.net
「それは嘘だな。お前はシューフェンのもとに帰りたいだけだろう?」
ハオはギクリとした。
事実、シューフェンによくないことが起きたというのは
涙がでるほどマジでここから出ていきたいハオの嘘だった。
「ヤダヤダァーッ、おれおうち帰るのっ、かえりたいよぉ…かいりたああい…うええあああ…」
ハオはメイファンに腕を捕まれ部屋に引きずられながら、
ハオは床に寝そべり子供のように手をジタバタさせて大泣きした。

ハオはまさかシューフェンに逃れられぬ死の宿命が訪れようとしているとは
本気で思っていなかったのだ。

113 :創る名無しに見る名無し:2018/11/30(金) 23:48:33.65 ID:JmNhQ0Iy.net
メイファンは言った、「そんなに心配なら連絡すればいいじゃないか」
「したさ」ハオは少し考えてから言った、「でも上海、今、電気ねーし」
もちろんハオはスマホを使ってあれもこれも試してみていた。
しかし大停電中の上海にいるメイファンに電話は繋がらないし、メールを送っても返信はなかった。
それどころか自分の故郷の村に電話をかけても、広州の局番で適当に知らない番号にかけても繋がらないのだった。
「ここ、妨害電波みたいなの出てるよな?」
「検閲だ」
「グーグルマップみたらここは上海だった。でも誰も上海語喋ってねーし、大体上海なら電気ついてんのおかしいだろ」
「詮索するな」
「とにかく連絡しろって言われても出来ねーんだよ!」
「手紙を書けばいいだろう」
「え」
「出しておいてやるぞ。ただし、もちろん私の検閲つきで、だ」

114 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 00:05:45.23 ID:nOl+hX/0.net
ハオの部屋で、メイファンに見張られながら手紙を書くことになった。
「ところでお前の彼女の名前、ビーフンだったかな」
「シューフェンだ」
机に向かうハオの横で、ベッドの上にいつものように全裸で胡座をかきながらメイファンは楽しそうだ。
「手紙なんて書くの何年振りだろう」ハオはペンを持ったまま固まっていた。「何書いたらいいやら……書きたいこと多すぎて……」
「よし、まずは私の言う通りに書き出せ」
「……やってみるよ」
「ビーフン」
「シューフェンな」
「俺、新しい彼女できた」
「殺すぞ」
「美人姉妹の姉のほうだ。名前はララ」
「ララだって怒るぞ、それ」
「アニメから抜け出したような可愛いひとだ」
「……」
「否定せんのか?」
「別に」
「ちなみに妹もCGと見間違うほどの美少女だ」
「ふざけるな」
「妹から俺は虫ケラ扱いされているが、ララはとても優しい。俺は彼女を深く愛してしまった。どうか俺のことは忘れて……」
ハオは机を強く叩いた。
「俺の手紙だ! 黙ってろ!」

115 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 00:40:41.73 ID:VGMB4Jfx.net
「ラーメンおごってください」
みすぼらしい少年が私に言い寄ってきた。
文官の私は身なりをきちんとしているから金があるだろうと思ったのだろう。
しかし私は見知らぬこんな小汚ない浮浪児に食事をご馳走してやる道理など無いのだ。
「どきなさい」
私は鬱陶しそうに少年の手を払うと道を進んで行く。
「お願いです。もう3日も何も食って無いんです。どうかお慈悲を…」
少年は私の腰にまとわり着いてきて離そうとしない。
実に不快だ。
「ええい、鬱陶しい乞食め。放さんか!!」
私は懐から財布を取り出し金子を地面に叩き付けた。

116 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 00:44:44.44 ID:d7x8iXSE.net
『シューフェン、元気か。突然いなくなってすまない』
「拉致されてるとか書くなよ。もちろん習近平のこともだ」
「わかってるよ、糞」
ハオは続きを読み上げながら書いた。
『俺は今、鬼のような先生について散打の特訓をしている』
「散打だと?」メイファンが口を挟んだ。「まぁ、いいか。殺し屋ににるための特訓をしているとは書けんしな」
『事情あって場所は言えないが』
「よしよし」
『もしよかったら去年の11月20日に一緒に食べに行ったものを思い出して欲しい』
「なんか暗号臭いな、それ。削除しろ」
チッと舌打ちしてハオは続けた。
『俺は元気でやっている。心配しないで欲しい』
「……」
『俺が愛しているのはお前だけだ、シューフェン。どうかおれの帰りを待っていて欲しい』
「おい」
「なんだ」
「お前は一生ビーフンの元には帰れんのだぞ。これは決定事項だ。それなら気を持たせるよりきっぱり別れを告げるほうが彼女のため……」
「ほっといてくれ!」ハオはさらに強く机を叩いた。「俺の手紙だ! 気が散る! 黙れ!」
メイファンは素直に黙った。
『なぁ、最後に交わした言葉、覚えてるか?』
『お前は女優のファン・ビンビンと自分とどっちが綺麗かと聞き、俺はファン・ビンビンと言った』
「そんなこと言ったのかよ」メイファンは小声で呟いた。
『あれは本心だ』
「正気か」
『だけどもしファン・ビンビンとお前を選べるとしても、俺は間違いなくお前のほうを選ぶ』
「……」
『俺の運命の相手はお前だからだ。俺にとってだけは、お前は世界一の女なんだ。俺の帰る場所はお前だけだ』
「…………」
『愛している』
「ズッキュゥゥゥン!」メイファンの心臓から音が鳴った。
「なななななんだなんだ銃声がしたぞ!?」
「知らんな」メイファンは無表情で言った。「私には聞こえなかった」

117 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 00:55:55.72 ID:d7x8iXSE.net
その後、メイファンの地獄の特訓を受け、ハオは自分の部屋でララを待っていた。
ノックの音がし、ララが入って来る。今日は黄色いチャイナ服で、やはり露出は少なめだった。
「ハオさん、知ってます? 日本語では治療のことを『体に手を当てる』と言うんですって。さぁ、今日もいっぱい私の手を当てて治療してあげますね」
するとハオは突然、ララをベッドに押し倒した。
「きゃっ!?」
「しっ」ハオは怖い顔をして言った。「聞くなら君しかいないと思って待っていた、ララ」
「聞く? 何をですか?」
「ここは西安だろう? 違うか?」
ララは泣きそうな目をしながら首を傾げ、無言で笑った。
「さっき玄関でスーツ姿の二人の会話を聞き、確信した。ビァンビァン麺は西安の食べ物だ」
「ハオさん」ララはおかしそうに口を開けて笑った。「今時ビァンビァン麺なんてチェーン展開して中国各地で食べられますよ」
「いや、それで繋がったんだ」
「繋がった?」

118 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 01:16:52.38 ID:d7x8iXSE.net
「西安……。あるいは、隣の咸陽(かんよう)かもしれない。何にしろ、昔に長安があった場所であり、さらに古くは秦の始皇帝が城を構えていた地域だ。
習近平は北京からここへ密かに都を移した。それには理由がある」
「どんな理由ですか?」
「あいつは現代の始皇帝になろうとしているんだ」
「始皇帝って……」ララはくすっと笑った。「中華統一はとっくにそれてますよ?」
「だから習がしようとしているのは……」ハオは真顔で言った。「全世界統一だ」
ララの顔から笑いが消えた。
「アメリカに隕石が落ち、日本の文明が崩壊している今、習は何かをしようとしているんだ」
「そんなこと」ララは言った。「国連がさせるわけがないでしょう」
「うん、だけど……」
「ハオさん」
「ん?」
「ハオさんのこと、正直アホだと思ってましたけど……」
「そうなの?」
「本当にアホだったんですね」
「ハァ?」
「さぁ、手当てをしましよう。起きて起きて。座って座って」
「いや、聞いてくr……」
「私、ハオさんに危険な目に遭ってほしくないです」ララは傷薬をハオの瞼に塗りながら言った。「ハオさんのこと、好きだから」

119 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 01:25:26.22 ID:VGMB4Jfx.net
これが私と愛弟子『チャド』の出会いであった。
私は小汚ない少年に飯を食わせてやると屋敷に連れ帰り風呂に入れてやった。
髪を結いちゃんとした服を着せてやると中々どうして気品のある少年ではないか。
私はチャドに文字を教え学問を教えた。
武芸を習わせた。
そして、10年の歳月が流れ彼は立派な青年へと成長した。
一流の学校を首席で卒業し官僚の職に就いた。
実に誇らしかった。私が育てた少年が国を動かしているのだ。
しかし、それは間違っていた…
チャドは覇王になり国を恐怖で支配したのだ。

120 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 01:29:46.97 ID:6CGQZdYb.net
手当てを終え、ララはハオの部屋を出ると、物置部屋に入った。
中には鏡台が置かれてあり、彼女はその前に立ち、ルンルンと歌いながら服を脱いだ。
服で覆われていた部分が黒い。露出していた手足の白さと辻褄が合わない。
目を閉じ、彼女が気の流れを操作すると黒色は生き物のように動き出し、身体中にまんべんなく散り、ララは褐色の肌になった。
綺麗な黒髪をバサバサと手でかき乱し、侍のように後ろでくくり、鏡に向かって獣のように鋭い目を向けた。
「私は、私」
呪文のようにそう唱え、メイファンは自分にかけていた暗示を解く。
「私は私、ラン・メイファン」

121 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 04:56:53.99 ID:LseMQ9KI.net
これはリレー小説ではない。

122 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 05:47:44.06 ID:5FcB62P7.net
そうコレはリレー小説ではない

123 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 12:35:41.27 ID:kpt70vB/.net
その頃リウは広州にいた。
ホテルの一室でソファーに取り巻きの男5人に囲まれて座り、TVを見ていた。
『サクラパさんはこの度中国を襲った大停電に心を痛め、中国の人々を元気づけたいとの思いから、この試合を申し込んだ、とのことです』
アナウンサーの女性がカンペを見ながら語った。
画面の右上端にはテロップがあり、そこには(日本の英雄格闘家ジョー・サクラバがリウ・パイロンに挑戦する!)と書かれていた。

「日本じゃ有名人なんですかね」取り巻きの一人が呟いた。
「恥ずかしながら俺は知らなかった」リウが答える。「ジョー……シャクラパ? 名前もまだよく覚えられん」
「日本人と闘るのは初めてでしたかね?」
「いや、4年前に柔道のクガ・ヨシヒコと闘った。素晴らしい格闘家だったな。強かったし、何より高潔な精神の持ち主だった」
「あ、ジョーが出て来ましたよ」

124 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 12:51:01.51 ID:kpt70vB/.net
オレンジ色に短い髪を染めた30歳代半ばくらいの髭面の男が登場し、一通りインタビューを受けた後、報道陣からの質問攻めが始まった。
ーー中国で好きな格闘家はいますか?
サクラバは照れたような笑いを浮かべながら答えた。
『ブルース・リーとジャッキー・チェン以外誰も知らないな。ってか有名な人、いないでしょ?』
「ん?」取り巻き達が眉をしかめる。
ーーまさかリウ・パイロンのことも知らなかった?
『今回プロモーターから話を受けて初めて知ったよ。やっぱりアレでしょ。アチョーとか叫ぶ人でしょ?』
「おいおいおいおい」
「まぁ、そう言えば俺も日本の有名な格闘家っていったら波動拳のリュウぐらいしか知らんよな」
取り巻き達が哄笑する。
報道陣がざわざわし始め、質問が飛び交った。
ーーじゃあリウの動画とかも見てないってこと?
ーー中国の格闘界に関してのあなたの認識はどの程度?
ーーリウが4年前、柔道のクガ選手を倒したことはご存知ですか?
『まぁ、空閑さん、もう40歳越えてたでしょ? そりゃ仕方ないよ』
『中国の格闘技は……俺が見る限りアレだね、技が軽い。見た目はやたら派手だが威力がない』
「コイツ映画の話でもしてんのか?」
「そりゃ見せる用の技だもんな」
ーーリウに勝つ自信はありますか?
『自信っていうか、勝てない理由がないと思う。予告しとくよ。開始から俺はノーガードで彼の攻撃を3発だけ受けてあげる』
「なんだと?」取り巻きが殴りかかろうというように立ち上がった。
『それで俺を倒せたら彼の勝ち。無名のローカルヒーローへの俺からのささやかなプレゼントだ。リウって名前、プレゼントって意味だって聞いたからさ』

125 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 13:00:10.69 ID:kpt70vB/.net
サクラバが画面から消え、取り巻き達は恐る恐るリウの顔を見た。リウは心地良さそうに笑っていた。
「なめくさった日本人でしたね」
「この場にいたら殴ってやるとこですよ」
「いいよ、いいよ」リウはニコニコ笑いながら言った。
リウがこんな風な笑いを浮かべる時がもっとも恐ろしいんだということを取り巻き達はよく知っていた。
「クガさんは礼節を重んじる人だったなぁ……。あれこそ格闘家だ」
リウはソファーに身を埋めたまま言った。
「俺は礼節を重んじる人には礼節をもって応える。最上級の、ね」
笑いながらリウのこめかみには極太の血管が浮き出していた。
「だから無礼な相手には最高の無礼で応えてやるさ」

126 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 14:47:23.92 ID:KNrb3PPj.net
続いてテレビ画面にケン・リュックマンが映し出された。
「おおっ!?」
「ケンだ!」
「ケン・リュックマン!」
素手でミサイルに触れるという恐るべき地球最強の男、アメリカが生んだスーパーサイバー戦士、ケン・リュックマン。
「いつかは、俺も、挑戦できるのだろうか」リウはうっとりしながら美しい男の肉体に見惚れた。

127 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 15:33:29.85 ID:hoDkWBL+.net
⊂〜っ           c〜⊃
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        /   (___,.ノ
     /  /⌒ヽ、 \

128 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 16:56:49.38 ID:XfmmfAVe.net
ジョー・サクラバはVTRを観終えると、怯えるような顔をして黙りこくった。
なんだよこれ、むちゃむちゃ強いじゃん。しかもやたらいいガタイしてんじゃん。無駄な動きに軽い打撃の白髪のおじいちゃんとかだと思ってたのに……
ってか中国拳法っていうより投げ技ありのキックボクシングじゃん、コレ。騙された!
「この攻撃を3発、ノーガードで受けるのか」ゴージャス哀川が横からしゃしゃり出て言った。「死ぬんじゃね?」
「どうしよう」
「撤回する?」
「そんなのカッコ悪いよ」
「じゃあ、ノーガードで受けると思わせといてカウンターとか?」
「いいね」ジョー・サクラバの目がキラリと光った。
「そんなことをしてみろ」一徹が口を挟んだ。「今の中国の日本人に対する悪感情は知ってるよな?」
「日本鬼子め! やはり日本人は卑劣な悪魔だ! とか言われるかな」ゴージャス哀川が他人事のように笑う。
「それが原因で戦争勃発したりしてな」
「……とりあえず日本帰ろっか」
「試合は1ヶ月後だしな」

129 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 17:39:30.48 ID:kpt70vB/.net
稽古場にいつものように全裸で向かい合って立つハオとメイファン。
「行くぞ」
そう言って無表情に繰り出すメイファンの棒をハオは捌く。
しかし捌けるのはせいぜい10回に2〜3回だ。鎖骨に、腿に、いつものように青アザが出来て行く。
「よし、終わりだ。大分捌けるようになったな」
ハオは痛いとも言わず、泣きもせず、ありがとうございましたも言わずに部屋へ帰ろうとする。
「待て。自分がみるみる強くなっているのはわかるか?」
「まぁね……」
「そこでだ、ちょいとスパーリングをやってみんか」
「やだ」
「お前に選択権はないぞ」
「じゃあ聞くなよ」
「散打の選手を一人拉致って来た。今日から毎日そいつとスパーリングをやれ。自分がどれだけ強くなっているのかがよくわかるはずだ」
「散打だって?」ハオの目が少し輝いた。「有名な選手か?」
「入って来い」
メイファンがそう言うと扉を開けて筋肉モリモリの黒人が入って来た。
「ジェームス・ブレットさんだ。ライトヘビー級の国内97位」
「何だ、その筋肉」ハオはジェームスの胸を指で突いた。「お飾りかよ?」
「おまけに頭の中まで筋肉だぞ」メイファンは面白くもなさそうに言った。
「ココの暮ラシは快適デス」ジェームスは一人で喋り出した。「3食昼ゴハン付きサイコー」
「昼寝じゃねぇのかよ」
「早速始めるぞ。オープンフィンガーグローブを付けろ」
「要らねぇよ」
「付けろ」
「じゃあ俺だけ付ける。そいつには要らん」

130 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 17:58:48.75 ID:kpt70vB/.net
メイファンが口でゴングを鳴らし、スパーリングが始まった。
「本気で来いよ?」ハオは言った。
「スパーリング、スパーリング」青いヘッドギアを着けたジェームスは楽しそうに身体を揺らした。
ジャブの嵐をハオは軽々とすべて手で弾いた。
「オー! 素っ晴らしい反射神経ネ!」
試しにとばかりジェームスは左ガードを視線で誘い、右フックを打ち込む。
「眠てぇな」ハオはその腕を掴み、バレリーナのようにジェームスをくるくると回した。「こんなのしかいなかったのかよ」
「フン、プロを舐めると痛い目見るヨ」
ジェームスは余裕の表情を作ってそう言ったが、明らかにプライドを傷つけられて怒っていた。
「必殺! 弾丸キーック!!」
「漫画か」ハオは直線的なキックを真上に飛んで避けると足の上に乗った。
「ワイヤーアクションか」メイファンが呆れた。
「ムキーーーッ!」激昂してストレートを出して来たジェームスの顔面にハオの拳がクリーンヒットした。
「すまん、弱すぎたな」
一発KOされたジェームスの首をはねながらメイファンが言った。
「散打なんぞから連れて来たのが間違いだった。次は殺し屋を拉致って来ることにしよう」

131 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 18:12:49.06 ID:kpt70vB/.net
「いや、散打がいい」ハオはリクエストした。「もっと上位の奴連れて来い」
「何でもそうだが」メイファンは言った。「真の実力者というのは表向きは無名なもんだぞ」
「なぁ、俺、散打の選手になりたい」
「アホか」
「華やかな世界にデビューして、シューフェンを幸せにしてやるんだ」
「武術の達人が最も金を稼げる仕事が何か知っているか?」
「殺し屋だろ」
「そうだ。だから……」
「そんな表向きに名前を知って貰えないような、世間様に顔向け出来ないような、しかも他人を不幸にする仕事なんかやだねったら、やだね」
「王子か」
「とにかくスパーリングするなら散打がいい。あれだ、リウ・パイロン拉致って来い」
メイファンの無表情がその名を聞いて崩れた。泣きそうな顔に見えた。
「そうだ、さっきお前、真の実力者は表舞台にいないとか言ったな? リウ・パイロンなんかも大したことないのか?」
「いや、あれは天才だ」
珍しく他人を褒めるメイファンにハオは少しびっくりした。
「じゃあ、お前とリウだったらどっちが強い?」
「リウ・パイロンには……」メイファンは目を伏せた。「私は勝てない」

132 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 18:19:35.94 ID:kpt70vB/.net
「なっ、何だよ……」
初めて見る弱々しいメイファンにハオはたじろいだ。
ややあってメイファンは顔を上げ、「そうか」と呟いた。
そしてハオに向かって言った。
「私では勝てないが、お前なら勝てる。もちろん今はまだ虎とミジンコほどの実力差があるが……」
「あ?」
「お前、やはり散打の選手になれ。私が許す。そして王座決定戦まで勝ち進み、リウと闘え」
「まじで? いいの?」
「その代わり、勝て。勝つにとどまらず、事故を装って殺せ」

133 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 20:04:27.36 ID:KNrb3PPj.net
ガラッと扉が開き、そこへ一人の男が入って来た。
「世界最強、それは誰だ?」
「あっ、ケン・リュックマン」
「ケン・リュックマン。それは貴方です」
ハオとメイファンはうっとりと逞しい男の肉体に見惚れた。

134 :創る名無しに見る名無し:2018/12/01(土) 23:52:57.92 ID:hoDkWBL+.net
        ,x '"::::::::::::::::::::
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     l    '' )    i   
      ヽ,,、'~`      U
       ゙, __ ,-、_,ノ`
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   /        !    ,, -'"
    |     `ー '"|::
    |      /|||ヽ
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135 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 03:57:09.69 ID:ZU5DCduU.net
「我が国には中国伝統武術などと謳ったオカルト団体のごときエセ格闘家が多いことは事実だ」
リウ・パイロンはTVのインタビューで答えた。
「だからジョー・サクラバ先生があんな発言をしたのにも仕方ないと頷けるところはある」
「しかし、対戦相手のことをろくに知ろうともしない彼の人間性に私は疑問を持たざるを得ない」
「彼は試合開始から3発ノーガードで私の攻撃を受けると予告した」
「私は最初の3発をそれぞれデコピン、猫だまし、壁ドンで行こうと思っている」

136 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 05:39:50.39 ID:XbfLAyQL.net
ハオは稽古という名の拷問が終わると
汗を流すため入浴する。メイファンも一緒だ。
体を洗う時はいつもメイファンからで、基本的にはハオの手で洗い、彼女自身はほとんど何もしない。
最初は加減がわからず文句を言われたりムラムラしたり、色々ツッコんだものだが今は何もない。
この段階ではハオは入浴することは出来ない。
入浴出来るのはメイファンが風呂から上がった彼女の体を拭ききってからだ。

137 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 05:56:02.34 ID:ZU5DCduU.net
「今日はハオさん、なんだかご機嫌ですね」
ララはハオの背中をマッサージしながら言った。
「そうかい? まあ、ね。そうだな」
ハオは稽古の後にララがやって来るのを楽しみにするようになっていた。
ララの白くてすべすべの手が女性らしい動きで自分の身体を癒してくれるこの時が毎日待ち遠しかった。
「何かいいことでもあったんですか?」
「うん、まず、シューフェンに手紙を書いたんだ」
「彼女さんに? わぁ〜」
「でもあれ、本当に出してくれたのかな。メイファンの奴……」
「出してくれると言ったのでしょ?」
「うん、でも……」
「メイは……妹は、そんな嘘をつく娘じゃないですよ。これは絶対です」
「そうか、ララがそう言うなら安心だな。ただ、返信は期待してない。どうせ住所なんか書いてないだろうから」
「それでいいんですか?」
「よくはないけど、俺が無事だと伝えられただけでも嬉しいよ」
「たぶん……返信、来ますよ」ララは優しく微笑んだ。
「そうかな。来てもニセモノだったりして。まぁ、ニセモノでもすぐわかるんだけどね」
「愛の力で?」
「そう。俺はシューフェンが世界のどこにいても探し出せる自信があるんだ」
「キュン」とララの胸のあたりから音がした。
「ん? ララ、今、お腹鳴った?」
「えへへ。少しお腹空いちゃいました」

138 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 06:18:59.46 ID:ZU5DCduU.net
「あと、いいことのもうひとつは、散打の選手になってリウ・パイロンと闘うことをメイファンが許可してくれたんだ」
「リウ・パイロン?」ララはなぜか痛そうに顔を歪めた。「うーん。格闘技のことはよく知りません」
「な? 運動音痴のララでも格闘家だってことは知ってるだろ? それほどの有名人だよ」
「へぇ……」ララは面白くなさそうな顔をした。
「一気にモチベーション上がったよ。自分は何のためにここにいるんだろう? ってずっと思ってたけど、目的がはっきりした感じ」
「ハオさん」
「ん?」
「私のこと運動音痴って言ったけど、失礼ね。私だって、実はボクシングが出来るんですよ」
「嘘だね」「嘘ですけど」二人は声を揃えて言った。
「ちょっ! 何でわかったんですかぁ?」ララは枕でハオを叩いた。
「筋肉とかね、何より反射速度を見ればその人が鈍いかどうかなんてすぐわかるもんだよ」
そう言いながらハオはララの顔面に拳を入れた。実際にはその予備動作を見せただけだが、ララはぴくりともせずに緩みきった顔をしていた。
「ほらね」
「何が?」
攻撃されたことに気づきもしないララをハオは可愛いと思った。
「女の子はそれでいいんだよ。メイファンみたいなのは女とは呼べない」
「メイだって女の子です。ああ見えてあの娘、本当に優しいんですよ。本当に」
「いや、あれはバケモノ。ララが何とフォローしようと俺の見立ては変えられない」
「バケモノ?」
「うん。しかし、あんなバケモノの妹がいて、なんでララはそんなに運動神経鈍いんだ?」
ハオはからかうように笑ったが、ララの様子を見て止めた。
「バケモノは……」
「うん?」
「私のほうなんです」

139 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 06:26:41.84 ID:lmTtEl6o.net
未だに慣れないのがひとつある。それは…
「…ふぅ、ハオ綺麗にしろ」
メイファンは立ち上がるとハオが手前に来るように体の向きを変える。
「…」
ハオは一瞬ためらい、顔をひきつらせながら彼女の前にしゃがみ、
局所を舐め始めた。小水の匂いが鼻を突く。
「…んんっ」
この時彼女は悩ましげな声をあげ体を震わせることが多いが気にしてはいけない。
「よろしい。後ろもやれ」
メイファンがそういうとハオは後ろに回り、彼女の尻朶に手を添え、顔を寄せる。ハオの舌が桜色の菊座を這い、付着した汚れを舐めとっていく。

仕上げは紙で優しく丁寧に拭き取って作業は終わりだ。

この行為は洗体も含めハオから反抗心をなくし服従させるのが目的だった。
今やハオの心は屈服しかけ、シューフェンのことも忘れつつあった。

140 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 06:44:51.25 ID:4UpX+eJU.net
ハオはメイファンのことをバケモノだと口では忌み嫌っていた。
しかし心の底ではメロメロだった。


認めたくなかった。このままいけばシューフェンのことを忘れてしまうのではないかと不安になるほどだった。

141 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 06:47:32.26 ID:oYxNwj0S.net
「上海へ行く仕事はないのか?」
リウはマネージャーのワンに聞いた。
「ないよ」
「あれからもう三ヶ月だ」
毎日のように同じことを聞く散打王にワンはまた溜め息を吐いた。
「もう諦めなって。一回会っただけの女だろ?」
「いや、夢の中で何度も会ってる」
「何がそんなにいいの? 相当具合よかったわけ?」
「彼女を侮辱するな」

休みが取れれば自家用の飛行機で上海まで飛びたかった。しかし日本人格闘家との特別マッチも決まり、トレーニングやら取材やらで忙しくなっていた。
車の窓から広州の町並みを眺める。美しい女はチラホラと歩いていたが、リウは興味を示さなかった。

「俺さ」ワンが口を開いた。
「なんだ」リウは頬杖をついて外を眺めながら聞く。
「お前は女を食い物にして強くなって来た奴だと思ってるんだよね」
「その通りだ」
「お前は女に本気で惚れたことなんかなかった。どんな美人でも一回ヤッたら捨てて来た。それを自信に変えて強くなって来たんだ」
「そうだな」リウは平然と答えた。「女は自分を磨くためのただの道具だ」
「最近、お前、ちょっと弱くなってると思うんだよね」
リウは返事をしなかった。
「だめだよ、本気で惚れちゃったりしたら。お前みたいな奴はきっと他のこと手につかなくなっちゃうよ」
「シューフェン?」窓の外を見ていたリウが目を見開いた。「止めろ! 車を止めろ!」

142 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 07:01:24.42 ID:oYxNwj0S.net
「シューフェン!」
住み始めたばかりの広州の町で後ろから名前を呼ばれても、彼女は自分のことだとは思わなかった。
ありふれた名前でもないのに、そんな名前のひとが他にもいるんだなぁ、と思った彼女の肩を、ごっつい掌が乱暴に掴んだ。
「シューフェン!」

143 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 07:10:18.60 ID:oYxNwj0S.net
「リウ?」
「やっぱりシューフェンだ!」リウは子供のように笑った。
荒い息が収まると、リウは聞いた。「なぜ広州に?」
「引っ越して来たの」
「誰かと?」
「ううん、一人で」
「仕事?」
シューフェンは首を横に振った。
「ある人が……移り住もうって言ったことがあるから」
リウは意味がわからず黙ったが、再び笑顔で言った。
「とにかく会えてよかった! もう会えないかと思っていた」
「あの日、なぜすっぽかしたか、聞かないの?」
「どうでもいいよ。今、君に再会できた喜びで心は一杯さ」
シューフェンは微笑みを浮かべ、すぐに自分が化粧をしていないことに気がついた。
「あ、私……すっぴんだったわ」
「似合うよ」リウはシューフェンを真っ直ぐ見つめて優しく笑った。「君には素顔がよく似合う」

144 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 11:46:53.01 ID:1fx/DQCD.net
ハオは道場でいつものようにメイファンと向かい合って立っている。もちろん今日も二人とも全裸だ。
しかし今日は様子が違った。いつもはメイファンの裸に畏れ以外のものは何も感じないのだが、
いつも服で身体を隠しているララの全裸をそこに重ねてつい想像してしまったのだ。

ララは自分のことを「バケモノ」と言った。
その理由をハオが聞くと恥ずかしそうに黙った。
しつこくハオが問い詰めると、ララはついに白状したのだった。
「私、牛のバケモノなんです」
「牛? っていうと牛魔王か何か?」
「そうです」
「ほう? そんな強そうには見えないが……」
「脱いだら胸が牛みたいなんです」
「ファッ!?」
「これ、信じられないぐらい詰め込んでるんです」

目の前のメイファンは巨乳というよりは美乳だが、乳首はピンク色をしている。
牛というよりは完全に黒豹だが、顔がララに似すぎている。
ハオは股間を押さえて前かがみになりながら、必死で想像上のララをかき消そうとした。
『こらっ! ハオ、お前はシューフェン一筋だろ!』
そしてシューフェンの怒った顔を想像したが、そこからシューフェンとのエッチな思い出が溢れ出し、ますますヤバいことになってしまった。

「おい」メイファンが低い声で言った。
「はっ……はい」
「手をどけてみろ」
「いやっ……! 違うんです、これは……」
「どけろ。気をつけ!」
気をつけをしたハオの股間から天を向いて最大化している如意棒をメイファンはしばらく目を見開いてじっと見つめた。
やがてうっすらと笑いを浮かべると命令した。
「仕舞え」
「はっ……はいっ」
「3秒で仕舞わんと斬り落とす」
「!」

145 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 12:46:52.32 ID:l+fyVD02.net
続いてテレビ画面にケン・リュックマンが映し出された。
「おおっ!?」
「ケンだ!」
「ケン・リュックマン!」
素手でミサイルに触れるという恐るべき地球最強の男、アメリカが生んだスーパーサイバー戦士、ケン・リュックマン。
「いつかは、俺も、挑戦できるのだろうか」リウはうっとりしながら美しい男の肉体に見惚れた。

146 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 12:52:26.90 ID:l+fyVD02.net
2018年11月21日、中国東部を超巨大規模の停電が襲った。
北京周辺から上海周辺にかけて、地上から電気が消え、人々はパニックに陥った。
これはそんな架空の中国が舞台の物語である。

主人公の名前はケン・リュックマン。
頭をリュックに化けたミミックに食いちぎられたが、逆にミミックの精神を乗っ取り、千切れた頭部にリュックを装着した。

147 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 13:05:50.19 ID:5Zjttdvt.net
「俺には何もない」
殺し屋ジャン・ウーはゴキブリの這い回る部屋で酒に溺れながら呟いた。
「俺には何もないんだ……。ケン・リュックマン、あんたを除いては!」

148 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 13:15:12.82 ID:1fx/DQCD.net
「さて、今後の予定だが」メイファンは言った。「お前にはピヤーと闘って貰う」
「ピヤー? 聞いたことねぇな、何人? インドネシアかどっか?」
「虎だ」
「なんだ、虎か」ハオは安心した。「っていうかお前、何頭飼ってんだよ、虎」
「二頭だけだ。まぁ、一頭死んだので今は一頭だけだな」
「お前が殺したんじゃねぇか」
「小松の攻撃を捌ききった自分だから楽勝とか思っているか?」
「そうだな。おまけにあの時より大分強くなってるし」
「言っておくがピヤーは小松と違い、ただの人喰い虎ではない。武術を体得した人喰い虎だ」
「へ?」
「フェイントも使えば足技も使う。歩方も完璧に会得している。普通に考えれば人間が敵う相手ではない」
「は?」
「しかも殺されるか、お前を喰うまで攻撃をやめない」
「デスマッチ!」
「ピヤーを倒せたら、習のコネを使ってお前を散打界にデビューさせるつもりだ」
「やだ! 最後の難関高すぎ!」
ハオは泣き出した。
「お前に拒否権はないぞ」
「やっぱり帰る! シューフェンとこに帰してくれ!」
「そうか、それなら今、ここにピヤーを連れて来るまでだ」
「いやー!!」
「ならば修行を始めろ」
「なぜ殺し合いをさせるの!? お前には人の優しさ、ないの!?」
「そうだな。どちらが死んでも私は悲しい」
「そんなら……!」
「逆に言えば」メイファンは笑った。「どちらが勝っても私は嬉しいということだ。楽しみだなっ」

149 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 14:11:23.31 ID:b12H6zKA.net
上海の手下から電話がかかって来た。
メイファンは電話に出ると、言った。「何? 引っ越しただと?」
メイファンはハオの書いた手紙をちゃんと出していた。上海の手下にまず送り、シューフェンから返信があれば仮の住所に届くことになっていた。
しかしその手紙が帰って来たというのだ。日本と違い、中国には引っ越し先へ郵便物を転送するサービスはない。
「うーん。ピヤーに喰い殺される前にビーフンからの返信をハオに届けてやりたかったが……」
メイファンはしばらく考え、顔を上げた。
「仕方がない。代わりに私が書こう」

150 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 14:54:51.63 ID:b12H6zKA.net
『ハイ、ハオ。私はビーフンよ。お手紙ありがとう。いつもあなたから元気を貰っています』
「なかなかいい書き出しだな、我ながら」メイファンは得意になった。
『ところで去年の11月20日に一緒に食べに行ったものって何だったっけ? 覚えてる? 覚えてたら教えて? 気になって眠れんのだ』
「これだけははっきりさせとかんとな」メイファンは>>116のことが気になって仕方がなかったのだ。
筆が乗って来たところでララが口を挟んだ。
「ねぇメイ。ハオさん、ニセモノの返信はすぐわかるって言ってたよ」
「何だ起きてたのか、ララ。そんなもの口だけだ。わかるものか」
「どうかなぁ。少なくともあんまり長々と書かないほうがいいとは思うよ?」
「フン」メイファンは水を差され、つまらなくなって筆を投げた。「そんなら姉ちゃんが書いたらいいだろ」
そう言うとメイファンは気の流れの中に潜り、身体の中心にただの黒色となって固まった。
「ええ〜??」ララはいきなり交替させられ、うろたえた。「とりあえず服、服」
衣装箪笥を開けるといつも通りメイファンのチャイナ服しかなかった。
メイファンからララに精神が交替する時、彼女は少し身体が大きくなる。そのためどの服を着てもピチピチだった。
「仕方がないなぁ……頑張るか」
メイファンは身体の中で黙ってしまった。機嫌を損ねたのか、眠ったのか。
「うーん、うーん……」
『ハオ、私…』と書き出したものの、それ以下が思い浮かばず、ララは固まってしまった。
そして夜が明け、8時間悩んだ末、遂に決定した。
「うん、これだけでいいんじゃない?」
「そうだな」メイファンも同意した。「これならバレようがない上、謎めいていて奥深い」
「あとは筆跡でバレないかな?」
「新聞紙とかから切り取って貼ればいいんじゃないか?」
「それじゃ脅迫状だよ」
「ならばビーフンの書いたものを何か手下に探させよう」
「頼んだよ、メイ。じゃあ私、寝るね。疲れた……」
そう言うとララはすぐに眠りに落ちた。崩れ落ちようとする身体にメイファンが戻り、鋭い目を開く。
身体は比較的黒くなり、チャイナ服は誂えサイズになった。
「さぁ、今日もビシビシ行くぞ」

151 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 15:17:24.31 ID:5Zjttdvt.net
そこへ白馬に乗って一人の男がやって来た。
「やぁ、お嬢さん方、私の名前を知ってるかい?」
「もちろんよ、ケン・リュックマン」
「知らない者はいないわ、ケン・リュックマン」
二人は逞しい男の肉体に見惚れ、下半身を濡らした。

152 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 15:36:24.42 ID:gYHLnw/2.net
「はあ、はあ、どうにか脱出出来たぞ」
ハオはメイファンの監視から逃れ玄関の外へ脱走していた。
ハオはメイファンに見つからないように当てもなく歩き続ける。だか違和感に気づく。
「…暗いな。今は夜なのかな?」
辺りには明かりはない。ハオは空を見上げても星ひとつ見えない暗黒が広がっていだけだ。
「…痛っ!」
ハオは何かにぶつかった。ハオは前に手を伸ばすと塀のようなものが確認できる。
(ブロック塀?違うな。コンクリート壁…うーん、なんか鉄っぽい。)

153 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 18:24:10.89 ID:htY/R/Hk.net
「…メイファンのところへ帰りたい。」
ハオはポツリと呟いた。ハオが家を飛び出してから二時間を越えていたが歩いても歩いても闇の世界が広がっているばかりで人っ子一人いない。
「疲れた、足が痛い。」
ハオは立ち止まり、壁にもたれ掛かるように座り込んだ。
「…ウチに帰りたい。メイファンのところに帰りたい。」
何かを忘れている気がするが思い出せない。

(…そういえば何で家を飛び出したんだっけ?)
やはり思い出せない

154 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 20:09:29.47 ID:YNdQJnF+.net
「はぁ、おかしいなあ。」
ハオは溜息を付いた。
「前回外に出たときは普通に通行人が歩いていたし、この家は町の中にあるはずなのに誰もいないし、他の家も見当たらない。うーん」
辺りは相変わらず真っ暗で物音一つ聞こえない。
「夢の中にしては、妙にリアルだしなあ」
先ほど歩いていて壁にぶつかった際の痛みは現実そのものだったことを思い出す。。

155 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 20:31:16.66 ID:RilRsw3e.net
そこへ黒い忍者装束に身を包んだ男が上から降りて来た。
「やぁ、何かお困りかな?」
「あっ、ケン・リュックマン!?」
「そう、私はケン・リュックマン」
それだけ言うとケン・リュックマンは印を結び、ドロンと消えてしまった。

156 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 22:25:12.00 ID:VDmo5jgw.net
「待ってくれ!」
チョンボはケンの後を追いかけた。

157 :創る名無しに見る名無し:2018/12/02(日) 22:58:02.99 ID:8cRNXGya.net
「何だったんだ……」
ハオが茫然としていると、暗闇の中からメイファンの声がした。
「ハオ」
「メイファン!?」ハオは思わず涙混じりに喜びの声を上げた。
「お前の成長ぶりには驚かされる。まさか私に気を悟らせずに外へ出られるまでになっているとはな……」
目を凝らすと、薄明かりを背に立っているメイファンのシルエットがようやく見えて来た。
左手にはどうやら青龍刀を、右手にはスイカのようなものをぶら下げて、颯爽と立っている。
その時、突然に水銀灯の明かりが点いた。
ハオは一瞬目が眩んだが、やがてメイファンの姿をはっきりと見た。
鬼の形相でこちらを睨み、顔は血にまみれ、左手にはやはり青龍刀を、右手には黒い髪をひっ掴み、ララの生首をぶら下げていた。
「ララ!? うわっ! うわぁぁぁ!?」
「お前の監視を怠ったので首をはねた。お前が逃げようとしたせいだ、可哀想に」
「なっ、何で……お前の姉さんだぞ!?」
「私は役に立たない人間は親であろうと姉であろうと殺す。覚えておくんだな」
「女を道具のようにしか考えない男は嫌いなくせにか!? うっ……うひぃぃぁぁぁぁ!!」
「いいから戻れ」メイファンは青龍刀で帰りの方向を示した。「二度と逃げようなどと思うな」

158 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 05:36:31.25 ID:shU07SF9.net
「あれ、メイファンどこなの?」
しかし、メイファンの指し示した方向には何もなく、ハオはメイファンの方へ向く。
「…バカな、間違えたかな」
これにはメイファンも困惑せざるを得なかった。
歩けども歩けども先には夜の闇より暗い漆黒が広がるばかりである。
「ハオ、お前のせいだぞ。」
メイファンは眉間にシワを寄せ、持っていた青竜刀で前を歩いているハオのケツをツンツンとついた。
ケツに痛みを感じたハオは喘ぎ声のような悲鳴をあげ、前にピョンピョンと跳ねた。

159 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 06:09:40.30 ID:Y+vvvELN.net
「何だったんだ……」
ハオが茫然としていると、暗闇の中からメイファンの声がした。

160 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 10:12:53.62 ID:ZBMPgc9R.net
「ここで休むか」

161 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 10:25:48.74 ID:PvPQ++eV.net
「あたしを勝手に殺さないでよ」ララの声がした。

162 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 12:24:13.96 ID:50R7u3fH.net
「いやいや、あんたキョンシーですやん」
そう言ってララの額にお札を貼りつける

163 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 12:26:55.18 ID:TR4HeYxf.net
ビー・ドンファンという若い格闘家が宣言をする。
「俺は中国にはびこるインチキ伝統武術の使い手と片っ端から勝負してやる。そして奴らのインチキを世間の明るみに出してやる。『胡散臭い中国』のイメージを払拭するのだ!」
ドンファンが語り終えると壇上に散打王リウ・パイロンが上がり、二人で肩を組んだ。

164 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 12:32:45.23 ID:wK7ZfVSz.net
「何だったんだ……」
ホイホンが茫然としていると、暗闇の中からミンミンの声がした。

165 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 12:40:02.57 ID:TR4HeYxf.net
リウはマイクを手にすると語り始めた。
「私はビー・ドンファン君を指示する!」
会場から拍手が湧き起こった。
「先日、私と対戦することの決まった日本のある格闘家が言った、『中国の武術は見た目は派手だが軽い、実戦では使えない』と。
彼に罪はない。彼は知らないのだ、今、中国にようやく現代化の波が押し寄せていることを。彼はいつまでも中国は胡散臭く、
四千年の歴史とやらに固執し、強そうなのは見た目だけのハリボテで、インチキや不正がまかり通る国だと思っているのだ。
実際それは否定できない。見ろ、そこら中に妖しげな伝統武術の看板を掲げて、道場に閉じ籠って「我々は最強だ」などと
うそぶいている輩のなんと多いことか? 奴らは決して対外試合をしない。奴らがやることと言えば演武か、内輪での試合
ばかりだ。それでいて「我々はこんなに凄い」とアピールするための動画を撮ってYouTubeに流しまくっている」
会場から笑いが起こった。
リウも一緒になってひとしきり笑うと、話を続けた。
「日本の作り話の中にいまだにニンジャが存在するように、中国でも作り話の中になら妖しげな中国伝統武術があってもいい。
しかし、我々は現実を見よう。気を飛ばして相手を攻撃するような技は存在しない。髪の毛を針のように硬くして武器にする
ことなど不可能だ。酔えば酔うほど強くなるなどとそんなわけはない。無敗神話をもつ武術家の対外試合を少なくとも俺は
見たことがない。ビー・ドンファン君のように俺は奴らに対外試合を申し込みはしないが、俺は現実に、みんなの目の前で
無敗神話を作ってみせる。タイトル戦ではないが、次のジョー・サクラバ戦も勝って、中国の散打は現実に強いのだという
ことを世界に示してみせよう」

166 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 12:43:23.68 ID:TR4HeYxf.net
手が上がり、一人の女性が質問をした。
「中国には裏社会があり、そこにいる武術家達は本当に凄まじいほどに強い、という噂がありますよね?
それに関してどう思われますか?」
「裏社会の殺し屋のことか?」リウは即答した。「そんなものはいない」

167 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 12:55:57.17 ID:TR4HeYxf.net
リウが立食会場に入るとカーテンの影から呼び止める者がいた。
「ようリウ、久しぶりだぁな」
「ジャン・ウーじゃないか。何だってこんな明るい所に?」
「いや、仕事じゃにゃぁよ。たまには旧友に会いに明るい所へ出て来たっていいじゃにゃぁか」
「……相変わらず現代中国人とはかけ離れたナリをしているな」
ジャンは昔のカンフー映画に出て来るような汚いカンフー着を身に纏い、赤いほっぺたに白い髭を生やしていた。
「しかし言うじゃにゃあか、裏の殺し屋なぞ存在しない? カハハ、お前の台詞とは思えん」
「フン」
「前から不思議だったんじゃが、なぜお前は黒色悪夢を庇う?」
「黒色悪夢……」リウは真顔で言った。「なんだそれ」
「お前の師匠のことよ、忘れたか?」
「あぁ……」リウはようやく理解した。「お前らのその通り名で呼び合う癖にはついて行けんな」
「なぜ庇う?」
「ラン・メイファン老師は今でも俺の心の師だよ。だからさ」
「しかしお前、食ったろう」
リウは記憶をたどり、その時のことを再び味わい、ニヤリと笑った。
「そう。未だにあれ以上の美味は味わってないな」

168 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 20:22:30.83 ID:hejnLN2P.net
辺り一面の闇の中、男が追っ手から逃げていた。
「はあ・・・はあ・・・ぜぇぜえ・・・」
タンクトップにトランクスという格好で、いまいちぱっとしない中年男といった感じだ。男の名前は李青豪(リー・チンハオ)。ニートだ。

その後ろから女が追いかけてくる。女は朴刀を振りかざし、呪詛の言葉を吐き男を追いかけていた。女の名前はラン・メイファン、自称17歳。

169 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 20:53:47.80 ID:s2B2U+Qu.net
「誰が自称だ」メイファンは>>168の首をはねた

170 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 22:01:09.53 ID:gY6G6baf.net
「29歳は中年じゃねぇぞぉぉぁぁああ!!!」ハオ及び全国の29歳の皆さんが>>168の首をストンピングした。

171 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 22:15:41.21 ID:1Dc6m/C6.net
メイファンはハオを見失ってしまった。
彼女は憎悪と怒りに満ちた叫び声が辺りに虚しく響き渡る。

172 :創る名無しに見る名無し:2018/12/03(月) 22:40:44.24 ID:50R7u3fH.net
「お困りのようですねぇ。けひゃひゃ」
黒頭巾の老婆がメイファンに話しかけてきた。

173 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 01:08:26.92 ID:qGh0qCiS.net
「やぁ、すまない。待たせたね」
リウが声を掛けた時、シューフェンはまさに蟹焼売を真っ赤な口の中に入れるところだった。
「素敵なパーティーね」慌てて焼売を皿に戻すと、照れながらそう言った。「ところでこれ……何のパーティー……だっけ」
「新しい中国の未来を望む会……かな。グループの名前はまだないんだ」リウはにっこりと笑った。
「主催者は……あなた?」
「イエス!」
「クールね」
「いいだろう?」
リウはおどけながら蟹焼売を10個皿に取ると、シューフェンに言った。
「さぁ、これを早食い競争したら行こう」
「勝てるわけないわ」シューフェンは呆れ顔で笑った。
「僕は10個、君は君が食べたい個数で勝負。これでどうだい?」
「わかった。じゃあ……」シューフェンは皿に12個取った。
「凄いよ!」リウは大笑いした。「しかもでかい!」
「じゃあ競争よ、イー、アール、サン……」
「ちょっちょっちょっと待ってくれ!」
「怖じ気づいたの?」シューフェンは悪戯っぽく笑う。
「オナラが出る前に、先に電話しとくよ」
「オナラじゃなくてゲップてしょ」シューフェンは声を上げて笑った。
「もしもし、ホーク兄かい? 約束の時間に行けそうだ。パーティー抜け出したらそっちへ行くよ。あぁ、もちろん、彼女を連れて」

174 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 01:22:53.24 ID:tKQ90dV4.net
パーティーの壇上に一人の男が上がった。
「やぁ諸君! 私の名前を言ってみろ」
「あっ、ケン・リュックマン!」
「最強の格闘家ケン・リュックマン!」
「でもケン・リュックマンが闘ってるとこって誰か見たことある?」
「や、やべっ」そう言うとケン・リュックマンは逃げ出した。

175 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 05:28:18.50 ID:z9qGqy5+.net
「ここって地下なの?」
ハオは肩を上下させ階段を登っていた。長い長い先の見えない中空階段だ。1歩1歩歩く度に足音が周囲に反響する。
ハオは立ち止まり、汗を拭うと大きく息を吐いた。
「随分上まで来たけど、何処まで続くんだ。」
ハオは手すりに手を置いて吹き抜けの下を覗いていた。しばらくぼんやりしていると階段室の鉄の扉が開く、メイファンだ。
ハオは逃げようとしたがその前に上を向いた彼女と目が合ってしまう。
「ぜぇぜぇ…み〜つけたぁ」
メイファンはニタリと口端を吊り上げ、白い牙を見せる。
その目は血走り狂気に満ちていた。

「ヒェッ」
ハオは小さく悲鳴を上げ、階段を慌てて駆け上がる。

176 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 06:26:38.71 ID:DH9A88qS.net
階段を上りきり扉を開けるとそこは地下水路だった。

177 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 07:40:24.07 ID:wHwwX/Ed.net
メイファン「さあ、逃げろ逃げろっ!凄惨な死が迫ってきているぞ。」

ハオ「ぱああああああっ!」

178 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 08:22:53.98 ID:cO3fZ9LT.net
ハオ「シューフェン! 俺を守ってくれ!
そして俺は必ず君の元へ帰る! だからそれまでどうか他の男と腰の振りあっこなんかしないで待っていてくれ!」

179 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 10:05:26.23 ID:SWb3hAiP.net
ケン・リュックマン「むうっ 出るっ!」
ドピュドピュ
メイファン「あん、相変わらず早いわねえ」

180 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 12:15:43.86 ID:SHHrCk/e.net
リウは高級ドイツ車の後部座席にシューフェンを乗せ、自分は珍しく助手席に座った。
「綺麗に化粧して来てくれたけど、すまない、一度落として貰うよ」
「え?」
すっぴんで中国映画の巨匠ツイ・ホークに会えということだろうか。意図がわからずにいるシューフェンにリウは驚かすように言った。
「香港からジョアンナ・ポンが来てるんだ。彼女が君に最高のメイクをしてくれる」
「ええーっ!?」
メイクアップ・アーティストという裏方の仕事をしていながら、その顔も名前も知らない者はまずいない。
そんな世界トップクラスのジョアンナが自分にメイクをしてくれるというのだ、シューフェンは夢を見ているような気がして来た。

181 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 12:37:16.91 ID:8crooB4c.net
メイファン「結局は、奴と同じと言うことかリー・チンハオっ。お前も私の元から去るのか!?」

メイファン「許さん…許さんぞ。捕まえたら四肢を切り落として達磨にしてやるっ!」

ハオ「びええぇっっ!」

182 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 16:20:43.66 ID:BnPRhFwt.net
チョンボ
「ときどき恐くなるんだよな。目がさめたらここじゃないどこかで、エルオーネがいなくて……」
ホイホン
「レインもいなくて?」
チョンボ
「オレ、どうしちまったんだろうな。こんな気持ち……なんだこれ?ああ、目が覚めてもこの部屋でありますように!このちっこいベッドで目が覚めますように!」
ホイホン
「変わったな、チョンボくん」

183 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 19:56:28.48 ID:SHHrCk/e.net
「ネイホゥ」
シューフェンは広東語でこんにちはと挨拶をした。
「ネイホゥ、ネイホゥ〜」
ネイティブのアクセントでジョアンナは挨拶を返し、ニコニコ笑いながら握手を返して来た。
「ニーハオで通じるよ」リウが横から笑った。
ここは広州郊外にあるスタジオ。その一室でジョアンナ・ポンはシューフェンを待っていた。
眼鏡をかけ、そばかすだらけの顔にひっつめ髪の彼女は、美人とはとても呼べないが、TVや雑誌でしばしば見る顔が目の前にあるのは不思議な感じがした。
彼女は広東語ではなく普通話で喋った。
「ニーハオ、シューフェン。リウから聞かされてた通りのいい女ね。っていうかいい骨格してる。最高だわ、この骨格」
「広州まで来た甲斐があったろう?」リウが言った。
「こんな骨格に出会えるなんて予想外よ。腕がなるなぁ」
さんざん骨格を誉められ、シューフェンは何と答えたらいいやらわからず、ただ笑っていた。
ジョアンナはTVに出る時でもほぼすっぴんのナチュラルメイクで、それがかえって「自分に合うメイクをさすがに知っている」という評判だったが、
目の前の彼女はそれを深く頷かせるほどに魅力的な女性だった。
「さぁ、早速だけどその骨格にお化粧させてちょうだい。殿方はお外で少し待っててね」

184 :創る名無しに見る名無し:2018/12/04(火) 20:12:25.93 ID:SHHrCk/e.net
ほんの10分もかからずにジョアンナは顔を覗かせた。
「完成よ、リウ。中に入ってもいいわ」

リウがメイクルームに入るとそこに雪の妖精が立っていた。
あまりに透き通ったその肌は、あまりに儚く、そこにあってそこに存在していないもののように見えた。
リウはしばらく言葉を失っていたが、ようやく「綺麗だ」とだけ言うことが出来た。
「これ……私なのね」そう呟くシューフェンの目から、なぜか涙がひとつ零れた。
「光栄だわ、泣くほど気に入ってもらえるなんて」ジョアンナが明るい笑顔で言った。
「綺麗だよ、本当に……何ていうか……」リウはいつものように上手い言葉が出て来ずに困っているようだった。
「ファン・ビンビンとどっちが綺麗?」
思わず言ってしまってから気恥ずかしくなり、ぺろりと舌を出しながら「なんてね」と言おうとしたシューフェンよりも先にリウが答えた。
「もちろん君だ」

185 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 01:21:35.25 ID:tkPgfP22.net
…………読んでしまった!

186 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 06:26:05.38 ID:lFnLnb8d.net
殺風景な部屋。その中央にはベッドが置かれ
男が仰向けに横たわり、その横に少女が抱きつくようにすやすや眠っていた。

男の目は虚ろでただ天井を眺めている。
男の手足は折れているようで、添え木ごと包帯が何重にも巻かれていたほか、
体のあらゆる箇所にある血の滲む包帯がなんとも痛々しい。

男の名はリー・チンハオ。通称ハオ。ここから逃げ出す為脱走したのだが失敗し重傷を負ってしまったのだ。

そしてその横にいる美少女はラン・メイファン。ハオをここに閉じ込め、彼にこのような仕打ちをした張本人だ。

187 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 09:32:54.11 ID:7+Y08Eg5.net
社交辞令の口調だった。
ツイ・ホークはシューフェンと握手をしながら「なんと美しい人だ」と言った。
が、その顔には「この程度の美人などいくらでも見慣れている」と書いてあった。

「主役は元々ファン・ピンピンの予定だったけど、ニュースで知っての通り、巨額脱税事件であんなことになってしまってね」
「代役で売り出し中のジョイ・ウェンにお願いしたんだが、これも今回の大停電絡みでへそを曲げ、降りてしまった」
「そこへリウから『いい女優の卵がいる』と聞き、君を待っていたんだよ」
ツイ・ホークの話にシューフェンは頭の中が大混乱してしまった。
なななな何、そのビッグネームばっかり出て来る壮大な話、聞いてない、それでどうして素人の私のところに話が来ちやうの???
ただの女優オーディションみたいなのだと思ってたのに、これじゃ私、既に期待の大新人みたいじゃない。場違いだ、場違いもいいとこだわ、私!
シューフェンは助けを求めるようにリウを振り返った。リウは少し意地悪そうにクックツクと笑っていた。
「演技歴はどれくらい?」
ホークの質問にシューフェンは顔を真っ赤にし、しどろもどろに答えた。
「高校の時、演劇部でした」
暫しの沈黙が部屋に漂った。あまりの居心地の悪さにシューフェンは思わず謝った。
「ごごごめんなさい! 素人です! 失礼します!」
「いや、いいよ」ホークは笑って見せた。「変なこだわりのある経験者よりよっぽどいい」
「とりあえず、ピンと来たかい?」リウがホークに聞いた。
「いや、悪いが今のところ……」ホークは正直に答えた。「しかし天下の散打王が魅了された女性だ、何か持っているんだと期待しているよ」
そう言うとホークは机の上にあった台本を手に取り、シューフェンに渡した。
「テストだ。とりあえずここの蛍光ペンで囲んだところを読んでみてくれ」

188 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 10:53:35.14 ID:5oG7BJEL.net
あらすじを聞かされてシューフェンは少しびっくりした。

舞台は上海。主人公は不治の病に冒された余命半年の女性、ツァイイー。同居人の恋人は冴えないニートだが、彼の優しさを深く愛していた。
やがて彼に病のことを打ち明けずに死んだ彼女は幽霊となるが、冥界の魔王の息子と相愛関係になり、強大な魔力を使えるようになる。
彼女を追って魔界までやって来た彼は魔王の息子と対決する。激しい戦いの末に勝敗は決し、最後に彼女が選んだ人は……

『余命半年……私と同じだ』シューフェンは主人公に共鳴した。

189 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 11:24:18.92 ID:tLDgH5+I.net
…………読んでしまった!

190 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 12:12:36.70 ID:dOw2ZCNF.net
ツイ・ホーク「ちなみに魔界の王子役には台湾のアクション俳優ワン・リー、彼氏役には『格闘神』ケン・リュックマンを予定している」
シューフェン「ケ、ケン・リュックマン!」
リウ「何だって? ケン・リュックマン!?」
二人は逞しい男の胸筋を思い浮かべて恍惚とした」

191 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 16:27:24.04 ID:KWAqM4dC.net
湯ババア「千鳥のノブか、贅沢な名だね。お前の名前は今から千だよ!」

大吾「するとババア、わしの名前は何になるんじゃ」
ノブ「千鳥は芸名じゃあ、そしてお前雇い主にババアはあかん」

192 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 18:03:24.67 ID:HfeVJhOe.net
マクドに入った。だが味が変だった。
「これ、なんの肉使ってんだ?」

193 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 18:30:37.56 ID:2bt+awqK.net
下痢沢 尿男「もしもーし?」

194 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 21:01:07.15 ID:iLPFDTjP.net
ある店のラーメンを食べ、僕は不思議に思った。
「麺は熱々なのにスープはぬるい。これってわざとなのかな??」

195 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 23:18:04.16 ID:EuqaZzzp.net
簡素なベッドにハオが拘束されている。彼は何も身に付けていない。ハオはと脱走に失敗してしまった彼はこれから罰を受けるのだ。
その横でメイファンが豹のような鋭い目で彼を見つめ、手には錘が握られている。
「お前はシューフェン一筋のはずなのに私と体を重ねる形で彼女を裏切った。」
メイファンの口調は冷静だった。メイファンは錘をハオの右足の脛に錘を振り下ろすと鈍い音を立てて潰れ、どす黒く変色した。
「ギャアアッ!足っ!俺の足っ!」
脛を砕かれたハオは断末魔をあげ、もだえ苦しみ拘束具をガチャガチャと鳴らした。
「そして、そのようなことをしておきながら私を捨ててここから逃げようとした。そう。リウ・パイロンのようにな。」
「そ、それはお前のでっち上げだ!俺はし…」
メイファンはハオの反論を遮る錘を左足に振り下ろし粉砕すると彼は再び絶叫し、口から泡を吹きながら気絶した。
「おっとまだ眠るには早いぞ、チンハオ?」
メイファンはつかさず桶でハオの顔に水をかけ
彼を覚醒させた。
「ゴホッゴホッゴホッ…ち、ちく、畜生!」
ハオは水を吸い込んでしまったのか大きく咳き込んだ。
「た、確かに、おおお前を抱く妄想はしたさ。だけど、あくまで妄想だ。それをお前は事実だと捏造しただけじゃねえか、このキチガイ女めっ!」
「捏造だと?それは都合の悪いことをなかったことにしたいお前の願望だ。」
メイファンは険しい表情で左腕を打ち砕いた。ハオは呻き声を上げると嗚咽した。

196 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 23:28:00.81 ID:Rt9Oc31v.net
「…ゆ、許して、もう逃げ出さない、メイファンだけを見るから、やめて、やめてよ。」
ハオは拷問の記憶が蘇ると唯一動く右手で顔を覆い、体をガタガタ震わせながら涙を流した。

197 :創る名無しに見る名無し:2018/12/05(水) 23:38:47.53 ID:NlYRS0+g.net
ミンメイ「なにか言ってもらおうだなんて思ってないわ。話を聞いてくれるだけでいいのよ」
チョンボ「だったら壁にでも話していろよ」

198 :創る名無しに見る名無し:2018/12/06(木) 00:07:44.63 ID:kUL2LuDZ.net
       ....::::::::::  
    彡⌒ミ....:::::::::髪も仏もキャッシュバックもない…
    (/ヨミヽ)、....:::::::
―─(,ノ―ヽノ――

199 :創る名無しに見る名無し:2018/12/06(木) 06:45:21.29 ID:WqSNkj1C.net
二ヶ月後ハオの骨折は完治したが、折れた心は完治しなかった。
メイファンの心はあの日を境に壊れてしまい厳しい訓練を行うこともなくなった。

200 :創る名無しに見る名無し:2018/12/06(木) 09:53:04.75 ID:vq+qDw6R.net
シューフェンは台本読みを終えても、まだぽろぽろと涙をこぼしていた。
「やめてくれよな」リウが涙目で笑いながら言った。「本当に君が半年後に消えてしまうんじゃないかと思ったよ」
「ツァイイーだ!」ツイ・ホークが忙しく涙を拭きながら拍手をした。「僕のイメージ通りなんてものじゃない。君はツァイイーそのものだよ!」
「ピンと来たか?」リウがホークに再び尋ねる。
「いや」ホークはシューフェンに言ったのに「ヒロイン役は君しかいないと思う。引き受けてくれるかい?」
シューフェンはおどおどしながら答えた。
「先に聞いておけばよかったんだけど……」
「ん?」男二人が声を揃える。
「撮影期間ってどのぐらいかかるんですか?」
「実は主演女優がドタキャンする前にほぼ完成してるんだ、この作品。だからあとは君次第さ」
「私次第……」
「君が頑張ってくれれば半年以内、君が鈍ければ1年以上かかるだろうね」ホークはそう言って笑った。
シューフェンも輝くほどに笑い、ぺこりと頭を下げた。
「私、頑張ります。どうぞよろしくお願……あっ!」
「どうした?」
急に顔を歪め、お腹を押さえたシューフェンを心配し、二人は声をかけた。
「ごめんなさい、お昼に蟹焼売食べすぎちゃって……」
シューフェンは激痛の収まらないお腹から手を離し、冗談っぽく笑った。
「ごめん、僕が早食い競争なんかさせたから」リウが恐縮して頭を下げた。

201 :創る名無しに見る名無し:2018/12/06(木) 18:17:09.76 ID:yH+4IPpI.net
「さて名前をどうする?」リウが提案した。
「さすがに本名は問題があるよね」ホークが言う。「漢字まで同じなんだよね?」
「ええ、シン・シューフェン。漢字で書くとたぶん文字化けすると思うけど、辛樹芬なの」

202 :創る名無しに見る名無し:2018/12/06(木) 18:30:13.71 ID:yH+4IPpI.net
「文字化けしなかったわ」シューフェンは嬉しくなった。
台湾の有名な元女優に辛樹芬というまったく同じ名前の人がいるのである。
日本のアイドルにも岡田奈々という有名女優と同じ名前の人がいるように、構わないとも言えたが、ホークは良しとしなかった。
「君のご両親は相当の映画好きか、あるいは逆に相当芸能界に疎いかだね」リウが笑う。
「樹芬という名前はいいと思う。苗字を芸名にしよう」ホークが提案すると、シューフェンはすぐに案を出した。
「李樹芬……ってどう? リー・シューフェン」
「おっ? いいじゃないか」ホークが食いついた。
「さすがのセンスだ」リウが感心した。「中華一ありふれた姓と香り立つように美しい名の結婚か。行けるよ」

203 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 02:59:43.20 ID:4fgFEpTr.net
ラン・メイファンの話をしよう。
少し長くなるかもしれんが、構わんかの。
ワシはあの子のことは自分のことのようによく知っておる。
胸が悪くなるような話

204 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 03:01:06.02 ID:4fgFEpTr.net
ラン・メイファンの話をしよう。
少し長くなるかもしれんが構わんかの。
ワシはあの子のことは自分のことのようによく知っておる。
あまりきもちのよい話ではないかもしれん。
あんたが耳を塞いだらワシは話すのをやめることにしよう。

205 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 03:13:04.84 ID:4fgFEpTr.net
17年前の9月11日、モンゴルに近い小さな田舎町にメイファンは産まれた。
夫妻は4年前に初めて授かった子をお腹の中にいるうちに亡くしていたので、妊娠している間は大変喜んだ。
しかし、産まれた瞬間からメイファンは忌み嫌われた。
彼女は真っ黒で、背中には獣のように毛が生えていた。
それだけならもちろん夫妻も愛を注いで育てたことじゃろうな。
しかしメイファンは、産まれた瞬間に、喋ったのじゃ。
正確には赤子の泣き声の合間に嬉しそうな声が混じっておった。
「パパー ママー ようやく会えたー くらいよー みえないよー」
悪魔か何かが出て来たかのように、その場にいた全員が戦慄したそうじゃ。

206 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 03:34:03.28 ID:4fgFEpTr.net
4年前、母親のお腹の中で消失してしまった子は、実は生きておったんじゃ。
身体は消失したが、彼女は『気』だけの存在となり、胎内で成長し、外の音を聞きながら学習しておった。
初め、彼女は自分が身体を得て、ようやく産まれることが出来たものと勘違いしておった。
身体は自分ではなく妹のもので、自分はそこに寄生するただのバケモノだと気づくのにそう時間はかからんかった。
両親が彼女のことをバケモノ扱いし、霊能力者や退魔師に相談し、TV局に売り物にしようとしたからじゃ。
4歳の姉は幼いながら危険察知能力を働かせ、他の新生児は喋らないということも学習し、すぐに何も言わなくなった。
せっかくTV番組に出したのに喋らなくなってしまったので、両親は腹を立て、妹の身体に傷をつけるような扱いをした。
それから長い間、名前のない姉は、メイファンと名付けられた赤子に対してしか、口をきかなくなった。

207 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 03:43:16.06 ID:4fgFEpTr.net
普段は普通の赤ちゃんなのに、一人にしておくと何やら喋り出すのが薄い壁越しに聞こえ、両親はノイローゼになった。
やがて妹も喋り始める年頃になると、ノイローゼは一層ひどくなった。
姉妹は身体は一つだが、心は別々じゃ。テレパシーで会話できるわけではない。
メイファンは一人で会話をするようになり、一人なのにケタケタ笑ったり、誰かと喧嘩を始めたりする。
それどころか姉妹が同時に喋る時、一つの口を使って喋るので、言葉は宇宙人の言葉のようになり、口はありえない形で動いた。
あまりの気持ち悪さに両親は何度もメイファンを殺そうとした。
恐らく普通の子ならとっくに事故を装って殺されていたじゃろう。
しかしメイファンは、2歳の頃には高い戦闘能力を身につけており、容易に殺すことなどできない子になっておった。

208 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 03:51:07.18 ID:4fgFEpTr.net
『気』だけの存在である姉を通して、メイファンは気というものを理解するようになっておった。
相手の気を読むことで、0.5秒先の相手の動きが見えたそうじゃ。
今は……おそらく0.5秒では済まんじゃろうな。武術家は筋肉の動きから相手の動きの先を読むというが、
メイファンはその更に前から筋肉の動きを読むことが出来る。たぶんじゃが、5秒は先の相手の動きが見えておるんではないかな。……
話を戻そう。おまけに気をモノに込めることによって、例えば大人用の野球のバットを軽々と振り回し、使うことが出来た。

209 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 05:28:39.74 ID:r87o786n.net
ハオはベッドの上に下着姿であぐらをかきテレビを見ている。その顔はメイファンの拷問によりやつれ不精髭も伸び
実年齢より10歳以上も年上に見えた。

210 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 07:25:29.09 ID:vgMnarT9.net
ハオの隣にはメイファンが寝ていた。

211 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 08:09:00.86 ID:biu0cWTm.net
3歳まで育てておきながら両親はメイファンを捨てた。
70km離れた町へ行った時、棒術が強いことでそこそこ有名なある道場の前に置き去りにし、それきり帰って来なかった。
門前に立ち尽くしているメイファンに門下生が声をかけると、姉が口を借りて「お母さんがここで待ってろって」と言おうとしたが、
メイファンが「捨てられた。メシくれ」と同時に喋ったもんだから、ありえない口の動きが「お母んられこっこっ……くわはれろっ!」みたいに喋った。
エイリアンみたいに見えたことじゃろうな。
「妖怪変化め!」と突きつけた門下生の棒を易々奪い取り、メイファンは門下生を地に這いつくばらせ泣かせた。
道場の師範はボケ老人で、「あぁ、そう言えば小さな入門生が来るとか婆さんが言っておったな」とメイファンを受け入れた。
ちなみに婆さんは3年前に他界しておった。

212 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 10:51:55.26 ID:aqGR9649.net
姉はメイファン以外の誰にも知られていない存在ながら、明るくお喋り好きで、人と関わりたがった。
妹のメイファンは反対に人間嫌いで、必要以上のお喋りを鬱陶しく思う子だった。
道場での暮らしは2年以上続き、姉はたくさんのお兄ちゃんが出来たことがとても嬉しかった。
しかし口で明るく「お兄ちゃん、おはよう」と言いながら、獣が威嚇するような目で睨んで来るメイファンを好きになってくれるお兄ちゃんは一人もいなかった。
また、3歳児のくせにやたら強いのもお兄ちゃん達の気に障った。
どこを見ているのかわからない顔をして的確に痛いところを棒で突いて来るメイファンは、1日で道場の最強になってしまい、嫌われていた。
師範は優しかったが、頭のおかしい人だということは子供でもすぐにわかった。

姉が自分で動かせる身体の部位はほぼ口だけだった。
目や指先も動かせることはあったが、メイファンの意志がそこにあるとそちらに優先された。
妹は姉を可哀想に思っていた。
姉が身体を自由に動かせれば、愛嬌のある姉だから、きっと皆に愛されるのに、と歯痒く思っていた。

213 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 10:59:01.53 ID:aqGR9649.net
4歳にしてメイファンは道場の師範代に登り詰めた。
ただ、一人で会話する気持ちの悪い子供を心から師範代と仰ぐ者は誰もいなかった。

11月11日は姉の誕生日となった。
その日、メイファンが姉に名前をプレゼントしたのだ。
4歳児の少ない漢字知識の中から妹は「楽」という字が姉には似合うと選び、2つ並べて「楽楽(ラーラァ)」にした。
それまで自分のこともメイファンと呼んでいた姉は、8歳にして初めて自分の名前を得た。

214 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 12:04:03.88 ID:aqGR9649.net
しかし道場で暮らしたこの頃は、メイファンの人生の中で一番幸せな時期じゃったかもしれん。
彼女の武術の才はこの頃磨かれ、開花した。
嫌われようとも「自分もお前ら嫌いだから」で済ますことが出来た。
あの男がやって来てから、あの子は心に深い傷を負うことになる。

215 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 12:23:44.61 ID:oOeAHsnL.net
ハオはベッドを独占するメイファンを見た。
「俺、ずっとこの子と一緒なのかなあ…」
ハオはたばこに火を付けた。

216 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 18:22:23.05 ID:mZZnEptb.net
「美少女ならまだしも微妙なんだよな。こいつ…」
そう呟いてハオは煙を吐き出しタメ息をついた

217 :創る名無しに見る名無し:2018/12/07(金) 21:48:00.34 ID:AJlAGHwF.net
「…まあ、どちらかと言えば可愛いけどガキっぽ過ぎるんだよなあ。」
ハオは眠るメイファンの頬に優しく触れた。
メイファンはすやすやと眠っている。
「おかしいな、あんなことをされたのにムラムラしてきた。」
ハオは頬を触れた手を布団の下に入れ
掬うようにお椀型の乳房を撫で回す。
「うーん」
違和感に気が付いたメイファンは目を開けた。

218 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 05:42:59.57 ID:k2DwYDvV.net
「おはよう、ハオ。」
寝起きのメイファンは目をこすった。

219 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 05:50:57.29 ID:6V8FZTWj.net
「ヒェッ」
ハオは驚いてベッドから転げ落ちた。

220 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 06:35:28.69 ID:h/OsWAwZ.net
ハオはシャワー室でメイファンの体を洗っている。

221 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 11:22:23.66 ID:W5vXwW8w.net
12年前のことじゃ。道場にやって来たその男はメイファンを引き取りたいと言った。
目の前に大金を積まれ、師範は大喜びでメイファンを譲ったが、その後師範はじめ道場の人間は全員が火事で焼死する。
彼が殺したのかどうかはわからないが、その男こそ後の国家主席、
当時はまだ中国共産党の一党員であった習近平じゃった。
習はメイファンを表向きは養女として引き取ったが、その実籍は入れておらんかった。
もしもの時に自分に火の粉が降り注ぐのを恐れたのじゃろうな。何しろ元よりメイファンを殺し屋として使うつもりだったのじゃから。
念のため言っておくがこの物語はフィクションであり、実在の人物及び団体とは何の関係もないぞい。

222 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 11:35:42.89 ID:W5vXwW8w.net
五歳の時、メイファンは初めて人を殺した。
ターゲットは習の敵対勢力の中心人物じゃった。
習はメイファンを迎え入れると、予め用意していた養護施設に住まわせ、あれこれとプレゼントをした。
円月刀を仕込んだキティちゃんのバッグ、毒針を仕込んだディズニーの雨傘、剣の飛び出るアンパンマンのぬいぐるみ、等々。
まさか五歳の女の子が殺し屋とは誰も思わず、暗殺を重ねても犯人はバレなかった。
念のためメイファンに黒色悪夢(ヘイサー・アーマン)という通り名をつけ、仕事は電話で人を介し依頼した。
繰り返すがこの物語はフィクションであり、実在の……(略)

223 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 12:24:01.06 ID:W5vXwW8w.net
ラーラァはメイファンが人を殺すのをメイファンの中から見ていた。
初めのうちは目を覆っていたが、そのうち慣れた。
それでメイファンが幸せなのならそれが一番よいことだった。
メイファンはといえば、ほぼ何も考えとらんかった。
自分の手にかかって他人が死ぬのはどうでもいいし、それをしておけば自分が裕福に暮らせるのもどうでもよかった。
ただ、彼女の頭の中はどうすればラーラァを外に出してあげられるかということで一杯じゃった。
幼い頭で試行錯誤を重ねるうち、自分をもラーラァ同様『気』だけの存在にすることが出来れば、身体の支配権を交代することが可能なことがわかって来た。
それまで専ら武器を使うことと相手の動きを読むことに使って来た『気』の中に自分を潜らせることに大変な努力をした。
習がもしそれを知れば、無駄なことに力を費やすメイファンを止めさせたことだろう。
しかし仕事はきっちりやりながら、自分のための努力もしっかりやった。
それが身を結び、遂にメイファンはラーラァと身体を交代することが出来るようになる。
初めて自分の意思で身体を動かせるようになったラーラァはどんな気持ちじやったろうな。
それはラーラァにしかわからん。

224 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 12:39:27.71 ID:W5vXwW8w.net
メイファンはラーラァを習に紹介したが、習は役に立つものにしか興味がなかった。
「それが何の役に立つのか?」と聞かれ、ラーラァは何も答えられなかった。
メイファンは身体を姉に交代すると少し大きくなり、服が破れることもあったが、習はラーラァのために服を買ってやることはなかった。
この頃からメイファンは反抗心からか服を着なくなり、室内ではいつでも全裸で過ごすようになった。

メイファンは才能のみで最強の殺し屋となった。
ゆえに身体を鍛えるようなことは何もしとらんかった。
その上メイファンのように『気』を扱うことの出来ないラーラァはただの10歳の子供に過ぎず、習は黒色悪夢に弱点が出来てしまったと嘆いた。
また、二人は同時に起きていることは以前の通りに出来たものの、同時に寝ることが出来なくなった。
『気』を収める部屋のようなものがまだ小さかったらしく、メイファンが意識を失ってそこに入って来ると、寝ていたラーラァがびっくりして必ず起きてしまった。
メイファンが寝ている時にラーラァが一緒に寝ようとしても同じだった。
今では一緒に寝られるようになっておるが、この頃からメイファンの身体は約6年間一度も眠らず、ずーっと起きている子供として不気味がられた。
寝る子は育つと言うが、メイファンが年齢よりも幼く見えるのはこの頃のせいかもしれん。

225 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 12:48:03.43 ID:W5vXwW8w.net
メイファンが7歳のある日、習のところへ一人の男がやって来た。
男は立派な体格にグレーのスーツ姿の紳士で、習の支持者であり協力者の共産党党員じゃった。
男の名前はリウ・ポホェイシェン。
習は彼にだけはメイファンのことを話しておった。
その日リウが習を訪ねて来たのは、彼の評判に傷をつけてくれている不良息子、パイロンのことについての相談だった。

226 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 16:39:39.85 ID:b3yJKqKL.net
「もう上海は駄目だ。広州に移り住もう」
恋人のシューフェンを抱きながら、ハオは言った。
「広州へ行ってどうするの? 仕事は? あっちに知り合いでもいるの?」
「知っての通り、俺の生まれはド田舎の村だよ。他のどの町へ行ったって知り合いも親戚もいない」
「じゃあ……」
「散打をやる。俺が強いのは知ってるだろう? チャンピオンになってお前に綺麗な服を着せてやる」
「何甘いこと言い出してんの!?」
「これはチャンスだと思うんだよ。神様が俺に散打をやれと告げているんだ」
そう言いながらハオはシューフェンに挿入した。
「バっ……! バカにも程がある……っ! ハオ……! ハオ! ハオっ!」

227 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 16:41:01.22 ID:xQVGE+HE.net
ハオ「そうだシューフェン、お前もこれを機会に女優デビューしろよ」
シューフェン「な、何を言い出すの!?」
ハオ「演劇やってたって言ってたじゃないか」
ハオはそう言いながら、入り口あたりを擦っていたのを突然奥まで突いた。
シューフェンは悲痛な叫びを上げ、天国へ逝きそうになったが何とか戻って来ると、答えた。
「高校生の頃の話よ」
「いいじゃないか。お前、綺麗だし、なれるよ、女優。やってみろよ」
「そんなにあたし、綺麗かな」
「あぁ、綺麗だ」
シューフェンは暫く下半身の快感と照れ臭さの両方と闘っていたが、やがて聞いた。
「ファン・ビンビンより綺麗?」

228 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 17:09:12.72 ID:Alv+gJtk.net
リウ・パイロンは父親の言うような不良息子というよりは、むしろ真面目で運動熱心な大学生だった。
共産党の一党支配を批判し、中国民主化を声高に謳うので、父親にとっては身内のガンであった。
遊び好きで仲間内の人気も高く、散打のジムに通い、その強さは相当なものでアマチュアながらTVで取り上げられるほどだった。
型と演武にばかりこだわる中国伝統武術を否定しており、その伝統武術の大家でもある父にとっては、息子でありながら目の上のたんこぶであった。
自信家で自己主張の強い息子の鼻柱をなんとかへし折り、自分の敷くレールの上を進ませる方法は何かないものだろうかと日頃考えていた。

ある月の綺麗な夜、リウ氏一家は習近平の屋敷に招かれた。
習氏への感謝と服従を誓う意思を家族ぐるみで示すための食事会、というのは表向きだった。
パイロンは欠席を望んだが、家族のためと懇願され、そう言われては断る理由もなく、しぶしぶ同席した。

その席の余興で赤い中国服を着た7歳の女の子が演武を披露した。
その動きは適当で、いい加減で、マンガじみており、ふざけているとしかいえなかった。
父親はパイロンに言った。「あの子はラン・メイファン。7歳にして棒術の達人なんだ。間違いなくお前より強いぞ」
冗談だと思ったパイロンは一笑に伏したが、習がこんなことを言い出した、
「パイロン君は散打をやるそうだが、メイファンとどちらが強いかな?」
それを受けて父親が言った。
「闘わせてみましょう。おいパイロン、お前が負けたらあの子の弟子になるというのはどうだ?」

229 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 19:31:07.67 ID:Alv+gJtk.net
散打とやらよりメイファンの伝統武術のほうが強い、大学生と7歳の女の子でもその差は歴然だ、そんなことを言われ、パイロンのこめかみに血管が浮きはじめた。
フーとひとつ大きく溜め息を吐くと、彼は笑い、茶番に仕方なく付き合うことを決めた。
「散打は太極拳をベースにしています。だから僕は決して伝統武術を馬鹿にしているわけではない」
そう前置きした上で、しかし現代における中国最強の格闘技は散打である。それを今から御覧に入れて差し上げる、と宣言し立ち上がった。
「いいか? お前が負けたらその子の弟子になるんだぞ?」
父親の言葉に可笑しそうに頷きながら、パイロンはメイファンと向かい合った。

「僕はリウ・パイロン。劉白龍だ。君の名前……何だったっけ」
「ラン・メイファン」
「可愛い名前だね」
パイロンは必殺の誉め言葉とスマイルを投げたが7歳の女の子は無表情を崩さなかった。
「どんな漢字?」
「知らん」
「知らないのかよ!」
パイロンは大笑いしたが、メイファンにその笑いは心地よく感じられた。
馬鹿にして笑っているのではなく、自分の返事にウケて心から面白がってくれていることが気の流れでわかった。
自分が初めて他人を面白がらせ、笑わせたらしいことが嬉しかった。

230 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 19:42:03.04 ID:Alv+gJtk.net
パイロンにも棒が渡されたが、彼は不要と言った。
「散打は棒を使わない。僕は散打を皆に見せたいんだ」
頭の中では試合の流れが出来上がっていた。メイファンの棒を足を使ったスゥエーや捌きでかわし、懐に一気に詰めて頭を撫で撫でしてやる、そして……
「僕が負けたら僕は君の弟子になる」
パイロンは思いついて言った。
「でもこれじゃ不公平だよな? 僕が勝ったら君は何をしてくれるんだい?」
「お前のカノジョになってやってもいいぞ」
口を結んだ怖い顔でそう即答され、パイロンは笑いながら答えた。
「それは嬉しいな。お願いするよ。ただし、13年後に、ね」
そして言うまでもなくメイファンはカノジョにはならず、パイロンが彼女の弟子になったのじゃ。

231 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 19:55:04.80 ID:Alv+gJtk.net
パイロンはメイファンの棒を一撃もかわせず、すべてまともに食らった。
自身の攻撃は一発もかすらなかったどころか、攻撃を出させてすら貰えなかった。
どれだけプライドを傷つけられ、どれだけ自信をズタズタにされたことじゃろうな、それは奴にしかわからんことじゃ。
父親はそれだけが目的だったので、笑顔の消え去った息子をしたり顔で優しくハグし、連れて帰ろうとした。
だが、メイファンが「弟子になると言ったではないか。ここで暮らさせる」と言い出した。
習がメイファンを抑えたが、今度はパイロンが「ここで暮らし、メイファンを老師(中国語で年齢関係なく「先生」の意味)とし、教えを乞う」と頑なになった。
ここから7歳の老師と大学生の弟子、二人の奇妙な師弟関係が始まったのじゃ。

232 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 20:01:29.89 ID:3SknyXyB.net
ハオ「そうだシューフェン、お前もこれを機会に女優デビューしろよ」
シューフェン「な、何を言い出すの!?」
ハオ「演劇やってたって言ってたじゃないか」
ハオはそう言いながら、入り口あたりを擦っていたのを突然奥まで突いた。
シューフェンは悲痛な叫びを上げ、天国へ逝きそうになったが何とか戻って来ると、答えた。
「高校生の頃の話よ」
「いいじゃないか。お前、綺麗だし、なれるよ、女優。やってみろよ」
「そんなにあたし、綺麗かな」
「あぁ、綺麗だ」
シューフェンは暫く下半身の快感と照れ臭さの両方と闘っていたが、やがて聞いた。
「ファン・ビンビンより綺麗?」

233 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 20:19:36.98 ID:Alv+gJtk.net
パイロンはメイファンにとって初めて気の許せる他人じゃった。自分を色眼鏡で見ない人間は彼が初めてだと言えた。
パイロン自身、異能の持ち主と言えるほどの天才じやったから、天才同士わかり合えるものがあったのかもしれんな。
パイロンはメイファンを、稽古の時は「老師」と呼び、遊ぶ時などは「メイ」と呼んだ。
メイファンは迷うことなくどんな時でもパイロンを「お兄ちゃん」と呼んだ。
メイファンは笑うことが多くなったなどということはなく相変わらずの無表情じゃったが、パイロンのことが大好きなのはそれでもバレバレじゃった。
ただ、パイロンが何を考え、メイファンに対してどんな思いを抱いておったのかは……

メイファンの愛情表現はドSじゃった。
パイロンを青アザが出来るほどに棒で突きまくったり、プロの殺し屋と対戦させ痛めつけさせたり、
ペットの人喰い虎と闘わせたり、それ用には細すぎるロープを足に巻いて600m近い高さのビルの117階から飛び降りさせたり、……した。
本当はもっとあるんじゃが、むごすぎてワシにはこれ以上言えん。

それでも稽古が終わるとパイロンは風呂でメイファンを洗ってやったり、すごろくを作って一緒に遊んでやったり、ゼリーを作って一緒に食べてやったりしておった。
ラーラァはそんな二人を黙って身体の中から眺めながら、どんな風に思っていたんじゃろな。

234 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 20:35:45.57 ID:Alv+gJtk.net
パイロンはメイファンのお気に入りのオモチャじゃった。
彼が棒で突かれまくって痛そうな顔をするのや虎に食われそうになって必死の形相になるのを見て面白がった。
しかしそれは単に彼を虐めているのではなく、実際パイロンはみるみる強くなって行った。

