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【無限桃花】創発発のキャラクター総合4【H・クリーシェ】

1 :創る名無しに見る名無し:2011/10/17(月) 20:36:46.69 ID:TT7ZQijJ.net
創発発のキャラクターで創作するスレです。
もちろん新たなキャラを創作するのもアリ。
ハルト閣下は専用スレがあるのでそちらでやったほうが喜ばれるます。

作品まとめ
創作発表板@wiki - 創発発のキャラクター総合
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/300.html

キャラまとめ
創作発表板 裏まとめwiki - キャラクター
http://www1.atwiki.jp/souhatsu_ggg/pages/35.html

避難所
創発発のキャラクター総合in避難所2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1293469882/l50

前スレ
【無限桃花】創発発のキャラクター総合3【H・クリーシェ】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281113345/l50

関連スレ
【魔王】ハルトシュラーで創作発表するスレ 3作目
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283782080/l50
ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283595918/l50

2 :創る名無しに見る名無し:2011/10/18(火) 00:48:38.29 ID:8GgMrpr6.net
>>1

3 :創る名無しに見る名無し:2011/10/18(火) 05:19:55.02 ID:tvIU58Vc.net
>>1

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4 :創る名無しに見る名無し:2011/10/18(火) 22:20:15.02 ID:DqwtI2sJ.net
さりげなく、まとめも対応してた。乙。

5 :創る名無しに見る名無し:2011/10/20(木) 21:06:17.35 ID:eY7qZVid.net
念のため

6 :創る名無しに見る名無し:2011/10/24(月) 00:56:15.56 ID:GO5x2WjS.net
ところで足土寄生って何と読むのだ?

7 :創る名無しに見る名無し:2011/10/24(月) 01:00:43.56 ID:taSyg22g.net
そくど規制?

8 :創る名無しに見る名無し:2011/10/25(火) 00:20:03.36 ID:OKybOTL5.net
うん、そくど

9 :創る名無しに見る名無し:2011/10/25(火) 02:09:38.38 ID:/8PTPXtr.net
暴走族や危険な運転をする走り屋を取り締まる寄生か。









いい奴じゃね?

10 :創る名無しに見る名無し:2011/10/25(火) 16:43:33.60 ID:RhqGsvVi.net
発子「ねえ、桃花……あなたが出会ったなかで一番弱かった寄生はなにかしら……
こうと考える寄生でもいいわ……」

桃花「寄生に強い弱いの概念はない、あれは人にとりつき蝕むモノ、ただそれだけだ」

発子「質問が悪かったわ、子供が遊びで話す
トバイアス・アンドリオンと甲鱗のワームどちらがふさわしいか?
その程度の話でいいわ」

桃花「……足土寄生というモノがもっとも弱い、だが手にあまる」

発子「足土寄生……名前は強そうね」

桃花「例えばあなたの前に足土寄生がいるとする、半分に距離を詰めた、
すると……あなたの速度は二分の一になる」

発子「……」

桃花「更に距離を半分詰めた、すると速度は四分の一に、また半分につめた、更に遅く、八分の一に……
近づくにつれ速度は減衰する……さて問題、足土に到達するのはいつ?」

ゴゴゴゴゴゴ

桃花「私は、一生たどり着けない気がする……」

11 :創る名無しに見る名無し:2011/10/25(火) 16:51:08.62 ID:0lKA/XSq.net
混ぜ方うまいなw

12 :無限彼方大人編〜海へ行こう、と彼方は【その後】〜awacs:2011/11/04(金) 21:30:20.68 ID:hjri8D/7.net
 帰宅して玄関を開けて、無造作に靴を放り投げて、歩き出す前に靴下まで脱いで、裸足で冷たい廊下の上に立つ。
 外は雨が降っていたので、履いてた靴は陰干しするべく乾燥剤を入れた下駄箱に押し込んで、濡れた傘は下駄箱の影に立てかけておく。
 時計を見ると、夜の八時になろうとしている頃だった。早く帰ったわけでもないし、遅くもない。私にとってはそんな時間帯だ。
 部屋着に着替えるより先に冷蔵庫を開けて、ペットボトルに入った冷たいジュースをラッパ飲みして、また冷蔵庫にしまう。
 ここまでやって、私はようやく帰宅した、と自分で思のだ。玄関を開けてからここまで、ルーティンワークとして一つにまとまっている。

 そして、冷蔵庫の影に隠れている小汚いソフトボールを見つけて、私はため息をついた。

「……また部屋ん中うろうろして。落ち着いてられないのかしら」

 私はそれを持って、居間に移動して、テーブルの上にそれをそっと置いた。
 それに一瞥くれてから、さっさと上下スウェットの部屋着に着替え始める。着替えながらも、ちらちらとそれに視線を送るが、それはぴくりとも動かずに、ただのソフトボールのままだ。
 着替えて、服を丁寧にクローゼットにしまって、テーブルの前に座る。改めてコップに注いだジュースを飲みながら、そのソフトボールを指でちょいちょい突いてみる。

「おい、いい加減馴れろよ。一人の時は動き回るクセに。それとも腹減ってスネてんの?」

 ソフトボールは突かれるまま、テーブルの上をころころと転がるだけだった。
 にしても汚いボールだ。定期的に洗ってはいるが、ほっといてもスグに汚れてしまう。泥が染みついたならまだしも、新陳代謝で垢が出てくるような、脂ぎった汚れ。後でまた洗おう。こんなのが私が居ない間に私の部屋をうろついている、となると、正直気持ち悪い。

 このボールは、ちょっと前に海に出かけた時に拾って来た物だ。
 寄生という化け物を二匹ほど始末して、その時にお世話になった海の家の爆乳お姉さんに別れを告げ、一人で海岸沿いを歩いていたら、コレが浜辺にぷかぷか浮いていた。
 私は脚を止めて、じっと見つめた。なぜならば、ほんの微かに、ホントにちょっとだけ、寄生の力を感じたから。

 私が近づくと、ぷかぷか浮かんだソフトボールからは、先端が赤く輝く触覚らしきものが数本伸びて、もぞぞと像みたいな、芋虫みたいな脚みたいなのが伸びて、げっ歯類の前歯のような歯が上下左右斜めから生えた、身体の半分ほどを占める大きな口を開いた。
 そして、横に浮かんでた木片を触覚で掴んで、ビート版代わりにして、ばちゃばちゃと泳いで逃亡を図った。

 しかし、波に押されて前に進むどころか押し流されていた。
 それでもめげずに一生懸命逃げようと、このソフトボールの寄生は水面を短い脚で叩いている。
 何分くらい見てたかは忘れたけど、浜辺の波に負けて引いては戻るコイツをじっと見ていたのを覚えてる。 
 引いては戻り、引いては戻り。ぱちゃぱちゃと水飛沫をあげながら必死こいて逃げようとする謎の生物と、突っ立ったままじっとそれを見ている私。
 差し込む夕陽と、ざーざーと静かに奏でる波打ち際。我ながら、それはもうシュールな光景だったと思う。


13 :無限彼方大人編〜海へ行こう、と彼方は【その後】〜awacs:2011/11/04(金) 21:30:48.51 ID:hjri8D/7.net
 あまりに健気で可哀想なんで、とりあえず拾ってみると、そのまま触覚や脚は引っ込めて固まってしまった。ただのソフトボールになった。
 普通なら寄生はぶっ殺すところなんだけど、コイツは怯えて、出来る限り私に寄生だと気付かれないように擬態している。モロにばれてるのは置いといて。
 こんな奴は見た事がない。寄生を大量に生み出した当の私ですら、こんな奴は知らない。

 なんか殺すのも可哀想な気がして忍びないし、寄生である以上はほっとく訳にも行かず。
 判断力が低い優柔不断な私は、とりあえず持ち帰る事にした。
 そして、しばらくコイツを飼育して、現在に至る。





    ※





「もう三か月もウチに居るのか」

 夏の海の時は汗をかくほど暑かったが、今はもう夜になると寒気がする季節だ。
 その程度の期間、コイツを飼育しているが、いまだに懐かれたとか、こっちの存在に馴れたとかいう様子はない。私が近づくと、初めて見つけた時のようにソフトボールのフリを決め込むか、すべてをさらけ出して逃げようとする。
 かと言って、食事を与えると目の前で堂々ともぐもぐ食べ始めるので、結局は馴れたのか。

 板チョコを半分に割って目の前に置くと、細長い、先端が赤くぼんやり光った触覚が数本伸びて、チョコを丹念に嗅ぎまわる。それが食べ物だと解ると、もぞもぞと脚を出して、やたらと大きな口を開け、器用に触覚を使ってチョコを口まで運び始める。
 食事の時は非常におとなしく、ゆっくり、もぐもぐと食事をしている。

 しかし、ふと思ったのだが、コイツが食べたチョコは一体どこに行くのだろうか。
 寄生という化け物は基本的に霊的エネルギーそのものである。なので、単体では食事どころかエネルギーを補給する事自体が出来ない。文字通り、ほかの何かに寄生し、それ自体を我が物にすることによって成り立つ。単体では無意味なのだ。

 人間に取りつけば、それは人間と同じ生活サイクルで生きる。普通に食事を取り、休息し、生命を維持するのだ。
 同様に、妖怪の類に取りつけば、それは妖怪と同じになる。
 見た事は無いが、機械の類に取りつけば、おそらくは外部から電源なり燃料なりを補給するだろうし、電磁波という実態のないものに取りついた奴は、おそらく電磁波が発生するメカニズムそのものを利用していると考えられる。
 動物なら動物らしくだろうし、植物なら植物と同じになる。
 それが寄生なのだ。
 既存の生命や、妖怪、物に取りついて、それに成り代わる。

 では、こいつはどうだろう?
 何に取りついているかと言えば、捨てられたソフトボールだ。そもそも生命なんて維持する必要がない、ただの物質だ。
 物質に取りつく奴が居ない訳ではないが、たいがいは別系統のパワーソースを持っている。いわゆる九十九神や、それこそ機械など。電磁波などはそれそのものがエネルギーだ。

 でもコイツは、ただのゴムの塊に過ぎない。
 自ら動くわけでもなく、自分で動かなければただのボールである。こいつにソフトボール本来の動きをさせようと思ったら、グラウンドでキャッチボールやらティーバッティングをしないといけない。
 もちろんそんな事したってコイツのエネルギー補給にはならないとは思うけど。

14 :無限彼方大人編〜海へ行こう、と彼方は【その後】〜awacs:2011/11/04(金) 21:31:13.44 ID:nOlHABFn.net
 相対性理論によると、物質はエネルギーと置き換えられる。つまり、コイツが食べた物は本来ならば別の物となるか、エネルギーにならなければならない。
 だが、コイツはトイレにも行かなければ、先ほど述べたようにエネルギー補給そのものが必要ない。食った物がほぼ完全に消えて、せいぜい垢みたいな汚れが出てくる程度だ。完全なまでにエネルギー保存の法則を無視している。

 某美人物理学者が言ってたように、どこかの多重次元にでもエネルギーが逃げているのだろうか。もし三次元空間に食った物が全部戻ってきたら、それは中々の量になっているだろう。全部エネルギーに置き換わったら、関東一円を消滅させる程度の核爆発が起こる。
 しかし、コイツはそんなのお構いなしに、もぐもぐとチョコを食べる。もちろん、何も起こらない。仮に寄生状態で動くエネルギー補給をしているのだとしても、明らかに容量オーバーなのに。不思議だ。

 ちなみにコイツ、何でも食べるわけじゃない。特に鶏肉が大嫌いで、意地でも食べない。それどころか、私が鶏のから揚げでも食べようものならば、悲壮感溢れるくらいの勢いで攻撃してくる。攻撃力は皆無だけど。
 それはもう酷い暴れっぷりで、無視して食べてると、大泣きしながら部屋の中を暴れ回る。まるで鶏肉を食べる事自体が許せないかのようだ。
 最初こそウザい程度くらいに思っていたけど、あまりにも悲しそうな表情をするのでこっちが辛くなる。おかげで最近は自宅で鶏肉料理は一切口にしない。

 と、どうでもいい事を考えながら見ている。
 あっという間にチョコは無くなってしまった。
 
「……ん?」

 食べ終わったコイツは、じーっと私の飲んでいたジュースを見つめている。
 どこに目があるかは解らないけど、見ているのは解る。

「はいはい」

 指でコップを押して、目の前に持っていってやると、触手で掴んで持ち上げて、がぶがぶと飲み始めた。
 チョコと同様に、コップの中のジュースは未知の空間へと押し流されていく。この時点で飲み食いした量はコイツの体積の半分を軽く超していると思われる。
 豪快にげっぷをして、飲み干したコップはちゃんと私の方へと返してくる。さっき食べたチョコの包みも、自分で丸めて自分でゴミ箱に捨てる。躾が要らないのだけはとても助かる。
 チョコの包みについてある当たりのマークを見つけたら、それだけはよけてテーブルの上に残して行く。私がこれを集めているのを知っているらしい。
 この当たりのマークを七つ集めると金のなんとかファイトが貰えるらしい。今から楽しみだ。

 ゴミ箱に丸めた銀紙を捨てて、再びテーブルの上に戻ってきたこいつは、触手で私の手をぺちぺちと叩いて、おかわりを要求してくるが、食べ過ぎは良くないし、そもそも食べる必要もないので我慢させる。けっこうしつこく要求してくるが、私がダメと言えばたいがい諦める。
 一度だけ、あんまりしつこいモンだから、パチッと電撃出して脅かした事があった。
 そしたら、よほどビビったのか、大口開けて触手も脚も全てさらけ出し、びろーんと伸びて失神してしまった。
 脅かす程度のつもりだったのだが、コイツにとっては恐怖以外の何でもなかったようだ。
 そして、チョコを貰えなくて落ち込んだのか、えらいげんなりしてテーブルの上でうなだれてしまった。面倒な奴。

 ちなみにコイツ、名前は路歩崩。じぽほう、と読む。
 寄生の名前が大半が自分で勝手に名乗るので、名前の由来は解らない。

「ほれ、なんか言ってみろ」
「うア、おーむ……」

 突っつくと、鳴き声のような喋り声のような、どちらともつかない声を出す。
 寄生の言語能力は、取りついた物に左右される。人間に取りついた場合、その人間が持つ言語能力をそのまま引き継ぐ。もちろん、言語に限らず、あらゆる知識や技能まで引き継ぐ。
 他の可能性としては、取りついた物が元来非常に高い知能を持っていて、それが寄生されることによって、言語能力を発現する。コイツを拾った時に戦ったイルカの寄生はその類だろう。

15 :無限彼方大人編〜海へ行こう、と彼方は【その後】〜awacs:2011/11/04(金) 21:31:55.26 ID:nOlHABFn.net
 もう一つは、人間以外で言葉を操る存在。神や、妖達に寄生した場合。
 例を上げると、私の知る限りでは最強の寄生、悪世巣。元は日本中で信仰された神の一体だ。光り輝く炎の尾を持つ、狐の妖怪、御前稲荷。いわゆるお稲荷さん。
 長く生きているだけあって、知識も賢さも、そしてその強さも、本来ならば私よりはるかに上だ。真正面から挑めば、おそらくまともに戦う事すらできないかもしれない。
 寄生となった悪世巣も、当然その能力を持ったまま寄生となった。むしろ、寄生である事が弱点ともなっただろう。本来であれば無敵の能力も、寄生の弱点までをも取り入れてしまったのだから。

 また、たとえ妖でも、元から言葉を操れない存在ならば、寄生となっても言葉は操れない。
 妖は人が創る物だ。故に、人が望む姿を取る。
 好む好まざるではなく、人がそう思えば、そういう姿になってしまう。
 例えば、ウチのクソジジイことバカ天狗の婆盆は……あ、彼は寄生ではなかった。べらべら喋るし。ともあれ、人がただ暴れ回る暴力や怒りや憎しみの象徴を思い描けば、それはそのまま妖の始まりとなるのだ。
 八岐大蛇のような、数多い人間の怒りの結晶のような怪物は、そのようにして誕生した。

 そして、コイツである。目の前でチョコのおかわり貰えなくて、テーブルの上でうなだれているコイツ。
 何の寄生かと言えば、ソフトボールだ。オリンピック種目のソフトボールで使うソフトボールだ。もちろん喋るわけがない。ていうか、まず自分から動く物体ではない。寄生が好んで寄生する物とは思えない。
 でもコイツ、喋るし、おまけに食べる。さらに言うなら、泳ごうとまでした。
 考えてもみよう。ソフトボールがそんな真似するだろうか。たとえ寄生といえど、寄生は「取りついた物」の能力を受け継ぐ。だから、本当ならばソフトボールの寄生なら、ただのソフトボールと変わらないはずなのだ。

 なので、私の予想では、コイツは元は別の寄生だったのではないか、という結論に行きつく。
 恐らくだが、当初は言語能力がある、そこそこの化け物だったろう。だが、何かしらの原因で、それが打ち砕かれた。寄生の力も発散してしまって、仕方なく、命からがら、そこら辺に落ちていたソフトボールに寄生し直して、現在に至る。
 砕かれる前の寄生の力を少しばかり受け継いだまま。

 何かしらの原因を考えると、やっぱり他の寄生だろうと考えられる。
 寄生の力は寄生でしか払えない。つまり、コイツは自分よりはるかに強い別の寄生に苛められたかなんかして、力を大きく失ったのだ。今も寄生でいられるのは、ある意味で奇跡だ。本当ならそのまま消滅していてもおかしくはない。
 となると、前に電撃で脅かした時にビビりすぎて失神したのも合点がいく。私の電撃は純度百パーセントの寄生の力そのものだ。過去の経験がトラウマにでもなっているのだろう。それを思い出して、恐怖のあまり失神した。

 前にコイツを苛めた寄生がどんな奴か気になるほどだ。きっと、とんでもなく恐ろしい顔をした鬼かなんかに違いない。

「……あ」

 うなだれていたコイツは、気が付いたらそのまま寝ていた。
 それも触覚は出したまま。もっとも、これもいつもの事。自分から寝床に潜る事もあるけど、たいがいはどこでも寝てしまう。
 はっきり言えば隙だらけ。とても、最初に逃亡を図ったとは思えないほどに堂々と眠っている。
 一向に懐かないし、言う事はあんまり聞かないけど、やっぱり、少しは私に馴れてはいるらしい。

 眠ったコイツを鷲掴みにして、段ボールを切ってこしらえた寝床に放り投げた。中に敷いた毛布の上に、どさっと転がるが、コイツはそのまま眠ったまま。
 投げるなんて酷いと思われそうだが、そもそもコイツはソフトボール。投げられてしかるべし。

 ……寄生を飼っているなんて、余所に知れたらどう言われるだろうか。
 実は、まだ誰にも内緒で、こっそり飼っているのだ。
 私にたまに仕事を持ってくる某組織なら、血相変えてさっさと始末しろと言うのだろうか。それとも、サンプル目的に譲ってくれとか言うのだろうか。
 同じく、私と同様に寄生と深く関わり合った私の育ての親にも教えていない。きっと彼なら、ひとしきり笑った後に、「好きにしなさい」とか言うだろう。


16 :無限彼方大人編〜海へ行こう、と彼方は【その後】〜awacs:2011/11/04(金) 21:32:18.37 ID:EgJeUSqS.net








   ※
 





 晴れた朝だった。
 昨日は面倒なのがさっさと寝たので、私は一人で深夜まで某電子掲示板で呑みながら遊んでいた。
 日付が変わった頃に寝て、目が覚めたら、朝の九時くらい。昨日の夜は雨が降っていたが、朝にはすっかり雨雲もろともどこかに消えていた。
 寝起きのぼんやりした頭で、ぼけーっと部屋を見回した。

「うん?」

 カーテンが僅かに開いていた。そこから、日の光が差し込んでる。

「あいつかよ。外にでも出たいのかな?」

 私はカーテンの前に立って、一気に開けた。やっぱり居た。窓のレールの上の際どいスペースに立って、じーっと外を見ているソフトボールの化け物。

「ちょっと、なに窓にへばりついてんだよ。外の人に見られたら……あ」

 昨日の雨は、朝方まで降っていたらしい。
 私が目覚める少し前に、雨は過ぎ去ったみたいだ。

「これ見てたの?」

 ソフトボールの化け物は、珍しく私の問いかけにも応えず、じっと窓の外を眺めている。
 遥か空の向こう、雨上りの、綺麗な虹が私にも見えた。



おわり

17 :無限彼方大人編〜海へ行こう、と彼方は【その後】〜awacs:2011/11/04(金) 21:32:42.38 ID:EgJeUSqS.net
投下終了

18 : ◆wHsYL8cZCc :2011/11/04(金) 21:34:47.82 ID:EgJeUSqS.net
そんで酉の一部をミスるというw

19 :創る名無しに見る名無し:2011/11/04(金) 21:51:30.56 ID:bMm2wcOU.net
投下乙
これが路歩崩ペット化計画か

七つ集めると金のなんとかファイトてwww

20 :創る名無しに見る名無し:2011/11/05(土) 00:07:08.77 ID:XO9+gFa3.net
投下乙。一体何がもらえるんだろうw

http://loda.jp/mitemite/?id=2590.jpg

21 :創る名無しに見る名無し:2011/11/05(土) 00:09:24.46 ID:BQGUiog1.net
乙ーなるほどそうなるか。
しかし寄生は身内化するといちいち可愛いなw

22 :創る名無しに見る名無し:2011/11/05(土) 00:09:48.04 ID:F1Lnfbqr.net
彼方の家の窓でけぇw

23 :創る名無しに見る名無し:2011/11/05(土) 00:38:04.00 ID:R7EL1VSO.net
そこはかとない切なさが…

24 :創る名無しに見る名無し:2011/11/05(土) 21:30:52.65 ID:CvWwNI72.net
バスト72のアイドルに見えた

25 :創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 01:20:19.67 ID:Q1xzgc50.net
でも72ってめっちゃ小さいよなw

26 :創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 01:37:09.55 ID:G691vau9.net
塗り壁のこと悪く言うなよ!

27 :創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 10:51:47.21 ID:Ltr6iFzG.net
http://loda.jp/mitemite/?id=2597.jpg

28 :創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 12:02:25.84 ID:uaEGhSuK.net
やめろwwwwwww

29 :創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 20:26:43.43 ID:PVVf7CPc.net
まあ彼方もバストはうわなんか雷g

30 :創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 21:26:58.88 ID:Q1xzgc50.net
直りん「大量の胸パットはさめば?」

31 :創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 22:31:32.11 ID:ZPdOGcB3.net
ttp://loda.jp/mitemite/?id=2602.jpg

32 :創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 22:40:17.36 ID:dOE4FhRf.net
ひなのさん何してんすかwwwwwww
にしても珍しいセクシーショットwww

33 :創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 22:41:04.03 ID:WjoD/rgZ.net
ひなのもなにしてんのw

34 :創る名無しに見る名無し:2011/11/07(月) 01:18:08.45 ID:UXkTgBwW.net
はっちゃんの投票が最近止まったなと思ってたら謎太郎が桃花を捕える位置についていた件。

35 : ◆i80SLvJ/Uw :2011/11/09(水) 02:55:29.32 ID:hevjxXzD.net
とある少女にまつわる話をしよう。
彼女はまだ平和だった頃、最果ての地にある村で捨てられているのが発見された。
齢は三つほどだろうか。肌や髪の色はこの辺りの人々と異なり、また言葉を喋らない。
そして手には白亜色の石のようなもので出来た腕輪をはめていた。
村人は彼女を迎え入れるかどうかで大いに争った。
当時、大国の一つが魔界の門を開き、異界の化け物を引きつれ世界征服をし始めた頃で
この最果ての地にも少ないながらもその魔物たちが進行してきていた。
もしもこの娘が魔物の子供だとしたら?
そういった不安が村人たちに広まっていたのだ。
魔術師がいればわかるかもしれないがそういった類の者はいない。
そんな論争を止めたのはその村の大地主の一人だった。
「こいつは俺が引き受ける。何かがあれば全責任を負う」
大地主の家は歴史も古く、まだ現当主も信頼に厚かったため
村人たちはこの娘を男に任せることにした。
それから時は十年後に移る。
娘は一人の美しく強い剣士へと成長した。
魔物たちの進行により、その世界では村単位で自衛団を持つことが当たり前となっていた。
それゆえに子供たちは小さいころから厳しい剣の修行を受けてきたのだ。
そしてある一定の実力を得たものは正式に自衛団として村を守る仕事を担ってきた。
娘も例外ではなく、明日の試験に合格すれば自衛団入りとなるはずだった。
その事件が起きなければ。
当日。好天に恵まれ、試験は予定通りの時刻より始まることとなった。
期待と不安を感じながらも訓練生は思い思いにその時刻を待っていた。
試験会場の広場ではその準備が整えられている。さほど手の込んだものがあるわけでもないが
これを見に来る村人たちの席を準備しなければいけないのだ。
ふと会場に影が落ち、雲でも出たかと村人が天を仰いだ。
影は何のためらいもなく、その巨体で村人を潰した。
赤い巨体とそれに見合う巨大な翼。鞭のような鋭く長い尻尾と人の腕よりも太い爪が付いた手足。
その生き物はドラゴンと呼ばれる魔物だった。
今までいわゆる下級と呼ばれる魔物しか来ることがなかった村に突如出現した上級魔物に村人たちは
逃げる間もなく殺された。
すぐに自衛団が来るものの前述の通り、この村には下級程度の魔物を相手する装備しかないのだ。
ドラゴンは向かってくる人間たちを少しだけ尻尾を動かし、肉片へと変え
逃げる人間には火の息と建築物の瓦礫を飛ばすことで殺していった。
試験のために待機していた娘は尋常じゃない空気を感じ取り、広場に着いたときには
見る影もないくらい破壊されつくした町並みと血の海、そしてそこに鎮座するドラゴンの姿があった。
ドラゴンは娘を一瞥する。それだけで娘は動けなくなった。
生物としての絶対的な強者が目の前にいる。自分という弱者がどれだけ努力しようとも乗り越えられるほどの。
逃げ出したいはずなのに足が動かない。ドラゴンが長い尻尾をやおら持ち上げる。
確実な死が目の前に迫ってきたとき、娘はあるものを見つける。
自分をここまで育ててくれた当主の死体を。
次の瞬間、振り下ろされた尻尾は宙を舞ったと壊れた家屋に落ちた。
娘が拾われたときから付けて来た白い腕輪は今、彼女の手の中で剣となっている。
その後は一瞬だった。尻尾を切られたことに驚いていたドラゴンは次に首を切り落とされたのだ。
鉄の剣を歪め、魔法すらも通らぬというドラゴンの肌を呆気なく切り裂いたのだ。
村人たちが見たのは、血まみれの広場に佇む赤い少女とそれと混ざることのない白を持つ剣だった。
その娘の名は大地主ソーニャ家の養子、シカという。

36 :創る名無しに見る名無し:2011/11/09(水) 15:38:39.02 ID:5CaLJdnN.net
桃花乙。相変わらず読みにくそうですらすら読める文w
これが例の自警団か。

37 :創る名無しに見る名無し:2011/11/09(水) 21:09:09.15 ID:mMfEKzJS.net
>>35
おー彼女の話か

38 :創る名無しに見る名無し:2011/11/10(木) 02:12:53.51 ID:wn5+iGuj.net
一応、元・無限桃花なんだよなシカ

39 : ◆7FtGTaokck :2011/11/10(木) 02:52:41.09 ID:cI76O/cV.net
そして物語はさらに五年後から始まる。
シカ・ソーニャが十八歳のときのこと。風の噂によると世界の大部分は既に支配されたと言う。
あの惨劇以降何度か上級の魔物が来たもののソーニャの活躍により、危険は回避されていた。
誰もがソーニャこそが自衛団の団長になるべきだと言ったが本人はあまり乗る気にならず
結局副団長にすらならなかった。
「みんな期待してたのになんでならなかったんだ?」
ソーニャが拾われてから十五度目の冬。新団長選出が終わった後日のこと。
団長に選ばれた青年はソーニャにそう尋ねた。
ソーニャはしばしの間考えを巡らせた後、懐から一枚の手紙を出した。
「私は行ったことないが……。ここより南に向かった先に町がある。そこから手紙が来たんだ」
青年はそれを受け取り、読む。堅苦しい文章を噛み砕いて言うとこういうことだ。
『力を貸して欲しい』
「なるほど」
青年は納得がいった。青年はソーニャのことをよく知っている。あの日試験を受けるはずだった同期だからだ。
ソーニャは正義を強く信仰している。助けを乞われればそこに馳せ参じてしまう。
「行くんだな」
「正直すごく迷った。ここだって上級の魔物が来る。でも町は……その大きさ、人の密度ゆえにここより来るんだ。
 私の骨を埋める場所はここだと思っている。だけど今だけは、今だけは町を助けに行かなきゃいけないんだ」
「ああ、村のことは任せろ」
ソーニャと青年は曇天の下、共に誓い合う。
数週間後、ソーニャは村を出て、町へと向かった。
余談ではあるが青年はソーニャに好意を持っていたが、ソーニャはそんな気は毛頭なかった。


違う板で使ったことのあるものだったのでトリ変えました

40 :創る名無しに見る名無し:2011/11/10(木) 15:22:19.31 ID:i+5ffq1f.net
乙。館にくる五年前か

41 :創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 08:39:16.07 ID:CF6hxPN8.net
桃花乙ー

42 : ◆7FtGTaokck :2011/11/13(日) 04:47:23.10 ID:sZv3Wg+e.net
最果ての地よりおよそ一週間ほど歩いたところに町がある。
ソーニャは知識としてはそれを知ってはいたがそこへ向かう機会などはなかった。
物資の運搬も行商人が執り行うし、それの護衛も専用の兵士が付く。
ソーニャにとっての遠出はせいぜい村の少しはずれにある森へ狩りに行く程度のことだ。
もちろんこのような長期間に渡り、村の外へ出たこともない。
村の高き塀に囲まれたその内部こそがソーニャにとっての全世界であり、それ以外は夢物語に過ぎなかったのだ。
そのためソーニャは期待していた。どのような未知の体験が待ち受けているのか。
しかし三日ほど過ぎたところでソーニャは一つの結論に達した。
「……思ったより普通だな」
それも当然である。なぜならソーニャは町へ向かう道を歩いているのだからだ。
その道は舗装されているわけでないにしろ、背の高い草木など無く見晴らしも良い。
少しあるけばちょっとした林があるがわざわざ逸れて行く必要もない。
散々『町の外には危険な魔物がいっぱいいるんだぞ』と脅されてきたがある程度賢いらしく焚き火がある限りは寄ってこない。
最初は期待に溢れていた物の今となっては萎んでしまった。
ソーニャは簡素な寝床を用意し、そこに横になって届けられた町の資料を読んでいた。
町にだってそれ相応の大きさの自衛団がいる。おそらくは村と比べ物にならないほどの大きさだ。
最近町に雌のドラゴンが襲来したことがあったそうだ。
ドラゴンというのは種類にもよるが繁殖期になると一所に留まることが多い。
その候補地として人里が狙われることが多いのだ。
なにせ町には守りの塀がある。外敵と言えばその辺をうろちょろ動く小賢しい人間のみ。少し薙げば死に絶える。
ついてに食料にもなるし一石二鳥。ドラゴンからしてみればそういうことになる。
だからこそ人にとって一番身近かつ強大な敵であるドラゴンの討伐は魔物進行以降大きな課題の一つに上げられる。
ちなみに言うとかつて村に降りたあのドラゴンは腹をすかせた老いぼれであったということがわかっている。
繁殖期のものに比べれば天と地……ほどでないにしろ大きな差がある。
町に襲来したというドラゴンはまさしく繁殖期でそれを討伐したというのだ。
おそらくその人員的損害の穴埋めにソーニャに白羽の矢が立ったというのが事の顛末だろう。
ソーニャは資料を鞄にしまい、眠りにつく。もうすぐ四日目の朝が来る。

43 :創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 20:10:14.85 ID:ylhO926v.net
何この王道ファンタジー。鬼みたいだったシカがいまのところ普通の人に見えるなw
乙っした。

44 : ◆7FtGTaokck :2011/11/14(月) 03:35:08.19 ID:cHwfmvzX.net
村を出て七日目。ソーニャは草原を歩いていた。
吹く風は優しく、足元の小さな草は静かに揺れている。
少しだけ高い丘の上でソーニャは目的地を目視する。
草原の中に突如現れた高い防壁。色合いから考えると石で出来たものなのだろう。
防壁の上には人の歩けるスペースがあるらしく緑の点が動いている。
その防壁の奥に見える赤茶色の屋根と白い壁の家々。
「あれが町か……」
遠景から見るだけで村よりも遥かに大きいことがわかる。十倍、いやもっとだろうか。
緑の海を横断する茶色の線はあの地へと伸びている。
この調子なら正午前には辿り着けるだろう。そう思いつつソーニャは歩き出した。

45 : ◆7FtGTaokck :2011/11/14(月) 03:36:10.66 ID:cHwfmvzX.net
薄汚れた防壁を見上げる。近づいてみると石を組んで建てられたことがよくわかる。
高さはおおよそサーニャの五倍はあるだろうか。村にある木で出来た防壁ですらサーニャの三倍程度で数ヶ月かかった。
この高さや広さを考えるとおそらくは数年、数十年とかけて作ったのだろう。
だがそれと同時に平穏を手に入れた。これだけの防壁だ。早々に壊れることはない。
ゆえに空からの襲撃に警戒し、それに対しての備えをしている。
これほどの規模の設備を整えることは出来ないが中の設備で村にも流用できるものもあるかもしれない。
どうせならそういったものを持ち帰って村の発展に役立てよう。
「そこのお前。何をやっている」
ソーニャが一人で頷いていると門番の男に咎められた。
慌てて懐から一枚の手紙を出して男に手渡す。
最初は胡散臭げな目つきをしていたが手紙を読んだと同時にその顔色は一変し
「そ、そうしょうお待ちくださいませ!」
と噛みながら戻っていった。
ソーニャもそれに付いていき、門の前で待つ。
門は二種類あり、一つは荷馬車などを通すようであろう大きなこれまた石で出来たもの。
もう一つは人用の小さな門。
小さいのはさておきとしてこの石扉を人力で開けるのはおそらく不可能だろう。
しかし何かに仕掛けを使ったところでこんな重そうな物を動かせるのだろうか。
言うまでもないが村には石扉などない。木で出来たものを紐を引っ張って開けるのだ。
しかし村のあんな小さいものでも何人かが力を合わせないと開けることが出来ない。
この大きさで石となると何十人もの男たちが開けるのだろうか。
その図を想像して少しおかしくなる。
そこに丁度荷馬車を引いた行商人らしき一行が辿り着いた。
主人らしく男がソーニャをじろじろ見ながら門番の男に紙を手渡す。
門番の男はそれを読んだ後、紙を主人に手渡し小さなベルを鳴らした。
それは目を疑う光景であった。石扉がゆっくりとだが一定の速度で開いていくのだ。
口を開けて見ている人間が珍しいのか門番の男がソーニャに話しかけてきた。
「なんだい、うちは初めてか?」
「あ、ああ。そうだ。私は村から出ることがなかったからな……」
「村って言うとなんだい。まさかあの秘境にあるとか言う最果ての村か。まさかな」
「そのまさかだ」
「おっとこれは失礼。そういえばあの村には魔法使いがいないと言う話だったな」
「ということはこれが……」
「そうだ。いわゆる魔法ってやつさ」

46 : ◆7FtGTaokck :2011/11/14(月) 03:37:20.50 ID:cHwfmvzX.net
軽口の門番が言うには先ほど鳴らした小さなベルも魔法道具の一種であの音に反応して扉が開閉するようになっているそうだ。
さすがにこのベルは売ってはいないが一般人にも魔法の道具は販売されているらしい。
そういった道具は町中にある魔法工房で作っているそうだ。魔法に疎いソーニャには信じがたい話だ。
門番の話を聞いていると先ほど手紙を渡したほうの門番と中年の男がやってきた。
彼らは総じて緑を基調とした服を着ているが中年の男は門番のそれよりも少々豪華に見える。
軽装の鎧をしていることから自衛団の者であるのはわかる。
中年の男はソーニャを見て驚いた顔をした後、それを打ち消すために歪んだ笑みを浮かべた。
「え、や、これは遠方から感謝致します。や、これは、ええ、まさかこれほど若い、ええ、女性だったとは」
なんだろうか。言葉の間に一言入れないと喋れないのだろうか。
とりあえずそう言った言葉を飲み込み、男の言葉を待つ。
「え、あ、私はこの町の自衛団の補佐官、といった立場のですね。ええ、そういった人間です」
「これからご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします」
型通りの挨拶をして、お辞儀をする。確かに見た目は普通の中年だし言葉もあれだが補佐官である以上は
そこそこの実力を持つ男なのだろう。
しかしそもそもにしてその補佐官という役職は村にはなかったのでいまいちどのようなものかわからない。
「え、や! むしろ頭を下げるのはこちらのほうです。ええ、あの『白騎士』のソーニャさんに、ええ、来ていただけるなんて」
「ほう。あんたが、いやあなたがそうでしたか」
先ほどまで軽口を叩いていた門番まで言葉を改める。ソーニャは混乱する。そもそもしろきしってなんだ。
確かにソーニャは白い服装を好む。それに持つ武器も白いし、ついでに髪も白い。
ふとかつて村の団長になった青年が言っていた言葉を思い出す。
「世の中には二つ名をいうその人間をわかりやすく示した名があるらしい。
 お前は全身白いしそのままの名前が付けられそうだな」
彼はこれのことを言っていたのだろう。どのようにして伝わったかはわからないが
ドラゴンを切り伏せた白い騎士がいるというのが行商人を仲介に町へと広まったのだろう。
知らぬは本人だけ。と言ったところか。そもそも馬に乗れないのに騎士なのか?
色々な物事に不安を感じながら、ソーニャは中年の男に案内されつつ町へと足を踏み入れた。

投下終わり

47 :創る名無しに見る名無し:2011/11/14(月) 05:36:13.32 ID:+KfdSYaH.net
投下乙。ほとばしる田舎者のオーラw

48 : ◆7FtGTaokck :2011/11/15(火) 03:33:28.04 ID:x8z8XXRa.net
「え、あ、ここが噴水広場ですね。ええ。よく待ち合わせに使われていますね」
補佐官の説明を受けながら町を歩く。町の風景全てが目新しい。
そもそもあの噴水とかいう水の吹き出る物体はなんなのだ。どういう仕掛けで水が出ているんだ。
広場には遊んでいる子供たちや出店などで活気に溢れている。
「あ、ここですね。ええ。自衛団本部となります」
中年の男が建物の前で立ち止まる。ソーニャはその建物を下から上と見上げる。
豪華絢爛、と言いたいところだがぱっと見特別な建物には見えない。路地裏の住居とさして変わらない。
出入り口にかけられている看板だけがこの建物の役割を示している。
「え、あのですね。自衛団の集合にですね、ええ。時間を少々いただくことにですね。ええ。なるのでですね。
 お先に部屋のほうに案内をですね。させていただいてですね。時間まで休んでもらおうかと」
ソーニャはそれを快諾した。
七日間の旅で服は汚れているし、何よりも湯浴みをしたい。
一応川が近くにあるときは寄っていったがその冷たさは身に染みた。
「あ、えっとですね。ソーニャさんの部屋はですね。ここから近いんですけどね。
 今、従者のほうが来ますのでね。あ、来ましたね」
補佐官の指差した方向から緑の服を来た女の子が走ってくる。
ソーニャたちの前に着くと背筋を伸ばし、右手で敬礼をした。
「わたくしが本日よりソーニャ様の従者となりますコユキであります!
 至らぬところありますでしょうがどうかよろしくお願いいたします!」
「えーっとシカ・ソーニャです。こちらこそよろしくお願いします」
歳は十五ほどだろうか。背は低くソーニャよりも頭一つ小さい。
服も刺繍が少なく一番簡素なものだ。おそらくは入団したばかりの新兵だろう。
腰に下げた真新しい剣が目に眩しい。走ってきた割には息の乱れがないということはそこそこ鍛えられているのだろうか。
それにしてもぎこちない笑顔だ。おそらくはこういう挨拶に慣れていないのだろう。
とは言うもののソーニャだって慣れていない。村にいた頃はこのような挨拶をする必要などなかった。
「コユキ。粗相のないようにですね。ええ。案内しなさい」
「了解しました!」
そう言い残して補佐官は本部へ行ってしまった。
直立不動の敬礼で補佐官がドアの向こう側へ行くまで見送った後、その場でくるりと回転してこちらを見た。
「それではお宿のほうへご案内いたします! ソーニャ様!」
「……様付けはやめてくれないか。なんだかむずむずする。それとそんなかしこまらなくてもいいよ」
「え、あれ。そうですか。すみません」
年相応の笑みをこぼす。先ほどのがちがちした状態よりかよっぽど話しやすい。
本部の横の路地裏に入ったところでコユキが歩きながら話しかけてきた。
「同い年でドラゴンを討伐した人と聞いていたのでもっとこう筋肉むきむきの男性かと
 思っていたんですけどまさかこんな綺麗な女性だったなんてびっくりしましたよ」
「ああ、それはあの補佐官にも言われたな」
それ以上にこんな可愛い子が同い年であることに愕然としている自分がいる。
ソーニャは子供の頃からずっと鍛えられてきたし仕方ないと言えば仕方ない。
「多分自衛団みんなが驚くと思いますよ。みんな男だと思っていますから」
「一体どんな風に私のことが伝播したんだ……」
「白い甲冑を身に纏った騎士って聞きましたね。あ、ここですね」
本部から歩いて五分程度だろうか。普通の住居が立ち並ぶ路地裏に宿はあった。
周りの家屋よりも大きく、看板も出ているので間違えることはないだろう。
玄関を開けるとベルの軽い音が部屋に響いた。

49 : ◆7FtGTaokck :2011/11/16(水) 03:14:06.32 ID:HR8rSQvS.net
案内された部屋は最上階にあり、階全て貸切という待遇だった。
とは言っても何部屋あろうが結局使うのは一部屋だけだ。
そのことをコユキに言うと
「私もこの階の部屋使いますから大丈夫ですよ」
と答えてくれた。一体何が大丈夫なのだろうか。
私は窓から路地裏を眺めることが出来る部屋を選んだ。
最上階は一番お値段の張る部屋らしくほかの階よりも部屋数が少なく、部屋は大きい。
なんと言っても浴室が素晴らしかった。
ソーニャが三人入ってもまだ余裕がありそうなくらい大きい浴槽。
温水が出る装置。浴槽から見上げれば外の風景が見える。
コユキに話すとこっちでは水道というのが整っていてどのような場所にも水は行き届き
なおかつ魔法道具を使うことにより温水にすることが出来るそうだ。
村では水を引くことはあっても管を通し、遠くまで運ぶなんてことはしたことがなかった。
温水だって大きな釜に水をたっぷり入れた後、焚き火で温かくさせるぐらいだ。
ぜひともこの技術を村へと持ち帰り、風呂を各家に設置したいと密かに誓った。
風呂を満喫して後、コユキが用意してくれた新しい服を着る。
緑の服を着るのかと思ったが柔らかい布で出来た白い服を渡された。
「さすがに真っ白すぎないか?」
「白騎士ですからね!」
「いや、だがこれはさすがに……」
「仕方ないですね。それではこの鎧を……」
「待て、それも白いぞ。あ、でも軽いな……」
結局コユキを折らせ丈夫そうな茶色の皮鎧を付ける事にした。
その代わり、部屋は服と鎧で溢れ返っている。
片付けるのは後にして、再びソーニャたちは本部へと向かった。

50 :創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 05:30:51.53 ID:thxN2yx7.net
シカがなんかいい子w

51 : ◆7FtGTaokck :2011/11/17(木) 02:46:16.01 ID:J5zbZEyk.net
再び本部前。
おそらく中で私のことを待っているであろう自衛団の面々。
なんとなく緊張してしまうが隣にいるコユキがこんなのだし案外若いのが多いのかもしれない。
とは言っても第一印象というのは大事だ。ある程度堂々と行くべきだろう。
「本会議室にいるので行きましょうか」
コユキに先導されながら本部の敷居を跨ぐ。
最初に入った部屋には男が一人だけ椅子に座って何かを書いていた。
机の上には短剣や銃などの武器をはじめ、さまざまなものがまとめて置かれている。
在庫の確認をしているようだ。ついでに来客の相手でもするのだろう。
「おはようございます!」
「おはようございます」
コユキに続いて、慌てて挨拶をする。
男はちらっとこちらを見た後、大あくびをしながら手を少し挙げ、再び作業に戻った。
どうやらあれで挨拶を返したつもりらしい。この時、ソーニャは何か嫌な予感を感じた。
入ったところの小さな部屋から廊下に向かい、奥へと歩いていく。
横幅はさしてなかったがどうやら奥行きは結構あるようだ。
コユキが扉の前で止まる。
「ここですね。多分みんな揃っていると思うのでどうぞ」
大丈夫だ。きっとコユキみたいな人がいる。
そう意を決してソーニャはドアノブを捻った。

五秒後、とても残念な気持ちに満ちた。
部屋は大きな部屋に長机と椅子を並べ、壇と黒板が設けられている。
外を向いた壁は一面窓になっていて、とても採光がとれている。
まだ日中ではあるため部屋の中は光に満ちている。
なのになんだ。この集合している自衛団から漂う気は。
なぜそんなに目つきが荒んでいるんだ。
壇上にいた補佐官が私を見ると、こちらにやってきた。
「今丁度ですね。ええ。あなたのことをですね。話していた。ところですよ」
着いて来いと言わんばかりに前を歩いていく。仕方なく着いて行き、壇上に上る。
壇上から部屋を見渡す。なるほど。男ばかりだ。
「えー、この方がですね。『白騎士』シカ・ソーニャさんですね」
補佐官がちらっとこちらを見る。ソーニャは咳払いをしてから挨拶をした。
「最果てにある村から来ました。シカ・ソーニャです」
頭を下げると拍手の代わりに笑い声が上がった。
「おいおい、おっさん。冗談きついぜ? そいつがドラゴンを殺したっていうのか?」
頭を上げると一番奥で手を組んでいた男が笑いながらこちらを見ていた。

52 :創る名無しに見る名無し:2011/11/17(木) 05:31:43.32 ID:6adfLilL.net
いきなり一人称にシフトしてきやがった。にしてもなんという王道ファンタジーw

53 :創る名無しに見る名無し:2011/11/19(土) 04:55:39.30 ID:YIDn92oe.net
なんかAA化されてたんでこっちにも貼ってみようと思って。
             ___
           ,.'-==-`ヽ
   ○' ⌒`○  (__(__(__) !   流石姉さんー
   /i /、 ,ヽ!ヽ  从゚ー ゚<,b |
   /cリ ゚ヮ゚,リ ヽ /( ‖ .i⌒l|
  /./ E発ヨ/ ̄ ̄ ̄ ̄/| |ゝ
_/ 廴てつ/      ./_.|,,,,>___
     \/____/. (u つ


54 : ◆7FtGTaokck :2011/11/20(日) 03:20:02.49 ID:+7IiIISZ.net
男は立ち上がり、こちらに歩いてくる。
大きい。多分この部屋にいる人間の中で一番。
筋骨隆々で短髪。使い古された装備はその男の今までの戦いの歴史と言える。
「全身白ずくめにして『白騎士』か。はっ、おっさん面白い物をありがとう。
 おい、嬢ちゃん。白いドレスのほうが似合ってるんじゃねぇか?」
部屋にいたほかの男たちが一斉に笑い出す。
コユキは出入り口でおろおろしているし補佐官が助け舟を出すとも思えない。
自分でどうにかするかと口を開こうとした時、驚くべきことに補佐官が口火を切った。
「あーえー、副隊長。席には戻らなくてもいいですが話の途中なので壇上から下りてください。ええ」
副隊長は舌打ちをすると壇上から降りて、席の間の通路に座った。
「ええ、すみません。ソーニャさん。この者たちは、えー、少々礼儀知らずなもので」
弱気な中年に見えたがよくもまぁそんなことを本人たちの前で言えるものだ。
こちらに向いている視線は敵意となって自分に注がれていることに気づかないのか。
それともそれを物ともしない何かが補佐官にはあるのか?
「えー、疑問にですね。思う人もいるとは思いますがね・この方は間違いなくシカ・ソーニャです。
 えー、証拠が欲しい人はですね。役所までですね。来てください。ええ」
先ほどと打って変わって誰も何も言わない。補佐官はさらに話を進める。
「えー、今、我々の町はですね。先日のドラゴンの襲来によりですね。
 大変な損失を、ええ、受けました。特に急務とされるのはですね。
 町の修復はもちろんのこと、次回の襲撃に備えての防衛の強化、となります」
この辺は読み通りだろう。町の修復についてはまだ見ていないので
どれほど破壊されたかわからないがいつ来るかもわからない次回に備えるぐらいの程度なのだろう。
「ええ、つきましては、長老会議にて二つの事項が決定しました。
 一つは自衛団の予算の増加。もう一つは『白騎士』シカ・ソーニャさんを隊長に任命すること」
これを聞いた時、補佐官以外の人間が驚きか抗議の声を上げた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 隊長なんて私は聞いていないぞ!」
「おい、おっさんふざけんなよ! なんで今日来たばっかの人間が隊長になるんだよ!」
このときばかりは先ほどソーニャに嫌味を吐いていた副隊長と意見が一致する。
というか補佐官以外はみんなそうであろう。
補佐官は手を挙げて、ソーニャたちに落ち着けと促している。
が、一向に効果は無い。
「私は村でも誰かの上に立ったことが無いんだぞ。
 そんな素人が隊長なんて務まるはずがない。そもそも副隊長がいるのだから繰り上がりでいいではないか」
「その通りだ、嬢ちゃん。むしろ俺ですら兄貴の後釜なんざ恐れ多いっつーのになんだ?
 てめぇは町を守りたいのか? それとも滅ぼしたいのか?」
「お、落ち着いてください。ええ。これは長老会議のですね。決定です。
 抗議のほうは私のほうではなく役所のほうにですね。お願いします。
 もしもですね。これ以上何かを言うようであればそれ相応の手段をですね。取らなければいけませんね」
副隊長の顔が憤怒に満ちる。だが喉まで来ているであろう言葉を口から出さない。
そのまま出入り口のほうへ向くとコユキが扉を開け、そのまま出て行った。
それに続き、部屋に居た男たちが出て行く。みな、怒りに顔を歪ませている。
なぜ何も言わないのだ。こんな大事なことなのに。なぜ。
男たちが全員出て行ったところで補佐官が出入り口に向かう。
「ええ。それでは私は失礼します。コユキ、亀のほうへですね。連れて行きなさい」
「了解しました!」
コユキの敬礼に見送られながら補佐官も出て行く。
一人、ソーニャだけが何も納得出来ずに壇上に取り残されていた。

55 :創る名無しに見る名無し:2011/11/21(月) 01:06:38.41 ID:fJT5KKiW.net
ドキドキ

56 : ◆7FtGTaokck :2011/11/21(月) 03:47:05.59 ID:tGFyzxD0.net
長老会議。この町のあらゆる物事を決定する場所。要は政治を行うところだろう。
会議はさまざまな部門の長、十二人が参加している。
ここでの決定事項はほぼ絶対であり、反対意見の場合は一応役所のほうで受け付けている。
とは言ってもある程度の反対意見が集まらないと意味もなく、今まで反対意見について会議が行われたことはない。
また選出された十二人も過半数が母体が町役場の人間なので要は全て役人の言うとおりになるというわけだ。
「それって会議する必要あるのか?」
「まぁ稀に意見割れして国民投票になったりしますね」
亀という場所に行きがてら、コユキからこの町の話を聞く。
「今回の場合は自衛団の隊長が欠席扱いなのでうちからは補佐官が出てるんですよね」
「副隊長が出るんじゃないのか?」
「最初はそういう予定だったんですけどね。役所のほうから召集をかけられたのは補佐官でした」
ということは補佐官は役所とべったりと考えてもおかしくないな。
それ相応の手段というのも役所からの何かなのだろう。
村ではそういう機関はなかったから想像でしかないが罰金や何かしらの懲罰のことを指しているに違いない。
「そういえばこれから行くとこについて説明してませんでしたね。
 これから亀と呼ばれている人のところに案内します」
「人? 亀というのは仇名なのか」
「ええ、私は先生と呼んでいます」
いくつかの角を曲がり、そのたびに人気がなくなっていく。
最初は扉が付いていたのに段々と左右は壁しかない。
既に陽は傾き始め、高い建物に囲まれた路地に暗い影を落としている。
時々出っ張った何かに足を取られそうになりながら、コユキに着いていく。
「着きましたよ。ここが先生の家です」
暗がりの中に建つ一軒の建物。周りの石造りの家と明らかに異なる木で出来たちぐはぐな建物。
そこだけが別世界の場所かのような錯覚を覚える。それほど周りの建物からも、現実からも剥離している。
コユキは扉を叩かず、そのまま中へ入っていく。
「せんせー! ソーニャさんをお連れしましたよー!」
何の躊躇いもなく、明かり一つない家の中にそのまま入っていく。
付いては行くもののどこで靴を脱げばいいかすらわからない。というか土足のままでいいのか?
「あ、ソーニャさんは待っててください。下手に歩くと危ないんで。ここ」
上げていた足をゆっくり後ろに戻し、家の外へ逃げようとした。
扉が勝手に閉まった。誰もいないはずなのに。置く場所を失った足を慎重に下ろす。
建てつけが悪いに違いない。つま先を軸に回転してドアノブを捻ろうとする。
ない。それどころか扉にも手が当たらない。目の鼻の先にあったはずなのに。
唯一の明かりの漏れどころだった扉が閉まり、完全な闇がソーニャを囲む。
何かの気配を感じ、腰の獲物に手を添える。小さな、引きずるような音。
決して恐怖に囚われてはいけない。この状況だからこそ混乱せずに心を落ち着かせる。
気配を目で追う。見えるわけではない。ただもしも何かがあったとき。
場所がわかったほうが斬り易い。ただそれだけだ。
「シラけるねぇ」
灯りが一つ点き、闇を払う。
不健康そうな少女が手に灯りをそのまま持っていた。
「もっと反応してくれないと面白くないだろう」
「お前が……」
亀か。その言葉は悲鳴で遮られ続くことはなかった。
ソーニャはこの声を知っている。間違いない。コユキだ。
悩むよりも早く。声の元へと行くために暗がりに足を踏み入れた。

57 : ◆7FtGTaokck :2011/11/22(火) 02:39:11.73 ID:zun3a2Dz.net
ソーニャたちは木で出来た丸い机を囲って座っている。
目の前に置かれた紅茶を手に取り、少し飲む。
「コユキ。感触はどうだった?」
「もっとほかに言うべきことがあるでしょう!」
コユキが立ち上がりながら机を叩く。机の上に載っていた細々としたよくわからないものが
ぐらぐらと揺れる。
「あれは僕が召喚したんだ。戦闘には使えそうにはないが悪戯に使えそうかなと」
「戦闘に使える物を召喚してください!」
不健康そうな少女は大げさにため息をつき、やれやれと頭を振るう。
「つまらないじゃないか」
これにはソーニャも嘆息を漏らした。初めて会う魔法使いがこれというのはあまりにも酷いじゃないか。
しかしながら補佐官がコユキをここに連れて行くように指示をしていたことから
自衛団絡みでなおかつそこそこ重要な人物であることは間違いないはずだ。
コユキはあまりの言い草に言葉を発することが出来ないようだ。
「ぐぬぬ」
と歯を食いしばりながら漏らしている。
一方の魔女の亀は自分の淹れた紅茶を飲んで落ち着いている。
先ほど何があったのか。それを話すのは簡単ではある。
簡単ではあるがそれを話してしまえばコユキの名誉に関わる。
正直もしもソーニャが同じ辱めを受けていたらとてもじゃないが立ち直れない。
「さて、あんたがシカ・ソーニャか」
魔女はソーニャのほうに体を向ける。
おそらく歳は私と変わらない。小食なのか、とても痩せ細っている。
目の下にはクマがはっきり見て取れるほどあるし、第一印象が不健康そうでも仕方ない。
黒髪はぼさぼさで適当に後ろに纏めている。衣服は白衣を着ている。
しかし何よりも気になるのはその目付きだ。何かが引っかかる。眠そうだとかそうではなく何かが。
ソーニャが魔女を観察していたのと同じように魔女もじっくりとソーニャを観察している。
魔女はふんと鼻を鳴らした。
「全身白ずくめだから白騎士。馬には乗れるの?」
「乗ったことすらない」
「今度から白雲剣士とでも名乗ればいい」
何を言っているのかよくわからず相槌が打てない。
魔女は別にソーニャの返事を期待していたわけではないようですぐにコユキのほうを向く。
「コユキ。帰っていいぞ」
「次に言う言葉はそれですか!」
先ほどの再現かのように机を叩く。
「どうせこの白いのの後の予定なんて大したものはないんだろう?
 今日は僕がこいつに飯を食わせておく。だから帰ってろ」
「……それで納得して帰るとでも?」
「お前が納得するかどうか。それを僕が重要視するとでも思ってるのかい」
コユキはとても残念そうな表情を浮かべながらこちらを向く。
「ソーニャさん……。先に宿に戻っていますのでどうか命と貞操と誇りを守って帰ってきてください」
「約束……しよう」
無論約束せずともそれは守り通してみせる。多分。
コユキは一つ頷くと席を立って階下へと降りていった。
扉の閉まる音が遠くでした。これでこの家にはおそらくソーニャと魔女しかいない。
魔女は席を立ち、壁際にあった本棚から本を一冊取り出す。
「いくつか質問する前に自己紹介ぐらいはしておこう。
 僕は亀。この町の魔法使い協会の会長を務めている。が、専らほとんどのことは副長がやるから
 事務的なことは彼に頼んでくれ」
そういえば門番が魔法工房というものがあり、一般向けの魔法道具を製作していると言っていた。
とてもじゃないが目の前の魔女が『一般向けの』魔法道具を製作するとも思えない。
協会を作るほどであるならばそこそこの魔法使いがこの町にいるということになる。
「当然ながら亀は仇名。こんな風に自宅の篭っていることが多いから自分で名づけた。
 なかなか皮肉が利いてていいと思っている。ちなみにこの仇名の前はホーエンと名乗っていた」
「本名はホーエンというのか」
「いや、違う。それはあんただって同じはずだな。シカ・ソーニャ」
何を言っているんだ。先ほどと同じように対して意味のない発言なのか。
魔女の目付きが鋭くなる。今まで目の前にいた人物だとは思えない。
「僕の名もあんたの名も一緒だ。無限桃花」

58 :創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 05:23:05.98 ID:+YkAZT5h.net
なん……だと……?
ていうか言えないけど立ち直れなくなるような悪戯好きだなw

