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[ギアス]ルルーシュと麦わら海賊団[ワンピース]
- 1 :1:2009/08/30(日) 22:10:50 ID:rsdZ56ap.net
- ワンピースとコードギアスのクロスオーバーSSです。
設定
ウォーターセブン手前くらい
ルフィはギア使用可能
荒らし、禁止。
ペースは週一でまとめて投稿します。
感想があると涙を流して喜びます。
嬉しさのあまり執筆速度が上がるかもしれません。
- 2 :1:2009/08/30(日) 22:12:34 ID:rsdZ56ap.net
- コバルトブルーの景色が広がるブリタニア諸島の近くの海域に一隻の船があった。
ウォーターセブンに向かうその羊の頭を持った船に乗るのは、一億の賞金首の大型
ルーキー“麦わら”のルフィと仲間達であった。
ルフィ「サンジ〜腹減って死にそうだ!飯はまだ〜?」
サンジ「うるせい!もう少しまってろ!」
いつも通りのやり取りを横目に航海士のナミは新聞を見つめていた。
新聞を読むのは彼女の日課である。グランドラインではほんの少しの情報不足が命取りとなる。
情報収集という言葉を他のメンバーが知らない以上、ナミの日課は必然の作業となっていた。
そのナミの関心を引いたのは一面に載っていた“黒の騎士団”のニュースだった。
- 3 :1:2009/08/30(日) 22:13:53 ID:rsdZ56ap.net
- 捕縛された大海賊艦隊“黒の騎士団”の団長が護送中に逃亡したという。
“黒の騎士団”といえばこの海域を支配する大海賊だ。
この海賊団の規模はウソップのハッタリが本当になるくらいの勢力を誇ると聞いている。
その団長の逃亡劇となれば、追う海軍と奪還に来た部下との間で大規模な抗争になるのは必定だ。
早いうちにこの海域を出た方がいいわね
そう思案しているナミの後ろから、ルフィの声が聞こえる。
「スッゲー!!変態仮面が釣れたぞ!!」
- 4 :1:2009/08/30(日) 22:15:03 ID:rsdZ56ap.net
- 釣りをしていたルフィの針にかかったのは一隻のボートだった。
そこに乗っていたのは栗色の髪をした少年。緑色の髪をした少女。
そして変態仮面?だった。
ナミ「あわあわわ〜」
新聞を握り締め、ナミは卒倒しそうになる。
握り締めたその新聞の一面の写真。そこに載っているのはまさにその変態仮面?
黒の騎士団団長“魔王”ゼロ。2億3千万の賞金首だった。
- 5 :1:2009/08/30(日) 22:16:56 ID:rsdZ56ap.net
- ナミ「いいから捨ててきなさい!!」
新聞を片手にナミは叫んだ。
ゾロ「捨て犬じゃねぇんだぞ…。」
メリー号に救助した3人を前に尻目にゾロはごく当たり前の突っ込みをいれる。
チョッパーの診断では栗色の髪の少年と緑色の髪をした少女はすでに息絶えていた。
少女の横ではサンジが「運命は残酷」だの「もう少し早く出会ったいれば」だのと
一人嘆いている。
- 6 :1:2009/08/30(日) 22:18:56 ID:rsdZ56ap.net
- ナミ「あんた達、事の重大性に気づいてないの?ソイツはあの“ゼロ”なのよ!!」
“ゼロ”の存在を世に知らしたのはブリタニア領エリア11による独立戦争。
俗にいう「ブラックリベリオン」だった。
エリア11(日ノ本)の解放を唱えるゼロは革命軍と結託しブリタニアに決戦を挑んだ。
戦いは黒の騎士団の優勢に進んだ。
しかし劣勢のブリタニアに援軍を頼まれた海軍が出した答えがバスターコールだった。
その虐殺と混乱の中、黒の騎士団とゼロは海に逃れ、海賊となった。
- 7 :1:2009/08/30(日) 22:22:36 ID:rsdZ56ap.net
- ロビン「バスターコール…。」
ロビンは肩を震わせた。
ナミ「わかった?“ゼロ”は革命軍と繋がり、
世界政府からも目をつけられるほどのヤバイ奴なのよ!!
その正体はまったくの謎。知った者は例外なく殺されると聞いているわ。
そんな奴と関わったら命がいくつあっても?!」
熱弁を止めナミは固まった。
ルフィ「やったー!やっと取れたよこの仮面!!」
- 8 :1:2009/08/30(日) 22:24:52 ID:rsdZ56ap.net
- ルフィ「おもしれー!この仮面」
仮面をひっくり返して遊ぶルフィの前でナミはへなへなと膝をついた。
ナミ「アンタ!!あたしの説明聞いてなかったの?!!」
鬼のような形相で詰め寄るナミを前にルフィはしり込みする。
ルフィ「しょうがないだろ。脱がせなきゃ治療にならないってチョッパーが」
ナミ「チョッパーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
チョッパー「ぎゃー鬼が出たー!!」
ウソップ「ちょw落ち着けナミ」
一同の喧騒の中、ロビンはゼロを見つめる。
まだ少年の面影がのこる黒髪の青年。
海賊でありながら生まれ持った高貴さを感じさせる。
ロビン「この人…どこかで」
自分の記憶を遡ろうと思案に入るロビン。その横で
ここはどこだ?
ゼロは目を覚ました。
- 9 :1:2009/08/30(日) 22:30:01 ID:rsdZ56ap.net
- ここはどこだ?
頭がひどく痛い。そうだ。オレはブリタニアに捕まり海軍に引き渡された。
エニエスロビー行きの船に乗り込む最中、突然首から血を流す海兵たち。
一秒たりとも狂いのないその出血は公園の噴水を連想させた。
兄貴は殺させない。栗色の少年はそう言うと再び時を停止させる。
ゼロ「やめてくれロロ!その力はお前の心臓を」
はやくこいルルーシュ!私に笑顔をくれるんだろ?
ゼロ「ああ、そうだともC.C。だが人前で本名をよぶな!」
ゼロ、いやルルーシュはギアスを使い人の意思を捻じ曲げるペテン師だ!
ルルーシュ「扇…キサマ?!」
ルルーシュ。まさか君がゼロだったとはね
ルルーシュ「シュナイゼル!これはあなたのチェックか!!」
お兄さま! お兄さまーーーーーーーーーーーー!!
ルルーシュ「ナナリーーーーーーーーーーーーーー!!」
そうだ!オレは!!
ルフィ「海賊仮面!!参上!!」
ウソップ・チョッパー「ぎゃはははw」
- 10 :1:2009/08/30(日) 22:31:31 ID:rsdZ56ap.net
- 目の前でゼロな仮面で遊ぶ男達。何が起こったのかは明白だった。
正体を知られた。
ルルーシュは自分が取べき行動を即理解した。その答えは一つしかない。
ルフィ「ん、気がついたか?」
一同は視線をルルーシュに向ける。
ナミ「あの〜私たちはですね〜」
サンジ「顔色が悪いな。何か暖かいものを持ってきてやろうか?」
サンジの言葉を無視し、ルルーシュはゆっくりと立ち上がる。
ただならぬ雰囲気にゾロは無言で刀に手をかける。
ルルーシュ「お前たちには感謝する。ありがとう。そしてさよならだ。」
サンジ「あん?」
近寄ろうとするサンジの足が止まる。ルルーシュの左目は赤く光っていた。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。お前たちは死ね!!
- 11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/31(月) 08:19:23 ID:YcNsbSCO.net
- 気持ち悪い……ワンピースにすり寄るな、ギアス豚。
- 12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/05(土) 06:32:16 ID:E54370fj.net
- ええ!?もう殺しちゃうの?
- 13 :1:2009/09/06(日) 01:39:33 ID:5q5LTpTM.net
- ルフィ「オレは今から死ぬぞーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
チョッパー「オーーー!!!」
船首に飛び乗り麦わらの男と狸はそう高らかに宣言し、海に向かってダイブする。
ゼロの瞳に紋章が浮かび上がりそこから赤色の光が放たれた直後のことだった。
ゾロ「さて、逝くとするか」
サンジ「あの世にはカワイイお姉さまはたくさんいるかな?」
侍もどきとホスト風はそれぞれ海に向かって歩き始めた。
ナミ「…あの世でもお金は必要ね…。」
ロビン「死ぬ前に本を整理しなくては…。」
騒がしい女と長身の女は自分達の部屋に歩を進める。
そうだ。それでいい。ゼロの秘密を知った者は生きてはいられない。
この世界の心理。絶対の事実。
オレはそうやって生き延びてきた。今までも、そしてこれからも。
ルルーシュ「フフフ…フハハハハハハハ!」
そうだ!オレはゼロ!オレが“魔王”。世界を破壊し、世界を創造す…ん?!!
ウソップ「…え?!!」
二人の目が合った。
- 14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/06(日) 03:02:31 ID:ReNPpbTN.net
- ジャンプに巣食うなゴキ腐リめ
お前の性癖で分かる
- 15 :1:2009/09/06(日) 17:59:11 ID:5q5LTpTM.net
- 何故ギアスが効かない。
ルルーシュは思考の世界でキーボードを叩き出し、数秒で125通りの回答を導き出した。
何らかの悪魔の実の能力者。生まれつきの特異体質。改造人間。ブリタニアの血族。
しかし、その数秒間の思考の旅は徒労に終わった。正解は一目瞭然だ。
ゴーグル。
ウソップが作業のために付けたそれがギアスの視覚情報を遮ったのだ。
- 16 :1:2009/09/06(日) 18:00:28 ID:5q5LTpTM.net
- ウソップは呆然とルルーシュを眺めていた。
この男の目が赤く光り、「死ね」という一言の直後、仲間達は奇怪な行動を取り出した。
ルフィとチョッパーは海に飛び込み、ゾロとサンジはその後を追う。
ナミとロビンは自分達の部屋に向かう。ほんの数秒間の出来事だった。
ナミの話が脳裏をよぎる。“魔王”ゼロ。2億3千万ベリーの賞金首。
黒の騎士団の団長。この男が何かしたのは間違いない。
悪魔の実の能力か?なんでオレだけ無事なんだ?
ウソップは全身から嫌の汗が流れるのを感じた。
仲間の援護はない。戦うのは自分一人。
目を赤く光らせ睨みつける青年はまさに悪魔の化身に見えた。
その時ウソップが連想したのは 絶望・敗北・死亡 だった。
ルルーシュ「長鼻―――――――ーーーーーーッ!!」
ウソップ「ゼ、ゼロ――――――ーーーーーー!!」
ルルーシュが銃を構えるのに呼応し、ウソップ反射的に構えた。
直後、両者が放った弾丸が交錯した。
- 17 :1:2009/09/06(日) 20:46:43 ID:5q5LTpTM.net
- 弾丸がウソップの頬を掠めた。その衝撃でウソップはほんの少し体勢を崩した。
絶望的だった。
しかし、それにも増してウソップの集中力は過去に例がないほど高まっていた。
逃げ場のない海の上、頼れる仲間は誰もいない。だからこその“抗い”だった。
崩れた衝撃を利用し、床を回転する。相手は2億の賞金首、“魔王”と呼ばれる男だ。
おそらく「火薬星」はかわされる。いや、喰らっても平然と笑っているに違いない。
楽しい海賊人生だったなぁ。でもまだ足りねえよ…。
胸が熱くなった。
時間にするとほんの一秒ほどであったが、いままでの冒険が頭を過ぎった。
手で回転を止め、体勢を整える。覚悟は…決まった!
ルルーシュ「ぐわぁッ!!」
- 18 :1:2009/09/06(日) 20:48:06 ID:5q5LTpTM.net
- ウソップ「…え!?」
火薬星を派手に喰らい、崩れ落ちるゼロをウソップは呆然と眺めた。
ルフィ「ぎゃーーーおぼれるーーー助けてーーー」
チョッパー「ブクブクブクブク…。」
水しぶきを上げながらルフィを助けを求めた。
ゾロ「なんでオレは海に落ちてんだ!?」
サンジ「知るかそんなこと!それより二人を助けるぞッ!!」
状況がつかめないゾロにサンジは檄を飛ばす。
ナミ「あれ…なんでお金なんて数えてるのかしら?」
ロビン「あら…私?」
ナミとロビンは自分達が何故部屋にいるのかさえわからない。
そんな仲間達の喧騒がどこか遠い、自分とは関係ない事のようにウソップは
気絶している青年。2億の賞金首を。“魔王”ゼロを見つめていた。
これがルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと麦わら海賊団との出会いだった。
- 19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/07(月) 10:04:21 ID:7/uE5tSn.net
- ギアスはあんまり見た事ないからよくわかんないけど、
おもしろいよーvこういうクロスオーバー話は好きだv
続き楽しみにしてる!
- 20 :1:2009/09/07(月) 20:49:08 ID:n4ngZWRq.net
- >>19
ありがとう!
アンチしか見てないと思ってたw
投稿は続けるのでまた遊びに来てくださいv
- 21 :1:2009/09/08(火) 00:24:17 ID:YTDr4A8C.net
- 人物紹介その@
名前 ゼロ
別名“魔王”ゼロ
能力 ギアス(非悪魔の実)
所属“黒の騎士団” 団長
懸賞金 2億3千万ベリー
ブリタニア商船のみを襲う海賊として脚光を浴びる。
ブリタニア王国植民地“エリア11”(旧日ノ本)を本拠地にその勢力を拡大させる。
エリア11においてテロリストグループ“黒の騎士団”を結成。
ブリタニアからのエリア解放を唱え、“エリア11”において
独立戦争(ブラックリベリオン)を仕掛けるも、海軍の介入により敗北。
再び海に逃れ、大海賊船隊“黒の騎士団”の団長として復活を果たす。
その思想と行動、そしてカリスマ性。“革命軍”との繋がりを怪しんだ世界政府と
海軍は破格の懸賞金をつけるに至った。年齢性別経歴一切不明。
- 22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/09(水) 08:15:42 ID:B4tvz6nx.net
- 支援
- 23 :1:2009/09/09(水) 22:56:33 ID:16KTcbUU.net
- ゾロ「いいから捨ててこいよ。」
ナミ「捨て猫じゃないのよ!」
事件から数十分後、ゼロの処遇について二人は当初の立ち位置を入れ替えていた。
ウソップ「銃を構える奴に向かって俺は言った。
“イーストブルーでは誰もが知っている!俺たちの仲間に
手を出だせばどうなるかってことくらいなッ“ するとゼロは…。」
ルフィ「ウソップすっげえ――――――――――――ーーーーーー!!」
チョッパー「すげーーーカッコイイ――――ーーーー!!」
サンジ「おいおい、本当かよ…。」
樽の上に乗り、大演説を続けるウソップをルフィとチョッパーが囃し立てる。
サンジは事の信憑性を疑っているが、チョッパーに至っては
その眼差しに尊敬の色さえ浮かべている。
ロビンはというと、一人椅子に腰掛け、サンジの入れた紅茶を
飲みながら、気絶しているゼロをただ見つめていた。
- 24 :1:2009/09/09(水) 22:58:59 ID:16KTcbUU.net
- ゾロ「最初に捨てて来いと言ったのはお前じゃねーのか?」
ナミ「状況が変わったのよ。バカ!バカ!この大バカ!!」
ゾロ「なんだと!この女!!」
議論は白熱し、道を外れ、ただの誹謗中傷合戦に突入した。
ナミ「“黒の海賊団”と合流したらどうするのよ?
大海賊船隊と戦うの?冗談じゃないわ!」
ゼロを逃がせば、“黒の騎士団”に追われることになる…それが
ナミの言い分だった。騎士団のトップに手を出してしまった以上
その想像は限りなく現実の答えに近い。
- 25 :1:2009/09/09(水) 23:02:49 ID:16KTcbUU.net
- ゾロ「じゃあ、海に沈めて…。」
ナミ「万が一あたし達が犯人だとばれたらどうするの?
それこそ一生追われるわ!
どうしてわからないの!?このバカ!!」
サンジ「そうだ、ナミさんの言うとおりだ!このマリモ!」
ゾロ「いきなりなんだてめーは!?死ね!この素敵眉毛!!」
議論の場にいつの間にかサンジも加わり、ゾロの怒りに油をそそぐ。
ウソップ「オレは体を回転させ、奴の銃弾を華麗にかわし…。」
ルフィ「ウソップすっげえ――――――――――――ーーーーーー!!」
チョッパー「すげーーーカッコイイ――――ーーーー!!」
ロビン「…。」
怒号と喝采と沈黙。それらが一体となって渦巻く船内。
そのカオスの中で…。
ならば…我に従え!!
ゼロは目覚めた。
- 26 :1:2009/09/09(水) 23:06:46 ID:16KTcbUU.net
- ゾロ「てめーのせいでこうなってんだろ!このバカ仮面!!」
サンジ「なにが“従え”だ!?この変態マント!!」
ルルーシュ「ぐおわぁッ!?」
二人がかりで踏みつけられてルルーシュは鈍い声をあげた。
傍目からは縄で縛られた貧弱な変態マスクが
「グラサン」をかけた柄の悪い二人組みに絡まれ暴行を
受けているようにしか見えかった。
事の始まりは「ギアス」が解けた直後、ロビンがウソップの証言と
その顔につけてある「ゴーグル」から、ゼロの能力が
「視覚情報を使った洗脳」であると見抜いたことからだった。
全員がなんらかの装備で目を覆い、ルルーシュに
ゼロのマスクをかぶせることで「ギアス」に対する備えを
万全にし、ルルーシュの目覚めを待っていたのだ。
- 27 :1:2009/09/09(水) 23:09:59 ID:16KTcbUU.net
- サンジ「お前がグラサンかけると893にしか見えねーんだよマリモ!」
ゾロ「ナンパにでも出かけるのか?このエロコック!」
ルルーシュ「キサマら話を聞…ぐぎゃあーー×○△▼◇■!!」
二人で互いは罵倒しながら、ルルーシュにストンピングを連打する。
その華奢な体が激しく上下にバウンドし、ルルーシュは
声にならない叫びを上げる。
もはや交渉不能と悟り、泣きながら「ぎゃーぎゃー」と叫ぶナミ。
死闘を演じたライバルと自己の英雄譚の崩壊を救うため、止めに入るウソップ。
そのシュールな光景をパーティ用の鼻眼鏡をつけたルフィが
愉快そうに笑っている。
もはや権威も恐怖も“ゼロ”のルルーシュが
一瞬の隙をつき、声を張り上げた。
俺と契約し“黒の騎士団”に入れ!“麦わら”のルフィ!!
- 28 :1:2009/09/11(金) 23:19:35 ID:vB0tWHSK.net
- 思いもよらない提案に一同は静まる。ゼロはなんと言った?“黒の騎士団”に入れ?
ルルーシュ「“黒の騎士団”に入れば全ての条件はクリアされる。
俺はお前達を追う必要はなくなり、お前達も追われる理由は消える。
悪くない話だろ?“麦わら”のルフィ。“海賊狩り”のゾロ」
ゾロ「ほう…俺達のことを知っているのか?」
ゾロは興味深そうにルルーシュを見つめる。
ルルーシュ「世界中の集金首の情報は俺の頭に入っている。七武海の
“サー”クロコダイルを破ったルーキーとなればなおさらだ。」
政府がひた隠す第一級情報を平然と口にする姿に
大海賊のトップの片鱗を感じさせる。
この男はやはりゼロ。“魔王”と呼ばれる海賊なのだと。
- 29 :1:2009/09/11(金) 23:31:14 ID:vB0tWHSK.net
- ナミ「契約し、部下になればアナタは私たちに何をくれるの?」
ナミが口を開いた。交渉の余地ありとなれば、自分の出番とばかり
に前に出る。“他の連中に任せたらどうなるかわかったもんじゃない。
こういうことは自分がやるしかない“ その確固たる意思が
ナミの行動を支えている。
一瞬の沈黙の後、ルルーシュは一同を見つめ、こう答えた。
夢を、お前達の“願い”の全てを
- 30 :1:2009/09/11(金) 23:34:43 ID:vB0tWHSK.net
- ナミ「夢…すべての願い?」
ナミは驚きルルーシュを見つめる。こんな大それたことを平然と
言いながらルルーシュは余裕さえ漂わせていた。
縄に縛られてさえいなければものすごくかっこよかったに違いない。
ルルーシュ「女、まずはお前から聞こう。お前の望みはなんだ?」
ルルーシュはナミを見つめる。
ナミ「お金!大金!たくさんの金(きっぱり!)
ついでに世界の海図を書くこと(ぼそっと)」
一瞬、躊躇した後にナミは捲くし立てた。“うわ〜”という
周囲の視線を背にしながら。
ルルーシュ「俺のマントの内ポケットを探れ。とりあえず
それをプレゼントしよう。」
ナミは言われるがままに内ポケットを探る。取り出したのは
小さな宝石だった。
ナミ「なによこの小さい宝石?」
小バカにしたような顔でルルーシュを見下すナミの手から
ロビンが宝石を取る。
ナミ「ちょっと!ロビン…。」
ロビン「ブリタニア王家の秘宝“龍の左目”ね…。
もしオークションに出せば3億ベリーは確実な品よ。」
ナミ「ナミです。お会いできて光栄です!ゼロ」
自己紹介を済ますとロビンから宝石を奪い、ナミは
素早く、そして静かに後方に退いた。
- 31 :1:2009/09/11(金) 23:36:50 ID:vB0tWHSK.net
- ルルーシュ「次はお前だ。長身の女。」
ルルーシュは次にロビンを指名した。
ロビン「ロビンよ。私は…そうね。ブリタニアの遺跡や古書を調べたいわ」
ルルーシュ「ブリタニア全土の遺跡と古書を進呈しよう」
ルルーシュの即答にロビンは“くすくす”と笑みを浮かべる。
ロビン「確かにゼロならば…いえ「あなた」ならそれが出来るわね」
ロビンの含みを持たせた言葉にルルーシュは一瞬押し黙る。
仮面を被っていてもその表情はロビンの笑顔とは
対称的であることを感じさせた。
- 32 :1:2009/09/11(金) 23:40:25 ID:vB0tWHSK.net
- ルルーシュ「おい長鼻!次はお前だ」
乱暴な口調でウソップを指名し、一瞬崩れた空気を元に戻す。
侮辱的な表現に内心怒りながらも、恐怖でガチガチのウソップが口を開く。
ウソップ「ウソップだ。オ、オレは…勇敢な海の男にッ!!」
ルルーシュ「却下だな。あまりにも抽象的過ぎる…。」
肩を落とすウソップをサンジが慰める。
サンジ「サンジだ。夢は2つあるんだが…。」
ルルーシュ「1つに絞れ欲張りめ」
取り付く島も与えない。サンジは腕を組み考える。
かわいい女の子とオールブルー。どちらか1つに決めるなら…。
サンジ「オレの夢は…“オールブルー”を見つけることだ!」
後悔はない。サンジは晴れやかに笑った。
ルルーシュ「そんなものあるわけないだろ…。バカかお前は?」
- 33 :1:2009/09/11(金) 23:45:38 ID:vB0tWHSK.net
- サンジ「うおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
泣きながら襲い掛かろうとするサンジをウソップとチョッパーが必死で止める。
ルルーシュ「地理的、物理的考察から見解を述べた。つまり常識を問題にしている」
そう言って他人事のようにサンジの発狂を眺めている。その流れから
サンジを止めようと頑張るチョッパーと偶然、目があった。
“変態仮面に見つめられている”自分の願いを考えながらチョッパーは
ルルーシュに熱い視線を注ぐ。
ルルーシュ「次はお前だ。“海賊狩り”のゾロ」
ショックを受けるチョッパーを他所にゾロは答える。
ゾロ「大剣豪だ。だが人の手を借りる気はない。」
ルルーシュ「残念だな…。だがその考え、嫌いではない。」
ゾロの返答を予想していたようにルルーシュはあっけなく引き下がる。
ルルーシュ「最後に“麦わら”のルフィ。お前の夢は…“夢”は何だ?」
そうだ・・・。ここからが本番だ。“麦わら”のルフィ。一億の“ルーキー”
七武界を倒した男。お前の望みを言え!金か?名誉か?何でもくれてやる!
お前さえ手中に収めればこの船を制圧するのはさほど難しいミッションではない。
さあ、言え、お前の欲望(ゆめ)を!
ルフィ「俺は…海賊王になる!!」
- 34 :1:2009/09/11(金) 23:51:28 ID:vB0tWHSK.net
- ルルーシュ「…な!?」
ルルーシュは絶句した。それは当然のことだった。この海で…。
それもこのグランドラインで…。「海賊王になる」と口にする男に
初めて会ったからだ。
ルルーシュ「その言葉の意味がわかっているのか?
それは“この大航海時代の頂点に立つ“
そう言っているとのと同じことだぞ…。」
ルルーシュの計算機が弾き出した1250通りのルフィの回答予想が音をたてて崩れる。
当たり前だ!こんな馬鹿げた回答が予想できるか!
ルフィ「なれるとか、なれないとかじゃない。俺がなるって決めたんだ。
そのために死ぬんなら別に構いやしない!」
ルフィは平然と笑って答えた。この海のレベルは知っているはずなのに…。
何度も死にかけているはずのに…。
- 35 :1:2009/09/11(金) 23:55:23 ID:vB0tWHSK.net
- ルルーシュ「…。」
テロではブリタニアは倒せない!やるなら戦争だ!覚悟を決めろ!正義を行え!
赤髪のレジスタンスは目を見開き、ただ驚くばかりだった。
撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!
ブラックリベリオンの直前、銃を向け、俺を止めようとする緑髪の少女に言い放った。
僕は…。俺は…ブリタニアをぶっ壊すッ!!
東京が陥落したあの夏の日、泣きながら親友に立てた誓い。俺たちは海に出た…。
ルフィ「ワンピースは…俺が見つける!」
- 36 :1:2009/09/11(金) 23:57:26 ID:vB0tWHSK.net
- 完敗だった…。自分を超える“バカ”に出会った。
ルルーシュ「交渉は決裂だな…。“海賊王”では部下にはできない」
覚悟は決まった。自分の敗北を。死を。だが、気分はそう悪くはなかった。
ルフィ「俺は部下になる気はねーよ。お前が俺の仲間になれよ。よし決まりだ!」
ルルーシュ「フ、好きにしろ………え!?」
一同「え、ええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?」
- 37 :1:2009/09/12(土) 00:00:20 ID:vB0tWHSK.net
- ウソップ「ちょっと待って!何言ってんだ!?ルフィ!!」
ゾロ「ふざけんな!こんな怪しい奴を船に乗せられるか!」
サンジ「反対だ!アイツだけは絶対反対だからな!!」
三人が一斉にルフィに詰め寄る。常識さえ持っていれば
ごく当たり前の反応だった。
ルフィ「いいじゃん。面白そうな奴だし。それに
カッコイイじゃん!あの変態仮面」
ウソップ「仮面のデザインで仲間にすんな!!」
船長の言葉に嘘偽りはないが、こんな理由を承諾できるクルーもいない。
“ぎゃーぎゃー”とルフィを問い詰める三人の後ろにナミが立つ。
ガン! ガシ! ゴリ!!
ウソップ「痛てーーーー!!」
サンジ「何するんだ!?ナミさん」
ゾロ「てめー明らかに俺を強く殴ったな!?」
振り返った3人に対してナミは敢然とした態度で言い放つ。
ナミ「アンタ達こそ何?船長であるルフィが決めたのよ!
文句を言わず従いなさい!!」
- 38 :1:2009/09/12(土) 00:02:42 ID:IXhCCHy8.net
- ナミの正論と迫力に押される3人。
ウソップ「(何考えてんだよナミの奴…。)」
サンジ「ナミさ〜ん…。」
ゾロ「(何企んでやがるあの女…。)」
各自、言いたいことを抱えながらもナミの正論は“海賊の掟”
である以上逆らえない。渋々ながら場を解散させる。
ナミ「(…一時は絶対絶命だったけど、これぞ逆転さよなら満塁打ってやつね!
これで“黒の騎士団”に追われることなく次の目的地にいけるわ。
いや、それどころか“黒の騎士団”から何かいろいろ引き出せるかも?
たとえば、お金とか、黄金とか、ダイヤとか、etc…。)」
ルルーシュ「フフフ…フハハハハハハハ」
ナミが妄想の世界を旅する後ろで、縄を解かれたルルーシュが笑い出す。
- 39 :1:2009/09/12(土) 00:07:08 ID:IXhCCHy8.net
- ルルーシュ「気に入ったぞ!“麦わら”のルフィ!
いいだろう…結ぶぞ!その契約!!」
ルルーシュはルフィに向かって手を差し伸べる。
ルフィ「ハハハ、いちいち大げさな奴だな」
差し出された手を前に、ルフィは麦わら帽子を
被り直した後、しっかりと応えた。
ルフィ「俺はモンキー・D・ルフィ。よろしくな!」
ルルーシュ「ゼロと呼ばれている。本名はルルーシュ。
ルルーシュ…“ランペルージ”だ。」
“ばんざーい”棒読みで祝福するナミ。納得がいかないウソップ達。
ロビン「…。」
その後ろでルルーシュを見つめるロビンがいた。
チョッパー「ぎゃーーー!!死人が生き返った!?」
悲鳴を聞き、一斉にチョッパーの方を向く一同。
その視線の先にいったのは、死亡と診断された緑髪の少女。
ルルーシュ「C.C.!?」
ルルーシュは少女に向かってそう叫んだ。
C.C.「ここは…。ご主人さま?ご主人様ーーー!」
ゼロと遭遇し、2時間後。
ルルーシュ・ランペルージとC.C.?が麦わら海賊団に加わった。
- 40 :1:2009/09/12(土) 00:11:39 ID:IXhCCHy8.net
- 同時刻、大海賊船隊“黒の騎士団”本船「斑鳩」館内・司令室。
かつて“魔王”ゼロが使用していたこの部屋は今では
1組のカップルの愛の巣と化していた。
男は机に座り、新聞を手に取る。男の後ろのカーテンの向こう側
では、女が気を失ったように眠り込んでいる。
その周囲には夥しいほどの“大人のお○ちゃが散乱していた。
男が手に取った新聞の一面には“魔王”ゼロの逃亡の詳細が書かれている。
元団長の写真を見つめ男は呟いた。
- 41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/12(土) 00:15:38 ID:1hIG6qxe.net
- 他人の意思も命も平気で踏みにじって自己憐憫に浸る糞外道を麦わら海賊団に加えるとかw
ワンピースを侮辱するなギアス厨
- 42 :1:2009/09/12(土) 00:15:59 ID:IXhCCHy8.net
- 扇「全てはゼロが、ルルーシュが悪い!!(ドーン)」
扇要。大海賊船隊“黒の騎士団”の現団長である。
ゼロ追放後、空位になった団長の椅子は副団長であった扇の手に
自動的に転がりこんできた。今や扇は“黒の騎士団”のトップであり
ブリタニア海の支配者として君臨していた。
一般団員「副団長!失礼します。」
一般団員のその言葉に扇は一瞬怒鳴りそうになるも押しとどまる。
ゼロ追放後、まだ間もないことから、扇“団長”という認識が浸透
していない。だから、このような不届き者が出るのだ。
懲罰は後回しにすると決めた扇は答える。
扇「何かな?俺は”激務“を終えて疲れているんだ。」
扇の返答に一般団員はうろたえる。
一般団員「い、いえ…。副団長の指示に従い、
シュタットフェルト隊長をお呼びしたのですが…。」
- 43 :1:2009/09/12(土) 00:18:32 ID:IXhCCHy8.net
- 扇「(…はあ?シュタットフェルト?誰よソイツ?外人!?)」
扇は数秒間本気で考え込み、そして思い出す。
自分が呼び出したことと“親友”の妹の名字を。
シュタットフェルト「扇さん、話というのは何かしら?」
隊長と呼ばれる赤髪の女は扇に話かけた。
扇「え…ああ、これを見てくれ。」
自分が持っていた新聞を女に渡す。
シュタットフェルト「ゼロ!?そんな!?」
扇は女が新聞に注意を注いでいることを確認すると、頃合を計り
机を力いっぱい叩き出す。
- 44 :1:2009/09/12(土) 00:25:24 ID:IXhCCHy8.net
- 扇「くそーー!!親友を売ってまで取り戻した日ノ本がまた
エリア11に戻ってしまう!ゼロさえ、ルルーシュさえ
渡せば、シュナイゼルは約束を守るはずなのにィ!!(バン!バン!)」
机を叩くのを止め、扇は顔を押さえる。
- 45 :1:2009/09/12(土) 00:29:24 ID:IXhCCHy8.net
- その指の間から流れる液体を見て女は肩を震わせる。
女の角度からは手の中に仕込まれた目薬が見えない・・・。
出口に戻り扉に手をかける女は去り際に紅言い放つ!
ゼロは、ルルーシュは私が捕まえる!!
女の右手が赤く光ると扉は「沸騰」し、次の瞬間爆発した。
その姿が消えるのを確認すると、扇は椅子に深く腰掛け
新聞を手に取る。日課のポルノ小説を読むためだ。
扇「クックック、扉くらい普通に出て行け…。零番隊隊長“紅月”カレン」
- 46 :1:2009/09/17(木) 00:47:06 ID:C56Bn5oK.net
- かもめ達が舞い、メリー号を陸地に誘う。
ゼロを加えた麦わらの一味が向かうのはエリア11の東京ゲットーだった。
何の計算もなくただ純粋にゼロを仲間に加えた船長“麦わら”のルフィを
除いて、ゼロを「仲間」として迎えいれた者はだれもいない。
表向きはルフィとゼロの握手を歓迎したナミも“黒の騎士団”との
衝突を避けられるプラス@という下心満載であった。
そんな彼らの思惑を察して、その提案を出したのはゼロだった。
- 47 :1:2009/09/17(木) 00:49:02 ID:C56Bn5oK.net
- 1つは船の針路であった。
ゼロの捜索のために海軍は警戒を強めていて次の目的地である
ウォーターセブンへ向かうのは困難である。そこでいまだ
“黒の騎士団”勢力圏であるエリア11に警戒網が解けるまで
滞在するというものであった。
“燃料・食料・ウォーターセブンへのルート確保。これらは全て
ゼロと“黒の騎士団”が責任を持つ“と。
- 48 :1:2009/09/17(木) 00:50:29 ID:C56Bn5oK.net
- 二つめは船の中での生活のことであった。
まず、ゼロは自分の力は「ギアス」という視覚情報による洗脳であることを明かした。
条件は相手の目を見ること。効果は一人につき一度きりというものだった。
ルルーシュ「つまりは俺の目を見なければいい。」
そしてこれからもゼロの仮面を被り続けると宣言した。このマスクの構造が
脱ぎにくいのはルフィが証明している。また、少しでもマスクを脱ごうとした
場合に攻撃も許可した。「仲間」たちとの「信頼」のために…。
その提案にナミが付け加える。「ゼロが近くにいる場合にサングラス等を装着する」と。
万が一のことを考えて…。「仲間」たちとの「信頼」ために…。
つまりは彼らの共通認識はあくまで「仲間」でなく「旅の道連れ」であった。
船長“麦わら”のルフィただ一人を除いて。
- 49 :1:2009/09/17(木) 00:54:11 ID:C56Bn5oK.net
- 船内に与えられた部屋でルルーシュはやっと息をついた。
一時は本当にダメだと思った。
海軍から逃げ出した先が“一億”のルーキーとは…。
二度目に目覚めた直後、蹴りまくられた時には走馬灯が見えた。
母を殺され、父に捨てられた。
親友と別れ、海に逃れ、海賊となった。
そんな甘酸っぱい少年時代の記憶が、胃液と共に流れ出た。
しかし…今俺は生きている!重要なのはそれだ。
東京ゲットーにたどり着けば「オレンジ」と連絡が取れる。
また戦える!救い出せる…ナナリーを!!
C.C.「ご主人さまぁ…。」
狭い部屋のベッドの片隅に体を隠しながらC.C.がこちらを見ている。
“奴隷時代の少女”に戻るのは自分の知る限りでは2度目。
死ぬほどのダメージを負うと現れる症状らしい。
側により、軽く頭を撫でてやると少し落ち着いたらしく目を瞑る。
あの高慢で高飛車な女が自分を助けるために命を懸けた…。
ルルーシュ「ありがとうC.C.。ありがとう…ロロ。」
口から出たのはC.C.への感謝と「弟」の名前。
「ランペルージ」の姓を持つ死んだ護衛の名前だった。
ルルーシュ「“麦わら”のルフィ…甘い男だ。フフフ、”仲間“か…。
いいだろう!なってやろうじゃないか。エリア11までの
短い旅の間だけな!そしてもし…再び敵対するようならば…
駒として…散々こき使った挙句、ボロ雑巾のように捨ててやる。」
ルルーシュの「両目」が赤い光りが宿る。
仮面に隠されたその光をC.C.は気づかない。
- 50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/17(木) 00:56:17 ID:V5Nat3dy.net
- 読んでるから、まあ気長にな
- 51 :1:2009/09/17(木) 01:43:39 ID:C56Bn5oK.net
- >>50
ありがとう!
ギアス好きは大満足!ワンピース好きにはまあまあ。
そんな少年誌の王道のど真ん中を歩むことを約束する!
だから気長に待っていてくれv
- 52 :1:2009/09/19(土) 00:21:58 ID:ckhXzZYJ.net
- 目的地に向かうメリー号を上空から覗いてみるとなにやら黒い物体が動いている。
船上を行き来するそれは上空から見ると巨大なボロ雑巾に見えなくもない。
ゼロであった…。
ルルーシュ「掃除くらい毎日しろ!バカどもが…。」
舌打ちしながらも、黙々と床をモップで拭き続ける。
完璧主義の災い。部屋に塵1つ残さない(特に妹の部屋だが)その性格は
ルフィたちの適当な掃除を許せるはずもなく、旅を始めて三日目には
誰に呼びかけることもなく一人黙々とメリー号の掃除を始めていた。
船長である“麦わら”のルフィは船首の部分で昼寝をしている。
“海賊狩り”のゾロは自慢の刀の点検をしている。
共にその目の部分を無防備にさらしていた。
“ウソップに一撃で敗れた男”それが2億の首・ゼロのこの船に
おける別名であった。
その圧倒的な弱さが高く評価され、この船でサングラスなどのギアス対策
をしているのは、ナミ、ウソップ、チョッパーのおなじみの3人だけとなった。
その“ゼロを倒した男”は、ゼロから距離を置き、ゴーグル越しにチラチラ盗み見
ながら掃除を手伝っていた。特に会話はないが、共に奇妙な親近感を感じながら。
- 53 :1:2009/09/19(土) 00:23:37 ID:ckhXzZYJ.net
- 一週間が過ぎた頃、ゼロの苛立ちはピークに達していた。
それは、不衛生な環境を自分で変える努力に疲れたためではない。
掃除はむしろ気分転換として効力を発揮していた。
では、彼を苛立たせたのは何か?
サンジ「C.C.ちゃ〜ん。デザートができたよぉ!」
…奴であった。
- 54 :1:2009/09/19(土) 00:25:37 ID:ckhXzZYJ.net
- サンジ「C.C.ちゃん!味はどうかな?」
C.C.「は、はい!す、すごく美味しいです!」
サンジ「それはよかった!C.C.ちゃんのために特別に作ったんだ!」
そう言って、サンジはC.C.の肩に手をまわした。
ルルーシュ「…ピク。」
遠くからゾロがサンジに向かって厳しい視線を投げかけている。
他のクルーからみてもサンジのスキンシップならぬセクハラは
目に余るものに変貌を遂げていた。
サンジのC.C.に対する露骨なアプローチはその料理にダイレクトに表れた。
毎日がフルコース。
それを美味しそうに食べるC.C.。喜ぶサンジ。悪循環は止まらない。
他のクルーの食事の質は低下した。ルフィは不満そうにサンジに文句をいう。
しかし彼はまだマシである。もっとも被害を受けていたのは
C.C.の“ご主人様”であるはずのゼロであったからだ。
- 55 :1:2009/09/19(土) 00:27:39 ID:ckhXzZYJ.net
- 最初の三日間はまだマシだった。賄い飯と思われるものだったが味は上質であった。
しかし、その後食事として出されたのはカップ麺だった。それも3日連続…。
ルルーシュ「アイツ、人間が一日に必要な野菜の量をしているのか?」
明らかに栄養不足のゼロ。そしてその前で行われるセクハラ。
明らかな挑発。宣戦布告に他ならなかった。
サンジ「本当にかわいいな〜C.C.ちゃん!」
サンジがC.C.の腰に手をまわした時
ルルーシュ「ブチッ!!」
ルルーシュは切れた。
- 56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/19(土) 22:05:07 ID:JHR6/v6k.net
- サンジがクルーを栄養不足にするわけないだろ。。
- 57 :1:2009/09/19(土) 23:21:52 ID:ckhXzZYJ.net
- 他のクルーの食事の質は低下した。←「質」を「量」に
脳内変換して置いてください。差別されてるのはゼロだけです。
俺の文章力の低さのせいもあると思います。
素人なので生暖かい目でまったり見守ってくださいv
- 58 :1:2009/09/21(月) 02:03:28 ID:ycduszLF.net
- ルルーシュ「ご機嫌だな!コックの男よ!」
ゼロはマントを広げ、サンジを指差した。
サンジはギョッとしてC.C.から離れる。いきなりこんな怪しい
仮面男から指名されれば当たり前だ。
サンジ「な、なんだ?何か用かよ?」
ルルーシュ「ずいぶん時間を持て余しているようだな?せっかくだから
掃除を手伝ってくれないか。“仲間”だろ…?」
ゼロの挑発めいた言い回しにサンジは少しムッとしながらも、黙ってモップを
手にもつ。確かに正論であり、今まで掃除をこなしてきた
ゼロの言葉に説得力があった。
サンジ「で、どこを掃除すればいいんだ?」
あらかたというか、船内は完璧に掃除されていて塵1つ見当たらない。
ルルーシュ「ここだよ。ここ。」
ゼロは椅子に座り、靴の裏を指さした。
ルルーシュ「拭け。舐めるように…丹念にな」
- 59 :1:2009/09/21(月) 02:06:28 ID:ycduszLF.net
- 瞬間湯沸かし器とはこの時のサンジであった。
サンジ「てめー!喧嘩売ってんのかよ!!」
ゼロの袖に手をかけ、絞りあげる。
ルルーシュ「喧嘩を売るとは連日のカップ麺のことか?」
ゼロも引かない。
サンジ「そもそも、お前みたいな怪しい野郎を仲間として
認められるか!!俺が歓迎したのはC.C.ちゃんだけだ!
何が“ご主人さま”だ!この変態仮面が!」
サンジは大声で罵る。―――めちゃくちゃ私怨を込めながら。
ルルーシュ「それは困ったな。”仲間“として認めてもらわなければならない。
せめてこの旅の間だけな…。
だから提案したい。決着をつけようと!」
サンジ「望むところだ!」
こうしてゼロとサンジは決着をつけるために対戦することになった。
その種目とは?
C.C.「二つの洗い場に洗い物を二等分しました!」
…お皿洗い勝負だった。
- 60 :1:2009/09/21(月) 02:13:35 ID:ycduszLF.net
- サンジ「(バカかコイツはッ!!)」
サンジは心の中で罵倒した。コックである彼のプライドが刺激された。
日々の業務。もはや彼にとっては生活習慣ともいえる作業で勝負を
挑まれるとはサンジは想像すらできなかったからだ。
サンジ「(こんなバカがトップに立つなんてあり得ねえ!
まだルフィがマシに見えるぜ!
きっと“黒の騎士団”ってのはアホの集まりに違いない!)」
批判はゼロから彼の部下に飛び火した。ついでに自分の船長にも…。
そうして一通り心の中で罵倒を終えたサンジは少しずつ余裕を取り戻す。
すでに結果が見えている勝負より、いかにこの状況を利用するかという打算が
動き始めたのだった。サンジはC.C.を見る。C.C.はそれに気づくを恥ずかしそうに俯く。
サンジ「かわいい…マジかわいい!」
サンジの鼻の下が自然と伸びる。それを見てゼロは呟く。
ルルーシュ「…なんだその顔芸は?勝負はもう始まるぞ。」
サンジ「…ッ!!」
ある意味最悪のタイミングを見られ。それを興味のない“突っ込み”ですらない
“呟き”で返されたサンジは現実に戻り、ゼロを睨み付ける。
サンジ「(すべてこの野郎がいけないんだ!
きっとC.C.ちゃんはコイツに攫われて無理やり
“ご主人さま”なんて呼ばされているに決まってる!
ああ、なんてかわいそうなC.C.ちゃん…。
俺が勝ったあかつきには君を自由にしてあげるからね!)」
怒りをモチベーションに変えるサンジ。C.C.は片手を挙げる。
C.C.「位置について…よ、よーい、スタート!」
- 61 :1:2009/09/21(月) 17:12:47 ID:ycduszLF.net
- スタートと同時にコップとスポンジを手に取るサンジ。
その二つが蛇口に流れる水の前で交差するとコップは
鮮やかな光りを取り戻していた。
必要以上の力はいらない。スナップとスピード。そして
何万回ともいえる反復の経験がそれを可能にする。
サンジはコップを乾杯の仕草でC.C.に向け
ウインクをし、余裕を演出する。
サンジ「どうだ!お前にこれができ…ッ!?」
勝利を確信し、ゼロを見たサンジの動きが止まる。
ルルーシュ「水温摂氏11度、蛇口直径16ミリ、皿全体のワインゾース
の面積2パーセント以下。この条件に最適な構えはこの角度!」
“ゴ、ゴ、ゴ”と効果音が聞こえそうな異様なオーラが立ち上る。
ルルーシュ「抉りこむように…擦るべし!擦るべし!擦るべし!擦るべし!」
サンジ「え?うおぉ!?うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!?」
ルルーシュ「擦るべし!擦るべし!擦るべし!擦るべし!擦るべし!擦るべし!」
- 62 :1:2009/09/21(月) 17:14:28 ID:ycduszLF.net
- 船が進み波がざわめく。その音を楽しみながらゼロは船上の真ん中で
優雅に読書を楽しんでいた。その足元で何かがゴソゴソと動いている。
ルルーシュ「手を休めるな、しっかり拭け。舐めるように…丹念にな」
屈辱に耐え、黙々と作業を続けるサンジ。わざわざ船の真ん中に
椅子を移動し、読書など行うのは、この状況を周囲に晒すために他ならない。
ルフィとウソップは指を指して笑い。ナミは哀れそうに眺めている。
遠くからはゾロがあいかわらず厳しい視線を投げかけている。
敗戦の結果とはいえ、この状況…耐え難い。
ルルーシュ「喉が乾いたな…紅茶をくれないか?ボーイ君」
“飲まないよね?というか飲めないよね?”そんな抗議を瞳に託しながら
サンジはゼロを睨む。―――このままでは終われない。
サンジ「第二ラウンドだ!さっきはお前の得意分野で戦った!
