2ちゃんねる ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

茨木敬くんの日常

1 :創る名無しに見る名無し:2020/05/06(水) 10:20:19 ID:71TaaVxA.net
主人公は茨木敬くん、33歳独身のヤクザです。
顔も身体も傷だらけで喧嘩もメチャメチャ強く、見た目は怖いけど心は優しい人です。
子供、女性、老人は絶対に殴ることが出来ず、スイーツが大好きです。
孤児院出身なので、特に身寄りのない人に対してはとっても優しいです。
そのくせお酒や辛いものも好きで、敵対する人をブッ殺したことも何度もあって、渋みが全身から滲み出ています。
そんな茨木くんの平凡な日常。さて、今日はどんなことが起こるのかな?

538 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 07:13:43 ID:0W9EfeO1.net
坂本魔あやはルール違反により失格。若月組の事務所へ連れて行かれた。

539 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 07:20:51 ID:42w9Q7Dx.net
次いで障害物競争が行われた。
ゴールはもちろん敵の親分、障害物となるのはその組のボディーガードである。
ただしどこの組も親分には影武者を立てた。

「いや。ウチは本物の俺が立つ」
迎良菊二郎親分が言った。

「親分! こんなんでタマとられたら洒落になりませんだ!」
「オラが代わりにゴールに立つだ! 親分は安全なところで……」

「バッカ野郎ッ!」
菊二郎親分が怒号した。
「お前らの誰が殺されても困るだろうがッ! 一番殺されそうにない俺に任せやがれ!」

540 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 07:23:44 ID:42w9Q7Dx.net
「ところでウチの選手はそいつらで大丈夫なのかい?」
菊二郎親分は茨木に聞いた。
「女二人とはよ」

「俺が出たいところだが、俺は足が遅いんだ」
茨木は答えた。
「それにコイツらに任せれば安心だ」

「まーかせなさい」
ヤーヤが胸を叩いた。

「するりとゴールへ辿り着いてみせるどす」
中條母の目が静かに燃えていた。

541 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 07:28:27 ID:42w9Q7Dx.net
対戦相手は京都の埜武謙組。
中條母の夫を暗殺し、京都の覇権を奪った憎むべき相手であった。

「修羅の道 血の花咲かせて みせましょう」
そう詠いながら、中條母は匕首を抜いた。

542 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 09:04:13 ID:Ih1u/RiX.net
埜武謙組のランナー二人は易々と障害物を排除しながら走った。
カタギだったなら間違いなくいたわられる立場だった老用心棒達は、紙のように吹っ飛ばされて行った。

「なんだ、この組。楽勝だぜ」

「ウンコしながらでも勝てるよな」

バカにしながらゴールを間近にした埜武謙組ランナー二人の前に、茨木敬が立ち塞がった。

543 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 09:06:44 ID:Ih1u/RiX.net
「アイツ倒せばゴールだぜ!」

駆け寄る埜武謙組ランナー達に茨木は焦りながら言った。

「ちょっと待て! 今、ご覧の通り、立ち小便中だ!」

544 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 09:08:29 ID:Ih1u/RiX.net
「イチバンとるぞっ、イエーイ!」
そう言いながらヤーヤが駆け出した。

「後ろは任せておくれやす」
中條母がそれに続く。

545 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 09:44:03 ID:Ih1u/RiX.net
屈強な埜武謙組の用心棒どもをヤーヤのカギ爪(ゴム製)が次々と猫にして行く。

中條母が神速の手捌きでそれにマタタビを与え、あっという間に倒して行った。

中條母「おまえらに怨みはない。私がとりたいのはただ1人、組長の埜武羅 謙次郎の首ぜよっ!」

546 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 22:34:11 ID:doxV2kXS.net
「おいおい、コイツ、戦いの最中に立ち小便してるぜ」
「コイツもウンコしながらでも勝てそうだな」

バカにしながら襲いかかって来るチンピラ二人に、茨木はぶっといチンポを向けると、気迫をぶっ放した。

「立ち小便中だって言ってるだろうが!!」

「ぐわあぁあっ!?」

チンピラ二人は吹っ飛んだ。

547 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 22:40:00 ID:doxV2kXS.net
優太率いる新飛島組の相手は本家飛島組だった。

