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TRPG系実験室 2

1 :創る名無しに見る名無し:2018/09/07(金) 22:56:07.99 ID:c8v0uQxh.net
TRPG関係であれば自由に使えるスレです
他の話で使用中であっても使えます。何企画同時進行になっても構いません
ここの企画から新スレとして独立するのも自由です
複数企画に参加する場合は企画ごとに別のトリップを使うことをお勧めします。
使用にあたっては混乱を避けるために名前欄の最初に【】でタイトルを付けてください

使用方法(例)
・超短編になりそうなTRPG
・始まるかも分からない実験的TRPG
・新スレを始めたいけどいきなり新スレ建てるのは敷居が高い場合
・SS投下(万が一誰かが乗ってきたらTRPG化するかも?)
・スレ原案だけ放置(誰かがその設定を使ってはじめるかも)
・キャラテンプレだけ放置(誰かに拾われるかも)

101 :水鳥周子 :2018/11/10(土) 21:40:31.23 ID:2EcwLKZ8.net
>「いいえ。牙はまだ折れてなどいないわ。これ以上、耐えるつもりもない」

晶の毅然とした言葉と共に投げつけられた擲弾砲を掌底のビームで迎撃。
暴発した擲弾砲はゴーストの機体を煽って落下速度を僅かに落とす。

>「アーサー王の伝説、その元ネタに則るなら、エクスカリバーはひとつだけじゃないわ。
> 泉の乙女から下賜された聖剣とは別に、もう一振りのエクスカリバーが伝承の中には存在する!」

「何を言っている……!?」

>「さあ、私の声に応えなさい!岩貫改め――『エクスカリバー・コールブランド』!!」

微塵改が直剣を天空のオリオンスペクター目掛けて突き上げる。
聖剣を携えた英雄は一機ではなかった。彼らは『合体機』。二機で一機だ。
ならば伝説上の聖剣を二振り所有していたとしても不思議ではない。

「――勝利の栄光は我が掌の中に!『リコイルバスター』!!」

天と地の二機の攻撃が交錯し、歓声に沸いていた会場が水を打ったように静まり返った。
極度に集中した状況に於いて当事者たるゴーストの感覚がそうさせたのかもしれない。
微塵改の放ったコールブランドの一撃は過たずオリオンスペクターの中枢を貫いていた。

掌部零距離ビーム砲『リコイルバスター』の利点は高打点の秒間ダメージ量を叩き出せる所にある。
一方で名称通り、リーチが短いという難点をも抱え込んでいるいわゆるロマン武器でもある。
すなわち、直剣に対しリコイルバスターの射程距離はあまりに短すぎた。

勝ろうはずもない技量の差を――勝敗の差を――分けたのは武器のリーチだ。
直剣がほんの少しだけ掌底より先に命中し、結果としてリコイルバスターは不発に終わった。
放たれた零距離ビーム砲は微塵改の装甲を抉り取っただけだった。
掌の砲門をチカチカと明滅させながらオリオンスペクターは力なく崩れ落ちていく。

「……まさか、こんな事が起ころうとは……」

尽きた耐久バーを眺めながら、しばらく呆気に取られていた。
紛れもない敗北と言う事実を突きつけられ、放心状態になってしまったのだ。
動かない思考をたたき起こし、ゴーストはようやく言葉を搾り出した。

「種が芽吹き花を咲き誇らせるように、眠れる力を開花させたか……。
 紛れもなく……この勝負。チームつつじヶ丘、君達の勝利だ」

102 :水鳥周子 :2018/11/10(土) 21:45:03.54 ID:2EcwLKZ8.net
仮想操縦桿が自動消失し、ゴーストは撃墜状態になった。
晶がARデバイスで確認すれば撃墜数に1がついたはずだ。

「そして……サバイバルマッチも君達の勝利という結末になりそうだ。
 高機動機は私達との戦闘中、最終的に多数の参加者を巻き込んで自爆した。
 重装射撃機は……今相打ちになったようだからな」

ゴーストの台詞から程なくして勝利時に流れるBGMが会場に響いた。
歓声が沸き起こり、晶と数名の参加者がサバイバルマッチに生き残ったのだ。

「今……今、サバイバルマッチの雌雄が決しました。勝者は参加者達です!
 アリーナは開放されました!トラフィックゴーストが敗北したのです!」

司会がすかさず実況を入れると周子はイベントが終わったことを実感した。
ああ、もうあの楽しい戦いが終わってしまったのかと急に思ってしまうのだ。
思い掛けないリーダーの任命に始まり、ベンケイとの戦い、そして全国区選手との激戦。

全てを遠い過去のように感じながら、ゴーストがARバイザーを外すのを眺めていた。
大学生くらいだろうか。特徴的な白髪をそのままに、碧の瞳を宿した整った顔立ちの青年だ。

「君達みたいな後輩がいるのは嬉しいのか、恐れた方がいいのか……どっちもかな。
 次は全国で会おう。正真正銘、浦和零士として……もう一度勝負しよう。負ける気はない」

浦和は生き残った晶の健闘を讃えて握手した。
そして眉根を寄せて"ゴースト"の演技に戻るとマイクのスイッチをオンにする。
戦いに敗北したトラフィックゴーストは潔くアリーナを明け渡し、この場を去らなければならない。

「――見事だ!参加者の諸君!この実験の勝者は君達に終わった!
 だが我々は機体を運ぶ幽鬼。譬え墜ちて死者となりても、またいつの日か――。
 新たな頭目と共に現れるだろう。再び相見えよう。実験台達よ……!」

ゴーストの高らかな台詞と共に会場が暗転する。
再び明るくなった頃にはモータルもゴーストも消え失せ、会場にはコロシアムフィールドだけが残された。
ゲーム"マシンナリーファイターズ"はとてもリアル感を重視したゲームだ。
戦闘後もゲームを終了しなければフィールドに残された機体の残骸や爆発の痕を見ることができる。

短かったが、濃密なあの戦いの数々とももうお別れだ。
周子は眼鏡型ARデバイスを外してチームつつじヶ丘の面々の所へ駆け寄った。

「晶ちゃん。桐山先輩、八木先輩。私……とっても楽しかった!
 皆と一緒にバトル出来て凄く良かったって思ってる!」

このイベントが最初で最後とは限らない。
例えばチーム戦とか、オンライン対戦とか、いくらでも繋がる事ができる。
桐山も八木も周子にとって、もう掛け替えのない友達だ。

「だから……また一緒に遊ぼう!」


【チームつつじヶ丘、サバイバルマッチに勝利!】

103 :八木優樹 :2018/11/12(月) 22:55:10.05 ID:zfpDT24f.net
クラウン・ノイジーモデルの耐久値がゼロになる。
機体の随所から青い光が漏れたかと思うと――クラウンは専用の花火めいたエフェクトと共に爆散した。
これで八木は脱落だ。後は観戦者として試合の展開を見守る事しか出来ない。

(……やれる事はやった)

周囲にばら撒いた液体爆弾によってオリオンスペクターの機動力を削いだ。
今なら、エクスフォードや微塵改でも、彼と勝負が出来るはず。

>「ありがとう、八木。……大会が終わったら奢るよ」

「いいよ、別に……僕が良いプレイをする度に奢ってたら、君の小遣い、なくなっちゃうぜ」

そして――最後の交戦が始まった。
水鳥の駆るエクスフォードの連撃を、オリオンスペクターは容易く躱していく。
隠し武器の巨大な鋏も、上手く操っているがそれでもなお当てられない。
単純なマシンコントロール技術と読み合いでは、浦和零士には勝てない。
だが――水鳥の表情に諦めはない。

>「これで勝敗は決した……!」
>「まだ……まだ終わってない!」

切り札である巨大鋏を破壊されても、なお、彼女の顔に諦めの色は浮かばなかった。
白兵戦の間合いの中、エクスフォードがオリオンスペクターへと更に一歩詰め寄る。
そして――スラスターを焚いた。

「……その手があったか」

クラウンがばら撒いた爆薬が高熱に晒される。
瞬間、爆炎がエクスフォードとオリオンスペクターを飲み込んだ。
浦和零士は咄嗟に回避行動を取っていたが、爆風から逃げ切れる訳はない。
爆炎が晴れると、オリオンスペクターの姿は大きく様変わりしていた。
装甲は歪み、エナジーライフルは銃身が溶け、右足首から先が欠損。

だが――

「追い詰めた、なんて思っちゃ駄目だよ。これでやっと五分の勝負。
 浦和選手ならここからでも逆転の可能性を掴んでくる」

爆心地でまともに爆発ダメージを受けたエクスフォードは四肢を完全に欠損。
そのままエナジーキャノンによって撃墜されてしまった。

(とは言ってみたけど……これは、あるぞ。本当に勝ちを拾うとこまで行けるかもしれない)

残るは大破状態のマクシミリアンと、重装甲型の微塵改。
一手間違えれば呆気なく全滅させられる事になる。

>「あらゆる武器、あらゆる戦術を尽くして戦うのがロボットバトルというもの……。
 その『合体』が君達の出した結論だというのなら、全霊をもって応えよう。
 さっきの二機のように……私とオリオンスペクターに牙を突き立ててみせろ!!」

そして――オリオンスペクターが地を蹴った。
爆圧で装甲が歪んだ機体で、しかし抜群の操縦技術をもって強引にスラスターを吹かす。
超高速の突撃を仕掛けるオリオンスペクターの姿が――不意に、五つにブレた。

ホログラムだ。
リコイルバスターだけではなかった。
浦和零士はもう一つ、隠し玉を持っていたのだ。

104 :八木優樹 :2018/11/12(月) 22:55:48.00 ID:zfpDT24f.net
だが戦況を見守る八木の表情に、焦燥はない。

(……そうだ。最適解は、もう君の手の中にある)

全ての鍵となる彼――桐山直人の顔にも、焦りの色は浮かんでいなかったからだ。

105 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:07:22.48 ID:zfpDT24f.net
>「さあ……エクスカリバー!その光刃で敵を断つときだ!」

そして目の眩むような閃光が、マクシミリアンから放たれた。

>「どれかを狙う必要はない!何故なら――全てを薙ぎ払えばいい!」

閃光がオリオンスペクターの黒い機体を塗り潰す。
制御を度外視したエクスカリバーは、ほんの2、3秒瞬いて、すぐに停止してしまった。
だが反動でマクシミリアンが活動停止するほどのエネルギーだ。
2秒も炙られれば、どんな軽装甲型のオリオンスペクターは骨格すら残らない。

106 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:09:02.15 ID:zfpDT24f.net
>「……これで……いや!オリオンスペクターはまだ、健在だ……!」

はずだった。

「まさか……!」

八木が頭上を見上げる。
既にマシンHUDは消失していたが――あの状況で逃げ場があるとすれば、そこしかない。
果たして――八木の予想通りは当たっていた。

オリオンスペクターは高く真上へと飛び上がる事で、エクスカリバーによる被撃墜を回避していた。
装甲は殆ど溶け落ち、片脚も失い――しかし、まだ稼働している。

>「まったく、オリジナル武器というものは常に驚かせてくれる……!
> しかし、その牙ももはや折れた!その機体で何秒耐えられるか、見せてもらおう!」

リコイルバスターにエネルギーを充填し、微塵改を撃破せんと狙いを定めてすらいた。
だが――それを見上げる紫水の目には、惑いはない。

>「いいえ。牙はまだ折れてなどいないわ。これ以上、耐えるつもりもない」
>「さあ、私の声に応えなさい!岩貫改め――『エクスカリバー・コールブランド』!!」

彼女は迎え討つつもりだった。
腰に差した直剣を引き抜き――天へと突き上げる。

>「――勝利の栄光は我が掌の中に!『リコイルバスター』!!」

そして――その直剣は狙い過たず、オリオンスペクターを捉えた。
肩を貫いて、そのまま胸部の内側、マシンナリーの中枢部を。
オリオンスペクターの全身から青い光が漏れる。
そのエフェクトが示す結果は一つだ。
オリオンスペクターの耐久値はもう、残っていない。

>「……まさか、こんな事が起ころうとは……」

オリオンスペクターが糸の切れた人形のように、動作を停止する。
浦和零士が呆然とした声を上げた。

「……まさか、本当に勝っちゃうとはなぁ」

チームつつじヶ丘は、現行のメタからかけ離れた、セオリーなどお構いなしのチームだった。
ショーマンとしての立ち振舞と、勝利を両立させられるつもりだったのだろう。
八木自身、途中まではまさか勝利にまで漕ぎ着けられるとは思っていなかった。

>「種が芽吹き花を咲き誇らせるように、眠れる力を開花させたか……。
 紛れもなく……この勝負。チームつつじヶ丘、君達の勝利だ」

「……おめでとう、みんな。いいプレイだった。本当に……神がかってた」

それから程なくして、サバイバルマッチは終了した。
浦和零士の言う通り、参加者側の勝利によってだ。

>「君達みたいな後輩がいるのは嬉しいのか、恐れた方がいいのか……どっちもかな。
 次は全国で会おう。正真正銘、浦和零士として……もう一度勝負しよう。負ける気はない」

水鳥や紫水には分からないかもしれないが――浦和零士のその言葉は、MFプレイヤーにとっては恐ろしく価値のあるものだった。
最もプロに近い男。その彼が、自分達を明確なライバルとして認めたのだ。
しかし――にもかかわらず、八木の反応は苦々しさを含んでいた。

107 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:10:54.86 ID:zfpDT24f.net
チームつつじヶ丘は所詮、今日この場で結成されたばかりの即席チームだ。
大会出場の予定なんてなければ――再結成の予定もない。
だがこの雰囲気の中でそれを口に出す事は、八木には出来なかった。

>「――見事だ!参加者の諸君!この実験の勝者は君達に終わった!
 だが我々は機体を運ぶ幽鬼。譬え墜ちて死者となりても、またいつの日か――。
 新たな頭目と共に現れるだろう。再び相見えよう。実験台達よ……!」

そうして、つつじヶ丘アリーナを襲ったゲリライベントは終わった。
噂の新型機を触る事は出来なかったが、代わりに滅多にないほど楽しいバトルに参加出来た。
もう、八木がこの場に残る理由はない。
だが――彼は出口を目指すのではなく、代わりに周囲を見回した。
水鳥、桐山、紫水――つい先程までのチームメイトは、まだすぐ近くにいた。
八木は彼らを見つめると、何か迷った素振りを見せながらも口を開き――

108 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:11:54.02 ID:zfpDT24f.net
「あのさ……」

>「晶ちゃん。桐山先輩、八木先輩。私……とっても楽しかった!
 皆と一緒にバトル出来て凄く良かったって思ってる!」

しかし水鳥に先を越されて、すぐに口を閉ざす事になった。

>「だから……また一緒に遊ぼう!」

水鳥の屈託のない笑顔と言葉に、けれども八木はばつが悪そうに視線を泳がせる。
ゲーマー歴の長い八木にとって、一緒に遊ぶ相手――フレンドとは色んな意味合いがある。
たまにカジュアルマッチでなあなあのプレイを楽しむ程度の付き合いでもフレンドだし、
戦術を練って練習を積んでチームとしてランクマッチに臨む相手もまたフレンドだ。

つまりこの場合で言うならば、水鳥はただ、たまにこういうイベントがあったら集まろう、くらいのノリなのか。
それとも、もっと頻繁に集まって――例えば部活動としてゲームをしようと言っているのか。
それを八木は見極めかねていた。だが――

「……うん。またイベントとか……試合とか。助っ人が必要な時はいつでも呼んでよ」

いずれにしても、水鳥の提案を断れば、それは立派な嫌なやつだ。
それだけは八木にも簡単に、はっきりとよく分かった。

「その……ゲーム部にもまだ、籍は残ってるはずだし。
 苦手な機体タイプとかもないから、練習がしたければ付き合うよ。
 ……あんまり口うるさくしないようには、気をつけるからさ」

今後の事がどうなるにせよ――八木は自分に出来る精一杯の快諾を返した。

109 :八木優樹 :2018/11/12(月) 23:13:17.92 ID:zfpDT24f.net
 
 
 
「――なんだよもー自爆ってえ!いくら負け確だからってそんなセコい手ふつー使う!?」

アリーナから駅へと向かう道の途中。
一人の少女が大声を上げていた。

「悪の組織なんだからそりゃ使うでしょ。つーかアンタが遊びすぎ。
 さっさとトドメ刺しときゃ浦和選手の方に遊びに行く時間もあったでしょうに」

「ゴーストが浦和零士だって知ってたらそうしてたっつーの!」

赤髪のポニーテールに、中学生並みの低身長、気の強そうな吊目の少女。
長い黒髪で片目を隠した、長身痩躯、蒼白とすら言えるほど色白の少女。

二人の少女は、柄の同じパーカーを着ていた。
ペアルックではない。背中には『K.G.T』とアルファベットが刺繍されている。
国領ゲーミングチーム――都内でも強豪と噂される、国領高校のゲーム部。
そのレギュラーメンバーにのみ支給されるユニフォームだ。

「つーかよ、浦和零士が負けたってマジ?誰にやられたんだよ。
 アレか。桜上水の奴らか。私服だったけど、アイツらも会場に来てたよな」

「んーん。やっつけたのはね、つつじヶ丘高校のゲーム部だってさ」

「……つつじヶ丘ぁ?あそこ今年はろくな三年残ってなくね?」

「それどころか去年一年にボコられて、当時の二年は殆どやめたって話だけど」

「てー事は、その一年が浦和零士を仕留めたって訳か」

「今は二年だけどね。まぁその可能性が高いんじゃない?」

「……近い内に、スクリム吹っかけるぞ。今年のつつじヶ丘は正直アウトオブ眼中だったが……
 浦和零士がボコられたのがマジなら、確かめとかねえとな」

赤髪の少女はそう言うと、にやりと、獰猛に笑った。

「まぁどうせ、私の『ランスロット』にゃ敵わねーだろうけどよ」



【最後のこれはただこういう雰囲気が好きで加えただけの蛇足だよ。
 短い間だけど楽しかったなぁ】

110 :桐山 直人 :2018/11/15(木) 20:22:18.53 ID:4XC69fdP.net
>「さあ、私の声に応えなさい!岩貫改め――『エクスカリバー・コールブランド』!!」

マクシミリアンが戦闘不能になっても、未だ桐山は会場に立っていた。
全てのエネルギーを使い果たして戦場に倒れ伏す相棒の残骸と共に、試合を最後まで見届けるために。

>「――勝利の栄光は我が掌の中に!『リコイルバスター』!!」

エクスカリバーの薙ぎ払いですら仕留められなかったオリオンスペクターが上空から
猛禽の如く奇襲を仕掛け、微塵改は最後に握りしめた直剣を振り上げてカウンターを狙う。
直後、勝敗は決まっていた。