だから、今度は俺が種目を決める!」
過去の自分の言葉をかなぐり捨て、サンジは挑戦状を叩きつける。
ルルーシュ「よかろう…その種目とは?」
承諾するゼロ。完全決着をつける気だ。
サンジ「料理勝負だ…C.C.ちゃんを賭けてな!」
- 63 :1:2009/09/21(月) 18:35:07 ID:ycduszLF.net
- サンジ「(バカかコイツはッ!!)」
サンジは心の中で罵倒した。コックである彼のプライドが刺激された。
日々の業務。もはや彼にとっては生活習慣ともいえる作業をゼロが承諾
するとは、本当のところ思えなかった。
サンジ「(こんなバカがトップに立つなんてあり得ねえ!
きっと“黒の騎士団”ってのは痴呆症の馬鹿軍団に違いない。)」
批判はゼロから彼の部下に飛び火した。ゼロを批判できる材料があれば
なんでもいい。それほど奴が憎かった。
そうして一通り心の中で罵倒を終えたサンジは少しずつ余裕を取り戻す。
周りにはクルーが集まり出していた。ルフィに至ってはすでに席につき
食べる準備を完了させている。
サンジはC.C.を見る。C.C.はそれに気づくを恥ずかしそうに俯く。
サンジ「かわいい…超かわいい!」
鼻の下が伸びそうになるのを堪える。このままでは前回と同じだ。
ゼロを見ると、明らかに怪しいマント男は無言で食材や調理器具を
準備していた。今回の勝負の素材は「海王類」。
サンジ「馬鹿マント!変態仮面ッ!!」
もはや脊髄反射で罵倒が飛び出す。
怒りをモチベーションに変えるサンジ。C.C.は片手を挙げる。
C.C.「位置について…よ、よーい、スタート!」
- 64 :1:2009/09/21(月) 18:36:55 ID:ycduszLF.net
- スタートと同時に包丁を手に取るサンジ。
空中に投げた肉と包丁が交差すると、肉は見事に分断され
それをボウルでキャッチする。
必要以上の力はいらない。スナップとスピード。そして
何万回ともいえる反復の経験がそれを可能にする。
――この勝負だけは負けられない。前回は余裕を出しすぎたのが
仇になった。サンジは懐からビンを取り出す。ラベルには
「秘伝の調味料」と書かれている。この材料は一部の海王類の肝で
しか作れない。修行時代からコツコツ集め、特別な催し以外には
決して使うことのない品であった。
サンジ「潰してやる…絶望を見せつけてやる…。」
ブツブツと呟きながら、調味料を贅沢に使用する。彼は本気だった。
その背後で黙々と料理を作るゼロ。残り時間10分前…その出来事は起こった。
ルルーシュ「お前…まさか“C.C.”が本当の名前だと思っているのか?」
- 65 :1:2009/09/21(月) 18:38:47 ID:ycduszLF.net
- サンジ「え…!?」
後ろ向きで相対するゼロの言葉にフライパンの動きが止まる。
コイツ…いま何と言った?
ルルーシュ「俺は知っているぞ…本当の名前を」
確かにおかしな話だった。「C.C.」この文字を見て名前だと思う人間が
世界で一体何人いるだろうか。何かの「記号」と思うのが普通だろう。
――サンジは妄想の海に落ちていく。そこからは牢屋に囚われた美女達がいる。
ドアが開き、マントを翻しながら変態仮面が現れた。階段を降り
牢屋に近づき、緑髪の少女を指差さす。
変態仮面「今日はお前にしよう…“C.C.”」
緑髪の少女「私は“C.C.”なんかじゃない。私の名前は――」
泣きながら拒絶の意思を示す少女。仮面の悪魔は冷笑する。
変態仮面「奴隷に名前などいらない…。お仕置きが必要だな」
その言葉に反応して肩を震わす少女。
緑髪の少女「うう、申し訳ありません…“ご主人さま”」
それから浮かび上がる痴態の数々、サンジは妄想の海に落ち続けた。
ルルーシュ「鍋…。」
妄想の海からサンジを釣り上げたのは、ゼロの言葉だった。
泡を吹き上げる鍋。炎を天井まで吐き出すフライパン。
終了時間、五分前の出来事であった。
- 66 :1:2009/09/21(月) 18:45:22 ID:ycduszLF.net
- ルフィ「すげぇーーーうめぇな!これ!!」
ルルーシュ「海王類のフェイバレット焼きブリタニア風だ。
こちらの料理は…。」
食卓に並ぶ数々の料理。日ノ本食をベースにブリタニア風の味付けがされて
いる。ブリタニアで生まれ、日ノ本で生活してきたゼロならではの料理であった。
日ノ本に人質に取られたときから、その料理人のキャリアをスタートさせたゼロ。
毒殺を警戒して、自分と身内の料理はずっと彼が担当していた。その結果、その
料理の腕前は高級店のコックが裸足で逃げ出すほどに成長していた。
一方食卓の端の方。ゼロの料理に紛れながら、たった一品だけサンジの料理があった。
5分で出来る料理…「海王類の刺身」だった。
サンジ「…。」
結果は明白だった。いや、もはや勝負以前の問題である。あまりにも気の毒すぎて
「料理勝負」であったことに触れないクルー達。ゾロですら視線を合わせない。
- 67 :1:2009/09/21(月) 18:50:32 ID:ycduszLF.net
- ルフィ「うめぇ!超うめぇ!!」
ルフィの食いっぷりを見て苦笑するゼロ。
ルルーシュ「フハハハ、そんなに気に入ったなら、食べさせてやろう。
エリア11に着いたら好きなだけな」
ルフィ「本当か!?絶対だぞ!約束だからな!!」
あまりの食いつきぶりに、いささか引く…この男の食い物に対する執念は
ちょっとだけ怖かった。
席を立ち、落ち込むサンジに近づく。ジロリと睨み付けるサンジ。
その瞳は“敗者を笑いにきたのか”と物語っている。
ルルーシュ「…C.C.の本当の名前は俺も知らない。
俺達はただの契約関係だ…恋人でも、まして愛人でもない」
サンジの瞳に希望の光が宿る。言葉にするなら“よっしゃーー”といった具合だ。
ルルーシュ「夢をバカにして悪かった…。
“オールブルー”それを全否定できる根拠を俺は持っていない」
その口から出たのは謝罪の言葉。サンジは少し驚いた後、右手を差し出す。
サンジ「無謀は承知の上だ。
笑われるのには慣れっこだ」
握手で答えるゼロ。…こうしてこの対決は一応の決着を見せた。
- 68 :1:2009/09/21(月) 18:57:00 ID:ycduszLF.net
- それから数日後…。
ウソップ「これは“ダイヤル”といって衝撃や音を吸収するんだ」
ルルーシュ「ほう、それは興味深いな…。」
あの対決の後、ゼロとクルー達の関係は少しの変化を見せた。
ウソップとは、メリー号の掃除を通して、少しずつ会話ができるよう
になり、今ではお互いの冒険談を話せる間柄になった。
チョッパー「褒めたってなにもでないぞ!このヤロー」
ルルーシュ「チョッパーよ…お前は卓越している。
優秀な人…いや、トナカイだ!」
喋る狸…もといトナカイで医者であるチョッパーとも
医学の知識を通じて交流し始めた。
サンジ「C.C.ちゃ〜ん。デザートができたよぉ!」
…奴は相変わらずだが、食事が改善されたことには感謝をしていた。
船長である“麦わら”のルフィは船首の部分で昼寝をしている。
“海賊狩り”のゾロは自慢の刀の点検をしている。
今日もいつもと変わらない一日が過ぎていく。
- 69 :1:2009/09/21(月) 20:27:54 ID:ycduszLF.net
- 月が海面を照らす。今日は満月だった。
ルルーシュは一人、外に出て暗い海を眺めていた。
こんな夜にアイツと出会った…。
ロロ・ランペルージ…我が「弟」に。
ゼロ…あなたを殺しに来ました。
一瞬で惨殺される団員達。月明かりの下でその手に持つ
ナイフが鈍く光る。ブリタニアの暗殺者、ロロ・ランペルージ。
もしも、「ギアス」の能力が知られていたら、間違いなく殺されていた。
ロロは体感時間を止めることができる「トキトキの実」を食べた「時間人間」だった。
お前は俺の弟になれ!!
それがロロにかけたギアスだった。より優秀な「駒」として側に置くために…。
- 70 :1:2009/09/21(月) 20:35:16 ID:ycduszLF.net
- ――海軍から俺を救出に来たのはロロとC.C.だった。
その顔色はひどく青ざめていた。ここに至るまでに能力を
使い続けたのが一目でわかった。ロロの能力の欠点。それは
能力の使用中は心臓が止まるというものであった。
高すぎる能力の代償。連続使用の帰結は確実な“死”だった。
ルルーシュ「もうやめてくれロロ!俺はお前を利」
…停止!!(キュイーン)
ルルーシュ「用して、お前は俺の弟なんかじゃ」
…停止!!(キュイーン)
気がついた時にはボートの上だった。ロロの顔色はその運命を告げていた。
ルルーシュ「すまない…ロロ。俺はお前を…。」
ロロ「知ってたよ…兄さんは…嘘つきだから…。」
俺の言葉を遮り、ロロは命の炎を燃やした。
ロロ「兄さんの…ことなら…なんでもわかる…僕は兄さんの…弟だ・か・・ら」
BGM
http://www.youtube.com/watch?v=l0V_ES0MJ0Q
- 71 :1:2009/09/21(月) 20:39:04 ID:ycduszLF.net
- 暗い海面にロロの最後の顔を映る…笑顔だった。
麦わら達に助けられた後、ロロの遺体をC.C.と二人で海に返した。
ほぼ面識がなかったロロとC.C.が救出チームを組んだ過程は
C.C.の記憶が戻らない限り永遠にわからないだろう。
でも、こんな夜にはロロ…自分の「弟」を思い出さずにはいられなかった。
ルルーシュ「そうだよな…お前はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアではなく
ルルーシュ・ランペルージの弟だもんな…。」
少し強い風が吹き抜けた。船内に戻ろうとした直後、足が止まる。
「あなたも月を見に来たの?“ランペルージ”君」
- 72 :1:2009/09/21(月) 20:41:50 ID:ycduszLF.net
- ルルーシュ「…ニコ・ロビンか。」
そこに立っていたのは長身の女、ニコ・ロビンだった。
別名“オハラの悪魔”多くの海賊を裏切り、生き延びてきた女だ。
ルルーシュ「…。」
悟られないように距離を取る。この一味でコイツだけが知っている。
コイツだけが気づいていた…自分が何者であるかを。
ロビン「警戒するのは無理もないわね…。」
その場に立ち止まり、月を眺める。
ロビン「でも、あなたが何者であれ…彼らはきっとあなたを
迎え入れてくれる。きっと…。」
ルルーシュ「では、お前にはそれができたのか?“オハラの悪魔”よ」
“オハラの悪魔”その言葉を聞いて沈黙するロビン。
そうとも!出来るはずがない…。ほんの少し甘さを見せた結果、俺は
騎士団を追われた。弟を失い、妹を危機に晒しているッ!
ロビン「今はまだ…でも、いつかきっと…。」
騙されるな!甘さを捨てろ!そうしなければ取り返せない!ナナリーを
ロビンは目に何も付けていなかった。
「ギアス」は一度しか効かないという言葉を信じたのだろうか?
だが、それは“以前”までの話だ。それとも、信頼の証だろうか?
ルルーシュ「(それは“甘さ”だよ…。)」
仮面の下でルルーシュの「両目」が赤く光る。
後は仮面の細工を作動させるだけだ…。
ロビン「…!?」
ロビンの表情が変わる。“気づかれた!?”一瞬そう考えた。
しかし、それは間違いだった。ロビンの視線は月を捉えていた。
振り返り、月を見る。その中から人影が浮かび上がる。
カレン「やっと…見つけたッ!!ルルーーーーシューーーーーーーッ!!」
―――刹那、月が赤く映えた。
- 73 :1:2009/09/27(日) 15:53:41 ID:KrXSiMrr.net
- 赤い人影が降り立った瞬間、床が爆炎をあげた。
受身によって距離を取ったルルーシュは煙の中を見つめた。そこから人影が浮かび上がる。
ルルーシュ「こんな時間に訪問とは…些か無礼ではないか?
零番隊隊長…カレン・シュタットフェルト!」
いつも愛用しているモップを手に取り構える。それに意味がないことを知りながらも。
カレンは足を止め、船内を見渡す。上空には麦わら帽子をした髑髏が揺らいでいる。
カレン「…驚いたわ。“麦わらの一味”といるなんてね。
一体何を企んでいるの?ゼロ…いえ、ルルーシュ!」
ルルーシュ「…。」
返答はない。ただ、構えをやや上段に移動させた。
それを“合図”と受け取ったカレンは小さく笑う。
カレン「…ルルーシュ、あなたは私が捕まえる!でもその前に…」
足が再び動きだす。素早く、力強く、獲物を狩るかのように。
ルルーシュ「チッ!!」
上段に構えたモップをカレンに向けて投げつけた。槍のように、直線的に、
それはカレンの額を目がけて飛んでいく。
対するカレンの反応は単純なものだった。――ただ”右手”を出すだけ。
しかし、モップは激突することなく消えた。いや、消えたというよりも
“蒸発”という表現が正しいだろう。右手に触れた瞬間、沸騰し、消滅したのだ。
ルルーシュ「ウぐぉッ!!」
モップを消した右手がそのまま仮面を襲い、体が宙を浮いた。
仮面を掴み上げながら、カレンは先ほどの言葉を続ける。
「…その前に、この嘘で固めた仮面をぶち壊して真実(すがお)を
曝け出してあげるわ!ルルーシューーーッ!!」
- 74 :1:2009/09/27(日) 15:55:10 ID:KrXSiMrr.net
- カレン「きゃあッ!?」
悲鳴を上げたのはカレンの方だった。手が仮面から離れたために、そのまま
床に叩きつけられる形になったルルーシュは頭を抑えながら立ち上がり
直後、驚愕した。
カレンの両肘から腕が生え、それが首を締め付けている。
ルルーシュ「…悪魔の実の能力者かッ!!」
振り返るその視線の先にはロビンがいた。
ロビン「二輪咲き(ドスフルール)」
胸の前で交差させた腕をに少し力を入れるとカレンは苦しそうに息を漏らす。
ロビンは一連の流れを回想する。突然の来訪者はゼロの知り合いではあるが
仲間ではないようだ。物体を沸騰させて消滅させる力がある能力者であり、
攻撃する意思を持っている。つまりは“敵”だ。
ロビン「(“ロギア”ではないようね…ならば!)」
―――敵は排除する。ゼロだけではなく、仲間たちのために。
カレンの体から複数の腕が生え、その体を固める。
ロビン「六輪咲きクラッチ!!」
- 75 :1:2009/09/27(日) 20:08:49 ID:KrXSiMrr.net
- ロビン「…ッ!」
予想外の状況だった。六本の腕によるサブミッションである「六輪咲きクラッチ」
屈強な大男でさら、簡単にその背骨を粉砕する。だからこそ、今目の前で起こって
いる状況は驚愕に値するものだった。一見、どこにでもいる町娘と変わらぬ背丈
の赤髪の女は、ただ“筋力”のみでクラッチに耐えている。
交差させた腕に更なる力を注ぐ…極めきれない。赤髪の女は血管を浮き立たせ
ながら右手を少しずつ上げていく。根競べが始まる。
ロビンは後悔していた。一瞬で決めていれば、今のような状況に陥ることはなかった
はずだ。少女の姿は“擬態”であり、目の前の女は強敵だった。その認識さえあれば…。
根競べは終わった。赤髪の女の右手がロビンの腕の一本を捕らえる。
赤い光りが放たれた瞬間、ロビンの腕は“沸騰”した。
- 76 :1:2009/09/27(日) 21:32:32 ID:KrXSiMrr.net
- 1です。
このスレを作成して1ヶ月ほど経ちます。
物語の方も四分の一ほど進ませることができました。
しかし・・・流石に自分一人で延々と投稿するのもむなしいので
感想など気軽に頂けたらうれしいな〜と思う今日この頃。
質問でもかまいません!ネタバレにならない程度に答えたいと思います。
たとえ妄想SSといえども、書き始めたらなんとか最後までやり遂げたいと
考えています。読んでくれている方がいましたら、感想などを宜しくお願いします!
- 77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/28(月) 18:05:45 ID:tfLNF/Zv.net
- カレンのバトルかっこいいすね!ギアスもワンピも好きなので更新楽しみにしてます!頑張ってください!
- 78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 06:22:41 ID:1hs3QQV6.net
- 支援。
ガンガレ!!
- 79 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/09/29(火) 07:49:47 ID:ntwdNWm6.net
- ルルーシュをよいしょする為にワンピキャラを利用してるように見える
相変わらずだな、ギアス厨は
- 80 :1:2009/10/01(木) 22:42:30 ID:MzYaSLPY.net
- >>77 >>78
本当にありがとう!
見てくれてる人がいるとわかったので、何とかペースを守って頑張りますv
少しですが、投稿します↓
- 81 :1:2009/10/01(木) 22:46:12 ID:MzYaSLPY.net
- ロビンは腕を押さえ、膝をついた。腕が“沸騰”した瞬間に技を解いた…
しかし、ダメージは「火傷」という形をもってはっきりとロビンの腕に
刻まれていた。咳き込みながら、先に立ち上がったのはカレン。
首を押さえながら、無言で右手をロビンに向ける。
右手の周りには赤色の波動が渦巻いている。
カレン「…弾けろ!」
赤い波動がロビンに向かって襲い掛かる。
―――痛みに耐えるロビンはそれに気づかない。
- 82 :1:2009/10/01(木) 22:50:07 ID:MzYaSLPY.net
- 赤い波動が獲物に襲い掛かるように一直線にロビンに向かう。
そしてまさに捕らえようとする寸前、爆発した。
ロビンの横を通り抜けた「斬撃」と衝突し、四方に飛び散り煙を吐く。
その爆発により、ロビンは後方に飛ばされた。
赤い波動は煙となり、主人をも捕食する。
煙の中でカレンは身構え、目を細めた。自分の攻撃が失敗に終わったのは
明らかであった。“一体何があった?”その答えは煙の中から現れた。
鋭い刀の切っ先がカレンの頬を掠める。自分の胴に向かってくる二の太刀を
バク転をしてかわす。その後を追って煙の中からその刀の「本体」が登場する。
ゾロ「ゼイヤァッ!!」
口に刀を咥えた奇妙な剣士…ロロノア・ゾロ。別名“海賊狩り”のゾロだ。
腰のナイフを抜き、逆手に持ったカレンはゾロの斬撃を受け止める。
一本のナイフと二本の刀の鍔迫り合い。どちらも引かない。
ゾロ「てめー何者だッ!海兵か!?」
カレン「邪魔を…するなーーーー!!」
力は拮抗している。凶器を境界線として二人は睨み合う―――
カレン「きゃあ!!」
均衡を破ったのはゾロだった。鍔迫り合いに集中し、無防備となったその腹に
強烈な蹴りを見舞う。吹っ飛ばされたカレンは後ろに構えていた壁に
叩きつけられ、その衝撃でナイフを落とした。後ろ手に壁を触り、逃げられない
ことを悟るカレン。対して、ゾロはこのチャンスを逃すはずはない。加速し、
距離を詰め、三本の刀を一気に振り下ろす!
ゾロ「三刀流…虎狩り!!」
- 83 :1:2009/10/01(木) 22:52:09 ID:MzYaSLPY.net
- ゾロ「…ッ!?」
三刀流「虎狩り」は目前の敵を吹き飛ばす。まるで虎に襲われたように宙を舞う
敵には三本の傷跡がはっきりを刻まれる。ゾロの得意とする技の1つだ。
だが、吹き飛ばされ、宙を舞う…はずの女は目前に敢然と立っていた。
右手で三刀を防ぎながら。その女の右手から出た赤い波動は
まるで「盾」のように形状を変化させ、その使用者を守った。
カレン「これが“輻射波動”この間合いに入った時に私の勝ちは決まっていた」
ゾロ「何ッ!?」
カレンの“勝利宣言”に反感を覚えるゾロ。その思いとは裏腹に「虎狩り」を
解き、後方に飛ぶ。カレンの言葉の意味を感じていた…自分の口が、手のひらが。
「輻射波動」によって3本の刀は一瞬で高温と化した。その熱はたとえ鞘で
守られている手のひらにも伝わってくる。もしも、意地になり、技を解くのに
躊躇していたら、この程度の火傷ではすまなかった。
カレン「逃がすものかッーーー!!」
右手をそのまま前方に出し、体ごと前に飛び出すカレン。凶器と化した右手が
ゾロの顔面に向かって牙を剥く。
- 84 :1:2009/10/03(土) 22:15:30 ID:Spk64OpA.net
- ゾロの顔に向けて伸びた右腕は止まり、直後、カレンは体を反転させる。
盾と化した「輻射波動」が何かを飲み込み、ボウッ、と小爆発を起こす。
右手を向けた先には長鼻の男がパチンコ台を構えていた。
ウソップ「ゾローーー!!大丈夫かあーーーー!?」
“麦わら”の一味の狙撃手であるウソップが騒ぎに目を覚まし、
救援に駆けつけたのだ。
ゾロ「ウソップ!?バカ!早く逃げろッ!!」
赤髪の女の実力は十分思い知った。だからこその反応だ。
とても、ウソップが出る幕ではない。だが、当の本人はそのことを
知らない。
ウソップ「そこの君!降伏するなら今だ!俺には八千人の部下が…」
ウソップの話はまえふりのみで終わった。女の右手の波動が形状変化
していく様を見たからだ。それにははっきりと攻撃の意思を感じる。
ウソップ「火薬星!火炎星!鉛星!卵星!ウソップ輪ゴムッ!!」
ありったけの技を出す。その全てが波動に飲まれ、小爆発を起こす。
カレン「…しつこい!!」
「輻射波動」の光線がウソップを襲う。寸前でかわすウソップ
カレン「しまったッ!!」
悲鳴を上げたのはカレン。ウソップがよけたその先にいたのは…。
ルルーシュ「…ッ!!」
- 85 :1:2009/10/03(土) 23:34:31 ID:Spk64OpA.net
- 爆発と共に煙が周囲を覆う、“肉が焼けた”ような焦げ臭い嫌な匂いを
風が運んでくる。戦いを中断して、一同は煙の中心を見つめていた。
その場所には先ほど、“魔王ゼロ”ことルルーシュ・ランペルージが立っていた。
不意を付かれたために、体を硬直させていたルルーシュは、おそらく「輻射波動」
をまともに喰らってしまったに違いなかった。この嫌な匂いこそ、一同の推理
を裏付ける有力な根拠であり、唯一の証拠であった。
カレン「…ッ!!」
煙が上がり、数秒間の推理劇の解答が示された。
煙の中心で倒れていたのは…緑髪の少女。
その背中は赤く染まり、まるで華が咲き開いたかのようだった。
そして、その横に呆然と彼女を見つめるゼロ…ルルーシュ・ランペルージの姿があった。
- 86 :1:2009/10/04(日) 11:02:56 ID:rHFFtiv9.net
- 赤い波動に身が包まれる瞬間、背中に衝撃を受け、床に向かって倒れた。
爆発音が鳴り、何かが倒れる音が聞こえた。
――誰かに助けられた。すぐそれに気づいた。そして、誰に助けられたのかも…
ルルーシュ「…C.C.」
視線の先には、C.C.が倒れたいた。その背中には赤く染まり、真紅の血が床を
濡らしている。だれの目から見ても致命傷なのは明らかであった。
だが――笑っていた。顔は酷く青ざめていた。しかし、瞳はしっかりと
ルルーシュを見つめ、C.C.は――笑っていた。
C.C.「ご主人・さ・・ま…」
手をルルーシュに向けて伸ばす。それは、あの時の光景とよく似ていた。
日ノ本がエリア11なったあの日、俺は海で出た。
そして…あっさり人買に捕まった。人買は俺がブリタニアの王子であることを
知り、売り込もうと目論んでいたらしい。
そしてブリタニアに連行される俺を助けてくれたのは
緑髪の少女…C.C.だった。
C.C.「私と一緒にくるか?ブリタニアの王子よ」
そういって手を差し伸べるC.C.。優しい…笑顔だった。
そして俺は「革命軍」のもとで力をつけ、再び海に出た。
今の俺があるのは全てC.C.のおかげだ。
時代が変わろうとも、記憶を失おうとも…C.C.お前は俺を――
手を握ろうとするルルーシュ。しかし、C.C.の腕はその直前で崩れ落ちた…。
- 87 :1:2009/10/04(日) 11:08:02 ID:rHFFtiv9.net
- カレン「C.C.なんで…なんであなたがここに!?」
そう言って頭を抑えるカレン。酷い頭痛がする。頭が割れそうだった。
瞳を閉じる。真っ暗な闇の世界。そこには“黒い霧”がたちこめていた。
カレン「(ハァ、ハァ)」
その“黒い霧”の先に明かりが見えた。小さな、本当に小さな光り。
手を伸ばす。小さな光りに、暖かい光に、
それが、自分が本当に欲しかったもののように感じたから。
“黒い霧”が叫ぶ。“ルルーシュを殺せ”と。そして、光りを押し潰した…。
ナミ「ちょっと!何の騒ぎ!?海軍の襲撃!?」
サンジ「何があった…ってC.C.ちゃん!?」
ルフィ「ふわぁ〜、うるせーぞお前ら」
チョッパー「な・何が起きてんだ?」
騒ぎを聞いて、他のクルーがデッキに集まる。
“麦わらの一味”全員集合だ。
カレン「…ッ!」
時間切れだった。さすがのカレンでも“麦わらの一味”全員を
相手にできるとは考えていない。奇襲による“ゼロ捕獲作戦”
は一味の全員集合によって「失敗」という結果に終わった。
その結果を悟り、船端に飛び乗るカレン。
カレン「ルルーシュ…これだけは覚えておきなさい。
何を企もうとも、この海のどこに逃げようとも、
ルルーシュ!あなたは、私が捕まえるッ!!」
そう言い残し、海に身を投げる、直後、爆炎が上がり一隻のボート
が火を吐きながら波を切り裂き、メリー号から離れていく。
- 88 :1:2009/10/04(日) 11:15:52 ID:rHFFtiv9.net
- ルフィ「かっけー!“エース”の船みたいだな!アイツの」
離れていくボートを眺め、ルフェがうれしそうに声を上げる。
チョッパー「ダメだ…死んでるッ!」
サンジ「C.C.ちゃん…せっかく出会えたのにッ!うう」
C.C.を仰向けにして、治療を試みようとしたチョッパーを呻くように
呟いた。その傍らではサンジが声を上げて泣いている。
チョッパー「心臓も止まってる。顔色も…!?」
死亡確認のため、顔を眺めたチョッパーは驚きのあまり言葉を止めた。
死んだはずの…死んだはずのC.C.がじっとこちらを見ているのだ。
C.C.「どけ…狸よ」
チョッパー「ぎゃーーーーー!死人が喋ったッ?!」
驚きのあまり尻餅をつく。“ガタガタ”と震えるチョッパーを尻目に立ち上がる。
C.C.「うむむ、腹が減った。回復のために体力を使い切ってしまったぞ。
そこのコック!サンジと言ったな。“ピザ”を…最高の“ピザ”を
直ちにもってこい!」
サンジ「え?!あ、え、えーと…C.C.ちゃん?」
復活するや理不尽な要求を突きつけるC.C.。あまりのことにサンジは
返答すら満足にできない。性格…変わってないか、とそんな顔をしながら。
C.C.「服も酷い状態だ…女!ナミといったな。お前の服を貸せ」
新たなる要求を突きつける。その被害者はナミ。
ナミ「いいけど…レンタル料、高いわよ」
気圧されながらも、何とか返答するナミ。C.C.の背中にはすでに傷跡がなかった。
C.C.「ケチな女だな…ここ百年いなかったぞ、私にそんな口を聞いた輩は」
ナミ「ムキー!何この女!性格変わりすぎ!!」
肩を竦めるC.C.。その態度に激昂するナミ。
ついさっきまでは生まれたての子鹿のような目をして、オドオド、していたのに。
その様子を少し離れて、見ていたのはルルーシュだった。
ルルーシュ「(…記憶が戻ったのかC.C.)」
- 89 :1:2009/10/04(日) 11:18:40 ID:rHFFtiv9.net
- ゾロ「…何者だあの赤髪の女は?相当な手錬だぞ」
少し火傷を負った手を風にあてながらゾロは尋ねた。
服装や言動から考察すれば、明らかに海軍の者ではない。
ルルーシュ「…カレン・シュタットフェルト。
“黒の騎士団”零番隊・隊長だ」
ゾロの質問に答える。その視線は暗い海の方を眺めていた。
ナミ「ちょっと待ってッ!今何て言ったの!?」
C.C.と口論していたナミがルルーシュの返答に驚きの声を上げた。
ナミ「零番隊ってアンタの親衛隊のことよね?!
その“隊長”が…“黒の騎士団”がなんで私たちを
襲うのよ!?説明しなさいよッ!ゼローーーーーーーーーー!!」
ナミの悲鳴が暗い夜の空いっぱいに響き渡った…。
- 90 :1:2009/10/04(日) 12:48:41 ID:rHFFtiv9.net
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|::::::::∨:::::::::::::::::::::::∨ ヘ! :::| ,/::∨::::::::::: !: :!'::::::∧
人物紹介そのA
名前 ロロ・ランペルージ 別名“暗殺者”ロロ
能力 時間停止(トキトキの実)
所属“黒の騎士団”側近
懸賞金 4千万ベリー
ブリタニアの暗殺者としてゼロを襲撃する。その後、“黒の騎士団”に入団し
ゼロの側近として暗躍。海軍大佐とその部下20名を一瞬で惨殺したことから
その存在は騎士団内部でも恐れられていた。
本人はゼロの弟を自称していたが、その真相は不明。“ゼロ救出作戦”において死亡。
- 91 :1:2009/10/04(日) 13:09:17 ID:rHFFtiv9.net
- 〈\:::: /.:.:. ..:.:.:/‐==-xヘ.:.:.:.:/三\ :.:ヽ
f⌒ヽ _>'´:.:.: ..:.:.:.:./=====z≦三:::=ミハ :.:.:.:}
, - 、{: : : :' ー= :.:.:ニ二>'´:.:. -‐‥'´:.:∠-‐=ニ _ ___ : : :`<ミ| .:.:. ト、
{: : :.ヾ: : : l _>':"´.:.:.:.:.: __ -= イ ,ィ==-ミ ヽ `丶、:.:ヾ| :.:.:.:.j:::ヽ
ヽ: : :.:';. : :| '´.:.: -=ニ二二 /::::::::::: /:::l {{ ,__汽ヾ '´ ̄ ヽ\:.:j :.:.:.:,'.:.__;ゝ
'. : :. |: :│ /::./ \/::::::::::::://^| 、弋:::ソ z=-ミ ∨ .:.:.:∧::.\
. l: :::. |:: :.l // ー=彡::::::::::::/:: 〈 〈|  ̄ / イ_,汽 }} / .:.:.:/::::ヘ  ̄
. |: :::.:|:: :.| /::::::::::x<_::::::ヘ_| } 弋::ソ 〃′.:.:.:./::::::.:.:.\
|: ::: |:: :.| ____,∠rァ广厂\__;/::∧ r=z- 、  ̄ /.:.:.:.:.:./:::::::\ ̄
|: :::.l::.:│ /.: : :/// / 、/ : :::::::::':. ∨ )> _ -=彡.:.:.:.: /:::::::::::::: \
ノ: ::::l:::.:.j. /⌒ヽ:/ / / ,/ `ー=ニ;_:::∧ `ー '":.:.:.:.:.:.:.:.:.: '´:::::::::::::::::::::::::: >
x<__::_ノ::: ハ /:::::::::::ノ/ / / ̄丁⌒\ '⌒7:、丶.__/.: ;_:, -‐=<::::::::::tー―─―''´
 ゙̄ヽ\/::::::::::/:/ / /::::::::::\___>、 /:::::;;> _/:.:./ /::ヽ :::::::::::丶、::::_\
::::::::::::::::::::::::::}/:::::::〃::::/ / /:::::::::::/^二/ : : `'ー< ::::{//:/ ̄`>jノ `ヽ、_::二ニ=- ̄
 ̄ ̄ ̄`丶、|:::::::/二ニニ==ー‐</: : : : : : : : \: ::::/:::/'´::: : : / /\
::::::::::::::::::. : }/:::::/: : : : : : : : : : : : : :\: : : : : \: : : `く:::::::: : : : : : / / /\
人物紹介そのB
名前 カレン・シュタットフェルト 別名“紅月”カレン
能力 輻射波動(パラメシア系モデル“紅蓮”)
所属“黒の騎士団”零番隊・隊長
懸賞金 7千500万ベリー
旧日ノ本のテロリストグループ「ナオトグループ」に所属。“黒の騎士団”に
入団後、悪魔の実を食べ、“輻射波動人間”となり、戦場を駆ける。
月を背景に映えるその赤髪はブリタニアにとって恐怖の象徴となる。
零番隊・隊長としてゼロを守る騎士団の“エース”
- 92 :1:2009/10/04(日) 13:29:53 ID:rHFFtiv9.net
- パラメシア系→パラミシア系
すいません、間違えました。
- 93 :1:2009/10/04(日) 19:00:04 ID:rHFFtiv9.net
- ――同じ暗い海の夜の下、扇要。大海賊船隊“黒の騎士団”の現団長が
本船・斑鳩の甲板の上に立ち、ある人物を待っていた。
扇「(…ッチ、クソ眠いな…よりによってこんな時間に帰ってきやがって)
あくびをかみ殺し、目を擦る。その目は少しだけ充血していた。
扇がいる斑鳩に一隻のボートが近づいてくる。それには一人の男が乗っていた。
男は現在“黒の騎士団”において五番隊・隊長の地位を預かっていた。
元“日ノ本解放戦線”の幹部であり、「四聖剣」の異名を持つ剣豪だった。
男は各エリアのレジスタンスから情報収集するという任務をゼロから受けて
いたが、その任務を途中で中止し、急遽、斑鳩に戻ってきたのだった。
甲板に男が上がる。扇は手を広げ、いつもの作り笑いをする。
扇「お疲れ様!任務ご苦労だったな、とべ」
卜部「…卜部{うらべ}だ(ドーン)」
卜部巧雪。“黒の騎士団”五番隊・隊長であった。
- 94 :1:2009/10/04(日) 19:03:13 ID:rHFFtiv9.net
- 扇「(…クソがッ!難しいんだよその漢字!振り仮名ふっとけやッ!)」
内心で毒吐きながらも、ハハハ、と笑って誤魔化す。
この男はいつもそうして生きてきたのだ。それを黙って見つめる卜部。
卜部が斑鳩に戻ることを決めたのは、部下からの密告だった。
扇たち幹部が突然、ゼロをブルタニアに売った、というのだ。
その理由はゼロがギアスという超能力で敵や仲間を
操っていた、というものだった。
ゼロ引渡しの報酬は日ノ本のエリアからの解放。
そして、ゼロ更迭に意義を唱える団員達を新たに団長となった
扇が、次々と牢に捕らえ、今や“黒の騎士団”は扇の独裁体制
にあるという。“幹部たちの様子がおかしい”そう報告した部下とは
連絡がつかなくなった。もはや、事態を自分の目で判断するしかない。
そう決意し、卜部は斑鳩に帰還したのだった。
卜部「扇、率直に聞く。なぜ、ゼロをブリタニアに売った!?」
卜部の質問を予想していたように、キリッ、とした顔で扇は答える。
扇「ゼロはブリタニアの王子、ルルーシュ!
ギアスという力を使い、人を操る…ペテン師だ!!」
- 95 :1:2009/10/06(火) 00:01:26 ID:5xsF6TFS.net
-
卜部「…。」
返答を聞いて黙る卜部。扇はそれを見て、なぜか誇らしげな顔をしている。
しばらく沈黙した後、卜部は口を開いた。
卜部「その情報…誰から聞いた?」
扇「シュナイゼル宰相だ」
扇は、ニヤリ、と笑い、懐からカセットテープを取り出す。
スイッチを押すとテープは、ジジ、と音をたて回り出し、その記憶を呼び覚ます。
?「ルルーシュ!君はブリタニアの王子でみんなにギアスをかけたのか?」
?「そうさジョン!僕は王子でみんなにギアスをかけたのさ!」
上記は、ゼロが王子でギアスをつかった、という証拠のテープの要約だった。
謎の二人の会話。一人が質問し、もう一人が回答する。もちろん、回答した
人間がゼロ、ルルーシュ本人であるという証拠はどこにもない、というか
「ジョン」って誰?中学英語の教科書の人!?
卜部「これを誰に貰った?」
扇「シュナイゼルさんだ!他にも証拠はある」
懐から取り出した複数の書類を卜部の足元に投げる。
そこには、日ノ本解放戦線の草壁中佐、片瀬大将。ブリタニアの学生、
エリア11総督のクロヴィスの写真が載せられていた。
扇が言うには彼らは“ギアスによって操られていた”らしい。
もちろん、操られていた証拠など何もない。
- 96 :1:2009/10/06(火) 00:04:36 ID:5xsF6TFS.net
-
卜部「これを誰に貰った?」
扇「シュナイゼル様です。わざわざ時間指定便で送ってくださった。料金高いのに」
にこやかに笑う扇を見て、卜部は血管が切れそうになるのを堪えた。
卜部「つまり、エリアの半分を陥落させた敵の宰相・シュナイゼルの
言い分をそのまま受け入れて、ゼロを、こちらのリーダーを売った…と?」
卜部の質問を、フッと鼻で笑い、指を鳴らす。斑鳩の内部に繋がる入り口から
一人の女が、オドオド、と歩いてくる。その肩を抱き、扇は答える。
扇「確かに、今までのものは証拠としては弱い。しかし、ギアスが俺たちの“仲間”
にかけられていたならどうだ?そう、この千草こそ、ギアスにかけられていた
被害者であり、ギアスの存在を立証する生きた証人だあーーーーーー!」
卜部「そいつは…ブリタニア人で、“ブラックリベリオン”時にお前を撃った
海軍のスパイじゃねーかーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!」
寡黙な男の血管がついにぶち切れた。
- 97 :1:2009/10/06(火) 00:08:05 ID:5xsF6TFS.net
-
卜部「“仲間”じゃねー!そいつは断じて“仲間”じゃねーッ!!」
その女・千草は、扇の地下工作員として働いていた。
しかし、彼女の正体は海軍少佐・ヴィレッタ・ヌゥ。海軍のスパイだった。
“ブラックリベリオン”の時、扇はヴィレッタに撃たれ、無様に泡を吹いて
倒れた。そのため指揮系統は崩壊し、ブリタニア軍に態勢を整える時間を与えた。
それが“ブラックリベリオン”における敗戦の大きな理由の1つとなった。
扇「ゼロは卑劣にも、千草にギアスをかけ、海軍の逆スパイとして利用したんだ!」
逆切れ気味に扇はゼロの非道ぶりを糾弾する。
卜部「(…え、何が悪いの?それって結構名案じゃね?)」
確かに一人の人間としてみれば、極悪非道なのは間違いない。
しかし、今、行われているのは戦争だ。
国際法という最低限のルールを表面上、守りながら行う殺し合いゲーム。
自身も人には言えない汚いことをした…生き延びるために。
奇麗事だけでやっていけない現実がある。例え、ゼロが自分たちを
“駒”として見ていたとしても、それはどうでもいいことだ。
自分たちもゼロを有能な“道具”として期待しているから…。
組織には必ずそういう側面が付き纏う。
扇「ゼロは悪党だ!奴の行ったこと、築きあげたもの全ては“悪”だ」
卜部「(…ッ!)」
扇要…いつも後方の安全な場所にいたこの男はその現実を知らない!
文句があるならてめーが出てけ!、と言いたいのを堪える卜部。
論争も終盤に差し掛かっていた。
- 98 :1:2009/10/06(火) 00:11:45 ID:5xsF6TFS.net
-
卜部「はっきり言ってやる!
俺は…俺たちは“ギアス”などにはかかっていない!!」
その宣言を、ニヤニヤ、と笑いながら扇は聞く。
扇「なぜそう言い切れる。“証拠”はあるのかなぁ〜?」
してやったり、勝った、とそんな顔をしている。ああ、殴りたい…。
卜部「簡単なことだ。もし、俺たちが“ギアス”にかかっていたのなら
ゼロを裏切ることは絶対にできない!
この追放劇の成功こそ、ゼロが俺たちに“ギアス”を
かけていなかった…証明だーーーーーーーーーーーーー!」
卜部の咆哮に、扇は後ずさりする。あまりにもシンプルな答えだった。
扇「〜〜〜〜〜〜ッッ!!」
余裕だった形相が一変する。ほんのりと汗をかき、泡を飛ばして反論する。
扇「ゼ、ゼロはそういう“ギアス”をかけ忘れたんだ!」
卜部「便利なものだな“ギアス”とやらは…。
ゼロは、あの男は一種の天才だった。そんなヘマはしない。
扇…お前のような無能とは違ってな!」
鼻で笑い、即答する卜部。ついに扇に対する罵倒を解禁する。
卜部「百歩譲ってゼロがブリタニアの王子で、俺達に“ギアス”をかけ操っていた
としても、まずはその身柄を拘束して、徹底的に取り調べを行うのが
当然の処置だ!それを即、敵に引渡して交渉するなんて…このバカ!
クズ!卑怯者!レイ○魔!キモパーマ!モジャ公!一人だけ変なコート!」
正論の後、ありったけの悪口を言う卜部。
扇が“黒の騎士団”の制服を一人だけ着ていなかったことにやはり不満があったようだ。
卜部「“王子”だろうが、“ギアス”だろうが、どうでもいい!
問題はゼロが俺達やエリアの民を裏切っていたかどうかだ!
否…絶対にない!ゼロは本気でブリタニアを倒そうとしていた!
エリアを解放しようと命を懸けて戦っていた。
それは、側で一緒に戦った俺が知っているッ!!
扇…なぜだ?お前も言ったはずだ“ゼロのブリタニアに対する怒りは
本物だ“と、”ゼロは全エリアの希望“だと」
全てを吐き出し、返答を待つ卜部。耳をかきながら聞いていた扇は答える――
- 99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/06(火) 17:46:34 ID:/lI5gBaa.net
- ト部がんばれ
- 100 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/06(火) 20:04:24 ID:f1ZPCjUY.net
- お前が主人公だ卜部
- 101 :1:2009/10/06(火) 22:11:44 ID:5xsF6TFS.net
-
扇「ノリだよ。ノ・リ。その場の空気を読んだだけだよ…このバーカ!
合コンとか行ったことないの?これだからモテない奴はw」
卜部「…ッ!!」
信じられない回答に絶句する。俺達の命懸けの戦いを“合コン”のノリで!?
扇「あーあ、めんどくせーからはっきり言ってやるよ!
俺はゼロが、ルルーシュが大嫌いだったんだよ!
いつも高みから命令しやがって、何が“もっと仕事をしろ”だ?
俺だってしっかりやっているよ!例えば…そう、色々だ!
それに、アイツは俺達の…俺と千草の仲を引き裂こうとしやがった。
何が“国際法違反の婦女暴行罪”だ!?何が“ストックホルム症候群”だ!?
まるで俺が“強姦魔”で、千草が“病気”みたいじゃないか!?
許さねー!絶対に許さねーーッ!
だから、売ってやったんだよ!ゼロを…シュナイゼルに!」
卜部「この追放劇はお前が…お前が仕組んだのか扇!!」
扇「そうだ!俺がゼロを売った。偶然アイツの正体に気付いた俺は
シュナイゼルにコンタクトをとった。
クク、あとは簡単だったぜ〜お前にも見せたかったよ、
アイツが連行される様を!クハハハ、アーハッハハハ!」
扇の高笑いが夜の闇に響き渡る。その笑いを聞きながら卜部は思い出していた。
今までの戦いを、死んでいった仲間たちを、日ノ本の、子供たちの顔を。
扇「ビぎゃーッ☆○#б%ж★χ◆ムキーッ★☆○#б%ーーーーッ!!」
ゼロの悪口を連呼する扇。興奮し過ぎてもはや何を言っているのかわからない。
卜部(…許せないッ!この扇(クズ)だけはッ!!)」
愛刀「月下」に手をかける。この扇(ゲス)を殺す!それに何の躊躇もない。
しかし、一方である「疑念」が卜部の思考を捕らえていた。
――それは、なぜ誰も反対しないのか、というものだった。
- 102 :1:2009/10/07(水) 19:19:32 ID:XUkKEdnJ.net
-
扇の論理は全て穴だらけだった。こんなものでは子供ですら説得できない。
幹部たちは“将軍”藤堂をはじめとする歴戦の勇士ばかり。とても扇などに
遅れをとるはずがない。では…なぜ?
