アップル、2013年に米国内での製造へ1億ドルを投資

John Appleseed

http://www.computerworld.jp/topics/614/205788

　米国Appleのティム・クック（Tim Cook）最高経営責任者（CEO）は、NBCおよびBusinessWeekのインタビューにおいて、同社が2013年
末までにMac製品ラインの1つを米国内でのみ製造することになることを明らかにした。

　アナリストらはこの動きをPR上の策略にすぎないと見ている。Appleは、中国の製造業者の下で働く労働者の待遇が悪いことや、国内
に一部の仕事を戻すべきではないかという指摘をめぐり批判されているが、それらをかわすための対策だというのだ。

　Technology Business Researchのアナリストであるエズラ・ゴットヘイル（Ezra Gottheil）氏は、「いくらAppleでも世間体は無視できない」
と述べた。

　クック氏はインタビューには応じたものの、米国における当該の計画については詳細を語りたがらない。

　6日夜にNBC系列で放送された番組の一コーナーで、クック氏は同局のブライアン・ウィリアムズ（Brian Williams）氏に、「来年われわれ
は、Mac製品ラインの1つを米国内で製造する」と話した。しかし、製造ラインのうちのどれを指しているのか、製造の規模はどの程度にな
るのかなどは明らかにされなかった。中国から出荷された部品を組み立てる以上の作業が想定されているのかどうかさえ、わかっていない。

　BusinessWeekのインタビューはこれよりほんの少しだけ詳しかった。

　独占インタビューに応じたクック氏は、「われわれは2013年にMac製造の一部を米国で行う。組み立てだけならおそらくとうに製造工程を
移せていただろうが、より実のあることをしたいと考えていたため、計画が大きくなった」と話している。

　Appleはこのプロジェクトに1億ドル以上をつぎこむことを明らかにしている。しかし、1,200億ドルを超える資産を保有する同社にとっては
わずかな額と言えよう。また、プロジェクトも同社が率先して進めるわけではないようだ。「われわれは自分たちの資金を出し、そのほかは
第三者と協力している」とクック氏は述べている。

　Topeka Capital Marketsのブライアン・ホワイト（Brian White）氏は、「米国に一部の組み立て作業を割り振るのは財政上一定のメリット
がある」としながらも、クック氏の発表をマーケティングの一環と切り捨てた。「『アメリカ国内で部品を作らねばならない』などというアピー
ルにはまったく信ぴょう性がない。人は自分が最も得意なことをやればよいのだ」（ホワイト氏）

　ホワイト氏は、Apple製品の大半を中国で製造することで、欧米の消費者家電企業はいまだにきわめて大きな恩恵を得られると考えて
いる。

　「両者の間には今も（製造コストに）明確な開きがある。米国内ですべての製造を行えば、アメリカの消費者は製品に手を出せなくなる
だろう。価格が間違いなく跳ね上がるからだ」（ホワイト氏）

　クック氏の発言は現実世界の製造業を認識したものであり、前CEOである故スティーブ・ジョブズ（Steve Jobs）氏の見解とは若干ずれ
ている。ジョブズ氏は2011年に死去する数か月前オバマ大統領と会談し、「iPhone」を米国で生産するにはどうすればよいかと尋ねられ
た際、「今現在海外で行われているのと同じ製造の仕事が米国に戻ってくることはない」と答えたと伝えられている。

　クック氏は6日、ウィリアムズ氏に対し、「コストはあまり関係がない。問題なのはスキルだ」と同様の話をした。「製造に伴うスキルが次
第に米国から他国へ流れていった。消費者家電業の実体はアメリカにはない。（すなわち）製造を“戻す”のではなく、“始める”ことが重
要だ」（クック氏）

　製造について再考するようになったコンピュータ・メーカーはAppleにとどまらない。ゴットヘイル氏は、ノースカロライナ州に工場を建設
し、100種以上の雇用を生み出すとした10月のLenovoのアナウンスに言及している。