2ちゃんねる スマホ用 ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

レトロファンタジーTRPG

1 :レイン :2020/05/31(日) 21:18:54.91 ID:Nni+ZiO2.net
ここはアースギア……。
五つの大陸を舞台に数多の勇者達が冒険する世界。
あなたもまた、魔王打倒を目指して旅をするのです……。


◆概要
・ステレオタイプのファンタジー世界で遊ぶスレです。
・参加者はトリップ着用の上テンプレに必要事項を記入ください。
・〇日ルールとしては二週間以内になんとか投下するスレになります。
・投下が二週間以上空きそうな場合は一言書き込んでおくようにしましょう。

432 :レイン :2022/02/13(日) 19:02:49.67 ID:JehQ7ezG.net
>「──うわああああああああ!!」

ミイラを退治したところで、外から悲鳴が聞こえてきた。ミスライムの騎士達の声だ。
まさか魔王軍が襲撃を仕掛けてきたのか。そんな馬鹿な話があるか。さきほどまで何の前触れもなかった。
軍勢がそんな手品みたいにいきなり現れるわけがない。だから探索を優先して――。

「ああ……!?そうか、しまったぁ〜っ!!」

レインは頭を抱えた。自身が痛恨の勘違いをしていることに気づいてしまったのだ。
ブーメランを片手に外へと向かって全力疾走する。視界に飛び込んできたのは大量の魔物だ。
万を超える軍勢。それが、さきほどまでなかった大穴から次々と飛び出してくる。

地の大幹部こと"不動城砦"ガルバーニは転送魔法で移動するダンジョンに身を隠している。
そして、そのダンジョンから魔物を送り込み街などを襲うのが奴らの戦略。
つまるところ、魔王軍の襲撃には何の前触れもない。幽霊のように突然現れて襲ってくるわけである。

「ジャッカルナイトにバジリスク……この大陸特有の魔物かっ!」

ジャッカルナイト。犬の顔をした魔物の騎士。その剣の腕は人間の剣豪にも劣らないといわれている。
バジリスク。巨大な蛇の魔物で、蛇の王とも言われている。全身に強力な毒を持っている。
他にも以前と同じくデザートゴブリンやゴーレムもいるが、注意すべきなのは上記の二種類だろう。

「うぉぉぉぉっ!!」

レインは魔力を込めてブーメランを投げると、それは味方を襲う魔物目掛けて滑空する。
『風』がこもったそれは高速回転する鋭利な刃となって鎧ごとジャッカルナイト数体を切り裂いた。
そして手元に戻ってきたブーメランをキャッチして騎士を率いるラカンの元へと急ぐ。

「すみません、遅れました。これから戦闘に参加します!」

「おお、"召喚の勇者"殿!お待ちしておりました!」

ラカンは喜色ばんだ声でレインとクロムを迎える。
すると直後、地面が大きく震動したかと思うと魔物を放出していた大穴が突如消滅した。
おそらくその大穴こそがガルバーニのいる移動型ダンジョンへの入り口だったのだろう。
アンジュの話通り逃げ足が早い。

「『地殻の楔』を建てる工程は分かってる、まずはそれを阻止しよう」

アルバトロスの水晶でみた限りでは、楔を建てるのにも転送魔法を使っていた。
魔法陣を地面に描いて、楔を転送することでぶっ刺すという具合である。
なにせキロ単位の巨大な柱だ。物理的に運ぶわけにもいかないのだろう。

「ふん……『格』の違う奴らが二人現れたな。だがものの敵ではないわ」

押し寄せる魔王軍の軍勢、その最後尾で魔族が独白した。
彼こそが『地殻の楔』を建てる任務を帯びたガルバーニの部下。
モグラめいた顔立ちに腕には槍のような武器がついている。

「我が名は穿孔の螺旋ディグラント!ガルバーニ様の命により掘削するぞ、貴様らの命ッ!」

433 :レイン :2022/02/13(日) 19:05:21.79 ID:JehQ7ezG.net
ディグラントは興奮のあまり吼えた。
しかし最後尾にいたので、悲しいことにレインの耳には届いていない。

「魔族もいるみたいだね。何かをわめいてるみたいだ……」

今のところ転送の魔法陣を構築する様子はない。この場を制圧してから行う気だろうか。
魔王軍は数こそ多いが統率力は低い。どの魔物も本能のまま暴れているという感じだ。
――などと考えていると、最後尾の魔族・ディグラントが砂漠に潜るのが見えた。

レインは『透視の片眼鏡』のダイヤルを合わせて地面を透視する。
腕についた槍のような部位が高速回転して地面を掘り進んでいる!さながら土竜のように!

「ラカンさん、クロム、敵が『下』から来るっ!!」

レインは限定召喚を行い装備を『透視の片眼鏡』から『波紋の長靴』へとチェンジ。
板金鎧を纏うがゆえに動きの遅いラカンを抱えて、その跳躍力で空中へと逃げる。

「ばぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ッ!!驚いたか!掘削、掘削ぅ!!」

地中より強襲したディグラントは完全な不意打ちを決めたつもりだったが、手応えがない。
なるほどそれなりに『出来る』冒険者らしい。ディグラントは相手にとって不足無しだと思った。

「しかぁし!足場の崩れた今、ワシの二撃目を躱せるかなぁ〜〜〜〜ッ!?」

口を風船のように膨らませると、魔法陣が口部に浮かぶ。
そしてディグラントはぶわっと灰色の液体のようなものを勢いよく吐いた。
これは地属性魔法のひとつ、『ペトロブラスト』である。

灰色の液体を浴びてしまった物質はカチカチに石化してしまう。
つまり、身動きを封じるためのいやらしい魔法なのである。
石化する液体がレインとラカン、そしてクロムへと迫る。


【外の悲鳴は魔王軍によるものだった】
【魔物を率いるボス、穿孔の螺旋ディグラントに強襲される】

434 :クロム :2022/02/20(日) 21:13:44.95 ID:9rsnpeaq.net
悲鳴を聞いて一目散に来た道を駆け戻ってみると、外では既に地を埋め尽くさんばかりの魔物の群がひしめいていた。
よくよく見てみると、いつの間にかフィールドに現れた巨大な穴から魔物達がわらわら湧き出ている。まるで蟻の巣のようだ。

(あれが例の移動型ダンジョン……? 何の前触れもなく現われ、一気にこれだけの魔物を……なるほど厄介だなこりゃ)

眼前に広がるおぞましき光景に舌打ちし掛けて、クロムは止める。音もなく迫り来る不気味な影を目の端で捉えたからだ。

「──あっぶねぇ。後一秒でも遅れてたら毒牙の餌食にされてたところだ」

跳び上がるクロム。一瞬遅れて彼が立っていた場所に獰猛な殺意をぶつける巨影──大蛇『バジリスク』。
ピンチの後にチャンスあり。間一髪ながら必殺の牙を躱し、頭上を取った形となったクロムは既に剣を抜いていた。
王冠を彷彿とさせる突起と模様を持つその威厳溢れる頭部がすぐさま鬼神によって食い破られる。
が、残念なことに彼の振るう鬼神には毒を浄化する能力まではない。

「これだから蛇ってのは好きになれねぇんだ。──マグリット、毒の処理は十八番だろ!? つーか残りの相手もお前がやれ!」

破壊箇所から噴き出す厄介な毒が混じった体液。こういう時クロムは悲しいまでに無力となる。
もはや出来る事と言えば、撒き散らされた毒と相性のよろしくない残りのバジリスクの掃除役をマグリットに押し付けつつ、
毒雨に濡れぬようその場からさっさと離れる事だけであった。

とはいえ、危険を完全に避けられるわけではない。
そこら中で無数の魔物がひしめいているということは、移動すればそれだけ新しい敵と嫌でも遭遇してしまう状況なのだから。
でも問題は無い。ゴブリン類、ゴーレム、ジャッカルナイト……ざっと顔触れを見渡した限り、毒持ちはバジリスクのみ。
返り血を浴びることになんら不安要素がなければ、いつものように気楽な気持ちで存分に剣を振るうことができる。

「随分と数だけは揃えたもんだが──」

四方八方から群がるゴブリンを苦も無く撫で斬りにするクロムに、ジャッカルナイトが剣を構えて切り込んで来る。
すかさずクロムは剣で掃おうとするが、流石にその剣腕は文句なしに剣豪レベルとも評されるジャッカルナイト、反応が早い。
逆にその剣を払いのけんと鋭い剣閃で迎撃してきたではないか。

「──俺達を仕留めるには少々質が悪ィんじゃねぇの!?」

しかし、無意味だ。ただの鉄の塊で、鬼神の行く手を阻める筈もない。
接触即斬鉄。瞬時にジャッカルナイトの意図を挫いた鬼神は、続けて無防備な胴に容赦なく襲い掛かり──

──切断。上半身を糸の千切れた凧のように空中にぶっ飛ばして、辺りに血の雨を降らせた。

人外同士、お互い剣の使い手であっても、クロムとジャッカルナイトでは決定的な差がある。それは得物の質。
竜人の皮膚すら斬り避ける鬼神の切れ味の前では、たかだが鉄の棒に過ぎないありふれた刀剣など豆腐も同然なのだ。

(っ!)

次の命知らずがどこから来るか、探るクロムの足元が突然激しく揺れる。
騎士達の何人かが口々に「穴が」と騒いでいる。見れば、先程まではそこに在った筈の大穴が煙のように消え失せていた。

……なるほど移動型のダンジョン。また移動したらしい。
奇襲して魔物を大量にばら撒いたら、長居せずに即撤退する。これを徹底されたら確かに尻尾を掴むのは難しいだろう。
アンジュ達が手こずっていたわけだ。

435 :クロム :2022/02/20(日) 21:19:23.39 ID:9rsnpeaq.net
>「我が名は穿孔の螺旋ディグラント!ガルバーニ様の命により掘削するぞ、貴様らの命ッ!」

直後、群の奥から現れた一匹のモグラ面の魔族が、騎士達を更に大きくどよめかせた。
昂りを抑えられないというように威勢よく吠えるその姿に、剣を握るクロムの手にも自然と強い力が入る。

>「魔族もいるみたいだね。何かをわめいてるみたいだ……」

「ガルバーニ……とか名乗ってるぜ。恐らくあいつがこの群のボスだな。早速、生け捕り作戦開始と行くか?」

意思を確かめんとレインを見るクロム。だが、レインはその視線に合わせず……やがて唐突に目を見開いた。
何事かと咄嗟に目を群の奥へと戻すと、何とガルバーニの姿がいつの間にかそこから消えているではないか。

>「ラカンさん、クロム、敵が『下』から来るっ!!」

「しまっ──見た目の通り地中を移動できるタイプかよ!」

レインが上へ跳び、やや遅れてクロムが身を屈めて飛び込むように前へ跳ぶ──。
足元の地面が音を立てて崩れ、中から腕の掘削刃を高速回転させたどや顔のガルバーニが出てきたのはその直後だった。
挨拶代わりの奇襲を躱したとはいえ、依然主導権は敵が握ったまま。今は体勢が悪く反撃できる状況ではないのだ。

>「しかぁし!足場の崩れた今、ワシの二撃目を躱せるかなぁ〜〜〜〜ッ!?」

それはやはり敵も理解していたらしい。ガルバーニが打った次の一手は、追撃として正に的確かつ絶妙だった。
口から魔法陣を通して一気に吐き出された大量の液体は、触れた物質を岩の様に石化させる地属性魔法の一つ『ペトロブラスト』。
浴びても反魔の装束の効果で完全な石化は回避できるだろうが、それでも鉛のように体が重くなる程度は覚悟すべきレベルの魔法。
数で有利なのは敵。そのうえスピードまで敵が有利となっては流石に厳しくなる。ここはほんの少しでも浴びるわけには行かない。
けれども体勢が悪い中、広範囲に飛び散りながら追いすがって来るそれを躱し切ることは、言うまでもなく困難だ。

(これだけの量を詠唱もせずほとんどノータイムで……!)