扇「ハアハア…すでに“種”は蒔かれた。とべ!お前はゼロが敵国の
王子だと知った時に、“ギアス”の話を聞いたときに…一瞬でも
ゼロを疑ったはずだ。お前の中にはすでに“疑心”の芽が生まれてるんだよ!
あとは…育てるだけだッ!!“モジャモジャノーム”」
モジャモジャパーマに手をかける扇。
昔の不良が自慢のリーゼントを決めるような体勢を取った。
そこから円状に“黒い霧”のようなものが発生し、卜部の体を覆う
- 103 :1:2009/10/07(水) 19:21:10 ID:XUkKEdnJ.net
-
卜部「うう…。」
卜部の頭の中を“黒い霧”が渦巻く。
霧は話しかけてくる“ゼロは裏切り者だ”と。
霧がゼロの姿を映し出す。そのゼロは仲間に“ギアス”をかけ、駒として
利用していた。エリアの民を裏切ろうと企てていた。
こうして、見ると扇の言うことは正しいのかもしれない…。
そんな気分になったきた…。
卜部「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーー!!」
霧を振り払うように咆哮し、「月下」を左腕に突き刺した。
痛みで思考がはっきりする。黒い霧も――晴れた!
クッ、と呻く扇。しかし、すぐ持ち直し、パチパチ、と拍手をする。
扇「痛みで技から逃れたか…。さすが!さすがは“隊長”」
拍手をし、笑う扇を卜部は睨む。
卜部「扇…キサマ、いつ“悪魔の実”を…まさか、ナオトの!?」
“ナオト”その名前を聞き、扇は、ニヤリ、と笑った。
- 104 :1:2009/10/07(水) 19:23:54 ID:XUkKEdnJ.net
-
ナオト・シュタットフェルト。元レジスタンス「ナオトグループ」の
リーダーであり、大海賊艦隊“黒の騎士団”の副団長だった男だ。
ある作戦から帰ってきたナオトは2つの“悪魔の実”を持ち帰った。
1つは妹のカレンが食べた。パラミシア系モデル“紅蓮”それを食べたカレンは
“輻射波動人間”となり、騎士団のエースとして月夜の海を駆けた。
そしてもう一方の実は…。
卜部「消失した。ナオトの死のどさくさに紛れてな…。何者かが情報を流した
ため、作戦がブリタニアに知られていた。仲間を逃がすために
囮となったナオトはそのまま…。扇!まさかキサマがッ!?」
扇「ナオトが死んだのは、はずみだ。この実は俺を選んだんだよ〜とべ!
俺は“黒の騎士団”で“最強”になれたんだ〜〜〜〜ッ!!
“悪魔の実”の中でもまた異質…俺の能力は“詐欺”だッ!」
扇の頭から“黒い霧”が立ち上る。右手を上げ、パチン、と指を鳴らす扇。
その合図に答えるように、入り口から複数の隊員たちが姿を現す。
隊員は…五番隊の隊員だった。
扇「卜部隊長は“ギアス”に操られている。解放してやれ」
瞳を薄暗く曇らせた隊員たちが前に出る。「月下」を片手に持ち卜部は吼えた――
- 105 :1:2009/10/09(金) 21:47:05 ID:a3wCYJYY.net
-
ルルーシュ「“騎士団”の幹部は日ノ本人が多くを占める。
日ノ本の解放が条件ならば扇に扇動され、
俺をブリタニアに売ることに同意しても不思議ではない。」
“黒の騎士団”のクーデター。「ゼロ追放劇」の要約を説明するルルーシュに、
グラサンをかけたナミが質問する。その容貌はまるで“姉御”だった。
ナミ「他に…私達についた“嘘”は何?」
ルルーシュ「エリア11の…東京ゲットーの隠れ家について本当だ。
お前達を匿うという契約もな…ただし、それを行うのは
“黒の騎士団”ではなく、俺の個人的な部下だ。」
ナミ「――信用できない!」
その返答を一刀両断する。そして息を切らすことなく次の言葉を放った。
ナミ「あなたは私達に“嘘”をついた!そして、まだ何かを隠している。
私にはそんな気がする…だって、あなたはあの“ゼロ”だもの!」
ロビン「…。」
チョッパーから治療を施されているロビンがその成り行きを見ている。
その瞳には武器を構えるナミが映る。
ナミ「船を…降りて貰うわ!今すぐに」
もはや交渉の余地なし、とそんなメッセージを全身から発するナミを尻目に
ルルーシュはルフィに声をかける。
ルルーシュ「…ルフィ。俺はお前達に“嘘”をついた。
お前の“仲間”になるという契約は…破棄させてもらう」
- 106 :1:2009/10/09(金) 21:48:59 ID:a3wCYJYY.net
-
卜部「はあ、ハア」
激しく息を切らせながら、片膝をつく。その体には複数の刀傷が付けられ、
至る所から血が流れ出ている。卜部の周りには複数の隊員達が倒れていた。
誰一人、身動きする者はいない。息は…すでになかった。
その光景を見て卜部は思う。扇の能力――人の心の隙を突いて操る悪魔の実
の力は大したものではない。知ってさえいれば…。“敵”と認識していれば、
戦場では何の役にも立たない、扇に相応しいカス能力だ。
――だが、知らなければ…。“仲間”だと思っていれば、
生活している中で、ほんの少しの隙を何度も狙われたのならば…。
操られてしまった人間を…誰が、誰が責められるのか!
操られた戦友達、彼らを救えなかった自分を卜部は激しく責めた。
扇「五番隊の精鋭を“片手”で倒すとは…。
さすが“四聖剣”ここで殺すにはおしいな。
とべ…いや卜部!今からでも遅くない、俺の“仲間”になれ!」
隊員と卜部の死闘を鼻歌を歌いながら観察していた扇は“勝者”である
卜部の勧誘を始めた。
扇「“ゼロ”の時代はもう終わりだ!日ノ本の王には俺がなる!
その後のプランはすでに出来ている。
――まずは敵対していたブリタニア帝国と和解し、軍事同盟を結ぶ!
この件に関しては、すでにシュナイゼル宰相は承認ずみだ。
世界政府の中でも屈指の大国であるブリタニアとの同盟だッ!!
お前もその意味がわかるだろ!?
軍事同盟の見返りとして、日ノ本はブリタニアのエリア政策に賛同する。
“黒の騎士団”は各植民エリアに“駐屯軍”として配置され、治安維持を行う。
安全保障も雇用も完璧!日ノ本の敵もいない!まさにパーフェクトだあ〜!
これが俺の日ノ本…いや、“扇ジャパン”だ!
さあ、卜部!俺と共に“扇ジャパン”を――」
- 107 :1:2009/10/09(金) 21:52:37 ID:a3wCYJYY.net
-
卜部「扇ジャパン(笑)」
まさに、あからさまに、明確に、必要以上に卜部は“鼻で笑った”
それはどの言葉を選ぶより卜部の意思を雄弁に語っていた。
卜部は笑い出したい気分だった。こんな、こんなピエロがいるとは!
「駐屯軍」とは実にシュナイゼルらしい発想だった。治安維持とは
名ばかりの、それは間違いなく、エリアに対する「弾圧軍」に他ならない。
自分を襲ってくる犬と遠くから見ているその主人。
人は間違いなく、まず犬を憎み、倒そうとするはずだ…。
「駐屯軍」とはまさに、ブリタニアの犬であり、その憎しみを
肩代わりする存在となる。その生贄は日ノ本、“黒の騎士団”。
“馬鹿”というのは適度だからこそ笑えるものだ。
扇要…コイツはどこまで無能なのだろう。こんな奴が副団長だったのだ。
いや、むしろまだ自分が生きていることの方が不思議だった。
ゼロは“こんなの”をカバーして戦っていたのだ…無茶しやがって。
- 108 :1:2009/10/09(金) 21:55:16 ID:a3wCYJYY.net
-
卜部は自分の前方に倒れている団員に目をやる。
この男は、日ノ本解放戦線時代からの同士だった。
新宿事変の時、家族を虐殺され、その日泣きながら自爆テロを志願してきた。
左側に倒れている男を見る。
自分の娘を殺された男だ。3歳の娘と公園で遊んでいる時にブリタニア兵に
狙撃された。狙撃の理由は…新しい銃の試し撃ちだった。
一番奥で倒れている男。
他のエリアの出身者だ。ゼロと騎士団の理念に賛同し、団員になった。
全エリアが解放されるまで家族には会わない、そういって俺に写真を見せた。
――みんな、すまない。“弱い”隊長で…。救って…やれなくて…。
扇ジャパン?冗談はやめろ!これ以上、これ以上――
黒の騎士団(俺たち)を侮辱するなーーーーーーーーッッ!!
卜部「力に屈して何が男!“四聖剣”とは虚名にあらず!!」
- 109 :1:2009/10/09(金) 21:58:02 ID:a3wCYJYY.net
-
扇「…だとさ。藤堂さん」
藤堂「…旋回活殺自在陣」
朝比奈・仙波・千葉「…承知!」
“将軍”藤堂、そして同じ“四聖剣”の名を持つ仲間が卜部を囲むように旋回する。
卜部「はあ、はあ」
愛刀「月下」を鞘に収める。
諦めた…のではない!自分が最も得意とする抜刀術を仕掛けるためだ。
重心を低くして構える。
“将軍”藤堂と“四聖剣”の戦場に「敗北」はない。
――だが、それ以上に“黒の騎士団”の“隊長”に「絶望」は許されない。
フォーメーションが狭まる…。卜部の瞳に“反逆”の炎が灯る――
卜部「…ゼロ!日ノ本を、民を、騎士団を拾ってやってくれッ!!」
刹那、卜部の視界は赤く染まった。
- 110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/10(土) 22:33:11 ID:lPy0cjQw.net
- 前の話に戻るがギアスってゴーグルつけただけで防げるもんなの?
- 111 :1:2009/10/10(土) 23:01:17 ID:EJcFFaxH.net
- 質問ありがと!
いや〜過疎ってるから助かりますよ、旦那!
>>ギアスってゴーグルつけただけで防げるもんなの?
偉大なる原作を論拠とするなら、防げません。
メガネくらいではギアスの視覚情報を防げないので、おそらくゴーグルも無理でしょう。
しかし、黒の騎士団のサンバイザーぽいのやシュナイゼルのグラサンみたいの
ではギアスは防げるように、ギアスを防ぐことに関しては少し曖昧な部分
があるのも事実なので、今回はゴーグルごときで防げる仕様にさせて頂きました。
もうお気づきだとは思いますが、この妄想SSではギアスの設定が変更されています。
原作準拠ですと、ルフィ達は最初のギアスで死んでしまいますw
ギアスの設定についてはちょうど、この次の投稿で説明されますので
「ご都合主義w」と笑ってやってください。
また、何か質問がありましたら、宜しくどうぞ
- 112 :1:2009/10/12(月) 16:39:46 ID:y5hGJdZ8.net
-
背中を向け、自分達の部屋に向かうルルーシュ。
その後に従うC.C.にナミが声をかける。
ナミ「あとで私の部屋に寄って。服は…あげるわ」
C.C.「…感謝する」
ほんの少しだけ笑い、素直に礼を言うC.C.
ナミは俯く。少しだけ、切ない気持ちになった。
ルフィ「…待てよ」
ルルーシュが扉に手をかける、まさに、その時だった。
ルフィ「俺は“契約”なんて知らねー!
お前が船を降りたいなら止めねー!
でも“約束”は守ってもらう!!」
- 113 :1:2009/10/12(月) 16:44:02 ID:y5hGJdZ8.net
-
ルルーシュ「約束?」
立ち止まり、仮面越しにルフィを凝視する。
何を言っているのか見当もつかない、といった感じで。
ルフィ「こんにゃろ!今日、お前が言ったのにもう忘れたのか!?
“エリア11についたら、好きなだけ飯を作ってくれる”って
約束したろ!男の約束は絶対だ。それが飯のことなら
たとえ死んでも守ってもらうからな!!」
そう一気に捲くし立てるルフィ。
それを聞いているルルーシュはただ、唖然とするばかりだった。
C.C.「フフフ、アッハハハハハ」
C.C.が笑った。声を上げて、とても楽しそうに――
ナミ「ちょっと、ルフィ!!アンタ、何言ってんの?
この状況がわかって――」
ウソップ「船長命令だな!」
ナミの言葉を遮ったのはウソップだった。
ゾロ「船長命令ってのは絶対なんだろ?」
それにゾロが続き、意地悪そうに笑う。
ナミ「アンタ達!あ、あれは方便で…」
サンジ「ナミさ〜ん!コイツらバカばかりだからしょうがないよ。
さあ、あっちに行こう!美味しいお茶をいれるから」
そう言って、ナミの肩に手をかけて半ば無理やり連れて行く。
抵抗していたナミだが、大きなため息を1つ吐いた後、トボトボ、と
肩を落としながら歩いていく。ロビンが可笑しそうに、クスクス、と笑う。
助けたいから、助けるんだ!他に理由なんかいるか!!
あの夏の日…アイツの言葉が蘇る。
ルフィ「“契約”なんて知るか!
俺との“約束”を守れ!」
ルルーシュ「(…昔から、勝てる気がしないな…このタイプには)」
- 114 :1:2009/10/12(月) 16:46:43 ID:y5hGJdZ8.net
-
ルルーシュ「ルフィ…ありがとう」
不器用に、ぎこちなく、わざとか細い声で、確かにそう言った。
尊大で、傲慢で、いつも芝居掛かった仮面の男の素直な気持ち。
ルフィ「ウシシシシ、何も聞こえねー!」
頭に手を廻して、後ろを向くルフィ。
そこには、暗い海と満月がきらめいていた。
エリア11―旧日ノ本―まであと数日の距離だった。
- 115 :1:2009/10/14(水) 00:25:16 ID:E0qG/B/g.net
- BGM
http://www.youtube.com/watch?v=e9V5I2gCdfI&feature=related
ベッドに仰向けになりながらC.C.は、クスクス、と笑っている。
シャワー室から出てきたルルーシュは頭を拭きながらC.C.を睨む。
その目は“まだ笑っているのか”と語っている。それを見たC.C.
は、さらに楽しそうに笑った。
――あの夜を境に、ルルーシュから、乗船以来抱え込んでいた緊張感が和らいだ。
丸くなった、という表現が適切だろうか。一時期は自室にいる時も外さなかった
仮面を外にいるときも外すようになった。ほんの短い時間、主に海を見ている時。
一人で遠くを眺めている時。ルルーシュのその行為を咎めるクルーはいない。
サングラスも、もはやナミ一人しかつけていなかった。
- 116 :1:2009/10/14(水) 00:31:44 ID:E0qG/B/g.net
-
事の始まりはルルーシュが今夜のメインディッシュに「海王類の丸焼き」を提案した
ことからだ。仮面を脱ぎ捨て、フハハハハ、と笑いながら、羊頭の上に立つ。
そして、海王類に“ギアス”をかけて捕らえる…はずだった。
だが、ルルーシュの目前に現れた海王類、魚にもいる視力はないが
嗅覚で獲物を捕らえるタイプであった。まさにあっという間に丸呑みにされる。
慌てて、助けに入る、ゾロとルフィ。
C.C.が笑っていたのは、救助された後、必死になって海王類の匂いを落とそうと
頑張るルルーシュの姿だった。
- 117 :1:2009/10/14(水) 00:34:02 ID:E0qG/B/g.net
-
着替えを終えたルルーシュは、荷造りを始めた。
エリア11―旧日ノ本―までもう少しの距離だった。
準備をしておくことに早すぎることはなかった。
ルルーシュ「記憶が戻ってなによりだC.C.。
海軍から助けてもらった礼…まだ言っていなかったな」
唐突にルルーシュが話しかける。荷造りの作業は続けていながら。
C.C.「気にするな。お前は“我々”にとっても必要な男だからな」
ルルーシュ「“革命軍”か…C.C.お前は誰の味方だ?
“ゼロ”か?それとも“ドラゴン”か?」
視線をC.C.に向ける。真剣な眼差し。それを見てC.C.は笑う。
C.C.「自分で考えろ童貞ぼうや」
ルルーシュ「フ、“魔女”め」
表情が崩れる。ルルーシュは笑った。
体勢をうつ伏せに変え、ルルーシュを見つめるC.C.。
「…“ブリタニアの魔女”。完成したようだな」
- 118 :1:2009/10/14(水) 00:35:29 ID:E0qG/B/g.net
-
ルルーシュの「両目」に赤い光りが宿る。
ルルーシュ「俺がそのことに気付いたのは、ルフィ達にかけたギアスが
解けた、という事実を知った時だ」
ウソップの「火薬星」をまともに喰らい気絶した。
意識の断絶による“ギアス”の解除。それは1つの事実を物語る。
C.C.「ギアスの最終形態“ブリタニアの魔女”
おまえならさしずめ“魔王”といったところだな」
最終形態“魔王”命令のキャンセル可能、それは“ギアス”の唯一の弱点と
いえる回数制限の消滅を意味していた。
仮面を拭き、右目が開く仕掛けをチェックするルルーシュ。
C.C.「結局、この一味には“魔王”は使わなかったようだな」
ルルーシュ「いや、使う機会を失っただけさ…」
そう言って嬉しそうに笑うルルーシュ。
C.C.「…違うよルルーシュ。お前はきっと使わなかったさ。
だって、お前は今、“笑って”いるもの…」
- 119 :1:2009/10/14(水) 00:37:51 ID:E0qG/B/g.net
-
C.C.は思い出していた。遠い昔、“ブリタニアの魔女”を完成させた女の顔を。
その顔には孤独と絶望が刻まれていた。“ブリタニアの魔女”その完成条件は
深い孤独と絶望。全ての望みを叶える力の代償は、全ての希望を捨てること
だった。女は生涯、“笑う”ことはなかった。
C.C.「(…ルルーシュ、私は言ったはずだ。
“王の力はお前を孤独にする”と。でもお前は今…)」
ルルーシュ「本当に驚いたよ!ルフィは“ゴム人間”だったんだ!
フハハハ、面白いだろ!アイツの麦わら帽子は
あの“赤髪”のシャンクスの…」
C.C.「(…この契約違反め)」
聞こえないように、そう呟き、C.C.はルルーシュの話に耳を傾けた。
- 120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 16:47:43 ID:cCsCmK5Q.net
- ho
- 121 :1:2009/10/19(月) 00:16:55 ID:9IhbhL2H.net
-
カレン・シュタットフェルト“黒の騎士団”零番隊・隊長が「斑鳩」に
帰還したのは“ゼロ襲撃”から約半日後のことだった。
ボートは「輻射波動」の力を動力としていたために、その体は疲労困憊、
体力は限界に近かった。
しかし、カレンは休むつもりはなかった。すぐさま、零番隊の精鋭達から
「討伐隊」を編成しなければならない。
“どこに逃げようとも捕まえる”そう宣言したものの自信の程はまったく
なかった。相手はあの“ゼロ”なのだから。急ぎ足で甲板に上がるカレン。
直後、その足を止める。気付いたのだ。甲板に残った血のあとに…。
死臭に…。一体何があったの、そう考えるカレンに団員が近づいてきた。
一般団員「シュタットフェルト隊長、お待ちしておりました。
扇団長がお呼びです。こちらにどうぞ」
その言葉に従い、団員の後を追うカレン。行き着いた先は第四倉庫。
その光景を目のあたりにした瞬間、カレンは崩れ落ちた。
カレン「卜部さん…何で――!?」
カレンが目にしたのは、真っ白な棺、その上に置かれた卜部の写真。
そして、一人拝む団長・扇要の姿だった。
- 122 :1:2009/10/19(月) 00:20:31 ID:9IhbhL2H.net
-
甲板の血糊、死臭、全てがパズルのピースをはめるように繋がった。
ブラック・リベリオンの敗戦からゼロと合流するまでの半年間。
“黒の騎士団”の崩壊を防ぎ、仲間たちを守ったの卜部だった。
絶望的な状況で、食料すら満足に入手できず、已む無く目玉焼きを
半分こすることになったことがあった。
とんかつソースを好むカレンに対して、卜部は…メープルシロップだった。
日ノ本人とは思えない味覚を持つあのメープル男は、戦場では
誰よりも勇敢で、誰よりも仲間思いで、誰よりも…日ノ本を愛していた。
カレン「そんな…。そんなッ!!」
止まらない。涙が…止まらなかった――
扇「卜部は“ギアス”によって操られ、俺たちを襲ってきた。
ゼロ、いや、ルルーシュ!
アイツは、アイツはどこまで“俺たち”をバカにすれば
気が済むんだーーーーーーーーッ!!(バン!バン!)」
怒りで顔を歪ませながら、卜部の棺を乱打する扇。
カレン「扇さん…ルルーシュは今“麦わらの一味”と一緒にいるわ!」
扇「“麦わらの一味”と一緒に!?カレン!これこそ、ルルーシュが
“ギアス”という力を使い、人を操る証明だ!
くそーー!今度は“麦わらの一味”を駒にしているのか!」
カレン「うう…ルルーシュ。許さない…許さない!!」
カレンの瞳が薄暗く曇る。それを見て扇は満足そうに笑みを浮かべる。
扇「カレン、よくぞ知らせてくれた!今日はゆっくり休め。
あとは全て、オレに任せてくれ!」
そう言って、団員の一人に指示を出す。
扇「ブリタニア帝国…シュナイゼル宰相に連絡をとれ」
- 123 :1:2009/10/19(月) 00:26:14 ID:9IhbhL2H.net
-
ブリタニア宮殿内に建設された「アリアスの宮」において一人の男が優雅に
午後の紅茶を楽しんでいた。名門貴族出身、その才能を若くして認められた
男は「帝国宰相」としてブリタニアを支えている。
ブリタニア帝国・宰相シュナイゼル(ドーン)
シャルル皇帝が病に倒れてから3年あまり、彼がブリタニアの実権を握ってきた。
皇帝シャルルのエリア政策は彼によって受け継がれ、その支配をブリタニア諸島
全域に広げた。“エリアの半分を落とした男”その異名でレジスタンス達から憎まれ、
恐れられている彼にとって、エリアの拡大などは、実はどうでもいいことだった。
――シュナイゼルには野心がない。
目の前の事象はかれにとって何の価値もないものばかりだった。
彼にあるのはただの「使命感」。与えられた課題を着々とこなすこと。ただそれだけだった。
執務に戻るため、席を立とうとした時に、部下が「電電虫」を持ってやってきた。
電話の相手は扇要。“黒の騎士団”の現団長であり、“ゼロ追放劇”の立役者だった。
数分間の通話を終えて、「でんでん虫」を切る。その顔に微笑を浮かべながら。
唯一の懸念材料となっていた“ゼロの逃亡”その対策が完成したのだ。
シュナイゼル「ゼロ、いや、ルルーシュ王子。
君には驚かされてばかりだよ。
だが、もはや不安はない。――全てのカードは我が手の中に」
- 124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/20(火) 13:05:51 ID:Mvfo2KQb.net
- カレンがシュタットフェルト姓で呼ばれてるのは何かの複線とかですか?
- 125 :1:2009/10/20(火) 21:49:44 ID:1214/cE2.net
- >124さん
1つの理由としては、初登場のインパクトを出すためです。
そのために、最後の台詞で名前を出すまで、「赤髪の女」などと表現しました。
二つ目の理由としては
扇「(…はあ?シュタットフェルト?誰よソイツ?外人!?)」
↑のためでした。原作をご覧になられた方ならもしかしたら、
ご存知かもしれませんが、超合衆国建国宣言の時にラクシャータに
カレンのことを尋ねられた扇は、ヴィレッタを心配するあまり、
カレンのことを忘れていました。これは、声優の台本に書かれていたという情報です。
この妄想SSでは、扇の原作の行動を準拠しながらも、ワンピースに出てくる
悪人キャラ風に仕上げています。原作とは違うように、
扇にはまったく「優しくない」世界で終わります。
カレンの話に戻りますが、「シュタットフェルト隊長」以外には「カレンの姉御」や
「兄貴!」などの呼称があります。それは、後半で確認できると思います。
前半はもうすぐ終わります。今後とも、ゆるりとご覧ください!
- 126 :1:2009/10/21(水) 00:59:33 ID:jqrsAKYI.net
- ちなみに複線は109の部分になります。
卜部の死は決して無駄にはなりません。
- 127 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 02:43:50 ID:lJ6YYcnA.net
- >124です。
レスありがとうございました。納得しました。
「兄貴!」ですか。
まだ17、8の小娘なのに^^;
- 128 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 22:40:15 ID:lJ6YYcnA.net
- そういえばナミさんも兄貴と呼ばれてキレてましたね^^ワンピネタだとはわかってたんですが、やっとちゃんと思い出しました。
- 129 :1:2009/10/22(木) 00:19:56 ID:wS3fH3cy.net
-
そんなノリです。間違っても「オッス!兄貴」の方ではございませんw
黒の騎士団の大半は、テロリスト、難民、ゴロツキ、復讐者の若者で構成されています。
彼らにとっては実力こそ、全て!年齢、性別は関係ありません。
また、今回のカレンは一期の性格+男勝りに義理人情で構成されています。
その実力と人柄から、特に零番隊の隊員には「姉御」「兄貴」と呼ばれることが多いです。
なにより、私の力のなさのせいでうまく表現できなかったのですが、
大海賊船隊”黒の騎士団”=白ひげ海賊団をモデルにしています。
隊長=13人の隊長。”騎士団のエース”であるカレン=”火拳”のエースの立ち位置にしたつもりでした。
よって、ゼロ襲撃=黒髭襲撃 を連想してもらおうと、ルフィに「エースの船」という
台詞を言わせました。話は長くなりましたが、カレンにはエースに近い風格を歴戦によって
備えているという設定にした・・・はず(汗)技も結構似てますしね。
また何かありましたら、宜しくどうぞ!
- 130 :1:2009/10/24(土) 00:48:26 ID:jeftZ09b.net
- / / // / / /ヽ ヽヽ
// / // ./ / / / l l ヽ
/i| イ // イ ! ./ / .// | | l
l.l | .| l | .| l| | !.| / ./ // / / / l
!.! .! l |∧.」 |l H | / /」 ,∠! / / / / │ |
l | ヽ\!' _Nヽ、∨ !/ /-///// ,イ │ │
l | .!ヽ|/´,rこ心、 ∨´ ァ=='-、'// | !
. |! │ .l` .ヽ、_゙ン ´ {゙ーイ、) >/ │ |
| |. ! !  ̄´ / ='" ,/ | !
/│ l .! 〈 /! | | |
/ ∧ ヽ. l\ ,_ /│ .| .! |
. / / ' ヽ '、_l>、 と"`ヽ、 /./| | ! |
/ / ∧ ヽヽ ̄\  ̄_ヾ<´/ / ./! | | |
/// / _/\ ヽヽ: ̄::`:< _ ` ミ、// .| |__|__| __
. // / ̄  ̄\ ヽヽ_:::::::::::::: `丶、`ミ三二三";元ラ'ニニヽ-<`ヽ
// / \ ヽヽ: ̄::`丶、:::::`:77:::入:_`ー∩ヽ'.;:゚:;;}; : :}~:`;
//./ \ヽヽ::::::::::::::  ̄::77:::7| T''|| |ヽニ∠_; ベ: ;
| | l ヽヽヽー- 、_ :: //イ | :|./ /|゙T''くニ二 ; :
| | l \ヽ\  ̄|::::|. | { {|| >→
人物紹介そのC
名前 ? 別名“魔女”C.C.
能力 不老不死
所属“革命軍”幹部、“黒の騎士団”戦略顧問
懸賞金 1億6千万ベリー
世界政府に仇なす“革命軍”の幹部。“ブラック・リベリオン”以外にも
多くのテロ事件に関与。“オハラ”とのつながりがあったことも確認されている。
彼女の懸賞首としての歴史は100年以上前に遡る。
そのために、“不老不死”や“魔女”であるという噂は絶えず、
その存在自体を疑問視されている。
彼女が同一人物であるのか、「C.C.」という名前を継承した別人であるかは
誰も知らないが、その懸賞金は世界政府の指令により、更新され続けている。
この海で最も古い賞金首。
- 131 :1:2009/10/24(土) 00:54:39 ID:jeftZ09b.net
- /l }::Y |l M j:::::::::::::::::|
| :| \::| |:l |:::| /.::::::::::::::::|
/| :| -- 、 |::lノ|U|:::レ .::::::::::::::::: |
-‐\、|:::|l / \::.ヽjノ:::::::: ヘ :::::::::::l/
――--- 、∠、 |\ヾヘ \/ \:::::::/ ,:::::::/´
\\\ | |\\∨ ヽ `´ / |::::ムイ
ヾヽ ヽ | |:::::{> | _,,≧ュ、_ ヽ、 ', 〃 _ ∨∠__
|| | l | l::..\::{ 「 ̄モッミメ、_ト j〉 仏斗≦ ∧ ll  ̄`丶
、 _ 」| | | い::::::::lヾ `ー=彡ベY /く ヾ' // /| || }}ヽ
ヽニニ -― 丿| ヽヽ:::::| |  ̄ l  ̄ / /.::| ゞミ、_ 〃 |
__ -― ´ | \\l \ l '/..:::.`ー- 、 ̄ヾ==彳 |
_ | ヽヽ:::.ヽ ′ // .:::::::::::::::::::::::..\ /
-‐_ ニ -― , | ll l::∧ 、 -‐====ァ // .::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ /
‐ _,,./___ノ jj |::::∧ 丶----<//..:::::::::::::::::::::::::::::::::::: └ く
/イ{ 〃 /_/∧  ̄ ̄/ 「  ̄ ̄\ :::::::::::::::::::::::::::( r'
/ .:::|::..\ 〃 /__/{{ ∧__,//..::::::::::::::::..\ ::::.ヽヽ
.::::::|::::::::..\ //_\} }} == /..::::::::::/ ̄ ̄ \ \
人物紹介そのD
名前 卜部巧雪 別名“四聖剣”卜部
所属 “黒の騎士団”五番隊・隊長
懸賞金 5千万ベリー
剣豪“四聖剣”の1人で“四聖剣”で最も地味な男。
しかし、その実力は確かなものであり、
“ブラック・リベリオン”敗戦時には撤退の指揮をとり、
騎士団の全滅を防ぐなど指揮官として高い才能も有している。
目玉焼きにメープルシロップをかけるという噂あり。
- 132 :1:2009/10/24(土) 01:08:33 ID:jeftZ09b.net
-
BGM
http://www.youtube.com/watch?v=QF3xL2PWJ6E&feature=related
エリア11――旧日ノ本――東京ゲットー付近のある海岸。
普段、人影がないその砂浜は、今日に限ってはうるさいほど騒がしい。
そこでは、イーストブルーを越えてやってきた
“麦わらの一味”の宴が今、まさに開催されていた。
ひたすら料理食いまくるのは、“一億の賞金首”船長“麦わら”のルフィ。
その料理を作り続けるのは“二億の賞金首”大海賊船隊“黒の騎士団”元団長
“魔王”ゼロこと、ルルーシュ・ランペルージだった。
そして、ルフィに負けじと「ピザ」のみを食べ続けるのは“革命軍”幹部のC.C.
その周りには“麦わら”の仲間たちが楽しそうに酒を飲んでいる。
この事態を海軍本部が知ったならば「大将」の派遣を検討したであろう。
しかし、今、行われているのは、世界を転覆させる“密談”でも、“同盟”でもない。
ただの“宴”であった。
ウソップ「ルルーシュ!お前も飲め!!」
チョッパー「飲め!飲めーー!!」
酔ったウソップがルルーシュの口に酒瓶を押し込もうとする。
ルルーシュ「お前ら!未成年の飲酒は禁止で――ウぐッ!」
サンジ「逃がすか!そっちを抑えろ」
ゾロ「おう!」
屈強な二人の男に抑えられては、貧弱ガリ男に逃れる術はない。
結局は丸々一本飲み干してしまった。
- 133 :1:2009/10/24(土) 01:11:08 ID:jeftZ09b.net
-
C.C.「良かったなルルーシュ。お礼に見せてやれ。“黒の騎士団”の宴会名物。
“ゼロの裸マント”を」
ナミ「いーぞー!脱げ!脱げ!」
冷やかすC.C.。それに追随するナミは黄色い声を上げる。
ロビン「手伝おうかしら?」
そう言って、ルルーシュの肩に腕を生やす。その目は少しだけ本気だった。
ルルーシュ「ちょ、待て!やめろ!やめろ!お前達ッ!!」
必死で抵抗するルルーシュの姿を見て、一同は笑った。
- 134 :1:2009/10/24(土) 01:12:10 ID:jeftZ09b.net
- 近所の酒屋を無理やり、たたき起こして買った酒も底をついた。
あまりの大量購入に気を良くした店主はウソップに店で売っていた
「花火」をくれた。
花火は日ノ本の名産品であり、大概どの店でも売っている品だ。
ウソップが花火に点火すると花火は勢いよく空に飛び立ち、
様々な光りに姿を変える。
その光りは、この2週間ほどの短い旅の終わりを一同に告げた。
- 135 :1:2009/10/24(土) 01:16:26 ID:jeftZ09b.net
-
ゼロとしての正装を整えたルルーシュはルフィに近づく。
どことなく緊張しているように見える。
ルルーシュ「ルフィ…ここでお別れだ。
だが、もし…お前が“海賊王”になって再びここに寄ることがあったら、
また…またみんなで花火を上げよう」
それは“契約”ではない、ルルーシュの“願い”。
ルフィ「“もし”じゃねー!“絶対に”だ!約束だぞ!!」
ルフィの答え…それは“約束”だった。
ナミ「何かわいいこと言ってんのよ!この萌え仮面は」
そう言って笑うナミ。その目にはもうなにもつけていない。
そのつっこみに俯くルルーシュ。
仮面で隠されたその顔が真っ赤になっているのは誰もが知っていた。
ルルーシュは言葉を続ける。とても…穏やかな声だった。
ルルーシュ「ルフィ、みんな…俺は1つだけ“嘘”をついていた。
俺の本当の名は…ルルーシュ・ヴ」
ロビンが微笑む。その横で、ぎゃ、と声を上げたのはC.C.だった。
風に飛ばされてきた新聞がその顔に直撃したのだ。
- 136 :1:2009/10/24(土) 01:20:10 ID:jeftZ09b.net
- ルルーシュ「ハハハ、何をやっているんだ」
そう言って、笑ったルルーシュが目にしたのは、慌てて走り寄ってきた
C.C.の青白い顔だった。
C.C.「ルルーシュ!これを!!」
C.C.から渡された新聞を見て、ルルーシュは息を呑んだ。
ルフィ「なんだルルーシュ。“ヴ”がどうした?」
のんきな声で尋ねるルフィ。ルルーシュはゆっくりと振り返る。
ルルーシュ「…言葉の続きか?聞かせてやろう!こういうつもりだったのさ」
投げ捨てた新聞が空を舞う。マントを広げ、ルルーシュは叫ぶ。
ルルーシュ「ヴァカめ!お前らは騙されたんだ!!」
ウソップ「へ?」
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。全力で…メリー号をよこせ!!
右目の仕掛けが開く。一同を赤い光りが包み込む。
一同「…イエス、マイロード!」
ルルーシュ「フフフ、フハハハハハ」
ルルーシュの、“魔王”ゼロの笑いが夜の空に響き渡る。
空を舞っていた新聞が砂浜にゆっくり落ちてきた。
その第一面には…“黒の騎士団”とブリタニア帝国との同盟締結。
そして…ゼロの“妹”の公開処刑――
前半終了(ドーン)
BGM
http://www.youtube.com/watch?v=Jlzdv5z5Xjc&feature=related
- 137 :1:2009/10/24(土) 01:23:59 ID:jeftZ09b.net
-
BGM「ウィーアー」は脳内補完でお願いします。
メリー号を奪ったルルーシュの目的とは?
一方、ルフィ達はゼロの部下「オレンジ」と出会う。
動き出す海軍中将!
“黒の騎士団”を掌握した扇。
帝国宰相シュナイゼルの罠とは!?
ブリタニア海に嵐が吹き荒れる!!
次回 ルルーシュと麦わら海賊団
「オレンジ畑と土の味」(後編@)
来週も…またみてギアス!!
- 138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 06:39:06 ID:OqiUx4/g.net
- ほ
- 139 :1:2009/11/02(月) 23:44:03 ID:o6y6kuD6.net
- てすと
- 140 :1:2009/11/02(月) 23:51:02 ID:o6y6kuD6.net
-
すいません。規制に巻き込まれてしまい、先週は投稿することができませんでした。
保守してくださった>>138さん、ありがとうございました。
保守!支援!という言葉は、厨二病のリーマンの作者にとって本当に・・・本当に励みになる言葉です。
やる気を消失していた時期にその言葉を頂き、復活し、何とか前半を終了させることができました。
ここまで書いたからには、ラストまで書き上げたいと思います。
それでは、後半を始めさせていただきます↓
- 141 :1:2009/11/02(月) 23:53:36 ID:o6y6kuD6.net
-
イースト・ブルーから鳴り物入りでやってきた“麦わらの一味”のクルー達。
彼らは海辺で暗い海をただ呆然と眺めていた。
そこには彼らの船「メリー号」があるはずだった。
ルフィ「メリー号はねえーーーーーーー!?」
ゾロ「やられた!!」
ナミ「ルルーシュ!いや…ゼローーーーーーーーーーー!!」
サンジ「やっぱり、あの野郎を信頼すべきじゃなかったんだッ!!」
チョッパー「ルルーシュ…。」
ロビン「…。」
ゼロの能力“ギアス”。
絶対遵守の支配から彼らが解放されたのは、事件から約3時間後のことだった。
あの男は一体いくつの“嘘”をついていたのか?
“ギアス”は一度しか効かないのではなかったのか?
様々に疑惑が渦を巻く。
しかし、真実は何であれ“メリー号を奪われた”という事実は何も変わらない。
ナミは一歩前に出て、海に向かって叫ぶ。
ナミ「メリー号を返せ!このドロボー!!」
チョッパー「そうだ!ドロボー!」
サンジ「嘘つき野郎!変態仮面!」
ゾロ「体力ゼロのガリガリ男!」
ナミに続き、次々にルルーシュの罵倒を叫ぶクルー達。
C.C.「そーだ!この傲慢シスコン男!!」
その声に一同は振り返る。
- 142 :1:2009/11/02(月) 23:57:34 ID:o6y6kuD6.net
-
そこには“革命軍”幹部にしてゼロの相方であるC.C.がいた。
腰を下ろし、片手にピザを持ちながら。
ナミ「C.C.!?なんでアンタがここに!?」
悲鳴に近い声を上げ、驚くナミ。
C.C.「相変わらず騒々しい女だな…。ピザならやらんぞ」
煩わしそうに返答し、ピザを一口かじる。
ナミ「いらないわよ!・・・アンタ、ルルーシュと一緒に逃げたんじゃなかったの?
一緒になってメリー号を盗んで!」
一瞬だけ沈黙するC.C.。そしてすぐに笑って答える。
C.C.「…アイツは“自分の戦い”に出かけたよ。私は不要らしい…。
それに盗みとは人聞きが悪い。我々はメリー号を盗んでなどいない。
ただ、借りただけだ。」
ナミ「…借りた?」
C.C.「少しの間,レンタルさせてもらった。
船は1日か2日で帰ってくる…はずだ。
私はお前達にそれを伝えるためにここに残った」
ナミ「レンタルってアンタ…」
言葉を詰まらせるナミの横でチョッパーが声を上げる。
チョッパー「あれ?誰かいないぞ!?」
C.C.「ああ、言い忘れた。借りて行ったぞ1人。返却作業に必要らしい」
- 143 :1:2009/11/02(月) 23:59:48 ID:o6y6kuD6.net
-
闇を切り裂くように一隻の船が帆を進める。
羊の頭を持つその船の速さは本来のものではない。
高速艇の倍以上と思われるその速さの秘密は、船の後ろにあった。
2匹の海王類が船を押しながら、泳いでいる。その目に赤い光りを帯びながら。
ルルーシュ「船の針路はこのまま維持しろ」
ウソップ「イエス!マイロード」
海図を見つめながら、指示を出すルルーシュに赤い目をしたウソップが
“ニヤリ”と笑みを浮かべ、返答した。
海図を手にするルルーシュの視線は、それを越えて過去を見つめる。
ルルーシュ「アイツに会うのはブラック・リベリオン以来か…。
アイツに…枢木スザクに」
- 144 :1:2009/11/03(火) 00:01:53 ID:o6y6kuD6.net
-
海軍のブリタニア支部が、ブリタニアと日ノ本の境に配置されたのは
“ブラック・リベリオン”の後だった。大国・ブリタニア帝国の
全面支援を受けて建設されたその砦は、マリンフォードの海軍本部を
モデルとし、鉄壁の様相を誇っていた。
ここには、先の戦争で捕縛された“黒の騎士団”の団員や海賊、
テロリストを投獄する留置場。そして、その首を落とす処刑場も
備わっており、ブリタニアを縄張りとする悪党どもにとっては
まさに恐怖の象徴だった。
この支部の特徴はこれだけではない。海兵のほとんどがブリタニア人で占められている。
ブリタニア帝国の「エリア政策」は海軍にも影響を与えていた。そのため、海軍と
ブリタニア軍は人脈・資金面において他国に類を見ないほど蜜月な協力体制が構築
され、“ブラック・リベリオン”後は、より強固なものになった。
そんな中で、異彩を放つのが、若き最高権力者。このブリタニア支部
において“非ブリタニア人”である「海軍中将」の存在だった。
“ブラック・リベリオン”時は「少佐」だった彼は、ゼロを討った功績
とシュナイゼル宰相の強力なあと押しにより、「中将」に成り上がった。
“名誉ブリタニア人”として唯一の「騎士」の称号を持って。
- 145 :1:2009/11/03(火) 00:03:12 ID:wGtzZfib.net
-
ブリタニア支部の食堂において一般海兵がある張り紙を見ていた。
その張り紙には“砂糖は1杯につき1つ”と書かれている。
「中将」の直筆だった。ブリタニア人の彼はそれを鼻で笑った。
食料の備蓄のためとはいえ、こんなことに何の意味があるのか?
いちいち、マイルールを作って押し付ける「中将」を彼は嫌っていた。
いや、彼を含むブリタニア出身者で中将に好意を持つものなどいない。
それが、ブリタニア人の“非ブリタニア人”に対する当たり前の意識
である。彼は、家でそうするように、砂糖2個をコーヒーに入れた。
…しかし、直後、彼は後悔した。砂糖を2個入れたこと、ルールを破ったことに。
何者かに腕を捕まれたと思った瞬間、彼の脳裏をよぎったのは、猛獣が自分の
腕を噛み砕いた映像だった。“ゴキッ”と鈍い音が室内に響く。
- 146 :1:2009/11/03(火) 00:05:48 ID:o6y6kuD6.net
-
スザク「お前の“正義”はかなえてはいけない!(ドーン)」
枢木中将。海軍で唯一の「騎士」の称号を持つ
“白騎士”スザクは海兵の腕を掴み、そう告げた。
腕を掴まれた海兵が泡を吹いているのを見た他の海兵達が慌てて止めに入る。
枢木スザクが“少し強く掴んだ”という事実は一般海兵にとっては
“ゴリラに万力で締められた”に等しかった。二人の海兵が肩を貸し
医務室に向かって歩き出す。事態を、きょとん、とした目で見るスザク。
「…成り上がりのイレブンめ」
青く腫れあがった腕を押さえながら医務室に連れて行かれる海兵が
去り際にそう毒づいた。
- 147 :1:2009/11/03(火) 00:07:30 ID:wGtzZfib.net
-
――森を抜けるとそこにはオレンジ畑があった。
文豪小説に書かれそうな風景がそこにあった。海岸を歩き、森を抜けた頃には
夜が明けて、太陽が一同と、しっかりと実ったオレンジを照らしている。
C.C.「“オレンジ”はここで農夫として潜伏している」
コードネーム「オレンジ」。ゼロの個人的な部下という男は文字通り、
オレンジ農園の主としてエリア11に潜伏していた。
この場所からは海がよく見える。海から侵入してくる敵の動きを把握しやすい。
森も天然の要塞として機能してくれるだろう。逆に、陸からの敵に対しては
海への逃亡が容易である。なるほど、「隠れ家」としてはまさにうってつけの場所だ。
あの憎たらしい仮面男がメリー号とウソップをさらったせいで、一同は当初の予定通り
の行動を余儀なくされた。つまり、海軍の警戒が収まるまでではなく、メリー号と
ウソップが帰ってくるまで「隠れ家」に待機することになったのだ。
- 148 :1:2009/11/03(火) 00:13:04 ID:wGtzZfib.net
-
ルフィ「すげーーー!オレンジばっかりだな!!」
サンジ「見事なもんだ」
一面のオレンジ畑に一同は感嘆の声を上げた。
その中で一際喜びの表情を見せたのはナミだった。
たわわに実ったオレンジを1つ取り、香りを楽しむ。その香りは、自分の故郷の、
ココヤシ村の、実家のみかん畑を連想させる。オレンジとみかん。品種、学術的な
違いはあれど、ほとんど同じものと考えていい。皮をむき、1片を口に放り込むと、
ほんのりと上品な甘さが広がってきた。大事に育てられているのがよくわかる。
農家は潜伏のための偽装とはいえ、なかなかどうして、本格的だ。
ナミ「…でも、ベルメールさんの“みかん”には敵わないけどね」
そう呟くナミ。しかし、その呟くを聞き逃さない者がいた。
“みかん”だと!? オレンジ畑で“みかん”だと〜〜〜〜!?
声の方向を見たナミは固まった。そこには諜報員「オレンジ」が立ったいたのだ。
ナミ「…。」
違う…明らかに違う。男はオーバーオールを着ている。服装こそはオレンジ畑で働く
農家そのものだった。だか、その顔は…。その顔の半分は機械で覆われていた。
“黄金の仮面”と形容したらいいのか。黄金の装飾、そしてメカの片目が開閉し、
“ウィン、ウィン”唸っている。ナミは固まったままだ。
“スゴイのがきたーーー”とそんな目をしながら。
- 149 :1:2009/11/03(火) 00:20:05 ID:wGtzZfib.net
-
ジェレミア「女!“みかん”といったな!何者だ!?さては同業他社のスパイか?」
“何者!?”と叫びたいのはこっちの方だとつっこみたい衝動をおさえ、
ナミは後ずさりする。忍んでない!