選手として出場した優太は、楽々障害物を乗り越えると、ゴールに辿り着いた。

「誰だ、アンタ?」

「ぼぼぼぼぼくは知りましぇ〜ん!」

ゴールにいたのは組長である父親ではなく、油ぎった髪の長いオッサンだった。

「親父、どこよ?」

「しししし知りまっしぇ〜ん!」

「……まぁ、どーでもいいけどよ」
優太はオッサンをぶっ飛ばすと、くるりと背を向けた。

「これで俺達の勝ちだ。新飛島組改め、ウチが本家飛島組の看板、貰うぜ?」

548 :創る名無しに見る名無し:2020/06/02(火) 23:23:41.75 ID:uBWDRASg.net
『いい子にしてるから』

 クリスマスイブのこと。
「今年もぼうやにサンタさんは来てくれるかな」
「ぼく、いい子にしてるから。きっとサンタさんはきてくれるんだ」
ある親子がそんなやり取りをしていた。
その晩、日付は変わってクリスマス。
ぼうやの部屋に、煙とともにサンタが現れた。
サンタはそっと、プレゼントを置こうとした。
「困ります。本物のサンタが来てプレゼントを置いていくなんて」
サンタが驚くと、すやすや眠っていたはずのぼうやがこちらを見ている。
「親はサンタを信じていないから、クリスマスプレゼントを用意するんです。
全員がサンタを信じたら、親はプレゼントを用意しなくなってしまう」
見つかってしまった。この子もサンタを初めて見たはずだが、その反応は非常に乏しかった。
最近のこどもたちに、増えているタイプだ。
「ぼくたちこどもはサンタを信じているふりを長く続けて、一回でも多くプレゼントをもらいたいんです」
「去年来てくれなかった本物が、来年も来てくれるでしょうか。本物に気まぐれで
クリスマスにプレゼントを配られると、長い目で見て損になるかもしれないんです」
「ですから、ぼくたちこどもとしては、26日の夜にでも配ってもらえると助かります」
サンタは何も言えず、プレゼントとともに煙と消えた。

549 :創る名無しに見る名無し:2020/06/03(水) 02:36:15.25 ID:kpXuTXSv.net
「さ、君の番だよ」
サクヤは坂本に拳銃を手渡した。
「次は確実だね」

「ど、どうせ弾は入ってないってオチだろ!?」
坂本はバカにするように笑う。

「撃ってみればわかるよ。でも弾が入るないんじゃ競技にならないんじゃない?」

「う……」

「さ、早く。最後だけは自分で引鉄を引いてね」

「うう……」

「根性見せてよ、お姉さん」
サクヤは冷たい目で坂本を見つめた。

「うわーーーっ!」

坂本は引鉄を引いた。
自分のこめかみではなく、山本サクヤを狙って。

550 :創る名無しに見る名無し:2020/06/03(水) 10:14:24 ID:O0bwDIyb.net
>>537書き直し


銃声が轟いた。

銃口から白い硝煙がたなびく。
それは物語っていた、発射されたのが紛れもなく実弾であることを。

山本サクヤは無表情で立っていた。

「お姉さん」
怠そうに口を開くと、サクヤは言った。
「銃、ヘタだね」

銃弾はサクヤの左頬をかすめ、後ろでペイント弾を使って競技をしていた若月組のヤクザの肩に当たっていた。

「姉貴のこともそんな風に撃ったの?」
坂本とサクヤの距離は約3m。姉のサアヤを射殺した時とほぼ同じ距離だった。
「3発撃ってようやく当たったらしいよね?」

「撃ちよったんは誰じゃあッ!」
若月組の戦闘員が駆けて来ると、坂本魔あやに銃を突きつけた。
「お前か、デブ女!!」

「な、なななんで……!?」
坂本魔あやは若月組に連行されながら、サクヤに向かって叫んだ。
「なんでお前、躊躇なく引鉄を引けた!?」

「僕と姉貴は似た者姉弟でね」
サクヤは左頬の傷から血をとり、舐めると、言った。
「怖いものがないんだ。だからか、死神も僕を避けて通る」

551 :創る名無しに見る名無し:2020/06/03(水) 10:18:07 ID:O0bwDIyb.net
ヤーヤと中條母は簡単にゴールに辿り着くと、影武者の首をポコンと叩き、猫にした。

「オルァ!! ノムケン、出てこんかいッ!」
中條母は悔しさに吠えた。
「越戸のカタキ、取らせんかいッ!」

552 :創る名無しに見る名無し:2020/06/03(水) 10:22:29 ID:O0bwDIyb.net
遂に出場組はベスト4に絞られた。

若月組(日本最大暴力団花山組直系)

剛力組(女ばかりによる新興勢力)

新飛島組(指定暴力団飛島組を乗っ取った)

迎良組(最弱の老人暴力団)

553 :創る名無しに見る名無し:2020/06/03(水) 10:26:27 ID:O0bwDIyb.net
準決勝の種目は騎馬戦である。
勿論上半身裸、流血上等だ。

競技は2組ずつのタイマンで行われ、対戦相手を決めるためのくじ引きが行われた。

554 :創る名無しに見る名無し:2020/06/03(水) 10:30:47 ID:O0bwDIyb.net
「チッ。女かよ」
くじを引き、剛力組との対戦が決まった若月組の幹部は言った。
「手加減なんか出来ねェけど、いいかな、婆さん?」

「敵にとって不足ないでおじゃる」
剛力あやの組長が無表情に言った。
「大きな組織を喰うことで、マロ達の名は天下に轟くでおじゃろう」

555 :創る名無しに見る名無し:2020/06/03(水) 10:34:57.76 ID:O0bwDIyb.net
自動的に新飛島組と迎良組の対戦が決まった。

「優太」
茨木が飛島優太組長に歩み寄る。

「おお、オッサン。おひさ〜」
優太は笑いながら、偉そうに腕を組んだ。
「握手とかはできねーぜ? 俺様、偉くなったんだからな! 握手したけりゃ五千万用意せぇや」

「お前……」
茨木はそれには答えず、聞いた。
「中條が殺された時、お前、側にいたんだよな?」

556 :創る名無しに見る名無し:2020/06/03(水) 10:38:13.60 ID:O0bwDIyb.net
優太の顔色が変わった。
「あやちゃん……殺されたの!?」

