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ドラム缶Bの行方2

220 :ドラム缶様 ◆P7KNUTc4/g :2015/04/01(水) 21:05:39.16 ID:WNpMdyYb.net
(一体なんなんだ?早く帰りたいのに。)
そう考えながらも、素直に待つことにした。しばらくすると、少年は戻ってきた。
両手を重ね、何かを持っているようだった。そして少年は俺の前に立ち、
「はい」
と言うと、両手を開いた。その少年の手のひらの上には、少し緑色がかった小さな石が乗っていた。
多少光を反射するのか、光って見える時もあるが、お世辞にも良いものではない。
しかし、少年は誇らしげに、満面の笑みで俺に言う。
「ここで見つけた綺麗な石!宝物なんだ!」
俺は内心、ちゃちい宝物だななんて、あざ笑いながらも、
「へぇ、お礼に見せてくれたんだ。」
と少年の頭に手を乗せながら言った。しかし、少年は首を横に振った。
「あげるの!」
俺はそりゃあ驚いた。まさかこんな少年から、お礼に、あろうことか宝物を差し出されるなんて思っていなかったから。
しかし、そこは慣れない強みか、突き返すこともせず、素直に受け取ってしまった。
俺はもう何がなんだかわからなかった。とにかくもう帰りたかった。
再び背を向け、家へと帰ろうとしたら、またまた再び、
「ありがとー!」
と聞こえた。振り返って確かめるまでもない。間違い無く、あの少年の声だった。
その声があの少年の声だと認識した瞬間、ひたすら帰りたいと思っていたさっきまでの自分はどこへやら、
今まで味わったことの無い、喜びに近い感情に俺の身体は包まれていた。
それがどこから湧いた感情かはわからない。しかし、俺は、
言い訳でもなく、どういたしましてでも無い、その場に相応しい言葉が浮かんだ。
そして、俺は皆に背を向けたまま、片手にさっきの石を掲げ、その言葉を返した。
「返さねえからな!」
妙なもんだ。お世辞にも良い物じゃ無いと思っていたのに、今はやけに輝いて見えた。
その日受け取った小さな石は、車の中に飾ることにした。
少し誇らしかったから、他人の目につくように、他人に由縁を尋ねられるような、そんな場所に置いたのだ。
しかし、それが間違いだったか、すぐに後悔するハメになる。
事件は、母親を車に乗せた時だった。普段乗せる時には無い、小さな石の存在に母親もすぐに気づき、
「何これ?」
と、俺に尋ねた。俺はしめしめと思い、誇らしげに、まるで武勇伝のように、
小さな石の、小さな物語を語って聞かせた。さぞ誉められることだろうと思いきや、母親の第一声は
「あ?」
だった。

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