この「オレンジ」という諜報員は明らかに忍んでいなかった。
ナミ「ち・違うんです!私は…」
手を振り、否定のジェスチャーをするナミ。その拍子にポケットから小さな宝石が落ちる。
ブリタニアの秘宝「龍の左目」だ。
慌てて拾うナミ。メリー号がない現在、“麦わらの一味”の全財産はこの「龍の左目」
――3億ベリーだけだった。“危ない、危ない”と冷や汗を拭うナミ。
だが、ジェレミアはそれを冷たい目で…。機械の瞳で見ていた。
ジェレミア「…貴様。それをどこで手に入れた?」
ナミ「へ?」
ジェレミア「ブリタニアの秘宝“龍の左目”
それは殿下が持っておられたはず。
ナナリー様の処刑は明日に迫っている。
殿下は今だ行方知れず。…なぜ、貴様がそれを持っている?
どこで手に入れた!?殿下はどこにおられるのだ!!」
ナミに向かって右手を向けるジェレミア。その肘の辺りから剣が飛び出し、
ナミの首筋で止まる。“ヒッ”ち短い声を上げ、固まるナミ。あまりの事態に
卒倒しそうなのを必死で堪える。
サンジ「ナミさん!!」
ジェレミアに向かって走り出すサンジ。ジェレミアはそれに見向きもせず、
その剣を後方になぎ払う。“ガッチィ!”いう衝撃音と共に火バチが起きる。
- 150 :1:2009/11/03(火) 00:22:18 ID:wGtzZfib.net
-
ジェレミア「卑怯な!後ろをバックに!」」
ゾロ「へッ!」
ジェレミアが凶器を出した瞬間に、ゾロがその背後を取っていたのだ。
サンジ「マリモ!」
ゾロ「手を出すんじゃねーぞ!クソコック!!」
同じ剣士としての血が騒ぐ。ゾロは1対1を望んだ。
ジェレミア「小癪なり!」
それに応じるジェレミア。台詞とは裏腹にその顔には笑っている。
ゾロ「グッ!?」
戦いが始まり、数度、剣を交えたゾロは驚きの声を上げた。
片手のジェレミアに対して、両刀で受けるゾロ。しかし、その重さといったらどうだ。
思わず片膝をつきそうになる。パワーではジェレミアが圧倒的に上だった。
- 151 :1:2009/11/03(火) 00:24:24 ID:wGtzZfib.net
-
しかし、ゾロは歴戦の勇士。即座に思考を切り替える。“剛の剣”から“柔の剣”に。
力で対抗することを止め、ジェレミアの剣を受け流しながら、懐に飛び込む。
交差する両雄。その刹那、ゾロは自分しか持ち得ない技を使った。すなわち、
口で咥えた3本目の刀でジェレミアの胴を切ったのだ。
ゾロ「クッ硬てえ!!」
ゾロは呻いた。ジェレミアの体はまるで鋼鉄のようだった。
アラバスタのあの殺し屋ダズを彷彿させる。
ジェレミア「フッ」
ゾロの感想をそのまま表現したように、ジェレミアは笑った。
まるでダメージを受けていない。ならば、手は1つだけだ。
三刀を納刀し、居合の構えをとる。ただならぬ殺気に身構えるジェレミア。
ゾロ「獅子歌歌ッ!!」
稲妻がジェレミアの横をすり抜けていく。ゾロの一刀流の奥義。
鉄すら両断するこの斬撃で、あの鉄のような殺し屋を倒したのだ。
これならば、と振り返るゾロ。
ジェレミア「…なるほど、よき剣士かな!しかーーーーーーし!!」
オーバーオールの切られた場所から機械の体が露出している。
ゾロ「鉄より硬てえのかよ!!」
迫りくるジェレミア。即座に迎撃体勢を整えるゾロ。
その間に、白い影が舞い降りた。
- 152 :1:2009/11/03(火) 00:26:54 ID:wGtzZfib.net
-
C.C.「…そこまでだ」
両者の間に飛び込んだのはC.C.だった。交差させた両手には
いつの間にか銃が握られ、二人に向けられていた。
ジェレミア「C.C.!こやつらは何者だ!?殿下はどこにおられるのか!!」
金きり声を上げるジェレミアにC.C.はいつもの口調で答える。
C.C.「その殿下からの伝言だ。命の恩人である“麦わらの一味”を
丁重に保護せよ、とな」
「命の恩人」という言葉を聞き、うろたえるジェレミア。
その後ろで声を上げたのはナミだった。
ナミ「ちょっと!話が見えないんですけど!
さっきから“殿下、殿下”って一体何のこと?」
ロビン「…ルルーシュのことよ」
ナミの質問に答えたのはロビンだった。
ロビン「彼の本名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。…ブリタニアの皇子よ」
一同の叫び声が、オレンジ畑にこだました。
- 153 :1:2009/11/07(土) 02:22:33 ID:hs+vWQFi.net
-
ジェレミア「私は!私はマリアンヌ様をお守りすることができなかったのです…」
ジェレミアは涙を流し、こぶしを振るいながら、己の過去を熱く語った。
一同はそれに深く同情…したのは一回目の時だった。どんな悲しい話でも、
それが3回連続となると流石に飽きる。ゾロはあくびをし、
ルフィに至ってはジェレミアのリアクションに笑い出す始末だ。
ナミ「そのショックで落ちぶれたジェレミアさんは“饗団”とかいう
怪しいカルト団体に捕まって、改造手術を受けたんですよね?」
ジェレミアの長話が始まる前にナミが機先を制す。
なにはともあれ、ジェレミアの話によって、ルルーシュの過去が明らかになった。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。ブリタニアの皇子として輝かしい未来を約束された
彼の人生は、母・マリアンヌの暗殺によって激変した。母親の死の真相を迫る
ルルーシュに父・シャルル皇帝が出した答えは、敵国日ノ本への人質だった。
…酷い話だった。敵国である日ノ本での生活は凄惨なものに違いない。
目の前にある全てが敵に見えたのだろう。あの性格はその頃培われたのかもしれない。
自分と、ただ1人の妹・ナナリーを守るために…。
その日ノ本と戦争状態に突入した時に、二人は忽然と姿を消した。
その後、ブリタニア帝国内で、皇位継承を賭けた殺し合いが起こった。
暗殺・毒殺・病死。
結果、皮肉なことに皇位継承権を失ったはずのルルーシュとナナリーが、
ブリタニアの唯一の皇位継承者となったのだった。
- 154 :1:2009/11/07(土) 02:24:23 ID:hs+vWQFi.net
-
サンジ「…素顔が見せられねーわけだ」
サンジは煙草を咥える。あの変態仮面にはそんな理由があったのだ。
反ブリタニアを掲げるレジスタンスのリーダーがブリタニアの皇子だと
知られたなら組織の崩壊は必定だ。
ゾロ「復讐か…」
ゾロは呟いた。もし、自分がルルーシュの立場に置かれたのなら、
きっとそうしていただろう。母親の敵討ち。
そして自分達を捨てた父親に対して…。
ルルーシュはそれを国家の存亡を巻き込みながら行ってきたのだ。
ナミ「日ノ本を本拠地に選んだのは、早期降伏により、他のエリア
よりも戦力が温存されたため。それと、ルルーシュのホーム
グランドだから…ということでいいかしら?C.C
アイツがメリー号を奪ったのは妹のナナリーを助けに――」
新聞をたたみ、推理の解答を聞こうと顔を上げるナミ。
- 155 :1:2009/11/07(土) 02:26:57 ID:hs+vWQFi.net
-
しかし、そこには解答者となるC.C.の姿はなかった。
ジェレミア「ナナリー様…おお!ナナリー様!」
“ナナリー”という言葉に反応して、ジェレミアが泣き出した。
“しまった!変なスイッチを押した”という顔になるナミ。
アーニャ「…お茶」
そこに台所からお茶のおかわりをピンク色の髪の少女が持ってきた。
お茶はもちろん「オレンジ茶」だ。
ナミ「か…かわいいお子様ですね」
話題を変えようと、ナミはアーニャの頭を撫でる。
その言葉にジェレミアは首をかしげた。
ジェレミア「ん?妻だが…」
ゾロがお茶を吹く出す。それが目に入り、ナミは“ぎゃー”と悲鳴を上げた。
- 156 :1:2009/11/08(日) 00:26:46 ID:qDcTI/7O.net
- BGM
www.youtube.com/watch?v=FPXbpLUCL8Y&feature=related
C.C.は浜辺を歩いていた。そこでは、数時間前に“麦わらの一味”の宴が
開かれていた。目を閉じるC.C.。瞼の裏に満月が浮かび上がり、その光りは
ルフィ達を照らし、数人と一匹の影を作り出す。その横で二つの影が揺らめく。
C.C.「しかし、それではお前が――!」
ルルーシュ「…ナナリーを救うにはこれ以外に方法はない」
ルルーシュとC.C.のいつもの光景。しかし、声を荒げるのはC.C.の方であり、
対するルルーシュの声はどこか穏やかだった。
C.C.「新聞には“ゼロの妹”としか書かれていない。
シュナイゼルがナナリー皇女を殺すとは思えない。
これはお前を誘い出すための罠だ!」
ルルーシュ「ナナリーが囚われているのは事実だ。罠だとわかっていても、
可能性がある以上、行かないわけにはいかない!」
- 157 :1:2009/11/08(日) 00:33:13 ID:qDcTI/7O.net
-
C.C.「…麦わら達なら、きっとお前の力になってくれる」
ルフィ達を見るC.C.
一同は“ギアス”にかけられた当時のままに固まっている。
ルルーシュ「…知っている。だからこそだ」
ルルーシュは小さく笑い、首をふる。
ルルーシュ「オレにはオレの“戦い”がある。
アイツらにはアイツらの“冒険”が待っている。
ナナリーはオレが救わなければならない!
…それに、これ以上、アイツらの“夢”の邪魔をしたくない」
そう言って、ルフィ達を見るルルーシュの眼差しはとても穏やかだった。
C.C.は俯き、呟く。
C.C.「…ルルーシュ。恨んでいないのか?私のことを…」
とてもか細い声だった。体がかすかに震えている。C.C.は話し続ける。
C.C.「私と出会ったことでお前の運命は大きく変わってしまった…」
ルルーシュ「らしくないな。“魔女”のくせに」
そう笑ったルルーシュは言葉を止めた。
C.C.が見ていたから。悲しそうな瞳で。真剣な眼差しで…。
ルルーシュ「…C.C.“ギアス”があったから、お前がいてくれたから、
オレは歩き出すことができた。そこから先は全てオレの…」
C.C.「…初めてだよ。お前のような男は」
C.C.は笑った。いつものように。二人は見つめあう。いつもの光景。
ルルーシュ「ありがとうC.C.…ありがとう――」
- 158 :1:2009/11/08(日) 00:34:36 ID:qDcTI/7O.net
-
C.C.は静かに目を開ける。そして驚くのだった。自分の頬を伝うものに…涙に。
涙はC.C.の両の瞳から止め処なく溢れてきた。
手のひらに流れ落ちる涙を見てC.C.は小さく笑った。
C.C.「もう忘れてしまったはずなのに…涙なんて。
捨てたはずなのに…こんな感情も…本当の名前なんて」
- 159 :1:2009/11/08(日) 00:36:22 ID:qDcTI/7O.net
-
ルルーシュ「ギアス解除!」
ルルーシュの声と共に赤い光りが辺りを包み込む。
その光りに驚き、鳥達が“ギャア、ギャア”と逃げ出した。
ウソップ「…。」
ウソップの意識はまだぼんやりしていた。その目に最初に入ってきたのは
密林の青色。木々が生い茂り、鳥の鳴き声が聞こえる。次にウソップは
頭上を見上げた。太陽が眩しい…この位置にあるということは
時刻は、だいたい昼ごろだろうか。だんだんと意識が戻ってくる。
ああ、眩しいな…。なんで太陽が光っているのだろう?
オレは、真夜中にみんなと宴を楽しんでいたはずなのに…。
そうか、この光りは“花火”の光なのだ。
あの後、オレ達は別れの挨拶を…アイツと…ルルーシュと…ルルーシュ!
- 160 :1:2009/11/08(日) 00:38:28 ID:qDcTI/7O.net
- ウソップは目の前に立っているルルーシュにパチンコ台を向ける。
記憶は定かではないが、この状況こそが、ルルーシュが“ギアス”を使った
というなによりの証拠だった。
ルルーシュは…ゼロはオレ達を騙したのだ!
再び、戦うことを決意したウソップは直後、驚く。
あのプライドの高い…傲慢で、尊大な嘘つき男が自分に向かって頭をさげている!?
ルルーシュ「すまない…お前達に“嘘”を…“ギアス”をかけた」
うろたえるウソップ。手に持ったパチンコ台の置き場を迷い、手を上下させる。
ルルーシュ「…ウソップ。もう時間がない。今すぐ、あの浜辺に戻れ!
船に乗れば、海王類が運んでくれるように“ギアス”をかけた」
ウソップ「うお!?」
後ろを振り向いて、ウソップは叫んだ。メリー号の後ろから、二匹の海王類が
海面から顔を出して、こちらを見ている。
いまさらながら、“ギアス”の恐ろしさを思い知る。
ルルーシュ「ルフィ達と合流したら、すぐに、このルートから
ウォーターセブンへ向かえ!ある事件をきっかけに
この海は最大レベルの警戒網が敷かれることになる。急げ!」
海図をウソップに渡すと、ルルーシュは密林に向かって歩き出す。
- 161 :1:2009/11/08(日) 00:41:34 ID:qDcTI/7O.net
-
ウソップ「オ・オイ!どこに行くんだよ?ルルーシュ!」
慌てるウソップは、状況が飲み込めず、ルルーシュを呼び止める。
その声に反応し、ルルーシュは歩みを止める。数秒間の沈黙。
振り返ったルルーシュの顔はどこか寂しそうだった。
ルルーシュ「…ウソップ。みんなに伝えてくれ。
“また一緒に花火を上げる”約束…守れそうにないと」
ウソップ「な…何言ってんだよ?」
そう言って、再びルルーシュを引き止めようとしたウソップは息を呑んだ。
ルルーシュが向かった密林の先に、巨大な建造物が見える。
その頭上に揺らめく旗には、こう書かれている――「海軍」
- 162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 18:58:35 ID:6F+oEJiA.net
- ほ
- 163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 22:12:25 ID:MZeasP8I.net
- ギアス好きでワンピ嫌いだから、クロスなんかさせないでくれ。
- 164 :1:2009/11/15(日) 18:10:12 ID:luFEryNm.net
- >162
ありがとうございます。保守して頂くと本当に助かります。
誰も読んでいないかもしれないので、もう止めようかな・・・と思う時に
誰かが読んでることがわかり、またやる気になるというものです。
>163
すいません。本当に申し訳ありませんが、今後このスレはスルーの方向でお願いします。
- 165 :1:2009/11/15(日) 18:12:17 ID:luFEryNm.net
-
枢木スザクはオレにとって最初の友達であり、ただ一人の親友だった。
日ノ本に人質として送られたオレ達を待っていたのは、冷たい視線、差別、そして――
スザク「オレを舐めるな!ブリキ野郎!!」
…コイツの強烈な洗礼だった。枢木ゲンブ首相の息子、枢木スザク。
最悪の出会いだった。だからこそ、オレは生きることを決めた。
ナナリーと二人で。誰も頼らずに…。
出会えば罵り合う日々。
そんな日常を変えたのは、あの雨の日…ナナリーが迷子になった時のことだった。
スザク「助けたいから、助けるんだ!他に理由なんかいるか!!」
泣き出しそうなオレに向かってスザクはそう言い放ち、森に向かって駆け出した。
そして、落とし穴に落ちたナナリーを見つけ、笑い合っていた。
それが、日ノ本で見るナナリーの初めての笑顔。
スザク「ルルーシュ…。お前スゲーよ…うう…」
オレ達の境遇を知り泣き出すスザク。
あの日から、オレとスザクは友達になった。あの遠い夏の日に…。
- 166 :1:2009/11/15(日) 18:14:30 ID:luFEryNm.net
- 枢木スザクはオレにとって最初の友達であり、ただ一人の親友だった。
日ノ本に人質として送られたオレ達を待っていたのは、冷たい視線、差別、そして――
スザク「オレを舐めるな!ブリキ野郎!!」
…コイツの強烈な洗礼だった。枢木ゲンブ首相の息子、枢木スザク。
最悪の出会いだった。だからこそ、オレは生きることを決めた。
ナナリーと二人で。誰も頼らずに…。
出会えば罵り合う日々。
そんな日常を変えたのは、あの雨の日…ナナリーが迷子になった時のことだった。
スザク「助けたいから、助けるんだ!他に理由なんかいるか!!」
泣き出しそうなオレに向かってスザクはそう言い放ち、森に向かって駆け出した。
そして、落とし穴に落ちたナナリーを見つけ、笑い合っていた。
それが、日ノ本で見るナナリーの初めての笑顔。
スザク「ルルーシュ…。お前スゲーよ…うう…」
オレ達の境遇を知り泣き出すスザク。
あの日から、オレとスザクは友達になった。あの遠い夏の日に…。
- 167 :1:2009/11/15(日) 18:16:31 ID:luFEryNm.net
- ブリタニア帝国が日ノ本に宣戦布告したのはそれから一ヶ月後のことだった。
徹底抗戦を唱える枢木ゲンブは、人質であるオレ達…ブリタニアの皇子と皇女
であるオレとナナリーの公開処刑を計画した。
それを知ったスザクは…枢木ゲンブを…実の父親を殺し、オレ達を海に逃がした。
スザク「ゴメンな…こんな事しかしてやれなくて…」
涙でボロボロになったオレ達をスザクは最後まで気遣ってくれた。
オレ達が乗りこんだボートは…スザクが盗んだもの。
あれほど、不正を憎んでいたのに…。本当は泣き出したいはずなのに――
オレは忘れない。お前がしてくれたことを。お前がいてくれたことを。
ルルーシュ「…スザク。僕は…。オレは…ブリタニアをぶっ壊すッ!!」
あの日、オレ達を救ってくれた親友にたてた誓い。
母の仇を討ちたい。ナナリーを守りたい!せめてスザクに祖国を返したい!!
胸が熱かった。奥底から“反逆”の炎が沸き上がる。
その炎から生まれた怪物はオレに向かって叫ぶ!
ブ リ タ ニ ア を 無 に 還 せ!
あの日から…オレは“ゼロ”になった。
- 168 :1:2009/11/15(日) 18:17:58 ID:luFEryNm.net
-
ルルーシュ「お会いできて光栄です。クロヴィス総督」
ブリタニア兵に変装し潜入したオレはクロヴィスに銃を向ける。
“革命軍”で力をつけたオレは、その援助と“ギアス”の力によって勢力を
拡大し、武装集団“黒の騎士団”の団長として、エリアの解放を唱え、
日ノ本を拠点にレジスタンス活動を展開していた。
“黒の騎士団”は絶望の中にいた日ノ本人達から絶大な支持を受け、
その存在は、ブリタニアにとっても無視できないものになっていた。
そんな中で、ブリタニア帝国・宰相シュナイゼルが打ってきた策が
「行政特区・日ノ本」だった。
――行政特区・日ノ本。そのエリアにおいてのみ、ブリタニア人と日ノ本人は
平等の権利を持つことができる…まさに夢のような政策であった。
しかし、夢は所詮、夢に過ぎない。
行政特区・日ノ本には3つの裏の顔があった。
一つは、最終的にブリタニアに経済を依存することになる狡猾な経済構造。
二つ目は、特区に参加する者と反対者の思想的分断。
そして、三つ目は…“黒の騎士団”の自然崩壊。
- 169 :1:2009/11/15(日) 18:19:42 ID:luFEryNm.net
-
ルルーシュ「…実にシュナイゼルらしいやり方だ」
震えるクロヴィスに向かって、オレは特区の真の目的を指摘した。
ルルーシュ「行政特区の中止を宣言してもらうぞ、クロヴィス。
ブリタニア人と日ノ本人の平等を口にする資格はお前にはない!
“新宿事変”を忘れたとは言わせない!
お前は“日ノ本人を虐殺”する命令を…」
クロヴィスの“新宿事変”の蛮行を糾弾する。その時、“それ”は起こった。
クロヴィス「…イエス。マイロード!」
そう言って、走り出すクロヴィス。
唖然とその様子を見つめていたオレは、何が起きたのかを理解できずにいた。
とにかく、あとを追いかけようと走り出すが、広間の鏡の前で立ち止まる。
…その目は赤く光っていた。直後、悲鳴と共に銃声が鳴り響く。
- 170 :1:2009/11/15(日) 18:21:43 ID:luFEryNm.net
-
C.C.「行くな!ルルーシュ! ブリタニアと戦うにはまだ早すぎる!」
ルルーシュ「ここで戦わなければ、“騎士団”が日ノ本人を見捨てたことになる。
日ノ本人の支持は失われ、“騎士団”は崩壊する。
――なにより、この状況を前にして団員達を止めることは不可能だ!」
仮面を被るルルーシュ。もはや、戦いは不可避な状況に陥っていた。
ルルーシュ「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ!」
“ゼロ”としての誓い。C.C.に…自分自身に言い聞かせながら、団員達の前に立つ。
ルルーシュ「“黒の騎士団”総員に告げる!
行政特区・日ノ本は反エリア主義者を誘き出すための卑劣な罠だった!
我々は…裏切られたのだ!
零番隊は広場に突入!各隊は戦闘準備を整え、東京に集結せよ!
ブリタニア軍を殲滅し…日ノ本人を救出しろッ!!」
地鳴りのような雄たけびが沸き起きる。“ブラック・リベリオン”が始まった――
- 171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 01:35:49 ID:pxuUIN/Y.net
- 終わりじゃないよね?(´・ω・`)
- 172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 12:21:15 ID:nba19w0m.net
- 気持ち悪いからさっさと終われ
- 173 :1:2009/11/18(水) 21:38:32 ID:TEeX5/gQ.net
- >>171
多分w実はもう書き溜めしてたのが切れたのだ。
あんまり反応が薄いので、頑張って書けば書くほどゴールが長くなっていく・・・。
本当は、1〜2ヶ月以内で終わらす予定だったので
会話に 名前(ルフィ)「 」 という方法で手を抜かせてもらってたけど、
最近忙しくなってきてなかなか書けなくなった。
申し訳ないけど、2週間おきくらいになるかもしれないから、時々来てください。
なんとか、完結させたいのだが、無理なら挫折宣言して削除依頼出します(´・ω・`)
あと、最後の在庫を↓に出しとくね
>>172 悪い・・・作者もそれはわかってる。ただこれからより気持ち悪くなるから
見ないことを進めます。ギアス・ワンピース好きの人には本当に申し訳ない。
ただ、保守してくれる少数の人のためにもう少し頑張ろうかと思う。
- 174 :1:2009/11/18(水) 21:41:34 ID:TEeX5/gQ.net
-
激しい怒りに駆られた団員達はブリタニア軍に襲い掛かる。
日ノ本全土では、ブリタニアに対する大規模な暴動が巻き起こり、
勢いは完全に騎士団側に傾いた。騎士団はブリタニアの日ノ本駐屯軍を
瞬く間に叩き潰し、東京を制圧した。東京に軍を集結させたオレは
“合衆国・日ノ本”の建国。そしてブリタニアからの独立を宣言した。
――しかし、この時、すでにシュナイゼルは次の手を打っていた。
海には「海軍本部」の“五人の中将“が集結していた。
ルルーシュ「扇!何故、海軍の動きを知らせなかったッ!?」
オレは電電虫を握り締め、激昂した。致命的…あまりにも致命的だった…!
南「扇が女に撃たれた!情報網はズタズタだッ!どうすればいいゼロ!?」
ルルーシュ「――そんなのは放っておけ!代わりなどいくらでもいる!
今からお前が指揮をとれ!」
南「なッ!?」
何か言おうとする南を無視して、電電虫を切る。
砲撃の爆音と人々の悲鳴が聞こえる。負ける…?これほどの犠牲をだして――
ルルーシュ「負けるわけには…負けるわけにはいかないんだッ!!」
その悲痛な決意は「バスターコール」の砲撃音に掻き消された。
- 175 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 22:41:19 ID:h2EDsfph.net
- ほ
- 176 :1:2009/11/28(土) 00:49:01 ID:EDXtGIHk.net
-
雨の中、零番隊の一部を引き連れ、険しい山道を行軍する。
海軍の「バスターコール」の発令により、東京は火の海となり、騎士団は崩壊した。
なんとか「バスターコール」を免れたオレは、海を目指していた。
この山道を抜ければ、万が一のために用意していた脱出艇を使い、
海に逃れることができる。再起をかけることができる。
C.C.に、「ドラゴン」に借りを作るのは癪に障るが今は仕方がない。
雨が重い…。その雨、一粒一粒がこの戦争で死んだ人々の涙に。命そのものに感じた。
ルルーシュ「背負えというのか…このオレに」
雨はただ降り続ける。
答えなどすでに知っていた。たとえ何があろうとも、もはや無為に死ぬことなど
許されない。どんな手を使おうとも、生き延びなければならなかった。
撤退戦の最中、多くの団員が自分を守るために死んでいった。
ある者は砲弾をその身で防ぎ、
ある者はブリタニアの包囲網に自爆テロを仕掛け突破口を開いた。
彼らは、「ゼロ」を守ることで、日ノ本の未来を…。家族を…。
守りたかった「何か」を守ろうとして死んでいったのだ。
自分はその命を繋いで出来た橋を渡り、今ここにいる。
だから何としても生きねばならなかった。
あの夏の日以来となる新たな誓い。
――「ゼロ」として人々を救う。それが…せめてもの贖罪だった。
- 177 :1:2009/11/28(土) 00:53:12 ID:EDXtGIHk.net
-
降り続ける雨。
その静寂は突如、団員の悲鳴よって切り裂かれた。
倒れた団員の側に、一人の海兵が立っている。
信じられなかった。あの「バスターコール」を抜けて、自分達を追ってきた!?
海兵は隊員をなぎ払いながら、自分に向かってくる。
カレン「ゼロは私が守る!」
前に出るカレン。“輻射波動”が赤く光る。
それを寸前でかわした海兵の帽子が落ち、その素顔が見えた。
――信じたくはなかった。その顔を誰よりもオレが知っていたから。
ルルーシュ「枢木…スザク!」
それがあの夏の日以来となるスザクとの再会だった。
- 178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/28(土) 21:13:31 ID:ITYYHXM0.net
- 悪くはないんだけどキャラの性格が微妙に違う(サンジが気に入らない奴にとはいえ適当な食事を出すはずはない)
同じクロスオーバーでも『Mr.0の使い魔』に比べると格段に落ちる
だけどここまで読んだら最後まで読ませてもらいたい
がんばってください
- 179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 20:32:04 ID:MZf7exr/.net
- ほ
- 180 :1:2009/12/04(金) 22:14:28 ID:i9qTp96t.net
- >>178
ありがとうございます。
>>179
毎度、保守して頂いて助かります。
- 181 :1:2009/12/04(金) 22:17:15 ID:i9qTp96t.net
-
枢木スザクはベッドに座り、壁にかけてある自分のコートを見つめていた。
そこには「正義」の二文字が刻まれていた。
幼い頃、スザクが信じたシンプルなもの。自由と正義、そして友情。
現在、スザクはその「正義」を背負い、「海軍中将」として
この海域の平和を守っている。
枢木首相の急死により、戦争は日ノ本の早期降伏に終わった。
自分の父親を殺した罪。
その生涯消えることはない十字架を背負ったスザクが選んだ新たなる道。
それは「海軍」への入隊だった。
世界の「正義」を標榜する海軍に身を置き、戦うことが、自分にできる
せめてもの罪滅ぼしと信じた。
“ブラック・リベリオン”の前のブリタニア支部は、ブリタニア人の比率が高いと
はいえ、まだ多くの非ブリタニア人の海兵がいた。そのために、スザクは
ほとんど、差別や迫害を受けることなく、信頼できる仲間と上司の元で、
みるみるとその頭角を現して行った。
時が流れ、スザクが「少佐」の地位についた頃、スザクに運命の出会いが訪れた。
ユーフェミア。
ブリタニアとエリアの平等を訴える市民活動家。偶然出会った二人は恋に落ちた。
スザクはユフィの優しさに。ユフィはスザクの誠実さに惹かれていた。
二人は語り合った。ブリタニアと日ノ本の未来を…。夢を…。
――だか、その夢は「バスターコール」の爆撃に消し飛ばされた。
“ブラック・リベリオン”時、日ノ本人のテロリストに
人質にされたユフィのいる教会に砲弾が炸裂した。
駆けつけるスザク。そこで見たのはユフィの変わり果てた姿だった。
- 182 :1:2009/12/04(金) 22:20:07 ID:i9qTp96t.net
-
スザク「オオオオオオオオオオオオオオッ――!!」
獣のような唸り声を上げ、スザクは走り出した。
全てはあの男…ゼロのせいだ!!
雨のように降ってくる砲弾を全てかわし前に進む。神経が極限まで研ぎ澄まされて
砲弾がスローモーションのように感じられた。
街を抜け、山道を進む。雨の中、行軍する集団を見つけた。
あそこに…ゼロがいる。殺す!奴をこの手で!
襲い掛かってくる団員達をなぎ払う。武器を持つ敵を物ともせず、拳を打ち込む。
赤髪の女の手から放たれた波動をかわした時に帽子が落ちる。
構わず前に進み、女の懐に飛び込む。
カレン「速いッ!?」
幼き頃より、教え込まれた日ノ本の伝統武術、空手と柔術
それを独自に編成し作り上げたスザクの体術。
それこそが、わずか数年でスザクを「少佐」の地位まで押し上げた秘密だった。
吹き飛ばされたカレンは崖下に落ちていった。
これでこの場に立っているのはスザク…そしてゼロのみとなった。
- 183 :1:2009/12/04(金) 22:22:23 ID:i9qTp96t.net
-
スザク「傲慢にして卑劣!それがお前の正体だ!ゼロ!!」
ゆっくりと近づいていくスザク。ゼロが銃を構えると同時に走り出し、
廻し蹴りを喰らわす。
スザク「お前の存在が間違っていたのだ!お前は世界から弾き出されたんだ!!」
押さえつけられながら必死にもがくゼロ。
その仮面に手をかける。
スザク「貴様を殺す…!だが、その前に顔を見せてもらう。
仮面によって隠してきた薄汚い、その素顔を――!」
仮面が外れ、ゼロの素顔が明らかになった。
――信じたくはなかった。その顔はあの日以来、忘れたことはなかったから。
ルルーシュ「…スザク」
スザク「ル…ルルーシュ――!?」
- 184 :1:2009/12/04(金) 22:24:44 ID:i9qTp96t.net
-
数秒間の沈黙。
ズザクは全てを理解した。
ゼロがブリタニアに反逆した理由を。本拠地に日ノ本を選んだ理由を。
全てはあの日の約束のため。
――あの日、“ゼロ”は生まれたのだ。
ルルーシュは約束を守るために…自分に祖国を返すために戦ってきた。
ならば、ユフィは誰のために死んだ?
本当に間違った存在とは誰なのか?
狼狽するスザク。その瞳にカレンの落としたナイフが映る。
- 185 :1:2009/12/04(金) 22:26:15 ID:i9qTp96t.net
-
即座にナイフを手に取り、自分の首筋に押し付けた。
――全ての罪は自分にあった。
全てはあの日から…実の父親を殺した時から始まったのだ。
ルルーシュを殺してもユフィは微笑まない!
ルルーシュを殺すことなんて自分にはできない!
もはや、これ以外に手段はなかった。ナイフを持つ手に力が篭る。
首筋から鮮血が流れ出る。
ルルーシュ「スザク、死ぬな! お前は生きろ!!」
その刹那、記憶の終わりに、スザクが見たのは、涙で濡れた親友の赤い瞳だった。
- 186 :1:2009/12/04(金) 22:28:18 ID:i9qTp96t.net
-
ゼロの仮面を抱いて倒れていたスザクは“ゼロを討った男”として
“ブラック・リベリオン”の勝利の象徴として祭り上げられた。
ゼロを討ったのが日ノ本人の海兵であったことを知ったシュナイゼルは
これを最大限に政治利用した。
シュナイゼルの政治的な後押しにより、スザクは「中将」に昇進した。
スザクをブリタニア支部の最高権力に据えることで、シュナイゼルは
「名誉ブリタニア人」制度の健全性を世界にアピールし、
ブリタニアのマスコミは、スザクを「名誉ブリタニア人」の誇りとして
絶賛した。目が眩むようなフラッシュライト。栄光のヒカリ。
――しかし、その賞賛は、ブリタニア人の間でのことだった。
日ノ本人や他のエリア人のスザクを見る目は冷たかった。
“ゼロを討った男”は、自分達の“希望を奪った男”。売国奴にすぎなかった。
- 187 :1:2009/12/04(金) 22:29:24 ID:i9qTp96t.net
-
日ノ本に凱旋帰国した時、人々の自分を見る視線。スザクは理解した。
自分が海軍という温室にいた時に、日ノ本人はずっと暗い部屋に閉じ込められていた。
日の当たらない闇の中。絶望。そこに現れたのがゼロだった。
人々にとって、ゼロは光り。希望そのものに見えたに違いない。
――それを奪ったのが、同じ日ノ本人のスザク。
人々の絶望と憎しみは全てスザクに向けられた。シュナイゼルの計算通りに。
- 188 :1:2009/12/04(金) 22:33:40 ID:i9qTp96t.net
-
凱旋パレードの最中、鋭い痛みが右足に走る。
瞬時にそれが刃物によるものだと悟ると、体が自動的に反応し、
暗殺者に蹴りを見舞う。
“ギアス” ゼロによって与えられた呪い。
これによって、スザクは幾度も暗殺の危機を切り抜けてきた。
目から赤い光りが消え、正気に戻ったスザクは、その光景に言葉を失った。
…暗殺者は5,6歳ほどの子供だった。手にナイフを持ち、涙を流している。
「返して…パパを!ママを――」
直後、数発の銃声が響き渡る。
スザクの攻撃を、ブリタニア兵達が発砲の許可と捉えた。
子供の足をひきずりながら去っていくブリタニア兵。
その光景は、ゴミか何かを片付けるように、さも当たり前の行動に見えた。
子供が生きていたことを示す血溜り。
その中に一枚の写真が落ちていた。移っていたのは…ゼロだった。
- 189 :1:2009/12/04(金) 22:36:28 ID:i9qTp96t.net
-
枢木スザクの夢は、日ノ本人にとっての悪夢。
枢木スザクの栄光は、エリア人にとっての絶望。
枢木スザクの“死”が人々にとっての“願い”だった。
しかし、スザクには、その“願い”を叶えてあげることはできない。
“生き地獄”は確かに存在する。
天国のユフィから最も遠い場所にスザクは立っている。
消えてしまった心。とっくの昔に燃え尽きた魂。
それらのガラクタ達が音を立てて動き出す。
――アイツが、この海に帰ってきた。
妹のナナリーを救うために、必ずここにやって来る!
アイツが…ルルーシュが!
「…失礼します。」
ドアをノックする音を聞き、スザクは応じた。
そこには、自分の部下が立っていた。瞳に赤い光りを輝かせて…。
「ゼロ様がお呼びです。」
- 190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 14:07:36 ID:kqi7w758.net
- ほ
- 191 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 04:05:09 ID:0xnRKsuF.net
- ほ
- 192 :1:2009/12/21(月) 01:49:42 ID:WJ3pHqRV.net
- >>190
>>191
いつもありがとうございます。
- 193 :1:2009/12/21(月) 01:53:58 ID:WJ3pHqRV.net
-
ジェレミア「我が名はジェレミア・ゴットバルト!貴様に敗北をもたらした
記念すべき男の名だ!」
饗団内で行われた「バトル・ロワイアル」。最後に生き残った二人の決着後、
片膝をつくアーニャに剣を向けながら、ジェレミアは高らかに宣言した。
ジェレミア「…こうして私達は結ばれたのだ。」
ルフィ「いや!その流れはおかしい…!」
大概のことでは動じないルフィがまじめな顔で突っ込みをいれる。
その横で赤くなり、うつむくアーニャを見て、チョッパーが冷や汗を流していた。
何ともいえない空気が場を支配する。息苦しさを感じたゾロはふと視線を壁に移した。
ジェレミア「流石だなロロノア!その写真に注目するとは!」
ゾロ「いッ…!?」
ジェレミアは席を立ち、壁にかけてある写真をはずし、ゾロの目前に置く。
何事か、という顔をしたゾロに向かって、ジェレミアは満面の笑みを浮かべ語り出した。
ジェレミア「これは、私が諜報員としてまさに全盛期を迎えた頃の写真だ!!」
ゾロ「オ…オウ」
もはや逃げれないことを悟るゾロ。写真を見ると二人の人物が写っていた。
一人はジェレミア。自信満々の表情で不敵に笑っている。
二人目は、おそらくターゲットと目される男。汗をかき、明らかにおびえながら
ジェレミアを見ている。まるで3期「鬼太郎」のエンディングに出てきそうな光景だ。
- 194 :1:2009/12/21(月) 02:04:13 ID:WJ3pHqRV.net
-
ジェレミア「諜報員として優秀すぎる成績を収めた私は、この隠れ家を管理する
大役を預かることになったのだ!」
ああ、左遷されたのか、と遠い目で見つめるのはナミ。
その視界に大量に詰まれたパンフレットが入る。
ナミ「こ、これは…!」
何気なくとったパンフレットを持つ手が震える。
そのパンフレットにはオレンジを持ち、微笑むジェレミアが写っていたのだ。
ジェレミア「それか?近隣の村人達から、どうしても、と頼まれてな。
このゴットバルト農園のオレンジを地元の名産として売り出したのだ。
私は騎士!貧しき者を助ける義務がある!
あまりに好評なので、近々、チェーン展開を予定している!
ん?どうした?その残念そうな顔は?」
全てにおいて斜め上を行くジェレミアに一同はただ驚くばかりだった。
- 195 :1:2009/12/21(月) 02:06:09 ID:WJ3pHqRV.net
-
ゾロ「…アンタ、とんでもない大バ…」
ゾロが率直な感想をつぶやこうとした時、その袖を小さな手が引っ張った。
見るとピンク色の髪をした少女がこちらを見つめていた。
アーニャ「…言わないであげて。ジェレミア、改造された時に頭を…」
その瞳には涙が浮かんでいた。うろたえるゾロ。
ジェレミア「ん?なんだロロノア?“オ”がどうしたというのだ?」
にこやかに話かけるジェレミア。涙目で訴えるアーニャ。
返答に困ったゾロはとっさに外を見る。そして苦し紛れに答えた。
ゾロ「と、とんでもないオ…オレンジ野郎だ…!」
それを聞き、後の「オレンジ卿」は“ニヤリ”と笑った。
- 196 :1:2009/12/21(月) 02:15:24 ID:WJ3pHqRV.net
- 〜お知らせ〜
作者です。
読んで頂いている読者の皆様、毎回、投稿が遅くて申し訳ありません。
実は、今回、作者は仕事の都合で転勤することになりました。
そのために、誠に勝手ながら、本年度の投稿はこれで、最後とさせて頂きたいと思います。
ネット環境が整い次第、再開したいと考えておりますが、早くても1月中旬となりそうです。
そのために、もし宜しければ、週一で構いませんので「保守」をよろしくお願いします。
また、何か感想など頂けたらありがたいです。
数ヶ月ですが、ご愛読頂きましてありがとうございます。
それでは、よいお年を!
- 197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 08:15:56 ID:dHYZDRCE.net
- >>196
乙です
隠れ読者です、まってますから
また来年お会いしましょう
- 198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 22:18:08 ID:3jEafsMG.net
- スザクがカレンの腹を殴ってる所やルルーシュがC.C.を殴ってる所をサンジが見たらどうするのかな_
- 199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 03:45:15 ID:YAw0IJXo.net
- ほ
- 200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 02:27:39 ID:wzeygL+K.net
- 応援してるぜー
- 201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:29:46 ID:m08yh1w1.net
- ほ
- 202 :1:2010/01/10(日) 20:08:41 ID:9fOz6M8+.net
- 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
ようやくネット環境が整いました。いままで通りのペースで頑張ります。
>>197>>198>>199>>200>>201
応援と保守頂きましてありがとうございます。
>>198
基本的に両者に対して即、とび蹴りを行うと予想されます。
ルルーシュの場合は、あの場面において、蹴られた方が別の名案が閃いたかもしれません。
スザクとサンジでは、相性は悪いように思えます。以下のような感じになるかも・・・。
スザク「カレンは黒の騎士団で云々」
サンジ「じゃあ、オレは海賊だ!捕まえてみろ!!」→とび蹴り
スザク「犯罪者め!!」→ガードして蹴りの応酬
- 203 :1:2010/01/10(日) 20:11:22 ID:9fOz6M8+.net
-
ブリタニア支部の海兵達は廊下に整列し、敬礼をとる。
その中をこの支部の最高権力者、中将・枢木スザクが「正義」の二文字を
背負い、歩いていく。敬礼をとる海兵達に尊敬の念はなかった。
いや、その意志そのものを奪われ、命じられたままの行動を続けている。
まるで操り人形のように。
海兵の列は外へと続いていた。この異常といえる状況下にありながら、
スザクは歩みを止めることはなかった。この先に何が待ち構えていることを
ズザクは知っている。その強い確信は、今、起こっていることを、
これから起こるであろうことを、まるで運命であるかのように感じさせた。
外に出るとそこには一人の男が立っていた。
黒髪に、黒いマント、片手に黒い仮面を持ち立っているその男の周りは、
時刻は昼を過ぎた頃であるのにひどく暗く感じる。
その男を中心に夜、いや闇が沸き起こっているかのように。
スザク「…ルルーシュ」
- 204 :1:2010/01/10(日) 20:17:51 ID:9fOz6M8+.net
-
ルルーシュ「…スザク」
スザクとの再会。
それは、「親友」としてはあの夏の日以来の、
「敵」としては、“ブラック・リベリオン”以来のことだった。
スザクの自分を見るその視線。
その冷たい眼差しは、この再会が後者であることをルルーシュに強く認識させた。
ナナリーの処刑は明日に迫っている。時間こそが勝敗を分けるならば、
自分はすでにチェックをかけられている。
時間さえあれば…。最強の力である“魔王”を使い、ナナリーを取り戻す方法など
いくらでもあった。だが、この限られた時間の中で、
敵が“ギアス”を知っているらば、話は違う。
騎士団とブリタニアの同盟は、騎士団があの男の管理下に入ることを意味していた。
――シュナイゼル
あの男が“ギアス”の存在を知った以上、すでにその対策は完璧になされている
ことは疑いようがない。
騎士団とブリタニア。
この二つの攻略ルートが閉ざされた以上、残るルートを一つしかない。
海軍。
いかにブリタニアと強固な強力関係を形成しようとも、その連携は完全とは
いえないはずだ。特に、“ゼロの正体”についての情報は、騎士団の幹部と
シュナイゼル達にしか知り得ないトップシークレット。
ならば、それに次ぐ秘密である“ギアス”について海兵達は
知らされていない可能性は高い。
ルルーシュの読みは当たった。ブリタニア支部の海兵達は“ギアス”によって
瞬く間に陥落した。ただ一人、“ギアス”を知る枢木スザクを残して。
- 205 :1:2010/01/10(日) 20:21:47 ID:9fOz6M8+.net
-
スザク「…よくここに来れたね」
お互いの距離を保ちながら、沈黙。それを破るかのように
口火を切ったのはスザクだった。
ルルーシュ「海軍の警戒はエリア11側に集中している。
逆にブリタニア側に対してはいくつか無防備なルートが…」
スザク「違うよ、ルルーシュ」
海軍支部への潜入ルートを説明しようとするルルーシュの言葉を
遮るようにスザクは喋り出す。
スザク「よくオレの前に姿を見せることができたな、と言っているんだ」
ルルーシュ「…!」
その言葉を聞き、沈黙するルルーシュに向かって、スザクは言葉を続ける。
スザク「あの戦争で多くの仲間が死んだ。多くの日ノ本人が…。ユフィも――」
ルルーシュに向かい、右手を向けるスザク。そのには白い羽ペンが握られていた。
ルルーシュの顔が歪む。自分に向けられたスザクの手が微かに震えている。
それを見ただけで、そのペンの持ち主。ユフィという人がスザクにとって
どれだけ大切な存在だったかを知ることができた。
あの夏の日を思い出す。
スザクは自分達を守るために実の父を殺した。そして、今度もまた、
自分のせいでスザクは大切の人を失ったのだ。
言葉を失うルルーシュ。
しかし、スザクはそれを必要としていなかった。
羽ペンを懐に入れ、ゆっくりと空手の構えをとる。
スザク「ルルーシュ。その悪魔の瞳で何を望もうとも、無駄だ。
あの時の…“ブラック・リベリオン”の決着は今ここでつける!