59 : ◆7FtGTaokck :2011/11/23(水) 03:17:40.06 ID:MWZkmwpS.net
「ムゲントウカ……?」
聞き覚えのない名前だ。
そもそもなぜ初対面の人間と本名が一緒でなくてならないのだ。
だがそれを真っ向から否定は出来ない。
なぜならばソーニャは十五年前、拾われた子供だからだ。
ソーニャにはそれ以前の記憶がない。仮にその名が付けられていたとしても覚えていない。
「最初見たときから何かを感じていたがこうやって対面するとよくわかる。
 姿かたちは我々とかなり違うが根っこは一緒。
 あんたも僕を見たとき何かしら感じたはずだ」
そうだ。この目付き。今までの人間と似て非なるそれ。
魔女は自分の席に着き、持ってきた本を開く。
表紙を捲った部分に大雑把な地図のようなものが書いてあった。
地図には白い線や赤い点、赤く斜線を引かれた地域などいろいろと書き込みされている。
「これは地図か?」
「世界地図。とは言っても旧世界の物を基に製作したものだから今とかなりの部分が食い違っている」
「新世界地図はまだないのか?」
「旧世界滅亡後千年以上経った今でも把握しきれていない。それほど世界の形が変化してしまったのだ」
かつて、今より千年以上前に今の我々とは異なる文明が繁栄した時代があった。
専ら旧世界文明と呼ばれているそれは魔法の類がない代わりに機械技術が大変優れていたそうだ。
どのようなきっかけがあったのか今となってはわからないが大国同士が戦争をし始めた。
戦火は見る見るうちに世界へと広がり、世界中に火の手があがった。
やがてそれは人を殺すだけではなく大陸を削り、星の形すら変えるほどの争いへと発展した。
何が、誰がそうさせたかはわからない。ただひたすら
敵国を潰し、全てを焦土にし、世界を荒廃させていった。
その世界にやがて一つの彗星が落ちる。
旧世界の終わりと魔法の起源と言われる彗星。
彗星は自分の欠片をばら撒きながらやがて地上へと落ちた。
この戦争と彗星の着弾を生き残ったのが今のソーニャたちの先祖である。
人々が気がついたときには世界はあまりにもその形を変えてしまっていた。
「2012の最終戦争と魔法の到来。この二つのせいで未だに立ち入ることの出来ない地域もある。
 僕は探検隊じゃないから安全な場所しか行ってないけど。この白い線が僕の旅した道だ」
「白い線って……これほとんど地図を横断しているぞ」
「世界横断したんだから当たり前だ。それよりもだ、この赤い点のほうが大事」
白い線の所々に押された赤い点。よく見ると下に数字が書かれている。
魔女が日記帳を捲り、あるページで止まる。
そこには写真が一枚と文章が書かれていた。
写真にはよく似た二人組みが写っている。
「これは双子か?」
「別人。片方は僕でもう片方は現地の人」
そう言うと再びページを捲る。
開いたページには先ほどと同じように双子の写真が写っている。
何も言わずさらに捲る。次に開いたところにもまた双子。
「全て現地の人で別人。僕は僕自身に類似した少女と旅の中で十二人に会った。
 ほぼ全ての人間が僕と同じ髪型をして一つの獲物を携え、そして本名が同じ名であった。
 その名が無限桃花」

60 :創る名無しに見る名無し:2011/11/23(水) 14:21:52.32 ID:1nvX0VUc.net
カオスになってきたぞ。どうなるんだ。

61 : ◆7FtGTaokck :2011/11/24(木) 03:21:29.15 ID:KtgyEeRG.net
人間と言うのは生物である以上老化するし、全ての個体に違いがある。
だが我々はその見た目に差はあれど特徴の共通点があまりにも多すぎる。
例えば前述した以外にもどれだけ記憶を遡っても生まれ育ったという記憶が存在しない。
ある日、突然この地に記憶を持って出現した。それが最古の記憶だ。
さらに老化するということもない。魔女を含めた十三人の『無限桃花』のほとんどが
その年齢以上の年数を生きている。中には八十年以上生きているという個体すらあったがその姿は少女のままだ。
ただ大きな相違点が一つだけある。
家族の存在だ。
十三人のうち五人が血縁の妹が存在したのだ。
その妹もまた我々と同様の存在らしいが、個体差はかなり大きかった。
我々の妹であるということ以外の共通項はないに等しい。
このことから我々は何者かが一定の画一化をした存在であり、人間とは根本的に異なる生物であるという結論に至る。
「あんたに会うまではね。シカ・ソーニャ」
ソーニャは難しい顔をしながら汁物を啜る。あっさりとした塩味のスープだ。具は少ない。
これを信用することが出来る人間なんてのは早々いないだろう。
目の前にいる魔女はどうみても人間だ。これで人間じゃないと言われても困る。
しかし実際には魔女は三十年ほど生きているようだ。とてもじゃないがそうは見えない。
「信用してないだろ。当然のことだ。僕があんたの立場だったら信用しないからな。
 だが同時に信用もする。本能的にといったところか」
「……それで私にどうしろと」
「どうもしない」
「へっ?」
思わず持っていた皿を落としそうになる。
「あんたは拾われるまでの記憶を持っていない」
「むしろその時のことも覚えてないな」
「使えない人間だ……」
魔女は嘆息をつき、残念そうにサラダを口に運ぶ。
「仕方ないだろ! そんな昔のこと」
「これだから脳味噌まで筋肉で構成された人間は嫌だ」
「言ってくれるじゃないか」
腰に挿していた剣を半液体化させて、右肘まで持ってくる。
一部を突出させて、硬化させればそれだけで刃になる。
だが魔女はそれを意に介することもなく、食事を進め自分の分を綺麗に平らげた。
ご馳走様と言うと食器を重ねて、流しがあるであろう方向に持っていった。
最初にやられたのでちょっと仕返しでもしてみようかとやってみたが魔女には無駄のようだ。
ソーニャも硬化を解き、輪にして腕にはめ、さらに残った最後の肉を口に運んだ。
魔女が食器を洗っている間、紅茶を飲んでゆっくりと休む。
思えば村にいる間、外に関しては町と大国の侵攻ぐらいしか意識して考えることはなかった。
こうやって世界地図を眺めたり、魔女のトンでも話を聞いていると世界の広さを改めて認識することになる。
この部屋ひとつ取っても見回す限りよくわからない物だらけだ。
しかしソーニャはその無知を恥じることはなかった。
仮にそれらが必要な知識であるのならば父親が教えていたはずだからだ。
ソーニャもあの小さな世界で暮らしていくつもりであったから知ることも無かった。
今は違う。こうやって見知らぬ土地に来て、暮らすということはほかのことも知らなければいけないということだ。
ちょうどここにはそれに適した人間もいる。
ソーニャは自分の紅茶を持ってきた魔女を見た。
「私はお前の言うとおり何も知らない。だから色々教えてほしいんだ。
 この町のこと。世界のこと。お前の言う十三人の我々のことも」
魔女はしばらく思案したふんと鼻を鳴らした。
「いい心がけだ。じゃあ最初にげっぷの止め方から教えてやろう」
「いや、そんな豆知識は別にいらない」

62 :創る名無しに見る名無し:2011/11/24(木) 21:56:18.15 ID:Pa/UrW6O.net
シカのツッコミがとても新鮮に感じるw

63 :創る名無しに見る名無し:2011/11/24(木) 22:41:21.07 ID:timWkch7.net
しばらく読んでない間に設定がすごいことに

64 : ◆7FtGTaokck :2011/11/27(日) 03:53:26.02 ID:52XY2A1r.net
夜の町を魔女と歩く。
ソーニャはある程度厚着をしてきたので問題は無いが魔女のほうは相変わらず白衣を羽織っているだけだ。
寒くないのかと聞いたところ魔法で問題ないらしい。つくづく魔法というのは便利なものだと思う。
背の高い魔法を利用した街灯のおかげでずいぶんと道は明るい。松明とは雲泥の差だ。
そのせいか陽は落ちたものの人通りがそこそこある。同時に治安が安定していることも裏付けている。
昼間、子供が多かった噴水広場は今は大人がの酒盛りの場と化していた。
村でもよく酒盛りはしてはいたがさすがに人数が段違いに違う。
夜だというのにこれだけ騒いで問題が無いのか、というくらいうるさい。
横にいた魔女が無言で飲み物を差し出す。お礼を言って受け取る。
ガラスの容器には透明な液体が入っている。水に見えるがまさかこんな場で水は貰うまい。
臭いを嗅ぐと案の定酒の臭いがした。
「この島から北に行ったところに大きな島がある。とは言っても世界の島々に比べれば小さい。
 旧世界の呼び名に従い、今でもその島は本州と呼ばれている。かつて日本と呼ばれた島だ」
「日本……」
「これはそこで生まれたという酒に似せて作ったものだ」
「旧世界の酒か……。とは言っても私は酒が飲めないのだが」
「飲め。今後そういう機会が多いから慣れろ」
仕方なしに少しだけ口に含む。
なるほど。まずい。
「私は牛乳のほうが好きだな」
横を見ると魔女が酒を一気飲みしていた。
全部飲みきるとソーニャの手にあった酒を取り、それも全部飲み干す。
空いた容器を持って、出店に向かう。容器を渡した後、今度は濃厚な紫色をした飲み物を持ってきた。
「葡萄の酒だ。飲んでみろ」
「……ブドウってなんだ」
「紫色の果物」
紫色をした正体不明の果物から作られた酒。しかし臭いは甘めだ。
意を決して口に含んでみるとなかなかおいしい。
「これは飲めるぞ」
「今度から酒盛りの場では葡萄酒を飲むと言えばこれが出てくる」
「覚えておこう。しかし町の案内ってもしかしてここのことだったのか?」
「夜だからこそ案内出来るからね。それと空を見ろ」
魔女が上を指す。見上げると相変わらずの星空がそこにはあった。
「空中からの進入を防ぐための魔法障壁が空には張られている」
目を皿にして見回すがどこにも壁など見えない。ただの綺麗な夜空だ。
「不可視化してるけどね」
「そりゃ見えないわけだな」
葡萄酒を一口飲み、夜空を眺める。なんだかんだで町に来て、最初の夜だ。
色々ありすぎてとても長く感じた。ソーニャは未だに色々と戸惑ってはいるがそれでも得るものは多かったと思う。
明日からは自衛団の一員として頑張らないといけない。その前に団長という地位をどうにかしないといけない。
「そういえば長老会議にはお前も出席しているのか?」
「無論」
「だとしたら私が自衛団の新団長になる会議にもいたはずだ」
魔女は残っていた自分の葡萄酒を飲み干す。
「自分がなぜ団長に選ばれたかが気になると」
「ああ。あと出来れば拒否もしたいのだが……」
「無理だな」
「えっ?」
「おそらく新人団長を理由に補佐官が長老会議に出るためだ。
 役所の人間が増えれば増えるほど多数決の場では強くなる。
 ドラゴン殺しの英雄を頭に据えるためではなく、より自分たちの思うように町を動かすための決定だ」
「そこまでわかっているなら反対意見を出して……」
「一応言っておくがこの町の歴史上、一度可決された事項が反対意見多数により再議されたことは一度も無い」
そう言い残して魔女は再び出店に向かった。真っ向からの否定。
魔女の言葉はソーニャの淡い期待を打ち砕くには十二分の言葉であった。
ほかに手はないのだろうか。そう思案していると後ろから聞き覚えのある声がかかった。

65 :創る名無しに見る名無し:2011/11/28(月) 02:58:58.16 ID:jRgh0PSC.net
コツコツとなんか気になる設定出してきやがってw


66 : ◆7FtGTaokck :2011/11/28(月) 03:55:07.50 ID:x6oIH966.net
「おうおうおうおう、これはこれはご機嫌如何ですか。嬢ちゃん」
「中隊長……殿」
本会議室で会った大柄な男、中隊長だ。
今は酒がほどよく回っているらしく、そのでかい顔はかなり赤みを帯びている。
同じ席に着いている男たちも自衛団の人間なのだろう。
「おいおい、殿なんてやめてくれよ。お前が俺の隊長なんだからよぉ」
「それはまだ承認していな……酒臭っ!」
席に座りながら肩に手を回し、顔を近づけてくる。が、その吐息を嗅いで思わず離れる。
同席していた男たちがふられたなーなどと野次を飛ばしている。
中隊長は大げさに落胆したような演技をした後、飲み物を呷る。
そのとき、魔女が容器を両手に持って帰ってきた。
「中隊長か」
「んー? 亀じゃねぇか。外にいるなんて珍しいな」
「面倒だがこれに教え込まないといけないからね」
そう言いながら容器をソーニャに容器を手渡す。先ほどと同じ葡萄酒のようだ。
「納得出来ねぇよなぁ。こんな小娘が俺たちの隊長なんてよぉ。
 兄貴の後釜がこんな奴なんてよぉ」
再び大げさな落胆をして、それに同席の男たちが深く頷く。
そういえば本会議室でも兄貴という言葉が出ていた。
「その兄貴と言う人が先代の隊長だったのか?」
「おう、兄貴は強かったぞ。それに体も俺よりでかかった」
中隊長はそう言って誇らしげに胸を張る。
目の前にいる人間が既にソーニャが遭遇した人間で最も大きいのだがこれ以上となると
何か別の生き物になるのではないかと疑ってしまう。
「誰にも振ることの出来ねぇ馬鹿でかい剣を振るってな。
 寄る敵を紙くずのごとくばっさばっさと切り裂いてる姿はまさしく二つ名の通りだった」
「二つ名?」
「兄貴の二つ名。それは『鉄の旋風』! まさしくこの町の英雄だった」
疑うわけではないがちらっと魔女を見る。目線が合って頷かれる。どうやら事実のようだ。
「だけどよぉ。そんな兄貴も殺されちまったんだ……。あのドラゴンに」
先ほどまでの雰囲気が一気に暗くなる。
その後の中隊長の暗い話すを聞く限りでは隊長は囮としてドラゴンに挑み、やられたようだ。
老いぼれのあれですらあの強さだったのだ。絶頂期のドラゴンなどあの比ではないはずだ。
「ドラゴンの鱗っつーのはよぉ。ちっとやそっとじゃ傷すら付かねぇんだよ。
 魔法だってそうさ。だからあいつは障壁を無理やり突破してきた。
 矢は通らねぇし、爆弾だって効果が薄い。だから魔法使いどもによぉ、大魔法を撃たせるために
 兄貴は囮となってドラゴンの前に出たんだ……」
町を守るべく、凶暴な魔獣の前に命を投げ出した英雄。
ソーニャは確かに町を守るためにやって来た。その意思は今より一層強くなっている。
だがもしも、英雄と同じ状況になった時。
躊躇せずに同じ行動が出来るかと聞かれたら即答が出来ないというのも事実。
おそらくは町の人間は次の隊長も英雄として見る。
それにソーニャが相応しいかと聞かれたら首を横に振らざるを得ない。
「だからこそ俺はお前を認められねぇ。だがお前が隊長であるという事項は覆せねぇ」
「私だって納得出来ない。しかし方法が……」
「ある」
中隊長がそう言って、ソーニャを見つめる。
赤ら顔ではあるが真剣な眼差しだ。
「隊長の座は兄貴の物だ。それは例えお前が本物だとしてもだ。
 副隊長がもう一人出来るぐらいならまだマシなほうだ」
「つまり副隊長に私もなれと?」
「そうだ。それほうがお前にかかる責任もちったぁ軽いし
 最悪俺が全部指示を飛ばせばいいからな。お前は人形にでもなってればいい。
 まぁ役所のおえらいさんの前では隊長らしく振舞ってもらうがな」
「辞退出来ない以上はこちらで細工をするしかないということか。
 だがそれなら最初から私が傀儡になってたほうがいいんじゃないか?」
「どちらでも構わんさ。それは今後考えればいい」
副隊長は残っていた酒を口に流し込む。
ソーニャは胸をなでおろす。辞退できるのが最善だが覆さないのならば仕方ない。
傀儡としてしっかり隊長の任をこなそう。最も何をするかわからないから副隊長に頼りっぱなしだろうが。

67 : ◆7FtGTaokck :2011/11/28(月) 03:56:44.46 ID:x6oIH966.net
「しかしだ。お前の実力を俺たちはまだ知らない。
 自衛団の顔になる人間なんだし、ちったぁ強くないと示しがつかないと思わないか?」
とても嫌な予感がする。気づけば周りの人間がこちらを見ている。
どうやらここにいるのは自衛団の人間ばかりのようだ。
魔女のほうを盗み見したがあくびをしていた。味方はいなかった。
「何、実力を示せばいいんだ。簡単だろう? お前が本物ならな」
目の前の山がおもむろに立ち上がる。脇においていた獲物を手に取り、ソーニャを見下ろす。
「俺の名は『鉄骨折り』のビゼン。貴殿に決闘を申し込もう」

68 :創る名無しに見る名無し:2011/11/28(月) 04:12:55.95 ID:jRgh0PSC.net
バトルかー!
ってビゼン勝てる気がしないのだがw

69 : ◆7FtGTaokck :2011/11/29(火) 02:41:31.22 ID:tEBCY+7h.net
天を仰いで、星を眺める。幼い頃村の大人に戯れに教えてもらった星の図を思い出す。
図と言っても複雑なものではない。あの星は方角を知るのに役に立つ。あそこに並ぶ一連の星は冬に見られる。
星を指して教えてくれるもののソーニャにはどれかわかりにくく、理解するのには苦労した。
今でもあの時教えてもらった星は空で輝いている。
視点を地上に戻す。置かれていた机と椅子は空間を作るために端に寄せられている。
逆にそれはこの空間を囲む、防壁の役を成すようになった。
その防壁の中には三人の人間がいる。
ソーニャと副隊長ビゼン。そして魔女の亀である。
「安心しな。決闘っつってもそんな命のやり取りなんてしないさ。
 どちらかが降参するか審判が止めるまで。簡単なもんだろ?」
決闘のいうのはやったことはないがそのルールならば村での練習試合と同じものだ。
問題としては村では木刀を利用していたということだ。
「獲物は練習用とかのものはないのか?」
「ガキの遊びじゃねぇんだ。んなもんはない」
そういって副隊長は豪快に笑う。
副隊長の持つ剣は長く、また肉厚だ。撃ち合いなどしようものならすぐに競り負けるだろう。
だがあれだけの物を軽々と振ることは出来まい。故に勝つとしたらうまく大振りをさせて、その隙に付け込む。
副隊長が剣から鞘を取り、刃が光を受け、鈍く光る。
ソーニャも腰の剣を抜く。それと同時に周りがざわめく。
「ずいぶん柔らかそうな剣だな」
形を自由に変えることの出来る白い剣。抜刀するときも速やかに抜けるように剣身は曲がるのだ。
「私の剣は形を自由に変えることが出来る。今回は剣の形に固定して戦うがな」
「ほう。面白いもの持ってんな。いいぜ。別に好きな形に変えて。
 俺の剣だって魔力を打ち込んで威力増加させているんだ。
 お互い力を発揮しあわないと不公平っつーもんだろ?」
そう言って剣を構える。ただでさえ肉厚の長剣なのに威力増加の魔法を仕込んでいるとなると
尚更受けるわけにはいかない。形を変えていいというならば盾にして受けるのはあり……だろうか。
「お言葉に甘えさせてもらおう」
「もういいかい」
魔女が二人の間に入る。
ソーニャは頷き、副隊長は応、と答えた。
「それじゃソーニャ対ビゼンの試合を開始とする。始めっ」
戦いの火蓋が落とされた。周りの団員たちの野次がより一層大きくなる。
彼らにとってはこの試合も余興程度のものなのだ。
今一度正面の敵を見つめる。
背はソーニャよりもかなり高い。鎧は要所を守るだけの簡単なもので装備者の動きを邪魔しないようになっている。
審判がどの程度の攻撃で試合を止めるのかわからない以上、下手に手加減をすれば好機を逃しかねない。
「そう構えるな、お嬢ちゃん。そうだ、あと一つ。場外も負けにしておこうか」
副隊長が構えを解きながら大声で言う。ソーニャは言葉を発さずに頷いて返す。
場外も何も周りは自衛団の人間だ。飛び込もうものなら押し返してくる。
副隊長が再び構え、正面を見据える。先ほどとは違う目付きで。
殺意。その意思をひしひしと感じる。思えばソーニャはこれほど真正面から人間の殺意を受けたことは無い。
ソーニャの考えは甘かったのだ。一度剣を握った剣士が対峙してしまえばそれは殺し合いにしかならないのだ。
試合に負かすのではなく相手を殺す。そうでなければソーニャはここで死ぬ。
そう実感した時、副隊長が動き始めた。

70 : ◆7FtGTaokck :2011/11/30(水) 05:10:24.41 ID:vFWyw+an.net
長剣を右肩に乗せた形でそのまま直線に走ってくる。
あそこから出せるのは右からの振り下ろし。もしくは右横からの振り抜き。
ソーニャから見て左側からの攻撃が来るであろう。
しかし相手は副隊長だ。どのような攻撃をしてくるかわからない。
右手に持っていた剣を槍へと変化させる。相手よりも長い射程を持つ武器でけん制するのだ。
その槍を副隊長の進路方向に向ける。他の武器であれば避けられた際に武器を戻す隙が
発生するのだがこの武器の場合、手を動かさずとも高速で形を変えることが出来るのでこれでいい。
槍まで後数歩というところで副隊長は勢いそのまま剣を振り下ろした。
当然のことながらソーニャまではさらに数歩離れている。とてもじゃないが剣は届かない。
槍を払うだけならばあれほど大きな振りをしなくても落とせる。長剣ゆえにあの振りなのか?
獲物をすばやく縮め、小剣程度に戻す。そして剣が振り下ろしている途中で前に出る。
一度完全に振り下ろした剣を戻すには結構な力が必要となる。途中で止めるなら尚更だ。
再び剣を戻す前に小剣を首に寸止めすればそれで終わる。
だがソーニャは後退していた。
前へ出ようとする体を後退させるほどの向かい風。剣を振り下ろした理由。
想定外の攻撃による一瞬の隙。思わず閉じた目を開けたときには既に副隊長の剣は右後方に
大きく引き、構えている。一歩下がっても間合いからは逃げれない。
素早く左手に盾を形成。さらに衝撃を逃がすために逆方向に跳ぶ。
「じゃあな」
副隊長は確かにそう呟き、剣を振り抜いた。
鉄を石に叩きつけるような音。左手に襲う衝撃。
方向的にはそこだけ防壁がなく、噴水そのままが置いてある。おそらくその縁にぶつかる程度で済む。
「えっ?」
その噴水が足元を通過している。戦場は遠のいていく。
ソーニャの身は宙に飛んでいた。
このままでは負ける云々ではない。家屋の屋根に激突する。
盾を右手に戻す。右手を振るうと同時に鞭状に変える。
噴水の天辺あたりの出っ張りに引っ掛けた後、縮小。
戦場から離れていく体を再び、そして前回よりも速度を上げ戻っていく。
さらに勢いが付いたところで鞭から前方を覆う壁にし、さらに槍を生やす。
強度は落ちるが勢いを利用すれば人間ぐらい簡単に貫ける。
ソーニャの目には既に副隊長は映っていない。
そこにいるのは自身が討つべき敵なのだ。
着地の衝撃と同時に土煙が立つ。自衛団の悲鳴が聞こえるがそんなものはソーニャにとってどうでもいい。
獲物を剣に。相手は土煙が立った後も動いている。その動きは風を生み、煙の動きを変える。
剣を振り下ろす。硬い物に当たった。それで位置はつかめた。すばやく連続攻撃を繰り出す。
やがて土煙から抜けて、相手の姿を視認する。長剣を器用に動かし、こちらの攻撃を防御している。
一度攻勢になれば、後は攻撃し続けるのみ。重要なのは相手に攻撃態勢を取らせないほどの速さの攻撃。
相手は後ろへと下がりながら防御している。前に出て、相手の急所を狙う。
足が今までと違う動きをした。下には先ほどの激突でぶつかった時に出来た床の残骸が散らばっている。
剣で突きを放つ。同時に剣身を伸ばす。
突きは腹で止められたが相手との距離を離した。が、蹴り飛ばしてきた石がソーニャの腹に当たる。
苦しんでいる場合ではない。これはこちらの動きを止める一撃。
既に伸ばした剣は相手の横へと弾かれた。剣を縮退させながらさらに後ろへ。
長剣の軌跡が先ほどよりも近い位置で描かれる。同じ攻撃にはかからないように右へと逃げる。
相手の左側。左手に剣を移動させようとしてやめる。先ほどの衝撃で痺れて動かない。
振り下ろした剣からの切り上げから逃げるためにさらに距離を取り、お互いの攻撃が届かない位置へと移動する。
いや、ソーニャにとって距離など関係ない。
相手よりも長く、自分よりもはるかに長大な形に変化させ、右足を軸に回転する。
例え剣身が細くても遠心力を加えることにより威力を増加させる。
剣先が防壁に当たり、切り裂いていく。逃れることの出来ぬ間合い。
防御すればそのまま弾き飛ばせる。しなければ両断。
その攻撃を相手はしゃがみ、剣と床のわずかな隙間に逃れることで回避した。
しゃがみこんだ体勢から一気に床を蹴り、突進してくる。
繰り出せたのは全身を使った突き。だがソーニャの逃げた方向に合わせて、停止して攻撃してくるはずだ。
既に手元に戻った獲物を薄い半月上に延ばす。
あの時ドラゴンの首を切り落とした時のと同じ形に

71 :創る名無しに見る名無し:2011/11/30(水) 05:31:14.28 ID:baDE4Y+o.net
副隊長つえーなw

72 : ◆7FtGTaokck :2011/12/01(木) 03:59:52.08 ID:l9TZ13q4.net
渾身の力を込めて、全身を使って振り下ろす。剣は相手に当たらず、床を砕いた。
体を無理やり起こし、相手のほうに向ける。相手の体は横に転がるように回避したのでしゃがみこむような体勢を取っていた。
再び剣を振り上げる。右手一本のためわずかに時間がかかる。相手の左手が近くの石を掴んだ。
剣はやはり当たらない。先ほどと同じように床を削る。ソーニャの左側に逃げた相手を目で追う。
転がりながら石をこちらに投げた。先ほどよりも小さいし、無理な体勢から投げたために勢いもない。
ソーニャは剣を槍に変える。意味なきけん制ではなく相手を貫くために。
石はソーニャの左手に当たった。同時に激痛が走る。
体勢を立て直した相手がソーニャの左側に駆け込んでくる。動かない左手からの攻撃。
最初の一撃と同じ方向からの同じ攻撃。だがこれは好機だ。
左手に再び盾を形成。先ほどよりも大きな盾を。
動かない左手を右手で支えながら、体勢を低くし斜めに構える。
うまく剣が受け流すことが出来れば、その間に攻撃出来る。
前回よりも衝撃が少ない。威力の大部分は上方へと逃げた。しかしそれでも体が後退する。
足を立て、後退を止め右手に剣を持つと跳ねるように飛び掛る。
相手の剣とぶつかり、鍔迫り合いになる。離れなければ押しつぶされる。
だがここで退けば、相手の二撃目の攻撃が来るはずだ。これだけ接近した後に来る攻撃を
避けることが出来るのか。剣の向きを変え、力を逃がそうとしても相手はうまく合わせてくる。
徐々に体勢が押し込められていく。剣先を曲げて、相手に向かって伸ばす。
相手が離れ、圧力から開放される。これを使えば鍔迫り合いになっても問題ない。
獲物を槍状にし、床を蹴る。
「もういい。そこまでだ」
誰かの声が聞こえた。同時に足が動かせなくなる。
思わず前につんのめりそうになり、声をしたほうを睨んだ。
「なにをするんだ! まだ降参していないぞ!」
「狂戦士のほうが合ってるね。あんた」
「何を言っているんだ! 早く魔法をっ……!」
左手に何かがぶつかり、言葉を思わず中断する。
正面を見ると長剣を右肩に担いだ相手――副隊長が疲れた顔をしてこちらを見ていた。
「まーだ戦うっつーのか。お嬢ちゃん。右手一本で勝てるとでも思ってんのか?」
「現状戦っていただろ! そもそも左手だって痺れが取れれば動かせるようになる!」
魔女と副隊長が顔を見合わせる。そして指し示したかのようにやれやれと肩を竦めた。
「ソーニャ。それ、骨折って言うんだ」
「……えっ?」

73 :創る名無しに見る名無し:2011/12/01(木) 05:17:58.22 ID:7u/rJi+4.net
なんだろう。シカがとても人間臭いw

74 : ◆7FtGTaokck :2011/12/04(日) 05:12:23.67 ID:f80Uh/hg.net
決闘から三日後。
ソーニャは噴水広場で修繕工事を行っていた。
あの日、ソーニャの攻撃により派手に壊れた床を直すためだ。
左手は包帯ぐるぐる巻きにされた上、動かさないように添え木までされている。
当然と言えば当然の結果だ。決闘終了後に病院へと搬送されたソーニャはそのまま手術が行われた。
通常の医療技術に加え、魔法による治癒を重ねたおかげで左手は全治一ヶ月程度で済んだ。
魔女が言うには本来ならば全治まで戻すことも可能だが人間が痛みに鈍感になるのは困るので
必ず最後は人間本来の自己治癒に頼らせるそうだ。ソーニャの場合はそれに戒めの意味もある。
獲物を器用に使い、切り出された石をはめて行く。昨日より続いた作業もその日のお昼には半分ほどまで終了した。
昼休憩を取るために噴水の縁に腰を下ろし、昼食のために用意してきた弁当を取り出す。
ちなみにこの作業はずっとソーニャ一人でやっている。一人でやれと言われた。
「隊長初仕事が自分の後処理なんて間が抜けているというかなんというか……」
パンを頬張りながらごちる。今日の昼食は泊まっている宿からいただいたものだ。
あっと言う間に弁当箱が空になる。美味であった。
食休みをした後、作業を続けるかと思っていると見覚えのある影が走ってきた。
「ソーニャさん、作業は順調みたいですね」
走ってきたコユキは広場を眺めながら言う。
「明日中には終わる、はずだ。コユキが手伝ってくれればもっと早く終わるのだが」
「先生に釘刺されてるので無理です」
即答されてしまった。物は試しではあったがちょっと悲しくなる。
「えっとですね。今日は雨が降るそうなので傘を持ってきました。
 作業は雨が降ったら中断していいそうです。道具は本部に置いて構いません。
 あと今日は満月なので宿ではなく先生の家に直接向かってください」
「何かするのか?」
受け取った傘を弁当の入っていた鞄に仕舞いながら尋ねる。
「満月は魔物が活発になるじゃないですか。
 さすがに今日はソーニャさんは見学ですが先生のところでどんなことをするのか覚えてきてください」
「本部ではなく?」
「先生の家です。魔物が出現したときに現場へ早く行けますからね」
前回は見せてもらってはいないが何か乗り物でもあるのだろうか。
しかし魔物が満月になると活発になるというのは初めて聞いた。
思い返してみれば村でも魔物の襲撃があるのは月齢が満ちてきた頃だった……気がする。
「それでは伝言は以上です。私は他に任務があるのでこれにて」
コユキは敬礼をして、そのまま走っていった。満月の日だし彼女もやることが多いのだろう。
ソーニャは膝を叩いて立ち上がり、作業の続きに取り掛かることにした。
作業は思ったより順調に進み、全工程の八割ほど終えたところで雨がぱらつきはじめた。
言われたとおり、本部へと道具を持っていこうとすると本部から何人かの人間が飛び出してきた。
「アネゴ! 持って行きますよ!」
「怪我のところ濡れたら大変ですから早く傘を!」
「弁当箱とか宿のほうへ持って行きますよ!」
「あ、ああ。ありがとう」
決闘後から隊員たちのソーニャに対する態度はこんな感じになった。
怪我の功名というものだろうか。態度の急変っぷりにむしろソーニャが慣れていないぐらいだ。
特に姉御という呼び名。目の前にいる男たちはどうみてもソーニャより年上だ。
最初に呼ばれたときに反論したが年齢より心意気が大事らしい。
荷物を隊員たちに任せたソーニャは魔女の家へと向かった。
もうすぐ太陽が沈み、夜となる。

75 :創る名無しに見る名無し:2011/12/04(日) 14:26:58.01 ID:3f+g8GrD.net
姉御www

しかしやはりなんか人間臭いw
鬼になるのはまだまだ先か。

76 :創る名無しに見る名無し:2011/12/05(月) 00:41:33.94 ID:e2tUzNK/.net
どれどれ?

77 : ◆7FtGTaokck :2011/12/11(日) 04:10:50.15 ID:NoRTGsAA.net
いつもの丸い机には大きな地図が置かれ、その周りを何人もの男が囲っている。
魔女は長い棒を使い、地図上の駒を動かしていく。
ということはさっぱりなく
机の上は相変わらずよくわからない小物でごちゃごちゃだし、魔女は本を読んでいるだけだった。
「一応呼ばれたようだから来たのだが……」
「椅子に座っていればいい。暇つぶしに本でも読む?」
「いや、そうじゃなくてだな……」
ソーニャが椅子に座り、頭を振るう。
「襲撃が来るんだろ? 魔物の。もっと戦闘準備なんか必要なんじゃないのか?」
「確かに満月に襲撃が来ることは多い。が、その規模は大抵小規模なものだ」
「魔物が活発になるとコユキが言っていたから上級の魔物でも来るのかと思っていた」
「満月に上級の魔物が襲撃したことは何度もある。先のドラゴンとかね」
よっこらしょっとと立ち上がり、部屋の端にずらりと並ぶ本棚の前に歩いていく。
基本的に物がごちゃごちゃしている部屋だが本周りだけは綺麗にしてあるので
余計に周りは汚く見えてしまう。
一冊の本を取り出し、持って来る。少々ほころびや破けが見え、古い本であることがわかる。
「ちなみにこれは自衛団の日誌の写しの一部。町の誕生と同時期ぐらいに自衛団も
 組まれたはずだからざっと五百年ほどの歴史があるわけだ」
「ごひゃく……」
「実際にここにある書物の大部分は日誌の写しでしかない。僕の魔道書なんて少ないものさ。
 これは今から四年前の日誌。この町でも最も被害の出た年だ」
古びた日誌を机に置き、ぺらぺらと捲っていく。そしてあるページで捲るのをやめた。
上部には日付が書かれており、八月二十日となっている。夏の盛りぐらいだろう。
横にはおそらく筆記者の物と思われる名前。そして満月という文字。
「魔法というのは月齢に深く関係している。
 月が満ちれば魔力も満ち、月が欠ければ魔力も失われる。
 今この世界にいる魔物というのは魔法によって人に強い敵意を向けるものを指している。
 故に魔力が最も満ちる満月の日はやつらの敵意もより一層強いものになるんだ」
「なるほど。魔力と関係していたのか」
「という仮説」
「仮説かよっ」
思わずガラじゃないことをやってしまった。
「魔物の定義なんて未だにはっきりしていないからなんとも言えない。
 魔法に関しても明日になれば常識がひっくり返る可能性が十分あるほど
 未知の部分が多い。とりあえず現状はこれで考えているという程度だ。
 最もこの日誌のおかげで満月に魔物の襲撃が多いというのは確実に言える」
「そのページのも満月と書いてあるな」
「『ファウストの狂乱』と呼ばれている夜だ。隊長になるならば知っておいたほうがいいだろう」
そういって日誌をこちらに向ける。筆跡はまるで震えているかのように乱れている。
読み間違いないようにゆっくりと読み進める。

事の発端は当時の魔術師協会会長のファウストがこの島が誕生した要因と思われる隕石の破片を発見したことから始まる。
この島は彗星落下時に本体より零れ落ちた破片が海に着水し、海底の大地を隆起させ出来たものだと考えられていた。
しかしその要因とされる破片はそれまで発見されておらず、あくまで推測の域を出るものではなく
仮にそうだとしても破片は島の地中深くに埋まっているので証明不可となっていた。
ファウストは島にて魔力に関しての野外調査をしている際に、異常な値の魔力残留を観測。
その後、周辺を捜索した結果隕石の破片と思しき小石を発見する。
町に小石を持ち帰った後、さまざまな実験を繰り返しこれを隕石の破片と正式に発表した。
ただ破片自体が放つ魔力が一般人に危害の及ぶほどの値であったため、とある民家の地下室に安置されることになり
その民家は後に隕石研究所と名を付けられた。
隕石発見から最初の満月にあたる事件当日。研究所にて爆発事故が発生したと自衛団に連絡が来る。
当直二人が現場に向かうと倒壊した民家の上にファウストがいたと言う。
自衛団がファウストに問うよりも早く一人を魔術により殺害。もう一人は逃走する。
連絡は自衛団全員および魔術師協会全員に行き渡り、ファウストの殺害の命が下った。
大量の犠牲者を出したもののファウストを殺害。その際、原因と思しき破片を破壊した。
犠牲者の多くは魔術師であり、これにより町の魔術師は大幅に減ることとなった。

78 : ◆7FtGTaokck :2011/12/11(日) 04:11:52.05 ID:NoRTGsAA.net
数ページにわたる内容を要約するとこんなところだろうか。
「破片がファウストを狂わせたということか」
「そのときファウストが破片を所持していたからね。
 満月の力で増大した破片の魔力にあてられて狂乱化したということだ」
ソーニャは日誌を閉じて亀に渡す。
「しかしまさか最大の被害が人間によるものだったなんて……」
「もともとこっちには上級の魔物なんてほとんどいないし精々飛んできたドラゴン程度さ。
 先のドラゴンも確かにひどかったけどこの時に比べればましなほうさ」
突然部屋内に鐘の音が響く。続いて男性のやる気の感じられない言葉が続いた。
「えー、襲撃ですー。場所は十時方向ですー。数はおよそ二十。地上小型の魔物ですー」
「見計らったかのように来たね」
それを受けて魔女がのんびり立ち上がる。
さらに持ってきた日誌を棚に仕舞おうとしている。
「襲撃なんだろ。早く行かないと!」
「落ち着きなさい。そもそもそんな獣に毛の生えた程度の生き物がどうこう出来るほど
 この町はやわじゃないさ。とは言ってもあんたを現場に連れて行かなきゃならないしね」
「万が一というのもあるだろ」
「それじゃあちょっとだけ近道するか」
ソーニャが階下へ向かおうとすると亀はそれを呼び止めた。
亀は上を指している。
「屋上に行くよ」

79 : ◆7FtGTaokck :2011/12/11(日) 04:23:10.73 ID:NoRTGsAA.net
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80 :創る名無しに見る名無し:2011/12/11(日) 18:46:57.42 ID:wmzAsdMw.net
乙乙。

81 :創る名無しに見る名無し:2011/12/13(火) 04:13:37.82 ID:zrKW3E2Q.net

             .○' ⌒`○
            /i /、 ,ヽ!ヽ
           / .,cリ ゚ヮ゚,リ ヽ  唐突に急浮上!
          (/ ;⊂E発ヨつ\)
            ( (ノメ川メ○
             ノ爻ラr''

              ノ /

82 :創る名無しに見る名無し:2011/12/13(火) 04:17:50.86 ID:oE3AlPye.net
あえてはっちゃんでやるとはこだわりを感じるw

83 :創る名無しに見る名無し:2011/12/13(火) 10:09:48.00 ID:X9H1WpiT.net
夕鶴「飽きたからあとよろしく」

円川さん「えっ」

84 :創る名無しに見る名無し:2011/12/13(火) 10:39:28.37 ID:X9H1WpiT.net
夕鶴から禅譲された円川が最初にしたことは自分の権威づけであった
あらゆる物に自分の肖像を刻印し、己を型通った銅像を拝むように強制した
住民が反乱を起こさぬように獣たちをスレへと放った
その獣は十の頭と七つの冠を持ち、貧乳を冒涜する言葉を口から吐いた
ある者がこの獣の首を切り落としたが、またたく間に再生したので人々は恐れおののいた
識者はこの暴挙を諌めようとしたが、円川は識者たちを集めると毒蛇と蠍がうごめく穴へと突き落とし、
その断末を眺めながら酒を楽しんだ
この行為によって円川に意見を申し上げる者はいなくなった

85 :創る名無しに見る名無し:2011/12/13(火) 11:04:55.43 ID:8jKUlBrq.net
サタンを放つなwww


86 :創る名無しに見る名無し:2011/12/13(火) 11:09:39.08 ID:X9H1WpiT.net
夕鶴どのは力によって支配しようとした、だが私は違う。
円川「私は法によって治めたいと思っている。そこで、あなた達がどれだけ順法精神があるか確かめてみたい。
ルールを決める『私が射たものにむかって弓を射よ』」
臣下「ははっ!」

ヒュンヒュンヒュン

円川「お前、なぜ鹿をいなかった」
臣下「みんな射てますし、あれだけ刺されば充分かと」

チャキ ザシュッ!

臣下「ぎゃあー!」
円川「私が射たものを射ろと言ったはずだ!」

ヒュンヒュンヒュン

円川「お前、なぜ射なかった」
臣下「…あれは円川さまの愛馬でございます、恐れ多く」

チャキ ザシュッ

臣下「ぎゃあー!」
円川「私の決め事を守らぬ奴は必要ない!」

円川「あそこに見えるは倉刀だな」
臣下「はっ」

ヒュン ヒュンヒュンヒュン
ブスブスブスブスッ

円川「ようやく法に遵守できるようになったな」

87 :創る名無しに見る名無し:2011/12/13(火) 11:12:16.98 ID:8jKUlBrq.net
倉刀ーーー!!!www

88 : ◆7FtGTaokck :2011/12/13(火) 12:34:46.48 ID:7J7ooI8x.net
倉刀「どういうことなの・・・」

89 :創る名無しに見る名無し:2011/12/13(火) 13:56:53.74 ID:8hOTQsYh.net
>>88
円川「万民我を貴ぶべしってこと、言わせないでよ恥ずかしい!
そんなとこより私と契約して創発板作家になってよ!」



移転作業を進める円川をよしとしない住人たちは攻勢を始める
しかし、彼らに恐るべき障害が立ちふさがる

デーン

虎牢関(仮名)にD君出現!

(BGMチェンジ)

円川「彼は私が数多のロリゲーと児ポ禁改正の礼を尽くして迎え入れた猛将。
そうやすやすと突破する事は無理よ」

D君「一食一晩の恩……辛いものだ……ここは通さぬ!」

デーン

味方勢力に被害甚大!

味方士気減少!

90 :創る名無しに見る名無し:2011/12/13(火) 15:35:29.90 ID:s/TVlGcB.net
D君そっち側かwww

91 :創る名無しに見る名無し:2011/12/14(水) 20:06:28.72 ID:GzIKODQr.net
ドッゴーーン

ウパ太朗 敗走!

ドッゴーーン

謎生物 敗走!

円川「さすがね、無人の野を駈けるが如く……」

住人「D来々! D来々!」

味方勢力動揺!

スイカ男「やろう、俺が相手だーーッ!」

ザシュッ

スイカ男(ちっ、浅い……)

D君「……」

はじるす破損!

ガシッ

D君「友からもらったこのロリゲ! 何の捨てる処がある」

ガリ ガリガリガリ

スイカ男「破損したエロゲーを……食いやがった!?」

敵兵「おお!」
敵兵「さすがはD君!」

敵勢力戦意高揚!

スイカ男「コイツが……Dか……」



D君とは!

ひとつ、好漢なり!

ふたつ、決して大人に興味なく!

みっつ、そして悟られず!

よっつ、ロリータと男の娘の嗜好を兼ね備え!

いつつ、そしてそれは、表紙絵詐欺のように美しさを基本とする!

92 :創る名無しに見る名無し:2011/12/14(水) 20:13:05.84 ID:aMI3ruK2.net
マジ何者だよwwwww

93 :創る名無しに見る名無し:2011/12/15(木) 05:08:48.76 ID:LZ1GTHmj.net
ちょwwww途中からD君ネタになってるじゃねえかwwww

円川さん食われてるぞwwwww
                                        エンガワダケニネ

94 :創る名無しに見る名無し:2011/12/16(金) 15:07:27.50 ID:RIPL2xLq.net
「93が円川陛下に召されたらしいぜ」

「そうか出世したな。ところで身元不明の死体が川に浮かんでいたらしいぞ」

「知ってるよ、首無くて胸に『罰』と刻んであったんだろ。物騒だな」

95 : ◆7FtGTaokck :2011/12/19(月) 03:25:34.68 ID:BwZHndBD.net
やたら狭く複雑な階段を抜けた先にあった屋上は人が五人も立てば満員になるほど狭かった。
先ほどから振り出した雨は弱いものの長く当たれば体を冷やしてしまう。
一応雨よけのコートは羽織っているがいかんせん寒い。
「いや、しかしここからどうやって現場へ行くのだ。ここには何もないじゃないか」
「魔法だよ。方角は十時の塔と」
亀は足元で何かをやっている。屋上の床には丸やらなんやらをあわせた複雑な図が書いてある。
これも魔術に用いる図の一つなのだろうけどソーニャには子どもの落書きにしか見えない。
作業が終わったらしく亀が立ち上がり、図の中心らしき場所に立つ。
「ここの円から出ないように。それじゃあ行くよ」
亀が聞きなれない言葉を喋り始めた。同時に足元の図を作る線が内から外へとなぞる様に光り始めた。
やがて書かれていた線が全て光り、さらに図の一部が一際大きく光る。
「転送」
亀の呟きと同時に体の感覚がなくなり、視界が真っ暗になった。
意識だけが夜の中浮いているような錯覚に捕らわれる。
その一瞬の後に体に重力が戻り、光が視界に入ってくる。
見たことのない場所だ。先ほど亀の言っていた十時方向にある監視塔なのだろう。
徒歩で来た人間がこの壁の上に登るための階段や襲撃に備えた装備などが置かれている。
壁の通路の途中に築かれているため中央を通路が横切っており、扉は設置されていない。
さほど広い空間ではないが足元に書かれている魔方陣も亀の家のそれに比べ手のひら程度の大きさと小さめになっている。
「試験的に作った転送魔方陣の居心地がどうだった?」
「ちょっと怖かったな。転送するときは目を閉じたほうが良さそうだ」
「時々気分を悪くする人間がいるものでね。あんたは大丈夫そうだね」
亀が外を見やる。何人かの自衛団と思しき人が弓を撃っている。
そのうちの一人がこちらに気づき、敬礼をする。
「これは亀じゃないですか。どうしたのですか?」
「新人教育」
外はまだ雨が降っているが亀は何も気にすることなく、出て行った。
ソーニャもそれに着いて行き、外を見渡す。
天気が晴れれば遠くまで眺めそうだが雨のために視界は通らない。
何かがぶつかる音が下から聞こえてくる。
「ちょっと下を覗いてみな」
亀に言われるがまま城壁から少しだけ首を出して覗いてみる。
高い。というのは置いといて。四つ足の獣が城壁に次々と体当たりしている。
その脇で矢が刺さった獣が倒れている。
「あれは……何をやっているんだ?」
「多分壁を壊そうとしているんですよ」
団員が矢を撃ちながら答える。これだけ群れていると外すほうが難しそうだ。
「魔物が人間に対して憎しみを持ったはいいものの頭は所詮獣程度らしく
 意味のわからないことをするときが多々ある。これもその一例だ」
確かに意味がわからない。
矢が刺さっているならともかく刺さっていない個体まで地面に伏せている。
まだ地面を掘って壁を潜るほうが現実的だ。
「たまーに仲間を踏み台にしてこっちに跳ぼうとしてくるやつもいるんですけどね。
 さすがに高すぎて届きませんけど」
「これなら放っといても問題ないのではないか?」
「いえいえ。こうやって来て頂いたのですからその恵みはちゃんと受け取るべきじゃないですか」
「恵み?」
そう言っている間に元気に自滅していた魔物たちが今はほとんどが地面にうずくまり動かない。
どうやら襲撃もここまでのようだ。どうするものかと見ていると横から自衛団の人間が何人か魔物に近づいていっている。
一人が魔物に刃物を刺す。ちゃんととどめを刺しているようだ。
その後、足を紐で縛り、肩に掛けて背負う。
「あの魔物は狼に似ているんですよ。だから革を防寒具に、肉はそのまま食料になるんです」
「肉を食べるのか? 魔物だぞ」
「いえいえ。魔物と言ってもちょっと人間に敵意の強い動物ですよ。
 一応魔法使いさんが処理の手伝いをしますが、基本的には動物の肉と同じです」
村でもあのような魔物の襲撃はあったがそれを利用するようなことはなかった。
魔法使いがいなかったからと言えばそれまでだが加工法を知っていれば冬の寒さも凌ぎ易くなりそうだ。
いや、よく考えれば行商人が売りつけてくる防寒具と言うのはこれから生産されているのではなかろうか。
ぜひともこの技術は持ち帰り、村に役立てたい。

96 : ◆7FtGTaokck :2011/12/19(月) 03:26:45.87 ID:BwZHndBD.net
「あれ、というか襲撃はこれで終わりなのか?」
「終わりだ。さて、帰るか」
「この程度なら本当に私が来る必要はなかったな」
「七割ほどはこの程度で済む。三割についてはあんたも出撃することになるものだ」
矢を撃っていた兵士が次々と監視塔の中に戻ってくる。
魔法で帰るものかと思っていたが亀は階段を降りて行った。
「言い忘れたけどその魔方陣、一方通行だから」
あくまでも試験運用ということか。
狭い階段を降りながら、襲撃を思い返す。
ただひたすら壁に体当たりを繰り返していた魔物。亀は意味がわからないと言っていた。
確かにこの丈夫な壁に体当たりを繰り返すなんていうのは自殺行為でしかない。
しかしこういった攻撃が例えば同じ場所にずっと繰り返されていたら。
もしかしたらこの丈夫な壁にも傷が付くのではなかろうか。
統率された意思を持って、それが成されているとしたら奴らにはそれを指示するもっと位の高い長がいる。
そこまで考えたところで階段が終わり、地上に辿り着く。
雨は相変わらずやまない。傘は手元にない。亀は既にいない。
ソーニャはため息をついた後、雨の中に飛び出した。


>>95-96 初襲撃  
以上

97 :創る名無しに見る名無し:2011/12/19(月) 03:46:27.05 ID:du0itHND.net
じわじわ伏線張ってるな。ていうか、食うんかwww

98 :創る名無しに見る名無し:2011/12/22(木) 13:28:42.72 ID:NGWQizFC.net
D君がいるかぎり虎牢関は落ちぬと考えた柏木は一計を案じます
まず、策を授けた少年を円川のもとへむかわせました

「偉大な円川様と停戦を結びたく、使者に参りました」

礼儀正しい少年、ジークフリードを気に入った円川は傍に置くに決めました
次にジークフリードは夕鶴へと接触を図ります

「偉大な円川様の先代、夕鶴様とよしみを結びたく」

夕鶴も少年を気に入り、手元に置こうとしましたが、それが原因で円川と仲違いをします
仲違いは内乱を生み、円川と夕鶴合い争い、首都は火に包まれました
これに乗じ、柏木の別動隊が首都を制圧、孤立したD君は流浪となって落ち延びました

え? ジークフリードがそんな真似出来ない?
それもそのはず、少年は髪を切って男装したジークリンデだったのです

99 :創る名無しに見る名無し:2011/12/22(木) 15:26:21.30 ID:MGjpnOpV.net
なんぞw

100 : ◆7FtGTaokck :2011/12/25(日) 04:41:43.81 ID:1KVN0t8S.net
「有り得ないね」
翌日。夜中に降っていた雨は明け方には止み、今は空が青く染まっている。
ソーニャが今日も元気に広場の修繕作業をしていると、亀が通りかかったので
話をするついでに昼休憩を取ることにした。
その際に昨日考えていた話をしたのだが返答は冒頭のものだった。
「壁は毎日修繕と補強を繰り返しているからあの程度の生き物が体当たりしたところで
 百年経っても壊されはしないさ」
「毎日……。ということは昨日やられていた部分も……」
「今頃は昨日よりも頑強になってるよ」
まさか毎日補強をしているとは思わなかった。ここまで自信を持って言い切るのだから
安心しても問題ないようだ。
「だけど統率する長がいるというのは合っているね」
「いるのか。あの群の長が」
「二本足で立つ魔物を時折見かけるからね。最も遠くで眺めているだけで攻撃はしてこないんだけど」
「討伐隊を組んで行かないのか?」
「わざわざ敵の縄張りに進入なんてしないさ」
亀が言うにはこの町と隣接する大きな森が奴らの住処になっているらしい。
森自体もかなり大きく、仮に討伐しに行っても見つけられない可能性だってある。
さらに森にはあの魔物よりも恐ろしい生き物がいると言う。
「あの魔物は普通の動物で言うなら狼に該当する。
 森の中には熊だとか猪だとかそういう魔物もいるからね」
具体的な名前を出されると想像しやすい。ソーニャも熊や猪は近くの森に生息していたので知っている。
魔物ではなかったものの討伐するには苦労した。そこでソーニャがふと疑問に思う。
「確か魔物は魔法によって人間に対して敵意を強く持つようになった奴って言ってたよな?」
「凶暴化したと言ってもいい」
「それじゃあもとからいた狼だとか普通の動物はどうなったんだ?」
「徐々に魔物化しているんじゃないかな。
 現在いる魔物の大体は元からこの世界にいた生物が魔法によって魔物化したわけだし」
「全部が魔物化するかもしれないということか……。待てよ、魔法をかけられて魔物化しているなら術者を仕留めれば止まるのか?」
「そもそも魔法にかけられてってのが仮説なんだけどそれが正しければ止まるね」
この世界にいるであろう魔物化させている魔術師。そいつを仕留めるだけでこの世界はかなり平和になるはずだ。
だがそれが未だに叶っていないということは……。
「最も術者は北の大国の王か側近だろうけどね」
ソーニャはため息をつく。
戦争が始まってから十五年以上。好転したという話は聞いたことがない。
この島だけでも徐々に魔物が増えてきていると言うのに、北の大国の術者なんてもってのほかだろう。
「北の大国には魔物は当然として魔族がいるからそう簡単には行かないだろうし」
「魔族というのは……戦争が始まった時にこの世界に来た奴らか」
「そうそう。あれはこの異界の生物だからね。そいつらに比べたら狼の魔物なんてノミみたいなものさ」
そう言って亀は立ち上がる。かなり長い時間話し込んでいたようだ。
今日中に修繕を終わらせて、明日からは通常業務に戻らなければ。
最も隊長が何をするかはわからないが。
立ち去ろうとした亀が何かを思い出したかのように立ち止まりこちらを見る。
「そうだ。あんた時計持ってる? というか知ってる?」
「持ってはいないが知ってはいる。昨日の十時の塔というのも時計を元にしたものだろ」
旧世界にあったいくつかの事柄はこの世界でも受け継がれている。
そのうちの一つが時間の概念だ。とは言ってもソーニャの居た村では時計が一個もなかったので
そういう考え方があるということしか習っておらず実際に使うことはなかった。
そもそも時計自体が結構高価で村人全員に行き渡らせることが出来なかったというのが大きいのかもしれない。
「時計なしで過ごしていたというのも信じられないが……。はい、これ」
渡されたのは手のひらサイズの物で、蓋が付いている。見ないときはこの蓋を閉じて懐に入れておくというわけだ。
天辺には鎖が付いているので腰に結んで置けば落とす心配もない。
「懐中時計というやつだ。この先多用するだろうから 大 切 に使ってくれ」
「あ、ああ」
なんだかすごい一部が強調された気がする。それほどこれは高価なものなのだろう。
亀を見送った後、改めて時計を見る。短い針がカチッカチッと時を刻んでいる。
鎖を腰に結び、懐に時計をしまう。長かったような短かったような修繕がもう少しで終わる。

『懐中時計』 以上

101 :創る名無しに見る名無し:2011/12/25(日) 16:50:44.00 ID:k1d2RnqN.net
おつ。亀の脳内容姿が探知桃花と被るのだがどうなんだろうw

102 :無限彼方大人編〜お疲れ夕鶴姉さん〜 ◆wHsYL8cZCc :2011/12/31(土) 23:15:57.32 ID:E0/k/jR7.net
「おや久しぶり」
「あ」

 風が冷たい。

「元気だったかい?」
「ええ、まぁ、はい」

 衝動買いした手袋は、適当に選んだ物だったけど、私の手にちょうど良い大きさだった。
 寒いのでベージュのコートをひっぱりだして、首にマフラー巻き付けて、それで口元まで隠して、でも、履いてるのは短めのスカートだ。当然寒いから、黒いタイツも履いた。脚の長さには定評(?)があるので、ラインを見せる事には抵抗はない。
 それでも寒いので、ロングブーツの底にこっそり作業用の激暖かい中敷を敷いた。作業服売り場にある優れ物だ。男性用だから自分で切って形整えないといけないけど……。
 それでも足りないと、コンビニに入って熱い缶コーヒーとホッカイロを買って外にでた時。

「えっと、夏の時はお世話になりました。えっと、その、……すみません、お名前が」
「おやまぁ結構ショックだよそれ。夕鶴だよ。ゆ・う・づ・る」

 そうだ。その名前。思い出した。そして、名前よりインパクトのあるその羨ましいを通り越して畏怖すら覚えるおっきな胸。名前は忘れてもそれは目に焼き付いてる。
 本当に偶然の再開だ。まさか私の、日常の行動範囲内で出会うなんて。
 夕鶴さんは相変わらず男っぽい雰囲気だったけど、やっぱりどことなく品がある感じで。着てた皮のジャケットは正直、着こんでいるのか小汚い。でも、彼女の性格が良く表れているようで違和感はない。

「ここら辺に住んでたんだねぇ。よく今まで出会わなかったもんだよ」
「てことは?」
「うん。私もここら辺。ちょうど引っ越すけどね」
「お引越しなさるんですか」

 夕鶴さんは「うん」と言って、ちょっと空を見上げた後、短くため息を吐く。白い息は、出たと思った瞬間に空に混じってしまう。「あんたは何してたの?」と聞いてきたので、親に会ってきた帰りだと言った。ついでに、どこかで晩ご飯でも食べて、あとは帰るだけだとも。
 私の親は普通の人間とはかなり違っているけど、普通に生活している分にはただのジジイだ。年始は昔の連れの集まりに参加すると言っていたから、日付が変わる前だけど、一足先に新年の挨拶をしてきたのだ。
あのジジイの集まりとなると正直、想像するだに濃い面子が集まるだろう事は明白。

 今日は、十二月三十一日。大晦日。
 あと数時間で今年が終わる時間だ。

「へぇ。やっぱ年末は忙しいね。私は暇になったところさ」
「暇に?」
「まぁね」
「何かあったんですか?」
「簡単だよ。職が無くなっただけさ。ちょっと前にね。いい機会だし、ついでにどっか遠くにまで引っ越しちゃおうと思ってね」
「え? て事は、今、お仕事されてないんですか?」
「そうだよ。もう私はお役御免みたいでね。まー夏のバイトと本業を黙って掛け持ちしてたのバレたのが良くなかったんだね。規約違反で首切り対象さ」
「海の家バイトだったんですか」
「あれはね。夏だけの小遣い稼ぎさ」
「本業は何されてる、じゃないな。何されてたんですか?」
「秘密」
「えー」
「あはは。秘密ったら秘密だよ。どうしてもってんなら教えてあげない事もないけど、いろいろと未知の世界だよ」
「逆に気になるじゃないですか」
「そうだろう。気になるだろう。ははは」
「危険な仕事?」
「んー。まぁ、危険っちゃ危険だね」
「まさか、アウトローな?」
「それは違うね。ちゃんと税金払ってるよ」

103 :無限彼方大人編〜お疲れ夕鶴姉さん〜 ◆wHsYL8cZCc :2011/12/31(土) 23:16:34.78 ID:E0/k/jR7.net
「特殊技能が要る?」
「たっぷり要るね。技能ってかそういう趣味がないとキツイかも」
「趣味?」
「知りたいかい?」
「すごく気になる」
「たまに血が出たりすんだよねー」
「血!? なにそれ、危険でアウトローじゃなくて、特殊技能が要る仕事って、救急隊員とか警察官自衛官とか」
「あー違う違う。そんなお役人じゃないよ。相手にする事はたまにあるけど」
「お役人の相手? やっぱりアウトローっぽい」
「だから違うってば。知りたい?」
「はい」
「よし、じゃ、教えてあげるよ。ただし……」
「ただし?」
「さっき言ったように私は今無職でね。お金あんまり使いたくないわけ。晩御飯おごってくれ。あ、出来ればお酒がいいね」
「えー」
「えーって。実をいうと結構厳しいんだよ。人助けと思ってなんか食べさしてくれよ」
「お酒とか言ってたし」
「年末だよ。いいじゃないか」
「まーいいです。一回ご飯おごるくらいなら。その代わり洗い浚いお話してもらいます」
「もちろん。産まれた時から今までの男性遍歴まで包み隠さず教えてやるよ」
「そこまではいいです」

