なろう作家「ふむ、ここは疾風戦術を取ろうと思う。みんな甲冑を脱ぎ捨ててくれ」

>>82

　私の周りに兵は居ない。立っているのは自分一人だけだ。
　そしてその数百メートル先。そこには黒い無数の影がこちらに向かって駆けてくるのが分かる。

　「しめた……！　敵は一人だ！　頭さえ潰せばそれで終わりだ。みんな発砲しろ！！」

　次々にペイント弾がこちらに向かって飛んでくる。けれども射程距離が低いのかこちらに届く前に地面に付着する。

　「ちっ、もういい！　弾の無駄使いだ。全軍突撃するぞ！！」

　「いっけぇええぇぇええ！」

　ミレイユの軍隊が屈強な肉体と共にこちらに突進してくる。
　その勢いはまさにライオンの様、この速で来られればどれだけの大軍であろうと壊滅させてしまうに違いなかった。
　けれどもその軍隊は誰一人私の元までたどり着か無かった。

　「な、なんだ……これは！？」

　突如としてミレイユの兵士達の足元が崩れ、大きな穴ができる。
　その予想外の出来事に敵は何もできないで穴の中へと次々に雪崩れ込むように落ちていった。

　「あ、穴だ……！　地面に穴があぁぁ！」

　「おいっ、止まれって止まれって言ってんだ……うわあぁぁあ！」
　「こっちに押すなってばぁ！」

　目の前に穴があると認識できるのは前の列のみ、それに気づいて歩みを止めようにも勢い付いた歩兵たちを簡単に止める事ができない。
　前の列が後ろの列に押されて、そしてその後ろの列が更に後ろの列に押されてと敗北のサイクルを作っていく、もはや敵の半数以上は穴の餌食となる。

「どれだけの大軍であろうと壊滅させてしまう」「無数の」兵を飲み込む落し穴しゅごい……