「……そうか」
茨木は拳を下ろした。
「あの時のお前は……お前じゃなかったもんな」

「ちょっと待てよ! あやちゃん、どうして……!?」

「後で話す」
そう言うと、茨木は背中を向けた。
「今はただ、正々堂々と闘ろう」

557 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 00:13:21.94 ID:vyo9KeqM.net
「さぁ、行くぜ」
若月組の兵隊、ノンスタイルいのぼは騎馬に乗り、やる気を見せた。
「触って、触って、触りまくるぜぇ!」

向こうに見える敵側の騎馬は女ばかりで出来ていた。
結構若くて可愛いのもいる。

「でも兄貴、あれはやめときましょうね」
騎馬の先頭を務める新人のなかやまくんが言った。

なかやまくんが指すところには弁慶のような女の背に乗った剛力あやの組長の姿があった。

「ババアは他のモンに任せよう」
いのぼは言った。
「狙うのは若くて可愛い馬と騎手じゃあ!」

558 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 00:22:18.14 ID:6sBgD5Jo.net
「恐らく」
迎良菊二郎親分が言った。
「俺ら以外は1分ともたねェだろうな」

迎良組の老組員達の作る馬は、どれも戦闘前からヨレヨレと崩れそうになっていた。
中條母は前の競技で頑張ったので休み、山本サクヤは「やる気が出ない」とスマホゲームをしている。

「いや、あそこの馬はやるかもしれんですよ」
菊二郎親分を乗せた馬の先頭に立つ茨木敬が言った。

茨木が指す先にはやたら張り切って馬を支える老人達がいた。
その上にヤーヤが乗っていた。

「おじーちゃん、みな、お願〜い!」
ヤーヤはメリケンサックの爪を伸ばしながら、言った。
「ヤーヤがんばる。おじーちゃんもがんばる!」

「うおー!」
やたらやる気ビンビンのジジイどもが鴇の声を上げた。

559 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 00:32:26 ID:6sBgD5Jo.net
「ジジイばかりとなめんなよ、お前ら!」
飛島優太は馬の上で腕組みをしながら、声を上げた。
「あそこの傷だらけの男は強いぞ。まず真っ先にアレを潰す!」

しかし新飛島組の精鋭達は、別の馬のことで話題騒然となっていた。

「なんでDTB48のヤンちゃんがいるんだ」
「俺、あの馬とやりたい」
「真っ先に狙うならあの馬だ」
「よーしやっちゃうぞ〜」

「ええ加減にせんかいお前ら!」
優太が怒号した。
「ヤンちゃんやんのはこの俺じゃ!」

「なんだと!?」
組員達の額に血管が浮き上がる。
「若造が! 組長だからってチョーシ乗るなや!」
「ブッ殺すぞ、たかが組長の分際でよ!」
「ヤンちゃんはワシのじゃ!」

560 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 00:41:54.97 ID:6sBgD5Jo.net
戦闘開始の銃撃が空に響いた。

若月組の馬達はまさに獲物を狩るように駆け出した。
剛力組の女達も突進する。

剛力あやの組長の馬は動かなかった。
上半身裸の剛力組長は、どこからともなく般若の面を取り出すと、被った。
そしてとても穏やかな、しかし敵軍の元まで響き渡る声で、言った。

「滅びるでおじゃる」

気迫を込めたその一言が、爆弾のように敵も味方も巻き込み、吹っ飛ばした。

561 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 00:48:30.99 ID:6sBgD5Jo.net
若月組は剛力組を舐めきっていた。
次の決勝に備えて主戦力を温存していた。
剛力組長の気迫爆弾にすべての騎馬はバラバラに崩れ、立っている馬は一騎もなかった。
それは剛力組の馬も同じだった。
しかしただ1人、剛力組長を背中に乗せた剛力組若頭、上戸あやこだけが足を踏ん張り、立っていた。

「今のはキツかったですぞ、組長ッ!」
爆風の煤で汚れた顔で、上戸は豪快に笑った。

「さすが上戸じゃ。よくぞ耐えた」
剛力あやの組長は般若の面を外すと、褒めた。

562 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 08:24:25.91 ID:6sBgD5Jo.net
開始の銃撃とともに新飛島組の騎馬すべてがヤーヤに押し寄せた。

「エー!?」
「やっ……ヤンちゃんを守るだーーッ!」

血走った目をして襲い来る精鋭ヤクザ達に、しかしヤーヤも老騎馬も為す術もなかった。
一騎を猫に変えただけで、雪崩のように押し寄せる敵に呑み込まれ、ヤーヤはあっさりと騎馬の上から落っこちた。

「よし!」
「ワシが抱く!」
精鋭ヤクザどもはヤーヤに群がった。
「ワシのもんじゃーッ!」

563 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 08:29:09.07 ID:6sBgD5Jo.net
暫く呆気にとられて少し離れた位置から見ていた茨木が、叫んだ。

「その娘に手を出すな!」

その声は剛力あやのの気迫爆弾のように、空気を激しく震わせた。

「おうッ!?」
「ぬぐゎ!」

新飛島組は気圧されたが、さすがは精鋭というべきか、ほとんどの騎馬が崩されることなく耐えた。
一騎だけ、ヤーヤに飛びかかろうとしていた飛島優太組長があっさり崩れたのを除き、堪えた騎馬達は一斉に茨木のほうを睨む。