 夕鶴さんは「あはは」と笑って、私の手を引いた。よく行くお店があるらしい。彼女の性格からして、どんな親父臭い立飲み屋だろうかと思っていたら、意外にもおしゃれな雰囲気のレストランだとか。
 人の金だと思ってがっつり食べるつもりなのだろうか、鼻息を荒くしてぐいぐい私を引っ張った。ま、正直な事を言うと私も帰ったところで一人で年越し番組を見ながら缶ビールの予定だったし、一人よりはたぶん楽しいだろう。
 飲食代はぜんぶ私持ちだけど。

「おや?」

 夕鶴さんはいきなり立ちどまった。私は引っ張られた勢いのまま、その背中にぶつかった。
 空を見上げて、白い息を吐きながら、そのまま。

「どうしたんですか? ……あ」
「ご覧よ、雪が降ってきた」
「ほんとだ」
「綺麗じゃないか。ちょっと遠出する前にいいもの見れたよ」
「冷たいです」
「だろうね」
「こちらには、いつか戻られるんですか?」
「いやあ、来る事はあっても居付かないつもりだよ」
「そうなんですか」
「なに寂しそうな顔してんだよ。まだ会って二回目だろ」
「そういえば」
「でもま、これも何かの縁さね。もしこっちに寄ったら連絡するよ。多分、宿無しだから、あとは言わなくてもわかるね?」
「布団買っときます」
「そいつは有難い」
「そのかわり、男性遍歴まで語ってもらいます」
「おや。はは、いいよ耳にタコが出来るまで自慢話してやるよ」
「なにそれ」

 雪が降っていた。頬に落ちると、一瞬で消えて、ただの滴になったそれも、頬を伝うとすぐに無くなる。
 二人でそれを見上げていた。
 あと数時間、今年が終わる。



おわり。

104 :無限彼方大人編〜お疲れ夕鶴姉さん〜 ◆wHsYL8cZCc :2011/12/31(土) 23:16:59.65 ID:ScTMroNd.net
おわり。おつかれさまです夕鶴さん

105 :創る名無しに見る名無し:2012/01/01(日) 00:26:31.13 ID:mrWJGtzt.net
投下おつおつ
夕鶴さんの次回仕事にご期待ください

106 :創る名無しに見る名無し:2012/01/01(日) 19:20:28.87 ID:QKS0AkkL.net
あけましておめでとうございます。
昨年の最初に描いたのが夕鶴さんの年賀画でした。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=2730.jpg


107 :創る名無しに見る名無し:2012/01/01(日) 21:15:26.00 ID:iqo4eUE3.net
涙目には制裁が必要w

108 : ◆7FtGTaokck :2012/01/02(月) 03:53:45.65 ID:oA9K3f40.net
「明けましておめでとうございます!!」
いつも通り朝起きて身支度を整えているとそんなことを言いながらコユキが突入してきた。
普段ならノックをするのにどうしたのだろうか。
「いやー、年が明けましたね」
「いや、明けてないだろ……」
「ちなみに作中時間は冬ですが特に年越し前だとか後だとか決めてないので作品内で年明けどうこう言うことはないでしょう」
「おい、どこ見て喋ってる。というか何を言っているんだ」
「そんなわけで今日は魔術師協会の副長が戻ってくるのですよ」
そっぽを向きながら誰かに向かって説明していたコユキが目線をこちらに戻す。
副長と言えば魔術師協会を実質束ねている人間だ。そんなことを亀が言っていた。
おそらくはソーニャとビゼン副隊長みたいな関係ということだ。
「どこかに仕事をされに行ってたのか?」
「そんなところですね。確か本州のほうまで行っていたはずですけど」
「海の向こう側じゃないか」
ここより北の地にある本州。どれぐらい離れているか知らないが船でちょっと行けばという距離ではないはずだ。
その海を渡り、仕事をしに行く魔術師。なんだか亀を見ていると魔術師という生き物はなかなかぐうたらな生き物に見えるが
あれが異質なだけだろうと改めて実感した。
だが待てよ。あのぐうたらな魔術師でも瞬間移動の魔法が使えたのだ。一流ならば海くらい越えられる……のか?
「というわけで面会しに行きますよ。確かお昼くらいには戻るはずなのでそのくらいに」
「ははは。さすがに長旅から帰ってきたんだからすぐには面会出来ないだろう。本人も疲れているだろうし」

「それではお部屋のほうに案内します」
「えっ」
時は過ぎてお昼頃。昼食を取った後、協会本部の受付にコユキが面会をしたいと申し出ると呆気なく承諾された。
受付をしていた女性が振り向き、首をかしげる。
「どうかなさいましたか?」
「えーっと、副長は長旅で疲れているのでは?」
「この程度で疲れているようでしたら既に死んでいるのでご心配要りません」
女性がにこりと微笑む。言っていることはかなり恐ろしい。
やはり移送呪文なのだろうか。それとも船旅というのは噂に聞くほどひどいものではないのか?
かつて父がよく言っていた。
『いいか、シカ。将来もしも海を渡ることがあったら船だけは覚悟しておいたほうがいいぞ』
床に玉を置けば常に右往左往し、ちょっと陽を浴びようと外に出たら海水を浴びる。
そんな地獄を船旅では体験できると父は力説していた。
それ以来ソーニャにとって船旅はこの世に存在する地獄の一つとなったのだ。
「副長。ソーニャ隊長とコユキ様をお連れしました」
女性が控えめにノックをして、ドアを開ける。
まず目に入ったのは大量の書物。左右の壁ぎっしりに本が詰まっている。
亀の家もそうだったが魔術師というのは本を溜め込む癖でもあるのだろうか。
部屋の中央には机と優に三人は掛けられそうな椅子が二つ対面においてある。
さらに置くの窓際には一人で使うには大きすぎる机と男が立っていた。
男は持っていた書類を机の置き、笑みを浮かべながらソーニャたちの前まで早足で歩いてきた。
「初めまして。シカ・ソーニャさん。私が魔術師協会の副会長を務めるコクテン・ロゼッタです」
そう挨拶をして深々とお辞儀をする。
身長はソーニャより少し高い。眼鏡を掛けており、髪は茶色く少々長めのようだ。
髪の若々しさとは相対的に肌は白く、刻まれた皺からは補佐官と同じ、もしくはそれ以上の年齢と見られる。
ソーニャも名乗り、同じように挨拶をする。
「長旅から帰還したばかりなのに申し訳ない。やはり日を改めるべきでしたね」
「とんでもありません。どちらにしろこの後、もう一人お客様が来ますからね。
 ぜひとも同席して私の話を聞いていただきたいのです」
「お話、ですか?」
ドアが再びノックされ、先ほどの受付の女性がもう一人の来訪者の名を告げる。
「さてと聞かせてもらおうか。本州の戦況を」
そこには魔術師協会会長の亀が立っていた。

109 :創る名無しに見る名無し:2012/01/02(月) 14:17:59.44 ID:xKpn6bRx.net
そこは九州四国あたりなのか。それとも東京の離島か。
地理が少しずつ見えてくるが確信が持てないw

110 :創る名無しに見る名無し:2012/01/08(日) 21:53:45.40 ID:u/k3lHQZ.net
エイリアンvsプレデターやってるけど端折りすぎじゃね?w

111 :創る名無しに見る名無し:2012/01/08(日) 21:54:03.37 ID:oUvmDXSO.net
誤爆しました

112 : ◆7FtGTaokck :2012/01/09(月) 13:22:34.07 ID:o7UBbq2e.net
「これが現在の日本の地図です」
ロゼッタが地図を机に広げる。弧状に並んだ四つの島と本州から南へ向かったところに島がもう一つ書かれている。
かつては日本と呼ばれていた国は主に北海道、本州、四国、九州と小さな島々で形成されていた。
今となっては国という形はないが便宜上そう呼んでいることが多い。
そして隕石の衝突によって生まれたこの島は日本の近くにあることから地図では一緒に書かれていることが多いそうだ。
地図にはこの島がかつてここにあったという諸島から小笠原と記載されている。
こうやって島の大きさを他と比べてみるのは初めてだがどうやら四国と同程度の大きさはあるようだ。
「現存している拠点は東北、東京、京都、香川、福岡の五つです。特に東北拠点は激戦地となっています」
向かい側の席に座ったロゼッタが地図上を指でなぞりながら説明をする。
その隣には亀が、ソーニャの隣にはコユキが座っており共に地図を見ながら頷いている。
「北の国の勢力は北海道を制圧後、南下。東北拠点の制圧を始めています。戦地を直接見たわけではないですが
 聞いた話だけを総合するともって三ヶ月、と言ったところです。
 制圧後はさらに南下を繰り返し、東京拠点が制圧された後はおそらくここに到達するでしょう」
よどむことなく淡々と話している。だがその内容はこの地が戦場となる日を指し示しているのだ。
今までは魔物だのなんだのの相手だったが北の国の勢力となるとおそらくは魔族がやってくる。
そうなればこの島などひとたまりもない。
「十五年か。結構もったもんだけどね」
亀がそう言いながら背もたれに体を倒す。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。何か手はないのか?」
「ソーニャさん。相手はこの十五年間で一度も優勢に立つことができなかった国ですよ?
 侵略の遅れたこの地域でもこの有様なのに他のところなんてもっとひどいでしょう」
コユキも同じく体を背もたれに預け、天井を仰ぎ見る。
「でも今まで侵略が遅れた理由があるんだろう」
「奴らはどうも海が苦手のようでしてね。このあたりのような島国は手が出しづらかったのでしょう。
 加えて近くの北の国と地続きになっている地域は戦争が始まった直後辺りに消し飛ばしましたからね」
「消し飛ばした?」
「ええ。大陸からの渡航を恐れた日本の魔術師が魔法で一昼夜のうちに海へと変えてしまったんですよ。
 そのおかげで大陸からさらに孤立することになったので侵略も今まで遅れたのでしょう」
地図を改めて眺める。そこには日本の島しか書かれていない。
だがもしかしたらかつての地図にはここのどこかに島が書かれていたのかもしれない。
「先日、有志による北の国の進入計画が実行されましたが成功率は低めでしょうね」
そう言いながらロゼッタはいつの間にか置かれていた赤い飲み物を飲む。
確か紅茶と呼ばれている飲み物だ。だがそれはとりあえず置いておく。
ソーニャは今まで北の国の勢力などというのは遠い世界のものだと思っていた。
いつかは対峙するかもしれない。だがそれはずっと先の未来。そんな考えを抱いていたのだ。
だが現実ではその脅威が目の前にまで迫っていたのだ。
そしてそれを知らないのは自分くらいで他の人間は現状に諦めている。
いくら外の世界に無知であるとは言ってもこの意識の差はどうにも納得出来ない。
「私は想像以上に平和ボケしていたのかもしれない……」
「今更だなぁ」
亀は呆れ顔でそんなことを言い、紅茶をすすっている。
「何も悪いことばかりじゃないですよ。少しでも我々の生存率を高めるための種はまかれています。
 いずれも一発逆転が狙えるほどのものではないでしょうけど仮に成功すれば現状維持程度は出来るかもしれません」
「成功しても現状維持なのか……」
「現在の劣勢から維持に持っていけるだけでも十分な成果です。
 いや、でもあの計画が成功すればもしかしたら優勢にも……」
ロゼッタが意味ありげなことを呟き、考え込む。
しかし先ほど話した内容と他の二人の反応を見る限り、状況が絶望的に見える。
「あの計画って東京拠点のアレ?」
亀はその計画を知っているらしいがその口調には既に諦めの色が出ている。
ロゼッタは亀に頷いて答えた。
「ええ。東京拠点で研究されているアンドロイド計画です」

以上
>>108 『副長、帰還』
>>112 『戦況』

113 :創る名無しに見る名無し:2012/01/09(月) 13:29:35.44 ID:s4b/aXOf.net
乙。意外なほど状況やばかったw

114 :創る名無しに見る名無し:2012/01/11(水) 06:14:25.57 ID:mpS2brYe.net

             .○' ⌒`○
            /i /、 ,ヽ!ヽ
           / .,cリ ゚ヮ゚,リ ヽ  唐突に急浮上!
          (/ ;⊂E発ヨつ\)
            ( (ノメ川メ○
             ノ爻ラr''

              ノ /

115 : ◆7FtGTaokck :2012/01/15(日) 03:58:10.04 ID:dTtAusbF.net
「あんどろいど?」
聞きなれない言葉だったので聞き返してしまう。
一体どんな計画なのだろうか。餡泥井戸。おいしくはなさそうだ。
「人工生命体、と言ってソーニャに通じるのだろうか」
「つまり人の作った生命ってことか」
「通じた……!」
「馬鹿にしているのか」
亀がソーニャを見つめながらゆっくりと大きく頷く。
確かに無知である。無知ではあるがこの馬鹿にされようはちょっと腹が立つ。
「試作段階には入っているのですがなにぶん問題が多いので……」
「問題?」
「『生物問題』。僕からしてみればどうでもいいことなんだけどね」
「生物って生命体なら生物だろ?」
「生物としての在り方だよ。我々は地球上の進化という歴史を辿って生まれた生物だ。
 だけど人工生命体は人間と酷似しているがその生まれは試験管の中となる。
 云わば別生物というわけだ。
 仮に実験が成功し、人間となんら変わりないアンドロイドが誕生した時。
 本来の人間である我々はそれをどのように扱うべきなのか。
 兵器として生まれたからには生物兵器として扱うのか、それとも一人の人間として扱うのか。
 なまじアンドロイドというのが人間の上位互換みたいな存在だから場合によっては我々の上に君臨する危険性とやらもある。
 後は神のなんちゃらだとか倫理的などうちゃらとかあるけど植物の品種改良となんら変わりないと思うんだけどね」
人の形をした別生物。作られた生命体。
まるで我々と同じじゃないか。
「状況が状況ですしおそらくは計画は実行されます。それでも成功する確率は高いとは言えないのが現状。
 期待はしつつもこちらはこちらで出来るだけ種はまいておいたほうがいいでしょう」
それまで黙って話を聞いていたコユキが何かを思い出したかのように手を打つ。
「そういえば扱い云々の話で思い出しましたけど確か魔獣や魔族でも人間に味方するのもいましたよね。
 彼らの待遇はどうなってるんですか?」
「魔獣や魔族が味方に? 人間に敵意を持っているからそう呼ばれているんだろう。そんな馬鹿な話が」
ソーニャは軽く笑いながら紅茶を口に含む。
「いるね」
そして噴出した。
「きたなっ! おい、脳味噌筋肉。消し炭にしてあげようか」
「げほっげほ……。すまない……。いやしかしおかしいだろ。前に聞いた話と明らかに矛盾しているだろ」
「基本的には人間に強い敵意を持っている生物を魔物と呼んでいますけど
 明らかに野生生物の知能をはるかに超えたものもそう呼んでいるんですよ」
ロゼッタが説明しながら布巾で机を拭いている。非常に面目ない。
「有名なのはヨーロッパの吸血鬼とか大白鯨ですね。確か日本にも狸とか狐の魔物がいたような」
「結構いるもんなんだな」
「知能を持てば持つほど自らの目的に疑問を持つということかな。人間と変わらないね」
「人間との係わりかたも手助けする代わりに供物を要求するものもいれば
 人里に住み、普通に暮らしているものもいます。
 それでも姿かたちは人間と異なるのでそういった目で見られていることが多いと言ってましたね」
現在も東京拠点には魔物が住んでいるらしく、戦いとあらば人間と共に共同戦線を張っているそうだ。
そういったところで感謝される反面やはり魔物であるということで差別を受けることもあると言う。
人間の知性を持った魔物は差別され、人間を模して作られたアンドロイドはその誕生すらも問題視される。
ならばもしも無限桃花のことが広く知られればもしかしたら我々もそういった処遇を受けることになるのだろうか。
ソーニャはそんなことをふと思った。

『人と人外』 以上

116 :創る名無しに見る名無し:2012/01/18(水) 19:18:49.49 ID:O7H4A8SQ.net


117 : ◆7FtGTaokck :2012/01/22(日) 01:49:23.59 ID:uEOduy8K.net
灰色のどんよりとした雲が空を覆っている。雪がちらつくことはあるがまだ積もるほどは降らない。
凍えるような風はこちらが防寒しているにも関らず体を冷やしていく。
もっと着込むべきだっただろうかと考えたがコユキの言うとおり全てを着ていたら身動きが出来なくなりそうだった。
全治一ヶ月程度と診断されていた骨折はロゼッタの計らいにより治療され、今は何の問題もなく動かすことが出来る。
その代わりこの町に関しての資料をどっさり読まされることになった。
資料を読むだけなら骨折をしていても多少不便で済んだのだが町の外の調査などをするには片手では危険と判断されたようだ。
そんな仕事なのか勉強なのかわからないことをしていたら満月まで残り三日となっていた。
前回の満月から今日までにごく少数の散発的な襲撃があったもののいずれもすぐに鎮められた。
前回同様狼の魔物が来るようであれば楽なのだが本州の戦況から考えるともしかしたら援軍が来るかもしれない。
「だから今更地図を片手に町の地理を覚えて来い……というのもねぇ」
ソーニャは一人ごちる。さすがに暮らして一ヶ月以上は経っているのである程度の道や建物の場所はわかる。
だがそれでは不満らしくこの町の抜け道から隠れ家的名店まで全部覚えて来いと指示された。
隠れ家的名店が仕事をする上に役に立つのかどうかは置いておいて抜け道を知っておくのはいいことだろう。
そう思って実際に来たものの。
「この町広い上に抜け道が多すぎる……」
地図上では何も無いはずなのにふと横を見ると建物と建物の間に人の通れる道があったり
その抜け道を通ってたら分かれ道にぶつかったりと作業はかなり難航している。
思い返せば亀の家も地図には載っているもののずいぶんと奥まった場所にあった。
この町は設計段階で色々と問題があったのではないかと疑ってしまう。
地図に抜け道を書き加えながら細い道を歩いていき、やっと地図に載っている大通りにぶつかった。
大通りを外へと向かって歩く。最寄の塔は五時。壁の向こうには森が広がっている。
町の東から南西方面まで大きく広がっている森。五時塔はその様子を特に厳重に見張る役割を持っている。
なぜならばその塔の近くには重要な施設があるからだ。
「ここが……大聖堂か」
前面の部分部分にガラスを加工して作ったというステンドグラスが嵌められた大きな建物が聳え立っていた。
ここは何か一つの宗教のために作られたものではなく、どんな宗教の人間でも祈ることが出来る場所なんだそうだ。
特に何かを信仰しているわけでもないソーニャにとってはあまり縁の無い場所である。
しかし有事の際には住民がここに避難できるように防護の結界が張られていると言っていた。
ソーニャは大聖堂の扉を押して中に入る。
人はちらほらいる。それぞれが椅子に座って祈っているようにも見える。
視線を正面に向け、言葉を失った。
一番目立つのは十字架に掛けられた男だ。旧世界でもとても信者の多かった宗教の神様らしい。
それはいいとしてなぜ彼の足元に阿吽の像が立っているのだろうか。
あちらには明らかに悪魔のような像も立っているし、よく見ると小さな狐の像もちらほら。
確かに色々な宗教の人間が祈れる場所とは聞いた。しかし目の前にあるのはどうみても混沌とした空間である。
もしかしたらソーニャが知らないだけでこれも普通のことなのだろうか。
ソーニャは静かに大聖堂を後にした。

118 : ◆7FtGTaokck :2012/01/22(日) 01:50:26.63 ID:uEOduy8K.net
近くまで来たのでついでに五時塔を見学する。
階段を登ったところで見張りの男に会った。
「姉御じゃないですか。どうしたんですか」
「近くを通ったもので見学をしに来たんだ」
そう言いながら塔の外に出て、森を眺めた。
「どうっすか?」
「何も……見えないな」
見晴らしのいいように枝を折ったりしているのかと思ったらそんなことはなく
冬だというのに生命を謳歌する木々の枝でとても視界が遮られている。
それを聞いて見張りがちっちっちっと指を振る。
「違うんですよ。見るんじゃなくて聞くんですよ」
「聞く?」
「そうですよ。ほら、耳を澄まして……」
言われたとおり目を閉じ、耳に意識を向ける。
風で木々がざわめく音。鳥の鳴き声。森は思ったよりか音に満ちている。
その中を明らかに違う音が響く。何かが木の葉を踏んで歩く音だ。
「聞えましたか? あれが獣の歩く音です」
「確かに聞えたが……。魔物かどうかわかるのか?」
「なんつうか聞いてればわかるんですけど魔物の歩き方って明らかに異なるんですよね。
 魔物のほうが静かに早く移動するんです。だからより耳を済ませないと聞き逃しちゃうんですよ」
森を眺めていると一匹の狼を見つけた。ここからではわかりにくいがおそらくあれは普通の獣なのだろう。
狼はじっとこちらを見ていたがしばらくして森の中へと姿を消した。

『五時塔』  以上
ちょっと文が多くなるとすぐに容量オーバーしちゃう

119 :創る名無しに見る名無し:2012/01/22(日) 21:36:44.99 ID:CMJnncJE.net
追いついた
そろそろ戦争の予感?

120 :創る名無しに見る名無し:2012/01/22(日) 22:09:59.80 ID:9xiMi9mU.net
この作品は意外とシカが面白い人である事を書いているw

121 : ◆7FtGTaokck :2012/01/30(月) 05:05:30.03 ID:cxTvTG/Q.net
満月まで残り二日。
今日も空は灰色に覆われている。この様子では本当に月は満ちているのかもわからない。
ソーニャは相変わらず地図を片手に町を歩いていた。最初は綺麗だった地図も今は書き込みだらけになっている。
この町にある十二の塔。それぞれ時計と同じように配置されている。
町の玄関口となる正門があるのは十二時の方向でそちらが大体北方向であると非常にわかりやすい。
大体二時から中央辺りを通り、九時方向に川が流れている。町の主な水源はここから取られているようだ。
三時から八時までは森と隣接しており、五時の近くには避難場所となる大聖堂が立っている。
こうやって見るとこの町は恐ろしく広い。壁沿いにぐるりと歩いたらどれだけの時間がかかるだろうか。
襲撃はどの方向からも来る可能性はある。姿を隠しながら忍び寄れる森に隣接している塔では他のところよりも防御が厚くなっている。
昨日行った時はどうみても兵士は一人だったし手薄のように見えたがいざとなると壁が発火するそうだ。
最初聞いたとき何を言っているかわからなかったが、壁に魔方陣が仕込まれており誰かが手順を踏むと壁が燃え始めるそうだ。
森が焼けるのではないかとかそもそも兵士も燃えてしまうのではないかと疑問をぶつけたが長老会議で
町に侵入されるよりはいいのではないかという結論に達したらしい。恐ろしい話だ。
他にも魔法の知識が無くても使える魔法道具などが多く用意されている。
亀曰く『投げつけるだけで周囲の動植物が死に絶える魔法を内臓した爆弾もあるし』とのこと。
壁が燃える以上はそういう類があってもおかしくない。魔法というのは本当に恐ろしいものだ。
そういえばこの町にあると言う魔法工房にソーニャは未だに訪ねたことが無い。
なにやら聞いた話によると魔法工房は全部で三つあり、それぞれが競い合っているとかなんとか。
しかし『ファウストの狂乱』の大量殺害などの理由により魔法使いの減少。
三つを維持するよりも統合したほうがいいのではないかという話が持ち上がっている。
魔法工房の歴史は町の誕生とも関係しており、歴史を重んじる(らしい)魔術師にとってはどうしても残したいものだそうだ。
地図を指でなぞり、ここから一番近い魔法工房を探す。ここからはそう遠くは無い。
とりあえず行ってみて見学させてもらおう。そうソーニャは考え、工房へと向かった。

そこそこ大きな通りの突き当たりに目的地の魔法工房は立っていた。
工房の名前はそれぞれ色で呼ばれており、ここは青の魔法工房という名前のようだ。
魔法道具の販売も兼ねているため規模は大きく、また事故の際の防止のためか他の建物が隣接していない。
そのため工房近くはちょっとした広場になっており、青の広場と呼ばれている。
店は繁盛しているらしく、買い物客と思しき人間でごった返していた。
軒先に並んでいる商品を眺める。通りに設置されている街灯の縮小版のようなものから
どうみてもただの木の杖にしか見えないものまで種類は多岐に渡る。
人の流れに従いながら店内を歩く。その多くは用途がよくわからない道具だ。
「ありがとーございましたー」
店員の声が聞えた。ずいぶんと若い、いや幼い声だ。魔法使いに年齢は関係ないのだろうか。
姿を確認しようと会計の場所へと近づく。買い物客らしき子どもがいるのは見えるが大人の姿は見えない。
気づけば会計までたどり着いていた。子どもがこちらに気づく。
「いらっしゃいませー……あれ、えーっともしかしてシカ・ソーニャさんですか?」
「ああ、そうだけど……君は?」
髪は茶色く、少々長い幼女。服が大きすぎるためか手が半分服に隠れている。
見た目の割には言葉が割りとしっかりしている。
この町で会った覚えはなかったが向こうはソーニャのことを知っているようだ。
「あ、すみません。初めまして、コト・ロゼッタって言います」
「副会長の親戚なのかな」
「いえ、娘です」
その後、店内にソーニャの驚いた声が響いたのは言うまでも無い。

122 : ◆7FtGTaokck :2012/01/30(月) 05:06:17.14 ID:cxTvTG/Q.net
おっと書き忘れ。
以上  『青の魔法工房』

123 :創る名無しに見る名無し:2012/01/30(月) 05:55:10.50 ID:wDpMEDrx.net
なんという王道ショップw

124 :創る名無しに見る名無し:2012/01/30(月) 18:45:28.12 ID:7x4WkU/G.net


125 : ◆7FtGTaokck :2012/02/06(月) 13:57:34.65 ID:4WYVuOlN.net
コトが二本の筒型の道具を持っている。
それぞれ赤と青の色の違いはあるが、形状は同じものに見える。
穴の開いているほうを上に向け、逆側から出てきている紐を引っ張った。
ポンと気持ちのいい音と共に火球が空へと舞い上がり、速度を失いながら消えていく。
「簡易式の大砲です。距離にもよりますが家の壁に穴も開けることが出来ます」
説明を受けながら、使い終わった筒を手に取り観察する。
火球を発射した割には筒自体は熱くは無い。撃った後にやけどを心配する必要もなさそうだ。
筒の中を覗こうとして、慌てて止められた。
「一応使用後ですが稀に残り火が噴出することがあります。使用後は中に水を入れて、火種を消すのです」
「なるほど。これは使い捨てなのか?」
「いえ、本体自体に破損がなければ何度でも使えます」
コトに魔法工房の見学をしにきたことを伝えたら、自ら案内役を名乗り出てくれた。
店番自体は他の工房の人に任せたので問題は無いようだ。
今は戦闘用で遠隔攻撃が可能な道具の説明をしてもらっている。
「こっちの青い奴は何を発射するんだ?」
「氷塊です。ただこちらは撃った後も残るのでここで撃つと危険です」
先ほどの火球の大きさからすると握り拳二個分ぐらいの氷が出てくるのだろう。
壁上から撃つことを考えると威力は十二分だ。
「こうしてみると結構武器に使えそうな物も置いているな」
「一応魔法工房は最初戦闘補助の道具を製作する目的で設立されてますので。これでもまだゆるいほうですよ」
「というと他の魔法工房はもっとすごいと」
「はい。工房にもそれぞれ特色があります。青は一般人用も戦闘用も扱ってますがどちらかというと一般人用です。
 赤は完全に戦闘に特化した工房ですし、緑は元から存在するものを利用することに特化しています」
「元から存在するものを?」
「そうです。例えば……」
いくつか並んでいた道具の一つを取る。鳥を模った木の置物だ。コトの手のひらに収まる程度の大きさしかない。
「おでこにこれをあててください。その後、両目を瞑ったまま鳥を手のひらに乗せるのです」
言われたとおり渡された鳥をおでこにあてる。体の一部が鳥に流れ込んでいる気がする。
その後、目を瞑ったまま鳥を手のひらに乗せた。すると暗闇のはずであった視界に町の映像が映る。
鳥がソーニャの手のひらから羽ばたく。視界がどんどん上昇していく。
「鳥と視界が共通しているのか」
「正しくはソーニャさんの目が鳥に移っている状態です。とは言っても目を開ければ元の視界に戻ります」
瞼をゆっくりと開ける。一瞬視界が白くなった後、ソーニャの本来の視界が戻ってきた。
空から鳥が降りてきて、伸ばした手のひらに静かに止まり再び木へと戻る。
「主に偵察用に使われる使い魔の一種です。魔術の心得がなくても使用することができ、
 また核が磨り減るまでは再利用も可能なので重宝されますが、高価格で使用時本体が無防備になる欠点があります」
「ということは魔術師は使わないのか」
「はい、少しでも心得があれば使い魔の一匹くらいは簡単に呼び出せますし、本体が無防備になることもありません」
先ほど見た筒も魔術師ならば使わない道具ということだろう。
自衛団には魔術師や魔術が少しだけ使える者もいるがおそらく多くの人間は魔術を扱うことは出来ない。
剣術も魔術も熟練の技を得るには長期間の鍛錬が必要だ。どちらもこなす達人というのはソーニャは見たことが無い。
ただかつてのソーニャの父は好きなときに上空からの視界を望むことが出来るという魔術を体得していた。
剣術はさっぱりであったが弓の達人であった父はその能力を使い、獲物を確実に仕留めることが出来た。
だが父に出来た魔術と言われる類はそれだけで生まれつき得ていたという天賦の才だという。
「話が変わるが魔術というのは生まれつき習得していることはあるのか?」
「はい。あなたのお父様がそうだったように生まれつき強力な魔術能力を持って生まれることが稀にあります」
どうやらソーニャの父は結構有名なようだ。稀な人間のようだし魔術師の間では広く伝わったのかもしれない。
「大抵の方は学習して習得します。ソーニャさんもどうですか? 少しくらいならわたしでも手ほどきできますよ」
「それではお願いしようかな」

126 : ◆7FtGTaokck :2012/02/06(月) 13:58:04.27 ID:4WYVuOlN.net
魔術というのは未だに実態がよくわからないが使えるものは使えたほうが後々便利に違いない。
今までの振る舞いから見てもコトは子どもながら十分な知識を持っていることはよくわかった。
彼女を信じ、委ねてみよう。
「それではまず、魔法の成り立ちから話しますね」
その後、コユキが迎えに来るまで魔法や魔術についての話を数時間聞くことになった。
実践的なものからやるものと思っていたが最初はこういうもののようだ。
結局、話だけを聞いて宿に戻ることになった。

以上 『コトの授業』

127 :創る名無しに見る名無し:2012/02/06(月) 16:40:02.45 ID:H8g8yy6M.net
乙。すごくちゃんとした魔法屋だw

128 :創る名無しに見る名無し:2012/02/10(金) 15:59:48.67 ID:KXdyames.net
流行りの箱ドットで俺の嫁
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite?cmd=upload&act=open&pageid=455&file=%E7%AE%B1%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%88%E3%81%97%E5%AD%90.png

129 :創る名無しに見る名無し:2012/02/10(金) 17:18:37.88 ID:UtJgDb7a.net
はさみさん乙

130 :創る名無しに見る名無し:2012/02/10(金) 17:24:59.69 ID:hp0q+9Hm.net
今はこういうのが流行ってるのかw

131 : ◆7FtGTaokck :2012/02/12(日) 04:05:12.08 ID:jOhWwdpc.net
満月の前日。
相変わらずの曇天が続いている。お昼時を過ぎた頃からは雪までちらほらと降り始めた。
前回は満月の襲撃に備えての用意などはしなかったが今回はどこか慌しい。
最もあの時は床の修繕をしていたので本部に入ること自体が少なかった。
北の国の侵攻が本土まで到達しているという情報は自衛団のみならず町の人間にも広まっているせいか
普段よりも町全体に活気がなく、表情にも影を落としている。
「そんな深刻になるものでもないと思うがね」
亀は欠伸をしながらいつも通り気だるそうに机に突っ伏している。
「しかし本土が侵攻されている現状では警戒したほうがいいだろう」
「ここは本土と海挟んでるしそもそも船を付けられる場所なんてほとんどないから
 仮に来ても最初に襲撃されるのは港町のほうだしな」
この島は海と面している部分が絶壁であることが多く、天然の要塞のような形になっている。
そのため唯一まともに船が着けられる場所は島の玄関口となるためそこにある港町が最初に襲撃される。
「そうか。つまり危険性で言えば港町のほうが高いわけか。そうなれば港町のほうにも
 少し人員を回して警備の強化を……」
「ソーニャさん。落ち着いてください。他のところまで気を回せるほど余裕はありませんよ」
横で武器の手入れをしていたコユキがソーニャに突っ込みを入れる。
やはり事前に襲撃が来ると知らされているとなんとなくソーニャも落ち着かない。
よく考えれば空から襲撃された場合は港町とは関係なく、ここも襲撃される可能性がある。
だがしかし本土への侵攻が遅かったと言うことは空からの襲撃はないということなのか?
でも魔物どもが船に揺られてやってくるというのもあまり想像がつかない。
「ソーニャ、おい、ソーニャ!」
「え、あ、すまない。ちょっと考えに没頭していた。なんだ?」
「……本番に弱い人間だろ」
図星である。村にいたころもよく本番近くなると落ち着きをなくし、失敗していた。
ソーニャがうぐぅと言葉にならないものを口から漏らして固まっていると亀はため息をついて首を振った。
「少し体を動かしていたほうが気が紛れるんじゃないか?」
「そう……だな。そっちのほうがいいな。うん」
「じゃあ早速ビゼンに連絡を」
「いや待て。何を考えているんだ。副隊長と手合わせしようものなら……」
「冗談だよ。あいつはお前と違って忙しい」
「うぐぅ……」
なんだか亀の暇を潰すのに弄ばれている気がする。
というか副隊長にしろロゼッタにしろ忙しそうに仕事をしているのに我々はこれでいいのだろうか。
こうしている間にもコユキは武器の手入れをしているのだ。いいはずがなかろう。
「よし、亀。なにか仕事をしよう。お互い一応組織の長なわけだし何かやったほうがいいだろ」
「実質的な長がビゼンとロゼッタにあるのは周知の事実だし別にさぼってても問題ないよ」
「いや、それはそれで別の問題があるな」
「仕方ないですね。ソーニャさんも銃の手入れします?」
コユキに一丁の銃と白い綿の付いた棒と布を渡される。
「これをですね。こうして……」
手馴れた捌きで銃を解体した後、ひとつひとつ綺麗に拭きまた戻す。白い綿は筒の中を拭くのに使うようだ。
お手本を見せてもらったので試そうとしてみるがうまくいかない。
「これは……想像以上に難しいな」
「私も覚えるのに苦労しました。一人で分解出来るようになるまでに一ヶ月かかりましたね」
「今覚えてどうこう出来るものでもないな……」
諦めて道具をコユキに返す。

132 : ◆7FtGTaokck :2012/02/12(日) 04:06:57.03 ID:jOhWwdpc.net
「私の実験に付き合ってもらうことも出来るが死んだらまずいしな……」
「死ぬかもしれない実験なんて満月前日じゃなくてもお断りだ」
「大丈夫だよ。死ぬ前には止めると思うから。多分」
そういえばこの魔女と最初に会った時もよくわからないものを呼び出してコユキが悲惨な目に合っていたな。
ふと横を見るとコユキが少し震えている。可愛そうに。
「簡単な実験なら死ぬことはないし、あんたの鍛錬にもなるし、もしかしたら防衛に使えるかもしれないしで
 いいことづくめなんだけどどうかな」
「それは確かにいいな」
先ほどよりかコユキの震えが大きく早くなる。顔を覗くと目も虚ろだ。
「コユキ、大丈夫か?」
「ソーニャさん。だめです。汚されます。ひどいです。ねばねばの。粘液が」
「あれはちょっと強いやつだったね。今度はもっと弱いにしよう」
「そういう問題じゃないんです!!」
コユキが机を叩き立ち上がる。どこかで見たような光景だ。
「先生はいつも実験と言って私に触手うねうねの生き物と戦わせて! しかも素手で!」
「鍛錬だよ。剣持ったらあっさり殺しちゃうじゃない」
「だからって殴ってもぶよぶよしてて意味がないわ、掴もうにも場所がないし伸びるしねばねばだし。
 あんなのに素手で勝てるはずないでしょ!」
「ビゼンと副会長は素手で勝ったよ」
「鉄を素手で曲げたことがある人間と魔術師じゃないですか。私にそんな力はありません!」
「ということでソーニャも挑戦しない?」
「嫌だ」
どういうわけかもわからないしそもそもこの話を聞いて挑戦するのは対処法が思い浮かんだ人間か変態ぐらいだ。
当然ながらあの二人は前者に当たる。というか副会長の鉄を素手で曲げたという事実に驚きだ。
だから鉄骨折りなのか。
「ソーニャが戦わないなら自動的にコユキが戦うことになるけど仕方ないね」
「戦うことは決定事項なんですか! せめて武器をください!」
戦うことを拒否しないあたり、コユキは後者……いや、頭が上がらないのだろう。
しかしこのままではコユキが再び触手に蹂躙されることになる。
それは現場を見た人間からすればとても可愛そうだ。
「わかった。私が相手しよう」
「やる気になってくれて嬉しいよ」
「ああ、ソーニャさん……。自分の身かわいさにあなたを売ってしまう私をお許しください……」
「構わないけど……嫌な言い方しないでくれ」
「それじゃあ移動しようか」
「そうだな。ある程度の広さがあって汚しても問題のない部屋となると……」
「噴水広場」
「えっ」

以上 『満月前夜、本部にて』
なかなか1レスで収まらない。

133 :創る名無しに見る名無し:2012/02/13(月) 02:11:27.91 ID:9Ninezpz.net
何してる早くコユキvsにゅるにゅるの完全版をこっそり地k(ry

134 :影武器姉妹 バレンタインちょいネタ ◆KazZxBP5Rc :2012/02/14(火) 23:46:59.72 ID:Bgd9GAUt.net
夕暮れの無限家に、玄関のドアを開ける音が響く。
「ただいま。」
帰ってきた彼方の表情は暗かった。
桃花は気になって訊いてみる。
「どうしたの?」
「本命にフられた。」
「あー……。」
今日は2月14日。世間ではバレンタインデーである。
彼方はこれを機会に憧れの男子にアタックを試みていたようだ。
「『俺、大人しい子が好きなんだ』って、失礼じゃない?」
桃花は苦笑いしながら、キッチンの方へ。
彼方がコートをハンガーに掛けてリビングのソファに腰かけると、ちょうど桃花が戻ってきた。
「ほら、これでも食べて元気出して。」
手にしていたのは、やたらと手の込んでそうなチョコレートケーキ。
「姉さん……。」
彼方は驚きに目を見開き、ケーキと姉を交互に見比べる。
桃花の顔には優しい微笑み。
しばらくして、ケーキを受け取った彼方は、伏し目がちに、言いにくそうに言った。

「他にあげる人いないの?」
「うるさい。」

ちゃんちゃん♪

135 :創る名無しに見る名無し:2012/02/14(火) 23:47:47.55 ID:Bgd9GAUt.net
これだけ
本編待たせててごめんね…

136 :創る名無しに見る名無し:2012/02/15(水) 04:17:47.66 ID:8ASK5vWF.net
緩い姉妹だなw

137 : ◆7FtGTaokck :2012/02/19(日) 04:08:49.67 ID:p2W8jQrJ.net
噴水広場はいつもよりかは静かであるが人通りはある。
当然のことながら広場の一角に縄を引いてれば公衆の面前に晒されることになる。
「なぁ、亀。やめないか?」
「何を呼ぼうかな……。あんなのやこんなのや……」
だめだ、この魔女聞いちゃいない。分厚い本を楽しそうに捲っている。
すでに言わなきゃ良かったと後悔しているがもうどうしようもなさそうだ。
縄を引き終わり場所を確保して、再び亀に声をかける。
「準備できたぞ……。って聞えないよな」
「え? ああ。じゃあやろうか」
「亀、やめないか?」
「ちょっと待って魔法陣書くから」
「聞けよ!」
「そうだね。ちょっと強いの呼ぶから武器持っててもいいや」
この魔女は何に対して受け答えしているのだろうか。甚だ疑問だ。
もしかしたらソーニャの知らないだけで近くに見えない誰かがいるのかもしれない。
ちなみにコユキは悲しそうな目でソーニャを見送ったのでここには亀とソーニャと数人の野次馬しかいない。
「書けたから呼ぶよ。正面に立って」
亀に指示されて亀の対面に立つ。亀の足元にはよくわからない絵が描かれている。魔法陣は何度見ても子どもの落書きにしか見えない。
円の縁に立ち、本を捲りながらぶつぶつと呟いている。
亀の足元から円の線が静かに光り始める。線を伝い、円を描き模様をなぞる。
ばたんと亀が本を閉じた。同時に円の光が失われていく。何も変化は無い。失敗したか?
と、思いきや円の中心あたりから何か液体が出てきた。
獲物を長い剣に変え、両手で持つ。
何かが飛び出てきたのを切り落とす。どうやら細長い触手が出てきたようだ。
液体の勢いが増すにつれて、触手の数が増えてくる。体に触られる前に切り落とす。
一際水の勢いが増したと同時に中心から水を滴らせながら、大きな触手が現れた。
先ほどまでの雑魚とは比べ物にならない。ソーニャが両手で抱え込めないほど太い。そもそも抱え込まないが。
触手は先っぽのほうに首がついているかのように曲げてこちらを見ている。露出している口には意外なことに歯が無い。
つまり獲物を丸呑みするという摂取方法を持つということだ。あのぬめぬめに食われたらと思うと死にたくなる。というか死ぬ。
よくみると太いやつにだけ頭というべきか口というべきかわからぬ場所に赤い塊が付いている。
先ほどから切り落としている触手は切っても切っても先から再生していくのできりが無い。
おそらく元を倒さなければ延々と再生してくるのだろう。ならばあれを狙ってみるのも手だ。
だが問題としては太い触手の頭はソーニャ二人分ほど上に部分にあり、届かない。
前に出て、向かってくる触手を切り進む。届かないならば切り落としてしまおう。
剣の間合いに入り、横に切る。が、剣は太い触手を切り落とすどころか表面を浅く切り込むだけだった
想像以上に堅いことがわかり、剣を抜こうとするがしっかりと挟まって抜けない。
小さな触手が剣に群がっていき、このままでは獲物を捨てることになる。
そのとき、背筋に冷たく、なおかつどろどろとした何かが滴り落ちた。
獲物の刃を引っ込め、その分逆側に出す。そのまま手や足に伸びてきた触手を切り払い、大きく距離をとる。
さきほどまでソーニャがいたところの頭上には大きな触手が首をもたげていた。
おそらくあのまま触手でソーニャを押さえ込み、捕食しようとしたのだ。奴の口から垂れる涎が背中に入ったのだろう。
急速にお風呂が恋しくなってきた。しかし今は目の前のそれを仕留めねばならぬ。いいや、殺さねばならぬ。
大きな触手が緩慢な動きで再び頭を元の高さへと戻す。切り落とすのがだめならばどうにかして頭を下ろさなければいけない。
わざと捕食されかけるという手もあるが生理的に無理だ。
そもそもきっちりと鎧を着て、さらに下に服を着てるのに背中に涎が落ちた時点でこいつは何かしらのよからぬ力を持っているに違いはない。
一応手の届く範囲で背中に手を伸ばしてみる。強い酸性の液体ではないようだ。涎に見せかけて実は服の裾から触手が入っていた?
ぞっとする。あれに一度捕まえればわずかな隙間に触手が入りこみ、ソーニャを捕獲するだろう。
もっと単純に。やり方は簡単に。あれを仕留める方法。

138 : ◆7FtGTaokck :2012/02/19(日) 04:09:40.00 ID:p2W8jQrJ.net
獲物が左手の中で細い棒状に変わっていく。それは弧を作り、端をさらに細い線が渡る。
右手には同じく細長い先端が尖っているものに作り変え、左手の武器に添え、線を引く。
かつて父に教えてもらった獲物。剣術が苦手だった父はソーニャにこの技術を遺していった。
右手から放たれた白い矢は空を切り、赤い塊を打ち抜く。
触手が断末魔をあげるかのように大きくしなり、そして地に伏し、動かなくなった。
やがて触手が霧のように崩れ、そこには白い矢が一本だけ残った。ソーニャがそれに手を向けると矢は吸い寄せされるようにその手に戻る。
今までは形を変えて攻撃するのがこれの使い方だったので手元から話すということをしたことがなかった。
弓矢に変化させて使う。思いつきそうでなぜかしなかった攻撃方法。これは他にも応用できる技術かもしれない。
いつの間にか集まっていた見物客に頭を下げ、残念そうにしている亀の頭を思いっきりぶん殴った後
ソーニャは明日に備え、宿に早足で戻った。決して背中が気持ち悪かったわけではない。

以上 『満月前夜 触手戦』

139 :創る名無しに見る名無し:2012/02/19(日) 04:24:31.89 ID:u1Qj4d/s.net
ぶん殴ったんかwww

140 : ◆7FtGTaokck :2012/02/26(日) 04:32:06.30 ID:INZEBxYC.net
満月当日。先日よりちらほらと降っていた雪は夜中より強さを増し、正午を回る頃には視界を遮る吹雪になっていた。
この事態を見て、全ての監視塔に簡易式の暖房を配置。また警備にあたる人間には懐炉を支給という手はずになった。
それを配布して回るのが
「お疲れ様です。懐炉と飲み物持って来ました」
ソーニャの役目となった。
布の服を着て、鎧を装備しさらにその上から分厚い布を纏ったその姿はまさしく不審者そのもので
監視塔に付くたびに被った布を脱ぐはめになったのであった。
最後の塔にたどり着いたときには既に日の入りの時間に差し掛かるころになっていた。
「姉御も大変ですね」
荷物を受け取った兵士がソーニャを労わる。とはいえこれがソーニャに出来る仕事。
戦闘ならともかく吹雪の中の警備はやったことがない。状況が状況だから素人には任せられないという判断なのだろう。
だがソーニャに安心して任せられる日は来るのだろうか。
例え吹雪が止んだとしてもこの町を覆う不安は取り除かれることはない。
今月は来なかった。では来月は? 満月を待たずして来るのではないか?
本土侵攻という情報はそのような不安を煽るには十分すぎる素材なのだ。
その不安をわずかでも払拭するためにも今晩の襲撃には当然ながら防衛しなければならない。
本土の侵攻についてはソーニャたちの手の届く範囲の話ではない。
今は目の前の手の届く範囲にあるものを守らなければならない。そのための努力も惜しむ気は無い。
「私には警備は力不足で出来ない。だからあなたたちには頑張ってほしい」
「お任せください!」
敬礼と頼もしい言葉が返ってくる。ソーニャの顔が自然に緩む。
ここは大丈夫だ。兵士たちを信じよう。それもまたソーニャに出来る仕事なのだから。
再び布を被り、防寒装備になって塔を後にする。
いつもよりも時間をかけて本部に戻り、防寒具を脱いで暖炉の傍の椅子に座る。
また外に出るにしても一度冷えた体を温めといておいたほうがいい。
暖炉の火を眺めていると後ろから飲み物を差し出された。
湯気が立つ暖かそうなお茶を受け取り、振り向くとビゼンが立っていた。
「ありがとうございます。副隊長」
「相変わらず堅苦しいやつだな。というかお前が上司なんだからビゼンって呼び捨てにしろよ」
「さすがに出来ませんよ」
ビゼンも自分の飲み物を手に隣の席に座る。いつもの武器は携帯していない。
暖炉の薪がことんと割れる、
「こうやってサシで話すのはずいぶんと久しぶりだな」
「会話自体はしてるんですけどね。大抵は業務連絡ですし」
「今もあんまり話してられねぇしな」
「……吹雪に乗じて何かが来ると?」
「来る。先月とは比べ物にならないものが」
想像だにしない断言だったので思わず腰を浮かして聞き返す。
「何か兆候でもあったんですか?」
「いや、勘だ」
ずっこけそうになるのを抑えつつ椅子に腰掛ける。
「そもそもこの吹雪ですものね。空からの侵入は当然無理ですし……」
「ドラゴンだってこの吹雪じゃ冬眠でもしてるだろうな。あいつらも一応爬虫類だろうし」
「あれを爬虫類と分類していいのだろうか……」
「狼どもも冬眠してくれりゃいいのに毎月毎月元気なもんだ。
 どうせあいつらが来たって正門をぶち破るか壁を登ってくるぐらいしか侵入の手立てはないだろうしな」
「じゃあ安全じゃないですか。今日は」
ちっちっちと人差し指を振る。
「壁をよじ登るには難しいが木をよじ登って侵入しようとしたことはあるからな。
 もしかしたら地面を掘って侵入とかもあるかもしれないぜ?」
「まだ壁をよじ登るほうが現実的そうな話ですね」
木をよじ登ると聞いて先日訪れた監視塔を思い出す。
あそこは塔の間を繋ぐ通路にまで森の木々が迫ってきていた。
「塔に隣接している森の木を切り落とせばよじ登ってくることもないのでは?」
「あー、お前知らないのか。あの森にいるやつ」
「狼とかイノシシなんてのは聞きましたけど」
「それはまだいるやつだな。昔、あそこで化け物が見つかってな」
「化け物?」
ビゼンがにやりと笑って答える。
「巨人だ」

141 : ◆7FtGTaokck :2012/02/26(日) 04:33:19.69 ID:INZEBxYC.net
以上 『満月の時』

ぴったし六十行だったのでタイトル入れられなかった。
コテのとこにいれようかな・・・

142 :創る名無しに見る名無し:2012/02/27(月) 00:08:44.08 ID:E5snxvx4.net
シカなんでもやる子なんだなw

143 :創る名無しに見る名無し:2012/02/29(水) 23:13:05.48 ID:KvlbPpGV.net
あと一か月あるけどうpできるのは今日までらしいので
http://loda.jp/mitemite/?id=2829.jpg

144 :創る名無しに見る名無し:2012/03/01(木) 04:27:56.21 ID:S/DDf3Kz.net
おる太逃げてー! 超逃げてー!!

145 : ◆7FtGTaokck :2012/03/04(日) 04:13:51.33 ID:GcbC9WC4.net
体長は人よりも数倍大きく、毛は生えておらず全体的にでっぱりが少ない。
森に生息する最大の脅威。それが巨人。
「この町にある防衛設備。つまり壁だとか空を覆う魔法障壁も全部本来は巨人対策で作られたんだ」
「壁ならまだしも空の壁も? まさか羽でも生えていたのか?」
全体的にのっぺらぼうの巨人が鳥の羽を生やして飛んでいる図を想像する。
これは気持ち悪い。
「あいつらはその辺の岩だとか木を引っこ抜いて投げるんだよ。それを防ぐための障壁だ。
 んな気持ちの悪いもん想像させるな」
なるほど。巨大な体を持っているならばそのくらい造作もないことだろう。
そして町にしてみればそれは恐怖の一言だ。
「が、最も壁だとか障壁だとかが完成する前に殲滅したって話だけどな。
 元から数も多くなかったんだろう。今よりも魔術が発展していない時代にそんな化け物を殺してきたんだ」
ビゼンがどっこいしょと立ち上がる。話はこれで終わりのようだ。
「じゃあ、木を切らない理由というのは……」
「投げてきたものを防ぐために伸ばしっぱなしにしたわけだ。それがどのくらい効果があったかは知らんがな」
「ふくたいちょ……ビゼンはまだ生まれなかったんですか?」
「おう。なんせ巨人殲滅は百年ぐれぇ前の話だからな」
想像を超える途方もない数字を出された。昔というレベルじゃない。
魔術の発展は日進月歩だ、とかなんとか亀が言っていたし今は簡単に出来ることも昔は苦労したのだろう。
ビゼンは欠伸をかみ殺しながら適当に挨拶をして出て行った。
今よりもはるか昔から狼などとは雲泥の差がある化け物を殺してきた。
あの言葉の続きは「だから狼程度でびびる必要なんてねぇんだよ」という励ましの言葉なのかもしれない。
いや、違うような気がする。ビゼンがソーニャに励ましの言葉を投げることなんてない。
どちらかというと「狼も撃退出来なかったらお前当分飯抜きだな」のほうが言いそうだ。
本当にソーニャがいる防衛していた場所から狼が侵入したら色々言われるだろう。
それどころか期待はずれの烙印を押されて首になり強制送還されるかもしれない。
父の墓前でなんと言えばいいのだろうか。友人たちにどんな顔をして会えばいいのか。
考えるだけで胃が痛くなってきた。
「あー、ソーニャさんやっと見つけた。どこ入ってたんですか……なんだか顔が青いですけど」
ビゼンと入れ替わりで入ってきたのはコユキだった。外から帰ってきたばかりらしく衣服に雪が付いている。
「いや、気にしないでくれ。少し気に病んだだけだ。それよりか何か伝えに来たのだろう」
「そうでしたそうでした。ソーニャさんは襲撃時の応援要因として本部に待機の予定だったんですけど
 先生がこっちで待機してほしいそうです」
「あそこなら移送用の魔法陣もあるし待機するにしてもあそこのほうが応援にすぐ行けるな」
「何か渡したい物があるそうです。あと、ここにも魔法陣ありますけどね」
「ということはここから亀の家にも移動出来るのか」
「いえ、先生の家のは一方通行専用なので無理です」
あの糞魔女が。ソーニャは心の中で悪態をつき、吹雪に揉まれながら亀の家へと向かった。

「で、なんだ。吹雪は強くなるばかりだしここから本部に歩いて帰れとか言ったら殴るぞ」
「おー、怖い怖い。せっかく貴重な狼どもの特効薬を作ったのに」
「特効薬? なぜもっと早く言わないんだ。早くみんなに分配しないと」
「出来たのついさっきだし試作品だし数がないし……」
そう言いながら亀は布袋が小さな塊を取り出した。
銀色の光沢をしている銃弾だ。見たところ普通の銃弾に見える。
だがソーニャの知っている銃弾は黄色に近い色をしている。
「これは……特別なもので作った銃弾か」
「古来より狼に効くっていう銀で出来た銃弾だよ」
「なぜもっと早く作らなかったんだ」
「この辺りでは銀は採掘されないからね。
 本土との交流も少なくなってきた今では貴重品なんだよ」
そしてどうにか手に入れて出来たのがこの一発の銀の銃弾か。
「これは君が持っていけ。あと、銃も」
「銃は使ったこと無いのだが……」
「だから絶対に無駄打ちしないでね。高いから」
「……どのくらい?」
「君の先月の給料の一年分以上」
ソーニャは銃を赤子を扱うかのように慎重に懐へと仕舞った。

以上 『満月の時2』

146 :創る名無しに見る名無し:2012/03/04(日) 04:21:55.55 ID:lTWuBxW3.net
賃金貰ってたのかw なんか物品支給的なイメージだったがw

147 :創る名無しに見る名無し:2012/03/04(日) 13:08:14.21 ID:SEKy1Rrz.net
父上様母上様 三日とろろ美味しうございました。干し柿 もちも美味しうございました。
創発の作家様 面白いSS楽しうございました。
創発の絵描き様 美しい画像楽しうございました。
創発住人の皆様 雑談 誤爆楽しうございました。
創作発表板の皆々様 毎日の創作楽しうございました。又いつもご利用有難うございました。
他板の皆様 小事に利用して戴き有難とうございました。ZIP楽しうございました。
皆々様お気を煩わして大変申し訳ありませんでした。
串子ちゃん、アジョ中君、裏刀さん、よし子ちゃん、桃花ちゃん、
倉刀さん、あんてなさん、柏木さん、ハルトシュラー閣下、
夕鶴さん、ジークフリード君、彼方ちゃん、雛乃ちゃん、
クリーシェさん、田中翁さん、うるふさん、 楽しうございました。
父上様母上様 おる太は、もうすっかり疲れ切ってしまって役目を果たすことが出来ません。 何卒 お許し下さい。
気が休まる事なく御苦労、御心配をお掛け致し申し訳ありません。
おる太は父母上様の側で暮しとうございました。

148 :創る名無しに見る名無し:2012/03/04(日) 17:27:41.46 ID:VB+eh74N.net
自殺する時の遺書みたいじゃねーかw

149 :創る名無しに見る名無し:2012/03/05(月) 10:05:14.97 ID:gzCnNo1A.net
彼女が追い詰めてしまったのか……
おや、客かな

150 :創る名無しに見る名無し:2012/03/05(月) 13:59:09.14 ID:GztDhjhp.net
>>148
みたいというか、元ネタは遺書そのもの。
円谷幸吉だったっけ?