お前の“願い”は――叶えてはいけない…!」
- 206 :1:2010/01/17(日) 01:04:26 ID:PyXszXq3.net
-
構えを取りながら、少しずつ距離を詰めるスザク。
しかし、その険しい表情とは裏腹にその心は穏やかだった。
“ブラック・リベリオン”以来、自分という存在を呪わない日はなかった。
自分という“間違った存在”を消し去る方法を探し続けた。
そして、今日、やっとこの苦しみから解放される――。
自分を地獄に誘う死神は、親友の姿を借りてやって来たのだ。
“ギアス”
シュナイゼルから聞いたルルーシュの能力。人の意志を奪い、操る呪われた力。
あの時、自分にかけられた“生きろ”という呪い。
それを解くことができるのは、それをかけたルルーシュだけだ。
ルルーシュを見る。あの雨の日が頭を過ぎる…。
暗い森の中、泣きながら、必死でナナリーを探すルルーシュ。
何も変わっていない。アイツは今も、あの暗い森の中にいるのだ。
しかし、自分はもう手を貸してやることはできない。
背中に刻まれた「正義」の二文字。
自分は海兵として、海賊であるルルーシュを止めねばならない。
…ならば、残された方法は一つだけだ。
“裏切り”のスザクは今日、“英雄”ゼロによって討たれる。
ゼロは妹を助け、いつの日か日ノ本を解放し、人々を救う。
…それでいい。
死ぬことのみが、僕にとっての唯一の償いであり、救いだった。
全ては、今日、終わる。ユフィのいる場所に少し近づくことができる。
そう…。だから、ルルーシュ!僕に“ギアス”を――
死を願うスザク。
しかし、直後、彼に与えられたものは、“ギアス”ではなかった。
- 207 :1:2010/01/17(日) 01:10:51 ID:PyXszXq3.net
-
ルルーシュ「…スザク。すまない」
ルルーシュがスザクに与えたもの。
それは“ギアス”ではなく、懺悔だった。仮面を地面に置き、膝をつき、頭を深く下げる。
それを見たスザクの瞳に絶望が広がっていく。心の中で何かが壊れる音がした。
スザク「…いまさら、いまさら何だそれはーーーッ!!」
スザクは走り出し、膝をつくルルーシュの腹に蹴りを見舞う。
ルルーシュ「グハッ――」
胃液を吐き、額を地面につけるルルーシュ。その頭をスザクが踏みつけた。
スザク「いまさら、許されると思っているのか!?
お前に惑わされた人々が、死んでいった人々が…ユフィだって――
謝るくらいなら、ユフィを生き返せ!今すぐにだ!!
お前の悪意で日ノ本を救ってみせろ!お前は“奇跡の男”ゼロなんだろ!?」
踏みつける足に力が篭る。骨の軋む音が聞こえる。
その中で、ルルーシュは呻きながら話し出す。
ルルーシュ「奇跡…なんて…ない。全ては…計算と…演出。
ゼロという仮面は…嘘をつくための…装置に…すぎない。」
スザク「何が“装置”だ!そんな言い訳が通ると思っているのか!?
嘘だというなら最後まで突き通せ!!」
足を離し、ルルーシュの襟首を掴み、締め上げる。
それでも、ルルーシュは苦しそうに言葉を続けた。
ルルーシュ「しかし…過去には戻れない!やり直すことは…できないんだッ――」
スザク「ルルーシュ――ッ!」
怒りに任せてスザクはルルーシュを突き飛ばす。
二人の間に距離が生まれる。息を整えるためにスザクは言葉を止めた。
再び、二人の間に沈黙が訪れた。刹那であるはずが無限に感じる時間。
その静寂を破ったのはルルーシュの言葉だった。
ルルーシュ「…スザク。オレを殺せ」
- 208 :1:2010/01/17(日) 01:14:57 ID:PyXszXq3.net
-
その言葉に驚くスザクに向かって、ルルーシュは話し続けた。
ルルーシュ「スザク…オレはお前の大切なものを奪ってしまった。
だから、お前に殺されるならば、オレは構わない。
それで、お前が救われるのならば…。
――だが、妹は…ナナリーは関係ない!
スザク!オレの命はくれてやる!!
だから、ナナリーを!どうかナナリーだけは…助けて…ください」
そう言って、再び、膝をつき、頭を下げるルルーシュ。
ルルーシュの“戦い”の答え。
それは、自分の命と引き換えに、ナナリーの救出をスザクに願うことだった。
“魔王”の力を使えば、再びスザクに“ギアス”をかけることができる。
しかし、“ギアス”は思考を単純化させる。その力の支配下にある者は
複雑な思考に耐え切れず、目的達成に向けて猛進するだけの人形に成り果てる。
そして、それ故に、“ギアス”にかかった者はその本来の力を出し切ることは
難しい。そんな状態のスザクを手に入れたところで、
あの男――シュナイゼルに勝つことはできない。
シュナイゼルとの戦いは一手先を読み合う苛烈な心理戦になる。
その戦いに勝利し、ナナリーを取り戻すには、枢木スザク本来の力が不可欠だった。
…そして、なにより、もうスザクに嘘(ギアス)をつきたくはなかったから。
- 209 :1:2010/01/17(日) 01:17:22 ID:PyXszXq3.net
-
頭を下げるルルーシュをスザクは見つめる。
その姿は、惨めで、醜くて、とても、とても、小さな存在に見えた。
子供の頃の、気高く、尊大な態度。
ゼロの時の、威風堂々とした姿。
今の、この姿はルルーシュ本来のそれとは、あまりにもかけ離れた、遠いものだった。
スザク「…ルルーシュ。お前がかけた“生きろ”という“ギアス”は
オレの信念を歪ませた。答えろ!
何故そんな“ギアス”をかけた!?」
- 210 :1:2010/01/17(日) 01:20:22 ID:PyXszXq3.net
-
ルルーシュ「…オレの逃亡に利用するためだ」
嘘だ。オレの命を…助けるためだ。
スザク「なぜ、“ゼロ”となり、ブリタニアに反逆する?」
ルルーシュ「…オレが、ブリタニアの支配者になりたいからだ」
嘘だ!母親の仇討ちと父親に対する復讐のためだ。
スザク「なぜ、日ノ本を拠点に選んだ?」
ルルーシュ「…日ノ本人は利用しやすかったからだ」
ウソだ!!愚かで、卑怯な…醜い、裏切り者に祖国を返すためだ。
ルルーシュ「全ての罪はオレにある!でもどうか、ナナリーを!ナナリーだけは――」
…知っている。ずっと昔から。世界中の誰よりも…。
お前が…ナナリーの幸せの為に生きてきたことを――
- 211 :1:2010/01/17(日) 01:29:05 ID:PyXszXq3.net
-
ルルーシュ「スザク…?」
異変に気付き、顔を上げたルルーシュは言葉を止めた。
スザクが…泣いていた。大粒の涙を流し…声を殺して…泣いていた。
スザクの涙を見たのは、あの遠い雨の日のことだった。
自分達の境遇を知り、その悲しみを共有するかのように大粒の涙を流してくれた。
あの日、俺達は救われ、あの時からスザクの運命は始まった。
あの日のように…スザクは泣いていた。
スザク「…ルルーシュ。僕達はもう、あの夏の日には戻れない。だけど――」
夏の日の終わり。
屋敷を脱出し、小高い丘を越えるために差し出された手。
あの時のようにスザクは手を伸ばす。
スザク「だけど、ナナリーのために…もう一度、君と――!」
ルルーシュ「ナナリーを…助けて…くれ…る?」
スザクが差し出す手が涙でよく見えない。
…昔、二人でこんな話をしたことがあった。
スザクはオレを皇帝に。オレはスザクを首相にする。
絶対に出来る!オレ達二人が力を合わせて、出来ないことなんてないのだから!
ルルーシュ「ありがとうスザク!お前と二人でならきっと――」
バァンッ!!
二人の手の間を何かがすり抜ける。それが銃弾だとわかったのはその直後だった。
- 212 :1:2010/01/25(月) 05:15:51 ID:kaN5UTjz.net
-
「ご無事ですか!?枢木卿!!」
「ゼロ!正体はすでに知られているぞ!」
サイドバイザーで顔を隠し、銃で武装したブリタニア兵達がルルーシュに襲い掛かり、
数人掛かりで地面に押さえつけた。
スザク「ブリタニア兵!?どうしてここに…!?」
ルルーシュが拘束される様を呆然と見ていたスザクが我に返り、後ろを振り返る。
その視線の先には、ブリタニア兵を従え、一人の男が歩いてくる。
金髪で長身。高貴な身なりのその男はこちらを見て微笑を浮かべている。
ルルーシュ「シュナイゼル!!」
地面に押さえつけられながら、ルルーシュはその男の名を叫んだ。
- 213 :1:2010/01/25(月) 05:19:39 ID:kaN5UTjz.net
-
シュナイゼル「必ずここに来ると思っていたよ…ゼロ。
それにスザク君…よくやってくれた。また勲章が増えたね」
ルルーシュ「ス…ザク?」
シュナイゼルの言葉に驚き、ルルーシュはスザクを見る。
狼狽するスザクは後ずさりしながら、激しく首をふる。“違う…!違う…!”と呟きながら。
シュナイゼル「さあ、ゼロを留置場に連行してくれ給え」
シュナイゼルの声に従い、兵士達は、ルルーシュを引き摺りながら連行していく。
スザク「ま、待て!その男は…ゼロは“海賊”だ!拘束権は海軍にある!!
ゼロは“海軍中将”の自分が――」
ブリタニア兵を制止しようとするスザクの声は彼らには届かない。
まるで聞こえていないかのように、留置場に歩いていく。
それを止めようと走り出すスザクの肩をシュナイゼルが掴む。
シュナイゼル「スザク君。これで戦争は終わる。平和の敵は倒さねばならない」
振り返るスザク。その耳元でシュナイゼルは囁いた。
シュナイゼル「…ゼロの処刑後。私は日ノ本の独立を承認するつもりだ。
スザク君。この意味はわかるね?」
- 214 :1:2010/01/25(月) 05:21:51 ID:kaN5UTjz.net
-
スザクの瞳に再び、絶望が広がっていく。
“海兵としての任務以外の行動は許さない”シュナイゼルはそう言っているのだ。
その報酬は日ノ本の独立であり、その代償は…。
ルルーシュ「スザク!ナナリーを!ナナリーを――」
親友の自分と妹を呼ぶ声が遠ざかっていく。
それを何か遠い世界の出来事のように、スザクはただ呆然と聞いていた。
幼い頃、スザクが信じたシンプルなもの。自由と正義、そして…。
肩に手をかける。力を入れた指が肉を裂き、白地を赤く染める。
それはまるで華が咲いたように、「正義」の二文字を際立たせた。
――背中が…重い
- 215 :1:2010/01/25(月) 05:24:04 ID:kaN5UTjz.net
-
ウソップ「あ〜やっと落ち着いた!」
オレンジジュースを飲み干したウソップは心境をありのままに告白した。
彼がここに至るまでの道のりはそう長くなかった。
“ギアス”によって操られた海王類によって宴が行われたあの浜辺に
戻ったウソップが最初に目撃したのはジェレミアだった。
初見のウソップとってジェレミアはメリー号によじ登り、侵入してきた謎の敵。
それも、農夫に扮した正体不明の機械人間にすぎない。
捕まり、抱え上げられた時には、恐怖のあまり、声も上げずに気絶した。
数十分後。
ゴッドバルト農園で目を覚ますウソップ。
仲間達の顔を見て歓喜の声を上げるも、その後ろで微笑むジェレミアを見て再び気絶した。
そんな短くも濃密な過程を経て、この場に辿りついたウソップは、ルルーシュが海軍支部
に向かったことを一同に告げた。
ナミ「…なるほどね」
- 216 :1:2010/01/25(月) 05:26:28 ID:kaN5UTjz.net
-
一人納得したナミは、頭の上にクエスチョン・マークを浮かべる一同に
哀れみを浮かべながら説明を始める。
ナミ「いい?この海域の三大勢力は“ブリタニア帝国”“黒の騎士団”そして“海軍”」
そう言って、机の上に三つのオレンジを並べる。まるで子供に簡単な数学を教えるような
光景だが、ルフィとチョッパーは真剣な顔でそれを見つめていた。
ナミ「この内、二つの勢力…”ブリタニア“と”黒の騎士団“が明日、同盟を結ぶわね。
では、その護衛を勤めるのは誰?」
チョッパー「…海軍だ!」
チョッパーはまるで犯人でも見つけたかのように興奮の声を上げた。
二つのオレンジから明らかに孤立させたオレンジを見れば、まさに
一目瞭然だが、理解させることができれば、ナミにとっては何でもいい。
少し、離れたところから、ジェレミアがオレンジジュースが注がれた
ワイングラスを片手に、ウインクしたのは気になるところではあるが…。
ナミ「そう!ルルーシュがナナリーを助けるためには三大勢力を相手にしなければ
ならないの!その最初の障壁が“海軍”なの!」
ルフィ「なるほど…!そーだったのか!!(ガーン)」
ゾロ「遅せーよ(汗)」
いまさら理解に達した船長をゾロがあきれ顔で見る。
その傍ら、ウソップが沈痛な面持ちで話し出す。
ウソップ「…アイツ、最後に言ったんだ。“もう一度花火を見る約束”
守れそうないって。まるでもう二度と会えないようなツラしてさぁ…。
ナミ…アイツ大丈夫だよな?」
ナミ「…。」
ナミは答えられなかった。
この限られた時間の中で三大勢力からナナリーを取り戻すのは不可能だと知っていたから。
ナミ「(…でも、ルルーシュなら、アイツの“ギアス”があれば、もしかしたら…)」
- 217 :1:2010/01/25(月) 05:28:56 ID:kaN5UTjz.net
-
少なくとも、可能性は生まれる。
他人の意志を奪い、操るルルーシュの魔眼。あの恐ろしさは身を持って味わった。
そして、アイツの戦略。
海軍を選んだのは正しい。海軍はおそらく“ギアス”について知らないから。
ゼロの正体がルルーシュ皇子であることをブリタニアは知っている。
では、なぜいまだにそれを公表しないのだろうか?
ゼロの正体が敵国の皇子だと分かれば、反ブリタニア勢力の崩壊は必定だろう。
この秘密を公表することに関するブリタニアのメリットは計り知れない。
だが、彼らはそれをしない。
いや、それどころか、騎士団のクーデーターでルルーシュの身柄を押さえた後に、
保護するどころか、海軍本部に引き渡した。
ルルーシュを海賊“魔王・ゼロ”として処刑させるために。
つまりは、現ブリタニアにおいて、実権を握っている勢力は「行方不明の皇子」
であるルルーシュに生きていられては困るのだ。だから、ゼロの正体を隠した。
海軍はゼロの正体を知らない。おそらく、その能力である“ギアス”さえも。
――勝機は生まれる。
海軍に潜入し、機会を待つか、海軍そのものを手に入れ、戦争を仕掛けるかは
わからない。しかし、ルルーシュは必ず動く。妹のナナリーを助けるために。
…明日、アイツの言うように“事件”は起きるだろう。そして――
ナミ「私達に出来ることは何もないわ。
船を出しましょう!!アイツの意志を無駄にしないためにも」
- 218 :1:2010/01/31(日) 17:04:42 ID:8fxCakP2.net
-
ウソップ「ナミ!?」
ルフィ「…!」
突然のナミの提案に驚きの声を上げるウソップ。
その横で押し黙るルフィをナミが決断を仰ぐような目で見つめた。
ウソップ「ちょっと待てよ!!短い間だったけど、アイツは“麦わらの一味”に
いたんだぞ!こんな別れ方があるかよ!!」
ナミ「そんな言い方は止めて!これ以外に選択肢はないの!迷ってる時間すら――」
席を立ち、詰め寄らんばかりのウソップにナミは苛立たしげ声で答える。
ウソップの言いたいことくらいわかってる!
出来ることなら、手を貸したい気持ちは同じだ。
だが、ルルーシュの次の行動が読めない以上、動くことはできない。
敵はこの海、全てと言ってもいい。迂闊な行動は、即死に繋がる。
アイツだってそんなもの望んでいない。
ならば、戦争が起こる前にこの海域からの脱出。それ以外に選択肢はないではないか…!
- 219 :1:2010/01/31(日) 17:07:15 ID:8fxCakP2.net
-
ゾロ「…ナミの言ってることは一理あるぜ」
ウソップ「ゾロ!?」
ナミとウソップの言い合いを横目で見ていたゾロがおもむろに、そう呟いた。
その発言を聞いたウソップは、信じられない、といった顔でゾロを見た。
ゾロ「アイツを仲間と認めるならば、その“覚悟”を受け取ってやるのが
オレ達の役目なんじゃねーのか?」
ウソップ「…!」
ゾロの短い言葉にウソップは反論できずに黙り込む。
短いが、その言葉は核心をつき、何よりも、ロロノア・ゾロという男の生き方に
繋がっているような気がした。
覚悟。
三大勢力を相手に妹を取り戻そうと決意した時からルルーシュはそれを受け入れたはずだ。
必ずナナリーを取り戻す覚悟を。そして、約束を破ることになるかもしれないことを…。
ウソップに渡した脱出ルートを記した地図は、約束を破る代償であり、
ルルーシュの覚悟そのものだった。
- 220 :1:2010/01/31(日) 17:10:13 ID:8fxCakP2.net
-
サンジ「…そうは思わねーな」
ウソップが黙り、議論が終結に向かおうとする空気を壊したのはサンジだった。
煙草を咥えながら、“ツカ、ツカ”とゾロに向かって歩いていく。
サンジ「アイツが野心のために死ぬなら、勝手にしろだ!海賊らしいと笑ってやるさ。
――だが、そうじゃねーだろが!プライドだけは異様に高いあのバカが
妹さんを助けるために命はろうとしてるんだ!
覚悟だ!?その背景を察してやるのが仲間ってもんじゃねーのかよ!!」
ゾロ「…ッ」
チョッパー「――ちょ、ちょっと落ち着けよ!二人とも」
怒気を発したまま、ゾロに詰め寄ろうとしたサンジとゾロの間に
人型に変身したチョッパーが慌てて割って入った。
サンジには、その気はなかったが、チョッパーの行動が逆に場に緊迫感をもたらした。
チッと吐き捨て、ゾロから背を向けるサンジ。それを最後に一同を沈黙が支配した。
- 221 :1:2010/01/31(日) 17:12:44 ID:8fxCakP2.net
-
爪を噛んで下を向いたナミは考えていた。
そもそも、海賊になろうとする者は野心家で当たり前、自己主張の塊で然るべきなのだ。
だからこそ、他の海賊や海軍相手に勇敢に戦い、時には人々に蛮勇を奮う。
全ては己が望みを叶えるために。それは、この“麦わらの一味”とて例外ではない。
いや、これほど個人レベルで野望を持った海賊団をナミは知らない。
個人の野望(ゆめ)を尊重することで生まれた絆。
“麦わらの一味”が自分達より遥かに巨大な戦力と戦い、
勝利してこれたのはそれがあったからだ。
そして、だからこそ、恐れてきた意見の衝突。
大海賊では起こりえない、個人の主張による対立、そして崩壊。
それが今、まさに起ころうとしている。
少数の海賊、特に“麦わらの一味”にとって“仲間”に関する意見の衝突はあまりに重い。
確かに、ルルーシュが“麦わらの一味”にいた期間は短かった。
しかし、一度、仲間と認めた以上、どう動くか――その決定は自分達に委ねられる。
ルルーシュを助けるか否か。
それにより、今後の“麦わらの一味”の仲間というものの在り方が決定する。
ナミは黙ったままだった。
予感していた。この件における安易な選択は、後に必ず禍根となることを。
そして、その予感を共有するかのように、一同も黙っている。
時間にしては十分ほど…しかし、数時間にも感じるその沈黙は勢いよく
ドアを開けて入ってきた仲間によって破られた。
ナミ「ロビン…。」
- 222 :1:2010/01/31(日) 17:15:46 ID:8fxCakP2.net
-
ロビン「――ハァ、ハァ」
ドアから入ってきたのは、ニコ・ロビンだった。
遺跡探索を生きがいとするこの一味のクール・ビューティ。
戦場ですら、優雅に佇むこの女が息を切らせるほど走るのは珍しい。
普段なら、それを肴に小一時間ほど雑談することができるのだが、
この雰囲気の中、誰一人としてそれを指摘しようとする者はいない。
ただ、肩で息をするロビンを見つめていた。
ナミ「…ロビン。ルルーシュは海軍に向かったそうよ。
私達はどうするかを今、話し合ってい…」
ロビンに最初に話しかけ、途中でそれに気付いたのはナミだった。
ロビンの手には新聞が握られていた。
ナミ「ロビン、それは?」
ロビン「…号外よ。今、エリア11全土に配られているみたい」
呼吸を整えたロビンは、一同を押しのけ、テーブルの前に立つ。
その背中見つめる一同。ロビンは振り返ることなく、新聞を置き、それを広げた。
ロビン「彼の…ルルーシュの“戦い”の結果が出たわ」
- 223 :1:2010/01/31(日) 17:19:27 ID:8fxCakP2.net
-
ジェレミア「な、なんと――!」
ジェレミアは声を上げた。そこに写っていたのは見紛うことなき、主の姿。
ナミ「嘘…!」
そんなはずはなかった。勝負は明日のはず。こんな早く決着がつくはずがないのに!
サンジ「あのバカ…!」
吐き捨てるように呟いた。第一面に写っている仮面の男に。
ウソップ「そんな…」
ほんの数時間前、コイツと一緒だった。こんな終わり方があっていいはずはない!
ルフィ「ルルーシュ!」
その号外は、明日の処刑について書かれていた。
そこには“ゼロの妹”に関する新情報はない。その代わりに、処刑人、変更の報せ。
ほんの短い旅の仲間。あの仮面の男が写っていた。
明日、大海賊船隊“黒の騎士団”元団長“魔王”ゼロの処刑執行――
- 224 :1:2010/01/31(日) 17:30:51 ID:8fxCakP2.net
- 〜お知らせ〜
作者です。
仕事が繁忙期に入り、平均帰宅時間が10時くらいになってしまいました。
誠に勝手ながら、ペースを落とさせていただきます。
読んで下さっている方がいましたら、感想又は保守を定期的にお願いします。
スレが落ちなければ完走することを約束しますので何卒ご協力をお願いします。(´・ω・`)
- 225 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/06(土) 19:24:33 ID:yI1tXQZ+.net
- 保守!
- 226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/11(木) 02:09:12 ID:8ps33nq2.net
- 保守〜
- 227 :1:2010/02/11(木) 19:31:26 ID:LeJmbkTW.net
-
マリンフォードの海軍本部をモデルとしたブリタニアの海軍支部。
ブリタニアの全面援助で建てられたこの要塞の海軍からの影響は
外装だけには留まらなかった。その内部――この海域の犯罪者達を
幽閉する留置場は、あの「インペル・ダウン」を真似られて作られていた。
地下、5階を最下層とし、その危険度によって、各階層に犯罪者達を振り分け、
監視するこの留置場は完成からただ、一人の脱獄囚も出していない。
その鉄壁の牢獄に“ゼロ”が投獄された夜、一人の潜入者が現れた。
- 228 :1:2010/02/11(木) 19:33:32 ID:LeJmbkTW.net
-
時刻は夜になり、満月がブリタニア支部を照らす。
その光が届かぬ、暗い階段を潜入者は下りていく。その潜入者の登場に
1階フロアの囚人達は狂喜した。この地獄に似つかわしくないその容姿は、
犯罪者達を好色に駆り立て、彼らは口々に卑猥な言葉を投げかける。
しかし、その歓声は看守の惨劇を目の当たりにすると、直後、悲鳴に変わり、
後は、ただひたすら沈黙するだけとなった。
フロアを下にいくほど、囚人の危険度は上がっていくこの留置場において、
3階フロアからの囚人は、“ブラック・リベリオン”において拘束された
“黒の騎士団”の団員達であった。その彼らが、侵入者にむけた眼差しは、
侮蔑ではなく、畏敬。投げかけるその言葉は、憎悪ではなく、親しみが込められていた。
その中を潜入者は進む。フロアを降りれば、降りるほど、強さを増す看守達など
眼中にはなかった。現れる敵を前に、右手を掲げ、たたこう呟くだけ。
「…弾けろ!」
それだけで、敵は“沸騰”し、大火傷を負い、床に倒れる。その横を潜入者は悠然と進む。
その足は、ついに5階フロアに到達した。このフロアにいる犯罪者はただ、一人。
先の“ブラック・リベリオン”の首謀者。大海賊船隊“黒の騎士団”の元団長。
彼の牢を前にして、潜入者は歩みを止め、ゆっくりと右手を掲げた。
カレン「答えて、ルルーシュ。あなたは私に“ギアス”をかけたの?」
- 229 :1:2010/02/11(木) 19:35:33 ID:LeJmbkTW.net
-
…時刻はもう夜になっただろうか。拘束され、牢に放り込まれてた後は、
激しいショックと絶望により、冷静さを失っていた。心を落ち着けるために
瞳を閉じ、ただ時が過ぎることに身を委ねていたが、いつのまにかに浅い眠りに
落ちていたようだ。仕方のないことだ。ルフィ達と別れた後、不眠不休でこの
海軍支部に潜入し、海兵達に“ギアス”をかけた。その疲れが出たのだろう。
必ずここに来ると思っていたよ…ゼロ。
それにスザク君…よくやってくれた。また勲章が増えたね
脳裏に数時間前の映像が浮かび上がる。地面に組み伏せられたオレが見たのは、
微笑を浮かべ、冷徹に自分を見下す宿敵。、
その傍らで呆然と立ち尽くしている親友の姿。
――シュナイゼルの言葉。あれはブラフだ。
限られた選択肢の中で、オレが辿りついた答え。奴がそれを読んでいたのだ。
すでに海軍支部のどこかに身を潜めながら、俺達を見学していたのだろう。
まるで、演劇鑑賞に招待されたゲストのように。
スザク…アイツは、何も知らされていない。シュナイゼルは、絶妙のタイミングで
言葉というナイフに不信という毒を塗り、投げ放った。俺たちの決意を殺すために。
全ては、シュナイゼルが仕組んだことだ。奴はそれが出来る人間であり、
スザクは“嘘”をつける男ではない。――なにより、オレは、アイツを信じたい。
ナナリーは必ず、スザクが助けてくれる!
だから、もうなにも心配する必要はない。たとえ、オレの身に何があったとしても…。
ルルーシュ「(…そうだろう?カレン)」
- 230 :1:2010/02/11(木) 19:36:58 ID:LeJmbkTW.net
-
卜部さんが死んだあの日、私の中にある“疑念”が生まれた。
あの日、卜部さんは、“ギアス”に操られ、扇さんに襲い掛かった。
それを止めるために藤堂さんと四聖剣の仲間達は已む無く、卜部さんを
殺害した。それが、扇さんが私に話してくれた内容だった。
“ギアス”
人の意思を操るゼロの能力。
私は、戦場において、何度か“ギアス”をかけられたと思われる敵に遭遇している。
どこか、生気がなく、うつろな目をしていた。ソイツは私達を気にも留めず、
味方の陣地に突入し自爆テロを起こした。あれは、人というよりも、
人形の様に、戦う気概も、生きようとする意志も感じることはできなかった。
卜部さんの水葬はその日のうちに行われた。
最後に正装に着せ替える作業は、私が行った。藤堂さん達は、
たとえ任務といえど、仲間を殺めたことに自責の念を抱き辞退した。
藤堂さん達以外で卜部さんと最も親しかった隊長は私だ。“ブラック・リベリオン”敗戦後を共に生き、あの人が目玉焼きに何をかけるかだって知っていた。
だから、私がやらなくちゃ。五番隊の隊員達の補助を伴い、作業に入る。
“疑念”はその時、生まれた。
- 231 :1:2010/02/11(木) 19:38:50 ID:LeJmbkTW.net
-
卜部さんの体には夥しいほどに切り刻まれていた。
それは、藤堂さんと四聖剣によってつけられたものだ。
彼らの“決死”のフォーメーションから逃れるのは、私でも難しい。
それも、一体四の劣勢の状況においては…“ギアス”に操られているような状態では
きっと、一撃のもとに決着したはずだ。
…だが、体の傷は違う事実を訴えている。この傷は、あのフォーメーションを何度も
潜り抜けたことを物語っている。腕や肩の傷は、急所への一撃を防ぐために出来たものだ。
胸の傷は心臓への斬撃を避けた時にできたのだろう。
額を擦りむいている。何度も倒れ、そして起き上がってきたに違いない。
全ての傷から、隊長としての意地…戦士の意志を感じる。
全ての傷は、訴える。“断じて操られてなどいない”と。
――頭が割れるように痛い。
頭の中に、小さな光が生まれ、それが黒い霧に押し潰されないように懸命に抗っている。
なにが“嘘”で何が“真実”なのか。
それが分かるまで、私は一歩も前に進めない…!
――だから
- 232 :1:2010/02/11(木) 19:43:34 ID:LeJmbkTW.net
-
カレン「答えて、ルルーシュ。あなたは私に“ギアス”をかけたの?」
右手を掲げたカレンは、苦しそうに頭を押さえる。
何ももたない右手。しかし、それはマシンガンを向けられるより、遥かに危険である
ことは、このブリタニア海に生きる者にとっては常識だった。
その危険な右手――“輻射波動”に襲われた敵は、“沸騰”し大火傷を負う。
その右手との距離が近ければ、近いほど、“輻射波動”の業火はその威力を強め、
ゼロ距離における攻撃は文字通りこの世界から“消滅”を意味する。
しかし、今日、その禍々しい凶器を向ける相手は、自分が命を懸けて守り通してきた主君。
かつての仲間だった。
カレン「“ギアス”という力を使い…私の心を捻じ曲げて…従わせて――」
頭の中で黒い霧が渦巻き、その力を増している。それに押し消されないように
小さな光が懸命に足掻いている。頭が割れるように痛い…。
今にも倒れそうな身体。折れかけた心。
それを支えているのは、視界に入ったルルーシュの姿だった。
ルルーシュ「フフフ…フハハハハハハハ」
カレン「ルルーシュ-――ッ!?」
- 233 :1:2010/02/11(木) 19:49:25 ID:LeJmbkTW.net
-
ルルーシュの笑い声を「嘲り」と捉えたカレンは怒りに駆られ鉄格子に詰め寄った。
その右手は赤く光り“輻射波動”の初動の段階に入る。
ルルーシュとカレンの距離はもはや1mもない。その輝きはルルーシュの瞳を
照らし、その瞳に映るカレンを赤く染めた。
口を閉じたルルーシュはただカレンを見つめていた。静かに、昔を懐かしむように。
スザクもそうだが、ここ数日は昔を懐かしむことが多い。まだそんな歳ではないのにな。
カレン。君は覚えているだろうか?オレと初めて会った時のことを。
…ゼロとしてエリア11で活動を始めた頃のことだ。仲間を集めるために、
オレが目をつけたのは、レジスタンスとして名を売っていた「ナオトグループ」。
そして、その中で有名なのが「紅い月」と呼ばれる女テロリストだった。
使えるならば“駒”として利用する、そう考えて近づいたオレは、結局カレンに
“ギアス”をかけることはできなかった。圧倒されたのだった。
その手に持っていた銃ではなく、その瞳に宿る強い意志、気高さに。
そして、オレ達は“黒の騎士団”を結成し、ブリタニアとの戦いを始めた。
カレンは最も優秀な部下になり、背中を預けることができる唯一の戦友になった。
“成田攻防戦”の時、土砂崩れを利用したオレの戦術は、ブリタニア軍だけではなく、
多くの一般人の被害者を出すことになった。
共に進みます。私は、あなたと共に
自分の戦いに…歩みに迷い、立ち止まりそうになったオレの背中を押してくれた
のは、君だった。カレン、君がいてくれたから、オレは歩み続けることが出来た。
――だから
- 234 :1:2010/02/11(木) 19:51:42 ID:LeJmbkTW.net
-
ルルーシュ「君の心は君自身のものだ。ゼロへの忠誠も憧れも全て」
カレン「う、動かないで!」
カレンに向かって歩き出すルルーシュ。それを静止しようと声をあがるカレン。
両者の間の距離はカレンの掲げる右手のみになり、ルルーシュはその前で歩みを止めた。
ルルーシュ「カレン、誇りに思っていい。君が決めたんだ。君が選んだのだこの…私を」
カレン「…ッ!」
そう言ってルルーシュは再び、歩み始める。カレンは腕を引き、ルルーシュとの距離は
鉄格子を挟むのみとなる。離れようと身を引こうとするカレン。
その右手をルルーシュが掴んだ。
カレンのあの時の誓いを…誇りを守ることができるのは“ギアス”なんかじゃない。
必要なのは“言葉”。それを伝える“覚悟”だけだ…。
- 235 :1:2010/02/11(木) 19:53:31 ID:LeJmbkTW.net
-
ルルーシュ「グウッ!!」
カレン「あ、ああ…!」
カレンはその光景に言葉を失った。自分の右手を…この海域で最も危険な凶器を掴んだ
ルルーシュは、その右手を自分の胸に押し付けたのだ。その右手――“輻射波動”は
初動の状態とはいえ、その高熱は、ルルーシュの服を焦がし、肉を焼く。辺りに特有の
嫌な匂いが立ち込める。慌てて能力を解除し、離れようとするカレンの手をルルーシュは
離さない。ただ、その瞳のみを見つめ、言葉を続ける。
ルルーシュ「…信じることができないか?」
カレン「…ルルーシュ」
辺りを静寂が覆う。カレンの耳に聞こえてくるのは、自分の心臓の高鳴り、
そして、右手を通して伝わってくるルルーシュの鼓動だけだった。
カレン「(…思い出した。私はあの時、“ギアス”にかけられたんだ)」
- 236 :1:2010/02/11(木) 19:56:38 ID:LeJmbkTW.net
-
カレン「待って!一方的過ぎるわ!こんなの!ゼロのおかげで私達、
ここまでこられたんじゃない!彼の言い分も・・・!」
玉城「離れろカレン!お前も死にたいのか?」
扇「“ギアス”だ!カレンも“ギアス”に操られているんだ〜ッ!」
第四倉庫に呼び出された私達を待っていたのは、幹部達のクーデターだった。
幹部達は空ろな瞳と重火器を私達に向け、もはや話し合うチャンスすらなかった。
私は、即座に“輻射波動”を展開させて、ゼロの盾となる。ゼロを守ることは
親衛隊長としての任務。ゼロはこのエリアの希望だ。私が守らなくちゃ。
“輻射波動”の火力を最大に上げ、敵の武器を観察する。マシンガンの他にバズーカ。
これほどの火力に私は耐え切ることができるだろうか?
できるだろうか…ゼロを逃がすことを。
カレン「(…無理だ)」
“輻射波動”の持続時間はそう長くはない。考えられる退路は全て塞がれている。
罠に嵌った時に、勝敗は決まっていたのだ。
涙が出てきた。心臓の高鳴りが聞こえてくる。まるでそれは死神の足音のように感じる。
だが、逃げ出す気はなかった。命に代えてでも守るべき人がいたから。
…でも、聞きたかった。何でもいいから。何か“言葉”を。
それを聞けば、聞くことができたなら、きっと私は大丈夫。どこまでも戦える!
だから、ゼロ!私に――
ルルーシュ「…カレン、君は生きろ!」
光が私の中で膨らみ、あふれ出る。そして、黒い霧を打ち消した。
- 237 :1:2010/02/11(木) 20:01:18 ID:LeJmbkTW.net
-
ルルーシュ「カレン…?」
カレン「ルルーシュ…私は…私は――」
カレンの瞳から大粒の涙があふれる。カレンの瞳を覆っていた黒い霧は消え、その瞳に力が戻った。全て思い出したのだった。自分が“ギアス”にかけられたことに。
その“誓い”その“誇り”は間違いではなかったことに。
カレン「私は、私は――ッ!?」
ルルーシュに言葉を投げかけるカレン。その途中で何かに気付いたように視線を後ろに
逸らす。そして数秒間の沈黙後、俯きながらカレンは話し出した。
カレン「…私はあなたを信じることはできない。さよなら、ルルーシュ」
カレンはルルーシュに背を向け、歩き出し、扉の向こうに消えて行った。
ルルーシュ「…さよなら、カレン」
そう呟き、カレンを見送ったルルーシュの瞳は怒気を帯び、扉を睨みつける。
ルルーシュ「…監禁が趣味だとは聞いていたが、盗聴もそうだったとはな。
お前の存在は途中で気付いた。出て来い!そこにいるんだろ?扇」
- 238 :1:2010/02/11(木) 20:06:30 ID:LeJmbkTW.net
- >>225>>226
保守ありがとうございます!
仕事の都合上2〜3月は忙しいので、隔週でまとめて投稿したいと思います。
悪しからず(´・ω・`)
- 239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/25(木) 01:14:11 ID:BpOl5d1c.net
- 保守
- 240 :1:2010/02/28(日) 12:16:45 ID:5IqSAqcX.net
- >>239
保守して頂ましてありがとうございます。
- 241 :1:2010/02/28(日) 12:19:09 ID:5IqSAqcX.net
-
ルルーシュ「カレン…?」
カレン「ルルーシュ…私は…私は――」
カレンの瞳から大粒の涙があふれる。カレンの瞳を覆っていた黒い霧は消え、
その瞳に力が戻った。全て思い出したのだった。自分が“ギアス”にかけられたことに。
その“誓い”その“誇り”は間違いではなかったことに。
カレン「私は、私は――ッ!?」
ルルーシュに言葉を投げかけるカレン。その途中で何かに気付いたように視線を後ろに
逸らす。そして数秒間の沈黙後、俯きながらカレンは話し出した。
カレン「…私はあなたを信じることはできない。さよなら、ルルーシュ」
カレンはルルーシュに背を向け、歩き出し、扉の向こうに消えて行った。
ルルーシュ「…さよなら、カレン」
そう呟き、カレンを見送ったルルーシュの瞳は怒気を帯び、扉を睨みつける。
ルルーシュ「…監禁が趣味だとは聞いていたが、盗聴もそうだったとはな。
お前の存在は途中で気付いた。出て来い!そこにいるんだろ?扇」
- 242 :1:2010/02/28(日) 12:21:32 ID:5IqSAqcX.net
-
扇「ククク、そうだよ。俺だよ!俺!扇だよ!」
扉を開けて一人の男が笑いながら歩いてきた。
男の名は、扇要。“黒の騎士団”元副団長にして、“扇ジャパン”現総帥。
ゼロを裏切り、ブリタニアに与した売国奴であり、日ノ本の次期首相であった。
扇「久しぶりだなゼロ!いや、ルルーシュと呼んだほうがいいかな?
ハハハ、牢屋の居心地はどうだい?」
ルルーシュ「貴様…!」
扇の挑発に殺意を覚えたルルーシュはその姿に絶句した。
“黒の騎士団”時代から扇の奇抜なファッションセンスに定評があった。
しかし、副団長という立場から咎める者はおらず、多くの人間がスルーしていた。
ルルーシュ自身も作戦に支障がないので、敢えて放置した放置したそれは、
“扇ジャパン”総帥となった今、大きな変貌を遂げていた。
扇の軍団服をベースに、七武海の“サー”クロコダイルの服を意識したような
仰々しいジャケット。首には、今時の海賊は決してつけないであろう髑髏のネックレス。
そして、顔には、ギアス対策として、ドフラミンゴを参考にしたようなグラサンを
つけている。その姿は、海賊というより、ビジュアル系を意識して何か間違えて
しまった、といった感じだった。
ルルーシュ「…悪魔の実の能力か?」
扇のファッションを即座にスルーすることを決めたルルーシュは、唐突にそう呟いた。
“騎士団”の幹部達の突然の裏切りは、通常ではあり得ないほどのスピードだった。
それに、先ほどのカレンの様子。あれは、何かと心の中で必死に戦っているようだった。
これらの状況証拠から導き出せる結論は一つだけ。
その言葉を予期していたように、扇は“ニヤリ”と笑い、頭のリーゼントに手を当てる。
そこを中心に“黒い霧”が発生し、辺りを覆った。
- 243 :1:2010/02/28(日) 12:24:06 ID:5IqSAqcX.net
-
扇「そうだ!これが“サギサギの実”の能力。人を洗脳し、操る、オレの力だ〜ッ!
クハハハ、お前の“ギアス”ほど使い勝手は良くないがな!」
周囲を覆う黒い霧。もし、ルルーシュが顕微鏡を持っていて、それを覗いたら悲鳴を
上げていたに違いない。その黒い霧は、小さな扇が集合して構成されていた。
いわゆる“扇菌”というやつだ。
ルルーシュの“ギアス”が視覚情報からの洗脳ならば、
扇の能力は“扇菌”による寄生だった。その為に、洗脳するのには多少の時間がかかる。
扇「カレンの洗脳が甘いと思って、後をつけていたらご覧の通りだ。
まあ、あの様子なら、問題なしってことかな。
ククク、しかし、見事に振られたなルルーシュ〜ッ!
アイツはお前に惚れてたのによ〜!
まあ、安心しろ。カレンはオレが“2号”として可愛がってやるからよ!」
扇はそういって好色を顔に浮かべながら、下卑た笑いをする。
もはや、この海に敵なしの扇はその邪悪な色欲を隠そうともしない。
“騎士団のエース”もその欲望の対象の一つでしかなかった。
ルルーシュ「下種が…!それが貴様の正体か?」
この“大海賊時代”において扇のような雑魚が生き延びるには強者に媚を売るしかない。
“良い人の扇さん”は扇にとって、生き延びるための擬態であり、
必要だからこそ、それを演じてきたのだ。ブリタニアに意識を集中するあまり、
扇のその擬態に気付くことができなかった自分が恨めしかった。
扇という視界にすら入らない虫けらは
体内で成長し、遂にはその内部から主人を食い殺す寄生虫に変貌を遂げた。
最初に駆除すべきはこのような獅子身中の蟲だったのに。
扇「クハハハ、悔しいか?今まで散々、他人を“駒”として利用してきた
お前が逆に利用されるのはよう〜!“人の良い扇さん”か…。
ククク、そうだ!お前の正体を教えてくれた“お人好し”が誰か知ってるか?
教えてやるよ!お前の妹…ナナリーだ〜ッ!」
- 244 :1:2010/02/28(日) 13:05:24 ID:5IqSAqcX.net
-
ルルーシュ「―――ッ!?」
その名前を聞き驚きを隠せないルルーシュの表情を嬉しそうに見つめながら
扇は語り出した。
扇「まあ、あれは本当に偶然だった。お前が任務に向かっている間、後方支援を
任されたオレは“斑鳩”の中を散策していた。そこでナナリーに呼び止め
られてお茶に誘われたんだ。まあ、オレは幹部であり、“ゼロの親友”を
自称していたからな。何の警戒心もなく、誘ってきやがったぜ。
その時だよ。今後のために、媚の一つでも売ろうと考えたオレは、
自分がゼロの親友であり、いかにゼロを大事に思っているか熱演してやったのさ。
妹の好感を得られれば、今後、何かと有利になるかもしれないからな。
そしたら、どうだ?ナナリーの奴は急に泣き出して、自分の素性を語り出し
やがったんだ。自分達がブリタニアの元皇位継承者だとな」
そう言って、扇は両手を組み、目を瞑る。どうやら、その時のナナリーの真似を
しているようだ。その姿を見るルルーシュの瞳に殺意の炎が揺らぐ。
扇「一通り素性を話したアイツは最後に泣きながら言ったよ。
“どうか、お兄様を守ってあげてください。扇さん”ってよ〜!
クハハハハ、そんなことはしませ〜ん!クーデターはその直後だよ。
あの餓鬼も可哀想だよな〜。目さえ見えれば、秘密を知った時のオレの顔さえ
見ることができれば、気付くことができたのにな…自分が騙されたってよ〜。
クハハハ、まさに身も心も盲目ってやつだな!」
ルルーシュ「――死ね!死ね!!扇〜〜ッ!!
貴様のような外道に明日を迎える資格などない!
よくもナナリーを…ナナリーの優しい心を――ッ!!」
ルルーシュの両眼は赤い光を帯び、“ギアス”の紋章が浮かび上がる。
無駄とわかっても止めることはできない。ありったけの憎しみを込めて
呪詛の言葉を扇に放つ。
それをサングラス越しで見る扇はより愉快そうに笑い、懐から何かを取り出す。
扇「ナナリーの心?ああ、もしかしてコレのことか?」
- 245 :1:2010/02/28(日) 13:08:32 ID:5IqSAqcX.net
-
ルルーシュ「――それはッ!?」
扇の手に握られている物、それは「千羽鶴」。日ノ本に伝わる工芸品だった。
一枚の折り紙から鶴を作り、それを千回繰り返してようやく完成に至る。
シンプルだが、時間と根気、
そしてなにより作り手の相手を思う心が必要なもの。
それをさも、つまらなそうに扇は見つめる。
扇「本当に暇だよな〜あの目○ら。
いくら時間を持て余してるからって、こんなもんを作ってるんだから。
“皆さんの無事”を願って団員一人一人に作って配るんだってさ。
これはその第一号。
クハハハハ、うちの団員、何千人いるか知ってるのか?あのバカ。
このゴミ、人数分作るのにどんだけ時間がかかると思ってるんだよ!?
無理だよ!無駄だよ!無意味だよ〜ッ!!
だ・か・らさ〜。こうしてやるよおぉぉぉぉぉーーーーーーーーッ!!」
ルルーシュ「や、やめろ――ッ!!」
- 246 :1:2010/02/28(日) 13:16:41 ID:5IqSAqcX.net
-
牢獄に“ゴキッ!”という鈍い音を響き、ルルーシュは苦痛に顔を歪める。
自分の鉄格子の前に投げ捨てられた千羽鶴――ナナリーの心。
それを目がけて襲い掛かる扇の踵から守ろうと投げ出した右手は
千羽鶴と共に踏みにじられた。
ルルーシュ「――グあッ…!」
扇「そうやると思ったよ…そう来ると分かってたよ!ルルーシュ〜〜〜!
クハハハ、読めるぞ!手に取るように!あの“ゼロ”の行動がよ〜!
だから!だから、お前は負けたんだよーーッ!!」
涎を垂らしながら、愉悦を顔に浮かべる扇ははしゃぎ出し、
千羽鶴と共にルルーシュの右手を踏みにじる。
扇「ケッ!何が兄妹だよ、カスが!