──ならば、防ぐしかない。何かを身代わりの盾にして。
クロムは一瞬視線を横に流してその何かを見定めると、伸ばした左手で大地を掴んで急ブレーキをかけた。
そして両膝を曲げ、あたかも蛙の倒立のような体勢を取ったところで、一気に縮めたばねを伸ばすが如く両足を繰り出した。

それによって蹴り飛ばされたのは司令部を失っても尚、倒れる事無く未だ大地に立往生し続けていたジャッカルナイトの下半身。
蹴った反動で左手は再び大地から離れ、クロムは体の上下を入れ替えながら更なる前進を果たして着地する。
一方、蹴られたジャッカルナイトはペトロブラストに突っ込み、その前進を阻み堰き止める障害物の役割を果たして石化していった。

「ほォ……二撃目もノーダメージで切り抜けたか。思ったよりやるではないか、少しは驚いたぞ!」

「そりゃこっちのセリフだ。動きといい判断力といい、お前かなり戦い慣れてやがるな」

「当ォ〜〜全ェンッ!! 小僧などとは戦いの年季が違うのだァ! さぁァ〜〜次こそ貴様らの命に大穴を空けてやろう!」

「欲張るんじゃねぇよアホ。次のターンはこっちだ──」

言うが早いか、瞬時に加速して大地を風の如く駆けるクロムに、ガルバーニの目が丸くなった。

436 :クロム :2022/02/20(日) 21:25:11.36 ID:9rsnpeaq.net
「──おオォッッとォオオオッ!!」

しかし、驚いたのも一瞬だった。至近に迫ると同時に放った横一文字斬り。
加減したつもりは無い一刀を、次の瞬間ガルバーニは興奮気味の微笑を浮かべてドリルの得物で受け止めて見せたのだ。

「はっはっは、危ない危ないィ! 瞬きしていたらやられておったわ! しかぁし! しかししかししかぁぁあ──」

「──いちいちうるせぇよ」

「ぬッ!!?」

が──それも一瞬に過ぎなかった。
抑揚の無い声で呟くクロムの瞳から、殺意の暗い色が滲み出した途端──止まった筈の刃が再び動き出したからである。

「ワシの得物に食い込んで────ぬっ、おぉぉおおおおッ!!」

あれよあれよと真っ二つに切断されるドリル。邪魔な障害物を排除して、改めて横一閃に刃を走らせる鬼神のだんびら。
──ガルバーニは逃れる。己の肉体に刃が届く前に、素早く後方に跳び退いて。

「ふっ……ふぅぅぅうううううううう! 今のは流石のワシも肝を冷やしたぞ!
 信じられん、ワシ特製の掘削武器を切り裂くとは……一体なんだなんだその剣は……!?」

「答える必要なし」

剣を肩に乗せて、再び加速せんとやや前のめりとなるクロム。
それを見て、叫び声をあげながらこれまた再び地中に潜っていくガルバーニ。

「舐めるなぁぁぁあ! 得物は一つになっても、貴様ら如きでは追いつけぬ速さで地中を移動できるのだぁぁあ!
 ワシは地中でも貴様らの位置ははっきりと分るがァ! 貴様らでは地中のワシを捕捉する事はできまいぃい!
 ふははははははは! どんな切れ味の剣も、届かなくては意味はなかろうぉお!」

「チッ、確かに……」

舌打ちしながらあっという間に地中へ消えていく様を見届けたクロムは、不意に背後を振り返って剣を走らせる。
直後に「ギャアア」と断末魔を挙げて大地に散らばっていくトロール。
だが、これで降り懸かる火の粉の全てが片付いたわけではなかった。
視界は一面、殺気立ったゴブリン、トロール、ゴーレム、ジャッカルナイトなどで埋め尽くされていたのだから。

「こんだけいると気が散って気配を探ることも、うるせぇから音に耳を澄ますこともできやしねぇ。
 レイン! 奴を捕捉できるのはお前だけだ、何とかしろ! 俺は魔物がお前の邪魔をしねぇようにしてやるからよ!
 だが気を付けろ! あのモグラ、恍けてやがるがキュベレーなんぞよりずっと手強い! 油断したらやられるぜ!」

言って、クロムは左手で小剣を抜き放つ。

「……ったく、いくら質が悪ィとはいえ、ガチのマジでいかねーとやばそうだぜ。俺だって体力の限界ってもんがあるんでな。
 さあ……準備が整ったところでそろそろはじめようじゃねぇか──! 行くぜ、糞野郎どもぉぉおおおおおお!!」

そしてやがて魔物の大群に矢のように突貫するのだった。右にだんびら、左に小剣の二刀を構えて。

【ディグランドと戦闘。片方のドリルを斬って破壊するが、地中に逃げられる】
【魔物の群の注意を引き付け、レインから遠ざける】

437 :クロム :2022/02/20(日) 22:54:57.15 ID:9rsnpeaq.net
すいません訂正
ディグラントの部分が全部ガルバーニになってました
脳内で置き換えて読んでください
思い込みってこわい

438 :レイン :2022/02/27(日) 21:05:22.38 ID:FUA67vCL.net
石化の液体は容赦なく、大量にレインとラカン、クロムを襲う。
盾を召喚して防ぐか?だが少しの飛沫でも侮れない。浴びればたちまちに石化してしまう。
それに、その防御方法は盾を捨てるやり方だ。既製品とはいえもったいない。

石化魔法というのは解呪に専用の魔法が必要となる。
高位の僧侶はそういった魔法にも心得があると言うが、果たしてマグリットが使えるかどうか。
ならば、ベストは言うまでもなく完全に防ぐこと。そして、今のレインならそれができる。

「――ブーメランには、こういう使い方もあるっ!!」

レインはブーメランに魔力を込める。
そして、投げるのではなくプロペラのようにその場で高速回転させたのだ。
風を帯びたブーメランは即席の盾として、石化することなく液体を弾く。

そして、ラカンと共に無事に着地。
クロムはジャッカルナイトの下半身を投げつけて防いだようだ。

>「ほォ……二撃目もノーダメージで切り抜けたか。思ったよりやるではないか、少しは驚いたぞ!」

そうなったのは紛れもなく魔王軍や強い野生の魔物との戦いのおかげだ。
レインに関しては、今までの経験値が活きているとしか言いようがない。
「ある意味お前達のおかげだよ」なんて思っている間にクロムとディグラントが会話を繰り広げる。

>「──おオォッッとォオオオッ!!」

疾風迅雷。クロムが瞬きの速さで横一文字に斬りかかる。
だがディグラントとて魔族の端くれ。クロムをして「戦い慣れている」と言わせるほどだ。
『鬼神のだんびら』の一撃を腕にくっついた回転する槍で受け止める。

>「ワシの得物に食い込んで────ぬっ、おぉぉおおおおッ!!」

食い込んだ。静かに、鋭利に、研ぎ澄まされた刃がディグラントの得物を寸断する。
恐るべきは剣の切れ味。恐るべきはクロムの技量。ラカンもその所業に目を見張った。

「す、すごいですね……まさしく鬼神……!」

スフィンクスと戦った時のレインと同じ感想だ。
血と臓物と屍が重なる戦場で、血塗れの剣を持った少年。
ぞっとするほど凍てついた真紅の瞳で敵を睨み、新たな骸を築いていく。

そんな仲間をなんと形容すればいい?
まさか死神と呼ぶにはいくまい。ならば戦場に降り立った鬼神と言う他ない。
まぁ、そんな彼も仲間となれば案外懐のあったかい人物なのだが。

>「ふっ……ふぅぅぅうううううううう! 今のは流石のワシも肝を冷やしたぞ!
> 信じられん、ワシ特製の掘削武器を切り裂くとは……一体なんだなんだその剣は……!?」

素早く後方へ逃げて、肉体へのダメージは避けるディグラント。
すると叫び声を上げながら再び地中へと潜っていく。

>「舐めるなぁぁぁあ! 得物は一つになっても、貴様ら如きでは追いつけぬ速さで地中を移動できるのだぁぁあ!
> ワシは地中でも貴様らの位置ははっきりと分るがァ! 貴様らでは地中のワシを捕捉する事はできまいぃい!
> ふははははははは! どんな切れ味の剣も、届かなくては意味はなかろうぉお!」

丁寧な解説つきで地中へと潜っていく。
それは自信の表れだった。魔族特有の慢心と言い換えてもいい。
実際、ひとたび地中に潜られたら攻撃だって届かない。厄介な一手に変わりはない。

439 :レイン :2022/02/27(日) 21:08:49.73 ID:FUA67vCL.net
>「こんだけいると気が散って気配を探ることも、うるせぇから音に耳を澄ますこともできやしねぇ。
> レイン! 奴を捕捉できるのはお前だけだ、何とかしろ! 俺は魔物がお前の邪魔をしねぇようにしてやるからよ!
> だが気を付けろ! あのモグラ、恍けてやがるがキュベレーなんぞよりずっと手強い! 油断したらやられるぜ!」

「……分かった!そっちは任せるよ……!」

『透視の片眼鏡』を使えばディグラントを捕捉することは可能。
ディグラントは回転する槍を失っているにも関わらず、そのスピードは衰えていない。
狙いを定めて獰猛に地面から攻撃しようと浮上してくる。

「召喚変身――『天空の聖弓兵』……!」

レインの姿が一瞬にして変わる。
薄緑色の狩人服を纏った、神鉄の弓を持つ兵士へと。
弓を引き絞って襲ってくるタイミングを待つ。

やるなら一撃必殺だ。攻撃してきた瞬間をカウンターで射抜く。
お誂え向きにディグラントは先程してやられたクロムではなくレイン達を狙っている様子。

「ぶわっはははははは!!まずは貴様らからだ、死ねいッ!!」

かくして地中から背後に現れたディグラントの一撃目を、レインとラカンは回避した。
ラカンはそのままごろごろ砂漠を転がるばかりだが、レインはノールックで狙いを定めていた。

「……そこっ!」

放たれた風の矢は高速でディグラントに迫っていく。
だが、クロムの一撃すら捌く老練の魔族は、風の矢をも見切っていた。

「甘いわぁぁぁぁぁぁああ!!!!」

ガァン!と残った回転する槍で風の矢は容易く弾かれた。
いったんはクロムの斬撃を防いだほどだ。並みの硬度ではないのだろう。
だがレインは勝利を確信して微笑んだ。

「なんだ……!何がおかしいっ!?」

「いや……『風』はまだ止んでないってことだよ」

「あぁ!?どういう意味だッ!?」

直後、ディグラントの後頭部に『風の矢』が着弾した。
視界が上下に揺れて意識が飛ぶ。土属性のディグラントは、風属性に弱い。
弾かれた風の矢はまだ死んでいなかったのだ。矢の弾道を修正して彼の背後に回り込んでいた。

「……俺の勝ちだ。不意打ちってのは勇者らしくないけどね」

後頭部に天空の聖弓を突きつけて、勝敗は完全に決した。
だが――魔王軍の残存戦力が戦いを止める気配はない。
統率がとれていないゆえに、一度暴れたら殲滅するまで止まらないのだろう。

クロムやミスライムの騎士達が倒してくれるのを待つしかない。
レインはその間に気絶したディグラントの持ち物を検分する。
移動型ダンジョンへ行けそうなアイテムを探すが、見つからない。
仕方ない。ディグラントを叩き起こして尋問せねばならないだろう。


【弾道制御で風の矢を後頭部にぶちあてディグラント撃破】
【移動アイテムが見つからないので戦闘が片付いたら叩き起こして尋問しよう】

440 :クロム :2022/03/06(日) 23:39:07.81 ID:On6gQJyn.net
斬る。
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬るKill──。
右のだんびらと左の小剣の二刀をもって死体の山を築いていくクロム。

「ぎゃあああああああ!」「うわああああああああ!」

しかし、その顔に余裕はない。
どれだけ切り刻んでも、敵の戦列は一向に絶える気配がないのだ。
いやそればかりか、むしろ順調に数を減らしているのは味方の方だったのだ。

「わかっていたが、斬っても斬ってもキリがねぇ。あと何十、いや……何百匹残ってやがるん──だ!」

汗まみれとなった顔面を拭いつつ、もう片方の手で迫った殺気に向けて剣を振るう。
断末魔が鼓膜を打ち、今度は噴き出した体液が拭われた汗に代わって頬にへばりついた。

「はぁ、はぁ……! ちきしょう、魔法で一気に焼き払えれば楽なんだが……」

クロムは、もはや返り血を拭おうとはしなかった。その動作に使う体力すら惜しむほど、すり減りつつあったのだ。
だが、敵はまだごまんといる。そして、彼らは弱りつつあった獲物に情けをかけるほど慈悲深くはない。
仲間の屍を踏み越え、素早く己を取り囲んだ魔物の一団をぐるっと見渡して、クロムはぎりり、と歯軋りした。

「っ!」

その時だった。突然、魔物達の目が虚ろになって一斉にその場に倒れたのは。
いや、異変はそれだけではない。辺りを見渡すと、多くの魔物達が同士討ちを始めていたのである。
これは一体どうしたことか──
そんな疑問を見透かしたような声が鼓膜に届くまで、そう時間はかからなかった。