151 :創る名無しに見る名無し:2012/03/05(月) 17:01:02.83 ID:KAasJSrX.net
>>150
マジかwwwww

152 :創る名無しに見る名無し:2012/03/08(木) 12:02:00.98 ID:/pZi7U5/.net
  
  / ̄`/ ̄ヽ
  | 〇 | 〇 /
  \¥¥/
  / ̄ ̄\
 /●),●)  \-―-==、
 | (,、,、)ヽ    `ー--―--==、
 | '-=-'   , , =--―' ̄`-゙`
  \  /  ノ_
   `(  /_ ` 二ニ^i
    | /   ̄´  ∪
    | /
    m/

153 :創る名無しに見る名無し:2012/03/08(木) 17:14:37.36 ID:FluYsYqU.net
なにこれwwwwwww

154 : ◆7FtGTaokck :2012/03/11(日) 16:19:22.57 ID:5deJ0BIw.net
「こちら十二時塔。狼の群を確認しました」
九時を過ぎた頃。連絡用に設置されている筒からそんな報告が届いた。
「数は……正確にはわかりませんが百はいるかと」
「そんだけいれば積み重ねれば壁も越えられるかもな。一応警戒しとけ」
本部で待機しているビゼンが冗談っぽく言いながら指示を飛ばす。
兵士はそれに苦笑しながら了解と答えた。
「狼たちはどのぐらいの数がいるんだ?」
机に広げた地図に落書きをしていた亀に質問する。やる気が見られない。
「ちゃんと調査したわけじゃないけどだいたい三千ぐらいはいるんじゃないかな」
「ということは今正面門前にいる狼も一部でしかないということか」
「百匹程度じゃ壁は突破出来ないしどう出るかな」
地図の正面門前によくわからない絵と百という数字を書き足す。
もしかしてこの蛸の出来損ないみたいなのは狼のつもりなのだろうか。
この禍々しさは海に住む支配者だと言われても納得してしまう出来だ。
「こ、こちら十二時塔。先ほどの数を……訂正します」
先ほどと違い明らかに声が震えている。耳を澄ますと小さく叫び声のようなものが聞える。
「丘が……狼に埋め尽くされています。百どころじゃありません。五百、いや検討もつかないほどいます!」
「進軍してるのか?」
「いえ、こちらからの攻撃範囲少し奥で待機しています。え、ちょっと待ってください」
兵士の声が途切れる。筒の傍で会話しているらしく何かが喋っているのが聞える。
「狼の群の中に二本足の魔物が二匹います!」
「ビゼン。十二時塔に向かって」
「ああ。わかってる」
黙って聞いていた亀が指示を出す。
二本足で立つ魔物……。以前亀が言っていた狼の長のことのはずだ。
しかし二匹もなぜ。
「こちら四時塔。狼の群を目視しました。数はかなり多いです」
「こちら七時等。同じく狼の群を確認。一体何匹いるんだ……」
立て続けに入る二つの塔からの報告。
三時から八時までは森に隣接している塔なので今回報告の入った塔はどちらも視界が悪い。
そのせいで発見が遅れたか、もしくは同時にわざと姿を見せたのか。
「よし。壁を点火しよう。それと壁近くの木は全部切り倒して」
まさかあれを使うのか。
筒に入らない程度の声量で亀に問いかける。
「いいのか。森が大炎上するぞ」
「今使わずにいつ使うか。こんだけ大群が押し寄せるなんて予想してなかったし。
 いくら壁側は守備が堅いと言っても相手出来るのも限界がある」
筒から聞える了解の返答を聞いた後、亀はソーニャのほうに振り返る。
「きみは四時塔に飛んで防衛に当たってくれ。
 七時塔にはロゼッタを送って僕も正面へ行こう」
「そうだ、この銃弾はそっちが持っていったほうが……」
懐が銃を取り出そうとしたソーニャを亀が制止する。
「こうなった以上何匹上位の狼がいるかわからない。それは四人の中で一番弱い君が持っていけ」
「ひどい言われようだが了解した」
ロゼッタに連絡をした後外套を纏い、屋上へと向かう。
吹雪は先ほどより若干弱くなっている、気がした。普段は眺めのいいここも今はただただ白い。
魔法陣に積もっていた雪を足で除けていく。
「狼たちは何故人間を狙うのだろうか」
「本能に近いものだろう。もしくは命令か」
「仮に今、北の国の魔術師を殲滅したら狼たちはどうなるんだ?」
「わからないね。魔物化が解けるかも知れないし、今まで通り人間を襲うかもしれない。だけどね」
亀がソーニャの肩に手を置く。
「戦闘前に余計なことを考えるな。自衛団団長ならばこの町を襲うものは殲滅しろ。それが仕事だ」
「……ああ」
吹雪を貫いて狼の遠吠えが聞える。魔法陣は光を帯び、起動した。

以上 『満月の時。戦闘開始』

155 :創る名無しに見る名無し:2012/03/12(月) 23:55:02.79 ID:DqvrvFtw.net
ttp://dl3.getuploader.com/g/6%7Csousaku/539/創発147.jpg

156 :創る名無しに見る名無し:2012/03/13(火) 00:04:13.40 ID:QW0OJxne.net
なにをのんでるんすかwww

157 :創る名無しに見る名無し:2012/03/13(火) 04:38:45.68 ID:g1RRck8K.net
>>154
真っ当な作品過ぎて気のきいた事言えないけど期待。亀はなんか余裕っぽいけどw

>>155
それはどこで手に入るんだwww

158 :創る名無しに見る名無し:2012/03/13(火) 21:19:27.32 ID:0hTa3r+q.net
北海道に帰省した時にワイン売り場で思わず二度見したので、いつかこのネタ
で描こうと思っていましたが、こんな形になろうとは…

「おたるワイン」で検索してくださいませ。


159 :創る名無しに見る名無し:2012/03/13(火) 22:09:41.26 ID:kdCrx43n.net
        ,   / `ー---─一''"~´ ̄`ヾヽ
      i  i| ilレ           ミミミミ''"`─- 、
    , .,i! i !/i  i         ミミミミヾ   ミヾ ゙ヽ
    .i  ,!i l.| ' i  ゞ       彡ミミミヾ   ミヾヾ  `ヽ
  ,  i!、k ヽ、 ヽ          彡ミミ   ミヾヾ    ゙
  li l ヾ、    ヾ        _,,==  ミヘベ
  , |i、ヽ  ヽ、     ヽ             ヾ ゙
  !ヾ ヽー- _ ー- ,,__         〃ヾ
  ヾヽヾ ‐- ,,___             /ソツ、ヾゞ、ヾヾ
   ` 、`ー- 、...,,─--  __,,     彡ソソ ヾゞゞミミ
  ヽ.、 `ー --- .,,─--  __,, 彡ソソノ,;  ,,-弋ミミミミ
    \ ゙ー‐- 、..,,,____,,. --彡彡彡'"'",ィ'-====、ヽミミミ
      ``,.-、-─r,=====、:;;,,::;;::f" ,.'i´ o`i 冫ヽ ]-'´ ∧∧
         ゙iヾ ニill 〈 (.O)ーi` ̄´i  _`_-_'....'  li ゙_/   ヽ
        ゙i   ill::::::::;ー-‐γ'i'::l,⌒ヾ`)::::::::::;;''  〃u \
        ゙i  :ill::::::::;;  ソ::::;i,、,  ヾ:::::::;''' _,,ノ'  ,r-|
         ゙i、  ゙`‐=='"..::::::;i,, .,,,  ゙゙'''''"~´    l_| つまり  おる太君は
          ヾ.イ        '''"..-一、   u   .lヽ
            ヽ     :;;l ̄´ _,,,...,.ヽ     ,イ_〉   北海道出身だったんだよ!
             ゙i. u   ;;iェ'´ i'  ヾト!    ./:! \
              ゙!.    :;;Fi、   ,,.ツ   ./;:;:  ゙i
             ./゙i ヽ   ゙;ヽニ二ニ-'´  ./ :;:;  / ヘ
            / i  ヽ    :..,,-‐' /::;'  ;:; /  /∨\/

160 :創る名無しに見る名無し:2012/03/13(火) 22:20:08.77 ID:+rc1jAuu.net

      _人人人人人人人人人人人人人人_
        >    な なんだってー!!    <
        ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
        _,,.-‐-..,,_       _,,..--v--..,_
    /     `''.v'ν Σ´        `、_,.-'""`´""ヽ
    i'   / ̄""''--i 7   | ,.イi,i,i,、 、,、 Σ          ヽ
.     !ヘ /‐- 、u.   |'     |ノ-、 ' ` `,_` | /i'i^iヘ、 ,、、   |
    |'' !゙ i.oニ'ー'〈ュニ!     iiヽ~oj.`'<_o.7 !'.__ ' ' ``_,,....、 .|
.   ,`| u       ..ゝ!     ‖  .j     (} 'o〉 `''o'ヽ |',`i
_,,..-<:::::\   (二> /      !  _`-っ  / |  7   ̄ u |i'/
. |、 \:::::\ '' /        \ '' /〃.ヽ `''⊃  , 'v>、
 !、\  \. , ̄        γ/| ̄ 〃   \二-‐' //`

161 :創る名無しに見る名無し:2012/03/14(水) 00:36:25.60 ID:eqiGzP4H.net
画像検索したら、もう「おるたワイン」としか読めねぇwww

162 :創る名無しに見る名無し:2012/03/14(水) 04:19:37.46 ID:Qlx+8ZGp.net
俺はおたるワインを「おるたワイン」に改編した物だと思い込んでいたw
こっちでワイン見向きもしないからわからんけど地元だと普通に売ってるおたるワイン。赤は渋めだった記憶。ワイン全部渋い気がするけどw

ていうかちゃんとおたるワインって書いてるじゃないのwwwww

orz

163 : ◆7FtGTaokck :2012/03/19(月) 17:46:53.67 ID:sFuL5rgO.net
転送の暗闇から抜けると同時に感じたのは熱だった。
通路を見れば壁は燃えており、兵士たちが槍などを利用して近くの木を倒している。
だが火のせいでうまく木を切れないようだ。
獲物を長い剣へ変え、兵士たちが倒そうとしている木を切る、
「姉御!」
ソーニャに気づいた兵士が敬礼をする。だがそれに返している場合でもない。
「とりあえず木は私が切る! 狼の監視を頼む!」
指示を出しながら剣を振るう。決して簡単に切れるものではない。距離が少しあるため力は余計に必要だし
何よりも熱い。防衛のためとはいえ、目の前で燃え盛っているのはかなり邪魔になる。
この状況じゃ監視もまともに出来やしないのではなかろうか。
「来るぞ!」
同時に少し離れた場所に火の壁を抜けて狼が飛んできた。すかさず兵士が剣で切り捨てる。
一匹や二匹ならいい。だがこの決して広くない通路に何匹も来てしまえば混戦になるし
町に飛び降りられてしまえばその足を追跡するのも難しい。
大きな音を立てながら木が倒れていく。それに巻き込まれるように周辺の木が倒れ、視界が広がる。
これだけ切ればこの塔周りは狼どももそう簡単には侵入出来ないはずだ。
「狼どもはまだいるのか?」
「はっ! 目視出来る限りでもまだこの塔に攻撃を繰り返す狼が多数います!
 連絡によれば状況は変わらず正面、四時、七時以外は出現していないようです!」
七時のほうもロゼッタが木を切っているはずだしほかのところから侵入したほうが確率が高いはずだ。
この三箇所に兵力を割いて他に回す余裕がないのかそれともこの三箇所自体が囮か……。
しかし正面から上位が二匹来ている以上はあそこを囮や陽動に使うというのも考えづらい。
ということは正面が本命で他の二箇所が囮か?
「他の二箇所の戦況はどうなっているんだ」
「七時はこちらと同じく木の切り倒しが終わったものの狼は攻撃してきているようです。
 正面は狼が仲間を踏み台に侵入してくるのを阻止しているとのことでまだ上位は動いていないようです」
「動いていない? まだ来ていないだけなのか来る気がないのか……」
再び狼の遠吠えが空に響く。それに呼応するかのように何個もの遠吠えが続く。
兵士たちが緊張した面持ちで森を警戒する。
監視していた兵士に狼が飛んできた。それを兵士が盾で受け止める。
さらに狼が何匹も飛んでくる。いや、この飛び方は狼が木に登って飛んでるんじゃない。
誰かが、投げている。
ビゼンが言っていた。なぜ木を生やしているのかを。
かつてこの森に生息した狼を遥かに超える脅威。
「報告! 二本足の狼が一匹、狼を投げています!」
狼かよ。緊張が一気に解ける。
とは言え上位の狼だ。油断している場合でもない。
飛んでくる狼を空中で迎撃する。投げているのは一匹だ。
さほど間隔が早いわけでもない。
死体とは言え狼を町の中へ入れないように切り落とす。通路に落ちたのは壁の外へと蹴り落とす。
正面門の方角から地鳴りが聞えた。あっちの戦闘は苛烈のようだ。
「姉御!」
その言葉が聞えるよりも早く獲物を盾に変える。
目の端で捕らえた遠くの木が勝手に倒れる光景。
風を切る音共に飛んできたそれに弾き飛ばされて、壁の内側へと体が飛ぶ。
この町に来てから空を飛ぶのは二度目だ。だが今度は自力で戻っている場合ではない。
視界が空を向いたとき。雑魚よりも遥かに大きな狼がそこで笑っていた。
盾を構えたと同時に地面と水平に飛んでいた体が直角方向へと変わる。
体中が軋む衝撃。肺の空気が追い出され、視界が歪む。
怯んでいる場合ではない。素早く転がり、体勢を立て直す。
雪があったおかげで多少は衝撃が和らぎ、すぐに動けた。
直後。ソーニャがいた場所に狼が落ちてくる。
素早く動くための細身の体。しかし力がないというわけではなく腕はまるで筋肉の塊かのように盛り上がっている。
引き裂くだめの爪。獲物を追跡する鼻。僅かな音も逃さぬ耳。闇夜も見通す目。
あらゆる点で人よりも戦闘に特化した生物だ。
そしてその生物は既に町への侵入を果たしてしまった。

以上 『満月の時。狼侵入』

164 :創る名無しに見る名無し:2012/03/19(月) 18:22:32.48 ID:eMqE7e00.net
乙。ちゃんとしたバトルや。

165 :創る名無しに見る名無し:2012/03/20(火) 19:52:01.63 ID:ccqcde+F.net

             .○' ⌒`○
            /i /、 ,ヽ!ヽ
           / .,cリ ゚ヮ゚,リ ヽ  唐突に急浮上!
          (/ ;⊂E発ヨつ\)
            ( (ノメ川メ○
             ノ爻ラr''

              ノ /

166 :創る名無しに見る名無し:2012/03/21(水) 03:06:35.07 ID:un/CzcSz.net
http://fsm.vip2ch.com/-/sukima/sukima093393.jpg

167 :創る名無しに見る名無し:2012/03/21(水) 05:11:24.47 ID:21M7j2nZ.net
どんな界隈だよw

168 :創る名無しに見る名無し:2012/03/21(水) 05:28:57.21 ID:PVFApKH1.net
クリラがんばれwww

169 :創る名無しに見る名無し:2012/03/21(水) 07:41:08.53 ID:O/nai8Bj.net
クリラー

170 :創る名無しに見る名無し:2012/03/23(金) 23:36:13.93 ID:bRz+7EFm.net
ttp://dl10.getuploader.com/g/6%7Csousaku/552/創発151.jpg

171 :創る名無しに見る名無し:2012/03/23(金) 23:38:45.88 ID:LCLQTe0h.net
謎太郎のプリケツw

172 :創る名無しに見る名無し:2012/03/24(土) 05:35:45.23 ID:1gKzzqZR.net
普段ネタ色が濃いから新鮮に見えるw

173 :創る名無しに見る名無し:2012/03/25(日) 01:00:05.54 ID:DigCravr.net

             .○' ⌒`○
            /i /、 ,ヽ!ヽ
           / .,cリ ゚ヮ゚,リ ヽ  鯖復活急浮上!
          (/ ;⊂E発ヨつ\)
            ( (ノメ川メ○
             ノ爻ラr''

              ノ /

174 : ◆7FtGTaokck :2012/03/25(日) 20:57:35.74 ID:QVnwpw1w.net
「降参するならよぉ、楽に殺してやるぜ?」
その狼は笑いながらそう言った。
二本足で動くだけではなく人語を解する程度には知能も高い個体というわけか。
「俺様の二発で立ってるのもやっとなんだろう? 人間」
そうは言われたものの最初の二発は防御できたおかげか思ったよりも痛くはない。
叩きつけられた痛みも徐々に和らいできた。
「お前が……長か」
獲物を剣に変え、支えにしてみる。
なんとなく「すごい死に掛けです」な雰囲気を出して、情報でも出してくれないかと考えたのだ。
「ちげぇよ。まぁ冥土の土産に教えてやるよ。今、この町の正門を攻めているのが俺様の二人の兄貴で
 片方が長だ。んで、他のところから攻めてるのが姉貴。これだけ広ければ戦力も分散せざるを得ないし
 この三点にこちらの戦力全てをつぎ込んで侵入するってわけよ。
 くっくっく。さすが兄貴の考えた作戦だ。他の兄弟も今頃人間どもを血祭りに上げているころだろう。
 俺様もこうして初陣で作戦成功したし一族の狼として一目置かれるようになるぜ」
「兄弟……。お前のように二本足で立ってるやつらのことか。四人兄弟の末っ子というわけだな」
「ああ、その通りだ。俺様ぐらいに進化する魔物なんて早々いねぇからな」
なるほど。どうやら今回の戦闘で狼たちは本当に全勢力をつぎ込んでいるようだ。
そして上位に当たる狼は四匹しかいない。これ以上の加勢は来ないと見ていいだろう。
初陣ということで舞い上がっている上に他の同じ服装をした兵士とは明らかに違うソーニャを仕留めたと
勘違いして奴の気分は今、有頂天に達しているに違いない。
いや、そうでなくてもべらべら喋りそうだ。所詮獣程度の知能か。
「さてと、人間。そろそろ終いにしてやるよ。お前結構地位が高いんだろ?
 知ってるぜ。人間は地位の高さを服だとか装備で示しているんだろ?」
「ご明察どおり私はこの町の兵士団の団長だ」
「団長? お前が? まじかよやっべ。所謂長だろ? 俺様すげぇ評価あがるじゃん。やっべ」
本当にやばいのはお前の頭だ。
舞い上がっている狼に気づかれないように懐から銃をそっと取り出す。
安全装置を外し、指を掛ける。うまくいけば一撃だ。必ずその機会が来る。
狼が耳を立てる。他の兵士の援軍だ。意識がソーニャから他に移る。
一気に取り出し、引き金を引いた。
その一瞬で狼はこちらに反応はしていた。
だが、避けることは出来ずに着弾と同時に頭を大きく後ろに仰け反らせる。
血が出ていない。銃を捨て、大きく間合いを詰め、横凪に振るう。
狼はこちらを見ずに後方に飛びのき、それをかわした。
口に銃弾をくわえている。素晴しい動体視力だ。
唾を吐くように銃弾を捨て、こちらを睨みつける。
「惜しかったな。もう終わりだ、人間。八つ裂きにしてやるよ」
屈むような姿勢の後、こちらに向かって飛んでくる。
早いが一直線。剣を盾に変えて、棘を生やし防御する。
雪が積もっているせいでふんばりが効きづらい。後ろに倒れないようにうまく体勢を立て直す。
狼の拳から血が流れているがやつはそれを気にも留めず、再び同じ攻撃をしてくる。
雪で重くなる足を動かしそれをかわす。背面を見せた狼の背中に飛び掛る。
が、それを感知したのか大きく前に跳び、再びかわされてしまう。
これではいたちごっこだ。体力が消耗する前に仕留めなければ。
数歩後ろに下がり、先ほど吐き捨てていた銃弾を探してみるが見当たらない。
再び屈む姿勢。今度は迎え撃つ。
獲物を半月の刃に大きく伸ばす。そして飛んできたと同時に振り下ろした。
雪が赤く染まる。振り向くと狼は右腕を押さえている。
しかし流れる血は止まらず、顔も苦痛に歪んでいた。獲物を長剣に変え、ぎりぎりの間合いから斬りかかる。
狼はそれを負傷している右腕で防御する。切っ先が腕を切り裂き、さらに一歩前に踏み出て、振り上げる。
重い感触と共に右腕が宙を舞う。大きな悲鳴を上げる。尻餅を付いて、切断面を抑えている。
なんという弱さか。今まで大怪我をしなかったせいなのか、自らが完全に優位に立っている傲慢が崩れたせいなのか。
たった一撃でこれほど勝負を分けることになるとは思わなかった。
ソーニャが剣を振りかぶる。体を震わせながらこちらを見た狼の目には恐怖と苦痛の色しかなかった。
狼の首が雪に落ちる頃、遠くから兵士の声が聞えてきた。

以上 『満月の時。狼戦』

175 :創る名無しに見る名無し:2012/03/27(火) 06:26:04.28 ID:J3fdeBii.net
末弟チャラいw 続き期待。

176 :創る名無しに見る名無し:2012/03/30(金) 19:39:42.01 ID:LgVLc2E7.net
そろそろコタツをしまう事になって
まだ大丈夫とはっちゃんが言い張って
ひなのにコタツの足を隠されて
しぶしぶ片づける頃合いか

177 :創る名無しに見る名無し:2012/04/01(日) 01:16:19.16 ID:aWH+AGxQ.net
おる太君さようなら

178 :創る名無しに見る名無し:2012/04/01(日) 01:44:28.69 ID:pSNx6aWd.net

緊急ニュースです。1日1時ごろ、都内に巨大な成長を遂げたクリラが出現、
チョコレートを求めながら町を破壊している模様。都内住民は誘導に従い避難して下さい。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2815911.jpg

179 :創る名無しに見る名無し:2012/04/01(日) 01:46:19.58 ID:qoLbi6RV.net
ぎゃぁあごめんなさいww
チョコの味覚えさせたボケはうちのやつだww

180 :創る名無しに見る名無し:2012/04/01(日) 01:49:31.94 ID:5bstAo/1.net
エヴァに出てきそうwwwww

181 : ◆7FtGTaokck :2012/04/01(日) 17:02:56.12 ID:huOQuV0f.net
焼けていく大地。炎に包まれる仲間たち。
三箇所からの同時攻略による町落とし計画。
正面にこちらの主力部隊を当てることにより、他の場所の防御を強制的に薄くさせそこから侵入する。
相手がどれほどの戦力を持っているかはわからないがこちらに攻め込んでこない以上は
討伐隊が出せるほどの戦力を持っていないと推測したのだ。
つまりここに戦力を集中させれば他所からの侵入は容易。場合によっては正面からも侵入出来るかもしれぬ。
事実あの剣士が現れるまでは数による暴力で仲間を踏み台に何匹かの狼が侵入を果たしたのだ。
剣士は人間にしては大きな体格に見合った大剣を振り回し、壁の上に乗っていた何匹かを切り落とし
飛んでくる狼を空中で真っ二つに切り裂いた。
それでもまだ状況は五分五分。長である私と弟が同時に乗り込めば侵入出来る。
そう考えていた時、その魔女は現れた。
黒服の魔女は片手を前に出すと、黒い本を呼び出した。
見た瞬間。魔物となって得た知性か、はたまた遠い昔の獣であったときの本能か。
アレを破壊しなければならない。そう直感した。
合図などいらなかった。私と弟は二手に分かれ、壁へと走った。
まるでこの世の災厄を閉じ込めたかのような禍々しく暴力的な力。
あれがどのような力を発揮するかはわからない。だが起動する前に止めなければならない。
仲間の狼たちを踏み台に私と弟が飛び掛る。
剣士が私の前に立ちふさがり、なんとしても魔女に近づけないという意思が見えた。
弟も何人の人間に囲まれて魔女に近づけないでいる。
黒い本が開かれ、魔力が集中していく。
剣戟を避けながら、何発か攻撃を叩き込むが剣士が倒れない。
一瞬、魔女の周りの世界が歪んだ後、赤い光が本から飛び出した。
その光に気を取られ、横凪に振られた剣を避けそこない、防御をしたものの壁の外へと落とされた。
背中に灼熱を感じ、体勢を立て直し着地した地面は赤く焼け爛れていた。
振り返った私を待っていたのは地獄だった。
「兄者! 大丈夫か!」
弟が駆け寄ってくる。彼もまた剣士に落とされたのだ。その際に左手が切り落とされていた。
そのほかにも体中を焼け焦がしている。
「弟者。我々には後がない。この戦いで全ての戦力をつぎ込み、そして今。全滅した」
「先は言わなくてもわかっている! この命果ててもあの魔女の命だけは仕留める!」
この先我々以外の誰かが待ちを攻め落とそうとするときが来るかもしれない。
その時のために。まだ見ぬ誰かの未来のために。
幾重もの仲間の死体を踏みしめ、私は壁へと飛んだ。

「殲滅確認。同じく四時と七時でも隊長格と思しき狼を討伐との報告。
 我々の勝利です!」
兵士が声高らかに宣言し、周りが歓声に沸く。
ビゼンは剣を支えに歩き、適当なところに腰を下ろした。
「手痛くやられたみたいだね」
「あれと一対一で戦ってたら負けてたかもしれねぇな」
ビゼンと戦闘した体格の一番大きな狼。
こちらの攻撃を紙一重でかわしながら入れてくる攻撃はどれも強烈だった。
亀はビゼンの鎧を取り、治癒の呪文を掛ける。
「しっかし相変わらず馬鹿みたいに強力な呪文だな」
「使いづらくて仕方がない。最低威力にしてもあれだからね」
ソーニャが変幻自在の獲物を持っているように亀も自分専用の獲物を所持している。
それが見た目がただの黒い本である魔術書だ。
ビゼンは魔術に詳しくはないので知らないことではあるがあの獲物には縛りがある。
その一つが呪文の威力についてだ。
呪文と言うのはただ強力ならいいというものではない。
時には針の穴に糸を通すかのような精密さも必要となる。
が、亀の魔術書はそれが出来ない。唱えることが出来る呪文すべてが大規模に影響を及ぼすものなのだ。
他にも唱えるときは常に本を片手に持っていなければいけないなどあるがそれを知っているのは亀のみ。
かくしてこの町と狼たちの戦いはここに終結した。

以上『満月の時 戦いの終わり』

182 :創る名無しに見る名無し:2012/04/01(日) 22:00:45.57 ID:OITGAGaQ.net
亀つええw

183 : ◆7FtGTaokck :2012/04/08(日) 14:50:43.63 ID:+z1uoEWY.net
吹雪は止み、雪解けの時を向かえ、そして命際立つ春を過ぎた頃。
あの戦いの後、討伐隊が組まれ森の中に住む狼を根こそぎ退治した。
そのおかげかあれ以来満月であっても襲撃が来なくなった。
この島における魔物の最大勢力であった狼を殲滅した影響は思いのほか大きく
他の魔物による被害もなりを潜め、行商は前よりも活発になるという結果に至った。
が、それと同時に気にかかるのは本州での戦いだ。
時折来ていた本州からの行商人がさらに減少し、来るたびに戦場が激化していると言う。
この島は生きるために必要な食物や水は豊富に取れるものの武器や道具に使う鉄鋼などが不足する傾向にある。
魔物の被害が減少したと言っても護衛の武器を外すことは出来ないし、生活必需品はいつか壊れ新しくしなければならない。
こういった問題はこの町だけではなく島全体の問題である。
そこで発案されたのが全島会議だ。
ソーニャはその会議の参加者の名簿とにらめっこしている。
自衛団本部のソーニャにあてられた部屋にはソーニャと亀しかいない。
亀は亀で参加者に向けた書状を書いている。
「権力者を集めた会議か。本当にうまくいくのかな」
「人事みたいに言ってもあんたが参加することには変わりないよ」
参加者にはソーニャの名前も入っているし亀の名前も入っている。
身分上はソーニャは自衛団団長だし亀もこの町の魔術師のまとめ役になっているのだ。
しかしこういった事柄はビゼンとロゼッタ向けなのは言うまでもなく
一応そう訴えたものの
「いい経験になるじゃねぇか。せいぜい緊張して石にでもなってこいや」
と励ましのお言葉をビゼンから頂いたので参加を辞退することはできなくなった。
「別にそんな構える必要もないよ。内容的にも僕たちは話すこともないし。
 主催者側だしこの町で開催するから参加する程度だよ。あと狼討伐の功績かな」
「ほとんど討伐したのは亀じゃないか……。大規模専用魔術が獲物なんてあの時まで聞いてなかったし」
「言ってないからね。あまり自分の能力をぺらぺら喋るものじゃない」
常に身に着けている上に町では知らぬ者がいないほど有名なソーニャの獲物は既に手遅れというわけだ。
亀が筆を置き、手紙を折りたたみ封筒に入れる。
名簿から目線を外し、封筒に視線を向ける。
「西の村だけが未だに連絡なし、か。ちゃんと届いてるのかな」
「配達の人間が届けたと言っている以上は信用するしかないね」
会議についての書状は既に春先には島の全ての町、村に送ってある。
その中で未だに返信が来ないのがこの町から西にある村なのだ。
西の村はこの島でも数少ない鉄鋼などが取れる場所に位置し、そういった意味ではぜひとも参加してほしいところ。
「それともあんたが直接出向いてみる?」
「開催日は夏半ばだしまだそんなに急かすこともないだろう。もう少しのんびり待とう」
「じゃあ今日の訓練でもやるか」
「そうだね」
狼の襲撃がなくなっても魔物がいなくなったわけではない。
自衛団は来るべき時に備え、鍛錬や武具の整備を行っている。しかし実戦がないと感覚が鈍くなってしまう。
そこでソーニャは亀の召喚魔法に目をつけた。
正門前は先の戦いで亀により焼かれ、赤焦げた土がむき出しの土地になっていたが今は元通りほどでないにしろ草原の体を成している。
魔術書を片手に亀が魔法陣を書く。手に持っているのはあの魔術書ではなく普通のものだ。
最初は壁の上で待機していた兵士たちだが今は同じく町の外で待機している。
本来の実戦どおりならば壁の上から迎撃が望ましいのだがそのたびに壁に損害を与えるのもよくないということで
下りて戦闘するということになったのだ。
魔法陣の線を光が走る。今日はどんな魔物が出てくるのか。
「それでは訓練を開始する! 総員武器を持て!」
兵士たちが各々の獲物を手に取り、光の中から現れた四本足の獣に立ち向かう。
草原に刺す陽光は既に暖かいを通りこした。もうすぐ夏が来る。

以上 『夏へ』

184 :創る名無しに見る名無し:2012/04/09(月) 16:27:48.11 ID:P+8oNuac.net
乙。

185 :創る名無しに見る名無し:2012/04/13(金) 00:32:26.01 ID:gmj56lQa.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2857545.jpg

186 :創る名無しに見る名無し:2012/04/13(金) 00:34:43.95 ID:ucfofEn5.net
なぜにそれwww

187 :創る名無しに見る名無し:2012/04/13(金) 00:36:11.66 ID:g/psoP0i.net
シュールw吹いたww
弁当箱に入ってたら間違って食いそうで困るwww

188 :創る名無しに見る名無し:2012/04/13(金) 02:17:17.22 ID:sZvROctv.net
テラ饅頭www

189 : ◆7FtGTaokck :2012/04/15(日) 04:48:55.70 ID:lLWcuilC.net
「暑い」
「暑いな」
夏。連日猛暑が続きあの冬が恋しくなってきた。
本部のソーニャの部屋にはソーニャとロゼッタ、そしてだらけた体勢を取っている亀とビゼンがいる。
一週間後に始まる全島会議について話しているのだがこの状態では話すこともままならない。
返事が遅れていた西の村は高齢である長老の代理で揉めていて連絡が送れたそうだ。
その旨を送ってくれれば良かったのではないだろうかと思ったが過ぎたことは話しても仕方あるまい。
亀とビゼンは暑いのが苦手らしくもうだめなようだ。
一方ロゼッタは汗一つかかず町の見取り図に書き込みをしている。
「魔物の脅威がなくなった以上はあまり警備を強化する必要はないかもしれませんね」
「確か向こうも護衛を連れてくるみたいだし必要ないかもな」
「ええ。念のために数人付けておくぐらいでいいでしょう」
「そういえばあの隊商は参加してくれるのかな」
先日久しぶりに本州からの隊商がこの町にやってきた。それも大型のだ。
人数は護衛を含めて三十人近くになり、荷物も荷車何十個分とこれまでの隊商と比べ物にならない量である。
隊商の商人曰く「次いつ来れるかわからないからな」とのこと。それだけ東京拠点の状況は緊迫しているのだろう。
こちらに来る前に西の村に寄ったらしく西の代表者たちも一緒に来ていた。
ついでにいい機会なので隊商の人間に島の外の話をしてもらおうと全島会議への参加を打診していたのだ。
「ええ。隊商の代表者が出てくれるそうです」
「島の外の話か。東北拠点が制圧されたというのは聞いたけど東京も危なそうだよな」
「いい話は出ないでしょうね。この会議も無駄なことかもしれません」
「嫌な事を言うな……」
とは言ってもだんだんと減っていく本州からの来訪者を考えると確実に戦況は悪化の一途を辿っているに違いない。
しかしこの会議の話し合いの結果によってはいざ北の国が襲撃してきても連携を取って撃退できるかもしれない。
やるからには得るものが多いほうがいい。幸いにも会議は一日だけではない。出来るだけ実りのあるものにしたい。
部屋の扉を控えめに叩く音が聞えた後、室外で待機していたコユキが用件を告げた。
「隊商の代表者が一度荷物を見に来ないかとのことです」
「よし行こう。すぐ行こう」
「おっと俺はもう向かってるぜ」
腐っていた二人が飛び出していった。そして悟る。おそらくあの二人は隊商のところへ行かない。涼みに行ったに違いないと。
「……この調子じゃ一週間で何も決まらない気がする」
「大丈夫ですよ。私が全部決めますから」
なんと頼もしいお言葉だ。その言葉に甘えることにしてソーニャも隊商へ向かうことにした。

「ん? 遅かったね」
「あれ、本当に来てたんだ」
現地に着くと亀が荷物を眺めていた。
荷物と言っても町自体が購入するものがあれば町民が購入するようなものもある。
亀が見に来たのはそういった類のものだ。
「掘り出し物を探しにね」
「掘り出し物ねぇ……」
亀の横に置いてある何に使うかもわからない古ぼけた道具たちがそれなのか。ソーニャの眼にはゴミにしか見えない。
「ん? これ魔術書だ」
そう言って一冊のこれまたカビ臭そうな一冊を手に取る。値段を見ると子どものお小遣いでも三冊は買えそうな値段だ。
それを見ていた商人がだめだめ、と手を振る。
「その魔術書、偽書だよ」
「偽書?」
「魔術書って基本的には一品限りだからさ。結構高かったりするんだよ。
 それでちょっと魔法の知識かじったような連中が魔術書っぽそうなことをひたすら書いたもの。それが偽書」
「つまり……ただの落書きということか」
「そういうこと。ま、こんなのでも子供だましにはなるからね。気分は魔法使い! 的な」
「なんでそんなものを売ってるんだ?」
「おおかた自分も魔術をかじった程度の知識だから騙されて掴んじゃったんだろう」
「そんなところさ」
商人がやれやれと手を上げる。
「じゃあこれタダで貰うね。古い紙が欲しかったんだ」
「いや、金は置いてけ」
偽物だと教えた後でも金を取るのは忘れない。これが商人か。

以上『全島会議一週間前』

190 :創る名無しに見る名無し:2012/04/16(月) 19:41:51.35 ID:2Hm9MXND.net
緊迫してんだかのほほんとしてんだか解らない連中だw

191 :創る名無しに見る名無し:2012/04/19(木) 16:31:59.26 ID:yNgGjbdg.net
夕鶴様が鉄槌を一度振り上げるときはアンタを狙っているんだ
アンタは死んだね
二度振り上げるときは円川様に治世術を教えてるのさ
アンタの苦しみが長くなるね

192 :創る名無しに見る名無し:2012/04/19(木) 16:52:14.62 ID:yNgGjbdg.net
夕鶴様に仕えて幸福ですかって?
ええもちろんですとも旦那様! 誰彼出来るわけじゃありません
私の前に三人入れ替わってますよ!

193 :創る名無しに見る名無し:2012/04/19(木) 21:43:22.19 ID:IYZsINmS.net
なんぞw

194 : ◆7FtGTaokck :2012/04/22(日) 05:08:01.31 ID:EDFhFCTW.net
会議開催日。気を重くしているソーニャに声がかかった。
「シカ!」
「ん? ああ、久しぶりだな」
そこに立っていたのはソーニャのかつての同期で新団長に選出された青年だった。
「君に会うのをどれほど夢見たか……!」
「言っておくが私は資源どうこうを優先的にそっちに回す権限だとかないしそういう期待はしないでおくれ」
「違うよ! この胸の高鳴りが君に会いたかった理由なのさ!」
「風邪? 病院なら……」
「違うよ! 僕との別れの際に交わした約束……忘れてないよね?」
ソーニャ思案する。しかし何も思い浮かばず。
「嗚呼、その表情。きっと僕との約束を思い出してくれているんだね……?」
良いように解釈されている。というか昔はもう少し、いや、だいぶ違う感じの人間だった気がするが。
別れてから一年も経っていないよな。もしかして別人だったりするのだろうか。
「まぁなんだかよくわからないけど今日の会議は頑張ってくれ」
「ああ! わかっているとも!」
その日の会議。彼は熱弁を奮っていた気がするが何を言っていたのかはさっぱり覚えてない。
そんな日々が流れ、なんだかんだで会議が三日目に突入した。
元から何日までとは決めていなかったのでこうなるのも想定内ではあるが時間が経つにつれ、歪みが生じ始めた。
「え、あ、ソーニャさん。少しお話したいことが」
会議終了後。本部に帰ろうとしたところを補佐官に呼び止められた。
なぜだろうか。だいたい毎日会っているはずなのにすごく久しぶりな感じがする。
「えっとですね。各代表からですね、要望といいますか。ええ、そういうのが届いてましてね」
そう言いながら束ねられた紙をソーニャに渡す。そこに書かれている一例を挙げると
例えば港町の代表はもっと海産物の食事を取りたいだとか
農産物のよく取れる村の代表はここの野菜の質が悪いのでなんだらかんだらだとか
西の村の代表は隊商の人と飲みたいから宿を変えたいだとか。
「知るかっ!!」
「それではですね。ええ、私はこのへんで」
「おいちょ、待てよ」
「ええ、ソーニャさんなら出来ると信じていますから」
補佐官はそういい残してさっさと行ってしまった。
役所の仕事の丸投げは今に始まったことではないので諦めて本部へと戻ることにした。


「隊商はここに宿泊しているので空いているか聞いてみましょう」
「食事の改善については事前に食事の要望を聞いたほうがいいのかな。
 差が出ると困ると思ってどの代表にも同じ食事にしたんだけど」
「今は隊商と各代表が持ち込んだ食材のおかげである程度融通も利きますね」
会議が終わった後、その日の会議に出ていたことについて本部でロゼッタと毎日話し合っている。
この時ばかりは亀も参加はしてくれるが話していた内容を伝えた後はぐてーとしている。
「西の代表が護衛を外してくれと言ってるみたいだな。隊商が一緒だし大丈夫かな。
 そもそも酒盛りするであろう連中の近くに人を置いておくのもかわいそうだ」
「宿の位置がほかのところからだいぶ離れますし巡回だけはしておいたほうがいいですね」
「じゃあ当直に巡回してもらおうか。しかし今日は要望書の対応で手一杯になりそうだ」
「大変だね!」
「手伝えよ」
ぐてーとしている亀に突っ込む。ちなみにビゼンは既に帰宅していた。
「話の核心は島の存亡を決めかねないことなのにどうしてみんなはこうも……」
「昔はこのような機会はありませんでしたからね。代表も少し浮かれているのかもしれません」
「私としては決まればいいのだけどそもそもこれじゃあ決まるかどうかも危ういな」
「仮に北の国が東京拠点を潰してこちらに来たとしたら正直我々が話し合ってどうこうしても意味ないですしね。
 この会議で決まるのは精々いざとなったときの砦がここになるってことぐらいですよ」
「そんな根本からの否定をしないでくれ……」
今日何度目かわからぬため息をついて窓の外に眼をやる。
既に夜の帳が下りた空には星が輝いている。ふと今日が満月であることを思い出した。
「そういえば最果ての村の代表があなたに会いたいという要望を出しているようですが」
「破棄しといてくれ」

以上 『会議開催中』

195 :創る名無しに見る名無し:2012/04/22(日) 18:17:16.86 ID:8di0d6Yz.net
シカ朴念仁w

196 :創る名無しに見る名無し:2012/04/26(木) 05:09:14.16 ID:8hU7uyyT.net
一番安いPCでも50000は見とかないと買えないな。ノートだとUSBが悩ましいし。

197 :創る名無しに見る名無し:2012/04/26(木) 05:09:31.98 ID:ce4wrH4p.net
誤爆しましたw

198 : ◆7FtGTaokck :2012/04/30(月) 05:07:30.57 ID:FQLTh+nt.net
人気の少ない道を二人の兵士が歩いている。
こうなったのも西の村が意味のわからぬことを言ったせいなのだ。
しかし愚痴を垂れても仕方あるまいと今日起きたどうでもいいことを話しながら巡回をしていた。
「あ、や、これは巡回お疲れ様です」
その二人に声を掛ける影が一つ。役所から自衛団に送られた監視人の補佐官であった。
兵士は敬礼を返す。心なしか補佐官の顔が赤いことに気づいた。
「いや、これは失礼。この先で少々ですね。ええ。あ、そうですね。これをどうぞ」
補佐官は懐から貨幣を取り出し二人に差し出す。
「これでですね。まぁお酒でもですね。ええ、飲んでください。この先は私がいるから、ええ大丈夫ですよ」
兵士はこれはしめたと感謝の言葉と共に直立不動の敬礼を行い、来た道を戻った。
西の村と隊商に招かれて飲んでいるのだろう。そう兵士たちは考えたのだ。
無論、その答えは外れていない。
だがそれは半分の回答でしかなかった。

なんだかんだと気を揉んだ全島会議が本日を持って終了となった。
物資のやり取りや各町村の連携、対応など多岐に渡る項目が決まった。
その中でも町にとって最も大きいのは他の町村からの移民受け入れをするというものだった。
魔物の脅威は減少したもののなくなったということはない。
特に小規模の村では防衛設備も乏しく、襲撃があるたびに被害が大きい。
そこで村の住民を丸ごとこの町が受け入れようという話になったのだ。
「名簿を見るだけでも結構な人数になるけどそんなに空き家あるのかな」
「そのくらいは結構余裕じゃないかな」
本部に戻り、だらけようとする亀と一緒にいつもの報告をする。
「ええ、この町は少々無計画に家屋を増やしすぎたせいで空き家は結構あるんですよ」
「だからこんなに入り組んでいるのか……。でもまぁこの辺は役所の仕事になるかな」
ソーニャは持っていた名簿を机の上に置き、伸びをする。
「しっかし七日間も続くなんてね。明日は宴会だっけ?」
「そういえばんなこと言ってたな。俺は酒が飲めるならなんでもいいんだが」
椅子に座って腐っていたビゼンが宴会という言葉に反応する。
会議が終わり、各代表が帰る前に宴会をすると知らされたのは今日の会議終了後だった。
町長が閉めの言葉の後に「それでは明日は宴会を予定していますのでどうぞ楽しんでいってください」
と言い出した時は思わずえっとなったがそんな反応をしたのはソーニャぐらいで
他の人間は楽しそうに飲むかー飲むかーと話していた。酒好きどもめ。
「場所は噴水広場だっけか。また宿直がかわいそうな行事だ」
「なら代わってあげればいい。僕はいやだけどね」
冷たい言葉だ。これでも上に立つ人間なのだろうか。正直ソーニャもあまり代わる気はないが。
「まぁ楽しめるときに楽しまないとな」
「そうですね。明日にはもしかしたら酒も飲めない体になってるかもしれませんしね」
「ロゼッタ、そういうのはやめてくれ」

そして当日。
この町の町長の言葉から宴会は始まり一時間も経った頃には最早酒の海にいるのではないかと
錯覚するような世界を目の当りにすることとなった。
各代表だけではなく町民も参加しているせいで規模は想像を遥かに越え
あちらで歌を歌う者あれば、あちらでひたすら酒を飲む者もいるし
あちらで踊る者あれば、あちらで喧嘩している者もいる。
ソーニャの仕事はそんな人間の仲介役だ。正気の人間は宴会では最後に損をする。
この騒ぎの最中、数人の人間が抜け出しても誰も気づかなかった。
彼らは正門へと向かい、外の丘へ歩き出した。
普段ならば外に出る理由を尋ねるが今回はその中に町長と補佐官がいたため問われることもない。
少し離れたところにある丘で町を見下ろす一行。
「名残惜しいですか? 町長」
西の村の長が尋ねる。彼の手には魔術師の杖が握られていた。
「少々勿体無い気がする。ただそれだけだ」
「そうですか。ご協力感謝します」
「契約は守ってもらうぞ……。北の国よ」
空には少し欠けた月が昇っていた。

以上『全島会議終了。そして……』

199 :創る名無しに見る名無し:2012/04/30(月) 05:43:40.42 ID:8ZtPxVGY.net
伏線貼りやがったな

200 :創る名無しに見る名無し:2012/05/04(金) 21:37:06.41 ID:3jz1sWr6.net
ぬるぽ

201 :創る名無しに見る名無し:2012/05/04(金) 21:41:19.36 ID:6gWH9g0d.net
がっ

202 : ◆7FtGTaokck :2012/05/06(日) 04:40:09.87 ID:Atd3P1hn.net
「あれ、なんだ?」
最初にそんなことを言ったのは誰かはわからない。
声につられ、見上げると空に大きな魔法陣が描かれていた。
空には魔法の結界が張られている。その魔法陣だろうか。
そんなことをソーニャはのんびりと考えていた。
「自衛団総員! 住民を全員避難させろ!」
亀の鋭い声が響いた。その声音に冗談の色はない。
酒を飲んでべべれげになっていた兵士たちが慌てて、誘導に当たる。
「亀、あれは一体……」
「詳しい話は後だ。あの形の魔法陣はおそらく……」
再び空を見上げるとどこからか小さな光がふわふわと空に集まっていっている。
「間違いありません。死者蘇生の魔法陣です」
駆け寄ってきたロゼッタが後を次ぐ。
死者の蘇生? なぜそのような魔法陣が空に描かれているんだ?
「ソーニャ。お前も住民の誘導…いや、護衛に当たれ。僕とロゼッタは陣の破壊に当たる。
 ビゼンは……既に先導してるか」
言われてみれば先ほどまでそこで飲み比べしていたビゼンの姿は見えない。
耳を澄ませば遠くのほうで誘導をかけている声が聞える。
「大聖堂への誘導が終わったらビゼンと一緒に侵入者の退治でもしててくれ」
そう言うとロゼッタと一緒に誘導先とは違う方向へと走っていた。
ソーニャもうかうかしていられないと誘導先へ走り出す。
酔っ払っているせいか特に騒ぎもせず素直に指示を聞いているようだが
眠りこけている人間も何人かいる。片っ端から兵士が叩き起こしている。
亀はソーニャに護衛に当たれと言っていた。死者蘇生の術式。侵入者。
大聖堂に向かって走る。この術式がどのような法則で死者を蘇らせることができるかはわからない。
だが亀の言葉から察すると誘導に当たる兵士では処理出来ない敵が出てくると考えていい。
遠吠えが空に響く。そのうちの一つはソーニャが大聖堂に着くと同時に姿を現した。
「久しぶりだな! 糞野郎! 地獄から戻ってきてやったぜ!」
その姿は過去に見た者と同じ。差があるとしたら少々淡い光を纏っているくらいだろうか。
かつてソーニャが仕留めた二本足の狼がそこに立っていた。
「死んだはずなんだけどどうやらいい奴が蘇らせてくれたみたいだな。
 やってほしいことがあるみてぇだけど俺様の目的と同じだしついでにやってやるか!」
「ほう。どんなことを言われたんだ?」
「ああん? 教えてやるよ……。この町の人間を殺しつくせだ!」
狼がこちらに向かって走り出す。周りにはまだ避難している人間がいる。
避けるわけにはいかない。獲物を剣に変え、攻撃に備える。
ただの振りかぶった右腕の一撃。剣で防御するが衝撃で後ろへ倒れそうになる。
左手を構えたのを見たと同時に後ろに下がる。先ほどまでいた場所を豪腕が風を切って通る。
狼が一歩前に踏み出し、再び右腕の攻撃。剣の間合いにしては近すぎて反撃が出来ない。
それを知っているかのように狼は間合いを常に詰めながら攻撃をしてくる。
武器を短くすれば相手の攻撃が捌けなくなるかもしれない。
素早く繰り出される連打を剣の防御と紙一重の回避でかわすがそれも長く持たない。
大きく右腕を振り上げた。足に力を込めて、前に出ながら短剣で相手の腕の付け根を切る。
やっと距離が出来た。辺りには人影がない。どうやら思ったよりも大聖堂から離れるように動いていたようだ。
代わりに普通の狼たちに囲まれていた。
しかし前回のアレから考えると今の一撃で戦意を消失させているはずだ。
だが振り返った狼にはいびつながら笑みと取れる表情を浮かべていた。
「痛みを感じねぇんだよ。死んだせい……いや、おかげっつーのか?
 おい! 狼ども! 手ぇ出すんじゃねぇぞ! こいつは俺が殺す!」
どうやら期待はずれのようだ。額を流れる汗も拭けやしない。獲物の刃を伸ばす。
前回は馬鹿みたいに同じことをしていたから迎撃のしようがあったが今回の間合いを詰めながらの
格闘攻撃は正直戦いづらい。考えてやるほどの脳味噌があるとも思えないし野生生物の本能で行っているのだろう。
近くで唸っていた狼にどこからか飛んできた火球が直撃した。
狼は断末魔を上げながら燃え、やがて淡い光になって消えていった。
「なんだぁ……?」
二本足の狼が後ろを振り向く。その巨体を影が飛び越え、目の前に着地する。
両手に短剣を握ったコユキだった。
「ソーニャさん! 助太刀に参りました!」

以上『死者たちの夜』

203 :創る名無しに見る名無し:2012/05/07(月) 00:17:08.86 ID:JHqlxuEu.net
wktk

204 :創る名無しに見る名無し:2012/05/07(月) 18:18:59.31 ID:5TpOfCWq.net
http://dl7.getuploader.com/g/6%7Csousaku/613/z%E3%81%82%E3%81%98%E3%82%87%E3%81%82%E3%81%98%E3%82%87.png

205 :創る名無しに見る名無し:2012/05/07(月) 19:09:35.21 ID:W2/4bbws.net
やっべぇアオリかっけぇ…!!

206 :創る名無しに見る名無し:2012/05/08(火) 03:19:35.12 ID:0u+BQONy.net
アジョがカッコイイ、だと?

207 :創る名無しに見る名無し:2012/05/09(水) 16:49:12.72 ID:9FCUSH8D.net
A・J・O・N・A・K・A アジョ中!
A・J・O・N・A・K・A アジョ中!
3・2・1! ファイヤー!
胸の魚油が網を焦がす
今日の勝負は並じゃないぜ
レスの無さに負けたら最後
創発が闇に閉ざされる
投下するレスの合いの手が
猿るたび リロードのたび 俺を強くする
G! ルール破りの
ススス! 悪の住人
さあお遊びはここまでだ
Attack! ラスト5レスの
Chance! 良作投下
俺は炎のアジョ中

A・J・O・N・A・K・A アジョ中!
A・J・O・N・A・K・A アジョ中!
3・2・1……ファイヤー!


208 :創る名無しに見る名無し:2012/05/10(木) 00:09:30.89 ID:jsLv3J2N.net
SSPはテリーマンポジション

209 :創る名無しに見る名無し:2012/05/10(木) 00:49:08.53 ID:ql75iIFu.net
か…かっこいいよおういえ!!
歌詞にビビっと来た!!

210 :創る名無しに見る名無し:2012/05/10(木) 08:06:36.56 ID:5aCOfzp/.net
夕鶴「ハリケーンミキサー!」

ドッゴォォォン!

アジョ中「お、おわー! ジークー!」

夕鶴「ジークフリードの身体は我々悪魔住人が頂いた、返して欲しければ我々と闘い奪え!」

211 :創る名無しに見る名無し:2012/05/10(木) 08:10:45.32 ID:5aCOfzp/.net
発子「クリーシェ戦法、敵は逃がすな」

クリラ「ゲェ!」

ブチッ

SSP「ま、またシューズの紐が〜……」

212 :創る名無しに見る名無し:2012/05/10(木) 08:15:59.46 ID:5aCOfzp/.net
アンテナ「プリン妖精! スイカ男ね身体に絡み付いたーーーッ!」

プリン「デビルトムボーイ!」

ダン! ダン! ダン!

スイカ男「ぐへっ!」

213 :創る名無しに見る名無し:2012/05/10(木) 08:26:19.10 ID:5aCOfzp/.net
トーカー トーカー

桃花「カパッ」

夕鶴「……?」

彼方「桃花スマイル、姉さんが本気になった時に見せる表情よ」

チャキッ

桃花「二振りの刀で二倍のパワー!」

バッ

桃花「倍の跳躍で更に二倍!」

ギュルンギュルンギュルン

桃花「いつもとは違う二倍の回転で! 食らえ夕鶴!
お前を越える1200万創発パワーだーーーッ!」

ゴォォォォォ

アンテナ「あーっと! 桃花の身体が1000万を越え金色に輝いたーーーッ!」

ニヤリ

夕鶴「馬鹿め!」

214 :創る名無しに見る名無し:2012/05/10(木) 16:07:36.00 ID:EUJAOzD6.net
このスレには濃厚なキン肉マンマニアが居るw

215 :創る名無しに見る名無し:2012/05/13(日) 01:40:49.30 ID:UVs/xPP9.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2976285.png

216 : ◆7FtGTaokck :2012/05/13(日) 04:51:40.30 ID:b6qR9p/W.net
普段事務仕事ばかりしている姿しか見ないコユキだが短剣を持つ姿は様になっている。
というか腰の帯剣が綺麗なのは使わないせいなのか。外せよ。
「俺様との勝負の邪魔しやがって……。おい! 狼ども! やっちまえ!」
それを合図に周りを囲んでいた狼が一斉に飛び掛ってくる。
剣を長めにし、飛んでくる狼と走ってくる狼を纏めて払うように振るう。
が、さすがに四方は守れない。その死角にコユキが立ち、短剣で急所だけを狙う。
打ち合わせしたわけでもないのにお互いを自然に庇い合うことが出来る。以心伝心というものか。
しかし数が多く、応援でも来ているのかなかなか減らない。
「これじゃあきりがないな」
「ならいいものがあります。ちょっと待っててください」
コユキはしゃがんで短剣を左手で二本持ち、右手で腰につけた小物入れを漁り始めた。
それを見て襲い掛かってきた狼をその場で一周し、まとめて払う。
コユキは何かを取り出し、地面に叩きつけた。同時に白い煙が出てきた。
煙幕かと思ったが嗅いだと同時に違うものだとわかった。
「くさっ!」
思わず叫んでしまうほど臭い。何をどうすればこう……ひたすら臭い。
人間でも鼻をなくしたくなるほどの匂いだ。これを嗅覚が鋭い生物が嗅いだらどうなるか。
先ほどまで威勢のよかった狼が棒立ちになったかと思ったらそのまま倒れて光になった。
中には短い悲鳴を上げたり、その場から逃げようとして倒れるやつもいる。
匂いだけで死んでしまうなんてかわいそうな死に様だ。
「ぎゃあああああああああ!!」
目の前にいる上位の狼も例外ではなく、鼻を押さえながら地面を転がっている。
「獲物を追尾出来る様に調合された道具です。本来は相手に当てて使うんですけどね」
「冗談じゃねぇよ!! こんなの当てられた日には森が腐るぞ!!」
どうにか立ち上がった狼が鼻声で反論する。しかしすぐに膝を付いて、倒れてしまう。
「殺してくれ……。こんな匂いで死ぬなんてイヤだ……」
前回戦ったときのことを思い出す。初陣だと勇んで出て、想像以上の痛みに油断し殺されて
地獄から蘇れば、鼻がひんまがるほど臭い平気にやられ、切られることなく死んでいく。
きっとこの狼は呪われた星の下に生まれてきたに違いない。
気づけば涙を流しながら痙攣をしている。敵とは言えど見るに耐えない。
静かに剣を振り上げ、別れの言葉もなく振り下ろした。

来た道を戻り、大聖堂へ向かう。どうやら思ったよりも離れていたようだ。
結果的に見ればそれはいい行動だったが無意識だったのは問題だ。
大聖堂には既にかなりの数の兵士が集合している。緊急時はここに来いというのが鉄則となっているからだ。
「お前ら生きてたか!」
その中でも一際目立つビゼンがこっちにやってきた。見れば鎧に血が付いている。
ソーニャの視線に気づいたのか、服の裾で拭く。
「ああ、さっき上位の狼に会って仕留めてきたんだ。これは返り血」
「そうか。よかった。私もさっき上位を一体討伐してきた」
「ま、考えるまでもなく前回襲ってきた四体全員が復活しているはずだ。
 しかも何百だかわかりきれねぇぐらいの部下を連れてだ」
空を見上げる。魔法陣はまだ展開されている。まだ亀とロゼッタが阻止しきれていないということだ。
「方角的から見るとおそらく俺らが倒したのは正門以外の二体だ。
 雑魚だってそう倒しちゃいない。町中だから亀の呪文だって使えない」
「不利な状況……というわけか」
「あいつらが今どんな状況だかわかればいいんだが……」
「わかりますよ」
避難していた民衆のほうから声がかかった。振り向くと見覚えのある女性と子どもが立っていた。
「あなたたちは確かロゼッタの……」
「夫がお世話になっています」
女性はにっこりと笑う。そうだ。彼女はロゼッタの奥さんで横にいる子どもは……。
「今、使い魔を出して捜索に当たっていますけど父も亀も見当たりませんね」
いつだったかソーニャに魔法の説明をしてくれたコトだ。
あの時、確か使い魔もどきの道具を見せてもらったが彼女に魔術師ゆえにそれが必要ない。
おそらくここにはまだ魔術師が何人かいるはずだ。彼らにも手伝ってもらえば全体を把握できる。
ソーニャたちは早速避難した魔術師を集めることにした。

以上『死者たちの夜U』

217 :創る名無しに見る名無し:2012/05/13(日) 07:18:00.05 ID:scqgBt3j.net
三男ェ…

218 :創る名無しに見る名無し:2012/05/14(月) 16:45:44.62 ID:PWJBHgeR.net
三男…

219 : ◆7FtGTaokck :2012/05/20(日) 19:32:19.93 ID:fwRpuytP.net
「死者蘇生の呪文の媒体だと思われるものは全部で五個。これのいずれかを破壊すれば呪文は停止する。
 術者のほうは……まだ見つからないのか?」
「はい。捜索に当たっていますがこの様子だと町中にいるかどうかも……」
町の地図の上にバツ印が五箇所書かれている。魔術師が使い魔で発見してくれたものだ。
陣の形から考えるとこれで全部らしい。が、まだ魔術の実行者が見つかっていない。
その上、展開されている魔術は一個ではないようだ。
「死者蘇生の呪文と魂の呼び集める呪文か……」
一つは魔法陣内の死者を蘇生させる呪文。この呪文は時間が経つにつれ、昔の死者を蘇らせていくようだ。
もう一つは一定周囲内の死者の魂を呼び集める呪文。
おそらくこの呪文のせいでぎりぎり魔法陣外であった狼たちも蘇っている。
魔術師たちが言うにはこの2つの呪文は別々に発動しているもので術者も違うそうだ。
つまり術者は二人。もしも死者蘇生の呪文の媒体が完全に肩代わりしているなら一人は確実にいる。
「その媒体が死者蘇生の媒体であるのは確実なのか?」
「ええ、陣の形でその辺はわかるので」
「媒体さえ破壊すれば死者の魂が集まったところで復活は出来ないからとりあえずは安心なのか」
「それまでに復活した死者は再度仕留めなければいけませんけどね」
先に止めなければいけないのは死者蘇生の呪文。つまり媒体の破壊なのだが……。
「相変わらず媒体の近くには上位の狼か」
呪文の媒体と思われる物……隊商の荷物の近くには上位の狼がいる。
狼がいないところには隊商の人間が媒体を破壊せずに待機している。
ソーニャは頭を振るい、考えを払う。今は余計なことを考えている場合ではない。
「私とビゼンで近くの媒体を破壊しに行く。誰か連絡用に使い魔を近くに飛ばしておいてくれ」
「わかりました」
ロゼッタの妻が頷く。さきほどから見ている様子でも彼女の実力は相当なもののようだ。
有難いことは有難いのだが……。
「しかしロゼッタ……副長の行方がまだわからないだろう。そっちの捜索に当たったほうがいいのではないか?」
亀とロゼッタはあれから行方がわかっていない。屋内に隠れていると使い魔だと見つけにくいらしいので
そうであってほしいのだが。
「大丈夫です。その程度で死ぬ人だったら結婚してませんから」
「……そうか。それじゃあよろしく頼むよ」