ラーラァがパイロンの傷の手当てをしたいと言い出した時、メイファンは複雑な気持ちじゃった。
何でも分かち合って来た姉に対し、初めて物を取られたくないような気持ちになった。
反対に、パイロンにラーラァを紹介したいという気持ちもずっと心にあった。
その夜、メイファンは身体を交換し、ラーラァはパイロンの部屋のドアをノックした。

235 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 20:38:28.34 ID:DcOutyTy.net
場面は変わり現在。
モニタールームで数人の男たちがモニターを眺めている。その1人である習はつまらなそうな顔をしていた。
「なんだかなぁ」
習は深い溜息を付くと、部下と思われる男の一人にあとのことを任せモニタールームを後にした。
モニターには風呂場でいかがわしいことをしているハオとメイファンが映っていた。

236 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 20:49:02.41 ID:Alv+gJtk.net
部屋に入って来た初めて見るはずの白い肌の少女を見て、パイロンは「なんだ、お前か」というような顔で微笑んだ。
その時パイロンは既に『気』の使い方を学び、会得していたから、あるいはラーラァの中に隠れておるメイファンの『気』に気づいておったのかもしれんな。
しかしそれなら奴にとっては最高のチャンス。メイファンはとんでもない隙をパイロンの前に晒していたことになるはずじゃ。
自分を虐げ、恨み重なるメイファンの身体にボディーブローを入れることも容易かったはずじゃ。
しかし奴はラーラァを「ララ」という愛称で呼び、とても優しく誠実な話し相手になった。
イケメンではないがとても男らしいパイロンにラーラァはうっとりとなっていた。
その姉の姿を身体の中からメイファンは、パイロンの瞳の中に見ていた。

237 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 21:01:28.56 ID:Alv+gJtk.net
パイロンは稽古が終わった後、毎晩施設内の道場に一人で入り、自主的にトレーニングをしておった。
それを気で感じ取り、メイファンは毎晩自分の部屋で、感心すると同時に自分のことが恥ずかしくなるのだった。
大した努力などせずに、ほとんど才能だけで強くなった自分はパイロンに負けているような気がした。
それでメイファンも毎晩イメージトレーニングをするようになり、それはあの子のような『気』の使い手にとっては絶大な効果があった。
メイファンもまたパイロンと出会った時よりも更に強くなり、二人は限界など存在せぬかのように高め合って行った。
そしてその日がやって来るーー

238 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 21:12:51.69 ID:Alv+gJtk.net
ある日、パイロンは徒手空拳でメイファンと勝負がしたいと申し出た。
メイファンが「徒手空拳」の意味がわからなかったので、「武器を使わず、素手で」と言い直した。
メイファンは断った。
リーチの差やパワーの差など『気』でカバー出来る自信があったが、何よりメイファンは素手で闘ったことがなかった。
自分が負けるからではなく、一発でもかすらせたりしたら師匠の面目が丸潰れになるじゃないかと断った。

239 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 21:23:52.56 ID:Alv+gJtk.net
するとパイロンが挑発した。
「メイは武器がないと弱いんだな。武器なしだとやっぱり俺のほうが強いということか。なるほど、わかった。泣かせたら可哀想だからやめておいてやるよ」
メイファンは挑発に簡単に乗った。

「俺が勝ったらここを出て行く。いいな?」
そのパイロンの申し出にメイファンは首をひねった。
メイファンはパイロンを監禁しているわけではなく、自由にさせていた。
大学に行くことも出来たし、家に帰ることだって出来たのに、彼は自発的にここにいた。
出て行ってもいいが、ちゃんと戻って来るんだぞ? そう思いながらメイファンは承諾した。
「メイが勝ったら何でも望みを聞くよ。何がいい?」
メイファンはしどろもどろになりながら即答した。
「私をお前のお嫁さんにしろ」

240 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 23:48:40.98 ID:fVFw74Gp.net
ある男性が不良にからまれていた。
「オレ様はよ、すごいんだぜ」
そこへたまたま母親と、男の子の親子連れが通りかかった。
「ボク様〜!、ボク様〜!ボク様はよ、すごいんだじぇ。ボク様〜!」
男の子は言った。
不良がその男の子をちらっと見た。
「こら、真似しちゃいけません!」
いやいや、真似になってないと思うぞ。
「ボク様〜!、ボク様〜!」
いやいや、なんかすごいなこの男の子。
すると、その隙を見て、からまれていた男性がダッシュして逃げていった。
「あ!おい、ちょっと、まて」
不意をつかれた不良は、追いかけることができなかった。
しばらくしてから怖い顔をして男の子を振り返った。、
「ガキぜ。どうしてくれるんぜ」
その不良は言った。
「ガキじゃない、ボク様〜!、ボク様〜!」
「こら、真似しちゃいけません!」
この状況で2回言うとまずいと思うんだ。

241 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 23:49:34.57 ID:zBegBVGk.net
部屋に入って来た初めて見るはずの白い肌の少女を見て、パイロンは「なんだ、お前か」というような顔で微笑んだ。
その時パイロンは既に『気』の使い方を学び、会得していたから、あるいはラーラァの中に隠れておるメイファンの『気』に気づいておったのかもしれんな。
しかしそれなら奴にとっては最高のチャンス。メイファンはとんでもない隙をパイロンの前に晒していたことになるはずじゃ。
自分を虐げ、恨み重なるメイファンの身体にボディーブローを入れることも容易かったはずじゃ。
しかし奴はラーラァを「ララ」という愛称で呼び、とても優しく誠実な話し相手になった。
イケメンではないがとても男らしいパイロンにラーラァはうっとりとなっていた。
その姉の姿を身体の中からメイファンは、パイロンの瞳の中に見ていた。

242 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 23:50:51.13 ID:zBegBVGk.net
散打とやらよりメイファンの伝統武術のほうが強い、大学生と7歳の女の子でもその差は歴然だ、そんなことを言われ、パイロンのこめかみに血管が浮きはじめた。
フーとひとつ大きく溜め息を吐くと、彼は笑い、茶番に仕方なく付き合うことを決めた。
「散打は太極拳をベースにしています。だから僕は決して伝統武術を馬鹿にしているわけではない」
そう前置きした上で、しかし現代における中国最強の格闘技は散打である。それを今から御覧に入れて差し上げる、と宣言し立ち上がった。
「いいか? お前が負けたらその子の弟子になるんだぞ?」
父親の言葉に可笑しそうに頷きながら、パイロンはメイファンと向かい合った。

「僕はリウ・パイロン。劉白龍だ。君の名前……何だったっけ」
「ラン・メイファン」
「可愛い名前だね」
パイロンは必殺の誉め言葉とスマイルを投げたが7歳の女の子は無表情を崩さなかった。
「どんな漢字?」
「知らん」
「知らないのかよ!」
パイロンは大笑いしたが、メイファンにその笑いは心地よく感じられた。
馬鹿にして笑っているのではなく、自分の返事にウケて心から面白がってくれていることが気の流れでわかった。
自分が初めて他人を面白がらせ、笑わせたらしいことが嬉しかった。

243 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 03:08:05.76 ID:FxOUxMgg.net
そして安倍ゲリゾーと捏造マスゴミ櫻井うんこ婆は死んだとさめでたしめでたし

244 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 03:42:00.91 ID:V+PF/+1d.net
散打とやらよりメイファンの伝統武術のほうが強い、大学生と7歳の女の子でもその差は歴然だ、そんなことを言われ、パイロンのこめかみに血管が浮きはじめた。
フーとひとつ大きく溜め息を吐くと、彼は笑い、茶番に仕方なく付き合うことを決めた。
「散打は太極拳をベースにしています。だから僕は決して伝統武術を馬鹿にしているわけではない」
そう前置きした上で、しかし現代における中国最強の格闘技は散打である。それを今から御覧に入れて差し上げる、と宣言し立ち上がった。
「いいか? お前が負けたらその子の弟子になるんだぞ?」
父親の言葉に可笑しそうに頷きながら、パイロンはメイファンと向かい合った。

「僕はリウ・パイロン。劉白龍だ。君の名前……何だったっけ」
「ラン・メイファン」
「可愛い名前だね」
パイロンは必殺の誉め言葉とスマイルを投げたが7歳の女の子は無表情を崩さなかった。
「どんな漢字?」
「知らん」
「知らないのかよ!」
パイロンは大笑いしたが、メイファンにその笑いは心地よく感じられた。
馬鹿にして笑っているのではなく、自分の返事にウケて心から面白がってくれていることが気の流れでわかった。
自分が初めて他人を面白がらせ、笑わせたらしいことが嬉しかった。

245 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 05:23:45.15 ID:+9N7yl0T.net
仕事で2日間留守にし、帰ってみるとリウ・パイロンが死んでた。
ケージの隅っこで眠るような格好で、死んでた。
そうか……寒かったんだな。昨夜は真冬のように冷えたから……。
ぼちぼちエアコンをつけっぱなしにしておいてやらねば、と思いながら、暖かい日が続くので油断してた。
布団を入れてやってもすぐにバラバラにしてしまうお前も悪いんだぞ、そう思いながらリウ・パイロンを抱き上げた。まだ少し温かかった。
手の中でゆっくり暖めてやる。愛してなかったはずのパイロンなのに、死なれたら愛しさが思い出とともにこみ上げてくる。
エアコンをつけて、布団に入れてやる。もう遅い。リウ・パイロンの命は帰ってこない。

246 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 06:25:04.49 ID:a624l89F.net
「練習ちゃんとやってる?」シューフェンは、毎日のようにやって来るリウに言った。
「いつもここまでランニングで来てるよ、嘘だけど」リウは涼しい顔で笑う。
「日本人との対戦も近いんでしょう?」
「あぁ、強敵だし、僕のほうがルール上不利だから、頑張ってトレーニングしてるよ。その後でここに来てる」
「ここ」と口では簡単に言うが、今日は屋内、今日は外、と忙しく移動する撮影先へリウは追いかけるようにやって来るのだった。
「ところでシューフェン、どこか痛いのを我慢してるだろう?」
「え?」シューフェンはギクリとした。
「僕は格闘家だからね、筋肉の動きとかですぐにわかる。痛くないフリをしててもね」
「あ……」
「まったく……。今度は何を食べすぎたんだい?」
「んっ??」
「カメラの中で体型も変わってしまう。気をつけろよ。君はもうプロの女優なんだ」
シューフェンは笑いながら頷き、ジャージャー麺が美味しすぎて……と舌を出してみせた。
「ところでリウ、見てほしいシーンがあるの。来て?」
シューフェンはモニターの前へ連れて行き、撮影済みの一場面をリウに見せた。
シューフェン演ずる冥界の姫君ツァイイーが衆前に姿を現し、その優しく穏やかな美しさで魅力するシーンだ。
「これは素晴らしいね。いい映画になりそうだ」
心から大喜びでモニターに見入っているリウの横で、シューフェンが上を向いてウフッと笑った。
「得意そうだね?」
「まーね」
「得意になって当然だ、得意になっていいよ」
そう言いながらモニターの中のシューフェンに魅了されるリウにシューフェンは言いたくてたまらなかった。
『この時、お腹をナイフで刺されてぐりぐりされてるぐらい痛かったのよ』と。

247 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 06:36:51.06 ID:Z4/j34e5.net
リウは基の流れからシューフェンが長くないことに薄々気付きはじめていた

248 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 08:12:25.71 ID:kwQmK8Su.net
「私をお前のお嫁さんにしろ」
そのメイファンの顔を真っ赤にしての申し出に、リウは冷めた笑顔で答えた。
「いいよ」
徒手空拳での勝負を嫌がっていたメイファンの顔がぱぁっと明るくなり、モチベーションが最大に上がった。
しかしワシの知る限り、リウ・パイロンという男は相手の不利を嫌い、いつでも相手の得意な土俵で闘い、そして勝つ男じゃ。
後にも先にも奴が相手の得意を封じて闘ったのはこれが初めてじゃった。

初めて会った時と同じように、明るい満月の夜じゃった。
蝋燭を灯し、窓から月明かり差す道場に二人は向かい合って立った。
メイファンはいつものように全裸、パイロンは上半身裸に赤いボクサーパンツを穿いておった。

我流のめちゃくちゃな演武を見せた初めての時と違い、メイファンは両手を身体の前でユラユラと揺らす太極拳の構えをとった。
それに対し、パイロンはメイファンが初めて見る構えをとった。両拳を顔の前に上げ、水牛が威嚇するように顎を引いた散打スタイルだ。
「何だ、その構え?」メイファンは口を尖らせて言った。「なぜ教えたようにやらん?」

249 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 08:32:17.08 ID:kwQmK8Su.net
メイファンは8歳になっておった。
しかし二人の身長差は相当なもので、まるで……いや事実、大人と子供の闘いじゃった。
二人は足を使い、互いに牽制し合い、攻撃の時を待った。

メイファンはいつもと違って武器を持たなかったが、負ける気はまったくしなかった。
気の流れで1秒近くも前からパイロンの動きが見えていたし、何よりパイロンのことはすべて知っている自信があった。

パイロンがローキックを放って来る未来が見えた。メイファンはその足のさらに下を潜り、もう一本の足を狙うと見せかけて低空から一瞬でジャンプした。
自分の顎を砕こうとするメイファンが未来に見えていたのか、パイロンはそこへ向けてカウンターの拳を既に用意していた。
「しまった」と思う暇もなかった。メイファンにはその拳が飛んで来るのを予測する力はあったが、予想外のスピードに対処できる能力がなかった。

パイロンの拳がメイファンの胸にクリーンヒットした。
並みの8歳なら瞬時にアバラが砕け、血反吐を吐いて毛虫のように床に転がっていただろう。
しかし気の鎧をまとっていたメイファンはくるりと回転すると床に着地した。
しかしパイロンは既にそこへ次の攻撃を仕掛けていた。そのスピードはメイファンの知らないものであった。
「お兄ちゃん、本気を隠していたな!?」
そんな文句を言う間もなく、パイロンは低空からアッパーを放った。ガードしたメイファンの身体が浮き上がった。

250 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 08:59:09.07 ID:kwQmK8Su.net
パイロンは何も卑劣なことなどしていない。
メイファンを子供ではなく一人の武術家として尊敬した上で、徒手空拳での闘いを望んだ。
メイファンが徒手空拳においても『気』を使うことでバケモノのように強く闘えることをわかっていた。
しかし、この時のパイロンは相手の弱点に徹底的につけこんだ。
メイファンこそが王者であり、自分は挑戦者だという意識に基づいて、こうしなければ勝てないという図式を頭に置き、それに従ったのじゃろう。
浮き上がったメイファンに向かって突進すると、床にねじ伏せ、その身体の上に乗っかってパンチの雨を降らせた。
これは散打では反則じゃ。ダウンした相手への攻撃は禁止されておる。
しかしこれは散打の試合ではなかったし、何よりパイロンにはもう散打がどうのこうの関係ないように見えた。
ただ勝利だけを渇望し、王者を負かすことによって己の糧とすること、それしか見えていないようじゃった。

自分を殴りながら歓喜の歪んだ笑いを浮かべるパイロンの姿をメイファンは見た。
激しいスピードと重たいパンチに『気』の力も加わり、『気』の鎧の上からでもダメージは蓄積し、加速した。
やがて前で組んでいたメイファンの手がだらりと床につき、メイファンは降参した。
顔は青く膨れ上がり、あちりこちらから血が滲んでいた。
勝利してもなおパイロンの興奮は収まらず、高潮していた。
奴は慌ただしくボクサーパンツを脱ぐと、目の前の8歳の少女をレイプした。

251 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 09:16:47.51 ID:kwQmK8Su.net
丸太のような肉棒で突き刺され、メイファンは身体と心の痛みに耐え切れず、獣が苦しむように叫び続けた。
パイロンは情け容赦なく8歳少女を突きまくりながら、歯を剥いて笑った。
「私をお兄ちゃんのお嫁さんにしろ」
そんな自分の言葉が頭の中でループし、消えて行った。
あまりの痛みから逃れるための精神機能が働き、メイファンは失神した。
すると寝ていたラーラァがびっくりして呼び起こされ、目の前に見たこともないようなパイロンの笑顔を見た。
ラーラァは殺される子犬が上げるような悲痛な叫び声を上げた。
精神の弱いラーラァはすぐに失神し、すくにまたメイファンが呼び出される。
そしてまた失神するとラーラァが……逃げ場もなくそれが繰り返された。

行為が済むとパイロンはボクサーパンツを拾い、無言で背を向け道場を出て行った。
既にまとめてあったらしい荷物を部屋から取り、施設の建物から出て行くパイロンの足音を、メイファンは茫然と聞いていた。

252 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 14:22:34.84 ID:jBiAcEcx.net
散打とやらよりメイファンの伝統武術のほうが強い、大学生と7歳の女の子でもその差は歴然だ、そんなことを言われ、パイロンのこめかみに血管が浮きはじめた。
フーとひとつ大きく溜め息を吐くと、彼は笑い、茶番に仕方なく付き合うことを決めた。
「散打は太極拳をベースにしています。だから僕は決して伝統武術を馬鹿にしているわけではない」
そう前置きした上で、しかし現代における中国最強の格闘技は散打である。それを今から御覧に入れて差し上げる、と宣言し立ち上がった。
「いいか? お前が負けたらその子の弟子になるんだぞ?」
父親の言葉に可笑しそうに頷きながら、パイロンはメイファンと向かい合った。

「僕はリウ・パイロン。劉白龍だ。君の名前……何だったっけ」
「ラン・メイファン」
「可愛い名前だね」
パイロンは必殺の誉め言葉とスマイルを投げたが7歳の女の子は無表情を崩さなかった。
「どんな漢字?」
「知らん」
「知らないのかよ!」
パイロンは大笑いしたが、メイファンにその笑いは心地よく感じられた。
馬鹿にして笑っているのではなく、自分の返事にウケて心から面白がってくれていることが気の流れでわかった。
自分が初めて他人を面白がらせ、笑わせたらしいことが嬉しかった。

253 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 14:23:34.53 ID:E6EEgKbs.net
0245 創る名無しに見る名無し 2018/12/09 05:23:45
仕事で2日間留守にし、帰ってみるとリウ・パイロンが死んでた。
ケージの隅っこで眠るような格好で、死んでた。
そうか……寒かったんだな。昨夜は真冬のように冷えたから……。
ぼちぼちエアコンをつけっぱなしにしておいてやらねば、と思いながら、暖かい日が続くので油断してた。
布団を入れてやってもすぐにバラバラにしてしまうお前も悪いんだぞ、そう思いながらリウ・パイロンを抱き上げた。まだ少し温かかった。
手の中でゆっくり暖めてやる。愛してなかったはずのパイロンなのに、死なれたら愛しさが思い出とともにこみ上げてくる。
エアコンをつけて、布団に入れてやる。もう遅い。リウ・パイロンの命は帰ってこない。

254 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 14:24:22.10 ID:SIEWz1gB.net
17年前の9月11日、モンゴルに近い小さな田舎町にメイファンは産まれた。
夫妻は4年前に初めて授かった子をお腹の中にいるうちに亡くしていたので、妊娠している間は大変喜んだ。
しかし、産まれた瞬間からメイファンは忌み嫌われた。
彼女は真っ黒で、背中には獣のように毛が生えていた。
それだけならもちろん夫妻も愛を注いで育てたことじゃろうな。
しかしメイファンは、産まれた瞬間に、喋ったのじゃ。
正確には赤子の泣き声の合間に嬉しそうな声が混じっておった。
「パパー ママー ようやく会えたー くらいよー みえないよー」
悪魔か何かが出て来たかのように、その場にいた全員が戦慄したそうじゃ。

255 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 15:33:36.20 ID:Jry/qvsx.net
習近平がメイファンを呼びつけて言った。
「お前、最近ハオ君の特訓をサボってるそうだな。困るよ、ハオ君にはアレを捌けるようになって貰わないと」

256 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 18:47:45.89 ID:fpDwdgV5.net
高層ビルの106階にあるレストランで、夜景を見ながらリウはシューフェンと食事を楽しんでいた。
「ここのスフレが絶品なんだ」リウはウインクをしながら笑った。「とろけるよ?」
「リウ……いつもありがとう」シューフェンは微笑み返した。「あなたのおかげで私……」
シューフェンが黙ってしまったので、リウはゆっくりと優しく聞いた。「何だい?」
「……幸せよ」
「なぜ泣く?」
「……」
「……?」
「……こんなに親切にされたの初めてだから」
「親切だって?」
シューフェンはわかっていながらすっとぼけた。リウの顔から笑いが消え、恐ろしい顔になり、言った。
「わかっていると思うけど、僕は君を愛してしまっている」
シューフェンは目を伏せ、時々頷きながら、黙ってリウ・パイロンが愛の告白をするのを聞いた。聞きながら、その頭にはどうしてもハオのアホ面がこびりついていた。
「嫌な言い方だけど、僕は美人などいくらでも見て来たし、付き合ったこともある。でも君は違うんだ」
リウの熱弁は続く。
「君といるとほっとするんだ。心から楽しいんだ。そして、初めてなんだ、自分のためではなく、誰かのために頑張りたいと思えるのは」
「私も……リウと一緒にいると楽しいわ」
シューフェンは本心からそう言いながら、しかしもっと何も自分を飾らず偽らずに、一緒にバカなことを楽しめる人がいたことを思い出していた。
「本当? じゃあ……」リウの指がシューフェンの指先に触れた。「僕と特別な関係になってくれるかい?」
シューフェンはリウの目をまっすぐ見ると、頷いた。
リウはシューフェンの手を握り、暫く照れたように笑っていたが、やがて言った。
「もうすぐ映画の製作発表会があり、君は有名人になる。そうなったらこんなことはもう易々とは出来ないな」
リウの手を握る力が少し強くなった。
「このビルの下の階にホテルがあるんだ」

257 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 19:32:46.91 ID:GBhmvShX.net
この後めちゃくちゃ

258 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 20:38:07.61 ID:qWnoX9Ph.net
スフレ食った。

259 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 21:24:44.75 ID:COApToP5.net
メイファンはララと仲が良いようでよく喧嘩した。
ハオや習近平などの周りの人々ははララがおしとやかで慈愛に満ちた女性で、妹思いのお姉さんと思っているがそれは彼女の一面にすぎず
、その本性は自由奔放でつかみどころがない。
慈悲深い淑女かと思えば残虐な化け物だったり、誠実清楚で思いやりのあるかと思った次の瞬間には淫らで傍若無人な行動で妹を悩ませたりした。

メイファンにとってララは最愛の人物であったが、誰よりも油断ならない危険人物だった。

260 :創る名無しに見る名無し:2018/12/09(日) 22:14:17.92 ID:3nCx88Pl.net
17年前の9月11日、モンゴルに近い小さな田舎町にメイファンは産まれた。
夫妻は4年前に初めて授かった子をお腹の中にいるうちに亡くしていたので、妊娠している間は大変喜んだ。
しかし、産まれた瞬間からメイファンは忌み嫌われた。
彼女は真っ黒で、背中には獣のように毛が生えていた。
それだけならもちろん夫妻も愛を注いで育てたことじゃろうな。
しかしメイファンは、産まれた瞬間に、喋ったのじゃ。
正確には赤子の泣き声の合間に嬉しそうな声が混じっておった。
「パパー ママー ようやく会えたー くらいよー みえないよー」
悪魔か何かが出て来たかのように、その場にいた全員が戦慄したそうじゃ。

261 :創る名無しに見る名無し:2018/12/10(月) 06:37:05.54 ID:RC4MOk92.net
シューフェンは大停電の上海から広州へ来てスマホの電波が使えるようになってから、
毎日ハオにウィーチャット(日本で言えばLINE)でメッセージを送っていた。
初めは「生きてる?」「無事?」「どこにいる?」など短いメッセージばかりだったが、最近では長々と近況報告を書くようになっていた。
突然超大作主演女優になったこの夢のような日々を、誰よりもまず知らせたい相手がハオだった。
そして自分の病気のことは一言も書かなかった。

上海で発見された首なし水死体はハオの免許証を持っていた。しかしそれ以外の所持品は何もなかった。
「これは不自然だ」チェン刑事は言った。「まるで誰かがこの死体をハオさんだと我々に思わせようとしているかのようだ」
シューフェンは警察病院で対面した首なし死体がハオでないと確信することは出来なかった。
それでもあれはハオではないと今日まで信じ続けた。

リウ・パイロンがシャワーを終え、出て来た。
ベッドの上でバスローブ一枚を身に着けたシューフェンは、持っていたスマホをゆっくりと置いた。
ウィーチャットのハオ宛の画面には、1文字も書かれていなかった。

262 :創る名無しに見る名無し:2018/12/10(月) 16:29:26.87 ID:dV8KeyIG.net
「失礼します」
習近平の工作室にララが入って来た。
「お茶をお持ちしました」
「ウム」
習は机の上の書類から目を離さずに答えた。
パタムとドアを閉めた瞬間、ララはニッコリ笑うと、軽やかに踊るように振り返りながら、甘ったるい声を出した。
「はぁ〜いピンちゃん、今日はプーアル茶でちゅよ〜」
「ウム、早く……温かいうちに飲ませてくれ」
そう言う習の顔が少し緩んだ。
ララはポットから湯呑みにお茶を入れると、習の口に運び、その手で飲ませた。胸の膨らみが習の目の前にあった。

役立たずの不要物だった昔と違い、現在のララは習の健康の役に大いに立っていた。
習の健康の秘訣は、3に食事(お茶)、2に運動、そして1番は何と言ってもエロだった。
彼は健康のために『一日一勃起』を心掛けており、それが自分の工作室にいればララのお陰で苦労なく実践できた。
現にお茶を飲まして貰っている今この時も、机の下では65歳の欲棒がフル勃起していた。

263 :創る名無しに見る名無し:2018/12/10(月) 19:27:18.53 ID:dV8KeyIG.net
出来ることならララを押し倒してしまいたかった。しかし出来なかった。血で汚れた黒豹がララの中には隠れているのだ。

しかしメイファンはあれだけ色気の欠片もないというのに、同じ身体でララはこんなにも押し倒したくなるのか?

答えは簡単だった。

メイファンは『気』の鎧を纏う時、フェロモンを鎧の中に閉じ込めてしまうのだ。

それがララと身体を交代した瞬間 、閉じ込めていた凝縮されたフェロモンが一気に解放される。

これにて獣臭い妹と、天然フェロモン姉の出来上がりである。

264 :創る名無しに見る名無し:2018/12/10(月) 21:02:06.73 ID:kyvyWjzv.net
ララに服を買ってやらないのもピチピチのチャイナドレスを楽しむためであった。
しかし最近、さすがに毎日チャイナドレスでは飽きてきた。
そこで新しい服を買ってあけようかと切り出そうとしたところ、
「ねぇ、あたし、新しい服が欲しいなぁ〜」
ララの方からねだってきた。
「ピチピチすぎて胸が苦しいの」
「ヤッター!!」習は思わず立ち上がりガッツポーズをしてしまった。
「よし!じゃあ明日!一緒にショッピングに出かけよう!」
約束し、ララが出て行くと、習はパソコンを開き、「エッチな服が売ってるブティック」のキーワードで検索した。

265 :創る名無しに見る名無し:2018/12/10(月) 21:03:49.75 ID:SugQra6S.net
だが、ハオは例外だった。ハオに直接ふれるとなぜか『気』が上手く扱えなくなるのだ。
原因はわからなかったが、メイファンはハオと直接ふれあうのはなるべく避け、
触れる場合はララと交代するか手袋や棒などを用いる事にしていた。。

266 :創る名無しに見る名無し:2018/12/10(月) 22:35:34.51 ID:kyvyWjzv.net
しかしそう言いながら夜になるとハオのベッドに潜り込むのだ

267 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 01:26:43.98 ID:ZAwS4Boq.net
そしてたいして代わり映えの無い日常を坦々と過ごし気が付くとハオはアラフォーの中年男になっていた。

268 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 01:54:27.70 ID:xXvqHKJ4.net
いや待って。リウとシューフェンのセックスシーン書かせて。

269 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 03:58:04.81 ID:pel1c2ez.net
習近平「ララちゃん、リウの息子に君が犯された夜、ボクはモニター越しに見てて3回連続で逝っちゃったよ」

270 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 05:30:00.19 ID:r2MivvZ2.net
ララ「そんなひどい」

271 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 06:08:55.12 ID:dLBBbKRB.net
「ああ、今日も月曜日が始まるお。昔は毎日が日曜日だったのに今は毎日が月曜日。」

ハオの実年齢は29才だったが、メイファンの調教により1ヶ月半で40才前後に見えるほど老けてしまった。過酷な鍛錬と多忙な雑務でお肌も下半身もボロボロ。
「メイファン、おれ強くなれたかなあ?」

メイファンは殺し屋としては一流かもしれないがトレーナーとしては二流だった。

272 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 08:51:46.43 ID:pel1c2ez.net
「君と出会ってから」リウは天井を見つめながら言った、「一生忘れられないことが増えた」
そしてすぐ隣で自分を見つめる乱れ髪のシューフェンへ頭を転がした。「ありがとう」
しばらく二人は見つめ合った。リウは満ち足りた笑顔で、シューフェンは放心したような顔で。
「これからも」リウは乱れた髪を撫でて整える。「永遠に増え続けたらいいな」
シューフェンは何も言わなかった。ただ逞しく優しい男の手を取りキスをした。
自分は彼を騙している。彼と自分の「これから」はとても短い。
病気のことを打ち明けてしまおうかとも考えた。しかし、そうしたら彼はどうするだろう? きっと全力を、自分を救うために費やすに違いない。
身体に障るから映画をやめろと言うだろうか?
この愛しい笑顔と楽しい日々が消え、代わりに哀しそうな顔と重苦しい日々が続くだろうか?
何より彼の邪魔になる。彼は今、ジョー・サクラバとの大事な一戦を控えている、格闘家でありチャンピオンなのだ。
シューフェンはようやく口を開いた。「私、幸せよ」
「今、とっても幸せ」
そう言いながらリウの厚い胸板を細い指先で撫でた。頭を彼の肩に寄せると、彼が抱き寄せた。
「意外にぷにぷにしてるのね」リウの胸を突っつきながらシューフェンは言った。「鉄板みたいにカチカチかと思ってた」
「リラックスしてるからだよ」リウは微笑んだ。「力を入れたらカチカチになる」
「入れてみて」
そう言われ、リウは力を込める。ムキムキと音を立てるように筋肉が盛り上がった。シューフェンはそれを触り、言った。
「やっぱりぷにぷにしてる」
「本当に?」リウは焦ったように言った。
シューフェンは暫く考え込み、口を開いた。
「私、邪魔になってるんじゃない?」
「そんなことないよ」
「トレーニング、本当にちゃんとやってる? 私に会いに来てばっかりで……」
リウはぽりぽりと顔を掻いて、言った。「君……、支えてないと消えちゃいそうな感じがするから、さ」
シューフェンは少し驚き、申し訳なさそうに笑うと、言った。
「もしも……もしも負けたら、新しい恋人のせいだとか言われるかもよ?」
「あぁ」
「そんなこと言わせたくないでしょう?」
「その通りだな」リウは自分の頬を拳骨で突いた。
「私は大丈夫だから。気にせず、自分のことを頑張って」
「あぁ、闘いのことに専念するようにするよ。でも、時間が空いたら会いに来る」
「うん」
「お願いがあるんだ」
「?」
「もう一回、いい?」

273 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 08:55:04.68 ID:pel1c2ez.net
「ずっと思ってたけど」
リウはシューフェンがいつもしているネックレスを手に取ると、言った。
「これ、趣味悪いぜ」
いかにも安物といった風情のハートのネックレス。ハオが付き合い始めの頃にプレゼントしてくれたものだった。一応プラチナではある。
「ある人がプレゼントしてくれたの」
「前の男?」

274 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 09:02:04.43 ID:pel1c2ez.net
「そうね。前のひと」
シューフェンが答えると、リウはネックレスを両手で掴み、引きちぎり、ゴミ箱へ投げ捨てた。
「今、君は僕のものだ」
激しく抱き寄せると唇に吸いついた。

275 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 10:24:06.25 ID:aYuwL+Sm.net
リウ「新技を編み出したんだけど、君で試してみてもいいかい?」

276 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 11:32:50.57 ID:YxbyU1MY.net
リウはあっという間にオザワ先生に変身した。
「どうだい。すごい技だろ。」
しかしシューフェンはさらなる早業で蓮舫に変身した。
「リウ、まだまだ技のキレが甘いわね」
その姿のまま2人は再び激しく愛し合った。

277 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 12:19:47.80 ID:oKMmhlFI.net
「もう上海は駄目だ。広州に移り住もう」
恋人のシューフェンを抱きながら、ハオは言った。
「広州へ行ってどうするの? 仕事は? あっちに知り合いでもいるの?」
「知っての通り、俺の生まれはド田舎の村だよ。他のどの町へ行ったって知り合いも親戚もいない」
「じゃあ……」
「散打をやる。俺が強いのは知ってるだろう? チャンピオンになってお前に綺麗な服を着せてやる」
「何甘いこと言い出してんの!?」
「これはチャンスだと思うんだよ。神様が俺に散打をやれと告げているんだ」
そう言いながらハオはシューフェンに挿入した。
「バっ……! バカにも程がある……っ! ハオ……! ハオ! ハオっ!」

278 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 12:28:57.51 ID:wKpJI9aO.net
習近平はララを連れてランジェリー・ショップに来ていた。
「うわぁ〜! 可愛いお洋服がいっぱ〜い! ……って、ピンちゃん? 下着ばっかりなんですけど!?」
「当たり前さぁ。ここはランジェリー・ショップなんだからね!」
取り敢えず着せて来た白のワンピースに白い帽子でララは真っ白だった。習は粘ついた笑顔で振り返り、言った。
「君はこれからここでピンク色に変身するんだよぉ」
「ご予約されていた習様でございますね?」店員が言った。
「そう、今日、この店は僕とララちゃんの貸し切りさ」
「国家主席の、習近平様でございますね?」店員が念を押した。
「何だよぉ」習は口を尖らせた。「国家主席がこういう店に来ちゃいけないとでも言うのかよぉ?」
「いいえ」店員はそう言うと、カウンターの下から銃を取り出した。「歓迎光臨!」
「ヒィィッ!?」
「キヤァァッ!?」
悲鳴を上げた時、ララの両腕は既に黒く、店員の構えた銃口を指で塞いでいた。
「貴様、素人か?」泣き顔のララの口だけがニヤリと笑った。「習近平の傍にはいつでも黒色悪夢(ヘイサー・アーマン)が漂っていることを知らんのか?」
黒い腕が掌打を放ち、店員の顔がグシャグシャに潰れる。
周囲の入口という入口から黒服に身を包んだ男達が銃を携えて流れ込んで来た。
「15人か」ララは徐々に全身を黒く変えながら言った、「どうやら知ってはいたらしいな」
完全に身体を交代し終えたメイファンは、鼻で笑った。
「だがそれでは少なすぎるぞ」

279 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 18:58:36.45 ID:BJY1ROEq.net
その頃ハオは家を脱走し、地下道から地上に通り抜けていたのである。

だが精神に異常をきたしたハオはシューフェンとの記憶すらも失い、
ただひたすら街の中をゾンビのようにさまよっていた。

280 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:16:47.50 ID:SlSLnAc6.net
メイファンは無『気』物の動きを予測することは出来ない。銃弾のスピードにも対処出来ない。
銃弾を放つ人間の『気』を読み、未来を予測し、そこから銃弾の軌道を蜘蛛の巣のように描き出せるのみである。
しかしそれで充分だった。
15人が一斉に引鉄を引く未来が見えた。同士討ちしても構わないから習と自分を殺せということか、
メイファンは背中に隠れる習近平の身体を自分の気で包んだ。
四方八方から銃弾が浴びせられると同時に床に伏せる。仲間の攻撃が当たり、敵は15人が11人に減った。未来に見た通りだ。
気で包んだ習近平はぬいぐるみのようにメイファンにとっては軽い。しかも気の鎧に包まれているので硬い。
メイファンは習近平を武器として振り回し、二人倒した。
「残り9人」
あっという間に9人に減った敵は、同士討ちを警戒して慎重になる。これを待っていたメイファンは外へ向かって叫んだ。
「酒鬼(ジョウ・グェイ)! いるか?」
外からハイヨーと声が聞こえ、その方向へ向かってメイファンは習近平をぶん投げた。「受け取れ!」
「イヤァァァ!!!」悲鳴を上げながら習近平が砲弾の速さで飛び、ショーウィンドウを突き破った。
外に飛び出して来た黒いガーターベルト付きの女性下着に包まれた習を、「酒鬼」ことジャン・ウーが『気』をクッションにして受け取り、そっと地面に降ろした。
「メ、メメメメイファンめ! 許さんぞ!」習近平は興奮している。
「許さん相手を間違えてにゃァか? ピンちゃんよ」ジャン・ウーは習を守る位置に素早く立つ。「その相手、誰だか、今からすぐに黒色悪夢が吐かせらァよ」
「ララララララちゃんをピピピピンク色に変身させる筈だったのに! くくくく黒く変身しおって!」
「ア。そっち?」
ジャン・ウーは突っ込みながら防御のための『気』を辺りに張り巡らした。
「ワシも加勢してやりたいが、ピンちゃん守らにゃならんでの。それに今、酒が切れておってなぁ」

281 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:45:22.65 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「あが、あほ、みろり、ほれんじ…」

282 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:45:54.07 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「あが、あほ、みろり、ほれんじ…」

283 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:46:47.65 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「あが、あほ、みろり、ほれんじ」

284 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:47:32.72 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「あが、あほ、みろり…」

285 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:50:02.85 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「あが、あほ、みろり…」

286 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:51:19.79 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「あが、あほ…」

287 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:52:33.17 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「あが、あほ…」

288 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:54:27.02 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「あが、あほ、みろり、ほれんじ…」

289 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:56:40.51 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「うぇへへへへへへへっwwwww」

290 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 20:59:34.04 ID:r2MivvZ2.net
ハオ「@#%ょ&*/+あ$々〃仝∞≧∴」

291 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 21:11:02.44 ID:OfV3Jhpo.net
http://connect.uh-oh.jp/

現実の人の繋がりに疲れた人に

宣伝です。

292 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 21:21:22.82 ID:SlSLnAc6.net
メイファンは習をぶん投げるとすぐに自分の髪の毛を3本抜いた。習を追って出て行こうとした3人にそれを投げる。
気を通して針と化した髪の毛は背中に突き刺さる。しかし致命傷には至らない。
敵は一方向にかたまり、組織プレーでの攻撃に転じた。7人が同時に等間隔で撃ち、碁盤の目のように銃弾が飛んで来た。
「へぇ、逃げ場がないや」
メイファンは呑気にそう呟きながら、最もダメージの少ないポイントを瞬時に見つけ、そこへ飛んだ。
銃弾が一発、左太股を貫通した。
「動きにくいんだよ、この服」メイファンは痛がりもせずに白いワンピースに文句を言う。「ブラまで着けやがって。ガバガバして邪魔だ」
「それはメイのほうが小さいからでしょ!」ララが口を動かした。
「わかった。黙れ」
2回目の組織攻撃が飛んで来る。メイファンはショーケースの裏へ飛び込む。ガラスが砕け、飛び散る。
「いいもの見ーつけた!」
そう言いながら飛び出して来たメイファンは、手にホウキを持っていた。
竹の柄にシュロの刷毛のついた普通のホウキである。敵は可笑しそうに笑い、噴き出す者もいた。
真顔に戻って敵は3回目を仕掛けて来た。
飛んで来る方向が一律なら、銃弾をはじくことは容易かった。『気』を通して鉄の硬度と化したこのホウキさえあれば。
碁盤の目の縦一列の上にホウキを置き、そこに身を置くだけで簡単に防ぐことが出来る。
慌てた敵は、今度は連射攻撃に切り替えるらしく、弾倉を取り替えてそのための準備を始めた。
「いいのか? そんな隙を与えて」
予測と回避に費やしていた『気』を、メイファンは一気にホウキに込めた。
「やれやれあっという間に完成だ」
ホウキは刷毛が黒光りする斧のような立派な武器に姿を変えていた。
「一振りか」
メイファンが武器を振ると、予言通り全員の首が綺麗に飛んだ。
「爽快だな」

293 :創る名無しに見る名無し:2018/12/11(火) 21:48:07.24 ID:SlSLnAc6.net
残りの一人は投げた髪の毛針が脊椎に刺さったようで、まともに動けなくなって床に座り込んでいた。
そいつも含めて全員、ヒスパニックとも東南アジア系とも判断のつかない顔立ちをしていた。
メイファンはアメリカ英語で聞いた、「誰が依頼人だと推測する?」
「ドナルド・トランプだ!」
敵はあっさりその名を口にした。
『黒色悪夢』は依頼人の名を吐かすのに物凄い拷問をするという噂が流れているらしい。
問われた暗殺者は皆、自害も出来ない状態に追い込まれ、あっさり殺されたほうが楽だとばかり、素直に依頼人の名を口にするのだ。
もちろん依頼人が直接殺し屋に依頼するケースは少ないので、大抵はその殺し屋の推測でしかないが。
「言ったぞ! な? だから殺してくれ! 拷問はやめてぇぇぇ」
「連れて帰る。知っていること全て洗いざらい話せ」
「はいっ! 話しますから! 拷問やめてぇぇぇ」
そこへジャン・ウーと習近平が入って来た。
「撃たれたのか」ジャン・ウーがメイファンの足を見て言った。
「あぁ、しくじった。当分ララは出してやれないな。痛みに耐えられんだろうし、傷口でハオにバレる」
「そんな!」習が涙を流した。
「早くハオを育てないとな」メイファンは足に包帯を巻きながら言った。「早く一人前になって、こういう仕事をこなして貰わなければ」

294 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 01:52:09.08 ID:eYufkicF.net
「おはよう」
シューフェンが目を覚ますと、そう言って微笑むリウの顔がそこにあった。
「早いわね」
シューフェンは顔を赤らめた。あたし、どんな寝顔してたんだろ。
それから何も言わずに二人は寄り添って窓の外を眺めた。
「思い出すな」リウが口を開いた。「俺、このぐらいの高さのビルから飛び降りたことあるんだぜ」
シューフェンは何も言わず、口をぽかんと開いた。
リウは床に落ちたバスタオルを取ると、ぎゅっと絞る。
「このぐらいの細さのロープ一本、足に縛って、さ」
「それって、もしかして」
「そう」
「バンジージャンプ!」二人声を揃えた。
シューフェンがケラケラと笑う。
「冗談じゃないんだぜ」リウは真顔で言う。「あの修練で俺はぐっと強さを増したんだ」
「へぇ〜」騙されないぞ、とシューフェンが顔でアピールする。
「あと俺、この、ここ、額んとこ、横に真っ直ぐの傷があるだろ?」
「うん」
「これ、切られたんだ」
「切られた?」
「あぁ」
「チェーンソーで?」シューフェンがくすくす笑う。
「いや、シンバル叩くサルの玩具の、シンバルで」
「それはさすがに……」
「こっから上、ぱかっと蓋みたいに取られたんだぜ?」
「メロンアイスの蓋みたいに?」
「うん。脳味噌でた」
シューフェンは笑い崩れ、聞いた。
「誰がそんなことするのよ〜」
「俺の師匠」
「おじいさん?」
「7歳の女の子」
「玩具にされたのね」
「その通り」
シューフェンはさすがについて行けなくなって呆れたポーズをして見せた。
「でも、あの時の修練を乗り越えた俺だから、今、無敗の王者でいられるんだ。師匠には感謝している」
「そうなんだ?」
「次も勝つよ、君のためにも」
そう言うとリウはシューフェンを三度(みたび)押し倒し、布団を剥いだ。たおやかな乳房が現れる。そこへキスで攻撃しながら言う。
「『産まれたまんまの姿』とかよく言うけど……師匠、産まれた瞬間に喋ったらしいよ」
「もう、いいって」シューフェンは笑い声を含んだ声でそう言うと、それから暫く言葉を失った。

295 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 02:10:50.81 ID:eYufkicF.net
二人は外へ出た。
冬の近い広州の町はPM2.5に霞んでいた。
「マスク、持ってる?」
「持ってる。リウは?」
「あるよ。じゃあ撮影頑張って」
「あなたも」
「じゃあ」と言いながらリウはなかなか歩き出さない。
「どうしたの?」
「本当に俺がいなくて大丈夫か?」
「大丈夫よ。寂しいけど。ジョアンナが親しくしてくれるし、ホーク監督も優しいし。あ、撮影中は鬼か悪魔だけどね」
リウはおもむろにシューフェンを抱き締めると、大きな顎で彼女の頭のてっぺんをグリグリしながら言った。
「本音を言うと、俺が離れたくないんだ! ずっと君の側にいて、ずっと君を見て、ずっと君と喋ってたいんだ! あぁ……仕事に行きたくねぇよぉ〜!」
「うん。でも、試合に勝たないとダメ」
「わかったよ」リウはようやくシューフェンを離した。「なぁ、ずっと側にいてくれるかい?」
シューフェンは優しく微笑むと、頷いた。「ずっとあなたの側にいるわ」

296 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 04:22:07.32 ID:f0gEmF0z.net
ハオはひたすら歩き続ける、誰かに会うためだ。誰かは思い出せないがとても大事な人だった気がした。そのためにとにかく歩き続ける。
「もうあの家には居られない」
ハオはボソリと呟いた。額からは汗が流れ肩は上下していた。目は虚ろで焦点が合っていない。
「探しましたよ」
聞こえるはずのない声がした。驚いたハオは後ろを振り返る。
「ララさん…?」

297 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 05:05:28.24 ID:f0gEmF0z.net
次の瞬間、目の前が真っ暗になった。
気が付けばハオは玄関に立っていた。
「…おかえりハオ。」
廊下の奥からメイファンが姿を現しハオをお出迎えする。
「お散歩は楽しかったかな?」
豹のような目と黒い肌をしたその美少女は口端をつり上げニタリと笑う。
「…うん、ただいま。」
虚ろな目でハオは答えた。

メイファンはハオと体を重ねる度に『気』を送り込むことで、万が一自分が不在でハオが脱走してもこの家に無意識に戻ってくるように細工を施していたのだ。

もうハオはシューフェンのことは思い出せないしメイファンからも逃げられないだろう。

298 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 08:03:47.74 ID:F5nftd7q.net
ハオは自分の部屋でぼーっとしている。
傍らのベッドの上ではメイファンが寝転がってマンガを読んでいる。

メイファンはオフの時にはマンガやゲームや芸能人が好きな普通の17歳の女の子だった。
マンガに飽きたようで、投げ捨てると、リモコンを持った。
「テレビつけるぞ?」
「ほぇぃ」

テレビがつくなり、スタイリッシュなロックが流れて来た。
「ハオ様だ!」メイファンが目を輝かせる。「新曲、出たんだぁ。かっけぇえぇ」
「俺様が何か?」ハオはボケた。
ありえない距離からメイファンの蹴りが飛んで来た。
「ハオはハオでもリー・ロンハオ様だ。ハオ様のハオはかっこよく急降下する『ハオ!』、お前のは寝ぼけた『ハオ〜?』だろうが一緒にするな」
「ハイハイ」
テレビ画面のテロップには『大型新人女優出現! デビュー作がツイ・ホークの最新超大作!』と出ており、
リー・ロンハオがその映画の主題歌を書き下ろしたという話題が済むと、その大型新人女優が画面に姿を現した。
「うわぁ〜綺麗なひとだな〜」メイファンが溜め息を漏らした。「リー・シューフェンだって」

299 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 09:20:06.79 ID:JOW6MQyZ.net
主な登場人物まとめ

・ハオ(リー・チンハオ)……主人公。習近平とメイファンにより謎の施設に軟禁され、謎の過酷な特訓を受けている。
太極拳の使い手。恋人のシューフェンの待つアパートに帰りたくてしょうがない。

・シン・シューフェン……ヒロイン。膵臓ガンに冒されており、余命は僅か。ハオの恋人だったが、リウに取られた。
元々ハオにはもったいないほどの美人であり、リウの紹介で女優デビューする。

・リウ・パイロン……中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり国民的英雄。シューフェンの現恋人であり、彼女にメロメロ中。
メイファンの元弟子だが、ボロボロに負かした上当時8歳のメイファンをレイプした上、彼女の元を去る。

・ラン・メイファン……17歳の美少女。国家主席習近平のボディーガードであり凄腕の殺し屋。
『気』を操り様々なことに使える武術家、というより超能力者。『黒色悪夢』の通り名で恐れられている。

・ラン・ラーラァ(ララ)……21歳の天然フェロモン娘。メイファンの姉。ただし身体を持たず、妹の中に住んでいる。
『気』だけの存在であり、メイファンと身体を交代することが出来る。性格は妹と正反対で女らしく、お喋り好き。

・習近平……言わずと知れた中国国家主席。孤児だったメイファンを引き取り、殺し屋として育てる。ララのファン。

・ドナルド・トランプ……言わずと知れた(略)

・ジャン・ウー……メイファンの仲間の殺し屋。通り名は『酒鬼』。昔のカンフー映画に出てくるような見た目をしている。

300 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 11:07:37.91 ID:r/lxYaCK.net
これのどこが格好いいの??

リーロンハオ「李白」
https://youtu.be/wdypZWuoKvQ

301 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 12:03:44.22 ID:BLom83Iy.net
パイパンは何も卑劣なことなどしていない。
メイファンを子供ではなく一人の武術家として尊敬した上で、徒手空拳での闘いを望んだ。
メイファンが徒手空拳においても『気』を使うことでバケモノのように強く闘えることをわかっていた。
しかし、この時のパイロンは相手の弱点に徹底的につけこんだ。
メイファンこそが王者であり、自分は挑戦者だという意識に基づいて、こうしなければ勝てないという図式を頭に置き、それに従ったのじゃろう。
浮き上がったメイファンに向かって突進すると、床にねじ伏せ、その身体の上に乗っかってパンチの雨を降らせた。
これは散打では反則じゃ。ダウンした相手への攻撃は禁止されておる。
しかしこれは散打の試合ではなかったし、何よりパイロンにはもう散打がどうのこうの関係ないように見えた。
ただ勝利だけを渇望し、王者を負かすことによって己の糧とすること、それしか見えていないようじゃった。

自分を殴りながら歓喜の歪んだ笑いを浮かべるパイロンの姿をメイファンは見た。
激しいスピードと重たいパンチに『気』の力も加わり、『気』の鎧の上からでもダメージは蓄積し、加速した。
やがて前で組んでいたメイファンの手がだらりと床につき、メイファンは降参した。
顔は青く膨れ上がり、あちりこちらから血が滲んでいた。
勝利してもなおパイロンの興奮は収まらず、高潮していた。
奴は慌ただしくビガーパンツを脱ぐと、目の前の8歳の少女をレイプした。

302 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 12:05:10.75 ID:1Jj1hSQz.net
「妹はあなたのことをかなり気に入ってるみたいですよ」
ララは手当てをしながら喋った。
「いや、俺、殺されそうになったこと何べんもあるんだけど……」
「でも殺されていないでしょう?」
「え……うん」
「それが証拠ですよ。妹が本気ならあなた程度、ものの0.5秒で首が落ちてます」
「あっ、そう」
ララの二の腕がハオの胸に当たる。黒髪から立ち昇るいい匂いが鼻をくすぐった。
「でっ、でも何で俺なんか気に入ったんだろう」
「ハオさん、彼女さんがいるんですって?」
そう言いながらララは見上げて来た。胸の先っちょがハオの膝に触れた。
ハオは一瞬、彼女などいないことにしようとして思いとどまり、「いるよ」と答えた。
「その彼女さんのことをとても大事に思っているとか」
ララはピチピチの青いチャイナ服を着ており、露出も少なめだったが、基本全裸のメイファンよりも断然エロかった。
『フェロモンムンムンって聞いて想像してたのとはタイプが違うけど、これは確かに……』
「ハオさん?」ララはハオの足に乗っかって不思議そうに見上げて来た。
「あっ、ああ……。うん、大事だと思ってるよ」
「そういうとこですよ」
ララは立ち上がるとハオの顔に薬を塗りはじめた。喋るたびにいちいち吐息がかかる。
「妹は女を道具のようにしか見られない男性が嫌いなんです」
下に降ろした指先がハオの如意棒をつんと突いたが、わざとではないようだった。
「だから彼女さんに一筋なハオさんのことをお気に入りなんだと思いますよ」
髪の毛の中を怪我していないか確認するためにララはハオに抱きつく形になった。胸の膨らみが直撃する。
『天然フェロモン娘か!!!』
そう思いながらハオはなんとか冷静な口調で言った。
「でもあいつ、俺に君を紹介するとか言ってたぜ?」
「フフ、試したんですよ」
「試した?」
「そこで『お願いします』とか答えてたら、たぶん貴方の生命はそこまでだったと思います」
「!」
「だから気をつけてくださいね、ハオさん。他の女に気を向けるようなことがあったら、妹はすぐにでも貴方の首を飛ばしますよ」
「!」

303 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 12:10:54.96 ID:Q+EKt2c7.net
ハオは人波を掻き分け、ようやく仮設リングの見えるところまで出た。
茶色い短髪に相手を馬鹿にするような笑いを湛えた大男が踊るようにステップを踏んでいた。
「リウ・パイロン! 本物だ!」ハオは思わず叫んだ。

挑戦者のチョウは背が高く、長い脚を活かしてチャンピオンを牽制し、なかなか間合いに入らせない。
しかしリウは困っているというよりは面白がっているように見えた。

「リーチのやたら長い相手……。俺だったらどう闘う?」
ハオは考えた。
「接近戦だ。距離を詰めればあの長い手足は逆に邪魔になる。そこへ俺の速い打撃を連続で打ち込めば……」
ハオがそう考えた時、リウが仕掛けた。
リウは襲い掛かる挑戦者の長い脚の上を飛び越え、飛び蹴りをその顔に食らわした。

「カウンターの飛び蹴りだと……!?」
ハオが度肝を抜かれる中、一発KO勝ちを決めたチャンピオンは、勝利のポーズを決めるのは後回しと、挑戦者を抱き起こしていた。
「大丈夫か? ちと荒っぽかったな、すまない」
顔面にまともに蹴りを食らった挑戦者は、鼻血を流しながらもしっかりと意識を取り戻した。
「お前、強かったぜ。散打をやめるなよ?」
王者リウはそう言うと立ち上がり、沸き立つ観衆に向かいようやくガッツポーズを決めた。

304 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 17:37:32.07 ID:XRNbbuRd.net
「あなたのちんぽは最高よ」
シューフェンはリウの丸太ん棒を両手でいとおしそうに握りヨダレを垂らす。
(こっ、、この女、、男を悦ばす術を知ってやがる!)
「どうして欲しいのぉ?言ってごらんなさぁい」
赤い舌を触れそうで触れない距離で焦らすシューフェンにリウはもう爆発寸前!
(だっ、、誰がこんなことを教えたんだ!!やっ、、やはり前の男か!?チクショウ!!)
「ねぇぇん。どぉして欲しいのかぁ…、、お姉さんにぃぃ、、教えてぇぇ??」
「くっ、、口の中に入れてくださぁぁい!!」
遂に泣き出したリウ!
「ダメよ」
意地悪に笑い舌を腰から乳首に這わすシューフェンに思わず飛び出す精子!
リウは乳首がとんでもなく弱かった!!!

305 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 19:07:41.73 ID:wUbLAxtx.net
パイパンは何も卑劣なことなどしていない。
メイファンを子供ではなく一人の武術家として尊敬した上で、徒手空拳での闘いを望んだ。
メイファンが徒手空拳においても『気』を使うことでバケモノのように強く闘えることをわかっていた。
しかし、この時のパイロンは相手の弱点に徹底的につけこんだ。
メイファンこそが王者であり、自分は挑戦者だという意識に基づいて、こうしなければ勝てないという図式を頭に置き、それに従ったのじゃろう。
浮き上がったメイファンに向かって突進すると、床にねじ伏せ、その身体の上に乗っかってパンチの雨を降らせた。
これは散打では反則じゃ。ダウンした相手への攻撃は禁止されておる。
しかしこれは散打の試合ではなかったし、何よりパイロンにはもう散打がどうのこうの関係ないように見えた。
ただ勝利だけを渇望し、王者を負かすことによって己の糧とすること、それしか見えていないようじゃった。

自分を殴りながら歓喜の歪んだ笑いを浮かべるパイロンの姿をメイファンは見た。
激しいスピードと重たいパンチに『気』の力も加わり、『気』の鎧の上からでもダメージは蓄積し、加速した。
やがて前で組んでいたメイファンの手がだらりと床につき、メイファンは降参した。
顔は青く膨れ上がり、あちりこちらから血が滲んでいた。
勝利してもなおパイロンの興奮は収まらず、高潮していた。
奴は慌ただしくビガーパンツを脱ぐと、目の前の8歳の少女をレイプした。

306 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 19:49:03.02 ID:XRNbbuRd.net
「シューフェン……」ハオはTVを見ながら譫言のように呟いた。「シューフェン? ……シューフェン!」
「私は同じことを3回言う奴が嫌いだ」メイファンが肘をついて寝転んだ格好で言った。
「いや……シューフェンだよ! シューフェン!」
「わかっておるわ。読めばわかる」
「何べんも言ってたろ? 俺の恋人のシューフェンだ!」
「気が触れたか……コイツ」メイファンは側にあったクッキーを取ると、『気』で手裏剣を作りはじめた。「こんな美女がお前の恋人なわけがないだろう」
「シューフェンが何で女優!? え? え?」
「黙れ。大体お前の恋人はビーフンだろう」メイファンは鋭い鋼鉄の手裏剣と化したクッキーをハオの脳天めがけてぶん投げた。
「もうメイったら。シューフェンさんだよ!」
メイファンの口からララの声がしたのでハオは驚いて振り返った。そのせいで手裏剣は外れた。
「ム。かわされた」そしてハオが何も聞いてないのに答えた。「気のせいだ」
「しかし見ろよ、芸名。リー・シューフェンだぜ? 俺、シューフェンに結婚されちゃった!」
「ハオさんのことをまだ愛してる証拠ですよね!」
とララが最後まで言い切らないうちにメイファンはララに平手打ちを食らわした。
もちろんメイファン自身がダメージを受け吹っ飛び、ララは最後まで言い切った。
「お前……何ララの物真似してんの……?」ハオはアホを見る顔で言った。「それに何? その一人ドタバタ」
「……黙れ」
「それにしてもお前の言う通りだよぉ。シューフェンの俺に対する愛の証だよな、コレ。あぁ、早く帰りたい」
「死体にして帰してやろうか」
「にしても痩せたなぁ、シューフェン。ダイエット頑張ったのかなぁ」
「単に別人だろ」
「よし、俺も頑張るよ」ハオは久々に生気の溢れる顔で上を見た。「頑張って散打王に俺はなる!」

307 :創る名無しに見る名無し:2018/12/12(水) 22:37:27.90 ID:X0stBZ2l.net
パイパンは何も卑劣なことなどしていない。
メイファンを子供ではなく一人の武術家として尊敬した上で、徒手空拳での闘いを望んだ。
メイファンが徒手空拳においても『気』を使うことでバケモノのように強く闘えることをわかっていた。
しかし、この時のパイロンは相手の弱点に徹底的につけこんだ。
メイファンこそが王者であり、自分は挑戦者だという意識に基づいて、こうしなければ勝てないという図式を頭に置き、それに従ったのじゃろう。
浮き上がったメイファンに向かって突進すると、床にねじ伏せ、その身体の上に乗っかってパンチの雨を降らせた。
これは散打では反則じゃ。ダウンした相手への攻撃は禁止されておる。
しかしこれは散打の試合ではなかったし、何よりパイロンにはもう散打がどうのこうの関係ないように見えた。
ただ勝利だけを渇望し、王者を負かすことによって己の糧とすること、それしか見えていないようじゃった。

自分を殴りながら歓喜の歪んだ笑いを浮かべるパイロンの姿をメイファンは見た。
激しいスピードと重たいパンチに『気』の力も加わり、『気』の鎧の上からでもダメージは蓄積し、加速した。
やがて前で組んでいたメイファンの手がだらりと床につき、メイファンは降参した。
顔は青く膨れ上がり、あちりこちらから血が滲んでいた。
勝利してもなおパイロンの興奮は収まらず、高潮していた。
奴は慌ただしくビガーパンツを脱ぐと、目の前の8歳の少女をレイプした。

308 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 00:53:58.13 ID:OVXuq2VL.net
メイファンは説教室にララを連れ込んだ。単に物置部屋に一人で入っただけであるが。
「ララ! ハオに私達のことがバレるようなことをするな!」
「何でぇ〜? ハオさんにならバレたっていいじゃない」
「あぁいう無害そうな奴が実は怖いのだ。お前が実は私と身体が一緒だと知ったらぶり」
「ぶり……とぁって、どうだって言うのよ?」
ちなみに「ぶり」の部分は二人が同時に喋っているのである。
「私がお前の時、奴はお前の腹に手刀を入れ、腸を引き出して、床に叩きつけ、グチョグチョ足で踏みつけ、後に皿に取って食ぶり」
「ぶりさんは……ハオさんはそんなことする人じゃないよぉ〜」
「とにかく奴の前では声を出すな。今度声を出したら姉でもひっぱたくぞ」
「だって〜私も〜ハオさんとお話した〜い」ララの声は涙まじりになった。
「今、私は太ももを大怪我している。これが治るまで我慢しろ」
「ずる〜い。メイばっかりお話して〜。楽しそうに〜」
「た、楽しそうだと? バカ言うな」
「楽しそうだよ〜! メイちゃん気づいてないの自分がハオさんのこと大好きなこぶり〜」
「ぶりなことを言うな! 何をぶり出すんだ!」
「あたしもハオさん好きなのに何でメイばっかりお話するのかぶりんとぁ」
「ぶりんとぁの時のぶり!」
「ぶりっつもメイはじぶり」
「ぶりはぬぉぶりまんぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶり!!」

309 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 02:49:20.93 ID:IGvAeldR.net
「ぶりぶり言うな!」突然ジャン・ウーが現れて怒鳴った。「女の子が! はしたない!」
「ぶり…たってジャン爺、ララが……」
「だってメイが……ぶりぷりっ」

310 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 05:55:43.42 ID:eeFLriPs.net
そんなことをいいながらララはメイファンに内緒で今日もハオと風呂で洗いっこをし、一緒にベッドで眠るのだ。

もちろんリウにレイプされたことも体を共有していることもハオに話してしまっていた。

体の共有については信じてもらえなかったが
これはララとハオだけの秘密だ。

311 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 06:08:23.93 ID:0ipDFzD7.net
リウ・パイロン「モブならまだしもライバルポジなのが気にくわない」

312 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 09:04:52.49 ID:2hEVuG+h.net
それから一日中、何度もハオは「どうしよう俺、シューフェンに結婚されちゃったよ〜」を繰り返した。
「あいつの本名シン・シューフェンだぜぇ? リー・シューフェンて、このリー・チンハオ君のお嫁さんみたいじゃん〜」
「もぉ〜、俺に無断で勝手に結婚しやがってぇ〜」
メイファンが部屋に入って来て言った、
「ハオ、今日から特訓を再開する」
「おう! そこそこ頑張って俺は散打王になるぜ!」
「特訓中に殺すかもしれんから先に葬式を済ませておけ」
「バカな!?」

313 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 12:04:29.28 ID:ucStjoS3.net
映画の製作発表会は大きな反響を呼んだ。
タイトルは「上海ゴースト・ストーリー」。公開予定は3ヶ月後と発表された。

舞台は今でしか撮影できない大停電で灯りの消えた大都市上海。
未だに停電は復旧していないが、復旧する前に上海での撮影はすべて終えている、
撮影中に復旧しなくてよかった、とツイ・ホーク監督は述べ、「不謹慎な話だが」と付け加えた。

主演女優に関しては、ある知り合いから紹介された、と説明した。
大物女優に二人、続けざまにキャンセルされ、各芸能事務所から新人女優の紹介等あったが、似たり寄ったりでピンと来る者がいなかった、
シューフェンはどこの事務所にも属しておらず、それどころか一般人だったが、既存の女優の誰にも似ていない、
今まで中国映画界にはなかったキャラであり、私は逸材を見つけた、これからも非常に楽しみな女優だ、とベタ誉めし、
最後に「でも演技力はまだまだだ」「その分自分の指示を素直に聞いてくれる」と締めた。

巷のシューフェンへの評価も上々だった。
男どもはその美しさと親しみやすさを兼ね揃えた魅力に淫らな妄想を膨らませ、
女達は憧れると同時に一般人からスターに駆け上がった彼女に夢を描いた。

シューフェンフィーバーが起こりつつあった。

314 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 12:58:50.84 ID:ucStjoS3.net
「町を歩く時、君も変装しないといけなくなったな」
リウはシューフェンのマンションに泊まりに来ていた。
「君の魅力には恐れ入ったよ、まさか映画の公開前からこんな騒ぎになるとは。……ここもじきにバレるかな」
「ロンも変装とかするの?」
シューフェンはリウのことを親しみをこめてロンと呼ぶようになっていた。
「俺はアイドルじゃないからな」
リウは変顔をして笑わせ、続けて言った。
「しかし君の映画……俺は結末が不満だ」
「どうして?」シューフェンは興味ありげにリウの逞しい腕に顎を乗せて聞いて来た。
「ダメ男の彼氏がいる主人公が病気で死んでしまう、冥界へ行った彼女はそこの王子に見初められ、愛されて冥界の姫となる……だろ?」
シューフェンは聞きながら頷いた。
「そして最後、王子と魔力を得たダメ彼が戦い、王子が勝つけど彼女が選ぶのはダメ男の元カレのほうだ。何でだ!?」
「好きだからよ」シューフェンは即答した。
「でもさ、王子はあれだけ彼女を愛し、魔法を使える能力を与え、地位も与え、しかも演じるのがイケメンのワン・リーなんだぜ? どこに不満が?」
「不満とかじゃないわ」シューフェンは言った。「女は好きな人が一番なのよ」
「どれだけ愛してくれる人よりも……ってことか」
「そう」
リウは暫く黙って今日見た映画のストーリーを反芻しているようだったが、やがて言った。
「やっぱり納得できん。王子が不憫でかなわん。元カレなんてあれ、優しいだけのダメ男じゃん」
「でも最後、ツァイイーのために死ぬほど頑張るわ」
「俺ってさ、どっちかって言うとだよ? どっちかって言うと、王子のほうのキャラじゃん?」
「完璧にね」
「だから不満なのかなぁ。後味悪かったなぁ、あのエンディングは」
シューフェンがフフと笑い、しばらく二人は沈黙した。
「シューフェンもさ」リウは口を開くと少し寂しそうに質問した。「王子よりダメ彼を選ぶ?」
シューフェンは質問の意図を正しく理解して答えた。
「ロンは王子じゃないわ。例えるなら王子であり、かつ好きな人よ」
「フ、フーン。そうか!」リウは元気が出た。「そうだな。君はツァイイーを演じてるだけだし、俺は王子じゃない!」
「そうよ。ツァイイーは寂しさを埋めるために王子の愛を利用しただけ。でもあたしは……」
「君は?」
シューフェンはリウに口づけた。
「愛してるわ、ロン」

315 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 13:20:01.18 ID:ucStjoS3.net
「あたしがあの映画、一番切ないって思うのはね……」
シューフェンは眠るリウの胸に頬を埋め、言った。
「選んだ彼は生者、ツァイイーは死者……。二人が愛し合いながらも別れて行くところよ」

316 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 17:57:46.43 ID:R0PJ0IKS.net
「アイゴー……」シムはTVを見ながら譫言のように呟いた。「シューフェン? ……シューフェン!」
「私は同じことを3回言う奴が嫌いだ」メイファンが肘をついて寝転んだ格好で言った。
「いや……シューフェンだよ! シューフェン!」
「わかっておるわ。読めばわかる」
「何べんも言ってたろ? 俺の恋人のシューフェンだ!」
「気が触れたか……コイツ」メイファンは側にあったクッキーを取ると、『気』で手裏剣を作りはじめた。「こんな美女がお前の恋人なわけがないだろう」
「シューフェンが何で女優!? え? え?」
「黙れ。大体お前の恋人はビーフンだろう」メイファンは鋭い鋼鉄の手裏剣と化したクッキーをハオの脳天めがけてぶん投げた。
「もうメイったら。シューフェンさんだよ!」
メイファンの口からララの声がしたのでハオは驚いて振り返った。そのせいで手裏剣は外れた。
「ム。かわされた」そしてハオが何も聞いてないのに答えた。「気のせいだ」
「しかし見ろよ、芸名。リー・シューフェンだぜ? 俺、シューフェンに結婚されちゃった!」
「ハオさんのことをまだ愛してる証拠ですよね!」
とララが最後まで言い切らないうちにメイファンはララに平手打ちを食らわした。
もちろんメイファン自身がダメージを受け吹っ飛び、ララは最後まで言い切った。
「お前……何ララの物真似してんの……?」ハオはアホを見る顔で言った。「それに何? その一人ドタバタ」
「……黙れ」
「それにしてもお前の言う通りだよぉ。シューフェンの俺に対する愛の証だよな、コレ。あぁ、早く帰りたい」
「死体にして帰してやろうか」
「にしても痩せたなぁ、シューフェン。ダイエット頑張ったのかなぁ」
「単に別人だろ」
「よし、俺も頑張るよ」ハオは久々に生気の溢れる顔で上を見た。「頑張って散打王に俺はなる!」

317 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 18:37:54.71 ID:jJ31+6oG.net
「久々の特訓だな」メイファンは楽しそうに言った。
「よーしゃーす」ハオは適当に挨拶した。
「ではいつもの『棒捌き』から行くぞ」
「ぃーす」
「10回×3セットだ」

ハオはまずメイファンの突きを10回すべて捌いた。

「グレートだぜ、俺」
「では次だ」

2回目はメイファンの突きを5回捌いた。

「あれ? 好不調激しいな、俺?」
「すぐに次だ」

3回目はメイファンの突きを10回すべて食らった。
ハオは泣いて崩れ落ちながら叫んだ。
「何が違うんだ!?」

メイファンは説明した。
「1回目は突くとこを見ながら突いた」
「あぁ」
「2回目は突くとこを見ずに、筋肉を使って突いた」
「ほぇ」
「3回目は突くとこを見ずに、筋肉でないものを使って突いた」
「筋肉でないものって何だよ? 脂肪か」
「さぁな」メイファンはニヤリと笑う。「それを感じられるようになれ。そして最終的には、見えるようになれ」
「……ってももう見えてるし」ハオは手を伸ばした。「お前の脂肪つったらここと……」
ハオはメイファンのお椀型の胸を触った。
「あと、ここぐらいじゃん」と言ってお尻を触った。「感じる?」
メイファンは頬を赤らめ、目を逸らしながら言った。
「……もぉ」
「意外な反応?」

318 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 18:41:26.89 ID:Vs1L/27l.net
しかし、駄目人間のハオはいつまでたっても上達しませんでした。

319 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 19:24:43.75 ID:yH2d34Mz.net
「アイゴー……」シムはTVを見ながら譫言のように呟いた。「シューフェン? ……シューフェン!」
「私は同じことを3回言う奴が嫌いだ」メイファンが肘をついて寝転んだ格好で言った。
「いや……シューフェンだよ! シューフェン!」
「わかっておるわ。読めばわかる」
「何べんも言ってたろ? 俺の恋人のシューフェンだ!」
「気が触れたか……コイツ」メイファンは側にあったクッキーを取ると、『気』で手裏剣を作りはじめた。「こんな美女がお前の恋人なわけがないだろう」
「シューフェンが何で女優!? え? え?」
「黙れ。大体お前の恋人はビーフンだろう」メイファンは鋭い鋼鉄の手裏剣と化したクッキーをハオの脳天めがけてぶん投げた。
「もうメイったら。シューフェンさんだよ!」
メイファンの口からララの声がしたのでハオは驚いて振り返った。そのせいで手裏剣は外れた。
「ム。かわされた」そしてハオが何も聞いてないのに答えた。「気のせいだ」
「しかし見ろよ、芸名。リー・シューフェンだぜ? 俺、シューフェンに結婚されちゃった!」
「ハオさんのことをまだ愛してる証拠ですよね!」
とララが最後まで言い切らないうちにメイファンはララに平手打ちを食らわした。
もちろんメイファン自身がダメージを受け吹っ飛び、ララは最後まで言い切った。
「お前……何ララの物真似してんの……?」ハオはアホを見る顔で言った。「それに何? その一人ドタバタ」
「……黙れ」
「それにしてもお前の言う通りだよぉ。シューフェンの俺に対する愛の証だよな、コレ。あぁ、早く帰りたい」
「死体にして帰してやろうか」
「にしても痩せたなぁ、シューフェン。ダイエット頑張ったのかなぁ」
「単に別人だろ」
「よし、俺も頑張るよ」ハオは久々に生気の溢れる顔で上を見た。「頑張って散打王に俺はなる!」

320 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 08:00:07.50 ID:pHL+MStx.net
「最後にこれを捌いてみろ」
そう言ってメイファンは棒を構えた。
ハオは集中する。しかし棒はなかなか来ない。ハオはボケーとし始めた。
そこへ突如、棒が飛んで来る。何の前触れも感じなかったハオは、「わぁ!」と叫んで棒をはね除けた。
「凄いぞ!」メイファンは驚きの声を上げた。「やはりお前は天才だ!」
「ななな何が?」
「今、私は突く場所を見ながら、筋肉でないものを使って突いた。言わばお前にとって『来る場所はわかるが来るタイミングはまったくわからないパターン』だ」
「はへぇ」
「これが避けられるということは、例えばピストルで撃たれたとして、飛んで来るコースだけわかっていればバットで打ち返せる、みたいなもんだ」
「そんなん人間じゃねぇ!」
「凄いぞ。お前は捌き力の天才だ」
「捌き力??」
「わかりにくければ反射力と言い換えてもいい。正しくは別のものもんだがな」
「せんせいむづかしくてよくかりません……」
「簡単に言えば『すっごーい』ということだ。あのリ……でも、これが出来るまで約2ヶ月かかったのだぞ」
「リ……って? 誰?」
「リ……リ……りゅうちぇるだ」
「弟子だったの!?」
「あとは私のフェイントに騙されない術を覚えろ。お前はアホだからいつまで経っても騙される」
「ふーん」
「ちなみにリ……はタイミングには苦労したがフェイントに引っ掛かることはほぼなかったぞ、お前の正反対だな」
「りゅうちぇる凄ぇ!!」
「とりあえず目を瞑って捌いてみるというのはどうだ」
「見えないでしょ!! こわい!!」
「見るんじゃない」メイファンは名言を吐くようにドヤ顔で言った。「感じるんだ」

321 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 08:46:59.49 ID:pHL+MStx.net
ハオは突っ込んだ。
「さっき『まずは感じられるようになれ、そして最終的には見えるようになれ』とか言ってなかった? 矛盾してるぞ」
「そっ……それはだな」メイファンはオロオロした。「あれだ。心の目で見ろ、ということだ」
「どっかのマンガで読んだセリフだろ、それ」
メイファンは全力の平手打ちでハオを泣かすと、言った。
「私は正しくは武術家ではない。ニセ武術家と言ってもいい。
武術書など真面目に読んだことがないし、武術の修練をしたのも幼い頃の2年ほどだけだ。
つまり私は天才だから、『ビューンと来たらバシッと返せ』みたいなことしか言えん。
お前に課す修練の内容も、正直7歳の時に遊びで思いついたメニューそのままだ。
しかし、リウ…ちぇるは、何の意味があるのかもわからない私の与える課題の中に、何か意味を見つけ、自分の糧として見せた」
「りゅうちぇる本当凄ぇな!!」
「だから私は機会を与えるだけで、何も教えん」
メイファンはまたドヤ顔で言った。
「お前が考え、お前自身で見つけるんだ」

322 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 10:10:12.60 ID:r+axI4sb.net
りゅうちぇるは勃起していた

323 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 10:32:54.71 ID:LsAFcwdr.net
「わ〜い自習だ自習だ〜」
「自分で見つけろ」と言われてハオはポテチを食べながらメイファンのプレステ4で遊びはじめた
メイファンもついつい一緒になって遊んでしまった

324 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 17:47:49.49 ID:OWeHmDFU.net
フライドチキンを食べながらドナルド・トランプは電話を取った。
「習近平殺り損ねただとコラ!」
「16人も差し向けといて全滅かコラ!」
電話の向こうの相手は言った。
「ブラック・ナイトメアが予想以上に手強い相手でして…」
「しかし足に重傷を負わせたとの情報が…。追撃するなら今がチャンスかと…」
トランプは答えた。
「わかったコラ」
「グリーン・スネークを向かわせろ」
電話の向こうの相手は叫んだ。
「あっ、あの最強の暗殺者を!」
「ネチネチと相手を追い詰め必ず殺すという…あの!」
「しかし万が一スネークを失うようなことがあったら大損害です!」
トランプは冷静な口調で言った。
「大丈夫だコラ。アメリカはいつ何時も最強でなければならんのだコラ」
「スネークを向かわせろ」
そう言うと電話を切り、コカ・コーラをイッキ飲みすると、最後に言った。
「スカッと爽やかコカ・コーラだコラ!」

325 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 18:34:36.63 ID:8v/gVw0o.net
しかしメイファンの足はもうほぼ治りかけていた。
習近平は国家予算に糸目をかけずメイファンの治療に費やした。
もちろん最強のボディーガードを万全のコンディションにしておくためであるが、早くララに会いたいからでもあった。
ただそうした医学治療の効果ももちろんあったにしろ、多くは自分の『気』を使っての治療が効を成していた。

部屋に戻ったメイファンは、床に座るとララを呼んだ。
「『手』を貸してくれ」
「オッケー」
するとメイファンの腕から先だけが白くなる。
メイファンはその『白い手』を1日に何回か暇があるたびに傷口に当てていた。

ララは『気』が使えない。それは間違いである。
メイファンのように物を破壊したり武器に変形させたりする『気』は確かに使えず、戦闘においては役立たずなのは間違いないが、
物を直したり人を癒したりする『気』に関しては、むしろメイファンよりも上であった。
ただし『気』を使うことに関してはメイファンのほうがやはり何倍も長けており、
ゆえに治療をする場合も、ララの『気』をメイファンが使う時が最も強力であった。

弾丸が貫通した傷もわずか数日で完治させてしまう。
この『メイファンの白い手』があれば、もしかしたら誰かの癌を治すことすら可能かもしれなかった。

326 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 19:24:11.12 ID:o3plr9c2.net
だがシューフェンを助けることはないだろう。何故ならばハオがメイファンの元から離れる可能性があるし、
何よりメイファンはこの新しい「お兄ちゃん」を誰にも渡したくなかった。もちろんララにもだ。

327 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 19:28:22.97 ID:lGL1oEvD.net
リウ・パイロンとジョー・サクラバの一戦まであと一週間となった。

ジョー・サクラバは確実に調整をこなし、試合当日にはベスト・コンディションになるだろうと報じられていた。

「太いな……」
トレーナーの楊が絶望的な顔をして言った。
彼が口にするまでもなく、リウは明らかに調整不足だった。
「どうせ新しい彼女とデートして、旨いものをバクバク食っちまったってとこだろ?」
「俺が旨そうに食うと、彼女があまりにも楽しそうにするもんでな」
リウは幸せそうな笑顔で言った。
「ふざけるな!」楊はリウに掴みかかった。「お前、本当にあの散打王かよ? 別人が刷り変わっちまってんじゃないのか!?」
「最終調整はしっかりやるよ」リウは申し訳なさそうな顔もせずに言った。「そして必ず勝つ」
「まぁ、信じてるけどよ……」楊はリウの胸をポンと叩く。「頼むぜ、お前は新しい中国を導く英雄なんだ」
「あぁ」
「お前の敗北はただの敗北じゃない。伝説の終了を意味するんだぜ」
「わかってるよ」
「今日から彼女と会うの禁止な」
「もう昨日、彼女にそう言って来たところだ」
「よし! それでこそお前だ」
「大体……不可能だしな。彼女は広州、俺は今日から西安入りだ。距離にして1,680kmか」
「その1,680kmの距離を会いに行っちまいそうだから怖いんだよ!」

328 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 20:28:57.86 ID:lGL1oEvD.net
「可愛いは作れるってよく言うけど」ジョアンナ・ポンが化粧水を手で伸ばしながら言った。「美人は作れない」
「そうかなぁ」シューフェンは鏡の前に座らせられながら言った。「ジョアンナなら作れるんじゃない?」
「いやいや。美人モドキの化粧オバケなら作れるけどね、美人は作れないよ。だって骨格大事だもん」
「ジョアンナは骨格が好きだねぇ、本当に」
「たとえばさ、不美人のあたしでも何とか可愛くなることは出来る。女だからにはどっか可愛いところはあるもんだからね。それをメイクや髪型やファッションやらで飾れば」
「ジョアンナ可愛いよー。私は大好きだよ」
「ありがとう! あたしもシューフェン大好き」と言ってシューフェンの頬にキスをし、ジョアンナは続けた。「でもあたしは美人にはなれんのよ」
「そうかなぁ」
「うん。なれないの。美人は元が美人でなくちゃ」
「うーん。美人って、何なの? どういうのを美人っていうのかな」
「シューフェンが美人」
ジョアンナはそう言うと、シューフェンの顔をオモチャのようにいじくり回しはじめた。
「見て! これ、化粧水を塗っただけよ? 何、このすべすべの肌? 何、このキラキラの目? カラコンも入れてないのに?
気持ちがいいほどの鼻筋に、女でしかありえないこの花のような唇。そして、何よりバランスよ。
そのバランスを成り立たせているのが、骨格よ。あたしは断言するわ。美人とは高級な骨格なしにはありえないと!
骨格が雰囲気を左右するの。高級な骨格の上に咲く花吹雪が美人である!」
「そんなシロモンじゃないよ〜」
「でもね、骨格の上には適度なお肉がないとダメなのよ。痩せてキモくなるのはブスより美人のほう」
「バランスが崩れるから?」
「そう。……シューフェン、最近ダイエットしてるよね?」
「あー……」
「バランス崩れてるってほどじゃないけど、ちょっと気になるよ。気をつけて。美人はパーツでかいから痩せたら本当キモくなるよ」
「たとえば……」
「ん?」
「たとえばだよ? 癌にかかったらガリガリに痩せるっていうけど」
「癌?」ジョアンナは小さな目を見開いた。「シューフェン、癌なの?」
「たとえばの話だってば」シューフェンは慌てて元気よく笑ってみせた。
「キモくなるよ〜。シューフェンは癌なんかになっちゃダメ。最後にはオバケみたいになるよ」
「……オバケ」
「あ、これから撮るのが主人公ツァイイーが病気で死ぬ直前のシーンだから、それに合わせろって監督に言われたのかな?」
「あ……うんうん。実はそう」
「凄いな、すっかりプロだね〜。そう言えばリウ、西安に行っちゃったんだって?」
「うん……。一週間会えなくなるって」
「どーせ毎晩電話して来るでしょ」
「でもやっぱり、会えないのは寂しいな」
「よしっ」ジョアンナはシューフェンの肩をがしっと掴んだ。「今夜遊びに行こう! 一週間だけあたしがシューフェンの恋人になっちゃろう!」
「わー! ジョアンナ大好き!」
「あたしもシューフェンが大好きなのよー! リウがいるからデートにも誘えず寂しかったのよー!」
二人は抱き合い、少し離れたところでツイ・ハーク監督が自分も誘ってほしそうな顔で見ていた。

329 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 20:52:55.45 ID:hQ9qN1/R.net
ハオはアナルに突っ込んだ。
「さっき『まずは感じられるようになれ、そして最終的には見えるようになれ』とか言ってなかった? 矛盾してるぞ」
「そっ……それはだな」メイファンはオロオロした。「あれだ。心の目で見ろ、ということだ」
「どっかのマンガで読んだセリフだろ、それ」
メイファンは全力の平手打ちでハオを泣かすと、言った。
「私は正しくは武術家ではない。ニセ武術家と言ってもいい。
武術書など真面目に読んだことがないし、武術の修練をしたのも幼い頃の2年ほどだけだ。
つまり私は天才だから、『ビューンと来たらバシッと返せ』みたいなことしか言えん。
お前に課す修練の内容も、正直7歳の時に遊びで思いついたメニューそのままだ。
しかし、リウ…ちぇるは、何の意味があるのかもわからない私の与える課題の中に、何か意味を見つけ、自分の糧として見せた」
「りゅうちぇる本当凄ぇな!!」
「だから私は機会を与えるだけで、何も教えん」
メイファンはまたドヤ顔で言った。
「お前が考え、お前自身で見つけるんだ」

330 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 20:54:14.97 ID:lGL1oEvD.net
「シューフェンは美人。だけど、今まで自分であんまり磨いて来なかったわね?」ジョアンナはビールジョッキを豪快に傾けながら言った。
「仕事が忙しかったし、その時の彼に合わせてたのもあったかな……」シューフェンはポッキーを齧りながら答えた。
「何の仕事してたの?」
「ケータイ会社の電話対応係」
「お客に顔、見えないじゃん! なんてもったいない!」
「どーせ見えないからいっつもすっぴんで……」
「上海住んでたんだよね? 大停電で失業?」
「まぁ……そんなとこ」
「失業してよかったよね〜」
「あはは。失業してなかったらジョアンナにも会えてなかったよね」
「何よりリウにも、ね」
「んー……。でも前の彼が」
「え! リウよりいい男だったの?」
「いや、それはないけど」
「んー? 何で別れたの?」
「死んじゃったの」
「え」
「殺人事件に巻き込まれちゃったらしくて……」
「……ごめん」
「あ、いいのよ。それに、もしかしたら生きてるかもしれないって、刑事さんが」
「え。どういうこと?」
「死体は別人のものかもしれないって」
「なるほど」
賑やかなバーで暫く二人は沈黙した。
変な沈黙に吹き出しながらシューフェンが口を開いた。
「ごめん。なんか楽しい話じゃなくなっちゃったね」
「いいよ。てか、もしもさ〜」
「ん?」
「元カレが本当に生きてて、今、目の前に現れたらさ、シューフェンはリウとその人と、どっちを選ぶの?」
「リウよ」シューフェンは即答した。「目が覚めたの」