「……『既に毒は散布した』か。マグリット、助かったぜ……」

味方である騎士達が数を減らし、生き残りのほとんどが後ろに押される形となっていたのは不幸中の幸いだっただろう。
クロムは彼女の毒に抗体を持っているが、騎士達はそうではない。
もし多くが生き残りそれらがクロムの様に突出していたら、毒でまとめて仕留めるという手は打てなかっただろうから。

「これで正気の魔物は随分数が減った。さぁ、形勢逆転! みんな、後ひと踏ん張りだ!」

「「「おおおおお!!」」」

──数の優劣が引っ繰り返ったことで、士気を一気に取り戻した騎士達が戦線を各所で押し戻し、圧倒していく。
生き残りの魔物を全て血の海に沈めるまで、彼らが要した時間はほんの十分かそこらであったろう。

「さて……」

クロムはそれを見届けると、レインによって気絶させられていたディグラントに歩み寄って、頭をどがっ、と蹴った。

「……おい、夜じゃねぇんだぞ、起きやがれジジイ! これから俺達の質問に答えて貰わなきゃならねぇんでな!」

ディグランドの目が開く。驚いた様子であるが、飛び起きようとはしない。
いや、したくてもできないのかもしれない。マグリットの毒……麻痺毒か何かで。

「いいか、素直に喋れよ。でなきゃ尋問が拷問に変わるかもしれねーからな。
 まずはあの神出鬼没の移動ダンジョンに、お前らがどうやって出入りしているのか教えてもらおうか」

【騎士達に多くの犠牲が出るも魔物の群は全滅】
【ディグランドにダンジョンの出入り方法を訊ねる】

441 :レイン :2022/03/13(日) 19:27:36.60 ID:zLFYXmRQ.net
魔物たちはマグリット、クロム、そしてミスライムの騎士達によって制圧された。
『地殻の楔』をめぐる戦いはとりあえずをもってレインたちの勝利に終わったのだ。
クロムはずかずかとディグラントに歩み寄ると、どかっ!と思い切り頭を蹴りつける。

>「……おい、夜じゃねぇんだぞ、起きやがれジジイ! これから俺達の質問に答えて貰わなきゃならねぇんでな!」

「……ふぁっ!?な、なんじゃい急に……!?」

目が覚めたディグラントは目をぱちぱちさせて周囲を見る。
なぜか配下の魔物は全滅して、人間たちに囲まれているではないか。

「な……ワシは……負けたのか?いつの間に?」

信じられなかった。百戦錬磨のディグラントが、よもや不意打ちで負けようなどとは!
だが後頭部に感じる鈍い痛みが告げていた。自分は確かに敗北してしまったのだ。
認めるしかない。

>「いいか、素直に喋れよ。でなきゃ尋問が拷問に変わるかもしれねーからな。
> まずはあの神出鬼没の移動ダンジョンに、お前らがどうやって出入りしているのか教えてもらおうか」

「……なんだと。ワシを甘く見るなっ。例え拷問だろうと口など割らんわ!
 このディグラント、魔王様の配下としてのプライドがある……!」

腕を組んで、ふん、と鼻を鳴らす。仕方ないのでレインはフランベルジュを召喚した。
波打った刀身が特徴的な剣だ。一般的に殺傷能力が高い武器として知られる。
なぜこんな形状をしてるかというと、傷口をぐちゃぐちゃにして止血を難しくするためだ。

「やりたくないけど、こいつであなたを斬りますよ。たぶんかなり痛いですよ」

「無駄だっ、たとえ脳を掻き回されようとも吐かぬ!それがワシの意地だ!!」

「いや……そんな酷いことをする気はないですけど……」

残虐非道な魔王軍に所属する魔族だ。
その恐ろしい手口を知っているがゆえに、拷問にも耐性があるのかもしれない。
これは簡単に口を割りそうにない。

「なんというか……レインさんは拷問に向いてないのでは?」

ラカンがそんなことを口にしていると、アルバトロスが転送魔法でやってきた。
砂漠に積もる死屍累々を眺めて感嘆する。

「派手に暴れたようだね。水晶で監視はしていたが」

「アルバトロス様……!お疲れ様です!」

ラカンが敬礼するとアルバトロスは頷く。

「その魔族は始末していいよ。月の山脈を守っていたアンジュたちが情報を手に入れた。
 光魔法というのは便利なものだね。じわじわ苦しめたら簡単に吐いたそうだ」

「なにっ!?信じられん、あの馬鹿めが……!!」

ディグラントは驚きのあまり確認するように質問した。

「では我々が『転移石』で地底移動要塞アガルタに出入りしていることも……!
 その石はワシが隠し持っていることも全て吐きおったのかぁぁぁ!?」

442 :レイン :2022/03/13(日) 19:29:55.44 ID:zLFYXmRQ.net
アルバトロスは無表情のままこう返した。

「なるほど。"召喚の勇者"の読み通りだね。
 そしてそのアイテムも君が持っているというわけだ」

「んん!?あぁ〜〜〜!!?しまったぁぁぁぁ!!」

息をするように嘘をつく人だ、とレインは思った。
さっきの話はディグラントを騙すための嘘だったらしい。

「アンジュたちは魔族の捕縛に失敗した。
 弱すぎて跡形も残さず殺してしまったと言っていたよ」

「そ、そうなんですか……」

騎士達がディグラントを触ってアイテムを持ってないか確かめる。
さっきレインが軽く調べた時には何も見つからなかったが、果たして。
そこで何か思いついたレインは姿を元に戻し、限定召喚で「豪腕の籠手」を装着する。

「ディグラント、失礼するよっ!」

腹に容赦ないパンチをぶちこむと、ディグラントはげぇっと何か吐き出した。
それは虹色の光彩を放つ石だった。胃液か唾液か判然としないが、べとべとしている。

「ばっちいな……どんな隠し方をしているんだ……」

レインも半信半疑で確かめてみたのだが、まさか当たりだとは思わなかった。
素手で掴む気にはなれない。水魔法の類で洗浄してくれないだろうか。

「誰か、水魔法で洗ってくれ。このままでは持って帰れん」

目を細めてラカンがそう言うと魔法使いの兵士が水魔法で洗浄してくれた。
レインはそれを手に乗せてしげしげと眺める。はじめて見るアイテムだった。

「この魔族はどうしますか?」

「まだ有用な情報を持ってるかもしれない。捕らえておきたまえ」

とにもかくにも、王家の谷は無事に守り抜いた。
レインたちはアルバトロスの転送魔法でいったん城まで戻る。

「レイン、クロムさんも!そちらも無事に防衛できたようですね」

アンジュとヒナとも城で再会した。
ガルバーニのダンジョンへ移動する方法を手にしたと話すと、二人は喜んだ。
これで魔王軍の侵攻を直接止めることができる。とはいえ、今すぐいきなり乗り込むのも性急すぎる。

一日身体を休め、明日に両勇者パーティーで乗り込もうという話になった。
敵もいったん魔物を大量に吐き出したので、再度襲ってくるまで時間を要するはず。
アルバトロスもそれが良いと言って、城の客室を用意してくれた。

「はぁ〜。二度目だけどやっぱり悪魔的な居心地の良さだ……。
 宿屋とは比べ物にならない……」

レインは高級なソファに座り、そのまま居眠りしてしまうのだった。


【ディグラントから情報&アイテム入手】
【明日にはガルバーニのいる移動型ダンジョンに突入する予定】

443 :クロム :2022/03/20(日) 21:27:06.99 ID:1zq1+2vJ.net
>「……なんだと。ワシを甘く見るなっ。例え拷問だろうと口など割らんわ!
> このディグラント、魔王様の配下としてのプライドがある……!」

といって、鼻息を荒くするディグラントに、クロムは「ま、予想の範囲内か」と、ポツリ吐きながら指の関節を鳴らす。
如何にも思いっきり痛めつけてやるぜ、といわんばかりだが、実際には彼の拳が振るわれる事は無かった。

>「やりたくないけど、こいつであなたを斬りますよ。たぶんかなり痛いですよ」

それより先にレインが、

>「派手に暴れたようだね。水晶で監視はしていたが」

続いて転送魔法で現れたアルバトロスが、彼とディグラントの間に割って入ってきたからだ。
しかも、特にアルバトロスに至っては拷問ショーを繰り広げる必要なく、たった一言で問題を解決してしまったのだから。

曰く『月の山脈を守っていたアンジュたちが情報を手に入れた』。

その一言に狼狽したディグラントが口を滑らせる。『転移石』なるアイテムでダンジョンに出入りしているということを。
アルバトロスの言葉は情報を引き出す為の罠、すなわち真っ赤な嘘であることにも気が付かずに……。

(『転移石』……)

クロムの脳裏に砂を使って転送魔法を発動したメリッサ島のシナムの姿が蘇る。
転移石なるアイテムも恐らく、あの時の砂と同じ魔法効果を持っているに違いない。

「アイテムで出入りしているということは……やはりどっかに隠し持ってるっつーわけか、それを」

しかし、生き残りの騎士達がディグランドの服や持ち物を調べても、いっこうにそれらしきブツは出て来ない。
となると後は消去法だ。
万一を考えて持ち歩くことはせず、どこか適当な物陰にでも隠したか、もしくは体の目には見えない部分──体内に隠したか。

>「ディグラント、失礼するよっ!」

やがて同じことを思ったらしいレインが、籠手をはめた腕でディグラントの腹を思いっきり殴った。
果たして読みは的中する。すぐさま胃液まみれの虹色の石を、ディグランドが吐き出したのだ。

「これでこの作戦の目的は果たしたな。って、いきなりこいつを使ってボスのところに行くわけじゃねーよな?!」

レインの掌の上で輝く石を見つめながら、クロムはまさかと思いながらも訊ねる。
瞬間、足元に広がる魔法陣。見覚えのあるそれは、アルバトロスの転送魔法。
視界を埋め尽くす一瞬の光の後、目の前に現れたのはこれまた見覚えのある光景、王国の首都城。

そこには一足先に任務を終えていたアンジュ達がいた。
駆け寄る彼女たちとレインとの間で、今後の方針がとんとん拍子で決まっていく。
クロムの内心を察知していたわけではないのだろうが、曰く乗り込むのは明日にして、今日は休息取るのだと。

「あたし達は楽勝だったから連戦も余裕。当然、貴方たちもよね? とか言うような常識のない奴らじゃなくてよかったよ」

思わず安堵の溜め息をつくクロム。体力回復もままならないまま、ダンジョン突入などそれこそ拷問に等しかったのだから。

クロムはアルバトロスに宛がわれた客室の場所を確認した後に、風呂場へと案内してもらった。
砂漠だろうとどこだろうと平気で地べたに横になってすやすや眠れる図太さのある彼だが、
流石に全身魔物の体液にまみれた格好のままベッドに横たわる気にはなれなかったのである。

「ついでに服も洗濯しとかねーとな。返り血を気にしなくていい敵ってのは剣を振るうには楽だが、汚れてどうしようもねぇ」

【城に帰還。風呂で汚れを落とした後、部屋で眠る。】

444 :レイン :2022/03/27(日) 00:54:14.05 ID:JR85uU4W.net
翌朝、目を覚ましたレインは装備を整えて城の外に出た。
手にはディグラントから奪った『転移石』を持って。
アンジュとヒナはもう来ていたようで、レインに手を振って迎える。

「早いですね、レイン。まだ集合時間の30分前ですよ」

「いやぁ……ははは。なんだか朝早くに目が覚めちゃって」

敵のダンジョンに殴り込みに行くということで、防塵用マントは着ていない。
アンジュは狩人風の服装の上から純白のケープを纏っている。
ヒナはそのまま袖が余りまくった白衣姿だ。

あとはクロムだけだ。
そして全員集まった段階でアルバトロスがやって来る。
これから敵の本拠地に殴り込みに行く一同に、激励の言葉を送る。

「そのアイテムがあればいつでも戻れるんだろう。
 勇者パーティーだからといって気負わずに挑むといい」

「そうですね。アンジュも無理しちゃだめだよ。君は背負いこむタイプだから」

「それはこちらの台詞です。強くなったとはいえ過信しないように」

そしていよいよレインが転移石を発動させる。
魔力を送り込めば効果を発動するタイプのようなので、魔力を石に込める。
すると足下に魔法陣が浮かんで周囲の景色が徐々に変わっていく。

「行ってきます、アルバトロスさん……!」

「うむ。必ず戻ってきたまえ。命あっての物種というやつだ」

――そして景色が銀色に染まった金属質なものへと変わる。
ここが地の大幹部のいる移動型ダンジョンらしい。

「地底移動要塞アガルタ……だったっけ。道がずっと地下へと続いているね。
 このまま降りていく以外の道は無さそうだけど……」

道は螺旋状に下へと伸びている。
中央にはぽっかりと穴が開いているという構造だ。
レインたちはその道を降りていくしかないようだった。

「こ……これは……!」

降りていく途中で目にしたのは、透明で巨大な球体が収まった部屋だった。
球体からは時折、吐瀉物めいた様子で何かが排出されていく。
――魔物だ。王家の谷でも見たジャッカルナイトが産まれた瞬間を目撃したのだ。