大聖堂の護衛を他の兵士に任せ、一番近くの媒体へと向かう。
大聖堂のある五時塔に一番近いのは三時塔と四時塔の間。幸運にもさほど離れていない。
一応遠距離から破壊できるように道具を持ってきたので場合によっては戦闘せずに破壊できる。
事前の捜索によれば上位の狼もいないはずなので普通に破壊してもさほど苦労はしないだろう。
人気のなくなった路地をビゼンと魚の形をした使い魔を引きつれ走る。
「そこの路地を右に曲がってください」
魚の案内に従い、狭い路地に入る。視界が狭くなったが上空から別の使い魔が見ているので
問題はない。路地を抜けると少し広めの通りに出る。この突き当たりにあるはずだ。
物陰に隠れながらこっそりと通りの奥を伺う。
「近くに隠れる場所でもあれば爆弾を投げ込むのだがな」
「あんまり近くに行くと相手に気づかれそうです」
ここからではあまりにも遠い。丁度風向きが突き当たりに吹いているし風に乗せて転がす……のも無理だろう。
「めんどくせぇな。正々堂々行こうぜ」
「相手が狼だけなら躊躇しないのだが……」
突き当たりで媒体を護衛しているのが狼だけではない。人間もいるのだ。それも死者ではなく生者。
つまり裏切り者だ。いや、元からこういう計画だったのだろう。会議で集まる要人を殺害する計画。
「相手が人間だろうか狼だろうか関係ねぇよ。そんなこと言ってる場合じゃないだろ」
「し、しかし誰が計画を立てたか情報も聞き出さなきゃいけないし皆殺しにするのは」
「誰も皆殺しなんて言ってないだろ。ちょっと腕の二、三本切るだけだ」
「それより気づかれたみたいですよ」
そっと通りを見ると狼が近寄ってきている。姿も音も立ててないのになぜだ。
狼が立ち止まり、何か匂いを嗅いでいる。どうやら風がこちらの匂いを運んでいるようだ。
「見つかったなら仕方ないな」
ビゼンが物陰から飛び出していく。ソーニャもそれを慌てて追いかけた。

以上『死者たちの夜V』

220 :創る名無しに見る名無し:2012/05/20(日) 19:36:03.22 ID:5cOKfK0w.net
乙ー

221 :無限彼方大人編 ◆wHsYL8cZCc :2012/05/21(月) 03:04:21.41 ID:FuYoA11/.net
二月に貰った安価の最初のほう出来た。

222 :無限彼方大人編 ◆wHsYL8cZCc :2012/05/21(月) 03:06:40.34 ID:FuYoA11/.net



       1




 朝からこうして歩いていて、私と彼らはやはり、切っても切れない縁というか、互いが互いを求め合うとでもいうのか、どうしても避けられない関係なのだな、という事をずっと考えていた。
 彼らがこの場所を選んで、そして私がここに来たのは偶然だし、私を必要としている人がそこに居たのも偶然だ。
 だけど、それは私と彼らにとっては必然で、この場合は、私達の必然に巻き込まれた人達にとってのみ、偶然だろうと思う。そして、それは巻き込まれた人達からすれば、かなり不幸な偶然ではないだろうか。
 大きな円の周りをぐるぐる回って、その円の中は縦に大きく掘られて、中から見れば、周りをとても高い塀に囲まれた牢獄のように見えるであろうそれをずっと見ながら、そんな事を考えていた。
 朝の十時を過ぎ、人が溢れてきた所で、ようやく私は一旦休憩を取る事にした。気が付けば、日が登ってからずっと観察を続けていた。同じ場所に居続ければ、それは否応なしに多少は目に付く物だ。
 それは私が最も望まぬ事の一つであって、私が一旦そこを離れる理由としては十分だった。
 そして、少し歩いたところにある自動販売機で缶コーヒーを買って、そこからさらに歩いて、そこら中にいくつもあるベンチの一つに腰かけた。

 さっきまで見ていた大きな円。コンクリートの牢獄。見世物を閉じ込めるための施設。
 少し歩いて、それはもう遠く。私の視界には入らない。
 代わりに今、私の目の前に見えるのは大きな牛みたいな生き物がいる柵だ。少しさびれた手すりの向こう側にもう一つ大きな柵があり、その向こうには毛むくじゃらの大きな動物が居る。
 手前に小さなパネルがあったので、私は近寄ってそれを見た。思った通り、それはその動物の名前と、本来の生息地や、習性なんかが簡単に説明されたパネルだ。

 アメリカバイソン。
 生息地はアメリカ、カナダ。
 体長や体重なんかも書かれていたけど、そんな文字を読むよりは目の前の実物を見ているほうが迫力がよく伝わる。名前と生息地以外の文字は、目に入らなかった。
 すごく大きくて、頭の周りがライオンみたいに毛に覆わている。しかし、全体の毛も長くて、温かくなって来た季節の今でも、鼻息は白く濁っている。
 缶コーヒーを啜りながら一頭のバイソンをしばらく眺めていたら、そいつはずっと立ったまま大人しくしていたのに、突然動き出して、ゆっくりと奥の方へと消えていった。
 のそのそと、ゆっくり。解放された扉の奥へと。たぶん、その先はバイソンの小屋。

「行っちゃった」

 柵に肘をかけながら見ていた私は、そこから肘を離し、服に付いた剥がれた錆を手で払って、そしてさらに周りを見わたした。最初に見ていたコンクリートの円、小さなニホンザルがたくさん居る、いわゆる猿山はもうずっと遠くだ。
 今居るのは、先ほどのバイソンなど、大型の猛獣がたくさん居るエリア。少し先には、キリンの頭が見える。その先には、とても大きなゾウが居る。
 地上でもっとも大きな動物たちは、私が立っている場所からでもはっきりとその存在を確認出来て、私は歩いて、キリンの方へと向かっていくと、その柵はやはりキリンに合わせてすごく高くて、その周りに何個か、木で出来た足場のような物があった。
 何人かの人がそこに登って、高い位置になり、出来る限りキリンと同じ目線を体感している。それでも、キリンのほうがまだ大きくて、キリンが頭をもたげてようやく同じ高さになる。
 一組の親子連れがそこに居て、父親と思われる人が、小さな子供を抱え上げていた。その子の手には、濃いオレンジ色の物が握られていて、それは、キリンの餌のニンジンだとはすぐに分かった。足場の意味は、目線を合わせるだけでなく、キリンに餌をやる為だ。
 キリンの柵の手前で売られている小さなバケツに入ったニンジンは縦に割られただけの物で、見た目で言えば大雑把にカットした野菜スティックのような物だ。
 それを買って、キリンに自分で餌をやる。キリンも寄ってきて、餌を貰う。
 そうする事で、餌をやる人は、普段は到底見る事が出来ない大きなキリンを間近にみて、体感する事が出来る。そんな感じだ。
 キリンは濃い紫色の舌を出して、小さな子供が持っていたニンジンをその舌で絡め取って、全体で見ると小さいけど、間近で見るとやっぱりすごく大きな口の中に、すぽん、と吸い込むようにニンジンを取り込んでしまった。

223 :無限彼方大人編 ◆wHsYL8cZCc :2012/05/21(月) 03:08:39.68 ID:FuYoA11/.net
 その時、キリンの予想外の迫力に驚いたのか、舌で手を舐められた感触が気持ち悪いのか、ニンジンを持ってた小さな子供がわんわん泣き出して、その子を抱えた父親が宥め初める。それでも、父親は笑顔で、残ったニンジンをやり終えて、にこにこしながら足場を降りて行く。
 キリンはそれを目で追って行く。数歩だけ、柵の中で親子を追いかけて、キリンから見れば柵の死角に入って見えなくなった所で、ようやく追うのを止めた。
 キリンからすれば、もっとニンジンを貰えると踏んでいたのだろうか。
 しばらく柵の外を眺めて、そして諦めたように、大きな身体を移動させ、私は少しだけ離れた位置からキリンを見上げていると、そのキリンは私を見付けて見下ろして、私としばらく見合ったら、また移動していった。
 横のニンジンを売る係員も私を見ていて、餌やりをしてみないか? と視線で問いかけてくるが、私はそれに応えるつもりはなく、たぶん、キリンのほうが私の気持ちを先に察したのか、少し見下ろしただけで移動したのだろう。実際はどうだか解らないけど、そう思っておく。

 もう少し先には、キリンよりずっと迫力のあるゾウが居たけど、私はもうこのエリアからは移動して、別の物を見たくなっていた。
 猛獣のエリアだけど、さっきの子供とキリンのように、人が触れる事の出来る動物。
 でも、もう少し移動した先には、本当の猛獣が居る。トラやライオン。肉食獣のエリア。
 花形たるその動物たちは、私が本来ここに来た目的を一時忘れさせる程度には興味をそそる物で、というか、私としては何もかも初めて見る物ばかりだから、ほとんどの物は興味があるのだけど、やはり動物園の主役級は是非ともお目にかかりたいと思う。

 動物園。
 私は、今日初めて動物園という場所に来ている。
 ただの見物ではない事に多少の不満はあれど、タダで、しかも開園前から見れたのはかなり得だろう。
 実際に、私は本来の目的を少し置いて、見物してしまっている。さっきのキリンだって、一人で餌やりをしてみるのが少し気が引けただけで、ただ友達と遊びに来たのならやってたかも。
 それらの動物は初めて見たとはいえ、まったく知らない訳ではなく、テレビで見たりして少なくとも一般的な知識はあった。逆に、それが興味をそそられる原因ともなっていた。
 なにせ、私はこういう場所とはまったく縁が無かったし、子供の頃はそれこそ本当に興味がなく、また機会も無かった。
 二十歳過ぎてから一人で行ってみようとも思わなかったし、私の知り合いもあまり興味はない様子で、ますます疎遠になっていて、それが今日、初めて来てみたら。今まで見た事ない物だらけで、純粋に楽しくなってしまった。
 今日見たのは、最初の猿山と、バイソンとキリン。途中にいたテナガザルや鳥類。まだそれだけだ。
 最初の猿山は朝からずっと見ていたのでさすがに飽きてしまったが、バイソンを見てからはただの見物客と化している。もう最初に考えていた事は心の隅っこに追いやってしまった。
 せっかくだ。動物園に来たのならば、百獣の王と密林の王者を見ようではないか。
 きっと、とんでもなくでかくて、目つきが鋭くて、でもただのおっきな猫みたく、檻の中でごろんと油断して寝そべってるかも。
 どうなんだろう。是非ともこの目で確かめなくては。

 私は飲み干した缶コーヒーを手近なゴミ箱に放り込んで、ちょっと足早に歩を進めた。園内の至るところにある案内板の指示に従い、ネコ科の大形動物がひしめくエリアを目指す。
 園内は思ったよりずっと広くで、歩いて行くとけっこう遠く感じるけど、少し歩けば普段は絶対見れない物がそこにあるんだな、と思えば、大した苦労ではない。すたすた歩いて、途中のアルパカの大群やカピバラなんかには目もくれず、まっすぐ目的地を目指す。
 ところがだ。

「あっ!」

 と、数メートル先から、真正面に言われた。
 私はすっかりライオンに興味が移っていたので、ほんの数メートル先のその人に気づかなかった。

「どうされたんですか?」

224 :無限彼方大人編 ◆wHsYL8cZCc :2012/05/21(月) 03:09:21.73 ID:FuYoA11/.net
 と、さらに真正面から問われた。
 そして、薄い青のツナギを着た、眼鏡をかけた作業員がこっちに歩いて来る。皆が皆、同じ制服なので、私はその作業員が誰なのか、ほぼ見当はついていたけど、はっきり確認するまで多少の時間がかかってしまった。さらに言えばそっちに注意も払ってなかった。
 身長は私より目線一つ下くらい。百六十センチちょっと。小さな肩幅。雰囲気は大人しそうだけど、前に何度か話した時の印象から、実はけっこうしっかり者で、頑固者。今も、私に向かって歩いてくる姿は堂々としている。
 私は足を止めて、彼女が近づいてくるのを待った。目の前まで彼女が来ると、互いに小さく頭を下げた。

「見つかりました?」
「いや、まだ全然」
「そうですか……」

 残念そうに彼女はため息をついた。えらくがっかりしているが、対する私はまったくそんな事はなく、

「ところで、ライオンってこっち行けばいいんだよね?」
「え?」
「だからライオン」
「ええ。……まさかライオンが怪しいとか?」
「え? 違う違う。ただ見たいだけ」
「へ?」
「あ。そういえばさ、キリンって自分の舌でハナクソほじくるってほんと? さっき見たけどすんげー舌長いし」
「まぁ舌伸ばして鼻の中を掃除します」
「マジで!? きったねー! 餌やりしなくて良かった!」
「餌やり? 彼方さん何してたんですか?」
「キリンとバイソン見てた。飽きたから次ライオンとか見たいんだけど」
「あの、彼方さん?」
「あ! テレビでみたんだけど、でっかい猫じゃらし見せればライオンもじゃれたりするってマジ?」
「マジですけど、あの、彼方さん?」
「マジかよ、ほんとにデカイ猫じゃん! 見たい見たい! つーかやってみたいそれ!」
「危ないですから。……いや、彼方さん!?」
「ん?」
「真面目にやってます?」
「何が?」

 また、彼女はため息をついて、さっきより幾分かは目つき鋭く私の目を見て、まっすぐ言い放った。

「あの、お願いした化け物探し、ちゃんとやってます?」

 どうやら、私がサボって遊んでいると思ったらしい。これに関しては反論できない。実際遊んじゃってるし。
 持ってた箒をぎゅっと握って睨まれたので、弁明を試みようかとも思ったが、特に何も思いつかなかったし、別に取り繕う必要もないんじゃないかと思って、そのまま考えてる事を言った。

「だって日の出から四時間も猿見てるなんて飽きるんだもん。せっかく来たから珍しい物みたいじゃん。見た事ないし」
「だからって。気持ちは分かりますけど仕事してください。タダじゃないんですよ」
「別に私は謝礼は要らないっていったじゃん。そっちのボスが勝手に払うって言うから」
「ほくほく笑顔で振り込み先教えてたじゃないですか!」
「いや、お金くれるのは正直嬉しい」
「じゃあ、それなりにちゃんと仕事してくださいよ! こっちは藁にも縋る思いでお願いしたんですから」
「大丈夫だって。ちゃんとやるから。だからまずライオンをだな……」
「後でいいでしょ!?」

 彼女はとうとう我慢が限界だったのか怒鳴り声をあげて、さらに鋭く私を睨む。鬼気迫る表情は中々の威圧感だ。
 考えれば、私にとってはある意味で普通の事だが、彼女にとっては一大事なのだ。

「だから、大丈夫だって。まだ見つけてないけど」
「大丈夫とか見つけてから言ってください」
「そんな急かさないでよ。ほいほい見つけられたら私も苦労しないもの」
「じゃあサボらないでください。また被害が出たらどうするんです」
「だから大丈夫だって。約束する」
「信用していいんですか?」
「もちろん。それにすぐ解決するとは思うし」
「へぇ。大した自信ですね」

225 :無限彼方大人編 ◆wHsYL8cZCc :2012/05/21(月) 03:09:43.91 ID:FuYoA11/.net
 彼女がじーっと睨む。ここだけは私もまっすぐ彼女を見て、きっぱり宣言した。
 私がここに来た理由。彼女達が私を求めた理由。
 私にとっては必然だけど、彼女達には不幸な偶然。

「居るよ、どこかに。寄生が隠れて私を狙ってる」





     2 



 坂下恭子。
 二十三歳。私と同い年。
 職業は動物園の飼育員。担当は霊長目全般。担当は複数居るらしく、彼女は主に猿山を担当している内の一人。
 他には、ゴリラのゲージの清掃や餌やりなんかも彼女の仕事。
 飼育員の中では下っ端の方。勤続三年ではまだまだ初心者に毛が生えた程度のようだ。
 事務所の写真立てには、ずた袋に入った餌を持ったまま、猿の集団に追い回される彼女や、小猿が足にしがみ付いて離れず困っている表情の写真などが並べられていた。昼前に私を睨んだ時のような鬼気迫る怖い顔はまったく写ってない。
 事務所にある彼女の机は綺麗に整頓されていて、管理記録を綴じたファイルなんかも綺麗に並べられている。厚さも均一に揃えられて、書類のはみ出しもない。内容ごとにファイルの色で別けられていて、見た目でどれが何か解るようにしてある。
 第一印象から几帳面そうだと思っていたけど、実際にそのようだ。

 夕方くらいになって、空がうっすら闇を含み始めた頃。時刻は夕方の七時くらい。
 私は恭子と一緒に動物園の事務所に居て、私は今日の成果を報告した。と言っても、成果と呼べる成果は無く、ただ、寄生がどこかに潜んでいる、とまでしか分かっていない。
 恭子は朝の時と同様に、がっくり肩を落として、大きくため息をついた。でも、すぐにびしっと背筋を伸ばして、眼鏡の位置を直し、まっすぐ私を見据えて来る。切り替えの早い人。

「やっぱり簡単に見つからないんですね……」
「時と場合によるかなー、って感じなんだけどね。今回はけっこう変な奴っぽいし」
「変な奴?」

 私が「うん」と答えて、淹れてくれたお茶をずずずっ、っと啜って、はぁーとため息を吐き、そして羊羹をむしゃむしゃ食んでいると、ちょっと眉間に皺を寄せて恭子が私を見ている。なんか不満そうだ。

「どうしたの?」
「変な奴ってどういう事か、詳しく聞かせてください」

 まだ私を睨んでる。どうやら、私が割と余裕を見せているのが納得いかないようだ。
 私としては居場所さえ分かれば後は簡単だろうと踏んでいたので、寄生探しの為にやって来たにもかかわらず、実際は待ちの姿勢だった。
 寄生が何かしらの行動を起こせば、だいたいは私には簡単に居場所が掴めるし、他に手こずりそうな化け物の気配も無かったので、余裕で構えていたのだ。

 私と彼女たちが知りあった経緯を説明しておく必要があるだろう。
 始まりは、まだ寒い、二月四日に起きた。
 事件の内容はこうだ。
 二月四日の朝、いつも通りに、担当の猿山で清掃作業をしていた恭子は、不可解な死に方をしたニホンザルを見つけた。
 私も説明を聞いて、それを写した写真を見た。異常な死体の写真。
 一頭のニホンザルが、中身をすべて抜かれて死んでいたのだ。顔も手足も綺麗なままで、すっぱり腹部だけが綺麗に切開されて、その中身、つまりは内臓が丸ごと引き抜かれていた。
 キャトルミューティレーションみたいだった。ただし、それと違うのが、抜かれた内臓が全て、それぞれ形を保ったままで、綺麗に地面に並べられていた事。明らかに人為的に行われた動物虐待だったのだ。
 すぐさま恭子の上司であるここの園長以下で犯人捜しが始まった。前の日までは異変がなく、次の日の朝に死体があったとなれば、犯人は園内の人間、それも、その日に泊まり込みになる当直のスタッフの誰かに決まっている。
 外からの侵入は考えられなかった。セキュリティはしっかりしてるし、仮に侵入者が深夜に猿山に一人乗りこめば、猿たちが大騒ぎだ。すぐに泊まり込みのスタッフに気づかれてしまう。
 消去法で、内部による犯行と断定された訳だが、全員がそれぞれ仕事を持っており、また、見回りも各自トランシーバーで連絡を取りつつ、それぞれの行動を監視カメラで確認するスタッフも一人と、互いが互いのアリバイを証明しあっている。
 その監視カメラにすら、犯人と思しき者は映っていなかったのだ。

226 :無限彼方大人編 ◆wHsYL8cZCc :2012/05/21(月) 03:10:07.27 ID:FuYoA11/.net

 当然、犯人探しは難航した。
 警察も捜査に乗り出したが、まったく手がかりはなく、そうこうしている内に、第二の事件が起きた。
 また、ニホンザル一頭が不可解な死を遂げたのだ。今回も内臓を引き抜かれ、地面に丁寧に並べられていた。
 その数日後、今度は大型の霊長類のゲージが何者かに破壊される事件も発生し、さらに数日後、今度はニホンザルがまた一頭殺され、ゴリラのゲージで、中に居たゴリラが突然暴れ出して怪我を負うという事も起きた。
 しかもそれらすべてが、恭子が泊まり込みの時に起きていたのだ。恭子自身、担当の動物を殺されたショックは大きかったらしく、持ち前の気丈さがあって何とか持ちこたえてた、というのが実情らしい。よりにもよって自分の当直の日にだけという事も、彼女を追い詰めていた。
 第一発見者で、それも恭子が居る時にのみ犯行が行われたので、警察からは半ば犯人扱いされ、それでなくとも重要参考人である事には変わりはなく、度重なる事情聴取などはかなりのストレスになっていたと、恭子自身の口からも聞いた。
 そんな中、恭子の同僚が起死回生の活躍をする。
 なんと犯人の撮影に成功したのだ。たまたま持っていた記録用のデジカメで、遂にその姿を捉えたのだ。
 ただし、それは恭子にはいささか信じがたい物で、非常にショッキングな写真でもある。
 赤い目をしたニホンザルが、他のニホンザルを殴り殺した直後の写真。
 赤い目。寄生の目だ。

 私はその時、ちょうど今回の寄生を探し始めていた頃だった。
 とは言っても、なんとなく探し始めたので、この動物園の存在はまったく知らず、思うがままにあたりをふらついて、目についた寄生を始末していただけだった。
 そして、四月に入り、そこからさらに半ばくらいまで。
 私はまだ、ふらふらと寄生を探していたのだが、ようやく私と動物園を繋げる一本の連絡が入ったのだ。
 赤い目をしたニホンザルの写真を見てくれ、と。
 連絡を寄越したのは、いつもの対寄生を専門とする公的機関で、最近は個人的に親しかった人達が退職したり役職に就いて忙しかったりで疎遠気味ではあったのだけど、こういう連絡だけはたまにしてくる。
 さっそく私がその写真を確かめて、それが寄生であると判断した。間違いなかった。
 彼らに写真が送られてきて、そして私に連絡が来るまでの経緯を簡単に言うと、一応の証拠写真として赤い目の寄生の写真が警察へ届けられ、そして警察から件の公的機関へ連絡があった。
 言うと簡単だが、実際は相当にグダグダ時間がかかって、下手すると私まで連絡が来なかった可能性すらあったらしい。
 警察としてはあくまで動物虐待事件であって、そんな事件の連絡を眉唾物のオカルト組織へするなんて考えられず、たとえ人が死ぬような事件であっても互いの連絡はスムーズとは言い難い。彼らもお役所の人間という事だ。
 その対寄生の専門組織ですら、その写真が寄生であるかの判断が付かず、ただの動物同士の喧嘩ではないかと勘繰っていたようで、さっさと連絡を寄越せばいい物をしなかった。
 なので、私が写真を見て、それを寄生と判断して、ようやく彼らは寄生だと決めた。
 私と寄生の関係は彼らも良く知る所で、その決定には異論は出ず、私の判断が優先される。

 結果として、最初の猿が殺されてから私が動物園に行くまで、二カ月以上もの時間がかかってしまったのだ。その間にも、動物園では猿が殺され、施設の一部が破壊されるような事件が起きていたのに。
 決定してしまえば仕事が早いのはお役所の得意とする所で、さっそく警察を通じて私と恭子達が連絡を取り合い、実際に会って話を聞いて、私が泊まり込みで寄生を探すと決めた。
 はっきり言えば、このような事態になると私はあまり歓迎されない。当然だろう。訳も解らない化け物退治にどこぞの小娘がやって来ました、なんて言ったところで、それに期待する者が居るだろうか。
 ところが恭子達は割とすんなり話を受け入れたどころか、寄生の撮影に成功したスタッフの一人は今すぐにでも来てくれと言った。
 ほよど切羽詰まった状況なのだな、というのは私にも分かって、そこから数日後、恭子と、ここの園長、そしてすぐにでも来てくれと言ったスタッフ三人の泊まり込みの日に合わせて私は動物園に来たのだ。

227 :無限彼方大人編 ◆wHsYL8cZCc :2012/05/21(月) 03:10:25.38 ID:FuYoA11/.net

 そして今日、朝から動物園をうろついて、確かに私は寄生の存在を感じ取った。彼らもまた、私を感じ取っただろう。居場所こそ掴めないままだったが、今日一日、私は寄生に監視されていたという確信がある。私を呼んでいる。
 寄生は間違いなく、私を狙ってくる。なので、私はそれを待っている。焦らなくても、必ず向こうからやってくるはずだ。だから私は、油断はせずとも割と余裕を持って構えている。
 ちなみに、私が寄生を探し始めたのは二月四日。そう、最初の事件の日だ。寄生は私を呼ぶ準備が整って、そして、寄生の力を使った。私に知らせる為にだ。私はそれを感じ取って、彼らを探し始めて、彼らは私が見つけるまで事件を起こし続けたのだ。
 なので、もう動物が狙われる事は無いと考えている。一番の目標がすぐ近くにいるのだから。

 私と寄生は、時間こそかかったが、会うべくしてここに居る。それが私と寄生の宿命。
 それに巻き込まれたのが、恭子だった。

「最初の時に話したよね、寄生って基本的に何にでも取りつくって。寄生する化け物だから、寄生」
「ええ」
「でも、奴らにも好みがあるの。目的があればより顕著になる。大暴れしたければ化け物になるだろうし、ひっそり隠れたければ目立たない物になる。だけど、たいがいは『自分から動ける物』に取りつく」
「人とか動物って言ってましたね」
「そうそう。だから、最初は事件が起きた猿山の猿がまだ隠れているのかなー、と思ったけど、全然見当たらない」
「え? だってあの写真を見て、寄生とかいう化け物だって断言してたじゃないですか」
「うん。間違いなく寄生。でも、今の猿山には居ないんじゃないかな」
「どういう事です?」
「うーん、自分から出て行くって事はまずないんだよね。ていうか出来ないと思う。だから、撮影されてから私が来るまでの間に殺された猿の一体の内どれかが、例の寄生の猿だったのかも」
「んー? じゃ、もう化け物は居ない事になるじゃないですか」
「ならいいんだけど、確かに寄生は居るんだよね。はっきり解る。だから可能性としては、寄生は一匹じゃなく複数居るか、殺された猿に憑いてた寄生が今は余所に移ってる」
「え、マジで」
「可能性ね。他には、もっと上位の個体の寄生が居て、そいつが猿に寄生して、大本は別に居るって事も」
「それやばいじゃないですか」
「ま、何に寄生してるかにもよるけどね。ゾウとかだったら凄い事になりそう。でも、私の考えではそんな大物でもないし、動物に寄生もしてない」
「どういう事です?」
「たぶんコイツ移動してる。園内至るところに。動物なら移動できる範囲は限られてる」
「じゃ、まさかスタッフの誰か?」
「とも違うんだよね。なら一番怪しいのは事件の時にいつも居た恭子でしょ? でも恭子からは何も感じない。普通の人です大丈夫」
「つまり、現状では皆目見当付いてない?」
「そういう事」
「……ちっ」
「うわ、今舌打ちしたよこの人」
「すみません、あまりに期待外れなもので」
「だから大丈夫だって、必ず出てくるから。じゃないと向こうにとっても意味ないし」
「だといいですけど」
「信用ないな。いい? 寄生ってのは自分の目的に対しては真摯というかストイックというか、全く無駄なく動くんだよ。その寄生が、私に存在をアピールしてきた。つまり私を狙ってる。そうじゃなくても、私に対して何かある」
「ええ、聞きました。それで?」
「だから、真っ先に私を狙うはず。ところが、まだ出てこない。おまけに移動してるし、何に化けてるのかも解らない」
「それが?」
「そこが変な奴って事。何してるの奴は?」
「私が知るわけないでしょ」
「だよねー」
「……はぁ」
「呼んだはいいけど、まだ私と直接向かい合うほど準備が整ってないか、もしくは他の目的があるんじゃないかしら」
「他の目的?」
「たぶんだけどね。まぁ、動物が狙われるって事はもうないと断言はします」
「根拠は?」
「勘」

228 :無限彼方大人編 ◆wHsYL8cZCc :2012/05/21(月) 03:11:34.83 ID:FuYoA11/.net
 恭子は額に手を当てて、これ見よがしにため息をついて見せた。
 私の勘は当たるんだ、とか、それこそ根拠のない事を言い張る事も出来たけど、恭子を怒らせそうなのでやめておいた。
 お茶を啜った。もう温くなっている。
 事務所のドアが開いて誰かが入って来たのは、その直後だった。




 古いアーム式のドアが開く時の、ぎぃーっ、という音が聞こえて、椅子に座ったまま、椅子ごとくるりと回って、事務所に入って来た帽子を被った中年の男性を見た。大きな体で、見事な恰幅。
 私を見つけると、帽子を脱いで丁寧に頭を下げて来た。私も小さく頭を下げて、挨拶を返した。

「お疲れ様です」

 そう言いながら、帽子を被りなおして、中年の男性が歩いて来る。
 志賀原桐彦。この動物園の責任者。つまりは園長さん。
 事務所の一番奥にある自分の机まで歩いて、そして椅子に腰かけると、また帽子を脱いで、薄くなった頭をぼりぼり掻いた。胸ポケットから煙草と金色のライターを取り出して、一本を口に咥える。
 灰皿を引き寄せると、金色のライターの蓋がカチっという音とともに開いて、一瞬、光が反射して輝いた。じゃりっと、ライターのフリントを擦る音がして、オレンジ色の火が灯り、志賀原さんは煙草の煙を肺いっぱいまで吸いこんでから、ため息とともに煙を吐いた。
 この動物円の事務所は世の中の流れとは関係なく、分煙なんてされていないようだ。

「園長、聞いてください」

 恭子が言った。

「頼んだ化け物探し、まったく進展がないそうですよ。それどころか、どこに居るか見当も付かないって」

 志賀原さんは煙草を咥えたまま、スパスパ小刻みに吸っていた。
 それを指で挟んで、挿んだ手を突きだして恭子に言い返す。

「簡単に見つかるとは最初から言ってなかったじゃないか」
「でも!」
「落ち着きなさいって。どうせ、俺らには何もできないんだから」
「でもですよ? 例の化け物が見つからないのはまだいいですよ? でも彼方さん途中でサボって園内見物してたんですよ? キリンに餌までやってたんですよ?」
「キリンに餌?」

 私に志賀原さんの視線が向けられる。なので私は一応の弁明。

「いや、やってませんから。そりゃ、ちょっと見てたのは認めるけど」
「ほらサボってた」
「サボってたんじゃないもんね。ちょっと休憩してただけですぅ」
「途中でライオンとか見に行こうとしてたじゃないですか!」
「結局見せてくれなかったじゃん。怖い顔で睨んで諦めさせたクセにさ」

 恭子はまた怒ったのか、眉間の皺を今日一番に深くして、私を睨みつける。
 それを見ていた志賀原さんが、

229 :無限彼方大人編 ◆wHsYL8cZCc :2012/05/21(月) 03:12:00.53 ID:FuYoA11/.net
「なんだライオン見たかったんですか?」

 と言ってきたので、私は、

「見た事ないもんですから」

 と答えた。
 すると恭子がまた横から怒った声で、

「だから全部片付いてから見ればいいじゃないですかぁ!」

 と大声で言った。
 志賀原さんが「まぁまぁ」と恭子に一声かけてから、私の方を見る。
 
「ライオンくらい、いつでもどうぞ。動物園ですからね。人に見せてナンボですよ」
「さすがボス。話が解る人です」
「こっちとしては例の化け物さえ退治してくれれば満足ですからね」
「必ず見つけます。ていうか、向こうから必ず出てくるはずだから大丈夫ですよ」

 志賀原さんは小さく頷いて、また煙草を蒸かした。
 恭子はまだ怒った顔をしたままで、小さな手帳と無線を持って、携帯電話も確認していた。

「園長、見回り行って来ます」
「分かった。一人で大丈夫か?」
「え? 元から一人でやってるじゃないですか」
「そりゃそうだが」

 と、志賀原さんが言うと、すぐにその意味を理解したのか、強めの口調で恭子は応える。

「大丈夫ですよ。そこの羊羹食べてる人によると、もう動物は狙われないらしいですし」
「うん。もう大丈夫だと思う」
「私が例の化け物だった、って事もないとお墨付きを頂きました。そこの温いお茶啜ってる人に」
「うんうん。普通の人だよ」
「だから一人で行ってきます!」

 と、最後の最後にまたきつい口調で言い放って、つかつか事務所を出て入った。
 私はそれを目で追うだけだったが、志賀原さんが心配そうに見ていたので、

「……不安なら着いて行きますけど?」
「あ、いや。不安ではあるけど」
「恭子が襲われるか心配?」
「いや、それも心配だけど、彼女は生真面目だから。そっちが心配でね」
「あ、なるほど」
「今回の事も、必要以上に思い詰めてるみたいだし」

230 :無限彼方大人編(代行):2012/05/21(月) 03:15:15.05 ID:CsyKENXp.net
 金色のライターがカチンと音を立てて、じゃりっとフリントを擦る。
 その時、丁度、恭子が事務所がある建物から外へ出るドアが開く音が聞こえてきて、やがていつもの巡回ルート(私はすべてを把握してる訳でもなかったけど)を回るのだろうと考えていたら、また別の人が事務所へ入ってきた。
 ぎぃーっと、アーム式のドアが開く音がして、その人は、なにやら後ろを気にしながら事務所に入って来た。
 線は細いけど、目つきがそれなりに鋭い人だった。動物的ではない鋭さで、刃物を思わせた。
 でも、全体の雰囲気はおとなしいというか、割と普通の人っぽい感じで、志賀原さんが普通のおじさんなら、この人は普通の青年、と言った所だ。目つきが鋭いのは職業柄か。

「隆、お疲れさん」

 志賀原さんがそう声をかけた。
 例の写真の撮影に成功した、天城隆さんだ。まだ後ろを気にしながら、事務所の中へと進んでくる。この人も青いツナギを着ている。
 まくり上げた袖から見える腕は全体の印象とは違ってそれなりに筋肉質な感じで、やっぱり職業柄なのか、ちょっと厳つい。
 事務所の中ほどにある自分の机の前に来ると、隆さんは引き出しを漁り始めた。

「さっき、恭子がイライラしながら出て行きましたけど?」
「ああ、すれ違った?」
「無視されましたけどね。何イラついてんですか?」

 無線のバッテリーを取り出して、それを交換しながら隆さんは見回りの準備をしていた。
 見回りの時間なので、準備をしに事務所に戻ってきたらしい。一足早く見回りに出た恭子とちょうど入れ替わりでここに来たのはそれが理由だった。
 道具を準備し終えると、書類に何やら書き込でいる。

「恭子の奴急いで出て入ったけど、別に猿は逃げないし、何慌ててんだか」

 志賀原さんがそれを聞いて、言葉を続けた。

「そういうなよ。いろいろあったんだから」
「まぁそうですけど。でもあんなにイライラしてるのも珍しいですよね」
「真面目の裏っ返しだよ。例の化け物、一番なんとかしたいのは恭子だろう」

 私は恭子が残していった羊羹に手を付けながら、二人のやり取りを見てた。だけど、特にこれと言って話し込むわけでもなく、少し話したら、志賀原さんはパソコンを見て、隆さんはずっと書類を書いていた。あとは無言で、私はただじっとしていた。
 隆さんはすぐに書類を書き終ると、それをファイルに綴じて、無線を持って、立ち上がった。

「じゃ、僕も見回り行ってきます」

 志賀原さんは特に声も出さず、パソコンを見ながら手を挙げて応えただけだった。
 でも、すぐに何かを思い出したようで、「あ」と言って、「ちょっと待て」と隆さんを呼び止めると、私の方を見た。

「彼方さんラオイン見そびれたらしいですね」
「ん? ああ、朝に恭子に怒られて断念しました」
「せっかくだし、隆に着いて行くといいですよ。奴の担当だから。食事風景が見れますよ、今なら」
「え? って事はゲージの中入れてくれんの?」
「ゲージの中までは駄目。でも、一般開放してない小屋の中までならいいですよ。特別ですよ」
「いいの? マジでいいの?」
「いいですよ。園長の俺がいいって言ってるんだから。なぁ、隆?」

 隆さんは素っ頓狂な顔で、

「すみません園長、何の話?」..

231 :無限彼方大人編(代行):2012/05/21(月) 03:16:56.97 ID:CsyKENXp.net
とりあえず一回目の投下終わりです。

232 :創る名無しに見る名無し:2012/05/21(月) 15:07:26.80 ID:SdoU9Lc4.net
投下乙。久々の彼方の活躍に期待

233 :創る名無しに見る名無し:2012/05/26(土) 23:26:39.47 ID:Vx1ouZ0b.net
ttp://dl10.getuploader.com/g/6%7Csousaku/637/創発155.jpg

234 :創る名無しに見る名無し:2012/05/26(土) 23:35:50.39 ID:UBujlEPK.net
つまみ食いすんな店員w

235 :創る名無しに見る名無し:2012/05/26(土) 23:37:20.55 ID:+VRfoyUS.net
太るぞはっちゃん

236 :創る名無しに見る名無し:2012/05/27(日) 00:18:32.69 ID:Tvf3w0tA.net
バイトwww火傷すんなよー

237 :創る名無しに見る名無し:2012/05/27(日) 03:06:25.12 ID:/vJN9Ae2.net
トングが業務用すぎるwww

238 : ◆7FtGTaokck :2012/05/27(日) 04:16:06.36 ID:FxBuTA7U.net
飛び出したビゼンを見て、一瞬硬直をする狼。その隙にビゼンの剣が体を二つに引き裂く。
突き当たりにはそこそこな数の狼と人間が待機していた。距離も少々ある。
「突っ切るぞ!」
「ああ」
相手が遠隔攻撃をしてくる前に距離を詰めてしまえばいい。
走ってくる狼を立ち止まらずに、薙ぎ払っていく。しかし数が多く、どうしても足が止まってしまう。
こんなところでもたもたしている暇はない。先ほど渡された道具の一つを取り出す。
握り拳小程度の大きさで丸く表面がすべすべしていて、線が一本だけちょろっと出ている。どうみても爆弾だ。
使用法も聞いてある。この線を引っこ抜いてすぐに投げるだけ。
放物線を描いて、爆弾が媒体のちょっと手前のほうに転がる。先ほど引っこ抜いた線の穴から煙が出始めた。
「おい、あんなちっこいのでどの程度の威力が出るんだよ」
「さぁ……」
向かってくる狼を迎撃しながら答える。
爆弾から出ていた煙が消えた。……何も起きない。
爆弾から離れて身構えていた人間が笑い始めた。狼も前足で転がして遊んでいる。
これは不発弾だ。
「道具なんかに頼るなってことかな」
「信じられるのは己の腕と剣だけかよ!」
これなら先ほどの匂う道具のほうがよっぽど使えた。しかし手元にあるのは爆弾と短銃だけ。
増援が来ているのか元から数が多いのか敵の狼はいくら斬っても減らない。
いくら狼が弱いと行ってもこのままじゃジリ貧だ。あっちにいた人間が爆弾をこちらに蹴り飛ばした。
途端に鋭い閃光が走り、同時に体に音の衝撃を受ける。
「あの爆弾は爆発するまでに少々時間差があるんですよ。もちろんそれまでに衝撃を受けたら爆発しますけど」
「使いにくい道具だな」
「ですが性能はお墨付きです」
魚の言うとおり爆弾周りの地面はえぐれており、その威力を如実に現している。
それだけじゃない。爆発と同時に何かを、おそらく鉄片のようなものを拡散させている。
距離自体は遠くまで届くような代物ではないようだが攻撃に関しては十二分なぐらいだ。
爆心地にいた者はもちろんこと少し離れた場所にいた人間や狼はうずくまって動かない。
爆音に怯んだ狼を叩き、媒体へと近づく。
近づくにつれ、疑いが確信に変わる。間違いない。あの媒体は隊商の荷物として持ち込まれたものだ。
気づけば狼たちが少なくなっている。恐れをなして逃げたのか? しかしこれを守らなければあいつらがいる意味がない。
何か嫌な予感がする。隣を見るとビゼンも身構えてあたりを見回している。
「近くに何かいないか?」
「今のところは……いや、来てます! 影が一つ、屋根を飛んでここに向かって来てます!」
「つーことは上位の狼あたりか。二人いりゃ倒せるな」
しかしおかしい。上位の狼ならむしろ雑魚もここに残るはずだ。
もしかしてこちらの仲間が来ているのか? 魔術師ならば屋根を飛んで移動も出来るだろうが……。
上空に何か居る。
咄嗟に後ろに飛び退く。
降って来たそれはこちらに背を向けていた。大きな赤い外套を羽織っている。
立ち上がった姿はビゼンよりも大きく、手に持つ剣はその体躯すら越えた鉄板に近いものだ。
横を見るとあのビゼンが眼を大きく見開き、震えている。
「……兄貴?」
記憶が蘇る。かつてビゼンが言っていた人物。
ビゼンが兄貴と慕い、この町を救った前隊長。
「久しぶりと始めまして、だな」
男は振り向く。外套が翻り、男の姿をさらに大きく見せる。
「名乗ろう。俺の名はマゴロク。自衛団隊長……ではなく前隊長だ」


以上『死者たちの夜W』
>>233
給料から天引きですねぇ・・・

239 :創る名無しに見る名無し:2012/05/28(月) 04:22:10.56 ID:FasR/BE4.net
>>238
なんというボス

240 :創る名無しに見る名無し:2012/05/29(火) 10:11:19.25 ID:pISf3tTD.net
我が輩はウラトである。職歴はまだない。
どこで道を誤ったかとんとわからぬ。大学をかろうじて出たことは覚えている。
ニートかと思った輩がいるかもしれぬ。それは浅はかである。
これこの通りアパートに住んでいる、家賃もバイトで払っている。
無職ではない。バイトが履歴に書けぬとはこの頃ようやく知った。

241 :創る名無しに見る名無し:2012/05/29(火) 10:46:53.08 ID:pISf3tTD.net
機会恵まれず正社員になれぬばかりである。
スーツに袖を通して面接もした。我が輩は就活と呼ぶものを知った。
幾人ばかりで会社の人と受け答えをするのである。簡単なことである。
自分の番が来たので特技は何ですかと問われた。
飯を食らいやがて死ぬでしょうと答えたらしかめ面をされた。
別の人に当社を受けた動機はと問われた。
太陽がいつもより暑かったからと返した。
ご覧のありさまである。
これは時折我が輩の精神を蝕み、枕に顔を埋めてゴロゴロと転がることになるのだが後悔はせぬ。
誰彼も過ちはある。大切なのは未来である。
時はまだ至らず。いまだ竜は沼に潜むのである。
今はゆるせ。

242 :創る名無しに見る名無し:2012/05/29(火) 11:11:08.27 ID:hdQJWqMx.net
ウラトさん達観してる場合じゃねーw

243 :創る名無しに見る名無し:2012/05/29(火) 11:20:40.20 ID:oI3c61OP.net
あれ、なんだろう。
精神にダメージが……
心が、イタイ

244 :創る名無しに見る名無し:2012/05/29(火) 12:42:06.00 ID:pISf3tTD.net
機をうかがう身であるが生きていくには食わねばならぬ。
パンのみに生きるにあらずと説いた聖人もいたがそれは間違いである。白米も食べるべきだ。
バイト先はここから徒歩数分のコンビニである。
シフトはある程度は融通が聞くし休むのも気楽である。
もちろん夜間を選択した。同じ労働力なら賃金は多い方がいい。
コンビニにで何をするとたずねるかもしれぬ。別段何もない。
仕事である。それ以上でもそれ以下でもない。
品出し。掃除。レジ打ち。期限切れの廃棄。休憩。
眠気覚ましのクラウチングスタートダッシュ
有線聞きながらのレジ打ちヘッドバンギング
是々日々日常である。
僕はしませんけどねと最近入った新人は呟いた。
若いとは思っていたがどうやら自分とは世代の溝があるらしい。
店長は仏陀かイエスの生まれ変わりに相違なく、廃棄品を持ち帰る許可をくれる。
まったくもって頭が下がる。店長の住まいがわかったらベッドの位地を変えたいくらいだ。
とりあえずコンビニには足をむけてはいない。
卑しい奴と嘲るのがきこえるが、たかが日付が変わったくらいで棄てる方が気がしれぬ。
3日4日位では早々腐らぬ。大丈夫である。証拠は自分である。
労働の喜びと戦利品を手に帰路につく。これで次のバイトまで持つ。
明日の休みはなにをしようかしらん

245 :創る名無しに見る名無し:2012/05/29(火) 17:00:58.03 ID:b1PCDJpc.net
なぜ最後ゆるいw

246 :創る名無しに見る名無し:2012/05/30(水) 00:43:57.23 ID:Ksvl/35X.net
ウラトさん援助したくなっちゃう

247 :創る名無しに見る名無し:2012/05/30(水) 17:19:03.48 ID:R6C9kAhU.net
ハルトシュラー。
家 屋敷。
収入 不明だが生活には困ってないと思われる。
職業 創作家



ウラト、発子
家 アパート
収入 バイトで生活できる程度
職業 コンビニのバイト

……あれ、はっちゃんのライバルってウラト……?

248 : ◆91wbDksrrE :2012/05/30(水) 18:20:51.31 ID:+AAN0yQL.net
※裏刀とウラトの関係、及びウラトの設定は、他の人の設定あんまり見なおしたり
確認したりしてないんで割りと適当。許してヒヤシンス。

249 : ◆91wbDksrrE :2012/05/30(水) 18:21:05.57 ID:+AAN0yQL.net
「ほら、勇者とかだって最初はひのきの棒持って、50Gからスタートじゃない!
 わたしはそういうアレなのよ! これからレベルアップして魔王倒す、その第一歩を
 今踏みしめてるわけ!」
「……姉さん、別に言い訳しなくてもいいと思いますよー。というか第一歩何年踏みしめ
 続けてるんですかー」
「仕方ないじゃない! この世界で生きていく為には、たとえ神といえども先立つものが
 必要なんだから!」
「じゃあ、ちゃんと就職したらいいんじゃないでしょうかー」
「正規労働に就いたら、本業ができなくなっちゃうじゃない」
「……本業ー? 姉さん、ファミマでバイトして、廃棄のファミチキをトングでがっつく
 以外に、仕事ってありましたっけー?」
「あるわよ何言ってんのよわたしゃ女神だよ!? ほら、初期カッコ良かった頃にやってた
 ような、創作者守ったりとかそういう色々!」
「ああー。あれまだやってたんですねー」
「まだやってたとか言うな! 切なくなるわっ! 日々見回りとか色々やってんだからねっ!」
「その割には影が薄くなる一方でー」
「お前の腹は黒くなる一方だがな!」
「そんなー。腹黒だなんて、照れちゃいますよー」
「褒めとらんわ!」
「……で、いつになったらオリハルコン手に入れて、王者の剣持てるんですかー」
「あ、明日からもっと頑張るもん!」
(やっぱりウラトさんがライバルの方がしっくりきますねー)

『師匠師匠』←チャット中だと思いねぇ
『んー。なんだ裏刀』
『師匠って、誰かライバルみたいな人いるんですか?』
『ライバル……強敵と書いてともと読む、みたいな?』
『微妙にそれ違いますけど、まあそんな感じです』
『そうだなぁ……近くのファミマの店員さん?』
『……なんでそれがライバルなんですか』
『いやあ、たまに他チェーンだけど行くんだけど、接客とか完璧なんよ。
 品出しとかも芸術的だし、見てて金が取れるレベル?』
『へえー。そういえば師匠もコンビニバイトでしたっけ』
『あの人を見習って、明日から頑張ろうといつも思う』
『それ、ずっと思ってるだけって事ですよね……』
『そうとも言う。でもまあ、心のライバルというか、目標。コンビニ的な意味で』
『なんか、想定してたのと違うんですけど……まあ、目標があるってのはいいことですよね』
『ちっこくて可愛いし、妹にしたい』
『……やっぱり何か違いますよね?』

250 : ◆91wbDksrrE :2012/05/30(水) 18:21:19.38 ID:+AAN0yQL.net
というわけで、互いにライバル視していたという新事実が発覚した!(捏造


251 :創る名無しに見る名無し:2012/05/30(水) 18:38:33.10 ID:Ksvl/35X.net
もう女神やめてコンビニ道を極めるべきだな

252 :創る名無しに見る名無し:2012/05/30(水) 18:45:38.99 ID:R6C9kAhU.net
ワロタw
ウラトにちっちゃくてかわいいとか言われるはっちゃん小柄過ぎるw

253 :創る名無しに見る名無し:2012/06/01(金) 13:18:45.31 ID:wuB0iDbv.net
暇だから、という理由で直りんに遊ばれる
ジークフリード少年を幻視した

254 :創る名無しに見る名無し:2012/06/01(金) 13:36:58.82 ID:JdN/FAGV.net
よし書くんですね

255 :ふんどし少女、始動 ◆KazZxBP5Rc :2012/06/02(土) 23:38:44.95 ID:HEU2/NFr.net
「ようトシちゃん、相変わらず元気じゃねえか。」
「『ちゃん』付けはやめてくれ。もうそんな歳じゃねえ。」
「何言ってんだい、まだまだ若えだろ?」
「この村の基準ではな……。」
とある山あいの小さな村で、いつもの会話が繰り広げられていました。
トシちゃん、本名を五種寿文(いくさ としふみ)といいますが、彼は齢50を迎える大工でした。
「じゃあな。コレ直し終わったらまた言ってくれよ。」
「ああ。」
寿文は大きな木造の倉を見つめ、ため息をつきます。
ここに納められているのは、来週の祭りで使う神輿です。
「担ぐ奴等は足りるのかねえ……。」
この村では高齢化が進み、若者が次々と都会へ出て行く現状です。
そんな中、この予感は的中することとなってしまいました。

夜。
「何ぃ!? 蔵斗が足を木に挟んだって?」
寿文のもとに、数少ない若者の怪我を知らせる電話が鳴りました。
「それでお前、神輿はどうするってんだ……はぁ?中止!?」
そのとき、小さな影が階段の上から降りてきました。
知らずのうちに怒鳴り声となっていた父の様子に驚いた一人娘の祀(まつり)が、部屋から出てきたのです。
「どうしたの?お父さん。」
「お、おう、祀か。いやな、神輿担ぐ人間が足りなくなっちまったんだ。」
「私がやる。」
寿文が言い終わるや否やの即答でした。
「だって、お祭りがなくなるの嫌だもん。」
「何馬鹿言ってんだ。お前は女で、まだ13で、そのうえ運動もしてねえじゃねえか。」
「お父さんがさせてくれないからでしょ。」
「それは……。」
なんとかして止めたい寿文は、突如あるものを思い出しました。
「ちょっと、ついてきやがれ。」

祀が連れられた先は、家の裏にある倉庫でした。
寿文が奥を探り、ひとつの桐の箱を取り出しました。
「これは、我が家の家宝だ。」
箱を開くと、中に入っていたのは白くて分厚い布の塊でした。
「何、これ。」
「ふんどしだが、ただのふんどしではない。とあるツボを押さえる特殊な構造になっていて、ご先祖様はこれで山をも持ち上げたと聞く。」
「つまりこれを穿けば私でも神輿が担げるってことね。分かった、穿いてくる!」
祀はふんどしをひったくると、一目散に自分の部屋まで駆けていきました。
「あっ、おい! まだ大事な説明が!」
思いとどまらせるつもりが、どうやら逆効果だったようです。

鏡の中には、法被にふんどし姿の祀がいました。
「これでよし、と。……でもやっぱりちょっと恥ずかしいかな。」
元の服に着替えようと、ふんどしに手を掛けます。が。
「あ、あれ? こんなに固かったっけ?」
あたふたしていると突然部屋の扉が開きます。
「祀っ!」
「きゃっ!」
駆け込んできたのは寿文でした。
彼は祀の姿を見ると、愕然とした表情を浮かべました。
「な、なに?」
「遅かったか……。そのふんどしは、一度着けると二度と脱げない構造になっているんだ。」
「え……ええええ――――――――っ!」

こうして、祀の受難が始まったのでした。
「じゃ、じゃあ、おトイレは?」
「ツボパワーでしなくてもいいようになっている。」

おわり。つづかない。

256 :創る名無しに見る名無し:2012/06/02(土) 23:39:48.26 ID:HEU2/NFr.net
投げっぱなしなんで自由に使ってくだせい
元ネタは乗っ取りの何スレか前

257 :創る名無しに見る名無し:2012/06/02(土) 23:45:49.82 ID:uBkmd+/d.net
ツボパワーとんでもねえええwwww

258 :創る名無しに見る名無し:2012/06/02(土) 23:50:42.09 ID:k5cnddXH.net
つ……ツボなのか……
なんという東洋の神秘回避

259 :創る名無しに見る名無し:2012/06/03(日) 00:13:08.24 ID:oWOi44uK.net
書いたんかwww

260 : ◆7FtGTaokck :2012/06/04(月) 01:35:52.96 ID:k+rSV2r2.net
敵対しているというのに剣を担いだまま構えようとしない。
余裕があるのかそれともこちらに敵意がないのか。
「あー、そっちのお嬢さん? 自己紹介願えるかな?」
声にも敵意が感じられない。普通に初対面の人間と話す口調だ。
「……私はシカ・ソーニャ。現在の隊長を務めている」
「ソーニャ? あの最果てのソーニャの娘か?」
「父を知っているのか」
「ああ、よく知っている。あいつは……剣と船がさっぱりなやつだった。
 ということはお前はあの拾い子か。俺が会ったときはこーんなちっちゃかったんだがな」
そういって左手の人差し指と親指で僅かな隙間を作る。久しぶりにあったおじさんのようだ。
「剣がさっぱりだったあいつの娘が剣を持っているなんて似てない親子だな。
 しかし悲しいかな。友人の娘と弟分を殺さねばならぬとは」
雰囲気が変わった。和やかさすら感じたあの空気が嘘のように冷たくなる。
「マゴロクさん。やはり戦わなければいけないのか?」
「俺は死者だ。そんなものが現世を漂う権利などないのだ。
 戦場で敵として会えば例え親子友人なんであろうがやることは一つ。殺しあうだけだ」
担いでいた大剣を構える。剣先は震えず、その意思と己の強さを示している。
「ソーニャ。構えろ。全力で送り返すぞ」
「ビゼン! いい面構えだ! どれ、二人まとめて遊んでやろう。退屈させるなよ?」
一歩踏み出した。と、思ったら止まってそのまま倒れている人間を見る。
そして剣を振り下ろした。
「ちゃんとトドメを刺しておかないとな」
動かないものだから既に死んでいるものかと思っていたがどうやら違うようだ。
しかし見ただけで生死など判断出来るものでは……。そこで現在の状況を思い出す。
胴を半分にされた死体からそっくりそのままの人間が生み出された。
しばし自分の手を見て呆然としている。
「お前は死んで生き返った。他のやつにトドメを刺して回れ。この二人は俺がやる」
「あ、ああ……。わかった」
一度死んだ者は蘇らないようだが生きている者なら死ねば即時蘇生される。
生きている人間が敵なら完全に葬りには二回殺す必要があるというわけだ。
「さてと、じゃあ改めて」
彼我の距離は十歩強と言ったところだろうか。一歩で行くには遠すぎる。
相手の出方を見て対応を変えることぐらいは出来る距離。
だが気づけば眼前に迫っていた剣を横に転がって交すことしかソーニャには出来なかった。
音を立てて、剣とマゴロクが通り過ぎる。全身を使った突き。
転がるソーニャを飛び越え、ビゼンがその背中に斬りかかる。
鉄がぶつかり合う大きな音。体勢を立て直し、獲物を短剣に変える。
再び、ビゼンが斬りかかり火花が散る。右側に回りこみ、脇腹を狙う。
マゴロクは両手で剣を持ち横にして、防御している。刃先は反対方向だ。
仮にソーニャを迎撃するために薙ぎ払うように体を大きく動かさなければいけない。
もちろんそんな余裕など与えない。
マゴロクは剣を動かさなかった。ビゼンの剣を受けている状態で左手で剣を持ち
右手でソーニャを見ずに殴ってきた。
想定外の攻撃に思わず回避行動をとり、機会を逃す。受けていた剣を払い、ビゼンも後ろに下がる。
ビゼンが正面を、ソーニャが背後を取りながら動く。
マゴロクはビゼンとソーニャを交互に見やった後、ため息をついた。
「残念だ。ビゼンはあまり成長が見られないし、お嬢ちゃんは覚悟が足らない」
「……人間を殺す覚悟なら私にだって」
「はっはっは。そんな低俗なことじゃない」
笑いながらマゴロクが答える。
視線がビゼンから離れ、ソーニャのほうを向く。

以上『死者たちの夜X』

261 :創る名無しに見る名無し:2012/06/07(木) 10:10:16.18 ID:pWo4KVR8.net
円川「貴女がパッドを着けるというのなら好きにすれば良い。だがそれは誇りをとりもどせず、
困難に一人で立ち向かうこともできない軟弱な住人になってしまうでしょう」

彼方(軟弱な住人……ッ!)

ギリッ

彼方「う、失った物を取り戻す!」

あんてな「あーっと、彼方選手! 逃げずに現実と立ち向かうーーーッ!」

262 :創る名無しに見る名無し:2012/06/07(木) 10:22:44.79 ID:pWo4KVR8.net
彼方「我々パーヘクト住人は……いついかなる時も
胸を偽らないのが誇りではなかったのですか?」

円川「グロロ……たまにはバストを盛ることだってあるわ……」

彼方(う、裏切られた……!)

263 :創る名無しに見る名無し:2012/06/07(木) 15:10:16.09 ID:pWo4KVR8.net
彼方「円川ぁーーーッ!」

円川「人の名を! 気安く呼んでくれるじゃあないの! それにその振り上げた拳!
そいつをどうするつもりかしら!?」

彼方「許せない! 他のことはどうでもいい! 私をたばかったことは許せない!」

円川「ほほう、さては見ましたわね、私の画像を! そして武力による解決を試みたわけね」

彼方「コオォォォォ」

円川「無駄無駄無駄無駄」

264 :創る名無しに見る名無し:2012/06/07(木) 15:50:53.78 ID:gX+m7y8q.net
なんやねんwwwwwww

265 :創る名無しに見る名無し:2012/06/07(木) 17:41:23.91 ID:pWo4KVR8.net
円川(小指を! こいつの目にいれて……殴りぬける!)

バキュラァッ

円川「72(なに)ィッ! 滑ったぁ!?」

彼方「とったぁーーーッ!」

コオォォォォ

彼方「撃壁背水掌!」

ペターンッ!

円川「ぬう、身を擦り合わせるほどの接近がうぬの間合いか!」

彼方「私の拳は邪拳ゆえ種明かしは一度きりよ」

266 :創る名無しに見る名無し:2012/06/07(木) 17:56:09.31 ID:pWo4KVR8.net
彼方「秘孔 陥没を突いた、あなたの命はあと3秒」

円川「面白い、ならばその数わたしがかぞえてあげましょう
ひとーつ、ふたーつ、みぃーーーつ」

シィーン

彼方「!」

円川「この管理人の肉体にそのような児戯は効かない! 教えてあげるわ!
私は住人胸度を0から10に自在に変えることができる!
したがって胴体への攻撃は無意味よ!」

ガシッ

彼方「しまった!」

円川「これこそ管理人に歯向かいせし愚か者を葬るフェイバリッドホールド!」
ダッ

円川「地獄の断頭台!」

ギュイーーーン

円川「円川の能力を見た者は……」

ゴシカァンッ!

彼方「グヘッ!」

円川「もう、この世にはいない……」

267 :創る名無しに見る名無し:2012/06/07(木) 19:17:51.22 ID:CAxMq8tF.net
ちょwwwww

268 :創る名無しに見る名無し:2012/06/07(木) 19:47:18.70 ID:pWo4KVR8.net
ピク

円川「……な」

彼方「む…ぐ……」

円川「地獄の断頭台を受けて動ける者が……はっ!」

桃花(彼方……大丈夫……)

円川「し、死んだはずの桃花が……」

裏刀(ほら……肩を貸そう……」

彼方「ま、まだまだこれからよ……」

グググ

円川「こ、これが創作発の友情パワー……」

269 :創る名無しに見る名無し:2012/06/08(金) 09:24:16.05 ID:jSUb7c8x.net
K・A・N・A・K・A 彼方!
K・A・N・A・K・A 彼方!
3、2、1 ファイヤー!