331 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 20:57:21.05 ID:hQ9qN1/R.net
「久々の特訓だな」ホイホンは楽しそうに言った。
「よーしゃーす」チョンボは適当に挨拶した。
「ではいつもの『棒捌き』から行くぞ」
「ぃーす」
「10回×3セットだ」

リュウはまずホーヒーの突きを10回すべて捌いた。

「グレートだぜ、俺」
「では次だ」

2回目はドゥイの突きを5回捌いた。

「あれ? 好不調激しいな、俺?」
「すぐに次だ」

3回目はチャーの突きを10回すべて食らった。
リンは泣いて崩れ落ちながら叫んだ。
「何が違うんだ!?」

タンロンは説明した。
「1回目は突くとこを見ながら突いた」
「あぁ」
「2回目は突くとこを見ずに、筋肉を使って突いた」
「ほぇ」
「3回目は突くとこを見ずに、筋肉でないものを使って突いた」
「筋肉でないものって何だよ? 脂肪か」
「さぁな」ハンはニヤリと笑う。「それを感じられるようになれ。そして最終的には、見えるようになれ」
「……ってももう見えてるし」ウーチェは手を伸ばした。「お前の脂肪つったらここと……」
ロイはシェンのお椀型の胸を触った。
「あと、ここぐらいじゃん」と言ってお尻を触った。「感じる?」
ミンメイは頬を赤らめ、目を逸らしながら言った。
「……もぉ」
「意外な反応?」

332 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 22:01:42.01 ID:lGL1oEvD.net
マンションの自分の部屋で、ベッドに潜りシューフェンは電話をしていた。
「うん……。うん……。早く寝なきゃダメよ。私のことは心配ないから。……うん。頑張って。うん。大丈夫だから」
「……うん。…………うん。わかった。試合の日、行くからね。楽しみにしてる、会えるの。じゃあね、おやすみ。愛してる、ロン」
電話を切り、布団に潜り込んだシューフェンはやがてもぞもぞし始めた。
右へ寝返りを打ち、すぐにまた左へ向く。
足がそわそわと忙しなく動く。
「どうせもうすぐ消えてしまうのに」
呟きはじめる。
「どうして私はご飯を食べているんだろう?」
映画の台詞の一節だった。
「私、ジョアンナを騙してる……」
そう言うと暫く黙り込み、もぞもぞ動くのも止まっていたが、やがて勢いよく飛び起きながら激しく泣き叫んだ。
「ずっと側にいるって言ってくれたじゃない!!」
暫く布団をバンバン叩きながら泣いたと思うと、ベッドに倒れ込み、またすぐに起き上がるとテーブルへ向かって歩いた。
医師から処方されている睡眠薬を飲むと、ようやくシューフェンは眠りに落ちて行った。

シューフェンの眠りが深くなった頃、カーテンの向こうに人影が現れた。
白い手が浮かび上がると、窓ガラスがゴムのようにふにゃふにゃになり、白い手は隙間から入り込んで鍵を開けた。
黒い工作員服に身を包んだメイファンが音もなく入って来た。
メイファンはシューフェンの枕元に立つと、その顔をじっと見つめた。
「はぅぅぅ……。実物はさらに綺麗だなぁ」小声でため息を漏らす。
「泣いてたみたいだね」ララの声が小声で言った。
「サイン欲しいなぁ。起こしたいなぁ」そう言いながらメイファンはシューフェンの涙を指で拭い取り、自分の唇に塗った。
「起きちゃうよ〜」
メイファンは黙って寝ているシューフェンを観察した。そして言った。
「ふむ。たかが肉と骨のかたまりのただの血の入った袋なはずの人間がなんでこんなに美しいんだろ」
「早く! 仕事済ませちゃおうよ〜〜」ララの声は焦っている。
「ちょっと待て。この唇をぷにぷにしてからだ」
そう言ってメイファンは半開きの桃色の唇を黒い指でぷにぷにした。
「あ、それ、あたしもやりたい」ララがせがんだ。
白い指に唇をぷにぷにさせながら、メイファンはやっと気がついた。
「気持ちいい〜……あれ? メイ、どうしたの?」
メイファンは悲劇を見る顔でシューフェンのお腹のあたりを見ていた。
しかし静かに首を横に振ると、「関係ないな」と呟いた。
「何が〜?」
そう聞くララには答えず、メイファンはポケットから仕事道具を取り出した。
シンバルを叩く猿の玩具のシンバルの部分だった。

333 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 23:57:00.92 ID:lGL1oEvD.net
今日もハオはプレステ4の新作ゲームをダラダラと遊んでいた。
「父親の手紙ってどこにあるんだ?」
「確か家政婦の部屋の引き出しの上から3番目だ」
メイファンはついゲームの攻略情報を答えてしまい、首を横に振ると、切り出した。
「なぁ、ハオ」
「ん〜?」
「昨日、シューフェンの部屋へ行って来た」
「は?」
「夜にな」
「は?? 何しに??」
「頭の中に超小型爆弾を埋め込んで来た」
「は???」
「これで」
と言いながらシンバルを叩く猿の玩具のシンバルを取り出すと、指に挟んで回して見せた。
「こうやって」
回るシンバルに凍気を込めると、シンバルは鋭利な刃物に変わった。
「頭の蓋をパカッと外した」
「あ!!???」
「脳味噌でた」
「てめぇ!!!!!!」
「そこに爆弾を埋め込んで来た」
「言っていい冗談と悪い冗談があるぜ!!」ハオは立ち上がった。
「冗談ではないぞ。証拠に写メも撮って来た」
そう言って見せたメイファンのスマホには、寝顔のシューフェンと目をきらめかせてピースサインをキメるメイファンが並んで写っていた。
「こっちも」
と言って見せた写真ではほっぺたをくっつけて写っていた。
「こんなのも」
シューフェンの口をガバッと開かせ、鼻の穴に指を突っ込んでいるメイファンの姿が写っていた。
ハオは言葉を失い、拳をわなわなと震わせて立っていた。
「安心しろ。起爆装置は絶対に誤作動しない場所に置いてある」
そしてハオは考えてみた。こういう時、メイファンは嘘ばかりつく奴だったか、それとも嘘はつかない奴だったかを。
答えはフツーに半々だった。
「シューフェンの頭が吹き飛ぶのが嫌なら特訓しろ」
「……嘘だろ」
「嘘だと思うのならプレステ続ければいい」
「許さんぞぉぉぉ!!」
「別にお前に許して貰わんでもいい」

334 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 00:08:07.27 ID:D6IPId6u.net
そして中国は終わった

335 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 04:37:01.37 ID:MgMiZ+m8.net
「久々の特訓だな」メイファンは楽しそうに言った。
「よーしゃーす」ハオは適当に挨拶した。
「ではいつもの『棒捌き』から行くぞ」
「ぃーす」
「10回×3セットだ」

ハオはまずメイファンの突きを10回すべて捌いた。

「グレートだぜ、俺」
「では次だ」

2回目はメイファンの突きを5回捌いた。

「あれ? 好不調激しいな、俺?」
「すぐに次だ」

3回目はメイファンの突きを10回すべて食らった。
ハオは泣いて崩れ落ちながら叫んだ。
「何が違うんだ!?」

メイファンは説明した。
「1回目は突くとこを見ながら突いた」
「あぁ」
「2回目は突くとこを見ずに、筋肉を使って突いた」
「ほぇ」
「3回目は突くとこを見ずに、筋肉でないものを使って突いた」
「筋肉でないものって何だよ? 脂肪か」
「さぁな」メイファンはニヤリと笑う。「それを感じられるようになれ。そして最終的には、見えるようになれ」
「……ってももう見えてるし」ハオは手を伸ばした。「お前の脂肪つったらここと……」
ハオはメイファンのお椀型の胸を触った。
「あと、ここぐらいじゃん」と言ってお尻を触った。「感じる?」
メイファンは頬を赤らめ、目を逸らしながら言った。
「……もぉ」
「意外な反応?」

336 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 08:10:32.32 ID:gwCYo/AZ.net
「てめぇ本当にふざけんなーッ!!」
ハオはメイファンに殴りかかった。
「反抗するのか?」
メイファンはハオのパンチを掌打で軽く受けた。ハオは壁まで吹っ飛ばされた。
「起爆装置の前には24時間私の部下がじっと座っている。お前が従順に特訓を受ける気がないと判断したら私はそいつに電話をし、ボタンを押させる」
壁で背中を強打し動けなくなっているハオの前に立ち塞がり、メイファンは掌を花のように上へ向かって開いて見せた。
「爆(bao)! だ」
『忘れてた』ハオは歯ぎしりしながら思った。
『最近一緒にプレステで遊んで仲良くなってたから忘れてた。コイツはそう言えば血も涙もない殺し屋だったんだ。
他人の命を糧にして飯を食ってる奴なんだ。目的のためなら他人なんて道具か玩具にしか思えない奴なんだ!』

337 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 08:28:42.60 ID:gwCYo/AZ.net
「これから私はお前を10回棒で突く」
道場に立ち、メイファンは言った。
「突く場所を見ずに、筋肉を使わずに突く。ちなみにこの突き方をこれから『牙突』と呼ぶことにする」
ハオは思った、「なんか『るろうに剣心』で聞き覚えが……」
「今までお前が一回も捌けたことのない突き方だ。今日こそは一回だけでもいいから捌いて見せろ」
「ムリ」
「ちなみに今日も10発すべて食らったら電話してボタンを押させる」
「!」
「そしてお前も不要だから処分する」
「……」
「処分すると言っても殺しはしないから安心しろ。シューフェンの首なしボディーと一緒に独房へ監禁してやる。死ぬまでだ。生き地獄を堪能しろ」
「やめて……」ハオは泣き出した。
「いいから。構えろ」
「……やらない」
「ボタンを押させるぞ」
ハオはゆっくりと構えをとった。
「ではまず一発目、行くぞ」
ハオは集中しようとした。出来ない。心が乱れている。
反応すら出来なかった。腹にもろに食らった。ハオは今朝食べた烏龍麺のゲロを吐いた。
「あーあ」メイファンは表情を変えずに言った。「いつもなら反応だけは良いのに。どうした」

338 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 08:43:48.97 ID:gwCYo/AZ.net
「今日はなんか……頭が痛いのよね」
鏡の前に座り、シューフェンは言った。
「大丈夫? お薬持って来よか?」
ジョアンナがメイクを施しながら心配そうに覗き込む。
「薬はね、飲んでるの」
別の病気のための薬のことだったが、飲み合わせが悪いといけないと思い、シューフェンはそう言った。
「シューフェン、これ、枕の跡?」
ジョアンナが指差したところを鏡の中に見ると、右のこめかみの上のあたりにうっすらと横に線が入っていた。
「やだ。目立たないかな」
「髪で隠れるところだから大丈夫だとは思うけどね」
「うーん……。本当にうっすらとだし……ここだけだし……大丈夫かな」
「それにしてもシューフェン、めっちゃ寝相が悪いんだね」
ジョアンナが明るく笑った。

339 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 09:08:44.63 ID:gwCYo/AZ.net
「おいおい」メイファンはがっかりした表情をしていた。「火事場のバカ力とやらを期待したのに……こんなものかよ」
ハオは項垂れていた。全身汗とアザだらけである。
「立て」メイファンは命じた。「次が最後の一発だ。死ぬ気で捌け」
ハオは激しく首を横に振った。
「もう……無理です」
「立て」
ハオは首を横に振った。
「押すぞ」
ハオは無茶苦茶首を横に振った。
「とりあえずこちらを見ろ」
ハオはゆっくりと顔を上げた。
「私の周りに何か見えるか?」
その時メイファンは全開で自分の『気』を放っていた。これが見えないならコイツは見込みがない。本気で処分してしまおうと考えていた。
「見えない」
「そうか」メイファンは目を閉じた。「残念だ」
「見えない……けど、何かモヤモヤしたものを感じる」
「何だと?」
「お前の周りに、何かがあって、ゆっくり動いてる」
「そうだ」メイファンは棒を構え、一振りして見せた。「今、そのモヤモヤはどうなった?」
「お前より先に……動いた」
「それだけか?」
「って言うより……棒を振ってるのはお前じゃなく、そのモヤモヤだ!」
ハオは自分から立ち上がった。そして構えをとる。目玉が燃えていた。
「行くぞ!」
「おう!」
床を見ながら顔面めがけて放ったメイファンの棒の先がハオの顔面を直撃した。
「シュっ……」
そう言い遺してハオは床に倒れた。
涙と血と汗とゲロで床は池のようになっていた。
「おいおい」メイファンは優しい声で言った。「初めて棒に手がかすったな。おめでとう、合格としておいてやろう」

340 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 09:53:50.46 ID:gwCYo/AZ.net
ララが部屋に入って来た。
「ララ!?」ハオは驚いて声を上げた。「死んだんじゃなかったのか!?」
ニコニコしながら入って来たララの顔が「ハァ?」に変わった。
「だって君、メイファンに首斬られて、スイカみたいにぶら下げられて……」
「あれはメイがスイカに『気』を込めて私の首に見せてただけですよ〜」
「よくわからんが……とにかく生きててよかった!」

ララは白い手を使ってハオを治療した。
「今日は特別傷だらけですね」
「ひでぇもんだよ……」
「でも今日のハオさん、格好よかったですよ」
「見てたの!?」
「はい」
「どこで!?」
「なんて言うか……カメラを通して……ですね」
やはり隠しカメラがあるのか。ハオは納得した。

「なぁ、ララ」
ララはハオの胸に手を当てながら「んっ?」と反応した。
「シューフェンの頭に爆弾を仕掛けたってメイファン言ってたんだけど、本当だと思うか?」
「本当ですよ」ララはにっこりと笑って顔を合わせた。「私もその時一緒にいましたから」
「は??? 何で止めてくんなかったの!!??」
「止める?」ララは不思議そうに口を小さく丸くした。「なぜ止める必要が?」
「だって爆弾だぜ??? 他人の彼女の頭の中に仕掛けるなんて、人間のすることじゃないだろ???」
「いえ、だってそれがメイちゃんの仕事ですし」ララはハオの最後に突かれた顔の傷を癒しながら言った。「ハオさんが頑張らないなら彼女さんは死んで当然じゃないですか?」
「当然だって!?」
「えぇ」ララはハオが何を言ってるのかわからないという顔をした。「愛し合っているなら生きるのも死ぬ時も一緒。当然でしょう?」
「ひひひひひどいとは思わないの?」
「あ。それはちょっと思います」
ハオは突破口を見つけた気がして一気に攻めた。
「だろ? 生きるも死ぬも一緒、って君、今言ったけど、一緒に生きさせて貰えてないんだぜ? 強制的に引き離されて、『一生お前はシューフェンとは会えない』とか言われてんだぜ?」
「そうですよね」ララは同情する眼差しでハオを見つめた。
「俺、可哀想だろ?」
「ハオさん、可哀想……」ララの目に涙が浮かんだ。
「妹がこんなことをしてごめんなさい、って思うだろ?」
「ごめんなさい」ララは涙を流した。
「じゃあ起爆装置のある場所を教えてくれ!」
「残念でした」そう言ってララはにっこりと笑った。
「は?」
「私はその場所を教えられていないんです。それに知ってても教える気はありません」
「なんで??」
「さぁ、今日の治療は終了ですよ〜」
そう言って薬箱を片付け、ララは立ち上がり、振り向きざまに言った。
「私は『頑張るハオさん』が好きだからですよっ」

341 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 10:49:17.19 ID:gwCYo/AZ.net
シューフェンは今夜もリウとの長い電話を終えると、すぐに睡眠薬を飲んだ。
「早く。夢の中へ連れて行って」
実際には薬で夢も見ない深い眠りに入るのだが、『永遠の眠り』に比べればそこは夢の中とも言えた。
「彼が側にいるみたいな、この幸せな気持ちのまま……」
最後まで呟くことなく、彼女は深い眠りに入って行った。
すぐに窓が開く。
黒い工作員服に身を包んだメイファンが音もなく入って来た。
「今日もお会い出来て幸せ」ララの声が言った。
「ララ、『手』を貸せ」メイファンが静かに言った。
「え? なんで?」
「いいから出せ」
メイファンの腕から先が薄闇の中、すうっと白くなる。
「何を治すの?」
「それは私に任せろ。ララはとにかく全開パワーで『気』を放て」
メイファンは白い手をシューフェンの腹部に当てると、一時間ほどそこでじっとしていた。

「帰るぞ」
外へ出たメイファンは自転車を漕ぎ、飛行場へ向かった。
停めていたJ-20ジェット戦闘機に乗り込むと、エンジンを点火させた。

「ねぇ、シューフェンさん病気なの?」ララが聞く。
ヘルメットを被っているのでマッハで飛行するジェット戦闘機の中でも自分の口が発する声はよく聞こえる。
「おそらく……お腹のあたりのどこかの癌だ」
「ええ!?」
「余命はあと1ヶ月程度だろうな」
「そんな……」
「あれ程のもの……治療することはまず無理だ。しかし延命させることは出来る」
「ハオさんに知らせなきゃ……」
「アホ! 絶対に教えるな」
「なんで?」
「特訓どころじゃなくなるだろう。それにまた脱走とか無駄なことに時間を費やされるのはムカつく」
「じゃあ……シューフェンさんを助けるのはなぜ?」
「私もいろいろ悩んだんだが……」
「メイちゃんの優しさ?」
「私にそんなものがあると思うか?」
「すっごく思うけど?」
「シューフェンは有名人だ。しかも今が旬の、な。病気が発覚したらTVで大々的なニュースになる。それどころか死なれでもしたら……」
「あぁ」
「だろう?」
「『頑張るハオさん』じゃなくなってしまう……」
「とりあえずリウ・パイロンを殺すまではシューフェンには生きてて貰わんと困る」
「あの任務を遂行するまで、じゃないんだ?」ララは声を上げて笑った。
「任務なんかどーでもいい。お前もそうだろう?」
「そうね」ララは静かに言った。「リウ・パイロンを殺してくれて、ハオさんが生きててくれれば、あとはどうでもいいわ」

342 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 13:25:48.65 ID:gwCYo/AZ.net
ララは繰り返した。
「この国がどうなったって、私はべつに構わない」

343 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 15:13:24.42 ID:D6IPId6u.net
そしてララは日本へ亡命して行った。

344 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 18:08:51.99 ID:EfpGpROm.net
オザワ先生「ようこそ日本へ。記念にファーウェイの最新スマホを進呈しよう」
ララ「余計なものは入ってないわね?」
ララはオザワ先生の屋敷でしばらくホームヘルパーとして働くこととなった。

345 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 18:45:21.12 ID:vBUrdx5X.net
町の大通りから路地へ曲がると様々な店や屋台が立ち並び、賑やかに中国語が飛び交っている。
その中に混じって3人の男が日本語で会話をしていた。
「なんかさぁ、うまそうだと思っても、うかつに買ったり出来ないよなぁ」
ジョー・サクラバは冬でもタンクトップだ。
「あぁ。犬肉とか使ってるかもわからないからな」
ゴージャス哀川はいつものようにきっちりと縦ストライプの黒いワイシャツの上に白いスーツを羽織っている。
「というか、日本語で喋ってて大丈夫なのか?」一徹はびくびくしていた。「急に後ろから殴られたりしないのか」
「それなら」ゴージャス哀川が言った。「そんな日本人丸出しの豪華な着物なんか着て来るなよ」
「大丈夫だろ、いくらなんでも」ジョーがそう言っても一徹はまだびくびくしている。
「抗日ドラマとか見て喜んでいる奴らだと思うと恐ろしくて……」
「抗日ドラマ?」ジョーが聞いた。「何だそれ?」
「知らないのか」ゴージャスが得意気に知識を披露する。「日清戦争の頃を舞台に、怪しげな武術を使う中国人が日本人をやっつけまくるドラマさ」
「そんなん流行ってるの?」
「あぁ。観たことはないが、アイドルみたいなチャイナ服の少女とかが大日本帝国の軍人大勢を相手に拳法で首を飛ばしまくったりするらしい」
「何ていうか、悪趣味だな、それ」
「反日感情の現れだろうな、下等民族のくせに」
「っていうか、やっぱり観光客向けのレストランとか行きゃよかったかな」ジョーが言った。
「まぁいいじゃないか」ゴージャスはよく喋る。「中国の庶民の生活を見るのは社会勉強になる」
「こうやって見るとやっぱり発展途上国だよなぁ」ジョーが言う。「色々とダメだよ」
「トイレに紙流せないしな」ゴージャスが歯を剥いて笑った。
「掃除してあっても汚ぇし」ジョーも同じく笑った。
「さっきそこのトイレで用を足そうとして来たが」一徹が言った。「便が床に散乱しておってとても用を足せなんだ」
「しかも個室に壁ないだろ?」とゴージャス。
「あるにはあったが腰までじゃった。加えて扉が、ない」
ジョーとゴージャスは爆笑した。
「あとコイツらやたら高いタワーやビルを建てたがるが」ゴージャスがまた喋る。「大丈夫なのかね、あれ」
「日本と違って地震が少ないとは聞いた」一徹が言った。
「でもたまーの大地震が来たらあっという間に倒れるんじゃねぇの」
「そん時ゃリウ・パイロンが受け止めてくれるんだろ」
ジョー・サクラバが笑ってそう言うと二人は黙った。
「奴のことはバカに出来ねぇぞ」ゴージャスが言う。
「あぁ、もちろん。奴は凄ぇ格闘家だよ」ジョーは答えた。「窮地を救って貰った礼もある」
「デコピン、猫だまし、壁ドンだっけ? お前のノーガードで3発受ける発言、あれで救われたよな」ゴージャスは笑った。
「しかし強いのは俺だ。アジアの盟主ジャパンでヒーローと呼ばれるこの俺だ」
「あぁ、実績も強さも」

346 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 19:01:31.74 ID:vBUrdx5X.net
「すべてお前が上だぜ」ゴージャスは途中で送信してしまったが、めげずに言った。
「長文すぎたからちょうどよかったと思うぞ」一徹が慰めた。
「無敵と謳われたブラジルのクレージー3兄弟に土をつけたのもお前だ。リウ・パイロンなんて日本じゃ相当の格闘技オタクぐらいしか知らないぜ」
「奴のビデオ、いろいろ観たんだけど」
「うん?」
「タイのムエタイチャンプとか、韓国のテコンドー王者とかに勝ってるのな」
「ほう」ゴージャスは笑顔を崩さずに言った。「だがお前も……」
「俺は全部総合格闘技ルールだけど、奴はムエタイチャンプにはムエタイで、テコンドー王者にはテコンドーで勝ってんだよ」
「はぁ!?」
「なんか……底が知れなかった」
「しっ……しかし」一徹が言った。「今回は総合格闘技ルールだ。お前が有利だろう」
「だーかーらー」ジョーはイラついて言った。「その相手の有利な土俵ばっかりで奴はずっと勝って来てんだよ」
二人はごくりと生唾を飲んだ。
「ただ」ジョーは二人に背中を向けて言った。「プロレスラーと闘るのは今回初めてみたいなんだよね」
「ほう」
「ならば」
「そう」ジョー・サクラバはカッコつけて振り向くと、言った。「俺が最強のプロレスというものを教えてやるさ」

347 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 19:49:13.21 ID:vBUrdx5X.net
「なんとか間に合ったな」
トレーナーの楊はしかめっ面でそう言った。
「さすがだ……と言いたいところだが、短期間の調整で身体に無理がかかっている。気をつけろ」
「あぁ」
リウ・パイロンは猫背で椅子に座り、疲れた声で返事をした。
「元気がないな」
「そんなことないよ」リウは顔を上げ、無理やり笑った。
筋肉は引き締まったが、明らかに覇気がなかった。
「何度も言うが」楊は

348 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 20:03:48.02 ID:vBUrdx5X.net
またやっちゃった、と途中送信に顔を赤らめながらも言った。
「お前は散打の選手であり、総合格闘家じゃない。おまけにプロレスラーが相手なのは初めてだ」
「あぁ」
「プロレスに散打の立ち技と寝技はある。しかし散打にプロレスの関節技はない」
「あぁ」
「正直お前が不利だ。その上このコンディションときた」
「あぁ」
「はっきり言っていいか」
「なんだ」
「俺は棄権を勧める」
「バカ言うな」
「闘って恥を晒すよりは……」
「俺は勝つよ」
「逃げるは一時の恥だが……」
「約束したんだ」
「サクラバを舐めるな! 奴は女との約束とやらのパワーで勝てるような……」
「おい、楊」
「なんだ」
「てめぇ、俺のこと知らねぇのか?」
楊は背筋がぞくりとした。
しかしリウは再び覇気をひそめ、力のない声で言った。
「信じろ」

349 :創る名無しに見る名無し:2018/12/15(土) 20:05:06.79 ID:vBUrdx5X.net
「寝技って書いちゃったけど、投げ技の間違いな」楊は訂正した。

350 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 00:50:09.35 ID:07+qltDc.net
パンパンパン
オザワ先生「むうっ これはたまらんっ もう出るっ!」
ドピュドピュ
ララ「あん、中に出しちゃダメって言ったのにぃ・・」

351 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 06:17:24.49 ID:ao5BHGY8.net
メイファンはしごきの鬼の眼をしてハオの前に立った。
「昨日の特訓でコツは掴んだな?」
「あぁ」
「では行くぞ。今日こそ『牙突』を捌いて見せろ!」
ハオは構えた。
メイファンもゆっくりと、棒を構える。
緊張が走る道場に突然、メイファンの口からララの声が響いた。
「ハオさん! シューフェンさんはぶりぶりぶりぶり!」
メイファンは棒を放り投げて道場から走り出て行った。

352 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 06:30:23.76 ID:ao5BHGY8.net
メイファンは説教室にララを連れ込んだ。単に物置部屋に一人で入っただけであるが。
「ララ! 一体何を言い出すつもりだった!?」
「だってぇ〜……ぶり」
「ぶり……ハオにあのことは言わないって昨夜同意したよな!?」
ちなみに「ぶり」の部分は二人同時に喋っているのである。
「わかってるし……あたしも内緒にしたいんだけど……ハオさんの顔を見たら……つい」
「つい? 何がついだ」
「可哀想になって……」
「奴は可哀想なのが基本だろうが!!」
「でも、一番に知るべきはハオさんなのにぶり……」
「ぶりだから女は嫌だ」メイファンは目を閉じ頭を抱えた。
「メイだって女ぶり……」
「ぶりは所謂キャリアウーマンってヤツだ。仕事の邪魔をするな」
「……ごめんなさい」
「戻るぞ。もうバラそうとかするなよ? っていうか喋るな頼むから」
「……ハイ」

353 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 06:33:00.77 ID:ao5BHGY8.net
道場に戻ると珍しくハオは待っていて、メイファンを鋭く睨みつけた。
「てめぇ……シューフェンのことを糞だとか言いやがったな?」
ハオは燃えていた。

354 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 09:21:07.83 ID:OjAA0IOv.net
ハオは1ガロンの糞をひり出し道場を汚した

355 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 11:16:37.42 ID:eF8iRS8O.net
『気』の秘密がわかれば『牙突』もただのフェイント突きも同じである。
むしろ筋肉よりも早く動く『気』が読めるようになったことで、ハオは突きに来るポイントに集中できるようになった。
ハオはいきなりメイファンの『牙突』を10回中6回捌き、3セット目にして遂に10発すべてを捌いた。
しかしそれであまり嬉しそうでないハオを見て、メイファンは道場を出ると言った。
「ララ」
「ん?」ララの声が答える。
「今日はハオの治療やめろ」
「もっ、もうバラそうとかしないから! 大丈夫だから!」
「そうか」
「うんうん」
「では……気をつけろ」
「?」

356 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 12:05:21.23 ID:eF8iRS8O.net
ハオは部屋でララを待っていた。
「は〜いハオさん、お薬のお時間ですよ〜」
弾むように入って来た笑顔のララをハオは冷めた目で見、わざとらしく笑った。
「今日はすごく格好よかったですよ! 見てましたよ!」
そう言ってベッドに並んで座ったララの手が一瞬黒くなり、すぐに白く戻ったが、ハオもララ自身も気づかなかった。
「ララ」ハオは布団の中に入れていた右手を素早く出すと、ララに後ろから抱きついた。その手にはナイフが握られていた。
ララは体がこわばり、声も出せなかった。
「メイファンのとこへ案内しろ」
ナイフをララの白い首筋に突きつけながらハオは言った。
「はっ、ハオさん、これってまるで脅迫みたいですよっ?」
「当たり前だ」
「気づいてるんですかっ? 私を脅迫してるみたいな格好に……」
「脅迫してんだよ」
ララはハオの本気をようやく悟り、信じられない展開にガクガク震えながら泣き出した。
「お前を人質にして起爆装置を手に入れる」
ララはメイファンが何か上手いことを喋ってくれるのを期待した。しかしメイファンは黙っている。
「そしてそれを持って俺はここを出て行く」
「無駄です。メイは私の命なんか何とも思いませんよ」とララは言おうとしたが言えなかった。そんなわけないからだ。
「アイツの強さのカラクリが見えるようになった俺だ。もうアイツも怖くない。お前を人質にとれば絶対ここから逃げられる」
「ひぃぃぃぃん」とララは声を上げて泣き出した。
「泣いても無駄だ。連れて行け」
ララは諦め、素直にメイファンのところへハオを連れて行こうとして、気づいた。「あっ、そうか」
「何が『そうか』だ」ハオは急に冷静になったララにイラッとした。
メイファンはもちろんここにいる。ララが本当にピンチならとっくに黒い手が出て、ハオをボコボコにしているだろう。
メイが出て来ないのはきっとハオさんに殺気がないからなんだ、私は今、全然ピンチなんかじゃないんだ。
そう考えるとララは体のこわばりが解けた。
しかしこのまま私が何も出来ないなら、最終的にメイは私と身体を交代し、ハオさんに秘密がバレるだろう。
そうなったらきっとメイは、ハオさんの前では絶対に私と身体を交代しなくなる。
私はメイファン最大の弱点なのだ。
メイファンとララが同じ身体に住んでいるとバレれば、ハオさんはララの時を躊躇なく狙って来るだろう、ここから逃げるために。
忘れてたけどハオさんも強い武術家だ、黒い手だけでは防ぎきれない。

357 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 12:38:40.71 ID:eF8iRS8O.net
なぜメイファンはすぐに出て来てハオをボコボコにしないのか?
秘密がバレてもメイファンには何も支障はない。単にララを外に出さなければいいだけのことだ。
だがそれがもし嫌なら、ララに自分で何とかしろとメイファンは言っているのだ。
「嫌」ララは言った。
「イヤとか言うな!」ハオは少し情けない声で脅した。
正直、ララに拒否されるのが一番困るのだった。いつも癒してくれる優しいララをナイフで傷つける気など実は一欠片もなかった。
「私、こんなことをされても」ララは涙を湛えた瞳で振り返った。「ハオさんが好きなんです」
ハオは自分を無力だと思っている、ララはそれが少し悔しかった。私にだって凄い武器があるんですよと教えてやりたかった。
「うるさいうるさい俺にはシューフェンが一番大事なんだ!」
「それでもいい」ララはそう言うと、ララの持つ最大の武器を最大出力で放った。
大量放出されたフェロモンがハオを妖しく包み込む。
「それでもいいから……一時だけでも」
ララは濡れた瞳をだんだんと近づけて行く。
「私にも幸せを……ください」
ララの白い手がハオの胸を滑り降り、ゆっくりとズボンの中に入って来た。
「やめろ……俺を舐めるな、こう見えて素人童貞じゃねぇんだぞ」
そう言おうとしてハオはただ「あはぁ」と声を漏らした。
半開きの桃色の唇が近づいて来る。中で柔らかそうな舌が蠢いている。吐息がかかる。
ハオは目を閉じ、チュウの口でララを迎えた。
ズボンの中に入ったララの手は、最大サイズを超えて熱くなっている如意棒を素早く飛び越えると、キンタマをぎゅっと握った。
「あぎゃ!!??」
悲鳴を上げ、ナイフを落としてバタバタするハオを見ながらも、ララの握力は緩まない。
「やめて! やめて! 潰れる!」
ララは唇をぎゅっと結んでハオを涙目で睨み、更なる力を込めて潰そうとしたが、ふいに手が黒くなり、ズボンから抜け出した。
「ハオさんのバカ!」
そう言い残してララは部屋を出て行った。

358 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 13:29:49.32 ID:T3gvFApq.net
ララは説教室にメイファンを連れ込んだ。単に物置部屋に一人で入っただけであるが。
「メイっ! なんで助けてくれないの!?」
「……バレるだろ」
「メイならなんか上手いこと言ってあの場面をうまぷりぶりぶりぶり……」
「ぶりぶり……私がララの声真似下手なの知ってるだろ」
「同じ声帯なのに何でよ!!」

359 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 14:55:41.57 ID:T3gvFApq.net
「ごめんね、メイ」
夕陽の射し込みはじめた説教室でララは、膝を抱え、涙を一粒こぼしながら言った。
「私なんか一緒に産まれて来なかったらよかったよね」
「また始まったか」メイファンの声がため息をつく。「湿っぽいのやめろ」
「私なんか……幽霊のくせに人が大好ぶり」
「ぶりは……ララは幽霊じゃないぞ」
「幽霊よ。身体がないんだもん」
「それでもちゃんと存在している、立派な人間だ」
「ハオさんのことが本気で好きになっちゃったのに……恋愛できる資格なんかなくて、メイの仕事の邪魔にもなって……」
「本気で好きになったのか」
「うん」
「アレを」
「うん」
「アレのどこがいいんだ? キンタマか?」
「メイと同じ理由よ」
「いじめると面白いからという理由か。なるほど……」
ララはくすっと笑うと言った。
「メイはさ、あたしと喋る時だけ人間らしかったよね、昔から」
「どういう意味だ?」
「他の人はみんなメイにとって道具みたいなものだったでしょ」
「そうか?」
「そうだよ? だからみんながメイのこと怖がるの。人の命をモノみたいに扱う、決して人になつかない黒豹みたいだって、みんなが言うの」
「まぁ、なついた覚えは確かに……ほぼないな」
「ハオさんといる時のメイ、人間らしいよ?」
「は? 立派にモノ扱いしてると思うが?」
「だってお兄ちゃんといた頃のメイに似てるもの」
「……リウ・パイロンのことをお兄ちゃんと呼ぶな」いつも表情の乏しいメイファンの声が殺気を帯びた。
「私達のことを裏切るまでは」ララは遠くへ視線を投げた。「お兄ちゃんだったでしょ」
「あそこまでの話だ」
「あそこからの続きを見てるのよ、今」
「続き?」
「うん。ハオさんに」
「ハオも迷惑な話だな、勝手にララの新しいお兄ちゃんにされて」
「私の話じゃないんだけど……」
「誰の話だ」
「まぁ、私達、の話か」
「私はアレを兄だとはぶりぶり」
「ぶりぶりまでに人を」
ララはそこで深呼吸をすると、言った。
「あれほどまでに自分でない相手を愛せる人って、少なくとも私は他に知らないわ」
「……まぁ、正直、きゅんとする時はあるが」
「ハオさんが私を愛してくれなくてもいい。私は、ハオさんが好き。そんなハオさんが、大好き」
「……」
「メイファン、今夜空いてるかの? 酒飲まんか」
突然現れたジャン・ウーに驚きもせずにメイファンの声が答えた。
「空いてない」

360 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 16:34:45.49 ID:OjAA0IOv.net
ハオはあと一歩でララに陥落するところであり、
彼はプライドでどうにか踏みとどまっていたが時間の問題だ。

ララもメイファンも表向きは相反していても
本心では歪んだ愛情を抱いていた。

361 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 16:40:54.70 ID:IYwYZIAh.net
その夜もメイファンは遙々広州へ飛び、シューフェンに『白い手』を一時間当てて帰って来た。
玄関へ入るとジャン・ウーが待ち構えていた。「飲むぞい」

「説教室でララと」ジャンは老酒をくいっとやると言った。「リウ・パイロンの話をしとったな?」
「珍しくな」メイファンは唇についた老酒を舐めながら言った。「たまには悪い思い出の話もするさ」
「ワシ、不思議なんじゃけど……パイロンはなぜお前を庇うんじゃ?」
「またそれか。何度も答えているように、あれは私を庇っているんじゃない」メイファンは老酒を一気飲みした。「奴の保身さ」
「しかし奴はお前に恨まれておるわけで、それならお前を潰してしもうたほうが……」
「恨まれているという自覚がないんじゃないのか?」
「まさか」
「っていうか、実際、私は奴を恨んではおらん」
「そうなの??」
「私が何を恨んでいるとジャン爺は思うんだ?」
「だって、棒の達人から棒を取り上げて、それで勝って……」
「あれは私を王者だと敬ってのことだ。将棋で言えば『飛車角落ちでお願いします』みたいなことだ。当然だった」
「にしても大人と子供じゃ。リーチもパワーも違いがある。それなら奴も棒を持って闘えばよかっt」
「今の奴はムエタイにはムエタイで闘う。そして勝っている。相手の土俵で相手を圧倒する、真の格闘王者だと言えるだろう。
同様に、奴は王者である私に対して、奴の土俵『徒手空拳』で闘うことを望んだのだ。真の王者ならば、相手の土俵でも勝たなければならん。
そして私は負けた。私が真の王者などではなくインチキ武術家、ただのケチな殺し屋、あるいはただの甘っちょろいガキだったというだけの話だ」
「……しかし、子供を相手にあんなに全力にならんでも」
「最初、私を子供だと舐めたがゆえに奴は私に完敗したのだ。そして自らの甘さに打ちのめされ、自信を喪失したことだろう。インポになったかもしれないほどに。
獅子は兎を狩る時にも全力となるべきなのだ。私は身をもって奴にそれを教え、奴はそれを実践したのだ。それに何より私は兎じゃない」
「……そして最後じゃ。勝敗が決した後、何もあんなことをせんでも……」
「そこだ」酔いが回ってフラフラになっていたメイファンはテーブルを叩いて言った。「そこに関しても、少なくとも私は、恨んではおらん」
「そうにゃの?」
「だが激しく憎んでいる。なぜ奴があんなことをしたのかがわからん。納得できん。大好きなお兄ちゃんがぶりぶりぶり。なんだララ?」
「リウ・パイロンに死を」
「ん。しかし私は弱い。奴より弱い。奴の顔を見るとなぜか戦意を喪失してしまう。ただの女の子になってしまうんだ。これって……」
「メイ?」
「はぁ〜……。あのことがなければ、今、私は朗らかで、皆から好かれる、可愛い女の子になってたのに……」
「そんなお前さん、気持ち悪いわい」
そう言いながらジャンが毛布をかけようとすると、いきなりメイファンが白くなって立ち上がった。
「ララ! やめろ!」

362 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 16:50:05.12 ID:IYwYZIAh.net
ハオはあれからずっと部屋でびくびくしていた。
ララがメイファンに言わないわけがない、ララを人質にして逃げ出そうとしたことに。
「なんで失敗したんだ〜、俺〜」
いつお仕置きがやって来るかと身構えたまま、しかしもう6時間が過ぎようとしていた。
ずんずんずんずんと廊下をどんどん迫って来る足音が聞こえ、バァンと部屋のドアが開いた。
「来たァ〜〜〜!!!」
泣き叫びかけたハオにララが全裸で飛びついて来た。
「ハオさ〜ん!」
「ラ、ララララララララ!?」
「あたし酔っ払っちゃった〜!」
「あ、あの、ララ、昼間はごめ……」
「正しくはぁ、酔っ払ったメイと身体交換しちゃった〜!」
「かかかかカラダ!?」

363 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 19:24:13.85 ID:IYwYZIAh.net
朝、起きるとララはどこにもいなかった。
「……夢?」

364 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 19:31:00.00 ID:IYwYZIAh.net
恐る恐る道場へ行くと、メイファンが少し気分悪そうに立っていた。
先制攻撃でハオは謝った。
「昨日は姉上様にあのようなことをして大変申し訳ありませんでしたっ!」
「は? 何のことだ?」
「!?」
「それよりハオ、今日も『牙突』の捌き特訓、やるぞ」
「お、おう! あれはもう文字通り朝飯前だぜ」
「20%捌けたから今日から30%な」
「!?」
「100%でやるとお前、穴開いて死んじまうから」
「!!!??」

365 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 19:32:10.17 ID:tIJlMejp.net
隣にはいつものようにハオに抱きつくように眠るメイファンがいるだけだった。

366 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 20:02:43.34 ID:bgQUSZNs.net
しかしハオはメイファンの30%の突きを全て捌いた。
さぁ、シャワー浴びて、部屋に戻って、ララが治療に来たら謝ろう、そう思っていたところへメイファンが言った。
「素晴らしい上達ぶりだ。褒美をやろう」
「何? キスでもしてくれんの?」
「町へ出るぞ。私服に着替えて来い」
「まじで!!?」

367 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 20:33:08.23 ID:bgQUSZNs.net
ハオは普通に玄関を出た。
あの日あった暗い壁はどこにもなく、振り返ると自分の出てきた建物が見えた。ただのありふれた平屋の何かの施設だった。

ハオはすぐさま逃げようと駆け出した。
しかし見えない紐でメイファンに首を引っ張られ、車に乗せられた。

『思った通りだ……』
ハオは車の中から町並みを眺めながら思った。
『ここは西安だ!』

368 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 20:46:18.87 ID:bgQUSZNs.net
西安の真ん中にある屋外レストランでリウ・パイロンは取り巻き達と食事をしていた。

「いよいよ3日後ですね、リウさん!」
何も答えずにリウはパスタを口に入れた。
「日本人なんかコテンパテンにのしちゃって下さいよ」
「そうそう、抗日ドラマみたいに」
「お前ら抗日ドラマなんか観てるのか」リウが顔を上げた。
「リウさんは観ないんですか?」
「あんなもの、悪趣味なだけだ」
「面白いですよー。爽快で」
「日本の植民地になる前の中国で、日本人を殺しまくる中国人を描いてるんだろう?」
「そうそう」
「そんな過去しか見ていないドラマ、観る必要がない」
「えぇ〜……」
「俺が見るのは未来だけだ」

369 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 21:01:51.80 ID:bgQUSZNs.net
西安の真ん中にある屋内レストランでジョー・サクラバと仲間達は食事をしていた。

「本当に中国ってYouTube見られないんだな」
「代わりのYouku(ヨゥクー)って何だよ。YouTube見せろよ」
「ファーウェイのスパイソフトウェアだか何だかのニュースにもビビるしな」
通りがかった大学生風の中国人がそれを聞きつけて「ブシュ・ファーウェイ。ファーウェイ、ノー。huawei」と言った。
どうやらhuaweiの正しい発音を真似してみろということらしい。
「ホアウェイ?」
「ワーウェイ?」
「ノー! 華微(huawei)ヨー」
「どうでもええわ!」
「1元やるからあっち行け!」
大学生は中国語で何やら文句を言いながら向こうへ消えて行った。
「しかし俺達、なんかとんでもねぇ所にいるんだな」
「さっさと試合終わらせて帰ろうぜ」
3人は運ばれて来たそれぞれラーメン、ナポリタン、焼きそばを口に運ぶと口を揃えた。
「味、薄っ!」

370 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 21:27:17.20 ID:bgQUSZNs.net
しかしハオを乗せた車は町中を抜け、飛行場に着いた。
「この辺りには高いビルがないんだ」
メイファンの言葉にハオは首をひねった。
「は? ビル??」
「しかも天津は知っての通り、大停電中」
「ビルって? ビルが何なの??」
メイファンは黙ってJ-20ジェット戦闘機のコックピットの後ろにハオを無理矢理詰め込むと、言った。「用事もあることだし……」
「広州へ飛ぶぞ」

371 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 21:37:47.65 ID:bgQUSZNs.net
ほんの1時間半後、ハオは広州にある地上111m、高さ530mのビルの上に立っていた。
「……何?」

「鳥になれ、ハオ」
メイファンは自分の台詞に酔いしれた。

372 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 21:50:17.42 ID:bgQUSZNs.net
ハオの足には既にロープが結びつけられていた。
長さ約100m、太さはちょうどバスタオルを絞ったぐらいの細さだ。

「これって……まさか……」
「遊園地のアトラクションでお馴染み、バンジージャンプだ」
「出来るわけねぇだろ!!!」
「これが出来ればお前も一人前だと認めてやろう」
「死ぬだろ!!!」
「飛べ」
「断る!!!」
「押すぞ」
メイファンはコートのポケットをまさぐった。
「ひでぇ!!!」
「んっ?」そう声を発すると、メイファンは困った顔をした。そして言った。
「私としたことがスマホを忘れて来た。お前のを貸せ」
「貸すわけねぇだろ!!!」
「あ、そう言えばお前も持ってなかったな」
施設を出る時、強制的にハオのスマホは置いて来させたのだった。もちろんシューフェンに連絡を取らせないためである。
「じゃあ、まぁ、飛べ」
「飛んでたまるかよ!!!」
「困ったなぁ」メイファンは無表情に言った。「お前が飛んでくれないと私も帰れないぞ」

373 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 22:11:44.04 ID:bgQUSZNs.net
「うーん。電話がかけられないとシューフェンの頭の爆弾の起爆ボタン押せんしなぁ」
ハオは座り込んでしまっていた。そっと首を伸ばし、下界を覗き見る。
「電話をかけに行こうにも、私がここを離れたらハオが逃げるしなぁ」
下界は遥か眼下に霞んでいた。
「困ったなっ」
「冗談やめて帰ろうよ」ハオが可愛く笑いながら言った。
その足はすくみ、いつの間にか腹這いになってジリジリと端から遠ざかっていた。
「お前が飛んだらすぐ帰る」
「飛ばねぇって!! あ、そうだ。昼飯まだ食ってないよな? お腹、空かないか?」
「お前が飛んだら広東麺でも食べに行こう」
「それは楽しみだね〜。僕、飛ぶよ」
そう言ってハオはその場で三センチほど飛んだ。
「ホラ見て飛んだよ? 食べに行こ?」
「ふざけてないで早く真面目に飛んでくれ」
「ふざけてんのはどっちだよ!!!?」

374 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 05:53:31.69 ID:9Tu9mSch.net
メイファンはハオを持ち上げると下界に投げ落とした。

ハオの断末魔を聞いたメイファンはガクガクと体を痙攣させ
股ぐらから溢れた体液が太股を伝い地面に滴り落ちる。

彼女はうっとりとした表情になり甘い吐息を吐いた。

375 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 07:53:51.80 ID:+sPfNGKc.net
しかしこいつら、ご近所からは相当変な目で見られている。

376 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:19:04.38 ID:0GQcXId9.net
「自分で飛ばねば修行にならんのだ」
そう言うとメイファンは>>374を棒で突き飛ばした。
111階から落下してアスファルトに叩きつけられた>>374は踏み潰した蜘蛛のようにバラバラになった。
「あと変な目で見られるのは慣れっこだ」
メイファンは>>375を蔑む眼光で見下すと、>>375はペッと唾を吐いて逃げ出した。
「恥ずかしがらずに早く飛べ、ハオ」
「そんなん言うならまずお前が飛んで見せてくれよ!?」
「楽しそうだが……遊びじゃないんだぞ」
「飛べねーんだろ?」
「あぁ、飛べん」
「俺にやらせるんならお前がまず飛んで見せるべきじゃないか?」
「飛んでたまるか」
「怖いんだろ?」
「言うまでもなく、お前が逃げるからだ」
「先生だったら俺が逃げないようにしながらかつ自分が飛んで見せるぐらい出来るはずだ! 違うか!?」
「なんてくだらぬ誘導話術だ……」
「やーいやーい怖いんだろ? 出来ねーんだろ? やーい」
「以前私の弟子だった者の話だが……」
「やーいやーい……」
「奴もこの修行を、ここよりも高い天津の117階高層ビルから行った」
「どうせもっとロープが太かったんだろ?」
「いや、まったく同じロープだ」
「切れねぇわけがねぇだろ、こんなロープ!」
「もちろんだ」
「あ?」
「普通切れる」
「じゃあ、そいつ、死んだんだ?」
「いや、見事生還した」
「どうやってだよ?」
「それは奴にしかわからん」
「ハァ?」
「自分で考え、自分で挑み、自分の力で克服したのだ。この修行を経て奴は大きく成長し、今、その世界で頂点に立っている」
「まさか……りゅうちぇるか?」
「いや……」
「だよな……さすがに……」
「Sexy zoneのマリウス葉くんだ」
「まさかのアイドル界!?」

377 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:29:43.55 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「いったい、何・パイロンなんだ…。」

378 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:45:09.01 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「俺は散打王になるぞ!」

379 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:45:54.81 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「俺は散打王になるぞ!」

380 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:46:52.93 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「…。」

381 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:48:22.96 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「すーっ、はーっ、すーっ、はーっ…。」

382 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:49:47.23 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「…ウウッ!」

383 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:51:12.93 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「…」チラッ

メイファン「…あくしろよ。」

384 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:52:15.71 ID:OeEEN/TH.net
ハオは神に祈った。

385 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 12:56:51.26 ID:OeEEN/TH.net
ハオは逃げ出した。

386 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 14:51:17.36 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「うおーーっ俺は中国神話だーっ」

387 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 14:51:37.89 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「うおーーっ俺は中国神話だーっ」

388 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 14:52:02.85 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「うおーーっ俺は中国神話だーっ」

389 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 15:17:46.81 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「うおーーっ俺は中国神話だーっ!」

390 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 15:18:13.30 ID:OeEEN/TH.net
ハオ「うおーーっ俺は中国神話だーっ!」

391 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 17:45:43.35 ID:jfSHs4YA.net
「奴は命じてから30秒で飛んだ」
ぼちぼち低くなってきた太陽を見ながらメイファンは言った。
「お前はもう3時間だぞ、ハオ」
「……」
「……」
ハオはずっと自分の膝を抱いてうずくまっていた。逃げることしか考えていなかった。
しかしどっちへ逃げようともメイファンに必ず止められる。止められるだけならいいが、もし怒らせたら痛いことをされる。
そこでハオは持久戦に持ち込むことに決めていた。退屈に耐えきれず、お腹もペコペコになったメイファンが「帰ろう」と言うのを待っていた。
そのためにもメイファンが何を言ってもだんまりを決め込んで退屈させようと決めていた。
「……」
「……」
メイファンも喋ることがなくなっていた。
彼女は必要がなければ一日でも二日でもずっと黙っていることが出来た。
ララがどうでもいい世間話やくだらない恋愛話を延々とするのを聞かされていつも気がしれなかった。
何も喋らずに、いつも見ている西安のカビ臭い町並みと違う広州の派手で現代的な景観を眺めていると、心が落ち着いた。
しかしそうは言ってはいられない。喋る必要は、ある。ハオを飛ばさなければならないのだ。
何よりこんな風にしていると大概、退屈したララが自分の口を借りて喋り出すのである。それだけは阻止したかった。
「ハオ」
「……」
メイファンは口を開いたが、ハオが何も言ってくれないと何を喋ったらいいかわからない。
「あの……だな」
「……」
「私はお前が憎くてこんなことをしているわけじゃない」
「……」
「おも……お前のためを思ってだな」
「おもって言ったな、今!!」
ハオはメイファンと違い、一日どころか一時間でも喋らずにいたら死んでしまいそうになる寂しがり屋であり、また生まれ持ったツッコミ気質がつい突っ込ませてしまった。
また、さっきから黙って下界を眺めていて『なんだ、逃げ場あるじゃん。前に飛べばいいんじゃん』とか病的に思い始めていた自分から逃げたい一心もあった。
「おもって何だ!? 面白いからか!?」
喋り出したら止まらなくなった。
「大体……聞いたことあったっけ? 俺、なんでこんなことやらされてんの? なんでこんなことやんなきゃなんないの!?」
「お前は中国の秘密兵器となるべきだからだ」
「嫌だっつったよな!? ならねーって言ったよな!? シューフェンとこ帰してって毎日100回ぐらい言ってるよな!? なんで俺の人権無視すんの!?」
「お前にそんなもんないからだ」
「お母さーん! お母さーん! キチガイ小娘がいじめるよー! あなたの産んだ尊い命には人権がないんだっていじめるよー!」
「遂にママの登場か」
「ママー! ママー! 会いたいよー! おい糞メイファン、ママをここに連れて来い! ママの胸に顔を埋めて泣いてやる! お前を横目で睨みながら泣いてやるぜ!!」
メイファンは小声でララに語りかけた。
「こんなんだぞ? こんなんでいいのか?」
「素敵……」

392 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 18:29:51.69 ID:jfSHs4YA.net
「……」
「……」
また二人とも黙ってしまった。そろそろ空はオレンジ色になりはじめた。ここへ来てから5時間が経とうとしていた。
「……」
「なぁ、ハオよ」
「……」
「なぁ、ハオさんよ」
「さんづけすな!!」
「シューフェンさんとはどういう風に知り合ったんですか? ……知り合ったんだ?」
「!……お前らしくない質問だな」
「私は自分が恋愛することには興味がないフリをしているが、実は他人の恋話を聞くのが大好きだし、自分りぶりいや本当に興味ない」
「……壊れたのか?」
「黙れ。嫌! だってぶりぶりぶり」
「真正か……」
もちろん遂にララがメイファンの声真似をして喋り出したのである。メイファンは自分が楽を出来ることもあり、諦めて口を譲った。

393 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 18:37:07.96 ID:jfSHs4YA.net
「どうしてシューフェンのことをそこまで一途に想うんだ? 何があったんだ?」
物真似が軌道に乗りはじめた。
「特別なことなんて何もないよ」
「えっ?」
「特別感動的なロマンス話とか、何もない」
「……どうやって知り合ったのだ?」
「ネットで」
「出会い系か」メイファンが言った。
「そんなんじゃねぇよ。趣味のサイトだ」
「ハオさんの趣味って何だ?」
「笑うなよ?」
「うん」
「ポエムだ」
メイファンがたまらず笑い転げた。
「俺の書いたポエムをシューフェンが気に入ってくれて……ファンになってくれて」
「うん、うん。ポエムは恥ずかしいものじゃない。素敵よ」笑い転げながら真面目な声でララは言った。
「それから会うようになって」
「うん」
「素人童貞卒業して」
「……」
「思ってたような人と違った!って幻滅されたけど」
「え〜〜〜……」
「それでもそこからアイツしか見えなくなっちまったんだよな」
「うん」
「他の可愛い女の子に浮気する妄想はいつもするけど」
「オイ」
「たとえばララとかたまんねーなって思う時はあるけど」
「え……っ」
「それでもそんな時でもやっぱり頭にシューフェンの顔が思い浮かんでんだよ」
「……」
「壮大なストーリーがあるとかじゃないんだ。物凄い理由があるわけでもないんだ。理屈じゃなく、わけもなく、ただアイツが1番いいんだよ、俺は」
「…………」
「アイツのためなら死ねるよ、俺は」
「きゅんっ」ララの心臓が鳴った。
「おっ、メイファン、腹が鳴ったな? 食いに行こうぜ、広東麺」
ハオが顔を上げるとメイファンが鬼のような形相で睨んでいた。ララは恋話にきゅんとして失神してしまった。
「くだらん話を長々と聞かせおって……突き落としてやろうか?」
「お前がしろって言ったんじゃん!?」

394 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 18:39:43.96 ID:LES8im4y.net
シャンパイロンは部屋で脱糞した。
「いい加減に白ロム!」
ホイホンは怒鳴った。
ミンメイは厳寒で放尿した。
「お前も歌謡コンサート!」
ホイホンは汚物掃除を始めた。
掃除をしても、掃除をしても、二人の脱糞と放尿は止まらない。
「何か臭くない?この部屋」
ミンメイはシャンパイロンに話しかけた。
「俺もそう思ってたんだよな」
シャンパイロンは脱糞しながら言った。

395 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 18:53:42.62 ID:d5ziUD/i.net
メイファンは深く息を吸い込むと、言った。
「ではまぁ……見せて貰おうか」
「何を?」
「あっ!」メイファンはコートのポケットをまさぐると、わざとらしい声を出した。「スマホあった〜!」
「何だと!?」
「ハオさんがいつまで経っても飛んてくんないからお腹ペコペコだぁ」
「……おい」
「今すぐ飛んでくんなきゃ、シューフェンさんの爆弾のボタン押すしかないなぁ〜」
「やめろ!」
メイファンはニヤリと笑い、言った。「じゃあ今すぐ飛べよ」
「押すなよ!?」ハオは絶叫した。「絶対に押すなよ!?」
そしてコンクリートを蹴ると、躊躇なく111階530mの高さから飛び降りたのだった。
その姿を目の当たりにし、一つの心臓が二つの音色で鳴った。
「きゅんっ! きゅんきゅんっ!」
「ズギュギュギュギュギュギュ!」

396 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:12:19.74 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

397 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:12:42.23 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

398 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:12:58.48 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

399 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:14:01.37 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

400 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:14:38.81 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

401 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:15:05.00 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

402 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:15:40.62 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

403 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:16:06.53 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

404 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:17:00.23 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

405 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:17:53.89 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

406 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:18:37.45 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

407 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:19:36.09 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

408 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:20:07.39 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

409 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:20:36.69 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

410 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:20:50.93 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

411 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:21:23.47 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

412 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:22:07.74 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

413 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:26:23.90 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

414 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 19:27:24.47 ID:9Tu9mSch.net
ハオ「うおーっ、俺は中国神話だーっ!」

415 :創る名無しに見る名無し:2018/12/17(月) 22:27:49.41 ID:3EAlQuDK.net
「……」
「……」
また二人とも黙ってしまった。そろそろ空はオレンジ色になりはじめた。ここへ来てから5時間が経とうとしていた。
「……」
「なぁ、ホイホンよ」
「……」
「なぁ、ホイホンさんよ」
「さんづけすな!!」
「ミンメイさんとはどういう風に知り合ったんですか? ……知り合ったんだ?」
「!……お前らしくない質問だな」
「私は自分が恋愛することには興味がないフリをしているが、実は他人の恋話を聞くのが大好きだし、自分りぶりいや本当に興味ない」
「……壊れたのか?」
「黙れ。嫌! だってぶりぶりぶり」
「真正か……」
もちろん遂にチョンボがミンメイの声真似をして喋り出したのである。ミンメイは自分が楽を出来ることもあり、諦めて口を譲った。

416 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 06:06:01.74 ID:ds8UX3Bk.net
そしてハオは死に、主人公の座をリウ・パイロンに譲った。


第二部 −完−

417 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 06:24:41.46 ID:mXfkRA8V.net
人生に元々意味なんてないのに、意味を求めるのは間違いだと思ってた。
シューフェンに恋するまでは。

ハオは蜂が怖かった。
小学生の頃に刺されたことがあり、二度刺されたらショックで死ぬと聞かされ、蜂はハオにとって最大の恐怖の対象だった。

死ぬのは怖くない。どうせ意味はないのだし、一瞬のことだ。
そんな一瞬よりも、自分を刺しにやって来る蜂の、激怒したような顔と毒汁を滴らせる針こそが怖かった。

シューフェンとデートで山に行った。夏の山へリフトで登った。
並んで笑顔でくだらない会話を交わす二人をめがけて蜂が飛んで来た。
いつもなら腰が抜けて逃げ回る。車の運転中に蜂が入って来て事故をしたこともある。
そんな自分が、身を挺してシューフェンを守った。
逃げ場のないリフトの上で、シューフェンを抱きかかえて蜂を睨みつけた。刺しに来てみろ。裏拳で払ってやる。

蜂なんか怖くなかった。
死ぬのももちろん怖くなかった。
ただシューフェンを泣かせることだけが嫌だった。

蜂はそんなハオに恐れをなしたように飛び去った。

シューフェンを守った自分がハオは誇らしかった。
俺はこのために生まれて来たんだとすら思えた。
そうだ、メイファンには一言だけ、こう答えればよかったんだ。

シューフェンは俺の生きる意味なんだ。

418 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 06:39:13.17 ID:mXfkRA8V.net
目を開くとハオは空を飛んでいた。正しく言えば墜落していた。
力の抜けきった手足が風圧で人形のようにバタバタしていた。
「これでよかったんだ」
「これであの悪魔もシューフェンから手を引いてくれる」
しかし頭の中の爆弾のことが心配だった。
自分がアホなバンジージャンプに失敗して死んだというニュースを見ていつものように白い目をされるのも嫌だなぁと思った。
一度も中イキさせたことがないのも心残りだった。
イキそうになっても「だっておしっこが出そうな感じなんだもん」と恐がって我慢してしまうのだった。
それを我慢せず受け入れたら中イキ出来るんだよと力説しても布団を汚すのを怖がって我慢した。
ブルーシートを敷いてやったらムードがぶち壊れた。
「俺が死んだら、誰かシューフェンを中イキさせてやってくれよな」
しかし逞しい茶色い短髪の後ろ姿の男がシューフェンを抱いている光景がなぜか頭に浮かび、狂いそうになった。
大体、自分が死んだらシューフェンを泣かせることになるのが悔しかった。
何よりシューフェンの側で自分が生きられないのが許せなかった。
俺はシューフェンに誓ったのではなかったか、
ずっとお前の側にいる、と!

419 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 06:43:05.02 ID:mXfkRA8V.net
ハオは気を失いそうになっていた。
しかし気を持ち直してカッと目を開いた。
風圧で物凄く痛いけど目を開いた。
気を失ってはダメだ。
『気』を失っては、ダメなんだ!
『気』を確かにもって、何とかするんだ、生きるんだ!
ハオは叫んだ。
「Sexy zoneに出来たことが俺様に出来なくてたまるかぁぁぁぁ!!!」

420 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 06:43:50.89 ID:ds8UX3Bk.net
「生きる意味だと?おまえは彼女に寄生しているだけじゃないのか」

落下するハオの目の前にいるはずのない、リウ・パイロンが現れる。

「はうあっ!?」
ハオはあり得ないことに対し素っ頓狂なこえをあげた。

421 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 06:51:30.20 ID:mXfkRA8V.net
そうだ! この土壇場で、俺はメイファンのように『気』で武器を作るような能力に目覚めるはずなんだ!
きっとSexy zoneのマリウス葉くんもそんな風に何かを作り出したんだ!
よし、そこら中にあるPM2.5でアレを作るぞ!
「きんとうーん」
しかし何も起こらなかった。当然だ。バカじゃないのか、俺は!
じゃじゃじゃあ何作る?
っていうか高さは530mだけどロープは100mしかない。
もう、伸びきっちゃう。
伸びきったら絶対切れるコレ。
切れないわけないこんな細いの。
やだ! 伸びきる!

422 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 06:57:08.37 ID:mXfkRA8V.net
伸びきったロープはビシビシと音を立て、あっという間に切れた。
切れたロープの中から、黒くて密度の高いゴムロープが姿を現した。

423 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 07:04:45.05 ID:mXfkRA8V.net
びよーんと戻って来たハオを、メイファンは『気』でキャッチすると、笑顔で言った。
「やったな、ハオ兄!(タイバンラ、ハオグ!)」
「は、ハオ兄?」
「おかえり、お兄ちゃん!(ズー ニー フェイライラ、グーグ!)」涙まじりの笑いを湛えたララの声がした。
「お、お兄ちゃん?」
「リウ・パイロンとは全然違う結果だったけど、飛んだだけでも凄いぜ、感動したぞハオ兄!」
メイファンは別人のように親しげな笑顔になっていた。

424 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 07:39:18.43 ID:pGwIJhRZ.net
ハオ「うおーーっ俺は中国神話だーっ」

425 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 07:40:36.51 ID:pGwIJhRZ.net
ハオ「うおーーっ俺は中国神話だーっ」

426 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 07:44:33.08 ID:mXfkRA8V.net
テーブルの上には広東麺、トンポーロゥ、唐揚げに海鮮チャーハンに焼売。
「何でも追加注文してくれよ、ハオ兄。フカヒレスープも頼むかい?」
「あ、あの……あなた、誰?」
地獄から戻ると豹変していたメイファンにハオは二時間経っても慣れなかった。

427 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 07:54:39.24 ID:mXfkRA8V.net
「それじゃ、私達は用事があるのでこれから行って来るよ」
そう言って爽やかな笑顔でメイファンは立ち上がった。
「は? 私達?」
「ホテルを取っておいた。○○街の××酒店だ。リー・チンハオの名前で予約してあるからフロントでそう言ってくれ」
「は? ホテル?」
「一緒に寝ようね、お兄ちゃん」
メイファンの口からにこやかなララの声がした。
「は? ララ?」
レストランを出て行くメイファンの後ろ姿を見送りながら、ハオは最後の唐揚げを口に入れた。
そして小便をすると外に出た。
広州の町はまだ賑やかな午後10時前だった。
「あれ?」
ハオはホテルへ向いて歩きながら呟いた。
「これって俺、逃げれるんじゃね?」

428 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 08:06:42.63 ID:pGwIJhRZ.net
ハオは現実から逃げ出した。

429 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 08:10:45.22 ID:pGwIJhRZ.net
「お前はシューフェンに寄生しているだけだ。」
ハオの脳に幻聴が響き渡る。

430 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 08:14:22.03 ID:mXfkRA8V.net
メイファンは今夜もマンションの一室で、睡眠薬を飲んで深く眠るシューフェンの腹部にじっと手を当てている。
「なぁ、ララ」
「うん」
「私はもう、ハオ兄にバラしてもいいと思う」
「うん」
「私達が二心同体だという秘密を」
「賛成」
しかし二人はそれから黙り込み、決してどちらからも言い出さなかった。
シューフェンが今、このマンションに住んでいること、そして冒されている不幸のこともハオに伝えようとは。

431 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 08:31:37.99 ID:mXfkRA8V.net
「なぜ俺は……」
ハオは薄暗い部屋で、天井を見つめながら呟いた。
「ここにいるのだろう……」
ハオがいるのは清潔な白いベッドの上だった。
隣にはバスローブ一枚羽織ってすやすや眠りながらハオに寄り添うララの姿があった。
「……で、なぜにララ??」

432 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 08:57:49.32 ID:YjFDYReX.net
「起きたアルか、ここは九龍城の一室アルよ。さあ、炒飯できたアル。食べるヨロシ」
片言の日本語で話す少女に戸惑うハオ
横でスヤスヤと眠るララの体を揺すって起こす
「うーん、おはようさんアル。昨日は激しかったアル」
あれ?なんかおかしい…ララに似せてはいるがこの女、微妙に違う

433 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 09:02:45.79 ID:mXfkRA8V.net
朝、ハオはメイファンと向かい合ってホテル一階にあるビュッフェ・スタイルのレストランにいた。
「ハオ兄、昨日はお疲れ様だったね。これを食べて、広州の町を少し散歩したら西安へ帰ろう」
「あの、メイ……さん」
「なんだい?」
「昨夜、ララがいたような……」
「あぁ」
にっこり笑うとメイファンはハオの目の前でみるみる白くなった。
「私はいっつもお兄ちゃんの側にいましたよっ!」
度肝を抜かれて言葉を失っているハオに、ララはウインクをした。
「い、い、い、いやいやそれは後で聞こう。なんか今聞きたくない」
ハオは首を振って質問を変えた。
「シューフェンのとこへ行きたいんだ」
「……それに関しては」ララは顔を曇らせると、あっという間に黒くなり、メイファンになった。
「せめて連絡を取らせてくれ」
「すまない、ハオ兄」
「おい!?」
「それに関しては少しだけ考えさせてほしいんだ、悪いようにはしない、絶対に」
「おおおおい!?」
メイファンはブラックコーヒーをゆっくり口に運ぶと、言った。
「私達はハオ兄を信じることに決めたんだ。ハオ兄なら私達を裏切ったりしないと」
「は?」
「殺し屋が人を信じるなんて相当なことだぞ? 光栄に思ってくれ」
「いやいや意味わからないんですけど……」
「だから、どうかハオ兄も私達を信じてくれ」
「勝手なことを言うな!」ハオはテーブルを叩いた。「いいか! お兄ちゃんのお願いは素直に聞くもんだ! お兄ちゃんの言うことは絶対だ! そんな意地の悪い妹をお兄ちゃん、愛してやんないぞ!」
メイファンはそれを聞きながら俯いていたが、顔を上げると鋭い豹のような眼でハオを睨んだ。
「調子に乗るなよ」
そう言うなりハオの髪の毛を素早くひっ掴み、10cmほど持ち上げた。
「お前を信じることには決めたが、あくまでも主人はこのラン・メイファンだと肝に命じろ」
「キャアァァァ!」

434 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 10:00:32.52 ID:nl5svwwc.net
シューフェンは言った。
「ごめんね。病気のこと、黙っていて……。
ごめんね。ずっと、側にいられなくて……」
シューフェンは激しく喀血した。白い入院服が血の色に染まる。
「あなたのことだけを愛しているわ」
最後の力を振り絞ってそう言うと、シューフェンは涙を一筋流し、目を閉じた。
静寂が訪れる。
「よーしクランク・アップだー!」
ツイ・ホーク監督が嬉しげに声を上げると、皆が一斉に喜びの声を上げた。
主演女優のシューフェンはゆっくり立ち上がると笑顔を皆に向ける。
ジョアンナが花束を持って駆け寄った。
「よかったねぇ、シューフェン。無事終わったねぇ。これで明後日のリウの試合もゆっくり観に行けるね!」
「ありがとう、ジョアンナ……」
「よーし片付け終わったら町へ繰り出すぞぉ!」
ツイ・ホークが大声ではしゃぐ。
「シューフェン?」
ジョアンナの緊張を帯びた声に、その場の皆が振り返った。
ジョアンナの前でまるで糸が切れたように床に倒れ込むシューフェンの姿がそこにあった。
「シューフェン!!」

435 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 10:07:01.99 ID:nl5svwwc.net
救急車に乗せられ搬送されて行くシューフェンを見送りながら、ツイ・ホークが皆に言った。
「リウには……知らせるな。あいつはもう明後日が本番だ。心苦しいが、試合前にこんなことを知らせるべきじゃない」
すると大泣きしながらジョアンナが言った。
「もう電話で知らせたよぉ! 黙ってていいわけがないでしょぉぉぉ!」

436 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 10:14:12.77 ID:vloE5SSn.net
「わたし、目が覚めたの。アンタのようなニートより、強くて格好良くて、優しいリウ・パイロンのような人が良いって。」
幻聴はシューフェンの声になりハオをさらに苦しめた。

437 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 18:25:08.81 ID:YjFDYReX.net
そして今日もダッチワイフのシューフェンと眠るのだ。

438 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 18:54:40.95 ID:ds8UX3Bk.net
「ハオ兄ってシューフェン一筋とは言うが、私と何度も重ねたよな?」

幻聴はメイファンの声に変わった。

「うわああっ、違うっ!あれは俺の妄想・・・」
とハオは反論しかけたがメイファンは「アレは現実だ。今更なかったことにする気か?」とピシャリと言った。

(ううっ、みんな俺を責めないでくれよお。)
ハオは呻きながらその場にうずくまり目を閉じ、耳を塞いだ。

439 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 20:39:46.29 ID:KCswGHRL.net
メイファンは悪夢にうなされるハオの額をそっと撫でた。

440 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 23:15:07.47 ID:4uknmeCd.net
その頃リウ・パイロンは、ジョー・サクラバと拳を合わせ、記者やカメラマンに囲まれていた。
豪快な笑顔を見せるサクラバに対し、リウは生気のない大人しい表情が目立っていた。
サクラバが報道陣に答える。
「中国の散打、豪快でいいね! ただし勝つのはこの俺だ!」
続いてリウが喋った。
「ジョー・サクラバ先生と闘えることを光栄に思い、感謝する。大恐慌の今、中国国民をこの一戦で元気づけられたらと願う。
開始早々二人でちょっとした遊びをお見せするが……」
会場から笑いが起こった。
同時通訳を聞いていたサクラバも乗った、「デコピンは優しくお願いね」
笑いがさらに沸き起こった。
「遊びが終わったら後は本気の勝負だ。いい試合をしよう」
両者がっちり握手をして会見は終わった。

TVの画面ではタレントのダン・ダンユェが解説をしていた。
『サクラバ選手が試合開始から3発、リウ・パイロンの攻撃をノーガードで受けると宣言、
それを受けてリウが試合開始後の最初の3発はデコピン、猫だまし、壁ドンで行くと宣言してるんですねぇ。
しかしデコピンと猫だましはわかるけど、壁ドンってどうやるの? 壁ないのに?』

会見を終えたリウをトレーナーの楊が待っていた。
「ジムに帰ったら最終調整だ」
ジムの後輩達も応援に来ていた。
「リウさん、頑張ってください」
スポンサーも駆けつけていた。
「リウくん、今回も期待しているよ」
そんな中でリウのスマートフォンが鳴った。着信画面の名前を見ると『ポン姐』からだ。
「ウェイウェイ、ジョアンナかい? ……おい、泣いてんのか? どうした……
……なんだって? シューフェンが倒れた!?」
電話を切ったリウは何かを探すように虚空を見回すと、「ちょっと広州へ行って来る」と言い置いて駆け出した。
「おいリウ!?」楊が怒声を上げて呼び止めても振り返りもしなかった。「いい加減に……あぁ畜生! やっぱりそうなるのかよ! 広州まで1680kmだぞアホ!!」
「あのリウが……」
「リウさんが……」
その場の全員が顔を見合わせた。
「闘いより女を優先した!?」

441 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 23:15:58.17 ID:YjFDYReX.net
その脇で同居人のテムジンは天津飯を食している。
食事を終えるとテムジンはソファに寝そべり新聞に目を通す
「ちょっと姉ちゃん、煙草取ってくんねぇかな」
その声をメイファンは無視した。
「ったく、変な姉弟だぜ」
そう言ってテムジンは煙草を取って火を着けた

442 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 04:17:38.41 ID:ohTw+ax/.net
テムジンは『気』の世界の住人であり『気』を操作できる者たち以外はその存在を関知できない存在だった。

443 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 06:36:54.39 ID:nN+mMcua.net
テムジンは狂っていたのだ。

444 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 07:28:50.79 ID:7ffWCFLl.net
テムジンはメイファンとハオは姉弟だと思っていた。
実際にはハオの方が10才以上年上だったが
テムジンがハオを弟と誤認した理由はハオの精神と『気』が実年齢に対し幼かったからである

445 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 13:44:52.77 ID:teGcmzVZ.net
そしてその幼さこそが、実はハオがシューフェンやらララやらといった美女からモテている理由であった。
気安さがウケているのだ。悪い言い方をすればナメられているとも言えるが……。

446 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 14:15:05.91 ID:iVlRrRWf.net
リウは急いで病室のドアを開けた。
ツイ・ホークやジョアンナ・ポン、映画関係者達が一斉に振り向いた。
彼らが取り囲む中心のベッドの上で、身を起こしていたシューフェンの顔に、リウを見つけて喜びの花が咲いた。
「シューフェン!」
安堵した顔つきになりながらも急ぎ足で近づいて来るリウをまっすぐに見ながら、シューフェンの顔から急激に笑顔が消えた。
「ロ、ロン? あなた、西安じゃ……」
「文字通り飛んで来たよ、そりゃ」
「明後日試合でしょ?」
「そうだけど」
「最終調整とかあるんでしょ?」
「そうだけど」
「中国国民のために勝たなきゃいけないじゃない! あたし、ただ過労で倒れただけだよぅ……」
「中国全国民より」リウはシューフェンの肩を抱き締めると、言った。「君のほうが大事だ」
「お前じゃねーと言えねー台詞だな」ツイ・ホークが突っ込んだ。
「いいから。あたしは大丈夫だから」シューフェンはリウの胸に頭を押しつけながら言った。「か、帰ってよ」
シューフェンの身体は小刻みに震え、リネンにはぽたぽたと涙が落ちはじめた。
「いや、実はさ。モチベーション上がらなくて困ってたんだ」リウは抱き締めたまま言った。「エネルギー補給してから帰る、君で」
皆がニヤニヤしながら二人を見守った。
「映画、今日で撮影完了したんだろ?」
シューフェンは無言で顔を見せずに頷いた。
「そのお祝いもしなきゃと思ってたところだし」
シューフェンは両手で顔を覆って首を横に振った。
「とか言いながら花束も持って来なかったけど……」
ぽりぽりと頭を掻くリウの首にシューフェンは抱きついた。
「会いたかった……寂しかった」
素直に白状したシューフェンの身体をリウは思い切り抱き締めた。
「花束なんて要らないよねぇ」ジョアンナが微笑んだ。「シューフェンにとって一番のプレゼントはリウ、アンタだよ」

447 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 14:25:56.04 ID:iVlRrRWf.net
https://youtu.be/NXRhwwLTWNQ

PiA雅「禮物(リウ)」

地球をぐるぐる回して 180日
讓地球 轉幾圈 180天

10年が過ぎたみたい
好像過十年

1人きり あなたが私に問いかける 寂しくはないかと
一個人 問 會不會寂寞

平気だよ 私は仕事が好きだから
無所謂 我喜歡工作

とても大変で とても努力をして その日がやって来た
好不容易 很努力 等到這一天

遂にあなたに会える
終於能見面

あなたには特別なことじゃないかもしれない でも私はいつも あなたを想っていた
不特別 卻常常 惹我想念

大切なことはただそれだけ
這才是重點

448 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 14:26:15.19 ID:iVlRrRWf.net
あなた私にプレゼントを買って来ないでね
不需要買禮物給我

心配ないわ 好きなものなんてない
不用擔心我不喜歡什麼

ただ少しでも早く 私の側に帰って来て
只要快一點回到我身邊

もちろんプレゼントあるなら貰っとくけどね
當然有禮物我也不討厭


私はあなたにメッセージを渡すしかできない
我想我可能只會寫片

あなたに何をしてあげればいいかわからない
我不知道我能給什麼

手を繋げたらそれだけで幸せなんだもの
只要牽著手就是快樂的

明日なんてもう来なくてもいいわ
管他明天還是不是明天

あなたが私の側に帰って来てくれたら それだけで
只要能回到我身邊

だから無駄なお金は遣わないでね
所以請不要再浪費錢

あなたが戻って来てくれたら それだけでいいんだから
只要能回到我身邊

449 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 20:06:37.81 ID:x3/9gcXr.net
その頃ハオは、自分の部屋で考え事をしていた。
「うーん。メイファンとララは同じ身体の中に住む姉妹だったのか……道理で一緒にいるとこ見たことがないわけだ」
ハオはメイファンから今まで秘密にしていたことを夕食時に明かされていたのである。
「そしてメイファンの昔の弟子があの散打王リウ・パイロンだって? りゅうちぇるとSexy zoneのマリウス葉くんと3人で仲良く特訓していたのか?」
「……」
「嘘だな」ハオはニヤリと笑った。
「さてオナニーでもするか」
そう言うとハオは昨日広州のコンビニでメイファンに買ってもらった男性週刊誌を取り出した。
表紙をめくる。巻頭グラビアを飾るのは5ページに渡って大型新人女優リー・シューフェンの麗しい姿だ。
「おめかししやがってこの野郎……」
シューフェンのグラビアは露出は少なく、非常に清楚なものだ。しかしハオはその綺麗な服の下がどうなっているのかをリアルで知っていた。
「俺の前でこんなに綺麗にしてたことねーだろ……うわっ、この写真可愛い……」
ハオは雑誌と手紙(中国語でティッシュペーパーの意)を手に立ち上がり、部屋を出ると廊下を渡り、トイレに籠った。
暫くは静かだったが、やがて荒い息遣いが静かな廊下に響きはじめた。
「……ハァッ、ハァッ」
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
「おぉっ! おぉぉぉぉ〜〜〜っ……」
「ああああああシューフェン! シューフェェェェェン!!!」
ジャン・ウーが手に紙を持ちながらドアの前でずっと待っていた。
「若いっていいのう」

450 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 20:27:50.17 ID:boVanM0m.net
その頃メイファンとララはJ-20ジェット戦闘機に乗り広州へ向かっていた。
「なんか私とハオ兄をくっつけようとする輩がいるようだが……」
「あー、うん」
「はっきり言って私はアレを異性だと思って見たことは一度もないぞ」
「ふーん。へぇ〜」
「ララまで何だ」
「別にぃ」
「しかし本当にあのリー・シューフェンとアレが恋人同士なのか? いまだに信じていないが、私は」
「まだ信じてなかったんだ!」
「だって生き物の種類が違いすぎるだろ」
「ユニコーンとカマドウマぐらい違うって言いたいの?」
「うまいたとえだな」
ララは黙ってしまった。
「しかし美人は三日見れば飽きると言うが……」
「シューフェンさん、見飽きないよねぇ」
「唇をぷにぷにするのも飽きないな」
「あれはやみつき」
「しかしこのナイトフライトもなんだか毎日の楽しみになって来たよ」
「うん、私も私も〜」
「明後日はちょっと遅く飛ぶことになるがな」
「……」
「ジョー・サクラバ戦、見逃すわけにはいかん」
「メイファンさぁ」
「なんだ」
「あんたいっつもリウ・パイロンの試合がTVであれば必ず見てるけどさぁ」
「それがどうした」
「いっつも楽しそうなのが腹立つんだけど」
「楽しそうだと? バカ言うな。奴に対する憎しみを忘れないようにするために観ているだけだ」
「ならいいけど」
「フン」
「まさか、あんた」
「何だ」
「今でもまだ好きだとか」
「……冗談でも許さんぞ」
「ならいいけど……」
「着くぞ」

451 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 20:49:58.83 ID:m5zx4KG9.net
「シン・シューフェンさんのご家族の方、いらっしゃいますか」
病室に入って来た看護婦が聞いた。
一同は顔を見合わせ、いないよな? そういえば来てないよな? と表情で語り合った。
「あ、あの……」シューフェンが口を開く。
しかしシューフェンの口からは言わせたくないとばかりにリウが言った。
「彼女のご両親は彼女が高校生の頃に事故で亡くなっています。親戚も遠くに住んでいて……」
「リ、リウリウ……リウ・パイロン!?」看護婦は今頃気がついて動転した。
「はい」
「シュシュシュシュシュフェシュフェ、シューフェンさんとはどういうご関係で?」
「恋人です」
「大スクープ!」
そう叫んでから看護婦ははっと我に返り、仕事口調に戻った。
「ではリウさん、ちょっと先生のところへ……」
「なんだろう?」
リウはシューフェンの顔を振り返ると、看護婦について歩き出した。
「ちょっと行って来るよ」
シューフェンは不安剥き出しの顔をしていた。
先生はリウに何を言うのだろう? あの人はこれから何を聞かされるのだろう?
どうすることも出来ずにシューフェンはリウを見送った。

452 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 21:00:25.86 ID:m5zx4KG9.net
「さすがにちょっと早く来すぎたな」
メイファンはシューフェンの部屋を窓から覗き込むと、言った。
「まだ帰って来てすらいない」
シューフェンはいつも22時から22時半の間に就寝する。今はまだ20時前だった。
「ここで待つとしよう」
メイファンはベランダの隅に座り込んだ。
「なんか私達、覗き魔みたいね」ララが言った。

453 :創る名無しに見る名無し:2018/12/19(水) 21:27:43.38 ID:m5zx4KG9.net
先生はリウ・パイロンが入って来たのに驚き、応援していることを伝えると、話しはじめた。
「これはシューフェンさんのレントゲン写真なのですが」
「はい」
「どうも変な影が写っているのですよ」
「変な……影?」
「倒れた時に頭を打ったということなので頭のレントゲンを撮ったのですが」
「ええ」
「ここ、左の側頭葉のあたりに、黒い小さな影があるのです」
リウは目を凝らして見た。確かに不自然な黒い小さな影が写っている。ぼやけて写っているだけだが、何か無機質な感じがし、精密機械のようにも見える。
「何なんですか、これ?」
「これだけでは何とも……。シューフェンさんから何かの病気の話とか、聞いたことはありませんか?」
「いえ……。本人には聞いたんですか?」
「一応問診で、大きな病気をしたことはあるか? と、だけ」
「何と答えてましたか?」
「何もない、と。やたら大袈裟なくらいに強調していたのが逆に気になりまして……」
「大袈裟に……わざとらしいぐらいに否定した、と」
「はい」
「僕が聞いてみましょうか」
「いや、患者さんが自己判断で大きな病気の自覚症状があるのに隠してしまうというのは実はよくあることなんです」
「ははぁ。怖がってですか」
「まぁ、そんなようなものですね」
「では、どうすれば」
「明日、また来てください。CTスキャンにかけてみます。今日は点滴が終わったので帰っていただいて結構です」
「ありがとうございます」リウは嬉しそうに頭を下げた。

454 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 05:49:41.82 ID:JO60towi.net
メイファンはベランダの隅に座って星空を見ながらララと会話していた。
「シューフェンさんの爆弾、もう要らないよね」
「そうだな。今日は準備していない。明日にでも除去するか」
「っていうか、メイ……」
「ん?」
「あれって本当に仕掛ける意味あったの?」
「嘘でよかったんじゃないかってことか?」
「うんうん」
「おいおい私はプロだぞ?」
「どういうこと?」
「それじゃハオ兄が使い物にならなかった時、シューフェンの首なし死体と一緒に監禁してやれないじゃないか」
「本気だったの!?」

455 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 05:53:02.88 ID:JO60towi.net
ツイ・ホークはジョアンナを乗せて車で帰った。
リウはジョアンナの白いアウディを借り、シューフェンを送った。
信号で止まるたびにキスを交わした。
ルームミラーからぶら下がる黄色いミニオンのマスコットが楽しげに揺れていた。
やがて町を外れ、郊外へ出ると、シューフェンは運転するリウのベルトを外し、ジッパーを下ろした。