>「……まさか、こんな事が起ころうとは……」

リコイルバスターは重装型すら粉砕する火力を持つ。
だがそのリーチの短さが、ただの直剣が勝ちうる弱点となったのだ。
微塵改は勝利を誇るように立ち、オリオンスペクターは片手を突き出したまま、前のめりに倒れ伏す。

>「……まさか、本当に勝っちゃうとはなぁ」

「今の試合、録画しておいたよ。常識外れのチームが勝つことはたまにあるとは言っても……
 まさか僕たちがそれになるとはね」

バイザーが表示する仮想メニューから直前の試合映像を保存しておき、
自らのアーカイブへと放り込む。普段は大会の名試合やプロモーション映像ばかり
入れていたそこに、自分の試合を入れたのは初めてだった。

>「今……今、サバイバルマッチの雌雄が決しました。勝者は参加者達です!
 アリーナは開放されました!トラフィックゴーストが敗北したのです!」

>「君達みたいな後輩がいるのは嬉しいのか、恐れた方がいいのか……どっちもかな。
 次は全国で会おう。正真正銘、浦和零士として……もう一度勝負しよう。負ける気はない」

動画の向こうでしか会えなかった存在がこちらをMFの乗り手として認識し、
記憶してくれた。それがどれほどの価値があるかは、桐山本人にしか分からないことだろう。
バイザーの裏で桐山は、自らの内に静かな熱が生まれ始めているのを感じていた。
そしてイベントは終わり、会場は破壊された機体の残骸とかつて戦場だったことを示す焼け跡が残るのみ。

111 :桐山 直人 :2018/11/15(木) 20:23:34.09 ID:4XC69fdP.net
>「晶ちゃん。桐山先輩、八木先輩。私……とっても楽しかった!
 皆と一緒にバトル出来て凄く良かったって思ってる!」

その言葉に桐山もバイザー型ARデバイスを外して、長らくすることのなかった笑顔をしてみせる。

>「だから……また一緒に遊ぼう!」

視線を泳がせる八木とは対照的に、桐山はバイザーを掛け直す。
そしてこの場にいた全員に、あるものを送信した。
それはマシンナリーファイターズにおける、フレンド依頼。
相手が何をしているのか、どんな機体に乗っているかぐらいにしか分からないものだが、
それでもこの瞬間、桐山は激戦を勝ち抜いた戦友たちに送っておきたかったのだ。

>「その……ゲーム部にもまだ、籍は残ってるはずだし。
 苦手な機体タイプとかもないから、練習がしたければ付き合うよ。
 ……あんまり口うるさくしないようには、気をつけるからさ」

「八木は……ごめん、去年のごたごたでフレンド解除してた。
 もう一回送り直すけど……今度も遠慮なく言ってほしい。やっぱり僕は強くなりたいからね!」

部をやめたときに、部員とのフレンドは全て解除してしまっていた。
それは彼らにこれ以上関わりたくなかったというのもあったが、今は違う。
もう一度、やり直したいという気持ちがあった。

――数日後、ある日の放課後。
つつじヶ丘高校の授業が終わり、部室へと向かう生徒たち。
もしその中に水鳥がいて、部室の軋んで古びたドアを開ければ、そこに桐山がいるのがすぐに分かるだろう。
彼はバイザーを起動し、空中にある何かを両手で外したり、取り付けたりしているように見えるはずだ。
そして彼が水鳥に気づけば、こう答えるだろう。

「本日付でゲーム部所属の、桐山直人だよ。
 水鳥君、改めてよろしく!」

バイザー越しの彼の顔は、再び喜びに満ちているはずだった。


【なかなかできないロボット物ができてとても楽しかったです!
 皆さんありがとうございました!
コテハンが変わったのはPCを乗り換えた関係で専ブラのデータ移行を忘れてたためです…】

112 :紫水晶 :2018/11/23(金) 04:18:02.49 ID:CLoGH4MV.net
>「――勝利の栄光は我が掌の中に!『リコイルバスター』!!」

オペレーターの雄叫びに呼応するように、光を湛えながら急降下するオリオンスペクター。
それを迎え撃つは、微塵改がまっすぐ直上へ掲げる、もう一振りのエクスカリバー。
幽星と剣闘士、閃光と鋼刃が交差する。

金属質な破壊音と共に、紫電が轟いた。
決着は一瞬。会場の誰もが、交戦中の参加者すら操縦の手を止めて見守る刹那の激突。
秒数にすればほんのコンマ1秒にも満たない攻防を、制したのは――

>「……まさか、こんな事が起ころうとは……」

バイタルパートに大穴を穿たれ、オリオンスペクターは動作を停止。
そして、表面装甲を焦がした微塵改は、なおその頭部に意志の光を灯したまま、屹立し続けていた。
紫水晶の――チームつつじヶ丘の、勝利だ。

>「今……今、サバイバルマッチの雌雄が決しました。勝者は参加者達です!
 アリーナは開放されました!トラフィックゴーストが敗北したのです!」

晶は『勝利を喜ぶ』エモートで勝鬨をあげようとしたが、やはりどこにそのボタンがあるのか分からない。
だから、微塵改に剣を掲げさせて、自分自身の言葉で叫んだ。

「私達の前に、たった今、ゴーストは斃れたわ。
 この瞬間を、認識タグを、目に焼き付けておきなさい。
 私達の……つつじヶ丘高校、ゲーム部の名前を!!」

多少スポーツマンシップには反するかもしれないが、晶は自分を突き動かす衝動に逆らわない。
勝てなくても良い、楽しめればそれで良いと、ずっと思っていた。
でも、みんなで協力して、一緒に強大な敵に立ち向かい、勝つという喜びを、知ってしまった。
もう一度、何度でも、周子や、桐山や、八木と。一緒に戦って、勝っていきたい。
心の底からの渇望が、晶に勝ち名乗りを選択させた。

>「君達みたいな後輩がいるのは嬉しいのか、恐れた方がいいのか……どっちもかな。
 次は全国で会おう。正真正銘、浦和零士として……もう一度勝負しよう。負ける気はない」

「望むところよ『浦和さん』。
 次はサブライズのお膳立てなんかじゃなく、公式戦で、貴方のもとまで辿り着いてみせる」

>「――見事だ!参加者の諸君!この実験の勝者は君達に終わった!
 だが我々は機体を運ぶ幽鬼。譬え墜ちて死者となりても、またいつの日か――。
 新たな頭目と共に現れるだろう。再び相見えよう。実験台達よ……!」

ARデバイス越しに配信されていたフィールド情報が停止し、マシンナリーの残骸たちが消えていく。
晶はそれらを名残惜しそうに眺めてから、ARデバイスを外した。
マシンナリーファイトの派手な色彩に比べればひどく色褪せた、しかし彼女の回帰すべき現実の世界。
同じくデバイスを外した周子が子犬のように飛び込んできた。

113 :紫水晶 :2018/11/23(金) 04:18:55.07 ID:CLoGH4MV.net
>「晶ちゃん。桐山先輩、八木先輩。私……とっても楽しかった!
 皆と一緒にバトル出来て凄く良かったって思ってる!」

「ええ、私も。みんなで戦えて、みんなで勝てて、すごく楽しかった。
 こんなに楽しいゲームを、心躍る試合を、これで終わりにしたくない。だから……」

その先は、言わなかった。
同じことを周子もまた考えていると、晶にははっきりとわかった。

>「だから……また一緒に遊ぼう!」

また、一緒に。
言葉にすれば照れくさいその提案を、真っ直ぐに言ってのけるのは周子の人徳だ。
底抜けに明るくて、人並みに迷いもするけれど、選んだ道に後悔をしない。
人の輪の中心に立てるのは、周子のような人間だ。
晶にはそれが眩しくて、彼女と友達でいられることが嬉しい。

>「……うん。またイベントとか……試合とか。助っ人が必要な時はいつでも呼んでよ」

「水臭いわね、八木先輩。そんな傭兵みたいな関係、寂しいじゃない。
 必要ない時でも呼ばせてもらうわ。部室でだべっている時とかにもね」

相変わらず一歩引いたような口ぶりの八木に、晶は意地悪く笑みを向けた。
この中で最もマシンナリーに精通した上級者は八木だ。
勝つために、教えてもらいたいことはたくさんある。
そして、プレイヤー同士の関わりは、何も試合の助っ人だけじゃないはずだ。

ARデバイスに新たな通知があった。
それは、フレンド申請。送り主は、桐山だ。
ゲーム部入部以来、周子の名前しかなかった晶のフレンドリストに、名前が増えた。
桐山と八木。かつてのゲーム部が――ほんの少しだけではあるが――蘇りつつあった。

――数日後。

つつじヶ丘高校ゲーム部の部室からは、晶の楽しげな声が聞こえてくる。
つい最近までごく少数の部員が黙々とデバイスを弄るだけだった部室が、にわかに活気づいていた。

「周ちゃん、周ちゃん。今月の『月マシ』はもう読んだ?特集にこの前の大会のことが載っているわ!」
「八木先輩、新しい戦術を思いついたの。試してみるから忌憚のない意見をちょうだい」
「桐山先輩、コールブランドの改良をお願い。もっと豪華に光るようにしたいの」

あの日の試合を境に、晶はマシンナリーファイトの世界にどっぷりとのめり込んでいた。
これまでのロマン偏重なビルドに改良を加えて、中級者相手ならまともな勝負ができるようになっている。
負ければ悔しいし、勝てば嬉しい。
でもそれ以上に、負けても良いと考えていた時期より、試合はずっと楽しかった。

遠からず、彼女は壁にぶち当たり、挫折を経験することもあるだろう。
だけど、マシンナリーファイトにかける情熱は、その炎は、きっと絶えることはない。
挫折を分かち合って、一緒に立ち向かってくれる――仲間がいるのだから。


【おつかれさまでした!やりたいこと全部やりきれて本当に楽しかったです!
 また機会があればぜひ!ありがとうございました!】

114 :水鳥周子 :2018/11/25(日) 15:13:13.53 ID:9Yc+Ixcr.net
【書き込み遅れましたが、これにて企画終了です!皆様参加ありがとうございました!
 また機会があれば一緒に遊びましょう!それでは失礼しました!!】

115 : :2018/12/07(金) 23:15:21.78 ID:5mNzrS38.net
勢いで考えてみた何の変哲もないヒーローもの企画を投下します。

ヒーローウォーズ

異能者、改造人間、超科学、魔法使い、宇宙人、未来人etc……。
20XX年のメトロポリスではありとあらゆる非日常が渦巻いていた。
特殊な力を悪用する犯罪組織の巣窟であるこの街は破壊と混乱、無秩序と冒涜が支配する。
自分たちの欲望と衝動、野望の赴くまま暗躍する者達を『ヴィラン』と人は呼ぶ。

そんな中、人々と街を守るべく自然発生したのが『ヒーロー』達だ。

ヒーロー達は自身の能力と無辜の民の声に従い街を守る正義の代行者である。
彼らはおおむねヒーロー協会に所属し、ヒーロー協会のバックアップを得て超法規的に活動している。
また、頂点の実力を持つアイドルヒーローともなれば文字通りの人気と知名度を兼ね備えた有名人でもある。

果たしてヒーロー達は迫りくる悪意に勝つことができるのだろうか。
数々の死線を潜り抜け、正義を貫けヒーロー達!


ジャンル:ヒーローアクション
コンセプト:ライトにバトルものを楽しもう
期間(目安):8ターン以内(予定)
GM:なし
決定リール:なし
○日ルール:14日
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし


【テンプレート】

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
職業:
性格:
能力:
装備:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:

116 : :2018/12/07(金) 23:16:07.92 ID:5mNzrS38.net
名前:神籬明治/リジェネレイター
年齢:16
性別:男
身長:177
体重:62
職業:高校生
性格:人見知りで引っ込み思案
能力:共感覚
人の感情をおぼろげに感じ取ったり共有できる。
集中すれば1キロ程度の遠い人の感情を読み取れる。
心を読む能力ではないので注意が必要。

装備:腕時計型端末『オービット』
メトロポリスの科学者ドクターカンナギ特注の腕時計型変身スーツ。
ナノマシン制御用AIの『オービット』がナノマシンを生成する事で装着できる。
ナノマシン生成機能と高度な学習機能により状況に応じて機能をリアルタイムでアップデート可能。
その他自動修復や各種装備も完備。ただし現状の基本武器は右腕部の力を強化する『パワーシリンダー』のみ。

容姿の特徴・風貌:群青色の髪の毛に学生服/暗緑色の布地に白の装甲と仮面
簡単なキャラ解説:
ヴィランが起こした事件によって両親を失くした少年。
以来周囲に心を閉ざしてしまい引っ込み思案で口数の少ない性格になった。
しかし、内には自分のような人を減らしたいという思いを秘めている。
生身で密かに活動していたところヒーロー協会から抜擢されてヒーローとなる。

ヒーロー名リジェネレイターはナノマシンによる自動修復機能から名付けられたもの。
ただし中身の人間は修復できないので定期的に中の人が死ぬ。現在は六代目にあたる。
二代目あたりまで知名度は高かったが交代が激しいあまり今や日陰者。

117 : :2018/12/07(金) 23:18:31.03 ID:5mNzrS38.net
test

118 : :2018/12/07(金) 23:18:43.02 ID:5mNzrS38.net
20XX年メトロポリス。
夢の未来都市と銘打たれたその都市の姿はもうなかった。
今やありとあらゆる悪意を溜め込んだ掃きだめと化したこの街に平和はない。
齎すとすれば――、特別な力を持ったヒーロー達に他ならない。

夜のメトロポリスを一体の改造人間が駆け抜ける。
自動車群の網目を縫って『ファイアスターター』は後ろを一瞥した。
頭部の生えた髪の毛のような排気パイプに脚部の大型車輪ヒールホイーラーが加速する。
口紅のように真っ赤なボディとファイアパターンが目立つ女性型改造人間の威容にドライバーはぎょっとした。

「うふ、アナタ達ったら、速さがまるで足りてないのね」

脚部のヒールホイーラーを傾けて器用にUターンしながら地平線を見据える。
そしてスロウな乗用車を適当に蹴り上げた。轟音を立てながら車は地面に対して垂直に宙を舞う。
視界には誰もいない。目に映るのは空虚なビルディングが立ち並ぶメトロポリスの夜景だけだ。

「ヒーローは遅れてやってくるって言うけれど、遅れすぎちゃダメじゃない?」

小脇に抱えたアタッシュケースを愛おしそうにひとなでして、改造人間は前方へ振り向く。
やっぱり私がナンバーワンの速さなのよ!
『ファイアスターター』は強い自負と共に夜の道路を疾走した。

メトロポリスに存在する犯罪組織は枚挙に暇がないが、彼女はその中でも危険で巨大な組織に属していた。
秘密結社レオニダス――。人間を一段階進化させるため、人類の新たな形態を模索する新興組織である。
彼らは現代の秘跡である超科学を用いて人に改造手術を施して改造人間を生み出す。
改造人間は『ファイアスターター』のように人間の原型を留めていなかった。

結社の擁する改造人間は警察組織では到底相手にできるものではない。
彼らと戦える組織はただひとつ。ヒーロー協会と所属するヒーローだけである。

「そうはさせねぇぜ改造人間っ!!」

改造人間が蹴り上げた車をキャッチしながら、腕時計型端末は吼えた。
端末の主である白い装甲服を纏った男は静かに車を降ろす。

「遅れすぎちゃだめじゃない?ちっちっち、違う違う。皆の声を待っていたのさ!
 俺が噂の装着系スーパーヒーロー、『リジェネレイター』様だっ!!!!!!!!!!」

腕時計型端末『オービット』が華麗なる向上を並び終え、
中身の神籬明治(ひもろぎめいじ)は静かに呟いた。

「……俺はどうすればいいんだ?」

119 : :2018/12/07(金) 23:19:36.64 ID:5mNzrS38.net
「あだだっ!ったく、変身前に言っただろうが!カッコ良くなんか決めポーズすりゃ良いんだって!
 それぐらいのファンサービス皆やってるから。あー、そうね。やってない奴もいるよ」

「……誰なんだ?」

「お前だよ、お・ま・え!!」

オービットは機械の溜息を漏らした。『リジェネレイター』は喋らない。
男は気難しいというわけでも怒っているというわけでもなかった。彼はおおよそ他人に対して心を閉ざしていた。
それは人工知能であるAIが相手でも変わらない。彼にとって言葉を交わすとは、とても困難な作業だった。

「さぁてどうするんだ『リジェネレイター』よ。俺達に高速移動なんて便利な能力はないぞ。
 このままじゃあいつを取り逃がしちまう。他のヒーローに任せて帰っちまうか?」

リジェネレイターは答えないまま、やにわに乗用車の屋根に飛び乗った。
飛び乗った車はややバランスを崩しながら走行を続ける。
しばらくしたところでリジェネレイターは器用に他の車に飛び移った。

「おおっと、失礼しまぁす。良い苦し紛れだがよ。
 あの改造人間300キロは出てるぜ。こんなんで追いつけるのか?」

「分からない。だけど、やるまでだ」

そうきたか、とオービットは端末の画面を明滅させた。相変わらず頑なな奴だ……。
先代の『リジェネレイター』が死亡して、ヒーロー協会で神籬と出会ったその日の印象通り。
人見知りで引っ込み思案、誰にも心を開けない……だけど、内には正しい心を秘めている奴だと。

「根暗の癖になんで頭だけは固いんだか。
 しょうがねぇ、ヒーロー協会に連絡して道路を封鎖して貰おうぜ。
 他のヒーロ―共も寄ってくるだろうけど背に腹は変えられないからな」

「そうだな……ありがとう、オービット」

「礼なんて無用だ。AIは必要なことをするだけだからな」

120 : :2018/12/07(金) 23:20:40.69 ID:5mNzrS38.net
快調に疾走していた『ファイアスターター』だったが、突如としてその走行を止めざるを得なくなった。
ビル街とメトロポリスの中で最も治安が悪いストリートを繋ぐ吊り橋が跳ね上げられ、先に進めなくなったのだ。
女改造人間は舌打ちしてストップ。脚部から怒りの炎を巻き上げた。
心臓が早鐘を打つような大音量の排気音を鳴らし独りごちる。

「誰かしら。私の走りを邪魔するのは……?」

「誰かしらもおかしらもあるかよ。天下の公道で散々暴れまわってくれちゃって〜……。
 神妙にしろ。警察に代わって俺達が逮捕してやるぜ!改造人間!!」

特徴的な暗緑色の布地に白い装甲を纏ったヒーローが女改造人間へ歩み寄る。
息を切らして追いついたリジェネレイターに喋る余裕は無論ない。
捲し立てたのはAIのオービットの方だ。