それは魔物を効率的に生産するための工場(プラント)だった。
この移動型ダンジョンにはそんな部屋が幾つもあるのだ。

「なんておぞましい場所なんだ……!
 こ……ここは既存の生き物を魔物に加工する部屋なのかっ……!」

言語化しようのない拒否反応がレインを襲ってくるのと対照的に、
アンジュとヒナは興味深くしげしげとそれを眺めていた。

「ふむ……魔物は既存の生き物を加工するか、魔法で無から生み出す方法の二種で生まれると聞きますが……。
 こうやって大規模に魔物を生産する施設があるのは初耳です。これが大規模な侵攻を可能とした理由なのですね」

445 :レイン :2022/03/27(日) 00:55:43.29 ID:JR85uU4W.net
レインは『召喚変身』で天空の聖弓兵へと装備を変えると、弓を構えた。
アンジュが慌ててレインの前に立ち塞がる。

「レインっ、何をする気ですか!?」

「壊すんだ。こんな恐ろしい場所はあっちゃいけない!」

「だ、だめだよレインちゃん。そんな目立つ真似しない方がいいって!」

ヒナが後ろから羽交い絞めにしてレインを止める。
レインは若干の抵抗を見せたが、すぐに二人の言うことを聞いた。

「……いや、ごめん。ショッキングだったからつい……」

「気にしないでください。いずれは破壊する必要もありますが……。
 無闇に暴れて大幹部との戦闘に支障をきたしては本末転倒ですからね」

地下へ降りるほど、そんな部屋が増えていく様子だった。
魔物が襲い掛かってくる様子もない。それがかえって不気味だ。
そして最下層へとたどり着いた時、一同を迎えたのは巨大な門だった。
金属質なその門は、鍵穴も取っ手も何もない。

「おやおやぁ。お客人なんだな。入ってくるといいんだな」

そんな声が門の奥から響いてくると、門がひとりでに開いていく。
待ち受けていたのはゴーレムかと見紛うほどの巨漢の魔族だった。

「はぁ……おいらのプラントはどうだったんだな?凄くてびっくりした?」

「あなたが……地の大幹部ですか。私は"探究の勇者"アンジュ。
 ようやく会えましたね。あなたを殺す機会をずっと探していました」

玉座のような椅子に座るその姿は、喋り方に反して重厚な威圧感がある。
やはり大幹部というだけある。逃げ回るだけの姑息な奴じゃないということだ。

アンジュは腰からすらりと細身の剣、レイピアを引き抜いて構えた。
"星屑の細剣"スターリング。光属性の力を秘めた希少な剣である。

「お前に興味はないんだな。おいらの目的はシェーンバインを殺した連中なんだな」

つまり、目的はレインとクロムというわけだ。
眼中にないと言われてアンジュは募らせていた怒りを爆発させる。

「あなたには無くても、私にはあります!この大陸に生きる人々を傷つけたその罪……。
 万死に値します!平和に生きるはずだった皆の無念を味わいなさいっ!!」

そう高らかに叫んで、アンジュがレイピアを構えて突っ込んでいく。
レインは無言でストリボーグを構えて援護に回る。

「はぁ……好きに攻撃するといいんだな。お前じゃおいらは殺せない。
 殺して成果になるのは"召喚の勇者"一行だけだし……相手にしてないんだな」

「それが最期の言葉です」

アンジュは初手から全力で攻撃を放った。
放つのは初代勇者が得意とした、勇者固有の奥義。
光の波動を纏わせて巨大な光剣を形成する『エクセリオンレイス』だ。

446 :レイン :2022/03/27(日) 00:57:53.37 ID:JR85uU4W.net
細身のレイピアを巨大な剣へと変えて、地の大幹部へと斬りかかる。
その刃は一瞬して大幹部を真っ二つにする――はずだった。

「ふぅぅ……やっぱ余裕で耐えれた。おいらは"不動城砦"ガルバーニ。
 防御力に関しては大幹部で最高レベルだと自負してるんだな。その程度の奥義では……」

ぎゅん、ぎゅん、と攻撃を受けきったガルバーニの身体が光を溜めていく。
吸収しているのだ。エクセリオンレイスが秘めた莫大な破壊力を。

「……おいらは倒せないッ!!」

そして解放する。ガルバーニは受け止めた破壊力を全てアンジュに返した。
それは衝撃波となってガルバーニの全身から放出される。
レイン、アンジュ、ヒナ、クロムに奥義と同威力の衝撃波が襲う。

「やっば〜〜〜い!?しょうかーん!!!!」

ヒナは慌ててゴーレムを召喚してそれを盾代わりにした。
防御を重視したガーディアンゴーレムと呼ばれる個体である。
だが、衝撃波は防御偏重のゴーレムでなお一瞬で破壊するほどのエネルギーを秘めている。

「アンジュ、危ないっ!」

レインは身を覆うほどの盾を召喚してアンジュを守る。
だがあまりの威力にレインはアンジュごと吹き飛ばされた。

「おっ……案外脆いんだな。"召喚の勇者"一行は。こりゃラッキーなんだなぁ。
 お前らを殺せば魔王様に褒められるんだな。だから魔物に任せなかったんだな。理解したんだな?」

どうやら、シェーンバインを倒し、魔王に顔を覚えられたツケが回ってきているらしい。
掃いて捨てるほどいる勇者の中でレインたちだけが魔王軍に危険視され、標的となっているようだ。


【移動型ダンジョン『アガルタ』へ転移。ガルバーニと戦闘開始】
【アンジュが先制攻撃するも完全に防御されたうえで衝撃波として攻撃を反射される】

447 :クロム :2022/04/04(月) 21:05:50.47 ID:e0aBCHym.net
朝。クロムは昨晩の洗濯で真っ白な輝きを取り戻した装束を着込むと、軽めの朝食を済ませて城を出た。
時は約束の集合時間五分前。
しかし、元々せっかちなのか、ダンジョン突入を前にして気が急いているのか、そこには既にレインやアンジュ達が来ていた。

「その様子じゃ随分前からここで待ってるっぽいな、お前ら。ぎりぎりまで休んどかねぇと戦いの時にもたねぇぜ?」

などと言っていると、クロムの後ろから声がした。
アルバトロスである。ただし彼女自身は共に殴り込みに行く気はないらしく、目的は激励らしい。

>「そのアイテムがあればいつでも戻れるんだろう。
> 勇者パーティーだからといって気負わずに挑むといい」

「確かに、脱出アイテムがあるのは心強い。宇宙の梯子の時みてーな命懸けの脱出はもう御免だからな」

>「行ってきます、アルバトロスさん……!」

レインが転移を発動させる。
徐々に視界から城が消え、代わって銀に染まった無機質な世界が広がっていく。

「……ここが例の……?」

>「地底移動要塞アガルタ……だったっけ。道がずっと地下へと続いているね。
> このまま降りていく以外の道は無さそうだけど……」

レインの目線の先には螺旋状の階段が。それはまるで地獄の底まで達しているかのように延々と下に続いていた。

「薄暗いせいか底が見えねぇな。思った以上にデケェ建物みてぇだ……ん?」

しばしレインの後をついていく形で順調に階段を降りていたクロムの足が、ふと止まる。
前を行くレインの足も止まっていたが、それにつられたわけではない。目の端で何かおぞましさを感じる影を捉えたからだ。
そしてそれは誰かが指し示すまでもなく、この場にいる全員がほぼ同時に目撃したものでもあった。

>「なんておぞましい場所なんだ……!
> こ……ここは既存の生き物を魔物に加工する部屋なのかっ……!」

>「ふむ……魔物は既存の生き物を加工するか、魔法で無から生み出す方法の二種で生まれると聞きますが……。
> こうやって大規模に魔物を生産する施設があるのは初耳です。これが大規模な侵攻を可能とした理由なのですね」

「なるほど……どうりでデケェわけだ。移動型拠点が生産工場を兼ねていたとはな。あの物量のからくりがこれか。
 大陸中から生き物をかき集めて魔物を創っていたってわけだ……って、おい!」

武器を召喚して施設を破壊しようとするレインにクロムは思わず手を伸ばして待ったを掛けようとするが、
それよりも一瞬早くアンジュとヒナが止めに入ったのを見て、溜息混じりに手を引っ込める。

「お前、意外と直ぐ頭に血が上るタイプだよな。このダンジョンはボスを倒せばいつでも破壊できる。まずは先へ進もうぜ」

──最下層。そこへ辿り着いた時、一向を待ち構えていたのは巨大な門だった。

>「おやおやぁ。お客人なんだな。入ってくるといいんだな」

とはいえ勿論、門自体は敵ではない。真に待ち構えていた者は、その奥に居た。
ひとりでに開いていった門の中に入っていくと、直ぐに玉座に座った巨漢の魔族が目に飛び込んできたのだ。

(こいつが地の大幹部……ガルバーニ)

思っていると、アンジュがレイピアを抜いて斬りかかっていく。
それもただの一太刀を浴びせようとしているのではない。
剣身に光魔法を纏わせることで創り出した威力抜群の光剣の一刀を喰らわせようというのだ。

が──

448 :クロム :2022/04/04(月) 21:07:56.60 ID:e0aBCHym.net
>「……おいらは倒せないッ!!」

大幹部の中でも最高の防御力を自負するガルバーニには通じなかった。
なんと瞬時に光剣を吸収して、その威力を衝撃波に変換えて跳ね返してきたではないか。
ヒナがゴーレムを、レインが盾を召喚して衝撃に備えるも、その努力虚しく光の力の前にあっけなく吹き飛ばされていく。

>「おっ……案外脆いんだな。"召喚の勇者"一行は。こりゃラッキーなんだなぁ。
> お前らを殺せば魔王様に褒められるんだな。だから魔物に任せなかったんだな。理解したんだな?」

「──案外脆いのはお互い様かもしれねぇぜ」

だがその直後、ガッ──とガルバーニの脳天に刃が食い込んだ。
頭上に移動していたクロムが隙だらけの急所を叩き割らんとだんびらを勢いよく振り下ろしたのだ。

「──うん? なんだお前? いつの間においらの上に?」

「お前の意識がレインやアンジュに集中していたもんでね。その隙に死角に跳んだだけさ。
 全方位に放たれた衝撃波。どうせどこに居たってダメージは免れないなら、こうやって切り込んだ方がマシだろ」

クロムは反撃を受ける前に素早い身のこなしでガルバーニとやや距離を取った場所に着地する。

(チッ、真っ二つにするつもりの一刀であの程度の傷かよ。伊達に大幹部最高の防御力ってやつを名乗ってねぇな)

目だけでその動きを追っていたガルバーニは、やがて浅い切り傷ができた自らの頭を撫でて言った。

「それにしては解せないんだな。お前、まともに光の力を受けたにしては明らかにダメージが少ないんだな。
 まだ何か隠してることがありそうなんだな」

確かにガルバーニの指摘した通り、クロムは全身に傷を負ってはいたものの、
防御力の高いゴーレムを破壊する程の衝撃波を喰らった割にはそのダメージは小さなものと言わざるを得なかった。
それに対しクロムは無言だ。
当たり前だが、反魔の装束によってダメージが半減したからくりを、いちいち敵に教えてやる必要はどこにもない。

「隠してる事、ねぇ。……それこそお互い様のような気もするがな。ま、いずれは知れる時が来るだろうが」

「それはどうなんだな。お前の隠し事なんか知る前に殺しちゃうかもしれないんだな。
 なんせお前らじゃおいらの防御力は突破できないんだな。さっきの一太刀もそれを証明してるんだな」

「いや、いちおう傷はつけたじゃん」

「こんなもの傷の内に入らないんだな。あの程度の太刀筋じゃ何百回おいらを斬り付けたって徒労に終わるんだな」

「へぇ……ならここは勇者の出番かな」

クロムはだんびらを肩に乗せながら、レインを見る。

「知ってるか? シェーンバインご自慢の真竜形態を奴の命ごと見事に切り裂いたのはあいつなんだぜ?
 あいつの腕前なら、お前なんぞ簡単に真っ二つかもな」

釣られてガルバーニがレインに首を向ける。
……レインには解る筈だ。これはガルバーニの意識をクロムから逸らす為の挑発だと。
何故なら今、傷付いたガルバーニの頭部からエネルギーが煙のように立ち昇り、
だんびらに吸収されていく光景が彼にもしっかり見えている筈なのだから。