564 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 08:30:29.10 ID:6sBgD5Jo.net
「アイツ倒してみんなでヤンちゃんのマンコ見んぞ!」

「うおー!!」

新飛島組チームの心がひとつになった。

565 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 17:33:36.65 ID:6sBgD5Jo.net
波のごとくこちらへ向かって押し寄せる新飛島組の騎馬群に、茨木はなおも気迫を飛ばした。

「散れや、ザコども!」

しかし騎馬は止まらなかった。
「ザコじゃねーわ!」
「俺らヤンちゃんのマンコ見るまで止まらんぞ!」

「凄まじい……」
迎良菊二郎親分が感心したように呟いた。
「まさしく修羅の群れよ」

566 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 17:38:44 ID:6sBgD5Jo.net
「敬坊、ここは俺に任せてくれるか」

菊二郎親分の言葉に茨木敬が震えた。

「まっ……まさか! 親分の『気迫弾』が出るのか!?」

「あぁ。超久し振りだから、うまく出せるかわからんが」

「俺に気迫の何たるかを教えてくれた親分の……ああ! 15年振りに見られるのか!」

「行くぜぃ」
菊二郎親分は思い切り息を吸い込んだ。

567 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 17:48:35 ID:6sBgD5Jo.net
「このエロガッパどもがぁぁあッ!」

茨木の身体がビリビリと震えた。
それはまさしく言葉の爆弾であった。
しかし、茨木にはわかってしまった。

『これは……俺より少し……弱い』

新飛島組の騎馬達は少しも揺るがなかった。
「その通りエロガッパじゃああぁ! エロガッパで何が悪い!」
そのままの勢いで敵大将の元へ辿り着くと、体当たりをかまして来る。

「負けるか!」
茨木も押し返す。

しかし、敵の騎馬はあまりも強かった。
さすがは藤あやみのエロいテクにそれぞれの組を簡単に裏切ったスケベどもというべきか、
ヤーヤのマンコがかかるととんでもないパワーを発揮した。

568 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 17:52:20.53 ID:6sBgD5Jo.net
「ぐあああ!」

茨木は吹っ飛ばされた。

「フン。褒めてやるぜ、若造ども」

菊二郎親分は余裕の笑みを浮かべながら騎馬の上から振り落とされた。
その後、全身を打ったショックでチンポが不能となり、急に老け込むこととなるが、それはまた別のお話である。

569 :創る名無しに見る名無し:2020/06/04(木) 17:53:09.20 ID:6sBgD5Jo.net
この瞬間、決勝戦は剛力組と新飛島組で行われることが決定した。

570 :創る名無しに見る名無し:2020/06/05(金) 02:19:12 ID:vdbWaHyt.net
「さあ! ヤンちゃんのオマンコご開帳と行きますか」
「仕事終わりの楽しみだ」

ヤーヤの身柄は二人の組員が確保していた。筈だった。
しかしその二人はボロボロになってじめんに倒れ、ヤーヤはいなかった。

「す、すまん。ジジイどもがなんか火事場のバカ力出しやがって……」
「クソ。あの細ェ身体のどっからあんな力が……」

楽しみにしていた組員達は発狂した。
優太はエロ禁断症状の発作に襲われた。

571 :創る名無しに見る名無し:2020/06/05(金) 12:39:31.75 ID:dpr/o3ZS.net
藤あやみ「あたしので我慢しな!」

組員A「ダメだ嫌だ! もうヤンちゃんのマンコにしか今は興味がねぇんだ!」

組員B「アンタのマンコは見慣れてる!」

組員C「俺達は秘密の花園に憧れてんだよ!」

優太「マンコー、マンコー……」

572 :創る名無しに見る名無し:2020/06/05(金) 16:56:24.38 ID:vdbWaHyt.net
決勝戦を前に、昼食タイムに入った。

剛力あやの組長はサンドイッチをおちょぼ口で食べながら、漏らした。
「茨木敬が負けよった。せっかく決勝戦で殺して主人公の座を奪おうと思っておったのに」

「まぁ、殺すのはいつでも出来ます」
上戸あやこが笑いながら言った。
「それより新飛島組とかいうザコどもを軽く蹴散らして天下を奪いましょうぞ」

573 :創る名無しに見る名無し:2020/06/05(金) 22:01:26.66 ID:vdbWaHyt.net
優太はじめ新飛島組の兵隊達は、弁当にありついて平静さを取り戻していた。
負けた茨木も、優太と向かい合って弁当を食った。

「それにしても」
茨木が優太に聞く。
「どうやって記憶戻ったんだ?」

「さぁ」
優太は答えた。
「気がついたらセックスしてたわ」

574 :創る名無しに見る名無し:2020/06/05(金) 22:10:15.30 ID:vdbWaHyt.net
「ところでオッサン」
優太が言った。
「新飛島組組長として、アンタをこの運動会の助っ人としてスカウトしたいんだが、どう?」