「私無駄なことって嫌いなんだけど。本当に誰なのかしら。
 名乗りぐらいあげてくれないとマイナーヒーローの事なんて分からないわ」

「カッチーン!てめぇ、これでもなぁ。俺だって昔はちょっとしたもので……」

言い終わるより早く地面が隆起してオービットのお喋りは中断された。
地面が裂けて現れたのは岩のようにごつごつした肌のこれまた異様な男だった。

「なんだなんだ。今日はヴィランのオンパレードか?
 もしかして……俺達、ヤバイ日に出くわしちまった?」

「かもしれないな……」

岩肌の男はリジェネレイターをぎろりと睨んでファイアスターターを見据える。
男は横にも縦にも長く、ざっと2メートルはあろう巨躯から一種ぬりかべを想起させた。
糸で縫合された口を強引に開こうとするが、神籬に聞こえたのは低い唸り声のようなものだった。

「久しぶりねロックバイン。相変わらず異能者の癖に改造人間染みてるわアナタ。
 そういうところが本当に無様ね!どうせアナタの狙いもこれでしょ?」

ファイアスターターは抱えているケースを叩きながらくすりと口紅を歪ませた。

「アナタと取り合いを演じても良いけど、先ずは邪魔者を消すのが先決じゃないかしら。
 アナタが私の速さに追いつける訳ないでしょう」

ロックバインと呼ばれた異能者は決然とした様子でリジェネレイターを睨みつけ臨戦態勢に入った。
ファイアスターターはそのスピードと炎を噴出する力を、ロックバインはその土を操る力を以て――。
眼前に映る邪魔者を殲滅することに決めたようだった。

121 : :2018/12/07(金) 23:28:07.51 ID:5mNzrS38.net
【導入文終わり。もし参加者の方がいれば始める予定。なければこのまま放置】

122 :創る名無しに見る名無し:2018/12/08(土) 00:03:18.83 ID:qcjArYMf.net
http://www.webdevzm.com/

123 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 17:15:58.63 ID:Y/RSvkvO.net
面白そうなんだけど、時間がつれえわ・・・

124 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/13(木) 22:20:43.89 ID:InQNlwMz.net
【引き続き募集中です!興味のある方はぜひ!
 ご意見・ご要望などもあればぜひ承ります!】

125 :創る名無しに見る名無し:2018/12/13(木) 23:41:49.22 ID:UDbt/MtS.net
面白そうと思うし、実際キャラだけはもうできてる
でも他に参加スレあるから厳しい
猶予期間の長さがどうこうという話ではなく、スレを二つ自分の中で持つことが今はちょっと無理

だったらわざわざレスするなって話だけど、話自体が悪いわけでもないし普通に面白そうに思っている人間もいるという事を知ってほしかっただけですまん

126 :創る名無しに見る名無し:2018/12/14(金) 00:25:43.97 ID:edmantn7.net
先の見えない長編ならともかく最長8ターンなんだからそこまで気になるならやってみればいいんじゃね

127 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:43:37.20 ID:mzKbOF8t.net
>>125
ありがとうございます。折角なので昔に考えた企画も投下。
どちらも参加者がいれば短い話をやれればと考えています。

【退魔師TRPG】

見知らぬ風景、見知らぬ場所。
白い空間に名も顔も知らぬ数十名の候補者達が集められた。
彼らは勧誘を受けて、あるいは適正を持つが故に強制的に連れてこられた。

日本は古来より怪異の恐怖に晒されており、その怪異を現代では魔物(モンスター)と呼ぶ。
魔物達は人間が本能的に恐怖を抱く姿を象り、異界より世界の歪みから現れてくる。
一方で歴史の影で世界の歪みを封じ、魔を以て魔を滅する者もいた。
退魔師である。

その退魔師の適性を持つ者――いわゆる霊感の高い者達がこの契約の儀式に集った。
目には目を。魔物には魔物を。彼らは儀式にて魔物を滅するための魔物を呼び出し、契約を結ぶ。
これこそが退魔師の秘儀にして対怪異のための武器、契約魔物である。
彼らを集めた日本最後の退魔師は言う。

君達の中から真の退魔師が現れてくれることを祈る。
儀式で得た力で何をするかは君達の自由だ。だが忘れるな。
契約の儀式を行うということは魔物達を滅する退魔師になったということ。
運命は君達を怪異へと引き寄せ、魔物と戦い続ける道を歩むことになるだろう。

――これより、契約の儀式をはじめる。


ジャンル:退魔アクション
コンセプト:スタンド風アクションバトル
期間(目安):未定
GM:なし
決定リール:なし
○日ルール:14日
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし

128 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:44:24.67 ID:mzKbOF8t.net
◆契約魔物についてのルール

1、契約魔物は一人一体まで。
2、霊感の低い者には視えない。
3、固有の能力を三つまで持つ。
4、退魔師の霊力を消費して能力に準じた必殺技を発動できる。
5、契約によって結びついているため、契約魔物が傷つけば退魔師も傷つく。
6、倒した魔物と契約を結び直す事で契約魔物は変更できる。


【テンプレート】

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
職業:
性格:
霊力:(好きな数字を記入)
所持品:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:

【契約魔物テンプレート】

名前:
能力:(三つまで)
必殺技:(消費霊力も記入すること)
ステータス:パワー/スピード/タフネス(A〜Eで評価)
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:

129 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:45:15.74 ID:mzKbOF8t.net
【テンプレート記入例】

名前:瀬川一葉(せがわいちよう)
年齢:16
性別:男
身長:174
体重:61
職業:高校生
性格:地味で大人しいが、根は熱い
霊力:100
所持品:学生鞄、魔除けのおふだ
容姿の特徴・風貌:地味な黒髪に学ラン姿
簡単なキャラ解説:
霊感が高く昔から怪異が見えていた少年。
当然の日常として無視して暮らしていたが、魔物によって人が傷つく姿を目撃。
自身は被害者を置いて逃げ出す。以来もう逃げたくないと考え、儀式の参加を決意する。


【契約魔物テンプレート記入例】

名前:メルキド
能力:
〇フレイムボディ:自身の腕や身体から炎を噴出して操ることができる。
〇マジックアーム:自身の腕をバネのように伸ばすことができる。
〇サーモバリック:霊力消費を倍にして炎系の必殺技の威力を倍化させる。

必殺技:
〇フレイムナックル(消費10):炎を拳に纏ってぶん殴る。
〇フレイムランチャー(消費20):腕から炎を噴射する。射程30メートル程度。

ステータス:パワーA/スピードC/タフネスB
容姿の特徴・風貌:樽型の胴体に丸い顔、仮面を被った偉丈夫。常に炎を纏う。
簡単なキャラ解説:
契約者瀬川の根っこに秘める熱い魂に呼応して召喚された炎の魔物。
物理攻撃系のシンプルな魔物で能力も単純。燃費は良いが絡め手に弱い。

130 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:46:20.76 ID:mzKbOF8t.net
「君、霊感があるんだってね」

スーツを着た男性は開口一番にそう言った。
コンビニの雑誌コーナーで話しかけられた時、瀬川一葉は驚いて声が出なかった。
男はポケットを片手に突っ込んだままぶっきらぼうに折り畳んだ白い紙を差し出す。

「"退魔師"――。怪異を払い"魔物"を滅する者。
 興味があるならこの紙に書いてある場所へ来るといい」

おずおずと白い紙を受け取ると、男は足早に去っていった。
瀬川には幼い頃から視えてはいけないものが視えていた。
一般的に幽霊や怪奇現象と呼ばれるものを度々目撃し、指摘しては周囲から気味悪がられた。
やがて瀬川も自分だけに視えているものについて話してはいけない事に気づく。

怪異が為すことを気にしてはいけないし言及してもいけない。
彼は怪奇現象に対して無視を決め込んだ。
そんなある日のこと、彼は魔物に襲われている人を偶然目撃してしまった。
無力な彼にできることはまるでなく、ただ恐怖に怯え逃げ出すことしか出来なかった。

――そんな彼の過去が、足を自然と動かした。
白い紙に書かれてあったのは近所から少し離れたところにある公園。
時刻は夜にも関わらず、老若男女数十名ほどの人で溢れている。

怪異を払うという退魔師の存在。
何十人もの集められた人々。ここで一体何を始めるというのか。
何かのドッキリに騙されたのではないかと思い始めた頃――。

瞬間、周囲の景色は突如として真っ白な何もない空間に変貌した。
集められた人が色めきだち、混乱の波が押し寄せた。

やがて、白い空間にしわがれた老人の声が響く――。
声は空間内を反響し、混乱が少しずつ収まっていく。

「私は日本最後の退魔師。君達に集まって貰ったのは他でもない。
 この私の跡を継ぎ、退魔師となって日本に迫る怪異から救って欲しい」

131 :【退魔師TRPG】 :2018/12/15(土) 18:47:14.93 ID:mzKbOF8t.net
老人の声は魔物とそれを退治する退魔師の説明を終え、儀式を始めた。
瀬川の足元に緑の魔法陣が浮かび上がり、目映い光に包み込まれる。

光の中に映る影を瀬川は見た。ずんぐりとした巨大な影を。
影は翡翠の双眸を光らせながら足元の魔法陣に消えていく。
そして、契約は結ばれた。気がついた時には自室で寝ていた。

いつもと変わらない朝、いつもと変わらない日常。
一連の出来事は夢だったのかもしれない。
いつも通り学校に通い、夕方となった帰り道にふとそう思った。
だが――同時に耳にこびりつく言葉を瀬川は思い出していた。

"運命は君達を怪異へと引き寄せ、魔物と戦い続ける道を歩むことになるだろう"

ふと商店街の前を通りがかった時、瀬川はぞわりとするものを感じた。
強烈な怪異を見た時に奔る怖気。喉から込み上げてくる嘔吐感。
間違いない。近くに幽霊が――先日の老人の言葉に合わせれば"魔物"がいる。

シャッター通りと化した商店街を見つめる。
地面をよく見ると、血の痕が点々と商店街の奥へと続いていた。
日が沈みかかり、電燈が一切ついていない商店街は洞窟のように暗い。
奥を覗き込むことは叶わなかった。

(あの奥に何か、いる……!)

それだけは確かな事だった。
幸いなことに、魔物の脅威はこちらへ向いていない。
退けば向こうはこちらを追いかけてくるようなことはないだろう。

今、彼は岐路に立たされていた。
夕日が照らす日常の街へ逃げ込むか。
混沌が渦巻く暗闇の中へ足を踏み込むか。

答えはとっくに決まっていた。
瀬川は学生鞄を盾のように持ち直し、暗い商店街へと歩を進めた。

132 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 13:32:40.91 ID:rFvykASH.net
トーブリ+ブレモンって感じかな

133 :創る名無しに見る名無し:2018/12/16(日) 14:25:34.38 ID:Po/EIz6U.net
魔物は通常物理兵器では傷つけられないのかな?

134 :【退魔師TRPG】 :2018/12/16(日) 15:28:27.97 ID:G/W9K8im.net
>>132
そんな感じです。
個人的にはジョジョのスタンドバトルっぽいのがやりたくて考えました。

>>133
魔物は霊感の低い者に視えないだけなので、武器の威力次第で傷つきます。
霊力を介した通常物理兵器であればもっと傷つきます。

タフネスB以上が相手の場合は素の拳銃弾やライフル弾では傷つかない……
ぐらいのパワーバランスだと考えています。

135 :【退魔師TRPG】 :2018/12/16(日) 15:37:17.32 ID:G/W9K8im.net
……と、考えていたんですがちょっと訂正。
通常武器で傷つきすぎるとややこしくなりそうなので
魔物は霊力を介した攻撃や銀製の弾丸みたいな特別なモノ以外では傷つかないという設定でお願いします。
設定がコロコロ変わってしまい申し訳ありません。

136 :創る名無しに見る名無し:2018/12/18(火) 12:44:05.88 ID:UVvVoixS.net
>>135
却下

137 :創る名無しに見る名無し:2018/12/20(木) 07:44:50.24 ID:TPtATLrc.net
ヒーロー物の方がやりたいな
テンプレすらまだだけど

138 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/20(木) 19:11:45.98 ID:b5Rfe0Q1.net
うーん、【退魔師TRPG】は練り込み不足感もあるので一旦凍結させて頂きます。
申し訳ありません。

>>137
ありがとうございます!
【ヒーローウォーズ】は現在も募集中ですので興味があればぜひ!

139 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 00:37:51.17 ID:ZD+bJ1S2.net
悪いけどヒーローものをなろうで書く予定

140 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 08:25:30.37 ID:PmniybP9.net
見つけたいけど出来るかな
なろうは投稿者多いから、よっぽど毎日投稿して宣伝しないと埋もれちゃうんだよなあ

141 : :2018/12/23(日) 17:59:10.45 ID:pI9FQjbb.net
折角なのでまたロボットもの企画で募集します!
年末近いのでどうなるか分かりませんが、休みを挟みつつボチボチやれればと考えています。


【マシンナリーファイターズ】

20XX年。拡張現実(Augmented Reality)の発達は人々の生活をすこしだけ豊かなものにした。
拡張現実とは実在の景色にバーチャル情報を投影することで目の前の現実を仮想的に拡張する技術を指す。
このARを用いて生み出されたものこそウェアラブル端末「ARデバイス」である。
眼鏡、片眼鏡、ゴーグル、バイザーなど様々なタイプが存在しており、その用途は多岐に渡る。

――現在、人々はARデバイスを用いた「マシンナリーファイターズ」というゲームに熱中していた。
このゲームはARを用いてロボットを目の前に呼び出して戦わせる対戦アクションゲームである。
ロボットは「マシンナリー」と呼ばれ、操作はホログラフィーを用いた仮想操縦桿で行う。

ロボットが激突する瞬間、飛び交う弾丸、ビームの光……。
その全てがARによって現実さながらの迫力と光景になるのだ。
無論全て投影された演出なので人体に悪影響はない。

さぁ、君もファイターとなってロボットバトルを楽しもう!


ジャンル:SF風ロボットバトル
コンセプト:ロボット同士による熱いバトル
期間(目安):未定
GM:なし
決定リール:なし
○日ルール:14日
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし

142 : :2018/12/23(日) 17:59:51.30 ID:pI9FQjbb.net
[用語・設定]

マシンナリー:
ゲーム「マシンナリーファイターズ」で操縦できるロボット兵器の呼称。サイズは人間程度。
骨格となる基本フレームに装甲パーツ、スラスターパーツ、センサーパーツ、武器等を装着して完成する。
マシンナリーは基本フレームに装着する機体パーツを変更することで改造する事が可能である。

一からオリジナルパーツや武器を作成する事も可能でオリジナル機体をビルドできるのも醍醐味。
(ただしオリジナルパーツやオリジナル武器の使用にはゲームを開発したN社の審査と認可が必要。)
また基本フレームの改造は不可能だがN社からいくつかバリエーションが提供されている。


ロボットバトル:
ARデバイスでゲーム「マシンナリーファイターズ」を起動して対戦する行為を指す。
対戦方法は様々な種類があり通常のフリーマッチモードの他にチームマッチやサバイバルマッチ等が存在する。
また対戦機能を問わず勝利するとポイントが貰え、強さの指標でもあるランキングが決定する。
結構な人数のユーザー(ファイター)が問題の解決手段としてロボットバトルを持ち出しがち。

143 : :2018/12/23(日) 18:00:42.80 ID:pI9FQjbb.net
【キャラクターテンプレート】

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
職業:
性格:
特技:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:


【ロボットテンプレート】

機体名:
機体タイプ:
外観:
装備:
骨格:
能力:格闘/射撃/機動/装甲(合計20)
解説:

144 : :2018/12/23(日) 18:07:24.37 ID:pI9FQjbb.net
[骨格について]

マシンナリーのフレームのこと。以下の三通り存在する。

ベーシックフレーム……リリース当初から存在する基本フレーム。特徴は特になし。
エンハンスドフレーム……新フレーム。強化骨格とも。特定の武器に適正、不適正、能力に割合でバフ、デバフがつく。
デルタフレーム……新フレーム。可変骨格とも。可変機の作成に必要なフレームで自由に変形用関節を足せる。


【テンプレ例】

名前:水鳥周子(みどりしゅうこ)
年齢:16
性別:女
身長:166
体重:51
職業:高校生
性格:天真爛漫
特技:運動神経抜群
容姿の特徴・風貌:腰まであるひとつ結びの茶髪、琥珀色の瞳。人懐っこそう。
簡単なキャラ解説:
つつじヶ丘高校ゲーム部の一年生。実力は中の上程度。
部活は廃部寸前だけど世界大会優勝を夢に掲げている。


機体名:エクスフォードspec2
機体タイプ:万能型支援機体
外観:黄色の重装甲、青色のツインアイ、背中に殻型コンテナ。
装備:
フォールディング・シザーズ×2……両腕内蔵のハサミ型単分子ブレード。
スタンパニッシャー×2……空間展開式特殊兵装。両手から光球を射出し敵をスタンさせる。
ハーミットアーマリー……殻型武装コンテナ。下記の装備は全て収納武器。

エナジーリフレクター×2……コンテナ内蔵武器。攻撃を反射する展開式ビームシールド。
エナジーバルカン×4……コンテナ内蔵武器。低威力のビーム砲を断続的に発射する。
エナジーガンランチャー……携行式ビームガンの改造品。拡張バレルで威力を底上げしている。
マイクロミサイル……追尾式の小型ミサイル。熱感知式で20発まで発射可能。

骨格:ベーシックフレーム
能力:格闘5/射撃5/機動3/装甲7
解説:
正式名称「ハーミットクラブ・エクストリームモデルspec2」。エクスフォードは愛称。
水鳥周子の趣味と適正に合わせてゲーム起動時に貰える機体を重装甲モデルへと改造した専用機。
spec1が格闘機体だったのに対してspec2はチームの火力支援を目的に改造された万能機体となっている。

重装甲のため機体重量があり、機動性は低いもののジャンプなどの基本動作に支障はない。
レーダーには広域レーダーを採用しているので索敵も行える便利屋的仕様となっている。
必殺武器は両腕のハサミ型単分子ブレード「フォールディング・シザーズ」。

145 : :2018/12/23(日) 21:23:19.66 ID:GTqliqQ1.net
名前:西田結希/ザ・フューズ
年齢:21
性別:女
身長:158
体重:55
職業:社長
性格:温厚/必要な時は冷徹/つまり大抵の場合冷徹
能力:
『後天性超能力:パイロキネシス/エクトプラズム』
メトロポリスに来訪した宇宙人達から伝わった人体改造技術。
西田結希はその施術を受ける事で後天的に超能力を会得している。
炎を発生させるパイロキネシスと物質化現象を引き起こすエクトプラズム。