ん?ああ、そうだ、他にもいたな“自称弟”が。
アイツだよ!お前の“ギアス”に操られたあの偽者の、
暗殺者で、護衛の…そうそう!ロロとか言ったな。あのクソガキ!」
ルルーシュ「…!」
- 247 :1:2010/02/28(日) 22:15:45 ID:+9/7K1Lu.net
-
ロロ・ランペルージ。
ゼロを殺しにきたブリタニアの暗殺者。
“ギアス”を使い、洗脳した偽りの弟。
最後までそれを信じて、自分を救出するために命を投げ出した。
死に際の…安らかな笑顔が頭を過ぎる。
扇「お前が海軍に連行された後、任務から戻ってきたあのガキは
オレに泣きついてきたんだよ。“兄さんはどこに行った!?”ってよ〜。
泣きながら、死にそうな顔してさ。
あんまりにも、惨めなので、オレは教えてやったんだよ。真実をよ〜。
“お前はルルーシュの弟なんかじゃない。お前はギアスで操られてる
だけのまったくの赤の他人なんだよ〜“ってさ。そしたらどうしたと思う?」
ロロ「兄さんの居場所を吐くかあの世に逝くか10秒以内に決めてください。
10、9、(超早口)2.1…」
扇「…いつの間にか、ナイフを首元に当てられて脅迫されたんだよーーーッ!!
クソッ!あの二重人格のクソガキめ!無機質な冷たい目で見つめやがってよ〜ッ!
あまりの恐怖でその場で失禁しちまったじゃねーか!クソ!クソ!」
その時の状況を思い出し、扇は怒り出す。まるで復讐するかのように足に力をこめ、
“グリグリ”と右手を踏みにじる。完全な逆恨みである。
それをルルーシュは一言も発さずにひたすらに耐えていた。
- 248 :1:2010/02/28(日) 22:19:44 ID:+9/7K1Lu.net
-
知っていたのだ。
自分が何か反応することは、この変質者に快楽を与えるだけにしかならないことを。
だが、踏みつけられる痛みはスザクの時の何百倍も。
心を焼き尽くそうとする炎はカレンの“輻射波動”の何千倍もの熱を感じる。
ただ、屈辱に耐えることしかできない…それこそが最大の屈辱だった。
扇「お前の側にいないってことはあのガキはもう、この世にはいないってことか?
アイツ、心臓が悪かったそうだからな〜。海軍を襲撃した時にか?
クハハハ、最後までボロ雑巾な、操り人形の哀れな人生だったな〜ッ!」
――ロロ。
扇「お前らは俺が日ノ本を手に入れるための“駒”に過ぎないんだよ〜ッ!
“明日を迎える資格”とか言ったよな?
クハハハ、明日、死ぬのはお前だろうよ!明日の同盟式でお前は多くの
観衆が見つめる前で、その首を落とすんだよ。この海軍広場には、そのため
の特設処刑場が建設された。お前は死ぬんだよ!ルルーシュ〜〜ッ!」
――こんな奴に…
扇「お前に…お前らに“明日”なんて来ないんだよ!
この世界はオレの都合のいいように設定されてんだ!
お前らに“優しい世界”なんてもんは永久に訪れないんだよ〜ッ!!
――こんな奴に…!
扇「まったく、哀れな奴らだぜ。ん?そうそう…他にもいたな哀れな奴らが。
“麦わらの一味”だったよな?船長は確か“麦わら”のルフィ。
せっかく、グランドラインまで来て、一億ベリーまで成り上がったのに
お前と出会ったおかげでアイツの海賊人生は終わりだ。
今、海軍とブリタニアが総力を挙げて探してるぜ。
お前の“仲間”ってことでよ〜」
――…!
- 249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 22:21:00 ID:3UBogvCh.net
- ルルーシュがクロネコ海賊団や魚人海賊団と闘って欲しかった
- 250 :1:2010/02/28(日) 22:25:47 ID:+9/7K1Lu.net
-
扇「大方、“ギアス”で操って駒にしたんだろ?
念には、念を入れて、オレが今から出陣して“麦わら”の一味の首を
ここに持ってきてやろうか?“扇ジャパン”総帥のこのオレがよ〜ッ!!
ん…?」
白目をむき出し、嗜虐の快楽に悶える扇は、ルルーシュを苦しめるため、
思いつく限りの挑発を繰り返す。その一つとして挙げた“麦わら”の一味討伐。
仕事嫌いの扇がこの時間に動くはずもない。ただ、ルルーシュを挑発するため
に出したその提案の直後、扇はルルーシュの変化に気付いた。
ルルーシュは顔を伏せ、肩を震わせていた。
扇「なんだ?なんだ〜ッ!!ついに泣き出して…」
「…フフフ」
扇「あ?」
ルルーシュ「フフフ、フハハハハハハハ――」
突如として、だが確かに、そして高らかに声を上げて――“ゼロ”は笑った
- 251 :1:2010/02/28(日) 22:35:00 ID:+9/7K1Lu.net
- >>249
ごめんね。オレの技量じゃ無理そうです。
ルルーシュの場合、ギアスがチート能力すぎて相手が情報を知らない限り、
誰でも勝ててしまうから、話を作るのが難しそうです。
ルルーシュは戦闘ができないので、駆け引きが中心になると予想されますが、
ギアスという能力があれば、本来駆け引きすらいらないと思います。
(話してないでさっさとギアスをかけろ)という展開になりそう・・・。
まあ、定期的に投稿しますので、この話を気に入って頂けたのなら
またいらしてください。
- 252 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 11:53:40 ID:MXAYGKvy.net
- 保守
- 253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 22:12:24 ID:3Yze4ag1.net
- 扇をルルーシュとC.C.と黒の騎士団全員と麦わら海賊団全員で集団リンチして欲しい
- 254 :1:2010/03/14(日) 21:42:25 ID:sExxAoNf.net
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/ / ヽ /
\ / ヽ _ /
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``‐、 / _,.‐''/- 、
人物紹介そのE
名前 扇要 別名“ペテン師”扇
能力 モジャモジャノーム(サギサギの実)
所属“扇ジャパン”総帥
懸賞金 ブリタニアとの同盟締結により抹消
*作者が責任を持って惨めで凄惨な最後を遂げることをお約束します。
- 255 :1:2010/03/14(日) 21:47:57 ID:sExxAoNf.net
- >>252
毎回、保守して頂き感謝です。(´・ω・`)
>>253
そんな甘い最後にはなりません。扇レクイエムまで突っ走ります。
- 256 :1:2010/03/14(日) 21:51:05 ID:sExxAoNf.net
-
扇「な、何だよ〜何が可笑しいんだよ…」
その笑い声に驚いた扇は後ずさりしながら、理由を尋ねる。
扇の声には怯えが混じり、自慢のリーゼントも心なしか萎れている。
“ゼロ”の笑い声。
ただ、それだけで、両者の関係は一変した。
扇は思い出していた。ゼロが笑うという意味を。それは――勝利の確信。
どんな絶望的な戦局であろうとも、その笑い声が響き渡れば、
団員達の瞳には希望の光が灯る。
事実、ゼロが笑った後で、負けた戦いは一度たりともない。
しかし、敵となった今の立場において、
その声は、何と恐ろしく邪悪で薄気味悪いものか。
それは、まるで自分を地獄に誘おうとする死神の如く。
もはや、そこには元皇位継承者の脆弱な影はなかった。
そこにいるのは、紛れもなくブリタニア海を支配した“魔王”と呼ばれた海賊。
ルルーシュ「…笑わせてもらった礼に一つ忠告してやろう。
“麦わらの一味”に手を出すなど止めておけ」
顔を上げたルルーシュの瞳から赤い光と“ギアス”の紋章が消えていた。
ただ、その瞳には、以前のように強い自信と確信に満ちている。
ルルーシュ「扇、お前が何を企もうとも、どんな手段を使おうとも無駄だ。
アイツは…ルフィは――」
“海 賊 王” になる男だ!!
- 257 :1:2010/03/14(日) 21:54:46 ID:sExxAoNf.net
-
扇「はぁ!?はあぁぁぁぁ〜ッ!?」
ルルーシュ「…だから、貴様のような雑魚では、はじめから相手にならない。
諦めろ。というか死ね。自ら硫酸を被り惨たらしく逝け。」
“海賊王”その想定外の言葉に驚愕の声を上げる扇。
今時の子供達ですら、そんなことは口にしない。
しかし、ゼロから…あの“魔王”と呼ばれた男からそのセリフが飛び出してきた。
さらには、“ギアス”が使えたなら、実行させていたであろう恐ろしい内容も。
ルルーシュ「何より、オレが何の策も講じていないとでも思っているのか?
フフ、すでに麦わら達はこの海域を脱出して、
今頃は“ウォーターセブン”に着いているだろう。
相変わらず無能で安心したよ扇。
貴様が日ノ本を手に入れる?
思い上がりも大概にしろ!せいぜい、シュナイゼルに駒として
使い捨てにされるだけだ。
そして、そんなことはエリアの民が…日ノ本人が許さない。
扇…日ノ本人を舐めるなよ!!
彼らは強い!それは共に戦ってきたオレが一番よく知っている。
たとえ、オレが死のうとも、彼らは独力でブリタニアを倒し、
いつの日か日ノ本を取り戻す!
貴様は首が落ちるその日まで、砂上の城の中で怯えながら暮らすがいい!」
ルルーシュの言葉は続く。
ブリタニアの皇子が日ノ本人の力を信じ、
日ノ本人の売国奴を糾弾するというシュールな光景がそこにあった。
ルルーシュの顔には活力が戻り、得意の毒舌も復活した。
扇は黙っていた。ルルーシュの弁舌に圧倒されたこともそうだが、
何よりも、その瞳に…強い確信を帯びたその瞳の力に沈黙した。
ただ、体を“ワナワナ”と震わせながら。
- 258 :1:2010/03/14(日) 21:57:53 ID:sExxAoNf.net
-
扇「…ククク」
ルルーシュ「…フフフ」
扇「クハハハハハ――」
ルルーシュ「フハハハハハ――」
扇・ルルーシュ「ハーッハハハ!」
“ハーッハハハ!!”
扇「…何が可笑しい〜〜〜ッ!!」
ルルーシュ「…フン」
笑い出した直後、白目を剥きだしながら逆キレするリーゼント頭。
そのノリつっこみに応じておきながら、ルルーシュは
それをさも、つまらなそうに、まるでゴミを見るような目で見つめる。
扇は思い出していた。
クーデターを成功させたことを。ナナリーを売り渡したことを。
シュナイゼルから日ノ本の統治を認められたことを。この海の支配者となったことを。
扇「(なのに…なのに…何だ!これは〜〜〜)」
二人の関係はあの頃に戻ってしまった。
何を考えているか分からない仮面の魔王に対して必死に媚を売っていたあの頃に。
きっと仮面越しに、このゴミを見るような目で自分は見られていたのだ。
扇「その目で…その目でオレを見るんじゃね〜ゼロォォォーーーーーーッ!!」
助走をつけて走りだした扇は足を振り上げる。、まるでサッカーボールを蹴るように。
その足、憎しみが、ルルーシュに…ゼロに襲い掛かった。
- 259 :1:2010/03/15(月) 00:10:58 ID:bYB68LrT.net
- 「止めたまえ、扇君」
その声に反応し、扇の足がルルーシュの顔、1cm手前でストップする。
その声がした方向から一人の男が歩いてくる。
ブリタニア兵を従え、金髪で長身。高貴な身なりのその男は微笑を浮かべる。
扇「シュ、シュナイゼル様〜〜」
犬のような声を上げ、扇はシュナイゼルに近づいていく。
媚を売ったことを屈辱と感じていた男とは思えない反応。
モミ手はだんだんと速度を増し、今にも火を吹くそうになっている。
シュナイゼル「扇君。これはどういうことかな?」
シュナイゼルは相変わらず、微笑を崩そうともせず、現状把握に努める。
扇「へへへ、実はうちの団員がゼロを襲おうとしましてね。
そこを何とかこの扇めが止めた次第です。
しかし、この薄汚いペテン師は相変わらずの演説を始めまして。
それで、少しお灸を据えてやろうと思いまして…。
まあ、つまりは“正義の制裁”を――」
シュナイゼル「捕虜の虐待は国際法違反だと知っているかな?」
これまでの過程の説明、そして自己弁護を始めようとする扇の言葉を
シュナイゼルは制す。笑ってはいるが、その瞳に冷徹な光が輝く。
- 260 :1:2010/03/15(月) 00:13:04 ID:bYB68LrT.net
-
扇「…バレなければ無問題では?どうせ明日には死ぬ男ですから」
その“ザ・犯罪者”の肉声を前にブリタニア兵達がざわめいた。
自分達の敵…“黒の騎士団”は数倍の敵に対して戦いを挑んでくる
強さと勇気を兼ねそろえた相手だった。
だからこそ、今回の同盟締結により、その脅威が消えることを
喜ぶブリタニア兵も多い。しかし、この犯罪者がそのトップに…!?
シュナイゼル「扇君…この場は帰ってくれないかな」
シュナイゼルは相変わらず、微笑を浮かべる。
だが、その場の空気が一変したのは誰もが気付いてた。
その空気は扇の首に巻きつき、その息の根を止めようと動き始めた。
扇「へ…へへ、私はこれで失礼します。ゼロ!全てはお前が悪い!」
そう言って扇は部屋から逃げるように出て行く。
ゼロに対する最後の罵倒を置き土産にして。
- 261 :1:2010/03/15(月) 00:15:13 ID:bYB68LrT.net
-
扇「(チッ!シュナイゼルの野郎!いいところで邪魔しやがって)」
唾を吐き、悪態をつきながら、扇はもと来た道を戻っていく。
せいぜい、シュナイゼルに駒として使い捨てにされるだけだ。
先ほどの、ルルーシュの…ゼロの言葉が扇の脳裏に蘇る。
いくら無能だからといって、扇でもそれくらいのことは予想できる。
“エリアの半分を陥落させた男”それがシュナイゼルの異名。
“黒の騎士団”時代においても、その戦略・戦術の高さを目の当たりにしている。
そのような男がイレブンである自分を部下として、仲間として信用するはずがない。
だからこそ、何度かの会見の時に、使ったのだ…悪魔の実の力を。だが――
扇「(あの野郎…欲望ってものがまるでないのか?)」
“サギサギ”の実の力は欲望に寄生して発動する。
しかし、シュナイゼルにはそれが見当たらない。たまたま、現段階において
それがないのか。生まれつきなのかは分からない。だが、それがなければ
シュナイゼルを“駒”として操ることはできない。
扇「気持ちの悪い野郎だぜ…だが、時間はたっぷりある!そう!たっぷりとな」
- 262 :1:2010/03/15(月) 00:20:42 ID:bYB68LrT.net
-
シュナイゼル「…気持ちの悪い男だ」
扇が去った扉を見つめながら、シュナイゼルはそう呟いた。
見え透いた媚へつらい、時々、頭から湧き出るゴキブリのような黒い霧。
たとえ、シュナイゼルのように感情の起伏がない者でも嫌悪を感じずに
はいられない。その後、シュナイゼルは部下を下がらせた。
大海賊船隊“黒の騎士団”団長“魔王”ゼロ。
ブリタニア帝国宰相・シュナイゼル。
何度も戦火を交えてきた二人のトップがこの部屋ではじめて二人きりで対面する。
シュナイゼル「あのような男を部下にしたことがあなたの命取りとなった。
我々の勝負を分けたのは“部下の差”といってもよいでしょう。」
ルルーシュ「…。」
シュナイゼルの言葉に反論することばできない。
初期メンバーでナオトの親友というだけであのようなゴミクズを幹部にした
自分が恨めしかった。日ノ本型組織の限界を感じずにはいられない。
ルルーシュ「そんなことを話しにわざわざここに来たわけではあるまい?
本題に入れ。」
あのゴミに関する話題で時間を浪費することをルルーシュは避けた。
なによりも、シュナイゼルがここに来た理由が気になった。
何か…胸騒ぎがする。
シュナイゼル「…ルルーシュ様。先ほどシャルル皇帝がお亡くなりになりました」
- 263 :1:2010/03/15(月) 00:25:46 ID:bYB68LrT.net
-
ルルーシュ「―――ッ!!」
一瞬、頭の中が白くなった。
倒すべき宿敵、ブリタニアの象徴、自分達を捨てた父親。
まるで走馬灯のように数々の映像が頭を過ぎる。
病気で床に伏せていたのは知っていた。長くないことも。
だからこそ、焦っていた。
なんとしても生きている間にブリタニアを倒したかった。
アイツを引きずり出して、
母さんのことを懺悔させたかった…ナナリーに対して謝らせたかった。
シュナイゼル「さきほど、医師から連絡がありました。病死だそうです。
それとあなたが追っていたマリアンヌ様の暗殺犯についてですが、
あなたが倒した“ギアス饗団”のトップだったと判明しました。
自分達の研究にマリアンヌ様が反対していたのが理由のようです。
マリアンヌ様の死後、陛下がエリアの侵略を口にしたのも
彼らの進言のようです。
確かに…この頃から陛下は普通ではなかったように思います。
この時期を境に不死についての研究を始めたようです。」
自分が生きる理由。母親の仇討ち。その相手はいつも間にか倒していた。
その事実を前にルルーシュは声を失った。
仇を討った。暗殺犯を殺し、皇帝シャルルは死んだ。
――だが、達成感はなかった。ただ、喪失感だけが残る。心の一部が欠落したように
しかし、この事実を前にどうしても知っておかなければならない。
ルルーシュは顔を上げ、シュナイゼルを睨む。
ルルーシュ「シュナイゼル。皇帝を殺したのは貴様か!?」
- 264 :1:2010/03/15(月) 00:27:46 ID:bYB68LrT.net
-
シュナイゼル「…。」
シュナイゼルは黙ったままだ。
ルルーシュの質問の意図を見抜いたからだ。
皇帝が亡くなれば、ブリタニアを継ぐのは、ルルーシュとナナリーのどちらかになる。
しかし、その身柄はシュナイゼルが押さえている。その存在を闇に消しさえすれば
ブリタニアはシュナイゼルの手に落ちる。皇帝がなくなった今、
シュナイゼルこそがブリタニア帝国の事実上の盟主となった。
ルルーシュがシュナイゼルの皇帝暗殺を疑うのは当然といえる。
シュナイゼル「…いいえ、違います。ルルーシュ様。」
ルルーシュ「…。」
しかし、シュナイゼルはいつもの微笑を浮かべ、手短に答える。
ルルーシュもそれに反論することはしない。
この場においてシュナイゼルの言葉を覆す証拠などない。
なにより、ブリタニアがシュナイゼルの手に落ちた事実は変えられない。
真実などもはや、何の意味もなかった。
シュナイゼル「ルルーシュ様。あなたは私を誤解している。
私はブリタニアを手に入れよういう野心などない。
ただ、帝国宰相として最善の行動をとるだけです。
今までも、これからも。そう、だからこそ…」
- 265 :1:2010/03/15(月) 00:29:38 ID:bYB68LrT.net
-
ルルーシュはシュナイゼルを見つめる。
そして考えていた。恐らく、この男は“嘘”をついていないと。
これまでに多くの海賊達を見てきた。その目にギラつく野心を。
だが、シュナイゼルには、それがなかった。
対面してはじめてわかった。この男が自分の宿敵となり得た理由を。
この男、シュナイゼルはどこか感情が欠落している。
だからこそ、自分以上に最適で手段を選ばずに行動することができたのだ。
シュナイゼルは言葉を続ける。冷たい微笑をうけべながら、その言葉を放った。
シュナイゼル「…だからこそ、あなたには死んでもらわねばならない。」
ルルーシュ「…!」
シュナイゼル「海軍本部にあなたを引き渡したのは、
あなたに死んでもらいたくなかったからだ。
“インペル・ダウン”でおとなしくしてくれたのならば
いつの日か皇帝として迎えることができたかもしれない
――だが、あなたはこの海に帰ってきた。
本当に残念です。ルルーシュ様。
あなたが、“革命軍”傘下の海賊でなければ…。
“ドラゴン”の優秀な部下・ゼロでさえなければ」
- 266 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/27(土) 17:32:21 ID:2leGXRiS.net
- 保守だっ!
- 267 :1:2010/04/06(火) 22:44:02 ID:8rxmwlCb.net
- test
- 268 :1:2010/04/06(火) 22:47:04 ID:8rxmwlCb.net
- >>266
ありがとうございます。
プロバイダー全規制により、先週は投稿できませんでした。
少し書けましたので投稿します。
- 269 :1:2010/04/06(火) 22:49:33 ID:8rxmwlCb.net
-
海賊“魔王”ゼロの正体はブリタニアの皇子。
その事実により、反ブリタニア勢力は瓦解するというナミの推理は正しい。
しかし、敢えて間違いをあげるならば、それは、
その後の推理“ブリタニアが公表しなかった”という点だろう。
ブリタニアは公表しなかったのではない。決して“できなかった”のだ。
ゼロの正体のもう一つの意味。
ブリタニアの皇位継承者が“ドラゴン”の部下であるという事実によって。
シュナイゼル「あなたの存在によって、ブリタニアは二つに割れる。
皇帝を守護する騎士達を中心とする純血派。
そして、帝国主義者に別れ、内戦が起こるだろう」
ブリタニア帝国はエリア支配を行い帝国となった今においても、王国時代の気風を
残している。その象徴となるのが“騎士”の存在である。
騎士達は皇族に忠誠を誓い、生涯をかけて、それを守り通すことを誇りとする。
そして、彼らが結成した純血派はその中でも、より狂信的に皇族に忠誠を誓う
派閥であり、軍部内においても、大きな影響力を持っている。
逆に帝国主義者は皇族を国家のシステムの一部とみなす者達であり、その中心は
エリアに利権を持つ貴族達である。
この二つの勢力によって形成されているのがブリタニア軍。
その微妙なパワーバランスは次期皇帝…いや、事実上、現皇帝が“魔王”ゼロである
という事実をもって一気に崩れ去る。
シュナイゼル「この内戦はエリアに飛び火し、この諸島全土に広がるだろう。
だが、それだけではすまない。“彼ら”は必ず介入する。
あなたを…そしてドラゴンの存在を彼らは決して許さない。
彼ら“世界政府”は」
- 270 :1:2010/04/06(火) 22:53:53 ID:8rxmwlCb.net
-
シュナイゼルから発せられた“世界政府”という言葉。
それにより、ルルーシュは全てを理解した。
いや、より強く認識したといった方が正解だろう。
自身が正体を隠した理由…最も恐れていた敵なのだから。
“世界政府”
800年前に20人の王によって創設された国際組織。最高権力者“五老星”を筆頭に
世界中に加盟国を持ち、その数は170カ国以上に及ぶ。まさに世界最大の組織である。
大国ブリタニアといえど、その一加盟国に過ぎず、その国力に比べて発言力は
非常に低いものでしかなかった。
シュナイゼル「ドラゴンが“世界最悪の犯罪者”と呼ばれる所以は
世界政府そのものに対する反逆者だからだ。
その部下であるあなたが皇位に就くことを
世界政府の首脳達が黙って見過ごすはずがない。
“海軍本部”を含めた彼らの力の前にはたとえブリタニアと
いえども抗う術はない。分断統治されるか、あるいは
諸島全土が奴隷国となるか、どのみちの亡国は避けられない。
フフ、皮肉な話じゃないか。
帝国主義を掲げ、覇道を歩んでいたはずのブリタニア帝国が
いつのまにか、世界政府の植民地寸前だなんてね」
ゼロの仮面は希望のないパンドラの箱だ。
その箱を開けば、双頭の毒蛇が現れ、ブリタニアと反政府主義者に絡みつく。
その毒牙は、諸島全土を噛み砕き、朱色にそめる。
シュナイゼルは悲しそうに笑った。だが、それが真に見えないのは、この男が嘘を
ついているためだろうか。それとも…。
刹那、そんなことを考えてしまったルルーシュの思考が現実に引き戻される。
シュナイゼル「――だが、それはただの“真実”でしかない。
そんなものは消してしまえばいい。
ルルーシュ皇子は生涯、行方知らず。
ゼロは正体不明のまま、公開処刑される。
ただ、それだけだ。歴史にはそう記される。そのために…」
そう言ってシュナイゼルは後ろ手に隠していたものを床に投げ捨てる。
それは二回転ほど転がった後、床上で回転し、ルルーシュの前で止まった。
それは仮面――ブリタニア海で“魔王”と恐れられた男のそれだった。
シュナイゼル「あなたには死んでもらう。
正体不明の海賊――“魔王”ゼロとして」
- 271 :1:2010/04/06(火) 22:56:34 ID:8rxmwlCb.net
-
死刑宣告直後、自分の仮面を見つめるルルーシュに向かってシュナイゼルは
言葉を続けた。
シュナイゼル「明日、あなたの死によって、ゼロの登場から始まった
ブリタニアに対する“大反逆時代”の幕は下りる」
ルルーシュ「…フ、本当にいいのかなそれで?」
仮面に向けていた視線をシュナイゼルに移し、ルルーシュは語りだす。
その瞳の力は未だ衰えていない。
ルルーシュ「ゼロが正体不明のまま死ねば、ゼロは伝説と化す。
その意志を受け継ぎ、この仮面を被った者が新たなゼロとなり
ブリタニアに戦いを挑むだろう。何度も…何度でも!」
シュナイゼル「違うな、間違っているよ、ルルーシュ皇子。
ゼロの真贋はその奇跡によってのみ示される。
多くの観衆の見つめる中…“黒の騎士団”というかつての
仲間に裏切られ、惨めに死んだいく海賊など
だれが英雄と認めよう?負け犬の仮面を被る者など誰もいない」
ルルーシュ「…ッ!」
駆け引きが通じる相手ではないことは承知していたが、こうもあっさりとその可能性を
潰され、ルルーシュは押し黙った。
“黒の騎士団”との同盟締結は、その脅威を取り除くためだけではなかった。
その真の狙いは公開処刑における“ユダ”の役割を担わせるため。
ゼロの力の大半はその組織力にある。その組織そのものが裏切るならば
もはや、ゼロの存在は否定されたも同然だ。
仲間に見捨てられる者が英雄になれるわけがない。
シュナイゼルが捉えたのは本質――奇跡を起こせないゼロに価値などないのだから。
- 272 :1:2010/04/06(火) 23:03:54 ID:8rxmwlCb.net
-
シュナイゼル「フフ、だがそれだけではない。あなたの死はより大きな意味を持つ。
ルルーシュ様。
あなたはどれだけご自分のことを理解しておいでだろうか?
世界中で暗躍する革命軍のルーキー達。その中でもゼロの存在は別格だ。
たかが海賊がわずかな期間で反政府勢力をまとめ上げ、
ついには国家に対して独立戦争を仕掛けるまでの組織に変貌させた。
その知略、カリスマ性は他のルーキー達と比べて群を抜いている。
まるで若き日の“ドラゴン”のように…。
その急激な成長は世界政府の目に留まった。
いつの日か“ドラゴン”の後継者となり得る危険な存在として」
“魔王”ゼロの首にかかった懸賞金――2億3千万ベリー。
ルーキーとしては間違いなく破格の懸賞金額であり、七武海と比べても遜色がない。
この懸賞金は過去に行った行動より、
その未来に対する危険性がより多くの比重を占める。
その結果、先の“ブラック・リベリオン”において世界政府は
ブリタニアの要請とはいえ、異例ともいえる“バスターコール”の許可を下した。
すべては、ゼロという次世代の革命家の芽を摘み取るために。
シュナイゼル「だからこそ、あなたの死には価値がある。
“ドラゴン”の後継者となり得る器――“魔王”ゼロの死。
それは後の戦争に大きな意味を与える。
“革命軍に…そして”世界政府“に対してね。
明日、あなたの処刑に際して、ブリタニアは
“ドラゴン”に対して――宣戦を布告する」
- 273 :1:2010/04/06(火) 23:07:24 ID:8rxmwlCb.net
-
ルルーシュ「…生贄、という訳か」
シュナイゼル「理解が早くて嬉しいよ。そう、すぐさま“革命軍”と戦うわけではない。
だが、いずれその機会は必ず訪れる。
彼らが“世界の敵”である以上はね」
数秒の沈黙の後、ルルーシュが出した回答に、シュナイゼルはほんの一瞬、微笑を
崩した。その後、すぐに微笑を取り戻すシュナイゼル。
だが、微笑を崩したほんの一瞬、確かにその目には好意の念が浮かんでいた。
それは、自分と同じ舞台に立つものに対する敬意。
たとえ、敵であろうと賞賛せずにはいられないという人にとっては
自然な…シュナイゼルにとっては不自然な感情の発露であった。
シュナイゼル「“世界政府”においてブリタニアが覇権を握るには実績が必要だ。
あの老人達の椅子に座るための確かな…他国を納得させる程の
実績を上げる必要がある。そして、その機会は必ず訪れる。
いずれ行われる“革命軍”との戦争。その戦争においてブリタニアは
“世界政府”の中心国として“ドラゴン”を討つ」
- 274 :1:2010/04/06(火) 23:13:44 ID:8rxmwlCb.net
-
ルルーシュ「…そのために必要なのがオレの首と宣戦布告の事実と言う訳か」
シュナイゼル「後継者候補であるゼロの死と宣戦布告。その事実を前に
ブリタニアが戦争の中心国となるのに異を唱える国はいない」
ルルーシュ「フ、オレの首がそれほどの値うちを持つとな…光栄の極みだな」
シュナイゼル「喜んでほしいな、ルルーシュ様。
亡国の皇子として名を残すはずのあなたが、
ブリタニア帝国の更なる繁栄の礎となることできるのだから」
ルルーシュの皮肉をそれ以上の皮肉で返すシュナイゼル。
その宿敵をルルーシュは見つめる。
――さすがだよ。ゼロという死神を逆に栄光のための踏み台にするとはな。
敵ながら見事なものだ。ただ一点の間違いを覗けばな…。
ルルーシュは瞼を閉じる。そこ脳裏には、革命軍から旅立つ前日の嵐の雨音が。
そして、黒い影と頬に刻まれた巨大な刺青が浮かび上がる。
ルルーシュ「(オレは…“ドラゴン”の部下ではない)」
- 275 :1:2010/04/06(火) 23:25:46 ID:8rxmwlCb.net
- ギアス側は人間関係や世界情勢。ワンピース側はバトルが中心になります。
もう頭の中では完結しているのですが、描写がうまくかけなくて
スピードが上がりません(汗)
保守して頂けるのは本当に助かります。
感想や自分なら”こんな展開にした”などの意見もあったら聞きたいです。
ではまた
- 276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/15(木) 15:01:12 ID:tcPmdtMl.net
- なかなか面白い
後扇をキッチリキッカリ処理してくれ
- 277 :1:2010/04/20(火) 22:21:55 ID:NhKnhb2B.net
- / もはや、誰も見てないお・・・。 \
/ ̄ ̄ ̄\
/ ─ ─ \
/ <○> <○> \.
| (__人__) |
\ ` ⌒´ /
/ \
冗談ぬきの↑みたいな状態だった。
>>276
ありがとう!亀でも書き進めてみるよ
- 278 :1:2010/04/25(日) 20:21:00 ID:ncSwjkGq.net
-
C.C.「おめでとう。これで共犯関係成立だな」
そう言って、ピザを齧るC.C.。オレはそれをただ呆然と見つめていた。
現実感がない。まるで先ほどのことが夢であったかのように。
――1時間前
オレ達が海に出て数年が経った。つまり、C.C.に助けられ、革命軍で数年を
過ごしたことになる。この数年間は大きい。この革命軍で学び得たことは
この先の戦いを有利に進める大きな糧になるだろう。
そう、オレはこの先の戦い…ブリタニアを倒すために海に出た。
明日、ついにその戦いが始まる。ブリタニアを…皇帝シャルルを倒す戦いが。
ルルーシュ「フ、天も祝福してくれているようだな」
外は嵐だった。風がうねりを上げ、その音はまるで悲鳴のように船内に轟く。
これから起きることを予期するかのように。
今日は旅立ちの前日。“ドラゴン”から直接指示を受け、オレは晴れて革命軍の一員に、
“ドラゴン”の部下ということになるだろう。
“ドラゴン”から直接指示を受けるなど、異例の出来事だが、
オレがブリタニアの皇位継承者という立ち位置もまた異例に違いない。
革命軍にとってオレの存在はブリタニア諸島を押さえる最適の駒。
だからこその特別待遇。“ドラゴン”からの直接指示と言う訳だ。
オレは駒…違うな、間違っているぞ“ドラゴン”。
確かに革命軍には返せないほどの恩がある。だが、それ以上に譲れないものがある。
ブリタニアは…シャルルはこの手で倒さなければならない。
誓いは自らの手で果たさなければならない。
誰かの飼い犬となり、それを果たすことに意味などない。
人は小さいプライドと笑うだろう。大義のために捨てろと言うだろう。
――だが、その小さなプライドを守るため、オレは海に出た!
革命軍に従属してはならない。対等な同盟――共犯でなければならない。
ルルーシュ「そう、だから“ドラゴン”…貴様に“ギアス”をかける」
- 279 :1:2010/04/25(日) 20:24:56 ID:ncSwjkGq.net
- 計画は完璧だった。
ドラゴンと同席するはずだった幹部達。
オカマの王をはじめとするこの海で名の知れた賞金首はこの会談に来ることはない。
みな、他の予定に赴くことになる。全員が、不自然なほどに。
オレはドラゴンと二人きりで会談し、奴に“ギアス”を――
C.C.「モグ、モグ、モグ…」
…かけるはずだった。
何が“言ってなかったか?私にはギアスは効かないと”だ!
聞いていない!聞いていないぞ!そんなこと!
お前に助けられ、師と仰ぎ、数年になるが初めて聞いたぞ!
知っていたら、格好をつけて計画の全容を暴露したりしない!
C.C.「ムシャ、ムシャ、ムシャ…」
…しかし、オレの計画を知りながら、C.C.は止めようとしない。
ただ、部屋の片隅に佇みながらピザを食べ続けている。
“ドラゴン”を信頼しているのか。オレをなめているのか。
何を考えているのかまるで読めない。
思えば、初めて会った時から、この女の素性は知れない。
わかっているのは、不死身であり、ピザが大好物であることくらいか。
ルルーシュ「何を企んでいるかは知らないが…後悔するなよ。
あとで泣きを見ても知らないからな!このピザ女」
- 280 :1:2010/04/25(日) 20:27:17 ID:ncSwjkGq.net
-
C.C.「おめでとう。これで共犯関係成立だな」
目に涙を浮かべ、鼻水を垂れ流すオレを見下ろしながら、
C.C.は祝福の言葉を口にした。
――10分前
“ドラゴン”はオレ達の前にやってきた。
“革命軍”のトップ。“世界最悪の犯罪者”と言われる男。
その表情は黒いフードを深く被り、伺うことができない。
ただ、その頬に刻まれた巨大な刺青が“ドラゴン”本人であることを語っている。
奴が部屋に入った瞬間、オレは気絶しそうになった。
いや、正確には一瞬落ちていた。持ち直せたのは、後ろにいるC.C.に
かっこ悪いところを見せられないという意地、やせ我慢のおかげだった。
“覇気”
人間の気を高め武器する技。主な使用法は素手や武器による攻撃力を上げること。
優れた使い手による覇気は、悪魔の実の最高峰“ロギア”すら打ち破る。
そして、数百万に一人しか持ち得ない覇気…覇王色。
王の資格を持つ者のみが許されると言われる覇気。
普通の人間は意識を保つことすらできない。
その覇王色の覇気が今まさに、ほんの一瞬この部屋を駆け抜けて行った。
ドラゴンとの初対面。その僅か数秒間でオレの顔から色が失われた。
脳裏に過ぎるのは“死”の一文字。
冗談ではない!冗談ではなかった!
もはや、“ギアス”をかける計画など脳内から消去されていた。
全身の細胞が警戒音を奏で、体は緊急脱出モードに、
意識はすでにドアの外に走り出していた。
実感した。
“世界政府”にとっての脅威は革命軍ではない。“ドラゴン”自身であると。
- 281 :1:2010/04/25(日) 20:29:56 ID:ncSwjkGq.net
-
C.C.「そう落ち込むな。あの時のお前は今までで一番格好良かったぞ」
…もはや、“ドラゴン”に対してとれる策は一つだけ。
正直に話すこと…だけだった。
オレの言うことは恩を仇で返すことに他ならない。
“ドラゴン”に対する反逆と言われても仕方のないことだった。
喉が枯れる。
死の恐怖から涙が自然に流れ出し、挙句、鼻水まで…。
完全にキャラ崩壊だ。
――だが、譲ることはできなかった。
ドラゴン「男の旅立ちに水を差す気はない。
ブリタニアの皇子よ…行け、修羅の道を」
もはや、意識も絶え絶えのオレに“ドラゴン”が言った最後の言葉。
ブリタニア打倒後のエリア解放を条件とする同盟関係の成立だった。
- 282 :1:2010/04/25(日) 20:33:05 ID:ncSwjkGq.net
-
C.C.「フフ、今を生きる人間の表情はやはりいいものだ。
たとえ、涙でグシャグシャで鼻水を垂れ流す醜い様でも
それ自体が、真剣だからこそ、本気であるから
生きていることの証明に他ならない。
私にはもう…なくしてしまったものだからな」
ルルーシュ「…褒めてるのか、バカにしているのか、どっちだ?」
涙と鼻水を拭いながら、オレはC.C.を見上げた。
C.C.はいつの間にかピザを食べ終え、小さな笑みを浮かべている。
オレと“ドラゴン”の会談。
対等な同盟関係の成立を見届けた唯一の証人。
それがC.C.が選んだ自らの役割だった。
C.C.「そう睨むなよ。
私はただ、人間の素顔が好きなだけだ。
お前は、この革命軍の中で常に“仮面”を被ってきた。
自分自身を…そしてナナリーを守るためにな。
そんな、お前の本当の顔を見れたことが素直に嬉しいよ。
そして…もう、二度とその顔を晒すことはできなくなる。
これから先、必要だろ?これが」
一瞬だけ悲しそうな笑みを見せたC.C.が差し出したもの。
それは仮面。後、ブリタニア海で“魔王”と呼ばれる男のそれだった。
C.C.「…ただし、覚悟しろ。
それを被った瞬間から、世界が…お前の運命が変わる」
ルルーシュ「C.C.。この海に出た時から、覚悟などすでに決まっている。
いいだろう!変えてやろうじゃないか!この世界全てを!」
あの夏の日、オレの中に生まれた虚無という怪物は
漆黒の仮面に姿を変えこの世界に現れた。
――そう、おれが“ゼロ”世界を破壊し、世界を創造する男だ!
- 283 :1:2010/04/25(日) 20:38:14 ID:ncSwjkGq.net
-
C.C.「そうか、話は決まったな。では、さっそく旅の準備に入るぞ。
私は明日に備えて寝ることにする。
お前はピザを焼いておけ。できるだけ大量にな」
ルルーシュ「フ、お安い御用だ」
自分の部屋に戻っていくC.C.を横目に、オレはピザを作るため厨房に…
ルルーシュ「――ッて待て!!なぜ、お前まで一緒について来るんだ!?
聞いてなかったのか!?
“ドラゴン”との共犯関係はあくまで建前だ!
ブリタニアは俺自身の手で――」
C.C.「それはお前と“ドラゴン”との関係だ。私は知らん。
言ったはずだぞ、私はお前の“個人的な”共犯者だと。
それに、まだ契約を果たしてもらっていない」
ルルーシュ「契約って、お前、あれは…」
意地の悪い笑みを浮かべるC.C.にオレは反論することができなかった。
革命軍に入り、C.C.の師事した時に交わした小さな約束。
時が過ぎれば忘れられたはずの出来事が脳裏に蘇る。
契約を果たさない者が誓いを守るために海に出られるはずもなく、
翌日、オレとナナリー、そしてC.C.の3人で海に出ることになる。
“黒の騎士団”の前身となる、たった3人の海賊団で。
- 284 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/25(日) 20:44:57 ID:zUeiyWJI.net
- ・・・ドラゴンに惚れた
- 285 :1:2010/04/25(日) 20:55:01 ID:ncSwjkGq.net
- >>285
レスありがとう!
今日でなんとかワンピース側にバトンタッチ出来そうです。
あと、ちょっと埋もれすぎたのでageさせて頂きます。
興味のない方はスルー奨励します。すいません。
- 286 :1:2010/04/25(日) 21:26:56 ID:ncSwjkGq.net
-
その後、オレはブリタニアの商船を襲い、資金を奪い、名を挙げ、
ナオトグループを吸収し、“黒の騎士団”を結成する。
多くのテロリスト達を傘下に加え、“黒の騎士団”の力は増していった。
しかし、それは、オレの功績ではなかった。
革命軍の“魔女”。
その存在が、正体不明の仮面の海賊に“革命軍”所属という保障を与えた。
オレは何度も“革命軍”とは同盟関係であり、共犯にすぎないことを告げた。
しかし、いち海賊とあの“ドラゴン”が対等な同盟を結ぶと誰が信じよう。
テロリスト達はおろか、幹部達までオレの言葉を信じることはなかった。
戦火を挙げるにつれて、オレの異名は変化していった。
最初は、玉城のバカが誤解して流した「女幹部の愛人」
次は「革命軍の超新星」そうそう「革命仮面」なんてのもあったな。
結局、“黒の騎士団”が“大海賊船隊”と呼ばれる存在まで成長し、
ゼロが“魔王”という異名が与えられた今でも、“革命軍傘下”という
肩書きは消えることはなかった。
それどころか、世界政府の中には、ゼロを「ドラゴンの息子」と怪しむ者さえ
出てくる始末だ。おかげで、賞金額は極端に跳ね上がるという結果を招いた。
人は信じたいものを信じる。
その真実の前にあの日、あの部屋で交わらされた契約。
3人だけが知る真実は消え去っていった。
- 287 :1:2010/04/25(日) 21:32:11 ID:ncSwjkGq.net
-
シュナイゼル「…もし、初期の段階において“黒の騎士団”を倒すことが
できたなら、このような結果を避けることができたかも
しれない。だが、できなかった。
なぜなら、あなたの傍らにはいつも、あの“魔女”がいた」
回想の間、オレを無言で見つめていたシュナイゼルが
過去を思い返すように話し出した。
シュナイゼルの言葉は真実を告げていた。
ブリタニアの最高戦力――ナイト・オブ・ラウンズ(最強の12騎士)
もし、初期の段階において、ブリタニアが主力を用いていたのなら、
“騎士団”の全滅は避けることはできなかっただろう。
いや、それ以前にブリタニアの大部隊を前に、オレは幾度となく全滅の危機に陥った。
それを救ってくれたのが――C.C.
C.C.が独自に“革命軍”を動かし、ブリタニアを翻弄してくれたおかげで
オレは危機を脱出することができた。。
その結果“革命軍”の急襲に備え、シュナイゼルはナイト・オブ・ラウンズを
首都・ペンドラゴンをはじめとする要所から動かせずにいた。
ルルーシュ「(ハハ、何が“魔王”、何が“世界を変える男”だ。
結局、オレは…C.C.に…“ドラゴン”に――守られていた…!)」
- 288 :1:2010/04/25(日) 21:34:47 ID:ncSwjkGq.net
-
シュナイゼル「本当は彼女の身柄も押さえたかったのだがね。
“天竜人”から長年、ご所望があるようですし。
彼女…明日の同盟式に来てくれるだろうか?」
ルルーシュ「あの女はオレでも手を焼く。貴様では無理だな。
それに…“ドラゴン”を倒すだと?
――思い上がるなッ!シュナイゼル!」
シュナイゼルの言葉にルルーシュははじめて怒りの表情を見せた。
天竜人――世界貴族とよばれる特権階級に君臨する者達。
その地位に奢り、人々を奴隷として弄ぶと聞く。
その下種どもの歓心を買うためにC.C.を差し出す。
その計画を聞いた瞬間、
ルルーシュの脳裏に奴隷時代のC.C.が映った瞬間
すでに挑発の言葉は出ていた。
何の戦術も策略もない、ただの挑発。
シュナイゼル「お言葉痛みいります。ルルーシュ様。だが…」
その挑発、怒りを相変わらず、シュナイゼルは相変わらずの微笑で
受けてめる。そして、次の言葉を放った。
シュナイゼル「だが、ここから先は、あなたに関係のない世界だ」
ルルーシュ「…ッ!」
- 289 :1:2010/04/25(日) 21:38:52 ID:ncSwjkGq.net
- シュナイゼルの相変わらずの微笑。
そしてその言葉は決して変わることのない未来を示していた。
ゼロは…ルルーシュは明日、死ぬ。
どんなに、怒り、喚き、涙を流そうが、この先に進むことは決してないと。
ルルーシュ「…ナナリーを。ナナリーをどうするつもりだ」
扉に向かって歩き出す。シュナイゼルの背にルルーシュは話しかける。
もはや、その声に覇気はない。大切な妹を案じる兄の消え入りそうな
心のみがそこにある。
シュナイゼル「ナナリー様には、いずれは皇位に就いて頂きます。
しかし、あの方は目が不自由だ。政治に参加することはできない。
よって成人となった暁には、大国に嫁いでもらうことになるでしょう。
ブリタニアをさらなる繁栄のために、
皇帝としての責務を果たしてもらいます。
ああ、明日の同盟式には出席してもらういます。
あなたの死に立ち会い、過去を清算してもらうためにね」
あの日の誓いの全ては、ナナリーを守るために始まったことだ。
その誓い…ナナリーの幸せが今、崩れ落ちていく様をルルーシュは感じていた。
そして、ナナリーがどんなに悲しもうとも、もはや、その傍らに立つことは
できないことも
シュナイゼル「それでは、ルルーシュ様。せめて安らかな夜を」
その言葉を最後にシュナイゼルは部屋から出て行った。
だれもいなくなった部屋でルルーシュは、仮面を見つめていた。
“魔王”ゼロの仮面。
仮面は、その持ち主であるルルーシュと、その後ろに広がる闇を
ただ、映し続けていた。
- 290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/27(火) 22:30:27 ID:R3vt09fZ.net
- 更新HAEEEEEEEEE!
