がんばれ琴桐ケ久保

式守俊二郎

その頃、振分親方は懸命に自分の名前を書く練習をしていた。
「え～～とぉ・・ふりわけことたかみさかり、これで良いんだべか？」
「チガウデショ！オシエテモワカラナイネ・・」
目の前にはあのジェーシーが座って、懸命に振分親方に文字を教えている。
「ヒラガナダメ！！オマエニホンジンダロ？ナンデジガカケナイ？」
「相撲ばっかりだったんでしょうがねべ」
「ナンデテヲヨゴス？ジブンノテニモジカイテドウスルカ！」
「今までずっと仕切りのやり方とか塩の撒き方とかこうやって」
「ハイモウイッカイ！ハヤクカクネ！」
ジェシーはいらいらしてあっという間にアポロチョコを一箱食べてしまった。
第一、振分親方は今日が何を話し合うのかも分かっていない。
ただ名前を書けば良いとある親方からアポロチョコレート一ダースで
買収されたのだ。
・・久しぶりに磐梯山で餃子を食うべ・・
頭の中には餃子のことしかない。
そしてつい、ぎょうざじゅうにんまえと書いてしまった。
「ナニカイテルカ！」
「ああ・・・いけね・・・すまんこって」
慌てて書き直す親方。
出かける準備もまだ整っていない。
理事会はあと二時間後だと云うのに。