ただし彼女は後天的な超能力者である為、超能力者を自在に操る事は出来ない。
パイロキネシスは二通りのパターンでしか発現させる事が出来ず、
エクトプラズムも作り出せる物体は二つだけ。

装備:衝撃吸収スーツ/指向性付与グローブ、ブーツ、エルボーガードetc/軽量ボディアーマー
容姿の特徴・風貌:黒髪ポニテ、銀縁眼鏡、黒スーツ/炎を模したドミノマスク、黒いキャットスーツ、装備類は全て赤色
簡単なキャラ解説:
西田結希はかつて詐欺師だった。
メトロポリスで毎日のように起こる事件は保険金、補償金詐欺を行うのに最適だった。
そうして軍資金を調達した彼女は、今度は保険会社ではなくヒーロー協会に詐欺を仕掛けた。
ヒーローとヴィランによる戦闘の余波で自社が営業不能になったとして、億単位の賠償金を騙し取った。
彼女はその金で違法な手術を受け、超能力を手に入れ……そしてヒーローとなった。

ヒーローとなった事で、彼女は意図して、合法的に不慮の事故を起こせるようになった。
それはつまり保険金詐欺をより簡単に行えるようになったという事だ。

そんな彼女の風評は、当然だが非常に悪い。
証拠が残らないよう詐欺をしているので逮捕される事はないが、業界では悪徳ヒーローとして有名。
ルックスとキャットスーツのおかげで一般人からの人気は程々だが。

しかし彼女はハワイに別荘を持っている訳でも、週末にラスベガスで豪遊している訳でもない。
西田結希が稼いだ金を何に使っているのか。
またヒーローと詐欺師になる前は何者だったのかは、誰も知らない。

146 : :2018/12/23(日) 21:25:31.43 ID:GTqliqQ1.net
ヒーローウォーズに参加したいなと思っています
ロボットバトルは楽しかったけど、>>137でああ言っちゃったから、ごめんね

147 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/23(日) 21:37:36.87 ID:pI9FQjbb.net
>>146
ご参加ありがとうございます!
焦りから少し企画を乱発してしまいました、申し訳ありません。
企画を掛け持ちするのは負担があるので【マシンナリーファイターズ】も一旦凍結させて頂きます。

また、【ヒーローウォーズ】は随時参加者を受け付けております。
スレをゴタつかせてしまいましたがよろしくお願いいたします。

148 :創る名無しに見る名無し:2018/12/23(日) 21:45:31.09 ID:LpINCiNh.net
どれが需要出るかわからないのだし
実験室内で乱発もありだと思う
でも酉は統一してほしい

不特定多数から見れば
3人がそれぞれ企画出しているように見えているわけだし
企画被っているけど参加していいのか迷う
同じ人間が品書き並べてどれがいい?
と言っているのがわかれば、気楽に選べるから

149 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/23(日) 21:54:55.31 ID:pI9FQjbb.net
>>148
すみません、浅慮でした。
以後企画を複数投下する際はトリップを統一します。

150 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 02:24:24.22 ID:o1/jCSzf.net
頑張ってね
参加はできないけど応援してます

151 :山元誠一郎 :2018/12/24(月) 06:12:07.35 ID:YleMPaHf.net
名前:山元誠一郎(やまもと・せいいちろう)
年齢:25
性別:男
身長:185
体重:135
職業:専業ヒーロー
性格:豪快、熱血、正義漢。常に腹から声出てるタイプ

能力:
強化型内骨格『フレイムアームズ』
全身の骨の85%を置換する特殊合金製の改造骨格。
極めて頑丈かつバネのように加えられた力を蓄積でき、常人より遥かに高い身体能力をもたらす。
さらに摂取したミネラル分から自己復元できるため、食事がメンテナンスを兼ねる。
神経と接続して伸縮させることが可能で、ある程度なら怪我を無視して行動できる。
人間離れしたタフを備え、限界まで溜めた力を解き放つ殺人パンチがメインウェポン。
比喩ではなく本当にワンパンで人間の首が飛ぶ。車の板金程度なら穴が開く。

最大の特徴は改造部位が"内骨格"であることからの隠密性。
骨以外は常人と大差なく、外見から改造人間であることを見抜くのはまず不可能。
そのため丸腰を装って油断を誘ったり、敵性組織に潜入といった任務に適性がある。
ただしレントゲンを撮ればバッチリ映るし、空港での金属探知にも引っかかる。
また皮膚や筋肉の強度は鍛え込んだ常人相応なので斬られれば出血するし毒にも弱い。

装備:
『バングル型ワイヤーアンカー』
ガス圧で射出し小型モーターで巻き上げを行うワイヤーとアンカーのセット。
機動力を補う目的で多用するほか、ワイヤー単品をぶん投げてポーラ(拘束具)代わりにも。
衝撃吸収機能が一切ないため常人が使えば即腕が千切れるが、山元は強化内骨格で強引に耐えている。

『そのへんに落ちてる適当な何か』
内骨格の特性を最大限に活かすため、基本的に手ぶらで敵地に潜り込む山元が武器に使うもの。
投石を基本として、怪力に任せて道路標識を引っこ抜いて棍棒代わりにしたりもする。


容姿の特徴・風貌:
Tシャツとカーゴパンツが基本装備のガタイの良いあんちゃん。
整髪料でガチガチに立てた短髪に、眼力が強すぎる双眸。

簡単なキャラ解説:
祖父の代から街の治安維持を生業としている純粋培養のヒーロー。
ナチュラルボーンな正義漢であり、洗脳に近い英才教育によって己の使命は街と人命を護ることだと信じて疑わない。
10歳の頃から10年かけて骨格を改造する施術を受け続け、成人すると同時にヒーローとしても完成した。
自分の実力と正義に絶対の自信があるためか融通の効かない堅物な側面があり、
悪人よりもむしろ自分の思う正義に当てはまらない他のヒーローに対して怒りを持つ

152 :山元誠一郎 :2018/12/24(月) 06:12:30.16 ID:YleMPaHf.net
【参加したいと思います、よろしくおねがいします】

153 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/24(月) 09:30:34.85 ID:5tVXLSU4.net
>>152
ご参加ありがとうございます!よろしくお願い致します。

154 :創る名無しに見る名無し:2018/12/24(月) 22:55:36.85 ID:Mmn9xDcP.net
いいじゃんいいじゃん、俺も参加希望!
今のところ若い男二人だから、参加するなら女か老人あたりか?

155 :K-doll No14 :2018/12/24(月) 23:25:26.37 ID:7tghW3Rx.net
名前:K-doll No,14(フォーティーン)
年齢:3
性別:女
身長:120
体重:450
職業:戦闘用ロボット
性格:自信家/無鉄砲
能力:
「アイアンハート」
メトロポリスで稀に発生する本来自我を持たないロボットが突然自我に目覚る現象。
魔術や超能力など色んな説がでているがどれが正解なのかは本人達ですらわからない。
自我を持ったロボット達には色んな性格がいて統一性はない。
中には自分の力を誇示をしたいが為に暴れまわるロボットもおり基本的にはヒーローや警察を悩ませる事件になることが多い。


装備:
【アタックプログラム;ラピッドファイア】
右手を変形させることで発射できるマシンガン。
リロードが不要で、制圧射撃したり相手の足を撃ち行動不能にしたりする事ができる・・・もちろん射殺する事も。
火力は高いが精度が悪く、連続で撃ち続けるには自身の電力が必要であり長時間の射撃はできない。

【アタックプログラム;ブレード】
左手を変形させると使用できるキレ味のいい刃。
射出したりする事もできるが射出した後は刃を回収するまでブレードが使用できない。
電力を使わずとにかく燃費がいい。


【ガードプログラム;アサイラム】
自分の周囲にバリアを貼り味方や自分を保護する事ができる。
維持や衝撃の緩和に自身の電力を使うため使ってる間は身動きが取れずなにも攻撃を受けてなくても10秒程しか展開していられず連続使用もできない。
他の変形を全て解除する必要があり、あまりに強い衝撃を受けると電力が枯渇し緊急充電が完了するまで戦闘不能になる事も。


容姿の特徴・風貌:

茶髪ショート・病気と思えるほど白い肌・8〜10歳くらいの年相応の愛嬌のある声と顔・白いワンピース。




簡単なキャラ解説:
K-dollNo.14は元々ヴィラン側の科学者の殺人兵器であり全20体の中の一体でしかなかった。
現地に赴き命令された敵を殺し帰還するその為だけの"物"。
潜入しやすくするため"純粋無垢の子供"に見えるように作られているが殺戮兵器。

K-doll達の初任務はヒーロー養成所でヒーローおよび卵達を抹殺することだった。
潜入は成功し命令が発令されK-doll達が攻撃を始め、No14も銃を構え悲鳴や爆音で怯える子供達に向けた。
しかしNo14は撃てなかった、なぜか「ジットシテイレバ危害ハ加エマセン」とまで言った、自分で自分を診断したがエラーはなかった。
そのまましばらくして後ろから他のK-doll達が現れ銃を子供達に向けた。
そこから先は体が勝手に動いた、仲間であるはずのK-doll達に銃を向け発射した。

その後ヒーローに捕まったNo.14は処分されるはずだった。
しかし子供達が「悪い奴に作られたけど正義の心に目覚めたロボットに助けられた」と証言したことで世界に注目され子供達から人気を得た。
注目と人気に目をつけたヒーロー協会はNo.14に提案した、ヒーローになってみないか?と。

こうしてヒーローデビューしたフォーティーン(No14)
愛くるしい見た目と自我を持つロボットという個性と実力で瞬く間に人気"者"になった。

156 :K-doll No14 :2018/12/24(月) 23:28:32.71 ID:7tghW3Rx.net
【参加希望です、よろしくお願いします】

157 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/25(火) 19:23:09.07 ID:7JPtW3QD.net
>>154
参加お待ちしております!
まずはテンプレの投下をよろしくお願いします

>>156
ご参加ありがとうございます!
よろしくお願いします!

参加者の方が増えてきたのでターン順を確定させておきますね。
神籬→西田→山元→K-doll No,14の順番で行きたいと思います。
レス番が離れてしまったので、私のターンで導入文を投下し直します。少々お待ちください。
その他、ご質問、ご要望等あればお答え致します。

158 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/25(火) 19:56:45.15 ID:7JPtW3QD.net
20XX年メトロポリス。
夢の未来都市と銘打たれたその都市の姿はもうなかった。
今やありとあらゆる悪意を溜め込んだ掃きだめと化したこの街に平和はない。
齎すとすれば――、特別な力を持ったヒーロー達に他ならない。

夜のメトロポリスを一体の改造人間が駆け抜ける。
自動車群の網目を縫って『ファイアスターター』は後ろを一瞥した。
頭部の生えた髪の毛のような排気パイプに脚部の大型車輪ヒールホイーラーが加速する。
口紅のように真っ赤なボディとファイアパターンが目立つ女性型改造人間の威容にドライバーはぎょっとした。

「うふ、アナタ達ったら、速さがまるで足りてないのね」

脚部のヒールホイーラーを傾けて器用にUターンしながら地平線を見据える。
そしてスロウな乗用車を適当に蹴り上げた。轟音を立てながら車は地面に対して垂直に宙を舞う。
視界には誰もいない。目に映るのは空虚なビルディングが立ち並ぶメトロポリスの夜景だけだ。

「ヒーローは遅れてやってくるって言うけれど、遅れすぎちゃダメじゃない?」

小脇に抱えたアタッシュケースを愛おしそうにひとなでして、改造人間は前方へ振り向く。
やっぱり私がナンバーワンの速さなのよ!
『ファイアスターター』は強い自負と共に夜の道路を疾走した。

メトロポリスに存在する犯罪組織は枚挙に暇がないが、彼女はその中でも危険で巨大な組織に属していた。
秘密結社レオニダス――。人間を一段階進化させるため、人類の新たな形態を模索する新興組織である。
彼らは現代の秘跡である超科学を用いて人に改造手術を施して改造人間を生み出す。
改造人間は『ファイアスターター』のように人間の原型を留めていなかった。

結社の擁する改造人間は警察組織では到底相手にできるものではない。
彼らと戦える組織はただひとつ。ヒーロー協会と所属するヒーローだけである。

「そうはさせねぇぜ改造人間っ!!」

改造人間が蹴り上げた車をキャッチしながら、腕時計型端末は吼えた。
端末の主である白い装甲服を纏った男は静かに車を降ろす。

「遅れすぎちゃだめじゃない?ちっちっち、違う違う。皆の声を待っていたのさ!
 俺が噂の装着系スーパーヒーロー、『リジェネレイター』様だっ!!!!!!!!!!」

腕時計型端末『オービット』が華麗なる向上を並び終え、
中身の神籬明治(ひもろぎめいじ)は静かに呟いた。

「……俺はどうすればいいんだ?」

159 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/25(火) 19:57:33.10 ID:7JPtW3QD.net
「あだだっ!ったく、変身前に言っただろうが!カッコ良くなんか決めポーズすりゃ良いんだって!
 それぐらいのファンサービス皆やってるから。あー、そうね。やってない奴もいるよ」

「……誰なんだ?」

「お前だよ、お・ま・え!!」

オービットは機械の溜息を漏らした。『リジェネレイター』は喋らない。
男は気難しいというわけでも怒っているというわけでもなかった。彼はおおよそ他人に対して心を閉ざしていた。
それは人工知能であるAIが相手でも変わらない。彼にとって言葉を交わすとは、とても困難な作業だった。

「さぁてどうするんだ『リジェネレイター』よ。俺達に高速移動なんて便利な能力はないぞ。
 このままじゃあいつを取り逃がしちまう。他のヒーローに任せて帰っちまうか?」

リジェネレイターは答えないまま、やにわに乗用車の屋根に飛び乗った。
飛び乗った車はややバランスを崩しながら走行を続ける。
しばらくしたところでリジェネレイターは器用に他の車に飛び移った。

「おおっと、失礼しまぁす。良い苦し紛れだがよ。
 あの改造人間300キロは出てるぜ。こんなんで追いつけるのか?」

「分からない。だけど、やるまでだ」

そうきたか、とオービットは端末の画面を明滅させた。相変わらず頑なな奴だ……。
先代の『リジェネレイター』が死亡して、ヒーロー協会で神籬と出会ったその日の印象通り。
人見知りで引っ込み思案、誰にも心を開けない……だけど、内には正しい心を秘めている奴だと。

「根暗の癖になんで頭だけは固いんだか。
 しょうがねぇ、ヒーロー協会に連絡して道路を封鎖して貰おうぜ。
 他のヒーロ―共も寄ってくるだろうけど背に腹は変えられないからな」

「そうだな……ありがとう、オービット」

「礼なんて無用だ。AIは必要なことをするだけだからな」

160 :【ヒーローウォーズ】 :2018/12/25(火) 19:59:17.46 ID:7JPtW3QD.net
快調に疾走していた『ファイアスターター』だったが、突如としてその走行を止めざるを得なくなった。
ビル街とメトロポリスの中で最も治安が悪いストリートを繋ぐ可動橋が跳ね上げられ、先に進めなくなったのだ。
女改造人間は舌打ちしてストップ。脚部から怒りの炎を巻き上げた。
心臓が早鐘を打つような大音量の排気音を鳴らし独りごちる。

「誰かしら。私の走りを邪魔するのは……?」

「誰かしらもおかしらもあるかよ。天下の公道で散々暴れまわってくれちゃって〜……。
 神妙にしろ。警察に代わって俺達が逮捕してやるぜ!改造人間!!」

特徴的な暗緑色の布地に白い装甲を纏ったヒーローが女改造人間へ歩み寄る。
息を切らして追いついたリジェネレイターに喋る余裕は無論ない。
捲し立てたのはAIのオービットの方だ。

「私無駄なことって嫌いなんだけど。本当に誰なのかしら。
 名乗りぐらいあげてくれないとマイナーヒーローの事なんて分からないわ」

「カッチーン!てめぇ、これでもなぁ。俺だって昔はちょっとしたもので……」

言い終わるより早く地面が隆起してオービットのお喋りは中断された。
地面が裂けて現れたのは岩のようにごつごつした肌のこれまた異様な男だった。

「なんだなんだ。今日はヴィランのオンパレードか?
 もしかして……俺達、ヤバイ日に出くわしちまった?」

「かもしれないな……」

岩肌の男はリジェネレイターをぎろりと睨んでファイアスターターを見据える。
男は横にも縦にも長く、ざっと2メートルはあろう巨躯から一種ぬりかべを想起させた。
糸で縫合された口を強引に開こうとするが、神籬に聞こえたのは低い唸り声のようなものだった。

「久しぶりねロックバイン。相変わらず異能者の癖に改造人間染みてるわアナタ。
 そういうところが本当に無様ね!どうせアナタの狙いもこれでしょ?」

ファイアスターターは抱えているケースを叩きながらくすりと口紅を歪ませた。

「アナタと取り合いを演じても良いけど、先ずは邪魔者を消すのが先決じゃないかしら。
 アナタが私の速さに追いつける訳ないでしょう」

ロックバインと呼ばれた異能者は決然とした様子でリジェネレイターを睨みつけ臨戦態勢に入った。
ファイアスターターはそのスピードと炎を噴出する力を、ロックバインはその土を操る力を以て――。
眼前に映る邪魔者を殲滅することに決めたようだった。

リジェネレイターの連絡を受けて可動橋を封鎖したヒーロー協会だったが、
彼らはヴィランとの戦いに極めて用心深い。
念を押して他のヒーロー達に連絡を入れるのが通例だ。
と、言ってもその連絡はいつものように情報が少ない上に古い。

メトロポリスのメインストリートに改造人間タイプのヴィランが出現した。
ヴィランはアウターストリート目掛けて時速300キロで走行しているが可動橋を封鎖して進路を塞ぐ。
ヒーロー各員は直ちに現場に急行してヴィランの制圧にあたってほしい。以上。


【ミッション:ヴィランを制圧せよ!】

161 :神籬明治 :2018/12/25(火) 20:00:45.33 ID:7JPtW3QD.net
【名前欄変え忘れてた……(汗)】

162 :山元 :2018/12/28(金) 20:16:22.17 ID:UidLzU4G.net
【すみません参加表明してからもっとやりたいキャラが思いついたので変更したいです】