「そんなこと出来るのか?」
茨木は顔を上げた。

「だってオッサン、迎良の組員じゃないじゃん。俺ら迎良組倒したから、そこの助っ人ゲットってことでいいんじゃね?」

「ふむ」

「俺ら目指すのは当然優勝だからさ、オッサンの力が是非とも欲しい」

「そうか」
茨木は乗り気になった。
「俺も剛力組を倒したい」

「ま、引き抜きが出来るかどうか次第だけどね」
優太は卵焼きを口に運びながら、忌みが。
「運営と、対戦相手の剛力組にも聞いてみるよ」

575 :創る名無しに見る名無し:2020/06/05(金) 22:14:58.20 ID:vdbWaHyt.net
その頃、ヤーヤを助けた迎良組の老人達は、茂みに身を潜めていた。

「ここにいれば大丈夫だ」
「危なかったな、ヤンちゃん」

「ありがとー、おじーちゃん」
ヤーヤは両手を前で合わせた。
「ヤーヤ、あぶなかった」

老人達はそう言うヤーヤのショートパンツから覗く小麦色の脚を見つめると、生つばを飲み込んだ。

576 :創る名無しに見る名無し:2020/06/05(金) 22:17:46.92 ID:vdbWaHyt.net
「助けたお礼が……欲しいな」
「んだんだ。ヤンちゃんからお礼が欲しいだ」

「うん。なんでもする」
ヤーヤは笑顔で頷いた。
「何する? 言って。なんでも」

老人達は立ち上がった。
「ヤンちゃんのマンコが見てぇだ!」
「助けたお礼に見せてくれろ!」

「エー!?」

577 :創る名無しに見る名無し:2020/06/05(金) 22:21:39.89 ID:vdbWaHyt.net
剛力あやの組長は、運営から話を聞くと、即答した。

「茨木敬を? 新飛島組に? よろしいでおじゃるよ」

そして笑ってしまう口元を扇子で隠した。

「むしろ願ってもないでおじゃる」

578 :創る名無しに見る名無し:2020/06/05(金) 22:23:39.14 ID:vdbWaHyt.net
そして決勝戦が始まる。

種目は『タトゥー睨めっこ』。

ちなみに運動会種目のアイデアはこちらのスレからいただきました。
どうもありがとうございました。

ヤクザの運動会にありそうな種目
https://egg.5ch.net/test/read.cgi/owarai/1590609498/

579 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 06:58:44 ID:H0WSfx/n.net
タトゥー睨めっこはただのにらめっこではない。
相手の睨みに心が負ければ死んでしまうこともある、大変危険なにらめっこだ。
そして運の要素が入り込む余地がなく、実力こそが物を言う、最後に相応しい競技と言えた。

それぞれの組から3人ずつ、代表選手が出て争う。
2本先取したほうが優勝となる。

580 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:00:47 ID:H0WSfx/n.net
「1本は捨てるしかないでおじゃるね」
剛力あやの組長は自分のチームの顔ぶれを眺めると、仕方なさそうに言った。
「まぁ、後はマロと上戸だけで楽勝でおじゃる」

581 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:03:35 ID:H0WSfx/n.net
「誰が強いのかわからん」
優太は首をひねった。
「俺、自分の組のこと、まだ知らなすぎだわ」

「自信のある人、手を挙げて?」
藤あやみが促した。

しかし誰も自信がなさそうに、手を挙げる者は誰もいなかった。

582 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:06:49 ID:H0WSfx/n.net
「ウチが出ますどすえ」
唯一手を挙げたのは中條母だ。

「ええ? おばちゃんにはキツいでしょ」
優太はそう言うと、茨木敬の顔を見た。
「どうなの? 強いの?」

「さあ?」
茨木も首をひねった。
「だが、見事なモンモンなのは確かだ」

583 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:23:02 ID:H0WSfx/n.net
「本多さんは? 」
優太は自分の組の若頭に声を掛けた。
「立派な鯉のモンモンじゃん?」

「しかし……たかが鯉でさあ」
本多は首を横に振った。
「カープが野球で強いようには、私の鯉は強くありません」

「ゆーたはどうなの」
ヤーヤが横から聞いた。
「組長さんでしょ。強い」

「いや、コイツはダメだ!」
茨木が即答した。

「この競技には絶望的に向いてないわ」
藤あやみも即答した。

「エヘヘ……」
優太は恥ずかしそうに笑った。

584 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:26:57 ID:H0WSfx/n.net
結局、元東城会のエースだった桐生という男が先鋒を務めることに決まった。
次鋒は中條母こと中條かなこ。

「大将は決まりだよな」
優太が当然のように言った。
「オッサン、頼むぜ」

585 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:29:41 ID:H0WSfx/n.net
茨木敬の脳裏にあの夜のことが浮かんだ。

剛力あやのの金剛力士に、自分の桜吹雪は勝てなかった。

おそらく……いや間違いなく、剛力組の大将には奴が出て来るだろう。

自分は……勝てるのか?
自信がなかった。

586 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:35:08 ID:H0WSfx/n.net
「いや……俺は……」

「確実に勝てるのオッサンしかいねーよ。任せたぜ」
優太は茨木の背中を叩いた。
「それに……。あやちゃんのカタキ、取るんだろ?」

「……そうだな」
茨木は自分の頬を一発、殴った。
「俺がここで立たなくてどうする、茨木敬!」

587 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:40:18 ID:H0WSfx/n.net
相手チームの先鋒の姿を見て、新飛島組は騒然となった。