456 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 05:58:17.79 ID:JO60towi.net
ハオは今日もパソコンでシューフェンのウェイボー(twitter)を見ていた。
未だに検閲により外部にメッセージを送信すること等は出来ないが、閲覧することは自由に出来た。
映画クランクアップの話とファンや関係者への感謝の言葉が書いてあり、ハオのことは今日も何も書いていなかった。
「照れやがって」

457 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 06:08:47.85 ID:JO60towi.net
「リウ・パイロンって、今、西安にいるんだよね」ララが言った。
「そうだな」星空を見ながらメイファンが答える。
「もし町中でばったり会ったりしたら……ちゃんと殺してくれる?」
「いきなりはさすがに無理だ」
「どこかに監禁して、動けないように縛って?」
「そうだな」
「でも、いつもの仕事みたいに簡単に首をはねちゃダメよ」
「そうだな」
「メイはいつもあっさり首を斬って殺しちゃうからつまんない。もっともっと、じっくり時間をかけて、思い知らせないと……」
「仕事では効率を重視するからな」

458 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 06:12:22.33 ID:JO60towi.net
シューフェンはリウの股の間に顔を埋め、湿った音を立てながらゆっくりと頭と手を動かしていた。
たまらなくなったリウは道路脇に車を停めた。
シートを倒し、彼女も押し倒し、キスをしながらパンティーの上から花弁を指でなぞった。
シューフェンはのけ反り、呻き声を上げた。

459 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 06:13:06.05 ID:JO60towi.net
「シューフェンさん、遅いね……」
「何かあったのかな」

460 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 11:07:39.29 ID:JO60towi.net
ハオはシューフェン個人のSNSを今日も検索した。
検索結果の一番上に『リー・シューフェンの恋人は散打王リウ・パイロン』の文字が出て来た。
「ん?」
記事を書いたのは『ちゃめっ子ナース』という看護婦らしく、話題のウェイボーとして取り上げられ、閲覧数がうなぎ昇りになっていた。
ハオは鼻で笑うと「なんか勘違いしてんなコイツ」と吐き捨て、コメントを送信したが当然のように検閲でブロックされた。
「正しくは『未来の散打王リー・チンハオ』ですよ」と何度も打ち込んではブロックされ、遂には諦めた。

461 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 11:15:16.01 ID:JO60towi.net
リウ・パイロンとリー・シューフェンはジョアンナ・ポンの白いアウディの中で繋がっていた。
歪んだ三日月の明かりが二人の結合部を淫靡に照らし出していた。
「エロぉい……」嬉しそうに笑いながらシューフェンが言った。
リウはシューフェンの身体を気遣いながらも激しく腰を振った。
暗闇の中で白いアウディがぎしぎしと音を立てて揺れていた。

462 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 11:27:43.67 ID:JO60towi.net
「まず、額に釘を刺そう」ララが言った。
「はは」メイファンが小声で笑う。
「それを金槌で思い切り打ち込んで」
「それじゃ死んでしまうぞ」
「じゃあ、それはなし。とりあえずぺニスは絶対に切り落とす」
「スパッといくのか?」
「ううん。ノコギリで、少しずつ少しずつ引いていく。一引きごとに身体を交代しよう」
「ララらしいな」
「苦しみはじっくりと与えなきゃ。後でノコギリ買おう。あ、帰って来た?」
ララはメイファンがぴくりとしたのでそう聞いた。
メイファンはベランダの隅から窓側へしゃがんで移動し、険しい顔つきになった。
「おい」何やら覚えのある気配に注意を払いながら、言った。「1人じゃないぞ」

463 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 13:20:50.83 ID:S6I0RVnb.net
先生はシャン・パイロンが入って来たのに驚き、応援していることを伝えると、話しはじめた。
「これはオーウェンさんのレントゲン写真なのですが」
「はい」
「どうも変な影が写っているのですよ」
「変な……影?」
「倒れた時に頭を打ったということなので頭のレントゲンを撮ったのですが」
「ええ」
「ここ、左の側頭葉のあたりに、黒い小さな影があるのです」
リュウマチは目を凝らして見た。確かに不自然な黒い小さな影が写っている。ぼやけて写っているだけだが、何か無機質な感じがし、精密機械のようにも見える。
「何なんですか、これ?」
「これだけでは何とも……。オーウェンさんから何かの病気の話とか、聞いたことはありませんか?」
「いえ……。本人には聞いたんですか?」
「一応問診で、大きな病気をしたことはあるか? と、だけ」
「何と答えてましたか?」
「何もない、と。やたら大袈裟なくらいに強調していたのが逆に気になりまして……」
「大袈裟に……わざとらしいぐらいに否定した、と」
「はい」
「僕が聞いてみましょうか」
「いや、患者さんが自己判断で大きな病気の自覚症状があるのに隠してしまうというのは実はよくあることなんです」
「ははぁ。怖がってですか」
「まぁ、そんなようなものですね」
「では、どうすれば」
「明日、また来てください。CTスキャンにかけてみます。今日は点滴が終わったので帰っていただいて結構です」
「ありがとうございます」リュウマチは嬉しそうに頭を下げた。

464 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 20:54:55.53 ID:JO60towi.net
部屋に入って来たリウ・パイロンはドアを締めるのも待ちきれずにシューフェンを抱き締めた。
二人はまだ愛し足りないというように激しくキスを交わし合い、もつれ合う。
カーテンの隙間から二人の少女は一つの目でそんな絡み合いを見ていた。
「なぜリウ・パイロンが……」ララが泣くような声で言う。
メイファンは黙って見ている。
リウは慌ただしくシューフェンの上着のボタンを外すと白いブラの上から胸を揉みしだいた。
「帰ろう……」ララが消えるような声でメイファンに言った。
「……」
「逃げよう……メイ」
「……」
しかしブラが外され、シューフェンの少し垂れた乳房が露になると、ララも黙り込んだ。メイファンの口からララの吐息が漏れはじめる。
メイファンは気配を殺し、じっと見ていた。
女の乳首に唾液をいっぱいにつけて浅ましく舌を動かすリウ・パイロンがたまらなく汚ならしいものに見えた。
ララの欲情が自分にも伝わってくるのがたまらなく気持ちが悪かった。
リウの顔がメイファンの中で歪む。馬乗りになり自分を殴ったあの時の、自分を蔑むような笑顔に変わり、
また自分を丸太で刺したあの時の、まるでモノを見るように見下ろす冷たい顔に変わった。
メイファンは口の端を歪めて笑うと、かすれた声で言った。
「今すぐ、ここで殺すか」
リウが激しく仰け反った。
背中から臀部にかけて巨大な爪にえぐられたような衝撃を感じ、シューフェンを守りながら振り返った。
部屋の中には誰もいない。気のせいか。気のせいであるわけがない、こんなものが。まるで殺気の実体化だ。
「なんだ?」
リウの額から汗が激しく滴る。窓の外に何かがいる。
窓の外で獰猛な野獣が今にも自分達に襲いかかろうと身構えている。
「隠れて」と手でシューフェンに合図をするとゆっくりと中腰で歩き出した。拳は顔の前で構えている。
カーテンの向こう、ベランダの隅に何かがいる。いや、この気配を放つそいつを自分はよく知っている。
しかし自分の知るそれよりも遥かにそれは成長し、巨大になっている。
リウの全身を冷たい汗が滴り落ちる。窓の外でそれはゆっくりと立ち上がり、動きを止めた。
リウはカーテンを掴む。拳を構え直す。一気にカーテンを開いた。
歪んだ三日月を背に、黒い工作員服姿の少女が真っ直ぐに立ち、こちらを見ていた。殺気はすべてその瞳から放たれているのだった。
両腕はぶらんと垂れ、闘う気の欠片も見えないが、こちらが気を緩めた瞬間、銃弾のごとくこちらへ飛んで来そうな予感をそれは秘めていた。
リウはカーテンを開ける前から頭にそれしかなかった名前を呼んだ。
「メイファンか」
窓ガラスの向こうでメイファンは何も言わず、表情も変えずに、ただリウにその両の目を向けていた。

465 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 21:12:05.90 ID:JO60towi.net
「なぜここにいる?」
「……」
「なぜ殺気を放つ?」
リウがそう聞くとメイファンは目を見開き、眉を動かした。「なぜかわからないのか?」と聞きたげだった。
「なぜ喋らん?」
「……」
リウが急に、思い出したように泣きそうな顔になり、言った。
「まさか……お前……仕事で……? シューフェンを!?」
「違う」メイファンは初めて声を聞かせた。

シューフェンは恐る恐るクローゼットの陰から様子を窺った。
リウの向こう側、窓の外に女の子が立っているのが見えた。
黒ずくめの物騒な格好をして、険しい顔をしてはいるが、とても美しい顔をした好感を持てる子だと直観した。

「じゃあ殺気をしまえよ」リウはメイファンに言った。
メイファンはそれを聞いて少し面白そうに白い牙を見せた。
「お前がそれをしまわんと、俺もこの拳を下ろせんだろ」
「あの……」シューフェンが近寄って来て、言った。「上がってもらえば?」

466 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 11:10:09.31 ID:MwQKZpgb.net
ゲームオーバー

467 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 15:30:54.71 ID:lKi41jFo.net
シューフェンは気だの殺気だのは分からなかった。
ベランダにいることを除けば可愛い女の子だと思っていた。

どこか能天気で抜けているシューフェンはメイファンのもつ凶暴性に気づかず、
リウの制止も聞かずそのまま窓を開けてしまった。

468 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 18:05:43.86 ID:dgTE9tOj.net
お茶を淹れながらシューフェンはチラチラと二人を見た。
長方形のテーブルの遠いほうの対面に座り、リウは少女からずっと目を離さず、少女はずっとどこを見ているのかわからない無表情でお互い黙っていた。
どういう関係なんだろう? 前の恋人? というには女の子は幼すぎる。
やっぱりこう聞くしかないかな、シューフェンはお茶とお菓子をテーブルに置きながらリウに言った。
「妹さん?」
その瞬間、少女が毛虫にでも触れたような顔をした。
「まぁ、妹分ってところだね」
リウが険しい顔で目を離さずに言った。

469 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 18:09:41.23 ID:dgTE9tOj.net
メイファンはテーブルを一発叩いて抗議した。
「セフレです」と、ここにいるのがハオならそう言ってやりたいところだが、リウが相手ではそういう冗談も頭から消し飛んだ。
代わりに言ってやる言葉が見つからず、テーブルを叩いただけで黙りこくっている自分がなんだか恥ずかしく、目をうろうろさせた。
「どうしたの?」と心配するような顔でシューフェンがこちらを見ている。
それに気づいて必死で目を逸らした。
「それにしても」シューフェンがメイファンを見つめながら言った。「綺麗な子ね、ロン」
「はぁ?」メイファンは素っ頓狂な声を出してしまった。「めめめめっそうもない!」
そこで遂にシューフェンと目を合わせてしまった。
メイファンはリー・シューフェンのファンだった。
映画はまだ公開されていないものの、試写会のチケットはなぜか二枚ももうゲットしていたし、毎日のようにTVのバラエティー番組等で見る彼女をアイドルとして崇拝していた。
毎晩眠っているシューフェン様に会ってはいたが、起きているシューフェン様にお会いするのは初めてであり、ドギマギしないよう、出来るだけ見ないようにしていた。
TVの中でいつも見ているリー・シューフェンの麗しい顔が自分を見つめ、ぷにぷにの唇が言った。
「ううん。若くて肌はピチピチだし、健康的な色をしてて、いいなぁ。私なんか生っ白いし、こういう顔に憧れてたの。何といっても目が綺麗よ」
「めめめめっそうもないー」と繰り返し、メイファンは目の前のお茶をぐびぐび飲んだ。
「美味しいでしょ? 私の好きなお茶なの。康福茶(カンフーちゃ)っていって、健康にもなれるし幸せにもなれるお茶なのよ」
「けけけけ健康さいこー」
「こっちのお菓子も美味しいのよ。食べてみて」
「うまうまうまうま」
「ふふ。可愛い……。そういえばまだお名前聞いてなかったわよね」
「ラララ…ラン・メイファンですぅ」
ただの17歳少女になってしまった。
「あの、サインお願いしていいですかぁ」
そう言うとメイファンはキョロキョロし、自分の工作員服の胸に斜めに刺さっているアーミーナイフを2本抜いた。
「これにお願いしますぅ。あ、1本はメイファンに、もう1本はララさんへって書いてもらえますかぁ」
それを聞いてリウが何かを思い出して呆れたような表情をした。

470 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 18:11:24.70 ID:dgTE9tOj.net
「なんだシューフェンのファンなのか」納得してリウは警戒を解いた。「しかしベランダにいるというのは行き過ぎだぞ」
リウはメイファンとの関係をどう説明するか悩んでいたので、さっきのシューフェンからの一言は非常に助かった。
こんな若い小娘を師匠だと言ったら返って変に疑らせてしまいそうだった。
メイファンからは殺気がすっかり消え去り、何の危険もないただの女の子に見えた。
しかしリウは完全に警戒を解いてはいなかった。
お茶を飲みながら談笑しながら、殺気の欠片もないところからいきなり隣の人の首をはねるのが殺し屋ラン・メイファンであると知っていた。
「しかしメイファン、大きくなったな」リウは特に胸のあたりを見ながら言った。「9年振りか」
メイファンは呆けたような顔をしてシューフェンの話を聞いており、リウの言葉はすべて無視していた。
「おい、聞いてるのか」
また無視をする。
「再会を祝してお茶で乾杯しようぜ」
するとメイファンは3本目の胸のナイフを抜き、何の感情も感じさせずに横に振った。シューフェンの首が胴体から外れて落ちる。そんな未来を見てリウは急いでテーブルを蹴り飛ばした。
お茶やお菓子が散乱し、シューフェンは悲鳴を上げ、メイファンは確かに手をかけていたナイフから手を離した。
「おい!」リウは息を切らしながら睨み、シューフェンを背中に隠れさせた。
「フン。さすがだな」殺し屋は涼しい顔で褒めて遣わした。「反応が段違いだ」
「試したのか?」
「まさか」メイファンは意外な言葉に驚いた顔をした。
「だろうな」
リウにはわかっていた。あのまま自分が止めずにいればメイファンは間違いなくナイフを振り切っていた。
「相変わらず何を考えているのかわからん! メチャクチャだ、お前は!」

471 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 18:30:10.09 ID:dgTE9tOj.net
シューフェンはわけがわからなかった。
メイファンちゃんとお話していたら、いきなりリウがテーブルをこっちに向かって蹴飛ばした。
せっかく可愛いファンとお友達になったのに、なぜロンは邪魔をするの? DV夫の素質なの?
しかしメイファンちゃんも妙なことを怖い声で言い出した。
わけがわからない時は黙って二人の会話を聞く他ない。

「コラ」メイファンはリウを睨み、言った。「再会を祝すだと? 呪うの間違いじゃないのか」
「何の話なんだ」リウはオーバーアクションで説明を求めた。
「私達にしたことを覚えていないとは言わさんぞ」
「おい、ちょっと待て。さっきも言ってたが、『私達』というのはお前と、ララか?」
「他に誰がいるんだ」
「お前、17歳だろ? まだそんなことを言っているのか……」
「何だと?」
「いいか? ララというのはお前が作り出したもうひとつの人格だ。お前は二重人格なんだ」
「ほう?」
「お前は病気なんだ。医者には行ってないのか?」
「つまり、ララという人間は存在しない、と?」
「当たり前だ」
「ひどい……」メイファンの口から別の女性の憤る声が漏れた。
「ララという愛称をつけてくれたのはお前だぞ」メイファンが言った。リウは答えた。
「子供の遊びに付き合ってやっただけだ。しかし未だに子供のままだとはな。どうせその殺気の理由もガキみたいな理由だろ」
「私達にしたことを本当に覚えていないのか?」
「知らんね。俺は俺の歴史の中に他人から恨まれるようなことは数知れんほどして来ているからな、いちいち覚えてなどいない」
「おい……」
「それに、恨むのはそいつの問題であって俺の問題ではない。少なくとも俺自身は、他人から恨まれて当然だなどと自分自身を責めなければならないようなことは一度もしたことがない」
「おい!?」

472 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 18:41:38.57 ID:dgTE9tOj.net
メイファンはリウ・パイロンが8歳の時の自分をレイプしたことをシューフェンに教えようとして言った。
「おい、この男はな……!」
しかしそこで言葉が止まってしまった。
もしもそれをリウが横から否定したとする。シューフェンは自分とリウ、どちらの言うことを信じるだろう?
しかもその上自分の恥を晒すことになる。

「あぁ、もしかして、あのことか?」
リウはようやく思い出したらしく、メイファンに言った。
「それだ」
メイファンはリウがはっきり言わないことから察し、肯定した。
「あのことにしても……」リウは平気な顔で言った。「お前が弱かっただけの話だろう」

473 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 22:30:25.10 ID:dgTE9tOj.net
「メイファン」リウは少しだけ優しい顔になり、言った。「過去にこだわるな」
メイファンは何も言えなくなっていた。暫くリウが一人で喋り続けた。
「過去の恨みや憎しみに囚われて何になる? そんなものが何を産むと言うんだ」
「過去はただ糧とするべきだけのものだ。未来のために、な」
「お前がいつまでも後ろ暗い仕事を抜けられずにいるのも、過去に囚われているからじゃないのか」
「忌まわしい過去など忘れろ。お前の未来をもっともっと明るくすること、それだけを考えろ」

474 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 22:53:47.07 ID:dgTE9tOj.net
「政治家の息子らしく」メイファンは喋り出した。「詭弁がお好きなようだな」
リウは黙って聞いた。
「責任逃れをしようとしているとしか聞こえん。素直に謝罪しようという気持ちはないのか」
「ない」
「謝る必要はないと?」
「どこにそんなものがある」
メイファンの顔が怒りと憎しみで歪みはじめた。
「大体」リウは言った。「謝ったら何がどう変わると言うんだ?」
「何!?」
「過去をなかったことにでも出来るのか?」
メイファンの歯軋りが激しい音を立てた。
確かに過去は変えられない。自分の気持ちも済むわけがない。
ただ、それでも、罪を罪と認めることで、少しでも相手の気持ちを軽くしてやろうとかいうことには思いが及ばないのだ、この未来バカは。

475 :創る名無しに見る名無し:2018/12/21(金) 23:46:05.52 ID:dgTE9tOj.net
「お前……」メイファンは牙を見せて笑った。「弱くなったよな?」
「何の話だ」リウは少し身構えた。
「こんなに弱い奴だったか? 怯えて損したぞ」
「だから何の話だ」
「TVでは『気』が見えんからな。今、対面して『気』を読んでみたらびっくりだ。まるで子ネズミじゃあないか」
「メイファン、それも違うぞ」
「あ?」
「『気』などというものは存在せん。それも子供じみたお前の妄想だ。ぼちぼち大人になれ」
「は?」
「『気』なんてものはマンガや映画の中だけに出て来るインチキだ。そろそろ卒業しろ」
「何を言う。お前だって『気』が使えるだろ」
「生憎そんな超能力みたいなものは持っていない」
「じゃあさっき私の殺気を感じ取った能力は? 私がシューフェンの首をはねる未来を見た能力は? 何だと言うんだ?」
「カンだ」
「く、首をはねる?」シューフェンが言った。
「カンだと?」
「あぁ。動物的なカンだ。そういうものは存在する」
「じゃあ私のもカンか? 私はカンで何でも武器に作り変えてしまえるのか? カンの鎧を纏い、身を守っている、と?」
「お前のは特別だ」
「特別なカンか」メイファンは馬鹿にして笑った。
「お前は……たぶん、産まれた時から人間として大切な部分が欠けている」
メイファンの笑いが止まる。リウは続けて言った。
「お前のはそれを補うために備わったスーパー・センス(超感覚)だ。それで説明がつく。少なくともマンガのような超能力ではない」
「はん!」メイファンは笑い飛ばした。「そんなに妖しい中国伝統武術がお嫌いか? 弱くもなるわけだ。存在するものを頑なに信じないのではな!」
「散打の王に君臨する俺に言う台詞ではないと思うぞ」
「所詮、表の王者」メイファンは自分を大きく見せる腕組みをして言った。「裏のトップに敵うわけがない」
「やるのか」
「ん? あー、なるほどそうか」
「何だ、いきなり」
「だからお前には見えないんだな」
「何の話だ」
メイファンはシューフェンをチラリと見ると、言った。
「『気』をカンだとか勘違いしているから、見えないんだな。大切な人の重大なアレが」
「何のことだ」
「教えてほしいか」
「あぁ」
「ひざまずいて謝罪したら教えてやらんこともない」
「ふざけるな」
「謝らんのか?」
「断る」
メイファンはこの上なく嬉しそうに顔を歪めて高笑いした。
「ならば後悔して生きろ。あの時メイファンに謝っておけば……と一生過去を引きずって生きろ」
「俺は後悔などせん」
「カスが」

476 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 00:15:25.65 ID:+FcYSzai.net
見下した笑いを残してメイファンは窓に向かって歩き出した。
しかしその実、後悔するも何もないことを痛感していた。
リウが癌のことを知ろうと知るまいと、シューフェンはいずれ死んでしまう。
ただそれに気づくのが早いか遅いかだけの話なのだ。

リウは考えていた。俺が何に気づいていないって?
気づく……気づく……何のことだ。何に気づいて……
その時、ふいに昨日病院で見た黒い影のことが頭をよぎり、リウははっとした。

メイファンが窓を開けたところでリウが呼び止めた。
「待て! メイファン!」
振り向くとリウは泣きそうな顔をしていた。
「お前……まさかシューフェンの頭に何か仕掛けたか?」
「なぜお前が知っている?」メイファンは純粋に疑問に思って聞いた。
「やはりそうか!」リウの顔がだんだんと怒りに染まる。「何を仕掛けた?」
メイファンはそこでいいことを思いつき、悪魔のような笑いを浮かべて言った。
「そうだ。その女の頭に超小型爆弾を仕掛けた。明後日、試合が終わったらすぐ、西安の『施設』へ来い」
「ば、ばく……?」シューフェンが言った。
「そこで解除してやる。ただしお前が私に勝ったら、な」

477 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 02:19:13.16 ID:fNbfNARw.net
「待て!」
リウは追いかけた。
しかしメイファンはベランダの手すりをひらりと飛び越えた。
下を見るともう自転車をシャカシャカ漕いで遠ざかっている。
「あのぅ」シューフェンが言った。「ここ24階なんですけどぉ」

478 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 08:20:16.61 ID:tH/QIiQR.net
メイファンは帰るとジャン・ウーに酒を付き合わせた。
「まさか、まさかだぞ!」メイファンはぐでんぐでんになりながらヤケクソ笑いをする。
「まさか本当に恨まれていると思ってなかったとはな!」老酒をあおる。
「お前がレイプされたのは、お前が弱いからだ」ジャン・ウーがリウ・パイロンの真似を始めた。
「ハハハ」
「未来を見ろ、メイファン! お前をレイプした過去は俺の糧となり、俺の輝かしい未来となっている」
「ククク……」
「お前をレイプしたから俺はこんなに強くなった。お前に感謝する理由はあれど、お前から恨まれる謂れはない!」
メイファンはジャン・ウーの首をはねた。

479 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 08:50:47.31 ID:J1iiptBi.net
次の日の朝は講師二日酔いのため、朝特訓は中止となった。
「メイファンさん、メイファンさん」
ハオが駆けてきた。
「なんだ」
「外出して来てもいいっすか?」
「いいぞ」
「やっふぅ!」
「ただしこれは置いて行け」
メイファンはハオのズボンを踏んで脱がせると、尻に挟んで隠していたスマホを奪った。
「スマホ決済できねーと金ねーんだよ!」
「300円でいいか?」
「よくねーし日本円で渡されたって困るんだよ!」
「ではやめておけ」
「っていうかさぁ、俺、ここに来てもう半年ぐらいになるよな?」
「そんなにいるのか。奇跡だな」
「メイファンさん、未払い金が相当溜まってますよ?」
「未払い金だと?」
「ぼく、あなたに『仕事をしないか』と誘われて来たんで。当然あなたには賃金を支払う義務が……」
「ハオ、お前、何人殺した?」
「は?」
「私らの仕事は『1殺なんぼ』の歩合制だ。見習いのお前に支払うべき金はない」
「歩合制なの!? 報酬制ですらなくて!?」
「むしろお前のほうが金を払うべきなんだぞ? これだけの特訓を無料で受けられていることをむしろ有り難く思え」
「あの酷い仕打ちに金払うの!?」
「どうしても金が欲しいなら、この建物の裏にグッチやルイヴィトンの偽物を作っている工場がある。そこでバイトしろ」
「国家主席自ら作らせてたの!?」
ふいに優しい顔つきになるとメイファンは、どこからともなく500元札を取り出すとハオに渡した。
「午後の特訓までには帰って来いよ」
ハオはウキウキとしながら町へ繰り出した。その後ろ姿を見送りながらメイファンは言った。
「あいつを見てると、ほっとするな」

480 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 09:09:28.15 ID:tH/QIiQR.net
中国で本当に「クリスマス中止のお知らせ」 警察「クリスマスしてる人を発見したら通報するように」

2018/12/19 18:38ゴゴ通信


【簡単に説明すると】
・中国「クリスマス中止のお知らせ」
・中国当局中国当局が中国各地での「クリスマス中止令」が下された。

中国、北京近くの都市である廊坊市都市局は、街中の店が路上にクリスマスツリーを立てたり
装飾や照明を照らしたりするなどのクリスマスプロモーションを禁止するようにと命令。

社会を秩序を乱すという理由で屋外のクリスマス公演や宗教活動をすることも厳しく禁止しており、
市民がこれを発見した場合、すぐに通報するように呼びかけた。

クリスマスイブの24日夜には露店がクリスマスの靴下やリンゴ、サンタクロースの人形などを売ることを大々的に取り締まる方針。

他の地方政府の教育当局は、各学校に送った公文書で「クリスマスを厳しく禁止し、
学生がクリスマスの活動に参加せず、プレゼント交換もしないようにしてほしい」と指示。

中国での「クリスマスとの戦争」は、昨年から本格化してきた。
一昨年までは、中国では普通にクリスマスを楽しんでおり、その様子を現地メディアが報じている。
しかし、昨年10月の第19回中国共産党全国代表大会で、習近平国家主席が、中国文明の偉大な復活を唱えた後、
思想統制を強化してから、雰囲気は大きく変わり、クリスマスや宗教活動に規制が掛かった。

クリスマスだけでなく、地下にある教会までも閉鎖されるなど習近平共産党は自身以外を崇拝することを許さないようだ。

481 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 19:00:54.71 ID:K0vJO8vv.net
                    |ミシ   __,,,〜,__ ! 
                    (6ミシ  ,,(/・)、 /(・ゝ |  
                     .し.    "~~´i |`~~゛ .i   ほいさっ ほいさっ
                     ミ:::|:::::........ f ・ ・)、 ...:::i
                      丿ヽ::::::::::::-=三=-:::/
     ____          /   ヽ:::::::::::゛::::ノ/`ヽ、
    /:::::::::::::::::::::\       ./ |    :;  ̄ ̄ ̄,    ヽ、
  o /::::       :::ヽ o   .l  io,'  :;l´      、    i、
   O   \、 ,/  ::.il O     ヽ/ ̄´ `ヽ、 ;o', _;メ、    ヽ
   |::⊂《;.・;》 《;・;.》つ      /      `゙'''''''" ;;;;;ン、_    !
   (6.  ⌒ ) ・・)'⌒ヽ 6)      i っ       ;;;;;;;〈 /   ノ
   |  ┃iuUuui┃  |   ,-一!;;:,,     _;;;;:::''''-ヽ/   /   ズボボッ
   |  ┃|,-v-、|┃  |   i ,,,;;;;:;ヾξζ/、`、`/ ̄` ノ ≡≡   ズボボッ
   \  ヽニニノ  /|---┴―'´ ̄`ヽξ 、`、`i l_i_/ ̄ヽ、≡≡
     `┬― ''´,. -'_           !ッ、__`、`、` 、`、 ヽ
      / /  ヽi  i_, ---―ヽ、   l ζ  `゙'''ー /゛ , , , ノ
     / /     i  !     /  ハ   i、  ._ノ゙ ̄l ,' ', ,' ,/
   -―'  ノ   -―'  ノ    i_ノ一ヽ   l ̄ _,/´`i ', ' '/
 
12月24日の午後9時から翌25日の午前3時までの6時間は
1年間で最もセックスをする人の多い「性の6時間」です。

貴方の知り合いや友人ももれなくセックスをしています。
普段はあどけない顔して世間話してるあの娘もセックスをしています。
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貴方の将来の恋人や結婚する相手は、いま違う男のいちもつでヒィヒィ言っています。
すべてを諦めましょう。そして、ともに戦いましょう

482 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 20:03:09.87 ID:Y7u1Oqi4.net
リウはシューフェンを昨日の病院ではなく、広州中央警察へ連れて行った。
今朝の飛行機で西安へ戻る予定だったのをずらし、夜の飛行機を予約した。
爆発物探知機を使用し、シューフェンの頭の中の黒い影の正体を明らかにしてもろうのだ。

リウは正直、半信半疑だった。メイファンは昔もよくそういう嘘を言った。
子供じみた悪戯にもほどがある。大体シューフェンの頭に爆弾を埋め込まなければいけない理由がさっぱりわからなかった。

芋饅顔の刑事と黒縁眼鏡をかけたカマキリが出て来て、言った。
「確かに爆発物反応がありました。爆弾です」
リウは目の前がくらくらと歪むのを感じた。「本気かよ……」
「すぐに爆発物処理班を呼び、処理させますので」
「いや、ちょっと待ってください!」
「何でしょう?」
「奴がどこかで見ているかもしれない。うかつに刺激すると起爆されてしまう」
「ふむ?」
「それに下手な手術で頭に傷痕を残されても困る」
「? あの……あなたはこれを埋め込んだ人物に心当たりが?」
「ある。というか確定している」
「教えていただけますか。我々警察で対応いたしますので」
リウは『ラン・メイファン』と言いかけて呑み込んだ。その名前は誰も知らないことにもすぐ気がついた。
奴には特に警察関係者なら知らない者はいない通り名があった。ジャン・ウーが言ってたな、なんだったっけ……と記憶をたぐり、思い出した。
「黒色悪夢だ」
「黒色悪夢!」
「それじゃ私達は手出しできないな」
習近平直属の用心棒であり、殺し屋でもあると噂される凄腕の武術家。
その姿を見た者は皆死んでいるので、誰もその姿を見たことはなく、幽霊のような細身で長身の男とも、髭を蓄えた大男とも言われていた。
「私が奴のところへ行き、起爆装置を奪って来ます。爆弾の除去はそれからお願いします」
本当は戻るつもりはなかった。一度蓋を開けて見事に醜い傷痕を残さず閉めているメイファンにやらせる。
「黒色悪夢を知っているのですか!」
「どんな奴です?」
「あの……。えぇと、国家機密なんで」
「ああ! そうか!」
「うぁぁ知りたい!」

483 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 20:20:13.65 ID:Y7u1Oqi4.net
シューフェンはリウが戻るまで警察が保護することになった。
「爆弾の威力が不明なので」と、爆発しても他に被害の及ばないジュラルミン壁の独房に軟禁された。
TVは観られるが、明日のリウの試合は観に行けないことが確定した。
囚人のようでは決してないが、まるで危険物を扱われるように誰もがシューフェンに近寄ろうとしなかった。

リウは警察署を出ると、ぶるっと身を震わせた。
「メ、イ、ファ、ァ、ァ、ァ、ァァァァァン……!」
空に浮かぶ三日月が満月なら狼男に変身してしまいそうだった。

484 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 21:10:57.73 ID:t+25obRp.net
リウは表向き、余裕を見せているがメイファンのことが怖かった。
昔から何を考えているか分からない、底知れない怖さがあった。何をするか分からない乱暴なガキ、じゃじゃ馬娘を通り越して小さな核弾頭と言った印象を持っていた。

485 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 21:20:15.05 ID:9IhuEVwN.net
ハオは夕方には帰って来た。今日も収穫はゼロだった。
インターネットカフェに入ってシューフェンのSNSに書き込もうとしたが、監視でもされているのかそこでもブロックされた。
シューフェンのスマホに公衆電話から連絡しようと思ったら番号を覚えていなかった。
ハオはスマホからシューフェンの番号をメモすると、ベッドに寝転んだ。明日こそこれで電話連絡できるぞ。
寝ようと思っていたらすうっとドアが開き、女の子が入って来た。目を凝らして見たらメイファンだった。

486 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 21:31:12.81 ID:9IhuEVwN.net
「ハオ兄、一緒に寝てもいい?」
そう言うと返事も待たずにメイファンはハオの布団に潜り込んで来た。
アニメ柄のパジャマを着ており、黒髪からシャンプーのいい匂いが漂う。
ぬいぐるみか抱き枕を抱くようにハオにしがみつくと、不安そうな声で言った。「忘れさせて」
『気』の鎧は解いていた。少女らしい甘酸っぱいフェロモンが漂って来る。
「せっくすして、ハオ兄」

487 :創る名無しに見る名無し:2018/12/22(土) 22:45:58.96 ID:NXHiCNd+.net
リウのトレーナーの楊はジムで一人、ヤケ酒を浴びていた。
「今日の昼には戻るっつってたよな〜、リウ?」
「夜に帰って来て、しかも何もせずに上がりやがった……」
「試合は明日だぞ!? 明日!!」
「はいっ! やる前から負け確定〜w」
「もう俺、あいつのトレーナーなんかやめだやめ」
「本を書いてやる。タイトルは何がいいかな〜」
「女で身を滅ぼした散打王」?
「散打王をダメにした悪女」?
「はははベストセラーで俺、大儲け〜www」

488 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 05:24:36.43 ID:REQM3gfa.net
「なにかがおかしい。」
目の前のメイファンに対しハオは思った。
いつもの彼女なら家では衣類など着ないし、風呂から上がりでもこんな良い匂いはしない。

後者に関してはいつもメイファンの体を洗っているハオにはよく分かっていることだ。

489 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 06:34:20.35 ID:jecJvK+i.net
それにいつもは先にベッドに入って寝ているか黙って入って寝るかで
そもそもいつものメイファンならば「せっくす、して?」なんて口にしない。

490 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 07:13:47.52 ID:G4XFajDN.net
「お前、誰だ?」
ハオが聞くと少女は胸に抱きついていた顔を上げ、潤んだ瞳で至近距離から見つめて来た。
「メイファンだよ」
「しっ……しかし!」
「メイファンの中にはララの他にもいっぱいいるの。自分でもどれがほんとうのメイファンなのかわからないの」
そう言うとさらに顔を近づけて来る。
「私は処女じゃない。でもキスの味は知らないんだ。教えてくれ、ハオ兄」
濡れた瞼を閉じて、桃色の唇を半開きにして、彼女は愛してもらえるのを待っている。

491 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 08:31:18.12 ID:6qX9Owum.net
「うおぉぉぉもうどうにでもなれぇぇえ!」そう叫ぶとハオは突進した。
小さなメイファンの唇を大きな口で塞ぐ。舌を突っ込み、ぐちゅぐちゅと音を立てて動かすと、メイファンのほうからも舌を絡めてきた。

492 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 08:56:33.56 ID:6qX9Owum.net
パジャマのボタンを全部外し、ばっと開くとすぐにおっぱいが出た。
チョコレートプリンの上に小さなピンク色のアーモンド粒がちょこんと乗っている。
さんざん見慣れているはずのそのおっぱいが、今夜はやたら美味しそうな御馳走に見えた。
右手で乱暴に揉むと、固そうに見えたおっぱいはいとも容易くハオの手の動きに合わせ、ぷりんぷりんと揺れた。
たまらずアーモンド粒に吸い付き、舌でいじめるとメイファンは「あっ」と声を上げた。

舌を這わせながら下のほうへと移動を開始する。
メイファンの身体はボディーラインから想像する通りの柔らかさだった。
格闘技をやっている女の子の身体だとは思えない柔らかさ。
まるで猫のようにしなやかで、ハオの腕の中でそれが艶かしい反応で揺れた。
ワイルドな陰毛を唇に挟んで引っ張り、脚を開かせる。
そしてその間を覗き込むと、ピンク色の割れ目からはもう大量の愛液が溢れ出していた。
それを指で掬って、小さいが形のよいクリトリスに塗ってやる。指で円形にぐりぐりしてやるとメイファンはのけ反り悲鳴を上げた。
「よーし、もっといじめてやるぞ。日頃のお返しだ」
ハオはそう言うと舌を固く伸ばし、割れ目を上下にぴしぴしと攻撃した。クリトリスを同時に優しく指で愛撫する。
メイファンの腰が浮く。頭と爪先だけでブリッジをし、お願いもっととねだるように、股間をハオに押し付けてきた。

493 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 09:08:03.67 ID:6qX9Owum.net
「俺のもしてもらおうか」
ハオがそう言って体勢を入れ換えようとすると、メイファンのほうから上に乗り、押し倒してきた。
「ハオ兄の如意棒、こんなに大きくなってるよ」
意地悪そうな笑顔でそう言うと、指でくすぐり、握って上下にさすると、すぐにぺろぺろと音を立てて舐めはじめた。
金玉から先っちょまで舌を行ったり来たりさせながら指で愛撫する。そのたびにメイファンのほっぺたや顎がハオの太ももやお腹に心地よく当たる。
「く、口に入れてくれぇぇぇ」
ハオが泣くようにそう言うと、メイファンは「フフン」と勝ち誇ったように笑い、先っちょに少しだけ吸い付いた。
「は、早くぅぅぅ」
ハオがちんちんを突き出して催促するとメイファンは素早く顔を引き、ニヤリと笑うといきなり口の中に全部入れた。

494 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 09:31:36.57 ID:6qX9Owum.net
「ハァ、ハァ、ゴムなんかいらんだろ?」
鼻息を荒くして如意棒を割れ目にあてがうハオにメイファンは嬉しそうに言った。
「いいから早く入れて」
小さな割れ目をかき分けていきなり奥まで挿入した。
ヒダが絡み付き、大量の愛液が飛び散った。
「あぁ、こりゃえぇわー!!」
ハオはのっけから絶叫し、メイファンは普段からは信じられないような甲高い声で鳴いた。
「おおっ! おおっ! シュ……メイファ〜ン!」
「きゃふん! きゃふん! きゃふん!」
「腰が止まらん! 腰が止まらん!!」
「きゃっ……ふん! きゃふん! きゃゃゃーっ!」
ハオはメイファンの両足首を掴んで持ち上げ、天井を仰ぎながら激しく突きまくった。
視線を下に戻すとベッドの上に自分のちんぽを突っ込まれて喘ぐ美少女のすべてが丸見えだ。
メイファンの興奮と性感は既に最高潮に達てしているように見えた。
よーしこれ俺、イカせてやれるんじゃね? スタミナには自信があるぜ!
腰の動きをさらにさらに早めると、興奮に我を忘れたメイファンの手刀が飛んで来て、ハオの右腕を関節のところで綺麗に両断した。
「えっ?」
それでもハオの腰は別の生き物のように動きを止めず、メイファンはハオの右腕を愛おしげに抱き締め、
手の甲の皮を牙で削り取り、出て来た血をちゅーちゅーと吸ったり舐めたりしている。ハオは腰を動かし続けながら、困った顔をして言った。
「ちょっ……」

495 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 09:51:07.26 ID:6qX9Owum.net
すぐにララが出て来て治療をした。
ピューピューと噴き出して止まらない腕の血をまず一時的に止め、そこに切断された腕の先をくっつけた。
「っていうかララ、起きてたの?」
「うん。お兄ちゃんのちんぽ、私もメイと一緒に感じてたよ。凄かった」
そう言うと白い少女はベッドに仰向けに寝転んだ。
月明かりの下、綺麗な髪が枕の上で乱れ、お椀型のおっぱいはどんぶり型に変身していた。
「次は私を見ながらしてください」
そう言ってララは妖艶に微笑んだ。
甘酸っぱかったフェロモンは強烈なほどの甘さに変わり、ハオに襲いかかった。
しかしそれでもハオの如意棒は大きくなることを忘れ、干し柿の食べ残しのように萎びきっていた。
「で、できるかーっ」
恐怖が性欲を凌駕したのである。

496 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 10:00:51.56 ID:syOLJsFd.net
お前らの両手足をいただく!
                     ,.,.,.,.,.,.,.,.,__
                   ,;f::::::::::::::::::::::::::ヽ               .   i ! .
                   i/'" ̄ ̄ヾ:::::::::::i           . :    ,ノ キ、 : .
                   |,,,,_ ,,,,,,_  |::::::::|  ---‐=======´,.  , ==
                  (三);(三)==r─、|              ,./  !|l´. :
                   { (__..::   / ノ′              ,.r'.::1   i l|
                   ', ==一   ノ             ,.r'´:::::::;!  i |l
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         ム-.、   /. ;:-'´:::::::::::::::::::::::::::::::::;;;ノ      ,. '´

497 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 10:03:42.10 ID:ZqzIMN5p.net
>>496がハオである

498 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 10:10:02.53 ID:FOCQpZ5O.net
ハオはしばらくの間インポになってしまった。

499 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 11:04:15.44 ID:RHgqWK10.net
翌朝、ララが目を覚ますとハオは向こうを向いて眠っていた。ララはなんだか寂しくなって寝起きの顔を曇らせた。
「おはよう、ララ」メイファンの声が自分の口を動かして言った。
「おはよう、メイ」
「昨夜はすまん」
「何が?」
「とても眠れなくて、遂にお前との約束を破ってしまった」
「いいよ。あたしも気持ちよかったもん……。でも最後までしてほしかったな」
「あぁ」
「でも、よかったの? シューフェンさんに一途なお兄ちゃんじゃなくしてしまって……」
「いや、ハオ兄は私達のことを思い、私達のために抱いてくれたんだ。あれはハオ兄の優しさだ」
「単に誘惑に負けただけに見えたけど……?」
「ハオ兄は私達のためにビルの111階から飛び降りないだろう。しかしシューフェンのためなら飛んだ。あれが全てだよ」
「そうかなぁ」
「私よりお前はよかったのか? お前は本気でハオ兄のことを……」
「いいよ。所詮ヴァーチャル体験みたいなもんよ。ちょっと悔しいだけ」
「ん?」
「お兄ちゃん、ララに変わったとたん、しなしなになっちゃった」
「あれは私が斬っちゃったからだろ」
「それにね。私も、シューフェンさんに一途なお兄ちゃんのことが好きなの。私に振り向いちゃったら、もうそのお兄ちゃんのことは好きじゃないかもしれない」
「……」
「どうしたらいいんだろうね」ララはそう言うと涙を拭き、その手でハオの大きな背中をそっと触った。

500 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 11:20:29.73 ID:RHgqWK10.net
ハオは動着に着替え、すごく嫌そうな顔をしながら道場に入った。
最近なぜか室内でも服を着るようになったメイファンが、黒いチャイナ服を着て既に待っていた。
「昨夜は……どうも」と俯くハオを無視してメイファンは言った。
「ハオ、今日がお前の散打デビュー戦だ」
「は? 聞いてねぇ……」
「今日、リウ・パイロンがここへやって来る。お前は奴の攻撃を捌き、遠慮なく拳を打ち込んで、殺せ」
「は!? いきなり王者決定戦!?」
「嬉しいだろう?」
「こっ、心の準備が……」
「そのために、特訓だ。60%本気の『牙突』を捌いてみせろ! 行くぞっ」
「あっ、あの……」
いきなりメイファンの棒を額に喰らい、ハオはばたりと倒れた。

501 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 18:12:18.25 ID:2kEZnbpU.net
「ララちゃんっ、明日の夜は空けておいてねっ」
お茶を持って来たララに習近平が踊りながら言った。
「え。何があるの? ピンちゃん」
「またまたぁ〜トボケちゃってぇ〜明日は恋人達のピンクな夜、クリトリスイボ……じゃなくてクリスマスイヴだろぉ?」
「えー! だって中国、クリスマス禁止じゃん」
「誰がそんなこと言ったんだ」
「アンタじゃん!」
「いいんだ。庶民はクリスマス禁止。僕らはクリトリス満喫でいいんだ。国家主席の私が許す」
「独裁者だなぁ」
「その通りだもんっ!」
「でも、たぶん今夜起こることで明日はそれどころじゃないと思うよ〜?」
「今夜? 今夜何が起こると言うんだね?」
「んー……」
「?」
「ヒ・ミ・ツ」明らかにララの下手な物真似をするメイファンの声が言った。
「おのれメイファン〜! またワシらのスイート・タイムの邪魔をしよるか!」

502 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 18:34:50.01 ID:2kEZnbpU.net
ハオは自室で一人、パソコンで酷(you ku。中国YouTube)で動画を見ていた。
珍しくエロ動画ではなく、リウ・パイロンの過去の試合動画だ。
「全てデカイ攻撃でKO勝利しているな。喰らってる奴らはアホなのか?」
ロングフックやら豪快な投げ技やら飛び蹴りやらも多いが、中でも最も多いパターンがアッパーによるフィニッシュだった。
「こんな動きが大きなモン、捌きの天才であるこの俺様が喰らうかよ」
しかもただのアッパーではなく、地を掠めるようなやたら低空からのアッパーである。
しばらく見ていてハオははっはっはと笑い出した。
リウのデカイ攻撃をまず捌く、体勢の崩れたリウの懐に飛び込み、自慢のショートレンジの連打を叩き込み、フィニッシュはチンハオ流八卦掌。
「参ったな、負けるイメージが湧かねぇや」

503 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 18:47:41.48 ID:jecJvK+i.net
ハオは黙り込みしばらく動画を見続ける。
その視線はリウ・パイロンのファイトそのものではなく、その容姿に移っていた。
ハオはホモではないはずだが、リウ・パイロンにウットリとしていた。

504 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 18:50:55.21 ID:2kEZnbpU.net
ジョー・サクラバは気合い十分だった。
日本で名前を知られていない相手とは言え、リウ・パイロンを舐めてかかる気はまったくなかった。
「萬漢全席は汚ぇ味だったし、中国美女とやらは整形アゴの鶏ガラみてぇな女だった……」
姿見の前でジャブの素振りを連打する。
「てめぇだけは楽しませてくれよ? このジャブでてめぇの大振りを封じ、関節技に持ち込んで決める!」
そこへゴージャス哀川が入って来た。
「おぅ、ゴージャス! 勝ちのイメージ、見えたぜ!」

505 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 19:30:40.27 ID:2kEZnbpU.net
TV画面に大きな白文字で両者の名前がローマ字で浮かび上がる。

Liu bai long

VS

Joe Sakulaba

ももクロの「ココ☆ナッツ」に乗ってまずジョー・サクラバが入場した。
解説者がその輝かしい戦績、戦闘スタイル、明るい人柄、五歳の娘にはからっきし弱いことを紹介し、
サクラバがリングに上がりガウンを脱ぎ捨て、両手を高く上げるとアウェーながら観衆は一層沸き上がった。

次いでリウ・パイロンの登場である。
台湾のデスメタル・バンド、反中華人民共和国を叫ぶ閃霊楽団の「皇軍」に乗って現れると、観衆はマックスで沸き上がった。
しかし何だかその入場姿には力強さが感じられない。
高く掲げた両拳を打ち鳴らしながらのいつもの登場に観衆は沸いたが、解説者は不安そうに言った。
「こんなにだるそうなリウは見たことがありません」

506 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 19:55:01.44 ID:2kEZnbpU.net
リングに上がり、被っていたフードを脱いだリウの顔を見て、観衆はざわざわとし始めた。
頬がこけ、目にはまったく生気というものがない。
口は乾ききったように開け放たれていた。
しかしやがて観衆が目の前の現実を打ち消そうとするようにリウ・コールが始まる。

「Liu! Liu! Liu! Liu!」

その会場を揺るがす声援はしばらく鳴りやまなかった。

507 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 20:36:02.86 ID:2kEZnbpU.net
ゴングが鳴った。
しかしまずは予告通りのお遊びである。
青いトランクスのサクラバが両腕をぶらんとしてそれを待つ。

赤いトランクスのリウがゆっくりと右腕を上げ、オープンフィンガーグローブを嵌めた手でサクラバの額に軽くデコピンをした。
次いですぐにサクラバの眼前で両手をポンと優しく打って猫だましをする。
それをサクラバは緊張した眼差しで見つめていた。既に額から大量の汗が滴っている。

リウが最後のお遊び『壁ドン』を決める。
なよなよした動作でサクラバの右側の何もないところをドンと突いた。
「よし! 来いや!」サクラバが吠えると同時に闘志を燃え上がらせた。
しかしリウはやはり生気がなく、壁ドンから引いた腕をダランとさせている。

最前列席で鼻クソをほじりながら、リウのトレーナーの楊が言った。
「女と何発やったか知らねぇが、脱け殻だぜ。照明が黄色く見えてんじゃねぇか?」

来ないならこっちから行くぜとばかりにサクラバが前に出た。
振りの小さなジャブでまず様子を窺った……つもりだった。
しかししっかり動きを見ていたはずのリウ・パイロンが、眼前から消えた。
サクラバの下のほうで何かマグマのようなものが音を立てていた。
メラメラと音を立てて何かが沸き上がって来る。
一瞬が数秒に感じられるスローモーションの世界で、それは恐ろしいほどのスピードで地底から襲いかかって来た。
狂戦士のような形相のリウ・パイロンがそこにおり、その溶岩のような拳が真下から飛んで来た。

ここからの数時間のために全ての力と闘気、そして怒りを溜めていた。
ここからは体が張り裂けようと構わない、100%全開だ。

サクラバはとっさにガードしたが、超低空アッパーを受けて185cm86kgの体が2m浮き上がった。
浮き上がったその足を掴むと、リウはマットに思い切り叩きつけた。
叩きつけるとすぐさまその背中に跨がり、逆エビ固めに入る。
レフェリーがカウントを始めるが、サクラバは既に泡を吹いて失神していた。
観客席最前列でゴージャス哀川と一徹がただ大きく口を開けていた。
試合終了のゴングが鳴った。開始からわずかに13秒であった。
腕を取って高く持ち上げたレフェリーをリウはロープまで投げ飛ばした。
白目を剥いてゴリラのように牙を剥くと、誰も知らないその相手の名前を吠えるように叫んだ。
「メ、イ、ファァアァァアァン!!!」

508 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 21:00:25.05 ID:2kEZnbpU.net
メイファンはTVを観ながら大喜びしていた。
リウ・パイロンの勝利に「キャホー」と甲高い声を上げ、自分の名前を呼ばれた時には「ハーイ」と手を挙げて馬鹿にするように返事をしていた。
メイファンともあろう者が熱中しすぎていて気がつかなかった。
背後にドナルド・トランプが放った刺客、グリーンスネークが気配を殺して近づいていることに。

509 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 21:20:22.66 ID:2kEZnbpU.net
ハオは黒い道着姿で玄関先に立ち、待っていた。
ここにいればリウ・パイロンと闘えるとメイファンに言われ、待っていた。
試合あっさり終わったけど、本当に来るのかよ?
しかしサクラバもアホだったな、なんであんな大振りのアッパーが避けられないんだ?
世の中アホばっかりだ。
さっさとぶっ倒してオナニーしよ……と思ったけど俺、今、インポだしなぁ。
そんな考え事をしていると、闇を縫って遠くからまっすぐヘッドライトが猛スピードでこちらへやって来るのが見えた。
門の前で赤いベンツが停まる。ボンネットの上にメカゴリラみたいな怪獣が乗っていた。
メカゴリラは車が停まるのも待たずに飛び降りると、こちらへ向かって走って来た。
「あ。メカゴリラかと思ったらリウ・パイロンじゃん。本当に来たよ!」
リウはまっすぐハオに向かって駆けて来る。
「平常心、平常心。『気』を十分行き渡らせ、相手の未来を読む」
リウはあっという間に目の前まで近づいて来た。
「今日、俺の伝説は始まるのだ」
ハオはリウの攻撃を捌くための準備動作に入ろうとしたところに喰らった。
「ほぬが!」と吠えながら放ったリウの超低空アッパーがハオの顎にクリーンヒットした。
ハオは30m空を飛んだ。リウはそれを見届けることもせずに先へ走って行った。
ハオはゆっくり弧を描くと、30m離れたティンさんの家の屋根瓦を突き破り、カップラーメンを食べていたティンさんの上から天井を突き破って驚かせたところで止まった。
あれで生きているのが不思議なくらいだった、とティンさんは後に語った。

510 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 21:52:43.39 ID:2kEZnbpU.net
『私は……リウ・パイロンに勝てるのだろうか?』
目を閉じてメイファンは考えていた。
「ククク。噂に聞いた黒色悪夢がまさかこんなお嬢ちゃんだとはな!」
グリーンスネークがチロチロと舌を出しながら後ろからメイファンの顔を覗き見た。
メイファンはグリーンスネークの超硬質ワイヤーによって椅子に縛りつけられていた。
『あの記憶が……奴の前では私を弱くさせる』
「アジア人にしちゃいい女だよなぁ。おい、アンタ、ケツにぶち込まれたことはあるかい?」
『雑念を払え。奴に対する憎しみだけを思い出せ』
「……なーんかつまんねぇなコイツ。さっさと殺すか」
『憎しみだ。憎しみだ! 私のリウ・パイロンに対する憎しみは、どんなものだ?』
「あばよ、黒色悪夢さん」
グリーンスネークがそう言って振るったナイフが弾かれて飛んだ。
「は?」
メイファンの身体中から真っ黒なオーラが立ち昇り、ブチブチと音を立てて超硬質ワイヤーが切れた。
その眼は黄色く炎を灯し、真っ赤な口は白い煙を吐き出し、鋭い牙の生えたその口から獣のような叫びが上がった。
そこへちょうどリウ・パイロンが辿り着いた。
「ぼわぁぁぁっしゅ!」と声を上げ、まっすぐメイファンに突っ込んで来る。
「ガルルルァァァ!!」叫び声を上げて手刀を振ったメイファンの目の前からリウが消える。
超スピードの超低空アッパーがメイファンの顎にクリーンヒットし、メイファンは後ろに弾け飛んだ。
弾け飛んだメイファンはその場で一回転すると、リウのパワーをそのまま伝えたサマーソルト・キックでリウの顎を蹴り上げた。
リウの巨体が5m後ろへ弾け飛ぶ。
「あっけないな」メイファンは無傷だった。「こんなものか? 散打王」

511 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 22:12:34.95 ID:2kEZnbpU.net
しかしリウもまた無傷だった。
「何だよ」メイファンは馬鹿にするように笑う。「やっぱり『気』がしっかり使えてんじゃねーか」
「リっ、リウ・パイロン!」
いつの間にかそこにいた習近平が叫んだ。
「この、私を崇拝せぬ愚か者が! これがお前の恋人の頭に仕掛けられた起爆ボタンだ! 押されたくなければ抵抗をやめろ!」
メイファンが後ろ回し蹴りで習近平を軽く蹴り飛ばした。
「あっ」と声を上げて習は踊るように倒れ、手から離れた起爆ボタンをキャッチしてメイファンは窓辺に置いた。
「邪魔すんな。たかが国家主席の分際で」
「た……たかが!?」
「メイファン」リウが言った。「俺が勝ったらそれを貰って行く」
「勝ったら、な」メイファンが牙を見せて笑った。
「お前が勝ったら、何が望みだ?」
メイファンは少し考えたが、それを振り払うように答えた。
「お前の命が奪えれば、それで十分だ」
「くれてやろう」そう言うとリウは拳を構え、再び闘気を身に纏った。
「5分だけ素手で闘ってやる」メイファンもまた戦闘モードに入った。「5分で私を倒せなければお前の負けということだ」
「あっ……あの……」グリーンスネークは床に這いつくばってオロオロしていた。「なっ……何ですかコレ」

512 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 00:53:38.28 ID:eX5MdsFf.net
主な登場人物まとめ

・ハオ(リー・チンハオ)……主人公。習近平とメイファンにより謎の施設に軟禁され、謎の過酷な特訓を受けている。
太極拳の使い手。恋人のシューフェンの待つアパートに帰りたくてしょうがない。

・シン・シューフェン……ヒロイン。膵臓ガンに冒されており、余命は僅か。ハオの恋人だったが、リウに取られた。
元々ハオにはもったいないほどの美人であり、リウの紹介で女優デビューする。

・リウ・パイロン……中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり国民的英雄。シューフェンの現恋人であり、彼女にメロメロ中。
メイファンの元弟子だが、ボロボロに負かした上当時8歳のメイファンをレイプした上、彼女の元を去る。

・ラン・メイファン……17歳の美少女。国家主席習近平のボディーガードであり凄腕の殺し屋。
『気』を操り様々なことに使える武術家、というより超能力者。『黒色悪夢』の通り名で恐れられている。

・ラン・ラーラァ(ララ)……21歳の天然フェロモン娘。メイファンの姉。ただし身体を持たず、妹の中に住んでいる。
『気』だけの存在であり、メイファンと身体を交代することが出来る。性格は妹と正反対で女らしく、お喋り好き。

・習近平……言わずと知れた中国国家主席。孤児だったメイファンを引き取り、殺し屋として育てる。ララのファン。

・ドナルド・トランプ……言わずと知れた(略)

・ジャン・ウー……メイファンの仲間の殺し屋。通り名は『酒鬼』。昔のカンフー映画に出てくるような見た目をしている。メイファンに首をはねられ死去。

513 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 07:29:22.38 ID:UzT7Ttb4.net
「ヴ〜っ…ヴ〜っ…」
ハオは奇跡的に生きていたが、顎も闘志も打ち砕かれ、ただガタガタと恐怖で震える事しかできなかった。
(…ああ、俺は身の程知らずのクズだ。あんな怪物に勝てるわけがない、ゆ、夢物語だったんだ。)
ハオはリウの形相を再び思い出すと情けない悲鳴を上げながら涙を流し、股ぐらに糞尿の染みを作った。

514 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 14:22:45.50 ID:uZRuT8S5.net
「ガルルルァ!」
メイファンの『気』を込めた回し蹴りがリウを襲う。リウは臆せずそれを掴みに行った。
メイファンは咄嗟に足を畳み、掴み損ねたリウに返す踵で首を斬ろうとする。
リウは地面にしゃがんでそれを避け、再び超低空アッパーを放とうとしたが思い止まった。先程のサマーソルトが頭に焼き付いていた。

二人は距離を計り、牽制し合う。

メイファンはリウに掴まったら終わりであった。相手の蹴りを掴んで投げるのは散打の常勝パターンである。
そしてこれは散打の試合ではない。足を掴んだリウはメイファンを振り回し、壁や床や鉄のボイラーやらに打ちつけまくるだろう。
そうなれば『気』の鎧も破壊され、メイファンの頭はぐしゃぐしゃに潰されるに違いなかった。

リウもまた、メイファンのすべての攻撃に警戒する必要があった。
『気』を込めたメイファンの蹴りも手刀も、ただのそれではない。鋭利な刃物だと認識しなければならない。
自分では決してそうとは認めないがリウも『気』の鎧を着ている。多少の攻撃ならば防げる。
顎にクリーンヒットした先程のサマーソルトも、アッパー後の姿勢のまま自分から飛び退いたからこそ大ダメージを受けずに済んだが、
もし『気』の鎧を着ていない常人ならば、それでも顎を斧で割られたようになっていたことだろう。

515 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 14:39:53.84 ID:uZRuT8S5.net
リウがジリジリと間合いを詰め、左のロングフックを繰り出した。
メイファンにはとっくにそれが来ることはわかっていた。下を潜り、リウの腹に掌打を叩き込もうとする。
しかしリウにもその未来が見えていた。右のアッパーをそこに既に置いている。振り上げる。
しかしリウがメイファンの気を「もやもやした気体のようなもの」としてしか認識出来ないのに対し、
メイファンにはリウの気がはっきりとしたリウの未来の姿として見えていた。この違いは大きかった。
メイファンはリウの『気』を込めたアッパーを髪の毛一本の距離で躱すと、背中に回り込んだ。大きな隙が目の前にあった。
メイファンは大袈裟な動作でぐるぐると両腕を前で回すと、巨大な『気』を両掌に込め、放った。リウはそれをいとも簡単にさっと避けた。

「ふざけているのか」リウが低い声で言う。
「やっぱり当たらんな」
「当たり前だ。そんなマンガみたいな技が当たるか」
「今の弟子が考えた技なんだ。技名はチンハオ流八卦掌だったかな」
「遊ぶな」
「しかし、楽しいな」
「楽しい? 何がだ」
「今まで私は一方的に殺戮するばかりだった。こうやって本気で闘り合える相手がいるのは楽しい」
「楽しいわけがないだろう」
メイファンはバカにするように「なんで?」と首をひねった。
「お前が子供みたいな爆弾遊びなどしなければ、こんな闘いはする必要がなかったんだ」
「ごめんなさ〜い」メイファンはそう言いながら上から目線で笑った。
「大人をガキの遊びに巻き込むな!」
リウの怒りが闘気に混じり、爆炎のごとく燃え上がった。

516 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 14:54:22.43 ID:uZRuT8S5.net
「はん。こりゃヤバいな」メイファンはそう言うと『気』を小さく固めた。「早めに弱らせとくか」
少しずつ、少しずつ、小さく固めた『気』を連続で繰り出す。メイファンの小刀のような連撃がリウを襲う。
小さいが、一発一発がナイフの一撃みたいなものだ。並みの者ならひとつ喰らっただけで動けなくなってしまうだろう。
しかも視線はずっとリウの目を見ながら肩へ腹へ足へと連撃が続く。リウは防戦一方になり、攻撃が繰り出せない。
しかしメイファンの気力も無尽蔵ではない、やがて疲れが見え始めた。
リウも避けているだけのように見えて相当な気力と体力を消耗していた。二人は同時に飛び退き、呼吸を整えた。

517 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 15:16:34.83 ID:uZRuT8S5.net
「ララ……すまん」呼吸を整えながらメイファンが言った。
「何が?」ララが聞く。
「じっくりいたぶって殺すつもりだったが……そんな余裕がない。一発で殺してしまうことにするぞ」
「うん。それでいい」
「また一人でお喋りか……」リウも呼吸を整えながら言った。
「一人じゃないわ!」ララの声が答える。
「やめろ、それ。見ていて気持ちが悪い」
「気持ちが悪い……だと?」
メイファンが目をかっと見開いた。
「ああ。昔から気持ち悪かった。いい加減にしてくれ」
メイファンの胸に昔の思い出が甦った。
(私達のことをわかってくれるのはお兄ちゃんだけだよね)とララが言ったのだった。
「このふざけた糞ガキめ……」目の前のリウが吐き捨てた。
(私、お兄ちゃんがだーすき)思い出の中のララが言った。
(じゃあメイは、だいだいだーいすき!)幼いメイファンは張り合った。
「お前などに……」メイファンは唇を強く噛んだ。
(じゃあララは、だいだいだいだーいすき!)
「お前なんか……」
(じゃあメイは、うちゅうだいだいだーいすき!)
「シャギャアァァァァ!!!」
メイファンの『気』に憎しみが深く混入し、赤黒い炎となって燃え上がった。驚いたような顔をしたリウの懐めがけてそれが火の玉となって飛んで来た。

518 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 15:50:02.68 ID:4RNpbBo8.net
両手両足を切り取られたハオは日本に渡り、z武さんと称して人気者になった。

519 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 16:20:17.11 ID:ZQehDrq6.net
いつものリウならば避けたことだろう。避けられれば、次の攻撃へ繋げられる。しかし、避けられなければ……
リウには絶対に守らねばならないものがあった。自分の後ろにその彼女がいるつもりで守った。
「シュゥゥゥゥ……!」
飛んで来た火の玉をリウは真っ向から受け止めた。
「フェエエエェェェエエエェーン!!」
飛んで来た火の玉はメイファンの『気』を一身に纏ってのドロップキックだった。リウは受け止め切り、その両足を、掴んでいた。
「おふあ!」
振り回し、床へ叩きつける。
「ギャアッ!」
メイファンの口から血飛沫が飛んだ。
「でららららららッ!」
リウは身を翻すと、逆方向にある鉄のボイラーに向かってメイファンの頭を打ちつけた。メイファンは腕でガードしようとするが間に合わなかった。
「アガーーーッ!!」
ゴキンという骨が砕けるような音がした。血飛沫に何やら白いものが混じる。
「のぅわ!」
さらにリウは身を翻すと、メイファンの足を脇に挟みぐるぐると回り出した。回りながら移動する。目は硬い石製のマントルピースを狙っている。
「ギャアアアアオ!!!」
そう叫ぶと遠心力に逆らいメイファンが身を起こし、リウの首に噛みついた。
リウは紙一重で避けたつもりが表面の肉をぎっちり喰われた。メイファンの両手がリウの両腕を斬るため降り下ろされる。
たまらずリウが手を離すと、メイファンは黒豹のように手から床へ降りた。
明らかにメイファンのダメージは大きかった。頭からどくどくと血を流し、右目が開かなくなっている。
しかしその時、けたたましくアラームが鳴り響いた。
「時間だなァ」
メイファンはそう言うと片目を大きく見開き、牙を剥き出しにして笑った。
「5分経ったぞ! 終わりだ、糞オヤジ」
メイファンはすぐ側にあった棍棒を取ると、それに『気』を込めた。

520 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 16:28:10.68 ID:IKddpbgp.net
「オーマイガッ」
暴徒どもが叫んだ。
「オーマイガッ」
「オーマイガッ」
奴らは増殖しそして中国全土へと感染して行く。
それは中国大恐慌の始まりであった。

「ふふふ、どうやら始まったようだな…」
某大統領トランプ氏はモニターを見てニヤリと笑ったと言う

521 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 17:16:45.94 ID:ZQehDrq6.net
大学生の頃、リウはメイファンの棒を捌く特訓を毎日やらされた。
10発1セットの突きを3セットこなすのだが、最初はメイファンも本気では突かず、後になるほど威力もスピードも上げられた。
60%までは何とか捌くことが出来たが、70%以上の力を出されると途端に反応が出来なくなった。
しかも棒の先には柔らかいクッションが付けてあるにも関わらず、鎖骨に当たれば骨折し、肉に当たれば激しく内出血した。
特訓の後にやって来る『白いメイファン』の治療がなければ毎日続けることは無理だった。
リウはそれでも80%以上の力で突くことを求めたが、「お兄ちゃんに穴が開いて死んじゃう」と言われ、遂に体験出来ず終いであった。
それがメイファン8歳の頃の話である。

「100%の『牙突』だ。防いでみせろ」
そう予告すると、17歳のメイファンは『気』を最大出力で放ち、連続で棒を繰り出した。反動をかえりみないその全力の攻撃は、実際には120%だったかもしれない。

リウ・パイロンめがけて幾つもの流星がまとめて降り注いだようなものであった。
こんなもの人間の力ではどうしようもないというほどのものであった。
それでもリウ・パイロンは諦めなかった。

522 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 18:36:13.97 ID:NCiokeEm.net
それはもちろんシューフェンを救うためであったが、彼には使命があった。

リウ・パイロンは正義のヒーローの一族であり、目の前の少女に宿る邪悪を払い、「良い子」にする責務があった。

一連のヤリ捨て行為やメイファンに対するレイプも強さのためでも欲望のためでもない。実際、リウにヤリ捨てられた者たちは性や金にだらしがなかったが
ヤリ捨てられたあとは皆、清廉潔白の良い子に生まれ変わっている。

だが例外もいた、そうメイファンだ。

523 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 19:12:19.32 ID:12YEl/+L.net
リウ・パイロンは股間のステッキで邪悪を払う魔法少女的な何かだった。リウ自身も仕事を始めたばかりの頃は内容の下品さ具合に対する罪悪感で悩むことはあったがむしろ今では誇りに思っている。

しかしリウ一族の行為は、端から見ればどー見てもヤリチンかレイプ魔のそれにしかみえない。正直に話したところで状況は悪化するだけだ。だからもっともらしい嘘をついた。

524 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 19:40:28.55 ID:kGRgNIIb.net
そしてメイファンの放った「牙突」はリウ・パイロンに命中。
彼はボロ雑巾のような肉塊に姿を変え、開けられた風穴から滝のように血を流しその場に崩れ落ちた。


・・・はずだった。
リウ・パイロンは首のケガを除けば、傷一つ付いていなかったのである。

525 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 19:52:11.16 ID:ZQehDrq6.net
数瞬後、リウ・パイロンは無様に地に背中をつけて倒れていた。
その胸にはメイファンが馬乗りになっている。
「あの時とは逆だなァ、オイ」
メイファンは棒を支えに荒い息を吐いている。
リウは全ての『気』を鎧として使い果たし、その鎧も壊れてしまっていた。
「言い残すことはあるかオイ?」
メイファンのその言葉にリウは消え入るような掠れた声でようやく言った。
「シューフェン……ばく……だん」
「安心しろ。必ず解除してやる」メイファンは息を切らしながら言った。「何しろあの女は私の今の愛弟子リー・チンハオの恋人だからなァ」
リウは何も喋ることが出来ず、黙って聞いていた。
「お前、利用されたんだよ」
「恋人が私に拉致られて帰って来ないもんだから、その寂しさを埋めるために利用されただけだ」
リウは黙っていた。
「お前が死んでも、恋人が戻って来れば彼女はハッピーさ。よかったなぁ、お前、死んでも彼女を泣かせない、ただの使い捨ての道具みたいなもんでよォ」
リウは表情も変えずに黙っていた。
「でもなぁ……あの女、実はほっといても死んじまうんだぜェ?」
「お前はアホだから気づかなかったみたいだけど、あの女、癌に侵されてて余命ヒトツキかフタツキぐらいのもんだからよォ」
リウの眉が険しく動き、微かに顔を起こしてメイファンを見た。
「よかったなァ、お前、死ぬけどすぐにあの世で彼女に会えるぜェ?」
「そん時も彼氏の『代わり』だけどな? キャハハハハ!」
「ま、ほんじゃ死ね」
そう言って棒を振り上げ、メイファンは棒に『気』を込めた。棒の先がみるみる鋭い槍に変わり、リウの喉を突き刺す予定だった。
その後で棒を巨大な肉斬り包丁に変え、リウの体を輪切りにして頭部は持って帰って枕元に飾るつもりだった。
しかし棒は棒のままであった。
「あれぇ?」
体力は残っている。しかし気力を使い果たしてしまっていた。
自分の身体を『気』で動かし、すべて『気』の力で闘うメイファンが『気』の力を失えば、そこにいるのはただの非力な17歳少女であった。
メイファンは武器にこだわらない。『気』を込めれば何でもが最強の武器になるのだから。
ゆえにメイファンが持っているのも転んだだけで折れてしまいそうなただの軽い木の棒であった。
「これで殺すのってマッチ棒でネズミを殺そうとするに等しいな……」
ララの白い『気』なら大量に残っているが、それではリウを治してしまうことしか出来ない。
「ま、ナイフあるしぃ」
メイファンは胸からアーミーナイフを取り出した。
「体重かければこれでもイケるしぃ」
メイファンはナイフを振り上げた。
その途端、産まれて初めて自分を人間扱いしてくれた優しいお兄ちゃんの思い出が胸から頭から溢れ出して来た。

526 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 20:31:34.44 ID:4XFugS56.net
メイファンは何を思ったのか、ナイフを持った手を止める。

527 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 20:37:42.86 ID:ZQehDrq6.net
リウはメイファンの言葉を聞きながら、動じてなどいなかった。
彼氏の代わり? それでもいい。
俺がシューフェンを愛している、それ以外に大事なことなど何かあるだろうか?
何よりシューフェンを信じている。その優しさを、温もりを、何より彼女の誠実さを信じているからこそ好きになった。
初めてのデートの約束をすっぽかされた時、彼女に感じたのはむしろ一種の誠実さだった。
有名人リウ・パイロンに誘われてすっぽかした女は過去にもいないではない。しかしそれは相手も有名人であり、そこにはいけすかない高いプライドしか感じられなかった。
しかしシューフェンは違った。彼女は一般人であり、しかも『女優』というエサに釣られた浅ましい魚であるはずだった。
出会った瞬間から何かを感じていたのは事実である。しかし所詮はエサに釣られる安い女だろうと思っていた。
しかし彼女はすっぽかした。その理由も未だ聞いていない。
しかしそこにたとえば『最愛の恋人が行方不明だから心配でそれどころじゃない』というような、彼女の真摯な瞳に浮かぶ誠実さを垣間見たのである。
そしてそれは付き合い始めてから、確信に変わった。
素人上がりなのに弱音の一つも吐かずに映画撮影に加わり、鬼の監督の指示にも素直に従い、撮影スケジュールを遅らせることなく、それどころか1ヶ月も早くクランク・アップへ導いた。
自分を見つめるあの瞳に嘘はない。『愛しているわ、リウ』と言ってくれた言葉に嘘はない。
しかし。
なぜ黙っていた?
癌だって?
余命何ヵ月だって?
それを黙っているのは俺に対する誠実なのか?
聞かせろ。
聞かせてくれ!

リウは体力も気力も使い果たしていた。
しかし体力は徐々に回復する。『気』の鎧で『牙突』を受けたお陰で致命傷もない。
『まだ俺が死ぬわけにはいかない』
その思いが気力となり、鉄のように重い体を動かした。

「ゴアァ!」
リウが叫ぶとメイファンは明らかにびくついた。
その腕を素早く掴み、残るすべての力を振り絞ってリウはマウントを返した。

528 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 20:55:43.96 ID:ZQehDrq6.net
『憎しみだ! 憎しみだけあればいいんだ!』
メイファンはナイフを振り上げながら、固まった。
『いや、憎しみすら要らない。私はどんな人間でもまるでモノを壊すように殺して来たじゃないか!』
ナイフを握る手が震えた。
『愛着のあるモノは壊せないとでも言うのか?』
ナイフを握る手に汗が滲んだ。
『愛着だって!?』
その瞬間、目の前のリウ・パイロンが叫び声を上げた。
『はひぃぃぃぃ!?』
今の自分がまるでプレステ4を取り上げられたFPSの達人の女子高生みたいなものだという強い自覚が生まれた。
ただの17歳少女は散打王リウ・パイロンに馬乗りになられ、ただ恐怖するしかなかった。
加えて8歳の時、同じように馬乗りになられたあの記憶が強く呼び覚まされた。
メイファンは顔を手で覆い、子供のように泣き叫んだ。

529 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 21:01:11.49 ID:ZQehDrq6.net
泣き出したメイファンを見てリウは振り上げた拳を止めた。
「勝負……あり……だな」
そう言うとメイファンを押し潰すように倒れた。

530 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 21:07:06.49 ID:rD4T3AVt.net
「さあ、お、お仕置きタイムと行こうか」
リウは疲労困憊ながらもドヤ顔だった。

そしてあの時のトラウマを彷彿とさせるこの状況に陥ったメイファンの顔は青ざめ、彼女には珍しく涙を流した。

しかしリウはそんなメイファンを優しく撫でる。

531 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 21:34:20.94 ID:ZQehDrq6.net
リウはやがて身を起こすと、くっついたページが剥がれるようにメイファンの隣へ仰向けに転がった。
「……レイプしねーのかよ」メイファンがびくついた声で言った。
「そんな力残ってねぇよ」
「残ってたらすんのかよ」
「しねぇよ……」
暫く二人、黙って窓の外の歪んだ三日月を見つめた。
「なんで……」メイファンが喋り出した。「お前に勝てないんだろうな……」
「メンタルの問題だな」
「あ?」
「俺には守るものがある。お前はただの子供の遊びだろ」
「もう一回闘んのかゴルァ」
「違うのか」
「……もう、いいわ」
「シューフェンが癌だというのは……本当か」
「本当だ。病院のデータベースにもアクセスした。膵臓癌だってよ」
「……そうか」
「彼氏のことはどうでもいいのか」
「どうでもいい」
メイファンは天井に目を移し、暫く考えてから、言った。
「まぁ、確かにどうでもいい奴だ」
「痛いか?」
「は?」
「頭から大量に出血している。可愛い顔が台無しだ」
「は? ほっとけ!」
「クク……」
「誰がやったんだよ」
「勝負だろ」
「あのな、お前さ」
「ん?」
「黒色悪夢の正体知ってるただ一人の部外者のくせに……私のことを売ろうとしないの何で?」
「あぁ」
「お前、反共産党だろ? 私のことバラせば習近平を失脚させることだって夢じゃないんだぜ?」
「わかってるよ」
「じゃ、なんで?」
「決まってる」
「おあ?」
「妹だからだろ」
「は? はぁぁ!? お前、お前は妹レイプすんの?」
「忘れろ」
「忘れられるか!!」
「あれは魔法のステッキでお前を更正……」
「意味わからんこと言うな!」
メイファンは目に溜めていた涙が溢れ出した。
「そうか、ずっと傷ついていたんだな……」
「そんなこともわからんのか!」
「俺にとってはあれは最高の勝利を忘れないための戦利品で……」
「ふざけるな! 私にとっては!?」
「そうか……」
メイファンは子供が怒ったような泣き顔でリウを睨み続けた。
「俺は自分が強くなることばかり考えていた……。お前のために言うよ」
メイファンは既に嗚咽を上げて泣き出していた。
「……すまなかった」

532 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 21:37:08.43 ID:4RNpbBo8.net
        /  ̄`Y  ̄ ヽ
       /  /       ヽ
      ,i / // / i   i l ヽ
      |  // / l | | | | ト、 |
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      (S|| |  ⌒  ,⌒ | |\ヽ
      | || |   トェェイ  ,)| \ \ヽ
      | || lヽ、 |  l / |   ヽ ヽ \   z武さん見っけ!
      | ||    ヽ{tェェ{/     i l  ヽ
     /   ヽノ` ̄     ) 
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           ⊂二( ⌒ )二二|;::::  ::::|⊃ /’, ’, ¨
              ̄ ’,ヽ∴。|;::::’ヾ,::::| /。・,/∴
               -’ヾ  |!|!!,i,,!ii,!l,・∵,・、   
              ・∵,・,;f::::::::::::::::::::::(   
                  i:::/'" ̄ ̄ヾ:::i¨´ 
                  |/ ,,,,_W,,,,,,_ヾ|    
                  |=(。;;;)=(;;;゚;)=|    
                  {  :::(__..`メ、 .|  ひ、ひ〜ん
                  ', ;;;;)ー=┓ ソ
                   ヽ___ /

533 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 22:00:31.55 ID:NCiokeEm.net
しかし、この決着に納得がいかないものが一人いた。メイファンの姉、ララだ。

あの日以来、メイファンの知らぬところで彼女の心は壊れ
どす黒い狂気に支配されていた。

それはリウ・パイロンはもちろん周囲のあらゆる者に対する愛憎交えた感情であり、妹であるメイファンが良しとすれば晴れるものではけっしてなかった。

むしろ、妹が和解の態度をとったことで狂気はますます強くなってしまった。

534 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 05:21:46.47 ID:XmEfE4xe.net
リウ・パイロンはまぶたを閉じた。
そして目を開き上体を起こしメイファンの方を見ると
彼女がいたところに知らない女いた。
「…えっ、えっ、あんた誰だ?」
リウは目を丸くした。流石の散打王もこの状況には驚き困惑せざるを得なかった。
女は背が高く、肌は白い。目は優しく泣いたような目で、メイファンに対する印象を真逆にしたような人物だ。そして女の目には狂気が宿っていた。

535 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 10:23:18.80 ID:NsPpcXTT.net
女は胸のナイフを抜くと、襲いかかって、きた。

536 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 12:44:23.69 ID:WC0PTFC8.net
リウは素早く体勢を整えると、襲いかかるララの腕を掴み攻撃を防いだ。

しかしララの腕力は女性とは思えないほど強いことにリウは驚愕した。彼はララの腕力に押され徐々にナイフが喉元に迫る。

537 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 13:48:00.73 ID:NsPpcXTT.net
ララ「フフ…、驚いた? 実は私、メイファンよりも強いの。陰のボス的存在よ」
リウ「ぐわああぁ〜!」
ララ「かわいいぬいぐるみとともに死ね!」
リウ「ぬぉぉ〜!!」
ララ「必殺! ポムポム・ファンシー・キティランド!」
リウの首が飛んだ。

538 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 14:16:14.98 ID:/P5bKZvG.net
ララはそんな妄想を膨らませながらも、胸のナイフが抜けずにいた。
手が震えていた。

539 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 14:48:34.30 ID:/P5bKZvG.net
リウは驚いた。
目の前の女がメイファンであることはすぐにわかった。
しかし頭の傷は綺麗に治り、使い果たしたはずの『気』が満タンに戻っている。
しかしそれは触る者皆傷つけるような殺伐とした黒い『気』ではなく、ふわふわした白い子猫の群れのような優しい『気』だった。
子猫の群れが一斉に自分を睨み、毛を逆立てて威嚇しており、その向こうに燃えカスのように小さくなったメイファンが見えた。

540 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 15:55:30.35 ID:QdXg7mTT.net
ララはタレ目を限界まで吊り上げて言った、
「オマエに予言ヲ告ゲル!近い将来、ワレラガ救世主『リー・チンハオ』がオマエを滅ぼすコトダロウ!」

541 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 17:30:47.95 ID:cLoeZdHR.net
(あぁ……、私にもメイファンのような力があれば!)
ララは強く思った。
しかしすぐに思い出した、自分には自分の武器がある、ということに。
ララは自分の襟を強く引っ張り、胸元をリウに見せつけると、言った。
「ウッフン」
そうしながら、その手は既にワキワキと狂暴な宇宙生物のように動いていた。
握り潰す気マンマンだ!