「……それは初耳なんだな。そうか、あいつがシェーンバインを」

(そう、いずれは知れる。が、早々にタネがバレると何か厄介な策を考えるかもしれねぇ。できるだけ時間を稼げよ)

【衝撃波を喰らうも装束の効果によってダメージは半減しており重症は免れる】
【ガルバーニ:徐々にエネルギーを奪われて弱体化しているが、まだそれには気が付いていない】

449 :創る名無しに見る名無し:2022/04/15(金) 17:31:54.10 ID:Pls2V0wb.net
テスト

450 :レイン :2022/04/15(金) 23:36:36.36 ID:wKuKF2O/.net
アンジュの放った必殺の奥義は、ガルバーニに完全に防がれてしまった。
それだけではない。反射魔法によってその威力を返され、味方に被害が及ぶ。
その圧倒的な爆発めいた衝撃波がパーティーを襲う中、クロムは。

>「──案外脆いのはお互い様かもしれねぇぜ」

ガルバーニの頭上に飛び込み、脳天に刃を叩き落としていた。
しかし、それもわずかな切り傷をつける程度。
反撃を受けるのを恐れてかクロムは素早くやや後ろへ後退する。

>「──うん? なんだお前? いつの間においらの上に?」

大幹部、"不動城砦"ガルバーニは意にも返していない。
無理もないだろう。ほぼほぼ掠り傷のようなものだ。
包丁で危うく手を傷つけて死ぬ人間はいない。
ガルバーニとっては、本当にその程度の僅かな負傷なのだ。

>「お前の意識がレインやアンジュに集中していたもんでね。その隙に死角に跳んだだけさ。
> 全方位に放たれた衝撃波。どうせどこに居たってダメージは免れないなら、こうやって切り込んだ方がマシだろ」

そう言われても実践できるものは少ないだろう。
敵の意識を注意深く観察する眼と、恐るべき身体能力の為せる技。
『反魔の装束』の効果があるとはいえ、ダメージを顧みない根性も加味すべきか。

>「それにしては解せないんだな。お前、まともに光の力を受けたにしては明らかにダメージが少ないんだな。
> まだ何か隠してることがありそうなんだな」

と、言ってもクロムが魔法に対して耐性があるのは今にはじまった話ではない。
それがいつ頃ぐらいだったか……今の真っ白な装束に着替えたあたりからだ。
なのでハッキリ言われたことはないが、レインはその装備のおかげだと推理している。

>「隠してる事、ねぇ。……それこそお互い様のような気もするがな。ま、いずれは知れる時が来るだろうが」

手の内は見せない方がいい。それが敵なら尚更だ。
レインも仲間にすら隠している手札が一枚ある。

なぜそんなことをするかというと、単純に情報漏洩を防ぐためだ。
魔王を倒すためのとってきおきの切り札が、レインにはある。
だが何かの理由でそれが露呈したら意味がない。だから隠す。

>「それはどうなんだな。お前の隠し事なんか知る前に殺しちゃうかもしれないんだな。
> なんせお前らじゃおいらの防御力は突破できないんだな。さっきの一太刀もそれを証明してるんだな」

そこから始まる、子供の口論じみた舌戦。
レインはその隙にどうやってガルバーニを突破すべきか思案していた。
あのとてつもない防御力もそうだが、少なくとも先ほどの反射魔法は封じたい。

>「知ってるか? シェーンバインご自慢の真竜形態を奴の命ごと見事に切り裂いたのはあいつなんだぜ?
> あいつの腕前なら、お前なんぞ簡単に真っ二つかもな」

「……ん?」

そして話はなぜかレインに飛び火したようだ。
天空の聖弓を構えたまま、レインは頭に疑問符を浮かべる。
その時、レインの目にはガルバーニの頭部から発生する煙が目に入った。

451 :レイン :2022/04/15(金) 23:37:41.69 ID:wKuKF2O/.net
あの煙はシェーンバインと戦っている時にも立ち昇っていた。
レインはあの時、未完成の奥義を放って自爆したゴタゴタでしっかりと見たわけではない。
だが後々マグリットが何かの機会にそんな話をしていた気がする。
クロムの新たな剣――『鬼神のだんびら』には、敵の力を吸収する能力があるのだと。

>「……それは初耳なんだな。そうか、あいつがシェーンバインを」

「……そうだね。俺にはとっておきの『三つの奥義』がある。
 それを使えば最高の防御力だって簡単に破れちゃうかもしれないよ……!」

「初耳です。そんな技をいつの間に開発していたのですか……!?」

驚きの声を発するアンジュを見て、レインは微笑んだ。
第一に彼女の先祖であり師匠でもある『仮面の騎士』との修行のおかげだ。
そして夢の中に現れた友達、アシェルの助言によって制御術式を追加して完成した。

シェーンバインを葬った『プロミネンスブレイザー』はそんな成り立ちをしている。
これは『紅炎の剣士』状態の奥義なのだが、ガルバーニに素直に放ってはいけない。
なぜなら奴にはとてつもない防御力の他に反射魔法があり、さっきの二の舞になる危険性がある。

まだ実戦では使っていないが『三つの奥義』の二つ目。
『天空の聖弓兵』状態で放つ新たな奥義を試すべき時がきた。
ちょうど属性的にもガルバーニに有利が取れる。

「すっごぉい。レインちゃん、やっちゃっていいんじゃない!?」

ヒナも粉砕したゴーレムの後ろからひょっこりと顔を出して言った。
少々振りがわざとらしい気もする。アンジュもヒナもクロムの剣の効果に薄々気づいている。
だがガルバーニという魔族、防御力に関しては並々ならないプライドがあるらしい。
クロムと喋っていた時もやたらと張り合っていた。

「たとえシェーンバインを倒した奥義だろうがノーダメージなんだな。
 断言していいんだな。お前はおいらに傷一つつけられない……!」

「じゃあお見せするよ。俺の奥義の二つ目、『インパルスサイクロン』を……!」

レインが天空の聖弓の弓を引き絞った。
膨大な魔力が風の力に変換され、弓に集まっていく。
大気が震え、さながら嵐の前触れであるかのように感じられた。

「ほう……ならばこっちも全力の『防御力』をお見せするんだな!」

ガルバーニもまた魔力を放出して、その身に多重の防御魔法を纏った。
これが"不動城砦"の絶対なる防御態勢にして奥義でもあるオリジナルの上位防御魔法。
ただでさえ硬いガルバーニの防御力をさらに強固にする。もちろん反射魔法との併用も可能だ。

「この『フォートレスコクーン』は未だに破られたことがないんだな!!
 これこそが魔王様の『ダークネスオーラ』にも劣らぬおいらの奥義なんだな!!」

「行くぞ、"不動城砦"ガルバーニ!これが俺の全力だぁぁぁぁーーーーっ!!!!」

放たれた凝縮された嵐のような一射は、疾風迅雷でガルバーニの腹に命中する。
螺旋状の『風の矢』がガルバーニに炸裂した。バシン、バシン、と激しい音が発生している。

452 :レイン :2022/04/15(金) 23:39:38.74 ID:wKuKF2O/.net
ガルバーニは不敵の笑った。見た目は派手だが威力は大したことがない。
なんならさっきクロムが放った一撃より劣る。奥義を出すまでも無かった。
余裕で防ぎ切れる。

「ん……!?これは……!?」

そして直後、ガルバーニは違和感を覚えた。この攻撃、さっきから止まる気配がない。
威力はてんで大したことはないがガルバーニの腹でずっと炸裂し続けているのだ。

「……ガルバーニ。点滴石を穿つって言葉を知ってるかい」

「あ……!?おいらに知識マウントを取るんだな!?馬鹿にしないで欲しいんだな!
 こちとら大幹部でも根気強い方なんだな!じっさい地道にウェストレイ大陸を侵略して……!」

「この奥義もそんな技だ。魔力を込めた分だけ命中した相手に風の力が炸裂し続ける。
 一発一発の威力は低くても……いずれ石に穴が開く。これはそういう奥義なんだ……!」

腹に炸裂し続ける風の力をちらっと見て、ガルバーニは巨大なハンマーを取り出す。
『インパルスサイクロン』が止まる気配はない。ならば攻勢に出るべきだ。
ガルバーニの反射魔法は一度攻撃を受けきらないと反射できない。
つまり、レインの奥義が止まるまで反射魔法は封じられた。

「今だみんな!これで相手は反射魔法を使えない。攻撃のチャンスだ!」

「おぅさー!しょうかん、私の切り札……センチュリオンゴーレム!」

レインの掛け声と共に、ヒナがゴーレムを召喚する。
見るからに強そうな騎士っぽい見た目のゴーレムだ。
剣を持ってガルバーニに肉薄する。

「なるほど、反射魔法封じが本命だったんだな……!でも舐めるなと言いたいんだな!」

ハンマーを振りかぶり、センチュリオンゴーレムの巨大な剣と激突。
ゴーレムはガルバーニより数倍でかいのに力が拮抗している。
大幹部の称号は決して伊達じゃない。

「うぉぉぉぉっ、こうなりゃ力で捻じ伏せるんだなー!」

ガルバーニの動きは大振りだが、その一撃一撃が致死級だ。
レインは奥義にほとんどの魔力を注いだのでもう何もできない。
幸運なことに相手はまだクロムの剣の効果に気づいていない様子だ。
必要な時間が稼げるまで、ヒナのゴーレムとアンジュが頼りだ。


【お待たせしました。ガルバーニに風の奥義を放つレイン】
【その効果でガルバーニの反射魔法を封じる】

453 :クロム :2022/04/24(日) 21:28:32.46 ID:dB0X/hBq.net
レインが明かした『三つの奥義』の存在は、敵であるガルバーニよりもまずアンジュやヒナを驚かせた。
それは二人ほどでないにしろ、事前に奥義の存在を把握していた筈のクロムも同様であった。

(三つ……?)

レインの言葉がマジならば、シェーンバインを斬った『プロミネンスブレイザー』の他に、
奥義と位置付けるだけの強力な技を更に二つも隠し持っていることになるからだ。
「いつの間に」とはアンジュの言葉だが、実はそれを最も言いたかったのは共に旅を続けてきたクロムであったかもしれない。

はったりか、それとも誠か、いずれにしてもここぞとばかりにヒナが「やっちゃえ」等と些かわざとらしく煽る辺り、
少なくともクロムの意図は既に彼女らの察するところでもあるらしい。

>「たとえシェーンバインを倒した奥義だろうがノーダメージなんだな。
> 断言していいんだな。お前はおいらに傷一つつけられない……!」

そうした三人の協力もあってガルバーニを上手い具合に誘導する事には直ぐに成功した。
だが、問題はこれからだ。
それぞれがプライドを巧妙に刺激することで注意をクロムから逸らしたまではいいが、
マジになった大幹部にレイン達が秒殺JO、下手すりゃあの世行きなんて事になっては全てが無意味となる。

(……仕掛けておいて無責任だが、こればっかりはあいつらの実力に期待するしかねぇ)

かといってクロムが動けるのは、勝ちの目が見えた時以外にない。
ガルバーニが今、クロム背にしたままその存在を完全に己の意識の外に置いているのは、恐らく三人だけが原因ではない。
『あの程度の太刀筋じゃ何百回おいらを斬り付けたって徒労に終わる』と思い込んでいるのも大きな原因に違いないのだ。

焦って飛び出し、膂力の強化も敵の弱体化も半端な状態で斬り付ける愚は犯したくない。
先程よりは深手を与える事が出来ても倒すまでには至らないだろうし、注意を引いてしまえばだんびらの効果がバレかねない。
そうなれば相手は大幹部。何をしでかすかわからないのだから。

(信じてるぜ、お前の“奥義”とやらをな……!)

>「行くぞ、"不動城砦"ガルバーニ!これが俺の全力だぁぁぁぁーーーーっ!!!!」

──クロムの願いが通じたのかは定かではないが、レインの放った風の矢《奥義》は、予想だにしない効果を発揮した。
魔法によって防御力が急上昇した肉体──
それを見事貫いた、わけではなく、矢の先端・螺旋風は残念ながら腹にほんの浅く突き刺さった程度に過ぎなかったが、
通常の矢とは異なりそのまま動きを止めることなく傷口にその威力を際限なく炸裂させ続けていくではないか。

>「今だみんな!これで相手は反射魔法を使えない。攻撃のチャンスだ!」

(はったりじゃなかった。こいつぁ並の防御力だと簡単にぶち抜かれるな……レインの奴、本当にいつの間にこんな技を!)