「剛力組先鋒、平山あやめ」
運営がその名を呼び、ショートカットにナイスバデーな20歳代半ばぐらいの美人が颯爽と前へ進み出た。

「かっ……可愛い!」
「俺の胯間がもこみちになっちゃった!」
「やっぱ俺が出る!」
「桐生、てめぇ代わってくれ!」

588 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:48:43 ID:H0WSfx/n.net
次いで次鋒、上戸あやこの名が呼ばれ、全身一揺れもしない筋肉の鎧のような、女とは呼びがたいものが前に進み出た。

「……アレはいかん」
「見たくもない」
新飛島組は意気消沈した。
「アレは中條のお母さんにあげる」

「大将、剛力あやの」
運営が名を呼ぶと、真っ白な化粧をしたマロ眉の婆さんがファッションモデルのような歩き方で前へ出た。

しかし新飛島組は誰も見ていなかった。

「先鋒、やはり私に行かせてください!」
若頭の本多が真っ赤な鯉の刺青を誇示しながら、喚いた。

589 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 07:52:11 ID:H0WSfx/n.net
続いて新飛島組チームの選手名が発表された。

「新飛島組先鋒、飛島優太」

茨木が飲んでいたスポーツドリンクを激しく噴いた。

590 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 08:03:00.92 ID:H0WSfx/n.net
「次鋒、中條かなこ」

名を呼ばれ、中條母が歩み出る。
匕首を両手で抱え、決死の表情だ。

「なんと……私の相手は♀ですかッ!」
上戸ががっかりしたように言った。
「屈強な♂をぶち殺すつもりで楽しみにしていましたのに……ッ!」

「瞬殺して差し上げろ」
剛力組長がつまらなそうな顔で言った。
「どんな男も敵わぬお前の敵ではないでおじゃる」

591 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 08:06:53.78 ID:H0WSfx/n.net
「大将、茨木敬」

「おうッ!」
気合いを充分に見せつけて茨木が前に出た。
「剛力ッ! この間の雪辱じゃ!」

「まんまと出て来おったわ」
剛力あやのは嬉しさについ歪んでしまう顔を扇子で隠しながら、言った。
「今日、主役はマロのものになるでおじゃる」

592 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 08:48:06 ID:H0WSfx/n.net
その頃、茂みの中では迎良組の老組員達が昇天していた。

さっき目にしたものを頭の中で反芻しながら、彼らは亡者のように呟いていた。

「菩薩様って本当にいただな……」
「ああ、冥土への最高のみやげになっただ……」
「もう、いつ死んでもいいだな……」

593 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 08:53:58 ID:H0WSfx/n.net
先鋒戦が始まった。

何もない関ヶ原の野に向かい合って立つと、両者は睨み合……いや見つめ合った。

「組長さんが相手だなんて光栄です」
平山あやめは恥ずかしそうに言った。
「どうせ私、捨て駒ですから……。うちの組長に『遠慮なく負けて来い』って言われてます」

「もっと自信を持ちなよ」
優太はイケメン顔で言った。
「君はとても魅力的だ」

「あ……ありがとうございます」
平山は長い睫毛をしばたかせて言った。
「では、よろしくお願いしますね」

594 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 08:57:40 ID:H0WSfx/n.net
「ゆーたの刺青って、どんなの」
ヤーヤが茨木に聞いた。

「どんなのも何も……」
茨木は答えた。
「アイツ、刺青入れてねぇんだ」

「刺青なんて時代遅れだ! とか言ってたけど……」
藤あやみが言った。
「単に痛いのは嫌だってだけよね」

「タトゥーシールは貼っときました」
本多が言った。
「それでも、アレじゃあ……」

595 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 09:02:12 ID:H0WSfx/n.net
「それでは……始めッ!」
戦闘開始の合図がかかった。

「さっさと終わらせて近くのファミマにふたりでしけこもう」
そう言いながら優太が着ているガウンに手をかける。

「あっ、ファミチキ食べたいです」
平山も自分のガウンに手をかけた。

「いくよっ!」

「勝負です!」

二人のガウンが宙に舞った。

596 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 09:08:10 ID:H0WSfx/n.net
平山あやめのタトゥーが晒された。

「あっ!」
「あれは……っ!?」
観客がどよめく。

平山の華奢な背中に乗せたあったのは真っ黒なヒラメの彫り物だった。

「……魚拓?」

「可愛いよ」
優太はそのヒラメよりも、腰のくびれと胸を隠すしているすべらかな二の腕に釘付けになりながら、言った。
「オリーブオイルかけて食べたいな」

そう言いながら後ろを向いた優太の背中は真っ白だった。
ただ左肩にひとつ、ピンク色の小さなハートがあるのを除いては。

597 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 09:11:51.89 ID:H0WSfx/n.net
「可愛い」
平山あやめは思わず笑顔を見せた。

「僕の負けだ」
優太は言った。
「早くファミマに行こう」

「はい」

「ファミマの駐車場にタクシー呼んで、そこから遊びに行こう」

「ふざけんな」
遠くで茨木が呟いた。
「次負けたら終わりなんだぞ!」

598 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 09:20:43.66 ID:H0WSfx/n.net
しかし優太は観客の罵声を浴びながら、平山あやめと手を繋いで会場を出て行った。