名前:セーラ・山元/魔法少女テスカ☆トリポカ
年齢:15
性別:女
身長:155
体重:45
職業:女子中学生/魔法少女
性格:天真爛漫

能力:
古代の太陽神ケツァルコアトルとの契約により力を得た魔法少女(地属性)。
特別な薬草(合法)を燃やした煙を吸引することでトランスし、爆発的な魔法力を発揮する。
太陽神の加護として大地を司る力を持ち、主に地熱や鉱物を操って戦う。

『大地の結晶』
マグマの結晶体である黒曜石を大地から呼び起こし操る魔法。
黒曜石の薄片はこの世のどんな刃物よりも切れ味鋭い単分子構造の刃であり、
後述のマクアフティルに取り付けて剣として扱ったり飛ばして攻撃したりする。
また黒曜石に眠る火山噴火のエネルギーを解放し、爆破することも可能。
ただし精錬された金属には弱い。

『レイラインアクセス』
地脈に潜ることで瞬間的に異なる場所へ移動する魔法。
潜るだけでなく『潜らせる』こともでき、離れた場所への攻撃にも利用できる。
生き物の搬送には対象者の許諾が必要なため、敵の位置を変えることはできない。
最大射程は2km、ただし距離が伸びるほどピンポイントで移動することが難しくなる。
地脈に触れていないと使えないため、空中戦には弱い。

装備:
『マジカルマクアフティル』
古代アステカの戦士が用いたとされる木剣の一種。
羽子板状の刀身に黒曜石の破片を散りばめることで、木製でありながらおそるべき切れ味を備える。
金属製の剣と比べて貫通力は劣るが、その気になれば人間の身体も骨ごと斬り飛ばすことも可能。
またサメの歯もように並んだ刃は魔力で射出することができる。

『鷲型の煙管』
鷲を象った材質不明の煙管。ケツァルコアトルの魂が封印されている。
火皿に詰められた薬草(単純所持なら合法)に点火し、その煙を吸引することで魔法少女に変身する。
ケツァルコアトルとは意志の疎通が可能だが、使う言語が異なるため100%伝わっているとは言いづらい。

容姿の特徴・風貌:
『通常時』
中等学校の制服、亜麻色のウェーブがかった長髪

『変身時』
フリルの代わりに鷲の羽根をふんだんに使ったインディアン風の衣装。
アステカ神話の神をモチーフにした石製の仮面を被っている。

簡単なキャラ解説:
神出鬼没の魔法少女にして、その正体はメトロポリスの学校に通う女子中学生。
天真爛漫で好奇心旺盛、底抜けに明るいごく一般的な女の子。

あるときこっそり入った父の書斎で見つけた『いい匂いのする葉っぱ』を、
好奇心から刻んで絞って出た汁を煮詰めたものをスプーンに乗せて炙って吸引してみたところ、
太陽神ケツァルコアトルと出会い魔法少女として戦うことになった。

実は彼女の父親はメトロポリスに根を張る麻薬シンジゲートのボスであり、
ヒーロー活動を続けるなかで父の組織を壊滅に追いやりつつあることを彼女はまだ知らない。
銃と鉄と白人が嫌い。

163 :神籬明治 :2018/12/29(土) 11:55:33.84 ID:nuOmr6U3.net
>>162
【分かりました!改めましてよろしくお願いします!】

164 :創る名無しに見る名無し:2018/12/31(月) 23:06:43.90 ID:lJi4f6Dh.net
次は西田待ちってことでいーの?

165 :神籬明治 :2019/01/01(火) 00:55:45.04 ID:B/MvvmTe.net
明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします。

>>164
順番的にそうなります。
年始で投下は難しいかと思いますが一応期限を設けておきますね。
1月5日から14日ルールを適用したいと思います。

また、1月5日に参加者全員の生存確認も取りたいので、
皆様お手数ですが一言書き込みお願いします。

166 :K-doll No14 :2019/01/02(水) 18:32:25.32 ID:bpX29OWP.net
生きてますよー五日にはコメントできなさそうなので今のうちに生存報告しておきますね

167 :山元 :2019/01/02(水) 21:03:53.61 ID:8qYXWNvH.net
私も生きてますー
西田さんは大丈夫でしょうか・・・?

168 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:25:28.29 ID:ZAcD21RV.net
メトロポリスの中央東区には酒池肉林と呼ばれる高級中華料理店がある。
量が多く味もいい割に値段も手頃。
そして何よりメトロポリスでは珍しい、調理場の様子を客席から見る事が出来ると有名な店だ。

メトロポリスでは下水道から拾ってきたネズミに魔法をかけてトマトに偽装したり、
その魔法が食事の途中で解けてサラダボールいっぱいにネズミの頭が出現する事は珍しくない。
下手を打って始末された悪党や密航してきた宇宙人の肉が料理に混ざる事もある。

酒池肉林ではそのような事は一度も起こった事はない。
無論、バレた事がないという意味ではなく。

DNA検査、ファラン魔法大学の封蝋付き魔法解除のスクロール、カタリナ正教会で製造された真贋看破の聖水。
他にも四種の異なる技法を用いて、食材の偽装はない事を証明している。

「なあ、この店ってホントに利益出てるの?急に潰れたりしないよな?」

酒池肉林に通い出して暫くすると、殆どの客は挨拶にきた支配人にこう問いかける。
食材の質の高さに加えて、徹底的な安全性の証明。
収益が得られているのか疑問に思う者がいても不思議ではない。

「ご心配なく。こうして気がけて頂けている間は、そのような事にはなりませんよ」

支配人の返答はいつも決まっている。柔和な笑顔を浮かべて、そう答える。
そして新たな常連客となるだろうその客に、少しばかりのサービスを添えて料理を運んでくる。
だが今日は――少しばかりいつもとは違う事が起きた。

ふと、支配人のスーツの内ポケットから、小さな電子音が響く。
携帯の着信音だ。

「失礼します」

支配人の表情からにわかに笑顔が消える。
緊急の連絡なのか、支配人は客に背を向け数歩離れると、すぐに携帯を取り出した。

「……はい。わかりました。ええ、それは毎日欠かさず。はい……それでは、ボス」

客に応対する時とは違う、緊迫感すら感じさせる静やかな声だった。

「……なに、なんかあったの?」

支配人が通話を終えると、客の男は思わずそう尋ねた。

「ええ、実は今、メインストリートでヴィランが暴れているようでして。
 ……もしかしたら、明日の仕入れに支障が生じるかもしれないと」

「マジぃ!?うわー、明日の昼飯どうしよっかなぁ……」

「お帰りの際に、ウチの系列店の割引券をお配りさせて頂きますので、どうかご容赦を」

そうして支配人はその後、全ての客に割引券を配り、退店を見送った。
誰もが明日、酒池肉林が営業出来ない事に嘆きつつ店を後にする。
誰も、支配人が嘘をついているなどとは考えもしない。

本当は、明日の仕入れは問題なく行う事が出来る。
これから出来ないという事にするのだ。
そうすればヒーロー協会や保険会社から一日分の売上を補償金として得る事が出来る。

つまり常日頃から架空の伝票を作成して、一日当たりの売上額を粉飾しておけば――
その水増し分がそのまま設けになるという寸法だ。
ヴィラン絡みの騒動、ヒーローの出動が毎日のように起こる、メトロポリスならではの詐欺だ。

169 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:26:35.95 ID:ZAcD21RV.net
支配人は昨日の分の架空伝票を作成するべく、厨房の奥へと向かう。
そして――不意に、足を止めた。

関係者以外立入禁止であるはずの厨房に、見知らぬ人物がいた。
黒いスーツで身を包んだ、背の低い銀縁眼鏡の女だ。
調理台の上には彼女の持ち物であろうジュラルミンケースがある。
代わりに、本来いるべきである調理師達の姿は、どこにも見えない。

「……こちらはスタッフ以外立入禁止となっておりますが、どちら様でしょうか」

支配人は双眸を細めて、そう尋ねた。

「支配人の山田様ですね?私はメトロポリス・パブリックヘルスセンターの西田結希と申します」

西田と名乗った女はにこやかな笑顔と共にそう言うと、小さく会釈をした。

「実は先日、この店舗で食材の魔術的偽装が行われていると通報がありまして」

支配人は考える。
またいつものか、最近は減ってきたんだがな、と。
酒池肉林はメトロポリスでも指折りの有名店だ。
やっかみや難癖、それらを発端に始まる嫌がらせはよくある事だった。

「その件でしたら、既に一度調査を受けていると思いますが」

「ええ。ですが最近になってまた通報件数が急増してまして……」

結希の顔に浮かぶ愛想笑い――このまま引き返すつもりはないという事らしい。

「……分かりました。でしたら、気の済むように調査して下さい」

少なくとも食材の品質に関しては、この店に偽装はない。
支配人は臆さず冷静に応対する。

「いえ、実はもう調査は済ませてしまったんですよ」

「……困りますね。勝手な事をされては。ですが、何も見つからなかったでしょう」

「……いいえ?」

だがすげなく返した言葉に結希がそう答えると、彼の表情に困惑が浮かんだ。

170 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:28:16.78 ID:ZAcD21RV.net
「馬鹿な。何も見つかるはずがありません」

そう、何も見つかるはずがない。
なにせ本当に何もないのだ。少なくとも食材に関してはこの店は潔白だ。
一体何が見つかったというのか。同業者によって何か仕組まれたのか。
支配人の意識が急速に、泥沼のような思考に沈んでいく。

ふと、結希がどこかへと指を差した。
支配人が振り向くと、その先にあったのは――食材用のコンテナだ。

「ご自分で確認してみてはいかがですか?」

何もある訳がない。
そう思いながらも支配人は、コンテナへと歩み寄っていく。
中に見えるのは大量のトマト。

この中に何かが仕込まれていたのだろうか。
だとしても、この店には既に実績がある。
同業他店による営業妨害であると主張しても、十分に客の信用は保てるはず。

思索を巡らせながらも支配人はコンテナを漁り――指先に何か違和感を覚えた。
何か冷たく、硬いものの感触。
それを掴んで引きずり出す。
コンテナの底から出てきたのは――銃だった。
FN-P90。小型で長細い特殊な弾丸を使用する、アーマーの貫通を目的としたサブマシンガン。
メトロポリスでは、少なくとも合法的には販売する事の許されないものだ。

「馬鹿な……こんなものが、何故……」

「酒池肉林は食材の安全性をあらゆる手段を用いて証明していた」

狼狽する使用人の背後から声がした。
西田結希の声――その響きは、先ほどまでとは打って変わって冷たく、鋭かった。

「それは、そうする事でこの店は不正とは無縁であるという印象を作り出せるから。
 実際には食材そのものには偽装がないという事実を隠れ蓑にして、不正を行う事は出来る。
 それは例えば架空伝票による補償金詐欺であったり……違法な品の密輸であったり」

支配人が振り返る。
彼女は、マスクを被っていた。

「……私への上納金まで偽装しろと命じた覚えは、なかったんだがな。
 私が考えたシステムで順調に金を稼いで、自分の身の程を勘違いしたか?」

調理台の上のジュラルミンケースから取り出した、紅蓮の炎を模したドミノマスク。
メトロポリスに知られる悪徳ヒーローの象徴たるマスクだ。

171 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:32:03.50 ID:ZAcD21RV.net
「……それはつまり、あなたが私のボスだった、という事でしょうか」

「ああ、そうだ」

「わざわざ正体を明かしたのは……私をここで殺すつもりですか?」

「それ以外にどんな理由がある?」

「……私はこの店の使用人として、既に顔が知られています。
 始末すれば、今後の店の運営に支障をきたすのでは」

「確かにそうだ。だがこれ以上お前に舐められる事の方がずっと問題だ」

ザ・フューズの右手に炎が灯った。
そのまま彼女は支配人へと一歩二歩と詰め寄っていく。

「降伏は無駄だ。抵抗しろ。お前は万が一助かる見込みがある。
 そして私はヒーローとしてお前を殺せる。いい事ずくめだ。だろう?」

ザ・フューズが更に一歩前に出た――その瞬間。
支配人はサブマシンガンの銃口を彼女に向けた。
ザ・フューズが自分に銃を与えたのは、正当な防衛として自分を始末する為。
そう分かっていても、それ以外に彼に取れる行動はなかった。

分間900発、秒速715メートルの速度で放たれた弾丸がザ・フューズへと迫る。
対して彼女は――ただ静かに、右手を前に伸ばした。
そして現れる、青白い光を放つ半透明のプレート――超能力による物質化現象。エクトプラズムだ。
響く金属音――ザ・フューズへ放たれた数十発の銃弾が、全て弾かれた音だ。

分かりきっていた事だが、やはり銃は通じない。
その様を目の当たりにすると、支配人はすぐにそれを放り捨て、逃げ出そうとした。
そして――直後、彼は火花を見た。
自分めがけて、まるで導火線(ザ・フューズ)のように襲い来る火花を。

火花は刹那の内に支配人の眼前まで迫り――炸裂した。
何もない空間から突如燃え上がる炎。
発火能力、パイロキネシスによるものだ。

火だるまになった支配人は呻き声を上げながらもがき、しかしすぐに動かなくなった。
ザ・フューズはそれを見届けるとジュラルミンケースの中から小型の通信機を取り出し、喉と耳に装備した。

「……もしもし、私だ。例の密輸入業者はクロだった。
 銃で抵抗されたので、身柄を確保する事は出来なかったが」

協会に所属しているヒーローは、望むならオペレーターによる支援を受ける事が出来る。
それは例えば交通規制の要請や、情報支援。
そして戦闘の事後処理――例えば死人が出てしまった際の迅速な手続きなどだ。

「悪いが、殺される可能性が1%でもあるなら加減なんて出来ない。
 ……とにかく、この男のスマホは回収出来たから問題はないだろう。これを解析に回してくれ。
 もし取引相手の情報が分かったなら、ちゃんと私に教えてくれよ」

ザ・フューズはジュラルミンケースの中にある携帯端末をちらりと見下ろした。
当然、これは彼女が事前に用意したものだ。
中のデータから取引相手として割り出されるのは――彼女が目星を付けたスケープゴート。
つまりあわよくば吸収合併したい悪党共のリストだ。

172 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:32:57.66 ID:ZAcD21RV.net
「……今から本部に戻るが、迎えは出せるか?
 10分以上かかるようなら自分で……なに?なんだって?」

ジュラルミンケースを閉じて裏口へ向かうザ・フューズが、ふと立ち止まった。

「この近くでヴィランが暴れている?……可動橋を封鎖したのか。つまり、結構な大物かもしれないと」

ザ・フューズのマスクの奥で、彼女の双眸が鋭く細る。
そうして彼女は裏口から外に出ると、その場に膝をついてジュラルミンケースを開いた。
中からボディアーマーと、彼女専用のグローブとブーツ、ジョイントカバーを取り出す。
それらをスーツの上から装着すると――不意に、彼女の体が燃え上がった。
人体発火現象、最も単純なパイロキネシスの使用法だ。
スーツが燃え落ち――その内側から黒いキャットスーツがあらわになる。

「ケースは店の裏口に隠しておく。
 中には私の支給されたスマホも入ってるし、万が一盗まれても追跡だろう?
 ……ああ。ヴィランが暴れてるなら、ヒーローが駆けつける。当然の事だ」

ヒーローを名乗るその言葉とは裏腹に、彼女の声音は先の支配人を殺めた時のように冷酷だった。

通信を終えると、彼女は地を蹴った。
同時に彼女の四肢の装備から爆炎が噴き出す。
人体発火現象の応用――炎の噴出を数点に絞り、装備を通して更に圧縮。
その結果生じるのは強烈な推力。
空を飛び回るとまではいかないが――高価なジェットパックをレンタルしなくても困らない程度の機動力は確保出来る。

封鎖された可動橋前の交差点。
ヒーローとヴィランがぶつかり合う戦場に、ザ・フューズは猛烈な速度で迫っていく。
そして目視した。

遠目にもはっきりと分かる弧を描く、器物破損も辞さない暴力的な炎。
コンクリート色の巨人と、その男を中心として円錐状に隆起する地面。
最後に――それらの攻撃に晒されて悪戦苦闘する暗緑色の人影。

緑と白の某がヒーローである事はすぐに分かった。
ヒーローが優勢であるならば援軍要請など必要ないからだ。
ザ・フューズは速度を落とさず突っ込み――その勢いのまま、炎の推定ヴィランに蹴りを見舞った。

響く強烈な金属音。
炎の推定ヴィランはその脚部のローラーで地面を擦りながら、大きくノックバック。

「……なんだ。誰かと思えば、目立ちたがりの三流ヴィランか。来て損したかもな」

「なに、またヒーローのおでまし?悪いけど、今日はあなた達と遊んでいる暇はないの」

しかし炎のヴィラン――ファイアスターターは平然とザ・フューズの方へと振り向いた。

「分かるかしら。いつもみたいに優しくはしてあげられないって事」

不意打ちは確かに成功した。
ザ・フューズの蹴りはファイアスターターの無防備な横面をこれ以上ない手応えで捉えていた。
にもかかわらず彼女のボディには僅かな塗装の剥離すら生じていない。

ファイアスターターの尊大な態度には確かな根拠がある。
ステージWの人体改造――全身の八割以上を置換した改造人間は、本来生身の人間が争えるような相手ではない。
彼女は人間よりもむしろ、兵器に近い存在なのだ。

173 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:34:17.00 ID:ZAcD21RV.net
「怪我したくないでしょ?どいてくれないかしら。手柄ならそっちにもいるわよ、ほら」

ファイアスターターは顎先でロックバインを指す。
だがザ・フューズの視線は彼女からぴくりとも動かない。

「……なるほど。目立ちたがりのお前が、どうしても早くここから逃げたい。
 何かは知らんが、なかなか重大な任務に就いてるようじゃないか、え?」

ザ・フューズの視線が、ファイアスターターの携えるアタッシュケースを捉える。
直後、ザ・フューズの手足から噴射される炎。
その推力が、一瞬間の内に彼女の立ち位置を変化させる。

橋が封鎖された事で、ファイアスターターの目的地がアウターストリート方面である事は既に分かっている。
ならば彼女は来た道を戻る事は出来ない。
ファイアスターターの取るべき選択肢は、この場を離脱し、他の橋から対岸へ渡る事。

ザ・フューズはそれを封じたのだ。
表裏どちらの稼業においても、地理の把握は必要不可欠。
彼女の頭の中にはこの街の地図が丸ごと詰め込んであった。

「目立ちたがり屋で、口が軽い。とことん三流だな、お前は」

ザ・フューズの挑発に、ファイアスターターの双眸に怒りが宿る。

「……あなた、生意気ね。たかが生身の人間のくせに」

瞬間――ファイアスターターが炎を棚引く閃きと化した。
改造手術によって得た内部機構と装甲――それらによって、彼女の体重は当然、常人の数倍。
加えてその体を時速300キロで動かす推力――そこに回転を加えれば、手足の先端は更に加速する。