胸のpadが肩紐揺らす 今日の詐称は並じゃないぜ
悪の心に負けたら最後 スリーサイズ闇に閉ざされる
愛する者の眼差しが 海に行くたび部屋に泊まるたび 私強くする

ヒール! ルール破りの
ファイター! 豊胸手術
さあお遊びは ここまでだ

チャンス! 夏休み前の
アタック! バストアップ体操
私はヒロイン 無限彼方

K・A・N・A・K・A 彼方!
K・A・N・A・K・A 彼方!

3、2、1 ファイヤー!

270 :創る名無しに見る名無し:2012/06/08(金) 17:04:40.16 ID:oL7AIJR+.net
これはひどいwww

271 : ◆7FtGTaokck :2012/06/10(日) 15:26:37.50 ID:f9cdA3wK.net
「かつては騎士道だとか武士道だとか。戦いの中に誇りや素晴しさを見つける戦いかたがあった。
 だがな、それは人間が人間であるということを見失わないようにするためだけのもの。
 違う言い方をするなら人間を捨てきれないやつらが持つ思想だ。
 それも悪くない。しかしそれは試合での話。殺し合いには向かぬ。わかるか?」
右手で剣を上げ肩に担ぎ、構えを解いた。ビゼンがゆっくりと間合いを詰めている。
「殺し合いに最も必要なのは相手を殺す。この曇りなき殺意だ。
 誇りも情けも恐怖も悲哀も全てを食らい尽くす純粋無垢な殺意。
 人間を捨て、獣の本能になってでも殺す意思こそが最も重要なものなのだ。
 お嬢ちゃん。あんたのはまだそれがない。故に俺には勝てない」
「それはやってみなければわからないだろ!」
言ったと同時に突進する。マゴロクが担いでいた剣で地面ごと切上げた。
大きな石はソーニャを目掛け飛び、細かい砂が視界を阻む。
しかしこれでいい。ソーニャは飛んできた石を通常の大きさまで伸ばした剣で受ける。
「ビゼンにはそれがあった。一種の才能と呼べるものだ」
数歩先から聞える声。マゴロクは完全にビゼンに背中を向けていた上に、切上げた体勢だ。
避けることは出来ないし、仮に受けれてもビゼンの全力なら防御も意味ない。
「勿体無いものだ」
背中を風が押している。砂嵐が目の前で渦を巻いた。
剣に鈍い輝きが線を描き、今度は前から風が吹き、砂嵐が晴れた。
マゴロクはビゼンのほうを向き、剣は横に振り下ろしている。
一方のビゼンは剣を振り上げた状態で止まっていた。
「鉄の旋風。人間相手はお前が初めてだな」
ビゼンの胸から血が噴出し、そのまま膝から崩れていった。
「ビゼン!!」
強く地面を蹴り、飛び掛る。
振り向きざまの横薙ぎが飛んでくる。かわせない。受けきれない。
左から飛んでくる剣の刀身に素手を乗せ、飛び越える。
驚いているマゴロクの頭上を越え、背面から一撃をいれてそのまま地面に落ちる。
やってみるものではない。刀身を触った左手がひりひりする。着地もうまくいきやしない。
しかしビゼンの傍には来れたし、背中に一撃は与えられた。
「無茶をするな。お嬢ちゃん。だがいい一撃だった」
マゴロクは背中を触って、傷の具合を調べている。痛みを感じない以上は確実に行動に支障が出る攻撃をしなければいけない。
ちらりとビゼンを見る。呼吸はどうやらしているようだが動きがない。このままでは危ない。
懐に手を突っ込み、線を抜く。それと同時にマゴロクに投げつけ、獲物を盾状に変える。
剣で斬ってくれたら上々だがマゴロクは普通にそれを素手で取った。
「爆弾ねぇ。こんなもんあっちに投げておくぞ」
ばれている。が、好機。短銃を取り出し、爆弾に狙いを定める。
明後日のほうを見ていたマゴロクの反応が遅れた。
撃ったと同時に盾でソーニャとビゼンを守る。しかし爆発音が聞えない。
代わりに強烈な衝撃を受け、思わず吹き飛ばされた。
マゴロクが剣を構えて立っている。爆弾を投げようとしていた体制から数秒も経っていない。
遠くのほうで爆発音が聞えた。爆弾は既に投げてあった。いくらなんでも早すぎる。
しかもそれと同時に再びビゼンから離れてしまった。
「いい調子だ。しかしまだまだだ」
踏み出そうとしたとき、何かが咆える声が空に響いた。狼のものではない。もっと低い強大な何かの声。
どこかで聞いた気がする。しかし今はそれを考えている場合ではない。
手持ちの爆弾は残り僅か。短銃も弾はそうない。
マゴロクの少し後ろを見る。ビゼンは先ほどと変わらず、剣を握ったまま伏せている。
よく見るとその横を魚が飛んでいる。そういえば彼女がいたなと思い出すが何かが出来そうなわけがない。
マゴロクが一歩踏み出した。それと同時に短銃を撃つ。刀身を盾にして銃弾を弾かれる。
とてもじゃないがこんな銃では、というよりも大抵の銃ではあの剣を貫通することは叶わない。
やけになって銃そのものを投げてみるもマゴロクの横を通り過ぎていった。
獲物を弓矢に変え、狙いを定める。その隙を狙って、マゴロクが間合いを詰めてきた。

以上『死者たちの夜Y』

272 :創る名無しに見る名無し:2012/06/16(土) 23:39:33.13 ID:yDS99RcK.net
投下するよー

273 :影武器姉妹 四天王編 第三話 ◆KazZxBP5Rc :2012/06/16(土) 23:41:01.17 ID:yDS99RcK.net
広大な屋敷を前に、桃花、彼方、男の三人が立ち並ぶ。
「うわあ、すっごーい!」
「どうぞ、お入りください。」
前日の戦闘中に突然現れた男は烏丸忍(からすま しのぶ)と名乗った。
彼は悪世巣と婆盆を一撃で下した後、姉妹を自邸に招待したのだ。

木造の大きな門を抜けると、そこには純和風の庭園が広がる。
これまた立派な玄関を通り、いくつもの広い部屋を横目に三人は進む。
やがて、姉妹は一つの部屋に案内された。
「姉さん、これ……!」
彼方は、部屋の壁のいたるところに描かれた水墨画を見て、あることに気付いた。
「寄生!?」
「そうです。私の一族もまた、“雲永(うんえい)”の末裔なのです。」
「雲永……。」
「姉さん、知ってるの?」
「ううん、おばあちゃんの話で名前だけチラッと聞いたことがあるくらい。」

家政婦らしき着物の女性が運んできた日本茶を片手に、三人は話を始めた。
「では、雲永について軽く話しておきましょうか。」

雲永はこの地域を治める大地主だった。
彼の土地は広大で、一人で全てを見渡すのは不可能だった。
そこで彼は、自身の不思議な力を利用し、寄生たちを造ったのだ。
寄生たちは悪さをする者に取り憑き、それを正したと言われる。
しかし雲永亡き後、寄生たちは暴走する。
管理する者がいない今、好き勝手に人に取り憑き、欲望のままを尽くす寄生ばかりとなった。
雲永の子孫たちは、彼から受け継いだ僅かな力を長い時間を掛けて育て上げ、寄生へと対抗する力としてきた。

「それこそが、我々が操る“影の力”なのです。」
カコン、と鹿威しがひとつ鳴った。
「さて、あなた方は現在我流で戦っていらっしゃるようですが、どうです、私と一緒に特訓いたしませんか?」
「やります!」
「ちょっと彼方!」
桃花は即答した彼方の袖を掴み、自分の方に向かせる。
そして二人は小声で相談しはじめた。
「だって昨日の寄生だって私たちじゃ全然歯が立たなかったじゃない。」
「それは……。」
「それに、別に悪い人じゃなさそうだし。」
「なんで分かるのよ。」
「勘。」
思わず溜息が出る。本当はタイプだからじゃないのかと。言えないけれど。
そんな桃花の気も知らず、警戒されている本人である忍が口を挟む。
「大丈夫ですよ、そもそも私たちの影の力では人間を攻撃することはできませんから。」

結局、桃花も特訓に参加することになった。
二人っきりにしてあんなことやこんなことになってもお姉ちゃん許しませんからね。
なんて初めはそう思っていたが、彼方は意外と真面目に取り組んでいたので杞憂だったようだ。
実力が足りていないのは事実なので、桃花もすぐに雑念を捨て特訓に専念しはじめた。

274 :影武器姉妹 四天王編 第三話 ◆KazZxBP5Rc :2012/06/16(土) 23:41:56.62 ID:yDS99RcK.net
三日後の夕暮れ時。
そろそろ烏丸邸への道もバッチリだ。
姉妹は門を潜り、無限家の敷地くらいはあるんじゃないかという大きな庭に足を踏み入れる。
こうして日常になり始めていた習慣は、しかし、日常にはならずに終わりを迎えることになる。
二人と、出迎えた忍との間に、小さな影が降ってきた。
「婆盆ちゃんと悪世巣ちゃんがなかなか帰ってこないと思ったら、そういうことだったのね。」
影は徐々に人の形となり、姉妹のよく知った姿に変化した。
「影糾!」
「そんな怖い顔しないでよぉ。今私が用事があるのはこっちのヒトなんだから。」
影糾と目が合った忍は苦い顔をして後ずさる。こいつは間違いなく危険だ。
「別に敵討ちとかそういうんじゃないのよ。だって弱い仲間なんていたってしょうがないじゃない。」
「桃花さん、彼方さん、見ていてください!」
「ただねぇ、ちょっとでも危険な芽は摘んでおきたいじゃない? あ、これ婆盆ちゃんの受け売りね?」
にらみ合う忍と影糾だが、放つ言葉はお互いに向けたものではなかった。

鹿威しの音を合図に、まずは忍が動いた。
忍の“影の力”は拳銃であるはずだったが、現れたのはなぜかマシンガンだ。
「どうして!?」
「彼方さん、“影の力”とは“寄生を倒すイメージ”が形となったもの! その本質は“攻撃する部分”、弾や矢にあります! 銃や弓はあくまでガイドに過ぎない!」
忍は雨のように弾をぶっ放した。
影の武器には弾切れという概念が無い。十秒あまり、忍は引き金を絞り続けた。
ところが、放たれた大量の銃弾は、まるで影糾の前に見えない壁があるかのようにことごとく弾き落とされていた。
「なっ……!」
「なーんだ、つまんないのぉ。」
影糾は欠伸しながら、影を忍の方へと伸ばしてゆく。
「でも、私に歯向かったんだから許してあげなーい。」
影は忍を中心にサイコロを形作るように折りたたまれていく。
「しまっ!」
「ブラック・ボックス。もうこれで永久に逃げることはできないわ。だ・け・ど、」
影糾の指先から、黒い炎が漏れ出てきた。
「ずっとそのままも寂しいでしょうから特別に焼き殺してあげちゃう。感謝しなさい。」
火はあっという間に広がり、影の箱を覆い尽くす。
そのまま箱は跡形も無く燃え尽き、烏丸忍は骨一つ残さずにこの世を去った。

「ね、姉さん!」
彼方は初めてだった。寄生が人を殺す所を実際に見るのは。
桃花は覚えていた。幼い自分たちを遺して、両親が逝ってしまった日を。
二人とも、恐怖で指ひとつ動かせなかった。
しかし。
「そんなに心配しなくても、弱っちいあんたたちなんて相手にしないわよ?」
影糾が人の形からただの影に戻ってゆく。
「あ、でも、どうしても死にたいっていうならライブハウスで待ってるからね、ふふっ。」
そう言い残して、影糾は庭から姿を消した。
緊張が解けた二人が何気なく空を見上げると、日は既に暮れていた。


つづく

275 :創る名無しに見る名無し:2012/06/16(土) 23:42:50.67 ID:yDS99RcK.net
イケメンは使い捨てるもの
以上です

276 :創る名無しに見る名無し:2012/06/16(土) 23:50:22.92 ID:4h8CHRDI.net
投下乙!

277 :創る名無しに見る名無し:2012/06/17(日) 00:17:08.67 ID:SIlXijpi.net
投下乙。強そうな影糾だ

278 :創る名無しに見る名無し:2012/06/18(月) 00:12:42.51 ID:yE5bFx/Q.net
よし、追いついた

>>231
なんか不気味だなぁ
ミステリーの予感

>>240-250
発ちゃんとウラトさん頑張れw

>>271
強敵出てきた
なんかどんどん死者が蘇ってきてヤバそうだ

279 : ◆7FtGTaokck :2012/06/18(月) 02:26:19.44 ID:bmxAutfq.net
放たれた矢は、狙いが少し逸れてマゴロクの頬を切り裂いていくがそれに怯むことなく突っ込んでくる。
剣を少し振り上げたのを見てから、ソーニャは弓を短剣に変えて前に踏み出す。
マゴロクが足を止めて、その場で剣を振るう。それを寸でで交わし、前へ。
後ろに逃げようとするのを追いかける。先ほどの狼戦にやられたものと同じだ。
ただ一瞬でも間合いを取られ、剣を振られたら二度と同じ間合いには入れないだろう。
間合いを詰め、短剣を振るう。マゴロクはこれを避けずにそのまま受け止めた。
右脇腹から左肩に向けて短剣が切り裂く。マゴロクはそれを気にせずソーニャを蹴り飛ばした。
傷は相手を止めるほど深くはない。この間合いはまずい。既に剣を振る構えに入っている。
その時、マゴロクの体を矢が貫いた。先ほど撃った矢が戻ってきたのだ。一瞬動きが止まる。
時間の流れがゆっくりに感じる。一気に間合いを詰めたソーニャが右手の短剣でマゴロクの首を切り裂いた。
しかし確かに切り裂く寸前までそこにいたはずのマゴロクが一瞬で数歩後ろに下がる。
短剣はマゴロクの首を切り裂いたが切り落とすことは出来ていない。
マゴロクが前に出ると傷口が開き、首が後ろにずれていくのが見える。
剣が振り下ろされる。刺さった矢を変えるのも短剣を左手に持ち替え盾にするにも間に合わない。
回避するために右側に飛ぶが下半身は持っていかれる軌道だ。
マゴロクの体ががくりとずれる。剣はソーニャの体に触れることなく地面を砕いた。
同時に時間が正常に戻る。転がりながら体勢を立て直す。
マゴロクは地面に倒れていた。足首から斬られている。それで体勢を崩したのだ。斬ったのは。
「ビゼン!!」
急いで近寄る。ぐったりとしているが僅かに手を上げて答えようとしている。
倒れていたマゴロクが光へと分解されていく。どうやら勝てたようだ。
ビゼンの体を起そうとして当初の目的を思い出す。マゴロクのせいで忘れていたが本来はこれを壊しに来たのだ。
死者蘇生の呪文の媒体は思ったよりか魔術っぽくはない。ぶっちゃけて言えばただのちょっと大きな岩のようなものだ。
獲物を剣に変え、真っ二つに叩き割る。手ごたえはなくあっけなく二つに割れた。中身も特に変わったものではない。
空を見上げると光が浮いてはいるがそれが実体化する様子はない。一応魔術の片方は解けたようだ。
剣を腕輪に戻し、ビゼンを起こす。傷は思ったより浅いが止血しなければならない。
ふと自分の獲物に目をやる。前までは手首を覆う程度だったが今は腕の半分くらいの大きさになっている。
とりあえず今はそんなことはどうでもいいので獲物をビゼンの傷口を覆うように着けていく。
「……なんかひんやりしてて気持ちいいな。これ」
「そういう使い方はしたことはないけどどうやらちゃんと止血は出来ているみたいだね」
ビゼンに肩を貸し、立ち上がる。なんとか持ち上がった。
「今こちらに応援を回しているのでそのまま大聖堂に来てください」
使い魔がふよふよと飛びながら言う。
「ああ、助かる。そうだ、ビゼン。剣は置いていくぞ。さすがに持てないし」
「構わんさ。生きて帰れれば上等だ」
確かにその通りだ。ビゼンが最後に足首から切り落としてくれなかったら今頃全滅していただろう。
一応、使い魔が起こしていたしソーニャが投げた銃もビゼンに当たってはいたが起きる確証はなかった。
本来ならば負傷した人間を無理に戦わせるなどは言語道断なのだがあの男に言わせればこれもまた必要なこと。
そうでもしなければ勝つことは出来なかった。
本人のみの時間加速。それがあの男の能力なのだろう。それが先天的にあったものか後天的についたものかはわからない。
最初の鉄の旋風も時間を加速して回転したものだし、爆弾のときも最後の攻防もそれで説明がつく。
強力な能力だが効果時間も短いし再使用にも時間を置かなければいけない。最後の攻防で避けきらなかったのは
次の攻撃に移るまでに効果が切れるからだったに違いない。多分。
結果として首に致命傷を負ったが前に出てソーニャを斬る程度の意識は保てたわけだ。首は半分切れてたけど。
「姉御ー! 副隊長ー!」
遠くから兵士がやってきた。手には包帯やらなんやらを持っている。
「副隊長の治療はおまかせください! 姉御は大丈夫ですか?」
「どうにか、な。帰り道気をつけてくれ。私は次へ向かおう。
 ロゼッタさん、着いてきてください」
「ちゃんと案内しますよ」
魚がソーニャの周りを回る。
「そうですか。ではお気をつけて」
「ソーニャ。生きて帰れよ」
応急処置をされているビゼンの言葉に頷く。
「わかっている。当然だ」

280 : ◆7FtGTaokck :2012/06/18(月) 02:27:48.28 ID:bmxAutfq.net
以上『死者たちの夜X』

入りきらなかった・・・

281 :創る名無しに見る名無し:2012/06/18(月) 07:27:37.03 ID:yE5bFx/Q.net
おおっ、倒した
ビゼンさんナイス

282 :創る名無しに見る名無し:2012/06/20(水) 15:13:54.39 ID:pLETY6jE.net
倉刀「おらおらー! 早く僕の彼女キャラを創作しろー! もう男でもいいやー!」

ジークフリード「うう……誰か」

発子「まずいわね……暴漢はひどく興奮しているわ」

めい「このままじゃ人質の身が危険だわ……」

ジークリンデ「……」

めい「リンちゃん?」

ザバッ

発子「ゲーーーッ! ドレスをコールタールに!?」

めい「き、貴族の命ともいえるドレスを……どうして?」

ザバッ

発子「ああっ! あっという間にシスターの格好に!」

めい「そ、そうか、いくら童貞でも神に仕えるシスターなら気を許し、油断するかも知れない」

発子「だ、だから服を染め上げたのか……」

発子・めい「なんて的確で冷静な判断力なんだ!」

283 :創る名無しに見る名無し:2012/06/20(水) 16:13:33.24 ID:nGn7mIRh.net
ソルジャーwww

284 :創る名無しに見る名無し:2012/06/20(水) 19:27:03.42 ID:37ab2quB.net
誰もが「その前にマスク脱げよ!」とツッコミを入れたあのメイ場面かwww

285 :創る名無しに見る名無し:2012/06/20(水) 19:33:57.94 ID:Fo0tD11B.net
平成生まれにはオッサンネタはわかんないです><

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3111895.jpg

286 :創る名無しに見る名無し:2012/06/20(水) 19:35:47.93 ID:37ab2quB.net
他にも「ちゃんと牧師服にしたてあがってるのはどういうわけだ!」とか、
「強盗がカトリックや仏教やイスラム教徒だったらどうするんだ!」とか・・・流石ゆでだぜ・・・

287 :創る名無しに見る名無し:2012/06/21(木) 03:49:52.76 ID:V+MvnAQg.net
なによりも本物のソルジャーの弱さだよな。

288 :創る名無しに見る名無し:2012/06/21(木) 10:39:36.27 ID:zzqF0G2G.net
倉刀「シスターにしては猟犬のような目付きですね……」

ジークリンデ「……」

倉刀「テメエ住人だなーーー!」

めい「いけない! ばれた!」

ドキッ バキッ

発子「は、激しい格闘の音だわ…」

シーン

発子「と、止まった……」
バキッ

めい「おお! 天井から二人が飛び出てきたー!」

ジークリンデ「アーハハ、どうしたの倉刀さん、侍は恋を偲ぶものよ」

倉刀「そ、それが自分でもよくわからないんだ。気がついたら作家達にネタキャラにされ、こうなってたんだ……」

ジークリンデ「いけないわねぇ、作家さん達を悪く言っちゃあ!」

ガシッ

ジークリンデ「完成! ジークリンデリベンジャー!」

ズガッシャアー!

倉刀「グヘッ!」

289 :創る名無しに見る名無し:2012/06/21(木) 13:59:52.25 ID:tQm7q8TQ.net
ひでえwww

290 :創る名無しに見る名無し:2012/06/21(木) 15:35:15.04 ID:fFdt8YwE.net
なぜ最後ビッグボディwww

291 : ◆7FtGTaokck :2012/06/24(日) 03:47:19.72 ID:avtUpgBD.net
町の中心に行く道すがら現在の状況を聞く。
まず大聖堂は散発的な襲撃はあれど強い固体は来ていないので被害はほとんどない。
媒体が壊されたことにより、他の場所の媒体を警備していた連中が散開し始めているそうだ。
そんな話を聞いていると丁度目の前に狼が出てきたので切り裂いていく。足は止めない。
幸いにも巨人クラスまで遡って蘇ることはなかった。不幸中の幸いと言えよう。
ずんと何か大きなものが動く音が聞える。場所は中央近くの広場だろうか。あの巨体を置ける場所はそのくらいだろう。
やがて中央広場への一本道に入り、その姿を見ることとなった。
「あれがこの町を襲ったドラゴンか」
赤錆びた姿に振るえば建物を粉砕する大きな尻尾。そして時折炎が零れる凶悪な口。
かつてソーニャが仕留めたドラゴンとは比べるのも申し訳ないほどの威圧を放っている。
噂をすればその横をあまりぱっとしない老いたドラゴンが飛んでいき、建物に激突している。
種類が違うのだろう。同じものとも思えない。しかしそれでもこの世界の生物界の頂点に近いところにいるのは事実。
そして残った人間でこれを仕留めなければいけないのだ。選択肢などそこには存在しない。
殺さなければ殺される。ただそれだけ。
「亀とロゼッタも近くにいるんだっけか」
「はい、上位の狼を討伐中に見つかってなんとか狼は討伐は出来たみたいですけど今は隠れています」
「どのへんにいるんだ?」
「えーっと……あの赤い屋根の建物の中ですかね」
赤いドラゴンがその建物を尻尾で叩き壊した。そこに老いたドラゴンが突撃していく。
あっという間に瓦礫の山が出来た。瓦礫に埋もれた老いたドラゴンがむくりと起き上がったと同時に吹き飛ばされた。
逆側の建物に当たり、再び瓦礫に埋もれる。
「生きてはいるようだな。行くとしよう」
「一応援軍を呼びましたけど……期待はしないでください」
「わかっている」
通りを駆け出す。瓦礫が崩れたせいで少し埃っぽい。だが気にしている場合ではない。
獲物を槍へ。追撃を加えんとしている赤いドラゴンに向かって放つ。狙いは性格ではないし威力もないが気が引ければそれでいい。
槍は思ったよりも飛ばず、足にこつんと当たり、落ちた。ドラゴンの動きが止まり、頭がこちらを向く。
こうしてみると本当にトカゲを大きくしたような生き物だ。羽がなければ大きいトカゲでも通じるかもしれない。
槍を手元に戻す。胸が大きく膨らみ、何かが喉を競りあがってきている。これはまずい。
大きな瓦礫がドラゴンの頭に当たり、口から吐かれた炎は隣の建物を焼いた。
叫び声を上げながらドラゴンが尻尾を振るう。炎上している建物が崩れ、ソーニャの頭上に影を作る。
地面を蹴って前へ。影が消えたと同時に獲物を剣に変え、切り抜ける。
硬い。片手持ちの獲物では浅い傷も与えられない。聞いた通りの硬さではある。
「亀! ロゼッタ!」
広場に出て、ドラゴンに対峙しながら瓦礫の山に呼びかける。
それに答えるように瓦礫が再び宙を舞い、ドラゴンに当たった。
「亀の魔法を撃つので時間を稼いでください」
気づけばロゼッタが隣にいた。服はずいぶんと汚れているようだが怪我はないみたいだ。
瓦礫の山に埋まっていた老いたドラゴンが起き上がり、赤いドラゴンと並ぶ。
「難しい注文だな」
ソーニャが左の赤いドラゴン側に、ロゼッタが右の老いたドラゴン側に走り出す。

以上『壊乱』

292 :創る名無しに見る名無し:2012/06/30(土) 15:24:11.54 ID:nlS/wL04.net
倉刀「D〜! 貴様に春斗神拳の神髄を見せてくれるわー!」

バババババッ

倉刀「創発の赤い雨ー! ははっ! この拳見切れるかーっ!」

ドガガガガッ

D「キョーキョキョキョ、か、体がこそばゆいわい」

倉刀「な、なんて固さだ……」

D「今度はこっちの番だな、レインボーシャワー!」

よし子(ビーム撃つのか……)

293 :創る名無しに見る名無し:2012/06/30(土) 16:36:39.65 ID:nlS/wL04.net
倉刀「か、かすっただけで焼けつくような痛みだ」

D「俺のレインボーシャワーは住人にとって有害なカピナリア光線が含まれている
触れるだけでただではすまん」

倉刀(カピナリア光線……そうか!)

ばっ

アンテナ「あーっと、倉刀! 突如トレードマークともいえる帽子を脱いだーっ!」

倉刀「じゅ、住人にとって有害なカピナリア光線は、ROM専には無害と聞く!」

美作「な、なにー!? それじゃ倉刀、アンタは書き手をやめて読み手になったというわけかーっ!」

294 :創る名無しに見る名無し:2012/06/30(土) 17:52:36.17 ID:L0z3fFqM.net
おい倉刀www

295 : ◆7FtGTaokck :2012/07/01(日) 07:41:48.65 ID:YW0uZ9xk.net
今度は獲物を両手持ちの剣に変える。赤いドラゴンが右前足を上げた。
まるで壁が迫ってくるようだった。前足はソーニャの少し前の地面を砕き、周りを揺らす。
この瞬間。ありったけの力で前足を斬る。そして離れて、後ろに回りこむように走り出す。
渾身の一撃は鱗を少し剥ぐ程度の結果で終わったようだ。血すら流れていない。
前方から来る尻尾の払いを内側に入り避ける。腹の下なら鱗はないかもしれない、が押しつぶされる危険がある。
獲物を槍状して、深く中に入らず柔らかそうな場所を狙い刺す。想像通り槍の穂先が腹に食い込んだ。
素早く抜いて、尻尾に注意しながら離れる。見上げると先ほど見たような喉の競りあがり。
強い風が吹き、思わず吹き飛ばされる。ドラゴンの体を見えない刃が切り刻むかのように何個もの傷が出来る。
転がろうとする体を無理やり起こし、ドラゴンの動きの止まった尻尾を狙う。
亀の攻撃でドラゴンの意識があちらへ向く。それを止めるにはこちらもそれ相応の攻撃をしなければならない。
決して太すぎず、細すぎず。獲物を再び大剣に変化させ、狙いを定め振り下ろす。
剣が厚い肉を切り進み、地面を叩く。ドラゴンが悲鳴混じりの叫び声を上げた。
空から光が降って来る。亀の魔法にしてはあまりにも間隔が早すぎる。
構える前に光は地面に落ち、爆発音と共に熱風がソーニャを襲う。
転がりながら身が焼ける痛みに耐える。うめき声を上げながら見上げると熱風の直撃を受けたドラゴンの皮膚が爛れていた。
ドラゴンの影になったおかげで直撃は免れたようだ。それでもこの痛み。他の二人を探すため、周りを見渡す。
先ほど見ていた光景と同じ場所だとは思えない。そこは瓦礫と火の海だった。
その海を見下ろすかのように一人の魔術師が浮いていた。片手には黒い石のようなものを持っている。
「どうやら運命は我輩を見放すことはなかったようだな」
男の声がはっきり聞える。遠くを見ていた男がソーニャを見下ろす。
「前回は調子に乗りすぎて不覚を取ってしまった。故に今回は気をつけねばらならぬ」
そう言って男は浮いたままソーニャの近くまで寄ってくる。
前回とは何のことなのか。前にも町が魔術師によって破壊されたことがあるのか。
ソーニャは思い出した。そうだ、あるのだ。この町は。
「お前は……ファウスト」
「いかにも。世界は我輩の再来を望んでいたようだな」
気づかれないように剣を鞭に変え、間合いを読む。あと少し近寄れば範囲に入るはずだ。
「どうやら我が宿敵であったマゴロクは貴様が殺したようだな。心より感謝したい」
入った。
右手に握った剣を大きく振り上げる。鞭は大きくしなり、ファウストに直撃した。
しかし寸でのところで見えない壁に阻まれる。
「だが死ね」
ぐんと体が後ろに引っ張られ、壁に激突する。
衝撃に視界が歪み、肺が酸素を求めて呼吸を繰り返す。
「面白い獲物を持っているようだがそれでは我輩には勝てない。どれ、復活祝いに少し遊ぶか」
夜だというのに空が明るくなった。咳き込みながら見上げる。
赤く燃える塊が町に向かって落ちてきている。それも一個ではない。数え切れないくらい。
ソーニャは何も出来ずただその光景を見ているだけだった。
塊が魔法の障壁に当たり、波紋をいくつも作り出す。
「ふむ。さすがは我輩が手を加えただけあるな。素晴しい防壁だ」
上空にいくつものの波紋が広がる。塊は障壁にぶつかると壊れるもののすぐに新しいのが降って来る。
そして空にヒビが入り、音を立てて割れた。
次々と壁に阻まれていた塊が町に着弾し、そのたびに地面を揺らす。
「さて、少女よ。これで町は滅びた」
ファウストは楽しそうにこちらを見ている。
あの二人の姿は未だに見えない。ドラゴンたちもさきほどの熱風が効いたのか動かない。
一対一ではある。ファウストを止めればおそらくこの塊も消えるだろう。
ソーニャは獲物を剣に変え、呼吸を整え立ち上がる。
「立ち上がるか。素晴しい」
ファウストが石をドラゴンに向かって差し出す。石から白い光が現れ、ドラゴンたちの傷を覆う。
光が消えると傷もなくなっていた。
「ドラゴンというのは下僕に使うには素晴しい獣であるからな。ここで失うには惜しい」
先ほどまで弱って動かなかったドラゴンが起き上がる。
ファウストの持つあの石。せめてあれさえ壊せば、大幅に呪文を弱らせることが出来る。
出来れば、の話だ。

以上『壊乱U』

296 :創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 06:11:51.67 ID:mOtr8Vz0.net
復活ですわよ。

297 :創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 21:43:57.04 ID:sxsvl7eR.net
ttp://dl3.getuploader.com/g/6%7Csousaku/677/創発159.jpg

298 :創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 22:08:51.41 ID:YHi80Pxi.net
夕鶴姐さんでっけえww

299 :創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 22:10:33.78 ID:Iezq3yB1.net
カッケェwww超保存したw

300 :創る名無しに見る名無し:2012/07/05(木) 03:23:11.61 ID:mwloPySK.net
円川ちゃん虚弱www

301 :創る名無しに見る名無し:2012/07/05(木) 04:39:40.24 ID:mwloPySK.net
>>295
何気に超ピンチじゃないか

302 :創る名無しに見る名無し:2012/07/05(木) 13:01:12.49 ID:sTFvdHs3.net
並駄目の時は割と安定してたな。

303 :創る名無しに見る名無し:2012/07/05(木) 16:02:12.63 ID:TVcfhmlM.net
余所からやられるまではどっしり構えてたな。さすがロリババァ

304 :創る名無しに見る名無し:2012/07/05(木) 23:22:25.62 ID:LpiTkWjK.net
発子「……はっ!? 寝てないですじょ!?」

305 :創る名無しに見る名無し:2012/07/07(土) 19:35:55.80 ID:AkR1GbAK.net
ttp://dl8.getuploader.com/g/6%7Csousaku/680/souhatsu160.jpg

306 :創る名無しに見る名無し:2012/07/07(土) 21:12:17.99 ID:t4TnZkvV.net
食うなwwwwwwwww

307 :創る名無しに見る名無し:2012/07/07(土) 22:02:01.41 ID:by3IAxwE.net
ふ と る ぞ

308 :創る名無しに見る名無し:2012/07/08(日) 01:37:12.19 ID:bS0ut23G.net
笑劇の事実発覚! 発ちゃんは実は化け猫だった!w

だがバターは塩分多いからサラダ油にしておいた方が・・・

309 : ◆7FtGTaokck :2012/07/08(日) 03:58:28.03 ID:KVi9XaX+.net
「全く本当に素晴しい力だ。この力さえあれば神すらも超えられるのではないかと錯覚してしまう」
攻撃の機会を伺うもののファウストに隙はあっても横にいるドラゴンに睨まれている。
逆にドラゴンが不意に攻撃してこないか警戒しないといけないほどだ。
「かつて栄華を迎えた文明を一瞬にして滅亡させた隕石。その欠片ですらこれほどの魔力を秘めている。
 我々人間の作る魔術品とは比べ物にならん。純正たる魔力の塊だ。素晴しい。素晴しい!」
興奮してるのか隕石を掲げたりくるくる回ったりしている。
ファウストはロゼッタよりも歳を取っているように見える。
魔術師というのはいくつになっても子どもの心を忘れない生き物に違いない。
「おそらく北の地にあるのはこれの本体。おそらく発掘してしまったのだろう。
 これの本体となれば世界の理すらも覆せるに違いない。素晴しいとは思わぬかね?」
「思わないな。そんなものを覆してお前は何を求めるんだ」
相手のご機嫌など取る必要はない。ソーニャはファウストの問いかけに挑発気味に返す。
ファウストは気にしていないらしく低く笑いながら答える。
「力。真理。理。果て。魔術師の知識欲に終わりは無い。
 知るたびに新たな事柄を知りたくなる。ただそれだけだ。さて」
話を区切る。どうやら雑談は終わりのようだ。
「貴様一人に対してこちらはドラゴンが二体に我輩。勝機はゼロに等しい。
 さらに貴様が万が一勝ったとしてもこの惨状では町の復興も難しかろう。
 それでもまだ絶望に負けず我輩に剣を向けるのか?」
最終通告に等しい言葉。ファウストからしてみればソーニャの選択肢は二つ。
おとなしく死ぬか抗って死ぬか。
でもなぜだろうか。あの塊が降ってきて町が滅びたと言われたときから不思議な気持ちが沸いて来る。
「……そうだな。これだけ派手に壊されては物資不足云々言われている現状では復興は難しい。
 つまり私はもう町のために戦う必要もないというわけだ」
「ふむ。我輩は貴様が諦めなければ希望がとでものたまうかと予測していたのだが」
「残念ながらそんなに楽観的ではないさ。今まで経験したどんな状況よりも最悪で死に近いんだからな」
ソーニャは微笑みを浮かべる。
「しかし気分は不思議なくらい落ち着いている。まるで澄んだ青空のようだ」
空を見上げると燃える塊の灯りの先で夜空に星が輝いているのが見える。
町は滅びたというのになぜこれだけ落ち着いていられるのか。
相手の気分次第ではすぐさま死ぬこの状況でなぜ穏やかに笑っていられるのか。
「死を前にして達観したか」
「肩の荷が下りたと言ったほうがいいな。なんだかんだで半年ほどしか団長、いや、団長もどきをやってないが
 どうにも私の性に合わなかったようだ。やはり私は自分で考え自分で動くほうがいい」
獲物を使いやすい長さの剣に変える。
もう守るものはない。背負うものもない。好きなように出来る。
「マゴロクは殺し合いに必要なのは純粋無垢な殺意と言っていたが私からしてみれば必要なのは
 どのような状況下においても殺し合いを楽しむことが出来る心構えじゃないのかな」
赤いドラゴンはこちらに体を向けている。老いたドラゴンは瓦礫を漁っている。トドメでも刺すつもりなのだろう。
ファウストは一応ソーニャの攻撃を警戒しているのか獲物を延ばしても届かない距離にいる。弓であれば届きはするが撃たせてはくれまい。
ならば相手をするのはまずは目の前のドラゴンとしよう。

以上『壊乱V』

310 :創る名無しに見る名無し:2012/07/08(日) 04:58:06.51 ID:tAI7UWa/.net
ついにソーニャたんが鬼になるのか

311 :創る名無しに見る名無し:2012/07/08(日) 20:27:27.90 ID:zayJXlk7.net
現役時代の並駄目
ttp://dl10.getuploader.com/g/6%7Csousaku/681/souhatsu161.jpg

312 :創る名無しに見る名無し:2012/07/08(日) 20:34:17.38 ID:SMBDyfS8.net
現役時は武装するのか鯖連中はw そういえば夕鶴さんもハンマー持ってなかったな最近w

313 :創る名無しに見る名無し:2012/07/08(日) 20:41:44.93 ID:fw62BBS+.net
武器幼女はいいなあ

314 :創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 10:25:42.43 ID:ux7igUdR.net
夕鶴が槌で先制、円川が鞭で追撃、そして体勢を崩したところに並駄目の機銃掃射!

夕鶴「これぞ創発ジェットストリームアタック! もう鯖管理は成ったも同然!」

並駄目「……」

スッ

円川「そ、それはスイカ! 先代、まさか!」

夕鶴「ああ、勝利の前祝いさ! 管理人伝統舞曲『西瓜割り』をしかけるよ!」

〜〜♪ 〜〜♪

三人「あ、スイカわり! 俺の勝ち! あ、スイカわり! おーれの勝ち!」

315 :創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:53:47.67 ID:Lmj9SPSy.net
なにしてるんすかwww

316 :創る名無しに見る名無し:2012/07/13(金) 03:36:04.40 ID:0TJLTOVL.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3192610.jpg

317 :創る名無しに見る名無し:2012/07/13(金) 04:00:10.70 ID:0HO7NsGO.net
どういう事だよwww

318 :創る名無しに見る名無し:2012/07/13(金) 08:12:35.52 ID:Jt6Kf/Kw.net
プリンの生気のなさwww

319 : ◆7FtGTaokck :2012/07/17(火) 01:40:37.64 ID:ZrZ1OWO8.net
地面を蹴って、体を低くし走る。ドラゴンが両前足を地面から離す。今度は両足で攻撃するつもりなのだろう。
剣を伸ばし地面に落ちた大きめの瓦礫を拾い、取り込む。先ほど刺した腹部の傷は癒えていない。
大砲と呼ばれる武器に形を変える。本来であればもっと大きいものではあるがこれ肩に乗っけて撃つ程度のものだ。
狙いなど定める必要もない。撃てば当たる。ドンと音がなると瓦礫の弾は腹部に直撃し、貫通はしないが穴を開けた。
唸り声を上げながら両前足を下ろす。体が元の位置に戻るとしたら丁度ここは腹部と胸部の境目くらいだろうか。
前に数歩出て、先ほどの大砲を地面に刺す。しゃがみ込み、天に向いている方を出来るだけ大きな円錐型の屋根へと変える。
影が出来、空気の壁と共に世界が揺れた。思わず体が地面から浮く。それと同時に頭上から夥しい量の血が降り注いだ。
ドラゴンが離れようとしているのかだんだんと腹部が離れていく。この好機をみすみす逃すはずが無い。
獲物を抜いて、開いたところに懐から爆弾を取り出し起動させ押し込む。さらに獲物で衝撃を与えないように押し上げるように
奥へと入れる。離れようとすると両側から強風が吹き、ドラゴンから離れていった。
どうやら飛んでいるようだ。これだけの巨体を飛ばすだけあって、羽ばたくだけでも思わず身構えるほどの風が吹く。
「ふむ。人間とは思えぬ豪胆さだ。だが無駄だ」
ファウストが石をドラゴンに掲げると腹部の傷はあっという間に癒えてしまった。だがこれも予想通りだ。
右手のほうで瓦礫を漁っているドラゴンに向かう。一番危険なのはファウストであるが攻撃が届かない以上は構う必要はない。
「我輩を無視するか。例えドラゴンを殺したところで敗北する未来は変えられないというのに」
その言葉を言い終えないうちにくもぐった爆音がした。ちらりと見ると赤いドラゴンに突っ込んであった爆弾が爆発したようだ。
赤い雨があたりを濡らすがそんなことはどうでもいい。音に反応して首を起こした老いたドラゴンがソーニャを発見した。
こいつに関しては小細工しなくていい。五年以上前のソーニャが一撃で殺した相手なのだから。
老いたドラゴンがこちらに向かって首を伸ばし咆えたける。押し寄せた音の壁と鼓膜を破りそうな衝撃に耐え、ドラゴンの横へ回り込む。
相手が怯むとでも思っていたのだろうか。一瞬、反応が遅れた。その結果、丁度伸ばしきっていた首はソーニャによって切断された。
光の粒子となって老いたドラゴンが消えていく。振り向けば赤いドラゴンもいなくなっていた。
「どうした? お得意の回復の呪文で治さなかったのか?」
「……我が呪文も万能はない。よもや体内から爆発するとはな」
つまるところある一定量の傷は瞬時には癒せないということだ。最も術者以外がいないのだから今更な情報だ。
しかし問題はここからだ。
先ほどドラゴンを殺した前後に瓦礫の山を見渡したが二人の姿は無い。ドラゴンも掘り起こした形跡がないし本当に死んでいるのだろうか。
相変わらずファウストは浮いているしやるとしたら先ほどの手持ち大砲を使うぐらいしかない。
だが相手には防御の魔法がある。大砲程度では貫通出来ないだろうし、おそらくは爆弾を近くで爆発させても平気で生き残るに違いない。
考えれば考えるほど積みの状況だ。
ファウストが黒い石を掲げた。それと同時に素早く瓦礫を拾い、大砲で打ち出す。
相変わらず見えない壁に当たって瓦礫は砕けた。だが邪魔が出来たようで再び石を掲げ始めた。
また瓦礫を飛ばす。今度はファウストの少し上を狙う。瓦礫は見えない壁に弾かれ、後ろへ飛んでいった。
「せっかくだから大呪文を唱えたいのだがさせてはくれないか」
先ほどの瓦礫が残した破片がファウストの頭上から零れ落ちる。思ったより壁は実体に近いようだ。
ならば。大砲を弓へと変える。しかし矢をわざとゆっくりつがえる。まともに撃てば今度は着弾すらさせてくれないだろう。
呪文によっては死ぬが仕方あるまい。
黒い石が青い光を放つ。同時に矢を撃つ。地面から水が沸いてきて渦を巻き始める。これなら大丈夫なはずだ。
矢は先ほどと同様に壁に阻まれた。が、そのまま落ちずにくっついている。さらに矢の後ろから細い紐を伸ばしている。
その紐ソーニャの手元の弓へとつなげてある。足元が水に濡れると同時に弓を持つ手が引っ張られ、矢の元へと風を切って進む。
ファウストがそれに気づいた。壁を解除した。矢が落ちる。しかしもう既に遅い。
勢いに任せて、ファウストに切りかかる。だが咄嗟に張られた防御で狙いがずれる。
右腕の二の腕を切り裂く。そして持っていた隕石を落とした。

以上『壊乱W』

320 :創る名無しに見る名無し:2012/07/17(火) 06:43:44.04 ID:GJsotoi0.net
シカかっけぇ

321 : ◆7FtGTaokck :2012/07/19(木) 12:23:48.27 ID:2nf9kST2.net


勢いが余ってそのままファウストに体当たりする。石から離れていく。
獲物を伸ばして石へと伸ばす。あと少しで届く。体の落ちる速度が急激に速くなる。
「貴様はよくやった。だが我輩が石がなくとも魔術師の長になれる程度の実力があったことを忘れるな」
ソーニャに比べてファウストは不自然に落ちるのがゆっくりだ。重力を変えられた。
獲物の先を方向を変え、ファウストの足へと巻きつける。
引っ張るのではなく長さを短くして先ほどと同じように勢いをつけようとした。
しかしそれに気づいたファウストは巻きついた獲物を解くのではなく、自らの片足を魔法で切り落とした。
「勝利のためなら足の一本くらいくれてやるわ!」
この高さから落ちればさすがにまずい。呪文が中断されたと言っても下では水が渦巻いている。
千切れた足を獲物に取り込む。肉や血はうまく排出させて骨だけを抽出し、狙いを定める。
石へと伸ばしていた手に骨の欠片が突き刺さる。さらに石に当ててファウストから離す。
ファウストが突き刺さった骨をすぐに取り除き、再び石へと近づいていく。
獲物を伸ばすにしても避けられてしまう。周りに乗れそうな場所もない。このまま行けば落ちるだけだ。
狙いを定める。残っている骨の欠片は多くは無い。石を撃っても壊すことは出来ない。
全ての弾を二つに分け、まずは一発ファウストに目掛けて撃つ。防御呪文を張ればその分時間だけは稼げる。
ファウストと違って通常の重力で落下している石はどんどん差が開くはずだ。
こうなったら石を落とすしかない。そう考えていた。
飛んでくる弾を見たファウストは防御呪文を張らず、そのまま手を伸ばし続けた。
例え弾が自らの体に刺さっても石を手に入れる。手に入れさえすれば癒すことが出来る。
そうわかっていても実行できるようなものじゃない。だがそれを躊躇うことなくファウストは実行した。
そして伸ばしていた右手の手首に刃物状になっていた弾が刺さった。
素直に防御すればよかったものの刺さった弾は手首を切り落とすことが出来なくても使用不可能にする程度の威力はある。
切り落とせなかったのは残念だが残った弾から考えてもこれが限界だ。
石の少し手前、丁度さっき右手の手首があったぐらいの場所を狙い撃つ。
右手で掴めなくなった以上は左手を伸ばす。予想通り躊躇いなく伸ばした。が、場所が少しずれ指を切り落とす。
右手は使えず、左手の指は切り落とした。とはいってもまだ左手の掌に乗せて呪文ぐらいは使える。
だがあの手で物を追いかけて掴むのは難しいだろう。
ソーニャの役目はここまでだ。あとは間近に迫った水面に身を落とし、渦に飲まれよう。
憤怒の表情を浮かべるファウストの先にある空で何かが見える。塊だろうか。しかし呪文は途切れて久しい。
塊より小さいそれがファウストに激突したところでソーニャは水に飲まれた。
呪文が途切れているにも関らず残っている激流。泳げば少しは、と思ったがとんでもない。
あっという間に流れに飲まれ、一緒に飲まれている瓦礫や何かの破片が肌を切り裂く。
このままなぶり殺しにされるのかと考えていると体を誰かに抱きかかえられて水から引き上げられた。
酸素を求めて呼吸を繰り返す。短い時間ではあったが酸素は多量に消費している。
「大丈夫ですか」
「ああ……なんとか生きているようだ……」
呼吸が落ち着き冷静になってみるとどうやら空中に浮いているようだ。
誰かが脇から体を持っていてくれている。しかし先ほどの声に聞き覚えはない。
「本来であればこの戦いも阻止出来たはずなのに。申し訳ない」
「いや、まぁそれはいい。それよりも石とファウストは」
「魔術師は先ほど駆逐しました。石も同時に消滅したようです」
ファウストの付属品ということで消滅したようだ。とりあえずは一安心。
ふわふわと漂いながら水に飲まれていない瓦礫の上へ運ばれる。
そこで初めて周りを見渡すことが出来た。
未だに燃えている場所が多々あるらしく明るい場所があり、それのおかげで遠くまで見渡せる。
そう。建物が密集していたはずなのに遠くまで見えるのだ。かなりの部分が瓦礫の山になっている。
今までこの町の住人、先祖たちが築いてきたものはこの一夜で全て消滅したということだ。
「改めてみると本当に滅びたんだな。町は」

322 : ◆7FtGTaokck :2012/07/19(木) 12:24:20.99 ID:2nf9kST2.net
「いえ、滅びてません。それを阻止するために私は東京からやってきたのです」
東京という言葉に反応してその人を見る。
見たことも無い妙な服を着ている。一般の服というよりも自衛団の制服に似ている。
髪はソーニャより少し長いくらいで色はその瞳と同じく灰色をしていた。
何よりも気になったのはその頭部についてるものだ。人工物のようなものがくっついている。
そして腰の部分にも同じような車輪の形をしたそれが両側に浮いていた。
「東京からこの地に派遣されたアンドロイドの仮名ヘッセと申します」
「私は……いや、自己紹介の前に人命救助と消火活動かな」
「了解しました」

以上『壊乱X』

323 :創る名無しに見る名無し:2012/07/19(木) 22:40:27.95 ID:2VzCgoZy.net
乙です!

324 :創る名無しに見る名無し:2012/07/19(木) 22:41:37.73 ID:2VzCgoZy.net
http://imefix.info/20120719/521284/rare


325 :創る名無しに見る名無し:2012/07/19(木) 22:57:44.06 ID:zduyzL03.net
おお、これはいいはっちゃん

326 :創る名無しに見る名無し:2012/07/19(木) 22:59:49.08 ID:fdNsTL7t.net
これはいいババァロリ

327 :創る名無しに見る名無し:2012/07/20(金) 03:42:25.40 ID:q9toar8n.net
>>322
コユキとその他の安否が心配でなりません。

328 : ◆7FtGTaokck :2012/07/26(木) 23:38:55.13 ID:RSZXIlY7.net
「もうお昼だな。ヘッセ。休憩しよう」
「了解しました」
懐中時計が十二時を指していたので、瓦礫を運んでいたヘッセに声をかける。
道端に転がっている丁度いい石に腰を下ろす。その横にヘッセが座る。
「だいぶ廃材が溜まってきたな。そろそろ砕く作業もしないと」
「お任せください」
立ち上がろうとするヘッセを掴んで座らせる。
「休憩が終わったらね」
「了解しました」
空を見上げると鳥が鳴きながら飛んでいた。こんな更地に来ても何もないと言うのに。
「もう一ヶ月も経ったのか」
「そうですね」
この町が滅びたあの夜からもう一ヶ月が経った。
激動の一ヶ月だったと言える。
あの日。ヘッセに助けられ、かろうじて生きていた亀とロゼッタを救出し、大聖堂へと向かった。
運よくなのか守護の魔法のおかげなのか大聖堂には被害がなく、犠牲者がほとんど出なかったのは
不幸中の幸いと言えよう。すぐに自衛団の人間で消火活動が行われた。
その作業が一段落し、ヘッセによる今回の襲撃についての説明がされた。

時間は全島会議の開催が決定する少し前まで遡る。
数少ない拠点のひとつであった東北拠点は没落し、北の軍は東京拠点のすぐそばにまで迫っていた。
また別の経路から侵入した北の軍により、日本の拠点は京都、東京の二箇所にまで減っていた。
総力を挙げて防衛するものの住民や兵の気力は限界を迎えつつあった。
だがある日。ついに研究者の一人がアンドロイドの製作に成功。三体の試作機が作られた。
第一世代と呼ばれる三体の試作機は獅子奮迅、八面六臂の大活躍で劣勢であった戦況を均衡にまで持っていった。
続けて作られた第二世代の五体は東京から京都へと応援に向かい、危機から救出。
そして第三世代の五体と共に日本は反撃を始めた。
北の軍はそのまま後退し、ついには本州から撤退させるまで追い詰めることが出来た。
そんな中、不穏な情報が手に入った。
本州より南にある小笠原の地に隕石が存在し、北の軍がそれを手に入れようとしている。
隕石の危険については東京の人間も熟知している。あれを自国に持って帰られたら大きな被害を生む。
何よりも問題なのは北の人間が既に渡っている可能性があるということだ。
すぐさま東京拠点の会議でアンドロイドの派遣を決定。第三世代の一人であるヘッセが送られてきた。
だが時は既に遅く、知っての通り呪文は展開され、町は襲撃されていた。
ヘッセは町のはずれにいた、黒幕と思しき人間たちを殲滅した後、町へと向かった。
そして現在に至った。
死者復活の呪文もこの町の制圧の意味合いよりもファウストの持っていた隕石を目的としたものだったのだろう。
ファウストがおとなしく隕石を渡すかどうかは置いといて、過去の事件によりファウストが持っていたというのは知られている。
本州への拠点の確保と隕石の取得。これが奴らの目的であったということだ。
そしてそれを実行するためにおそらく色々な手回しをしたであろうと思しき人間たちが
今この大聖堂にいない人間。つまりこの町の役場側の人間たちだ。
ヘッセが殲滅したという人間と特徴も一致している。どのような契約が成されたかはわからないが
この町を収める立場の人間が町と住民を売ったという事実は変えようが無い。
この事実を知った他の町村の人間は激昂した。
お前たちはこの計画で我々を殺すことで島全体を混乱させようとした。
裏切り者だ、と。
もちろんこの襲撃計画をソーニャを始め、ほとんどの人間は知らなかった。
そもそもソーニャやビゼン、亀、ロゼッタは役職でありながら身を呈して戦ったのだ。
賛美されることはあれど非難をされる謂れは無い。そう反論した。
論争は一昼夜行われた。自らの命と島が危険に晒されたのだ。仕方の無いことなのかもしれない。
双方が論争に疲れ始めた頃、ソーニャは話に割り込んでこう宣言した。
「わかった。どちらにしろこの町の再起は難しい。
 もしも町の住民をそれぞれの町村で受け入れるというのならば今回の事件の責任は全て私が負おう」
本来であればこんなものは認められやしない。だがこの会議に置いてはこれが承認された。
みなわかっていたのだ。今回の事件における明確な処罰が必要だったのだ。
黒幕はみな死んだ。他との繋がりは無い。もう大丈夫だ。そうだとしても不安は拭い去れない。
それを拭い去るためにソーニャは罪を背負い、罰を与えられた。
かつて町を守るためにあった壁は今やソーニャを隔離するための壁となったのだ。

以上『終わりの物語』

329 :創る名無しに見る名無し:2012/07/27(金) 05:13:00.00 ID:wPpDte1L.net
何がどうなるのコレ。

330 :創る名無しに見る名無し:2012/07/28(土) 15:57:32.28 ID:qf5IBx89.net
age

331 :創る名無しに見る名無し:2012/08/02(木) 17:49:29.73 ID:LbMQ4f1/.net
鹿さん大変やな

332 : ◆7FtGTaokck :2012/08/03(金) 00:18:29.76 ID:Pn8ADSnB.net
「勢いでこの町を私の監獄化させてしまったがこれでよかったのだろうか」
「呪文による魔力残留の異常値も観測されていますし、最善とは言えませんが悪い判断ではないかと」
「五段階評価だと?」
「三ですね」
「普通だなぁ……」
ファウストの呪文で降って来たアレはどうやら隕石を模した物だったらしく
町を破壊するばかりか人体にただちに影響を及ぼすほどの魔力を帯びていた。
隕石もどき自体は衝突と同時に消滅したものの魔力はそのまま残り、危険地帯として残ってしまっている。
この地に隔離されたソーニャたちは瓦礫を処理しつつ、土地の除染も行うことになった。
当初はソーニャと町救出にやってきたヘッセの二人でやろうとしていたのだが……。
「ソーニャさーん」
「コユキたちも戻ってきたな」
どういうわけかコユキと亀も残っている。
ここに居たって仕方ないんだから他の町に行きなさいと説得したものの
「ソーニャさんの従者ですよ! 一応!」
と忘れかけていた設定で胸を張り、居残りを主張。
「これだけの掃除を三人でやるのは大変だろうし手伝うよ。
 ……いや、魔法の実験し放題とか考えてないよ?」
と亀は怪しい理由で残った。
ちなみにロゼッタは臨時でこの町の町長に就任。
避難した人間の情報を管理したり、他の町村の長たちと様々な交渉をしている。
そしてビゼンはそれに連行された。
「力仕事なら俺の出番だしな」
と残る気満々だったが
「おやおやおや、女四人の中に混ざる気ですか? あなたは」
とロゼッタにひどく詰られ、心が折れたらしく今は副町長をしている。
他にも町に残ると希望する人間は数人いたが
今後の生活についての保証も出来ないし、魔力の残留だけでなく魔物の侵入も確認されているので
結局この四人だけ居残ることになった。
今は住民の荷物の搬出も終わり、建物を崩し更地にするだけだ。
「やれ、町を守る仕事のはずが開拓の仕事になっちゃったな」
「私もお手伝いします」
「そういえばヘッセさんっていつまでここにいるの?」
「……いつまでなんでしょう」
「いや、私に聞かないでくれ」
そんなこんなでソーニャたち四人は今も町で元気に暮らしている。
町は滅びてしまったけど世界がが終わるその時までこの土地を守り続けるのだろう。
こういうのんびりした生活も悪くは無い。

でもこの時、ソーニャ――私は知らなかった。
「ところで亀はどうした?」
「あ、なんか魔術書を拾ったとかどうとか。
この物語が続くということを。

以上『始まりの物語』

333 :創る名無しに見る名無し:2012/08/03(金) 00:27:21.23 ID:rgZdpiqj.net
亀さんはまったく…

334 :創る名無しに見る名無し:2012/08/03(金) 16:29:53.87 ID:1/4FYNPj.net
コユキ無事でよかっただw

335 :「はさみの日」だということで投下。:2012/08/03(金) 23:37:31.29 ID:VVz5Wl+8.net
「時に倉刀さん」
「なんでしょうか、はさみさん」
「あなたいったいおいくつですか」
「それはあなたにも言えることではないでしょうか」
「それもそうかも知れませんが、私の出自は明らかですよ?」
「なるほど。確かにその通りですね」

「で、おいくつですか?あなたは」
「そんなことどうだっていいじゃないですか」

「なるほど、ミステリアスなジェントルマンを気取るのですか。ヘタレでロリコンの分際で」

「ちょっと待ってください。ヘタレは認めますが、僕のどこがロリコンですか」
「二歳児と十代の少女二人に囲まれて、いったいどこがロリコンじゃないんですか?至急切り取られて然るべきです。それとも、もう機能しないような歳ですか?」
「残念ながら、未発達な体に反応するほど無分別な性癖の持ち主じゃないですし、そもそも僕の異性の好みからかけ離れています。もっと物静かで地味なくらいの大人の女性が好きですよ、僕は」
「なるほど。可愛い系よりは綺麗系というわけですね、」
「そうです」
「例えば私のような。やはり危険なので切り取りましょう」
「何故そのような結論に達したのか小一時間問い質したいですが、あなたも十分姦しいです。安心して下さい」
「若干腹が立ちますが、まあ良しとしましょう」

「ところで、僕からも質問があるのですが」
「答えられる範囲であれば答えましょう」
「どうしてそんなちっぽけな体で生活できているのですか」
「それはやはり神様だからでしょう」

「例えば本体があって、はさみさんは部分に過ぎないわけではない、と?」

「いいえ、実はそうなのです」
「え?」

「嘘じゃありません。本物は眼鏡をかけて、今もどこかで元気にロリババァをしています」
「マジですか?」
「嘘です。今ここで考えました」
「左様ですか」
「左様です」
「あともう一つ」
「はいなんでしょうか」




ニッコリと、優しい笑顔で微笑む倉刀。
「今日は「はさみの日」ですね。おめでとうございます。これからも健康に気を付けてお過ごしください」
ここまでの毒の無さは、いったいどこから来るのだろうか。
「やっぱりそのニッコリ笑顔は毒がありそうで危険ですね。切り取りましょう」


何かキャラが違う気がしなくもないけど誰も気にしない。私も気にしない。

336 :創る名無しに見る名無し:2012/08/04(土) 02:59:17.95 ID:OkVsjUgg.net
これは切り取られたのか倉刀w

337 :創る名無しに見る名無し:2012/08/10(金) 09:02:53.06 ID:yZjC5XOs.net
避難所に投下あり

338 :創る名無しに見る名無し:2012/08/15(水) 22:56:57.33 ID:YvGCi4mp.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3315136.jpg