542 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 20:20:23.71 ID:edDzgW39.net
            ,;f::::::::::::::::::::::::::ヽ
            i/'' ̄ ̄ヾ:::::::::::i
            |,,,,_ ,,,,,,_  |::::::::|
            (三);(三)==r─、|
            { (__..::   / ノ、<取り戻したぞ、俺の肉体!!      
             ', ==一   ノ、  ̄`ヽ     さあ、立法機関に通報だ!
               !___/_!::. :. . ..........:::=≧=‐- 、
             _/ .:ヽ :i::::::::/.: /:::':.. .:..,. ''. ::     . :.:.:`ヽ
      , --―'´;.:.、... .: .:i :i::/:  .:::..:,.‐''".    .      .:、  :.:::}
     /   . :.:.ノ:. ..\.ヽヽ:  , -‐''´ ..::: ..    :     .::l . :.:.::|
   /   . .:.:.:./:.     `ヽ、::/     .:::、:.. .. . :.  :.  .::i ...:.:∧     
    |  . . .:.:.:;イ::      .:i::.       . .::`''‐-=、ヽ、.:.. . .:: .:ノ: :!   
  /{::. : : .: '´.:.i::.       . :|:      . .:: :.::::::::::::/゙"ヽ、:..:.::´::..: :| 
  ,' `: :...:.:.:.::.::;!::.. .    .:.:|:     . . . :: :.:.:::::::::{::. .::;'`:‐ .::.: ;!:|. 
 {   :. `''''゙´|:::.:.:. : . . . .:::l::. . . . .. .. .:.::..:.:::::::::::|::. . ::i   ..:::iく ::| 
  {:.:.. .:.. . .:.:::ト、:.:.. . .  . .:.:;!、::.. . . . ... .:.::..:::::::_;;.ゝ、..:|  ..:ノ :. ヾ.
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 ';.:../:::::/´、   ̄)ヽ. _,r―‐亠- 、!::::::::::::::|「:     . . - '''´. : :丿.:/

543 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 23:23:22.82 ID:lu0TU7ke.net
「表に取り巻き達を待たせてあるんだ」
そう言うとリウは立ち上がった。
「ララ」
的確にその名前を呼ぶと、
「明日の朝また来るとメイファンに伝えておいてくれ」
リウは重たい足を引きずりながら帰って行った。

544 :創る名無しに見る名無し:2018/12/25(火) 23:39:21.83 ID:lu0TU7ke.net
次の日の昼前、リウは広州中央警察へシューフェンを迎えに訪れた。
隣には白いブラウスに紺のスカート、ローファーの革靴を履いたメイファンが並んでいた。
白いブラウスの胸には「嵐梅芳(ラン・メイファン)」と書かれた名札が貼ってある。朝、リウが持って来てくれた女子高生の制服セットだった。
中学卒業後、飛び級で大学に入学したメイファンにとって、高校の制服は憧れのアイテムであった。

警察署の奥へ進む際、記名を求められた。
リウが名簿に「劉白龍(リウ・パイロン)」と書くと、その下にメイファンが「乱妹芳(ルァン・メイファン)」と記入した。
それを見てリウが言った。「何だ、ルァンって」
「私の名前だが?」メイファンが答えた。
「お前の姓はランだろう。正しく書け」
「どうでもいいだろ」
「大体これじゃ『乱れた妹の香り』って意味だぞ」
「何かイメージ的に間違いが?」
「……戸籍もこれで登録してるのか?」
「戸籍通りに書くなら『lan mei fang』だ」
「相変わらず漢字ないのかよ!?」
「ないな」
リウは顔を押さえて大笑いした。
「漢字のない名前の中国人なんて恐らくお前一人だぞ」
メイファンは少し懐かしそうに笑った。

545 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 00:00:35.60 ID:xLIYasjn.net
芋饅顔の刑事と眼鏡カマキリが二人を迎えた。
「そちらは……妹さんですかな?」
そう聞いた芋饅にメイファンがいきなり聞いた。
「ラン・メイファンだ。この名前を知っているか?」
「はぁ? 知らないよ。変な子だなぁ」
「知っておけ。もうじきアイドルデビューして有名人になる」
「ちょっと君は黙っててね。おじさん達、大事な話するから」
そうあしらおうとした芋饅の横から眼鏡カマキリがメイファンに食い付いた。
「アイドルデビューするの、君? 推しメンにするよ! なんかグループに入るの?」
「チンチン・ハオハオというグループでデビューする、たぶん」
「確かに君、可愛いもんねぇ〜! 整形?」
「整形じゃねーよ」
そう言って眼鏡カマキリにグーパンを入れようとした未来を見てリウはメイファンの頭をポンと叩いて止めた。
「ところで例の件ですが……あの、この女の子いてもいいんですか?」
「構いません」リウは答えた。
「では」芋饅は続けた。「起爆装置は……」
「入手できました」
「と言うことは……リウさん! あの黒色悪夢と闘い、勝ったということですか!?」
芋饅は興奮した笑顔で聞いた。眼鏡カマキリも目をキラキラさせている。メイファンは鼻をほじった。
「いえ……」リウは答えた。「兄弟(ションディー)になりました」
「誰が弟だ、誰が」メイファンが唸った。
「凄いな、やっぱりリウさんは。それで黒色悪夢ってどんな人……あぁ! 国家機密なんですよね? 見たいなぁ!」
「お前はメクラかボケ」メイファンが呟いた。
「それで、起爆装置は持って来られたん……ですよね?」
「いいえ」
「は? それを持って来ていただかないことには……」
女性職員がそこにシューフェンを連れて現れた。
「シューフェン」リウは少し怖い顔で彼女を見た。「待たせたね、すまない」

546 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 01:02:31.33 ID:xLIYasjn.net
「ロン、勝ったわね! おめでとう。TVで観てたわ」
シューフェンは警察で借りたらしい地味な水色のトレーナーに水色のズボンという格好ながら、大輪の花のような笑顔で現れた。
「あ、メイファンちゃんも迎えに来てくれたの? 嬉しいわ」
自分の頭に爆弾を埋め込んだ張本人と知りながら、シューフェンは彼女がリウと並んでいるのを見ただけで本当に嬉しそうに言った。
「警察の方々がよくしてくださって、居心地快適だったのよ」
それは嘘だった。本当は食事も鉄の扉越しに渡される、危険物扱いだった。
「医術班に回してこれから除去手術をしようと思ったのですが」芋饅が言った。「まず起爆装置を処理してからでないと出来ませんね」
「手術のことですが」リウが聞いた。「傷跡は残りますか?」
「鼻から取ることが出来ない場所だそうなので」芋饅は答えた。「どうしても残ります。なるべく目立たないようにはしますが……」
「それを傷跡を残さずやってくれる名医が知り合いにいるので、その人にやって貰いたいと考えているのですが……」
「駄目ですね」芋饅は直立姿勢で言った。「決まりです。危険物の安全な取り外しがまず優先、そしてそれでも爆発の恐れのある手術ですので、こちらの専門医で施術します」
「どうしてもですか?」
「はい」
「やはりこうなったか……」リウはメイファンを見た。「やるしかないな」
「めんどくせ……」メイファンはそう言うと、側のテーブルに置いてあったフランス・パンを手に取った。
リウはシューフェンに近寄ると、素早く抱き上げ、出口へ向かって逃げ出した。
「は!?」眼鏡カマキリが声を上げる。
「ちょっ……ちょっと!!」芋饅が走って追いかける。
「おじさん達、このパンなんだか面白いね!」メイファンはフランス・パンを振り回した。
『気』を込めることにより『何だかよくわからないびよんびよんする武器』に姿を変えたフランス・パンは、刑事達をびよんびよんと攻撃し、足止めした。
「はぁぁ!? 何だ君は!?」
「ラン・メイファンですよ〜。覚えておいてね〜」
フランス・パンは遂に如意棒のごとく伸び縮みを始め、刑事達をポコポコと殴り、バカにした。
「面白ーい、このパン面白ーい」
「ま、待ちなさい! リウさん! 素人が爆発物を処理しようとしては……あぁっ! ポコポコ!」
「素人?」リウはシューフェンを抱きかかえて走りながら言った。「お前らに任せるよりよっぽど安心出来るんだよ、裏の処理屋さん兼外科医さんは、な」
シューフェンはリウに抱きつきながら「フランス映画みたいね!」と楽しそうに言った。
「愛する人に付くかもしれない傷痕の拒否権ぐらい」リウは言った。「自由にさせやがれ」

547 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 01:53:02.58 ID:xLIYasjn.net
リウは警察署を出ても暫く走り、路地裏に入り、何やらよくわからないファンシーな建物の裏庭に入り込むとようやく足を止めた。
大きな虹のオブジェにミッキーマウスそっくりなキャラクターが何匹も腰かけて愉快に笑っている意味不明な建造物の下にシューフェンを降ろす。
激しく息を切らすリウに抱きつき、シューフェンは頬にキスをした。
「やっぱりあなたは最高ね、ロン!」
「……シューフェン」
「ん?」シューフェンは笑顔でリウの顔を覗き込んだ。
「癌だというのは本当か」
シューフェンの顔からみるみる笑顔が消えた。
「誰から……聞いたの?」
「本当なのかよ……」
シューフェンは暫く何も言わずにリウの顔を曇った顔つきで見つめていた。
やがてその目から涙が一粒落ち、唇が震えはじめる。
リウは怒った口調で言う。「君は僕に対して嘘はつかない人だと信じていたんだがな」
「……ごめんなさい」シューフェンはリウをまっすぐ見つめたまま、美しい顔を涙でぐしょぐしょにした。
「なぜ黙っていた?」リウが怖い目で睨む。
シューフェンは嗚咽で言葉が出せない。
「シューフェン?」
「あな……たの……邪魔をしたくなかったし……」
「邪魔しろよ!」リウは怒鳴った。「そんな邪魔ならするべきだ!」
「それに……」
「何だ」
「……怖かったの」
「何が怖い!」
「幸せな時間が……重苦しい時間に変わってしまいそうで……」
「つまり俺が、君の残りの時間を虹色から灰色に変えるような男だと思ったのか!?」
「……」シューフェンは涙で震える口を押さえた。
「もっと信じてくれよ、俺のこと……」
「……」
「シューフェン、結婚してくれ」
シューフェンは驚いてリウの顔を見た。彼は優しく微笑んでいた。
「あたし……もう……すぐ……死んじゃうの……よ?」
「君を幸せにする」リウはシューフェンの肩を抱いた。
「バカ……なの……?」
「俺のこともいっぱい幸せにしてくれ」微笑むリウの目からも涙が零れはじめた。
「肉が落ちて……バケモノみたいに……なるの……よ?」
「白髪のババァになっても愛してるぜ」
シューフェンはリウの胸に顔を押しつけて泣きじゃくった。
「もう泣くなよ、笑ってくれよ」リウは強く抱き締めると、顔を覗き込んだ。「で? 返事は?」
「こんな私で……」シューフェンは泣きながら笑顔を浮かべた。「本当に……こんな私でよろしければ」

548 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 02:06:09.71 ID:xLIYasjn.net
「やった」リウは天を見つめて両腕を上げた。
「やったぜぇぇぇ!!」架空の観衆に向かってガッツポーズを決める。
「お前ら! 俺は今、世界一愛する女性にプロポーズをし、OKを貰ったんだ!」
シューフェンは涙を拭きながら可笑しそうに笑う。
「散打王リウ・パイロンと大物新人女優リー・シューフェンの結婚だぞ! 式は派手にやるからな! お前ら全員来いよ! わかったかぁぁ!?」
ひとしきりおどけると、リウはシューフェンの前に戻り、嬉しさに身を震わせて抱き締めた。
虹のオブジェの上でミッキーマウスもどき達が笑っていた。

549 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 04:44:13.44 ID:8P9KKbAi.net
「あが、あほ、みろり…」
施設の一室でひとりの男がベッドに仰向けに横たわっていた。男の目は虚ろで焦点が合ってない。半開きの口からはよだれが出て、訳の分からないことを呟いている。

この下着姿の童顔男はリー・チンハオ、通称ハオ。冴えないが一応の主人公だ。

「あが、あほ、みろり、ほれんじ…」
彼がこのようになってしまった理由は2つある。
恋人があと余命僅かであり、散打(中国の格闘技)のチャンピオン…リウ・パイロンにとられてしまったという事実を聞いてしまったこたと、

ハオもがんばってこのリウを倒し、
散打王になるべく修行を積み戦いを挑んだ。

しかし、結果は惨めなものでハオはリウに攻撃すること自体許されず、
顎も闘志も打ち砕かれ、圧倒的実力差を感じ絶望した。

550 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 06:49:16.99 ID:ceHNa2ux.net
超人オリンピックも終わり彼らも所々に散っていった。
そして師走。私が見たものは!?
学校の旧校舎にある裏山に大きな風穴が出現した。
巨大な穴からは夥しい瘴気が放たれていてとても近づけない
ギギ…ガガ…キー
突如、不快な金属音のようなものが鳴り響き私は耳を手で覆った。
「な、何なんだ、これは…」

551 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 16:38:05.36 ID:xLIYasjn.net
ドナルド・トランプは食堂でチャイニーズ・セットAを食べていた。
「このエビチリソース旨いぞコラ」
傍らにはアメリカが誇るS級工作員グリーン・スネークが立っている。
「スネークよ、お前はブラック・ナイトメアを仕留め損ねたコラ」
「申し訳ありません、プレジデント」
「しかし、でかした。お前が持って帰ったものは素晴らしい土産だコラ」
スネークは得意げにニヤリと笑った。
トランプはテーブルに並べた3枚の写真を眺める。その2枚には黒色悪夢ことラン・メイファンの姿がはっきりと写っていた。
「しかし音に聞こえたブラック・ナイトメアがまさかこんな……」トランプは顔のアップ写真を手に持った。「可愛いなコラ!!」
「しかし女の匂いのまったくしない女で……」とスネークは言いたかったが、余計なことは言わず黙っていた。
「しかしこんなカワイコちゃんが本当にそんなに強いのかコラ?」
「そっ、それはもう……」あの二人のバトルを思い出してスネークはガクガクと震え出した。「バケモン並みに」
「で、もう1枚の写真は誰なんだコラ?」
トランプは残る1枚の写真を手に取った。そこにはロングフックを放つリウ・パイロンの姿が写っていた。
「正体はわかりませんが黒色悪夢と闘っていたメカゴリラみたいな男です。こいつも恐ろしく強く……」
スネークは思い出し、ズボンの前をちょっと濡らした。
「ふーん。さすが中国、何が棲んでるやらわからん原始の森みたいなところだねぇ」
そう言いながらトランプはしばらく赤いトランクス姿のリウの写真を見ていたが、やがて激怒するように叩きつけた。
「男の裸に興味はないんだコラ!」
「HAHAHA ! 」スネークが愛想笑いをした。
「しかしこれで黒色悪夢を確実に消せるな。早速アレの準備をしろコラ」
「はっ! ところでメカゴリラのほうはどういたしましょう?」
「お前が脅威を感じて写真を持って来るぐらいだからそいつも十分危険人物だ。殺しておけ」
「はっ!」
そしてトランプは瓶から直接コカ・コーラをぐびぐび飲むとキメ台詞をキメた。
「スカッと爽やかコカ・コーラだコラ!」

552 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 17:08:55.50 ID:RN5nK2DT.net
しかしそこへヒラリーがやって来てこう言った、

553 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 17:15:24.91 ID:JenpUNnz.net
「コイツ、ほんとに大統領?」

554 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 17:58:09.69 ID:RN5nK2DT.net
ほんとにニセモノだった。

555 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 21:11:06.12 ID:IiwP6cQE.net
本物のトランプ大統領は飯など食っている場合ではないほど多忙だった。

556 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 21:52:54.39 ID:xLIYasjn.net
ハオは持ち前の恐ろしいまでのプラス思考をふんだんに用いて立ち直った。

「シューフェンが癌だって? ……」
ハオは暫く考え込んでから、言った。
「癌は治る病気です! って言うよね?」

「シューフェンがリウ・パイロンと出来たって? ……」
ハオは何かを思い出しながら、言った。
「だからそれ、デマだってばw」

「俺はリウ・パイロンに負けた……。それは事実だ」
ハオはその時のことを思い出しながら、言った。
「でも俺って『これからの人』だろぉ?」
「『これからの人間』が一番恐ろしいんだぜぇ?」
ハオは一月一日が誕生日であり、もうすぐ30歳であった。
「何かを始めるのに『早い、遅い』なんてない!」
一部の天才のみに当て嵌める真理であった。
「うるさいな『地の文』! お前だって$」
ハオは地の文が深く傷つく言葉を並べ立てた。

「さぁ〜! ……ってことで、これから何しよっかなぁ〜」
ふと気がつくと施設内には人の気配がなかった。
メイファンも今朝どこかへ出掛けて行った。
「あれ?」ハオはひとりごちた。「これって逃げれるじゃん?」
しかしお金が一銭もなかった。
メイファンの部屋を漁ろうと思ったが鍵がかかっていた。
習近平の部屋に入ろうとしたらセキュリティ・アラームが鳴り出した。
「うーん?」
自分の部屋のTVでも質屋に売ろうかと思ったが面倒臭かった。
「寝るか?」
ベッドに寝転んだところで枕元の自分のスマホに気がついた。

557 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 23:06:27.79 ID:xLIYasjn.net
ハオはスマホを持って外へ出た。
玄関先程度ではまだ検閲プログラムの圏内であるらしく、メールを送信しても帰って来た。
スマホを持ってどんどん歩いた。『施設』がどんどん小さくなり、やがて見えなくなった。
住宅街を抜け、市場を抜け、古都西安の由緒ある町並みに足を踏み入れた時、ようやくスマホが何かを受信した。
ウィーチャット(中国のLINE)のメッセージ受信画面に「樹芬(シューフェン)」の白い文字がピンク色のハートマークとともに表示されていた。
「やったぞ!」
浮かれ気分でそれを開こうとすると、またシューフェンからのメッセージが入って来た。
「あっ?」
次々と入って来た。止まらなかった。
ハオはそのいつ終わるかわからない連続受信を、鳩の群がる公園で、うきうきしながらずっと見つめていた。
「な? やっぱりシューフェンは俺の彼女だろ?」
153件目を最後に受信ラッシュは止まった。ハオは始めから読み始める。

最初のほうは「生きてる?」「無事?」「どこにいるの?」等、短いメッセージばかりだったが、
毎日必ず一通ずつ送信されており、ハオはそれらを恥ずかしいほどの笑顔で隅々まで読んだ。
やがてシューフェンが女優になれるチャンスを掴んだ頃から長文の報告メッセージが多くなった。
『ハオ、聞いて聞いて〜!(絵文字)凄いことがあったのよ!(絵文字)何だと思う?(絵文字)ヒントは(ツイ・ホーク)。そして(映画)。最後に(主演女優)。
これだけで分かったらアンタのこと逆に(え。本当はデキる奴だったの!?)って怖くなるわ……(青ざめた絵文字)』
ハオはハハハと口に出して笑いながら読んだ。
しかし映画の撮影が始まってからメッセージは3日に一通程度にペースが落ちる。
「忙しかったんだなぁ。しょーがねぇよな、許す!」
それが3ヶ月前からは2ヶ月以上に渡って一通も届いていなかった。
「……」
しかしこの10日以内になると、5通も届いていた。ハオは喜んでそれを読む。
『潰れそう』
『ロンがね、側にいてくれないの。(ずっと側にいる)って言ってくれたくせに』
『ハオでもいいから側にいて欲しい』
『最近、ハオとのこと、よく思い出すよ。ハオはあたしが一番落ち着ける場所だったね』
それが二日前。
そして一番新しいメッセージは、今日だった。
『ロンと結婚します』

「は?」
ハオは最後のメッセージを何度も何度も読んだが、意味が取れなかった。
「は? は?」
思わずシューフェンに電話をかけた。
呼び出し音が鳴る。相手は出ない。
ドキドキしながらハオは直立不動で待った。
7ベル目で繋がった。「……もし……もし?」
電話の向こうで女の声が言った。
「やかましいわ、このカスが!!!」
「は? は? シュー……誰?」
「師匠の声もわからんのか。糞弟子」
「メイファン!? なんで!?」
「今、シューフェンは麻酔が効いて眠っている」
「な……なっ!? 今度はシューフェンに何をするつもりだ!? 解剖か!?」
「アホ。頭の爆弾これから取り除くんだよ。今、西安は○○街の海亀歯科にいる。シューフェンに会いたけりゃ、来い」

558 :創る名無しに見る名無し:2018/12/26(水) 23:39:03.39 ID:xLIYasjn.net
「リー・チンハオからか」
手術衣を着たリウが言った。
「あぁ、ここに来るかも知れん」
同じく手術衣姿のメイファンが準備を始める。
手術台には髪を上で束ねられたシューフェンが仰向けに寝ている。
「どんな奴だか見てみたくはあった」
「本当に見るのか?」
「? 見たらいけないのか?」
「いや、手術を」
「あぁ」リウは少しイラッとした顔をしてから言った。「ちゃんと除去するのを見届けたいからな」
「脳味噌でるぞ?」
「自分のを見たことがあるぐらいだから大丈夫だ」
「そうか」
と言いながらメイファンは猿の玩具のシンバルを指で挟み、回転させるとちょうど歯医者さんの使うドリルのようにキュンキュン音が鳴りはじめた。
それをシューフェンの頭に緊張感も何もなく当てると、スイスイと肉が切れた。リウが少し「うっ」と言った。
「立ち会い出産でインポになる旦那、多いそうだぞ」メイファンが手術を進めながら言った。「インポにはなるなよ?」
パカッとシューフェンの頭が蓋のように取れ、鮮やかな色の脳味噌が露になった。
リウはなにやら興奮しているようだった。
メイファンは左側側頭葉に貼り付いている小さな黒いセロファンテープのようなものをペロリと取ると、すぐに蓋をかぶせ、白い手を当てた。
「終ーわりっ」
わずか1分もかからず手術は終了した。
血の1滴も出なければ傷跡もまったく残らなかった。
リウはマスクを外した。ハァハァ言っていた。

559 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 05:13:35.49 ID:5AnEyMlF.net
虚勢をはって、前向きになっていたハオもあの一文には耐えられず
うつむきその場にペタりと座り込んでしまった。

560 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 06:28:59.88 ID:Qrxyx0At.net
「オーマイガッ」
ハオはその声を聞くと顔を上げた。
あたりを見渡すと通行人たちが
「オーマイガッ」と叫んでいる。

「・・・なんだこれ」
ハオは不気味に感じその場を立ち去るために走り出した。

561 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 14:17:25.93 ID:fpIUUBUu.net
「メイ、ララ、ありがとう」
そう言うとリウは頭を深く下げた。
「ララなんて人間はいないんじゃなかったのかよ」
メイファンがその頭を踏みつけながら笑った。
「いや、認めるよ」リウはメイファンの足を掴もうとしたが、逃げられた。「考えたらお前は何でもアリだからな」
「今さら認められてもな……なぁ、ララ?」
ララは何も答えなかった。
「ララ?」
最近ララはなぜかとても物静かだった。いつものお喋りララがどこかへ行ってしまっていた。
ララの沈黙の意味を何となく読み取ってメイファンは言った。
「言っとくがな、リウ・パイロン。お前のために手術したんじゃねーからな」
「わかってるよ。愛弟子のためだろ」
「そうだっけ?」
「そうだろ」
「うーん。考えたらよくわからなくなった。何のために爆弾除去したんだっけ。わからんから、戻すか」
「殴るぞ」
メイファンはケラケラと笑った。
「ところでお前、俺のことリウ・パイロンなんてフルネームで呼ぶのやめろ」
「じゃあ『メカゴリラ』でいいか?」
「昔みたいにまた『お兄さん』って呼べよ」
「そんな呼び方をした記憶はないな」
「じゃあ何て呼んだ?」
「『お兄ちゃん』だろ」
「よし、呼んだな?」リウは満足そうにニヤリと笑った。
「……糞くだらねー」
「もっと呼んでくれ」
「馴れ合おうとすんな」メイファンは厳しい口調で言った。「私達とお前は敵同士なんだ。今日別れ、明日もしまた出会ったなら殺し合いをする……」
「そうか。なら言いにくいな」
「な、何をだ」
「お願いがあるんだが」
「言ってみろ」
「無理だと思うが」
「いいから言ってみろ」
「お前のいる『施設』に暫くシューフェンと住ませて欲しいんだ。無理を言うようだが」
「うん、いいよ」
「俺は恐らく警察から指名手配されている。爆発物秘匿か何かの罪でな。だから暫くの間隠れ場所が欲しいんだ」
「だから、いいってば」
「『施設』なら警察の手は届かんし、俺もお前がいればトレーニングには困らんし、何よりシューフェンが最高の医療を受けられる」
「わかったから、来いよ」
「……なんて、お前の都合も考えない勝手なお願い……やっぱり無理だよな?」
「聞こえててわざと言ってるだろ!!」
リウは瞑っていた目を開くと悪戯っぽく笑ってから両手を前で合わせてお辞儀をし、感謝の意を示した。
「メイ」メイファンの口からララの声がした。「説教部屋へ行って」
「ここ海亀先生の病院だぞ」メイファンはそう言いながらも歩き出した。「喫煙室でいいか?」

562 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 14:56:32.95 ID:fpIUUBUu.net
ハオは結局、海亀歯科へやって来た。
複雑そうな顔で看板を見上げ、呟いた。
「歯の癌なんてあるのか……?」
玄関から入るとまず喫煙室があった。中から何やらぶりぶりと激しい音が聞こえて来る。
「こんな所でうんこしているのか……?」
ハオは正体不明の非現実感に包まれていた。
スリッパを履き、中へ進むと手術室があった。誰もいない。
自分でもなぜだかわからないがハオは足音を殺していた。泥棒のように廊下を進むと入院室みたいな部屋があり、ドアが半分開いていた。
ゆっくり覗くとベッドに身を起こして笑顔のシューフェンがいた。
「本当に何か手術を受けたなんて思えないほど普通な感じよ?」と誰かに向かって喋った。
「麻酔がまだ残っているから動いちゃダメだぞ」
傍らでリウ・パイロンが林檎を剥いているのがようやく目に入った。
「林檎は身体を温めるんだ。どうぞ」そう言ってリウは切った林檎を口に咥えると、シューフェンへ差し出した。
「ありがと、王子様」そう言うとシューフェンは口で林檎を受け取り、二人はそのままキスをした。
ハオは目の前が真っ暗になり、その場に倒れかけた。
しかし何とか気を持ち直すと、帰ろうかその場に踏み込んで行こうか迷いはじめた。
そんな挙動不審な男を見つけて言葉を失っているリウに気づき、シューフェンは入口のほうを見た。
幽霊みたいにフラフラしているその男を見、暫く声を失っていたが、男が帰ろうとしたので急いで声をかけた。
「ハオ?」

563 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 15:08:53.39 ID:fpIUUBUu.net
ハオが嫌そうに振り向くと、シューフェンはハオの「オ」の形のまま固まった口をして、目を猫のように丸くしてこちらを見ていた。
ハオは顔の大きい猫に見つかった弱い猫のように、シューフェンと目を合わせないようにしながら何やらぶつぶつ言った。
シューフェンが立ち上がり、ハオに目を釘付けにしたまま近づいて来るのがわかった。
すぐ側まで来たシューフェンに向き直り、ハオは「シューフェン! 会いたかった!」と泣き顔で叫んでハグをしようとした。
ハオの左頬にシューフェンのパンチが入った。ハオは床に叩きつけられた。
「シュっ、シューフェン……?」
「どんだけ心配したと思ってんのよ馬鹿ハオ!!!」

564 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 15:15:14.11 ID:fpIUUBUu.net
「どこほっつき歩いてたのよ! 連絡もしないで!」
シューフェンは鬼の形相だった。
「その……。電波の検閲が……」
「言い訳すんな! 電話したら出ろ!」
「出れねぇし、お前上海で……」
「死んだと思ってたろ! 人を無駄に悲しますな!」
「え……。悲し……?」
シューフェンはぽろぽろと涙をこぼしはじめると、膝をついてハオに抱きついた。
「よかったよ〜! 生きててよかったよ〜」

565 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 15:19:58.80 ID:fpIUUBUu.net
リウはあっけにとられてその様子を見ていた。
やがて口を挟める間が空くと、そこにボケをかました。
「あの……え? 弟さん?」
シューフェンは涙を拭きながら振り返ると、言った。
「私の大切な男的朋友(男友達)なの」
「違います」ハオはシューフェンを抱き締めながら訂正した。「どうも。シューフェンの男朋友(彼氏)のリー・チンハオです」

566 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 15:56:39.91 ID:fpIUUBUu.net
リウはハオのセリフを無視してシューフェンをベッドへ戻した。
「動いちゃ駄目だって言ったろ。ほら林檎」
シューフェンはスプーンに刺さった林檎を受け取ると、ハオに言った。
「ハオも林檎食べる? ロンが剥いてくれた林檎、美味しいのよ」
「剥く人関係ねーだろ……」ハオは立ち上がった。
それを見てリウも立ち上がり、ハオに向かって姿勢を正すと、言った。
「初めましてリー・チンハオ。リウ・パイロンだ。君に会えてとても嬉しく思うよ」
リウがハオと会うのは実はこれが3回目であったが、リウはまったく覚えていなかった。
ハオはまずシャツにサインして貰うと、言った。
「シューフェン……お前、癌なんだって? 嘘だよな?」
「ハオ……。ロンに挨拶を……」
「嘘だよな?」
諦めた顔をしてシューフェンは答えた。「本当よ」
ハオは口をパクパクさせたが言葉が出て来なかった。
「膵臓癌なの」シューフェンは優しく微笑むと、言った。「膵臓癌はね、一番自覚症状のない癌なんだって。だから発見も遅れたんだけど、苦しみも今のところ少ないの」
「嘘つけ!!」ハオは怒鳴った。
「本当なのよ」
「嘘つけ!! だって>>108に肺癌だって書いてあるぞ!? いつの間に膵臓癌に変わったんだ!? テキトーなこと言ってんじゃねぇ!!」
ハオはそう言って涙を流しながら激怒した。
シューフェンもリウも何を言って話を続けたらいいやらわからなくなってしまった。

567 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 16:02:54.03 ID:fpIUUBUu.net
とりあえずハオはリウ・パイロンに自分とシューフェンの仲を見せつけてやりたかった。
何をしたらいいか考えるまでもなくハオは動いた。
シューフェンがスプーンに刺して持っている林檎に近づくと、反対側を齧った。
「あ。食べる? じゃあお皿……」
そう言って皿を取ろうとしているシューフェンに向かって、咥えた林檎を差し出した。
「ひゅーふぇん、ほら、キスしよ」

568 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 16:14:01.41 ID:fpIUUBUu.net
「ごめんね、ハオ」
そう言って優しく微笑んだシューフェンは美しかった。最近ずっと使用しているグラビアそのままの眩しさがそこにあった。
「私とロン、結婚するのよ」
ハオの脳裏に幸せだった恋人ととの日々が走馬灯のように流れた。あの恋人は今、もうどこにもいなかった。
「本当にごめん」
そう言って頭を下げたシューフェンのつむじが見えた。いつもベッドで抱き締め、くりくり弄っていたつむじだ。もうそれをくりくりすることは永遠に出来ないのだった。
「うわあぁあぁあぁあ!!」
そう叫ぶとハオは病院を走り出た。

走って、走って、疲れて止まった。
燃え殻のような夕陽が世界を包み込んだ。
西安に海はない。しかしハオの心はシューフェンと暮らした上海の海にいた。
ハオは膝を抱いてうずくまると、シューフェンの好きなデヴィッド・タオの懐かしいヒット曲を心を込めて口ずさんだ。

569 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 16:32:54.23 ID:fpIUUBUu.net
https://youtu.be/q5b2eJzA_8U
「沙灘(砂浜)」 日本語訳:リー・チンハオ

誰もいない この砂浜
風が吹き抜ける 冷たい海岸
僕は靴の砂を軽く払い 足跡を振り返る
一人きりだ 一歩一歩が なんて寂しいんだ

海は緑が多く見え 空は青を多く含む
あの愛の物語は 無念を多く含む
未知の世界のように 海と空の間に遊び
最も深い場所にたどり着いた
するとまた君が現れる そして僕は既に 棄てられていた

僕は波音を聞く 優しい息吹
僕は雲を見る どこへ流れて行く
方法はあるのだろうか 本当に君を忘れられる そんな方法が

Only Blue Only Blue
愛は人を憂鬱にさせる
僕の心は 僕の心は 真っ青だ……

僕は心から探している 一艘の船を
この砂浜から遠く離れて行ける 一艘の船を
いつも戻って来てしまう 同じような海辺に
また君への未練に浸ってしまう

想い出す君は 少しブルー
いやしないんだ! 君みたいになれる人なんて!
君が残して行ったものは 少しのブルー

570 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 18:20:48.76 ID:MBaNrYG/.net
ハオはもう永遠にシューフェンには会えないのだと思った。
しかしその日のうちに、シューフェンとリウ・パイロンが『施設』に引っ越して来た。
しかも部屋はハオの部屋の隣だった。

571 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 20:08:53.50 ID:+SmJaRt0.net
「ありがとう。お世話になるよ」
「メイファンちゃん、よろしくね」
二人は簡単な荷物だけを下げて引っ越して来た。
「遠慮せずに何でも好きに使ってくれ」
メイファンは目をキラキラさせて迎えた。
何しろ大好きな女優リー・シューフェンが自分の家に住むのだ。これ以上嬉しいことはそうそうない。
そしてそのそれ以上に嬉しいこととして、大大大好きななお兄……メイファンはぶるぶると首を振って今考えかけたことを吹き飛ばした。
しかし迎えに出たのはメイファンただ一人だった。主の習近平も、メイドやコックも、ハオも姿を現さない。
なんだか自分の嬉しさと反比例する現場の寂しさに、メイファンは提案した。
「なんなら友達も呼んでいいぞ」

572 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 20:44:04.40 ID:+SmJaRt0.net
ハオは行くあてもなく、自分の部屋に戻っていた。
ドアに鍵をかけてずっと引き籠っていると、夜遅くになって誰かがドアをノックした。
『シュ……シューフェン?』
そう思って暫く見ていると、ドアの壁が柔らかく溶けはじめ、白い手が沼の底からせり上がって来るように現れ、ノブを掴むと回し、鍵を外した。
いつもよりも真っ白なララが入って来た。
白いネグリジェを着て、いつもの笑顔が消えた幽霊のような顔をして、光の加減からか髪の毛まで白く見えた。
「お兄ちゃん、可哀想」
ララは囁くような声で言った。
「ララも、可哀想」
意味のよくわからないことを呟くと布団の中に潜り込んで来て、すぐ目の前に顔を出した。そして言う。
「ずっと泣いてたのね? こんなに鼻や目の下が赤く擦り切れるほど……」
そう言うララも赤い目をしていた。
「ねぇ、慰めてあげる。エッチしよう」
そう言うとララは寝転んだままネグリジェを脱ぎはじめた。
「あいつらに聞こえるぐらいの声を出してあげる」
「そんな気分じゃない。ほっといてくれ」ハオはララに背中を向ける。
「可哀想なひと……」ララはその背中に白い手を当てた。「一緒に寝るのは構わない?」
ハオは何も答えない。
暫く間を置いてララが言った。
「私、どうしてお兄ちゃんに……ハオさんに引かれるのかわかった気がする。私は似た者同士なのよ」
ハオが鼻を啜った。
「他人にいいようにされて、押さえつけられて……自分の言い分は聞いて貰えなくて、良い人呼ばわりされることで納得させられて……」
ハオはまた鼻を啜った。
「ハオさんも怨念が溜まっているでしょう?」
「怨念なんかねーよ」
「またそんな風に自分を良い人にして納得しようとする」
「怨念なんかどこにおんねん」
「いつか……私の力を貸してあげるわ」
ハオは寝たフリを始めた。
「ハオさんのカンフーの才、私の強大な『気』……。私は自分自身が『気』だからなのか、それをうまく使えないけど。ハオさんが使ってくれれば……」
ララはハオの背中に額をつけた。
「きっと素敵な怨念戦士が生まれるわ」
そしてハオの中に空いた穴を探した。シューフェンを失った悲しみで心は穴ぼこだらけだった。まるで穴だらけのチーズのように、固い心に丸い穴がいくつも空いていた。ララは思った、
『あそこ……もう少し穴が広がれば……入れそう』

573 :創る名無しに見る名無し:2018/12/27(木) 21:20:46.40 ID:+SmJaRt0.net
朝、メイファンが勢いよく目を開くとハオの背中があった。
何か気になって自分の身体を見ると、やたらヒラヒラのついた白いネグリジェを着ていた。
「なんじゃ、こりゃ……」
記憶を辿る。昨夜は確か、シューフェンを交えてリウと酒を飲み、酔い潰れて自分の部屋で寝たはずだった。
「ああ……」メイファンは納得した。「ララか」
しかし寝た時の格好は虎の着ぐるみのはずだった。ララが着替えたにしても、こんな服は持っていた覚えがない。
「ああ……」メイファンは納得した。「習近平の趣味か」
気持ち悪っ! と一気に脱ぎ捨て、全裸でハオの隣にまた寝転ぶ。
暫く全裸でシーツとハオの尻の感触を楽しんでいたが、やがて気が済むとハオの背中に思い切り正拳突きを喰らわせた。
「ぎゃあーーーっ!!!」
「起きろ。メシ食って迎え酒して特訓だ」
「……行かない」
「いつまでも泣きベソかいてんじゃねぇ! 死ね!」
そう言うとハオの背中に五段突きを喰らわせた。
「はぅあぅあぅあ……! ……」
ハオは脊椎を骨折してその日の特訓を休んだ。

574 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 04:18:00.17 ID:fGOESS1y.net
「ララちゃんっ、明日の夜は空けておいてねっ」
お茶を持って来たララに習近平が踊りながら言った。
「え。何があるの? ピンちゃん」
「またまたぁ〜トボケちゃってぇ〜明日は恋人達のピンクな夜、クリトリスイボ……じゃなくてクリスマスイヴだろぉ?」
「えー! だって中国、クリスマス禁止じゃん」
「誰がそんなこと言ったんだ」
「アンタじゃん!」
「いいんだ。庶民はクリスマス禁止。僕らはクリトリス満喫でいいんだ。国家主席の私が許す」
「独裁者だなぁ」
「その通りだもんっ!」
「でも、たぶん今夜起こることで明日はそれどころじゃないと思うよ〜?」
「今夜? 今夜何が起こると言うんだね?」
「んー……」
「?」
「ヒ・ミ・ツ」明らかにララの下手な物真似をするメイファンの声が言った。
「おのれメイファン〜! またワシらのスイート・タイムの邪魔をしよるか!」

575 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 04:21:17.53 ID:fGOESS1y.net
「ごめんね、ニーハオ」
そう言って優しく微笑んだオーフェンは美しかった。最近ずっと使用しているビニ本そのままの眩しさがそこにあった。
「私とタンロン、結婚するのよ」
ニーハオの脳裏に幸せだった恋人ととの日々が走馬灯のように流れた。あの恋人は今、もうどこにもいなかった。
「本当にごめん」
そう言って頭を下げたオーフェンのつむじが見えた。いつもベッドで抱き締め、くりくり弄っていたつむじだ。もうそれをくりくりすることは永遠に出来ないのだった。
「うわあぁあぁあぁあ!!」
そう叫ぶとニーハオは病院を走り出た。

走って、走って、疲れて止まった。
燃え殻のような夕陽が世界を包み込んだ。
西安に海はない。しかしニーハオの心はオーフェンと暮らした上海の海にいた。
ニーハオは膝を抱いてうずくまると、シューフェンの好きなデヴィッド・ボウイの懐かしいヒット曲を心を込めて口ずさんだ。

576 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 04:45:37.92 ID:EQhi8ll7.net
オナラ・デ・ニーロは持ち前の恐ろしいまでの試行錯誤をふんだんに用いて立ち直った。

「チャカ・カーンが癌だって? ……」
イギー・ポップは暫く考え込んでから、言った。
「痔は治る病気です! って言うよね?」

「フィル・コリンズがシャン・パイロンと出来たって? ……」
ビリー・ニョエルは何かを思い出しながら、言った。
「だからそれ、デマン湖だってばw」

「俺はブルース・リョーに負けた……。それは事実だ」
ロッキーはその時のことを思い出しながら、言った。
「でも俺って『これからの人』だろぉ?」
「『人間の証明』が一番恐ろしいんだぜぇ?」
三沢光晴は一月一日が誕生日であり、もうすぐ60歳であった。
「何かを始めるのに『高い、安い』なんてない!」
一部の奇才のみに当て嵌める真理であった。
「うるさいな『ウルグアイ』! お前だって雄松崎!」
ヌーノは地の文が深く傷つく言葉を並べ立てた。

「アイゴ〜! ……ってことで、これから何しよっかなぁ〜」
ふと気がつくと施設内には人の気配がなかった。
ジョニー・ロットンも今朝どこかへ出掛けて行った。
「あれ?」クレーン・ユウはひとり手マンだ。「これって逃げれるじゃん?」
しかしお金が一銭もなかった。
前澤社長の部屋を漁ろうと思ったが鍵がかかっていた。
前科モンの部屋に入ろうとしたらセキュリティ・アラームが鳴り出した。
「うふーん?」
自分の部屋のメガドライブでも質屋に売ろうかと思ったが面倒臭かった。
「寝るか?」
ベッドに寝転んだところで枕元の自分のエロトピアに気がついた。

577 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 09:00:23.76 ID:QX3RqS+w.net
メイファンは白いチャイナ服に着替え、道場に立った。
向かい側に立つのはいつものハオではなく、かつての一番弟子リウ・パイロンだ。
「楽しいなぁ」メイファンは牙を見せて笑った。「また本気で遊べる」
「棒は勘弁だが」リウが言う。「トンファーぐらいなら持っても構わんぞ」
「バカ言うな。人殺しにはなりたくない」
「お前が武器を持たんと俺の圧勝すぎてつまらんだろ」
メイファンはとても楽しそうに眉間に皺を寄せ、青筋をビキビキと立てて猫のように笑った。
「ではよろしくお願いします」リウが手を合わせ、一礼した。「礼!」
「れ〜」メイファンはテキトーに言うと、『気』を全開にさせた。

「なんでかな」メイファンは頬にバンドエイドを貼りながら言った。「これで3連敗だ」
「判定ならお前の勝ちだった」目の回りの青く腫れ上がったリウが言った。「お前はマウントを取られると弱すぎる」
「まさか散打にマウントがあるとは思わなかったもんでな」
「ルールの縛りがあったらデタラメなお前には絶対に勝てんだろ」
メイファンは急に緊張を声に走らせて言った。
「リウ・パイロン。お前、ここに引っ越して正解だったぞ」
「急に何だ?」
「習近平の諜報部員から報告があった。アメリカに私の情報が漏れたそうだ」
「何だと?」
「いつ私をピンポイントで狙ってミサイルが降って来るかもわからん」
「そんなもん、お前なら捌けるんじゃないのか」
「私は『気』を持たない物に対しては無力だ。『気』も察知出来ないほど遠くから狙撃されても何も出来ん」
「何てことだ……」
「それでな、なぜだか知らんがお前までターゲットに入っているらしい」
「俺がか」
「お前の上にもいつピンポイントでミサイルが降って来るかもわからん。気をつけろ」
「確かにそれは気をつけろと言われてもどうしようもないな」
「だが、ここにいるうちは安全だ。ミサイルが飛んで来れば探知出来るし、窓はすべて防弾になっている」
「なるほど」
「半径20km以内なら厳重警戒されているから外でも安全だが、それでもなるべく外はうろつくな」
「わかった、ありがとう」
「取り乱さないんだな」
「取り乱したってしょうがないだろ。お前の情報には間違いがないしな」
「『なんで俺まで!?』とか騒がないのかよ」
「お前が『なぜだか知らんが』と言った以上、理由なんか聞いても誰も答えちゃくれないだろ」
「正論だ」
「シューフェンには黙っていてくれ」
「言わないのか? ある日突然お前の上からミサイルが降って来て、笑顔で振り向いたシューフェンの目の前でお前が消えたら何て説明するんだ?」
「そのシューフェンの笑顔を消したくない」
「ふーん。なんか、矛盾してるな?」
「矛盾?」
「お前はそれに似たようなことをしたあの人を怒ったんじゃないのか」
リウは暫く胸に手を当てて考えた。だんだんとシューフェンが癌のことを自分に黙っていた気持ちがわかりはじめる。
「あぁ……そうか」リウは小さく呟いた。「シューフェン、俺を悲しませたくなかったんだな」

578 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 10:29:43.75 ID:QX3RqS+w.net
円形の卓に豪華な朝食が並べられた。
席に着いたのは実質六人の五人。
主の習近平、娘のメイファンとララ、訓練生のハオ、そして客人のリウとシューフェンであった。
「お初にお目にかかります。国家主席の習近平です」
「初めまして。女優をやっておりますリ……シン・シューフェンと申します。お会い出来て光栄ですわ」
死期の近づいたシューフェンは大抵のびっくりするようなことは平然と受け入れるようになっていた。目の前に国家主席がいてもまったく平然としている。
「いつもTVで狂おしく拝見していますよ」習は粘っこい笑顔で言った。
「お久しぶりです」と、リウも挨拶した。
「お前にはこの間会っただろ」習は無視して言った。「さぁ開動了。食べよう食べよう」

「シューフェン、身体の調子は?」リウが鴨のステーキを切り分けながら言った。
「とてもいいの」シューフェンは微笑んだ。「昨日、メイファンちゃんが手を当ててくれてから……というか実は10日ぐらい前からずっと」
メイファンは子豚の丸焼きを喰いながら聞いていた。
「本当に最近調子がいいの。治っちゃったかな? って思うぐらいよ」
「それ、手を当てて治療してるの、実は私じゃねーんだ」メイファンが言った。「私の姉ちゃんのララなんだ。私の中に住んでる」
「ララ、姿を見せてくれ」リウが優しく言った。
「……」メイファンは丸焼きを皿に戻して準備したが、ララは出て来ない。「……ララ?」
「メイファンが死んでずっとララちゃんになればいいのに」習近平が杜仲茶を飲みながら言った。
「そうなって習近平もあっという間に暗殺されてしまえばいいのにな」メイファンはそう言うとまた呼び掛けた。「ララ? 寝てるのか?」
シューフェンは口の中の鴨をゆっくり噛みながら笑顔に疑問符を乗せて待っている。
「ハオ」メイファンはハオを見た。「お前が呼んでみろ」
ハオはひどく泣き腫らした顔をしてオムレツを食べていた。皆がハオのほうを見たが、シューフェンは一人だけ目を逸らした。
「ララ」ハオは鼻声で呼んだ。
するとすぐに白いトレーナーの上の黒いメイファンの顔が白くなりはじめ、猫のようだった目はタヌキのようなタレ目に変わった。
身体は少し大きくなり、がさつな髪の毛は繊細に柔らかくなり、何の悩みもなさそうだった表情が固くこわばり、助けを求めるようにハオを見つめた。
「まぁ」
死期が近づいて大抵のことにはびっくりしなくなっているシューフェンが少しだけ驚いたような声を上げた。
「自己紹介しろ、ララ」メイファンの声がララの唇を動かした。
「……ララです。お姉さんの癌だけは、絶対に治します」ララはシューフェンをまっすぐ見つめ、静かな口調でそう言った。
「治せるのか?」メイファンの声が言った。
「治せは……しないけど」
「嘘は言うな」
「……ごめんなさい」
「ララちゃん、よろしくね」
シューフェンがそう言って微笑むと、ララはようやく笑顔を浮かべた。
「どうか、僕からもよろしく頼むよ」
リウがそう言うとまた笑顔が消え、頑なな表情になった。
「最近調子がいいのはララちゃんのおかげだったのね」シューフェンがララを見つめる。「ありがとう」
ララはにっこりと笑って答えた。
「シューフェンお姉さんの痛みを取るのが私の仕事です。お姉さんはハオさんの大好きな人だから」
シューフェンは複雑そうな顔をして笑顔が固まった。
ハオが立ち上がり、顔を押さえて走って出て行った。
「ハオさんを傷つけた人でもあるけど、私はお姉さんのこと大好き。怨念はすべて別のほうへ向いています」
優しい笑顔でそう言うララにリウが言った、
「よくわからんが……。ララ、心から感謝している」
「ガアッ!」それがララのリウに対して向けた初めての言葉であった。「オマエのためじゃない! オマエのためじゃないぞ!」
メイファンはララの中で困っていた。ララがどんな表情をしているのか、さっぱり想像もつかなかった。

579 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 11:00:19.95 ID:QX3RqS+w.net
次の日、『施設』に四人の客がやって来た。
映画監督ツイ・ホーク、同じく有名な映画監督であるチャウ・チンシー、俳優であり世界の格闘王でもあるケン・リュックマン、
そして世界トップのメイクアップ・アーティストであるジョアンナ・ポンの四人であった。
四人は明日施設内で執り行われるリウ・パイロンとシン・シューフェンの結婚式に招かれ、前日から泊まり込みでやって来たのだった。
本当はもっと多くの招待状を出したのだったが、習近平の護衛が有名人以外の入場を許さなかった。
一気に二人の周りは賑やかになり、メイファンはすこぶる機嫌がよさそうだった。

580 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 11:15:24.98 ID:QX3RqS+w.net
シューフェンのララによる昼の治療が終わると、一同はテーブルを並べ、お茶会を始めた。
ララは窓辺に立ち、それを眺めていた。
窓を見ないようにしながら、『気』を動かさないようにしながら、窓をゆっくりと開ける。
メイファンはララの『気』だけはうまく読めない。そこに殺気があっても気づくことは出来なかった。
窓の外にはビルがあり、その屋上からリウ・パイロンが丸見えの位置に立っていた。
防弾ガラスさえ開ければ、そして屋上にいる狙撃手の腕前さえ確かなら……。
しかし屋上に狙撃手はいなかったようだ。
やがてジョアンナが窓が開いていることに気づき、ララを見ながら言った。
「寒いっ! 寒いんだけど!?」
ララはわざとらしいほどにうろたえてキョロキョロすると、
「あっ。ごめんなさい。開いていました」と微笑み、窓を閉めた。
その向こうでリウがなぜか少し悲しそうにララを見ている。
「おい」メイファンの声がララに言った。「本当に『開いていた』のか?」

581 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 11:47:41.88 ID:QX3RqS+w.net
ララはハオの部屋に入った。ハオはまたベッドに突っ伏して泣いていた。
ララは何も言わずに隣に座り、机の上からペンと便箋を手に取ると、文字を書き、自分の目には決して見せないようにしてハオに見せた。
ハオはそれを涙目で読んだ。
『シューフェンお姉さんはハオさんのもの』と書いてあった。
「おい」メイファンの声がした。「何を書いてる? 見えん」
さらにララは便箋に文字を書き、ハオに見せた。
『明日になったら完全にハオさんのものじゃなくなってしまう』
ハオは読みながら何も言わなかった。
ララはさらに書き、少し怖い顔をしてハオに見せた。
『リウ・パイロンを殺してシューフェンお姉さんを奪うの』
メイファンが出て来そうになった。ララは苦しそうにそれを抑える。
「シューフェンはアイツのものだよ」ハオが言った。「シューフェンが選んだんだ」
ララは鬼のように牙を剥くと、強く言った。
「根性なし! 愛しているなら奪え! そんな根性もないからオマエは皆からバカにされるんだよ!」
そしてハオの口に先程書いた三枚の便箋を詰っ込んだ。
「食え! それを食って根性つけろ! それには私の怨念も籠ってる! それ食ってぶりぶりぶりぶり!!」
「ぶりぶり!! それ見せろ!」メイファンはララを押さえつけて出て来た。
しかしハオはもう飲み込んでしまっていた。
メイファンの口からララの嗚咽が漏れはじめ、言った。
「私にはアンタを押さえつけて出るなんて、したくても出来ないのに……アンタはそうやって出て来る……」
メイファンは目を忙しく動かしながらそれを聞いた。
「アンタの決定に私は従わされ、私は押さえつけられる……。アンタがツンで私がデレなわけでもなく、アンタは一人でツンデレをこなす……」
ハオもびっくりするような顔でララの言葉を聞いた。
「なぜアンタを殺せば自分まで死んでしまうのよ? ひどいじゃない!!」
「ララ……ぶり」
「ぶりぁぁぁあああ!! 力が欲しい!!」
ララは神を呪うように叫んだ。
「アンタみたいな、人を簡単に殺せる大きな力が欲しい!!」

582 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 12:01:12.61 ID:QX3RqS+w.net
メイファンはララの『白い手』を使えるが、ララはメイファンの『黒い手』を使えない。
ララの手が黒くなる時、そこには必ずメイファンの意思がある。
元々この身体がメイファンのものであることに加え、『気』を操れるメイファンは『気』そのものであるララを操ることも出来る。
そのことに不満はないはずだった。
自分はヴァーチャル映像を見ているだけのただのお喋り好きな無力な女の子でよかった。
はずだった……。

583 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 12:50:04.36 ID:QX3RqS+w.net
「リウ・パイロンを発見しました」眼鏡カマキリが報告した。
「どこだ?」芋饅が聞く。
「西安の習近平国家主席別邸です」
「手ぇ、出せねえ〜〜」
「黒色悪夢と兄弟になったというのは本当なんですね」
「で、もう一人の女の子は?」
「ラン・メイファンですか」
「彼女にも公務執行妨害とフランスパン窃盗の指名手配がかかっている」
「あのパン、何だったんですかね」
「名前がわかっているんだ。簡単じゃないのか」
「それが……名簿に記入された『乱妹芳』の名前と国民IDは確かに存在するんですが、しかしそんな人間はいませんでした」
「戸籍は?」
「戸籍もあるんですが、住所を調べたら公衆トイレになっていました」
「なんだそりゃ」
「更に調べたところ、気になるものが……」
「何だ」
「ラン・メイファンという名前の人間をリストアップしてみたところ、漢字のないlan mei fangという17歳の女性が存在することがわかりまして」
「漢字がない? それって日本人の名前がtanaka hanakoみたいなことだぞ?」
「はい。そして、その女性の住所が例の習近平国家主席別邸になっているんです」
「両親は?」
「いません。習近平氏が養女として引き取り、しかし籍は入れていないんだと思われます」
「なぜだ」
「それで私、思いついてしまったんですが……」
「何をだ」
「あの女の子がもしかしたら、裏のNo.1武術家にして習近平の最強の用心棒、黒色悪夢なのではないかと」
「あの女の子が?」
二人は暫く考え込み、すぐにわっはっはと笑い出した。
「AKBの宮脇咲良が実は殺し屋だったってぐらいありえないですよね〜」
「芦田愛菜ちゃんが武藤敬司より実は強かったってぐらいありえんな!」

584 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 12:58:10.31 ID:Ux0mzO8C.net
ララは無力だと思いこんではいるが
気を操るメイファンと比較した場合はそうかもしれない。
だか、実際には人を殺せるだけのパワーはあった。

ララは1歩踏み出す度胸と覚悟がなかったのだ。

585 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 14:08:18.07 ID:rDlg23g3.net
日が替わり、結婚式当日になった深夜、ララはリウとシューフェンの部屋を訪れた。メイファンは眠っていた。
部屋には鍵がかかっていた。ララは扉に手を当てクリームのように柔らかくすると、そこから手を差し入れた。
ララの治療の能力はララ自身が使うよりもメイファンが使ったほうが強力であるが、この大抵のものなら柔らかくしてしまえる能力はララだけの得意技である。
ただ、柔らかく出来る範囲は小さく、手を差し入れるのがせいぜいであり、それでも住居不法侵入の際には大いに役立っていた。

部屋に入って来たララは全裸だった。衣擦れの音を出さないようにとメイファンから教わったことがあった。
手には長めのナイフとノコギリを持っていた。
リウ・パイロンはシューフェンに腕枕をし、ぐっすり眠っていた。
ララはゆっくり、ゆっくりとナイフを頭上に上げる。しかしリウの胸に振り下ろすには距離が遠すぎる。
ララは一気にリウの上に馬乗りになる。奇声を発しながらナイフを振り下ろす。
しかしリウとメイファンが同時に目を覚まし、外と内から体を押さえられてしまった。
びっくりして目を覚ましたシューフェンが自分を見ていた。
『ハオお兄ちゃんの大切なシューフェンお姉ちゃん』が、ララのことをキチガイでも見るような顔をして怖がって見ていた。
ララは泣き崩れ、メイファンの中へ逃げ込んでしまった。

586 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 19:02:56.74 ID:o31+kZJF.net
シューフェンの見る目は正しかった。ララはリウのレイプにより気が狂っていたのだ。

587 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 23:18:22.59 ID:QLvKJi9N.net
話の展開がエンドレス

588 :創る名無しに見る名無し:2018/12/28(金) 23:36:01.20 ID:5eg4F3aP.net
突如、時空の隙間から出現したオザワ先生のビッグペニス!
震えあがるハオ!

589 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 12:15:11.76 ID:vUHqmOF9.net
朝食前にメイファンとリウは軽く手合わせをした。
新郎の顔を青アザだらけにしないよう、二人は触れ合わない距離を置いて技を出し合った。
「昨夜はララがすまん」メイファンが言った。
リウは何も言わなかった。昨夜のララを許すことは出来なかった。
しかしララにはシューフェンの治療をして貰わないと困る。だからといってララに嘘の微笑みを見せることは出来なかった。
「ララを外す」とメイファンは言った。「習近平に命令して最高の医療チームを付けさせよう」
「あぁ」リウは答えた。「そうしてくれ」
「入籍もここにいながら出来るぞ? 便利だろう?」
「いろいろ助かる」リウはハイキックを繰り出しながら言った。「ありがとう、メイファン」

590 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 12:22:27.10 ID:tk7swJ0m.net
メイファンはハイキックを鼻差でかわすと足を抱え込み、軸足を蹴りあげた
体制を崩すかに見えたがリウは抱え込まれた足を今度は軸に変えて回転蹴りを撃ち込む!
メイファン「相変わらず身が軽いな」
メイファンは軸足を手から離しながら更にもう一歩後ろに引きその回転蹴りをダッキングでかわした

591 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 12:35:37.16 ID:vUHqmOF9.net
習近平別邸の中庭で結婚式は簡素に、しかしとても賑やかに行われた。
既に入籍を済ませ、シューフェンはリウ・シューフェンに名前が変わっていた。
本名のシン・シューフェンはもちろん、芸名のリー・シューフェンも改められた。

白いウェディング・ドレスを着たシューフェンは痩せて頬骨が目立つようになっていたが、それでも花のように美しかった。
終始心から幸せそうな笑顔を浮かべ、リウに支えられていた。
ツイ・ホークとチャウ・チンシー二人の映画監督が彼女の姿をフィルムに焼き付けた。
二人は昨日から競うように様々な場所で彼女を撮っていた。後の新作映画の中でその映像を使うのか、夭逝の美人女優のドキュメンタリーを製作するのか、それは未定だった。
誰もが既にシューフェンの病気のことを知っていた。残された時間は僅かであることも知っていた。
それでも集まった人達は一人を除いて皆、祝福の笑顔で二人を包んでいた。

シャンパンをぼーっと飲みながら、ただ一人笑顔のないハオはシューフェンの花嫁姿を眺めていた。
「思った通りだ。君にはウェディング・ドレスが最高に似合うよ」
そう呟いてから改めて自分の立っている場所を見る。シューフェンから20m離れた来賓テーブルだ。
「俺、なぜ、ここ!?」

592 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 12:50:23.17 ID:vUHqmOF9.net
当日になってやって来たリウの両親が、習近平に服従の姿勢を示した後、壇上に上がりハグを求めた。
父親のポホェイシェンとは険悪な仲のパイロンが、涙を浮かべた笑顔で父親と抱き合った。
シューフェンにも愛情の籠った笑顔でハグを求め、シューフェンは義父さんの頬にキスをした。

ブーケトスが行われた。
後ろを向き、せーのでシューフェンがブーケを投げる。
ジョアンナのほうへそれは飛び、がめついほどの笑顔で取ろうとしたジョアンナの直前で風が吹き、隣にいたハオの手にそれはパサリと落ちた。
ハオは言った。「皮肉!?」

シューフェンの身体を気遣い、式は短く終わった。
メイファンは警備のため別室にいたが、モニターでずっと式の様子を見ていたが、
無事に終わったことを見届けると、何も言わずに目を伏せて、休息するため自室へと帰って行った。

593 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 13:46:10.82 ID:fkotC3dq.net
「なぜ私を無視するのか?」
そう言いながらケン・リュックマンが壇上に上がった。

594 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 14:47:59.35 ID:H5BsKKmq.net
式を終えて暫くの時が経った。
ほんの少しすつ元気を取り戻しつつあったハオは、ずっと閉じ籠っていた部屋からカーテンを開けて窓の外を見た。
シューフェンが結婚式を行った中庭が見えた。それだけで他には何もなかった。
カーテンを閉め、ベッドにまた寝転ぶ。するとドアをノックする音がした。
メイファンならノックなどしないし、ララのノックはもっと遠慮がちだ。しかしこの軽やかな骨の音は聞き覚えがある、そう思っているとドアが開き、シューフェンが入って来た。
「ハオ、いい?」
ハオは一生懸命隠れ場所を探した。壁に思い切り顔をぶつけてから布団に潜り込んだ。
シューフェンがベッドに座って来た。
「今日、聞いたの」
ハオは気配を殺して存在しないフリをしている。
「あと3日だって」
ハオは暫く意味がわからず考え込んだ。
しかしすぐに意味がわかり、飛び起きた。
「よ、余命?」
久しぶりに間近でシューフェンの顔を見た。かなり痩せ、肌の若々しさはなくなっていたものの、バケモノはおろか別人のようにさえなってはいなかった。
そのシューフェンがにっこり笑いながら頷いた。
「お前……本当にいなくなっちまうのかよ」
「うん」
「嘘だよな? 嘘だって言ってくれよ」
「ふふ……」
「嫌だよ! 俺、お前にフラれるのも嫌だけど……お前にいなくなられちまうのはもっと嫌だよ!」
「それでね……ハオ」
ハオは涙と鼻水をとめどなく流し、言葉が出せない。
「天国に行く前にハオに言いたいことがあって」
ハオは震えながらシューフェンの目の奥まで覗き込んだ。
「言いたいことがありすぎて忘れちゃった」
「アホ!」ハオは頭にチョップを食らわす真似をした。
シューフェンは昔のように笑った。そして言った、
「ここに来てから一言も交わしてなかったから」
「うん」
「これじゃ死ぬ時悔いが残るなって」
「うん」
「でも、アンタとこうやって言葉を交わせただけでなんかどーでもよくなったわ」
「うん……」
二人は並んで座り、遥かなような暫くの時間、長い間連れ添った老夫婦のように黙っていた。
付き合った6年の思い出が二人の間をそよ風のように流れて行った。
「結婚式、出席してくれてありがとね」シューフェンが言った。
「うん」
「ブーケ、ハオが受け取ったね」
「何の罰ゲームだよって思ったけどな」
「みんな、しらけてたね」
「一番誰とも仲良くない奴が受け取ったからな」
「ハオ、私のこと、忘れてね」
ハオの目から涙がぶわっと溢れ出した。
「忘れねぇよボケ」
「ハオ」
「ボケ」
「私……女優になったよ。ハオは?」
「あ?」
「ロンとハオの試合、観たかったな」
「おう」
「あたし……自分の映画の初上映にも間に合わないのよ」
「おう」
「でも……いいの」
「いいのかよ」
「ハオ」
「ん?」
それきりシューフェンは何も言わなかった。しかしハオは目を閉じた彼女の安らかな笑顔に自分への愛を感じていた。

595 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 17:09:37.98 ID:H5BsKKmq.net
シューフェンがハオの部屋を訪れている時、リウはメイファンと身体を動かしていた。
ララがリウはもちろんメイファンの傷さえ治療しなくなったので、本気で手合わせをすることが出来ないのだった。
ララはあれきり一言も喋らなかった。完全に存在しない人間になっていた。
メイファンは毎日呼び掛けるのだが返事はなく、ハオが呼んでも出ては来なかった。
「つまらんな……」メイファンがイライラした口調で言った。
「これも立派なトレーニングだ」リウはメイファンと向き合わず、同じ方向を向いて腕を伸ばしたり縮めたりした。
「まるでラジオ体操だ」メイファンはふざけてヒップホップの動きをしはじめた。
「中国はヒップホップ禁止だぞ」リウが国家主席の養女に皮肉を言う。
「飽きた」メイファンは座り込んでバナナを食べはじめた。
仕方なくリウも座り込み、バナナを剥いた。
「リー・チンハオは一度も道場に来ないが、強いのか?」リウが聞く。
「4000年に1人の逸材だ」メイファンは真顔で答えた。
「それは凄い」リウは激しく興味を示した。「ぜひ手合わせをお願いしたい!」
「だが、気力がない、やる気がない、3分で世界最強になる方法を欲しがるみたいな奴だ」
「なるほど」リウはハオの顔を思い出しながら言った。「ここへ来て大分経つが、あの人とまだ一言も会話して貰ってない」
「ハオがお前に『そこの醤油取ってください』と話しかけたのを見た覚えがあるぞ」
「メイ」リウは言った。「近日、自分の散打のジムを立ち上げるんだが、リー・チンハオを預けて貰えないだろうか」
「ダメだ」メイファンは即答した。「アレは私のだ」
「じゃあ、メイ、お前、来るか?」
「そんな明るいところ、目が潰れるわ」
「そうか」リウは残念そうな顔をした。
「独立するんだな」
「あぁ、トレーナーの楊とウマが合わなかったこともあるしな」
「ジムの名前はもう決めてあるのか」
「『L&S』に決めてある」
「リウ&シューフェンか」
「いや、ロン&シューフェンだ」
「どうでもいいな」
「重要だ」
「糞どうでもいいな」
「シューフェンも喜んでくれた。自分の名前が残るんだ、って」
メイファンはバナナを食べきると頭を下げた。
「すまん、リウ・パイロン。ララがあのまま治療を続けていればあと半月はもつ予定だったのに……」
「俺も同意したことだ」
「あら、あたしは無理矢理やめさせられたのよ?」唐突にララが喋り出した。
「び、びっくりした!」メイファンが慣れていたはずの自分の口の自動発声にのけ反った。
「リウ・パイロンさん、あなたがどうしてもと言うのならあたしがまた治療をしてもいいのよ?」
「ララ、本当か」リウが身を乗り出す。
「ええ、あたしはとても明るくて良い子のラン・ラーラァだから」
「お願いする! せめて、最後まで苦しくないようにしてやってくれ」
「了解よ、リウ・パイロンさん」
ララの声はとてもハキハキとしているが、笑っているのか怒っているのかさっぱり読み取れなかった。
「あたしはとても明るくて良い子のラン・ラーラァだから、もうあなたにナイフなんて突きつけなくってよ」

596 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 17:49:34.06 ID:KUSdcMm/.net
「シューフェン……」
ハオは後ろから彼女のうなじの匂いを嗅ぎ、その身体を抱き締めた。
「あ、もうロンが湖に連れて行ってくれる時間だわ」
そう言って立ち上がる彼女からハオは手を離した。
愕然とした。まるで骨と皮だけの抱き心地だった。

597 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 18:06:22.05 ID:PMmcIL3H.net
1人ぽつんと残されたハオはあまりの悲しみと絶望に
「ブッダよ、あなたは今も寝ているのですか!!」
と訳の分からないことを叫び号泣した。

598 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 19:30:51.12 ID:9fWqcOeO.net
リウは赤いベンツを運転してシューフェンを湖に連れて行った。
その後ろからぴったりついて来るデミオの助手席にはサングラスをかけたメイファンが乗っており、運転手はハオだった。
「なんで俺まで!?」
「シューフェンから余命の話、聞いたはずだ」メイファンがポップコーンを食べながら言う。「思い出作りしておけ」
「他人の妻の思い出!?」

湖のほとりに車を停め、リウはシューフェンを支えて湖を見せた。
「仙女が現れそうな所ね」シューフェンは帽子を押さえながら微笑んだ。
「綺麗だ」リウは湖から視線をずらし、シューフェンを見つめながら言った。
「なんで俺、ここにいんの?」ハオはまたメイファンに聞いた。
「思い出作りだ」メイファンはまた答えた。

シューフェンを木の柵に凭れて立たせ、リウは少し離れると写真を撮りはじめた。
シューフェンは弱々しいながらもピースサインを決め、顔にかかる黒髪を払いのけて笑う。
「なぁ、なんで俺……」
ハオの言葉が止まった。
「なんだ?」
ハオは空を見上げる。
キラリと一瞬、上空に光るものが見えたと思うと、それはあっという間に降って来た。
轟音が聞こえはじめてようやくリウはカメラから目を外した。
自分の頭上へ向かって降って来る超小型のミサイルに気づいた時は、もう避けようもなかった。
しかし横から物凄いスピードでハオが飛んで来て、ミサイルに掌打を当てると、ミサイルは吹っ飛び、シューフェンから遠いところを通って湖に落ちた。
湖に大きな水飛沫が上がる。続いてすぐにもうひとつ、大きな水飛沫が上がった。
メイファンが捌きを終えた姿勢のまま叫んだ。
「早く車に乗れ! 20km圏内まで戻るぞ!」
湖は『施設』から21km離れていた。そのためこちらの迎撃システムは働かなかったようだ。
リウはシューフェンを抱きかかえると素早くベンツに乗せ、走り出した。
「な、何?」
シューフェンにはミサイルも見えず、ただひたすらに何が起こったのかわからなかった。
「な、何だったんだ?」
きょろきょろ辺りを見回して呆然とするハオをメイファンは抱きかかえると、素早くデミオに乗り込み、走り出した。

599 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 19:45:53.42 ID:9fWqcOeO.net
「いやはやお手柄だ、ハオ」メイファンは運転しながら声に緊張を漲らせた。
「は? 何だったの?」
「お前が気づかなければメカゴリラも私も食らっていた。私があれを捌けたのもお前のお陰だ」
「は? は?」
「それこそ金属バットで飛んで来る弾丸を打ち返すような離れ業だった。お前の『気』にシンクロさせたとはいえ、よく捌けたと自分を褒めたい」
「へぇ〜……で、何だったの、アレ?」
「ハオさんすご〜い」ララの声がした。「ハオさんが欲し〜い」

600 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 20:49:48.86 ID:9fWqcOeO.net
ララが治療に戻っても、結局シューフェンの余命が伸びることはなかった。
湖へ行った日から3日後の朝、シューフェンは峠を迎えた。
テレビ電話でツイ・ホークとジョアンナが話をした。
「ジョアンナ、友達になってくれてありがとう」
「シューフェン、待っててね。あなたの骨格に最後のお化粧をしに行くわ」
「監督、私を見出だしてくれてありがとう」
「君の主演映画をもっともっと撮りたかったよ」

電話が終わるとシューフェンはメイファンに言った。
「メイファンちゃん、本当にありがとうね。あなたのお陰で安心して眠れるわ」
「映画、観に行くから。またその時に会いましょう」
メイファンらしくない優しい言い方に触れ、シューフェンはにっこりと微笑んだ。
「ララちゃんにも会いたいわ」
するとすぐにメイファンは白くなり、明るい笑顔のララが現れた。
「ララちゃん、ありがとう。こんなに安らかに眠れるのはララちゃんのお陰ね?」
「アハハ」とララは声を出して笑った。「キチガイを見る目で怖がったくせに?」
ララはすぐメイファンに戻ると、口をぶりぶり言わせながら部屋を出て行った。
「ハオ」
メイファンはハオを見た。ハオはシューフェンが何か言おうとする前に泣きながら言った。
「シューフェン、愛してるよ!」
「あら。あたしも愛してるわよ?」
リウが驚いた顔でシューフェンを見た。ハオは言葉を失ってぼろぼろ涙を流した。
「ロン、最後のお願いよ。本当のことを言わせて」
リウは黙ってその場で頷き、腕組みをした。
シューフェンは深く息をすると、言った。
「どうして二人の人を好きになっちゃいけないんだろ。ロンのことも愛してる、ハオのことも愛してる。これが本当の気持ちなのに」
「シューフェン〜〜〜……」
「ハオは私の一番落ち着ける家みたいなもんよ。手のかかる家だけど、だからこそ可愛いの」
「キスしてもいい?」
ハオの言葉にシューフェンはリウを振り向いた。リウはくるりと背を向けると、耳を塞いだ。
鼻水まみれのキスをすると、ハオはシャツでシューフェンの顔を拭った。
「大好きよ、ハオ」シューフェンは言った。「だから自信を持ってね」
「もういいだろ」と言いながらリウがハオを押し退けた。
部屋から出て行かないハオを一瞥すると、ハオはようやく出て行った。
「ロン……」
「また黙ってやがったな」
そう言いながらリウはポケットからハンカチを取り出し、鼻水の残りを優しく拭いた。
「ごめんなさい」シューフェンは最も信頼する人の顔を見ながら微笑んだ。
「いいさ」綺麗になった唇にキスをする。「俺を悲しませたくなかったんだろ」
「でも、最後に悲しませた?」
「悲しいもんか」リウは静かに言った。「アイツは確かに凄ェライバルだしな」
「でも、あたしはずっとロンの側にいるわ」
「あぁ」リウは微笑んだ。「俺もずっと側にいる」
二人は手を握り合った。
リウには見えてしまった。シューフェンの気がどんどん弱くなり、消えてしまうその一瞬が。
「ロン、あたし、今……」最期にシューフェンが言った。「幸せよ」

601 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 21:09:12.43 ID:9fWqcOeO.net
帰らぬ人となったシューフェンを見て、ハオは泣き叫びながら言った。
「メイファン〜! ララ〜! どっちでもいいからシューフェンの中に入って生き返らせてくれよ〜!」
「……!」メイファンは呆れて言葉も出せなかった。
「お前ら一人の身体に二人入ってんじゃんよ〜! 一人出てってシューフェンの中に入ってくれればいいじゃんよ〜!」
「てめぇ」リウがハオの胸ぐらを掴む。「取り乱すのはわかるが、いい加減にしろ」
「何でだよ〜! 死んだ恋人ゾンビにして生き返らせる人の気持ちがお前にはわかんねぇのかよ〜!」
「それでもし生き返ったとしても、それはシューフェンじゃねぇだろうが!」
「シューフェンだよ〜! 見た目がシューフェンならシューフェンだよ〜!」
「そいつは取り乱してなどいないぞ」メイファンがリウに言った。「そういう奴なんだ」
「頼むから!」リウはハオを床に投げると涙声で言った。「安らかに眠らせてやってくれよ……!」
投げられたハオはすぐに立ち上がるとメイファンに駆け寄った。
「な〜! メイファ〜ン! ドラえもんみたいに何とかしてくれよ〜!」
「こういう奴だが……」メイファンは拳を握りしめた。「ここまでだとは思わなかった」
メイファンに『気』を込めて殴り飛ばされたハオはすぐにまた立ち上がるとシューフェンの遺体に突っ伏して泣きまくった。
「アハハ」とララの声がした。「あたしはハオさんに賛成〜」

602 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 21:19:45.93 ID:9fWqcOeO.net
メイファンは説教室にララを連れ込んだ。もちろん物置部屋に一人で入っただけである。
「ララ、最近お前、おかしいぞ!」
「ハオさんに共感〜」
「あのな、身体から出るなんてお前、出来ると思うか?」
「だってあたし、いらない子だしぃ〜、家出〜」
「シューフェンの死体に入れたとして、入ったお前も死ぬことになるぞ」
「なんで〜? あたし生きている気体じゃ〜ん?」
「シューフェンは魂が抜けたから死んだんじゃないんだ、身体が死んだから死んだ。わかるか?」
「なるほど!」
「それにメカゴリラも言ってた通りぶりぶりぶり……」
「じゃあ、生きてる人になら入ってもいいのね!?」
「何のことだ?」
「穴がね」ララの声は嬉しそうに言った。「大きく広がったの!」

603 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 22:07:55.13 ID:9fWqcOeO.net
その夜メイファンが眠りにつくと、早速ララは出掛けて行った。
ハオの部屋に入ると、ハオも泣きながら眠っていた。
「お兄ちゃ〜ん」

604 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 22:08:42.52 ID:9fWqcOeO.net
ララは嬉しそうにハオをゆする。
「ハオさぁ〜ん」

605 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 22:31:41.18 ID:9fWqcOeO.net
ハオが目を開けると、また白いネグリジェ姿のララがいた。
「合体しよ〜、合体」
「慰めなんかいらねーっつってんだろ。あっち行け」
「慰めるつもりなんかねーよバーカ」
「あ?」
「ただ合体しよーっつってんだ。大人しく合体されろバカ」
そう言うとララはいきなりハオのズボンとパンツをいっぺんに下ろした。
「いやだからそんな気分になれるわけねーって……」
ララの柔らかく温かい唇がハオを包み込んだ。
「ねーって……」
舌がねっとりと絡みつき、同時にハオは強烈なフェロモンを吸い込んだ。
「ね、ねっとり〜って……」
ハオの如意棒はびんびんに立ち上がった。
「こ……こんな時に立ち上がるんか……! 俺って奴は……俺って奴は……」
ララは唇を離し、柔らかな手で激しくしごきながらハオに顔を近づけて来た。
「フフフフ、ハオさん、ララの同類〜」
「くっ……くそぅ……」
「ふきんしん〜。ひとでなし〜」
「あぁっ……いっ……」
「そんじゃね、そんじゃね」
「うぅっ……!」
「いっただっきまーす」
そう言うとララは大きく口を開け、ハオにディープキスをした。
ハオの口を押し開け、舌が入って来る。
どんどんどんどん入って来る。
綿菓子を休みなく口の中に突っ込まれるように……いや待て、これ、本当に舌か?
そう思ってハオが目を開けると、ララは白目を剥いて痙攣していた。痙攣しながらぐいぐいと口を押しつけ、離さない。
その口から何かふわふわしたものがまだまだハオの中へ注ぎ込まれる。
「むぇいぶぁーーっ!!」
ハオはそう叫んでメイファンを起こそうと試みたが、メイファンは出て来ない。
やがてララの顔がビキビキと音を立てて黒く割れはじめ、白い破片はすべてハオの口の中に入り、ようやく目を白黒させたメイファンが現れた。

606 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 22:36:17.28 ID:5Xkok9Ad.net
「…ううっ、ダダァ…ッ!」
ハオは目を覚ました。
「…苦しいのね、お兄ちゃん。」
ララはハオを優しく抱擁し、ストレスでハゲ散らかったその頭を撫でた。

607 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 22:53:41.22 ID:wPQXNOaF.net
「お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ、私お兄ちゃんとつながってるよぉっ!キャハハハッッ!!」
ハオの精神世界内部に入り込んだララは
精神体のハオと激しく交わっていた。
「ううっ、ララ…やめてくれぇ…。」
それはハオの意志を無視したレイプの様相を呈していた。

一方、現実世界ではメイファンの目の前でバケモノが誕生しつつあった。

608 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 22:59:56.99 ID:9fWqcOeO.net
気がつくとメイファンは大きく開けた口をハオの口に押し当てていた。
ちょっと舐めた後噛みついてから口を離すと、おかしな感覚があった。
「ララ?」
ララの『気』がどこにもないのがメイファンの通常の感覚であった。自分の臓器は異常を訴えない限り意識しないのと同じようなものだ。
自分の臓器が目の前に置かれているような感覚だった。ハオの中に、ララの『気』を強く感じたのである。
「ララ……お前、ハオの中に入ったのか!?」
「うふぅん」ハオの口が勝手に動き、オカマのような声で喋った。「いい感じぃ」
しかしその『気』は白くはなかった。コバルトブルーの『気』がハオを大きく包んでいた。
「凄いな……こんなこと出来たんだ」メイファンは感心していた。「おもしれ〜。おいララ、それでララになったらどうなるんだ?」
「凄いよ〜」ララは楽しそうに言った。「身体交代しなくても動かせちゃう」
ハオは操り人形みたいな動作で立ち上がる。
「はははっ!」メイファンは面白がる。「ララが操縦するロボットみてーだ」
するとハオは急激に殺気を立ち昇らせた。
「おい!?」
ハオの掌打が想像以上の速さでメイファンの胸めがけて飛んで来た。
メイファンはそれを紙一重でかわし、遅れて『気』を纏う。
「アハハッ! メイ」ハオは言った。「あたしの操るハオさんに勝てるかな?」

609 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 23:14:54.10 ID:9fWqcOeO.net
リウは激しい物音にすぐ駆けつけた。
ハオが『施設』を飛び出して行く後ろ姿が見えた。
ハオの部屋に入るとメイファンが自分の腕を押さえていた。出血している。
「何事だ?」リウが聞く。
「ちっともわからん!」メイファンは答えた。「アイツ……本気で私を殺しに来やがった」

610 :創る名無しに見る名無し:2018/12/29(土) 23:20:38.61 ID:9fWqcOeO.net
「んー。もっと操縦に慣れないと」逃げながらララは歌うように言った。「二人が相手じゃとても敵わないと思う〜」
ハオはララが喋っている間は何も喋れなかったが、ララが言葉を止めたのでようやく喋れた。
「何? 何何何コレ!?」
「うるせー喋んなハオ號機!」
「ハ……ハオ號機!?」
「気分いいわ〜。自由サイコ〜」
「じ、自由!?」

611 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 05:32:16.55 ID:/pWikotR.net
(うわああぁあああああっ、助けてくれぇッ!)
ハオは体の制御が効かない現象と、徐々に自分が自分ではなくなっていく感覚に恐怖を抱き、声にならない悲鳴をあげた。

612 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 06:48:19.24 ID:oxo46bJJ.net
「思った通りだわ」ララが言った。
「何が?」ハオが聞いた。
「私達、相性抜群」
「そうかな」
「そうよ、だってハオさんの動きは格段に強くなったっぽく思うし」
「あ。素人目にもそれわかる?」
「それに私は難しい操作とかしなくても、ハオさんが格ゲーのキャラみたいに私をフォローして賢く動いてくれるし」
「なんか動いちゃうんだよね」
「何より押さえつけられてた日陰キャラ同士、怨念ぱわぁーが増幅よね」
「ごめん、俺、それはない」
「ハオさんがグズろうと主導権、私だし」
「うぅっ……」
「優しいだけだった私の白い『気』が、ハオさんと化学反応起こして青い『気』に変わったし。この子に『すべてを破壊する憂鬱』と名付けましょう」
「ううう……」
「それに……わかる?」
「わかってるよ」
「さっきからこの会話、口を使わずテレパシーでしてるのよ、私達!」
「頭の中で……声がする」
「あっ! お腹が空いた。お腹が空いたよ、私!」
「そりゃ昨夜から何も食べて……あれ。俺は空腹感じねぇ」
「感覚をどちらか一方が占有出来るみたい! 今まで私、食事はメイファンのをヴァーチャル体験出来るだけだったのに!」
「俺の口でメシ食っても、旨いって感じるのはララさんだけってこと!?」
「これからはララって呼ばないで」
「ぇ……」
「これからはララ・ラングレーと呼びなさい。あなたのパイロットよ」

613 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 08:01:26.92 ID:01L5XKUk.net
ハオはバナナの皮を剥いて食べ始めた。

614 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 08:32:49.06 ID:YwMWtqb9.net
いつになったら大恐慌編に行くのか

615 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 08:48:51.93 ID:01L5XKUk.net
外ではトランプ大統領の「大恐慌」作戦が進行し中華を蝕んでいたが
安全な施設内にいる、ララとハオにとってはどうでも良かった。

616 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 11:42:50.12 ID:h4prWkBw.net
「恐慌」って日本じゃ経済関係にしか使われないけど、中国語だと「パニック」みたいな意味だよね

617 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 17:31:22.72 ID:WQL6GbTK.net
ララはハオと同化が進む度に淫靡な声を出すと同時に
ハオもまた麻薬のような快楽に襲われ
アへ顔を晒した。

618 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 18:41:03.55 ID:YwMWtqb9.net
それがYouTubeにアップされたからさあ大変

619 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 19:08:10.97 ID:3YJxU4dv.net
ララはお腹が空いた、お腹が空いたと繰り返し喜んだ。
「何か食べましょう、ハオさん」
「んなこと言ったって俺、金ねぇよ」
「お金がないならカードを使えばいいじゃない?」
「カードなんか持ってねぇし」
「何てことでしょう!」
「どーでもいいよ。俺は腹減ってねぇし」
「カードを持たない人間がいるなんて!?」
「社会的信用ねぇんだよ」
「ではピンちゃんにお願いするしかありませんね。ハオさん、スマホをお貸しなさい」
「お前が突然家出したから持って来てねぇよ」
「では……今夜はどこで寝ればよいのですか……?」

620 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 20:06:21.54 ID:3YJxU4dv.net
「帰ればいいだろ」ハオは真っ当なことを言った。
「それは……」
「何意地張ってんだ?」
ララは暫く考え込み、キッと顔を上げると、ハオの身体もキッと上を向いた。
「とりあえずハオさん、ご飯を食べましょう!」
「だから金ねーって……」
「私達は『すべてを破壊する憂鬱』。破壊すればいいのですわ」
「は?」
「レストランへ入り、食事をし、社会秩序を破壊し、外へ出るのよ」
「あぁ……食い逃げ?」
「食い逃げという罪ですのね? では、レストランへ入り、食事をし、店主を殺し、外へ出るのは何と仰るの?」
「普通に殺人だろ」
「それをするのよ、お兄ちゃん」
「しねーよバカ」
「私達も殺し屋としての経験を積むの。メイから教えられたことを活かしてみなさい」
「殺し屋ってそんなセコい仕事じゃねーから!」
「いいからご飯屋さんに入るの! ほら!」
朝4時だった。西安の町は静まりかえっていた。たまーに労働者風のおじさんが歩いて通るぐらいで、マクドナルドすら開いていなかった。
しかし寺をライトアップする明かりに混じって、セブンイレブンの偽物のコンビニが開いているのが見えた。
「あそこに入って、お弁当とあったかい飲み物を買って、店員を殺して、出るの」
「そんなことで殺される店員さんが可哀想だろ!」
「やるのよ、ほら!」
ララがレバーを前に倒しながらAボタンを押すとハオは立ち上がり、コンビニへ向かって歩き出した。
「歓迎光臨(いらっしゃいませ)〜」黒縁眼鏡をかけたブサイクな20歳代の男の店員が一人、レジにいた。
ハオはまだ操縦され慣れないギクシャクとした動きで弁当と温かいお茶をなぜか2つずつ手に取ると、レジに差し出した。
「48元ね」
『殺すな! ララ! やめろ!』
身体の中で叫ぶハオを押さえつけてララは言った。
「フフフ……」
「? 48元よ。財布忘れたアルか?」
「体で払うわ!」
「ヒエーッ!?」
ララはハオのシャツを思い切り脱ぐと、自慢のフェロモンを大量発射した。男の乳首が店員を誘っていた。
「アイヤーーッ!!」
店員は思い切りカラーボールを投げつけて来た。ハオはひょいと避けた。
「お願い! お腹が空いてるの! お腹が空くって死にそうな気持ちなの! これで……これで」と言いながらララはハオのちんちんを見せた。「どうか!!」

621 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 20:35:07.42 ID:bD+F6+w9.net
ハオのちんちんはララとの同化が進行していたため
女性器にちんちんが生えた奇妙な形状に変化している。

店員はそのあまりのグロさに嘔吐した。

「い、今のうちに・・・!」
ララはお金を払わずに弁当を店から持ち去った

622 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 20:35:57.65 ID:bD+F6+w9.net
ハオのちんちんはララとの同化が進行していたため
女性器にちんちんが生えた奇妙な形状に変化している。

店員はそのあまりのグロさに嘔吐した。

「い、今のうちに・・・!」
ララはお金を払わずに弁当を店から持ち去った

623 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 21:40:11.75 ID:3YJxU4dv.net
「ダメだよっ」ハオは弁当とお茶を元の棚に戻した。

624 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 21:46:37.12 ID:3YJxU4dv.net
「ハオさん、ごめんなさい」ララは泣きべそをかいた。「ハオさんの大切なところを殿方の前にさらけ出してしまって……」
「いいよ」ハオはだんだん落ち着いて来た。
「しかも……あの方を……殺せなかった」
「安心したよ。ララが本当は狂ってなくて」
「そうでしょうか? 自分では十分狂ってると……」
「お腹が空きすぎておかしくなってただけだよ」
ララはハオの中でぽろぽろと泣きはじめた。
「私……お腹が空くというのがこんなにも辛くて絶望的なものだとは知らなかった……」
「お腹空いたことなかったの?」
「昔はあったんだと思う……。でも、いつからか、辛い感覚はメイファンが私から遮断するようになって……」
「辛い感覚?」
「うん。空腹とか、痛みとか、生理痛も……」
ハオはメイファンが全裸にナプキンだけつけてるとこなんか見た覚えがないけどな、と思いながら聞いた。
「あ、そうだ。そんなに辛いなら……」
「うん」
「その空腹、俺に預けちゃえよ」
「えっ」
「感覚をどちらかが占有出来るんだろ?」
「あっ……あぁっ! そうですね!」ララの声は元気を取り戻した。「私、お腹が空いた喜びに囚われて、つい占有してしまいました。えいっ!」
ハオは相当な空腹に襲われるのを覚悟していたが、やって来たのは『小腹が空いた』程度の感覚だった。
「凄まじく絶望的な空腹でしょう?」
「うん。これは凄い」
「えへへ。お兄ちゃんに押し付けてやった」

625 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 22:22:19.81 ID:3YJxU4dv.net
「でも、何か食べないとお兄ちゃんが死んじゃう」
ララは笑ったり悲しんだり忙しかった。やっぱりちょっと狂っているのかもしれなかった。
「お兄ちゃん、タダでご飯食べられる方法って、何かないの?」
「7時まで待とう」ハオは言った。
「7時になったらどうなるの?」
「たぶん、施しがある」
「施しって……わっ、私を誰だと思っているの? 表向きとはいえ、国家主席習近平の娘が、シモジモの者から施しを受けるなど……っ!」
「そんなんじゃねーよ」ハオは静かに言った。「まぁ、待て」

やがて冬の遅い朝陽が昇りはじめ、公園には人々が集まりはじめた。
老いも若きも、男も女も集まってゆっくりと太極拳の套路を始めた。
「ララ、身体を自由にさせてくれ」
ハオがそう言うと、ララは操縦モードをオートに切り替えた。
ハオも集団に混じって套路をこなした。
ゆったりとした時間の流れに包まれて、ララはハオの中で眠ってしまった。

しかし何だかいい匂いに誘われて目を覚ますと、目の前に熱々のお粥と肉饅頭があった。ララは叫んだ。
「お兄ちゃん! ご飯だ!」
「この大恐慌の御時世だからね、太極拳に参加すれば施しが貰えるところ、多いんだ」
「すごーい! お兄ちゃん! ご飯だ!」
繰り返してからララは、すぐにお腹の感覚を自分が占有し、オートモードを解除して操縦桿を握り、お粥を口に運んだ。
口をはふはふ言わせながら熱々のお粥を口に運ぶ。胃に流れて行く熱が心地よかった。気持ち悪かった空腹がだんだんと満たされて行く。
肉饅頭を齧ると肉汁が迸り、おっとっとと断面を上に向けてもちこたえた。塩胡椒の効いた豚肉と筍の慈味が身体に染み込んで来た。
「お兄ちゃん、ご飯って美味しいねぇ」見えないララの笑顔がハオには見えるような気がした。
ハオには味も満腹感もまったく感じることが許されなかったが、まぁ、いいかと思った。
「お兄ちゃん、ご飯って美味しいねぇ」
そうぶつぶつ呟きながら物凄い笑顔で肉饅頭を食べるもうすぐ30歳の男を見ないフリをしながら参加者は皆引いて行った。

626 :創る名無しに見る名無し:2018/12/30(日) 23:53:52.39 ID:W9eA6iRI.net
ハオは思っていた「ララといる時の俺ってイケメンじゃね?」

627 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 06:19:38.23 ID:f5Slofw4.net
ハオは体の異変に気がついていなかった。
それはおちんちんが消滅しつつあることだ。

なんだか声もおかしい、オカマ声ではなくララの声に近くなったような気がする

628 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 07:18:11.99 ID:IDyfozoU.net
邵紅虎(シャオ・ホンフー)はまだ42歳だが、誰が見ても50歳過ぎぐらいに見える。
ボサボサの髪に無精髭、左目は赤くいつも充血しており、右目は大きな縦の傷で潰されていた。
彼は遠く西安で故郷の四川料理の店を開いているが、料理店主は表の顔、裏では様々なことをやっていた。
依頼されれば殺しもやる。とある地下倉庫では、彼がリーダーとなってほぼ何でもアリのファイティング・クラブを開催していた。
単に素人同士を喧嘩させることもあれば、裏の殺し屋同士が技を競い合うこともあり、結果的に死者が出ればシャオが後処理をする。
その仕事だけで彼の懐は潤っていたが、そのことを隠す表の職業として四川料理店主をやっているのである。
彼は10年近く前までは散打の選手であった。
しかもただの選手ではなく、散打王とまで呼ばれた強者だった。
当時鳴り物入りでデビューしたリウ・パイロンという若者の必殺技、超低空アッパーが顔をかすめ、左目を失い、選手生命を絶たれたのである。
シャオの並外れた反射神経がなければ片目を失うことなどなかった。並みの者ならアッパーは腕に当たり、弾かれたところをリウ・パイロンは掴み、投げて試合を決めていたことだろう。
しかし紙一重で避けようとしたがために、リウの炎を纏うような拳はシャオの左頬をかすめ、まるで火の玉が通過したように眼球含めそこらの肉を焼いたのである。

629 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 07:29:25.42 ID:IDyfozoU.net
ララは街をハオに乗って歩きながらため息をついた。
「私、こんなに知らないことだらけだったのね」
「世間を楽しんだらお家に帰ろうぜ、お姫様」
ハオの言葉にララはむしろムキになった。
「何とかピンちゃんに連絡をとるわ。お金を何とかしてもらうの」
「オカマ声で電話するの?」
「とりあえずお兄ちゃんは何とかしてお金を稼ぎなさい。アルバイトとか……」
「大停電はいまだ続き、北京や天津のほうからこの西安にも職を失った難民が押し寄せてる。今はバイト先すら高き門だよ」
「そんなこと言ってお兄ちゃん、本当は働きたくないだけでしょうがっ」
「んなこたねーよ」
「とりあえずまた私、お腹が空いた」
「まだ11時だぞ」
「お腹が空いた。お腹が空いた。お腹が空いた」
「わかったよ」
「やっぱりレストランに入って、食事をした後、殺しましょう」
「嫌だよ」
「やるのよ! 私達は悪になるんだからっ!」
「聞いてねーよ」
「あっ。目の前にボロいお店がある! あそこなんか初殺しにピッタリじゃない!?」
ララはハオを操縦し、赤い看板のかかった薄汚い店へ入って行った。
看板には白い文字で『シャオ四川料理店』と書かれてあった。

630 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 08:07:31.74 ID:IDyfozoU.net
「いらっしゃい」
ハオが入って来たのを見るとシャオは読んでいた新聞を置き、低い声で言った。
『あれ?』ハオがララの中で言った。『何か見たことあるような……』
『知人のフリしてもダメですよっ』ララが叱る。『食べて、笑顔になって、殺すの!』
ララはカウンター席に座るとハオの声で四川麻婆豆腐と鶏肉飯を注文した。
「お客さん、台湾の人?」とシャオが調理をしながら聞く。
「いいえ。甘粛よ。なぜ?」
するとシャオは少し不機嫌そうになり、黙ったかと思うと、キレたように答えた。
「喋り方が女みたいだからだろうが」
『お兄ちゃん、この人怖い』
『な? こんな怖い人殺せねーだろ?』
『怖いから殺そう』
『それよりこの人に頼み込んでここに住み込みで仕事させて貰うという手もあるけど……』
『やだ。こんな怖い人と一緒に住めない。殺そう』
『……この店に人手がいるとは思えないしな』
『ね? 殺そう?』
そんなこと言っといてララに人は殺せない、たぶん食い逃げすることになるんだろうなぁとハオは思っていた。
「食え」
シャオはそう言って麻婆豆腐と鶏肉飯を連続でハオの前に置いた。
「え?」
「なんだ」
「麻婆豆腐……注文したん……ですけどぉ」
「それが麻婆豆腐だ」
『ゲ、ハオさんが吐いたゲロではないの、これ!?』
おそるおそる一口食べてみる。
『まっず!』
赤唐辛子をふんだんに入れたハオのゲロの味がした。
鶏肉飯もぞうきんを浸した汁の味が濃く、ララはどんどん殺意を燃え上がらせた。

631 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 08:49:48.64 ID:Rs7TC/B0.net
『なんだ?』シャオが睨んできた。『俺の料理が不味いとでも言いたげだな』
『いっ、いえ……あっ、そうだわ!』ララはいいことを思い付いた。
味覚をすべてハオに押し付け、自分は満腹感だけを味わった。
『糞まっず!』
嫌がるハオの口にはレンゲが無慈悲に運び続けられた。ハオの目にもシャオへの殺意か灯る。
「食ったか」シャオは言った。「食っちまったな?」
そして続けて言った「8000元(約12000円)だ」
ララとシャオは殺意の燃え上がる目で店主を睨んだ。

632 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 09:56:04.67 ID:Rs7TC/B0.net
シャオ「あっごめん間違えた。約12円ね。払え」

633 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 10:14:42.65 ID:TEqzuQ+s.net
ララとハオの感情がシンクロしたため
ララとハオの気の同化がより促進した。

ハオは発作的に湧き出る体の快感に
白目を剥き、目尻を下げ、口端を釣り上げ似ニタァとアへ顔をシャオに晒してしまった。

「ヒェッ!」
流石のシャオもその悍ましさに悲鳴をあげ、たじろいた。

なお、下半身の一部は既にララ(女性)化しつつあったが
ハオはまだ気が付いていない。

634 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 12:29:40.72 ID:Rs7TC/B0.net
「俺としたことが計算も出来ねぇのか……」
シャオは目を覆った。
「正確には日本円に換算すると12万8千と4百円な。さぁ払って貰おうか」

635 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 12:47:25.70 ID:0IrSFJmi.net
ハオ號機は軽い身のこなしでシャオ店員の手を躱すと そのまま外へ逃げ出した。
当然シャオも後を追う。

「待てーっ、食い逃げだーっ、誰かそいつを捕まえてくれー!」
シャオはハオ號機を追いかけながら叫んだ。

636 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 14:21:45.62 ID:yALZNHS7.net
しかし、シャオに加勢する者は誰もいない

637 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 18:08:46.64 ID:fdageKNZ.net
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
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   /  / ⌒  ⌒ | ほいさっ ほいさっ
  | /  (・)  (・) |
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   |   )  __ ∧λ/        ヽ      
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/ /|  。    。|| \   / ―┬‐i┘
\ \|    亠  \ \ ||  IIIIIIII| アヒィ!
  \⊇  /干\  |\   |___亅  
    |         | |   \__|_
   ( /⌒v⌒\__| |  ∨\__|  
パンパン|     丶/⌒ - - \
    / \    |  |     / |
    /  ノ\__|  |__三_ノ|  |
   /  /パンパン|  | ゚  ゚   |  |
  /__/     |  |      |  |
          ⊆ |     | ⊇

638 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 18:51:59.31 ID:Rs7TC/B0.net
「ったく……何やってんだジンチンっ!」
シャオが叫ぶと同時にハオの前方に巨大な風船のようなハゲ頭の男が出現した。
「ジンチン! 塞げっ!」
ジンチンと呼ばれた男は「もわー」と欠伸をすると2倍に膨らみ、狭い路地を塞ぎ行き止まりにしてしまった。
ハオ号機は追い詰められた。
「てめぇジンチン! 店の出入口を塞いどけっつったろーが!」
「すいませーん兄貴。飴買いに行ってたんですいませーん」
ララはハオ号機を操縦し、パンチの連打をジンチンの腹に食らわした。しかしぶよぶよのお腹はその攻撃をすべて吸い込んでしまい、まったくダメージを与えられない。

639 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 19:44:20.22 ID:WIr7Q0KF.net
シャオ「さぁ追い詰めたぜオカマ言葉のお兄さん」

640 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 19:46:27.93 ID:WIr7Q0KF.net
シャオ「払えねーってのなら身体で払って貰うぜ?
男色専門の娼夫になるか、ゲイバーで働くか、臓器を売るか。選べ!」

641 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 20:32:52.84 ID:se1nnDpO.net
そこへ紫色に塗装した110ccのホンダカブが突っ込んで来た。
乗っているのは紫色の髪をした黒いツナギの女だった。
「ズーラン!」シャオが女の名前を叫ぶ。「てめぇ!」
ズーランと呼ばれた女はアクセルターンでバイクを止めると、ハオに後ろに乗れと命じた。

642 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 21:36:13.61 ID:WIr7Q0KF.net
その頃、スケベ魔人の皆さんは、

643 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 22:32:44.18 ID:EzGeUSb1.net
メイファンの作る焼き肉の具材に大変身!