つまり――恐ろしく速く、しかも重い。
人体など容易く破断し得る威力を秘めた回し蹴りがザ・フューズへと襲いかかる。

ザ・フューズは右手を前に伸ばし、前方にプレートを展開。
ただし今回は、地面と水平に。
ライフル弾をも弾く防壁は、向きを変えればそのまま巨大な刃になる。
そして――ファイアスターターの真紅の脚部装甲が、その刃を力任せに蹴り砕いた。

ザ・フューズが咄嗟に両腕を交差させ、追加の防壁を形成。
二重に展開されたプレートは――最初の一枚同様容易く、ザ・フューズもろとも蹴り抜かれた。
ザ・フューズの矮躯が大きく弾き飛ばされ――だが炎の噴射を用いて勢いを相殺。
数メートルほど後退させられたものの、なんとか踏みとどまる。

腕の奥、骨にまで響き、残留する重い衝撃。
ヒーロー協会謹製の耐衝撃スーツと、追加の防壁がなければ腕ごと胸まで薙ぎ払われていただろう。

174 :ザ・フューズ :2019/01/03(木) 16:39:43.98 ID:ZAcD21RV.net
蹴り飛ばされた事で体勢は崩れ、腕には重い痺れ。
ザ・フューズは大きな隙を晒した状況。
しかしファイアスターターは、ザ・フューズの方など見向きもしていなかった。
ただ自分の脚に視線を落とすと、苛立たしげに地面を蹴りつける。

彼女の脚部装甲には、浅い亀裂が生じていた。
当然だ。先のカウンターは、言わば時速300キロ超で鉄板を叩きつけられた同然なのだ。
むしろ脚が切断されず装甲への亀裂だけで済んでいる事の方が異常だ。

「……私のボディに傷を付けるなんて、許せないわ」

「ほざけ。奪い、傷つけるのはお前達だけの特権だとでも?」

怒りを帯びたファイアスターターの言葉に、ザ・フューズは苛立たしげにそう返した。

ファイアスターターの尋常ならざる速力を逆手に取っても、彼女のボディに有効なダメージを刻む事は出来なかった。
だがそれはあくまで、一度では十分なダメージに至らなかったというだけの事だ。
ザ・フューズはカウンターは有効な戦術であると判断。次の手を打つ。
痺れる腕を気遣う素振りは決して見せず、虚空を撫でるように右手を動かす。

「お前達は所詮、社会の寄生虫だ。まともに機能している社会があって初めて存在出来る。
 そんな連中が、許さないだと?思い上がるなよ」

空中に次々と配置されていくエクトプラズムの刃。
ザ・フューズの狙いは逃走と、速度を活かした攻撃の封殺。
敵の強みを、徹底的に潰す目論見だ。

「思い知らせてやるぞ。正義は勝つという事をな」

正義を名乗るその声は、しかし冷たい憎悪に満ちていた。


【生きてますよー。
 ファイアスターターに対してトラップを散布】

175 :山元 :2019/01/06(日) 02:37:04.31 ID:DeXN+Nn8.net
公に存在を認められた魔法。人類の到達点とも言うべき科学技術。外宇宙からの来訪者。
それらを用いた社会福祉によって、夢の未来都市とまで謳われたこの街に、在りし日の栄華はもはや見る影もない。

いつの時代も、新しい技術を真っ先に使いこなすのは悪党達だ。
無軌道にばら撒かれた超常現象は、人間の悪意から最後の歯止めを奪い去る。
メトロポリスはいま、『悪い事なら何でもできる』犯罪者の楽園と化していた。

しかし荒廃したこの世界にあってなお、平和を尊ぶ意志の炎は潰えてなどいなかった!
燃え盛る正義にその身を焦がす、とある魔法少女の物語は、ここから始まるッ!!

176 :山元 :2019/01/06(日) 02:37:27.91 ID:DeXN+Nn8.net


隣接する工場から立ち上る黒煙が、重油の如く空に蓋をする工業区。
その片隅に、もう何年も太陽の光が差し込んでいない、湿気たコンクリートむき出しの建築物がある。
中央の鐘楼に取り付けられた鐘が、終末を思わせる錆びついた音を立てた。

ここはメトロポリスに7つ存在する公立学校、その中等部。
通う生徒達は、この治安劣悪な街にあって、セキュリティ万全な私立学校へ通うことの出来なかった者達だ。
つまりは市内人口の4割を占める貧民層。あるいは、何らかの理由で私立への入学を認められなかった子供である。

放課後、中等部の校舎裏。
カビと苔が繁茂する日陰で、数人の少年少女がたむろしている。
制服を好き放題に着崩し、髪を極彩色に染めた彼らは、当然のように煙草の煙を燻らせていた。
どこから調達してきたのか、足元には発泡酒の空き缶まで転がっている。

「あーだりぃ。疲れ取れねえわマジで」

「おめー丸一日授業フケてたべ?疲れる要素ゼロじゃん」

「一日中ウンコ座りしてっからさぁ。足腰の負担やべーんだわ」

ヤニ臭い野卑た笑い声に、IQの低い益体もない会話。
校則などないも同然に振る舞う彼らは、有り体に言えば不良生徒達であった。
特段珍しい存在でもない。学校のような子供の集まる場所なら、一定数は生まれる落伍者だ。
しかし、彼らの非行を単なる思春期の過ちで片付けてしまうのは、いささか酷な話かもしれない。

屈強な警備員に守られた私立校と違って、公立校には安全の保障がない。
極端に治安の悪いこの街では、いつ不幸なトラブルに巻き込まれてしまうとも限らないのだ。

過激の一途を辿るヴィランによるテロ、異能を持った生徒同士の小競り合い。
昨日までじゃれ合っていた同級生の机に、今日は花瓶が置かれていることなど珍しくもない。

当然親は公立校を避け、警備が固く異能者の在籍しない私立に子供を通わせようとする。
しかし経済的な問題や、単純な学力不足、あるいは自身が異能者であるなどといった理由で、
進路が限定されている子供もまた一定数存在するのだ。

死ぬのは怖い。しかし逃げ出そうにも行くあてがない。
そんな閉塞感や厭世観が、刹那主義へのいざないが、少年少女を非行に走らせる。
大人になれないかもしれないなら、今のうちに大人の娯楽を楽しんでおこう。
行き着く先が、たった今彼らが行っている、未成年喫煙であった。

昨日より今日は薄暗く、今日より明日はなお暗い。
あたりを漂う紫煙のように充満する絶望が首を締める校舎裏に、新たな影が一つ現れた。

177 :山元 :2019/01/06(日) 02:38:10.66 ID:DeXN+Nn8.net
「こらーっ!未成年が煙草吸っちゃダメだよ!!」

ふいに飛んできた非難の声に、不良達が一斉に振り仰ぐ。
そこには一人の少女がいた。校則通りに着込んだ制服は彼らと同じ学校のもの。
これも校則通りに胸に縫い留めてある名札には、『3-A セーラ・山元』と記載されていた。

少女――セーラは大股歩きでつかつかと不良に歩み寄ると、煙草を奪い取ろうと手を伸ばした。
不良はそれをはたき落として鼻で笑った。

「は?誰だよお前、関係ねえだろ。個人の勝手だ」

「あとトイレ以外の場所で排便しちゃダメだよ!!」

「それは個人の勝手でもしねえよ!しゃがんでる奴がみんなウンコしてるとでも思ってんのかテメーは!」

いわゆる便所座りで喫煙していた不良は思わず立ち上がった。
背の高い彼は、セーラを威嚇するように上から睨めつける。
栗色の波打つ長髪の下で、セーラの双眸は強い意志を秘めたまま彼を見上げていた。

「……なんだお前、優等生ちゃんがお説教でもかましに来たのか?ああ?
 有名無実のルールなんざ、まともに守ってる奴がいんのかよこの学校に」

「校則は関係ないよ!煙草ってね、ホントは身体にすっごく悪いんだよ!
 煙を吸ったら肺を痛めちゃうし、脳の血管も縮めちゃうんだから!
 せめて成長期が終わるまで我慢しとかないと、大人になってから絶対後悔するよ!」

「くだらねえ」

不良は説教を唾棄するように、茶色く染まった痰を地面に飛ばした。
身体を顧みない無理な喫煙によって、喉が炎症を起こしているのだ。

「大人になってからだぁ?なれる保障があんのかよ、俺たちによ。
 てめえもここの生徒なら分かってんだろ。この街じゃいつ誰が死んでもおかしくねえんだ。
 明日の楽しみにとっといて、今日死ぬような間抜けに俺はなりたくねえぞ」

大人になるまで我慢なんてのは、いつか大人になれる奴の台詞だ。
校則や法律を守るのは、それらのルールが自分自身を守るものでもあるからだ。
この街の貧民層に生まれた彼らにとって、健康も遵法精神も、まるで無意味の代物だった。

他ならぬ当事者として、そのことを痛いほど理解しているセーラは、きゅっと唇を噛んだ。
先程とは一転してしおらしく、目を伏せたまま零すように言う。

「でも、煙草はやめなよ……。さっきは校則なんて関係ないって言ったけどさ。
 こうして校舎裏で隠れて煙草吸ってるのは、やっぱり悪い事だと思ってるからでしょ?」

「しつけえ奴だな。先公やてめえみたいな優等生が絡んでくるから見えないとこで吸ってんだよ。
 クソみてえなルールさえなけりゃ、貴重な青春をこんなくだらねえ問答で使い潰すこともなかった」

分かったら消えろ、と不良は吐き捨てた。
しばらくうつむいていたセーラは、不意に顔を上げて言った。

178 :山元 :2019/01/06(日) 02:38:48.85 ID:DeXN+Nn8.net
「だからさ、どーせやるなら違法の煙草じゃなくて、合法のやつにしなよ!」

「うん?…………んん??」

唐突に話がおかしな方向に流れて、不良はセーラを二度見した。
彼女が胸ポケットから取り出した透明な小袋。中には乾燥した葉のようなものが入っている。

「おまっ……はあ!?何だよその見るからにヤバそうな葉っぱは!」

「ヤバくないよ!煙じゃなくて、樹液を炙って揮発した成分を吸引するタイプだから!
 煙で肺を痛めることもないし、純度の高いやつだから身体に負担はかからないよ!」

「そういう意味のヤバいじゃねえよ!校則どころか法律に触れる奴じゃねえか!」

「だいじょーぶ!合法だよ!現行法ではまだ規制されてない成分だから合法!
 単純所持なら捕まらないし、使用しても車や自転車で公道走らなければ合法!」

「脱法ハーブの理屈だろそれ!」

不良は信じられないものを見る目で一歩下がる。
空いた距離を同じだけ詰めたセーラの両目は、依然として不自然なほど輝いている。

「こ、こいつ……もうキマって……っ!?」

「煙草なんて不健康だし、不経済だよね!ニコチンが法規制されてないのは向精神作用がしょぼいからだもん!
 同じだけの多幸感を得るなら、吸引量の少ないこっちの葉っぱのほうが絶対健康的だよ!
 ほら、手を出して!笑顔になれる魔法をかけてあげる!優しい世界に一緒に行こう?」

ものすごい早口でまくし立てながらセーラはじりじりと不良に近づく。
不良はたまらずセーラを突き飛ばそうとするが、彼女は上体を逸らしてそれを回避した。

「やめろ、寄ってくんじゃねえ!誰がやるかそんなもん!」

「なんで?合法だよ?」

「合法ではねえよ!限りなく違法寄りの脱法ハーブだろ!」

「ノンノン。これは違法でも脱法でもない――言わば魔法ハーブ☆」

「小学生でももうちょっと練った御託並べるわ!!」

自分よりはるかに小柄な少女の放つ謎の圧力に、たまらず不良は火のついたままの煙草を投げつけた。
セーラは飛んでくるそれを一瞥さえせずに指先で捕まえて、ポケットから出した携帯灰皿に突っ込んだ。

「煙草のポイ捨てはダメだよ?」

彼女は携帯灰皿を、普段から身につけているのだ。
その事実に愕然とした不良は、震える手で自分の頭を抱えた。
そこに入れられる吸い殻は、はたして本当に煙草のものなのだろうか。

179 :山元 :2019/01/06(日) 02:39:15.57 ID:DeXN+Nn8.net
「なんてこった、これが類は友を呼ぶって奴なのか……?
 校舎裏で煙草なんか吸ってたから、もっとやべえ奴に絡まれちまったってのか?」

「大丈夫、すぐに煙草なんてやめられるよ。煙草じゃ満足できなくなるよ!」

「何も大丈夫じゃねえんだよっ!二度と吸うかこんなもん!」

不良はまだ中身のある煙草のパッケージを地面に叩きつける。
そしてドン引きしたままことの成り行きを見守っていた仲間達と共に、ダッシュでその場を逃げ出した。

「あーっ!だからポイ捨てはダメだってばぁー!」

セーラの声が聞こえなくなるまで、不良達は一切振り向くことなく走り続けた。
そしてこれは後の話になるが、生還した彼らは宣言どおり、二度と煙草を手に取ることはなかった。

チャチな非行に走る輩を今すぐ更生させる方法は簡単だ。
――ガチでやばい奴を目の当たりにさせれば良い。
明日は我が身というショッキングな事実によって、己の短慮に気づくことだろう。
セーラの献身的な説得によって、今日もまた若者たちが正しい道へと導かれたのであった!!!!!!

校舎裏に取り残されたセーラは、逃げていく不良を悲しげな目で見送った。
地面の煙草を拾い集めて、ため息をつく。

「"魔法のハーブ"っていうのは、ウソじゃないんだけどなぁ……」

つぶやきながら爪先で地面を小突くと、地面が突如として割れた。
生まれた局所的な地割れ、極小のクレバスに、彼女は拾ったゴミを放り込む。
もう一度地面を小突くと、怪物が咀嚼するように地割れが閉じて、ただの地面へと戻った。

セーラは、小奇麗な身なりが示すように、公立校の生徒に代表されるような貧困層の生まれではない。
彼女の家はむしろ、メトロポリスではかなり裕福な部類である。
本来であれば私立校で安全に学ぶことが出来たはずのセーラが、危険な公立校に通っている理由。
それは、他ならぬ彼女自身が、私立への入学権のない異能者だからだ。

有権市民クラスC、第二種特異能力『魔法』行使者。
セーラ・山元は――親の代から受け継いだ大地の力を司る、生まれついての『魔法使い』だ。

180 :山元 :2019/01/06(日) 02:40:22.21 ID:DeXN+Nn8.net


その日の夜、セーラはメトロポリス郊外にある彼女の家で家族と夕食をとったあと、
自室に籠もってハーブを炊いた煙を充満させて日課の"瞑想"を行っていた。

脳の報酬系を直接刺激する覚醒剤とは違い、ハーブによるトリップには技術が必要だ。
煙を吸えば誰でもいつでも簡単にハッピーになれるわけではない。
失敗すれば猛烈な吐き気や恐ろしい幻覚、絶望感や希死念慮に支配される、いわゆるバッドトリップも起こり得る。
トリップを実行するにあたって、使用するハーブの性質や特徴をしっかり理解し適切な使い方をしなければならない。

向精神性のハーブは、その生理作用によって3つの分類に分けることができる。
アドレナリンを増幅させて多幸感を得たり身体が元気になったと錯覚させる『アッパー』。
逆に精神の緊張をほぐし、極度のリラックス状態を創り出す『ダウナー』。
そして脳内の神経伝達をかき乱すことで楽しい幻覚を見ることができる『サイケデリック』。

いずれのハーブにも言えることは、ハーブの効果は『気持ちを増幅させる』ということ。
つまり、トリップの結果はその時の精神状態に強く影響を受けるのだ。

憂鬱で悲しい気持ちのときにアッパー系のハーブを炊いても、元気になるわけではない。
むしろ悲しみを増幅してしまって、極度の絶望や自己嫌悪、虚脱感に襲われることになる。

したがって、どのようなトリップを行いたいかを事前に明確にして、然るべき準備を整えておく必要がある。
たとえば楽しいトリップをしたいなら、明るく笑える映画や本を楽しんだ余韻の残るうちに。
リラックスして癒やされたいなら、ヒーリング効果のある音楽を流してソファーにゆったりと腰掛けながら。
トランスを通して天啓やひらめきを得たいなら、学術書や聖書などを精読することも有効だ。

こうしたトリップの為の『セッティング』の出来次第で、トリップの満足度は大きく左右されると言って良い。
だから経験豊富なトリッパーほど、同時に自分の精神を的確に把握し対処するメンタルケアの手腕も兼ね備えているのだ。

加えて、ハーブ自体の質も重要である。
混ぜものの多い粗悪品は、分量のかさ増しのために何を加えているかわかったものではない。
一定の純度を満たしたものを使わないと、必要な薬効を得られずに吸い続けて一酸化炭素中毒を起こすおそれもある。

ハーブを購入する際は、きちんと相場を確認し、実績のある売人を探して取引する必要がある。
極端に低価格でたたき売りされているハーブは、十中八九大半が不純物で構成されていると見ていいだろう。
ハーブの質を見極める目利きのセンスや、信頼できる売人とのコネクションも養わなければならない。

セーラが用いるのは大地の魔法で促成栽培した自家製ハーブだ。
この手の魔法製ハーブやドラッグは、メトロポリスでは特段珍しいものでもない。
大半は違法だが、セーラのものを始めとして法規制されていないものもある。

化学薬品とは異なり、魔法薬は既存の薬物類型に当てはめることが難しい。
これは魔法という能力自体に言えることだが、同じ呪文を唱えても、術者の資質によって効果は大きく変わるためだ。
モグリを含めればメトロポリスに何万人いるとも知れない魔法使いを全て当局が把握することなどできるはずもなく、
次から次へと生み出されるオリジナルの薬物に法規制が追いついていないというのが現状である。

181 :山元 :2019/01/06(日) 02:40:51.88 ID:DeXN+Nn8.net
今日の体調に合わせて自家調合したハーブがドンピシャでキマり、視界が極彩色に染まりつつある頃、
セーラだけ居る部屋に、突然彼女のものではない2つの声が響いた。

『I hate white human! Let's genocide in the metropoliz!』
『地脈にゴミを不法投棄しないで欲しいッピ!――とケツァルは言っている。
 私も同感だよレディ。地中の微生物が分解できないものは大地の滋養にもならない』

いずれもまるで"地の底から轟く"ような、低く渋みのある声だ。
彼ら、ケツァルとコアトルは、セーラと契約する古代の太陽神である。
セーラは仰向けに転がりながら、姿のない声に答えた。

「それって昼間のこと?不法投棄じゃないよぉ、ケッちゃんコアちゃん。あれは神様への貢物だよ」

『I like exotic beautiful girl. My sum is so big』
『貢物ならまた生贄の新鮮な心臓が良いッピ!――とケツァルは言っている。
 我が半身ながら度し難い趣味だ。生物の臓器など、蛋白質と水分、僅かなミネラルの塊でしかない。
 供物とするなら貴金属を捧げるべきだろう。同重量の金塊を要求したいところだ』

「絶対金の方が高いよぉ……心臓ならそのへんにたくさん歩いてるもん」

『だが、違法だ』

「だよね☆違法はダメだよ」

そのとき、ベッドの上に放り出していた携帯端末が電子音をかき鳴らした。
いい感じにキマっていたトリップを中断されたセーラは唇を尖らせながらそれを手繰り寄せる。
そして表示された文面を眺めて、小さく笑ってソファから飛び起きた。

「やったねケっちゃん!供物が穫れるよ!コアちゃん、準備して!」

『What the fuck!』
『了解だッピ!魔法少女に変身するッピ!――とケツァルは言っている。
 私も万端だレディ。我が写身に契約の口づけを』

「いっくよー!リリカル・ケミカル・サイケデリック☆フォームチェンジ!
 古代文明の太陽神よ、この手に悪をメッする力を!」

たった今考えたような雑な口上を述べながら、セーラは机の引き出しを開けた。
そこに安置されていたのは、鷲をかたどったシンボルが特徴的な古びたパイプ。
彼女は火皿に細かく裁断した何らかの葉を詰め、親指で表面を均す。
そして吸口を加え、マッチで火皿の中身に火を点けた。

燃焼した葉から抽出された薬効成分が煙に乗って肺に届き、粘膜から吸収される。
同時、セーラの身体が目を焼かんばかりの眩い光に包まれた。
光が収まったとき、そこに立っているのはもはやセーラ・山元ではないッ!