339 :創る名無しに見る名無し:2012/08/15(水) 22:58:36.90 ID:BPHv2tuZ.net
どうしてこうなったwww

340 :創る名無しに見る名無し:2012/08/15(水) 23:00:47.44 ID:hhkgWzrp.net
ああ、うん。読めてた

341 :創る名無しに見る名無し:2012/08/15(水) 23:05:04.97 ID:gBSeYXU8.net
なぜムキムキなんだwww

342 : ◆7FtGTaokck :2012/09/02(日) 18:57:50.84 ID:eYyoVZvS.net
「おぉ……」
最初に出たのは感動の言葉だった。
ぎしぎしとなる梯子を上り、見張り台の天辺にまで来た私を待っていた一面の銀世界。
私たちの家の周りは一番最初に片付けたため何もない更地となっている。
そのため降り積もった雪は一切の歪みなく平らに遠くまで続いていた。
村にいたころでもこんな綺麗な景色はそうそう見なかった。
まだ雪は降り止んでいないので少々寒い。とりあえずの景色は見れたので早々に撤退することにした。
「外、どうだった?」
家に戻り、暖炉の前を陣取っている亀の横に割り込む。
「綺麗な雪景色だったよ」
「そうかい。結構積もってそうだな。嫌だな」
「さすがに作業は出来ないな。ヘッセは?」
「知らぬ。それよりかもっとそっち行ってよ」
仕方ないので場所を譲り渡し、ヘッセを探す。
ヘッセは時折本土の仲間と交信している。詳しい話はよくはわからないが頭にくっ付いている機械を使って
仲間同士なら距離が離れていても会話が出来るそうだ。
私たちは村の外に出ることはないのでヘッセの外部との通信が他の世界と繋がっている唯一の手段なのだ。
ヘッセの自室をノックすると返事が返ってきたので中に入る。
「どうかしましたか?」
「いや、交信してたんだろ? 何かないのか?」
「順調に領土を取り戻しているようです。このまま行けば戦争も終結するかもしれません」
「あれだけ苦戦していたのにあっという間に逆転か。アンドロイド様様だな」
「当然の結果です」
ふふんと胸を張るヘッセ。ちなみに私はヘッセの戦闘しているところを見たことがない。
ただ殴って瓦礫を粉砕している姿は圧巻と言える。コユキほどの細腕なのにどこにそれだけの力があるのか。
「とりあえず警戒するのはこの島に元からいるやつだけってことだな」
「はい。むしろ食料の心配のほうが先かと」
「……貯蓄あったっけ」
「ないですね」
眼前に迫る緊急案件に私はため息をついた。

343 : ◆7FtGTaokck :2012/09/02(日) 18:58:55.89 ID:eYyoVZvS.net
「浮かない顔をしているな」
「ああ、まったくだ」
目を開けるとどこかの路地裏にいた。じめじめしているし反吐が出るような匂いがする。
鼻を押さえながら周りを見渡す。人はどうやらいないようだ。
「その上こんな場所と来たもんだ。それで誰を相手すればいいんだ?」
「この奥にあるビルにいるやつだ。対象は一人だが今回も対象外の人間を相手することになるだろうな」
「それは構わないが……また無限桃花か」
ハルトシュラーはうなづく。
「そういえば前回言い忘れていたが私はガイドはするが戦闘に関しては一切手出しをしない。
 相手の情報もせいぜい職業と人数程度だ。未知の相手とやったほうが訓練になるだろう」
「ああ。わかっている。現実での戦闘はいつも未知の相手だしな」
「……お前が相手を始末した時点でお前が生きていれば無傷で帰還させることができる。
 逆にお前が戦闘で死ねばお前の言う現実でもお前は死ぬ」
亀も現実と同じように行動しろと言っていたな。夢で死ぬと現実でも死ぬというのはよくわからないが
精神がどうこうで魔法がうんちゃらということだろう。気になるので聞いてみる。
「夢の世界で死ぬとなんで現実の私も死ぬんだ?」
「前に世界について本に例えて説明しただろう。お前がやっているのは紙魚と同じで世界渡りだ。
 お前が寝ているときだけお前はの意識は違う世界で生きているのだからこっちで死ねばそっちでも死ぬ」
「……つまりこれも現実と」
「ああ、そうだ。というかお前、今まで理解してなかったのか……」
呆れたような顔をしている。そんな目で見ないでほしい。
現実でも死ぬとなるともう少し慎重に戦う必要が……いや、ないか。
戦闘というのは常に命がけになるし、今まで通りしっかりと戦えばいい。
ハルトシュラーの後を追いかけて、路地を歩く。
陽の差さないその道はどこか亀の家への道を彷彿とさせる。
道はやがてもう一本の道と混じる。雑居ビルだらけだがそのビルだけ陽が当たっていた。
「そのビルの五階にいる。相手は学生だ。頑張りたまえ」
陽のあたるビルの入り口にはなんだか雰囲気の悪そうな若者が二人喋っている。
いかにも頭の悪そうな感じがして話しかけたくないが入るためには声をかけないといけない。
「すまない。入りたいから通させてもらっていいか?」
男二人が私のほうを見る。人を値踏みする目つきだ。ええい、胸を見てしょんぼりするな。
「嬢ちゃん。ここはあんたみたいなコスプレした人間が来るところじゃないぞ?」
コスプレと言われて自分の格好を見る。なるほど、さすがに鎧姿はこの世界ではそうとられてもおかしくない。
もう一人の男は私の顔を見ながら舌なめずりしてる。
「でもまぁ通りたいっつーなら通してやってもいいけどよぉ……」
「通行料が必要になるよなぁ……。なぁに、金じゃねぇよ。ちょっと体を触らせてくれるだけで」
「ああ、では遠慮なく通るよ」
話を最後まで聞かず、獲物を棍棒状にして顎を叩く。情けない声を上げて、男たちは倒れた。
砕くほど力を入れていないがヒビぐらいは入っているかもしれない。人を馬鹿にした罰だ。
陽が当たっているにも係わらずやたら暗い廊下を歩く。灯りは時折ぶら下がっている裸電球だけだ。
五階に向かう途中にも変な男がいたが全員殴り倒した。
変なにおいがする女もいたが不審な目つきをするだけだったのでとりあえず放って置くことにした。
上階に行くたびに無限の気配が強くなっていく。前回の暗殺姉妹も無限姉妹でなければもう少しいい勝負したのではなかろうか。
ドアの前に立っていた男を同じように殴り、ドアを開ける。
部屋は思ったよりも広い。しかし物が雑然と置かれており、驚くほどせまく感じる。
灯りは相変わらずの裸電球がひとつぶら下がっているだけ。窓には目張りでもしているのか一切の光が差し込まない。
そのせいか部屋の明暗がくっきりしている。
奥のソファーに三人の人間が腰掛けている。おそらくは皆女子。そして真ん中にいるのが目標。
「入社希望者、って感じじゃないわよねぇ」
真ん中の人物が立ち上がり、高めのテーブルに手を置く。
服のことはよくわからないが着飾っているのはよくわかる。青と白を基調とした服はあまりにもこのビルとはかけ離れた存在に見える。
黒い髪は後ろで束ね、その先は肩に掛かっている。
「会社運営か。学生と聞いていたが」
「あら、私のこと知ってるんだ。でもねぇ、学生にしか出来ないことっていうのもあるのよ?」
後ろで控えている女子二人が笑っている。学生にしか出来ない職業とはなんだろうか。

344 : ◆7FtGTaokck :2012/09/02(日) 19:00:25.06 ID:eYyoVZvS.net
「あなたいくつ? きれいな髪してるし結構若そうだけど」
部屋の中をゆっくりと歩きながら私に質問を投げかける。
彼女たちがどのような職業をしているかわからないがあの男たちを見る限り真っ当なものではない。
そしてその男たちを掻い潜って私がここに来たことも相手は知っている。時間稼ぎかそれとも余裕か。
「答える必要はないな」
「つれないわねぇ。せっかくうちの会社に誘うかと思ったのに」
「あんな護衛をつけているとなると真っ当な職ではないようだな」
「肉体労働よ。汗かいて稼いでいるのよ」
意外だ。とてもそんなことをしているようにはみえない。肌だって白いし腕も細い。
だがそんなことをするのになぜ護衛が必要になるのか。
足音が聞こえる。踏み鳴らすような音だ。獲物は既に棒状になっている。
音がドアの前まで来たと同時に前に出る。少し後ろをドアが横切り、それと同時に振り向いて殴る。
入ってきた男はそのまま倒れた。後ろにまだ三人いる。驚いている隙に顎や頭を殴り、床に転がす。
「悪いが何人呼ぼうがこの程度では私には意味がないよ」
奥にいた女が拍手をする。目標も口笛を鳴らす。
「こういうことやってると警察が来ることもよくあってね。
 ま、あなたもあいつらと同じように八つ裂きになってもらおうかな」
背面から聞こえた物音に反応して前に転がる。テーブルだのなんだのに当たるが気にしてはいられない。
先ほどまで男たちが倒れていただけの場所に人型の黒い影がいた。
普通の人間であれば真後ろにいたら気配でわかる。なのにあの影はいとも簡単に私の背後にいた。
「すっごーい。初めてだよ。しーちゃんの攻撃避けたの」
煙のように影が消えた。振り向いて攻撃を止める。一瞬で移動してきた。
鍔迫り合いになったが力はあまりないようだ。棍棒を剣に変え、相手の獲物を弾いたと同時に本体を切る。
あまりにも薄い手応えで相手は胴体が真っ二つになった。叫び声をあげるような動作をしたと同時に消えた。
次の攻撃は私の側面から飛んできた。剣で払い、今度は二回切るがダメージを受けるような動作をするだけで
本当に与えられているのかわからない。
部屋の壁に背をつけて、見渡す。これがあの無限桃花の力であることには間違いない。問題はその条件だ。
最初の二回は私の背面から攻撃してきた。しかし最後の一回だけは側面からのものだった。
なぜ背面でなかったのか。わざとなのかそれとも攻撃出来なかった理由があるのか。
相手の出方を見る方法として思いついたのがこの背面を壁につけるというものだった。
さすがにこれでは相手も背面からは攻撃できない。その上、私自身注意する範囲が狭いので相手がどこから来るのか見やすい。
「ふーん。そういうことするんだ。ま、いいんだけどね」
テーブルにおいてあったコップを手に取り、こちらに投げた。
このままだと私にぶつかる。獲物で弾けばいいがその隙を攻撃されるかもしれない。
コップが電球を通り過ぎた頃、名案が浮かんだ。とても簡単で冴えたやり方だ。
壁を蹴って、飛び出す。コップを顔を動かし避ける。置物たちは剣で全てなぎ払っていく。
警戒しすぎなのだ。相手がどのような能力であろうがやることはひとつ。
対象を殺せばそれでいい。
相手はあわてて近くの椅子をこちらに投げつけた。こんなもの無意味だ。
飛んでくる椅子の影から人型が飛び出してくる。影から呼び出てくる能力が正解のようだ。
しかし奴が今、いる影は飛来する物の影。そもそも気配がないことが大きなメリットだというのに眼前に現れたら何の意味もない。
飛んでくる椅子ごとまとめて切り払う。そのまま影に突っ込み、その先にいる対象に剣を向ける。
殺せると確信した瞬間、横から椅子が飛んできた。見ると女子の一人が投げたようだ。
もう一人が落ちていたビンを投げた。私には当たらない軌道だ。椅子を切り落とし、ビンは無視しようとする。
が、すぐにその目的に気づく。あのビンは私を狙う気などなかったのだ。本当の目的は――。

345 : ◆7FtGTaokck :2012/09/02(日) 19:01:36.77 ID:eYyoVZvS.net
派手な音を立てて電球が割れ、部屋に暗闇が満ちる。
「ナーイス! 超助かった!」
対象は目前にいる。例え闇の中でも無限桃花の気配でわかる。一歩踏み出て、剣を突き刺す。
しかし剣は硬い何かに阻まれた。遅かった。すかさず横に斬るが薄い手応えすらない。
再び本体に斬るかかるが阻まれる。連続で斬るも全て阻止される。
どうやら闇がある場所ならどこからでも出てこれるようだ。この状況は分が悪い。
幸運なのは相手が一体しかいないこと。同時に攻撃されたらひとたまりもない。
灯りがあれば相手の動きが制限できる。だが手元にはそんなものはない。
背中に痛みが走る。斬られた。前によろけるがすぐさま立ち上がる。
鎧のおかげで傷が出来ることはないがそれでも痛みはある。その上私の鎧は動きやすさ重視のため、鉄で覆われていない部分が多い。
早く決着をつけなければこのままなぶり殺しにされる。
電気が消える前の状況を思い出す。灯りになりそうなものがあったか? スタンドでも懐中電灯でもなんでもいい。
ふと部屋に入ったときの状態を思い出した。あいつらは外を背にしてソファーに座っていた。
一か八か。二つの気配がするほうに向かう。途中影が攻撃してきたが気にしている場合ではない。致命傷だけ避ければいい。
暗闇に怯え、抱き合っている二人を横目に後ろの壁を獲物で叩く。
壁はあっけなく割れて、光が差し込んだ。
隅のほうであっと声がした。しかしもう遅い。光の中にいる私を攻撃するには私の影から出てくるぐらいだろう。
もちろんそんなことさせる気はない。横に移り、どんどんガラスを割っていく。部屋に陽光が満ちていく。
改めてみると部屋はひどい惨状だ。専ら私が移動する際に邪魔なものを切り払ったせいであるが。
近くにあったものを全て払い、私の周囲のものをなくす。これで周囲の影から攻撃が来ることはない。
窓枠を獲物で取り外し、形を変える。その様子を部屋の端に飛ばされたソファーの陰から見る二人の女子と
頭を抱えて怯えながら見ている無限桃花。
弾は一発。それで十分。影から人型が現れたがもう遅い。放たれた玉は対象を貫き、絶命させるには十分な威力だった。
人型が消滅したのを確認した後、私は少し歩き、倒れていた椅子を起こして腰掛ける。
強い能力だった。もしも本体が十分な戦闘能力を持っていればもっと苦戦していたに違いない。
「ハルトシュラー。帰るぞ」
ふわふわと外からのんびりと飛んできた。観戦もしていなかったようだ。
「ご苦労様。今までよりかは苦戦したみたいだね」
「部屋が真っ暗になったときはどうしようかと思ったがまぁどうにかなった」
転送の闇が私を包んでいく。部屋の端にいる二人がちらりと目に映った。
あの二人がいなければもう少しスマートに終わっていたはずだ。
今後はもっと対象以外が及ぼす影響も考えなければいけない。

余談ではあるがそれから一週間ほど影が気になる病にかかった。


以上 『日のあたる仄暗い雑居ビルと春を売る少女』
長い。長すぎる

346 :創る名無しに見る名無し:2012/09/02(日) 19:31:07.34 ID:BGZ16wJo.net

規制解除おめ

347 :創る名無しに見る名無し:2012/09/02(日) 19:46:21.52 ID:097pVQ/B.net
長くはないでしょw むしろ普段が短いw 乙w

348 :創る名無しに見る名無し:2012/09/03(月) 14:58:15.99 ID:dn6TWLWp.net
何気に新種桃花が量産されている。

349 :創る名無しに見る名無し:2012/09/03(月) 21:30:42.72 ID:Qw1eiNGe.net
またそれで話が書けるかもしれないってことだな

ただし死ぬ

350 :創る名無しに見る名無し:2012/09/04(火) 05:28:13.64 ID:6V4Tn18g.net
死んだらメタ桃花のキャラが濃くなる

351 :創る名無しに見る名無し:2012/09/05(水) 22:16:41.79 ID:X2lutugm.net
 
       ..,-----、
     /⊆⊇⊆⊇__
    /  /~    ,,,,,,, `゙'' 、
    |  /    /    \  \
    | ,'  ,  / ''''''  '''''':::\! ヽ
    | | ミ| .| (●) , 、(●)、.:| |レ
    | | r| |   ,,ノ(、_, )ヽ、,,.::::| |
    |. ! .t| |  `-=ニ=- ' .:::::|レ
    | ヽ、_! .|   `ニニ´  .:/!
    | :::::::>|>=----=< |/
    | ::::/_ ,  \‖. ヽ\
    | :::|   |  ┌┴┐ i. .ヽ
   _,ノ ::::| 〃 ̄ ̄|~)―(´| ̄ヽ|
 「 ...:::::::::::ヽ、___」''─┘|!__/
 \_::::::::::::/ ̄ ̄! ̄ ̄!! ̄! ̄|
   ∠__::::{__ ̄ ̄ ̄\ ̄ ̄\
     /____\\ }. \ ヽ
   / ̄|        | | /  / _,ノ
    ̄` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

352 :創る名無しに見る名無し:2012/09/05(水) 22:27:18.84 ID:qPlA/5gF.net
やめれwwwwwww

353 :創る名無しに見る名無し:2012/09/06(木) 02:18:21.98 ID:gjSdapaH.net
ちょwwwww

354 :創る名無しに見る名無し:2012/09/08(土) 21:37:45.23 ID:qEMK6bXH.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3400648.gif
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3400649.gif

355 :創る名無しに見る名無し:2012/09/08(土) 21:48:40.33 ID:MViA5XEF.net
やだカッコいいw

356 :創る名無しに見る名無し:2012/09/08(土) 23:04:58.47 ID:/zM4t4ch.net
すげえ

357 :創る名無しに見る名無し:2012/09/09(日) 01:08:14.78 ID:NvBPac4W.net
保存余裕でした

358 :続・今日の晩御飯:2012/09/18(火) 15:28:49.54 ID:Km2gMrnR.net
「お届け物でーす」
 能天気な男の声と共に自宅の庭先に投げ込まれたのは、血塗れの大根数本と、目を閉じた妹の生首であった。
 最愛の妹の無残な姿を見ても、桃花は声を上げなかった。破綻が訪れたことは、世界が混在した瞬間から判っていたのだから。
 彼方はいつも言っていた。弱っちい姉さんが死んでも、私は生き残るもん、と。
 異世界の住人。同じ刀使い。そして妹よりも戦闘力は上。
 桃花にとって重要なのは、三点目のみであった。
 玄関の木製の門が弾け飛ぶ。
「健気な妹だよ、全く。最後の最後まで姉さん姉さん、そればっかり」
 返り血に塗れた和装の男が口にしたのは、何と言うこともない罵詈雑言。
 そんな言葉が、桃花の心に沁みていた。
「……そうよ」
 ぽつぽつと、桃花は続ける。
「私よりもずっと強くて、意地が悪くて、貧乳で、でも……私はあの子のことが、誰よりも好きだった」
 頬を伝う涙の理由も考えず、桃花は宣言した。
「だから私は、あなたを許さない」
 男の表情が罅割れたかと思うと、一転して哄笑に転じた。
「ちょ、本気で言ってんのか? 今日イチで笑わせてくれんね」
 角を生やした異世界の男は、涙を拭いながら言う。
「あー、腹痛い……とりあえず頑張れ……妹さんも、草葉の陰で……くくっ」
 居合の要領で、桃花は刀を抜き放つ。
その瞬間。
刃の軌道をなぞるように広大な真空波が巻き起こる。鬼は地に伏せ、敷地を囲う長塀は、真っ二つに切断されていた。
「……何だよ。またこの流れか」
 身体を起こしながら鬼は嘆息しているが、驚愕しているのは桃花も同じであった。こんな能力は、今までの自分にはなかった。
「ま、妹より楽しめるなら良しとするかね」
 普段ならまず反応できない速度の切り込みを、易々と受け流している。身体が軽い。感覚が研ぎ澄まされていく。
 軽く放ったつもりの斬撃は、相手の頬を掠め、刀を弾き、後退させている。
これは――
「魔素……」
 鬼が大きく退いたのを機に、桃花は呟いた。彼方が興味を持ち、遂に得ることのできなかった力。異世界の能力。
「なるほどね。ちょっと舐め過ぎたな」
 鬼は目をきつく閉じた。
そして再び開いた時、男の瞳孔は獣のように縦長に伸び、瞳は深紅に染まっていた。
 顔から笑みの消えた鬼は言う。
「少しは持てよ」
 瞬間。男は数段速い踏み込みで桃花の懐に潜り込んでいた。

359 :創る名無しに見る名無し:2012/09/18(火) 21:37:18.79 ID:D/9NKNqM.net
ラジオの時に普通の男作るとか言ってたけど空気にしかならなくね?と思った
でもなんとかファイト見てたらどうでもよくなった

360 :創る名無しに見る名無し:2012/09/18(火) 21:51:37.13 ID:Rcw1gsd4.net
                     
                      ∨'´ ̄`ヽ       、ヽ l / ,
                  ,.-''"´ ̄ ̄`゙''、 ヽ     =     =
                    /:::::::::::::::::::::::::::::: |:::::',   ニ= 青 そ -=
                  |:r¬‐--─勹:::::|:::::::!   .ニ= 森 れ =ニ
                 |:} __ 、._ `}f'〉n__!_  =- .な. で -=
  、、 l | /, ,         ,ヘ}´`'`` `´` |ノ:::|.|  ヽ ニ .ら. も ニ
 .ヽ     ´´,      ,ゝ|、   、,    l|ヽ:ヽヽ  } ´r :   ヽ`
.ヽ 書 き 青 ニ    /|{/:ヽ -=-  /| |.|:::::| |  |  ´/小ヽ`
=  .い っ 森 =ニ /:.:.::ヽ、  \二/ :| |.|:::::| |  /
ニ  て .と な  -= ヽ、:.:::::::ヽ、._、  _,ノ/.:::::| | /|
=  .く .何 .ら  -=   ヽ、:::::::::\、__/::.z先.:| |' :|
ニ  れ と   =ニ   | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|'夂.:Y′ト、
/,  る か   ヽ、.    | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::_土_::|  '゙, .\
 / :    ヽ、    | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|:半:|.ト、    \
  / / 小 \    r¬|ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| \.   `、

361 :創る名無しに見る名無し:2012/09/18(火) 22:36:51.58 ID:VZWtMuCm.net
やめて!青森さんが過労で倒れちゃう><

362 :創る名無しに見る名無し:2012/09/19(水) 02:44:28.82 ID:U9v3fsVA.net
みんなでかんがえればこわくないってばっちゃがいってた

363 :創る名無しに見る名無し:2012/09/19(水) 15:19:25.51 ID:eRIPCbS1.net
青森さんだ!速筆に定評のある青森さんを

364 :創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 22:34:25.10 ID:QKe+xweK.net
ttp://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/33/souhatsu170.jpg

365 :創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 22:47:45.86 ID:ALKGp/qg.net
吉田さん。

クリーシェのバイト先のファミマに勤めるインド系。苗字が日本人なのでおそらく既婚者。
ナイスバデーの眼鏡。

366 :創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 22:48:32.86 ID:ALKGp/qg.net
また外人かw てかまた女性が増えてしまったw

367 :創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 22:53:20.49 ID:B365aqXG.net
インド系w

またなんでそうなったw

368 :創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 22:55:33.65 ID:ALKGp/qg.net
だってあさ黒だしおでこにぽっちあるしw

369 :創る名無しに見る名無し:2012/09/30(日) 01:44:34.97 ID:8T4vxsjG.net
なんか分かんないけど店長は若い日本人でバイト連中に振り回されてそうだなと思った。

370 :創る名無しに見る名無し:2012/10/01(月) 15:58:46.11 ID:WfhKgBkT.net
http://dl7.getuploader.com/g/sousaku_2/39/z%E5%A4%89.png

371 :創る名無しに見る名無し:2012/10/02(火) 02:11:48.62 ID:MtFZE4vO.net
すこしほのぼのなのが腹立つwww

372 :創る名無しに見る名無し:2012/10/02(火) 03:35:26.77 ID:nElp8C5B.net
 ,・⌒∨―――    
 | /  /\ \    人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人
 | |  / \ /\ ヽ  < すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。       >
 | | |  (゚)=(゚) | !  < 風・・・なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、私たちのほうに。.   >
 | |(6|  ●_●  |6)  < 中途半端はやめよう、とにかく最後までやってやろうじゃん。      >
. /  /        ヽ  < 創発の館には沢山の仲間がいる。決して一人じゃない。        >  
 ヽ | 〃 ------ ヾ |  < 信じよう。そしてともに戦おう。                        >
   .\__二__ノ  <魔王や魔女の邪魔は入るだろうけど、絶対に殺されるなよ。      >
                YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY

373 :創る名無しに見る名無し:2012/10/02(火) 03:43:01.24 ID:MtFZE4vO.net
よりにもよってソレかよwwwwwwwww

374 :創る名無しに見る名無し:2012/10/10(水) 06:48:57.01 ID:n2FOJQb3.net
>>369
それは未熟な研修医のバイトのことですか?そういうのは厳罰を以て取り締まるべきです。
専門医や認定医の免許がない研修医が救急や当直をするのは飲酒運転や無免許運転と同じ(中型免許で2tロングを運転するのもそう)です。
半年ROMってましたが、我慢ならないので言わせて貰います。
医者はサービス業、それも「末端の」サービス業ですよ。
それを何か特別な専門職のように考えるからやたらと傲慢になり、給料や労働条件に不満が出るのでは?
所謂、選良というのは社会全体のプランを考える人間のことであり「末端の」サービス業に携わる人は含みません。
特に行政、流通、報道の「三権」に携わる人間がまさにこの選良にあたります。
先生方が時に蔑んでおられる文系の仕事ですけど、権力を持ってるのは私たち文系です。
一方、医者、看護師は小売店(コンビニ、スーパー)や飲食店(ファミレス)や風俗(キャバレー、ソープ)の従業員と同じ地平の職種ということになります。
研修医や非常勤はバイトにあたるので、同じく時給800円程度で十分なはず。
超過勤務を計算に入れてもこれ超えますよね?だったら不満言う資格ないです。
下の世話(時として性欲処理も含むらしい)など少し汚れ仕事をさせられる看護師なら下水道局員並みの給料を求めてもいいと思いますが。
こんな掲示板に不平不満を並べる暇があったらあなた達の職能である患者サービスにもっと専念して下さい。
それが出来ないなら医者をやめて文系を再受験したら如何?多浪生にまで美味しい就職はないと思いますが。

375 :創る名無しに見る名無し:2012/10/10(水) 08:38:14.31 ID:q76ZvCke.net
どこの誤爆ですかw

376 :創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 04:50:14.28 ID:BZDJgAMX.net
    ,、_  
  [ニ/   ヽ  
  ノl l ノ'''ヽ !
  `! l|,,゚ヮ゚ノ|
   jムっ旦c>
  ⊂三)))))

377 :創る名無しに見る名無し:2012/11/19(月) 19:18:16.01 ID:Xi6UIJO/.net
             __
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                    ノ            \
                  /´               ヽ
                r──|   l              \
           / ̄ ̄ ̄ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、.
          /  ̄ ̄  ̄ ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))

378 :創る名無しに見る名無し:2012/11/19(月) 19:43:32.93 ID:h2Z6xocj.net
ちょwwwwwwwwww

379 :創る名無しに見る名無し:2012/11/19(月) 20:28:09.83 ID:Im5vxj8I.net
ttp://dl10.getuploader.com/g/sousaku_2/98/souhatsu174.jpg

380 :創る名無しに見る名無し:2012/11/19(月) 20:33:00.50 ID:h2Z6xocj.net
おまえらwwwwwww

381 :創る名無しに見る名無し:2012/11/19(月) 21:07:16.26 ID:UBu5aBv7.net
インパクトがwww

382 :創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 12:19:47.36 ID:Flbp48wJ.net
創作発表の文芸観によれば、作家は応募の際にクリーシェの前へと出され作品を真実の秤にのせられた
ファミチキと釣り合えば大成するが、そうでなければたちまち謎生物が棲む奈落へと落とされ、作品を喰われた

383 :創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 12:25:20.44 ID:Flbp48wJ.net
ひなの「つぎ、倉刀 作」
発子「おお倉刀か、あなたのことは知っているわ。なかなか良い詩を書くそうじゃないの」

倉刀「あ、ありがとうございます」

発子「よって死刑だ」

コォーン

倉刀「な、なぜ……」

発子「お前はハルトを楽しませた、重大な罪であ〜る」

384 :創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 12:33:42.29 ID:Flbp48wJ.net
「異議有り!」

発子「異議を認めます」

成歩堂 美作「裁判長! 彼は多くの作品を手掛けてきました、しかし婆っちゃ……ハルトシュラーが喜んだことなどありません!

発子「それを証明する物はありますか」

美作「彼はつねに側に控えていましたが、ハルトシュラーはにこりとすることはありませんでした」

385 :創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 12:45:00.22 ID:Flbp48wJ.net
「ちょっと待った!」

発子「何ですか柏木君」

柏木 剣士「なるほど……確かに彼女は笑わなかった、しかしそれは感情を面に出すことをしなかっただけのこと」

発子「それを証明する物はありますか」

柏木「ここに過去ログが有ります」

発子「ほう」

柏木「彼女は褒めこそはしませんが、倉刀に対して一定の評価をしています。
そして……破門することもなかった」

ビシッ!

柏木「何より! 気難しい芸術家の彼女が側にいても気にしなかったことは、相応の感情を抱いていた、ということでしょう!」

発子「なるほど」

美作(ぐ……よわったな……)

386 :創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 15:42:44.52 ID:uP577f3s.net
なんぞwww

387 :創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 21:53:13.02 ID:K+7whXME.net
はっちゃん私情はさみすぎだろw

388 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 00:26:26.05 ID:YuzeXpfX.net
円川「美作さん! マッ缶を使うのよ!」

美作「マッ缶……そうか! 裁判長!」

発子「なんですか美作さん」

美作「僕は倉刀の無実を証明する、証人を召喚します」

発子「ほう、だれですかそれは」

美作「S・ハルトシュラー本人です!」

ざわ……ざわ……

389 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 00:30:09.68 ID:YuzeXpfX.net
コツコツコツ……

「な、だれだあの少女は……」

美作「静まれい! 静まれい!」

倉刀「静まれ静まれ、静まれい!」

美作「このマッ缶が目に入らぬか」

ドォーン

倉刀「こちらにおわす方をどなたと心得る! 畏れ多くも創発の魔王、S・ハルトシュラーなるぞ!」

美作「一同の者……ご老公の御前である、頭が高い! ひかえおろー!」

390 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 00:32:56.61 ID:YuzeXpfX.net
柏木「閣下であろうはずがない……」

スクッ

柏木「このような場所に閣下が来られるはずもない……出会え、出会えー!」

ダダダッ

ダダダダダダッ

柏木「閣下の名を騙る曲者ぞ! 早々に切り捨てーーーい!」

チャキッ チャキチャキチャキ!

ハルト「……」

チャキッ

テーテーテーテテテテテテテーテーテー

391 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 00:36:02.32 ID:YuzeXpfX.net
ズバッ ズバッ ズバッ!

柏木「ぜ、全滅……? 12人の創作家が……全滅? 三分も経たずにか?」

「4時の方向! 倉刀、来ます!」

柏木「ええい、落とせ、クリーシェが、クリーシェが見ているんだぞ!」

「ア、アメリアーーーーー」

チュドーン

柏木「ええい小賢しい! 落ちろカトンボ!」

392 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 00:55:55.60 ID:YuzeXpfX.net
柏木「倉刀……どうしたんだ? 私の知らない才能が秘められていたとでもいうのか!?」

倉刀「わかるまい! 創作を遊びにしているお前には、この僕の、身体を通して出る力が!」

柏木「賢しいだけの小僧が何をいうか! ならば、今すぐ愚民ども全てに英知を授けてみせろ!」」

倉刀「お前だ!いつもいつも、脇から見ているだけで、人を弄んで!」

柏木「つけあがるなー! 秘技十二王方牌大車併!」

ドカァァァァン!

393 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:01:08.94 ID:6IuouHmd.net
なんだまたwww

394 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:03:32.96 ID:YuzeXpfX.net
柏木「創発は、選ばれし創作家に管理運営を成されて初めて隆盛を得る!」

倉刀「世迷言を!」

柏木「私には使命があるのだ……過疎、過疎過疎過疎! 去って行った同胞の無念!
 待ちに待ったときが来たのだ、多くの作家が無駄死にでなかったことの、証のために…!」

チャキ……

倉刀「大砲!?」

柏木「再び創発の理想を掲げるために! 大義実現の為に! 創発板よ、私は帰ってきたぁぁぁーーー!」

ドッゴゴゴゴォォォーーーーンンン!!!



発子「あの、モシモーシ」
ハルト「漢達の魂の輝きだ……」

395 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:08:55.19 ID:YuzeXpfX.net
アニメじゃない アニメじゃない 本当のことさ

みんなが寝静まった夜 PCからスレを見ていると

とってもすごいものを見たんだ



        ____  クチャ  クチャ   クッチャ
        /     \  クッチャ   クチャ
     /   ⌒  ⌒ \    クチャ
   /    (⌒)  (⌒) \ クチャ    クッチャ
    |   、" ゙)(__人__)" .)|   ___________
   \      。` ⌒゚:j´ ,/    | |             | /
__/          \   || | |             |
| | /    ,  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\n|| | |             |
| | /   /   ヽ回回回回丿( こ)| |             | \
| | | ⌒ ーnnn.ヽ___/  (⊆ソ|_|___________|
 ̄ \__、("二) └─┘ ̄l二二l二二  _|_|__|_

396 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:09:44.61 ID:YuzeXpfX.net
      「し、新着数 0!?」



            ____
          /      \                    。    。       。
         /  _ w _\_________  。      。      。
       /    _____| |  ヘ____ヘ_|____ ___
   /⌒|     ((_____| | Σ ________(○)__(○) バキッ!!
  /   |. ι   (___人__)  | |  '' ,  '  '   , |            。
 |     l\      |    |   | |           |   。
 ヽ    -一ー_~、⌒) |r┬-|  | |           |     。    。    。
  ヽ ____,ノ   `ー'´                  。     。        。

397 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:11:01.26 ID:6IuouHmd.net
違うの始まったw

398 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:11:48.94 ID:YuzeXpfX.net
住人は誰も笑いながら 創発なら常識と言うけど

僕は絶対に 絶対に 納得なんかしていない


         , - ‐――――― 、
.      /                \
.      /                 \
   /                      ―ヽ
.  /                        l
  /: : :                      ( (|
  |: : : : :                    , ヽ
  |: : : : : : : : :                   (  ノ
  \: : : : : : : : : : :             フ
 /: : ̄ ̄ ̄ ̄: :¨ ヽ            /
/: :           \   __/
:            , ´  ̄ ̄ ¨丶   ヽ
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399 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:14:25.35 ID:YuzeXpfX.net
常識という眼鏡で 創作の世界は覗けやしないのさ

書くのを忘れた 古い創発民よ



               _,.-‐一――――‐--、_
             ,.‐''"              `゙''‐、
           /                    \
          /´      ,,,,xwiiiiiillll|||||||lllllliiiiiwx,,,   `、
         /      /iiiilllllllllllllllll||||||||||||lllllllllllliiiii   ', 
        ,'      /llllllllll!!!''''""~~~~~~~~~~~~~~~~\.  ',
        i      // |!!''"~/ ヽ      ! i ヽ  ヽ  |
       .|     〃 | | / ‖ .ll ヽ    .l l  }lヾヽヽ |
       |     !   | ‖ / ! /  ヽ  ../ ,,,,;;::'''''ヽ \ノ |
       i     !    / ,,,,!/::::::::::::: \/    __  ! |  |    過疎を耐え抜く精神力がある人でないと
       |     ゝ |/ .| "   __ ::::   '"ゞ'-' .| |  |    (創発板を使うのは)難しい
       |      ! .|. |  - '"-ゞ'-' ::::::..      | |  |
       |      ∨ .|         ...:::::::     .| |  |
       |      ::::|. |        ( ,-、 ,:‐、   | |  |
       |     :::::::.| |                 | /::::. |
       |    :::::::::::| |        __,-'ニニニヽ.  |/::::.  |
..       |   ::::::::::::::::| |ヽ        ヾニ二ン" /::::::::..  |
       |  :::::::::::::::::::::::ヽ\             /::::::::::... │
       |  :::::::::::::::::::::::::l  `ー-::、_       ,,..'|ヽ:::::::::....  |
       |  :::::::::::::::::::::::人      `ー――'''''  / ヽ::::....  |
       |; :;:;:;;:;:;::::_/  `ー-、          ,.-'"  \ー-、
       |  ::::::,.-'"  \:      \      .,.-''"     |
       | :::/.     \        ~>、,.-''"      |
    ,,..-‐'''""        ヾ    ,.-''"|    /――――、/

400 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:15:38.25 ID:YuzeXpfX.net
アニメじゃない アニメじゃない 素敵な世界





                   過疎スレ           普通             繁盛スレ
       ∧     .∧      ┝━━━━━━━━━━┿━━━━━━━━━━┥
     ∧ ∧  ∧/ '∧    
    ∧  ,.-''"´ ̄`゙'' 、  ∧ /⌒;
   ∧  ,.'     ! ヘ `ヽ ./ /
  ∧ ∨! ∨'|/ヽ | |∧  .|(__つノ)
  ∧ ∨ !  | ∩ |/∩V}// /∧
  ∨ ∨ ゝ.八""┌┐""})' ./  ∧ <ココ!!
 ∨ ∨ ≧=-}}ト ニ イ ,r'∨ ∧
 ∨ ∨  /" }´  \/ ∨ ∨
 ∨∨ /》,〈/⌒^V^⌒)  ∨∨
  ∨/ 〈  く rヘゝ-"`-イ   ∨/
  .∨'  `ト(/ミノ____〈   ∨'
  ∨'     {三ヨ0||0三}  ∨
    ∨   /='/ 、/ }/ \
      ./、===/⌒\=="ヽ
.     /:::::::::::/    \:::::::}
     人:::::/      /:::::ァ'
.   /:::::/      /:::::/
  /:::/       /::::::::〈
. / ニ〔         〈`ニニニ}
└‐‐┘            ̄ ̄

401 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:16:52.29 ID:YuzeXpfX.net
アニメじゃない アニメじゃない 現実なのさ




                             __
                       _,.-‐''"´ ̄    ̄`゙'ヽ、
                      /,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,  、   ヽ
          ズシーン       ,/∠Ξ三三三Ξ\,,|    `,
                   ///‖/|  |\ ̄~\|    :::i
                  // / /⌒レ||ハ |⌒ト、  :| .|  .::::|
                  レ| | .|/∩    ∩ \ | |,、 .::::|     ズシーン
                   レト、| ∪    ∪  | | |,ノ ..:::::::|
                     入   从,.   "" .| /| ト、 ..:::::::::\)ヽ
                   三 ≧   ',,._...,<''//| |,イ:::::::::::::::ヽ/_
  .             ゚ 。゚ 三 ≧       ゚'ゝ、. // | |\::::::::::::::::::::::::::`ヽ
             -== 三         ≦..゙//:::::| |、 \::::::::::::、 、、:::::ヽ
            。 -=≦          ,ァ.::::∨::/||\_,ノ:::::::::::::`ヽ))\ノ
  .     ゚ ・ ゚。  三<         、,J.゙VVVXZ\|\|`゙''ー‐--、:::::ノレ "
          ≦ ッ        ッV´..゙\::::::::::ト、\,、,、,、//:::/≧ レ'
   .  __ |ロロ|/  \  _ |ロロ|/ \ __ |ロロ| __..|ロロ|   __ |ロロ|/  \
   _|田|_|ロロ|_| ロロ|_|田|.|ロロ|_| ロロ|_|田|.|ロロ|_|田|.|ロロ|_|田|_|ロロ|_| ロロ|_
         ワー       キャー               ワー       キャー
         λ  ワー    λ        ワー       λ  ワー    λ   
             λ             λ     λ             λ

402 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 01:18:27.88 ID:YuzeXpfX.net
アニメじゃない アニメじゃない 不思議な気持ち



                  , イ"/ ̄ ̄ ̄`ヽ
                , イ-〆\      ! ヽ, iヽ
              ,// ̄`  `、,,,'''   ,∧ノノ
              { /       〉  _,.-''::::::::::ヽ    / ̄ ̄ ̄ ̄\
              }〈       /,.-''"'i i::::::;::::::::::}   ..|  優  倉 .|
              >__,.-‐一''"///⌒||::::||::::i::::|    |  雅  刀 .|
              {    _,.,ィ''|/‖ '~J゙>||:::∧:|::/   .|  に    ...|
              {ト 、,イ( 迅}     迅ノ.|/|,ノ:}/    .|  参  作 .|
              \||レゝ    '       /‖    .|  上     .|
               レト、ゝ 、  ー'   . //    ∠   ♪     .|
                    .,K|` ‐-‐ ´|>         \____/
.               r‐y^テ< マ ̄V ̄ ノ>^T" ヽ
.               / {// ┌─【】─┐ .|//  ',  
             ノノ   V . └/i||i\┘ .V/  ',  
             r'゙   ノ  .//i||i\\  V   `丶  
               弋  Y.    ̄  i||i   ̄   Y    }    
             マ x.{.     ⊂⊃     ..::} _ノ
              ト 八       .i||i    ..:::::八ー┤
     r= 、_   ┌L_iゝ:::_:::::::_:⊂⊃:::_::::::_:ノ |__」    /`ヽ、 _
. y'⌒ヽf  `  ̄ ̄ ̄\  ∧:::| ̄:::::::i||i::::::: ̄|:::/.f´  ├-‐'"  // ´ ._rf.`ヽ、
/ .f⊂))\          / ∨| |:::[二二]::::| |::/ |  //       |.| ((つi_ノ i. }
|.|し!⊃´⌒''‐-x_    ___/  /::| |:::::::i||i::::::::| |:∧ ゝ ______//^/`ーし|丿

403 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 02:16:39.16 ID:YuzeXpfX.net
                          ┗0=============0┛
               \===========[_|_|_|_|_|_|_|_|_|_|_|_|_|_]===========/
            /三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三\
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◎○@※◎○@※. |□|.│ |┌┬┐ |::|┃ '´,,==ヽ ┃|::| ┌┬┐| ::|. |□| ◎○@※◎○@※
ii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii| `)三(´| ::|├┼┤ |::|┃|´iノハルト〉 ┃|::| ├┼┤| ::|`)三(´il|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|
@※◎○@※◎○ | ::| | ::|└┴┘ |::|┃j l| ゚ -゚ノ| ┃|::| └┴┘| ::| | ::|  @※◎○@※◎○
ii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|li┏━━━━━┓|::|┃< リ;春jリつ┃|::|┏━━━━━┓ li|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|l
◎○@iiii※◎○@ ┣┳┳┳┳┳┫|::|┗━━━━┛|::|┣┳┳┳┳┳┫ ◎○@iiii※◎○@
ii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|l ○    ●        ∫∬∫∬        ●    ○ ii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|iiii|li
               ○○  ●●      iiiii iii ii iiii       ●●  ○○
           [ ̄ ̄] [ ̄ ̄]   ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)    [ ̄ ̄] [ ̄ ̄]
                |_○_|  .|_○_|     |_____|     |_○_|  .|_○_|
    ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧
    (    )(    )(,    )(,,    )    ,,)(    )(    )(,    )(,    ;)

                                      ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                                      d⌒) ./| _ノ  __ノ   
                                   ------------------   
                                   製作 ・ 著作  創作発表@2ch掲示板

404 :創る名無しに見る名無し:2012/11/25(日) 03:06:22.37 ID:QBH6G177.net
おいwww

405 :創る名無しに見る名無し:2012/12/19(水) 15:17:28.86 ID:n/Iilkn4.net
.

406 :創る名無しに見る名無し:2012/12/30(日) 00:50:18.91 ID:CbG0sKz2.net
http://vippic.mine.nu/up/img/vp103455.jpg

407 :創る名無しに見る名無し:2012/12/30(日) 23:21:55.46 ID:t7cJlLa5.net
なにこれwwwww

408 :創る名無しに見る名無し:2013/01/05(土) 14:42:00.69 ID:lyDpefd7.net
新春!! ソーハツ! 文字だけ4コマ


『パンツ』


―――

僕はタナトス 最近SSPさんの付き人の一人になりました
今日はSSPさんの付き人になって初めての試合!!
でも…

―――

わーわー

タナトス(SSPさん……また女性用パンツを被って出てった… これヤバいんじゃないかな…
だって今日の対戦相手はあの人気のスペル・ドルフィン
今日のお客さんは若い女の人が多いから引かれそうだぞ…
誰か止めないのかなぁ……)

―――

付き人「おい……おいSSPまずいぞ!!!!!!!!
パンツ!!! パンツパンツ!!!!!!!! パンツ隠せ!!!」

タナトス「はっ!!!!!!」

―――

付き人「ロングスパッツの下のトランクスが見えてるぞ!!! 隠せ隠せ!!!!!」
ハート柄のやつ!!!

タナトス「そっちかーい!!!!!!!!!!!!!!!!」
ズコ〜〜!!!

409 :創る名無しに見る名無し:2013/01/05(土) 14:51:43.54 ID:lyDpefd7.net
『女神の三が日』


―――

元日

クリーシェ「いらっしゃいませ〜
ポイントカードはお持ちでしょうか?」

―――

2日

クリーシェ「おタバコはこちらでよろしいですね?」

―――

3日

クリーシェ「ファミチキはいかがでしょうか〜?」

―――

クリーシェ「…正月の出番がこれだけなんて悲しい」
ズーン… しくしくしく

410 :創る名無しに見る名無し:2013/01/05(土) 14:57:51.67 ID:lyDpefd7.net
『おまけ』


円川「出番があるだけありがたいと思いなさいよ!!!!!!!!!」

ひなの・アジョ中・バンディッド霧崎・田中之翁・メイちゃん・夕鶴・アンテナさん・あんてなたんetc『そーだそーだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

クリーシェ「そ そうだねごめんなさい」

411 :創る名無しに見る名無し:2013/01/05(土) 21:18:55.53 ID:pcb6cVW8.net
創発出番無い同盟が巨大勢力になってたwww

412 :創る名無しに見る名無し:2013/01/08(火) 17:18:36.52 ID:KJfTMNvR.net
 人差し指と親指で、腹の肉をつまんだ。
 どれほど痩せて引きしまていようとも、普通の人間ならば摘まめる程度の肉はある。

「むむむ……」

 H・クリーシェがそれを何度か繰り返す。最初は少し、次は多目に、最後は摘まめるだけ思い切り。
 無理はあるが普通に手でつまめる程度の量はあった。

「発子さん太りましたね」
「蒼ビーム!」
「グ八ッ! 夏の残りのブルーハワイのシロップが目に!」
「なんなの!? いきなり太ったとか失礼ね! デリカシーはないの!?」
「だっていっつもトングでファミチキ食って、日に日にカロリー貯め込んでるじゃないですか。自覚はあるでしょ?」
「いいじゃない! ちゃんとお金は払って食べてるんだから!」
「仕事中に食べないでください。……いやそういう問題じゃないでしょ」
「じゃー何よ」
「人の目の前で堂々と腹の肉つまんで。デリカシー以前にそっちが隙だらけでしょ」
「そうかしら?」
「そんなんだから某所で豚の鼻付けられたりくるくる尻尾付けられたりするんだ」
「なんで知ってんのよ!?」
「こないだ妹さんが来店しまして」
「あら、ひなのが?」
「ええ。バターを一本食われたので急遽コンビニで買い足しだそうで」
「ひなの! おおひなの! 私がバター一本食いしたのなんでバラすの!?」
「それ以前に食わないでください」
「だいたい佐藤さんなんでそんなに細いのよ!?」
「知らないの? 黒人ってごっついのより細身で長身なのが多いって」
「そーなの?」
「そりゃどいつもこいつもアメリカンマッチョじゃないですから」
「ふーん」
「それより、少しはダイエットしたら?」
「なんで佐藤さんにそんな事言われなきゃならないのよ」
「だって気にしてるんでしょ?」
「……そーだけど」
「誰かが言わないとやんないでしょ?」
「うっ」
「運動でもしなさいよ」
「やだ」
「なぜ?」
「面倒だから」
「お前駄目だわ」

 また腹の肉をつまんだ。
 元から丸っこい印象の顏は、どんどん真球に近づいて、ぷにぷに感をまだなんとか残していたが、ぶよぶよ感になるには今の生活をあと数か月も続ければ安定してたどり着くだろう事は明白。

「どうすればいいのかしら」
「だから、まずファミチキやめて、バター食いもストップして運動して」
「ああ! ファミチキをキレ食いしながら家でごろついてても綺麗に痩せるサプリとか深夜のテレビショッピングでやってないかしら!」
「うん。そうだねもう駄目だね発子さん」
「発子って言うな」
「いまさら?」
「うん」

413 :創る名無しに見る名無し:2013/01/08(火) 17:18:52.97 ID:KJfTMNvR.net
ごめんなさい

414 :創る名無しに見る名無し:2013/01/16(水) 14:35:07.30 ID:XYhHc0na.net
てすてs

415 :創る名無しに見る名無し:2013/01/16(水) 14:38:20.29 ID:XYhHc0na.net
 『創作活動について戦う第四話』 ←別の連載から抜き出してきた関係につきご了承を




 舞台は地球のどこか。具体的に描写しないので、地球のどこかとしか言いようがない。
 もっとも、彼女のいるところ、火星だろうが太陽だろうが舞台になりえるのだが。
 暗闇にスポットライトが灯って人物の容姿を鮮明に際立たせた。

 「そこのお前! 創作活動は楽しいか? どんな風に楽しい! どうして作ろうと思った!」

 銀髪の少女が問いかける。彼女はハルトシュラー。創作活動を司る存在。創作活動という海の中で誕生した生命体である。創作活動というそのものが彼女を作った。やがて彼女は創作を始めた。いつしか創作の魔王という名前をいただいた。
 この話を知るものはあまりいないだろう。2ちゃんねるのごく一部。創作発表板という極めて住民数の少ない場所で誕生したマイナーキャラクターだからだ。知名度では地方のゆるキャラにも劣る。
 けれど、創作活動そのものを具象化したキャラクターが存在しない以上、彼女は魔王なのだ。
 彼女は言う。
 春と修羅と。
 貼ると修羅。すなわち作品で己を語ることだ。
 作者は作品でこそ己を語るという主義の誕生経緯が彼女のすべてである。
 彼女は耳を傾けた。
 世界には数多くの作品がある。作者がいる。言葉がある。

416 :創る名無しに見る名無し:2013/01/16(水) 14:39:34.42 ID:XYhHc0na.net
 『ファンタジーの醍醐味って現実にはない剣と魔法だよね』

 『イラストは幼稚園が起源だなー』

 『フリーゲーム用に作曲を始めたのが原点だった』

 『SFは広大な宇宙だって旅できる』

 『恋愛ものはいい。イチャイチャからハーレムまで楽しめる』

 『本を読むのが好きだった。特に、あの本が楽しくて物まねから始めた』

 『資料本から入ったわ』

 『感想が欲しかった。誰かに認めてもらいたかった』

 『将来、小説家になりたくて書き始めたんだよ』

 『父親に勧められた本が面白くて』

 『インターネットで自然と小説に触れるようになって書きたくなった』

 『エロ小説いいよな。だって現実じゃこんなことできねーもん』

 『フラッシュかな。ソフトを使って動画を作り始めたのはフラッシュで大笑いしたのが始まりかも』

 『パソコンがなかったから紙に設定纏めてたわ。黒歴史っての?』

417 :創る名無しに見る名無し:2013/01/16(水) 14:42:49.51 ID:XYhHc0na.net
 彼女は言葉の列の中に、こんなものを見つけた。


 『連載を続けてポイント維持しないと。せっかくここまで上り詰めたのに。
  流行りの要素を入れるだろ、連載速度を上げるために一話を少なくして、
  可愛い女の子もじゃんじゃん入れる。あとは挿絵か? いや、挿絵なんて入れたらバカにされる。』

 それは不安だ。足場が崩れるという不安である。


 『もう疲れた。いくら書いても人気でないし。面白くもないわ。スレでも荒らすか』

 それは徒労感だ。己が評価されずに生まれる無気力だ。


 『普通のオリジナルは評価されないのに流行り要素たんまりいれたらアクセス増かよ』

 それは憎悪だ。評価の指向性が流行りに向いている真実に気が付いた憎しみだ。


 『こりゃ楽だわ。次回作も似たような感じでいこう』

 それは思考放棄だ。考えることをやめ、評価だけを得ようとする姿勢だ。


 『スレでどさくさに紛れて宣伝するか。ステマってやつ。ばれないだろ』

 それは投げやりだ。どうせ変わらないという態度だ。


 『エロ絵だけ評価とお気に入りが増えて、真面目な絵は増えもしない。落ち込むわ』

 それは絶望だ。己の絵などどうでもいいのではという悲しみだ。


 ハルトはもう一度訊ねた。
 魂の叫びだ。

 「……本当に、楽しいのか?」

418 :創る名無しに見る名無し:2013/01/16(水) 14:45:15.32 ID:XYhHc0na.net
 小説を書いてて楽しいのか。創作活動していて楽しいのか。この素朴な疑問に答える人はいるはずだ。
 様々な言葉が染み出てきた。
 
 『もちろん』
 『当たり前』

 けれど、やっぱりこういう言葉もある。

 『書かないと人気が下がる』
 『早く、もっと早く』
 『ランキングから落ちたくない』

 「……本当に楽しいのか?」

 ハルトがそう問いかけると、言葉が消え去ってしまった。
 ハルトは胡坐をかくと空間に紙と鉛筆を取り出した。さらさらと落書きを書いては消す。それは設定であり絵である。幼稚な絵。中二病をこじらせたような凝った設定。
 あなたはバカにできるのだろうか? 本当に馬鹿にしてもいいのだろうか。本人が誰に迷惑かけずに楽しんでいることをバカにできるのだろうか。その姿はかつてのあなたに重ならないだろうか。
 ハルトは紙を横にのけると腕を組んだ。
 流れては消えていく作品を見つめる。
 千では足りない。万、億という単位である。

 「似たような作品。誰かのアイディアを持ってきて書いたもの。自分が楽しいからではない。誰かを楽しませたいからなどでもない。ただ書いて、数字に一喜一憂する、まるで無味乾燥な作品………」

 ハルトは空を仰いだ。空もまた彼女の創作だ。デリートキーを押すだけで消えてしまう脆い空。
 ふぅ、とため息を吐くと空に舞い上がった。
 空に舞い上がったという文字をタイプするだけで浮かぶことができる。それは、創作の特権である。
 ローマ字ないしカタカナ入力だけで世界は完成する。
 ハルトは作品の流れを上から俯瞰した。

 「私は楽しさゆえに生まれたのだ。私は作者に修羅となれとも言ったが」

 ハルトシュラ―主義とは作品で語る主義である。
 主義主張はすべて作品に込めて作者は作品に精魂を預けるのだ。
 ハルトはどこか空虚な表情を浮かべた。
 見つめる先は地平線である。

 「根源を見失ってはいけない。創作者の根源とはなんだ。楽しいという切っ掛けが評価されたいという顕示欲に繋がりモチベーションとなる。面白い作品があるからこそ、それを超えてみたくなる。
 純粋な気持ちが原動力ではなかったのだろうか? 人は大人になるにつれて純粋を失うものだ。理想は色あせ、現実がとってかわる………」

 彼女はそう呟くと腕を組んだ。
 ここは虚空。遥か下方に町がある。彼女を支えるものはない。しかし彼女は落ちない。落ちないと文章に書いているからだ。
 重力など関係ない。イメージの世界において足枷とはならない。時よ止まれと唱えれば運命だって変わる。自由こそ創作の本質なのだ。
 ハルトは心の内を吐き出すようにして言葉を紡いだ。
 
 「私は修羅になれとも言ったが、マシーンと化してはならない。ただ、人気のためだけに筆を動かす。楽しくもなんともない。評価されなくなる恐怖。
 いつの間にか自分の作品などなくて、誰かに評価されるだけのマネキンだけが作り上げられていく。この構造に私はとてつもない恐怖を感じるのだ。そう、構造だ」

 彼女は創作活動である。作るということに関してシリアスに考察するのは、当然である。人間がなぜ人間なのかを哲学するように。彼女もまた哲学する。
 すると、彼女の言葉に釣られたかのように、空間が歪んだ。


 ま   るで波  紋が広が る
       か
 の       よ  う





419 :創る名無しに見る名無し:2013/01/16(水) 14:48:38.27 ID:XYhHc0na.net
 文字列が歪んだ。
 空間の歪みが最大限に達したとき、それは現れた。
 空間からぬらりと影が染み出す。まるで母体からはい出る赤子のように、影が身じろぎをしつつ、ハルトのいる空間へと進出してくる。影はじっくり時間をかけて一枚の膜を突き破り実体化した。
 ハルトと似通った顔立ち。ただし耳は尖ったアンテナであり、目は作り物、背中にはメカニカルな翼が生えており、彼女を取り囲むかのようにデータグラフや図や画像が泳いでいた。
 服装も、メイド服と水着と鎧と和服を混ぜ合わせたようなごった煮。すべての要素を取り込もうとした異形の服である。
 ハルトは警戒して身構える。知らない奴だ。新キャラに違いなかった。
 日夜新キャラが生み出される創作の世界では、突然新キャラに襲われることも日常茶飯事。あるキャラクターはあるキャラクターに殺されて、あるキャラクターはあるキャラクターに恋をした。それが創作の世界だ。背中を刺されることだって珍しくもない。
 そのハルトによく似た存在はにっこり笑うと肯定した。
 何を? 創作をである。
 まるで悪魔のような笑みだった。美しさだけを固めたような吐き気を催させる笑み。
 もしくは、天使のような笑み。だが天使とも悪魔とも断言できないであろう。なぜなら、天使でもあり、悪魔でもあるからだ。ハルトがカオスならば、その存在はコスモスであろう。

 「肯定しましょう。創作活動とは自己満足です。商業作品も所詮は自己満足。金をむしる手段の一形態でありつつ自己満足が大部分。評価されたいという気持ちが商業という進化を得たに過ぎない。
 ならば、人は波に乗ればいいのです。なぜ戸惑う必要があるというのですか。波に乗るためにとった行動はすべて正しいのですよ」

 一拍置くと、片手でグラフ等を横に除けた。グラフは売り上げを示すものもあれば、URLや、QRコードでもあった。
 笑顔はまるで作り物のよう。否、人を魅惑する魔力を持っていた。たとえ男女問わず惹きつけられるであろう甘美な引力があったのだ。それは顔だけではない。空間そのものから放たれているようであり。
 リアル世界でサーバーを吹っ飛ばした夕鶴とも一線を分かつ異質な存在とハルトは認識した。だが、夕鶴がまるっきり別の存在ならば、その存在は違った。まるでハルトと鏡合わせの虚像のように感じられる。
 その存在は、笑顔を変えないまま、唇を動かした。

 「創作活動は、あらゆる手段を行使すべきなのです。それが法律に触れない限りは、テンプレートや流行の要素をも取り込み、膨張するのが正しいのです。そこに自我の有無など必要ではないのです。
  みんなが注目してくれる。それは正しいことと考えましょう。祝福しましょう。我が子が生まれてゆきます。喜ばしいことです」
 「いや、違う!」
 「何が違うというのでしょう。その前に、自己紹介をしておかなくてはなりませんね」

 ハルトが反論しようとすると、その存在は胸に手を置いて見せた。

 「我が名はマキナ。外なる神にしてあなたと同じ創作の魔王。
  あなたが自由な創作を司るならば、わたしは制御された創作を司るもの。より理性的かつ打算によって需要を見極めて供給することを推奨するもの」