「なんと……ッ!」
上戸あやこが声を上げた。
「平山が勝ってしまいましたぞッ!?」

「よいでおじゃる」
剛力あやの組長は無表情に言った。
「お前は全力で対戦相手を潰すがよい」

「よいのですかッ!?」

「茨木敬はいつでも殺せるでおじゃる」
剛力組長は野望に燃える目で言った。
「この大運動会に優勝し、天下を取れる機会は今しかごじゃらぬ」

599 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 21:04:37.64 ID:auZb7qiT.net
中條母が据わった目をして前にしゃしゃり出た。

上戸あやこもドスドスと地響きのような足音で前へ出る。

向かい合った二人を見て、茨木は声を漏らした。
「まるで柳の枝と檜の大木だ」

観客達も口々に呟く。
「あ〜あ、こりゃ闘る前から……」
「決まったな」
「目に見えてる」

600 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 21:13:01.82 ID:auZb7qiT.net
「奥さん」
上戸が野太い声で言った。
「棄権するなら今のうちだ。無駄な殺生は好まん」

「あんさん達……」
枯淡の母といった趣で、中條かなこは言った。
「ウチの娘を殺らはったんどすなぁ?」

「中條あやのことか」
上戸は真面目な顔で答えた。
「あれは通り魔事件でしょう」

「黙りや」
中條母は着物の袖を口惜しそうに噛んだ。
「母の執念、とくと見さらせ」

その時、戦闘開始の合図がかかった。

601 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 21:18:22.11 ID:auZb7qiT.net
上戸は着物を勢いよく脱いだ。
厨房まで筋肉と化した裸体が露になる。

「手は一切抜きませんぞ?」

そう言うと、ゆっくりと後を向く。
背中の仁王像の彫り物が姿を現した。

「これで終わりじゃあーーッ!」

仁王の目が赤く開き、三千度の炎がそこから発射された。
観客が悲鳴を上げ、思わず逃げ出す者も多くいた。

602 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 21:31:27.43 ID:auZb7qiT.net
しかし中條母は身を紅蓮の炎に包まれながらも立っていた。

「ホホホ」
母は着物の袖で口元を隠し、余裕で笑う。
「確かに格闘勝負ならば、貴女に勝つ術などおまへんどしたろうなァ……」

「何……?」
一撃での勝利を確信していた上戸は動揺を隠せない

「言わばこの『タトゥー睨めっこ』は精神戦」
中條母は勢いよく着物の上をはだけた。
「とくと見や、我が50年の人生の詰まった刺青じゃ!」

603 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 21:40:54.27 ID:auZb7qiT.net
それはまるで天へ向かって昇る大瀑布であった。
中條母の背中に描かれた昇り龍が目を開くと、轟音が鳴り渡り、激しい水流が上戸の足を地面から離しにかかる。

「く……ッ!」
しかし上戸は耐えた。
「なんのこれしきーーッ!」

観客が次々と竜巻に呑まれるように空へと放り上げられる。
茨木は飛んで行きそうなヤーヤをしっかりと抱き止めた。

「このようなものッ! 炎でかき消してくれるわ!」

上戸の仁王像が口を開く。
目から発射された炎よりも強い、七千度の業火がそこから吐き出された。

604 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 21:52:20.27 ID:auZb7qiT.net
急に世界は静寂に包まれた。

中條母の大瀑布も、己の仁王像の吐く業火の音も消えた世界で、上戸は周囲を見回した。

「なんじゃ、ここは……」

暗闇の向こうから誰かが歩いて来る。

「上戸副組長……」
それは松浦が殺した筈の中條あやだった。
顔の真ん中が潰れているが、声とシルエットでわかる。

「はん!」
上戸は鼻で笑った。
「つまらんまやかしだ!」

605 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 21:57:51.01 ID:auZb7qiT.net
「私をころしたのは……だあれ?」
中條あやは少し震える声で言った。

「通り魔だ」

「わわたしをこころしたたのは……だあれれ?」

「くだらん」
上戸は拳を振り上げた。
「さっさと地獄へ帰れ、フンッ!」

その時、上戸は気づいた。
中條あやの手が、誰かと手を繋いでいる。

606 :創る名無しに見る名無し:2020/06/06(土) 22:04:19.34 ID:auZb7qiT.net
「彼氏を連れて来たの」
中條あやは、顔のない顔で嬉しそうに笑った。

「ムウッ!?」

暗闇の中からだんだんとその姿が現れる。
姿を現しきらないうちから、その男の眩さが上戸の目を潰した。

「彼氏を連れて来たの」

中條あやが連れて来たのは、黄金の聖衣に身を包んだドラゴンであった。

「ぎゃーーッ!?」
目を潰された上戸が悲鳴を上げた。

607 :創る名無しに見る名無し:2020/06/07(日) 09:41:27.80 ID:zZzxbB7f.net
黄金の聖衣を身に纏ったドラゴンは、言った。
「廬山昇龍波」