戦いの連続で修行をするまとまった時間などなかったはず。
……いや、思い返せばサウスマナに向かう船の上で仮面の騎士とのマンツーマンの日々があるにはあったか。
が、それでも修行としては短期間に違いはない。
なのに三つの奥義を一挙にそこで修得したならば、勇者の資格を与えられるだけのセンスがやはりあるということなのだろう。

454 :クロム :2022/04/24(日) 21:29:47.68 ID:dB0X/hBq.net
>「なるほど、反射魔法封じが本命だったんだな……!でも舐めるなと言いたいんだな!」

──などと感心している間にも戦いは続き、新たな局面に。
レインの声に真っ先に応じたヒナが、魔法で巨人型の近接戦闘用ゴーレムを生み出し、ガルバーニと激突させたのだ。
ゴーレムの繰り出す大剣とガルバーニが振るう大ハンマーが交錯し、周囲に激しい火花と巨大な衝突音を撒き散らす。

どちらも人間の目線からは圧倒的な巨躯に違いはないが、両者を比較すればゴーレムの方が更に山のようにでかい。
にもかかわらず、ゴーレムは力で大剣を押し切ることができずにいる。……それだけ地力に差があるのだ、恐らく。
互いに小枝を操るが如くの得物と得物の激しい打ち合いも一見実力伯仲には見えるが、クロムの目には既に先が見えていた。

徐々にだがガルバーニの得物捌きが加速している。
初めはゴーレムが一方的に剣を繰り出すばかりだったが、次第にガルバーニが先手を取って打ち込むようになっているのだ。

(くそ、やっぱ長くはもたねぇか……)

がり、と唇を噛むクロムが、直後に目を見開く。
ゴーレムが剣を振りかぶった瞬間、隙だらけになった脇の下にハンマーが炸裂したのだ。
瞬時に上半身の右半分を大きく陥没させ、剣を持つ右手は肩ごと千切られる大ダメージを受けてよろめくゴーレム。
即死しなかったのは流石にヒナの切り札といったところだが、戦闘不能に陥ったのであれば結局は同じ事だ。

「ふぅ〜、残念だが当然の結果なんだな。大幹部のおいらに勝るゴーレムなんぞ、この世に存在しないんだな!」

ゴーレムを完全に沈黙させんと、すかさずとどめのハンマーを振りかぶるガルバーニ。

だがその時、隙が生じた脇腹に突如として光り輝く刃が食い込んだ。

「……ちょっとは効いたんだな。でも、さっきのより威力はないんだな」

刃の正体は如何なる物質をも消滅させることができるという光剣・エクセリオンレイス。
だが、ガルバーニの防御魔法のせいか、肉体は消滅するどころか少々の深手程度に傷ついたに過ぎなかった。

「反射のダメージで力が落ちてるのか、充分に光を練れてないって感じなんだな。お前、やっぱ脆いんだな」

「なっ……!?」

食い込んだ光剣を掴み、握力だけで一気に刀身を握り砕き消滅させるガルバーニを愕然とした表情で見つめるアンジュ。
──彼女の時が止まったかのようなその一瞬の間を、見逃すガルバーニではなかった。

「これじゃおいらの反射魔法を封じたって意味ないんだな」

「うっ、あぁぁ……!」

素早くアンジュの首を掴み、空中に持ち上げたのだ。

「さ、死に方を決めるんだな。このまま首を千切られるか、地面に叩きつけられてグチャグチャに捻り潰されるか……」

レインは奥義を使い、魔力を消費した影響か次の攻撃に移る素振りを見せない。
ヒナもまた切り札を召喚したせいか、新たなゴーレムを生み出さないまま立ち尽くしている。
つまりこの絶体絶命の窮地を救える者がいるとすれば、それは残るクロムを置いて他にいないということだ。

455 :クロム :2022/04/24(日) 21:31:30.16 ID:dB0X/hBq.net
「……お前達はどうもせっかちなんだな。どうして大人しく順番が待てないんだな?」

手裏剣が己の前腕と手の甲に突き刺さったのを見て、ガルバーニは呆れたように呟いてアンジュを離した。

「待っていた方が自分にとって好都合でも、おたくらのように非情になれないもんでね。つい手が出ちまうのさ」

「じゃあその鬱陶しい手を二度と出せないようにしてやるんだな。望み通りお前から最優先に殺すんだな、こうやって」

そして引き抜いた手裏剣をこれみよがしに握り潰して見せたが、クロムの視線はそこになくアンジュに注がれていた。
彼女は“時間”に対する不安と、己の不甲斐なさに怒り、詫びるような、様々な感情が入り混じった目でクロムを見ていた。

……確かにまだ早い。
レイン達のお陰で随分と時間は稼げたが、安全かつ確実に勝ちを得る為にはもっと多くの時間が必要であった。
しかし、己から敵意識の内側に飛び込んでしまった以上、もう時間稼ぎは望めない。やるしかないのだ。

(そんな顔すんなよ、まだ負けたと決まったわけじゃねぇ。俺も、お前もな)

クロムは僅かに唇を動かすと、アンジュから目を切って山のようにそびえ立つ背中を睨みつける。
ガルバーニが未だ後ろを振り返ろうとはしないのは、いつでも来い、このままで充分、という余裕からに違いない。
……いや、油断というべきか。

毎秒ごとに敵が弱体化し、逆にクロムは強化されているとはいえ、勝ちを確信できるだけの時間を稼げなかった分、
敵の防御力はまだまだ堅固なままの筈である。
今のクロムが致命傷を与えるには恐らく肉体の出力限界を超えた全エネルギー集中の一刀でなければならないだろう。
しかし……それには大きな“反動”が伴う。シェーンバインの時がそうだったように……恐らくクロムも無事では済むまい。

できれば体が壊れるような戦い方は避けたかったのが本音だが……もはや手段を選んでいられる状況ではない。

「く……クロムさん……」

か細い声でクロムの名を呼びながら、アンジュがゆっくりと立ち上がる。
それを合図に、クロムは目を見開いて地面を蹴った。ただし全力でではない。フルパワー開放は抜刀の瞬間と決めている。
ぎりぎりまで敵に実力を誤認させて油断させることで、ヒットの確率を少しでも上げるためにだ。

(躱そうとする気配はねぇ──。いいぜ、こっちの思う壺だ!)

背中を眼前に捉えると同時、クロムは右足を踏み込んで素早く柄に手を掛けた。直撃を確信して。
だが直後──

「ふん、お前なんぞが二度もおいらの肌に触れられると思ったのか、なんだな?」

「っ!!?」

これまで一切後ろを振り返ろうとしなかったガルバーニが、なんと突如としてくるりと右回転し後ろを向いたではないか。
しかも右手に握られたハンマーを恐ろしい速さで繰り出しながらだ。

456 :クロム :2022/04/24(日) 21:33:16.35 ID:dB0X/hBq.net
「まんまと騙されたんだなぁ! ちょこまか動き回られると面倒だからこうやって呼び込むことにしたんだなぁあ!
 おいらを甘く見たらバラバラの肉塊となって死ぬんだなぁぁああああああああっ!!」

「──甘く見たのはてめぇだよっ!!」

完全に不意を突かれた。一旦躱して仕切り直す、なんてことはもはや望めないタイミングだ。
ならばこのまま予定通り溜め込んだ全エネルギーを攻撃の為だけの膂力に換えて抜刀する他はない。
一か八かの凶器と凶器の打ち合いを制するしか、生き残る道はない──。

両者が得物を振り切ると同時に辺りに響き渡る甲高い衝突音。
それから一瞬の間を置いて、両者が見せた表情はまるで対照的なものだった。
……ニヤリと口元を歪めたのはガルバーニ。対するクロムは顔を顰めていた。

「がはっ……!」

そして苦悶するとやがてその場に力なく崩れ落ちていくのだった。
全身に亀裂のような細かい傷を負い、多量の血を辺りに撒き散らしながら……。

だがしかし──これは決して打ち合いに敗北した事を意味する光景ではない。
何故ならクロムが負った傷は膂力の出力超過が引き起こす肉体の“自壊”によるものだったのだから。
そもそも凶悪な大ハンマーに打ち付けられたのならいくら頑丈なクロムでも上半身はバラバラにぶっ飛んでいただろう。

「おかしい……んだな。なんでおいらが痛み……を」

表情を一変させたガルバーニの手から柄が滑り落ちる。がらん、と地面を転がるその先端には、あるはずの巨槌は無かった。
そう……だんびらにぶった切られていたのだ。打ち合いに敗北していたのはガルバーニだったのである。

「こっ、こんな──……げぶぉあぁあっ!!?」

次の瞬間、ガルバーニの腹に突如として現れた横一文字の傷が、彼にかつてない悲鳴をあげさせた。
手ではとてもおさえきれない程にばっくりと長く、深く開いた傷口から魔族特有の奇妙な色をした血液がとめどなく流れ出し、
それに混じってまるで巨大なミミズのような腸がずるずると垂れ落ちてくる。

「よ゛っ、よ゛ぐも゛っ……! よ゛ぉ゛お゛ぐぅ゛う゛も゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛っ!! ぶっ殺じでや゛る゛ん゛だな゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

ごぼごぼと血反吐を吐き出しながら醜悪な怒りの形相となって倒れたクロムににじり寄るガルバーニ。
クロムは意識こそ保っているものの、反動による自壊のダメージが大きすぎてもはや動くことができない。

(なんてタフな野郎だ……! まだ動けるとは……!)

「はぁ゛あ゛ー、はぁ゛あ゛ー。ごのま゛ま虫けら゛の゛よ゛うに゛潰じでや゛るんだなぁぁ〜〜〜!」

(しかし弱っている……こいつも限界が近い筈だ……。誰でもいい、とどめだ……! 今なら刺せる……!)

【クロム:吸収エネルギー全消費による超強化の反動で肉体が自壊。大ダメージを受けて戦闘不能】
【ドルヴェイクの手裏剣を使用。ガルバーニに砕かれて失われる】
【ガルバーニ:腹を深く切り裂かれて大量出血+内臓損傷の大ダメージ。更にだんびら効果により今もなお弱体化が進行中】

457 :クロム :2022/04/24(日) 21:41:28.23 ID:dB0X/hBq.net
訂正
秒殺JOじゃなくてKOでした

458 :レイン :2022/05/03(火) 00:19:59.74 ID:8aeGkvHj.net
かくして時間稼ぎは成功し、クロムの一撃はガルバーニを捉えた。
閃光とも見紛うような一閃はその腹を深く切り裂いて、臓物をずるずると零す。

>「よ゛っ、よ゛ぐも゛っ……! よ゛ぉ゛お゛ぐぅ゛う゛も゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛っ!! ぶっ殺じでや゛る゛ん゛だな゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

まだ動ける。恐ろしいほどタフだ。
クロムは意識こそ残っているが、限界を超えた一太刀の反動で動けない。
何かしたいレインだったがすでに魔力尽きて何もできない。

「そうだ……!ヒナ、魔力を貸してくれ!アンジュは前に!」

「おぅ……いいけど何する気なのっ!?」

あと一撃。たった一撃だけ放てば勝てるはずだ。
わずかでもいい。スイッチを押すかのような駄目押しの一撃が欲しい。
そうすればガルバーニの命はそれで断てるはずなのだ。

「『ストリボーグ』の風の矢を放つ能力でアンジュを射出する!音速で……!」

「それは……中々大変な提案ですね。でも分かりました」

その一言で意図を察したアンジュはレイピアを構えてレインの前に立つ。
ヒナと一緒に弦を引き、『風の矢』を生成する。これは賭けだ。
だが黙って見ていたらクロムが死ぬ。なんとかするしかない。

>「はぁ゛あ゛ー、はぁ゛あ゛ー。ごのま゛ま虫けら゛の゛よ゛うに゛潰じでや゛るんだなぁぁ~~~!」

「今だっ!アンジュ、頼んだぞっ!」

弦を離して『風の矢』を発射し、爆風がアンジュの身体に叩きつけられる。
アンジュはその勢いで加速して砲弾さながらの速度でガルバーニに突っ込んだ。
その姿はまさしく一筋の流星のように。

「ガルバーニ……これで終わりですっ!!」

「なぁぁぁっ!!?」

音速まで加速されたレイピアによる刺突がガルバーニの傷口に深々と突き刺さった。
アンジュは柄から手を離してバックステップで後退する。
位置的に考えれば心臓辺りを貫いているはずだ。

「ぐ……くっくっくっ……まさかお前如きの一撃がトドメになるとは……思わなかったんだな……」

ずずぅん、とガルバーニが仰向けに倒れた。勝ったのだ。
レインも勝利を確信して『召喚変身』を解除する。三人はクロムの元へ駆け寄った。
この戦いの功労者は彼だ。みんなはその功績を褒め称えようとした。