182 :山元 :2019/01/06(日) 02:41:31.17 ID:DeXN+Nn8.net
鷲の羽根を意匠としてふんだんにあしらった、色鮮やかな織物の衣装!
古の神々をモチーフにした、石製の仮面!
身の丈ほどの巨大な木の板に、黒曜石の破片を散りばめた剣!

太陽神ケツァルコアトルとの契約によってこの地に降り立った、神罰の地上代行者!
そして、メトロポリスを悪の手から守る正義の化身、ヒーロー!!
その名も――魔法少女テスカ☆トリポカ!!!

「コアちゃん、現場は?」

『アウターストリートとの境界にかかる可動橋だ。既に橋は封鎖し、ヴィランを追い込んでいるらしい。
 現場では既にヒーローが戦闘中。第一交戦者はリジェネレイターか、相変わらずフットワークが軽いな』

「内地側かぁ。じゃあすぐ駆けつけられるね!行くよっ『レイラインステップ』!」

自宅二階の自室の窓から、テスカは地面めがけて飛び降りる。
よく手入れされた芝生に彼女の身体が直撃するその刹那、地面が突如として割れた。
テスカは地割れの中に飲み込まれ、やはり何事もなかったかのように地面は元通りになった。

大地に小さな地割れを発生させ、地中を走る魔力の流れ"地脈"を開く魔法『レイラインアクセス』。
そして、地脈に潜り、その流れに乗ることで地続きの場所へ一瞬で移動する魔法『レイラインステップ』。
魔法少女となった今のテスカなら、一度に2kmの距離を跳躍することも可能だ。
この広いメトロポリスでヒーロー活動を続けるうえで不可欠とも言える魔法である。

端末に綴られていたのは、彼女が所属するヒーロー協会からの救援要請。
今宵もまた、心を邪悪に染めた者達が暴虐を奮っている。
古代の神に見初められ、正義にその身を焦がす……魔法少女の時間だ。



183 :山元 :2019/01/06(日) 02:42:11.15 ID:DeXN+Nn8.net


184 :山元 :2019/01/06(日) 02:42:26.26 ID:DeXN+Nn8.net
協会所属のヒーローには大別して2つの種類がある。
身分や能力、改造仕様表などを明かし、協会の正会員としてヒーロー活動にあたる者。
もうひとつは、"ヒーローとしての姿"だけを公開し、正体を隠して活動している者。

テスカは後者だ。
如何に人手不足のヒーロー協会であっても、未成年にヴィランとの戦闘行為を依頼するわけにはいかない。
法的な問題はもちろんのこと、何よりも世論がそれを許すはずもない。

一方で、得体の知れない流れの異能者やモグリの魔法使いにまで捜査逮捕権を与えなければならないほど、
治安維持のための人材が足りていないというのも事実だ。
毎晩のようにそこかしこで多発する超常犯罪に、対応できるヒーローがあまりにも不足している。
超常の能力を手にして、それを迷わず公の福祉に使えるような人間は、そう多くはないのだ。

敵性名称『ファイアスターター』とヒーロー『ザ・フューズ』の睨み合いから少し離れた位置。
土を操る異能者『ロックバイン』は、隆起させた石柱を展開し籠城していた。

金品強奪、政治的思想、自己表現に破壊衝動など、ヴィランが暴れる理由はさまざまだ。
しかし、ロックバインはその行動から目的が読めない。短絡的な犯行ではないということか。
狙っているのは時間稼ぎか、あるいはもっと遠大なる構想の上か。
いずれにせよ、彼が今やっているのは公共物の形状を勝手に変える器物損壊にほかならない。

「そこまでだよっ☆」

ロックバインの頭上、架橋の鉄骨に立つ一人の影!
表情の窺えない石仮面の下では、決然とした意志の炎がめらめらと燃えているッッ!!

「心に悪をもたらす月は、今宵も高く空の上。お天道様の光届かぬ、夜は優しくない世界。
 枕を濡らす星屑拭って、優しい夢を届けに参上!」

おお、見よ!鉄骨からロックバインを見下ろす影は、まさに夜駆ける正義の使徒!

「魔法少女テスカ☆トリポカ、法定速度で現着完了!
 ――違法行為は許しません!」

185 :山元 :2019/01/06(日) 02:43:09.73 ID:DeXN+Nn8.net
その手に掲げた木剣を突きつけるテスカを、ロックバインは一度見上げて、視線を前方に戻した。

「なんか言ってよぉ!!!」

しかしロックバインとて、ヒーローの闖入を無視できるわけではあるまい。
それでもなおこちらを見ないのは、彼が既に別のヒーローと戦闘中だからだ。

ヒーロー名『リジェネレイター』。
どれだけ酷い損傷を負っても自己修復して復帰する、不死身のヒーローだ。
……本当に不死身かどうかは、中身の顔が見えない以上、断言できないが。

『this is a pen』
『テスカちゃん、リジェネレイターを助けるっピ!――とケツァルは言っている』

テスカはヒーロー活動の現場で何度かリジェネレイターと協働したことがある。
その時の記憶を思い出すに、耐久面はともかくそこまで高火力な戦闘者ではなかったはずだ。
現に、硬質な岩肌と石柱で身を護るロックバイン相手に、攻め手を欠いているように見える。

「おっけーコアちゃん、あのヴィランの情報教えて!」

『敵性名称ロックバイン。土壌操作能力を持つ異能者だ。
 翻っては、コンクリートのような骨材に砂粒を使用している構造物も自在に操ることができる』

「うええ、地属性!モロ被りだよぉ!」

『相性は悪くあるまい。奴は土を操る能力者だが、こちらには大地を司る神がついている。
 不満ならあちらの改造人間、ファイアスターターとの交戦を勧めるが、どうだねレディ?』

「うーんでもあっちはあっちで大人のお姉さん同士で盛り上がってるから入りづらいよぉ。
 がんばえーお姉さん!心臓がまだ生身だったら残しといてねっ!」

とはいえ、改造人間がまっさきに改造する臓器は脳か心臓だ。
ほとんどの改造パーツは常人の血液では駆動しないし、専用の循環系を構築したほうが手っ取り早いからだ。

「よし!リジェネレイターの助太刀をしよう!
 ケっちゃんコアちゃん、力を貸して!『大地の結晶』!」

鉄骨を蹴って宙に身を投げたテスカは、飛び降りざまに手に持った木剣を地面に叩きつけた。
瞬間、黒曜石の棘が地面から無数に隆起し、ロックバインの石柱を押し上げてその場から排除。
砕け散る大量の黒曜石が塞いだ視界を縫うように、ロックバインの背後へ回った。

186 :山元 :2019/01/06(日) 02:43:26.41 ID:DeXN+Nn8.net
「ちぇすとぉーーーっ☆」

彼女が振るう巨大な木剣は、黒曜石の刃を散りばめた古代アステカの剣『マクアフティル』。
医療用のメスより鋭利な黒曜石の断片は、人間の頭部程度容易く切断する斬れ味を誇る。
その致死の一撃を、ロックバインの無防備な首筋めがけて叩きつけた。
金管楽器をぶちまけるような音と共に、マクアフティルの刃が全て砕け散った。

『oh...that's light』
「ありゃっ」

当然のようにロックバインは無傷。岩か何かを皮膚表面に散りばめているのだ。
テスカに対する彼の無防備は、他ならぬ自身の防御力への信頼の現れであった。

「あうぅ……やっぱ硬いよぉ……」

『斬撃に対する無類の耐性か。ザ・フューズがこれを相手にしなかった理由が明白だな。
 さてレディ、以前講義した対装甲目標の基本戦術は覚えているかね?』

「覚えてないよ!」

テスカ☆トリポカの戦闘用魔法は、マグマが冷え固まってできる黒曜石の生成と操作だ。
射出すれば恐るべき斬れ味の鏃と化す黒曜石だが、硬い相手にはいささか相性が悪い。
今の攻防でロックバインに与えられた損害は、石柱の排除と皮膚表面をわずかに傷つけただけ。

「テスカ子供だから難しいことはわかんないけど、これだけは知ってるよ。
 犯罪者は頭を死ぬまで殴り続けると……死ぬ☆」

瞬間、ロックバインの頭部が爆発した。
先刻叩きつけたマフアフティルから剥離し、ロックバインの皮膚表面に食い込んだ黒曜石の破片。
そこに眠るマグマのエネルギーを目覚めさせ、起爆したのだ。

「行くよ!リジェネレイター!!」

ロックバインは致命傷にこそならなかったものの、至近距離で爆発をうけて大きくよろめく。
強引にこじ開けた隙をねじ込むように、テスカはマクアフティルを再びロックバインの頭部に叩きつけた。

187 :山元 :2019/01/06(日) 02:43:41.81 ID:DeXN+Nn8.net
【ロックバインと交戦。食い込ませた黒曜石を起爆しダメージを与える】

188 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:10:12.74 ID:k5lnXp7n.net
ふとした時にヒーローになる前の事を時々思い出す。
私にとって大事な記憶。

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

一番最初に覚えてるのは研究室と思われる場所で違法薬物で気が狂ったような実験動物達の声と失敗した改造人間達の残骸。
そして私達を作ったと思われる研究者の憎悪の目だった。

「お前達は俺の最高傑作だ!」

潜入に特化する為限りなく人間の子供に似せ、あらゆる検査にまるで生身の体のように写り感じる機械の体。
室内戦を想定された近距離特化の兵装と体重相応の強靭なパワーとスピード。
長期の潜入に耐えるため直接的な電力を必要としない食事を利用した発電方法。
なんでもありのメトロポリスでも"Killing-Doll"達は高水準の技術力で造られていた。
体重だけがネックであったが能力次第で自分の体が変わるこの街では些細な問題だった。

「ヒーロー達よ覚悟するのだ・・・必ずお前らに・・・」

男が独り言をブツブツと呟く
なんでこの人はヒーローがこんなに憎いのだろうか。
この時の私にはそんな事を考えることもできなかったが。

「子供達よ・・・俺のかわいい子供達・・・」

ただの機械に語り続ける男の狂気を今でもはっきり覚えている。
科学者が持つべき壮大な夢ではなくただただヒーローを効率よく殺す事しか考えていない狂気を。
これだけの技術力があれば表の世界でもやっていけただろうになぜその生き方ができないのか。

「失礼します。博士作戦日程が決まりましたので作戦室に」

部屋に入ってきたヴィランの兵士が男に告げる。

「やっと決まったのか!あぁ!俺の子供達がヒーローを・・・」

男が作戦室にダッシュで向って行くのを見届けたヴィランの兵士は部屋を見通し次の作戦で使われるであろう私達を見つけて見つめる。

「おぞましい」

当たり前の反応だった。
殺すためだけに人間そっくりに作られた私達は味方からも畏怖される物であった。

189 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:11:40.04 ID:k5lnXp7n.net
その後私達はヴィランの施設に捕まって改造された哀れな子供達という体でヒーロー協会に送り込まれる事になった。

「君達大丈夫か!?」

その場にいた足が着かぬよう組織とはまったく無関係のザコヴィラン達を倒し罠とも気づかず私達に手を伸ばすヒーロー達に救助された。
ヒーロー達は私達を保護してすぐヒーロー協会の病院も兼ねている"ヒーロー総合学院”に連れて行った。
"ヒーロー総合学院”は現役ヒーロー達の拠点でありながら素質ある異能力者、つまりヒーローの卵の子供達を育成し、そしてそれに必要な医療施設が合体した当時最大の施設であった。
現役ヒーローから学べる上になにか問題が起きてもヒーローが駐屯しているためヒーローの卵達にとって最も安全な場所と思われていた。

「身体検査完了・・・特に異常は見当たらないね・・・体重が気がかりではあるけども」

診査結果を見ながら医者がそう告げる。
直接中を見なければあらゆる検査に生身の体で写る体は思惑通りに事を運ばせてくれた。
ヒーロー協会も怪しいとは思いつつも未成年と思われる少年少女の体を異常が見つからない以上どうこうする訳にもいかず精密検査はしたもののそれ以上はしなかった。

「建物を自由に探索していいよ!ただし外にはでないように!」

当時のヒーロー協会はテロに対する警戒度が低かった。
いやなにが起きても即座に鎮圧できるという余裕からであった。
施設にきてから一週間ほどで私達を施設内限定という条件で自由にさせてくれた。
当初の予定通り中の構造を把握するため私達は情報共有しつつ探索する事にした。

190 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:13:07.52 ID:k5lnXp7n.net
「ヒーロー訓練場・・・デスカ」

中に入ってみるとヒーローの卵達がヒーローになろうと必死に能力の練習をしている所だった。
一応データを押さえておこうと思ったその時大人のヒーローが私に気づく。

「えっと君はたしか施設から救助された・・・」

怪しまれるとまずい。
思考回路をフルで動かしていると子供達が一人また一人と回りに集まってくる。

「こんにちわ!貴方の名前は?」

「名前!?・・・名前ハアリマセン・・・一応施設デハ14番トヨバレテイマシタ」

突然の挨拶と質問にエラーがでそうだったがなんとか冷静に答える。
純粋な子供達のストレートな目線に負けそうになる。

「じゃあえーとえーと・・・じゃあ!フォーティーンね!」

とにかく困惑してる私を置いて子供達が勝手に盛り上がる。
先生は困り顔だが子供達はものすごく楽しそうだった。

「フォーティーン?モシカシテソレハ私ノコトデショウカ?」

「そう14番だからフォーティーン!」

なんて単純なのだろうか。
そしてなんで私に名前を付けるのだろうか。

「もうすぐ私達お昼休みなの!だからいっしょに食堂に行きましょう?」

あまりに慣れなれしすぎではないか。
しかし生徒達やこの施設の情報を得る絶好のチャンスであったのでついていく事にした。
子供達は色んな情報を教えてくれた。
大抵はどうでもいい先生の愚痴や子供達の性格やそんなものだったが。
自分達は6歳からここにいる事と成人して正式なヒーローになるまでこの施設の外には出られない事を教えてくれた。

「アナタ達ハ親に会エナクテ寂シクナイノデスカ?」

寂しくないわけない、と子供達はみな口を揃える親の所に帰りたいと。
でもヒーローになって困ってる人達を助けたいのだとまっすぐな目で言う。

「困ッタラ・・・ワタシモ助ケテクレマスカ?」

ありえない質問をする。
本来する必要のない質問と私が困るような自体になったら子供のこの子達ではどうすることもできないだろうから。

「もちろん!だって私達もうお友達でしょう?なら当然だわ!」

邪悪な目を見続けてきた私にはとっても眩しくて。
自分でもよくわからない感情と気分に支配される。

「さあご飯も食べ終わったし行きましょ!午後の訓練終わったら貴方の事も教えて頂戴?」

こうして私に始めてのお友達が沢山できたのでした。

191 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:14:02.79 ID:k5lnXp7n.net
子供達は私にとってもよくしてくれました。
気づいたら私の方から毎日遊びに行く様になりました。
その日も私はヒーロー訓練場の隅っこで子供達が訓練を終えるのをまっていました。

「フォーティーン待った!?」

「イイエ全然待ッテマセンヨ!ハイコレ飲ミ物デス」

「ありがとう!」

一ヶ月間もはや毎日の日課のように子供達の世話係をしていました。
でもその日常は爆発音によって終わりを告げる事になりました。

「緊急事態発生!緊急事態発生!正門で爆発を確認!複数のヴィランが施設内に突入しようとしてる模様!職員は直ちにヴィランの掃討に当たってください!」

私は思い出しました、いえ忘れようとしていたのかもしれません、私達がここにいる理由を。
正面に現れたヴィラン達は間違いなく陽動で本命は私達である事を瞬時に理解しました。

「君達はここにいて!大丈夫!ヴィランなんてあっという間にノックアウトさ!」

不安に支配されそうな子供達を勇気付けるために先生が子供達に言って部屋を出て行きました。

192 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:15:03.08 ID:k5lnXp7n.net
そして先生が部屋から出て行ったしばらく後に巨大な敷地内全体に聞こえるレベルの音が聞こえてきました。

「なんなのこの音・・・!?頭が割れる・・・!?」

その時私の体には子供達とは別の異常が発生しました。

「さあ目覚めよ私の子供達!殺しの時間だ」

私達にしか聞こえない音でそう告げる研究者の男の言葉。
その音をきっかけに施設内から銃声・爆発音・悲鳴が鳴り始めました。
他の"Killing-Doll"達が起動したのでしょう、私もこの子達を早く始末しなくては。

「アタックプログラム;ラピットファイア起動」

自分の意思で右手を変形しました。
当然です私はこの施設にヒーロー達を殺しに来たのですから。

「フォーティーン・・・?どうしたの・・・?え・・・その右手・・・」

子供達が変形した私の右手を見て驚きます。
ですがお構いなしに銃を子供達に向けます、サヨウナラ。

「ジットシテイレバ危害ハ加エマセン」

どうして?
なぜ自分は射殺対象を保護するような真似を?
早く射殺しなくては、役目なのだから。
理解不能理解不能直ちに射殺を開始しなくては撃ちたい!撃ちたくない!なぜ?ナゼ?エラー診断開始エラーナシ!ナシ!。

「フォーティーン・・・?」

一人の子供が私に触ろうとする。

「サワルナ!!」

子供を突き飛ばす、加減したとはいえ子供には十分なダメージだったでしょう。

「ゴメンナサイ!謝ル必要ハナイ!私ハオ前ラヲ殺シニキタノダカラ!ゴメンナサイ!」

支離滅裂な発言を繰り返しながら私は地面に倒れました。
吹き飛ばされた子供がよろよろ立ち上がり私に抱きつきます。

「大丈夫安心して?私達は敵じゃないよ・・・だから安心して!ね、怖くない怖くないよ」

震えながら少女は私にいう。
外から聞こえる爆音や悲鳴に自分も限界なのに、敵である私を、突き飛ばしたこの私を落ち着かせようとしてくれていました。

「私ハ・・・ゴメンナサイ・・・ワタシハ・・・」

「フォーティーンはなにがあっても友達だよ!だから大丈夫!私達を信じて?」

193 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:15:59.78 ID:k5lnXp7n.net
その時後ろの扉が勢いよく開きました。

「抹殺対象確認」

返り血と思われる血で真っ赤に染まったKilling-Doll達が入ってきました。
どうやらヒーロー達は正面のヴィラン達に精一杯で裏の私達にはまだ対処できていないようでした。

「14番ドウシテテコズッテイル?理解不能」

「不必要ナ機体ハイラナイ速ヤカニ処理推奨」

そういって私に銃を向けて発射しようとしました。

「ファイアボール!」

子供達の一人がKilling-Dollを攻撃しました。
私に当たるはずの弾丸は私の横を掠めていきました。

「理解不能!子供ガナゼ14番ヲ守ル?」

「モウイイ!全員デマトメテ攻撃開始!」

子供達が危ない!命令なんかどうでもいい!子供達を助けてほしい!だれか!
だれか?違う!今この場には私しかいない!
私は私だ!例え生みの親だろうと強制される必要はない!

