暦さん（15）、中学2年の時に自分の「心の性」が男でも女でもない「Ｘジェンダー」だと気づく　「何者にもあてはまらない」存在だと認識 [621794405]

ＬＧＢＴを生きる
性的少数者　第３部／２　高校１年生・暦さん（１５）　／埼玉

男性でも女性でもない　「Ｘジェンダー」存在知って

　県北部に住む高校１年の暦（れき）さん（１５）は、小学生のころから詩や絵本のストーリーを書き始めた。
原稿用紙数十枚の短編小説は未完を含め４本になった。

　自宅の部屋には大きなベッドと鏡、机があるだけ。壁には「変わる！」と、自分で書いた紙が貼られている。
小説などを構想する時はベッドに寝転がり、スマートフォンのメモ帳に登場人物のせりふなどを思いつくままに書き出す。
「意識を集中させる」ため、部屋は真っ暗だ。その後、机に向かいメモを手がかりにあらすじを書き進める。

　暦さんは性自認（心の性）が男性でも女性でもない「Ｘジェンダー」。ＬＧＢＴ支援の活動をする時は、好きな言葉「暦」と名乗っている。
まちの小さな喫茶店で取材に応じた暦さんは、自分の性自認と向き合った葛藤を語った。

　　　◇　　◇　

　暦さんは小学校低学年のころまで、生まれつきの性である女の子として違和感はなかった。
中学生になると、同級生の女子の話題は「好きな男子」に集中した。
そんな時、自分はこれまで男の子を好きになったことがないと気づいた。
「ほかの子と何か違う」という感覚が頭をもたげた。かっこいい女性にあこがれることが多く「レズビアン」の言葉が浮かんだ。

　インターネット検索を繰り返し「ＬＧＢＴ」という言葉を初めて知った。
「性別不明」で検索したところ「Ｘジェンダー」という言葉も見つかった。
「何者にもあてはまらない」という自分の感覚に近いと思った。中学２年の時だ。

　中学では教室に入らず、自習用の相談室で過ごす日々が続いた。
絶望感は深かったが「Ｘジェンダー」の自分を次第に受け入れ、気持ちが楽になっていった。

　高校進学後、自分と同じような仕草をする同級生に気づいた。
２人だけのカラオケ店で、同級生が「今は彼氏がいるけど、女の子を好きになったことがある」と話した。
互いにカミングアウトはしなかったが「自分と同じ存在が身近にいる」と心強く思った。

　　　◇　　◇　

　暦さんは今、ＬＧＢＴ当事者らが開く集まりにひんぱんに顔を出している。
支援活動を支えるのは、ほとんど大人たちだが「高校生だからできることがある」と言う。
活動のきっかけは、暦さんが小学５年の時、バンド活動をするため教員をやめた先生の存在だ。
夢を追い続けた先生が、あるラジオ番組に出演した際、ＬＧＢＴ当事者が親にカミングアウトする話題を取り上げ「勇気をもらった」という。

　当事者たちの集まりに参加し、いつも感じることがある。「みんな普通だな。まちですれ違っても、誰も（ＬＧＢＴとは）気づかない人ばかり」

　取材直前、母親に「自分はＸジェンダーかもしれない。そのことでインタビューを受ける」と告げた。
母は驚いた様子も見せず「それなら、いいじゃない」と言った。
「自分のことを知ってもらえるだけでいい」と思っていた暦さんにとって、大きな励みになる言葉だった。【鴇沢哲雄】＝つづく

https://mainichi.jp/articles/20170819/ddl/k11/040/162000c

暦さん（15）、中学2年の時に自分の「心の性」が男でも女でもない「Ｘジェンダー」だと気づく 「何者にもあてはまらない」存在だと認識 [621794405]

暦さん（15）、中学2年の時に自分の「心の性」が男でも女でもない「Ｘジェンダー」だと気づく　「何者にもあてはまらない」存在だと認識 [621794405]