が、それを妨害するかのようにガルバーニの身体が激しい明滅をはじめたのだ。
レインは異常な魔力の高ぶりを感じていた。これはマズイ。何かの予兆だ。

「おいらは腐っては魔王軍大幹部!タダでは帰さないんだな……。
 このダンジョンと共に果てるんだな!この命尽きようとも、すべては魔王軍のために!!」

「ヤバイッ……ガルバーニは自爆する気だ!!」

即座に『転移石』を取り出したレインは転移魔法を起動する。
間に合うか。明滅は激しさを増し、いつ自爆してもおかしくない。
圧倒的な熱と閃光を感じた瞬間に景色は移り変わり、ミスライムの王城へと転移する。

459 :レイン :2022/05/03(火) 00:20:30.10 ID:8aeGkvHj.net
「あ……危なかった……」

へなへなとレインはその場に座り込むと、アンジュの肩を叩いた。
彼女はずっとこの大陸の惨状を憂いていた。今、ようやく彼女はそれから解放されたのだ。
ここは王城の中庭だろうか。しばらくじっと座って休んでいるとアルバトロスが姿を現す。

「……お帰り。大分ピンチのようだったが、どうだったんだい?」

「……大幹部は倒しました。俺たちの勝ちです。クロムとアンジュのおかげで……」

基本的に表情を崩さない、冷静な彼女だがこの時ばかりは顔が綻んだ。
それを見たレインは満足気にその場に寝転んでしばらく眠ってしまった。
起きたら、王城の客室だったので誰かが運んでくれたのだろう。

これで大幹部の二人目を倒した。残るはノースレアに居座る炎と水の大幹部のみ。
すこしここで休んだら、また旅を再開しよう。魔王を倒すことが勇者の使命。
大幹部を倒したと言って浮かれている場合ではないのだから……。


【"不動城砦"ガルバーニ撃破。死亡寸前でダンジョンごと自爆】
【転移石でミスライムの王城まで戻る】

460 :レイン :2022/05/03(火) 00:22:06.33 ID:8aeGkvHj.net
大事なお知らせがあります。
かなり一方的かつ突然のことで申し訳ありませんが、自分は今回のレスをもって引退させて頂きます。
理由はいくつかありますが、まずはリアル事情によるものが第一にあります。
この遊びにリソースを割く時間が減ってしまうことが確定し、継続を断念しました。

二つ目にモチベーションの低下によるもの。
参加者のマグリットさんがいなくなって以来、やる気の低下を否定できません。
このスレを建てた時のように弾んだ気持ちで文章が書けないのです。
正直言って、続ける楽しさよりも苦しさの方が大きくなってきています。

三つ目に単純に低い質のレスしか書けないこと。
自分は上手いプレイヤーではありません。間違いもよく犯します。
でも自分なりに上手く書けたなとか、今回は良くなかったとかあるわけです。
なのに最近は文章量も少なく、自分自身にとってすら不満足なものしか書けなくなりました。

この状態で続けても苦痛でしかないので筆を置きたいのです。
遊びとはいえ創作能力が関わる遊びです。自分が納得いかないものを書くのは辛いのです……。

最後までお付き合い頂いたクロムさんには大変申し訳ないです。
平身低頭、謝るほかにできることはありません。

ちょうどキリのいいところまで書けたので、
もし読んでくれる人がいたら……後はご想像にお任せします。
いないと思いますが続けたい人がいらっしゃればもちろん大歓迎です。

しばらくはここを覗いていると思いますので、
何かご質問があれば避難所か本スレに書き込んでくだされば回答します。

461 :レイン :2022/05/03(火) 14:05:50.62 ID:8aeGkvHj.net
あ……すみません、避難所を読んでませんでした。
離脱の件、了解です。参加者がいなくなったのでレトロファンタジーは打ち切りにさせて頂きます。
今まで参加してくれた方、読んでくれた方、まことにありがとうございました。

462 :クロム :2022/05/03(火) 18:09:29.31 ID:BTYdUjf4.net
>「『ストリボーグ』の風の矢を放つ能力でアンジュを射出する!音速で……!」

三人の会話がクロムの耳にも入って来る。
……なるほど、危険を伴う一か八かの策に出るという事は、三人もクロム程ではないにせよ限界に近いということだ。
打つ手が限られていてリスクを恐れていてはとどめを刺す事は出来ない、そう考えたのだろう。

(頼むぜ……!)

心の中で念じるクロムの視線の先で、風の矢を受けたアンジュが加速する。かつてない速さで。

>「なぁぁぁっ!!?」

弱ったガルバーニに即応は不可能だった。
レイピアを成す術なく傷口奥深くに突き入れられて、直後に彼は音を立てて倒れるのだった。

「……だから言ったろ? 俺もお前も、まだ負けたと決まったわけじゃねぇ、ってな」

駆け寄ってきたアンジュに目をくれて、クロムは口元で笑みを作る。
しかし、それも束の間。

>「おいらは腐っては魔王軍大幹部!タダでは帰さないんだな……。
> このダンジョンと共に果てるんだな!この命尽きようとも、すべては魔王軍のために!!」

「……どうやら我々の勝ちもまだ、決まったわけではないようですね」

突如として明滅し出したガルバーニの肉体を見て、勝利の余韻に浸る間もなく騒然となる一行。

「んな! しつけー野郎だな! あんな奴と心中なんてごめんだぜ!」

クロムはすかさずレインに目をくれる。脱出するぞ、の合図を送ったつもりなのだ。
が、レインもそんなことは今更言われるまでもなかったようで、既に彼の手には転移石が握られていた。

────。

王城の中庭。
レインが腰が抜けたように座り込んだが、戦場と共にピンチを脱して一気に緊張の糸が切れたのだろう。無理もない。
正にぎりぎりのタイミングで爆発から逃れることができた安堵感は、クロムにも一種の脱力感を齎していたのだから。

>「……お帰り。大分ピンチのようだったが、どうだったんだい?」

そんな二人のもとにどこから現れたかアルバトロスが歩み寄ってくる。
もっとも、クロムの場合は脱力以前にそもそも体が壊れて動けず、地べたに倒れ込むしかできないのだが。

>「……大幹部は倒しました。俺たちの勝ちです。クロムとアンジュのおかげで……」

「そう……おかげで体がぶっ壊れてこのザマよ」

「なにはともあれガルバーニは倒せた、君達は生きて帰ってきた。なによりだ。まずは傷付いた体を休めるといい」

そう言ってアルバトロスが顎をしゃくると、後ろから数名の兵士が現れてレイン、そしてクロムを担いだ。

「ひと眠りしたら夕食にしよう。腕によりをかけた料理を用意して待っているよ」

「……その前にこの体、ぱぱっと魔法で治してくれない? ひと眠りしたくらいじゃどうにもならねぇよ、これ。
 って、おお~~い! 冗談抜きでなんとかしてくれよ、誰か! 聞いてる? ねぇ」

えっほ、えっほと城に運ばれていく己の体を痛みを堪えてばたつかせて、クロムはひとり叫ぶのだった。

【終】

463 :クロム :2022/05/03(火) 18:16:28.80 ID:BTYdUjf4.net
これでクロム編も〆とさせていただきます。
皆さん今までありがとうございました。そしてレインさんお疲れさまでした。

容量オーバーまで10kbとあと少し(上限が多分1024kbかな?)と思うんですが、どうしますか?
雑談でもして埋めますか?

464 :創る名無しに見る名無し:2022/05/03(火) 18:57:57.46 ID:BTYdUjf4.net
質問していい?
なな板からTRPGやってたの?それとも創発で知った人たち?

465 :創る名無しに見る名無し:2022/05/03(火) 22:05:45.43 ID:kjvARRSG.net
ここまでやって俺達の戦いはこれからだで終わりか

466 :レイン :2022/05/03(火) 22:58:44.89 ID:8aeGkvHj.net
>>463
クロムさん、最後までありがとうございました。そうですね。
板のルール的に使い切った方がいいので雑談などで埋めて頂ければと思います。

>>464
なな板時代でも多少の経験はあります。
ただ当時は学生だったしスレ立てを自分で行ったのは今回がはじめてです。

>>465
落胆させてしまい申し訳ないですが、おっしゃる通りです。
ちなみに次はノースレア大陸で"猛炎獅子"サティエンドラと再戦する予定でした。

清冽の槍術士モードのレインの奥義をそこで披露するつもりでしたが、ここで終わりなのです。
ちなみに水の奥義名は『鐘馗水仙輪舞(しょうきずいせんりんぶ)』です。
無我の境地に達することで先の先、つまり相手の攻撃を読み、
相手の攻撃より速く自分の攻撃を命中させ続け封殺する奥義です。

467 :クロム :2022/05/04(水) 18:42:37.87 ID:Kyu4EADv.net
ノースレアにはサティエンドラ以外の現地攻略担当のボスも確かいたんですよね?
多分蛇の人かなと思ってましたが
シナムがその人の部下って感じだったので彼との再戦も次の大陸になるだろうなぁと勝手に想定してましたが
物凄いハードスケジュールになりそうで実は内心ちょっと気が重かったんですよねw
ですからぶっちゃけ呪われた島の時に決着つけときゃ良かったかな、あー余計なことしちまったかと後悔したり

ちなみに一応私もなな板で一時期TRPGしてた人間なんですが、ここに参加した時は上手くできるか不安でした
一度住民をやめて何年も離れてたもんですから…おかしなレスして迷惑かけてなきゃいいなと

468 :レイン :2022/05/04(水) 19:52:15.20 ID:MG7nkbBM.net
>>467
"水天聖蛇"ラングミュアはですねぇ……。
本来は三章で倒す予定だったのですが出すタイミングを見失ってたんですよね。
続けてたらたぶん、章を分けて七章のボスとして登場させることになっていたでしょう。

シナムとの再戦というか真の仲間がどんなキャラだったのかは気になるところですね。
自分の手をすでに離れていたで。三章の魔人と魔人の対決は楽しく読ませて頂きました。
ラングミュアの登場が遅れるのは確定していたのでその辺は自分も申し訳なく感じていましたね……。

469 :クロム :2022/05/04(水) 20:48:33.18 ID:Kyu4EADv.net
事前に設定を練るタイプじゃないのでシナムの真の仲間についての具体的な設定はほとんど固まってませんでした
ただ、彼の仲間も全員魔人にしたらいいかなとだけは思ってまして
そんで実はその魔人パーティのリーダーは魔法剣士のシナムではなくて、クロムと同じく魔人化した元勇者にしようかなとも

そういう意味じゃ仲間の設定はシナムの真の愛刀より方向性は定まってましたね
ミスリルよりも強力な剣を考えなくてはならなかったので、まぁどうしたもんかと

470 :クロム :2022/05/05(木) 22:13:27.45 ID:yxRsv4f/.net
気になるといえば最初のサティエンドラ戦で結果として仮面の騎士に助けられる形になりましたが
あれ当初は勇者一行が仮面の騎士の助太刀なしにサティエンドラを倒す方向で考えられてたんでしょうか?

というのもバトル描写の一番手が私で、幹部というくらいだから強敵にしとかなアカンなと思いああいう感じで書いたんですが、
魔人という初めから強い設定のキャラを圧倒できるとなると結成当初のパーティじゃ無理ゲーが決定的になってしまいますよね
ですからひょっとして全滅回避のために急遽作って登場させたキャラだったりするのかなと

471 :レイン :2022/05/05(木) 23:50:46.48 ID:uVsmn311.net
>>469
魔人化した元勇者がリーダー!いいですね。
自分もシェーンバインの剣を考える時に最強の剣なんて
思い浮かばねーよ、と思ったりしたので……結局風のイメージで振動剣にしましたが……。
単純な切れ味だけで考えると限界があるので何か特殊能力があるとかなのかなぁ。

>>470
そうですね。一章につき、一体ずつ四天王(初期設定)を倒して最後に魔王を倒す!
自分がスレを立てた段階ではそういう単純明快なシナリオの予定でした。

魔王城の居場所も最初から決めていました。
それは魔王が創造したアースギアと重なり合って存在するもう一つのアースギアです。
今命名しますが名づけてパラレルアースギア。違う世界に存在するからずっと魔王城が見つからないわけです。

謎にしておくほどのことではないのでついでに書きますが、
レインはアースギアの人間ではありません。私たちの世界に酷似した現代社会出身です。
魔法の適性が異常に低いのは魔法のない世界から来たからなのです。

もっとも女神の力でこの世界に転移したのは赤ん坊の頃なのでレインにはその頃の記憶はありません。
この事実はレインも知っていて密かに隠しており、勇者になった時に神託によって知りました。

アースギアに存在する全ての物質・生命はパラレルアースギアを認識できないし移動できません。
それは両者の関係がコインの表と裏だからです。両者は絶対に干渉できないのです。
創造主の魔王と、アースギア生まれではないレインを除いて。

ゆえに、最底辺の勇者であるレインが魔王城への道を開く鍵となる……。
というのを使う機会があればやろうかなーっと考えていましたね。


話が逸れましたが、サティエンドラはクロムさんの言う通り最初は倒す予定でした。
マグリットさんの暴走任せに倒されても良かったのですが……。
パーティー内最強のイメージがあったクロムさんが手も足も出ない強敵!

