# 殺すのは無料
2015.12.26 Saturday
[日記]
殺すのは無料
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「彼らを殺そう。」
とっぷりと日の暮れた夜だった。
細い路地には、忘年会の終了後と見受けられる人たちがあちらこちらに固まっていた。
一直線に駅まで向かいたいわたしは、だから目の前の男女に向かって大きな声で言ったのだ。
「すみません。」
男女は一瞬ぽかんと阿呆みたいな顔をして静止したので、わたしはその間隙を縫って路地を進んだ。
背後からは男の
「は？」
という声と、女の甲高い笑い声が聞こえた。そのうちに男女が、何あの人、と言いながら一緒に笑い出すのも聞こえた。
「彼らを殺そう。」
わたしはそう思って、鞄の中に入っていた鉈を取り出そうとしたが、鉈を持ってきていないことに気がついた。
頭の中で惨殺しておいた。
駅の構内でもあちこちで人の輪ができていた。
耳障りな声で叫びながら楽しそうによろめく女がぶつかってきて、わたしは転んだ。
彼女を切り刻んでサイコロ状のステーキにして美味しく食べた。
もちろん頭の中で。
以前のわたしはここまで暴力的ではなかったはずだ。同じことがあったらえーんえーんと馬鹿みたいに泣いて死のう死のうと思っていたはずなのだ。
例の合法的な薬物のせいで、わたしの人格はゆるやかに、しかし確実に変化を遂げている。
静かな加速度で。
しかし、それがなければもう生きられないのだ。
電車に乗ろうとホームで待っていると、開いた車両の中には、人間がおもしろいようにすし詰めの状態で詰まっていた。
全員を頭の中でミンチにして、改札を出てタクシーに乗って帰った。
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