644 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 23:55:50.17 ID:BJdREtyP.net
謎の女ズーランはハオを乗せて逃げ去るかと思いきや、500mほど走った石畳の橋の上でまたアクセルターンをし、ハオを振り落とした。

645 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 07:44:52.08 ID:tA0Wtriz.net
ズーラン「新年快楽,豪(明けましておめでとう、ハオ)」

646 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 07:47:01.28 ID:tA0Wtriz.net
ハオ「ズーラン……紫然(ズーラン)……。ズズ? ズズか!?」

647 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 07:48:12.61 ID:tA0Wtriz.net
ズーランはハオの2つ年下の幼なじみであった。しかし会うのは11年ぶりになる。

648 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 07:50:15.82 ID:tA0Wtriz.net
ハオは紫然(ズーラン)のことを親しみを込めて紫紫(ズズ)、ズズはハオのことを豪豪(ハオハオ)と呼ぶ間柄だった。

649 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 08:42:48.09 ID:P9GAyYdG.net
「久しぶりね、ハオ。11年ぶりかしら」ズズは妖しく微笑んだ。
「一瞬わからなかった! すっかりいい女になったなぁ〜!」
「ハオは変わらないわね」
ズズは意味ありげに笑う。長い紫色に染めた髪が風にキラキラとなびく。口紅は真っ赤である。
胸は作りもののように巨きく黒い皮ツナギの前を膨らませ、引き締まったウェストに意外に小さなお尻。
『お尻だけは勝ったわ』ララは操縦席でお茶を飲みながら思っていた。
しかし広州のビルの屋上で聞いた話がララの頭の中でリピートされていた。ハオが素人童貞を卒業したのはシューフェンが相手だったはずだ。
ということは、この女性とは肉体関係がないか、あるいはこの女性がプロであるかだ。
しかし最後に会ったのは11年前だと言った。11年前、ハオさんは18歳? 目の前の女性は16歳だろうか?
16歳でプロだったとは、いくら中国でも考えにくい。
ララにはわかった。ハオさんは、意気地なしだったのだ。本当はすごくヤリたくてしょうかなかったのに、
意気地なしのまま童貞は卒業せず、高校を卒業してしまったのだ。

ララはハオの身体と同化することで、子供の頃からの夢がひとつ叶っていた。
昔からララは不思議でならなかった。なぜメイファンの身体には、おちんちんかないのかと。
習近平と一緒にお風呂に入る時、彼の身体の真ん中についているものが自分にはついていないのを見て、自分(メイファン)には本来あるべきはずのものが欠けていると思った。
10歳になった頃、自分は『女』なのだとようやく意識するようになり、カタワの自意識は薄れたが、
しかし11歳でリウ・パイロンにレイプされた時、恐怖と絶望とともに激しく感じたものがある。それは男根への憧れであった。
自分を容赦なく突き刺す暴力的権力的な棒力に、なぜこの恐ろしい力が自分にはないのだろう? と悔しかった。心が張り裂けるほどに悔しかった。
その力の象徴が今、自分の身体についている。早く誰もいないところへ行ってそれを思い切り触り、握り、何かに入れてみたかった。

『ハオさん』
『ん?』
『この人をレイプしましょう』
『は!? 今度は何を……』
『意気地なしのハオさんの思いを叶えてあげるの! おちんぽも喜ぶわ!』
ララは操縦桿を握った。ハオの身体がロボットのようにピシリと不自然に固まる。
「あら? ハオ、あなた……」ズズは目を細め、怪訝そうにハオの一挙一動を見る。
ハオはがしゃんガシャンと音を立てるようにズズへ向かって手を前に出しながら歩き出した。
ズズが急いでバイクのエンジンをかけ直す。
『やめろっ! ララ! ズズは……』
『ひゃっほうレイプでララも童卒〜』
『男なんだ!』
『おっとこおとこぉ〜……え。男!?』

650 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 09:05:28.04 ID:P9GAyYdG.net
ハオがガス欠したように動きを止めると、ズズはバイクのエンジンをまた止め、ハオの目を覗き込みながら言った。
「何かに取り憑かれているわね?」
そして前カゴにあったパールホワイトのハンドバッグに手を突っ込むと、片手いっぱいの塩を握り出し、投げつけて来た。
「悪霊、退散!」
「『ぎゃあ〜っ!』塩を投げつけられたララはナメクジのごとく小さくなり……ってそんなわけないでしょバシッ!」ララはハオの中でツッコんだ。
「退散したか?」ズズは緊張した顔で聞く。
「あ、うん。すっかりいなくなった」
ズズはほっと胸を撫で下ろした。
「趣味で退魔をやっていてよかった……」
「趣味でタイマ!?」
「ハオは相変わらずエロい顔してるわね」
「うん。あ! ところであのオッサン……追いかけて来ないな? あんまり離れてないのに」
「ええ。シャオの縄張りを出たからね」
「へぇ〜」
「ここからはあたしの縄張りよ」
「え! ズズってボスなの!?」
「まぁそんなもん」ズズはバイクのエンジンをかけ、言った。「あたしの家に来てよ。ハオのことだからどうせプー太郎でしょ?」

651 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 10:38:03.89 ID:06grf6Ty.net
しかし、早くララを追いださなければ
ハオのちんちんは消滅してしまうのだが
ララもハオもまだ気が付いていない。

652 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 13:37:17.20 ID:RLkBOwtJ.net
ズズの部屋は意外と地味だった。
白や赤やピンクや水色で溢れ、芸能人のポスターが部屋中の壁

653 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 13:57:29.62 ID:RLkBOwtJ.net
ズズの部屋は意外と地味だった。
白や赤やピンクや水色で溢れ、芸能人のポスターが部屋の壁中を埋め尽くしているメイファンの部屋を見慣れているララにはまるでオッサンの部屋に見えた。
ベッドと小さなテーブル、ソファー、ドレッサー、冷蔵庫、それとTVの他にはほぼ何もない。木の床に白い壁、木の扉。テーブルの上にはガラスの灰皿が置いてあるだけだ。
ズズは冷蔵庫から缶コーラを2本出すと、1本をハオに渡した。
「ようやく二人きりになれたわね、ハオちゃん」
ズズはそう言うと意味ありげに笑った。
「なんなら暫くここに泊まってもいいのよ? 宿泊代はその逞しい体でいいわ」
「げっ」ハオは思わずコーラを少し噴いた。
「可愛い。昔とちっとも変わらないわ」
「あのっ!」ララが喋り出した。「おちんちん、ついてるんですか?」
「まだ取ってないのよね」ズズは自分の股間をまさぐりながら言った。「タマは取ったわ」
ララは言葉を失った。ハオがまた喋り出す。
「やめろ俺は女の子が好きなんだ」
ララは言葉を失いながらも興味は津々だった。タマのないおちんぽってどんなもの? 入れる穴がないのは残念だけど、こんな綺麗な人なら見てみたい、ちんちんチャンバラを。
「ねぇ、ハオ」ズズは色っぽい目で言った。「あなたの口はやめろって言う。でも、あなたの身体はやろうって言ってるわ」
ハオの身体はやる気マンマンにズボンの前を膨らませ、ズズをまっすぐに見つめながらゆっくりと接近していた。
「私、どっちを信じたらいいのかしら」

654 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 16:40:01.27 ID:uWKRrAX1.net
「冗談よ」そう言ってズズはハオを両手で押し返した。「ハオなんか相手にするわけないでしょ気持ち悪い」
「ええっ? じゃあせめて、おちんぽ見せろよぉ」ララはハオの真似をした。「タマなしおちんぽ見せろよぉ」
「でもよくあのシャオの店から逃げ出せたわねぇ」
「あのひとこわかったぁ……」
「シャオのことはハオならよく知ってるだろうけど、あの用心棒のジンチンがまた厄介なのよ」
ズズは細い煙草を取り出すと、火を点けた。
「あんなアホみたいな顔してめっちゃ強いのよ。地下ファイトで1万元まで上がってる」
「地下ファイト?」ハオが聞いた。
「シャオが主催者でね、地下倉庫で賭けファイトをやってるのよ」
「金が貰えるのか?」
「相手の強さによって対素人1元(約16円)〜対王者1万2千元。王者はもちろんシャオよ」
「ふーん」
「ハオも出てみる?」
「いや興味ねーし、帰ってぃやいや相当興味ありますそれ! 出る! 出る! 出てみたい!」
「……どっちなのよ」
『ララっ! 俺は帰ってシューフェンの葬式に出なけりゃいけないんだっ!』
『出なくていいじゃん! お兄ちゃん関係ないじゃん!』
『関係ないことないだろ!』
『だって取られたじゃん! お兄ちゃんのじゃないじゃん!』
『でも最後に……』
『最後にシューフェンお姉ちゃん看取ったのリウ・パイロンじゃん!』
ハオは何も言えなくなってしまった。
「急に黙り込んで一点を見つめ出して……何よ」ズズは不気味そうにハオを見る。
「出ます」ララは言った。「どうしたらいいですか?」

655 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 16:52:18.20 ID:uWKRrAX1.net
「まずは変装ね」ズズは言った。「シャオの奴、執念深いのよ。アンタだと知ったら何が何でも今日の食事代、払わせるわ」
「変装かぁ」ララは言った。「ちょっとやってみる」
「やってみる?」
「ちょっとお化粧室貸してくださいね」
「どうでもいいけど、アンタ、あたしの言葉遣い、うつった?」
ララはハオを操縦して化粧室の鏡の前へ行くと、自分の姿をまじまじと見た。
まじまじと見るまでもなく見慣れたハオの姿だった。
「まだ、やってみてなかったのよね」
「え?」ハオは意味がわからず聞いた。
「メイと身体を入れ替わった時、全然違う姿に変身したでしょう?」
「えっ」ハオは何だか嫌な予感がした。「まさか……」
「ハオさんの身体でララになったら……どうなるかな」
「嫌な予感がする! キモい予感がする! やめてくれ!」
「女っぽくなって、弱くなっちゃうのかなぁ」
「うぁぁぁ何か見たくない! 目を瞑らせてくれ! 無理か! いやぁぁぁ!」
「えいっ!」

656 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 18:38:04.86 ID:uWKRrAX1.net
「ォェェェェ……」
「ォェェェェ……」
二人分のゲロを吐きながらハオは戻って来た。
「どっ、どうしたの?」ズズが驚く。
「ダメだわ。あれはダメ……」ララはこの後しばらく後遺症に悩まされることになる。
「やっぱり普通に変装するしかなさそうね」

657 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 22:34:44.07 ID:fr2Duuuw.net
街外れの地下倉庫にハオはやって来た。
案内役はズーランの舎弟でジェイという20歳のイケメンだ。
鉄の階段を降り、重い扉を開けるともう100人を超える人で賑わっていた。
周りには酒や料理を売る屋台がいくつか並び、様々な客層が取り囲む中心には金網が設けられていた。

ジェイが説明する。
「あの金網の中でファイトすんねん。ファイターは素人からプロまでピンキリや」
「方言きついな。出身どこ?」
「東京や」
「日本人!?」
「ファイターは勝てば相手の強さに応じたファイトマネーが貰える。相手がプロなら勝てる見込みは少ないけど勝てばガッポガッポや。
逆に素人なら勝ちやすいけど、勝っても1元ぐらいしか貰えへん。まぁ、それでもやる価値はあるからな」
「価値?」
「観客はどっちが勝つか賭ける。ファイターも自分にのみ賭けることが出来る。対戦相手に賭けることは出来んルールや。
自分に大金賭けて、頑張って勝てば、何倍、何百倍になるからウハウハや」
「へぇ……でも……」
「もちろん八百長は多い。ごっつ多い。半分ぐらいは八百長ちゃうか?
仲間に相手に賭けさせといてわざと負ける。おまけに対戦相手もグルやから痛い目にも遭わん。ま、やり過ぎるとシャオに目ェつけられるけど」
「なるほどね」
「そのシャオでも八百長はよくやる。素人相手にわざと負けたりする。相手のオッズがごっつぅ高くなっとると、儲け時やからな。
まぁ、賭けにならんほどシャオが強すぎるゆーのもある。これから行われる試合がガチか八百長か予想するのもこのゲームの楽しみ方や」
「あ、一戦目が始まるな」
金網の中にヘッドギアとグローブをつけた二人のオッサンが入った。どう見ても二人とも素人だ。
ゴングが鳴ると、二人とも猫のように相手を威嚇しはじめる。
「コノヤローッ!」
「ざけんじゃねーぞッ!」
「部長が何だボケのくせによー!」
「俺はお前の宿主じゃねーよ寄生虫がッ!」

ハオは少し呆れながらそれを眺める。
「明らかに目の前の相手に対する威嚇じゃねーな……」
「たぶん、ハゲのオッサンは会社の部長、ヒゲのオッサンは奥さん相手やね」

ハゲが仕掛けた。腰を引かせながらおっかなびっくりのパンチで様子を窺う。
ヒゲは必要以上にビビり、足で追っ払おうとする。
こんな試合でも観客は大盛り上がりだ。
「ハゲー! お前に70元賭けてんだー! かませー!」
「ヒゲー! 負けやがったら賭けた80元返して貰うからな!」

「ストレス解消でファイトに参加してる奴も多いの?」ハオが聞く。
「ま、素人はほとんどやね」ジェイは答えた。「こんな風に誰かと思い切り殴り合える機会なんてなかなかないしね」

ハゲが大振りのフックっぽいパンチを放つ。ヒゲはビビりまくって足を滑らせ倒れた。そのうえにハゲが馬乗りになる。
「あちゃー。ルールちゃんと聞いとんのかいな」ジェイが目を覆った。
金網の外からレフェリーがハゲの反則負けを言い渡した。
「倒れた相手への攻撃はすべて禁止や。特に馬乗りは一発負け」
「メモメモ」
「まぁ、基本的に散打ルールやと思っとったらええわ」
「ほう」ハオはちょっと乗って来た。「散打王を目指す俺様に相応しい舞台だな」

658 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 22:45:42.73 ID:lsSTaPzA.net
「にしてもメイファンとかいうちょっと微妙な見た目の子、最近見ないな」
とジェイが話題を振ってみる

659 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 22:47:59.98 ID:fr2Duuuw.net
「ま、参加登録しとこ。こっちへ」
ジェイについて行くと試合参加窓口があった。対戦相手はお任せにすることも、指名することも出来るようだった。
「えーと対戦相手にジンチンを指名したい」
「いきなりそいつぁ出来ねーよ」
狭い窓口の向こうをよく見るとシャオ・ホンフー当人が受付をしていた。片目でギロリと睨んで来る。
『大丈夫だ、俺の変装は完璧だ』
「初めてだろ? まずランクの低い奴とデビュー戦済ませてからじゃねぇと高ランクとの試合はやらせねぇ」
「あ、そうなの?」
「なんかそのマヌケな喋り方、聞き覚えあんなァ……」
「あああののの。じゃあ、お任せで」

660 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 23:09:51.27 ID:fr2Duuuw.net
4戦目、ハオのデビュー戦がやって来た。

「はいはい皆さん静粛に騒げー」シャオの舎弟の『爆発頭』がマイクを持つ。「4戦目、こいつが最後の素人バトルだー」
スキンヘッドのいかつい体格をした対戦相手が金網に入った。
「皆さんご存知、最強の素人ー! 本業は日雇い労働者、殺人チョップの柳! 雲平〜!(リウ・ユンピン)」
柳はリウ・パイロンの真似なのか、グローブを頭の上で何度も打ち鳴らした。
「はい、御愁傷様〜。対戦者は本日デビューのマスクマン、その名も……ブルー・リー〜〜〜!」
青い仮面をつけ、青いハンチング帽を被ったハオが金網に入る。面倒臭いので登場アクションは何もやらなかった。

「ハオはん、負けられまへんで」ジェイが呟く。「っていうかパンチ一発でも貰たら仮面も帽子も取れて、シャオにバレバレやでぇ」

661 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 23:13:57.00 ID:fr2Duuuw.net
『お兄ちゃん、合体後の初ファイトだねっ』ララがウキウキした声で言う。
『おう、しっかり操縦してくれよ』
『任しときっ!』ララは張り切って操縦桿を握りしめた。
ハオの全身を青い『気』が包み込む。
果たしてそれが見えた者が会場内に一人でもいたであろうか?

662 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 23:38:21.29 ID:fr2Duuuw.net
「お兄さん、マスクマンとは珍しいね」柳が言った。「何か顔出しできないワケが?」
「まーね。本当はすっぽり被れるマスクとかあればよかったんたけど」
ゴングが鳴った。
「ズズの部屋にこれしかなくて……。仮面舞踏会みたいなヤツ。まだストッキングでも被って来たほうが……あっ」
ハオはいつの間にか柳にタックルされ、腰を掴まれていた。
「ちょっとタンマ。お喋り中に攻撃して来るなんて卑怯だよぅ」
柳がハオを持ち上げる。
「ララ、ごめん。床に叩きつけられて終わりだわ、これアッハッハ」
柳がハオを床に叩きつける。
しかしハオは柔らかく身体をしならせると、床に手をつき、相手の力を利用して足で柳の身体を逆に投げ飛ばした。
「ぐへぇっ!?」
予想外の一発KOに会場はしんとなり、とうやらハオに賭けていたらしい女の子が喜んで騒ぐ声だけが響いた。
「万馬券出たかな?」ハオはしんとする会場へピースサインで応えた。「返し技、捌きのことならこのリー様にお任せ〜」

663 :創る名無しに見る名無し:2019/01/01(火) 23:44:09.03 ID:fr2Duuuw.net
「ほらよ、ファイトマネーは2000元(約3万2千円)だ」
窓口に行くとシャオから直接金が渡された。
「なかなかいいファイトだったぜぇ」
「じゃあ、続けてジンチンと……」
「1日複数ファイトはやらせてねぇ。また明日、来な」

664 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 06:00:55.69 ID:FNnmSrxg.net
「あれ、お前さっきあわなかった?」

665 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 06:54:46.98 ID:GXqQe+kP.net
続いてプロが舞台に上がる。
現役格闘家、軍人、不良警察官、そして殺し屋などである。

666 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 15:24:06.86 ID:EnR0ALhx.net
「プロとか言っても2流3流ばっかだなぁ」
ハオは次々と出て来る怪しげな武術家や格闘家の試合をネギ餅を食べなから観戦した。
「しかもジェイの言う通り半分ぐらい八百長だな」
少林寺の拳士みたいな格好をした男が波動拳みたいなのを放つと、いかにも私殺し屋ですみたいなオッサンが吹っ飛ばされる。
しかしそういうインチキ臭い試合ほど観客は喜び、沸き上がった。
「さて」ジェイが言った。「メイン・イベントやでぇ」
金網の中にデブが入る。爆発頭がマイクを持つ。
「お待たせしましたぁ〜! 最強のデブ、ぶよぶよ戦士、このアホ面に騙されるな! 永遠のNo.2ファイター、ヤォバイ・ジンチン〜〜〜!」
「フルネームそんななんだ?」ハオは呟いた。
「ボクら日本人には『ヤバいちんちん』にしか聞こえへんですわ」ジェイが告白した。
「本日の可哀想な挑戦者はこのジジイだ! 飲めば飲むほど強くなる! 酔拳使いの老いぼれヒットマン、福山酒鬼(フーシャン・ジョウグェイ)〜〜〜!」
赤いマスクをつけた老人がおどけた踊りを躍りながら現れ、金網の中に入った。
「あれ?」ハオが驚く。「あれって、ジャン・ウーじゃ……?」
「ウーちゃんだー」ララが認める。「頑張れー」
「あのジジイ、メイファンが殺さなかったっけ?」
「ウーちゃんはそういう人なの。死んだと思ってたらいつの間にかまた一緒にご飯食べてる、みたいな」
ゴングが鳴った。
まずはジャン・ウーが腰につけた徳利の酒を飲む。それを眺めながらジンチンはポケットからベビースターラーメンを取り出し、口に流し込んだ。
「ふざけたメイン・イベントだな」ハオが不機嫌そうに言った。
酔っ払った足取りでジャンは相手の攻撃を待つ。ジンチンはぐるぐる飴を取り出し、舐めはじめる。
観客は大いに沸き上がった。
「これによく沸き上がれるな……」ハオはイライラしはじめた。
仕方ないという風にジャンは懐からウィスキーの小瓶を取り出し、あおる。負けじとジンチンは懐から2lペットボトルのコーラを取り出し、あおる。
「帰ろう……」ハオは上着を着ると、立ち上がった。
するとジャン・ウーが仕掛けた。ハイヨーと叫ぶとドラゴン・キックでジンチンの頭めがけて突進する。
しかし立っていると誰もが思っていたジンチンは実は座っていた。立ち上がったジンチンの胸にキックはめり込み、ジャン・ウーの姿はジンチンの体内にずっぽりと飲み込まれた。
「ぅぉー」
やる気のない掛け声とともにジンチンは前へ倒れ、ボディープレスを仕掛ける。
どぱーんという波のような音とともにジャン・ウーは潰れた。そのままジンチンは寝続け、やがてレフェリーがジンチンの勝利を告げた。
「は? ダウンした相手にのしかかるの、反則じゃ……?」
「ダウンした相手にボディープレスはあきまへんけど」ジェイが解説する。「ボディープレスで押し潰した相手にのしかかり続けるのは反則やありまへん」
「うーん……」ハオは少し悩んだ。「ま、俺がアレに負けることはないから、いいか」

667 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 15:34:49.32 ID:EnR0ALhx.net
「おい、お前」と背後から声を掛けられ、ハオが振り向くとそこにシャオ・ホンフーが立っていた。
ハオがビビって逃げようとすると首根っこを掴まれた。
「ななななんですかー?」
「明日、アレに挑戦するんだろ?」
「ははははい、そのつもりですが……」
「じゃあ明日、18時までに来い。話しとくことがある」
「わわわわかりました」
シャオは片目でニヤリと笑うと、低い声をさらに低くして、言った。「待ってるぜぇ」

668 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 16:32:55.43 ID:lLGb1eaL.net
その夜、ハオは夢を見た。
ララが自分の身体から抜け出て、夜なべをして何か縫い物をしていた。

669 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 17:41:46.95 ID:9JqXY8wl.net
死の腹巻である。
とある要人を倒し、彼が持つ鍵(解毒剤)を入手し呪いを解除しないともれなく死が訪れると言う品物なのだ。
タイムリミットはわずか1週間、どうする!?

670 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 18:18:56.35 ID:EnR0ALhx.net
そんな夢から朝目覚めると、枕元に青いマスクが置いてあった。顔をすっぽり覆えるタイプだ。
「ララ……作ってくれたのか?」
ハオは聞いたが、ララはぐっすり眠っていた。
手に取り、よく見ると、目だけが出せるように綺麗に裁縫されており、鼻と口の部分には息苦しくないように薄いメッシュの布が当ててあった。
額にはパステルカラーで『豪(ハオ)』の一文字が刺繍されている。
「……これは……ちょっとなぁ……」

671 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 20:40:29.37 ID:+xR6pcRm.net
これはアザといwww

672 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 20:59:41.88 ID:RSm9Gcxt.net
朝7時、ハオはまた昨日の公園にやって来た。
太極拳の套路を集まった皆で行い、終了後、食べ物を貰うのだ。
体操太極拳と違い、正しい型を正しい順序で行う伝統的な套路ゆえ、食べ物目当てのホームレスなどは来ない。
鳩も集う公園で、ハオはゆっくりと皆と同じ動きをする。

「やっぱりここのご飯が一番美味しいね」
ララは笑顔でモォー(中華バーガー)にかぶりついた。
「ララ、マスク、ありがとな」ハオは味覚も満腹中枢もララに全部預け、言った。
「いいってことよー」ララは肉汁を啜りながら答える。「あれ被って頑張って」
「ただ……」
「あの額の刺繍が一番苦労したんだよー」ララは得意そうに言った。
「あの額の刺繍は……」
「カッコいいでしょー? 自慢したくなるでしょー?」
「なんか……何て言うか……正体バレそうで怖いっていうか……」
「え」
「……」
「文句あるわけ?」
「……いえ。有り難くキン豪(ハオ)マンやらせていただきます」

673 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 21:33:27.23 ID:RSm9Gcxt.net
本当は『施設』に帰ってシューフェンの葬儀に出席したいのに……そう考えながらハオがズーランの部屋へ帰ると、ズーランはまだ眠っていた。
そういえば昨夜帰った時、まだ仕事から帰ってなかったっけ。1時に寝たけど、何時に帰ったんだろう?
っていうかズズの仕事って何?
そう思っていると、ハオの気配でズーランは目を覚ました。
「おはよう、ハオ。早いのね」
寝起きのズーランは綺麗な顔をしているが、やはりスッピンだと男である。しかし寝間着はセクシーな紫色のランジェリーだった。
「朝ご飯、食べた?」
「うん。もうララと食べたよ」
「……ララって誰」
「ああ……。犬、犬。昨日知り合った野良犬」
「相変わらず動物の友達だけは多いのね」
ズーランは昨夜仕事帰りに買っておいたらしいサンドイッチを出すと、コーヒーを入れ、食べはじめた。
「アンタのも買ってあるけど、食べる?」
「おう」
二人はテーブルを挟んで黙々とサンドイッチを食べた。東向きの窓から爽やかな冬の陽射しが差し込んで来る。
「昨日何時に帰ったの?」ハオが聞く。
「朝の4時半だったかしら」
「何の仕事してんの?」
「歌手よ」
「歌手!?」
「夜のお店で歌ってんの。自分のお店でね」
「……え。男の歌?」
「歌姫に決まってんだろ」ちょっと男らしい喋り方になった。
「歌オネェじゃねーの……?」
「ハオも今度聞きに来なさいよ。失礼な口を黙らせてあげる」
「ファンとか多いの?」
「本当に失礼な幼なじみね」ズーランは思い出したように言った。「そうそう、口止めしとくわ」
「口止め?」
「アタシの元の性別のこと知ってるの、アンタだけなの」
「元とか言うな、サオあるくせに」
「舎弟も敵対勢力も、皆アタシのこと女だと思ってる」
「バラし甲斐があるな」
「バラしたら殺すわよ」ズーランは本気の目をしてハオを睨んだ。「アタシが女だからこそ今の力関係が保たれてるんだから」
「力関係?」
「特にシャオのところ。武力でいえばウチはシャオ一家にはとても敵わないわ。シャオとジンチン二人で簡単に全滅出来るわね」
「お前がルックス基準で舎弟選んでるからじゃね?」
「そう。だけど、それでもシャオがちゃんと縄張りを守って攻めて来ないのは、なぜだと思う?」
「まさか……」
「惚れさせてんのよ」ズーランは男の顔で色っぽくウインクをした。「こんなにいい女、滅多にいないもんね」

674 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 22:06:42.24 ID:RSm9Gcxt.net
「操縦訓練、開始しまーす」
ララの掛け声とともにハオはロボットのようになる。
人通りの疎らな寺院の裏のひっそりした庭で、ララは操縦桿を引きながらボタンを連打した。
「誰が犬だーーー!」
ハオの身体は千切れるような動きを繰り出す。
「痛い痛い! 無理無理それムリ!」
「キャハハハ面白ーい!」
ハオは脚を高く振り上げながらもう片方の脚で回し蹴りをしながら掌打をキメた。
「おかしいおかしい! こんなの人間の動きじゃねぇ!」

中断して二人はバナナを食べながらミーティングを始める。
「ララさん」ハオが不機嫌そうに言った。「武術の経験はおありで?」
「うーん。格ゲーならそこそこ」
「言っとくけど俺、波動拳も昇龍拳も出せないから」ハオは釘を刺した。「パワーゲイザーもレイジングストームも無理だから」
「浮かせてからのコンボとかは?」
「あーのね……」ハオは頭を抱えた。「ララいないほうが俺、強い気がする」
「リウ・パイロンに勝てるほど?」
「うっ」
「ラン・メイファンに勝てる?」
「あいつらホラ、大怪獣みたいなもんだから……」
「メイが言ってたよ。ハオさんは素質は凄いけど、やる気、気力ゼロだって」
「そんなことはない」
「3分で最強になれる方法があるなら欲しい?」
「そりゃー欲しい!」
「ダメじゃん」
「何がダメなんだ??」
「とりあえず……初心に戻ろう」
「初心?」
「あたしがハオさんの身体を乗っ取ったのは、あたしに強い『気』があって、でも強い肉体がなくて……」
「あっ。そう言えば俺、ララに肉体乗っ取られたんだなぁ。ハハ……」
「あたしはハオさんの身体が欲しかったの」
「なんかイヤらしい言い方だな……」
「あたしの『気』の力と怨念パワーが、ハオさんの肉体に宿れば、最強の怨念戦士が産まれるはずだった……」
「ハハハ、そうなの?」
「なのに何よ、コレ!? どうやったら怨念戦士になれるの!?」
「ならなくてもいいと思うよ〜」
「あたしの怨念が弱まってるの? ハオさんに流されてあたしまでのほほんになっちゃってるの? いけない! このままじゃいけない!」
「まぁ、いいからバナナ食べようよ」
「キシャァーッ!」ララは吠えた。「まずは今夜あのデブ血祭りに上げて殺戮ショーの始まりじゃー!」
「ハハハ。元気がいい妹だなぁ」

675 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 22:54:56.78 ID:RSm9Gcxt.net
18時ちょっと過ぎて地下倉庫に行くと、シャオ・ホンフーは中華鍋を振りながら待っていた。
「おう、来たかマスクマン」鍋を置く。「ちょうど青椒肉絲できたところだ。食うか?」
「遠慮しときます」
「まぁ、クソまずいからやめとけ」
「えっ」
「畜生。どうやったら料理うまくなれるのかなぁ……」
「クソまずい自覚、あったんだ……」
「まぁ座ってくれ」

シャオは煙草に火を点けると本題に入った。
「今日、ジンチンと闘りてぇんだよな?」
「はい」
「お前が勝て」
「もちろんそのつもりです」
「そうじゃねェよ」シャオは片目でハオを睨みつけた。「お前に勝たすって言ってんだ」
「は?」
「昨日の柳倒したんで客はお前の強さに注目してる。一気にスター戦士になってくれ。ジンチンに負けさせりゃそれが決定的なものになる」
「あの?……」
シャオは傍らのTVを点けた。
「いいから遠慮せずに勝たせて貰え」
「いっ、いや、俺はですね、本気でやって、本当に勝ちたい……」
「てめェが本気でやってジンチンに勝てると思ってんのかコラ?」シャオは少し声を荒らげた。
「……ごめんなさい」ハオは小さくなってしまった。「勝たせていただきます……」
「まぁ、詳しい段取りは後でジンチン本人としろ。たぶんコーラをぐい飲みしてるところを足を掬えとか言うだろうな」
「はぃ……」
「ジンチン倒せば1万元だが、八百長だから勿論ファイトマネーはなしだぜ」
「ええっ!?」
「自分にカネ賭けとけ。ジンチン人気になるのは間違いない。20倍にはなると思う」
「はぁ……」
「その代わり500元以上買うな。オッズが不自然になる」
「へぇ……」
「お前にはスターになって貰う」シャオは見ていたTVからハオへ振り向いた。「仲良くしようぜ」
「エヘヘ……」
「とりあえずまぁ、顔見せろや」
「えっ」
「お互い隠し事はなしだ。大体、なんで顔隠してやがる?」
「その……」
「見せらんねェのか?」シャオはこれで脱がなけりゃ殺すと言うように睨んだ。
ララが言った。「脱ぎます」
『おっ、おいララ!?』ハオは慌てた。
ララは躊躇いもなく青いマスクを脱ぎ捨てた。その時にはもう顔だけララが身体を交代していた。
「オゲッ……」ララの顔を見てシャオが言った。「オゲェェェェ……!」
ララはにっこりと笑った。
「いっ、いっ、いいから、わかったから、早くマスクを被りやがれ!」
ララはにっこりとしながらマスクを被り直した。
シャオは大きく息をし、吐き気を収めると、言った。
「なるほど……そりゃ、その顔じゃ被り物するわけだ」
ララはにっこりと笑って聞いた。
「お前、よくその顔でこれまでの人生、生きて来たなぁ」シャオが憐れみたっぷりの目でララを見る。「苦労したんだろうなァ……」
ララはにっこりと笑いながら、美少女と呼ばれて生きて来た21年の歳月がガラガラと音を立てて崩れて行くのを感じていた。
「まァ……人間、顔じゃねェよ」シャオはTVを見ながら言った。
TV画面には細面の美人女優が映っていた。
「美人なんて何の価値があるんだ? ツラの皮が整ってるだけのことに何の価値がある?」
「いえ、美人とは骨格のことだと……」ハオはどこかで聞いたうんちくを披露しようとしたが、シャオに無視された。
「美人なんて俺は興味がねェ。それより、歌だ。美しい歌には嘘がねェ。心動かす価値がある」
「あっ……」ハオは逃げたい気持ちでそれを聞いた。
「その上でその女が美人なら、俺にとって美人は初めて価値のあるものになる。なァ、今夜、ファイトが終わったら付き合え。最高の歌手のいる店知ってんだ」

676 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 22:57:02.81 ID:RSm9Gcxt.net
「ところでその額の『豪』って文字、何だ」
「豪快の『豪』……かな。なんちゃってー」

677 :創る名無しに見る名無し:2019/01/02(水) 23:47:45.24 ID:eITiRv4g.net
ジンチンは打ち合わせ通り天井を仰ぎ、コーラを飲みはじめた。
ハオはテキトーに大袈裟なアクションの下段蹴りでその足下を掬う。
ジンチンはーざとらしく後ろにぶっ倒れ、なぜかそれで気絶してしまう。
「なんだかなぁ……」ハオは呟きながらガッツポーズをして見せた。

678 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 00:11:17.01 ID:yurNQMtE.net
八百長試合だたアルよ。
しかしこれには男山根がだ黙っていない

679 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 00:31:53.26 ID:5qT4g+8O.net
山根会長「われ、デブ勝たさんかい、ボケ、カス、デブ」

680 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 00:45:57.39 ID:5x4A6joH.net
「だっ、誰がデブだゴルァァ!!!」メイファンは激怒した。

681 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 00:54:36.39 ID:5qT4g+8O.net
山根会長「反応した奴がデブじゃ、われ」

682 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 08:29:45.05 ID:z7W/Dp/Q.net
西安の駅から少し歩いた路地裏にナイトクラブ『Purple Marble』はあった。
立ち飲み屋で既にいい気持ちになっているシャオは、マスクを被ったままのハオを連れてやって来た。
入口に立っていたズズの舎弟で23歳のワイルド系イケメンのティエンが、ハオを見て言った。
「お客様、被り物は困ります」
「おいテメェ、俺の顔を知らねェのか」
「いくらシャオ様のお連れ様でも、ルールですので……」
「この国でルールだマナーだぬかすのはお前ぐらいだ。入るぞ!」
強引に店に入ると、目が眩むほどのLEDと重低音にいきなり囲まれた。
「うきゃ、何コレ」ハオが慣れないサイバー空間にたじろぐ。
ステージではズーランの舎弟らしきイケメン5人組が揃いの衣裳で歌い踊っている。
「VIP席だ」シャオが注文すると、意外にもステージ最前列ではなく、袖の少し落ち着ける席に案内された。
ホステスが二人やって来て、それぞれの隣に付く。
「えー。お客さん、なんでマスクしてんの?」
「深ェ理由があんだよ」シャオが涙まじりに言う。「人間じゃねェ顔して30年、生きて来たんだコイツは」
「えー。見たい見たい」
「見たーい」
「見せてやってくれるかい?」シャオはハオに言った。「辛いだろうが……」
ララは拒否していた。ハオはシャオに顔が見えないようにマスクを脱いだ。普通にハオの顔をホステス二人は見た。
「あぁ……これはー……」
「うん。確かに可哀想……」
ホステス二人が絶対吐くだろうと思ってビニール袋を用意していたシャオは、意表をつかれた。
「強いな、お姐さん達……」

683 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 08:59:44.85 ID:z7W/Dp/Q.net
店内が静かになると、ピアノの旋律が静かに流れ始めた。
「来たぞ」シャオが興奮して身を乗り出す。
お姫様のような紫色のドレスを着てズーランが右袖から登場し、伸びやかな高音で歌いはじめた。
「どうだ? どうだ?」シャオが得意そうにハオに言い、はしゃぐ。「素晴らしいだろう!?」
アップテンポの曲になるとシャオは立ち上がり、率先して手拍子を打つ。
やがてまた美しいバラードになると心を奪われたように席に沈み込み、人目を憚ることなく涙をダバダバと流した。
「うーん……これ、口パクじゃないのかなぁ」と思いながらもハオは黙っていた。
歌い終えたズーラン・ママは、挨拶の言葉を述べ、お辞儀をするとステージから姿を消した。
「やっぱり最高だ」シャオはまだ泣いている。「女の中の女とはあのことだ」
「ふーん」
「ところでお前! えーと……名前何だったかな?」
「リーです」
「リー何だ」
「リー・ラーラァです」
「きゃりーぱみゅぱみゅみたいな名前だな」
「よく言われます」
「ところでリーよ。さっきの歌手、ズーランの部屋に最近、男が寝泊まりしているという噂を聞いたんだ」
「えっ」
「俺は縄張りを侵せねェから確かめようがないんだ。お前ならウチのファミリーじゃねェから自由に調査できる」
「えっ……と」
「どうやらその男、前に俺の店で食い逃げしやがった野郎っぽいんだ。捕まえて来て俺の前に差し出してくれねェかな」
「あの……?」
「大丈夫だ。殺すのは俺がやる」シャオは眉間に深く皺を寄せ、ニタァと汚い歯を剥いて笑った。「ギッタギタに引き裂いて殺してやる」

684 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 09:15:27.69 ID:z7W/Dp/Q.net
そこへズーランがやって来て、向かいに座った。シャオがズーランに赤ワインを注ぐ。
「今日も素晴らしかったぜ、ズーラン」
「ありがとうシャオ。あなたのお陰でお店も大盛況よ。あら?」
ズーランはハオに気づいたようだった。ハオは慌てて「言うな言うな! 何も言うな!」とジェスチャーでアピールする。
「ところでズーラン、お前の歌が素晴らしいのとは別の話として、この間の食い逃げ野郎、やっぱり引き渡してくれねェかなァ」
「彼は私の幼なじみなの。許してあげてってば」
「いくらお前の頼みでも許すわけにいかねェし、お前に立て替え請求したくもねェ。俺のメンツが許さねェんだよ」
「もぉっ……!」ズーランはシャオの隣に移動すると、逞しい腕を細い指でツンツンした。「お・ね・が・い」
シャオは一瞬流されかけたが、持ちこたえると言った。
「まぁ、いい。こちらのマスクマンが何とかしてくれるさ」ハオの膝をバシッと叩く。「なァ?」
「ハハハ……」
その様子を少し離れたところから色の黒い女性がじっと見ていたが、ハオもララもまったく気づいていなかった。

685 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 13:12:32.43 ID:D5E8zthR.net
ズーランのアパートの屋上で、ララは星を見上げて呟いた。
「ぅぅ……帰りた……」
途中まで言って、言葉を飲み込んだ。
「なんだ? 遂に弱音が出たか?」ハオが突っ込む。「ララはシスコンだから辛いだろうなぁ」
「シスコンなんかじゃありませんよーだ……」
「いっつも思ってたけど、メイファンのほうがお姉さんみたいだもんな。ララはいっつもメイファンに頼ってばっかだもんな」
「メイは……」ララは星を見ながら言った。「優しくて、強くて、尊敬できる妹ですよ。でも……」
「でも?」
「メイの決めたことにどうして私まで従わないといけないの?」
「ララも主張すればいいじゃん」
「主張してる。でも私の思い通りになったことなんて、一度もない」
「一度も……ねぇ」
「だって私が表に出ていても、必ずメイが中から見ているから。私のすることを見張ってる。耐えられない……」
「逆もなんじゃねーの?」
「え?」
「メイファンが表に出てる時、ララにいっつも見られてるって思ってんじゃねーの?」
「でも、あの子は自由だから……」
「ララも自由になればいいじゃん」
「ハオさんにはわからないわ!」ララは怒り出した。「ハオさんなんかウンコになって消えてしまえばいいのに!」
「ウンコかよ……」
「フン」ララはそっぽを向いた。
「ララ……」
「ハオさんが帰りたいって言っても私が身体の操縦権持ってるんですからね」
ララは続けて言った。
「強くなって、リウ・パイロンを殺し、ラン・メイファンに思い知らせる。そうなれるようになるまで、帰りませんからね!」
「おっけ」
実はいつの間にかハオのほうが帰りたくなくなっていた。
昨日のジンチン戦では自分に金を賭け、1万元(約16万円)近く稼いでいた。わずか2日で1万2千元弱の儲けである。ハオはこのギャンブルに既にハマっていた。
また、自分の中にララがいることが何だか気持ちよくなりはじめていた。
自分を束縛するくせに自分に頼って来るララは、ハオにとっていつも側にいても全然構わない存在になりつつあった。

686 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 13:54:43.04 ID:gXnWRZUM.net
黒い肌の女がこちらを見ている。

687 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 13:57:35.19 ID:5N1+Qx13.net
『しかし、エッチはしたいよなぁ……』
「えっ? お兄ちゃん、溜まってるの?」
「き、聞こえちまったか!」
「じゃあ明日、無差別レイプしに行こうよ。あたし射精がしてみたい」
「まっ、またなんか言い出したぞこの子!」
「そうだメイファンをレイプしよう! シュールなアイディアじゃない?」

688 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 13:59:03.15 ID:5N1+Qx13.net
「この子、自分がされて嫌だったことは他人にもしたくなるタイプだな」とハオは思った。

689 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 18:05:17.08 ID:yurNQMtE.net
この主人公とか取り巻きはエロい事しか考えてないな。なんかダメだわ

690 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 19:37:38.13 ID:Hb0uaxHF.net
それを聞いてララははっとした。
『もしかして……ハオさんが素質は凄いくせに弱いのは、エロいことばかり考えているせい?!』

691 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 20:18:51.30 ID:g+1Amr29.net
ララは閃いた。
『ならば、完全に支配下に置くか、最悪ちんちんを切除してしまおう』

692 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 23:41:33.33 ID:Hb0uaxHF.net
そんなことも知らずにハオは、可愛い妹が出来た、可愛い妹が自分の中に住んでくれた、と喜んでいた。

693 :創る名無しに見る名無し:2019/01/03(木) 23:50:41.59 ID:5gHchp71.net
とはいえ、かく言うララの頭の中もエロいことでいっぱいだ。
(男の人のカラダってどうなってるの?)
ハオもララも二人ともが遅すぎる思春期を迎えていた。

694 :創る名無しに見る名無し:2019/01/04(金) 01:48:29.29 ID:SFwG/8u8.net
リウ・パイロンはシューフェンの葬儀後、ずっと遺影を前に項垂れていた。
無精髭が生え、その顔からは未来への希望が失われていた。
「そんなお前、シューフェンは望んでいないと思うぞ」
扉に立ち腕組みをしながら、黒いスーツをラフに着たメイファンが言った。
リウは項垂れたまま、「そうだろうか」と答える。
「未来だけを見るのがお前だろ」
「こんな風に」リウは少しだけ笑う。「惜しむ時間に浸るのも必要だ」
「らしくねーな……」
「時間が要る」
「ロン」メイファンは下手糞なシューフェンの物真似をして言った。「私はいいから、立ち上がって。前を見て」
「そういう奴だったよ」笑いながらリウの目から涙が零れた。「本当は側にいてほしいくせに、俺のことを考えて……」
「ずっとそこに座っているつもりかい」
リウは何も言わなくなってしまった。
「……ダメだこりゃ」
今のコイツなら簡単に殺せるな、と思いながらメイファンは踵を返した。
「さて、あのバカ共を連れ戻しに行って来るか」

695 :創る名無しに見る名無し:2019/01/04(金) 03:08:05.60 ID:WyX5bQ9M.net
「リー・チンハオか」リウが聞いた。
「あぁ」
「ヤツも俺と同じぐらいシューフェンの側に居たいだろうにな」
「あぁ。可哀想に。私のバカ姉に乗り移られて……」
「シューフェンも……俺と同じぐらい側にいて欲しがっていると思う」
「そうかもな」メイファンは同情した。「ハオ……今頃さぞかし帰りたがっていることだろう」

その頃、ハオはギャンブルに夢中になっていた。

696 :創る名無しに見る名無し:2019/01/04(金) 08:18:53.32 ID:KeqrniHD.net
ハオは危険を感じてズーランの部屋から引っ越していた。
スタイリッシュなマンションの一室、お洒落なジェイの部屋は落ち着かなかったが、気さくなジェイは嫌な素振り一つ見せずにハオを歓迎した。
ララは少し興奮していた。
『20歳のイケメンの部屋、一つ年下のイケメンの部屋……』

ララはスマートフォンが欲しかった。
習近平に連絡を取ってアパートか何かを手配して貰い、もっと落ち着けるところに住みたかった。
こんなところに居たら性的興奮の収まる暇がない。
しかしハオは社会的に死んだことになっており、身分を証明するものも何も持っていない。
ララ自身はそもそも社会的には存在しない人間である。
『こういう時、スマホってどうやって契約したらいいの??』

697 :創る名無しに見る名無し:2019/01/04(金) 08:22:18.92 ID:JSQO9jRh.net
いちばん大切なのは、子供らしい子供に育ててあげることです
私のところに今でもたくさんの親御さんいらっしゃいますけど
今まで相談受けて何十年、元ヤンキーにニートは、日本型のいわゆるニートはただの一人もいません
イギリス型のニートは別ですよ。ああいうのは心配ないんです。行動力が有り余ってて、
放っといてあげたら勝手に自分で食べていけるようになります。
いい歳になる頃には社会の為になる方向にいつのまにか向かって行きますから心配ないんです
いわゆるヤンキーとかやんちゃ坊主、昔は不良とか非行少年なんていいましたけど
一度もそういう方に行ったことがない子、ずっと大人しいいい子でいた子がニートになるんです
友達よりもおじいちゃん、おばあちゃんに好かれるような、
学校の先生も手が掛からなくて助かるけど内心可愛げがないと思うような、そんなお子さんばっかりです
だから子供時代は子供らしく過ごさせる、家で勉強ばっかりしていたら
たまには外で喧嘩して友達を泣かせて来るような事も、もちろんその後は
一緒に相手の親御さんに謝りに行って、いつもよりちょっと厳しく小突いてやって
そうやって社会のルールを学ぶ大切な機会ですからそこは最後まできっちりやらないといけませんよ
そうやって色々やんちゃして痛い目に遭っていくていう、そういう経験も、自らの身体で体験することがね
子供の発達には絶対必要なんです。いいですか、子供らしくない子供さんは、
決して大人らしい大人にはなりません。子供は子供らしく、大人は大人らしく
役割を演じるってんじゃないのよ、本来の自然な、当たり前の振る舞いを心がけるってことが
子供だけじゃなくわれわれ大人の男女にとってもね、大切な事なんだろうと思います

698 :創る名無しに見る名無し:2019/01/04(金) 22:52:18.13 ID:BBF3zQw1.net
何とかララはスマホを持つことに成功した。
習近平に電話をする。知らない番号なので出ない。
メールをすると、1日経ってようやく返信があった。
『ララちゃん、汚ならしいボディーに引っ越したそうだね。バイバイ』

699 :創る名無しに見る名無し:2019/01/04(金) 22:59:09.69 ID:BBF3zQw1.net
「くっ……! エロ義父め。お前にとって愛娘ララとはフェロモンのことか!?」
頭に来たララはメールに返信をした。
『ララはお引っ越しのスキルを覚えました。ピンちゃんが望むなら、ファン・ビンビンにだって、林志玲にだって乗り移れるよ』
すると即時返信が来た。
『石原さとみがいい』
なるほど習近平ちゃんの頭の中では流暢な中国語を喋る石原さとみの唇に何かをされているに違いない。
ララは承諾し、新しいアパートの部屋をゲットした。

700 :創る名無しに見る名無し:2019/01/04(金) 23:04:56.08 ID:BBF3zQw1.net
ワンルームの部屋に簡単な荷物だけを持って入った。
TVもない静かな部屋にいると、ハオは変な気持ちになって来た。
体は一つだが、確かにララと一つ部屋に二人きり。
自分の中でララが動く音すら聞こえるような気がした。
「何て言うか」ハオはララに言った。「ラブホに来たみたいだね」

701 :創る名無しに見る名無し:2019/01/04(金) 23:11:00.42 ID:BBF3zQw1.net
ズーランはチャイムの音で起こされた。
すっぴんの顔を手で覆って出ると、黒いスーツをラフに着た17歳ぐらいの女の子が立っていた。
「ここにアホ面でそこそこガタイのいいハオがいるだろう?」
「出てったわよ。引っ越し先は知らないわ」

702 :創る名無しに見る名無し:2019/01/04(金) 23:14:52.59 ID:BBF3zQw1.net
「クソッ。足取りを見失ってしまった」
黒いスーツ姿の女の子は聞き込みをしながら町を歩いているうちにお腹が空いてきた。
「辛いものが食べたいな」
そう思いながら歩いていると、目の前に四川料理の店を見つけた。
赤い看板に白い文字で『シャオ四川料理店』と書いてある。
「汚い店だが、ここにするか……」

703 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 00:05:19.76 ID:XC/5Tbij.net
「いらっしゃ……」
新聞を読んでいたシャオは顔を上げ、客の顔を見た。
「なんだガキ。ここはてめぇが来るような店じゃねェ。帰んな」
肌の黒い女の子の客は「ほう?」と言った。「そういう店か?」
「あ。いや、いかがわしい店じゃねェよ。金持ってんのか? 持ってんなら食わしてやる」
客は財布を取り出すと、1000元札を20枚、広げて見せた。
「ははは」シャオは嬉しそうな顔を隠しながら言った。「そんなにいらねェよ。いらねェんだけどな。さ、何にする?」
「黒麻婆豆腐とご飯で」
「あいよっ」
客はカウンターに座り、シャオが調理する様子をじーっと見ながら聞いた。
「人を探しているんだが、ランニングシャツにトランクス姿のアホ面の男を見なかったか?」
「知らんな。この寒いのにそんな格好で歩いてりゃ覚えてねェ訳がねェ」
「そうか」
「さァ黒麻婆豆腐に白飯だ。食え」
「真っ黒だな」
「黒麻婆豆腐だからな」
客はレンゲを持つと、麻婆豆腐を口に入れた途端、店主の顔めがけて噴いた。
「あっ、あちちち! 何しやがる!!」
しかし客は無視して白飯を口に運んでいた。その白飯も店主に向かって投げつける。
「このクソガキがァ!! おいっ! ジンチン! しっかり出口塞いどけ!」
「お前の料理で精神的な傷を受けた。慰謝料払え」
「んだこのクソガキアァ!!」
しかしシャオは体が金縛りにあったように動かなかった。元格闘家としての本能が告げていた、これ以上動いたら自分の命がない。
「さっきからお前の料理を見ていたんだが、なぜニンニクを真っ黒に焦がすんだ? ア?」
「くっ……黒麻婆だからに決まってんじやねェか!」
「香ばしく焦がすのと真っ黒焦げにするのとでは意味が全然違うだろうが……。あと、豆板醤をスープを張ってから入れるのにはどういう意味が?」
「何か悪ィのかよ!?」
「いいか。まず火を点ける前に油にニンニクを入れ、香りを油につける。豆板醤はスープを張る前に炒めて辛味を出すんだ。そしてそれが臭みに変わる直前にスープを張る」
客は厨房に飛び入りすると、釜のご飯をすべてゴミ箱に捨てた。
「なっ、何しやがる!?」
「飯もひでーもんだ。米を研ぐ時、一回目の研ぎをどうせゆっくりじっくり水を捨てているのだろう? 米にヌカが染み込んでしまっている」
「あ、あぁ確かにゆっくりじっくりしてるが。いけないのか?」
「一回目は特に素早く水を捨てるんだ。ヌカが染み込まないようにな。出来ればザルで洗うのがいい」
「ほう」
「ただし洗いすぎるな。やや白濁が残るぐらいが米の甘さを引き出す」
「へぇ」
「お前の炊いた飯はまるでウジ虫だ」
「すんまへん」
「蒸らしをしっかりやれ。ご飯粒を立てるんだ」
「はい」
「よし。では飯を炊いているうちに旨い黒麻婆豆腐を作るぞ」
「お願いします」

一時間後、客の作った黒麻婆豆腐と白ご飯をシャオとジンチンは並んで頂いた。
「これは旨い!」
「旨いだろう」
「老師と呼ばせてください!」
「よしよし」
「これは勉強代です。どうか受け取ってください!」
そう言いながらシャオは2000元を差し出したが、客は受け取らなかった。
「今度来た時、旨いの食わせてくれよ。それが一番嬉しい。じゃあな」
シャオとジンチンは涙を流しながら客の帰りを見送った。

704 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 00:33:56.21 ID:XC/5Tbij.net
その夜のハオの対戦相手は鬼鬼(グェイグェイ)という通り名の不気味な男だった。
長い黒髪で顔を隠し、白い汚ならしい着物を纏い、独自の形意拳『幽霊拳』を使う。
正直ハオが負ける相手ではなかった。

賭けファイト開始の一時間前、シャオはハオを呼び、言ったのだった。
「今日はお前、負けろな」
「了解です、兄貴!」ハオは快く従った。
今日のシャオはやたら機嫌がよく、ニコニコしていた。
「今日の黒麻婆豆腐は自信作なんだ。遠慮せず食べてみてくれ、リー」
「遠慮しまっす!」

ゴングが鳴った。
鬼鬼がまず大袈裟なアクションを決める。TVから這い出すような動作でハオに向かって間合いを詰めた。
ハオはわざとらしくビビり、金縛りに遭う。
そこを鬼鬼がハオの足から胸まで一気に這い上がり、恐ろしい顔を黒髪の間から覗かせ、ヒッヒッヒと笑うとハオは失神した。
レフェリーが鬼鬼の手を掴み、高く掲げる。
「うーん。うまく芝居できたなぁ」
達成感に浸りながら敗者ハオは観客席をにんとなく見渡した。
「んっ?」
なんだか覚えのある黒い『気』が客席の一点から立ち昇っている。
よく見ると、その袂に黒いスーツをラフに着たワイルドな髪型の女の子がいて、ハオをまっすぐ睨んで牙を見せて笑っていた。

705 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 00:40:07.22 ID:XC/5Tbij.net
「メ、メイファンさぁん!」
会場の壁際で、ハオは泣きながら土下座をした。
「私はお前にあんなふざけたファイトをさせるために特訓をしたんだっけな?」メイファンはハオの頭を踏みつけながら言った。
「すいません! すいません!」

706 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 00:49:55.00 ID:XC/5Tbij.net
そこへ間が悪くジェイが金を持ってやって来た。
「ハオはん、がっぽりや! ハオはん人気で鬼鬼に賭けた金が24倍や! これで今夜はパァーッと飲みまひょ……あら? こちらの美少女はどなた?」

707 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 09:25:31.09 ID:aj4AXtG0.net
メイファンは受付窓口へやって行った。窓口の内側にシャオがいた。
「おい」
「老師! よくぞいらっしゃいま……」
「あのマスクマンと闘りたい」
「すんまへん。1日2回以上の格闘はルール違……」
「この国でルールだマナーだ言う珍しいヤツか、お前は」
「ああっ! 確かに!」
「ところで変装したい。何か変装グッズはあるか」
「うーむ……」シャオは回りを見渡した。「これを」

708 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 09:36:44.33 ID:aj4AXtG0.net
メインイベントの後にもう一試合が加えられた。爆発頭がマイクで叫ぶ。
「連戦連勝を続けていたニュー・ヒーロー、今日の負けが気に入らないと再びの登場だぁ〜! マスクマン、ブルー・リー〜〜!」
ハオが嫌そうに金網の中に再登場する。
「対戦者はなんと女の子だぞ! だが美少女かどうかはさっぱりわからねぇ! でもすけべだ! 包帯ぐるぐる戦士、ミーラちゃん〜〜!!」
全裸に白い包帯を頭から足先まで巻き付けただけのメイファンが現れ、大喜びする観客達をくだらなさそうに眺めた。
「ララ、さっきから黙っているが」メイファンがハオを睨む。「何か喋れよ」
「……」
「フン、まぁ、いい」メイファンの身体を黒い『気』が大きく包むのをハオは見た。「お仕置きタイムだ」

709 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 10:20:03.74 ID:aj4AXtG0.net
『ハオさん』ハオの中でララが話しかけた。
『二人で死のう』ハオは心中を提案した。
『何言ってるんですか。これはチャンスですよ』
『チャンス?』
『メイは私達を舐めきっています。私達が合体でどれだけ強くなっているか、知りもしないで』
『あっ、なるほど』
『おまけに衆人環視の中でメイは本気を出すことが出来ない。あまりに強すぎると疑われます、(あれが裏のNo.1殺し屋、黒色悪夢なんじゃないか? って)』
『うーん』
『何よりメイファンなんて実はそんなに強くないです。ハオさん、本気でメイと闘ったことある?』
『ないけど……』
『だから知らないでしょ? あの子、ただ棒を速く突けるだけの棒術オタクよ。棒を持たないメイファンなんてハオさんの敵じゃないわ。姉の私が言うんだから間違いない』
『そうか……自信が湧いて来たぞ!』

ゴングが鳴った。
『行くよ、お兄ちゃん!』ララが操縦桿を握った。
『操縦任せた、ララ!』
ハオはそう言うとメイファンに向かって踵落としを出しながら下段蹴りを繰り出しながら正拳突きを食らわせようとする。
「メチャクチャだな」
そう呟くとメイファンは踵落としを手で受け止め、下段蹴りを蹴り返して退け、正拳突きをキャッチした。
「飛んでけ」
そう言うとハオを天井へ向かって投げ飛ばす。10m近く頭上の天井にハオは背中から叩きつけられ、ぐえっと言った。
落ちて来たハオを抱き止めるとメイファンは、今度は左側の金網に投げつける。金網がベキベキと音を立てて変形した。
『気』をロープのようにハオに結びつけていたメイファンはそれを手繰って引き寄せると、ミイラ・ラリアットを決めた。
「ね、姉ちゃん相手に容赦ねぇ……」それがハオの最期の言葉だった。
「まったく合体の意味がないな」メイファンは呆れてため息を吐いた。「もう少しまともかと思ったが……」
ララは何も言わず、勝ち誇りもせずに自分を見下す妹の姿を見ていた。
「大体、私の黒い『気』はあらゆるものを武器に出来、ララの白い『気』はあらゆる傷を治すというのに……」
『あっ』ララは心の中で声を上げた。
「お前の青い『気』には一体何が出来るんだ?」
『そうか』ララはこの時、確かに何かを掴んだのだった。

710 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 11:01:52.36 ID:aj4AXtG0.net
「老師! 料理だけでなく格闘までとは恐れ入ります!」
シャオがずずいとメイファンの前に出て来てファイト・マネーを差し出した。
「いらん。このボケ連れて帰るぞ」
「ええっ!? それは……」
「文句あるのか?」
「いえっ! いえいえどうぞどうぞ! そんなもの差し上げます! ただ……」
「何だ?」
「服を着てお帰りになったほうが……」
「あぁ、そっか。面倒くさ」
仕方なくメイファンは黒いスーツを包帯の上に着た。

メイファンは『気』のロープでハオを犬のように繋いで外へ出た。冬の冷たい空気が包んだ。
「こっから『施設』まで約15kmか。徒歩で3時間ぐらいかな」
メイファンはスマホを取り出し、車を呼んだ。
何も言わずに夜道を歩いて行く。
「しかし、(それ)だけは凄いな」メイファンが振り返る。「まったくの無傷だ。試合中から」
メイファンはララが中にいた頃、戦闘中に受けた傷を治すことは出来た。ただしそのためには『白い手』を出す必要があり、
『白い手』を出している間は手を戦闘に使うことが出来ない。ゆえにメイファンが自分を治療出来るのは実質戦闘終了後のみということになった。
しかしララと合体したハオは戦闘中に中からの『気』で自分を治すことが可能であり、これだけはメイファンを凌ぐ強力な能力であると言えた。
「ただ、それだけじゃなぁ」メイファンがため息を吐く。「やられっぱなしだ」
ハオは何も答えず、泣いている。
「まぁ、いくら虐めても傷つかないんだから、虐め甲斐は以前の数10倍になったかなぁ」
「おい、糞メイファン」いきなりハオの口がそんな言葉を発し、ハオは驚いた。
「あ?」メイファンが振り向く。「糞はお前……」
振り向いてメイファンは固まった。
駐車場の水銀灯の下、ロボットのように巨大化したハオが、真っ青な『気』を大きく発して立ちはだかっていた。
「は? でかっ……」
「ぬおぉ」とハオは叫ぶとメイファンの黒い『気』のロープをいとも容易く手刀で切断した。
「おいおい……」
目を白黒させるメイファンにハオは襲いかかった。音速で間合いを詰めると膝蹴りをぶち込む。
『気』の鎧で防ぎながらもメイファンは15m吹っ飛んだ。
「逃げるわよっ! ハオさん!」
ララがそう言うとハオはガシャガシャとメカメカしい音を立て走り去った。
「なんだ……あれは……」
メイファンはそれを見送るしか出来なかった。

711 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 11:30:45.06 ID:aj4AXtG0.net
アパートに逃げ帰った二人はドアを閉め、5分ほどハァハァ息を切らすと、話しはじめた。
「お兄ちゃん、あたし、掴んだよ!」
「……みたいだな」
「今までは私がお兄ちゃんを操縦しようとしてた。私の『気』の力と怨念でお兄ちゃんの身体を動かそうとしてた。でも、それじゃダメだったんだ!」
「実際ダメだったよね」
「私はお兄ちゃんの青い『気』を増幅させ、傷ついた時には治療する、それだけでよかったんだ。格闘素人の私が操縦なんかしようとしちゃダメだったんだ」
「つまり僕は自由ってことだね」
ハオはいつの間にかノートパソコンを開き、リアルラブドールの製品情報を閲覧しはじめていた。
「なぁ、ララ。お金結構貯まったからコレ、買おうよ。格闘の時以外はララはこのエロボディーに入って……」
「ううん。お兄ちゃんは自由じゃないよ」ララは厳しい口調で言った。「私はお兄ちゃんを操縦しないけど、支配する必要がある」
「へぇ〜。わっ、このドール可愛い!」
「お兄ちゃんは格闘スキルだけを残して消え失せるの。言わば私の命令に忠実に従う意志のないロボットのようになるのよ」
「でも巨大化はやりすぎじゃね?」
「うん。それは私も思ってた。あの設定はリセットしましょう」

712 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 11:32:36.08 ID:aj4AXtG0.net
「言わばこれはリー・チンハオ改造計画よ」ララは言った。「覚悟してね、お兄ちゃん」

713 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 12:54:15.93 ID:aj4AXtG0.net
リウ・パイロンは相変わらずシューフェンの遺影の前で座っていた。その横ではメイファンがずっと膝を抱いて踞っていた。
「リー・チンハオを連れ戻せなかったのか」
リウがそう聞いても膝に顔を埋めて黙っている。
「やはりララと合体し、強大になっていたのか?」
メイファンはようやく少し顔を上げると、目に涙が潤んでいた。
「バランスがうまく取れねーんだ、ララが中にいてくれないと」
リウは黙って聞いた。
「虐めて遊ぶ豚野郎がいねーとつまんねぇし……」
「寂しいのか?」リウが聞く。
「アイツらがどんどん変わって行きそうで嫌なだけだよ」
そう言うとメイファンはまた膝に顔を埋めた。
昨夜から13時間、もうずっとこうしている。
今のメイファンではスパーリングの相手にすらならんな、そう思いながらリウ・パイロンはようやく腰を上げた。

714 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 13:59:54.64 ID:aj4AXtG0.net
ララが眠るとハオは起き出し、ノートパソコンを開いた。
リアルラブドールのページを開くと、メンメンちゃんという名前のドールを注文した。
身長155cmでおっぱいはEカップ。顔も含めて実物のララの印象に近いドールだ。
約4万元(約60万円)の金額を確認し、支払いを完了する。
「凄いよなぁ。たった5日でこんなの買えちゃった」
注文を確定するとウキウキとした気分で布団に戻る。
ハオはララの言うことを信じていなかった。心優しいララのことだから、どうせ口だけだとたかをくくっていた。
「明日もきっと楽しい1日が僕を待っているさ〜」

715 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 14:38:34.10 ID:RJm5TPvq.net
その夜、ハオの枕元にシューフェンが立った。
「ハオ」
「シューフェンの幽霊だ。シューフェンなら幽霊でも怖くないよ」
「私のことは、忘れちゃったの?」
「違うよ、シューフェン」ハオはイケメン顔で言った。「シューフェンは残された俺の人生を灰色にしてしまうのが望みなのかい?」
「いいえ」
「そうだろ? 俺はシューフェンが悲しまないように、シューフェンを笑わせようと、強く楽しく生きているだけさ」
「さすがハオね」
「そうだろう? 俺ほどプラス思考な人間は世の中探してもなかなかいないぜ?」
シューフェンの霊は何か言いたそうにしていたが、やがて呆れたようにすうっと消えてしまった。

716 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 15:26:51.22 ID:dbI/AjMt.net
シューフェン……やはり僕のことをわかってくれるのは君だけだ。
ハオは永遠の愛を誓った。

717 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 18:20:05.67 ID:SNnq5j4j.net
するとどこからともなく
「私が本当に愛を誓ったのはロンなの。お前のような無職で弱虫のエロ親父なんかじゃない。」
とシューフェンの幻聴聞こえてきた

718 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 18:58:14.47 ID:1wBuL6I7.net
「なんだとぅ!?」そう叫びながら起きると、朝だ。ハオは違和感を覚えた。
「あれぇ?」
なせだろう、自分の体が自分じゃないようだ。
試しにパンツの中を見ると、自慢の如意棒が朝立ちしていないどころか子供のおちんちんのように小さくなっている。
「ハァァァ!?」
ベッドから身を起こそうとすると上手く体を動かせず、ベッドから転落してしまった。
「おい、ララ!? なんかおかしい。俺が自由に動けているでもなし、お前が操縦しているでもなし……」
「うるせぇ! 糞兄! 黙れ!」とララの声がやたら遠くから聞こえて来た。
「く、糞兄?」
「そうだてめぇは糞兄だ! 人間じゃねぇ! ウンコだ!」
「う、ウンコが好きな妹だな」
「言っただろ? お前は消えてなくなるんだ。これからは私がリー・チンハオだ!」
「いやいやリー・チンハオは俺のことですから!」
「いいから黙ってろ! 黙って支配されろ糞兄!」
「糞兄って呼ぶのやめて!」
「『兄』つけてもらえるだけ有り難く思え!」
「『兄』がなかったらただの糞!?」
「リー・チンハオは崇高な精神を持った誇り高き戦士に生まれ変わるのだ! 糞は死ね!」
「ララ……」
「死ね!」
「お前……なんか……無理してない?」
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

719 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 19:45:47.74 ID:RfbE9vHz.net
ハオの言う通り、ララは無理をしていた。
ハオを罵倒する言葉はすべて自分に跳ね返って来た。
自分とハオさんはやっぱり似てる……ララはそう思うのだった。
それでいてハオに対する感情は同族嫌悪などではなく、むしろ嫌悪と尊敬の激しく入り交じった複雑な感情であった。
エロに対する子供じみた好奇心も、気弱なところも、他人の言いなりになりやすく、何も出来ない意気地無しなところも、すべて似ているとしか思えなかった。
ただ、何をされてもひたすら耐え、その後に相手を笑って許してしまえるハオの優しさは、ララにはないものだった。
その優しさをララは愛していた。
いや、それを優しさと呼んでいいのかすらララにはわからなかった。
すべてを包み込んで許すその大らかさ、そして身をもって見せたシューフェンへの一途な愛、その二つだけでララがハオを愛する理由は十分に足りた。
『ハオさんの優しさは、ただの優しさじゃない。これを何て呼んだらいいのだろう……』

720 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 20:00:02.69 ID:ws5qEhsQ.net
ララは「優柔不断」という言葉を知らなかったのだ。

721 :創る名無しに見る名無し:2019/01/05(土) 23:50:43.14 ID:bVz1RAiD.net
        ,.,.,.,.,.,.,.,.,__
     /:::::::::::::::::::::::T,;
     |:::::::::/ ̄ ̄"'ヽ:i
     i::::::::|  ,,,,,,_  ,,,,|       
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     ヽ ヽ   ..::__) | ララちゃん〜イクゥゥゥゥー!!
  .     ヽ  エエエエ ,'    
        \___!  
        /⌒``ーi   
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        / /ヽ、   ヽ、 \      :,∴・゜・゜・:∴~・:,゜・∴~・:・∴・
      / /   |    ヽ \   ,.:∴~・:,゜・~・:,゜・ :,∴,゜・~・:,゜・・∴
     / /   ,r   つ~~‘∴・゜゜・・∴~・:,゜・・∴・゜゜・∴~゜゜゜  
   彡 cノ _ノ⌒|   (:::):::)、      ドピュッ
       `ー-、 |    |―、ヽ、  \ ピュッ
          ヽi    |  \ ヽ   )
           ヽ_ノ    `ー―'

722 :創る名無しに見る名無し:2019/01/06(日) 08:16:02.93 ID:lwgh5cJT.net
朝7時、ララは自分の足でいつもの公園へ行った。
到着した時にはもう太極拳の套路は始まってしまっていた。
鳩の羽音と人々の衣擦れの音が温かい音を立てる。
ララはそそくさと集団に混じり、適当に前の人の真似をして動きはじめた。
チラリとご飯のところを見ると湯気を立てている。
『エヘヘ、今日は何かな』
しかしすぐにリーダーの女性がやって来て、ララに言った。
「アナタ最近いつも来てる人よね? どうしたの? 陳派の基本型から××の簡単な流れよ? 忘れちゃったの?」
「えっ」
ララは自分の中のハオを見た。ちょうど心臓の少し下のあたりで茨に絡め、食虫植物にかかったように養分をチューチュー吸われている。
「しょうがないわね」リーダーの女性は言った。「散会後、あなただけ残って講習よ。今日は施しはないと思っておいてね」
彼女が背を向けるなりララは逃げ帰った。

723 :創る名無しに見る名無し:2019/01/06(日) 08:23:11.86 ID:lwgh5cJT.net
仕方なくセブンイレブン似のコンビニで弁当を買うことにした。
弁当とお茶を買い、外へ出る。
公園のベンチに座って食べはじめる。
冷たいご飯がパサパサでちっとも美味しくない。
温めますか? って、そう言えばあの店員さん、聞いてくれなかった。
って言うか言わなくても温めてくれるのが当たり前じゃないの?
お茶もわざわざ冷蔵庫で冷たくなんてしなくていいのに、どうせ温めるんだから。
ララは少し泣きたくなった。
メイファンのせいだ、ララは思った。
メイファンが私に何もやらせず、過保護にしたせいで、私は何も出来ない大人になってしまった。
冬の寒風の吹く中、ララは弁当も冷たいお茶も半分以上残して公園のゴミ箱に捨てた。

724 :創る名無しに見る名無し:2019/01/06(日) 09:09:46.31 ID:2Kyr8SJi.net
それでもララはこうして直接寒さや飯のマズさを感じることにも喜びを感じていた。

725 :創る名無しに見る名無し:2019/01/06(日) 12:02:26.93 ID:jiBSei26.net
ララはシャオの四川料理店へ出掛けた。
店の横の路地に入るとジンチンが巨体をゆすりながら、うまい棒を連続食いしていた。
その目にはうまい棒以外のものは何も入っておらず、ララがすぐ近くまで寄っても気づいていないようだった。
あれからシャオはジンチンとの勝負をやらせてくれなかった。
同じカードはなるべく続けないようにしているようだったが、それ以上にララとジンチンが仲良くなってしまったせいもあった。
「ジンちゃん」ララは話しかけた。
「あら、ララちゃん」ジンチンはようやくララに気がついた。
「うまい棒一本くれる?」
「いいわよ。1000本あるから一本ぐらい」
ジンチンは外では唯一ララの存在を知る人間であった。彼女も未熟ながら『気』を使える人間であり、それゆえハオの中に白い女の子がいることに最初から気がついていたのだ。

ララは手に持ったうまい棒に『気』を込めてみる。自分の青い『気』に一体何が出来るのか、まだ判明していなかった。
『気』を込めたうまい棒はふにゃりと柔らかくなると、ララの手をすり抜けて液体のようにこぼれ落ちてしまった。
「これは普通に……ララの白い『気』で出来ることだわ……」

隣を見るとジンチンは、うまい棒が一本もったいないことになったことにも気づかず、鼻息を荒くしてコンポタ味をバリボリいわせている。
本能だけで生きているジンチンのことが羨ましく思えた。
何の悩みもないんだろうな。
自分と同い年の女の子のくせに。
しかしジンチンのことを女だと知るのもまたララ一人だけであった。
秘密を守り合う二人の間には固い友情が確かに結ばれていた。

「ねぇ、ジンちゃん」
「なァに?」
「私と本気で闘ってみてくれないかな」
「やァよ。だるいし。ララちゃん傷つけたくないもの」
「よっちゃんイカ1年分あげるから」
「いいわよ」ジンチンは身を乗り出し、やる気を見せた。「どこでする?」
「あそこのお寺の裏に人通りのない広場があるの」

726 :創る名無しに見る名無し:2019/01/06(日) 12:53:45.79 ID:3mpb7NLp.net
主な登場人物まとめ

・ハオ(リー・チンハオ)……主人公。習近平とメイファンにより謎の施設に軟禁され、謎の過酷な特訓を受けていたが、
ララに体を乗っ取られ、施設を脱走。現在は自分の体内でララに監禁され、その格闘スキルを吸い取られ中。太極拳の使い手。

・シン・シューフェン……ヒロイン。膵臓ガンにより逝去。ハオの恋人だったが、リウに取られた。
元々ハオにはもったいないほどの美人であり、リウの紹介で女優デビューする。

・リウ・パイロン……中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり国民的英雄。シューフェンの夫であり、彼女の死に深く沈み、現在廃人中。
メイファンの元弟子だが、ボロボロに負かした上当時8歳のメイファンをレイプした上、彼女の元を去る。

・ラン・メイファン……17歳の美少女。国家主席習近平のボディーガードであり凄腕の殺し屋。
『気』を操り様々なことに使える武術家、というより超能力者。『黒色悪夢』の通り名で恐れられている。