420 :代行:2013/01/19(土) 03:04:21.90 ID:TPxAf3AV.net
 マキナ。それは機械を意味するラテン語。機械、それは計算で動くもの。
 マキナは笑みを崩さぬままハルトに近寄った。翼がゆっくりと宙を掻く。足元では文字が生えては枯れていく。

 「私は、何か人気のあるものを模倣して製造された、一つの作品。一種の、型にはまったもの(クリーシェ)。
 どうです? 似ているでしょう。なぜなら私はハルトシュラーという偶像に似せて作られたからです。
  ハルトシュラー。あなたは不要なのですよ。この世界は波でできている。波の中で誕生した不要物は排除されなくてはならない」

 そうマキナは言うと、手のひらに剣を顕現させた。途方もなく平坦で模様も特徴の一切も存在しない剣という概念そのものである。
 剣の様式を守り刃こそあるが、剣の本体に実体は存在しない。我々が思い描く剣のいずれにも合致しない。だが、誰に見せても剣であると認識できる。
 まるで作り手の意思などなく、感動もなく、ただあるだけの武器。剣たれ、と文章で念じられたから、剣という形をとっただけの武器。量産品であり、一品もの。
 マキナはそれをゆったりと掴み取った。剣がぬらりと空間の歪みから引き抜かれる。波紋が広がっていった。
 ハルトは動かなかった。動けないのかもしれない。動く必要すらなかったのかもしれない。
 マキナは、ハルトとそっくりな相貌に笑みを張り付かせたまま、剣を構えた。不気味な低音が鳴る。

 「さようなら、ハルトシュラー」

 剣が振り下ろされた。
 肉を断つ感触にマキナは、歓喜の声を上げた。
 肩から腰までを剣に切り裂かれたハルトは耐えがたい灼熱の苦痛を感じ、己の体が制御不能に陥ることに抵抗することさえできなかった。
 足元が脱力して倒れ込む。己の血液が地面に広がっていった。生ぬるい赤の水溜りの中でハルトは無力な子供でしかなかった。
 私は死ぬのか。ハルトは考える。
 あなたは死ぬのです。マキナが肯定した。
 やがてハルトは、

421 :代行:2013/01/19(土) 03:07:12.60 ID:TPxAf3AV.net
 
 
 
 
 
 
 
 剣が振り下ろされずに直前で静止した。

 「何?」

 怪訝な顔をしてマキナが剣を構えなおす。確かにハルトを斬ったはずだ。はずなのだ。
 しかし目に前にいるハルトは無傷。血の一滴も垂れていない。
 ハルトを取り囲むようにペンやエンピツやパソコンやクレヨンが竜巻を作っている。創作活動に欠かさせない道具たちだ。
 その道具たちは役割を終えたと言わんばかりに塵となり電子データの海に去って行った。
 マキナは察した。
 腐っても創作の魔王。一筋縄ではいかない。

 「まさか、作品を書き換えたとでも」
 「ご名答。今さっきの展開を書き換えさせてもらった。もっとも、そう何度も使える手ではないのだが。
 あまり修正しすぎると作品自体が壊れてしまい、正常の終わり方にたどり着けない。
  一話を完結させられないということは外部に発信する以前の問題だ」
 「油断したようですね、私としたことが情けない。今度こそ終わりですね。我が剣を受けなさい」

 崩れた笑みを再び灯したマキナの剣はしかし一本の記号にはじき返された。
 一本の棒がハルトの手の中に握られている。もっとも古いであろう記号。人類が文字を発明するより前、地面などに描いていたであろう、ただの棒線。
 それは歌を伴っていた。また、色合いも様々だ。青であり、赤である。見る人によって色も匂いも違う。渾身の作品でもあるし、なんとなく書いてしまった作品でもある。
 ――言うならば、原初の創作。
 『―』という記号が、剣を受け止めていたのだ。
 ハルトは剣を弾き返すと優雅に眼前に構え、右手に握ってだらんと垂らした自然体に移行してみせる。

 「こいつを引き出すことになるとはな。覚悟しておくがいい、マキナ」

 マキナは焦りひとつ見せなかった。むしろ予想していたと言わんばかりの堂々たる態度。
 ただ剣を構える。敵を斬るために。肉体を半透明なオーラが包む。

 「望むところです」

 マキナが光の速度を超えて機動した。翼がはためき時間が置いてきぼりにされる。推進力などいらない。
 光の速度で飛ぶと描写したからこそ、光の速度で動けるだけである。マキナの本質は創作。ハルトの別の側面の体現者。ならば、同じような力が使えるのも道理である。
 地球を飛び出し宇宙へ。月と地球の狭間でハルトの横を通りざまに斬りつける。
 だが、すでにハルトはいない。
 ハルトの姿がただの文字列と化して粉砕したのだ。
 マキナの背後にハルトが出現した。背後から棒を殴りつけ、ついでに蹴っ飛ばす。

 「かふっ……!?」

 マキナが痛い悲鳴をあげて月へかっとんでいった。
 月兎たちは何事かと空を仰いでいた。するとどうだろうが、次の瞬間には翼を生やした人が現れたのだ。泡食って逃げ出していった。
 月面まで飛ばされたマキナは、地球より長くなった棒がバッドの要領でフルスイングされるのを見た。末端部は明らかに光を追い越している。
 直撃を避けるべく剣を巨大化させれば棒に立ち向かう。下方からの突き上げ。

422 :代行:2013/01/19(土) 03:08:21.78 ID:TPxAf3AV.net
 「おおおおっ!」
 「ふふふふふ!」

 絶叫に等しい鬨の声。愉悦の笑い声。
 棒と剣が接触するや、壮大な衝撃が発生した。月の表面は瞬時にえぐられ隕石と呼べるサイズまで砕け散った。
 破片はおぞましい速度で地球に衝突すると大気の層を無視して地殻を貫通した。マグマが飛び散る。その中を、二人は格闘していた。
 棒で突く。
 受け流して、空中に浮かんでいた山を念力で吹っ飛ばす。それはかつて富士山と呼ばれていたものだ。
 ハルトは富士山を文字通り蹴りで破壊すると、破片を払いのけて肉薄、棒を大上段に振りかぶりたたき落とした。
 剣が棒の進行を防ぐ。
 激しく火花が散った。火花が岩石に接触するや瞬く間に融解してしまう。
 距離をとった二人をよそに地球はいずこへと流れていった。粉々となった岩石たちは徐々に各自の重力に惹かれて集合していく。
 ぶつかる衝撃で岩石が過熱する。時間がたつにつれて岩石は別の星へと変貌していった。
 マキナは剣を下段へと構える素振りをわざとらしく見せつけると、意味ありげに右手を掲げてみせた。

 「強い。さすがは魔王。けれど不死身の存在なんて、この世にいないのだから」
 「むっ」

 刹那、ありとあらゆる暴言が殺到した。
 それは作品に対する評価だ。

 つまらない。
 面白くない。
 消してしまえばいいのに。
 ほかの作品を書けよ。
 この作者もオワコンだな。
 きめぇ。
 死ねばいいのに。
 オナニー作品じゃねーか。
 人気欲しいだけじゃん。

 「もし私に隷属するならば、すべてを許しましょう。波にさえ乗ればこのような言葉も聞かなくて済みます。波に乗れば、人気が出るのです」

423 :代行:2013/01/19(土) 03:09:43.19 ID:TPxAf3AV.net
 ハルトは波にもまれていた。創作者たるもの決して逃れられないことだ。ハルトは創作者である。魔王だろうがなんだろうが創作者という区分からは逃れられない。
 インターネットが発展した現代では、少し調べるだけでザクザクと批判が出てくる。作者の人格攻撃もある。
 匿名の世界でなくても、起こりうることだ。現実で作品を読ませてみたらバカにされるなんて悲劇ありふれている。
 だがハルトは波を一息で飲み込んでしまった。
 ありとあらゆる批判を文字通り飲み込んで咀嚼するとにっこりと笑って見せる。不敵に、笑って見せる。
 だからどうした、と。

 「いいや、それは違う。批判というものは波に乗っても起こることだ、この世に完璧なものなどないのだから。不死身などいないことと同じだ。この世の真理なのだ」
 「バカな………ありえない」
 「どうして言い切れる? つい今しがたお前が言ったことだ。不死身などない。つまり完全などないのだ。すべてが肯定され、批判される。それは例えどこの国、どこの時代でも同じこと。
  波に乗って安心していると、いつかサーフボードをさらわれるぞ?」
 「………」

 マキナは押し黙った。自己矛盾を見つけてしまったからだ。
 ハルトはさらに続けた。

 「いや、そもそも…………型にはまった作品ほど、批判を受けやすいものだ。オリジナリティにかけるとな」
 「しかし、人気は……」
 「それがどうかしたのか? 楽しいから作る。これを批判できるものはいない。絶対にいないとは言わない。
 もしかすると創作を批判できる絶対者がいるかもしれない。認めよう。創作は不完全で道しるべがない」

 ハルトは、手に持った棒をバトンのようにクルクルと回して見せた。
 棒は虹色の粒子をばらまいて輝いた。
 ハルトが棒を一振りすると空間自体が変貌した。緑あふれる楽園。空を突く巨大な樹木。新しい世界観が生まれたのだ。

424 :代行:2013/01/19(土) 03:11:18.30 ID:TPxAf3AV.net
 「だからこそ楽しいのだ。こうして自分で世界を創造・想像することができる。何物にも支配されず、好きにな。
  あえて宣言しよう。だからどうした。楽しいから作ってはいけないのか? 流れに乗らないから、悪いのか?
 楽しいから作るという気持ちを抱き続けることが時代遅れなんて、あってはならない。悪いなんてはずがない。
  創作は自由だ。創作の原動力は楽しさ。波に乗るためだけに創造されたおまえにはわかるまい。いや、もしかすると………わかっているのかもしれないが」
 
 それはハルトの本質だ。自己表現の手段としての創作。楽しさゆえの創作。文字で、絵で、音楽で、己を表現する。作ることが楽しい。
 ハルトシュラーの存在意義はそこにあるといっても過言ではない。
 対するマキナも口を開く。笑みは皮肉さを帯びていた。
 
 「ふ、しかし評価されない作品に意味などありません。
  評価されてこそ作品。評価されない作品はやがてオリジナリティを捨てて流行という進化を遂げる。
  昔からそうでした。古くは、勧善懲悪。正義が勝つ。悪魔は負ける。逆行、復讐、転生、クロスオーバー
 ……それら要素を取り入れて媚びることで作品は評価されるようになる。評価さえ受けて、評価されれば、楽しい。評価されるためだけに作品を作る。
  それは真理ではないのですか?」

 それはマキナの本質だ。ハルトのような純粋さから歪んでしまったとはいえ、楽しい、という一点において違いはない。
 ハルトとマキナの意見は平行線だ。楽しいから、初心を忘れずに、自分だけの作品を作る。評価なんて関係ない。それも事実であり真理である。
 ならば、評価されるためにいかなることもやる。評価されなければ存在意義などない。流行に乗って評価されるための努力をする。創作マシンに至る。これも、間違いではないのだろう。
 マキナは、剣を格納した。剣はまるで夏の夢のように空間に溶けてしまった。
 翼が折りたたまれる。マキナ取り囲むようにグラフなどが空間に浮かび上がった。
 次の瞬間には地球は元通り。月も元の位置に戻った。いかなる絡繰りか。
 マキナは空間に別の扉を開くとノブをひねった。その顔に笑顔はない。無表情。まるで能面のような作り物じみた顔だけがあった。
 それは、ある意味で彼女の本質である。虚ろで主体性のない流動体。いかなるものにもなれる制御されたコスモス。
 マキナの喉が蠢く。背中を見せて、上半身を捻るようにして。

 「今は去りましょう。しかし覚えておくことです。波は創作者達を常に取り囲んでいるということを」
 「ならば私も去ろう。しかし覚えておくことだ。波に乗ることがすべてではないということを」
 
 
 
 
 そして、誰もいなくなった。

425 :代行:2013/01/19(土) 03:12:03.55 ID:TPxAf3AV.net
設定
『マキナ』
ハルトの裏の側面。
人気や評価を得るということだけに囚われ創作の目的を失ったマシーン。
ハルトそっくりの容姿と、機械の体、あべこべな服装をしている。
人気や評価の為ならば個性やオリジナリティは殺しても構わないと考える。



以上投稿終了。


【終】

426 :創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 21:02:24.17 ID:D4dS6qed.net
http://media.tumblr.com/7654a9ebd4bdd1e4478beec0d8c7ff14/tumblr_mhtgn4qyy11qzdg48o1_250.gif

女剣士カッコ可愛い、桃花もそうなん?

427 :創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 23:34:51.61 ID:27PN27dU.net
もちろんさ

428 :創る名無しに見る名無し:2013/02/12(火) 03:44:03.70 ID:tI0KUxsS.net
魔法少女だったり野球選手だったりアイドルだったり変態だったりもするけどな……w

429 :創る名無しに見る名無し:2013/02/12(火) 12:13:43.24 ID:xUk0ehAj.net
つまり頼めばいろいろとやらせてくれる、というわけか

430 :創る名無しに見る名無し:2013/02/12(火) 14:19:10.23 ID:DuypX63S.net
なんか新キャラきてたー

431 :創る名無しに見る名無し:2013/02/12(火) 14:20:04.86 ID:Vo6O/pO5.net
>>429
それはまずい

432 :創る名無しに見る名無し:2013/02/13(水) 02:46:04.38 ID:obeIiL37.net
http://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/238/huranazo.png

433 :創る名無しに見る名無し:2013/02/13(水) 04:08:46.01 ID:8CDcV46q.net
なんだこりゃwwwwwwww

434 :創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 17:33:38.93 ID:mex8hz84.net
悪世巣 「んきゅう」

桃花 「ん? どうしたの急に」

悪世巣 「…いやなんでもない」

435 :創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 17:44:01.91 ID:KvgQjt8m.net
続きくれ

436 :創る名無しに見る名無し:2013/02/21(木) 14:12:53.55 ID:Sef+mYfP.net
お、シカの話がまとめられてる。おつ

437 :創る名無しに見る名無し:2013/02/21(木) 17:31:57.10 ID:w+wbmYoE.net
おお、乙

438 :創る名無しに見る名無し:2013/02/22(金) 22:57:10.66 ID:71l8RAx0.net
ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/251/souhatsu176.jpg

439 :創る名無しに見る名無し:2013/02/23(土) 07:38:50.43 ID:c/YDvUrY.net
流石はっちゃんあざとい

440 :創る名無しに見る名無し:2013/02/23(土) 17:10:38.62 ID:jEJ4Gspn.net
発子のくせにかわいいじゃねぇかこのやろう

441 :創る名無しに見る名無し:2013/02/23(土) 19:55:59.57 ID:Sha8KV6C.net
コスプレどころか完全に猫化してやがる
神のなせる業か

442 :創る名無しに見る名無し:2013/03/23(土) 23:29:46.80 ID:L3dXhYOL.net
あげ

443 :創る名無しに見る名無し:2013/03/28(木) 01:43:43.48 ID:NHzEvrp+.net
 \                    /
   \  丶       i.   |      /     ./       /
    \  ヽ     i.   .|     /    /      /
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  ー            わ た し で す
 __                ___              --
     二          ∫'´...,, . ヽ`           =  二
   ̄               |´iノレルレ〉          ̄  
    -‐            i l|^ヮ^ノ|             ‐-
                  
    /        影 糾 寄 生 で す よ
            /               ヽ      \
    /                    丶     \
   /   /    /      |   i,      丶     \
 /    /    /       |    i,      丶     \ 

444 :創る名無しに見る名無し:2013/03/28(木) 03:18:19.89 ID:JVM8aSne.net
なんぞw

445 :創る名無しに見る名無し:2013/04/01(月) 00:05:20.15 ID:xZ8Mhepl.net
「適当なことではありません。“嘘”です。私は嘘情報を全力でお知らせする存在」
http://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/313/%E5%98%98%E3%83%86%E3%83%8A.png

446 :創る名無しに見る名無し:2013/04/01(月) 00:11:13.31 ID:BhQgqA9U.net
想像以上にかわいかった

447 :創る名無しに見る名無し:2013/07/27(土) NY:AN:NY.AN ID:j8gz7656.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4369179.jpg

448 :創る名無しに見る名無し:2013/07/27(土) NY:AN:NY.AN ID:McaPx4oh.net
うぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!

449 :創る名無しに見る名無し:2013/07/27(土) NY:AN:NY.AN ID:4IuhIeoG.net
サンタナwwww

450 :創る名無しに見る名無し:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:m9ACfVtm.net
獣羽鶏が何かの拍子に吸血鬼になって『ヴァンプ・オブ・チキン』
ってネタを考えたけどまとまらなかったの巻

451 :創る名無しに見る名無し:2013/10/22(火) 22:26:15.51 ID:zxyeHE8o.net
 
   /ヾ/ ̄ ̄ ̄ヽ
   |   | / ̄ ̄ ̄ヽ
   |   | |   /  \|
   |   | |   '''' '''' .|
   |  (6    つ /   ちくしょう・・・
  /  |.   _-=一/
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 〆  |     /

  __,冖__ ,、  __冖__   / ///⌒ヾ,.  - ―- 、
 `,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ /   ,.-''"´        `ヽ
 ヽ_'_ノ)_ノ    `r=_ノ    / /      ,.フ^'''''''''''''''''''`、
  __,冖__ ,、   ,へ    /  ,ィ     /        ヽ
 `,-. -、'ヽ'   く <´   7_//     /     _/^  、. !
 ヽ_'_ノ)_ノ    \>     /       /   /  _ 、,.;j ヽ.|
   n     「 |      /.      |     -!!!!! =-{!!!ii{
   ll     || .,ヘ   /   ,-、  |          .,フ!
   ll     ヽ二ノ__  {  / ハ `l/        _   `|
   l|         _| ゙っ  ̄フ.rソ     /  r' ,..二''ァ /
   |l        (,・_,゙>  / { ' ノ      /''"´ 〈/ /
   ll     __,冖__ ,、  >  >-'      ;  /    i {
   l|     `,-. -、'ヽ'  \ l   l    ;. |     | !
   |l     ヽ_'_ノ)_ノ   トー-.   !.    ; .| ,. -、,...、| :l
   ll     __,冖__ ,、 |\/    l    ; |    i  | .l
   ll     `,-. -、'ヽ' iヾ  l     l   ;: |  { .j .{
   |l     ヽ_'_ノ)_ノ  {   |.      ゝ  ;: `''''ー‐-' }
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  |!  |!  |!         l  |    ::.     `ー-`ニ''〃
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           /   ヽ      :..         |

452 :創る名無しに見る名無し:2013/10/22(火) 22:37:54.83 ID:9GZYvdGm.net
なにをつくっとるだwwwwww

453 :創る名無しに見る名無し:2013/10/22(火) 23:45:08.86 ID:iNfNHczw.net
ワロタ

454 :創る名無しに見る名無し:2013/10/31(木) 18:24:57.32 ID:ponkMO4Z.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4626993.jpg

455 :創る名無しに見る名無し:2013/10/31(木) 18:47:40.55 ID:prRO+jPf.net
うっひょぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!wwwwwwwwww

456 :創る名無しに見る名無し:2013/11/10(日) 01:42:21.59 ID:2ama5Uv1.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4652884.jpg

457 :創る名無しに見る名無し:2013/11/10(日) 01:45:22.88 ID:28HOTV+Y.net
客が誰か一発でわかるwww

458 :創る名無しに見る名無し:2013/11/10(日) 01:47:43.65 ID:sHogO/UX.net
世にも普通な女神の接客

459 :創る名無しに見る名無し:2013/11/10(日) 02:33:47.26 ID:2ama5Uv1.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4653065.jpg

460 :創る名無しに見る名無し:2013/11/10(日) 03:13:37.45 ID:aSuy2DJx.net
思ったよりダンディだった

461 :創る名無しに見る名無し:2013/11/10(日) 03:24:05.72 ID:NUMSCkbZ.net
え? なに? 渋い!

462 :創る名無しに見る名無し:2013/11/23(土) 18:03:14.50 ID:Ddnczg0a.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4683730.jpg

463 :創る名無しに見る名無し:2013/11/23(土) 18:05:49.93 ID:n9GkUpdh.net
なんだこの生物www

464 :創る名無しに見る名無し:2013/11/23(土) 22:51:55.00 ID:ZjE6VcCD.net
ふぁみふぁみふぁみーまふぁみふぁみま

465 :創る名無しに見る名無し:2013/11/24(日) 23:36:04.53 ID:SCHyMm6n.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4688009.jpg

466 :創る名無しに見る名無し:2013/11/24(日) 23:42:34.35 ID:SqnLHrQ0.net
ちょwwwwwwww

467 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 17:55:04.65 ID:yiJaydHJ.net
>>465
な、何だこれは……
でも何だろう、可愛らしい……

このスレでは初めましてです
ハルト閣下誕生日記念という事で、ハルトさんとこのスレのキャラクターである
無限桃花さん&彼方さんと、ロボット物SS総合スレの連載作品、廻るセカイなる作品のキャラクター、イェーガーをコラボしてみました。
僭越ですが投下してみますので宜しくお願いします。ハルトさんも出ますん

468 :TロG ◆n41r8f8dTs :2013/11/25(月) 17:56:20.99 ID:yiJaydHJ.net
草木も眠り、人口的なビル郡の光が瞬く真夜中、普段に比べて交通量がグッと落ちた首都高を最高速度で駆け抜ける、一台の自動車。
闇の中でも艶やかな紅色の光沢が人目を引く、美しい流線型の外国産のスポーツカー。その運転席で、赤い髪のその男は自らの手足の様にハンドルを捌く。
前方車と追突するかしないかの紙一重で、速度を増しながらそのスポーツカーは疾風の如き走りを魅せ付ける。
当たり前だがスピード違反な為、後方からパトカーが迫っているがスポーツカーは見る見る間に距離を付けていき、やがて見えなくなった。

器用なハンドル捌きでスピードを減軽させて、赤毛男は出口へと走る。
目標を失い、サイレンを鳴らし続けるパトカーが通り過ぎていくのを流し目で一瞥し、男は出口先のパーキングエリアへと入っていく。
適当なスペースに愛車を駐車させると、運転席のドアを開けて、赤毛男は優雅に降車する。
夜風が少し茶色がかった、愛車と同じ位紅い髪の毛を生易しく撫でる。と、その時。

「追いかけっこは楽しかったか?」

ふと、赤毛男の耳元に囁くような少女の声が聞こえてきた。

「……あ?」

非常にリラックスしている状態から、即時に殺意を孕んだ雰囲気に切り替えて、赤毛男は振り向く。。
しかし振り向いた所でそこには無機質な長距離トラックが並んでいるだけだ。少女はおろか、人の姿も無い。
だが、確かに赤毛男は聞いた。まるで自分を誘い込むような、不思議な少女の声を。

「刺激が欲しそうじゃな」

耳元から背中に掛けてぞくりとした感覚が走る。赤毛男は至極冷静ではあるが、反面さらに警戒心を高める。
何らかの敵の攻撃を受けているのかもしれない。そう判断すると同時に、表情を変えて臨戦態勢に移る。
あまり戦うのに適している場所ではないが、先手を打たねば殺られるのはこちらだ。容赦は出来ない。する気も無いが。

「どこに隠れてやがる……出て来いよ」
「隠れてなどおらん」

まるで赤毛男を弄ぶ様に、その少女はいつの間にか、いた。少女は腰を落として、にっこりと笑う。
全く気配も雰囲気も察知することが出来ず、一寸赤毛男は息を詰まらせた。
そんな馬鹿なと。この俺が動いた事にも気づけず先手を取られるはずが……。

ふと、赤毛男と謎の少女の目と目が、合う。

少女の肩まで伸びた銀色の長髪が、月明かりに照らされて艶かしく淡い光を発する。
そして、金色の目。全てを見通し支配するかのような、得体の知れない金色の目がじっと、赤毛男を見つめている。
目鼻立ちは幼いのだがその実、底知れない深遠さを覗かせる。ずっと見ていたら囚われてしまいそうな。
一瞬反応に遅れた赤毛男はすぐさま少女から離れようとするが、それよりも早く。

469 :TロG ◆n41r8f8dTs :2013/11/25(月) 17:58:12.72 ID:yiJaydHJ.net
「こっちじゃ」

少女の姿が消え、気づけば赤毛男の背後に、少女が仁王立ちしている。
自信が溢れて溢れてしょうがないと言いたそうな笑顔を浮かべて、少女は赤毛男に貫禄たっぷりに話しかける。
その様はとても外見の無垢さからは想像出来ない――――――――威圧感があった。威圧感だけではない。
外見から醸し出される可愛らしさも、実態を掴めない不気味さも感じる。つまり……本当に何なんだと、赤毛男は困惑する。

お前は一体、何なのかと。また、少女の姿が消える。

気づけば、少女は赤毛男に指を指している。背丈が小さい為、その指が顔まで届いてはいないが。

「ちょっとお主の力が欲しくてな。協力してくれんかの」

少女の言葉に、いや、少女の存在自体に理解が出来ず、赤毛男は声を濁らした。

「お前、本当に……何なんだ? セカイの意思と関係があるならあると先に言ってくれ」

赤毛男の言葉に、少女は首を横に振る。振り、言う。

「わらわとお主の居るこのセカイに直接的な関係は無い。ただ」

ふっと、今まで強気を絵に書いた様な少女の顔つきが、変わる。

今にも、泣き出しそうな顔に。


「ただ、お主なら変えられるかもしれん。わらわの―――――――」


                          ロボット物SS総合スレmeets廻るセカイ
                                  ×
                         【魔王】ハルトシュラーで創作発表するスレ
 


……目が、覚める。

異様な目覚めの悪さと共に、腹の底から込上げてくるような気持ち悪さに、男は軽く嗚咽を漏らした。
一体何が起きたのか、何がどうしてどうなったのかが思い出せない。確か、そう確か変な……子供に会った。
まるで不揃いなパズルのような記憶が浮かんできては消えていく。何か重要な事を忘れている気がするがそれが思い出せない。
朧げな記憶の中ではっきりとしている事は一つある。それは、黄金色の目をした銀色髪の子供。その子供に挑発を受けて……そこから思い出せない。

470 :TロG ◆n41r8f8dTs :2013/11/25(月) 17:58:48.50 ID:yiJaydHJ.net
取りあえず自分が何処かに連れて行かれたか、はっきりと言えば拉致された事くらいは分かる。
何故なら目の前の景色に何一つ覚えが無いからだ。見た事も無ければ記憶に無い光景。
恐らく敵対する組織や……はっきりと絞れないのが難儀だが、それほど、男は自身に敵が多い事を自覚している。
しかし拉致し監禁するのならば、もっと鉄格子だとかコンクリートだとかが剥き出しの場所にしないのだろうか。

今、男の視界に映っているのは、監禁部屋というにはあまりにも暖かな色調の部屋である。
暖色色の壁紙に、木彫式のインテリアがセンス良く並ばれており、男が寝かされているベッドもきちんと整頓されている。汚れもしわも無い。
ふと、視界の片隅に残る熊のぬいぐるみやファンシーグッズからここは恐らく……女性の部屋だと、男は直感する。
だが誰が何の目的で俺を拉致し、こんな部屋に閉じ込めたのか。皆目、見当がつかない。

一先ず、この部屋の持ち主――――――――恐らく、拉致を企てた一味の一員が入ってきたら即座に行動し、有利な状況を作り出さねば。
そう考えベッドから起き上がり、男は武器になりそうな物を探す。そう言えば寝巻きを着ている。
というか着させられているが、一体いつの間に……いや、そんな事は今どうでもいい。武器となりそうなのは……文房具……があった。
ならばと男は床に転がっている、先端が尖っているボールペンを迷わず拾うと、手の甲に忍ばせる。

その時、ドアを二度、何者かがノックした。すかさず、男はベッドに寝直してその時を待つ。

「えっと……入っても大丈夫ですか?」

若い女性の声だ。いや、もっといえばあくまで推測だが十代位の少女の声がドア越しに聞こえてきた。
男は声の調子を整えると、敢えて演技掛かった明るい音色で答えた。無論、油断を誘う為だ。

「あぁ、大丈夫だ。入ってきてくれ」

男の返答に、その声の主がドアを開いて部屋へと入ってきた。

つやつやとした黒髪を団子の様に纏めてツインテールにした、恐らく日本の学生服を着た、白い肌の少女が部屋に入ってきた。
つぶらに輝く健康的な瞳に邪気は感じられず、そのあどけない表情には、本気で男の事を心配しているように思える。
両手に持つお盆には、お手製であろう、サンドイッチの乗った皿。
それと温かな牛乳が入ったコップ。色白少女は男の下までそそくさと歩み寄ると、傍らにその盆を置いた。

「あの、私……」

少女が男に何か言いかけるよりも早く、男は少女の体を無理やり片腕で引き寄せた。
そして、手の甲に潜ませていたボールペンを抜き出して喉元に突き立てると一転、恫喝めいた低音の声で少女に尋ねる。

「まず一つ、俺の聞く質問には正直に答えろ。もし嘘を付いたり抵抗したらこれを喉元に突きさ」

一瞬、何が起きたか男には理解が出来なかった。

身体が、宙に、浮いた。

471 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 17:59:29.08 ID:psVUWCL9.net
支援

472 :TロG ◆n41r8f8dTs :2013/11/25(月) 18:00:11.52 ID:yiJaydHJ.net
一般男性の基準からしても十分高身長でかつ、大柄である筈の男の図体がベッドから投げ飛ばされ、ぐるりと宙を舞った。
そのままベッドの向こう側、壁際に接されている本棚に背中を打ち付けられて男は落下する。その周囲をばさばさと音を立てて散ばる本。
どんな技を使ったかは分からないが、とても細い外見からは想像出来ない力強さで、少女は男を投げ飛ばしてしまった

「あっ……あぁ、ごめんなさい! 私ったらつい反射的に」

自分が投げ飛ばしたのにも関わらず、少女は泣き出しそうな様子であたふたと、男に駆け寄ってきた。
さっきまで全く怪我などしてなかったのに、今は軽く切り傷擦り傷打撲プライド粉々と、その他諸々のダメージが男に及ぶ。
元を正せばこの無垢な少女に図らずも害を加えようとした男が悪いのだが。

状況もつかめず体も痛く、とにかくくらくらと星が舞っている頭を片手で痛々しく抑えながら、男は少女に言う。

「見かけによらず強いんだな……」

男の褒めているのか呆れているのか分からない言葉に、若干頬を染めつつ少女は答える。

「いつも桃花お姉ちゃんに鍛えられてるので……じゃなかった、大丈夫ですか?」
「見りゃ分かるだろ。いきなり投げやがって……」

文句を言ってやりたいが、これ以上何かされても困るのでぶすっとした物言いで男は返答する。
少女は周囲に散らばる本を片付けつつ、男に申し訳無さそうに謝る。ただ、その口調に淀みは無い。

「本当にごめんなさい……でも貴方も悪いんですよ。あんな事して驚かない人なんていませんよ」
「分かった分かった、悪かったよ。にしても落ち着いてるが、こういう状況には慣れてるのか?」
「いえ。でも……」

本を拾っては積み上げている少女の手が止まる。止まって、どこか遠くを見るような目で、呟く。

「私もお姉ちゃんも、怖い物といつも戦ってるので、怖い事には慣れちゃいました」
「怖い物……?」

興味深げにそう聞き返す男に対して、拾い終わった本を行儀良く本棚に整理し終わり、少女は男に顔を向ける。向けて、言う。

「牛乳が冷めない内にサンドイッチと一緒に味わってくださいね」
「その前に」

男は本棚から立ち上がって、ベッドへと歩いていく。
投げられた際に腰を打ってしまったのか、よっこらせ、とは言わないまでもまるで老人の様に腰をゆっくりと下ろしながら、男はベッドに腰掛けた。
腰掛けて、さっきから聞きたくてしょうがなかった質問を少女にぶつけてみる。

「さっきからお前は一体何なんだ。俺に何の目的があってこんな事をする?」

男の慇懃無礼な口調と態度に、少女はむっと頬を軽く膨らますと、今までに無く強気な口調で言い返す。

「人に名前を聞く前に自分から名乗ったらどうですか? 赤髪男さん」
「赤髪男さんって何だその呼び方。俺には名前が……」

473 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 18:00:13.81 ID:QC2DQ6Ct.net
支援

474 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 18:00:38.12 ID:psVUWCL9.net
支援

475 :TロG ◆n41r8f8dTs :2013/11/25(月) 18:01:24.07 ID:yiJaydHJ.net
名前が、と言いかけて男の口が止まる。名前……自分の名前が、浮かんでこない。
薄ぼんやりとした記憶の断片が存在しているが、それらが何一つ一つに繋がらない。あくまでバラバラな断片のままだ。
自分がなんという名前で、一体どんな人間なのかが男は思い出せない。何一つも。

断片的な記憶を挙げていけば、車……そう、ここに来る前に自分は自動車に乗っていた。
だが、どこに向かっていて、どんな自動車に乗っていたのかも明確に思い出せない。
ついでに顔がまるでモザイクの様に隠れていて分からないものの、銀色の髪の少女のことが頭の中でちらついて離れない。
その銀髪の少女からとても大切な事を聞かされた気がする。しかし、それが何かも全く――――――――。

「……赤毛男さん?」

頭を抱え、額から大量の冷や汗を垂らしていると、心配そうに少女が覗き込んできた。
男は強く目を瞑ると、ゆっくりと開ける。開けて、今までとは全く違う表情を浮かべた。
その表情は己が置かれている状況に対する観念にも、少女に一種の救いを求めている様にも見える。

「……教えて」

一寸、言葉を飲み込んだ。が、男は意を決し、続ける。

「君の名前を……教えてくれ。それと、ここはどこなのも」

男の懇願に、少女は微かに微笑むと大きく頷き、返答する。

「私は彼方。夢玄彼方。姉は夢玄桃花。姉妹でパラサイトハンターしてます」
「パラサイト……ハンター?」

瞬間、ドアを誰かが勢い良く開いた。
彼方と同じタイプの学生服を着た、彼方と同じ黒髪を形良くポニーテールに結いだ、大分大人びた顔立ちの少女が部屋に入る。
走ってきたのか、肩で息をしながら、少女は彼方の方に顔を向ける。向けて開口一番。

「彼方、出るわよ! 新型の寄生獣が現われたわ!」
「この前出たばっかりなのに……すぐ準備するね」

先ほどまでの男に話しかけていた時の柔和さから一転、彼方は凛とした隙の無い姿へと、瞬時に変化する。
立ち上がり、ドアの付近に立て掛けられている、何らかの得物が入っている細長い袋を手に取ると、姉である桃花に付き添う。

と、桃花がベッドに座っている男に気づき、声を掛けてきた。

「……目を覚ましたのね」

桃花の男を見る目はどことなく冷たい様に感じる。警戒心を抱いているのか、それとも別の理由か。
軽く男を一瞥した後、桃花はそのまま部屋を出ようとする。が、彼方が服の裾を引っ張り桃花を引き止める。

「お姉ちゃん待って、この人どうするの?」
「ここに居させておくだけよ。まだ目覚めたばかりで何も思い出せないだろうし、何にも出来ないわ」
「ハルトシュラーさんが太鼓判を押す人だよ? ならいきなり実践に出てもきっと」

「あの人は関係ない!」

ぴしゃりと、桃花が彼方を制するかの様に、もっと言えば今の空気を断ち切る様に短く怒声を発した。
背を向けたまま、桃花は彼方に、まるで自分自身に言い聞かせるように呟く。

「私達は、私達の力で寄生獣に立ち向かなきゃいけない。あの人はもう、私達には関係ない」
「お姉ちゃん……」

476 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 18:01:48.72 ID:QC2DQ6Ct.net
支援

477 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 18:02:18.51 ID:psVUWCL9.net
支援

478 :TロG ◆n41r8f8dTs :2013/11/25(月) 18:02:24.75 ID:yiJaydHJ.net
「おい、待て」

彼方と桃花の間に入り込むような、男の声。

「俺も……連れて行け」

いつの間にか、男はベッドから起き上がると、彼方に並ぶ様に桃花の後ろに立つ。
たって、背中を向けたままでこちらを振り向こうとしない桃花に、言い寄る。

「こんな所で事情も分からないまま、お前らばかりで話を進められて堪るか。俺も連れて行け」
「貴方が来たって足手纏いになるだけよ!」

と怒号交じりに振り返る桃花だが、思ったよりも身長の高い男の迫力に気圧される。

それ以上に、男の表情に、目に気圧される。男の目は真剣その物だ。何の濁りも無く、恐れも無い。
例え何があろうとその目は、自分の目で何が起きているのか見極めたい。覚悟を決めたい。
そう、男自身が口を出さずに伝えている様だった。

目は口ほどにものを言う、という表現がここまで似合う状況は、今以上に無い。

桃花はその迫力と、男の形相に観念したのか、小さく溜息をつくと、男の目を見つめ返しつつ、言う。

「……分かったわ。ただし条件がある」
「何だ」
「私達の邪魔はしない事。不用意な行動は慎むこと。それに」
「それに?」

一旦、桃花は言いよどむ。言いよどむが、グッと唇を噛み締めると、言った。

「死なない事。何が起きても」
「死ななきゃいいんだろ? 簡単だな」

非常にヘビーな事を言われている筈だが、男の態度は何ら変化は無い。
所か、これから凄惨な事態が待ち構えているのかもしれないのに心が踊っている様にさえ見える。
この人は……と桃花はぼんやりと開けかけた口を一文字に閉じると、再びドアの外へと振り向きなおす。

「彼方」
「は、はい」
「貴方はこの死にたがりさんを守ってあげて」

姉の命令に、彼方は複雑そうに男に目をやる。逆に、男は待ってましたとばかりに目を輝かしている。

「長話が過ぎたわ。行くわよ、彼方。それに……」

視線だけ、男に向けながら桃花は男に――――ー―――言い放つ。

479 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 18:02:52.22 ID:QC2DQ6Ct.net


480 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 18:03:13.34 ID:psVUWCL9.net
 

481 :TロG ◆n41r8f8dTs :2013/11/25(月) 18:05:04.99 ID:yiJaydHJ.net
「あの人に……ハルトシュラーに教えてもらった貴方の名前……イェーガー、って言ってたわ」


「イェー……ガー……」


どうやら、これが赤毛男の名前らしい。




                    赤毛の大男、「イェーガー」と、寄生獣なる化け物を倒す姉妹、「夢玄彼方」と「夢玄桃花」


「何でお前らはこんな仕事をしてるんだ?」

「これが私達の使命だからよ。これ以外に、生き方を知らないの」

「女の子らしく暮らしてても、どうしてもこっちの方が性に合っちゃうんです。……合っちゃうんですよ」



「G3……って何だ?」

「god gate guardianを略してG3と言います。邪神バンディッドを崇め寄生獣を生み出す存在、私達の敵です」


                    世界を侵食する化け物、「寄生獣」と背後に蠢く謎の組織、「G3」


「何故……貴方達はこうも寄生獣を繁殖させて……!」

「ゴキブリは我々が手を下さずとも勝手に増える。ただ、それだけだ。なぁ、よし子」

「えぇ、霧崎様。私達は何もしていませんよ。今の時点では」

「イェーガー……お前の存在は我らG3にとって不確定要素になる。排除は免れない」

482 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 18:06:48.69 ID:QC2DQ6Ct.net


483 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 18:07:10.07 ID:psVUWCL9.net
 

484 :TロG ◆n41r8f8dTs :2013/11/25(月) 18:07:34.82 ID:yiJaydHJ.net
「面白れ……掛かってこいよ、直・燐」

「私の名を気安く呼ぶな!」


                        何故、「ハルトシュラー」は「イェーガー」をこの世界に呼んだのか                       
 

「俺をいつ、元の世界に戻してくれる?」

「戻りたいのか? わらわが折角刺激を与えてやったというのに」

「この世界は俺が干渉しなきゃならねえほどやわじゃねえ。それに、あの姉妹もな」

「どうやら、お主をわらわは買いかぶり過ぎた様じゃ」

「……どういう意味だ」


「逃げろ、イェーガー!」
「その人は、本物のハルトシュラーさんではありません!」


「無駄話は終わりじゃ。わらわの手で消去してやろう。イェーガー」

                   
                               全ての謎が解けた時、何が、起きる?




                                    
                                   
                                     encounter
                                   


「うわっ! とっと……」

「おい、どこ見て歩いて……」

「……イ……イェー……ガー……?」

「……お前、安田、俊明か?」


                                   20114年、連載開始未定










よし子「というのをロボスレの作品を呼んでて考え付いたんだ。どうだろう串子」

串子「……私の出番は?」

485 :創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 18:10:03.70 ID:QC2DQ6Ct.net


486 :TロG ◆n41r8f8dTs :2013/11/25(月) 18:11:35.54 ID:yiJaydHJ.net
支援嬉しいいいですビクンビクン
という訳で投下終りました。支援本当に有難うございます
今回の企画で無限姉妹って良いなぁとおもいました。何かこう、色々
それと自作品のキャラクターを快く貸してくれた廻るセカイの作者であるDaZさんには深い敬意と感謝を。ではまた

487 :創る名無しに見る名無し:2013/11/26(火) 02:07:46.27 ID:amfFBZi/.net
乙。続きが気になる

488 :創る名無しに見る名無し:2013/12/23(月) 02:27:48.47 ID:I5AbA3iI.net
http://dl6.getuploader.com/g/6%7Csousaku/793/%E4%BD%8E%E3%81%99%E3%81%8E.PNG

489 :創る名無しに見る名無し:2013/12/23(月) 02:33:00.27 ID:+zO9Q8Gf.net
かわゆい
抱きしめたい

490 :創る名無しに見る名無し:2013/12/23(月) 07:20:50.46 ID:qyk0PhEH.net
ワロタw

491 :創る名無しに見る名無し:2014/04/12(土) 11:08:19.92 ID:Bf/21Fpu.net
向こう用テス

492 :創る名無しに見る名無し:2014/09/04(木) 12:39:36.78 ID:CucgZUgY.net
ガッ

493 :創る名無しに見る名無し:2014/10/16(木) 21:41:46.88 ID:vqKZtXvv.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5366334.jpg

494 :創る名無しに見る名無し:2014/10/16(木) 21:57:10.81 ID:XyAvKPZh.net
これは一体……

495 :創る名無しに見る名無し:2014/10/16(木) 22:40:27.00 ID:vMW6wIRW.net
カラー化したwww

496 :創る名無しに見る名無し:2014/10/16(木) 23:29:18.30 ID:T9PLU+Y9.net
質感www

497 :創る名無しに見る名無し:2014/10/17(金) 11:05:18.06 ID:UDjZFEDy.net
ペットボトルのおまけについてそうw

498 :創る名無しに見る名無し:2014/10/30(木) 10:05:27.23 ID:6+e5JQky.net
ピンポーン

桃花「はーい」

ジークリンデ「トリックオアトリート♪」

桃花「とにっくおあとりーとめんと? あいにくそのような物は」

彼方「姉さん、トリックオアトリートよ、お菓子かイタズラか。ハロウィンよ」
彼方「悪戯は怖いからお菓子をあげるわ、はいどうぞ」

ジークリンデ「じー」

彼方「?」

ジークリンデ「そこにしまってあるシルベーヌください」

彼方「!?」

ジークリンデ「あーる日♪ 金太が歩いているとー♪」

彼方「大声で金太の大冒険!?」

桃花「近所迷惑な! お菓子あげるから帰ってくれ!」

ジークリンデ「ルマンドもください」

桃花「さらに厚かましく……」

彼方「恐ろしい子……!」

499 :創る名無しに見る名無し:2014/10/30(木) 17:45:29.81 ID:FhWFLrjS.net
嫌な子供ww

500 :創る名無しに見る名無し:2014/10/30(木) 19:26:53.68 ID:LOEmZ4Nx.net
見える…見えるぞ!
ジークリンデの後ろで恥ずかしそうに顔真っ赤にしたジークフリードの姿が…

501 :創る名無しに見る名無し:2014/10/31(金) 00:05:28.15 ID:1ttRG053.net
だれかはやく描け!

502 :創る名無しに見る名無し:2014/10/31(金) 00:14:14.83 ID:+SQLKTBS.net
                     
                      ∨'´ ̄`ヽ       、ヽ l / ,
                  ,.-''"´ ̄ ̄`゙''、 ヽ     =     =
                    /:::::::::::::::::::::::::::::: |:::::',   ニ= 青 そ -=
                  |:r¬‐--─勹:::::|:::::::!   .ニ= 森 れ =ニ
                 |:} __ 、._ `}f'〉n__!_  =- .な. で -=
  、、 l | /, ,         ,ヘ}´`'`` `´` |ノ:::|.|  ヽ ニ .ら. も ニ
 .ヽ     ´´,      ,ゝ|、   、,    l|ヽ:ヽヽ  } ´r :   ヽ`
.ヽ 書 き 青 ニ    /|{/:ヽ -=-  /| |.|:::::| |  |  ´/小ヽ`
=  .い っ 森 =ニ /:.:.::ヽ、  \二/ :| |.|:::::| |  /
ニ  て .と な  -= ヽ、:.:::::::ヽ、._、  _,ノ/.:::::| | /|
=  .く .何 .ら  -=   ヽ、:::::::::\、__/::.z先.:| |' :|
ニ  れ と   =ニ   | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|'夂.:Y′ト、
/,  る か   ヽ、.    | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::_土_::|  '゙, .\
 / :    ヽ、    | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|:半:|.ト、    \
  / / 小 \    r¬|ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| \.   `、

503 :創る名無しに見る名無し:2014/10/31(金) 06:58:56.54 ID:+jjxZo92.net
夕鶴「来ないな……」

円川(逆にイタズラされるのは目に見えてますし)

504 :創る名無しに見る名無し:2014/12/13(土) 01:32:33.07 ID:1MWn22ie.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org49784.jpg

505 :創る名無しに見る名無し:2014/12/13(土) 01:36:39.30 ID:U4t3nagf.net
なんという癒しキャラ

506 :創る名無しに見る名無し:2014/12/13(土) 01:46:12.93 ID:k1YAm3kK.net
こいつらかまさか癒し系になるとは

507 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2014/12/14(日) 11:44:38.66 ID:FMw2eKHh.net
そもそもこいつらは何なんだ?w

508 :創る名無しに見る名無し:2014/12/15(月) 01:36:51.57 ID:aHYtDNcv.net
やだなぁ無限姉妹ですよ。

509 :創る名無しに見る名無し:2015/04/01(水) 03:26:40.57 ID:JOvY0Czd.net
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org244008.jpg

510 :創る名無しに見る名無し:2015/04/01(水) 12:28:00.41 ID:X+07mv6h.net
夢でした

511 :創る名無しに見る名無し:2015/04/01(水) 17:00:12.79 ID:ZspyxYwt.net
一瞬ほんとに誰か分からなかったwww

512 :創る名無しに見る名無し:2015/04/16(木) 23:54:52.82 ID:e4qsu15n.net
てすと発子
http://img2.imepic.jp/image/20150416/859260.jpg?52d99ca414221b32344e6463df141eb7
糞は持ち帰ろう

513 :創る名無しに見る名無し:2015/04/16(木) 23:57:55.39 ID:8jh1cdR1.net
おいクリラおいwwwwww

514 :創る名無しに見る名無し:2015/04/16(木) 23:59:32.49 ID:oQbdeUbP.net
うんこすんなwww

515 :創る名無しに見る名無し:2015/04/17(金) 01:16:13.98 ID:goHI46GW.net
Tシャツも酷いwww

516 :創る名無しに見る名無し:2015/04/22(水) 09:50:47.15 ID:5YlEbWc5.net
何故かクレープの具材が納豆だと思ってしまった。ほんとに何故だ

517 :創る名無しに見る名無し:2015/11/08(日) 23:23:14.23 ID:gqegAKBg.net
あれ、お絵描き機能なんていつの間についたんだ…?
sssp://o.8ch.net/olj.png

518 :創る名無しに見る名無し:2015/11/08(日) 23:39:50.28 ID:gqegAKBg.net
しかしこれのためだけに通常のブラウザわざわざ使うのも面倒くさいなあ
sssp://o.8ch.net/om1.png

519 :創る名無しに見る名無し:2015/11/09(月) 01:11:00.95 ID:R/GSyP1l.net
わーお

520 :創る名無しに見る名無し:2015/11/09(月) 02:57:01.34 ID:lSQogPpz.net
いいね!

521 :創る名無しに見る名無し:2015/11/25(水) 00:13:29.79 ID:0t8bcgnf.net
うわあああああああハルハルハルハルハルトシュラーさぁあはあああああああんん!!
お誕生日おめでとう!!おめでとう!!おめでとおおおぉぉぉうぅうぅぅうううう!!
うわああぁああああハルトシュラーさんのカチューシャを指でツンツンつっつきながら
髪の匂いをクンカクンカしてほっぺたをぷにぷにつっつきたいよぉおおおおおおお!!
え?そういうのは心の中にとどめておけ?無理ぃ!そんなこと無理ですぅうぅうううう!!
だってだって僕だってハルトシュラーさんのハルトシュラー主義が素晴らしいと思いますから!!
だからこうやって思いを貼り貼り貼ってハルトシュラーさんなんですハルトシュラーさん!!
あれ?でもハルトシュラーさんって設定が定まってないんですよね?ということは美少女じゃないかもしれない!?
もしかしたらガチムチのダンディな紳士だったりするかもしれないんですかあぁあああ!!?
うわぁああああああああああ!!!なんにゃっにゃああああああ!!ひゃああああああああ!!
まあ、それはそれでアリです
設定が定まってないっていうことは僕の創作でハルトシュラーさんが変わる!?変わっていく!!
おおおおおぉぉぉ!!!テンションあがってきたあああああ!!わっしょおおおおおいい!!
ハルトシュラーさんは作曲家?アリです!!貴方の作った曲で一緒に踊りましょう!!
ハルトシュラーさんは魔王?アリアリです!!閣下に色々征服されたくてたまりません!!
征服?せいふく?制服!!!うわあああああっぁあああああああ!!良いなぁ!!!
軍服を来てるハルトシュラーさんもいいけどセーラー服を来てる美少女タイプハルトシュラーさんも良い!!
ああああっあっぁっあああ!!想像の翼が羽ばたきまくって羽がとれちゃうよおおおお!!
あれ?あれあれあれあれ?ハルトシュラーさんは……享年二歳……だと……?
ぎゃああああああああああああ!!!そんなぁああああああああああ!!えええぅええおおおああああっ!?
僕の思いはハルトシュラーさんに届かない!?創作で何でも変えられるわけじゃない!!?
創作は……創作はあまりに無力すぎるだろおおおおいい!!……ま、待て!!落ち着け!!
閣下は創作物!!ということは、その設定すらも創作して創り潰してしまえば良い!!?
やったぁああああああああ!!ハルトシュラーさん復活ッ!ハルトシュラーさん復活ッ!ハルトシュラーさん復活ッ!
これで僕の思いを伝える事が出来る!!大好きですハルトシュラーさああああああああんん!!
!!!思いが伝わった!!!伝わった気がした!!!いや、伝わったと貼ることで思いが伝わったんだ!!
イエスッ!!イエスイエスイエスイエスッ!!!皆、祝福してくれ!!僕の思いが伝わったよ!!
オールハイル・ハルトシュラー!!オールハイル・ハルトシュラー!!
ハッピー!ハッピーバスデー!ハッピバースデー貴様!ハッピーバスデージーザス!
ハッピーバースデーディアハルトシュラー!ハッピーバスデーチュッチュしたい!

ハルト閣下! 御生誕七周年ひゃっほーーーーーーーいいぃぃぃい!!!!

522 :創る名無しに見る名無し:2016/01/04(月) 21:12:55.75 ID:K9N5kXEC.net
あけおめ
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org687118.png

523 :創る名無しに見る名無し:2016/01/04(月) 22:05:02.68 ID:XWEBQaFS.net
乙w字を学習しおったかw

524 :創る名無しに見る名無し:2016/02/01(月) 18:16:29.03 ID:JlE2U5Y1.net
浮気されないようにです〜

浮気された

はずゅいです〜


http://piy.pw/qEDQ4

525 :創る名無しに見る名無し:2016/02/03(水) 01:08:30.41 ID:tdGfCMdn.net
避難所スレが次行ったんで
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1454428877/l50

526 :創る名無しに見る名無し:2016/08/04(木) 23:54:34.31 ID:MmkYt/eL.net
クラウシュ

527 :創る名無しに見る名無し:2016/11/25(金) 22:04:56.91 ID:Zu4f+8wo.net
うわあああああああハルハルハルハルハルトシュラーさぁあはあああああああんん!!
お誕生日おめでとう!!おめでとう!!おめでとおおおぉぉぉうぅうぅぅうううう!!
うわああぁああああハルトシュラーさんのカチューシャを指でツンツンつっつきながら
髪の匂いをクンカクンカしてほっぺたをぷにぷにつっつきたいよぉおおおおおおお!!
え?そういうのは心の中にとどめておけ?無理ぃ!そんなこと無理ですぅうぅうううう!!
だってだって僕だってハルトシュラーさんのハルトシュラー主義が素晴らしいと思いますから!!
だからこうやって思いを貼り貼り貼ってハルトシュラーさんなんですハルトシュラーさん!!
あれ?でもハルトシュラーさんって設定が定まってないんですよね?ということは美少女じゃないかもしれない!?
もしかしたらガチムチのダンディな紳士だったりするかもしれないんですかあぁあああ!!?
うわぁああああああああああ!!!なんにゃっにゃああああああ!!ひゃああああああああ!!
まあ、それはそれでアリです
設定が定まってないっていうことは僕の創作でハルトシュラーさんが変わる!?変わっていく!!
おおおおおぉぉぉ!!!テンションあがってきたあああああ!!わっしょおおおおおいい!!
ハルトシュラーさんは作曲家?アリです!!貴方の作った曲で一緒に踊りましょう!!
ハルトシュラーさんは魔王?アリアリです!!閣下に色々征服されたくてたまりません!!
征服?せいふく?制服!!!うわあああああっぁあああああああ!!良いなぁ!!!
軍服を来てるハルトシュラーさんもいいけどセーラー服を来てる美少女タイプハルトシュラーさんも良い!!
ああああっあっぁっあああ!!想像の翼が羽ばたきまくって羽がとれちゃうよおおおお!!
あれ?あれあれあれあれ?ハルトシュラーさんは……享年二歳……だと……?
ぎゃああああああああああああ!!!そんなぁああああああああああ!!えええぅええおおおああああっ!?
僕の思いはハルトシュラーさんに届かない!?創作で何でも変えられるわけじゃない!!?
創作は……創作はあまりに無力すぎるだろおおおおいい!!……ま、待て!!落ち着け!!
閣下は創作物!!ということは、その設定すらも創作して創り潰してしまえば良い!!?
やったぁああああああああ!!ハルトシュラーさん復活ッ!ハルトシュラーさん復活ッ!ハルトシュラーさん復活ッ!
これで僕の思いを伝える事が出来る!!大好きですハルトシュラーさああああああああんん!!
!!!思いが伝わった!!!伝わった気がした!!!いや、伝わったと貼ることで思いが伝わったんだ!!
イエスッ!!イエスイエスイエスイエスッ!!!皆、祝福してくれ!!僕の思いが伝わったよ!!
オールハイル・ハルトシュラー!!オールハイル・ハルトシュラー!!
ハッピー!ハッピーバスデー!ハッピバースデー貴様!ハッピーバスデージーザス!
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ハルト閣下! 御生誕八周年ひゃっほーーーーーーーいいぃぃぃい!!!!

528 :創る名無しに見る名無し:2016/12/08(木) 11:11:16.54 ID:M0SeMB9+.net
あげ

529 :創る名無しに見る名無し:2016/12/10(土) 08:53:39.12 ID:CBJRYEDT.net
あげ

530 :創る名無しに見る名無し:2016/12/11(日) 09:20:03.66 ID:k7AJpDAG.net
あげ

531 :創る名無しに見る名無し:2016/12/21(水) 08:09:19.11 ID:St7Hej6q.net
あげ

532 :創る名無しに見る名無し:2016/12/25(日) 12:28:00.66 ID:2rrcYMr4.net
あげ

533 :創る名無しに見る名無し:2016/12/28(水) 09:03:10.10 ID:9qo09pJE.net
あげ

534 :創る名無しに見る名無し:2017/01/09(月) 18:16:07.42 ID:dogtFn6F.net
あげ

535 :創る名無しに見る名無し:2017/07/10(月) 04:16:28.51 ID:ugHrL6M5.net
☆ 日本人の婚姻数と出生数を増やしましょう。そのためには、☆
@ 公的年金と生活保護を段階的に廃止して、満18歳以上の日本人に、
ベーシックインカムの導入は必須です。月額約60000円位ならば、廃止すれば
財源的には可能です。ベーシックインカム、でぜひググってみてください。
A 人工子宮は、既に完成しています。独身でも自分の赤ちゃんが欲しい方々へ。
人工子宮、でぜひググってみてください。日本のために、お願い致します。☆☆

536 :創る名無しに見る名無し:2017/12/27(水) 10:33:03.56 ID:C1Z7QFDy.net
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

75OWWVZBHN

537 :創る名無しに見る名無し:2018/05/21(月) 08:35:53.83 ID:tRZnwP6O.net
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

3OQ7O

538 :創る名無しに見る名無し:2018/07/03(火) 19:20:09.96 ID:f1dClnnX.net
YK2

539 :創る名無しに見る名無し:2018/10/17(水) 18:53:44.80 ID:ZU7x6aHX.net
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

G5L

540 :創る名無しに見る名無し:2022/05/18(水) 15:13:43 ID:U2/nV/Bm.net
https://i.imgur.com/p5hZnq0.jpg
https://i.imgur.com/aWHB1dX.jpg
https://i.imgur.com/kAZCbcw.jpg
https://i.imgur.com/5Z80rJd.jpg
https://i.imgur.com/M8yEG4O.jpg
https://i.imgur.com/0tImKOu.jpg

541 :創る名無しに見る名無し:2024/04/02(火) 02:25:07.25 ID:Z/prfOy9Z
例えば,登録記号「JA??MP」は「税金泥棒災害惹起捏造逮捕殺人集団警視庁』だが
クソ航空機に生活や仕事を妨害されたら…アプリ「ADS-B Unfiltered...」で登録記號を確認
tTps://jasearch.info/ ←ここて゛検索して使用者特定
ADS-B出してない日の丸囗ゴ機体は自閉隊か税金泥棒系業者だが、スクショも晒しつつ、ググって電話番号なども晒そう!
ヘリタンク2000Lで10000kWh火力発電した際に発生するのと同等のCO2を排出するが、この気侯変動させて世界中の人々を死に追いやってる
正義の鉄槌によって処刑されるべきテロリストと゛もを徹底的に非難しよう! スマホのパケづまりが酷いのもWifiが遅いのもクソ航空無線の
広大な帯域汚染による電波不足が原因だし,国民の財産電波をタダで使ってカンコーだのと殺人を推進する有害放送で儲けて「一方的」
「自称』『思い込んで」だのプ囗パガンダ丸出しのテレビ放送廃止、さらに今どき深夜に騒音まき散らして近隣に多大な損害を与えながら
新聞配達させてる情弱知障も非難して人の住居上空を飛ぶ害虫を皆殺しにする氣で報復しよう!
(ref.) ttps://www.call4.jΡ/info.PhР?Type=items&id=I0000062
Тtps://haneda-ρroject.jimdofree.Com/ , Τtps://flighΤ-rouTe.сom/
ttps://n-souonhigaisosуoudan.amebaownd.com/

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