という美味しい振りがあったので終盤にリベンジする
展開にしてもいいんじゃないかなーと思ってしまいまして。

そんなわけで仮面の騎士を登板させました。謎めいた協力者のNPCぐらいのイメージでしたが……。
まぁ……初期には登場予定の無かったキャラですが、書いてて楽しくはありましたね。

サティエンドラにもまだ隠された奥義があり、二章で披露した『地爆豪炎掌』の他にも
『天枢滅火掌(てんすうめっかしょう)』と『神明掌握撃(しんめいしょうあくげき)』なんてのも考えてですね……。
セルフ解説でめちゃくちゃ恥ずかしいですけど、名称にもこだわりがありまして(マジで)。

掌の九似という設定なので必ず『掌』の名称を入れる、三つ合わせて天地神明になるって
自分で言うのもなんですが結構頑張って考えた必殺技名を用意してました。

ムーブとしては上空から炎の掌を連続で落っことすとか、
自分が巨大な炎そのものと化して敵を閉じ込めるって感じになってたでしょう。

次章で再登場して戦わせる予定でしたが、すみません。
そこまでのエネルギーがありませんでした。ここで供養させてください。

472 :クロム :2022/05/06(金) 02:06:10.86 ID:zuD8gYHg.net
魔人は魔族側が作り出したいわば強化人間なんですが、事前に洗脳しておいて逆らえないようになってたり、
歯向かったら心臓が自動的に止まったりする仕掛けが施されたりだとか、そういった魔王軍にとっての安全弁がない設定なんですよ。
というのも「主人公が人間で仲間も人間じゃ面白くないな。とりあえず魔族にしとくか」って感じで細かい部分を決めずに参加したんで
後付けでそういうリアルな反乱防止装置をくっつけちゃうと魔王軍と戦う事ができなくなっちゃうからでして。

ですからその気になれば裏切れる筈の魔人が裏切らないのは、魔王は勿論、軍中核の大幹部にも絶対届かない程度の強さしか
手に入れられないよう設計されてるからって設定にしたんですが(でもそれが決まったのは多分サティエンドラ戦の後)、
倒す予定だったなら彼は大幹部のボス格ではなく序列がもっと下の中ボス格だったとかで処理したって良かったんですねw
見返してみると「魔王軍幹部の一人」としか言ってませんしね。

ちなみにだんびらは強さの上限設定を唯一突破できる裏技強化アイテムとしてサティエンドラ戦の直後くらいに思いついたものです。
まぁ強化というよりドーピングといった方がいいですが、クロムの過去設定もそれと前後しておおまかに形作られていって、
もっと後になってだんびらは勇者時代に手に入れた剣で、彼が勇者を辞めて魔人化した原因、って皆に説明するつもりでした。
簡単に言うと過去に(だんびらによって)過ぎた力を手に入れて肉体崩壊→もっと強い肉体を求めて魔人化って感じで、
マグリットさんが龍になるって言ってましたから、それに絡めて色々掛け合いやらイベントを起こせればなぁ、と思ってたんですが。

必殺技は私も考えた事があったんですがね、ネーミングセンスがないんで結局諦めましたねw

473 :クロム :2022/05/06(金) 02:27:50.89 ID:zuD8gYHg.net
シナムの剣について、あーこんなこと考えた時もあったなって思い出したんで、一応書いときます。
仰る通りとにかく頑丈でめっちゃ斬れる剣、にしちゃうとなんか芸がないっていうか面白味がないってゆーかそんな気がしたんで、
魔力を剣状に具現化してそれに特殊な能力をくっつけとく、みたいな事は私も考えましたね。
得意な魔法が氷だったんで、剣を介してオリジナルの氷の術をばんばん使えるみたいな。
ただ、それくらいなら別に剣なんか介さないでもオリジナルの氷魔法を普通に手からぶっ放せんだろって話になるよなって思って封印しましたw

474 :レイン ◆IiWdxl1r76 :2022/05/07(土) 22:47:24 ID:FqhKQb+I.net
>>472
クロムさんと鬼神のだんびらにそんな過去設定があったとは!
勇者時代に手に入れた後にいったん手放してから(でいいのかな?)
シェーンバインがコレクションに加えるまでの間にも色々ドラマがありそうですねぇ

サティエンドラに関してはまぁ、クソ雑魚ナメクジではないですが
ほどほどに強い敵、ぐらいのイメージですね。今までの敵とは一味違うぐらいの感覚でした
丁々発止の戦いを繰り広げてくれればなーという想定だったのに気づけば生き残らせてしまい……
結果論で言えば再戦は叶わなかったので倒しといても良かったですね

>>473
魔法剣士ということにしてしまったので剣の設定が難しいですよね……
それもこれも自分のせいです。まったく申し訳ないですね
一方でただの噛ませ犬……くらいのつもりで出したのに
よくここまで出世したなぁと思いますね

475 :クロム :2022/05/08(日) 14:26:43.51 ID:Nqkbe8nF.net
だんびらは呪いの武器でして(本編では呪われてると噂されたり、クロムがうっかり呪いはないと言ったり曖昧でしたが)
使い手に「装備を外せない呪い+自壊の治癒(回復魔法・薬草含む)を妨害する呪い」が降り掛かる仕掛けになってるんです。
(後者は初めの内はあれ?なんか治りが遅いな?程度ですが、自壊を重ねる度に効果が強まりやがて全く治らなくなる)
これは魔族でも回避不可能な強力なものでして、死ぬまで解かれることはありません。

シェーンバインは幸か不幸かだんびらの使い手にはなれなかったのでその能力も呪いも認識することはできませんでしたが、
剣鬼の勇者クロムウェル(結構有名だったので魔人化の際に「クロム」とだけ名乗る様に。偽名にしちゃそのまんまだけど)は
呪いを受けてとある戦場で乱戦中に致命的な自壊を起こして、文字通り一度死んでるんです。

んで、死んだ彼を蘇生させて魔人に変えたのがアリスマター。
だんびらはクロムが意識を取り戻した時には既に手元にはなく、彼は死んでる間に戦場にいた他の誰かに拾われた……
と勝手に思い込んでるのですが、実際はアリスマターが回収し、後に世界のどこかに隠したという設定です。
それを最初に見つけたのが同僚のシェーンバインだったのか、それともただの冒険者だったのかは想像にお任せします。
全部決めちゃうよりその方がいいと思ったので、なんとなくですが。

本編初期の時点でクロムは世界中を旅してたって事になってますが、これはだんびらを捜す旅だったと解釈して下さい。
マグリットさんが大きな力を一時的に手に入れた際の「万能感と多幸感」について言及されてましたが、
クロムもだんびらによる強烈なドーピングを経験して同じ快感の虜になっていて、無意識に追い求めるようになっていたのです。

イメージとしちゃ重度の麻薬患者が近いかなって感じですね。
ただ当初から用意してた設定ではないので本編ではヤク中っぽい危うさは出せませんでした。
それどころかむしろだんびらにもあまり執着してないような、正気に戻りつつあるような感じばっかで。
まぁ、辻褄を合わせるなら何年もの旅の間に徐々に冷静さを取り戻していったってことになるんでしょう。多分。

476 :レイン :2022/05/08(日) 21:52:32.64 ID:Uf9sfDKo.net
>>475
だんびらにも結構重い設定があったんですね……
アリスマターもせっかくクロムさんを蘇生させて手駒にしたのに
結局敵になってしまったのは、生みの親として同情してしまいますね

せっかくなので要領埋めにアリスマターの設定を披露しようと
メモ帳を開きましたが戦闘用の能力や技ばっかり書き綴ってて
見るに堪えない内容なので手ェ引っ込めておきましょう……

クロムさんの過去にも関わるので
アリスマターのキャラ設定を一人で軽々しく書けませんが
初登場時点(三章スタート時)で決まってたのは

・側近ではあるが大幹部の中では一番の新入りである
・魔王に愛とも言えるほど深い忠誠を誓っている(側近なので)
・口数が極端に少ない。いわゆるコミュ障キャラである

という感じですね。ボスとして出すなら予定してた日本編だと思います
八章か九章か……そんぐらいには戦わせたいなぁと思ってました
再登場が遅くない?って感じですがラスボスの前哨戦ポジに置いていたキャラなので

自分の中では「ボスとしての登場は後回しでいいや」という考えだったのです
じっさいに話を転がす段階になったら考えが変わってたかもですが……

477 :クロム :2022/05/09(月) 01:52:12.06 ID:BnFbk7gS.net
日本編ですか。この世界にも日本がモチーフの国があるようなことは本編初期から触れられてましたね。
クロムの最初の剣も初めはその国のダンジョンから持ち出したって設定だったんですが、
国を決めちゃうと後々不都合があるかなと思い直して敢えて東の果てと曖昧な表記にしたんですよ。

そういえばこの世界には五つの大陸があるって設定でしたが、東西南北に四つ、もう一つはやっぱ中央大陸なるものですかね?
四方の大陸を順に攻略して行って、残された最後の中央に魔王の拠点があるみたいに思ってましたけど、
まさかパラレルワールドに拠点があるとは予想してませんでした。

さて、残りの容量を見ると多分これが私の最後の書き込みになるんじゃないか思うので、改めて挨拶させていただきます。
皆さんこれまでありがとうございました。レインさんお疲れさまでした。一緒にTRPGができて楽しかったです。
いつかどこかでまた同僚になる機会があったらその時はまたよろしくお願いします。それでは。

478 :レイン :2022/05/09(月) 21:46:37.10 ID:mkXlE9qM.net
もう埋まるかな?スレのスタートが2020年5月31日
ちょっと足りないですが約二年間、お付き合い頂きありがとうございました

なな板TRPGをやってる人はもう相当に減っていそうなので
果たしてこの遊びがいつまで続くのか……遊んでた身としては気になるところです
あまりに人がいません。もう掲示板の時代じゃないんですね……

調べるとなりきり自体はディスコード?なんて場所で展開されているそうです
知らない場所なので首を突っ込めないですが、なな板TRPGも細々とでいいので続いてほしいですね
そう考えると過疎の状態でクロムさん、マグリットさんに出会えたのはとても幸運なことに思えます

特に未熟な自分に最後まで付き合ってくださったクロムさんには感謝しかありません
この二年は掛け替えのない貴重な経験となりました

自分は創作が好きなのでたぶん文章書くのも辞めません
(小説を書くのは得意じゃないので、なぜこんなことやってんだ?って感じですが)
なのでふとした拍子にまたふらっとなな板TRPGを探すかも
その時、もし参加ってことになったら……お手柔らかにお願いしますね

それでは失礼しました!

479 :クロム :2022/05/09(月) 21:58:08.89 ID:BnFbk7gS.net
書き込みテスト

480 :クロム :2022/05/09(月) 21:59:35.06 ID:BnFbk7gS.net
あれw容量どこまであるんだ

481 :クロム :2022/05/09(月) 22:31:05.04 ID:BnFbk7gS.net
とりあえず埋め立てテスト
これで1024kbは越えると思いますがこれで埋まらないならもう容量設定がわからないですね…

レトロファンタジーTRPG
http://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1590927534/
レトロファンタジーTRPG 避難所
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1596277717/

>ここはアースギア……。
>五つの大陸を舞台に数多の勇者達が冒険する世界。
>あなたもまた、魔王打倒を目指して旅をするのです……。


>◆概要
>・ステレオタイプのファンタジー世界で遊ぶスレです。
>・参加者はトリップ着用の上テンプレに必要事項を記入ください。
>・〇日ルールとしては二週間以内になんとか投下するスレになります。
>・投下が二週間以上空きそうな場合は一言書き込んでおくようにしましょう。


>【テンプレート】

>名前:
>種族:
>年齢:
>性別:
>身長:
>体重:
>性格:
>職業:
>能力:
>所持品:
>容姿の特徴・風貌:
>簡単なキャラ解説:

1013 KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
名前: E-mail (省略可) :

read.cgi ver 2014.07.20.01.SC 2014/07/20 D ★