増やしたくて、隠したかった。薄毛に悩んで十数年。いっそ、薄毛のままでも自信を持てる方法があれば――。そんな思いで、「変身術」を提案するサービスを始めた男性がいる
５月から薄毛の男性向けサービスを始めたのは、松本圭司さん（４４）。大阪市で「カルヴォ」という会社を運営する。
スペイン語で「薄毛」の意味。日本語の「うすげ」よりおしゃれな感じがする、と考えた。
髪の量や生活習慣、変わりたいイメージを尋ね、インターネット電話の画面を介して面談。有名セレクトショップの店員の助言も参考に、似合う短髪や、ヒゲ、眉毛のほか、映える服装や小物も提案する。プロのカメラマンによる撮影体験も含め、料金は１万９８００円。
松本さんの髪が少なくなり始めたのは２０代後半だった。風で髪形が乱されないよう、駅のホームでは通過電車に近寄らない。汗で髪がぬれると少なく見えるから、夏はカレーを食べない。万が一、急いで走って汗をかいたら、タオルで拭いてまとまった毛束をほぐす……。
育毛剤を使い、育毛サロンにも行った。だが、「どうにもならず、勝手に周りの目を意識していた」と振り返る。
転機
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は５年前、機械メーカーに籍を置きながら経営学修士（ＭＢＡ）を取ろうと通った神戸大学大学院での研究だった。コンプレックスを解決するビジネスをテーマに選び、「ぽっちゃりさん」向けの服の販売例などを調べていくうちに、薄毛にもビジネスの可能性を感じた。
行きつけの美容院に協力してもらい、薄毛の約３０人にアンケートすると、薄毛向けの髪形やファッションの情報が求められていることがわかった。そこで、起業を決意。自身も髪を短く切り、会社を辞めた。
自身の短髪の評判はよかったが、伸ばして隠そうと思うあまり、「『バーコード頭』や『すだれ頭』になってしまう人の気持ちもよくわかる」と言う。依頼者の短髪への抵抗感を薄めるため、説得材料が必要だった。
そこで、女性約３６０人を対象にインターネットで調査。薄毛の量が違う１３種類の男性のイラストを見せ、長めの髪と短髪のいずれが似合うかを尋ねた。すると、一定の量より少ない薄毛の場合は、短い方が好まれる傾向があった。
また、化粧や服による錯視効果を研究する森川和則・大阪大大学院教授とともに、薄毛の協力者に様々なスタイルを試してもらい、薄毛に目が向きにくい服装などを検討。
依頼者への提案に生かす。「気にするな、と励まされても気にしてしまう。そんな薄毛の人も後押しできるようなスタイルを提案したい」と松本さん。
大阪府理容生活衛生同業組合の若手理容師らとは、薄毛のパターンごとに似合う髪形のカタログを作る計画だ。
ただ、薄毛向けサービスは開始からまだ数カ月。実は、依頼数は伸びていない。それでも、松本さんは確信する。「需要はあるはず」。悩まなくなったいまも、毎日考えるのは薄毛のことだ。
カルヴォはカタログ作成などに協力してくれる薄毛のモデルを募集している。問い合わせは同社（ｉｎｆｏ＠ｃａｌｖｏ．ｃｏ．ｊｐ）。（佐藤恵子）
ハゲから毟り取るなよ
>>薄毛に目が向きにくい服装
ワロタ