安倍政権の指定団体以外に「加工乳」出荷でも補助金支給を農協が猛反発 [242914406]

新たな加工原料乳生産者補給金制度を盛り込んだ改正畜産経営安定法（畜安法）が
９日の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。
指定生乳生産者団体（指定団体）以外に出荷する酪農家にも補給金を支払うなど、
酪農政策の「５０年ぶりの改革」（安倍晋三首相）となる。

具体的な制度設計は、多くを今後の政省令に委ねた。
政府・与党は政省令を今夏にまとめる方針で、指定団体のシェア低下を招き生乳の
需給が崩れることがないよう、生産現場の声を踏まえた丁寧な検討が求められる。

補給金は、乳価の安い乳製品向けの生乳に交付し、再生産を支える仕組みで、
飲用を含めた生乳全体の需給安定にもつながっている。
１９６５年に成立した加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に規定し、指定団体に
出荷する酪農家に支払う。

規制改革推進会議の「酪農家の自由な販売を阻害している」との指摘を受け暫定措置
法を廃止し、新たな補給金制度を改正畜安法に位置付けた。施行日は来年４月１日。

新制度では、補給金を受ける集乳業者や酪農家に、月別・用途別の販売予定数量を
まとめた「年間販売計画」の提出を義務付ける。
計画が今後省令で定める「一定の基準」に合えば、国が補給金の交付を認めるとして
いるが、農水省は現時点で具体的な基準を明らかにしていない。

さらに、酪農家が指定団体に出荷しながら生乳の一部を他の業者にも販売する
「部分委託」を解禁。
需要がある夏場は乳価が高い飲用向けにだけ出荷し、需要が鈍る冬場は、はけ口
として加工向けを増やすなど「場当たり的な販売」の横行を招き、生乳の需給調整が
崩れる懸念がある。

政省令作りには、規制改革推進会議の金丸恭文農業ワーキンググループ座長が
５月２３日の会合で

「新制度の運用ルールも含め、引き続きしっかりとフォローアップしていく」

と述べ、関与する意向を示している。
一方、衆参農水委員会は同会議の意見を「参考にとどめる」よう求める付帯決議を
採択し、介入をけん制。政府が、こうした国会の意思を尊重するか問われている。

山本有二農相は同日の会見で、政省令について「現場の声を聞きながら決めていきたい」
と述べ、現場の懸念払拭（ふっしょく）に努める考えを示した。

https://www.agrinews.co.jp/p41090.html