ストライクウィッチーズ総合 [956766666]

誕生日、それは一年の中で数少ない彼女がご機嫌な日
経験上ルッキーニちゃんはそれを知っていた
彼女は誕生日にはずっと家の外で遊び呆け、日付が変わってもしばらく帰らない
それはルッキーニちゃんに食事が与えられないことを意味する
しかし、空腹による苦痛などは身体への暴行に比べれば大したことはない
何よりも少女は既に空腹に慣れ始めていた
体を動かすことこそできないが、鈍化した感覚は脳に悲愴な気持ちが届くことを防いでくれる
2月13日の朝、確かにその小さな体は今日一日のささやかな安穏への期待を宿していた
しかし少女は知らない
この家の主の財布に残った持ち合わせが殆どないことを、そして度々に渡るツケが限度に達していることを
少ないお金をパチンコでなくし、
周る予定だった店からも追い出された家主の帰還にそう長い時間は必要なかった
玄関から響く蝶番の軋む音はルッキーニちゃんには安寧の世の終わりを告げる鐘に聞こえた
その次に水ぶくれと内出血で腫れた耳が聞いたのは自分の体が叩かれる音だった
お気に入りの先制攻撃、腹への前蹴り
襲い来る激痛の中でルッキーニちゃんは今日という日に少し感謝する
何も食べていない、それは胃袋を押し上げられても何も吐き出さないということ
吐瀉物を出そうものなら今日という日は一層悲惨な日になっていたはずであると小さな知恵で考えることにした
幼い体が倒れると、これまたお決まりのパウンドだ
ただでさえ腫れ上がっている顔面が更に腫れ上がり、床や壁面に描かれた血のアートに新作が加わる
耐え難い痛みとストレスの中で、度重なる虐待により萎縮した脳がこれを乗り切るために出した答えは相手を祝福することだった
「お誕生日おめでとう、シャーリー」
欠けた歯と傷だらけの口内、それを満たす血の湖から発せられた言葉であるから実際にはこのように聞こえない
けれどもシャーリーにはルッキーニちゃんが何を伝えたかったかが理解できた
振り上げた拳を止めて立ち上がり、そして静かに笑う
彼女の眼下にある少女もまた控えめに、にこやかな表情を浮かべる
「ありがとう、シャーリー」
そう言いかけたルッキーニちゃんの目に飛び込んできたのはシャーリーの踵だった
「馬鹿にしやがって！」、シャーリーは怒声と共に何度もルッキーニちゃんの顔面を踏み続けた