・ラン・ラーラァ(ララ)……21歳の天然フェロモン娘。メイファンの姉。ただし身体を持たず、妹の中に住んでいた。
『気』だけの存在であり、メイファンの身体を抜け出しハオの中へ引っ越した。性格は妹と正反対で女らしく、お喋り好きだったが、発狂しはじめている。

・シャオ・ホンフー……42歳だが50歳代にしか見えないほど老けている、元散打王。新人の頃のリウに試合中、片目を潰され、散打界を去る。
現在は四川料理の店をやりながら殺し屋、地下ファイトの主催者等をしている。料理がヘタ。

・ヤォバイ・ジンチン……スキンヘッドのデブ。体を2倍に膨らませてあらゆる攻撃を吸収してしまう。
食べることにおいては意欲的だが、それ以外のことにはまったくやる気がない。誰もが男だと思っているが、実は21歳の女性。

・習近平……言わずと知れた中国国家主席。孤児だったメイファンを引き取り、殺し屋として育てる。ララのファン。

・ドナルド・トランプ……言わずと知れた(略)

・ジャン・ウー……メイファンの仲間の殺し屋。通り名は『酒鬼』。昔のカンフー映画に出てくるような見た目をしている。
メイファンに首をはねられ死去しとかと思いきや生きていた。

727 :創る名無しに見る名無し:2019/01/06(日) 20:57:20.06 ID:L63HVqxB.net
「行くよっ! ジンちゃん!」
ララは構えた。もう大分ハオを吸収し、構えが様になっていた。
「いつでもどっぞ〜」
ジンチンはうまい棒をひたすら齧りながら言った。
ララは自分を殺す。自分はひたすら『気』の発生源となり、ハオの身体が動くに任せた。
ハオの身体が動いた。素早い動きで間合いを詰め、連を繰り出す。ジンチンの腹があっという間に10箇所へこむ。
「速いわねぇ、ララちゃん」
ジンチンは感心しながらうまい棒を食べ続けた。
ハオの身体は蹴りを繰り出す。めり込む。めり込んだ足を軸に、上へと駆け上がる。しかしまるでコールタールの海の上を歩くようにその動きは緩慢だ。
「のろいわよォ、ララちゃん」
そう言いながらジンチンはゆっくりと前へ倒れた。
「ぷぎゅ」
ララは肉の下敷きになり、勝敗は決した。

728 :創る名無しに見る名無し:2019/01/06(日) 21:24:11.78 ID:L63HVqxB.net
「ジンちゃん……」
「なァに?」
「本気出さなかったでしょ……」
「まァね」
二人は寺の裏の広場のコンクリートに並んで腰掛け、うまい棒を食べた。
「本気出すまでもないってこと?」ララは涙でしょっぱいうまい棒を齧る。
「そうねェ」
「何が足りないの? あたし」
「足りないと言えば、覚悟ねェ」
「覚悟?」
「えェ。闘いにすべてを捧げる覚悟」
「すべてを……捧げる?」
「ララちゃんには煩悩がありすぎるのよォ」
「煩悩? エッチなことってこと?」
「それに限らないわねェ。食べることにしても煩悩よォ」
「え。ジンちゃんは?」
「なァに〜?」
「ジンちゃんには煩悩がなくて、覚悟があるの?」
「オデの煩悩は食べることだけェ〜。でもって、食べれば食べるほど強くなるのがオデだからァ〜」
「強くなるために食べてるの?」
「わっがんねェ〜。エヘヘ」
「うーん?」
「ララちゃんさァ、オデのこと、悩みが何もなさそうで羨ましいって思ってない?」
「え! そそそそんなことないよ?」
「ないのよォ〜、本当に」
「え?」
「世俗的な悩みなんてなーんにもないの」
「まじでか」
「そーゆーのも煩悩だからねェ。オデは闘って、勝って、お金貰って、お菓子が食べれればそれで何ァんも要らね」
「ある意味ストイックなんだ?」
「わっがんねェ〜。エヘヘ」
とりあえずジンチンとの会話は今のララにとっては何の役にも立たなかった。
どうしたらジンちゃんに勝てるのだろう? ララの頭の中はそのことばかりだった。
ララはふと思い出した。昔メイファンと一緒に読んだ日本の漫画「北斗の拳」にそう言えば「ハート様」というジンちゃんみたいなのが出て来た。
北斗のケンシロウはあれをどうやって倒したんだっけ? 調べてみよう。

ふと自分の中のハオを見ると、幼児ぐらいの大きさになり、体に刺された管からもう相当の養分を座れていた。

729 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 09:27:04.72 ID:p8lU3N0M.net
その夜、マスクマン「ブルー・リー」は地下ファイト会場に来なかった。
シャオは怒るでもなく、ただため息を吐いた。
「まァ、そらなァ……。あそこまで完璧に負けたら嫌にもならァな……。あぁ、ミーラちゃん、また来ねェかな……」
ため息を吐きながら客席を眺めていたシャオは、ふと懐かしい姿を見つけ、愕然とする。
サングラスをかけ、無精髭なんか生やして、やたら洒落たナリをしているが、アイツは……間違いねェ。
シャオは舎弟に窓口を任すと早足でその男の元へ向かった。
「オイオイ、散打王様がこんな所に何のご用で?」
振り向いた男はシャオの顔を認めると、言った。
「あんたは?」
「あらら。この目の傷に覚えがない?」
「……悪いが知らん。あんたはここの主催者か?」
シャオの口元が歪む。お前の前に散打王と呼ばれていた男のことなんか覚えてもねェのかい。
「いかにも俺が主催者だが。ならば何の用だよ?」
「人を探している」
「ふん。誰をだよ?」
「リー・チンハオという男だ」
「知らねェな」
「先日、ここでラン・メイファンという少女と試合をしたと聞いたが?」
「少女? ミーラちゃん……老師のことかい?」
「老師……たぶんそいつだ。肌の黒い、愛くるしい顔をした……」
「そっ、その人にまたお会いしたい! どちらにいらっしゃる?」
「質問をしているのはこっちだ。まず答えてくれないか。その少女と闘ってボロ負けした男だ」
シャオは面倒臭そうに答えた。
「リー・チンコって言ったか? リー・ラーラァって名だと聞いたが……」
「そいつだ! どこにいる?」
「ふぅん……。教えてほしいのかい?」
「もったいつけないでくれ」
シャオはニヤリと笑うと、言った。
「教えてほしいなら、ここで一試合して行ってくんねェかな。リウ・パイロンさん」
「なるほど」
「お高いアンタだからこんな所で闘いたくないとは思うが」
「試合か」
「まぁ、無理にとは言わねェよ。リーの居所が知りたいなら他にも」
「面白そうだな」
「えぇっ!?」
「相手はどの戦士だ?」
俺が……やる……と言いたい気持ちを押さえ、シャオは言った。
「実質ここで最強の戦士……ジンチンって奴だ」
「強いのか」
「正直……俺の5倍は強いな」
「お前がどれくらい強いのか知らんぞ」
シャオのこめかみの血管がブチ切れた。
「アンタが勝っても当たり前なんだからファイトマネーはビタ一文払わん。その代わりアンタがもし負けたらファイトマネー30万元(約500万円)貰うぞ! いいか?」
「いいだろう。久しぶりの運動のつもりだ。金は要らん」
「キシャアアァ!」シャオは思わず威嚇した。「よし決まりだァア!!」

730 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 11:17:18.90 ID:p8lU3N0M.net
この会場で唯一行われないカードがあった。シャオ・ホンフーとヤォバイ・ジンチンの対戦である。
実現しない理由はもちろん100%ジンチンがわざと負けるからであり、勝敗の決まっている試合など賭けの対象にならなかった。
そして実際の強さにおいても元散打王であるシャオのほうが絶対に強いと誰もが思っていた、ただ一人、当のシャオ・ホンフーを除いては。

731 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 11:34:00.84 ID:p8lU3N0M.net
控え室で遠い目をしながらよっちゃんイカを食べているジンチンのところへシャオがやって来た。
「よう、ジンチン」
シャオの声でようやくジンチンは気づき、振り向いた。
「よう、兄貴〜」
「今日のお前の対戦相手、変更があった」
「ふ〜ん」
「お前のことだ、誰が相手でも動じねェんだろうけど……」
「そだね〜」
「リウ・パイロンだぞ。まぁ、お前にはどうでもいいか……」
シャオはゴゴゴゴと炎が燃え上がるような音を聞いた。振り返るとジンチンが燃えている。
「ジ……ジンチン!?」
「わはは。ようやく本気でやれる……」

732 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 11:54:54.15 ID:p8lU3N0M.net
リウは目の前で次々と行われる試合を観戦しながら、どんどん表情が険しくなっていた。
シャオが戻って来、隣に座って話しかける。
「どうだい? ふざけた試合ばっかりだろ?」
「不愉快になるぐらいにな」リウは腕組みをし、足を組んだ。「3流の芝居小屋か? ここは」
「八百長ばっかりでもないんだぜ?」
「それにしても人に見せるような闘いじゃない」リウは退屈そうに足を揺すった。「こいつらには何の情熱も感じない」
シャオは鼻で笑った。「それならなんでこんだけの観客が喜んで見に来てんだ?」
「確かにそうだな」リウは素直に頷いた。「俺にはわからん世界ということか」
「そうだ。ここは勝ったことしかないアンタにはわからん世界なのさ」
リウは黙った。
「俺の作った黒麻婆豆腐、持って来てやるよ。食べるかい? 旨いぜ」
リウはそれには答えず、聞いた。
「俺の相手というのもあんなのか?」
シャオは何やら楽しそうに意味ありげな笑い声を上げると、答えた。
「ついさっきまでは、あんなのだったよ。だが、アンタが相手と聞いて、今、劇的に変身中だ。ま、お楽しみに」

733 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 12:36:54.35 ID:p8lU3N0M.net
その頃、ハオの身体はアパートへ帰っていた。
スーパーの買い物袋をテーブルに置くと、ララは言った。
「ふふっ。水餃子セット買って来たよ」
ハオの身体にいそいそとエプロンを着ける。
「今、美味しいの作って食べさせてあげるからね、お兄ちゃん」
袋から食材を取り出し、コンロに火を点けようとして気がついた。この部屋にはキッチンがなかった。
ララは声も出さずに立ち尽くした。
部屋の冷たさが今更のように襲って来た。
ベッドの枕元にはハオの大好きな男性週刊誌が読む者もなく放置されている。
身体の中のハオを見ると、胎児の大きさになり、刺された管から養分をチューチュー吸われている。
窓の外に聞こえる若い集団の楽しげな声が、ひとりぼっちの自分を強く浮き上がらせた。
買って来た缶ビールを開ける。水餃子を生で一口齧る。あまりの生臭さに全部捨てた。
「明日こそ……」
ララは缶ビールを一口飲むと、あまりの苦さに顔を歪め、洗面所に全部捨てた。
「明日こそ、ジンちゃんに勝って、何かを掴んでみせるから……」
そのまま布団に潜り込んだ。
「安心して消滅してね、お兄ちゃん」

734 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 13:55:40.26 ID:p8lU3N0M.net
「さァ、お前ら! 震えてわめけ〜!」
爆発頭がマイクで叫ぶ。
「すすすすっげェのが飛び入り参加だぞォ! 俺もマジでビビっちまったァ!
「まずはお馴染み永遠のNo.2ファイター、永遠のデブ、永遠の食いしん坊の登場だ! ヤォバイ・ジ〜ンチ〜ン!!」
ジンチンが金網の中に現れる。その様子はいつもとまったく変わらず、よっちゃんイカの大袋を抱えての登場だ。
「そォ〜してェ〜! 信じられるか? こんな所に天下の散打王様が降臨だ!」
会場がどよめく。
「リウ・パイローーン!!」
それはまるでアマチュアロックバンドのフェスティバルに台湾のカリスマバンド五月天(メイデイ)が飛び入り参加したかのような大騒ぎだった。
悲鳴のような大歓声を受けながら、リウは着ていたスーツを脱ぎ、黒いスウェット・パンツ姿で金網に入った。
スウェット・パンツで腹の肉が少し盛り上がったリウを眺めてシャオが嗤う。
「正月太りか? ジンチンに勝機ありだな」
リウは相手を眺める。ジンチンは顔色も変えずによっちゃんイカをぱくぱく食べていた。
「なるほど……」リウはジンチンに言った。「これは手強いな」

ゴングが鳴った。
リウはどうしたらいいかわからなかった。
相手には仕掛けて来る気がまったくない。自分から仕掛けるにしても隙がなさすぎた。
超低空アッパーを仕掛けようにも腹が邪魔すぎる。腹をクリア出来たとしても、風船のような体の上にちょこんと乗っている頭まで距離がありすぎる。
足を狙うにもあまりに短く、また遠すぎる。おそらく上から超重量級の風船に圧し潰されるだけの結果に終わるだろう。
ならば、と足を使ってみる。背中に回り込もうとする。しかしデブのくせに何という素早さだ。チョコチョコと短い足を動かし、決して背後を取らせようとしない。
ならば、このすべてを吸収するぶよぶよの肉の海に攻め込むしかない。肉を掻き分ければ必ず骨がある。しかし、多くの者がそこへ到達する夢も虚しく、海に呑み込まれて来たのだろう。
ならば、どうする。相手が痺れを切らして攻撃して来るのを待つか? そして自滅を誘い……
リウははっと気づいた。
ジンチンはただよっちゃんイカを連続食いしながら相手が罠にかかるのを待っているだけのただのデブではない。
だらーんとだらしなくぶよぶよしているだけに見える全身の隅々に、黄色い『気』が繊細なまでに張り巡らされているのが見えた。
こちらが少しでも油断をすればその『気』を波立たせ、凄まじい速さで襲いかかって来るだろう。
今、この状態はジンチンの本気ではない。
本気で闘う前に、この状況を相手がどうするか、試しているのだ。
この散打王リウ・パイロンを試しているのだ。
「お前」リウはニヤケ顔で呟いた。「こんな所にゃもったいねぇよ」

735 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 14:29:53.49 ID:p8lU3N0M.net
「ならば乗ってやろう」
リウはそう言うなり仕掛けた。
軽やかにステップを踏むとサイドキックを一発、ジンチンの腹に叩き込む。
ジンチンの肉がたゆんたゆんと揺れる。
リウは軸足を変え、後ろ回し蹴りを再び腹へ叩き込んだ。
ジンチンの肉はさらに揺れ、大波のように寄せては返し、その揺れでジンチンはまともに立っていられなくなった。
三度サイドキックを入れようとしたところでリウの足が止まる。
ジンチンの体から黄色い『気』が炎のように立ち昇った。

736 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 16:43:52.17 ID:+Kpi/J9d.net
「ハハハ。さすがは散打王だねェ」
そう言うとジンチンは抱えていたよっちゃんイカを放り出し、黄色い炎をさらに燃え上がらせた。
「久々に見せるよ! 第3形態だ!」
「むうっ!?」
近寄る隙もなく、リウの眼前でジンチンはみるみる変身して行く。
「キエエエェェッ!!」
凄まじい土埃がどこからともなく巻き上がる。
それが収まった時、リウは信じられないほど恐ろしいものを目の前にしていた。
「さすが中国は広い」
リウの頬を汗が伝う。
「こんなバケモノがいるとはな」
ぶよぶよだったジンチンの身体(カラダ)は1/10に引き締まっていた。肉に埋まっていた手足も長さを取り戻し、身長2m20cmの長身の上に鬼婆の長い顔が乗っている。
果たしてあの膨大な量の脂肪はどこへ消えたのか? 探すまでもなかった。
その胸には1m以上の長さの巨乳が2つ、まるで腕のようにぶら下がっていた。
「これぞ我が真の姿」
ジンチンは鋭い牙を見せてそう言うと、真っ赤な口から黄色い『気』を吐き出した。
「我が攻撃、果たして防ぎきれるかな!?」
「うおっ!?」
2本の腕と2本の脚、そして2本の乳房がリウに襲いかかる!
「手が4本あるバケモノと闘わされているかのようだ!」
リウはジリジリと後退を余儀なくされた。

737 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 21:32:32.92 ID:9N9Ik7Hj.net
次の朝7時、ララはまたあの公園に出かけて行った。
太極拳の套路はちょうど始まるところだった。リーダーの女性は今日もおり、ララの姿を見つけると首を伸ばして注視して来た。
ララは自分はまるで電池のようにエネルギーを発することのみに徹し、ハオの身体が動くに任せた。
ハオの身体は自然に動き、太極拳の套路を正しく美しく辿った。
リーダーの女性は安心したように注視をやめ、公園に揃った衣擦れの音が清々しく響いた。
身体の中のハオを見ると、もはやメダカぐらいの大きさになり、消えかかっている。

今朝の施しは水餃子と豆のおこわだった。
ララは笑顔で食べはじめたが、なんだか今朝のご飯は味気なかった。
もしこの調子でハオが完全にララに吸収されたら、自分は一体ララのままなのだろうか? それとも外見はハオなのだからハオになるのだろうか?
もし自分がララのままであるのならば、その時ハオはどこに行ったことになるのだろうか?
ララは美味しいはずのご飯を食べきれず、半分以上残して捨ててしまった。

738 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 21:56:37.61 ID:9N9Ik7Hj.net
ララがアパートへの帰り道を歩いていると、向こうからジェイがやって来た。
「やぁハオはん、おはようさん」
「おはよう、ジェイ君。ご飯食べた?」
「え。まだでっけど……何ならご一緒しまひょか?」
「え……w」
「はい?w」
「まだ中国に慣れないの? 『ご飯食べた?』は日本で言えば『いい天気ですね』程度の挨拶よ」
「あぁ! そかそか、そやった! ははは。もう3年も住んどるのに、なかなか慣れへん。1月1日が正月違うのも未だに変な感じやわぁ」
「今年の春節(正月)は2月5日ね」
「ははは〜。なんか色々やらかしてもてるわ、俺。中国では結婚しても女性の姓が変わらんのも知らんかったし……」
「リー・シューフェンが結婚してリウ・シューフェンになったとか、笑っちゃったわ」
「お恥ずかしい」
「大丈夫よ。中国人のチンハオって人なんか、中国人のくせに『俺、シューフェンに結婚されちゃった!』とかボケたこと言ってたから」
「それは恥ずかしなぁw」
「ところでどうしたの? こんな所で会うなんて珍しいわね」
「あっ! そうそう。ハオはん、昨夜なんで来はらへんかったんや?」
「えーと……」
「大変な事があったんでっせ! あのリウ・パイロンが試合に出て来よったんや」
その名前を聞いてララはぞっとした。こんな所まで自分を追いかけて来たに違いない。昨夜、本当に行かなくてよかった。
「へぇ……」
「『へぇ』やあらへん! ジンチンはんと試合して……」
「ジンちゃんと!?」
「はいな」
「それで……どっちが勝ったの?」
「そらまぁ、凄い試合でしたっせ。ジンチンはんの無敵の肉の装甲をリウ・パイロンがまず破って……」
「破った!? あれを……どうやって?」
「はいな。横からキックをすぱーんすぱーんとやったら、ジンチンはんの肉が大波立てて揺れはじめて」
「北斗のケンシロウとは違う攻め方だわ……」
「んでもって自分の肉の揺れで倒れそうになったジンチンはんが変身して」
「へっ、変身?」
「はいな。鬼ババみたいなポケモン……ちゃう! バケモンに変身して、オッパイ振り回して攻撃しはじめて」
「おっ、オッパイを?」

739 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 22:11:56.25 ID:9N9Ik7Hj.net
「なるほど、手技勝負がご希望か?」
リウ・パイロンはそう言うと受けて立ったのだった。
四本の腕の攻撃を二本の腕で捌くと、ロングフックをジンチンの両肩に食らわせた。
「うぉっ?」
腕を封じられたジンチンは重い乳房を振り回したが、もはやリウの敵ではなかった。
胸の谷間、その隙間を狙って超低空アッパーが炸裂した。ジンチンの死角から飛んで来た拳は顎を正確に捉えた。
浮き上がろうとするその両乳房をリウはすかさず手に持つと、マットに叩きつけた。
「おぎゃあ!!」
産声のような断末魔を上げ、ジンチンが立ち上がらないのを見届けると、レフェリーは勝敗を告げ、終了のゴングが鳴った。
ゴングが鳴るとリウはジンチンをお姫様抱っこで抱き起こし、囁いた。
「お前、本当にこんな所にいるにはもったいない女だぜ。散打は女性にも門を開いている。是非とも来い」

740 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 22:20:40.59 ID:9N9Ik7Hj.net
「ジンちゃんが……負けた?」
「はいな。あんなジンチンはんは初めて見た……っちゅーかあの人、女やったんですなぁ!」
「あたしが……倒すはずだったのに……」
「ハオはん? 俺、日本人やし、ようわからんのやけど、中国語に女言葉ないの知っててもなんか女っぽい喋り方になってまっせ?」
「ジェイ君……」
「はいな〜?」
「リウ・パイロンは昔、あたしをレイプしたのよ」
「ヒエーッ!?」ジェイはララの逞しい男のボディーを見ながら叫んだ。
「アイツにあたしの居場所を知らせないで、お願い!」
「え? え? リウ・パイロンはハオはんに会いに来たんでっか?」
「そうよ。あたしの体を奪いに来たのよ」
「キャーッ!?」

741 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 22:37:16.93 ID:9N9Ik7Hj.net
ララはジンチンに会いにシャオ四川料理店の横の路地へ行った。しかしそこに彼女の姿はなかった。
店に入るとシャオが一人いて、項垂れていた。
「よう、マスクマン。ジンチンなら寺の裏の広場にいると思うぜ。
しかしアイツでもリウに勝てねェとはな……。っつーか、ジンチンが女だったなんて……」
「女だったら何が変わると言うの?」
ララはシャオの言い方になんとなく腹が立ってそう言った。
するとシャオは少し寂しそうに笑うと、言った。
「行ってみな。見てみりゃわかるぜ」

寺の裏の広場に行くと、背の高い女性が一人座っているだけで、ジンチンの姿はなかった。
しかし女性は顔を上げるとララの名を呼んだ。
「ララちゃん」
「ジっ、ジンちゃんなの!?」
あまりの変わりようににわかには信じ難かった。サラサラの黒髪ロングストレートのウィッグを被り、化粧までしている。
今まではどんな時でも上半身裸だったのが、白地に赤い模様の入ったワンピースを着ている。
「あたし……恋しちゃったみたい」
ジンチンの言葉にララは後退りし、やがて駆け出した。
「リウ・パイロンには敵わないというの?」
ララは走りながら叫び続けた。
「リウ・パイロンにはどうしても敵わないというの!?」

742 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 22:57:54.19 ID:9N9Ik7Hj.net
映画館の前を駆け抜けようとして、ララはふと足を止めた。
入口の前には大きなポスターが貼ってあった。
『上海ゴースト・ストーリー 1月26日より公開』
シューフェンお姉さんの主演映画だわ……。ララが入口に近づいて行くと、モニターに映画の予告編が流されていた。
主演女優の死のニュースが手伝って、映画は公開前から全中華で大きな話題となっていた。
映画の場面が細かいカットで映し出され、ふいに画面にシューフェンの顔がアップで登場した。
自分が癌であり、余命幾ばくもないことを告白し、自分の死でこの映画の公開が中止にならないことを願うメッセージの動画だった。
シューフェンの声が聞こえているのだろうか、身体の中でカエルの卵ほどになっているハオがぴくりと動いた。
シューフェンが喋るたびに大きくなって来る。
「お兄ちゃん……」ララはそのハオをお腹の赤ちゃんのように愛しく感じた。「シューフェンお姉さんの……私の、お兄ちゃん」

743 :創る名無しに見る名無し:2019/01/07(月) 23:01:10.17 ID:9N9Ik7Hj.net
「……もう、やめよっか?」
ララは呟いた。
「リウ・パイロンを殺すより……私はやっぱりお兄ちゃんを生かしたいや」
涙がぽろりと零れたと思ったら雨だった。
突然、ティティ、タータと鉄階段を叩いて降り出した雨にララは駆け出し、二人のアパートの部屋へと帰った。

744 :創る名無しに見る名無し:2019/01/08(火) 11:05:29.78 ID:lrqezZjF.net
暖房をつけた部屋でララは卵を温めるようにハオの復活を待った。
養分を吸っていたチューブからは逆に養分をハオに注いでいた。
「私達、負けたのよ」
ララはそう考えながらも目を閉じ微笑んでいた。
「闘いもしないうちから、負けたのよ」
ハオがだんだんと大きさを取り戻して行くのが身体の中に感じられて嬉しかった。
「やっぱり私、覚悟なんて持てない。そのためにお兄ちゃんを消してしまうなんて出来なかった」
ノートパソコンの画面には音量を消したTV番組が、中国の明るい未来を謳っていた。
「早く大きくなってね、私のお兄ちゃん」
ララはもうリウ・パイロンを殺すことは考えていなかった。メイファンの元に帰るつもりもなかった。
この部屋でずっとハオと二人で平和に暮らして行きたい、そう願うようになっていた。
しかしララの心には不安があった。こんなことをした自分をハオは果たして許してくれるだろうか? 嫌われて、追い出されてしまうんじゃないだろうか?
それでもいい、ララは思っていた。そうなっても仕方がないから、とにかくハオを助けたい。
そして叶うならば自分の身体を得て、ハオと兄妹のように、出来るならば恋人同士のように生きて行きたい、と願うのだった。
「やっぱり分不相応なことはあるの」
ララは自分の、ハオの身体を抱き締めた。
「私達はメイファンやリウ・パイロンのようにはなれないし、勝てない。平凡に生きて行くのがお似合いなの」

745 :創る名無しに見る名無し:2019/01/08(火) 11:13:36.58 ID:lrqezZjF.net
「私はリウ・パイロンに美しい過去を穢された」
ララは目を瞑り、思った。
「でも私はそれを憎んで生きるよりも、ハオさんを愛して生きる未来を選びたい」
そして強く願った。
「ハオさんとの子供が欲しい。その子は私の痛みなんて何も知る必要もなく、ただすくすくと、明るい未来へ向かって生きるの」

746 :創る名無しに見る名無し:2019/01/08(火) 12:07:15.74 ID:lrqezZjF.net
次の日の朝、ララとハオは同時に目が覚めた。
ララが目を開けると、口が「ふにゃ?」とハオの声で喋った。
「お兄ちゃん!」ララは喜びの声を上げた。
ふあぁと長いハオの欠伸が終わるのを待ってから、ララは言った。
「ごめんなさい、お兄ちゃん。ララがバカでした。お兄ちゃんを消滅させるなんて……バカなことをしようとしてごめんなさい」
ララが口の発言権を譲っても、暫くハオは何も言わなかった。
小さく縮こまりながらララが返事を待っていると、ようやくハオは喋りはじめた。
「……そうか、俺、ララに完全支配されようとしてて……」
「……」ララはただ頭を下げた。
「……なんで起こしたんだよぅ?」
「え?」
「俺……すんごい気持ちよかったのに!」
「は?」
「消えるのって気持ちいいなぁ、このまま永遠に眠るのサイコーって思ってたのに……! なんで起こすんだよぉ〜」
ララは笑いながら泣き出してしまった。
やっぱりこういう人なんだ、お兄ちゃんは。私のとんでもない過ちを、アホのフリをしてまで寛大に許してくれる。
この優しさに甘えちゃいけないんだ、私ももっと優しく、そして大人にならなければ。強くそう思った。
「お兄ちゃぁ〜〜〜ん!」
ララは激しくハオに抱きつきたかったが、無理だったので布団に抱きつき、ひとしきり頬を擦り寄せて泣いた。

747 :創る名無しに見る名無し:2019/01/08(火) 12:21:49.84 ID:lrqezZjF.net
いつもの公園の太極拳へ二人で行った。
身体は一つだけど、ララの中では二人で手を繋いで出かけた気分だった。
美しく緩やかなハオの動作を感じながら、ララはいつか自分も太極拳を覚えたいと思っていた。
今は信じられないほど何も知らず、何も出来ない自分だけど、ハオと助け合いながら、少しずつでいいから成長して行こう、
いつかは素敵な大人になって、自分を愛し、みんなを愛せるようになろう、そう思うようになっていた。
常緑樹の風に揺れる公園で、ララは青い空に希望で満ち溢れる未来を見た。

施しは羊のスープとちぎりパンだった。
二人は一口ずつ、味覚も満腹中枢も分け合って食べた。
「美味しいねぇ、お兄ちゃん」
「うん、こりゃ〜うまいな」
ララは昨日の食欲不振が嘘のように元気にレンゲを口へ運んだ。
ハオにはララの顔はもちろん見えないが、その幸せそうな笑顔が見えるような気がした。

一人で会話をしながらあまりにも幸せそうにパンをスープにつけて食べる30歳の男を、周囲は気味悪そうに見ていたが、
二人は静かで優しい時間に包まれて、いつまでもこうしていたいと心を繋ぎ合っていた。

748 :創る名無しに見る名無し:2019/01/08(火) 18:31:04.23 ID:7wisDshK.net
アパートへの帰り道、ララは前々から気になっていた店に寄ろうと言い出した。
「いいよ、俺、服なんか興味ねーし」
ハオがそう言ってもララは頑なになって命令した。
「ダメダメ。お兄ちゃんはもっとお洒落になりなさい」
「お洒落な俺なんて俺じゃねーよぅ」
そう言いながら店に入って来る変な客を店員がニコニコと迎えた。
試着室に無理矢理入らせたハオのボロボロのジャンパー、グレーのトレーナーにグレーのジャージを脱がせると、ララは着せ替え遊びを始めた。
モノトーン基調のイケメン風ファッションをさせてみる。高級スイーツの上にジャガイモが乗っているようになった。
カジュアルな可愛い少年風を狙ってみる。ただの子供になってしまった。
「うーん。お兄ちゃん何が似合うんだろ……」
試しに白いTシャツとジーパンを穿かせてみるとやたらと似合った。
「えー! 格好いい! これいい!」
ハオはヘトヘトになっていたので適当に頷いた。
「でも寒いよねぇ。上に何かあと二枚は着ないと」
適当にトレーナーと革ジャンを着せてみると別人になった。
「わー! まるで映画俳優みたい! 昔のトニー・レオンみたいだよ! これにしよう!」
「ララサン、悪イケド」
「何、その喋り方?」
「オ金ガ無イノデス」
「え? だって地下ファイトで4万元(約60万円)ぐらい貯まってたじゃん」
「大キナ買イ物ヲシタモノデネ」
「はぁぁぁ!? 何買ったの!?」
「今日アタリ届クハズデス」
「しっ、信じられない!」
ララは出した服をすべてハオに片付けさせると、そのまま怒って店を出ようとした。
だが店の出口に可愛いハンチング帽を見つけ、思わず手に取り、鏡の前で被ってみるとよく似合った。
ディズニーのチップ&デールのチップの帽子だ。30元(約500円)だった。
「これだけでも買って帰ろうよ」
「ソノグライナラ買エマスネ」
汚くダサい格好に綺麗な可愛い帽子をひとつ乗せ、二人はアパートへ帰った。

749 :創る名無しに見る名無し:2019/01/08(火) 21:30:29.92 ID:mOgVa5//.net
  ,,;f::::::::::::::::::::::ヽ
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  ( ヽ  /( ,_、)ヽ}
   ヽ..  ィェエヲ;  ぐはあ―――――!! 
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      ̄ヽ、  `\  災二―   ̄ ̄ ̄   三ヾ 、     `ヽ ―ニ    ノ      !  ―ニ    ノ      !
        7ヘヾヾ>  |::::::....             三 ≡__    .ノ   ―~~~⌒ヽ     ノ     ―~~~⌒ヽ     ノ
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750 :創る名無しに見る名無し:2019/01/08(火) 23:28:53.26 ID:7wisDshK.net
シャオ・ホンフーが店でチャーハンの練習をしていると、珍しい客がやって来た。
「おやおや、散打王様がこんな汚い店にまで何の用だい?」
リウ・パイロンは店に入って来ると、「先日はどうも」と挨拶をしてから1枚の写真を胸から取り出した。
「俺の探している男だが、どうやらマスクで顔を隠していたらしい。素顔なら知っているかと思い……」
リウはハオの写真を見せた。いつものハオの、何も考えていないような顔が写っている。
「おや?」シャオは怨恨のある相手に対してだけは物覚えがよかった。「コイツは……」
「知っているのか?」
「俺の料理を食い逃げしやがった奴だ! いや、でも、まさか、コイツが? マスクマン?」
「そうだ。本名はリー・チンハオという」
「ハオ……豪(hao)……なるほどあの額の一文字はそれか! あの野郎、騙してやがったな!」
「どこにいる? 一緒に取っ捕まえに行こう」
「あぁ……」シャオは少し嬉しそうにした。「ズーランという女なら知っているはずだ」
「よかった。手掛かりが出来た」
シャオはほっとしているリウを見ながら少し考えて、言った。
「ところでアンタ、本当に俺のこと覚えてないのかい?」
「知らん」
「シャオ・ホンフーという名前に聞き覚えは?」
「シャオ・ホンフーならよく知っている。尊敬すべき大先輩であり、誇り高き散打の戦士だ」
「そうかい」シャオは憎らしげに睨む。「アンタが選手生命を終わらせたんだよな?」
「シャオ・ホンフーならあれしきのことで未来を見失ったりはせん」
「何だと?」
「少なくともケチな賭けファイトやらボッタクリ料理屋などといった落ちぶれたことはしない男だ」
「てめぇ……!」
「俺の知っているシャオ・ホンフーはそんな男だ」リウはシャオを睨みつけた。「だからアンタのことは知らん」
シャオは体をわなわなと震わせながら、言葉が出て来なかった。
「今度、独立して散打のジムを作るんだが」リウはふいに切り出した。「協力して貰えないだろうか」
「俺にか?」
「新世代の散打の戦士を育てたい。経験豊かなアンタなら打ってつけだと思う」
「へっ」シャオは鼻を赤くしてそっぽを向いた。「黒麻婆豆腐作るが、食うか?」
「頂こう」
「いつか」シャオは調理をしながら言った。「俺と拳を交えてみてくれないか」
「あぁ」リウは水を飲み干すと、少し笑った。「『いつか』なんて言わず、いつでもいいぜ」

751 :創る名無しに見る名無し:2019/01/08(火) 23:46:09.13 ID:7wisDshK.net
ズーランは玄関のドアを開けると知っているイカツイ顔が2つ並んでいるので思わず悲鳴を上げて人を呼ぶところだった。
「シャオ! アンタ! 縄張りを侵すんじゃないよ!」
「ズーラン、ぼっ、僕は。この人が君に会いたいというから連れて来ただけなんだ!」
グレーのスーツ姿に花束を持ったシャオはカチコチになりながらそう言った。
ズーランはもう1つのイカツイ顔を見る。TVでよく見知っているが、会うのは初めてだ。
「リウ・ハイロンさんだっけ?」
ズーランの間違いをシャオが慌てて正した。
「そっ、それは実在の元散打王さんだよズーラン!」
「リウ・パイロンです」と自己紹介してリウは申し訳なさそうに頭を下げた。
「何の用だい?」
部屋に上げる気もなさそうに聞くズーランにリウは写真を取り出し、見せた。
「コイツがどこにいるかご存知ありませんか」
「あら、ハオ。見事にアホ面を捉えた1枚ね」
「ご存知なのですか?」
「ずっ、ズーラン、散打王様がお客なのに部屋に上げないのは失礼だよ?」シャオは上がりたそうにしている。
「うーん」ズーランは暫く考え、「知らないわ」と言うなりドアを閉めた。

752 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 00:19:06.06 ID:l0cW4ZyH.net
ハオとララがアパートに帰ると、宅配便のトラックがちょうどその前に停まったところだった。
「あっ」ハオがとても嬉しそうに声を上げる。「来た来た。届いたぞぅ」
ドライバーのお兄さんから直接荷物を受け取り、サインをするとウキウキしながら部屋に持って入った。

「何なのこれ」
部屋の大部分を占めて床に置かれたでっかい長方形の段ボール箱を見ながら、ララが不安そうな声で呟いた。
「これはね」ハオはウインクをしながら言う。「君へのプレゼントさ」
プラスチックのバンドをハサミで切り、ガムテープを破ると蓋が開いた。
中身があらわになる。
「ヒッ!?」
思わずララは小さく悲鳴を上げた。中には全裸の女性の死体が……
「ノンノン。死体じゃないんだ、これは」ハオが人差し指を揺らして言った。
「ななな何なのよ、これ……」
「リアルラブドールのメンメンちゃんさ」
ハオはメンメンちゃんをお姫様抱っこして箱の中からお迎えした。
身長155cmのボディーにEカップの豊満なおっぱいが柔らかく揺れている。
「凄い……」ララは興味深そうにメンメンちゃんを眺めた。「人形なの? これ、本物みたい」
「凄いだろう?」
「すごーい……」
「僕も初めて手にしたが、夢のような可愛さだ」
ララははっとして聞いた。
「もしかして……4万元したデカイ買い物って……」
「この娘さ」
「バカ!?」ララは激しくなじった。「バカなの!? 真性のバカ!? あんたバカ!?」
「バカじゃない!」ハオは顔の表情を引き締めた。「ララ、これはイヤらしい人形なんかじゃない。君の新しいボディーなんだよ」
「ハァ!?」
「見てごらん。よく見てごらん。君にそっくりな人形を選んだつもりだ。よく見てごらん」
ララはメンメンちゃんをまじまじと見た。確かに顔はメイファンを白くしたようだと言えなくもなかった。しかしおっぱいは大きすぎる。
「もしかして……あたし、これに入るの?」
「そうだよ。君は自分の身体が欲しかったはずだ。そうだろう?」
「……人間の身体が、ね」
「大丈夫。日本のエロマンガなんかでよくあるだろ? 魂が入った人形は変身して人間になるんだよ」
「そうなの?」
「そうだよ! さ、早く早く! 中に入ってみて」

753 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 00:43:07.06 ID:l0cW4ZyH.net
「うーん」
ララは激しく悩んだ。
確かに身体は欲しい。4歳で産まれてから、たぶんずっと欲しかったものだ。決して叶わないと思っていた夢だ。
でもこれは違う、なんか違う。身体と言うよりは、なんかの専用のオモチャだ。
「大丈夫なのかなぁ」
「大丈夫! 苦しかったらすぐに俺の中に戻って来ればいいんだから」
「うーん」
「きっと気に入るよ」
「まぁ、入ってみるけど」
「そう来なくっちゃ!」
「でもどこから入るのこれ?」
「口がね、開くようになってるんだ」
ハオはメンメンちゃんの可愛い口をぱっくりと開いて見せた。
「でもこれ、身体の中まで貫通してないよ?」
「そっ、そうか。バキュームを強くするためだな!? じゃあ、他に……穴は……」
「あー……」
ララとハオは同時に見つけてしまった。あからさまにベタな部分に打ってつけの穴が開いていた。
ハオはメンメンちゃんに大股開きをさせると、確認した。
「うん、大丈夫だ。ここからなら中まで入れる。骨まで見えるよ」
「そだね。じゃあ、入ってみる」
ハオは大きく口を開けると、メンメンちゃんのあそこにぴったりと吸い付いた。喉の奥から何か綿飴のようなものが出て来る。
それはずるずるとハオの口から出ると、すぽんと人形の穴に飛び込んだ。
ハオはニコニコ顔でメンメンちゃんの下半身から口を離すと、待った。
人形がぴくりと動き、顔を左右に振ってから起き上がり、可愛い口からララの声が出て来るのを待った。
しかし、人形はぴくりとも動かない。
「……ララ?」
人形はぴくりとも動かない。
「ラーラちゃんっ?」
人形はぴくりとも動かない。
何かヤバそうな空気を感じ取り、ハオは急いで人形の性器部分にまた口をつけた。
「おい! ララ! 戻れ!」
しかしララは戻って来ない。
「ララ! ララ! 戻って来い!!」
ララは気配すらなくなってしまった。
「あああアアーーー!!! ララ!?」

754 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 00:55:42.30 ID:l0cW4ZyH.net
「メイファン……」ハオは思わずその名前を口にした。「メイファン……! 助けて!!」
そして震えの止まらない手でララのスマホを取り、電話帳を開いた。
登録されている番号は一つだけ、習近平だけだった。構わずかける。
『やぁ、ララちゃんっ』すぐに習は電話に出た。
「メイファンに代わってくれ!」
『あれ? ララちゃんじゃないな……。ハオ君かね? ララちゃんは』
「いいから早くメイファンに代わってくれ! 頼む!」
『いいのかね? そんな言い方をして。私は』
「たかが国家主席の分際で邪魔しないでくれ! いいからメイファンに代われ!」
『……切るよ』
「わわわわわかった! ごめんなさい! ララがピンチなんです! メイファンに代わってください!」
『それならそうと早く言ってくれればいいのに』
そう言うと習は電話の向こうで『メイファン』と呼んだ。すぐにメイファンが電話に出て来た。
『よう、ハオ兄か? どうしたことだ、私に電話など』
「ララララララがいなくなったんだ! どうしたらいいのかわからない! 早く来てくれ!」
『何だと? どこだ?』
「○○街の××番地のアパートだ。早く! 頼む!」

755 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 01:19:32.15 ID:l0cW4ZyH.net
『施設』からそんなに近いわけもないのに関わらず、メイファンは10分もかからずにやって来た。
「何だ、これは……」メイファンは床に寝そべっている妙な人形を見ながら険しい顔をした。「もしや、ララをこれに入れようとしたのか?」
「入れたんだ!」ハオは答えた。「確かに入ったんだ! 入ってから、消えてしまった!」
メイファンは人形の中を見た。部屋の中の隅々まで気を張り巡らせた。そして、言った。
「ララが……どこにもいない」
「人形の中は?」
「いない」
「もっとよく探してくれよぅ!」
メイファンは恐ろしい目でハオを見、唇を噛むと、言った。
「貴様……こんな呼吸も血液もないものに入ってララが生きていられると思ったのか?」
「いいから探してくれ!」
「ララは……いない。恐らくこれに入れられた瞬間、即死した」
「そく……っ!」
メイファンはテーブルの上に置かれていたディズニーの帽子を力を込めて掴むと、『気』を込める。帽子のツバが鋭い刃物に変わる。
ハオの右手の指先が4本、揃って飛んだ。
「貴様などに大切な姉貴のことを任せたのが間違いだった」
メイファンはそう言いながら帽子のギロチンを振るった。ハオの左耳が根本から飛んだ。
ハオは悲鳴を上げて泣きながら、されるがままになっていた。
「返せ! 私の最愛の姉を!」
ハオの鼻が飛んだ。豚の鼻のようになった顔でハオはただ泣くしか出来なかった。
「返せ!」メイファンも大粒の涙を流し、噛みしめた唇からは血を流していた。

756 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 06:25:39.88 ID:i8WOeisQ.net
この時メイファンは初めて確信した。

リー・チンハオの本質は邪悪であると

757 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 08:01:01.99 ID:zT0RUHU0.net
ハオはララに新しいボディをプレゼントしたのは
自分に都合が良いオナホと家政婦が欲しかったからで、ララに自由を与えたいわけではなかった。

ハオには愛というものを理解していなかった。

758 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 08:19:41.30 ID:8YS9dqxw.net
「お前の言う通りだ」
ハオは>>757の言うことを認めた。
「動くオナホなんて最高じゃないか! って思ったんだ。しかも金さえあれば、顔もボディーも飽きたら交換し放題の恋人なんだぜ!?」
それから泣き崩れた。
「だって男なら誰だってそういうの夢見るじゃないかぁぁ! それにそれは別として、ララのことは本当に可愛かったんだ。本当の妹以上に! 愛し始めてたんだ!」

759 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 15:34:05.05 ID:cjjhNVI7.net
しかしメイファンはハオの首をはねることはしなかった。
本当はギタギタに切り刻んで肉マンゴーのようにしてやりたかったが、それでララが帰って来るわけではない。
何よりメイファンはまだ諦めていなかった。
どこに手がかりがあるかもわからない、現場はなるべく壊さずに留めておきたい。ただそれだけの理由でハオを殺さなかった。
もちろんハオを殺すよりも苦しい目に遭わせてやりたいという気持ちもあった。しかしそれはララの生存を諦めてからの話だ。
メイファンは部屋の真ん中に座り、抱いた膝に顔を埋めて考えた。
『気』だけの存在であるララが死んだらどうなるのだろうか。死体のようなものは何も残らず、ただ消えるだけなのだろうか。
あるいは綿飴が溶けた跡のようにその場にこびりつくのだろうか。人形をかっさばいてみればそんな跡がついているかもしれない。
しかしメイファンはそれを見るのが怖すぎて、人形を裂くことが出来なかった。

ブヒブヒと豚が洟を啜るような音が聞こえる。鼻のないハオが泣いている声だ。
泣く以外に何も出来ないのか、この男は。そう考えてすぐに自分も同じだということに気づく。

膝に顔を埋めてメイファンはララのことを思った。
自分が幸せかどうかなんて考えたことがないが、幸せなのだとすれば、それはすべてララによるもののように思えた。
ララに名前を付けてあげ、誕生日をプレゼントし、ララの悩みを聞いてあげ、ララの出来ないことや苦しいことは全部してあげ、自分の身体まで分け与えた。
こう考えると妹が姉にしてあげてばっかりのように思えるが、してあげることが妹にとっては何よりの喜びであり、幸せだった。
ララからしてもらったことも少なくはない。戦いで傷つけば癒してくれ、戦闘服が綻びれば縫ってくれた。しかしそれ以外は?
裁縫や編み物の得意な姉は、妹のために何度かマフラーや帽子や手袋を編んでくれようとしたことがあった。
しかしチマチマとした作業を見ているのが苦痛だった妹は、編みかけのそれを毎度ぶち壊した。
ララは何もしてくれなかったのではない、妹が何もさせなかったのだ、と今更気づく。
誕生日を祝ってくれようとするのを毎回「興味ねーから」と断った。15歳で大学に受かったのを誰も誉めてもくれなかった時、
姉は1人だけ誉めまくった上にコーラとフライドチキンだけの細やかなパーティーで祝ってくれたが、
あれも本当は豪華なパーティーを開きたかったに違いない。妹が気恥ずかしくて断るだろうことを知っていたのだ。
何をしてくれるまでもなく、ただ一緒にいてくれるだけでよかった。
自分が『気』の使い手としてここまで強くなれたのはララのお蔭だ。
何より、暗い道を歩いて来た自分を明るく照らしてくれたのはいつでもララたった。
ララがいたから、自分は……
「むぇいばむ!」
ふいにハオが叫んだ。

760 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 15:57:50.96 ID:cjjhNVI7.net
(むぇいばむ)? あぁ、鼻がないから(メイファン)と言えないのか……。
どうでもいい、話しかけるな。そう思っているとハオはもう一度叫んだ。
「むぇいばむっ!」
殺気を込めて片目で睨んでやった。しかしハオが示しているものを見てメイファンの殺気が緩む。
「こでっ!」
(これっ!)と言いながらハオは自分の指を示していた。さっき斬り落としたはずの指先が、再生しつつあった。
指先だけではない、耳も、鼻も、肉が盛り上がって再生を始めている。
メイファンは立ち上がり、ハオの中をもう一度よく見た。青いので気づかなかったが、確かにララの『気』を感じる。
しかしすぐに目を伏せ、首を横に振った。
「お前の中にいるうちに少し同化していた部分があっただけだ。いわばララの『匂い』みたいなものだ」
しかしそれはハオの身体を治癒するに伴い少しずつ小さくなっている。
メイファンはハオの耳と鼻を拾うと、洗いもせずに元の場所にあてがった。みるみるくっつき、傷も塞がって行く。
するとララの『気』の消費が止まった。
「匂いだけでもララのものだ。これ以上小さくしないでくれ。怪我をするな。怪我をしたら殺す!」
そう言いながらもメイファンは、なおもハオを斬り刻んでやりたくてたまらなくなった。
床に寝そべっているふざけた人形にその気持ちをぶつける。手刀を一振りすると、人形の首から腰の下までが鋭く裂けた。
獣が唸るような声を上げてさらに手刀を振るう。人形はあっという間にズタズタになり、その身体の内側の骨まで切断された。
内側をさらけ出した人形をメイファンは隅々まで確認する。どこにもララの遺した跡のようなものはなかった。

761 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 16:18:55.74 ID:cjjhNVI7.net
人形を貫通して床までズタズタに斬り裂かれた部屋で、二人は距離を置いていつの間にか泣き疲れて眠っていた。

立てた膝に頭を乗せて眠るハオの前に、シューフェンとララが並んで立った。

「ハオ」シューフェンが言った。「早速乗り換えてくれるのは別にいい……。でも、」
ハオの体がびくんと痙攣した。それを見てシューフェンは続きの言葉を飲み込む。
「ハオ」シューフェンはハオの頭を撫でた。その語調は優しくなった。「苦しむのよ」
ハオはシューフェンを涙目で見、助けを求めた。
「苦しむのよ。苦しんで、苦しんで、そして償いなさい」
「償うって……? どうやって……?」
「それはあなたが考えるの」
「お兄ちゃん」ララが喋った。
ハオはララを見る。メイファンの身体にいた頃のララだ。少し巻いた髪が風もないのに揺れ、白い肌はさらに白く見えた。
「ララ! ごめん……!」
「お兄ちゃん」
「ごめん! ごめんよぅ! ララ! 本当にごめんよぅ!」
「早く私を見つけて」
「え!?」
「助けて。早くしないと、私……」

762 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 16:41:32.78 ID:cjjhNVI7.net
ハオは飛び起きた。
同時にメイファンのスマートフォンが鳴った。
メイファンは緩慢な動作で応答ボタンを押す。
「もしもし?」
『メイファン』習近平の声がした。静かな部屋でハオにもよく聞こえた。
「習近平か。どうした」
『何だか知らないけどね。リウ・パイロンが町で暴れているらしい』
「何だそりゃ……」
『お前、ちょっと行って片付けて来てくれないか。住民がうるさいんだ』
「……今どこにいるんだ?」
『さっき××街の小吃店を軒並み破壊したところらしい』
メイファンは電話を切ると、再び膝に顔を埋めた。
自分は習近平に必要とされている。しかしそんなことは元々どうでもよかった。
ハオを惨殺してから自分も死のうかと夢の中で考えていたところだ。いくら国家主席のボディーガードと言えども、自分で自分を殺す自由ぐらいあるはずだ。
しかしそこになぜかリウ・パイロンの顔がアップで割り込んで来たのだった。
泣きながらリウにすがりついた。しかし夢の中のリウは知らん顔をして背中を向け、去って行った。
「メイファン」ハオが話しかけた。「ララは生きてるぞ」
メイファンは藁を掴む心持ちでハオに目を向けた。「根拠は?」
「夢を見たんだ」
「夢?」
「夢の中で、ララが『早く助けてくれ』って……!」
メイファンは勢いよく立ち上がるとハオの右腕を斬り落とした。
「ウワァァァー!?」
斬り口から大量の血が吹き出し、壁や床やベッドを染めた。
「怪我をするなと言っただろうが!!」
そう叫ぶとメイファンは小声でもったいないもったいないと言いながら斬ったばかりの腕をくっつける。
そして上着をはおると出て行った。
「なんか意味がわからんが行って来る。貴様、逃げるなよ?」

763 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 16:46:09.53 ID:cjjhNVI7.net
「逃げるもんか」
ハオはそう呟きながらズタズタにされた人形を抱いた。
「逃げるもんかよ!」
抱きながら、激しく体を揺すった。
「ララ! ララ!? ここにいるんだろう!? 出て来い! 早く出て来てくれ!!」
部屋中が血まみれになり、床が裂けてささくれ立つ中、ハオは必死で呼びかけ続けた。

764 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 17:13:01.22 ID:cjjhNVI7.net
「あら? あれ、リウ・パイロンじゃね?」
小吃店『永遠大王小吃』を営む王さんは、店の中から通りを見て、従業員の陳君に言った。
「本当だー! リウ様だ! って、何してんの、あれ?」
黒いスーツにサングラスをかけたリウ・パイロンは向かいの果物を並べた屋台に超低空アッパーを決めていた。
浮き上がったリンゴや梨にとどめを刺すでもなし、ただそこら中の屋台を破壊して回っている。
「やばいよ……これやばいよ! 警察……っ!」
陳君が言い終わるのも待たずにリウは小吃店に突進して来ると、ぐつぐつスープの煮え立つ170リットルの寸胴鍋を拳で宙に浮かした。

765 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 17:31:05.21 ID:cjjhNVI7.net
「おっ? また来てくれたのかい」
店の前で掃除をしていたシャオ・ホンフーは嬉しそうに笑った。
しかしやって来たリウ・パイロンの目つきが何やらおかしい。ひきつけを起こしたように上ばかり見ている。
「おい……?」
心配そうにしながらも近寄ろうとしないシャオにリウは「フギャアァァァ!」と猫のように叫びながら襲いかかった。
あまりの速さにシャオは避けることも出来なかったが、リウの拳はシャオの肩をかすめて店の扉に突き刺さり、破壊した。
「なっ! 何しやがんでェ!」
シャオは竹箒を投げ捨てると散打の構えを取った。
「『いつでもいい』とか言ってたけど、こりゃァねェんじゃねェか? あまりにも乱暴すぎ……っ!」
リウの両拳がハンマーのように振り下ろされ、なんとか避けたシャオの後ろにあったテーブルを粉々にした。
「ちょっと待ってくれ! 店が……!」
リウはまるでもがき苦しむような滅茶苦茶な動きで店の壁をみるみる破壊し、中へと攻めこんだ。
「ぼったくりはもうやめたんだ! 清く正しく生きるから! どうか……!」
リウは厨房内の鍋をボコボコにへこませ、中華鍋を持って振り回し、すべてのものを破壊し尽くすと、狂ったように叫びながらようやく去って行った。
「あぁ……」シャオは泣き崩れた。「あぁぁ……」

766 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 17:35:58.02 ID:cjjhNVI7.net
警官隊はもちろん出動していた。
発砲許可も出ていた。
しかしリウ・パイロンの狂った動きに銃弾は空を切った。
国民的英雄に銃を向けることが出来ないファンの警官も多く、彼らはまったくの無力だった。
盾を持った警官隊をリウは超低空アッパーでまとめて浮かすと何もせず走り去った。

767 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 17:43:14.54 ID:cjjhNVI7.net
メイファンは情報を得ながらリウを追っていたが、駆けつけた時にはもうどこかへと去っていた。
しかしそのたびに、後に残された匂いに段々と表情を明るくした。
そんないたちごっこを繰り返すたびに陽は傾き、遂には夜になった。
『施設』も警察もリウの姿を見失い、情報が入って来なくなった。
メイファンが屋台でラーメンを食べているとスマートフォンが鳴った。
画面を見ると、着信相手の名前はリウ・パイロンだった。

768 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 17:56:10.79 ID:hbfHe/1S.net
ハオは飛び起きた。
同時にメイファンのスマートフォンが鳴った。
メイファンは緩慢な動作で応答ボタンを押す。
「もしもし?」
『メイファン』習近平の声がした。静かな部屋でハオにもよく聞こえた。
「習近平か。どうした」
『何だか知らないけどね。リウ・パイロンが町で暴れているらしい』
「何だそりゃ……」
『お前、ちょっと行って片付けて来てくれないか。住民がうるさいんだ』
「……今どこにいるんだ?」
『さっき××街の小吃店を軒並み破壊したところらしい』
メイファンは電話を切ると、再び膝に顔を埋めた。
自分は習近平に必要とされている。しかしそんなことは元々どうでもよかった。
ハオを惨殺してから自分も死のうかと夢の中で考えていたところだ。いくら国家主席のボディーガードと言えども、自分で自分を殺す自由ぐらいあるはずだ。
しかしそこになぜかリウ・パイロンの顔がアップで割り込んで来たのだった。
泣きながらリウにすがりついた。しかし夢の中のリウは知らん顔をして背中を向け、去って行った。
「メイファン」ハオが話しかけた。「ララは生きてるぞ」
メイファンは藁を掴む心持ちでハオに目を向けた。「根拠は?」
「夢を見たんだ」
「夢?」
「夢の中で、ララが『早く助けてくれ』って……!」
メイファンは勢いよく立ち上がるとハオの右腕を斬り落とした。
「ウワァァァー!?」
斬り口から大量の血が吹き出し、壁や床やベッドを染めた。
「怪我をするなと言っただろうが!!」
そう叫ぶとメイファンは小声でもったいないもったいないと言いながら斬ったばかりの腕をくっつける。
そして上着をはおると出て行った。
「なんか意味がわからんが行って来る。貴様、逃げるなよ?」

769 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 18:09:21.26 ID:cjjhNVI7.net
満月の浮かぶ公園に駆けつけると、リウ・パイロンはメイファンを見つけてゆっくりとベンチから立ち上がった。
黒いスーツがボロボロに汚れている。
「リウ!」
「しっ」
リウは静かにするよう求めた。メイファンもよくわかっていて、ゆっくり頷いた。
「やっぱり……ここだったか」
そう言いながらメイファンが見つめる先、リウ・パイロンの身体の中で、ララが卵のように丸くなって眠っていた。
「眠っている間はいいんだが……」リウが囁き声で言う。「起きると手がつけられない」
「しかしなぜお前の中に?」
「話は後だ。どうやら俺の身体は相性が悪いらしい。早くお前の中に戻そう」
「相性だって?」メイファンは可笑しそうに吹き出した。
「しっ! 起きるとまた拒絶反応が出る」
「わかった」
「それで……どうやるんだ?」
「ん?」
「どうやってお前に戻せばいい?」
「あー……」
「?」
「その……あれだ。口と、口で……」
「ああ」リウは理解した。
そして優しい動きでメイファンの腰に右手を回し、左手で頭を支えた。
「こうだな?」
「あ……っ」思わずメイファンの口から声が漏れた。
リウの口が近づいて来る。メイファンは頬を紅くし、目を閉じた。
口を大きく開けなければいけないのに、逆にすぼめ、桃色の唇をチューの形にした。
『気』の鎧を解いて甘酸っぱいフェロモンを放出させた。
身を守るように丸く固まっていたララが、リウの中で「フワアァァゥ」と威嚇する声を上げると突然、暴れ出した。
「あっ! もう……」
何か言いかけたメイファンの真下からリウの超低空アッパーが発射された。
『気』を纏わないただの女の子になっていたメイファンにそれをかわすことは不可能だった。
メイファンは満月の夜空を30m飛び、常緑樹の中を突き抜けると、冬の冷たい池の中に突っ込んだ。

770 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 20:00:33.39 ID:PLdVOJGP.net
メイファンは救急搬送されたが、1時間後に死亡が確認された。

771 :創る名無しに見る名無し:2019/01/09(水) 21:46:24.42 ID:pCyQ/FK/.net
「そんなヤワではないわ!」
メイファンは強がったが、その身はしっかり入院中だ。
顎骨折、手指骨折、街路樹の中を通った時の擦り傷多数、池に落ちた時の心臓マヒはとっさに『気』を張ったことで免れた。

772 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 05:51:11.74 ID:WdFOIkRV.net
リウ・パイロンを蝕む、拒絶反応の正体はララが彼の操縦桿を操作しているために起きている現象だった。

正確にはララの一部…彼女が捨てようとした負の感情の部分が"反乱"を起こしたのだ。
リウを暴走させているのは彼の社会的地位を失墜させるためだが、ハオとメイファンをいたぶり殺すためでもあった。しかし、リウの精神に阻まれ完全に操作できてはいない。
いずれにせよこのままではララは負の感情に支配され、狂気と暴力の権化になってしまう。

一方、ハオはというと…

773 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 06:40:50.24 ID:f1C1aqNJ.net
「ぐー・・・ぐごがっ・・・グゴー・・・」
ズタズタになった人量を抱きながら眠っていた。
メイファンが病院で苦しんでいるのにもかかわらずにだ。

ハオは夢を見ている空虚だった幼少期の夢だ。

774 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 07:01:47.01 ID:71emq8n4.net
ハオは貧しい農村の生まれだった。
幼い頃の彼の世界はとても狭く、友達といえば豚の小六、アヒルのワーワー、そしてママだけだった。

775 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 07:49:01.16 ID:Vs3iChv/.net
だがハオの家はどちらかといえば裕福で
村のはずれにある大きな家に住んでいた。
ハオの父親は役人の一族で基本的に家にはおらず、住人からの評判は悪かった。

そのためハオが外を出歩くと白い目で見られた。

776 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 10:07:36.11 ID:wry9EzEY.net
幼少の頃、ハオには欲しくてたまらない物があった。それは……

777 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 12:23:29.34 ID:ILbKrhJl.net
兄弟である。特に妹だ。
時の1人っ子政策により、中国では兄弟のいる人間のほうが少なかった。
しかしハオは童話「ヘンゼルとグレーテル」に出て来る兄妹に憧れ、いつか絶対に可愛い妹が欲しいと強く思っていた。

778 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 17:59:40.89 ID:ILbKrhJl.net
ちょうどそんなことを思っていたハオ9歳の頃、遠く甘粛省の小さな町で、ララは胎児として生を受けた。
しかし、遠くのハオの「妹が欲しい」という邪悪な願望を受信したのか、胎児は成長するどころかどんどん小さくなり、
遂には『気』だけの存在となり、その身体は消滅してしまった。

779 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 18:29:52.95 ID:ILbKrhJl.net
リウ・パイロンはなんとかハオの居所を突き止め、アパートを訪れていたのだった。
玄関へ向かって歩いていると、壁をすり抜けて白い煙のようなものが出て来た。
リアルラブドールの首の後ろにメンテナンス用の穴が開いており、そこから抜け出し、壁をすり抜け、ちょうどやって来たリウの前に現れたそれは、ララの『気』だけの姿だった。
息が出来ずに苦しんでパニックを起こしているララに気づくと、リウは自分の身体に入るよう促した。
しかしララがあくまでパニックになっているので、リウは自分からララを吸い込んだ。
「……で、ララはリウに入るとすぐに発狂し、街へ向かって走り出したそうだ」
メイファンの説明を聞き終わると、ハオはへなへなと病室の床に座り込んだ。
「よ、よかったぁぁぁ」泣き出した。「生きててよかったぁぁぉ」
「よくはない」包帯だらけのメイファンはベッドに釘付けになったまま言った。
「うん」ハオは頷く。「リウを止めないと、町が滅茶苦茶になってしまうな」
「町なんかどうでもいい」
「どうでも……って?」
「リウが正気なら私も一緒に破壊の限りを尽くしたいところだ」
「ゴジラ2体上陸か!」
「あのままだとララは完全に気が狂う」
「そうなの!?」
「この世で一番殺したいリウの体内にいるのだ。下手すればリウの中からリウを殺してしまうぞ。そうなればもちろんララも同時に、死ぬ」
「ど、どうすれば?」
「お前を呼んだのはそのためだ」
「お、俺? どうすればいいの……」
「お前の中に私が入る」
ハオは露骨に嫌そうな顔をした。
「私の身体はこの通りだ。まともに動けん。だからお前の身体を使って私がリウを止める。止めた後、ちゅ、チューして……ララを吸い出す」
「でもお前が出たらお前の身体、死ぬんじゃねーの?」
「病院で生命維持装置を用意してくれる。おっ、ちょうど来たぞ」
看護婦と医者が並んで大袈裟なほどの生命維持装置を押して入って来た。
「さぁ、ハオよ。早速、私をお前に挿入させろ」

780 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 18:57:42.00 ID:ILbKrhJl.net
「し……失礼します」
ハオは心から嫌そうに、仰向けになって大きく開けているメイファンの口に口を重ねた。
「痛い!」メイファンは思い切り牙を立てて噛みついた。「顎を骨折しているのだぞ! もっと優しくしろ!」
「……ごめんなひゃい」ハオは口の両端から流血しながら、泣いて謝った。
「もう一度だ」メイファンがまた虫歯治療の患者のように大口を開ける。
ハオはびくびくしながらそこへ自分の口を重ね、すっぽりと隙間なく繋げた。
メイファンはきばった。
『気』の流れの中に己の存在を潜らせ、ハオの中に送り込もうと頑張った。
しかしどうしても喉から外へ出ることが出来ない。
二人はたまらず口を離した。荒い呼吸を整える。
「うーん。ここまで出てるんだが……」メイファンは息が落ち着くと、言った。「体位を変えてみよう」
メイファンが横を向く。ベッドから顔をずらすメイファンの顔をハオががしっと掴み、犬のお座りのポーズで口を塞いだ。
しかしダメそうなので、メイファンがハオに命令した。
「貴様も協力しろ。吸い出せ」
ハオは頑張った。ちゅーちゅーと一生懸命吸った。ヂュゥ〜〜〜ヂュゥ〜〜〜に音が変わるまで吸った。
「痛いわ!!」メイファンが歯を食いしばった。
「ギャアア!!!」ハオの唇がスッパリ切れた」
「なんで出られないんだ! クソ!」
メイファンは起き上がるとハオをベッドに叩きつけ、口を押し付けた。
「イダイイダイ!!」ハオが悲鳴を上げる。
「アガアアアア!!!」メイファンがきばる。
「あはあはあはあは」ハオが泣きながら笑い出す。
「オゲーッ!! オゲーッ!!」メイファンがハオの口の中にゲロを吐こうとする。
看護婦と医者の見守る中、遂にメイファンはハオの中に入ることが出来なかった。

781 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 19:21:36.64 ID:ILbKrhJl.net
ハオの中に残るララの『気』でメイファンを治療することも試してみた。
しかしどうやらハオ自身の傷しか治すことは出来ないようだ。

「仕方がないな……」メイファンはベッドに寝直すと、ため息を吐いた。「ハオ、お前がやるんだ」
「俺が? 何をやんの?」
「ララが眠っている間、リウは正気になる。その時を狙って吸い出すんだ」
「え。リウとチューすんの?」
「お願いします」メイファンはぺこりとした。
「吸い方わかんねぇよぅ。男の唇吸ったことねぇし……」
「ララも、お前なら素直に自分から戻ってくれるかもしれん。お願いします」メイファンはまたぺこりとした。
ハオは何も言わず、病室に静寂が流れた。
メイファンはフーと息をつく。
ハオが言った。
「俺がリウを倒すよ」
「またアホなことを言い出したな……」メイファンは目を瞑って呆れた。「お前にリウが倒せるわけが……っ!?」
メイファンは目を開けて少しびっくりした。
アホ面でないハオを初めて見た気がした。目が決意に燃え、いつもだらしなく開いている口はキリリと締まっている。
「俺が倒す」
まるでイケメンのような声でそう繰り返した。その決意を証明するように身体から蒼い炎が立ち昇る。
『気』はララを失ってダークブルーに変わっていた。あれっ? なんか強そうじゃね? とメイファンは錯覚する。
「お前、俺のこと『天才だ』ってよく言ってくれたじゃないか」
ハオはそう言うと立ち上がり、宣言したのだった。
「お前の見立てを信じる! 証明してやる! 俺は、何より、ララを助けたい! その想いのままに、死ぬ気で頑張ってララを取り戻す!」

782 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 19:28:46.66 ID:ILbKrhJl.net
そう宣言するなり病室から駆け出して行った。
婦長さんが「走るなボケーっ!」と叫ぶ声が廊下に響いた。
メイファンはあんぐりと開けていた口をようやく閉めると、呟いた。
「ハオ……確かにお前はリウ・パイロンを凌ぐ天才だ」
牛乳を一口ストローで飲むと、ガックリと頭を垂れた。
「しかし、努力の量が違いすぎる。……運よく殺されずに済んだら同じ病室になれることを願う」
そしてまた牛乳を手にし、ズズーと飲みきる音を立てると、言った。
「あとララを取り戻しても二度とお前に会わせる気、ねーから」

783 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 20:04:03.85 ID:f1C1aqNJ.net
「ウガァーッ!」
大男、リウ・パイロンがひっくり返った車のそばで雄叫びを上げる。
周りには粉々に砕けたブロックや木の破片が散らばり、人々が逃げ惑う。

リウは拳を振るい人や物、その血走った目に映るすべてを壊しながらある場所へ向かっていた。

リウは口端を釣り上げ、半開きとなった口でニタァと笑う。
だがそれはリウの意思ではない。操縦桿を握るララのものだった。


「まっててねメイ、お兄ちゃん今殺しに行くから」

784 :創る名無しに見る名無し:2019/01/10(木) 20:54:03.51 ID:WdFOIkRV.net
拳。
その直後、ハオの腹に拳が沈み、口からは赤や黄色が飛び出し、リウの顔を汚した。

息ができない。意識が霞む。ハオには何が起きたか理解できなかった。

リウはにっこりと笑顔で倒れたハオに近づいてしゃがみこむ。
「ハーイ、お兄ちゃん久しぶりぃ。ララがいなくて寂しかったぁ?」
ララはリウの口を借り、吐息混じりの声で話した。ハオは直感でララだとわかったが、もう自分の知っているララはいなかった。
ララは狂気に支配されていた。

785 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 00:31:50.58 ID:QGjRQ181.net
「こ……、こんなにされても俺は……ララ」ハオは苦しみながらも口にした。「お前を愛している!」
「キュンッ!」リウの胸が鳴った。
「愛している!」
「キュン! キュンッ!」
「うおぉぉぉ愛しているーーッ!!」
「キュンキュンキュンッ! キュンッ!」リウの心臓が鳴りまくった。
「うわぁぁもう何が何だかわからないーーッ!!」ララは叫びながら逃げ出してしまった。

786 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 00:41:52.02 ID:QGjRQ181.net
メイファンから電話がかかってきた
「ハオ、お前にお供の者をつけてやる。サルとブタとカッパだ」

787 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 06:16:44.27 ID:tA5NLGIm.net
リウのアレが勃起している

788 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 07:32:28.46 ID:3kv+gR3A.net
ララ「なんて強い身体! 最高!
 私、リウ・パイロンのように強くなれないなんて思ってたけど、リウ・パイロンそのものになれちゃった!
 リー・チンハオを殺し、ラン・メイファンを殺し、習近平も殺し、私がこの国の覇者になるのよ!
 あそうだ、最後にはリウ・パイロンも殺し、私がこの国の女王になるのよーー! キャハハ!」

789 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 08:21:57.32 ID:93bt95cs.net
リウ號機を駆るララが戻ってきた。
リウ號機は何も身に付けておらず
その股間は反り立っていた。
「フフッ、私のことを愛してくれて嬉しい。私もお兄ちゃんのこと愛してる」
ララはハオの告白に興奮し呼吸が荒くなっていた。
「ヒヒヒッ、お兄ちゃん…私の愛を受け止めてね。」
リウ號機はハオのズボンをパンツごと脱がすと
ずり降ろし取り払うと、足を広げ正常位の姿勢をとる。

「ファッ!?、それは流石にやめろっ」
ララの行動の目的が分かったときハオは青ざめた。

「お兄ちゃんいくね。」
ララはリウ號機のアレをハオの菊座にあてがうとハオの話も聞かず一気に突き入れた。
ハオの肛門はリウ號機の丸太ん棒の大きさに耐えられず、ブチブチと音を立てながら裂けた。

ハオはそのあまりの激痛に声を上げることができない。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん」

リウ號機は腰を激しく打ち振るうと接合部から血が滲み、激痛がハオの体を這い回る。
その拷問は3分間続いた。

790 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 09:25:04.50 ID:pDXhyujA.net
メイファン「えっ?…たった3分?」

791 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 09:42:48.99 ID:RpDlTEga.net
メイファンはそう言うとがっくりと肩を落とし生きる気力を失った。
その失望は計り知れないほどのものだった。

792 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 11:56:59.94 ID:hffNvLdu.net
ハオはヒリヒリ痛む肛門を押さえながら、だんだん自分の『気』の能力がわかって来た。
リウ號機にあれだけのことをされたのに、自分の傷を癒す能力は尽きるどころかまだまだ元気である。
つまり、これは実はララの能力ではないのではないか?
ララとの合体で目覚めた、自分自身の蒼い『気』の能力なのに違いない。
「凄ぇ。まるでウルヴァリンしゃないか」
しかし超回復能力だけではちとショボい。
他にも何かあるはずだ。
ウルヴァリンをアダマンチウムの爪があるように。
試しに拳を顔の前に出し、アダマンチウムの爪でも出ないかと力を込めてみた。すると……
ハオ「こっ、これはっ?!」

793 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 15:27:26.09 ID:93bt95cs.net
「ウゲッ!?」
ハオの体が激しく揺さぶられだし、体の中心に激痛と衝撃が走る。
リウ號機が動き出し、再び地獄のピストンを再開したのだ。
「はっ、はっ、ふっ、ハオお兄ちゃん…ッ私、ハオお兄ちゃんと繋がってる。ハオお兄ちゃんと1つになっ、てるっ」
ララは今まで感じたことのない快感が込み上げてきてさらに腰を振るスピードを早めた。

「お兄ちゃんっ、何か来るっ、来ちゃうっ!」
ララがリウ號機の低い声で叫ぶと、ハオの直腸に白濁液を注ぎ込んだ。
「はあ〜、気持ちよかった…」
ララは余韻に浸りながら失神しているハオを抱きしめ、キスをした。

794 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 16:33:03.25 ID:n89FXVZu.net
「かかったなっ!」
失神したフリをしていたハオはかっと目を開けるとキスしたままリウ號機の頬をしっかりと掴んだ。
「このまま吸い出してやるっ!」

795 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 19:32:47.89 ID:vXcxFGU/.net
しかし、吸出し方が分からない。現状ディープキスだ。

796 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 21:46:05.23 ID:TtrRQdvk.net
ロープを差し入れるように舌を入れた。
男の匂いが絡み合う

797 :創る名無しに見る名無し:2019/01/11(金) 23:01:38.18 ID:laGHU2JW.net
「ウゲゲゲゲゲゲゲ!」リウ・パイロンは心に深いショックを受けた!
「んふぅ〜はぁあっ」ハオは何かに目覚めた!
「オッサン同士のBLサイコー!死ね!!」ララはさらに発狂が進んだ!