「私ノ友達ニ触レルナ!」

そこからは無我夢中でヒーロー達が来るまでひたすら戦いました。
殆ど覚えていませんが本来のスペックを遥かに超えた力を発揮できていました。
そして私は後から来たヒーロー達に取り押さえられました。

194 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:17:19.96 ID:k5lnXp7n.net
次に気づいた時は椅子に拘束されてヒーロー協会のお偉いさんと思われる男の目の前でした。
黙って解体すればいいのにわざわざ拘束させてまで面会する意味はあるのでしょうか。
でも当時の私はそんなことよりも子供達が心配でした。

「解体サレル前ニ聞キタイノデスガ子供達ハ無事デショウカ?」

「こいつは驚いた!自分の心配よりまず子供の心配かい?」

「先ニシツモンニ答エテクダサイ・・・」

「おっとヘソ曲げないでくれよ・・・子供達は無事さ、あんたのおかげでな」

ヒーロー協会の人間がそういうならもう何も思い残す事はなかった。

「ヨカッタ・・・コレデ安心シテ解体サレル事ガデキマス」

「あーその事なんだがな・・・とりあえずコレをみてくれ」

男がモニターの電源をオンにすると施設にいた子供達が写った映像が流れ始める

【「お願いしますフォーティーンを殺さないでください!」】

子供達が私に助けられた事、一ヶ月友達としていっしょに暮らしていた事。
友達を殺さないでほしいという事を彼女達なりに訴える内容だった。

「理解デキマセン・・・ナンデ・・・ナンデコンナ・・・」

男が画面を切り替えると今度はニュースが流れ始める。
【大手柄!子供達を命がけで守った心優しき殺戮ロボット!敵か味方かヒーロー協会は沈黙】
理解が追いつかない!頭が混乱している中、男が言葉を続ける。

「悪いがここに連れてくる前にあんたの頭の記憶データを全て見さしてもらった」

男はさらに言葉を続ける。

「あんたの無実は証明された、あんたはだれも殺してないって事がな」

「ソレデモ・・・私ハ・・・貴方達ヲダマシテ」

「だがそれはアンタの意思でそうしたわけじゃねえ」

でもと続けそうになった私の言葉を男が遮る。

「たしかに今のあんたの信用は0に近い、いつ裏切るかわからねえからな・・・だがこの街は実力主義だ、だからもしアンタがこの街からヴィランを排除し続けて実績を上げれば・・・あんたを悪く言う奴はいなくなる」

男は不敵の笑みを浮かべる

「そこで、だ・・・あんたヒーローになってみないか?」

答えは考えるまでもなかった。
目からなにかが溢れてくる。

「おいおい最近のロボットは泣く機能もついてんのか!?これじゃおじさんが苛めたみたいじゃないか!やめてくれよ本当に!」

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

195 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:17:53.54 ID:k5lnXp7n.net
規制回避

196 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:18:48.44 ID:k5lnXp7n.net
そして3年後の現在。
No14は毎日のように現れるヴィランを捕まえて回っていた。
この日も警察にヴィラン達の身柄を渡し、一仕事終え喫茶店に入りNo14は牛乳を飲み座りながらパラパラと本をめくっていた。

「〔だれでも強くなれる一流プロヒーローが教える格闘術〕・・・ナカナカ悪クナイデスネ!コレカラモ、格闘術ハツカッテイキマショウ」

No14はあらゆる人間の事を学習し実践するのが好きだった。
この喫茶店で飲むことも〔一流ヒーローは仕事終わりに余裕を持って酒を飲む〕
という偏っている上に間違えていそうな人間知識からの行動であったが本人は割りと気に入っていた。
ちなみに牛乳なのは酒が入ると人間で言う所の(酔い)に似たエラーを起こしてしまうからである。

「ヒーローハ余裕ヲ持ッテ行動スル!基本デスネ!ソノ点私ハ完璧トイエルデショウ!」

周りの一般人に見られていると知らずに高い椅子のせいで地面に届かない足をぶらつかせ渾身のドヤ顔を披露していた。

「かわいい・・・」「頭なでても怒られないかな・・・?」「なんか椅子ミシミシ音してね?」

特にヒーロー人気をだそうと思っていないNo14の自然な言動が人気の理由だった。
ヒーロー人気とヴィラン退治の功績のおかげで3年経って彼女の悪口を言うものは殆どいなくなっていた。
そんな至福の時間を遮る様にヒーロー協会からの無線が入った。

>「メトロポリスのメインストリートに改造人間タイプのヴィランが出現した。
ヴィランはアウターストリート目掛けて時速300キロで走行しているが可動橋を封鎖して進路を塞ぐ。
ヒーロー各員は直ちに現場に急行してヴィランの制圧にあたってほしい。以上。」

時速300キロ?何かの聞き間違いかと思える無線の内容に少し戸惑う。
救援要請が入るという事は大物もしくは面倒な能力なのは間違いない、という事は時速300キロは本当の事なのだろう。
これはデカイ案件になると確信したNo14は本をしまい、牛乳を飲み干し店員にお礼をしてお金を置いて店を出た。
その時丁度空からヒーロー協会に帰還するために使う予定だった飛行型移動用ドローンがきたので、掴んで移動先をメトロポリスのメインストリートに設定する。

「大物ヴィランノツラヲ、見ニイクトシマショウ!」

手柄を立ててまた子供達に武勇伝を聞かせてあげよう。
そう思いながら自分の首の後ろ側にドローンに掴まれる為の専用パーツを装着し、ドローン掴まれクレーンゲームでアームに掴まれた景品のように空に消えていった。

197 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:20:45.89 ID:k5lnXp7n.net
「アレデスネ」

No14は橋の上でヒーロー達とヴィラン達を発見する。
どうやらもう交戦しているようだった。
ヒーロー協会との無線回線を開き味方と敵の情報連絡をする。

「ピピピ・・・データ確認・・・リジェネレーター・ザ・フューズ・テスカトリポカを確認シマシタ、スデニ交戦シテル模様デス・・・報告ニナイヴィラント思ワシキ人影が確認デキマス」

確認するとヴィランと思われる人影は2名。
無線では一人しかいないような口ぶりだったのに二人いるではないか。
もう少し情報連絡をどうにかならないものか、と無線を切った後に少し心の中でぐちる。
まだまだ相当な高さがあったがこれ以上ドローンの速度で降下すれば気づかれて攻撃される恐れがある。
のでNo14は飛び降りることにした。

「デハヴィラン退治トイキマショウ!」

首のドローンの連結用パーツを外し降下を開始する。
敵の強さが未知数の為落下途中で武装することにした。

「アタックプログラム起動:ラピッドファイア」

右手を銃に変形させ左手を下にして地面衝突に備えた。
大きな音と共に着地しそして銃を前に着きだしポーズを決めその場にいる全員に聞こえるようにできる限りな大きな声で。

「ワタシハヒーローNo14!私ガキタカラニハモウ問題アリマセン!ヴィランドモ!ソロソロオネンネノ時間ダゼベイビー!」

周りが静まり返った気がする。
自分で考えた最高にかっこいい登場だったのに。
もしかしたらかっこよすぎて言葉がでないのかも!完璧っていうのは辛いですね。

「いい加減にして!今私は機嫌が悪いの!」

ヒーローが設置したと思われるエクトプラズムの刃の中心にいる、自分よりロボットな見た目をした真っ赤なボディの改造人間が叫ぶ。
立ち位置的にトラップの刃を設置したのはのはザ・フューズだろうか。

「オヤ?同ジロボット仲間トシテ先ニ挨拶スルベキデシタネ!コンニチワ!イエ、コンバンワデショウカ?」

「私はロボットじゃないわ!」

「私ガ人間ダト言ッタホウガマダ信用サレマスヨ」

ヴィランのイラつきが見て取れる。
逆上してなにかされる前にこちらから攻撃する事にした。

198 :K-doll No14 :2019/01/09(水) 14:22:04.77 ID:k5lnXp7n.net
「ムム・・・流石ヴィランダケアッテ逃ゲルノガウマイデスネ!」

トラップの刃に当たらないように銃を連射する。
元々室内戦用の精度の悪い銃であったがヒーロー協会の技術サポートと本人の訓練のおかげで中距離をこなせるまでの精度になっていた。
高速で動くファイアスターターに当てるのは中々難しい、がトラップの影響で本気を出せていないのか動きがぎこちない。
このまま続けていればいつか命中するのは確実であった。

「弾切レヲ期待シテイルナラ無駄デスヨ!コノ銃ニリロードハ必要アリマセン!」

本当の事を言えばあまり長時間の射撃は電力も熱も半端ないのでしたくはないが。
心の中で若干焦りつつも確実に追い詰めていく。
素早い動きで翻弄していたファイアスターターだったが脚部装甲に一発命中する。
ヒビのような亀裂がさらに大きくなる。

「素直ニ投降ヲ推奨シマス!アナタデハ私達ニハカテマセン!」

「だれがアンタみたいなガキに・・・!」

ファイアスターターはNo14から距離を取りつつ加速する。
恐らく強引にトラップ外にでてもう一人のヴィランと合流するつもりだろう。
しかしその行動は想定内であった。

「アタックプログラム解除」

ファイアスターターの動きから推測するに、トラップの威力が未知数の為か最大限の警戒をしてると思われる。
ならトラップを破壊しながらの強行突破は考えにくい。
やるとすればトラップの層が比較的薄い部分からの脱出しかない。
No14は武装を解除し人間ではありえないような速度で走り出す。
通常時ならスピードでは絶対勝てないだろう、だが行き先が限定されていて尚且つトラップを避ける為最大スピードは出さずさらに無理な体勢で突っ込んでくるはず。
そして予想通りトラップの隙間を突破し予想通りの勢いで予想通り無理な体勢で飛び出してきたファイアスターターを脚を掴む。

「驚キマシタ?」

脚を捕まれたファイアスターターは少し怯んだが勢いそのままに振りほどこうと反撃を試みる。
しかしNo14は隙を見逃さず両手で脚を掴んだままその場で高速回転する。

「発射!」

小柄な見た目からは想像できないほどの力でファイアスターターを振り回しながら狙いを定めエクトプラズムの刃のトラップ目掛けて投げる。
ファイアスターターは空中で刃に当たらないように体を捻りながら吹き飛んでいく。
しかしNo14の攻撃はこれだけでは終わらない。

「アタックプログラム:ラピットファイア」

投げた後即座に右手を変形させ銃で追撃する。
刃を避けるのが精一杯のファイアスターターに銃弾が連続命中する。
弾丸は装甲を確実に削っていく、が決定打にはならなかった。
エクトプラズムの刃の中心に着地し立ち上がったファイアスターターはこちらを睨み付ける。
装甲の所々が剥げ綺麗な真っ赤なボディは見る影もなかった。

「殺してやるわ・・・絶対に」

No14とザ・フューズに対する殺意をむき出しにする。

「ヤット人間ラシクナリマシタネ?」

【ファイアスターターと戦闘 銃弾が複数命中、その後一度トラップから脱出されるもトラップ内に投げ返す】

199 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:37:30.33 ID:d01qxtaz.net
二人のヴィランに睨まれながら、ヒーローは膠着状態の維持に努めた。
如何に装甲服を着込んでいると言えど二人のヴィランから同時攻撃を浴びれば無傷では済まない。
道路で高速移動するファイアスターターを見かけて慌てて追跡した結果、まさかこんな事になろうとは。
不意に腕時計型端末が明滅する。オービットが機械音声を発し、リジェネレイターに忠告した。

「気をつけろ。特にファイアスターターって奴のスピードは一筋縄じゃ行かないぞ。
 それにしても……奴は一体全体何をそんなに急いでるんだ?」

「まずはこの状況を切り抜けるのが先だ……!」

「オーケーオーケー。やるぞ、リジェネレイター!」

オービットの機械音声に合わせて一気に岩肌の男ロックバインとの距離を詰める。
リジェネレイターのスーツには各種機能が搭載されており、パワーアシスト機能も例外ではない。
身体能力補正を効かせつつ、半身を捻らせて右腕を振りかぶり、腹部目掛けて掌底を放つが――。
突如地面が隆起して円錐状の針となり、リジェネレイターに襲い掛かる。

「うおぉっと!!?躱せリジェネレイター!」

「もう躱した……!」

寸での所で背後に跳躍し、隆起した円錐を回避。
そのままバックステップで距離を開けると、開いた空間を炎が襲った。
仮に油断してその場に立ち止まっていれば火傷では済まなかっただろう。

「うひゃ〜危なかった。お前攻めあぐねてないか?
 あいつら近付かせる気ゼロだぜ」

六代目リジェネレイター、神籬明治の戦闘技術はヒーロー基準で可もなく不可もない。
彼がヒーロー協会に目をつけられたのは生まれ持って備わった共感覚能力のお陰だった。
共感覚――エンパスとも呼ばれるその能力は、他者の感情を読み取る超能力だ。

即ち喜怒哀楽、悪意といったものを敏感に察知できる事。これが神籬の生まれ持った才能である。
この能力を利用すれば遠く離れた人の悪意や恐怖をいち早く察知して迅速に犯罪に対処する事も、
敵の悪意、敵意を"読み取って"素早く攻撃を躱すことができるのだ。

「リジェネレイター、今ヒーロー協会のデータベースにアクセスした。手短に伝えるぞ。
 奴は能力者で構成された非合法組織ミームの能力者で、能力は土壌操作の『テラキネシス』だ。
 理解不能。あいつが操ってたのめっさコンクリートなんですけど!」

200 :神籬明治 :2019/01/11(金) 22:38:11.90 ID:d01qxtaz.net
仮面の奥でもそもそとリジェネレイターが呟いた。

「恐らくコンクリートに含まれている砂利を操っているんだろう。
 そうすれば奴の出現の仕方も、攻撃の仕方にも説明がつく」

「なるほどね。そうか、あの岩肌は能力で土を身に纏ってるんだな。
 天然の鎧って訳か……随分お洒落なコーディネートですね!」

冗談を飛ばしながらも、オービットの機械製の頭脳はずっと戦況を分析していた。
結果、今の神籬の実力では劣勢を覆して二人を鎮圧するのは難しいという計算を弾き出した。
だからといって彼を一概に攻められはしない。擁護すればリジェネレイタースーツにも原因がある。
なにせこのリジェネレイタースーツversion1.0.6は携行性に優れる反面、全く武器に乏しいのだ。
他のヒーローに比べて完全にステゴロ仕様だから接近戦を仕掛け続ける他手段がない。

ならばここは少しでも時間を稼いで他のヒーロー達の救援を待つのが得策だ。
そして現れたのは四肢から爆炎を放ちながらこちらへ突っ込んでくるひとつの影。
人影は炎のヴィランに蹴りを浴びせて地面に着地した。

>「……なんだ。誰かと思えば、目立ちたがりの三流ヴィランか。来て損したかもな」

リジェネレイタースーツの仮面に内蔵されているセンサーを通じて援軍の姿を捉える。
黒いキャットスーツと真っ赤なボディスーツ、炎を模したドミノマスクといった出で立ち。
仮面のヘッドアップディスプレイが弾き出した判定は――

「――げ。悪徳ヒーローのザ・フューズじゃねぇか……」

オービットは顔を顰めた様な絶妙な機械音声を発して黙ってしまった。
界隈の端で戦い続けるかのリジェネレイターもザ・フューズの悪名は聞き及んでいる。
その出自もさる事ながら、未だに悪党とつるんで詐欺を働いているとか――。
その揉み消しを自身の能力を以て公然と働いているとか――。

とにかく黒い噂が絶えない悪徳ヒーローだった。
こうなってはヒーロー協会の審査基準が疑問視されるのも無理はない。
同業者の中にはザ・フューズを信用のできないヒーローとして蔑む者までいるという。

>「怪我したくないでしょ?どいてくれないかしら。手柄ならそっちにもいるわよ、ほら」

>「……なるほど。目立ちたがりのお前が、どうしても早くここから逃げたい。
> 何かは知らんが、なかなか重大な任務に就いてるようじゃないか、え?」

「ご理解頂けたようで何よりね。どいてくれるかしら?
 尻尾を巻いて帰るなら今の愚行、寛容な態度で許してあげる」

蹴りを食らったあたりを払う仕草をとってファイアスターターは余裕の表情を見せる。
速さに絶大な自信を持つ彼女は、戦闘においても同様の自信を持っていた。
彼女は時間の無駄を嫌うので言葉に偽りはない。
ザ・フューズにその意思がないことを見越して言っただけで。

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