北海道新聞「年金の男性差別は合憲、納得できぬ最高裁判決、こんな差別をしてる先進国は日本だけ」 [988637445]

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遺族補償年金　納得できぬ最高裁判決

　「合憲」の判断は、社会の要請に応えたといえるだろうか。

　遺族補償年金の規定が、夫を亡くした妻を無条件で支給対象としながら、妻を亡くした夫には年齢制限を設けていることが、
憲法の「法の下の平等」に反するかが争われた訴訟の上告審判決である。

　最高裁は、半世紀前にできた規定を「不合理でない」とした。

　専業主婦世帯が大半だった当時は、妻の生活を守る意味で「不合理」ではなかったのだろう。

　しかし、女性の社会進出で、夫も妻も仕事を持つ世帯が一般的になり、妻が家計を支える世帯も珍しくなくなった。

　それを踏まえれば、男女差を容認した最高裁判決は、現在の社会情勢を反映したとは言い難い。

　争点となったのは、遺族補償年金の受給資格を、夫の場合は５５歳以上とした地方公務員災害補償法の規定である。

　大阪府の元会社員男性（７０）は、公立中学校の教諭だった妻を公務災害で失い、遺族補償年金を申請したが、
当時５１歳だったため規定によって支給されなかった。

　男性の訴えに対して、一審大阪地裁は規定を違憲、二審大阪高裁は合憲とし、判断が分かれた。

　最高裁は上告棄却の理由として、一般的に女性が男性に比べて《１》労働力人口が少ない《２》平均賃金が安い
《３》非正規労働者が多い―ことを理由に挙げて、規定には合理性があると判断した。

　しかし、そうではあるまい。夫婦の形はさまざまだ。現状の追認では、不当に不利益を被るケースが出てしまう。

　１９９０年代には既に、共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、現在は２倍近くになっている。

　夫が失職したり、自ら「専業主夫」の道を選ぶケースもある。

　最高裁に求められていたのは、その現実を見据えた判断だろう。

　地方公務員だけでなく、国家公務員や民間の労災などにも同様の規定がある。

　先進国では、こうした男女の扱いに差がある制度の見直しが進み、現在残っているのは日本くらいと指摘されている。

　国民年金の遺族基礎年金では、従来は母子家庭に限られていた支給対象が２０１４年、父子家庭にも拡大された。

　遺族補償年金についても、法令上の男女差をなくす流れの上で考える必要がある。

　政治も、社会の変化に目を向けて、積極的に見直しの議論を進めるべきだ。

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0111215.html