798 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 03:19:41.01 ID:uVOOEAQd.net
メイファンは病室のベッドで呟いた。
「モルヒネっていいわね。最高」

799 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 05:51:07.38 ID:uIcSXrHV.net
ハオが目を覚ますとそこは公園のベンチの上だった。
「夢…!?」
ハオは起き上がった。脱がされたズボンは履いたままで引き裂かれたはずの肛門も無事だ。痛みもない。
「俺寝てたのっ!?」
ハオは頭を抱え呆然としていた。しかしハオはそこからリウ號機が去っていくのに気がついていなかった。
「また来るよ、お兄ちゃん。」
リウ號機が新たに向かう先はメイファンのいる病院だ。

800 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 07:45:41.73 ID:uVOOEAQd.net
メイファンは病室のベッドで呟いた。「言っとけど、この世界での最強はリウじゃなくて、武器持ったオレだから」

801 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 12:10:39.91 ID:6qGrUJAW.net
直後にメイファンの病状が急変し、脳死状態と判定された。
病室に現れたリウ號機は人工呼吸器の電源を切ってしまった。

802 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 12:42:56.92 ID:VC9OYmKY.net
リウ號機の姿は何度も再生を繰り返した結果ベースとなった、リウ・パイロンのそれとは全く異なるものになっていた。

背丈は元の180cmから2m以上に大型化し
浅黒かった肌は死体のような白い肌に変色している。口は耳まで裂け肉食獣のような牙が覗いていた。その姿はもはや人ではない。

ララはメイファンが死んだと確信するとハオの元へ戻っていこうとした。

803 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 16:49:25.57 ID:QHaTBgbF.net
しかしその途中で疲れて眠ってしまった。
さんざんハオを掘ったので、掘り疲れてしまったのだ。

804 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 17:10:49.26 ID:QHaTBgbF.net
リウが正気を取り戻すと、寺院の裏庭のような所にいた。
ララに乗っ取られている時の記憶がない。だんだんララに支配されつつあるようだ。
「何とかしなければ」リウは辺りを見回した。「ララを救わねば」

歩き出し、角を曲がるとすぐにその人と出会った。
その人は白い梅の花の下、石のベンチに腰掛け、ため息を延々と吐いていた。
リウの姿を見つけると嬉しそうに立ち上がり、もじもじと身をくねらせ、上目遣いで見つめて来る。
「君は……」
美しい黒いストレートヘアー、すらりと上へ伸びた体躯、大きな恋心を秘めるように膨らんだ胸、日本の昔の画家が描いた幽霊を彷彿とさせる醜い顔。
「確か……ジンチンさんだったね?」
名前を呼ばれ、彼女の顔が食事中の鬼婆のように明るくなった。
「お、覚えててくれただか」
「姿が変わり過ぎていて一瞬わからなかった。しかしその黄色い『気』はよく覚えているよ」
「嬉しいだ……。嬉しいだ……」
リウはジンチンにゆっくりと、ゆっくりと近づいて行く。
なぜそんなにゆっくり歩くのだろう? と不思議に思ったジンチンは、リウの胸のあたりにそれを見つけて納得し、驚いた。
「ララちゃん?」
「見えるのか」リウは頼もしそうにジンチンを見つめた。
「起こさないように、静かにしてあげてるのね」
「起こさないようにというか、起こすとまずい」
「……そういうことだったのかァ……。アンタが町で暴れるなんて、おかしいと思っただァァ……」
「話の飲み込みが早くて助かるな」
ジンチンは優しい三白眼でリウを見つめ、黄色い歯を剥いて微笑んだ。
「アンタがそんなことする人なわけねェのはわかってるだ」
「信じてくれてありがとう」
「いやいやァん」ジンチンは照れ、大きな手で巨大な顔を隠した。
「確か……君は『気』が使えるのだったな」
「んだ」
「そして君はララと仲がよかったんだよな?」
「親友だァ」
「頼む。ララを君の身体へ移してあげてくれないか」
「困ってるのね」
「とても」
「わかった。オデがアンタを助けるだ」
ジンチンは真剣な顔つきになると、リウをまっすぐ見つめた。その顔は鎌を構えた鬼婆のように真剣であり、リウでなければ怖すぎて逃げ出していたかもしれない。

805 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 17:14:06.89 ID:typEQgfC.net
「こ…これが俺…?」
目が覚めたリウ・パイロンは割れた鏡の破片に映った己の姿を見て驚愕した。

その姿は絵本に出てくるお化けそのものだった。

806 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 17:20:29.17 ID:QHaTBgbF.net
リウから方法を説明され、ジンチンの頭の上に激しく雷が落ちた。
思えば生まれて21年、一度も女性扱いなどされたことがなかった。
誰でもいいから童貞を捨てるためにと、クラスの男子達はブスと付き合いヤリ捨てていたが、自分だけはその対象外だった。
女として見られていないどころか人間として見られていなかった。
もちろん処女であり、キスの経験もなかった。
一生することもないと諦め、女を捨て、ただ格闘と食欲のみに生きる覚悟を決めていた。
それが突然、こんなところで、キス出来ることになるとは。
しかもその相手が数日前に出会った初恋の人だとは。

807 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 17:24:51.17 ID:QHaTBgbF.net
「アンタ、背、伸びただなァ」ジンチンはうっとりとリウの顔を見つめて言った。
「そのようだ」
「顔も前よりハンサムになっただよ。親近感が湧くぐらい」
「ありがとう」
「オデ、覚悟を決めただよ。ララちゃんを下衆のいいようにされることから救ってみせるだ」
「俺も覚悟を決めた」
リウはそう言うと、ジンチンの身体に腕を回し、ゆっくりと顔を近づけた。
身長2mを超す二人が、白い梅の花の咲く下、唇を合わせた。

808 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 17:48:56.59 ID:QHaTBgbF.net
リウと唇を合わせながら、ジンチンは黄色い『気』を放ち、リウの身体の中へ入って行った。
光の糸を引いて降りて行くと、卵のように丸くなっているララを見つけた。
(ララちゃん)
(ん……)ララはその呼び掛けに少し反応した。
(ララちゃん、オデだよ)
(ジンちゃん?)
ララは顔を上げた。黄色い優しい光が、天使の手のように、そこにあった。
(ララちゃん、オデの所へおいでよ。一緒にうまい棒食べよ)
ララは夢見るように笑った。(わぁ、行く行く)
(じゃあ、オデの手を繋いで)
(うん)
ララは何の警戒心もなくジンチンの黄色い『気』の手を取った。
ジンチンはするするとそれを戻し、自分の身体へララを導く。
天から差し伸べられた蜘蛛の糸を伝って昇るように上へと移動しながら、ララは(そう言えばここ、どこだっけ?)と朦朧とする寝起きの意識の中、考えた。
(何も考えちゃダメだァ、ララちゃん、うまい棒のことだけ考えるだァ、オデのように)
しかしジンチンの誘導は無駄だった。
ララは獣のような男の匂いに気づいてしまった。かつては大好きだった匂い、そして一転、自分を絶望のどん底に陥れてくれたあの匂いだ。
ララの口から「a」の音が漏れたかと思うと、それは「A」の音を通り越し、あっという間に「悪」の音に変わる。

『失敗した!』
ジンチンが目を開けると、どアップで悪魔のように恐ろしく変身したリウの顔があった。
「ガゥアア!」
リウがジンチンの口に牙を立て、思い切り噛みつく。まるでライオンとキリンの口づけだ。
ジンチンは目をかっと開くと、ララを掴んだ『気』を思い切り引っ張った。
(ここで離したら元の木阿弥だ!)
リウの牙が食い込み、血が迸り、ジンチンの頬から皮が剥がれ、白い肉が露になり、すぐに赤く染まる。
「アグヮグヮグヮアア」
リウが咀嚼する。
(離さねェだ!)
ジンチンは額に力を込めると足を前に出し、リウの身体を強く抱き、顔をさらに押し付けた。
(ララちゃん! もう少しだ!)
リウはジンチンの口の周りの肉を引きちぎると顔を引き離した。

809 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 18:13:53.11 ID:QHaTBgbF.net
「ゴォゥワヮァアア!!」ジンチンは怯まず叫んだ。
その口からはまだ黄色い『気』の糸が伸び、リウと繋がっている。
「諦めるかァァア!!!」
ジンチンはリウに再び抱きつき、『気』の糸を引っ張りながら、同時に鯖折りを決めようとする。
リウの身体から『気』が立ち昇った。
リウの赤い『気』は、ララの白い『気』に侵され、気の狂ったようなピンク色に変わっていた。
「アアアアアア゛!!!!!」
ピンク色の巨大な『気』がジンチンの体を焼く。
「ギョワァァァア!!!!!!!」
ジンチンはなおも腕に力を込め、黄色い『糸』を引っ張る。
リウは『気』を込めた屈強な歯のギロチンを閉じにかかる。
「ガル!」
お釈迦様が垂れた糸が切れる大きな音とともに、希望の黄色い糸は噛み切られてしまった。
ショックで腕を離したジンチンとの隙間から拳がせり上がり、顎を砕いて白い梅の花を散らした。
ジンチンは吹き飛び、蝶のような黄色い鱗粉を引きながら地面に倒れた。

810 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 20:18:31.96 ID:hrbfzIX4.net
公園のベンチでぐったりしているハオのところへ一人のブタがやって来た。
「遅れてすみません、ハオ様」
「誰?」
「メイファン様からハオ様のお供をせよと申しつかった者でございます」
「遅いよ。もう犯されちゃったよ」
「申し訳ございません」
「それにしても描写の難しい顔してんね」
「そうでございますか? 皆様、普通にブタのようだと申されますが……」
「『ブタのような人間』って言ったらいいのか『人間のようなブタ』って言ったらいいのかが難しいんだよ」
「あっ。そこでございますね?」
「名前なんてーの?」
「猪です。チョ、とお呼びください」
「ああ、なるほどね」
「ちなみにもう二人おりますが……」
「あー、名前聞かなくてもわかるからいいよ。孫と沙。当たり?」
「犬と雉でございます」
「桃太郎!? っていうか、被ってんのブタじゃなくサルじゃね!?」
「二人はメイファン様が死んでしまわれたので逃げてしまいまして……」
「メイファンが死んだ!?」ハオは思わず声を上げた。「やったー!!」
「あっ。ハオ様も大喜びされるのですか!」
「あ、でも。メイファンが死んだら俺、誰に依存すれば……」
「いきなり心細くおなりに」
「お前は喜ばねーの?」
「私は真性のマゾですので」
「なる…」
「ハオ様もてっきりそうかと」
「まぁ、攻められるのは好きだけどね。でもやり過ぎられるのは、ちょっと」
「やり過ぎとかあるのですか!? 羨ましい!」
「普通あるだろ。これ以上やられたら快感どころじゃねーみたいなポイント」
「私、ないんです。だからメイファン様にもっと!もっと!とお願いするのですが……」
「すげーな、お前! ところで何しに来たの?」
「もちろん応援です」
「ほう、メイファンの手下なら期待出来そうだな」
「傍でエール送るので頑張ってくださいよ」
「声援かよ!」
「だってあなた、主人公じゃないですか。頑張らないと」
「主人公だからって死なないわけじゃないよ。主人公が死ぬ作品なんていくらでもある」
「フレー! フレー!」
「だから声援だけならいらないよ! あとビックリマーク小さいな!」
「頑張れー!」
「ブルーハーツかよ! 頑張れって言われないほうが気楽でいい時もあるよ!」
「じゃっ、帰りますね」
「本当何しに来たんだよ!!」

811 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 21:44:45.66 ID:1733Jzh5.net
しかし猪八戒の言ったことはハオに改めてやる気を出させた。
「そうだ、俺は主人公なんだ。そして今のところ何もしていない主人公だ」
「しかし俺にはかつて見せた、愛する人のためなら高層ビルから飛び降りることだって出来るパワーがある!」
「ララを取り戻すんだ! そしてちゃんとした主人公になるんだ! エッチしたくても身体がないことなんか今は考えるな!」
「うおおおお俺は最後の最後に主人公らしい主人公になってやる!!」
ハオの青い『気』が燃え上がった。

812 :創る名無しに見る名無し:2019/01/12(土) 23:36:51.19 ID:uYL1bODE.net
数分後、ハオはまたリウ號機に尻の穴を掘られていた。

813 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 04:19:38.55 ID:B7sQMjhV.net
リウ號機の左肩から、ララが生えてきた。
生えてきたララはみるみる大きくなり、
リウ號機は彼女に吸収され、背中にリウの顔が人面創のようにチョコンと残る程度となった。

「見てハオさん、私やっと自分の体を手に入れたんだよ?」
ララの顔をしたそれは潰れたラグビーボールを繋げたような腕を広げハオを優しく抱きしめた。

814 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 07:51:07.40 ID:LiIWhY8w.net
「うげぇ」
ハオはララのために闘う気をなくしてしまった。
そして誰もが死んでしまい、ララも自分を殺した。

             (完)

815 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 12:17:01.45 ID:n4tfjuCX.net
「まだだっ!」
ハオは立ち上がった。
「まだまだ! 思い出せ、ハオ! 優しくて可愛い、本当のララを!」
顔を上げた。
「大体このままじゃ俺、誰かが言ったような、マンコとお世話目当てで女に依存してるだけのクズに成り果ててしまう」
拳も上げた。
「俺はそんなんじゃない! たとえ今までそんなんだったとしても、そんなんじゃない自分になりたい!」

816 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 13:14:14.89 ID:iH9686fT.net
−完−

817 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 14:06:12.53 ID:nS3mZvb3.net
「ハオさんがどんなに否定してもクズなんだよ。」
死んだはずのララは呻きながら言った。
「ララ、生きとったんかワレ!」
ハオは横たわるララを見ながら叫んだ。
「…あはは、リウを完全に殺すために死のうとしたけど怖くて無理だった。」

818 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 14:24:58.27 ID:n4tfjuCX.net
「おい」リウは遂にブチ切れた。「お前ら、ええ加減にせぇよ」
リウは立ち上がると、左肩からララを無理矢理引っこ抜き、自分の前に立たせた。
立たせたララに右から左からビンタを往復させる。
ララの顔が紫になって倒れると、今度はハオを無理矢理立たせた。
「グダグダグダグダやりやがって。堪忍袋の緒が切れたわ!」

819 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 15:23:31.13 ID:7PnfX2Iz.net
リウがハオに何かしようとしたとき、
男の叫び声の後、銃声が辺りに響き渡る。

振り返ると警官隊がリウに銃を向けていた。
しかしリウの傷はララの残りかすによりみるみる再生していく。
「くそったれ!」
異形のリウは標的を警官隊に変えた。その隙を突いて怪物のララはハオに乗り換える。

820 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 17:30:34.60 ID:n4tfjuCX.net
「そんな悪い子はお兄ちゃんの妹じゃありません!」
ハオは固く口を閉じ、ララの入居を拒否した。

821 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 18:37:12.64 ID:YLWLGnpM.net
しかし構わずララは鼻の穴からハオに入り込んだ。

822 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 19:55:51.85 ID:ef0yv2tJ.net
つもりだったが、実体を得てしまったため乗っ取りは失敗した。
「ちくしょおおおっ、ちくしょおおおっ」
ララは悔しそうに叫びながらその場から逃走した。
「あっ」
ハオは全裸の彼女を追いかける

823 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 20:34:57.73 ID:7PnfX2Iz.net
実体を手に入れたララの脚は速かった。
体力に自信のあるハオがどんどん引き離されていく。
「くそ、ララを早く捕まえないと、走る変態女として新聞に載っちまう。」
だがハオは息をきらして立ち止まってしまった。

824 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 20:47:51.43 ID:t/tDscc4.net
ララはハオの中に戻ってもなお発狂が止まらなかった。
「ララ! 正気を取り戻せ!」ハオはララに支配されはじめながらも叫んだ。
ララはけたたましく笑い叫ぶばかりで声は届かない。
「ララ……。公園のご飯、美味しかったよなぁ……?」
ハオはなんとかララに優しい記憶を取り戻させようとする。
ハオの顔はどんどん紫色の毛細血管に染められて行き、ボコボコと音を立ててあちこちから角のようなものが生えてきた。
「アガアアアア愛してるんだ! ララ!」
キャハハハハと遠くからララの笑い声が響き、ハオは気が遠くなって行く。
「この時を待っていた」
背後から女の子の猛獣の声がした。
ハオを支配したララが振り向くと、鋼鉄と化した竹棒の尖端がすぐ目の前にあり、眉間を強く打つ。
倒れはしないものの脳にショックを与えられてフラフラしているハオの身体の下から黒豹が飛び上がる。
メイファンはハオの首を両腕で締めてぶら下がると、口に激しく噛み付いた。
「グァグァ!!」メイファンはそう唸ると、一気にララを吸い込んだ。
すぽんという音とともに、あっけなくララはメイファンの中へ収まった。

825 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 20:49:09.92 ID:t/tDscc4.net
「あれっ? リロードしたつもりだったんだけど……」メイファンはポリポリと頭を掻いた。

826 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 20:57:19.69 ID:YLWLGnpM.net
むぅ。とりあえずララのカラダは誰のものなのか?と、メイファンは生きてたにしろ動けないんじゃなかったか?の説明をしなさい

827 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 21:14:41.04 ID:t/tDscc4.net
「フッ。簡単なことだ」メイファンは説明を始めた。
「私は基本的に体力ではなく『気』で身体を動かすのだ。リウと闘うまでは出来んが、ハオを襲うぐらいは出来るわ」
「私が死んだということについてはただポカーンとしておった。顎骨折と手指骨折と細かな外傷程度で、なんか私、死亡確信されちゃった!?」
「ララの身体は巨大化したリウ・パイロンをちぎり取ったんじゃないか? これについてはよくわからん」

828 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 21:17:56.40 ID:N/dTM3L3.net
よく見たらララが2つに分かれていた。
メイファンが吸い出したララはメイファンの中に、
逃げ去ったララは全裸で逃げ去っていた。

829 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 21:24:51.53 ID:t/tDscc4.net
「何だそれ、面倒臭いな」
メイファンはため息を吐いた。
「ま、つまり。狂ったララは私の中、身体を得たララは逃げ去った、ということか」
メイファンは自分の中に戻ったララが暴れているのを少しだけ感じた。
しかし長年ララを住まわせているメイファンは、ララにとって言わばバスチーユの監獄であった。
支配しようとしてもびくともしない、操縦しようと思っても操縦桿が存在しない。
「お仕置きだ、そこにいろ」メイファンは自分の中のララに言った。「やはり社会経験の乏しい奴を自由にさせるとロクなことにならん」

830 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 21:28:13.99 ID:t/tDscc4.net
リウは警官隊と激しいリウ無双を展開していた。
「あっ。面白そうなことやってんな!」
メイファンはそう言うと竹棒に『気』を集め長槍に変え、振り回しながら参戦に向かった。

831 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 22:23:57.12 ID:t/tDscc4.net
警官隊が一斉にメイファンに向かって発砲した。
メイファンは超高速で振り回す槍で銃弾を弾く。
「キャハハハ!」
立ち並ぶ警官達の首を次々とはねた。
「おい! メイファン! 殺すな!」リウが叫ぶ。
「だってぇ〜。これがぁ〜」メイファンは可愛くそう言いながら首を飛ばしまくった。「私の仕事ぉ〜」
人民武装警察部隊が出動した。武装した装甲車が甲高いキャタピラの音と地響きを伴って現れる。砲台がこちらを向く。
「わぁ、これ無理ぃ〜」メイファンが可愛く言う。
「仕方ない」そう言ってリウが超低空アッパーを打った。
装甲車は亀のようにひっくり返り、動きを止めた。
「ハオ! 貴様も来い! 成長するチャンスだ!」メイファンが振り返り、叫んだ。
「だ、だれが行くかぁぁ〜」ハオは腰を抜かして泣いている。

832 :創る名無しに見る名無し:2019/01/13(日) 22:38:34.40 ID:YLWLGnpM.net
ハオはカラダを得て逃げたララのほうを必死で追いかけた。
カラダを得たのでセックスのできるララだ。でもそのカラダはリウ・パイロンのカラダだ。ハオは走りながらちょっとだけ吐いた

833 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 05:37:14.16 ID:jdtR7gpY.net
ハオは途中に放置され横たわる原付バイクを見つけた。
ハオはバイクに乗り込むとそれで追いかけた。

834 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 06:07:51.01 ID:fNDd0OI8.net
ハオは前方にララを発見した。ララは筋肉モリモリで走る衝撃でおっぱいが揺れていた。

835 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 06:24:18.90 ID:764jo9RQ.net
一時間の逃走劇の末ララはハオに捕らえられた。
「キャハハッ、捕まっちゃった。」
体を得たララは狂った方のララだった。

メイファンに吸われた方は人体で言うところの外皮に当たる残り滓だ。

836 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 07:46:59.87 ID:jdtR7gpY.net
流石のメイファンとリウも近代兵器にはかなわず、1時間の攻防の末に捕獲されどこかに連れて行かれた。

837 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 08:27:28.56 ID:bly89sAZ.net
護送車に乗せられ、連行される間中、メイファンはぶつぶつ言いながら距離を図っていた。リウの顔は緊張し続けている。
「2……1……来るぞ!」
そう言うとせーので二人は強化ガラスの窓を容易く割り、素早く窓から飛び出した。
「えっ?」慌てて警官がとぼけた声を上げる。
その頭上からアメリカの超小型ミサイルがあっという間に降って来て、護送車を爆破した。
その炎を背に、メイファンとリウは急いで東へと走る。
『施設』からちょうど20kmと10m離れたところだった。

838 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 08:59:37.37 ID:bly89sAZ.net
「ハハッ。これでお前も立派な犯罪者だな!」メイファンが嬉しそうに笑う。
「なってしまったことは仕方がない。これからどう生きるか、それのみだ」リウはトーストを食べながら言った。
二人は邯鄲のオープンカフェで遅い昼食を取っていた。のどかな町の風景のすぐ向こうに山脈が聳えている。万里の長城がすぐそこに見えた。
「言い遅れたが」メイファンが言った。「アメリカはお前を攻撃対象から外したそうだ」
「そうなるだろうとは思っていた。俺がただの散打王だとそのうち気づいてくれるだろうとな」
「さっきのミサイルは私一人を狙って来たものだ。お前は自由だぞ」
「自由?」リウは肩をすくめて笑う。「お尋ね者だぞ?」
「我が国の警察などザルだ。簡単に逃げられるだろ。人民解放軍は私の支配下にあるから敵は人民警察だけだ」
「ザルまではいかんだろう」リウは思わず笑った。
「あの長城をずっと歩いて逃げるというのはどうだ」
「トレーニングにはなるな」リウは冗談で言った。
「東端は私の故郷の甘粛だぞ。そこへ住め」
「お前を疎外した町にか」
「なら、どうする?」
「とりあえず西安へ一度帰る」リウはハンバーグソースのついた唇をナプキンで拭くと、言った。「どうしても会いたい女性がいる」

839 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 09:30:49.87 ID:bly89sAZ.net
「俺のことより」リウは心配した。「お前は大丈夫なのか。あれほど警官を殺しておいて」
「おいおい」メイファンはドヤ顔で答えた。「私は天来殺人者(生まれつき殺人者)だぞ?」

840 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 10:26:47.01 ID:jdtR7gpY.net
リウを見送り終わった直後、メイファンの中のララに異変を感じた。
「…なんだ?」
メイファンの中のララはゆっくりと溶けるように霧散してしまった。
「…してやられた?この私が?」

メイファンを騙すためにわざと吸わせた残り滓だということに気が付いた。



「…くくくっ、……ゆるさん。」
メイファンは笑っていたかと思えば、眉間にしわを寄せ、瞳の中に怒りの炎燃え上がらせた。

841 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 11:01:45.64 ID:1CDbKWSS.net
町を外れた往来で、ハオは捕まえたララに何度も繰り返しキスをしていた。
ルージュも何もつけていないのにピンク色の、真ん中のぽってりとした唇が可愛くて。
身体のほうは極力見ないようにした。
「念願の身体を得たんだな、ララ」
美味しいキスを繰り返しながらハオはうっとりと微笑んだ。

842 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 11:06:37.41 ID:lTISR4vO.net
もちろんそのカラダはムキムキの全裸である

843 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 12:52:09.92 ID:7kN+/OT2.net
そしてその下ではララのマンコがヒクヒクしながら
ハオのチンポを今か今かと待ち構えているのだ。

844 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 13:09:41.96 ID:a13HzpP7.net
お湯を被ると女になる特異体質だったので

845 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 14:50:51.67 ID:bly89sAZ.net
ハオはちょうど近くにあった温泉へララを連れて入った。
お湯をかけるとみるみるとその身体は丸みを帯び、白く柔らかい女体に変わる。
ハオも着ていたものを全て脱ぐと、優しい笑顔で抱き締めた。
ララはずっと無表情に虚空を見つめていたが、ハオの体温を全身に感じて少し唇を開き、小さくその身を震わせた。
「抱くぞ?」
もう抱いているにも関わらずハオはそう言い、ララの白いうなじに口づけ、ゆっくりと舌を這わせた。
ぴくんとララの腰が震え、顔が悔しそうに歪む。
逞しい胸を柔らかな胸に優しく擦りつけながら、そそり立った肉棒をお腹に強く押し付ける。
指を頭の後ろから背中、腰、お尻まで這わせ、前に回して差し入れるとララの割れ目はすっかりとろとろに蕩けていた。
「ララ……愛してる」
そう囁きながらハオはララを寝かせる。
豊かな桃饅頭のような白い胸を揉み、乳首を心行くまで舌と唇で苛めると、顔を下のほうへと移動して行く。
「ぁぅ……ぉ……お兄ちゃん……」
ハオはゆっくりとそこへ辿り着くと、すぐには舐めず、その周り中へキスをお見舞いした。
「は……早く……お願い」
「やめてほしいの?」
ララはいやんいやんと首を横に振った。
「はっきり言ってごらん」
「クリトリスが……泣いてるの」
「泣いてるのはココだよ?」
ハオは割れ目に人差し指をあてがうと、左右に揺らして苛めた。愛液をたっぷりと指先につけると、クリトリスに塗りつけた。ララが泣き声を上げる。
「もっと泣かせてやるよ」ハオはそう言うなり割れ目に舌を這わせた。「お帰り、ララ」
「あったかいよ」ララは涙を流して腰をくねらせた。「あったかいよ、お兄ちゃんの……」

846 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 15:16:06.88 ID:bly89sAZ.net
びっくりして眺めている他の客の視線など気にもせず、ハオはララの小陰唇を掻き分け中指を入れる。
それをお腹の裏側から突き上げ、ぐりぐりと擦ってあげるとララは大きくのけ反った。
それを続けながらクリトリスを舐めては啄み、へその中に舌を入れて愛おしみ、乳首をまた苛め、顔に戻って来るとララのほうからキスをして来た。
蕩けるような唇を割って舌を差し込むと、すぐにララもそこに柔らかい舌を絡め、二人は長い間キスを続けた。
キスをしながらハオの手が脚を開かせる。生の肉棒がゆっくりとヒダを割って入って来た。
ララの唇が離れ、苦しみと愛しさが混じり合った声を上げる。
ハオはそのまま奥まで挿れると腰を強く押しつけた。子宮口の上を亀頭で圧迫され、ララの膣が音を立てて締まる。ぴったりとハオを掴んで離さない。
ハオはそれでも強引に肉棒を引き出すと、また優しく強く、奥を突いた。
ララの声が大きくなり、ハオの動きが速くなるにつれて小刻みになる。肉と肉とが打ち合う音が浴場中に響く。
ハオは抱え上げたララを回転させると俯せにし、湯の音をざぶざぶ言わせながら後ろから突きまくった。
後ろで順番待ちするように立っている老人を手で追っ払うと、肩を掴んでララを立たせ、プロレス技を決めるようになおも背後から突き上げる。
ハオの揺れる金玉がララのクリトリスを容赦なく叩く。
二人は幸福と快感にたまらない声を上げると、同時に絶頂へと達して行った。

847 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 15:39:05.09 ID:1hHKYnUj.net
ハオとララの横でオザワ先生と蓮舫もまた同時に絶頂へと達したのであった。
「そっちの味はどう?」
「入口近くにひっかかりがあってなかなか良かったよ」
「じゃ、交代しようか」
「よかろう」

848 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 18:12:12.44 ID:w3pZcYOL.net
ハオはララの中に射精を遂げても、なおもララのことが可愛くて仕方がなかった。
岩の上に伏せて呼吸を荒くしているララの耳許で愛を囁き、もう一度行為を開始しようとしたところで警官達に取り押さえられた。

二人は別々にされ、それぞれ取り調べを受けた。
ハオは死んだことになっていたのを取り消され、世帯主のシン・シューフェンに連絡がなされたが、今はこちらのほうが亡くなっていた。
強姦でないことが確証されると、公然わいせつの罪で10日間だけ拘留されることになった。

ララのほうは少し難しく、ラン・ラーラァという人間が存在しないので、不法滞在の外国人かと疑われた。
もしやスパイではないのかと、身元が判明するまで地下の拘留所に監禁されることになった。

849 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 18:55:51.57 ID:lTISR4vO.net
もちろんオザワ先生は公然猥褻及び強姦及び国際スパイの罪で処刑された

850 :創る名無しに見る名無し:2019/01/14(月) 20:57:17.69 ID:w3pZcYOL.net
ハオは監禁されている間、ララに会いたくて仕方なくはあったが、心配はしていなかった。
どうせあのオッサンが何とかするだろう、そう高を括っていた。


「ララを救わねーのかよ!」
執務室でメイファンは習近平を愕然として見つめる。
「ララちゃん……リウ・パイロンの身体でハオ君と人前でファックしたそうだね」
習の脳裡にはとてもおぞましい絵が浮かんでいるようだった。
「そんなおぞましい子はもう私の娘ではない」
「ララがいねーと私も働けないぞ」
「そんなことはないでしょう」
習は無表情に言った。
「治療なら我が国の最高医療を施す。何よりもハオ君と……」
習の顔が憎しみと怒りで険しくなった。
「ハオ君と出来てしまったララなどもう何の価値もない役立たずだ! 国際スパイにでっち上げ、死刑にしてやる!」

851 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 05:12:22.39 ID:dWXobFLT.net
その頃、留置所ではララが脱獄して大騒ぎになっていた。

852 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 06:01:06.42 ID:aSB0ZNns.net
身も心も化け物なってしまったララにとって脱獄は朝飯前だった。

853 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 06:30:43.72 ID:+rf8+zyI.net
10日後、出所したハオも行方不明になった。

854 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 07:31:04.04 ID:dWXobFLT.net
まもなくメイファンにハオとララの暗殺の指令が下り、彼女も2人の捜索に当たっていた。

だが習達が中国全土を血眼になって、一ヶ月間探し続けたが見つからなかった。

855 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 13:01:33.65 ID:2UlveHu/.net
メイファン「いや、そんなザコどもの暗殺なんか私の仕事じゃねーから。国家に危害を与えるでもなし」

856 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 16:26:24.68 ID:EuayI37M.net
その頃ララとハオはアメリカにおり、
タケルという活動家の助手として働いていた。

857 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 19:12:12.44 ID:+rf8+zyI.net
そして習の努力もむなしく二人を捕まえることも、
その手がかりすらなくさらに一月が過ぎた。

858 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 20:39:17.22 ID:CCifryEJ.net
家に帰るとメイファンはひとりぼっちだった。
前はリウパイロンがいたが今はいない。ジャン・ウーもいない。

習がたまに会いに来る場合もあるが彼では
この孤独と退屈の埋め合わせにはならなかった。

飲む酒の量が増えた。眠れない日が続くようになった。

859 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 21:28:52.34 ID:Qz6sPCo6.net
   ___  ヽ     __
     |    ̄フ   / 7
     ト、  /|\  /ヽ/
     |     |    /


   ー/一 ヽヽ  ヽ,__/_       〈/ ノフ  __l__ __|__  −/一 ヽヽ ヽ,__/_
    / −¬    /∨  ヽ       '-rヽ|工|  、/ 、.|    / −¬   /∨  ヽ
  /  、__   しヘ __,ノ  ○   ノ|ヽ|_、  /ヽ _|   /  、__,   しヘ __,ノ  ○

             ,,,..、,, 、
             ∠__人 )
     \ /     j(a (゚)V
     下ネタ    (  ゚_/)dVレi
     / \ ,、 _fL__,ゝー二-ゝ、ノ
       )`チ ( `ヽー1___  〔
       j ガ (   丿 ,、``´ヽ,
        ) ウ l´   _>,、/  `-、ノっ
        `vヽ(  ゙-'

860 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 21:53:11.44 ID:g1SYZDEn.net
「ズーランさん」
名前を呼ばれて二階の窓から顔を出してみると、リウ・パイロンがこちらを見上げていたので、ズーランは慌てて隠れ、窓を閉めた。

「無理もない」リウは呟く。
町を破壊しているという噂の極悪人が何の用だと怯えているに違いない。リウは用件だけ窓の外から告げて消えることにする。
「シャオ・ホンフーとジンチンさんの居場所を知っていたら教えてほしい、それだけなんだ」
リウは暫く待ったが返事がない。仕方なく他を当たろうと踵を返しかけた時、再び開いた窓から一枚の紙片がひらひらと降って来た。
拾って開いてみると『シャオをいじめるな』と書いてあった。
なるほどシャオはズーランの部屋にいるのかもしれない。店を失い泣きついて来た男に情が移り、住まわせることになったのかもしれない。
シャオは惚れた女と想いを遂げることができたのだろうか。人と人の間は塞翁が馬だ、もし想像通りだとするならば、自分は結果的に良いことをしたのだろうか?
そんなことをニヤケ顔で考えながら、シャオを探すのはやめることにして、リウはジンチンを探しに向かった。
あれだけの怪我をしたのだ、どこかの病院にいることは間違いがなかった。
リウはジンチンに自分の身体が噛みつき、肉を引きちぎった時のことをはっきりと覚えていた。
必死な顔だった。醜くも、誠実な顔だった。
どれだけ傷つこうともララを救い出す覚悟を決めている顔だった。
どれだけ外見が醜くとも、精神の美しさが現れた顔だった。
あんなに必死で誠実な人間の顔を見たのは、30年の人生の中でも僅かに2回目だった。
膵臓癌の痛みをまったく周囲には気づかせもせず、美しい笑顔で観る者を圧倒する女優がかつていた。
永遠の愛を誓い、自分が妻とした女だった。
肉体の強さは男に敵わないとしても、精神の強さは男は女性には敵わないのだろうか。
肉体は弱くとも『気』の力を自由自在使い、自分と互角以上に闘う女だっている。
「尊敬するぜ、素晴らしき女ども」
そんなことを心の中で呟きながらリウは歩いた。

861 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 22:18:16.65 ID:A8Ez1c+Op
AKBグループの小説とか
http://story2.ichaos.me
体験談
http://lazoo.ichaos.me

862 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 22:15:12.20 ID:sg2oXUSb.net
ふとあの白梅の咲く寺院の裏庭へ行ってみたくなり、足を運んだリウは驚いてしまった。
口の周りの肉が齧り取られたままの姿のジンチンが、あの時と同じように石のベンチに座っていたのだ。
「ジンチンさん」
声を掛ける前から彼女はリウに気づき、嬉しそうに笑っていた。
「よかった。また会えただなァ」
「病院には行っていないのですか!?」
「必要ねェだよ。元々ひでェ顔だァ」
ジンチンはそう言って、裂けた口を大きく開け、黄色い歯を剥き出しにして笑った。リウはその顔を心から美しいと思った。
「僕が連れて行こう。僕がつけた傷だ」
「いいってェ。それより……」ジンチンはリウの中を覗き、言った。「ララちゃん、無事に出ただな?」
「ええ、彼女の一番好きな、愛くるしい顔をした妹の中へ無事帰りました」
「よかったァ」ジンチンは心から嬉しそうに笑った。「本当によかったァ」
「隣に座っても?」
「オデなんかの……」ジンチンは頬を染めた。「本当に……オデなんかの隣でよかったら」
どこかで聞いた台詞だった。などと記憶を辿るまでもなく、リウにはわかった。
(『こんな私で……』シューフェンは泣きながら笑顔を浮かべた。『本当に……こんな私でよろしければ』)
そうだ。プロポーズをしたシューフェンの返答の言葉だ。
リウはジンチンの横顔を激しく見つめた。
自分にはジンチンやメイファンのように、ララが誰かの身体の中にいてもはっきりとわかることは出来ない。
もしかして……リウは思わずにいられなかった。もしかして、ジンチンの中には、シューフェンがいるのではないのか?

863 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 22:23:09.76 ID:sg2oXUSb.net
暫く二人は白梅の花びらが軽やかに降る中、並んで座っていた。言葉は必要なかった。
やがてリウが口を開いた。
「ジンチンさん」
「リーランって呼んで」
「リーラン? 本名なのか?」
「さすがにヤォバイ・ジンチン(揺れろ、心のままに)なんて名前はねェだよ」彼女は笑った。
「格闘家らしい素晴らしい名前だと思ってたよ」
「ゲヘヘ……」
「リーラン」
「あい?」
「僕と一緒に来てくれないか?」
「え? どこへだァ?」
「日本だ」

864 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 22:58:41.14 ID:getB+Bfy.net
メイファンは二人の会話を陰に隠れて聞いていた。
ララを探すのを手伝ってほしいと思い、リウに助けを求めに来たところだった。
『日本……?』
気を消すのはメイファンの得意技だ。リウは聞かれていることにまったく気づかずに、話を続けた。
「僕はもうこの国にいられない。罪をいくつも重ねてしまった」
「アンタの罪じゃねェだよぅ!」
「そんなことわかっちゃ貰えないさ。日本に住んでいる友達が何人かいるんだ。彼らを頼ろうと思う」
「アンタ……この国にいれば、国民的英雄なのに、勿体ねェだ」
「僕は反中国共産党なんだよ。元々この国に馴染んではいない」
「そうかァ〜」
「リーラン、君にも一緒に日本へついて来てほしい」
「……オデなんか連れて歩いて恥ずかしくねェだか?」
急に二人は沈黙した。メイファンにはリウがジンチンにキスをしたのがわかった。
「君は綺麗だ」リウは真剣な声で言った。「今、生きている人間で君より綺麗な女性を僕は一人も知らない」
『畜生』なぜだかメイファンはとても悔しかった。『どんな美人だ』
壁から覗き見をして、思わず声を上げてしまった。「ヒッ!」
「メイ!」リウに気づかれた。
メイファンは姿を見せ、ジンチンをまじまじと見た。見た目が醜いだけのものなんかすぐに見慣れてしまった。
「聞いていたのか」
「フン……。貴様、日本なんかへ行くのか」
「世話になったな。何の礼も出来ずに行くが、すまない」
「フン」メイファンはなるべくリウを見ないようにして言った。「これで完全に敵同士だな」
「そうだな」リウはまっすぐに見て、言った。「お前は中国共産党の家族、俺は国外から中国民主化を企む戦士だ」
「中国共産党なんかどーでもいい。ただ、仕事でお前を殺しに行くことはあり得る」
「いつでも来いよ」リウは笑った。「また殺し合おうぜ、俺の最高の妹」
「チッ」メイファンは顔を伏せてしまった。「日本なんか行くなよ。中国人嫌いがいっぱいいて、いじめられるらしいぜ」
「俺がいじめられるタイプに見えるか?」
「シューフェンさん置いて行くのかよ? ひでぇ奴だな」
「もちろん連れて行く。位牌も、髪の毛も、形見のネックレスも」
「私は!」メイファンはそう叫んでから何が言いたかったかわからなくなってしまった。「私は……行かねーからな」
「いや、いつでも遊びに来いよ」リウはニヤニヤと笑った。「俺はお前のお兄ちゃんだからな」
突然メイファンは走り出した。寺院の角を曲がり、公園を抜け、足に『気』を込めて、走って、走って、走り続けた。
リウが行く国はそんなに遠くではない。しかしその距離よりも遥かに遠い所へ行ってしまうような気持ちがして。

865 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 23:23:05.17 ID:getB+Bfy.net
夜、メイファンは自分の部屋に一人でいた。
今まで一人でいたことなんて一度もなかった。
いつでもララがいた。ララがいなくなってからは、眠るまでリウが側にいてくれた。
ピンクのウサギのぬいぐるみを抱き締めながら、呟いた。
「友達欲しいなぁ……」
考えたら主要キャラ4人の中で友達がいないのは自分だけだった。
リウには数えきれないほどいるし、ハオにはズーランがいる。ララにさえ施設内に友達が多くいるし、ジンチンとは親友だと聞いた。
いつかララに言われたことを思い出す。
『メイは人をモノみたいにすぐ壊す。だから皆メイのことを怖がって、猛獣みたいな目で見るの』
「ララだけいればよかったんだよ」
メイファンはそう呟くと、空っぽになった自分の身体を強く意識してしまい、ぬいぐるみを強く抱き締めた。
「だって友達なんか作ってもつまんねーからすぐ殺しちまうに決まってんじゃねーか」
しーんとした部屋に耐えられなくて、大好きなリー・ロンハオの音楽をかけてみた。
しかし今日のハオ様はなぜかよそよそしく、別のハオのほうが懐かしくなってしまった。
「あぁ……ハオの腕、斬り落としてぇ……」
イメージの中、斬り落とした腕をすぐにララが治してしまった。
「二人でアメリカにいるだと? なんでそんな敵国に……なんでそんな遠くにいんだよ?」
ララとハオが笑顔でアメリカン・ドッグを食べてディズニーランドで遊んでいる光景が浮かぶ。
「なんでそこに私、いないの?」声がくぐもる。「なんでララ、私の中にいねーの?」

866 :創る名無しに見る名無し:2019/01/15(火) 23:29:26.57 ID:getB+Bfy.net
溶鉱炉は夜も忙しく稼働していた。
メイファンはその上に立ち、飛び込もうかなぁと考えていた。
別に死ぬのは怖くない。自分が死ぬのなんかどーでもいい。仕事中に何度か死にかけた時も他人事のようにリラックスしていた。
「でも、私が死んだらララが悲しむかなぁ……」
想像してみた。ララはハオとディズニーランドで笑っていた。
「死ぬか」
メイファンは飛び込んだ。

867 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 00:50:03.96 ID:HWK+EHe3.net
「あむなーい!」
そう叫びながら、ジェット・エンジンを背負った男が飛んで来て、メイファンを抱き止め、向こう側へ着地した。
苦しまずに一瞬で死ねるようにと気を解いていたので、何も反応できなかった。
「」

868 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 00:56:55.96 ID:HWK+EHe3.net
「あむないなぁ、死ぬところだったよ?」
「誰だ貴様」
「ここの職員だよぉ」
「死ぬ邪魔をするなボケ」
「多感な時期の女の子はいろいろある。わかるよ。わかるけど……」
「お前が死ねカス」
メイファンは手刀で職員の首を斬り落とそうとした。しかし彼は鮮やかにそれを避けた。
「まったく、お年頃だなぁ」
「凄いな、貴様」
「てもね、死ぬ気になれるなら何でも出来る!」
「うざいな、貴様。とりあえずお姫様抱っこやめろ」
「僕が友達になってあげるよ」
「うぜぇ、やっぱ殺す」
職員は再び手刀を避けた。
「女の子がそんなもの振り回しちゃダメっ」
「まぐれじゃないのか。貴様、何者だ」

869 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 01:05:35.61 ID:HWK+EHe3.net
「君はね、まだ人を愛することを知らないんだ」
「んだと、コラ」
「それでいて人から愛されることも拒絶する、一体君に何があるんだ?」
「うわー、いるいる、こういう人のこと知ったかのように決めつける奴!」
「君はでも、実はもう、人を愛することを知ってしまっているんだよ?」
「きもっ」
「素直になりなよ。自分に正直になるんだ」
「自分に正直にか」メイファンは男の腕を掴むと、ベキバキと音を立ててひねった。「これが私の正直だ」

870 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 05:07:33.37 ID:b6KvnRVZ.net
次回  究極のダッチワイフ

871 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 06:02:23.04 ID:xYz2mD0P.net
「そうかそれが本当の気持ちなんだね。」
男はにこやかに答えた。
「あ?」
メイファンは男の返しに違和感を覚えた。次の瞬間、
「わたし、ララお姉ちゃんに会いたい。私寂しいよ…辛いよ…。ううっ、グスッ…。」
突然、自分の口が動き喋り始めた。目から涙も溢れてきた。
だがメイファンの意思ではない。感覚がないのだ。涙が頬を伝う感触も口を動かす感触もないのだ。

誰もいないはずのメイファンの中から何者かが這い出てきて
彼女の体の使用権を奪ってしまったのだ。

872 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 07:45:44.77 ID:rKp50uVx.net
それは世間においてはありふれた、「ホンネ」という名で呼ばれる怪物だった。
「ぬあぁぁハオぉぉ! 許さんぞ! 貴様! イヌやブタ以下の存在のくせに!」
「ぅぅぅぅぁララァ! なぜ私を捨てた! 許さんぞ! 貴様だけは絶対に許さん!」
「おおおお兄ちゃんだとぉ!? リウ・パイロン! あのバケモノ女を殺してお前を奪ってやる!!」
メイファンの涙はだんだんと赤く染まった。

873 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 10:54:10.09 ID:79mxByUD.net
メイファンはリウを棒で突きまくって弱らせ、ジンチンをバラバラに刻んで殺し、
手錠にかけたリウに一本ずつ針を刺し、気が済むまで「愛してる』と言わせる妄想をし、うっとりとする。
しかし自分はおそらくアメリカの衛星カメラにより監視されている。
施設より20km以上離れれば、自動で小型追尾ミサイルが発射される仕組みになっているのだろう。
メイファンは自分の部屋に閉じ籠り、リウ・パイロンやララを思う存分愛する妄想をするしかすることがなかった。

874 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 11:45:45.21 ID:fg0G3mGI.net
もちろんハオのことはバラバラに切り刻み、ララに治させ、またバラバラに切り刻むのを繰り返した。

875 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 12:00:21.59 ID:ODc+NSih.net
ノースキャロライナの青い空の下、中国から移住して来た男女がビルの一階を借りて、太極拳教室を開こうとしていた。
「ララが英語喋れるからホント助かるよ」
「メイがネイティブ級だからね〜。あたしはそれに付き合って勉強したからちょっと喋れるだけ」
ハオは段ボールを運びながら、段差に躓いた。
「わぁ」と叫びながら中身をぶちまける。中国から持って来たお菓子、お茶、カップラーメンなど。
「もぉ〜、ハオハオったらいつまで経ってもドジなんだからぁ〜」
「ララぁ、膝打っちゃった。血が〜、血が〜」
ララが手を当てるとみるみ傷は塞がる。
「ついでに頭の悪いのも治しましょ?」
そう言うとララはハオの頭に白い手を当てる。ハオはそれを掴んでぐいと引っ張ると、引き寄せたその唇にキスをした。
「だめぇ。お兄ちゃんとのキス、美味しすぎるからぁ」
「止まらなくなっちゃう?」
「止めちゃ嫌ぁ〜」
二人は通行人が前を行き交う中、座ったままもつれ合い互いの甘くて柔らかい唇と舌を貪り合った。

876 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 12:50:57.27 ID:2j3/de/q.net
最近、メイファンの部屋にあの例の男性職員がやってくるようになった。
「…んでね。ハオってやつがね…。」
いつしかメイファンはその男性職員に心を開き愚痴をこぼすようになっていた。
「うん……うん…」
男性はただ黙ってメイファンの話を聞いて頷いているだけだったが、それでも彼女にとっては安らぎとなっていた。

ある日、ふと思ったメイファンは「…お前の名前は?」と尋ねた。

「僕の名前かい?僕は…タケル。」
「…タケル、日本人か。」
メイファンがそう呟くと、タケルはマスクを外した。
「…!」
メイファンはその顔を見て驚愕、激昂し飛び掛かろうとした。しかし、
(…違う、似てるけどよく見れば別人だ。ハオじゃない。気の色も違うし。)
と別人だと気が付くとベッドの上に座り込んだ。

877 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 12:56:46.43 ID:GTtXkLKr.net
メイファンはリウ・パイロンの唇を切り取ると自分の口に咥え、ちゅっちゅっと音を立てて味わった。
「お兄ちゃんの唇、美味しいよぉ〜」うっとりとした声で言う。「あそこがじゆわあぁぁってなっちゃう」

878 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 13:31:41.48 ID:ODc+NSih.net
「もしもし、お取り込み中のところすいません」と、二人に中国語で男が話しかけて来た。
「あれっ?」振り向いたハオが声を上げる。「お前、メイファンの手下の猪八戒じゃん」
「ブーちゃん、何でいるの〜?」ララが目を丸くする。
「習近平様より伝言です。一度、中国へ帰れとのこと」
「やだよ。俺達はアメリカ人になるんだ!」
「ブーちゃんもこっちに住もうよ〜。楽しいぞ〜」
「実は……」猪は声をひそめた。「例の計画をいよいよ実行します。つまりここは危険なのです」
「例の計画?」ハオがきょとんとする。
「えー、アレ、結局やるの?」ララが言った。「中止にすればいいじゃん。あんなのハオハオが死んじゃうかもしれないのに」

879 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 15:27:21.61 ID:2j3/de/q.net
ララ「ていうか私たち犯罪者な上に、私なんて帰ったら殺されちゃうじゃん。」

ハオ「…うん、ここで帰ったらなんのために苦労してアメリカに逃亡したか分からないよ」

880 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 17:45:33.29 ID:ODc+NSih.net
「国務指令一三五六零です」猪は厳しい顔をして言った。「拒否は出来ません」
「はぁ……」ララがため息を吐く。「しょうがないね」
「しょうがないの!?」ハオが目を丸くする。「俺、死ぬかもしれないって!? どういうこと!?」
「えーとね」ララが説明する。「国家機密なの」
「説明になってねぇよビシッ!」
「大丈夫、私も一緒だから」
「え。……ララも死ぬかもしれないってこと?」
「大丈夫だって」ララは少し絶望しているように笑った。「ハオハオのこと、信じてるし」
「信じてる顔じゃねぇよ!」
「それに、たぶん、お兄ちゃんの格好いいとこ見られるから、楽しみだよ」
「……ララは無理してるのすぐバレるよな」
「では早速お帰りください」猪が言った。「飛行機を用意してありますので」

881 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 17:51:57.40 ID:ODc+NSih.net
「ねぇ、タケちゃん」
部屋のベッドに座り、メイファンは嬉しそうに言った。タケルは頷きながら、それを聞いた。
「あいつら、帰って来るらしいんだ」
「よかったね」
「うん! 凄く嬉しい」
「再会したら、まず何がしたい?」
「えーとね。えっとね。まずハオのお腹をハサミで切って、大腸を引きずり出したい」
「うんうん」
「それをね、少しずつ、少しずつララの口に詰め込んであげるんだぁ」
「うんうん」
「でも、固くて食べにくいだろうから、バーナーを用意して、ララの口の中でしっかり焼いてあげよう」
「優しいね」
「エヘヘ」
「楽しみだね」
「楽しみだなぁ」

882 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 19:24:34.88 ID:ODc+NSih.net
ハオとララは習近平の執務室へ入った。
習は不機嫌そうな顔でハオを睨んだが、ララを見ると思わず崩れ、笑顔になってしまった。
「ララちゃんっ」身体を得たんだね! と言おうとして呑み込んだ。
これはリウ・パイロンの肉、これはリウ・パイロンの肉、と小さく口の中で繰り返すと、再びハオを睨む。
「君は……毎日リウ・パイロンの身体を抱いているのかねこの野郎?」
「はぁ?」
「違う違う」習は頭を振った。「どうしたんだ国家主席! 真面目な話をするのだ!」
「大丈夫か、このオッサン」
「私も大人げないことはしたくない」習はララを睨んだ。「時期が来た、ララ」
「ピンちゃん……やるの?」
「やるんだ」習の目がいつになく真剣になる。「そのためにハオ君を特訓して来たのだ」
「そうだね……」ララは俯き、少し笑った。「あたしも……一緒に……行くね?」
「ふむ……」習は少し考え、言った。「生命維持装置を用意させよう」
「ありがとう」
「あのー」ハオが口を挟む。「ぼく、ちっともわかってないんですけど」
「その時が来たら教えるから黙れ」習は優しく言った。「では下がってハオ君の部屋で休みなさい」
二人は一礼して出て行こうとした。すると後ろから習が思い出して言った。
「そうそう、メイファンが自分の部屋に来るようにと言っていたな」

883 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 19:27:07.02 ID:ODc+NSih.net
ハオは一緒に行こうとした。しかしララが止めた。
「あたし、メイには謝らないと……。お願い、まずは二人きりで話をさせて?」

884 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 19:50:23.05 ID:xYz2mD0P.net
その頃メイファンはタケルと共に地下室にやって来た。
「いいのかい?、お友だちを待たせてしまって。」
タケルが聞いた。
「いいよ、待たせておいてもへーきだよ。タケルがいってた見せたいものがみたいの。」
メイファンはガラにもなく、手を後ろで組み腰をゆらゆら揺する。
「ここにあるんだ。」タケルは扉を開けた。
「こんなところがあったなんて知らなかった。」メイファンは驚いた。

「…あれをみてごらん?」
「…え」
タケルが指差した方向には、リー・チンハオにそっくりな男達がたくさんいた。
ある者は牢に閉じ籠り、ある者は同じ姿をしたもの同士で談笑をしていた。
それらすべて、個体差はあるがハオその者にしか見えない。

「…おいおい、嘘だろう」流石のメイファンもこれには困惑するしかなかった。

885 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 20:02:06.48 ID:ODc+NSih.net
メイファンは帰って来た二人を出迎えなかった。ずっと部屋にいた。最高に嬉しい瞬間は3人きりで迎えたいと思っていた。
「やっぱりまずララを殺そっかなぁ」
ウキウキ気分で呟いた。特別な日のために用意していたとっておきの豪華な黒いチャイナドレスを着ている。
「そんで、死ぬ直前でララを吸い出して、私の中に閉じ込めるんだっ」
語尾には八分音符のマークが軽やかなスタッカート付きで乗っていた。
「それから目の前でハオをぉ……」
ドアをノックする音がした。
よく知っている、遠慮がちな3回ノックだ。
「……ど、どうぞ」
メイファンがなぜか緊張しながら言うと、ドアがゆっくりと開き、同時に白いセーター姿のララが顔を覗かせた。
ララはベッドの上に胡座をかいているチンドン屋みたいな格好のメイファンを見た。
ララがドアを閉めてから、暫く二人とも無言で見つめ合っていた。
「……不思議な気分だな」メイファンが言った。「今まで鏡でしか見たことなかった姿が……」
「っていうか生まれて初めてだよね」ララが明るく笑った。「左右逆になってない顔を生で見るのって」
「凄いな。本物のララだ」
「エヘヘ。身体ゲットしちゃったよ〜。夢みたい」
無言で互いを隅から隅まで見た。そのうち何かはっと気づいたような顔をしたメイファンにララが言った。
「ごめんね、メイ。何も言わずに行っちゃって……」
手をナイフのような形にして何かしようとしていたメイファンは動きを止め、子供が駄々をこねるような声を出した。
「ウィーチャットもメールもくれねーなんて……ひでぇ」
「だってスマホにメイの番号もメアドも入ってないんだもん」
「誰かに聞けばいいだろ!」
「中国に電波検閲されてるかもって思ったら……さ。とにかくゴメン」
ララがペコリと頭を下げた。初めて見る姉の頭頂部は隙だらけだったが、愛らしかった。
メイファンはゆっくりと立ち上がり、近づくと、その頭に手を触れた。
「わぁ、柔らけーな、ララの頭。ゴワゴワの私と大違いだ」
ララは泣きそうな顔を上げると、メイファンを抱き締めた。
「凄い。私、メイを抱き締められるよ」
メイファンは頬を涙でびちょびちょにしながら抱き締め返した。
「おっぱい糞でけーなボケ」
「後で一緒にお風呂入ろう」とララが言おうとすると、同時にメイファンが「おっぱい揉んでいいか?」と言った。
「凄い! ぶりぶり言わない」
「ぶりぶりも懐かしいけどな」
二人は並んでベッドに腰掛けると、とりとめのない長話を開始した。ハオを廊下で待たせていることなんかすっかり忘れた。

886 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 20:46:01.96 ID:ODc+NSih.net
主な登場人物まとめ

・ハオ(リー・チンハオ)……主人公。習近平とメイファンにより謎の施設に軟禁され、謎の過酷な特訓を受けていた。
恋人のシューフェンをリウに取られ、失ったが、その後すぐにララに乗り換える。しかし愛した女には一途な性格である。
太極拳の使い手。青い『気』を使い、メイファン曰く四千年に一人の武の素質の持ち主だが、やる気がない。ダメ人間。1月1日で30歳になった。

・ララ(ラン・ラーラァ)……ハオの現在の彼女。21歳の天然フェロモン娘。メイファンの姉。妹の中に住んでいた『気』だけの存在だったが、
リウ・パイロンが過剰な肉体を自ら引きちぎったことによりあっさり自分の身体を得る。かつて自分をレイプしたリウのことを深く憎んでいる。
白い『気』を使い、大抵の傷ならすぐに治すことが出来る。性格は妹と正反対で女らしく、お喋り好き。裁縫が得意。発狂しがち。

・ラン・メイファン……ララの妹。17歳の色黒の美少女。国家主席習近平のボディーガードであり凄腕の殺し屋。
黒い『気』を操り様々なことに使える武術家、というよりほぼ超能力者。『黒色悪夢』の通り名で恐れられている。
『気』を纏っていない時は芸能人が大好きなただの女の子。ただし友達は一人もいない。

・リウ・パイロン……中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり国民的英雄。シューフェンの夫であり、彼女の死に深く沈む。
メイファンの元弟子だが、ボロボロに負かした上当時8歳のメイファンをレイプし、彼女の元を去る。
犯罪者として中国を追われ、新たな恋人ジンチンとともに日本へ逃げた。赤い『気』の使い手であり、必殺技は超低空アッパー。

・シン・シューフェン……ヒロイン。膵臓ガンにより逝去。ハオの恋人だったが、リウに取られた。
元々ハオにはもったいないほどの美人であり、リウの紹介で女優デビューする。
故人であるが、ハオとリウには特に大きな影響を与えた女性であり、ハオの枕元には今でもよく現れる。

・シャオ・ホンフー……42歳だが50歳代にしか見えないほど老けている、元散打王。新人の頃のリウに試合中、片目を潰され、散打界を去る。
引退後、ボッタクリ四川料理店を経営しながら殺し屋、地下ファイトの主催者等をしていたが、リウに潰される。料理がヘタ。

・ヤォバイ・ジンチン(リーラン)……21歳女性。スキンヘッドのデブだったが、変身して身長2m20cmの痩躯かつ巨乳の鬼婆になった。
性格は優しく、ひたむきでおおらか。リウとの恋が叶い、日本へついて行く模様。本名はリーラン。強い。

・ズーラン(ズズ)……ハオの幼なじみ。30歳のニューハーフ。豪華なクラブの経営者であり、歌手。
シャオの思い人だが、シャオは彼の正しい性別を知らない。

・ジェイ……20歳のイケメン。日本人。本名不明。ズーランの舎弟。東京生まれだがコテコテの関西弁を喋る。

・習近平……言わずと知れた中国国家主席。孤児だったメイファンを引き取り、殺し屋として育てる。ララのファンだったが今は憎しみに変わっている。

・ドナルド・トランプ……言わずと知れた(略)

・ジャン・ウー……メイファンの仲間の殺し屋。通り名は『酒鬼』。昔のカンフー映画に出てくるような見た目をしている。
メイファンに首をはねられ死去したかと思いきや生きていた。酔拳の使い手。

・タケル……謎の日本人。メイファンを助け、慕われるようになっている。

887 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 21:06:22.63 ID:ds+9Mpyi.net
(・・・まただ、体が動かない。殺したい奴が目の前にいるのに。)
メイファンは必死で体を動かそうとしたが、ピクリとも動けない。
そして視覚と聴覚以外の感覚もない。


(・・・私の体に何が起こってるんだ?)

888 :創る名無しに見る名無し:2019/01/16(水) 21:25:16.32 ID:xYz2mD0P.net
メイファン(?)「所でハオ兄は?」

メイファン(ハオ兄はじゃねえぇーっ、何能天気に聞いてんだよコイツ!?)


ララ「…あっ、廊下に待たせてたの忘れてた。」

889 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 01:56:02.96 ID:aeYyoUaH.net
ハオが部屋に入って来るなりメイファンは右腕を斬り落とした。
「うあっ!?」
「ちょ……ちょっと!」
ララが腕を拾い、くっつけようと振り向いた時には既に左腕も落ちていた。
「メイ!」
メイファンがハオの腹に手刀を刺し、掴んだ大腸をずるりと出したところでララはようやく言った。
「国務指令一三五六零よ! メイファン!」
するとメイファンの手がぴたりと止まる。目を丸くして振り向き、聞く。
「発令されたのか?」
「そうよ」ララはその隙に右腕をくっつけた。「メイなら意味わかるよね?」
「し……習近平は鬼か」脂汗が額から滴る。
「だから、今、ここで、任務の出てるお兄ちゃんを殺したら……ね?」
「し……習近平は悪魔か」ガクガクと震えながら泣き出した。
ララは左腕もくっつけ、はみ出た大腸を怖じ気づくこともなく、しっかり両手に持つと押し込んだ。ハオはへなへなとベッドに座り込んだ。
「やだ。こんなのすぐには治んない」
そう思っていると、ハオの中から青い『気』が湧き出し、みるみる内蔵の位置を戻し、傷も塞いでしまった。
「あれっ?」ララは驚き、ハオの顔を見た。
ハオは意識朦朧となり、そのためか余計な力が抜け、青い『気』はいつもの濁りが取れて海のような色になっていた。
「これなら……」ララは瞳に希望を浮かべる。「任務の成功もアリかも」
「国務指令一三五六零〜……」メイファンは布団に入り、うなされていた。

890 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 06:13:59.85 ID:2DovBfwb.net
すこしララとはなしをしたあと、ララはハオをお姫様だっこをして出ていった。
メイファンはまたひとりぼっちになった。

二人が帰ってきても彼女の孤独や寂しさがなくなることはなかった。
きっとこれはハオをいたぶって遊んでも埋められないモノだとわかっていた。
ララ姉に任務の件で止められなくとも、虚しさでやめていただろう。
「…タケルちゃんに会いたいよ。」
メイファンは誰もいない部屋で声をあげて泣き叫んだ。

891 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 07:39:13.68 ID:vu50Dmru.net
最愛の姉を奪った憎むべきハオだった。
こんなアホ男に姉がついて行くことがとうしても許せなかった。
しかしメイファンほど自由で我儘な殺し屋でも国務指令一三五六零には逆らえなかった。

仕方なくハオとララに言葉の釘を刺しておくにとどめた。
「おい、私はお前らが一緒にアメリカに戻ることは許さねーからな」
するとララが言ったのだった。
「メイ。私、もう1人の独立した人間なんだよ? これからは自分のことは自分で決めたいの。わかってほしい」
「このアホはお前を殺しかけたんだぞ? アホな人形にお前を入れようとして……。同じようなこと繰り返すに決まってる!」
「大丈夫。二人で成長してみせるから」
「共依存ってヤツだぞ、それ。絶対コイツはララを不幸にする!」
ハオはアホ面をして黙って聞いていた。
「メイ」ララは頭を下げた。「心配してくれてありがとう。でも私、ハオのこと信じてるの」
「世界で一番信じちゃダメなヤツだろ」
「メイも信じてたからずっと殺さずに特訓してくれてたんじゃない」
「え。いやそれは……」
「今日、その答えが出るのよ」
「作戦? 早速今日やんのか?」
「ねぇ、メイ」ララは真剣な顔で言った。「もしハオが見事作戦を成功させたら、生きて帰って来たら、ハオのこと信じて、私達のこと許してくれる?」
「……死ねばいいのに」
「私もハオと一緒に行くのよ」
「な!?」
「この人には私が必要だから。1人じゃ何にも出来ないから」
「バカ! 行くな! 許さん!」
「行くわ」ララの目は強い決意と覚悟を浮かべていた。「自分で決めたの」
「死ぬぞ!」メイファンは怒りながら泣きはじめた。
「あのー」ハオが口を挟んだ。「そんな死ぬかもしれないことなら最後にララに俺が満足するまで肛門舐めてほしいんだけど、いい?」
メイファンの手刀がハオの首をはねようとして10cmだけ斬ったところで止まった。
「畜生。国務指令一三五六零がなければ……」

892 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 07:46:22.51 ID:vu50Dmru.net
思う存分肛門を舐めてあげるとハオは満足して眠った。
ハオの部屋で膝にその頭を乗せながら、ララは思った。

『ねぇ、お兄ちゃん。私、シューフェンお姉ちゃんみたいになれてるのかなぁ』

『私の頭に爆弾が入ってて、起爆ボタンを押すぞと脅されたら、あなたは私のためにもビルの111階から飛んでくれますか?』

893 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 10:05:39.52 ID:vu50Dmru.net
ララは生命維持装置にかけられ、ハオのキスを待った。
ハオが上から覆い被さってキスをすると、口を通じてハオの中へ入った。
『エヘヘ、久しぶりだねお兄ちゃんの中』
『テレパシーで心が通じ合う感じ、いいな』
『抱き合えないけどね』『抱き合えないけどな』二人は同時に言った。

それからようやく習近平の口から直々に作戦の内容が伝えられた。

「作戦第七百五十一號を開始する」
「作戦名『ジョウシュ・ベンダン』。尚この作戦を実行するにおいて国務指令一三五六零が発令されている」
メイファンが震え上がった。
「作戦を妨害しようとする者は誰であれアレな目に遭うので気をつけるように」
「ハオ君」習はハオに言った。「作戦成功の暁には君を名誉国民として勲章を与え、一生涯の富と生活を保証しよう」
「え。マジで?」
「どーでもいいから」ララの声がハオの中から言った。「早く内容を説明してあげて」

894 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 10:15:45.76 ID:vu50Dmru.net
「ウム」習は言った。「これより我が国の核ミサイルを予告もなしにアメリカのワシントンへ向け発射する」
「は?」ハオが思わず声を出した。
「ドナルドのアホも気づき、生意気に迎撃ミサイルを打って来るだろう」
「ウンウン」ハオは激しく頷いた。
「何もせずにいればミサイルは太平洋上で爆破され、アメリカに本格的開戦のきっかけを与えてしまうだけだ」
「ウン。だからやめよう?」
「そこでハオ君には核弾頭の先端に乗り、迎撃ミサイルを捌き、太平洋に沈めて貰いたい」
「えっ?」
「前もって伝えると絶対に逃げると確信していたので直前まで言わなかったことをお詫びしよう」
「断る!」
「国務指令一三五六零が発令されている。拒否するとアレにされるぞ」
「ヒッ」ララが怯えた。
「アレって何だよ!」
「大丈夫だ」習はハオの肩をぽんと叩いた。「君なら出来る。中国の未来は君の『捌き力』にかかっている。頼むぞ」
「嫌です!」
「やるしかないのよ!」ララがハオの操縦桿を握った。

895 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 12:51:54.42 ID:MEUhs2EP.net
メイファンは震えている。緊張はもちろん恐怖感によるモノでもない。
「私は…」
メイファンは小さく呟いた。その目には怒りと狂気を湛えていた。任務とかアレとかなんてどーでも良くなりつつあった。

かつてメイファンがリウと勝手に和解したことを許せなかったララのように。
(…わたしもう)
彼女の心はもはや爆発寸前だ。

896 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 12:59:13.21 ID:bH+arjTP.net
「あべしー」
そしてついに爆発した

897 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 15:55:49.01 ID:HO6/gtM9.net
ここで主要4キャラの愛憎関係をまとめてみた。

【ハオ】
・ララ→最愛。大好き。可愛い妹であり、恋人。
・メイファン→ひどいことをするので嫌い。だが憎んではいない。むしろ依存という意味で愛している。
・リウ→人見知りの相手。

【ララ】
・ハオ→最愛。大好きなお兄ちゃんであり恋人。
・メイファン→最愛。大好きな妹。ただし自分を束縛し、抑えつけるところを憎んではいる。
・リウ→12歳までは大好きだった。現在では最悪最凶に憎悪する対象。

【メイファン】
・ハオ→心底どーでもよかったが、ララを自分から奪った相手として憎んでいる。
・ララ→世界でただ1人の最愛の姉。その反動として自分から離れたことを激しく憎んでいる。
・リウ→誰がどう見ても大好きだが、頑なに認めない。昔自分を傷つけた相手として今でも憎んでいると言い張る。

【リウ・パイロン】
・ハオ→会話をして貰ったことがない。
・ララ→微妙。昔の通り愛しているとも、自分を犯罪者にしたことを憎んでいるとも。

・メイファン→好敵手として、何より可愛い『妹』として愛している。恋愛の対象外。

898 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 16:51:56.24 ID:bQhWnBqt.net
補足

・メイファン→ハオ
弟子としては愛着を持っている。人間としては見下している。異性としては興味がない。

・ララ→メイファン
自分の気持ちは無視してリウ・パイロンと勝手に和解したことについては強く憎んでいる。

・メイファン←→ララ
生まれた時から1つの身体を共有して育って来ただけに、愛も憎しみも膨大であり、他人には計り知れない。

・メイファン→リウ
自分のことを『女』として見てくれないことを憎らしく思っており、新しい恋人のジンチンともども殺したいほどに激しく憎んでいる。

899 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 18:39:54.22 ID:2DovBfwb.net
「…貴様ら、いい加減にしろ」
メイファンはボソリと呟くように言った。声は低く震えていた。
しかし誰も聞いていない。
目の前の三人は下らない茶番を繰り広げている。

「何が指令一三五六零だ、捌き力だ、私は主人公だあーッ」
メイファンは発狂した。
突然雄叫びをあげたメイファンに驚きその場にいたもの達の視線が
彼女に集まる。と同時に兵士や職員が真っ二つに吹き飛び恐ろしい早さの突きがハオや習、ララに迫っていた。

900 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 20:05:19.66 ID:M4c17uuO.net
「あ、死ぬ。」
ハオはそう思った。目の前の景色が止まって見え、今までの思い出が走馬灯のように流れていく。

しかしハオは無意識にララをかばうように動いていた。

901 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 20:18:16.01 ID:bQhWnBqt.net
「仕方がないね、国務指令一三五六零をメイファンに適用し、処罰する」
習近平がそう言っただけでメイファンは瞬時に存在を消去された。
もう誰もラン・メイファンなんて人間がいたことすら覚えていない。
元より存在していなかった人間として物語は進んで行く。
わかっていたはずなのになぜ自ら消えることを選んだのか、それは誰にもわからない。

以後、メイファン登場禁止とします。

902 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 20:19:19.64 ID:bQhWnBqt.net
習は言った、「中国とはそういう国なのだ。一個人の自由などないと思え」

903 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 20:55:33.42 ID:M4c17uuO.net
ハオの心に狂気が沸いてきた。
「なんだか分からねえが勇気がわいてきたぜ。主席、この件は任せてください。きっと捌いて見せますよ!」

904 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 21:45:32.43 ID:GyQKT+ao.net
主な登場人物まとめ

・ハオ(リー・チンハオ)……主人公。習近平により謎の施設に軟禁され、謎の過酷な特訓を受けていた。
恋人のシューフェンをリウに取られ、失ったが、その後すぐにララに乗り換える。しかし愛した女には一途な性格である。
太極拳の使い手。青い『気』を使い、誰かが四千年に一人の武の素質の持ち主だと言ったが、やる気がない。ダメ人間。1月1日で30歳になった。

・ララ(ラン・ラーラァ)……ハオの現在の彼女。21歳の天然フェロモン娘。殺し屋。元々身体を持たない『気』だけの存在だったが、
リウ・パイロンが過剰な肉体を自ら引きちぎったことによりあっさり自分の身体を得る。かつて自分をレイプしたリウのことを深く憎んでいる。
白い『気』を使い、大抵の傷ならすぐに治すことが出来る。性格は女らしく、お喋り好き。裁縫が得意。発狂しがち。

・リウ・パイロン……中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり国民的英雄。シューフェンの夫であり、彼女の死に深く沈む。
習近平及びララの元弟子だが、ボロボロに負かした上当時12歳のララをレイプし、彼女の元を去る。
犯罪者として中国を追われ、新たな恋人ジンチンとともに日本へ逃げた。赤い『気』の使い手であり、必殺技は超低空アッパー。

・シン・シューフェン……ヒロイン。膵臓ガンにより逝去。ハオの恋人だったが、リウに取られた。
元々ハオにはもったいないほどの美人であり、リウの紹介で女優デビューする。
故人であるが、ハオとリウには特に大きな影響を与えた女性であり、ハオの枕元には今でもよく現れる。

・シャオ・ホンフー……42歳だが50歳代にしか見えないほど老けている、元散打王。新人の頃のリウに試合中、片目を潰され、散打界を去る。
引退後、ボッタクリ四川料理店を経営しながら殺し屋、地下ファイトの主催者等をしていたが、リウに潰される。料理がヘタ。

・ヤォバイ・ジンチン(リーラン)……21歳女性。スキンヘッドのデブだったが、変身して身長2m20cmの痩躯かつ巨乳の鬼婆になった。
性格は優しく、ひたむきでおおらか。リウとの恋が叶い、日本へついて行く模様。本名はリーラン。強い。

・ズーラン(ズズ)……ハオの幼なじみ。30歳のニューハーフ。豪華なクラブの経営者であり、歌手。
シャオの思い人だが、シャオは彼の正しい性別を知らない。

・ジェイ……20歳のイケメン。日本人。本名不明。ズーランの舎弟。東京生まれだがコテコテの関西弁を喋る。

・習近平……言わずと知れた中国国家主席。孤児だったララを引き取り、殺し屋として育てる。成長したララに女として思いを寄せていたが、今は憎しみに変わっている。

・ドナルド・トランプ……言わずと知れた(略)

・ジャン・ウー……ララの仲間の殺し屋。通り名は『酒鬼』。昔のカンフー映画に出てくるような見た目をしている。
ララに首をはねられ死去したかと思いきや生きていた。酔拳の使い手。

905 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 22:35:39.91 ID:Ok2Qr/PL.net
国務指令一三五六零の発動した主席は習で二人目だった。

そして国務指令一三五六零は発動すると適用された人物以外記憶が残らない。
さらに因果律や時空にも影響を及ぼすため外見が変わってしまうのだ。

そう、リウ・パイロンはバイセクシャルになってしまったし
ハオからは駄目人間要素が薄いカルピスのごとく薄れてしまった。

おまけに習はもりもりマッチョメンの聖帝様だ。

906 :創る名無しに見る名無し:2019/01/17(木) 22:43:17.17 ID:mADUkzny.net
習はハオと肉体関係を結んでいたが、しかしララに横取りされたのだ。

907 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 04:29:12.71 ID:7gt6KG1U.net
ハオは核ミサイル取り付けられ
発射のカウントダウンが始まった。

908 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 05:32:52.06 ID:qj3IHx9S.net
そして次の瞬間!!

909 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 05:57:44.56 ID:jdsZ/DW+.net
ミサイルは轟音と煙を上げて発射。
ハオとララを乗せ資本主義者の居城へ飛んだ。

910 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 06:19:04.51 ID:1YiHDBJw.net
「永住しようと思ってた国にまさかミサイルをお届けしなきゃならんとはね……」
ハオは発射されてしまってもなお気乗りがしなかった。
「でも、俺は友達まだ1人も出来てないからアレだけど、ララは早速何人かアメリカの人と仲良くなってたよな?」
「私にとって一番大切なのはハオだけだから」
ララは答えた。
「他の人がどうなってもいいとは言わない。でも、ハオ1人を助けるために、私は全世界の人を殺せるわ」
「……ララ」
「ハオ……」
二人はひとつの唇をちゅっと言わせてキスをした。
「ところで一番大切な人、もう1人いなかったっけ?」
「? いないわよ。ハオだけ。あとは全員モブよ」

向こうからアメリカの迎撃ミサイルが飛んで来るのが見えて来た。
あちらのミサイルにも誰かが乗っている。
「あれは……!」
「ケン・リュックマン!」

911 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 06:42:45.68 ID:XiNE/1Cd.net
メイ「はおにーがんばえ〜っ!」

912 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 08:24:17.52 ID:AqIbjk9C.net
ハオ「メイって誰?」
ララ「??聞いたこともないわ???」

913 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 08:54:11.85 ID:qj3IHx9S.net
サツキ「がんばれー」

914 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 09:02:34.80 ID:SCWzNzeD.net
駅で春江おばさんは背後から声をかけられ、振り向いた。
「スミマセン」
「チョトイイデスカ」
振り向くとそこには巨大なアジア人の男女がいて、恐ろしい目つきでこちらを見ていた。女のほうは口が耳元まで裂けている。

悲鳴を上げながら逃げて行く日本人女性を見送りながらリウ・パイロンが言った。
「やはり俺達の日本語、おかしいのかな」
リーランもショックを受けたように言った。
「異国間コムニケーソンて難しいだ」

駅のテレビを見る。テレビではニュースが報道されていた。
ーー中国北東部の山の中から核ミサイルが発射されました。繰り返します……
ーー現在ミサイルは日本上空を越えて太平洋上を飛行中……
ーー目標はアメリカ北東部だと推定されました。ワシントンか、ニューヨークか……

二人には日本語のニュースはわからなかったが、スマホのニュースで既に知っていた。
「バカなことを……」リウは空を見上げて言った。
「悲しいだ……」リーランは俯き、涙した。
「メイファン……どうしているか」
国務指令一三五六零は中国国籍の者及び中国の領土、領空、領海内にいる者のみに適用される。
リウは日本にいるとはいえ国籍はまだ中国にあったが、なぜかその適用外となっていた。
リウは電話をしようとした。なぜか電話帳からその名前が消えていた。
もし消えた時のために記憶していた。その番号を押した。電話が繋がり、感情のない女性の声が聞こえて来た。
ーー現在、この番号は、使われておりません
「何かおかしい」リウは電話を切ると呟いた。「一体何が起こっている……?」

915 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 09:51:12.94 ID:A9jHi6dB.net
|┃三ガラッ!_____
|┃      |どっきり |
|┃ ≡/⌒\ ̄||  ̄ ミ
|┃  ( ____) || サッ
|┃≡ (_》 ^ω^)E)
|┃= ⊂   ノ

916 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 10:09:01.78 ID:7gt6KG1U.net
リウに誰も近寄らないのは&#11014;&#65039;のような痛々しいイラストが描いてあるからだ。

917 :イザベラ・バード:2019/01/18(金) 10:58:08.29 ID:vuLuJm6F.net
・日本人は、西洋の服を着ると、とても小さく見える
・どのの服も合わない
・惨めな体格だ
・凹んだ胸部
・ガニ股足

・日本人の黄色い皮膚
・馬のような固い髪
・弱弱しい瞼
・細長い眼
・尻下がりの眉毛
・平べったい鼻
・凹んだ胸
・蒙古系の頬が出た顔形
・ちっぽけな体格
・男たちのよろよろした歩きつき
・女たちのよちよちした歩きぶりなど

918 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 11:48:05.52 ID:K5UfoKV1.net
深紅の道着に身を固め、金色の剛毛に覆われた腕を組み、ケン・リュックマンは迎撃ミサイルの先端に仁王立ちしていた。
人間のものではない、そのリュックサックそのものの頭部が、物凄い風圧にも負けず堂々とハオ達を睨み、胸には燦然と輝く星条旗。

「どうしよう。相手は世界の格闘王よ。全力で迎撃に来たわ、あのヅラ前髪!」
ララがあたふたする。
「大丈夫だ、俺に任せろ」
そう言うとハオは立ち上がった。

919 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 12:36:29.26 ID:7gt6KG1U.net
メイ「けんゆっくまん、がんばえ〜っ!」

タケル「ケン、我々の未来はお前に掛かっているのだ。頼むぞっ」

920 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 12:37:06.00 ID:YNZEPDgK.net
ケンから虹色の『気』が発生する。ハオも負けじと青い『気』を発した。
二人の『気』の反発力で二基のミサイルは空中に立ち止まる。
ララ「私は操縦せずに見守るわ!頑張って!」
ハオ「行くぞ!ケン・リュックマン!」
ケン・リュックマンは目を赤く光らせ、ニタァと笑った。

921 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 12:52:35.94 ID:FqE1NevP.net
ジャン・ウー「け、ケンリュックマン頑張れぇ〜っ!」

922 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 14:51:09.14 ID:CJwf0ibg.net
とりあえずハオは人気では完全に負けていた。

923 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 15:30:10.67 ID:qj3IHx9S.net
「もうやだっ!!」
ハオはゆとりのガキのように逃げ出した

924 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 17:32:27.50 ID:FqE1NevP.net
でもここは空飛ぶミサイルの上、
逃げ場所なんて何処にもない。

そうこうしてる内にケンの頭部が開き
ララのパチモノのメイが顔を出した。

「けんゆっくまんがんばえ〜っ」
メイが黒い気を発するとケン優位に傾いた。

925 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 18:23:27.79 ID:87zUHQ3l.net
あらかじめ言っとくけど「落ちる」と「滑る」使用禁止な

926 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 19:10:10.38 ID:jdsZ/DW+.net
メイとか言うララのパチモノは、何故かハオ・ララ夫妻に憎悪を抱いていた。

少女は劣性になり焦るハオを見て、口端の片側をつり上げ、白い牙を見せるようにニタリ笑みを浮かべている。その目は完全にイっている。

「いや、誰だよ!?」

927 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 20:06:13.63 ID:xux6kKXy.net
「昇竜拳!」
炎を纏ったケンのアッパーがハオを襲う。
あれっ? しかし、見える。見えるぞ?
リウ・パイロンの超低空アッパーを体験しているハオにはむしろそれはハエが止まるほど遅く見えた。
着地したケンは、すぐに北斗百烈拳を繰り出した。
「あたたたたた!」
しかしこれもハオには一撃一撃がはっきりと見えた。
ララ老師の棒術による連続突き『牙突』のほうがよっぽど速かった。
すべての攻撃を捌き切ると、ハオは鼻を親指でピンとするブルース・リーの真似をしながら言った。
「それだけか」

928 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 21:24:34.21 ID:XiNE/1Cd.net
その刹那、ハオの体の中心から筆舌しがたい痛みがせり上がってきた。
額には脂汗が浮かび、意識がもうろうとする。

ハオの股間には、ララ老師が使うような棒が突き刺さっていた

929 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 21:50:12.63 ID:jdsZ/DW+.net
棒はメイの手から伸びていた。
「え、こんなガキが?」ハオは絞り出すように言うと
棒は下腹部から引き抜かれ、どす黒い血がボタボタとしたたり落ちる。
「ハオッ!」
ララ老師は慌てて下腹部を押さえる。老師の白い「気」により傷が塞がり痛みが和らいでいく。「見えなかった…。」ハオはメイを見た。メイはケンの頭部から顔を出しケラケラと笑っている。

「ハオ、油断しないで!このパチモノただの子供じゃない!」

930 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 22:16:46.73 ID:dcZn3AjR.net
ハオは気を失ってしまった。
「仕方がない……」
ララはそう言うとハオと身体を交替し、伝説の殺し屋「白色好夢(パイサー・ハオモン)」の姿を見せた。

弱いわけではない。もったいつけていたわけでもない。ただ、あまりにも醜いその姿を晒したくないだけの理由で隠していただけだ。

髪はハオのゴワゴワのくせっ毛の所々から細く長い毛がチョロチョロと覗き、まるでサボテンだ。
肌の色はカサカサした白と汚ならしい黒が混ざり合い、まるで皮膚病患者だ。
何よりその顔は、自分のことを可愛いと信じているハダカデバネズミのごとく恥ずかしく、見る者に永遠のゲロを吐かせるほどの威力に満ちていた。

白色好夢に変身したララ(ハオ)は、ミサイルの表面のジュラルミンだか何だかをひっぺがすと、白い『気』を込め巨大な矛に変えた。
ゲロが止まらず苦しんでいるケン・リュックマンの頭上から振り下ろす。
瞬時に真っ二つになったケンは、断末魔を上げる暇もなく、足をすべらせ、落ちて行った、太平洋のど真ん中に向かって。

931 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 22:24:23.61 ID:IqClx8iD.net
「また……つまらぬ物を斬ってしまった」
格好をつけている『白色好夢』に、二人の『気』の反発力で止まっていた迎撃ミサイルが動き出し、あっという間に迫ってきた。

932 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 22:31:37.86 ID:QvRg5oAr.net
「任せろ!」
瞬時に白色好夢の手だけが青くなった。
迎撃ミサイルの動きに合わせ、逆らわず、空気の流れを導くように軌道を変える。
「チンハオ流・我田流水」
アメリカのミサイルはケン・リュックマンの後を追うように太平洋上へと落ちて行った。

933 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 22:38:54.33 ID:IqClx8iD.net
「やったわね……」
「やった……!」
「任務成功よ。大成功!ハオ……」
「……で、どうする?」
「ん?」
「僕らこのままパラシュートで脱出して、計画通りアメリカにミサイルお届けしちゃう?」
「ん……。それであなたは英雄になれるのよ?」
「しかし死ぬ人がたくさん出て、世界は戦争になる」
「うん」
「戦闘の勢いで方角が変わってしまったことにしないか?」
「ハオ……あなたって……」ララは満足そうな声で言った。「イケメンね」
「今頃気づいたのか?」
「で、どこの方角に軌道を変えるの?」
「太陽さ」

934 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 22:43:16.68 ID:IqClx8iD.net
「チンハオ流・我田流水!」
ハオが核ミサイル『ベンダン7号』に掌打を加えると方角を変え、真上へ向かって飛びはじめた。
太陽を見ながら、眩しさに目を細めながら、二人は言った。
「これで……やがて推進力を失ったミサイルは海へ落ちる」
「誰も傷つかなくて済むのね」

935 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 22:45:35.04 ID:IqClx8iD.net
「……ところで」
「うん」
「私達……どうやって帰るの?」
「それな」
「パラシュートで降りても……」
「俺達を追いかけるようにアレが落ちて来るよな」

936 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 22:54:03.74 ID:GuQpnkBy.net
「ハオ君! ララちゃん!」
習近平から無線が入って来た。
「失敗したんだな? トランプが報復の核ミサイルを中国にむけて打って来た!」

937 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 22:56:19.85 ID:GuQpnkBy.net
おまけに沖縄米軍、台湾海軍に日本の自衛隊を加えた連合軍が、大停電中で何も出来ない上海を目指して出動していた。

938 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 23:00:09.37 ID:IqClx8iD.net
「あーあ」
「中国も終わりだね」
「俺らのせいかな」
「ピンちゃんが……習近平がバカなことするからよ」

939 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 23:04:28.98 ID:IqClx8iD.net
「んっ?」
「どうしたの?」
「あれは……」
ハオは自慢の10.0の視力で遠くから飛んで来るものの姿を捉えた。
「アメリカの核ミサイルだな」
「中国に向かってるのね」
「とりあえず」
「あれに乗って帰ろうか」

940 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 23:13:10.67 ID:IqClx8iD.net
ハオは速度と方向を計算し、ベンダン7号の壁を蹴ると、アメリカの核ミサイルの背に乗った。
「成功」
「すごーい! パチパチパチ」ララは呑気に言った。

太平洋の波の煌めきを雲の下に見ながら、二人は最後の会話をした。
「ララ、ごめんな。死んじまう」
「ん。最後に一緒にいられてよかったよ」
「うみ」

941 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 23:14:49.75 ID:IqClx8iD.net
「海ってこんなに広いんだな。水平線が丸いよ」
「世界ってこんなに大きかったのね」
「こんな広い世界でララと出会えて、本当によかった」
「あたしもハオと出会えて本当によかったわ」

942 :創る名無しに見る名無し:2019/01/18(金) 23:20:52.02 ID:IqClx8iD.net
「あっ」ハオが突然声を上げた。「やべぇ!」
「どうしたの?」
「中国からも迎撃ミサイル飛んで来た」
「まじで!?」
赤旗の付いたミサイルがぐんぐん近づいて来る。
「ハイッ! チンハオ流・我田流水!」
「ちょちょちょちょっとちょっと! 捌いちゃってどうすんのよ!?」
「あ……つい……」

943 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 05:08:14.14 ID:la5JlhH4.net
中華の中心地は核の炎に包まれた。地は裂け水は枯れほぼ全ての生命は死滅した。
だがこれも全ては二人の人間の策略だった。

その名はタケルとメイ。習が本来であればするはずのない、他国への核による先制攻撃も、中国都市部の大停電もアメリカや日本の異変も
全てはこの狂人達が起こした茶番劇だったのだ。

944 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 05:31:51.14 ID:3LnWcZDS.net
米中の開戦により両国とビジネスをしていた欧州や日本をはじめとする多くの国々は
消して少なくない損害と影響を受けた。

945 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 06:28:46.19 ID:tR3LzlYM.net
日米両国の戦争はここでとどまることはなく
ロシアの参戦によりさらに悪化した

946 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 06:33:10.62 ID:tR3LzlYM.net
この戦争で中国もアメリカも日本もロシアも国家として壊滅した。

そしてこの戦争を引き起こしたのは白色好夢なる人物が起こした物であると世界中で噂になっていた。

947 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 07:11:13.37 ID:mMd9oLdH.net
 ーーー バッドED 1 ーーー

>>934からやり直し

948 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 07:14:12.56 ID:mMd9oLdH.net
「あ、でもダメよ」ララがハオを止めた。「ドナルド・トランプを殺し、アメリカの采配を一時的に混乱させるのがこの計画の最大目的だもん」
「つまりトランプだけ殺せばいいわけだな?」
「誰も傷つかないハッピーエンドなんてありえない」
「よし、このままアメリカまで飛ぼう」

949 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 07:15:24.41 ID:mMd9oLdH.net
「私にいい考えがあるわ」
ララはそう言うと、核ミサイルに『気』を通し、別の物に変えてしまった。

950 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 07:19:57.18 ID:mMd9oLdH.net
ララが『気』を流し込むと、核ミサイルは『何だかよくわからない、びよんびよんする物』に姿を変えた。
ホワイトハウスにびよ〜んと突っ込むと、ララは暗殺者『白色好夢』に姿を変え、トランプ大統領の所へ向かった。

951 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 07:38:30.25 ID:3LnWcZDS.net
ララは警備を一蹴すると大統領室の扉を開けた。


扉を開けるとトランプ大統領の死体が転がっていた。彼は頭から血を流していた。

その横には2人の男女が立っている。

952 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 07:53:00.59 ID:nLVbnXyM.net
その頃中国では、習近平もまた誰かによって殺害されていた。
頭から血を流して横たわる習の傍らには、これまた一組の男女が……。

953 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 07:56:56.76 ID:mMd9oLdH.net
「遂に国家主席殺しになってしまった……。」
習の屍の傍らに立つリウ・パイロンが、赤く染まった拳を握りしめて言った。
「アンタは私のヒーローだァ」
リーランが彼の肩を抱き、肯定した。

954 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 08:10:10.50 ID:Ek2vWZCU.net
だがもう米中戦争は止まらなかった。
もはや少数の人間を殺せばよいという問題ではなかった。

第三次世界大戦の勃発である。

955 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 08:19:00.03 ID:GuxUSK12.net
「やぁ、君達は?」
ドナルド・トランプの死体の傍らに立つ男女に声をかけると、彼らは名乗った。
「俺はアンディー」
「私はシェリーよ」

若い二人はとても美しかった。

956 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 08:21:25.61 ID:GuxUSK12.net
「古い時代は終わったんだ」
「これからは僕ら、若い力で世界を作って行こう」
アンディーとハオは固く握手をした。

957 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 08:33:37.03 ID:mMd9oLdH.net
ハオとララはそのままアメリカに移り住んだ。
国内の至る所では若者による暴動が巻き起こり、決して平和とは言えなかった。
アンディーはホワイトハウスを占拠し、中国と友好的な関係を新たに築くことを約束してくれた。
中国では暫定政府を置いていた『施設』をリウ・パイロンが占拠し、彼が中国の新しい国家主席改め大統領となった。
しかし例えばこのスレで、悪魔のような荒らしキャラ(ラン・メイ○。○)をしつこく復活させようとする輩がいるように、人間の心は一つになど纏まらない。
ハオもララも自分を守る術を身に付けていなければ、混乱を極めるアメリカで、すぐに殺されてしまっていたかもしれない。
しかし未来のために今がある。
今を全力で生き抜けば、必ず素晴らしい未来がやって来る、
そう信じて二人は今日も愛し合い、子供達に太極拳を教えるのであった。

958 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 08:38:35.09 ID:mMd9oLdH.net
中国大陸に明かりが戻った。
大停電はドナルド・トランプによる強制的な経済制裁だったのだ。
けばけばしいほどの明るさを取り戻した上海の町で、シューフェンの主演映画「上海ゴースト・ストーリー」の上映がどの町よりも早く始まった。

959 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 08:41:26.60 ID:mMd9oLdH.net
  中国大恐慌 (完)

960 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 13:02:17.04 ID:U2J55+GK.net
このスレに書き込みをしたところ微妙に運気が上がりました。ありがとうございました。

961 :創る名無しに見る名無し:2019/01/19(土) 21:42:38.37 ID:kjhRQCq7.net
Huaweiは世界を制覇したはずだった。

962 :創る名無しに見る名無し:2019/01/20(日) 10:14:41.72 ID:N4SXfvMP.net
ーー エピローグ ーー

リウ・パイロンは今日も執務室でトレーニングをしていた。

秘書のメイリンが入って来て、突っ込む。
「大統領〜、あなたもう散打王じゃないんだから、大人しく仕事して下さいよ」

「いや、俺はまたアイツに会うんだ」
リウ大統領は片腕の小指で腕立て伏せをしながら、言った。
「俺はまた、お前と命を懸けて闘るんだ……メイファン!」

窓の外にはあの日と同じ、歪んだ三日月が浮かんでいた。

963 :創る名無しに見る名無し:2019/01/20(日) 10:34:53.72 ID:N4SXfvMP.net
ノースキャロライナの青い空の下、子供達が揃える真剣な声が響いていた。

「お茶、入ったよ〜! おやつにしよう」
ララが烏龍茶とクッキーを大量に持って入って来た。
子供達が歓声を上げて群がる。

「ありがとう。今日も愛してるよ」
振り向いた髭ゴジラみたいな顔のハオは、中国語でそう言うとお茶を受け取りながらキスをした。
「ウォ・イェ・アイニー(私も愛してる)」
ララは首を伸ばし、20歳代の頃と変わらない美味しいキスを返す。

二人並んでお茶を飲みながら、仲良くクッキーを取り合い喧嘩する生徒の子供達を眺める。
「おーいサンディー、年下の子をいじめちゃダメだろ」ハオがカタコトの英語で優しく言う。
「ボビー、こら! 1人で何個取ってんの!」ララが流暢な英語で優しく叱る。
窓から暖かい陽射しが入って来る。もうすぐ4月がやって来る。
「あっ、メイ! マイクにキックだめでしょ!」
23歳のマイクに8歳のメイがムカついて蹴りを入れたのだった。
「俺らの娘だけあってメイは強いなぁ」ハオが言う。
「のびのびと育てた甲斐あって強い子になったけど、ちょっとのびのびさせ過ぎたかなぁ」ララが不安がる。
母に似て美人のメイだが肌の色だけは色白の母に似ず、真っ黒な子だった。
3歳の時から『気』の力が使え、そのため上は43歳までいるこの道場の生徒の中で、8歳にして一番強かった。
叱られたメイはばつの悪そうな顔をして駆けて来ると、ララの膝に手をついて言った。
「パパ、ママ、メイのこと嫌いにならないで!」
「なるわけないだろ」ハオが笑う。
「世界一愛してるわよ、メイ」ララがハグしてほっぺにキスをした。

964 :創る名無しに見る名無し:2019/01/20(日) 11:03:35.45 ID:N4SXfvMP.net
「ねぇ、ハオ」
ノースキャロライナの青空を見ながらララが言った。
「私、なんだか昔、妹がいたような気がするの」

「そんなわけないだろ」
ハオが笑った。
「でも、いたとしたら、さぞかし可愛い女の子だったろうな」

「そうかな?」
ララが皆に稽古をつけているメイを眺めながら、可笑しそうに笑う。
「案外ハオ、私の妹に散々いじめられていたかもよ?」

965 :創る名無しに見る名無し:2019/01/20(日) 12:46:11.88 ID:p8OiKX6n.net
ちなみにリウ・パイロンはいまだに独身であった。
リーランとはあれから暫く一緒にいたが、交際2年目にしてようやく結んだ肉体関係が芳しくなく、別れてしまった。
しかしリーランはその時の子を授かっていた。
男の子はヘイロンと名付けられ、母を捨てたリウ大統領に への復讐心に燃えながら育った。

966 :創る名無しに見る名無し:2019/01/20(日) 13:14:25.47 ID:3vksv+Vh.net
金と女に溺れたクズを見かけ怒りがMAXになった。

967 :創る名無しに見る名無し:2019/01/20(日) 14:23:12.16 ID:lN55WzLL.net
持っていたhuaweiのスマホを叩きつけた!
「これからはOppoの時代だろーが!」

968 :創る名無しに見る名無し:2019/01/20(日) 15:58:08.30 ID:n8zpaxCS.net
P20LITEユーザー「そんなことが言えるのは自分のスマホがHUAWEIじゃないからだ!」

969 :創る名無しに見る名無し:2019/01/20(日) 20:26:58.48 ID:UVRnHnhP.net
中国人はマナーを勉強してから出直せ!

970 :創る名無しに見る名無し:2019/01/20(日) 20:28:30.35 ID:p8OiKX6n.net
次スレみたいなの立てました。

チャイナ・パニック
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1547956954/

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