革命仮面・・・ルルーシュと同レベルのセンスだなww
- 291 :1:2010/05/23(日) 23:19:02 ID:s+rEH3K7.net
-
・・・えへ(笑)
GW終わった後、創作意欲が落ちて、書けなくなりました。
放置プレーで終わる可能性大です。
再開できるかは今後のコンディション次第です。
今まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。
そして、申し訳ありません。
作者より
- 292 :岸谷 新羅ψ ◆i85SSHINRA :2010/05/26(水) 05:36:55 ID:W4U0tkui.net ?2BP(601)
- もし、ルルーシュがリストカッターであったら?
久米田和装店で和服を購入して、絶望先生の姿となったルルーシュだが、
和服を買ったときの費用でお小遣いを使い尽くして絶望したルルーシュは、
スタンドカラーシャツの左袖の袖をまくり上げ、右手に貝印の剃刀を持ち、そこで1本…。
同時に、その様子を見た新羅さんは自分も絶望して釣られて、
白衣から医療用メスを取り出してメスの刃を左手首に当ててスパッと1本…。
ルルーシュと新羅が二人でいさぎよく1本いって、手首から血を流すなんて…。
- 293 :1:2010/05/26(水) 19:52:00 ID:8ZHpyumF.net
- 誤爆ですか?
- 294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/05/27(木) 06:09:59 ID:LJL75XmM.net
- 保守
- 295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/02(水) 22:03:31 ID:fi5ISbJx.net
- ジェレミア・ゴットバルトvs白猟のスモーカーならばどちらが勝つ?
- 296 :1:2010/06/03(木) 06:33:12 ID:/tr9h/90.net
- >>294
基本スモーカーかと。
ジェレミアの体はパシフィスタと同じ仕様だから強いけど、
ロギアに対抗できないから。
ただ、オレの設定では、さらに悪魔の実も食ってるから、逃げ切ることくらいはできると思う。
- 297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/03(木) 22:13:53 ID:hQ04fLQU.net
- リー・シンクーvsロロノア・ゾロならばどちらが強い?
- 298 :1:2010/06/03(木) 23:32:28 ID:/tr9h/90.net
- ロロノア・ゾロ。
剣に全てを捧げた男と露利に命を捧げた男では勝負にならない。
なにより、シンクーの設定が、頭脳も格闘も中途半端で扱いにくい。
悪魔の実の設定によっては追い詰めることができるかもしれないが、
病気設定を無視できないから、土壇場で吐血→逆転負けとなる可能性が大。
- 299 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/04(金) 23:47:07 ID:qERK7x0E.net
- ユーフェミア・リ・ブリタニアを麦わら海賊団と組んでバギー海賊団やクロネコ海賊団と戦って欲しい
- 300 :1:2010/06/05(土) 10:34:41 ID:cYXdTHBm.net
- ユーフェミアの設定を教えてください。
ビビみたにな感じでしょうか?
- 301 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/05(土) 23:18:24 ID:+NB/ZCiO.net
- ユーフェミアがルフィとゾロと海軍基地で仲間になる話だよ
- 302 :1:2010/06/05(土) 23:52:51 ID:cYXdTHBm.net
- どうすればそのような状況が起こり得るのか気になります。
ここを使って構いませんので、少し書いてみる気はありませんか?>>301
- 303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/06(日) 22:04:12 ID:2sH3+eUg.net
- ユーフェミアが帰る場所をゾロに案内して貰う為にルフィ達と旅をしてバギー海賊団やクロネコ海賊団やクリーク海賊団や魚人海賊団と闘う
- 304 :1:2010/06/08(火) 22:12:47 ID:DJfQbieQ.net
- 私では絶対に無理ですw
ユフィはキャラが掴みづらいので書けません。
また、ストーリーも想像できません。
>>303さん
どうでしょう。少しここで書いてみる気はありませんか?
- 305 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/06/14(月) 17:36:04 ID:ngyBQYup.net
- あげ
- 306 :1:2010/06/15(火) 01:11:15 ID:tMFIurXV.net
-
“魔王”ゼロの処刑発表から1時間後、
エリア11全土は蜂の巣を突ついたような騒ぎになっていた。
ある者は嘆き悲しみ、ある者は怒りの声を上げ、
ある者は“嘘だ”と叫びながら新聞を破り棄てた。
噂が噂を呼び、町中を駆け巡り、更なる混乱を招く中、
町から遠く離れたオレンジ農園から一人の男が出てきた。
そのオレンジ農園は町から離れ、海に程近い所にある。
時刻はもう夕暮れ、沈むゆく太陽がオレンジ畑を黄金に染め上げていく。
その黄金の中に佇む男の姿は本来の農場主のそれではなかった。
新調された貴族の白い正装、その背中のマントには
帝権の象徴であるライオンと、死と再生及び智恵を象徴する蛇が刻まれていた。
肘から伸びた剣で十字を切り、男は天に向かって高らかに己が名を叫ぶ。
その男の名は――
ジェレミア「我が名はジェレミア・ゴットバルト!ブリタニアの騎士である!!」
- 307 :1:2010/06/15(火) 01:13:03 ID:tMFIurXV.net
- >>305
続けられるかはわからないけど、とりあえずこれを
- 308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/04(日) 22:04:56 ID:szVhsQ7T.net
- ルフィがカマキリみたいな俺は可哀相だから悪いことしていいんだー
他人を洗脳してもギアスは願いだからいいんだー
結果の為なら何してもいいんだーというクソ甘ちゃんのルルーシュを
麦わら海賊団がボコボコにやっつける話でいいなら投下します
- 309 :1:2010/07/05(月) 06:22:27 ID:8vWlxA53.net
- このまま落とすつもりなのでお止めください。
- 310 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/08/14(土) 10:29:12 ID:Nvl8Egia.net
- てす
- 311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 20:20:34 ID:jQV5IcAe.net
- tesu
- 312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 21:15:56 ID:zljCkax2.net
- a
- 313 :桂木 桂馬ψ ◆.iAYWKEIMA :2010/10/13(水) 04:31:18 ID:9smceBDC.net ?2BP(1092)
- 落とし神発動。
ルルーシュもスザクに突き刺されて、滑り台から落っこちて、駆け魂勾留せよ!
- 314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/23(土) 01:15:32 ID:o0mVyST4.net
- ほ
- 315 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/23(土) 12:57:14 ID:NNWAcoVY.net
- _/ ̄ ̄\_
\___/
J(`・ω★)ρ
/ ⊃
/ |
∪ ̄∪
- 316 :1:2010/11/07(日) 23:49:45 ID:Rf7+qy6y.net
-
男の名はジェレミア・ゴットバルト。ブリタニアの元騎士である。
男は辺境伯の位を持つ名門貴族・ゴットバルトの長男として生まれ
なに不自由のない人生を送っていた。名門貴族の息子という地位、騎士となり得る
だけの才能。まさに神に愛された彼の人生は順風満帆に進んでいた。
そう、あの日までは――
「マ、マリアンヌ様――――ッ!!」
神聖ブリタニア帝国・第三皇妃マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア暗殺事件。
ジェレミアの騎士としての初任務であったマリアンヌの護衛。
彼の生涯初めての挫折。そして、それは決して消えることがない傷となった。
事件の捜査班は、この暗殺が巧妙に計画されたものであることから
内部の協力者の存在を疑う。しかし、それは皇族に疑いをかけることに
他ならず、事件は闇に葬られることとなった。
- 317 :1:2010/11/07(日) 23:54:18 ID:Rf7+qy6y.net
- しかし、結果は残る。
マリアンヌを守ることが出来なかった護衛。忠義を果たせなかった騎士。
なにより、母親の亡骸に守られ、生き残った皇女の虚空を見る瞳に映った
自分の無力な姿が、ジェレミアをジェレミアたらしめていた何かを壊した。
その後の転落は早かった。
職を辞した後は、酒に溺れるというあまりにも教科書どおりの転落ぶり。
ゴットバルト家を放逐され、街角で酒瓶を片手に眠り込んでいるところを
饗団に拉致され、改造された。
冷たい鉄の半身。しかし、それ以上に凍てついた彼の心にはそれが心地よく感じた。
饗団の命に従う傀儡の日々。それはのただの浪費であり、暇つぶしの日々。
それが、命尽き果てるまで続くと信じていた。
「ジェレミア・ゴットバルトよ。貴公の忠節はまだ終わっていないはず…そうだろ?」
その日、突如として現れた黒の騎士団によって饗団はあっけない最後を迎えた。
ゲフィオン・ディスターバーという特殊な電波で動きを封じられ、跪くジェレミア。
その彼の前に立つ、仮面の海賊。その仮面の下から現れたのは、あの日の、あの日
守ることが出来なかった幼き皇子の…日ノ本で死んだ皇子の面影だった。
「…イエス、ユア・マジェスティ!」
運命の、いや忠義の神は彼を見捨てなかった。
- 318 :1:2010/11/07(日) 23:57:40 ID:Rf7+qy6y.net
-
ジェレミアは、その日からルルーシュの側近として行動することになる。
スパイとしての才能がないのも理由になるが、ジェレミアが隠れ家の管理を
任されたのも、彼がマリアンヌの護衛であったことが大きい。
何千人の部下がいようとも、正体を隠さざる得ないゼロ。
その仮面の海賊の正体を知るということ。
ジェレミアはその意味を、その信頼を理解している。だからこそ――
「シュナイゼル…!」
彼を瞳は、海を越えてその怨敵の姿を想像し怒りに燃えた。
そう、だからこそ、ジェレミアにとって、臣下でありながら、帝国を牛耳り、
皇族を利用せんと企てるシュナイゼルは、憎むべき逆賊であり、決して許す
ことができない怨敵。その男のこれまでの所業、そしてこれから行われる
ルルーシュの処刑という蛮行を前に、彼の怒りは頂点に達した。
- 319 :1:2010/11/08(月) 00:00:50 ID:rdzBa26O.net
-
――シュナイゼル!貴様のこれまでの所業、同じく皇帝に仕える身として断じて
許すことはできない!その行為は万死に値する!それにも関わらず、さらには
ルルーシュ様を処刑するだと!?許さん!このジェレミア・ゴットバルトが
断じて許さんぞ!
心の中でそう呟きながら、その呟きを無意識に声に出しながら、ジェレミアの怒りの
ボルテージは頂点を超えて行く。
――皇族を守るために、騎士になった。その誓いを守れず、挫折を知り、屈辱にまみれた。
改造され、傀儡となり、挙句はオレンジ農家に成り果てた!だが…
だが、全てはこの日のためにあったのだ!
そうだ!ブリタニア騎士として今こそ忠義を果たす時なのだ。
真実を知る自分だけが、ルルーシュ様をお救いし、ブリタニアに仕える全ての者の名誉
を守ることができるのだ!私の人生はこの日のために存在した。
敵は、この海の全てを言っていい。だが、それが何だというのだ!
私には鉄の体と燃え盛る忠義の心、そして、オレンジと間違って食べた“悪魔の身”
の能力がある!たとえこの身が燃え尽きようとも魂魄となり戦おう!
「…シュナイゼル。喰らわしてやるぞ!
1分間に三万回、超伝導“オハヨウゴザイマシタ”をな」
そう呟き、歪んだ笑みを見せるジェレミア。しかし、その勇ましいセリフとは
裏腹にその足は一歩を踏み出せずにいた。マントを握る小さな手によって。
「…離せ、アーニャ」
- 320 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/23(木) 17:30:41 ID:p9Ft2/On.net
- t
- 321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/22(火) 00:55:16.64 ID:mW3HLio2.net
- h
- 322 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/23(土) 16:02:00.41 ID:JWvJaC8R.net
- a
- 323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/06(金) 02:51:53.35 ID:eJzSQHvu.net
-
「…嫌」
アーニャ・アールストレイム。
ジェレミアと共にこの隠れ家で任務を共にしてきた小さな彼女は
ジェレミアのマントを掴み、離さなかった。
いつも最小限の言葉しか話さず、静かな少女。しかし、それと同時にある
強い存在感は今はない。ひどく儚く感じる。
ジェレミアとアーニャ。二人の出会いは饗団時代に遡る。
- 324 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/06(金) 02:55:01.98 ID:eJzSQHvu.net
-
「記憶せよ!わが名はジェレミア・ゴッドバルト!貴様に勝利した記念すべき男の名だ!」
饗団で行われたバトル・ロワイアル。
そこで勝者として勝ち残ったジェレミアは片膝をつくアーニャに向かい、高らかに
そう告げた。饗団の実験による副作用により、記憶を長時間保つことができない
アーニャ。そんな彼女にとってその言葉、その瞬間が、その男が、携帯手帳に書き
残さなくても思い出せる唯一の思い出となった。
何故、それだけを思い出せるか理由はわからない。
だが、その思い出が彼女を今日までジェレミアと共に生きることを選ばせた。
- 325 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/06(金) 02:57:26.97 ID:eJzSQHvu.net
-
「離せ、アーニャ」
「…。」
ジェレミアは再び同じ言葉を繰り返す。その言葉にアーニャは答えることなく俯く。
マントを掴む手が小さく震えていた。
「アーニャ…私はブリタニアの騎士である!だから私は行かねばならない!
殿下を助けることができるのは、私だけなのだ!たとえ、その結果が死で
あろうとも進むことがブリタニアに仕える者に与えられし崇高な義務なのだ!
だから…わかって…くれるな?」
ジェレミアは語る。ブリタニアに仕える者の運命を。
それに赴く自分に若干酔いしれながらジェレミアは振り向いた。
そこで泣きながら、自分に別れを告げるであろうアーニャの姿を期待して―――
- 326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/06(金) 03:03:23.85 ID:eJzSQHvu.net
-
「嫌」
「…え!?」
そこには、儚き少女の姿はなかった。同じ顔、同じ背丈、同じ服。
しかし、その体から闘気と、そしてその瞳に覚悟を宿した戦士の姿があった。
「がッ・・!?」
一瞬にしてアーニャの姿がジェレミアの視界から姿を消し、
ジェレミアはバランスを崩し、前のめりに倒れた。
次の衝撃はすぐにやってきた。
視界が逆再生のように戻ったかと思うと、
まるで幼い日に肩車されたように視界が広がった。オレンジ畑がよく見渡せる。
- 327 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/06(金) 03:06:06.00 ID:eJzSQHvu.net
-
「ジェレミア…死んじゃう。行ったら死んじゃう!」
そう言ってジェレミアの片足を掴み、片手で高々と抱え上げたアーニャは近くに
ある小岩に向かい、走り出し、ジェレミアを打ちつけた。
誰かが遠目でその光景を見たならば、少女が岩にタオルか何かを
打ち付けているように見えるに違いない。饗団の改造により、アーニャが得た力。
それは、その華奢な体からは想像もつかない怪力。
その力は長身で鉄の体を持つジェレミアを軽々と持ち上げ岩に打ちつける。
- 328 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/06(金) 03:09:31.84 ID:eJzSQHvu.net
-
「…死んじゃう!ジェレミア死んじゃう」
何度もジェレミアを岩に打ちつけるアーニャ。
どうやら、ジェレミアを気絶させようとしているようだ。
機械の体を持つジェレミアはロロノア・ゾロの斬撃をも退ける
防御力を誇る。故に生半可な攻撃では気絶などさせることはできない。
そう判断したであろうアーニャの攻撃は高速に、高角度に、そのエグさを増していく。
「あが・・あ、あが…」
アーニャに執拗な攻撃は目的こそ果たせないものの、
ジェレミアの体に深刻なダメージを蓄積しつつあった。機械の瞳からはオイルが流れる。
それはまるで血の涙のように…
ああ、死んじゃう。確かにジェレミア死んじゃう…!
- 329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/06(金) 03:14:22.49 ID:eJzSQHvu.net
-
「――?!」
「ぐはぁ!!」
その時だった。アーニャが突然、手を離したためにジェレミアは空中で回転し
地面に激突した。何が起きたのか分からないが、地面に顔が埋もれた状態を脱出
すべく頭を動かした。ダメージで朦朧とするその視界の先には、
黄金色に輝くオレンジ畑。そして六人と一匹の影が浮かび上がる。
「お、お前達は―――ッ?!」
「オレンジのおっさん!俺達も行くぜ!」
- 330 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/07(土) 02:13:14.27 ID:N0lQKl8F.net
-
モンキー“D”ルフィ。
イーストブルー出身の海賊。七武海を倒した一億の賞金首。
そして何の因果かゼロと知り合い、この諸島の大事件に巻き込まれつつあった
麦わらの男が天に両手を突き上げ、高らかに叫んだ。
「と、当然だだだな、お、おおおれれもいい行く!」
「俺も行くぞーー!」
「ふふふ、たまにはこういう立ち位置も悪くないかもしれないわね」
後、狙撃の王として指名手配されるウソップが震えながら。
ヒトヒトの実を食べたトナカイであり船医であるチョッパーが後に続き。
“オハラの悪魔”と呼ばれるニコ・ロビンが傍らで静かに笑う。
- 331 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/07(土) 02:16:08.80 ID:N0lQKl8F.net
-
「と、当然だだだな、お、おおおれれもいい行く!」
「俺も行くぞーー!」
「ふふふ、たまにはこういう立ち位置も悪くないかもしれないわね」
後、狙撃の王として指名手配されるウソップが震えながら。
ヒトヒトの実を食べたトナカイであり船医であるチョッパーが後に続き。
“オハラの悪魔”と呼ばれるニコ・ロビンが傍らで静かに笑う。
「あれ、マリモ。お前は助けに行くの反対じゃなかったのか?」
「俺は一理あると言っただけだ。エロコック」
後の“黒足”のサンジは論争を思い出し、ニヤニヤ笑う。
すでにその名を轟かす“海賊狩り”のゾロはその挑発を受け流し
「船長命令だろ」とにやりと笑った。
- 332 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/07(土) 02:17:44.21 ID:N0lQKl8F.net
-
麦わら海賊団
魚人海賊団を倒し、イースト・ブルーを救った海賊団。
七武海・“サー”クロコダイルを破り、アラバスタを救った海賊団。
“神”エネルを退け、空島を開放した海賊団。
その彼らが、再びこの戦いの場に集う。
それはいつものように――
初めは巻き込まれ―――
今度は自ら飛び込みながら――
そして最後は当たり前のように―――
笑いながらそこに集う。
「ちょ、ちょっと待ったーーーー!」
その背中に声をかける者がいた。
おそらく、全力で走ってきたであろうその肩を弾ませながら
一同の後ろに彼女は立つ。まるでその道を塞ぐかのように。
彼女は、後の“泥棒猫”ナミは。
- 333 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/08(火) 01:57:34.37 ID:kK/U60bi.net
- 見てるよー(^^)/
- 334 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/12(土) 20:21:12.90 ID:vFx4C9mX.net
- >>333
マジかよw
実はこれ、白ひげの頂上決戦の時に書いたんだよね。
自分でssとやらがどこまで書けるか試したくてさ。
ルルーシュをエースの位置づけにしてやってみようかと。
でも、仕事忙しくて書けなくなって、まさかのエースの死亡展開。
そして、2年後になってからなんか醒めちゃってさ・・・。
まあ、読んでくれてありがとう。
続きを書くかは微妙だけど、昔書いた続きが少しあるから投稿して
おきますね。
- 335 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/12(土) 20:23:46.28 ID:vFx4C9mX.net
-
―――やっぱりだ。やっぱりここにいた。悪い予感はしていた。
出航の準備に誰もいない時に確信した。全力で走って来てみれば、やはりこれだ。
ルフィ。あんたがそんな物分りがいいわけないものね。
フリよね。真剣に悩やむフリをしていたのよね。答えなんてもう決めていたくせに。
ゾロ。この裏切り者。本当に、本当に“一理ある”だけだったのね。
ウソップ。チョッパー。ロビン。サンジ君…あんた達、私の味方でしょ?
ああ、もう私しかいない。まともで常識人は私だけだ。
今回は無理だ。
もちろん、今までのことも本当は全部無理だったに違いない。
しかし、今回は本当に、本当に無理なのだ。
魚人達は強くても一海賊団に過ぎない。アラバスタは国王軍と反乱軍の間隙を突くことが
できたからだ。空島に関しても神軍とゲリラの間で戦うことができた。
しかし、今回は違う。
ブリタニア、黒の騎士団、海軍。敵はその全てだ。味方なんてない。隙などない。
ルルーシュを救うにはその全てと戦わなくてはならない。
…だから、私は止めねばならない。
無理だ、と。
…だから、言わねばならない。この海賊団を守るために言わねばならない。
ルルーシュを…見捨てる、と。
- 336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/12(土) 20:27:31.14 ID:vFx4C9mX.net
-
ナミは立ちふさがる。息を弾ませながら、覚悟を決めながら。
「あんた達、分かってるの?!敵は海軍よ!黒の騎士団よ!ブリタニアよ!」
――そうだ…!絶対に無理だ。
「まともに戦って生き残れると思ってるの?!勝てると思ってるの?!」
――無理に決まってる!だから言え!言ってしまえ!
「無理に決まってるじゃない!だから…」
――諦めよう、と…。ルルーシュを見捨てる、と
「だから…」
シャーシャシャシャ!今日からこの村は俺たち魚人のものだ!
「だから…」
ルフィ…助けて
「だから…」
当たり前だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「だから…作戦会議よ!ルルーシュ救出のね!」
- 337 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/12(土) 20:29:04.42 ID:vFx4C9mX.net
-
「ナミ!!」
「よっしゃ!さすがナミさん!」
「ヤッターーーーーー!」
「くすくす」
「しししし」
ウソップとサンジとチョッパーはその決定に肩を組んで飛び上がり、
ロビンはいつものように、ルフィはさも可笑しそうに笑う。
ゾロは刀を肩に乗せ、“やれやれ”といった感じで、はしゃぐ一同を見る。
そして、決定を下したナミはそれを悔いるように両手で目を覆った。
「う、うおおおおおおーーーーーー!!殿下は…殿下はよき仲間を持たれた!!」
突如、ジェレミアが叫び声を上げた。
大粒の涙を流しながら。機械の瞳からオイルを流しながら。
「私も…私も仲間に入れてくれーーーーい!必ず!必ず役に立って見せる!」
そういって手を伸ばすジェレミア。
しかし、その様子は一同には、血まみれの重傷者が助けを求めているようにしかみえない。
チョッパーが“大変だー”とかなきり声を上げ、手術の必要性を説く。その言葉に従い
一同はもがくジェレミアを無理やり船内に連れ込もうと動き出す。
その様子を見て、ナミは自分の決定に再度、頭を抱える。
夕暮れがまぶしい。オレンジ畑がまるで黄金のように輝く。
その一つを手に取り、ナミは呟く。
「オレンジ畑にあいつらの背中…私が止められる訳ないじゃない」
- 338 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/12(土) 20:31:12.65 ID:vFx4C9mX.net
-
日は沈み、夜が訪れる。辺りを暗闇が支配する中で、農園の小屋に明かりが灯る。
その部屋の中で、ジェレミアはただ黙々と目の前のオレンジを食べ続け、
アーニャはただひたすらオレンジを運ぶ。
沖に停泊している羊頭の船では、航海士のナミが一人、海図を睨み、
コックであるサンジは暗い調理室でタバコをふかす。
狙撃手のウソップ、医者のチョッパー、学者のロビンは船上に出て星を見つめる。
帆の下では、剣士のゾロが愛刀の手入れをし、羊頭にはこの船の船長である
ルフィが自身の麦わら帽子を見つめ、その上に満月が光り輝く。
その月の下、赤い髪を輝かせ、“紅月”カレンは遠く空を見つめている。
遠い砂漠の荒れ果てた教会の像の前、その闇の中でC.C.はただ祈りをささげる。
闇の中、ルルーシュは自身の仮面を見つめる。仮初の自身と本当の自身の姿を。
―――そして、決戦の朝へ
- 339 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/16(水) 19:06:41.51 ID:uNn5kE3F.net
- 黎星刻vsロロノア・ゾロが見たい
- 340 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/02/24(金) 18:29:22.85 ID:KZ76Rnbj.net
- 完結して欲しい
- 341 :ccyking.jp:2012/02/24(金) 22:08:46.52 ID:I0IHKbMC.net
- ワンピースフィギュア安く買える所 ccyking.jp
- 342 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/05(月) 14:23:54.83 ID:sVAa2S2I.net
- 「ワンピース」史上初の統一スケールフィギュアが食玩で登場!
『1/144 WORLD SCALE ONE PIECE』2012年3月12日(月)発売
http://www.bandai.co.jp/press/images/3/64480.pdf
- 343 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 22:54:25.68 ID:hmw0OFhj.net
- >>314
完結できるかは確約できないけど、応援は確かに書くモチベーションを上げると実感する。
とりあえず、書いたもの投稿するね。
- 344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 22:55:54.66 ID:hmw0OFhj.net
- >>340だった。悪いw
>>341、342
この過疎スレで宣伝しても多分意味ないと思うよ。
- 345 :1:2012/03/07(水) 22:58:54.32 ID:hmw0OFhj.net
-
「オハヨウゴザイマシタ」
「お、おう…。」
オレンジのように輝く太陽を背景に船の上から満面の笑みを浮かべる
ジェレミアの挨拶にゾロは若干ひきながら応える。
“魔王”ゼロことルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの処刑までおよそ10時間。
今、出航すれば、時間的には余裕が持てる。しかし、正確な処刑執行時刻は
ブリタニアの上層部以外しらない。彼らの意向次第では、いくらでも変更可能な
ことを考えれば、余裕などないと考えるのが妥当であろう。
- 346 :1:2012/03/07(水) 23:01:15.77 ID:hmw0OFhj.net
-
「本当に大丈夫なんだろうなナミ」
荷物を運びながら、ゾロは小声でナミに今回の救出作戦について念を押した。
あの決意の夕暮れからナミが考えた作戦はあまりにも大胆なものであった。
いや、もっと的確にいえば、一か八か。悪くいうならやけっぱちに近い。
ゾロの質問にナミは瞬間、暗い顔になり、涙を浮かべ、笑顔になり、また
普通の顔に戻る。わずか0.5秒のことだが、ナミのここの至る苦心が伝心した。
ナミほどの策士をもってしても、一味がブリタニアの全勢力を相手にルルーシュを
取り戻す方法を考えるのは至難の業だ。いや、無理といっていいだろう。
それでも辿りついた答え。
この拙い作戦の成功をナミはその顔に確信と笑みを
浮かべて答える。
- 347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 23:04:27.25 ID:hmw0OFhj.net
-
「これ以外方法はないわ!今回の処刑場の場所、ブリタニアと黒の騎士団の配置の予想。
何よりも、ジェレミアさんの悪魔の実の能力があればね…。
今日は頼んだわよ!ジェレミアさん!」
「任せろ!ロロノア!」
「え…?!」
覚悟と自信を満面の笑みに乗せてジェレミアはゾロに“グッ”と親指を立てる。
(え、あの距離から聞こえてたの?なんで俺に?何、その笑顔)
ゾロはそう心の中で自問し、困惑した。なにやら気に入られてしまっているようだ。
荷物を積み終え、一同は、甲板に集まる。出航の用意は万全…といいたいところだが、
ジェレミアの荷物だけ、明らかに異彩を放っている。その荷物の全てはオレンジ。
広大なオレンジ畑のおよそ4分の1をアーニャが前夜にリヤカーで運んでいた。
アーニャは相変わらずの無表情を通しているが、瞳はやや赤かった。
その傍らでジェレミアは一心不乱にオレンジを食べ始め、ゾロはその姿からあえて
目を逸らす。
- 348 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/07(水) 23:07:23.16 ID:hmw0OFhj.net
-
「全員そろったか?」
「い、いつでもOKだ!」
「ルフィ、お前、肉持込すぎだ!」
「ジェレミアのおっさんだってオレンジいっぱい持ち込んでるじゃん!」
「あれは必要なの!いいわね、ルルーシュ助けたら、即、逃げるのよ!
絶対、ぜーたいに戦わないでね!戦ったら私が殺すから!」
「え〜」
「残念そうに答えるなー!」
「おい、本当にだいじょ…いやもういい」
本来、決死隊にあるべき、重苦しい雰囲気はここにはない。
ここにあるのは、いつもの雰囲気。
この大事を前に、まるでピクニック前の子供のようにハシャギ、笑う。
ルフィがボケてナミが怒り、ゾロ、ウソップ、サンジがツッコミ、みんなで笑う。
海賊界の新星“麦わらの一味”まさにここにあり。
- 349 :1:2012/03/07(水) 23:10:25.61 ID:hmw0OFhj.net
-
「今から行くぞー!待ってろルルーシュ!」
天高く、両の手を上げてルフィが叫ぶ。
「ドボォンッ!!」
直後、ルフィの声に呼応したように起きた騒音。
それは、仲間の歓声ではない。
それは、カモメの鳴き声でもない。
それは、カイオウ類が跳ねた水しぶきでもない。
それは、大砲の音。
出航を控えるメリー号の眼前に向かってくる船団。
その帆に掲げられるは「MARINE」の文字。
その船団の中心の一際大きい軍艦に、一人の男が立っていた。
荒くれ者の猛者が集う海兵を従えるその男はまだ少年と言っていい顔立ちだった。
男の背中には海兵の誇りである「正義」の文字が背負われている。
男は海軍ブリタニア支部における最高権力者。
ブリタニア帝国における最高戦力“ナイトオブラウンズ”のNO7。
「麦わらの一味…お前達の願いは叶えてはいけない…!」
海軍中将“白騎士” 枢木スザク、ここに見参―――
- 350 :1:2012/03/07(水) 23:29:13.04 ID:hmw0OFhj.net
-
「えーテス、テス。こちらは海軍中将・枢木。
麦わらの一味!君たちは完全に包囲されている。すみやかに投降しなさい。
君たちは航海法第23条、海賊行為禁止法違反、並びにブリタニア帝国憲法第156条…」
マイクのテストの後、投降を促し、その海賊の罪状を述べ始めるスザクの定番の行動に
海兵はうんざりといった表情でその行為を見つめる。他の海ならともかく、このグランドラインにおいて降伏する海賊など皆無に近い。それでもスザクはこの行動を止めることはない。海兵にはそれはもはや偽善にすら感じられた。
「航海法第33条、無断航海禁止法違反、並びにブリタニア帝国憲法…」
麦わらの一味の罪状を述べながら、スザクはシュナイゼルとの会話を思い出していた。
- 351 :1:2012/03/07(水) 23:31:20.33 ID:hmw0OFhj.net
-
「麦わらの一味の捕縛…ですか?」
「そうだスザク君、君には処刑当日、麦わらの一味の捕縛を優先して欲しい」
「しかし、海軍として自分には処刑場の警備をする任務が…」
「スザク君、処刑場には、ブリタニア軍と黒の騎士団が配備されている。
海軍の兵力は不要だよ。当日のブリタニア軍の指揮は“ナイトオブラウンズ”
NO10のブラッドリー卿が、黒の騎士団においては扇君が担当する。
また、政府の知人がある人物を派遣してくれることになっている。
ゼロの逃亡に関する対策は何の問題もないよ」
シュナイゼルはいつものように微笑を浮かべ、話を続ける。
「それより、君たち海軍には一時期、ゼロと行動を共にしていた麦わらの一味の捕縛を
担当して欲しい。麦わらの一味は現在、ゼロの隠れ家に潜伏しているとの情報が入った。
麦わらはゼロの“ギアス”にかかっている可能性がある。
麦わらが“億超え”のルーキーである以上、この件を軽視することはできない。
スザク君、頼まれてくれるかな?」
- 352 :1:2012/03/07(水) 23:36:35.53 ID:hmw0OFhj.net
-
シュナイゼルの話は理に適っている。
しかし、ゼロというこの国の歴史に名を残すほどの存在、
世界政府から次世代の脅威と目されるほどの大物の処刑当日、
このブリタニア支部の最高責任者であるスザクが現場を離れ、
大物新人とはいえ、一海賊に過ぎない麦わらの一味の捕縛を優先させられるのは
違和感を禁じない。
(…外されたか)
スザクはそう直感した。いや、むしろ処刑場から遠ざけられたと言った方が適切だろう。
ルルーシュとの対面において、シュナイゼルは、自分に不振を抱いた。
もっと具体的に言えば、裏切る可能性を考慮したのだ。
ゼロの奪還を考えるならば、この厳重な警備を外から破るより、中からの方がたやすい。
海軍中将のスザクなら、移動に制限は少なく、警備の配置も把握できる立場にある。
ならば、その脅威は排除するのが望ましい。おそらく、それが答えに違いない。
「…イエス、マイロード」
もとより、答えは決まっている。海軍として、またブリタニアの騎士として、
帝国宰相であるシュナイゼルの要請を断ることなどできない。
ブリタニア式の敬礼をした後、スザクはシュナイゼルに背を向け、歩き出す。
運命は決まった。
ルルーシュは死ぬ。
自分は海兵として、ただ正義のために生きる。
もうあの夏の日には戻れないのだから。
- 353 :1:2012/03/07(水) 23:40:15.97 ID:hmw0OFhj.net
-
「第257条ブリタニア入国法違反、並びに航海法第…ん?」
麦わらの一味の罪状を読み上げながら、回想していたスザクは部下の
“中将!中将!”という叫び声に現実に引き戻される。
「中将!奴ら話を聞いていません!こっそり碇を上げています!」
「え(ガーン!)」
見ると羊頭の海賊船は碇の引き上げ作業をほぼ半分をほど終了させていた。
それはスザクの降伏の勧告の直後、いや、その開始と同時に
その作業をはじめたことを意味していた。つまり、話をまったく聞いていなかった。
「ッ…!許しは請わないよ!」
どんな海賊でも、降伏はせずとも話くらいは最後まで聞いていた。
それを、1秒たりとも聞くことはなかった麦わらの一味にスザクは
若干マジキレしながら、砲撃の合図をする。
- 354 :1:2012/03/08(木) 00:34:51.72 ID:SDmGt2Kj.net
-
「ばれたか!ウソップ達は碇を上げろ!ルフィ、マリモ、俺たちで船を守るぞ!」
サンジはそう言って走り出し、大砲の弾を蹴り落とす。
ゾロが後に続き、玉を真っ二つに切り、ルフィは砲弾をはじき返す。
ウソップとチョッパーは必死で碇を上げ続け、ナミは叫ぶ。
その最中でもジェレミアはオレンジを食べ続け、アーニャは心配そうにそれを見つめる。
「なんだありゃ?」
砲弾を蹴り落としていたサンジが叫んだ。
砲弾の雨の中、明らかに違うものが混じっていたのだ。
それは―――人間。
スザクがその並外れた身体能力をフルに生かし、発射された砲弾に飛びついたのだ。
砲弾を片手で掴みながら、砲弾とともに飛ぶのは並外れた握力とバランスが必要になる
それをさも当たり前のようにスザクは実行し、メリー号の眼前で手を離し、
身体を回転させる。
- 355 :1:2012/03/08(木) 00:36:43.64 ID:SDmGt2Kj.net
-
「うわッぁ――!」
回転の勢いをそのまま加えたスザクの蹴りをまともに喰らい、
ルフィはメリー号の外に飛び出した。
「ルフィ!野郎…!首肉(コリエ)シュート!!」
「枢木キック!!」
吹き飛ばされるルフィを見て声を上げるサンジに、それを実行したスザクが
向かってくる。それに気づきサンジは撃退すべき、跳び上がり、必殺の蹴りを放つ。
それに対してスザクは同時に跳び、回転蹴りを撃つ。
「ぐわあッ!」
空中で激突する両者。技の威力はほぼ同じであり、空中で停止し、両者は睨みあう。
その直後、スザクはさらに回転し、サンジを床に叩きつけた。
それは、蹴りではなく、足を使った投げ技に近いものであった。
「チィッ!」
それを見てゾロを駆け出す。侵入者であるスザクに居合いの一閃を喰らわすために。
しかし―――
「なッ?ぐはぁ!!」
着地したスザクが即座に跳び上がり、ゾロの刀の柄に横蹴りを当て、抜刀を防いだ。
そしてそのまま、刀を踏み台に駆け上がり、ゾロに飛び膝を決めた。
- 356 :1:2012/03/08(木) 00:38:24.20 ID:SDmGt2Kj.net
-
もし、海軍・ブリタニア支部の海兵に枢木スザクに関するインタビューを行えば、
おそらくはありとあらゆる罵倒が帰ってくるだろう。
しかし、生粋のブリタニア人であり、差別主義者である彼らをして悔しさを滲ませながら
言う枕詞がある。
「実力は確かなものだが…」
枢木スザクの中将昇格はシュナイゼルの政治的策略であることは確かである。
しかし、それだけで海軍の中将が務まるわけがない。
枢木スザクが持っていたのは確かな実力。海軍本部の中将達に比肩する才能があった。
ブリタニア支部の最高権力者は同時にブリタニア支部の最高戦力。
それを証明するかのように、“海賊狩り”のゾロと“黒足”のサンジは床に倒れ、
スザクは冷たい目でそれを見下ろしている。
- 357 :1:2012/03/08(木) 00:40:42.57 ID:SDmGt2Kj.net
-
「麦わらの一味…君たちを逮ほ―――ホグッ!」
「ゴムゴムの“ロケット”!!」
過去多くの海賊たちを前にこの台詞を述べてきたスザク。
しかし、今回は違う。その言葉の完遂直後に、わき腹に何かが直撃して声を上げる。
飛び込んできたのは“麦わら”のルフィ。この船の船長。億超えのルーキー。
スザクに蹴り飛ばされ、海に落ちたと思われていたルフィは腕を伸ばし、船の端にしがみつき、パチンコ玉のように反動をつけ、スザクに突っ込んできたのだ。
二人は絡まりながら、砂浜に落下する。
そのまま、数メートル、ごろごろともつれながら転がった後、下の体勢になったスザクは
蹴り飛ばすべく、ルフィの顔面に向けて蹴りを放つ。
それをよけて、その勢いでバク転し、距離をとったルフィ。
そして、麦わら帽子をかぶり直し、メリー号に背を向けたまま大きく叫ぶ。
「船を出せ!コイツは俺が倒す!!」
- 358 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/08(木) 23:41:20.85 ID:/U4ZtSOp.net
- 乙乙
海軍中将ってことは、スザクもいくつか六式使えるのかな?
- 359 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/10(土) 07:26:51.05 ID:+TYYNwu9.net
- >>358
1といれると書き込めないなw
スザクは空手と柔術をベースとする我流(枢木流)という設定にしました。
六式の内、似ている技を2つ使う。次回にその内の1つを使うけど、
それは空手の技を追求した結果、同じ効果になったという設定にしました。
君が空手をしっていたら、「なるほど、この技を利用したのかw」と思うかもしれないw
六式使いは個性を失うと個人的に考えているので、スザクはできるだけオリジナルで行きたい。
書けたら投降しますので、暇な時にチェックしてくれ。
- 360 :1:2012/03/18(日) 21:31:30.59 ID:PAothf8z.net
-
「ルフィ!」
「ウソップ!ルフィを信じろ!」
スザクと対峙するルフィを心配そうに見るウソップはゾロの声によって
碇を上げる作業に駆け出して行った。ゾロとサンジも飛んでくる砲弾を
落とすことに集中し、ルフィに加勢しようとはしない。
信頼。
普段の生活では意識することはないが、
こういう場面において、自分達の船長であるルフィに寄せるそれは大きいことを
一味の行動が表している。
ルフィの言葉通り、加勢がこないことを確認したスザクは
その視線をメリー号からルフィに戻す。
「麦わらのルフィ。この包囲から逃げられると…僕に勝てると本気で思っているのか?」
「うん、楽勝」
「…犯罪者め」
そのつぶやきを開戦の合図にスザクはルフィに向かって駆け出した。
それと同時にルフィは、拳を引き、反対の手で狙いを定める。
「ゴムゴムの“ピストル”!」
「超人(パラミシア)か…!ならば!」
勢いよく自分に伸びてくる腕を顔をそらすことでスザクはかわす。
ルフィの拳がわずかに頬を掠っても顔色を変えるずそのまま加速し、
ルフィのわき腹に強烈なミドルキックを叩き込む。
- 361 :1:2012/03/18(日) 21:33:41.74 ID:PAothf8z.net
-
「―――痛ッ?!」
わき腹に直撃する寸前、“オーラ”を纏った蹴りをまともに喰らい、
ルフィは数メートルふきとばされて、わき腹を押さえのたうち回る。
ゴム人間。それがルフィの悪魔の実の能力。
故にルフィに打撃は効かない…はずだった。
だからこそ、ルフィはあえてスザクの蹴りを避けずにはじき返すことを選んだ。
「降伏しろ麦わら。悪魔の実の状態変化は僕には意味をなさない」
その冷たい瞳にルフィを映し、スザクは空手の構えをとる。
悪魔の実の能力は絶対ではない。
たとえ同じ悪魔の実の能力をもたずとも対抗する手段は存在する。
“覇気”
幼き頃より、空手や柔術の英才教育を受けてきたスザクは武術の“気”の鍛錬も培ってきた。それにより、すでに“覇気”を習得する土台はできており、海軍本部での研修の際、
“英雄”ガープ中将に出会うことで、その才能を開花させる。
枢木スザクが捕縛した賞金首は50を超える。
その中には悪魔の実の能力者も含まれており、
超人系はおろか、ロギア系の能力者も存在する。
―――悪魔の実の能力者は、その能力を過信するが故に脆い。
それが枢木スザクの持論であり、現在に至るまで証明してきた事実である。
ロギアをも打ち崩す体術。
それこそ、スザクを中将という地位に留め、
ブリタニア支部最高戦力の地位に押し上げた秘密であった。
- 362 :1:2012/03/18(日) 21:42:54.06 ID:PAothf8z.net
-
「誰がするか!」
ルフィが起き上がり、スザクに殴りかかる。
その攻撃を体軸を崩すことなく華麗によけるスザク。
そのまま、連続で襲い来る突き蹴りの連撃を難なくかわし続ける。
「ゴムゴムの“戦斧”」
足を伸ばしての真上からの踵落としはスザクの残像を切り裂き、
砂上を叩き砂煙を起こす。辺り一面の視界が砂で覆われ見えなくなる。
スザクは、ルフィの姿を見失ったことに冷静さを失うことはなかった。
呼吸を整え、足を内八字に、両腕を引き締め、瞼を閉じる。
「ゴムゴムの“バズーカ”!!」
「枢木流鍛錬型“三戦”」
一瞬、人影が写るとその中からルフィが飛び出してきた。
ゴムゴムの“バズーカ”
両腕を後ろに伸ばし、敵の腹に叩き込むルフィの大技の一つ。
それを喰らった敵は、後方に吹き飛ばされ、大ダメージを受ける。
「うわぁ――ッ」
しかし、今回に限っては違う。
吹き飛ばされたのはルフィであり、スザクは先ほどの構えを一ミリたりとも崩さず、
ただ悠然と立っていた。
“三戦”
空手の鍛錬型の一つであり、
本来は肉体を鍛えることを目的とし、防御に用いることはない。
しかし、スザクは極限までこの型を追求し、瞬間的に己の肉体を鋼鉄と化す
ことにより、防御に応用することに成功した。
それは、後にルフィ達が戦うこととなる政府の暗殺組織CP9の体術“六式”の
“鉄塊”と同等の効果を持つ。
- 363 :1:2012/03/18(日) 21:47:46.64 ID:PAothf8z.net
-
「最後の通告だ麦わら。お前は僕には勝てない。降伏し…」
スザクは追撃しなかった。
ただ、冷たい目で悠然とルフィを見下ろす。
その実力の差を見せつけるために。これ以上、無駄な抵抗をさせないために。
「…ゴムゴムの―――」
「…!愚かな」
しかし、その言葉の途中でルフィを再び腕を後方に伸ばし、地面を蹴る。
スザクは、苛立たしそうに再び“三戦”の体勢をとる。
「“バズーカ”」
「ッ?!」
“三戦”により、全身を鋼鉄と化したスザクは一瞬、驚愕を浮かべた。
バズーカの直撃寸前において、ルフィは両手を合わせることなく、
そのまま両腕を交差させて、スザクの両肩を掴む。
直後、スザクの身体は浮き上がり、“三戦”の体勢は解けた。
“ニッ”と笑顔を浮かべるルフィ。
ゴムの力で引き寄せられ、その笑顔にスザクは全身で突っ込んでいく
。
「うぐッ!」
ルフィの頭突きをもろに受けて、スザクは初めて苦悶の表情を浮かべる。
「逃がすか!もう一発喰らえ!ゴムゴムの―――」
反撃はこれで終わりではなかった。
そのまま、抱きつき、スザクの両手を封じたルフィは
その首だけを勢いよく、後方に伸ばす。
「“鐘(かね)”!!」
“ガッ!!”と浜辺に鈍い衝撃音が響き渡る。
伸縮で威力を増したルフィの頭突きが再びスザクに直撃した。
羽交い絞めにされ、身動きが取れないスザクにそれを避ける術はない。
もはや、避けることができないと悟ったスザクは、その直撃寸前で
頭に“覇気”を纏う。
それは、悪魔の実の能力を打ち消すと同時に、
普通の人間同士の頭突き合いという結果を招いた。
数十秒、両者はうずくまりながら頭を抑えて動けなくなった。
「痛てて、お前、起きてくるなよ。ルルーシュ助けるのに間に合わなくなるだろ」
「…!」
- 364 :1:2012/03/18(日) 22:47:52.42 ID:PAothf8z.net
-
その瞬間、スザクは固まる。
(コイツは今、なんと言った?ルルーシュを…助ける?!)
そう自問するスザクに、ルフィの拳が眼前まで迫る。
それをギリギリでかわし、スザクは蹴りを見舞う。
ルフィは、もう能力に頼ることはしない。その蹴りを膝で防御して、反撃する。
子供の頃から武術の英才教育受けたスザクに対して、ルフィは我流ともいえる
体術で互角に渡り合う。いや、現状ではスザクは押されていた。
「なぜ、貴様がゼロを、ルルーシュを助ける?
