昭和裁判長「こいつは20年もあれば更生できるから無期懲役にしよう」→平成検察「無期懲役は事実上の終身刑として運用しよう」 [377482965]

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無期懲役の終身刑化は多くの弊害をもたらしている　　古畑恒雄（創）
https://news.yahoo.co.jp/articles/162c882f98c7fe770ac04f73dd4578075e037f04

（前略

無期刑仮釈放がこんなに萎縮化・消極化してしまったのかという理由について、私は二つの、国の通達があるからだと言っています。一つは「マル特無期通達」、1998年6月18日に最高検の次長検事発として出された非公開の通達です。題名は「特に犯情悪質等の無期懲役刑確定者に対する刑の執行指揮及びそれらの者の仮出獄に対する検察官の意見をより適正にする方策について」です。

無期懲役刑が確定した事件のうち、検察官が「特に犯情等が悪質」と判断したものにつき、「相当長期間にわたり服役」を求めるという内容です。検察は、実は、この通達によって、ひそかに終身刑を導入したのではないかとも言えます。この通達は1998年7月から実施され、現在も生きています。

この通達は、施行後しばらくの間、法務・検察の部内者のほかは、誰も知りませんでした。ところが、朝日新聞が2002年1月8日付け夕刊のトップニュースとしてスクープした。そこには、「やり方次第では事実上の終身刑となる」という論評がみられます。そうであれば、検察は、1998年の段階で無期刑受刑者に対して「運用による終身刑の導入」を考えていたことになり、重罰を指向する刑罰制度への重大な転換を示すものではないかと思われます。

もうひとつはこれに沿う内容の保護局長通達です。これは公開されていてインターネットでも見られます。保護局長が地方更生保護委員会や保護観察所の長に対して発出した内部通達で、名前は「無期刑受刑者に係る仮釈放審理に関する事務の運用について」です。

この保護局長通達にも、マル特通達と同趣旨の「無期刑受刑者については、重大な犯罪をしたことにより終身にわたって刑事施設に収容され得る」という文言がみられ、法務、検察は、無期刑の中に「運用による終身刑」という社会復帰の理念に逆行するような刑罰類型の導入に踏み切ったと思われてなりません。

（中略

やはり20年が正しいと思うんですよ。20年くらいで出さないと、身元引受環境が劣化してしまう。北村さんの例でも、去年の暮れに1931年生まれのお父さんが脳梗塞で倒れられました。

――古畑さんはもう一人、連合赤軍事件の吉野雅邦受刑者にも関わっていますが、こちらは1983年からだからもう30年以上の受刑になっているわけですね。

古畑　そうなんですよ。逮捕から49年、無期懲役刑確定から38年を経過します。吉野君の場合も、被害者も2ケタもいるし、なかなか厳しいんです。ただ、この人は、模範囚中の模範囚なんですよ。刑務所の中でも皆から尊敬されているような。受刑者仲間はもとより、刑務官の人たちも一目置く存在なんですね。完全に立ち直っていると言ってよいと思います。

求刑は死刑だったんですが、無期懲役を言い渡した一審の裁判長が、「この人は必ず更生できる」と、こう思って、退官した後、吉野君に何回も手紙を出しているんですよ。この手紙の中には、「あなたが社会復帰した時のことを私は考えている」というくだりがあるんです。だから、その時の裁判長としては、まさか今のように、30年経っても仮釈放できないなんて思っていない。20年くらいで出られると思ったから、死刑の求刑を退けて、無期懲役にしたんですよ。

だから今、問題になっている人たちで、長い人だと裁判を10年くらいやって、その上で30年以上ということですから、昭和の時期の言い渡しというのも結構あるんですね。そのころの裁判長は、「この人たちは無期懲役を言い渡せば、20年後には必ず出てくる、その前に出てくる可能性もあるよ」と思っているから、無期懲役を言い渡しているんですよ。ですから今、ずれているんですよ。これは大きな問題です。

（中略

30年と20年は大変な違いなんです。20年で出てきている人たちは社会復帰ができているんです。社会復帰のために仮釈放という制度があるのに、実際はそれができないんですよ。

（中略

そもそも刑法28条に、無期懲役の方は10年経てば仮釈放できるという規定があるんです。刑法28条は、平成16年の刑法改正でも変わらなかったんですよ。

だから、例えば、懲役30年の方と、無期懲役の方と、同時に服役して、成績が良ければ無期懲役の方は15年、有期30年の方はその後出るというような事態があってもおかしくない。そういう弾力的な措置ができるように、この28条は改正していないんですよ。

――刑法はそうなっているのに、2004年に通達が出て、それに沿って運用がなされているわけですね

古畑　おっしゃるとおりです。マル特通達というのが曲者なんですよ。この通達でがんじがらめになっているんですから。