麦わら!貴様は“ギアス”に操られているのか?!」
スザクの頭にシュナイゼルの言葉がよぎる。
“麦わらはギアスで操られている可能性がある”と。
当時は、自分を遠ざけるための方便でしかないと気にも留めていなかった言葉。
しかし、ルフィの言葉、この現実をスザクは認めざるをえない。
もし、ルルーシュは自分が捕まった時に備え、麦わらのルフィにギアスをかけたならば…
“ゼロの処刑”という情報を耳にしたこの男に“ギアス”が発動したのだとしたら…
それは可能性として十分にありえることだ。
「うるせ――お前には関係ねーだろッ!!」
ルフィはその言葉を無視して、渾身の“ライフル”を打ち込む。
それをスザクは両手をクロスさせて防御する。
スザクの身体は後方に数メートル下がり、砂にその軌跡が残る。
- 365 :1:2012/03/18(日) 22:50:42.39 ID:PAothf8z.net
-
「フフフ」
「ん?」
「ハハハ…アーッハハハハハハハハ」
スザクは顔を抑え、突然笑い出した。
ルフィは、構えながらも唖然とした顔でそれを見つめる。
スザクは思う。
ルルーシュとは何度も衝突してきた。
ゼロとは何度も戦ってきた。
そして、また自分はルルーシュの前に立っている。
ルルーシュの願いは麦わらの男に宿り、自分の前に立っている。
自分は戦わなくてはいけない。海兵として、騎士として。
倒さなければならない。麦わらのルフィを。
消さなければならない。ルルーシュの願いを。
つくづく…最後まで
(俺とルルーシュの運命は…呪われている…!)
スザクは笑う。
まるで狂ったように。まるで泣いているかのように。
「ああ…僕にはもう関係ない」
「…ッ!」
顔から手を離したスザクの目を見て、ルフィは構えを低く取る。
その顔は冷酷さを取り戻し、その目は黒く…深く濁っていた。
殺気を感じた瞬間、後方に飛んだルフィの眼前にスザクの貫手が止まる。
そのまま貫手の連続攻撃に入るスザク。
ルフィが避けた先にある岩をまるでスライスチーズのように切り裂きながら、
的確にルフィの急所を突いていく。
それをルフィは“わ、危ね”と口走りながら辛うじて避けている。
スザクの目には先ほどまであったかすかな光、
言い換えるなら甘さはもはや存在しない。
まるで機械のように、ルフィの生死を問わず、その活動を停止させようと貫手を繰り出す。
- 366 :1:2012/03/18(日) 22:58:10.20 ID:PAothf8z.net
-
「危ねーだろーが!この」
スザクの貫手を直撃寸前で真剣白刃取りのようにキャッチしたルフィは
そのまま跳び上がり、ドロップキックを放つ。
後方に飛ばされたスザクは椰子の木に打ちつけられた。
「そこにいろ!ゴムゴムの“銃乱打(ガトリング)”!!」
障害物により、スザクは後方に逃げる術がない。
このチャンスを1億の賞金首が逃すはずがなかった。
“銃乱打”の雨がスザクに襲い掛かる。
「――ッ!!」
追い詰められたスザクがとった行動は左右に逃げることではなかった。
逆に椰子の木を蹴り、加速して前進する。
“銃乱打”の豪雨の中、スザクの手のひらを前に出し、回転させる。
「枢木流“まわし受け”」
スザクは走る。
ルフィの拳を弾くのではなく、手のひらで柔らかく軌道をそらしながら。
豪雨の発生源にたどり着き、ルフィに強烈な前蹴りを当てる。
後方に吹き飛ばされるルフィは逆に椰子の木に叩きつけられる。
「うッ…!」
逃げ場を失ったという認識と同時に“ゾクリ”という悪寒がルフィの全身を駆ける。
スザクはすでに間合いに入っていた。
拳を引き、体勢を低く構え、それはまるで虎のように。
「…枢木流“白虎”」
一瞬、スザクの拳が消える。
そのすぐあとから“ドスッ”という鈍い音が響く。
スザクはルフィに背を向け、空手の極めのポーズをとる。
その瞬間、ルフィの後ろにあった椰子の木が粉々に砕け、
吐血しながらルフィはゆっくりと倒れる。
倒れたルフィの頭上には、スザクのマントにかかれている
“正義”が風にゆられていた。
- 367 :1:2012/03/18(日) 23:10:50.23 ID:PAothf8z.net
-
「麦わらのルフィ、これも一つの結果だ」
スザクは、そのまま歩き出す。
残りの麦わらの一味を捕らえるために。
己の使命を全うするために。
しかし―――
「ゴホ、ゴホ、」
その後ろで、さきほど倒された麦わらの男がゆっくりと立ち上がった。
「…動ける傷ではないはずだが」
「ん?ああ、どうってことねえよ」
そう言ってルフィは服についた砂を落とす。
(この男は強い…そして)
ルフィの強さをスザクはいまさらながら実感する。
悪魔の実の能力者の多くは、その能力を過信し、
自分自身を鍛えることを放棄した。
それ故、“覇気”を纏ったスザクの打拳の前になす術なく敗れ去った。
しかし、この男は違う。
“白虎”の直撃の際、わずかに身体を逸らし、衝撃を逃した。
ルフィは、口に残った血を吐き出した。
それは、直撃こそ避けたものの、内部に深刻なダメージを残した証拠でもある。
スザクはルフィの強さを認める。
そして、それと同時に気づいた。
- 368 :1:2012/03/18(日) 23:18:25.04 ID:PAothf8z.net
-
「麦わらのルフィ…お前、ギアスに操られていないのか…?」
「ん?」
“何言っている”そう頭にクエッションマークを乗せるルフィ。
スザクは確信する。
目の前の麦わらの男はギアスにかかってなどいない。
わざかな間だが、この男と本気で戦った。
だからこそわかる。
この男は“ギアス”に操られてなどいない。
この男には、強烈な“意思”を感じる。
ギアスの操り人形にはない強烈な意思を感じる。
―――この男は本気だ。
「麦わらのルフィ、何故、ルルーシュを助ける」
「…」
スザクは再びルフィに問う。
この男が本気だとわかった。
だからこそ本気でわからなかった。
何故、この男がルルーシュを助けるのかが。
調査書には、逃亡中のルルーシュを助け、数週間ともに過ごしたとある。
その期間にルルーシュと親しくなったのかもしれない。
だが、それで命を賭けられるはずがない。
ルルーシュの置かれている状況がどれほど絶望的なものか
わからないはずがない。
グランドラインで生き延びているこの海賊が知らないはずがない。
―――では、何故?!
「うるせ――!さっさと戦るぞ!俺はルルーシュ助けなきゃならないんだ!」
「ッ…!」
その問いを無視して臨戦態勢に入るルフィにスザクは
今までに感じたことのないイラつきを覚えた。
質問を無視されたことではない。
“ルルーシュを助ける”という言葉。
自分が言いたかった言葉。自分が捨てた言葉に。
- 369 :1:2012/03/18(日) 23:23:27.54 ID:PAothf8z.net
-
「あの男に莫大な報酬でも約束されたのか?」
「…うぜー」
「ゼロは、ルルーシュは悪党だ。約束など守りはしない」
「うぜー」
「あの男は死んで当然だ!今までに多くの罪を犯してきた!
アイツは死ねば、日ノ本の多くの人が救われる!」
「うぜーって…!」
「なぜ、お前が命を賭ける?!お前はルルーシュの何なんだ?!」
「うぜーーー!」
スザクは質問を続ける。
能面のような顔にいつの間にか感情が戻り、質問に答えない麦わらの男を睨む。
スザクは止まらない。
湧き上がる感情を全てぶつけるかのように言葉に乗せる。
「俺はアイツの…ルルーシュの友達だった…!でも俺は見捨てた!ルルーシュを!
お前は何なんだ?!たかが、数週間前に出会っただけの…お前に何がわかる!
お前に俺たちの―――」
「うぜ―――って言ってんだろが!」
「麦わら――――――ッ!」
「“仲間”だからだ!他に理由なんかいるか!!」
助けたいから、助けるんだ!他に理由なんかいるか!!
「あ…」
あの遠い夏の日の風はスザクを通り抜ける。
目の前に現れた少年時代の幻は一瞬微笑み、ルフィの中に消えていった。
「…青キジに負けた時に俺は思ったんだ。
この先の海にまたこんな強い奴が現れるなら
俺はもっと強くならなくちゃ、仲間を守れねえ。
俺には強くなんかなくたって一緒にいて欲しい仲間がいるから!
俺が誰よりも強くならなきゃ、そいつらをみんな失っちまう!
力一杯戦う方法を考えた。
誰も失わねえように…。誰も遠くにいかねえように…!」
―――ギア・セカンド!!
- 370 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/03/20(火) 23:26:47.65 ID:R4gJBHzo.net
- 乙
白虎かっけーなw
そしてルフィ爆発なるか!?
- 371 :1:2012/03/23(金) 00:17:51.35 ID:qM/+nMdU.net
- >>370
読んでくれてありがとう。
次回でスザクの回を終わらして処刑の導入部まで進めたらいいかなと思ってる。
うん、でもなかなか筆が進まないな。ゲームでもして気長に待っていてくれ。
ペルソナ4面白いよy
- 372 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/28(月) 23:32:13.69 ID:Fk/VTGFj.net
- おもしろいな
ぜひ、完結まで頑張ってほしい!
- 373 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/15(金) 02:56:26.72 ID:+EJFE+iC.net
- ほ
- 374 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/06(金) 00:09:34.37 ID:hNI+o6LI.net
-
「何をしている?体の中で何が起こっている…?」
膝をポンプの要領で押し始めたルフィの身体から湯気が立ち上がる。
その身体は熱を帯び始め、皮膚が赤色に変化していくのがはっきりと
視認できる。湯気はもはや蒸気となり、さらにその異常性を増していく。
ハッタリなどではない―――
スザクは確信する。
わずかな時間の中、この男とは殴りあった。感情をぶつけ合った。
だからこそ、わかる。この男に嘘はない。
「枢木流前羽の構え…!」
ルフィがゴムゴムの“ピストル”の構えをするのとほぼ同時に
スザクは両腕を前方に構える。
前羽の構え。
それは“ゴムゴム”の“銃乱打”を捌いた“まわし受け”をより完璧にした絶対防御。
技の体勢を完成させたふたりはどちらも動かない。
相手を睨んだまま、砂浜には、波の音とカモメの声
そして、互いの呼吸のみが聞こえる。
―――自分がどうあるべきか、俺にはもうわからない。
だが、麦わらを…目の前のコイツから逃げることはできない。
コイツは本気だ。ならば、俺もすべてを出し切る。
未来のことはわからない。
自分がどうあるべきなのかわからない。
だが、今はこの男を倒すことのみ考えよう。
海軍もブリタニアも関係なく、今は枢木スザクとして
俺はこの男を倒す。
- 375 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/06(金) 00:14:18.32 ID:hNI+o6LI.net
-
スザクは、前羽の体勢から、少しずつ摺り足で間合いを詰めていく。
砂にはその証明として軌道が線として残っていく。
だが、ルフィは動かない。
ルフィが狙っているのは、スザクの初動。攻撃を加えるための第一歩。
その一歩目を技名であるピストルのごとく狙いを定めている。
逆にスザクは、“ピストル”を捌くことに全てを賭けている。
モーションの大きいゴムゴムの“ピストル”を捌ければ、
無防備のルフィに攻撃を加えることができる。
それが貫手であれ、奥義である“白虎”であれ、この闘いの決定打となりえる。
傍目からみれば、ほぼ動きのない二人の戦いは、
さながら、荒野のガンマンの一騎打ち、
居合いの達人の殺し合い同様に先の読み合いであり、瞬間の勝負であった。
- 376 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/06(金) 00:27:18.22 ID:hNI+o6LI.net
-
「…ハァ…ハァ…」
―――静かだ。波の音しか聞こえない。
いや、それと…呼吸音、俺の…麦わらのも聞こえてくる
「…ハァ…ハァ…」
―――こんなに集中したのはいつ以来だろう。
麦わらとの距離はまだ…
ああそうだ。子供の頃、ルルーシュとナナリーと遊んだ時は…
「…ハァ…ハァ…」
―――心臓の鼓動が聞こえる。
俺は…生きている。
距離はもう…
麦わら…ルルーシュ…俺は…勝ッ―――
「ゴムゴムの“JET”銃(ピストル)―――ッ!!」
「ッ――――――?!!」
ぎりぎりの間合い。
スザクの全身全霊をかけた出足。その初動をルフィは捉え、
ゴムゴムの”JET”銃(ピストル)を放った。
その弾丸はスザクの全神経を張ったレーダーである両腕をすり抜け
無防備の顔面に叩き込まれた。
完全なるカウンター
その効果により、威力を倍化した“JET銃”はスザクの身体をきりもみに回転させ
ながら吹き飛ばした。椰子の木をへし折りながら飛ばされたスザクの身体は
5本目でようやく止まり、地面に落下した。
「…(どーん)」
「ハァ…ハァ…」
うつ伏せに倒れたスザクはその表情こそ見えずとも、起き上がりそうになかった。
ルフィは“ギア2”を解き、息を弾ませながらその様子を見つめている。
- 377 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/06(金) 00:31:04.39 ID:hNI+o6LI.net
-
ドゴォン!!
海の方で砲弾が着弾した音が聞こえる。
煙を上げる海軍の船の横を羊頭の海賊船がすり抜けていく。
「ルフィ――!早くこい!」
「わわ、待ってくれ!ゴムゴムの“ロケット”」
ウソップの呼び声に慌てたルフィは椰子の木を使い、ゴムゴムの“ロケット”で
船へと飛んでいく。砂浜には倒れたスザクとカモメの鳴き声のみが残る。
「よし、全員そろったようだな。
殿下…今、参ります!うおおおおおおーーー“ザ・オレンジ”爆誕!!」
ルフィが戻るやいなや、ジェレミアは最後のオレンジを飲み込むと、羊頭に駆け上がり
台詞とともに謎のポーズを決める。その直後オレンジ色の光がメリー号を包み込んだ。
- 378 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/06(金) 00:36:43.86 ID:hNI+o6LI.net
-
「…その直後、巨大な水柱が上がり、麦わら達の船が消えたと部下から報告があったが、
それで間違いないだろうか?スザク君」
「自分は直接見てはおりませんが、部下からはそのように報告を受けております」
「君が敗れるとは驚いたよ。麦わらの一味に対する認識を改める必要がありそうだ。」
「…申し訳ありません」
部下に救助されたスザクは、でんでん虫を手に取り、現状をシュナイゼルに報告する。
シュナイゼルは、すでに部下から報告を受けているようだった。
部下はほぼブリタニア人であり、その報告にシュナイゼルは疑いをかけることはなかった。
電話越しにおいても、その口調は穏やかにして、冷徹であり、変わることはない。
ただ、スザクの敗北については少し疑念がある口調だった。
わざと負けることで麦わらを逃亡させたのか、といったところだろうか。
「まだ麦わらの一味は遠くには行っていないはずです。
自分は今から処刑場に帰還し、警護に――」
「その必要はないよスザク君。すでにそちらにはラウンズの
モニカ・クルシェフスキー卿の艦隊を向かわせてある。
麦わらの一味がここにたどり着くことはない。」
「しかし…」
「…ロブ・ルッチという男の名を聞いたことがあるだろうか。
政府の知人が今回の処刑の警護のために彼を派遣してくれてね。」
「…!」
- 379 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/06(金) 00:38:54.92 ID:hNI+o6LI.net
-
シュナイゼルの機転の速さ。そして“ロブ・ルッチ”という名に
スザクは息を呑んだ。
CP9――世界政府の闇。
その中でもロブ・ルッチの名は海軍内においても知れ渡っていた。
曰く“闇の正義の体現者”曰く“最強の暗殺者”
海賊に人質にされた王国の兵士達を海賊もろとも
葬りさったのはあまりにも有名な話だ。
「スザク君。君はなにも心配しなくてもいい。君はこの度の戦闘で負傷したと
聞いている。ゆっくりと休養をとってくれ」
その優しく、その実は幽閉措置とも言い換えられる言葉を最後にシュナイゼルとの
会話は幕を閉じた。電話を終えたスザクは目を瞑る。
ブリタニア軍と黒の騎士団に囲まれ、蟻一匹逃げ出すことができない処刑場に
おいてCP9までもが監視の目を光らしている。
これでルルーシュの運命は…死は万が一にも動くことはないだろう。
- 380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/06(金) 00:40:45.16 ID:hNI+o6LI.net
-
「うッ…」
歩き出そうとしたスザクはバランスを崩し、地面に膝をつけた。
まだ、ルフィの“JET銃”のダメージは身体に重く残っていた。
突如崩れて片足をついたスザクに部下が慌てて駆け寄ってくる。
「中将!大丈夫ですか…え?」
肩を貸そうと近寄った部下が困惑を浮かべた。
それは、スザクの様子の異常によるもの。
ダメージで倒れたはずのスザクが頬に手を当てながら笑っていたからだ。
「フフフ…ハハハハハ」
「ちゅ中将殿?」
笑い続けるスザクを見て、部下達は“ついに狂ったのか?”と狼狽する。
しかし、スザクは笑う。笑い続ける。高らかに、さわやかに、嬉しそうに。
こんなに思い切り殴られてのはいつ以来だろうか。
ああ痛い。ハハ…本当に痛いや
スザクは思う。
未来のことはわからない。
自分がどうあるべきかはわからない
だけど、背中は…軽かった。
- 381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 19:08:06.06 ID:UeFp4tjy.net
- 投下乙
やっぱルフィつえーな、あとオレンジ爆誕わろたw
モニカにルッチと気になる名前も出てきたし
続きも期待!
- 382 :1:2012/07/11(水) 21:37:53.72 ID:8IwY3xic.net
- >>381
読んでくれてありがとう!
でも、ストーリーは完成しているのだけど、なんか文章化できないんだよね(汗)
仕事で疲れたとかもあるんだけどね。
きっちり納期収めてくる小説家はすごい!とこのss書いてはじめてわかったよ。
俺に作家をやれる才能はまるでないw
まあ、なんとか続投してみるよ。
とりあえず、スレが存続するなら書きます(たぶん)
レスは嬉しいです。誰も読まないと書いている意味はなくなるので
- 383 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 16:49:07.22 ID:HjqeVpMl.net
- 乙乙!
続き待ってた!!
無理をせずに、けど完走しろよ〜
- 384 :1:2012/07/21(土) 13:15:09.74 ID:9dmL2Cyj.net
-
「オール・ハイル・ブリタニア!オール・ハイル・ブリタニア!」
エリア11。
海軍ブリタニア支部・海軍広場に設けられた特設処刑場において自然発祥的に
巻き起こる自国への賛美は、文字通り自国への賛美と長かった内戦の勝利を謳っている。
ここに集まるは勝者たる神聖ブリタニア帝国の兵士達。それを見つめるエリア11の民達。
そして、もはや、ブリタニア軍の一部であり、事実上の敗者である黒の騎士団。
今回の、ゼロの処刑のみの為に作られたこの処刑場はある特別な趣向がなされている。
それは本来、陸にあるべき処刑台が湾内の、それも海の前に設置されたところにある。
ここで断頭された罪人の首と身体はそのまま海に落下して、魚や海王類の餌になる。
そのメッセージは“海賊は死して海に還せ”――
青く輝く海を背景に落ちていく大物海賊の首と身体。
この映像はマスコミを通して全世界に流される。
- 385 :1:2012/07/21(土) 13:16:02.29 ID:9dmL2Cyj.net
- この演出のために湾内においての警備は海軍基地の城壁に取り付けられた砲台と
小型の巡回船のみと最小限のものとなっており、
黒の騎士団の斑鳩をはじめとする軍艦は湾に停泊しているだけである。
だがしかし、その近海においては、海軍とブリタニアの連合艦隊が何重にも網を張り、
戦時体制レベルの厳重警戒。海からの進入はまず不可能であった。
そして陸においては、処刑台を囲む形で、ブリタニア軍と黒の騎士団が左右に分れ配備
されていて、その光景を遠く、鉄柵の外から日ノ本人、
現在においてはエリア11の民たちが固唾を呑んで見守っている。
黒の騎士団――総員17000人
神聖ブリタニア帝国――エリア維持軍85000人
その総兵力10万超。
仮にここでゼロを奪還しようと計画したならば、
それは四皇レベルの戦力の投入が必要となるだろう。
それほど、いまここに集いし戦力―――
黒の騎士団を飲み込んだ神聖ブリタニア帝国の力は四皇、海軍、世界政府の均衡関係に
確実に一石を投じるほど巨大なものとなっていた。
- 386 :1:2012/07/21(土) 13:17:00.68 ID:9dmL2Cyj.net
-
「オール・ハイル・ブリタニア!オール・ハイル・ブリタニア!」
海軍基地の城壁に現れた人影を見た兵士達の喝采はより大きさを増していく。
城壁に現れたのはナナリー・ヴィ・ブリタニア。
シャルル皇帝亡き後のブリタニアの継承者である。
まだ、年は若く、盲目にして、車椅子を引かれる姿は人々の同情を誘い、
新皇帝として相応しくはない。しかし、兵士達の喝采は鳴り止むことはない。
兵士達の信頼は、車椅子を押す人物。
シャルル皇帝と共にエリア支配を進め、黒の騎士団を陥落させた男。
現ブリタニアの真の支配者たる宰相・シュナイゼルに集まっていた。
シュナイゼルの後にはブリタニアの大臣達が続いていく。
そして、その中に明らかにこの場にふさわしくない、場違いな雰囲気を漂わせる男がいた。
白を基調とするブリタニアの要人達の中で異彩を放つ黒い服。
それは、白いフロアを這いずり回るゴキブリの如く、人々に言い知れぬ不快感を与える。
男の名は扇要。
大海賊艦隊“黒の騎士団”・元副団長。
そしてこれから新設されるであろう“扇ジャパン”の総帥である。
この式典に扇が選んだ服は、黒の騎士団時代のあの自前のダサい服をベースに
したものであり、そのダサさにより磨きがかかっている。
おしゃれのためにコートに意図的に入れた切れ目は、ロックスターというより、
むしろ熟練のホームレスを彷彿とさせる。
そのために首にかけた宝石や指に付けた大粒のダイヤは、
さきほど資産家の家から盗難してきたものにしか見えず、
トレードマークのバンダナはもはやその下品さを際立たせるものでしかない。
しかし、それを諫言できるものなど扇の側にはもはや存在しない。
クーデター以降、扇は黒の騎士団を完全に掌握し支配してきた。
- 387 :1:2012/07/21(土) 13:18:38.06 ID:9dmL2Cyj.net
-
「なんで…こんなことに」
若い団員は青ざめた顔でそう呟いた。
まるで悪夢を見ているようだった。いや、悪い夢であって欲しかった。
全てはあのクーデターの日から始まった。
理由を求める自分達に向かって扇は、ゼロは“ギアス”という能力を使って俺たちを
操った、と意味不明な供述を繰り返した。
しかし、それに異を唱えない幹部達。まるで人形のような目をした別人のようだった。
反抗した団員達の多くは、船の牢獄に幽閉された。そして残った団員は武器を取り上げられ、今日という日を迎えることになった。
今になって警備のために最小限の武器の携帯を許されている。
だが、それが一体何の意味があるというのか。
盟主たるゼロは今日、この場において処刑され、
自分達は同盟という名のもとにブリタニアの犬として生きることになる。
なぜ、こんなことになったかはもはやわからないだろう。
しかし、これだけはわかる。
自分達の、日ノ本の、エリアの独立の夢は今日この日に潰えるということを。
黒の騎士団の団員達を取り巻く負のオーラが彼らの服より濃く黒くなっていく中、
式は進み、シュナイゼルの演説が始まる。
- 388 :1:2012/07/21(土) 13:19:54.77 ID:9dmL2Cyj.net
-
「今日この場に私が帝国を代表して立つことをどうか許して欲しい。
本来ならば、亡きシャルル皇帝に代わり、新皇帝となられるナナリー様
がおられることこそ望ましい。しかし、ナナリー様はまだ帝位に就いて
いないため、私が代理としてこの場に立つことになった。
ブリタニアの兵士諸君、まずはおめでとう。
君たちの今日までの働きにより、長きに渡る内戦はここに終結した」
“ワァ――”と嵐のような歓声と共に万雷の拍手が鳴り響き、辺りは騒然となる。
シュナイゼルはそれを静観し、熱気を帯びた静寂が訪れるのを見計らい、演説を再開する。
「ブリタニアの兵士諸君、そして黒の騎士団の諸君、改めて聞いて欲しい。
内戦の終結を意味するこの同盟式には3つの目的がある」
ざわ…ざわと黒の騎士団の中に動揺が起こる。
今まで宿敵として憎み、その首を狙ってきた帝国宰相であるシュナイゼルに
直接呼びかけられるのは、やはり拭いがたい違和感をある。
- 389 :1:2012/07/21(土) 13:21:07.16 ID:9dmL2Cyj.net
-
「目的の1つ目は、騎士団のブリタニア軍への編入にある。
この同盟式を機に黒の騎士団の諸君は、我々の友軍として、各エリアに
平和維持部隊として駐軍し、エリアの平和を守ってもらうことになる。
君達の力は、長年戦ってきた我々が一番よく知っている。
君達なら必ずこの役目を担うことができると私は信じているよ」
「…」
ブリタニアの犬となれ―――
それが優しく、穏やかなシュナイゼルの言葉の真意。
ゼロと共にブリタニアを恐怖させた“黒の騎士団”の成れの果て。
だが、騎士団の中から異論を叫ぶものはいない。
もはや、この状況において個人の感情や意思は何の意味も持たないことを
皆が感じていた。
「そして次は…ゼロの処刑。
黒の騎士団の団長であり、反ブリタニア勢力の盟主。
“ブラックリベリオン”を代表する数々の
テロに関与してきた“魔王”と呼ばれた海賊の処刑にある。
…ここで、皆にある人物を紹介したい。
彼は黒の騎士団の副団長という立場にありながら、
我々の平和への意思に共感し、ゼロを裏切り、引き渡してくれた。
この内戦を終わらせたのは彼の功績ともいえるだろう。扇君、ここに」
- 390 :1:2012/07/21(土) 13:24:35.23 ID:9dmL2Cyj.net
-
「エヘヘ」
照れ隠しのために頭をかきながら、下卑た笑みを浮かべた扇が
壇上に上り、それを一部の人間のまばらな拍手が迎える。
“ゼロを売った売国奴”そう紹介されたことに気づくことすらなく、額面どおりに
その言葉を受け止めた扇は“英雄”として大衆の前で演説する機会を
得て有頂天になっていた。
その愚かさは、扇を初めて見るブリタニアの兵士達に不快感を。
扇をよく知る騎士団の団員達に暗い影を落とした。
「…ゼロは“ギアス”という力で俺たちの心を操ってきた…ペテン師だ!」
開口一番の言葉。
“キリッ”とドヤ顔をキメる扇とは対照的に両軍の間に困惑が広がる。
「みんな、聞いてくれ!これまでゼロが起こしてきた数々の奇跡は
全て“ギアス”という人々を意のままに操る力によるものなんだ!」
扇はかって卜部に対して行ったギアスの説明を再び始めた。
- 391 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 22:29:46.97 ID:D8vu96YE.net
- またワンピマンセーSSか糞つまんねー
- 392 :1:2012/07/21(土) 23:27:24.26 ID:SJ0bS7BX.net
- どちらかといえばアンチ扇ssという珍しいジャンルを書いてるつもりだw
- 393 :1:2012/08/06(月) 21:35:45.28 ID:oCcx98BE.net
-
「…だが、ゼロは…アイツは俺たちを利用するだけの“駒”としか見ていなかったんだ〜」
机を叩き、マイクを握り締め、苦悶の表情を浮かべる扇。
だが、それとは裏腹に口元は歪んだ笑みを浮かべ、今にも笑い出しそうなのが
遠目からでも確認できた。
「そもそも、俺たち日ノ本人がブリタニアに反旗を翻したのは
全て“ギアス”によるものであり、俺たちの意思じゃないんだ。
そう、全てはゼロの仕業だ!」
「…?!」
それから扇が行った長いが価値を持たない演説の内容を
あえて要約するなら
「ゼロのせい」「ギアスによって」「俺は悪くない!」
というものに集約される。
- 394 :1:2012/08/06(月) 21:37:26.45 ID:oCcx98BE.net
-
「…屑が!」
マイクの音でかき消されたその小さな罵声は意外にもブリタニア軍から生まれた。
「恥知らずのイレブンめ!誇りはないのか?」
神聖ブリタニア帝国はエリアの統治者であり、侵略者である。
それはブリタニア軍全兵士が共有する認識。
その自分達と長きに渡り戦ってきた黒の騎士団は憎むべき敵であり、
敬意に値する相手だった。
その強敵に打ち勝って迎えた今日という日はブリタニア兵にとっての誇りであり、
死んでいった戦友達への献花でもあった。
だか、それは扇という取るに足らない愚物の戯言により汚された。
扇に対するブリタニア兵の怒りは、誇りを持った戦士が共有する
当然の生理反応といえる。
- 395 :1:2012/08/06(月) 21:38:39.27 ID:oCcx98BE.net
-
「大したものだな“ギアス”とやらは」
「そんな悪魔の実があるならば、ぜひとも食べたいものだ」
「その能力でブリタニアを支配してみろ!」
“ギアス”というゼロの能力の暴露を最初は驚きを持って聞いていた
ブリタニア兵達も扇の“ギアス”が〜の連呼に失笑しはじめて、
ついには欠伸を伴うようになっていた。
ゼロは恐らく“操作系の悪魔の実”の能力者だろう。
しかし、その能力は限定的なものに違いない。
その証拠にブリタニアをその能力で支配せず、黒の騎士団と共に戦うことを選んだ。
それが普通の推測であり、当たり前の結論。
しかし、“モジャモジャの実”の詐欺能力により、騎士団を支配してきた扇には
一般人相手に論理を持って説得するという視点が完全に欠落していた。
自分のいうことは誰もが信じて当たり前だ、と夢想し、話を続ける。
「…そもそも、アイツは誰だ?」
「あんな奴、騎士団にいたのか?戦場で見たことは一度もないぞ」
「なんだあのバンダナは?ディズニーランド帰りか?」
黒の騎士団の主力達―――“紅月”カレン、“将軍”藤堂、“四聖剣”
もし彼らのうちの誰かが、扇と同じ演説をしたならば、
ある程度の説得力と真実味が生まれただろう。
しかし、扇のように、常に後方に待機し、戦場から逃げ続けてきた男にその説得力はない。
結局、扇の演説は卑劣な男がゼロを裏切り、それを騎士団が許したという印象を
残すのみとなった。
「…最後に黒の騎士団は今日で解散することになる。
そして俺の指揮のもとに“扇ジャパン”としてエリアの平和維持に努めてもらう。
オール・ハイル・ブリタニア!」
もはや拍手すらない中を扇は満面の笑みを浮かべ、手を振りながら壇上から去っていく。
- 396 :1:2012/08/06(月) 21:40:15.17 ID:oCcx98BE.net
-
「くたばれ売国奴!地獄に落ちろ!」
「裏切り者!恥を知れ!黒の騎士団!」
鉄柵の外からその演説を聴いていたエリア11の日ノ本人達がついに罵声を始めた。
その矛先は、扇と黒の騎士団。
その声を聞いて黒の騎士団の女性団員がその場に泣き崩れた。
彼女の肩口には“扇ジャパン”という即席で作られたダサいワッペンがついていた。
あくまで騎士団を自分の所有物にしよういう扇の強姦魔としての執念を感じる。
エリアの民の憎しみは扇と騎士団に集まっていく。
それを涼しい顔で確認したシュナイゼルは再び壇上に上がる。
「では、私からこの同盟式の最後の目的について話したいと思う。
その前に諸君は“革命軍”という組織の名を聞いたことがあるだろうか?
世界中で暗躍する犯罪組織。その首謀者たる“ドラゴン”は“世界最悪の
犯罪者“と呼ばれている。まさに彼らこそ”平和の敵“といってもいいだろう
彼らの脅威はすでにブリタニアにも及んでいる」
そう言ってシュナイゼルは鉄柵の向こうにいる観衆たち。
その中に潜んでいるであろう“革命軍”を一瞥する。
- 397 :1:2012/08/06(月) 21:44:10.53 ID:oCcx98BE.net
-
「これまでのゼロとの戦いにおいて、革命軍の幹部とゼロが共に
行動してきたこと我々は把握している。
ゼロは…“魔王”と呼ばれたあの男はただの海賊などではない。
ゼロこそ、ブリタニアを破壊するために革命軍から送り込まれた刺客。
ドラゴンの後継者として将来を期待される彼の忠実な部下だ。
そう…我々の真の敵はゼロではない。
我々の敵はその背後にいる革命軍とドラゴン。
我々は“平和の敵”を許さない。
そのためには力の行使も厭わない。
ブリタニアこそが世界と平和の守護者なのだ」
シュナイゼルの表情はいつもと変わらない。
だが、その声にほんの少し高揚の色が帯びている。
その事実に本人も少なからず驚いていた。
それは、これから始まる未来への期待。
自分が開くブリタニアの栄光の始まりのために。
「今日、ここに、神聖ブリタニア帝国は
ゼロの死をもってドラゴンと世界に我々の正義と平和への決意を示す!」
「うおおおおおおーーーーーブリタニアに栄光あれ!」
「ドラゴンを倒せ!平和の敵に死を!」
地鳴りのような歓声。
世界政府において屈指の大国が革命軍の打倒を口実にその覇権をついに世界に向ける。
その政治声明を前にブリタニア兵は武器を掲げ、声を上げる。
この同盟式において扇という存在が黒の騎士団に絶望を与えたとは
対照的にシュナイゼルは己の野心をもってブリタニア兵に希望と未来を魅せた。
「では主役にご登場願おうか」
その合図に呼応し、海軍基地の扉が開く。
神聖ブリタニア帝国の黄金期の到来。その戦意高揚が最高潮に達する中で、
反ブリタニア勢力の盟主、黒の騎士団・団長“魔王”ゼロ―――ここに現る。
- 398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/07(火) 17:15:47.29 ID:7u1s6Mhu.net
- やっと追いついた
完結までがんばれ
- 399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/10(金) 23:11:17.15 ID:Wbm0nH4V.net
- ほ
- 400 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/11(土) 22:20:09.38 ID:WFaRnV24.net
- 期待!
完走してくれ
- 401 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/12(日) 16:20:52.89 ID:cByv/FVn.net
- 【悲劇のヒロイン(笑】ワンピのニコ・ロビンアンチスレ5【人殺し】http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1324391548/
- 402 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/16(木) 22:40:15.26 ID:sZ5uWYDR.net
- ルフィがルルーシュに「人は死ぬぞ」と言って欲しい
- 403 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/18(土) 22:49:04.75 ID:cm6jyH6T.net
- 完走まで頑張れ〜
- 404 :1:2012/08/25(土) 03:20:07.52 ID:h//e/Kib.net
- 暑いなw
なんかこの時間に起きてしまったので、ついでに投稿しようと思う。
まずは、応援してくれてありがとう。
過疎スレだから人が見てくれるのがわかって嬉しいよ。
まあ、完結は確約できないけど(確約は逃走フラグになる可能性が・・・)
気長にやっていこうと思います。
- 405 :1:2012/08/25(土) 03:20:55.40 ID:h//e/Kib.net
-
「皆様、ご覧ください!
これがブリタニアに反逆した愚か者の末路。“平和の敵”の最後の姿です」
アナウンサーが原稿を読み上げ、カメラのシャッター音が鳴り響く。
その眩いフラッシュライトの中をゼロは…ルルーシュは歩き出す。
その両手の自由は鉄の手錠で塞がれているが、近くに逃亡を防ぐために
同行する衛兵の姿はない。
しかし、その左右はブリタニア軍が占め、その人垣は処刑場までの道を形成していた。
シュナイゼルは敢えて言わなかったが、
この同盟式の真の目的は“ゼロの伝説”を終わらせることにある。
そのためには、騎士団がゼロを見捨てた、という事実が必要であり、
この演出はそれを最大限にアピールする狙いがある。
(チェック・メイトか…)
そうルルーシュは呟いた。
細工を壊された仮面はもはや、ギアスの発動を妨げる障壁。
ルルーシュにとってまさにデス・マスクに他ならない。
いや、たとえ、ギアスを発動させ、視界に入る十数人を操ったと
しても、その後ろに控える十万を超える敵を相手に何ができようか。
すでに勝敗は決したのだ。
「ざまあみろ!くたばれ!ゼロ!」
「ああ、ゼロ様!どうか奇跡を!」
ブリタニア兵の罵声、民衆の悲鳴、騎士団の沈黙。
その混沌の中を、ルルーシュは死へ向かって歩き続ける。
- 406 :1:2012/08/25(土) 03:22:13.41 ID:h//e/Kib.net
-
ルルーシュは歩きながら周囲を見渡す。
顔を背け、俯く騎士団の団員達の中に赤髪の少女はいない。
――カレン、望んだ形とは違うが、この諸島の争いは終わる。君は生きろ。
悲鳴をあげる民衆たちの中に緑髪の女がいないことを祈る。
――C.C. 出てくるなよ。シュナイゼルはお前も狙っている。
すまないな…お前との契約は守れそうにない。
「お兄さま…!」
そう呼ばれた気がした。
シュナイゼルの傍らにいる車椅子の少女…愛おしい妹の姿が見える。
――ナナリー、愛している…!
それ以外の言葉が思い浮かばなかった。
これから先、ブリタニアに翻弄されるその運命を思うと胸が張り裂けそうになる。
だが、もはや自分は側に居てあげることはできない。
だが、ここから先は、あなたに関係のない世界だ
シュナイゼルの言葉が頭をよぎる。
今更ながら、その事実を強く実感する。
――スザク、ナナリーを頼んだぞ。
頭の中に浮かんでくる親友の顔は少年時代のものだった。
ほんの一瞬、あの夏の日の風を感じた。
ルルーシュは歩き続ける。
そしてついに処刑台へと続く階段の前に辿りついた。
処刑台への階段。
その前でルルーシュは歩みを止めた。
- 407 :1:2012/08/25(土) 03:23:50.53 ID:h//e/Kib.net
-
(怖いものだな…死というやつは)
処刑台を前にルルーシュは思う。
自分が死ぬという現実。
その現実を前に足は竦み、大声を上げて逃げ出したい衝動に駆られる。
自分という存在が消滅する。
その恐怖を前に、今までの全てを否定し、懺悔すれば、処刑は免れるかもしれない。
そんな決してありはしない妄想すら甘い誘惑に感じられた。
――違うな、間違っているぞルルーシュ。
自分の中で声が聞こえる。
あの日生まれた怪物の声が聞こえる。
――撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ
それがあの日、怪物と交わした契約。俺のただ一つの信念。
その信念のみを支えに戦ってきた。ゼロとしてここまできた。
ゼロを守るために、多くの仲間が死んでいった。
ゼロのために多くの人々が犠牲になった。
今更、ゼロをやめることなどできない。
あの日の契約を捨てることなど許されない。
嘘をつくなら最後まで――
そうだ!俺はゼロ…魔王と呼ばれた男だ!
ルルーシュは階段を上る。
逃げ出したい気持ちを偽り、本能に反逆し、震える足に力を入れる。
ルルーシュは死への階段を上る。
力強く、踏みしめながら、魔王のように。
「ゼロ…!」
「ゼロ様!」
その最後の勇姿を前に、団員達は目頭を抑え、民衆は声を詰まらせる。
反逆の王の最後。それは希望の終焉。エリア独立という夢の終わり。
人々がその姿を目に焼き付ける中で、ついにルルーシュは階段を上りきった。
- 408 :1:2012/08/25(土) 03:27:08.33 ID:h//e/Kib.net
-
処刑台には二人の衛兵と黒覆面の処刑人の姿があった。
巨大な斧が処刑人の手の中で不気味な光を放っている。
「ぐぅッ…!」
即座に衛兵に組み伏せられ、首を棒で固定された。
眼前には青い海が広がっている。
海は穏やかで波一つない。海面は太陽の光で輝いている。
かつて海賊王が処刑される際には嵐が吹き荒れたと聞く。
反逆の王と呼ばれた自分の処刑において、雨風ひとつないのは
器の差なのか、それともこれがふさわしいのか…。
そんなことを考え、ルルーシュは仮面の中で静かに笑った。
「ゼロから始まる“大反逆時代”は幕を閉じ、
ブリタニアと世界は新しい時代を迎える。
彼の死が、ブリタニアの繁栄と世界平和の礎とならんことを願う。
オールハイル・ブリタニア!」
「オール・ハイル・ブリタニア!オール・ハイル・ブリタニア!」
シュナイゼルの最後の演説を合図として
処刑人はゆっくりと斧を振り上げていく。
- 409 :1:2012/08/25(土) 03:28:44.77 ID:h//e/Kib.net
-
「オール・ハイル・ブリタニア!オール・ハイル・ブリタニア!」
あの夏の日のスザク、嵐の夜のC.C.の笑顔、月夜のカレンとの出会い、
ナナリーとの日々…様々な思い出が蘇る。
「オール・ハイル・ブリタニア!オール・ハイル・ブリタニア!」
その中で、ルルーシュはふと思い出す。
数週間前に出会った海賊たちのことを。
斧はついに頂点に達し、いよいよ振り下ろすだけとなった。
ゼロの死を前にブリタニア兵の自国への賛美歌はますます大きくなる。
「オール・ハイル・ブリタニア!オール・ハイル・ブリタニア!」
(あいつら…いま何をしているかな)
「オール・ハイル・ブリタニア!オ…?!」
処刑場を包み込むほど響きわたったブリタニアの賛美歌が突如鳴り止み、
辺りを静寂が包む。
- 410 :1:2012/08/25(土) 03:30:27.76 ID:h//e/Kib.net
-
「…?」
その静寂といつまでも振ってこない斧を不思議に思ったルルーシュは
恐る恐る目を開けた。眼前には青い海が広がっていた。
だが、その海面はさきほどの平穏が嘘であるかのように激しく泡立ち、
その下には何かの巨大な影が浮かび上がっていた。
“ざわ…ざわ”とブリタニア兵に、黒の騎士団、そしてそこにいる全ての
人々が騒ぎ始め、辺りは騒然となった。
海面に浮かび上がった巨大な影。
その場にいる多くの人々は、その正体を“海王類”と予想した。
だが、この海軍基地の湾内に、これほど巨大な海王類の侵入は過去に例がない。
泡はいよいよ激しさを増し、巨大な影は巡回船を巻き込みながら
海面へと浮上し、その姿を現す。
それは、巨大な、巨大な海オ…オレンジだった…!
「・・・」
あまりの出来事に、その場にいる全員が固まる。
誰一人として喋ることなく、ただ、そのオレンジを見つめていた。
無言で見つめる観衆の中で、
オレンジは突如、開き始め、辺りはオレンジ色の光に包まれる。
その光の中から、一隻の船が飛び出してきた。
海面に派手に着水するその船は、一瞬、ペガサスを連想させた。
それは、羊頭の海賊船。
その羊頭の上に一人の男が立っている。
麦わら帽子を被った男は両腕を天に向けて大声で叫ぶ。
「助けに来たぞ!ルルーシュ!」
「ルフィ――?!」
- 411 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/10/09(火) 23:24:12.20 ID:AT0TuqIk.net
- オレンジw
- 412 :1:2012/11/28(水) 20:46:27.64 ID:B9EpxKo0.net
- この作品は理想郷というssサイトで更新することにしました。
そのサイトで「ギアス」と検索すれば、この作品は見つかります。
このスレでの投稿は終了させていただきます。
今までありがとうございました。
作者より
- 413 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/03/21(木) 17:15:37.63 ID:bwfHtjjl.net
- また鈴木おさむ先生が他局の企画をパクリました
http://www.logsoku.com/r/livetbs/1249988721/
鈴木おさむ脚本の大ヒット映画「 ONE PIECE FILM Z 」
何と「テレビ朝日 報道発 ドキュメンタリ宣言 2009年5月11日放送回」の丸パクリだった
テレビ朝日|報道発 ドキュメンタリ宣言
http://www.tv-asahi.co.jp/d-sengen/
- 414 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/03/29(金) 22:59:02.29 ID:lrjKVzCv.net
- カレンがルフィにビンタして欲しい
- 415 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/04/27(土) 09:56:19.56 ID:vMdjuR1I.net
- sage
- 416 :名無しさん@お腹いっぱい。:2013/06/14(金) 12:27:36.72 ID:p+PxUrvY.net
- 【速報】バルトロメオの正体【ネタバレ】
バルトロメオの正体はフランキーだった…という情報が飛び込んできた。
「麦わら…?!」
バルトロメオの台詞に違和感を感じなかっただろうか?
(中略)
取引、洗脳…
今後の話しの展開が期待される。
詳細記事
ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/handicap/1368603532/
- 417 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/04/08(火) 19:52:47.26 ID:ETaC+4qL.net
- R2のルルーシュ達と第2部の麦わら海賊団を描いて欲しい
- 418 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/08/29(金) 19:47:46.78 ID:mDXir/2v.net
- マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアvsベルメール
- 419 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/10/10(金) 23:25:06.56 ID:EjVHCVpB.net
- z
- 420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2014/11/04(火) 22:13:30.92 ID:KaVmR0QD.net
- ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアvsコビー
- 421 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/09(日) 22:55:41.72 ID:gDhHxFMN.net
- マオvsエネル
- 422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/10(月) 06:33:21.37 ID:vh34oz8C.net
- >>421
メール欄ageでageるのやめてください
ハッキリ言って迷惑です
- 423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/08/11(火) 21:52:38.24 ID:AG9pw2hm.net
- ジノ・ヴァインベルグvsモンキー・D・ルフィ
- 424 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/16(水) 02:52:41.86 ID:MtzRk8/N.net
- ほほう
- 425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/03/15(火) 20:00:13.72 ID:ws+gu1OS.net
- 旱害
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