その言葉を口にしただけで、上戸は上空へ吹っ飛んだ。

608 :創る名無しに見る名無し:2020/06/07(日) 09:49:05.59 ID:zZzxbB7f.net
300m空を飛び、地面に叩きつけられた上戸は、さすがに立ち上がれなかった。

「貴様……」
上戸は中條母に聞いた。
「なぜワシが『聖闘士星也』の……しかもドラゴン紫龍のファンだったと知っている……?」

「あなた、ウチと同世代ですやろ? 聖闘士星也世代……」

「そっ……それだけで!?」

「女のカンより強いモンはありまへん」
中條母は勝者の宣告を受けながら、目を細めて笑った。
「そして若い頃に憧れた存在には、誰も勝つことは出来まへん」

609 :創る名無しに見る名無し:2020/06/07(日) 09:54:53.82 ID:zZzxbB7f.net
「お母さん……」
茨木敬は、その闘いを目に焼き付けながら、呟いた。
「あなたの闘い……俺の糧とさせていただきます」

そして向こう岸の対戦相手、剛力あやの組長を睨みつけた。

剛力はその視線に気づくと、馬鹿にするようにフッと笑った。

610 :創る名無しに見る名無し:2020/06/07(日) 18:00:56.99 ID:xQ9CQ0Lo.net
その光景を見つめる謎の男が居た。

名を「茨木 薪火太郎」。この物語の根幹に関わる超重要人物である

611 :創る名無しに見る名無し:2020/06/07(日) 20:47:25.70 ID:lDEUjLyM.net
茨木敬にはまだ迷いがあった。

母が娘の敵を討ったようには、中條あやと山本サアヤを殺した剛力組への憎しみをパワーに変えることが出来ずにいた。

ぶっちゃけ作者の思い通りになることに反抗したかったのである。

『これで俺が憎しみで超パワーアップして勝ってしまったら、中條はまるでそのための単なる道具みたいじゃないか!』

中條との幸せだった同棲生活の日々が胸に甦る。

『中條は道具なんかじゃねぇ! 俺に平和で美しい日常をくれた、かけがえのない存在だったんだ!』

612 :創る名無しに見る名無し:2020/06/07(日) 21:51:20.40 ID:P+wWJIsV.net
焚火太郎「ククク...哀れだな、兄者よ。まるで炎に向かう蛾の様だ。いつまで主人公を気取っているつもりだ?」

613 :創る名無しに見る名無し:2020/06/08(月) 01:56:07.73 ID:Dl8tg4dj.net
クロ「薪火太郎なのか焚火太郎なのかどっちだよ!?」

614 :創る名無しに見る名無し:2020/06/08(月) 02:02:26.56 ID:Dl8tg4dj.net
茨木敬と剛力あやのは向かい合った。

「上戸が負けたのは計算外であった」
剛力は悠々と扇子を動かしながら、言った。
「しかしこれでマロがおまえを殺せば、主人公の座と組の天下、どちらもマロの物じゃ」

「……」
茨木敬は何も言えなかった。

「どうしたでおじゃる?」
剛力は見下すように笑った。
「この前、派手に敗北したのが頭に焼き付いておるでおじゃるか?」

615 :創る名無しに見る名無し:2020/06/08(月) 12:30:30 ID:Dl8tg4dj.net
『しまった』と茨木敬は思っていた。

中條母があれ程だと知っていれば、中條母に大将を任せればよかった、と。
自分の最大奥義『さくらだモンッ☆』は剛力あやのには通用しなかった。
しかしあの時、若頭の上戸には、確実に効いていた。

自分が上戸と闘ればよかったのではないか。

中條母なら、亡き娘の敵を討つ執念と、強大な龍の力で、このバケモノにも勝てたかもしれない。
しかし、自分は……

616 :創る名無しに見る名無し:2020/06/08(月) 12:33:19 ID:Dl8tg4dj.net
「おい」
剛力組長の背後でクロが言った。
「あいつ、チキンになってるぞ。お前の楽勝だな」

「ホホホ」
剛力は笑った。
「手羽先のごとく、真っ二つに折った後、むしゃぶりついてくれるわ」

617 :創る名無しに見る名無し:2020/06/08(月) 12:38:57 ID:Dl8tg4dj.net
「なぁ」
茨木は胸の中の中條あやに話しかけた。
「俺……負けてもいいか?」

「どうしちゃったのよ、敬くん」
中條は答えた。
「アンタらしくもない」

「だって、あのバケモノ殺したところでお前は帰って来やしないだろ?」

「……そうだけど」

「なら、俺が殺されて、お前の所へ行くよ」

「……敬くん」

「また、一緒に暮らそう。俺はそれが一番いいと思う」

「……おとーさん」

「お、おとーさん!?」

618 :創る名無しに見る名無し:2020/06/08(月) 12:43:14.11 ID:Dl8tg4dj.net
我に返ると、目の前にヤーヤがいた。
茨木の様子を見て、心配でたまらずベンチから駆け出して来たようだ。

「おとーさん」
ヤーヤは茨木の目をまっすぐ見つめて、言った。
「ヤーヤはおとーさんが好き」

「えっ?」

「好きだから、勝ってほしい。そして、一緒に暮らす」

「ええっ!?」

「おとーさんは、絶対、勝つ」
ヤーヤはそう言うと、両拳を強く握り締め、中国語で言った。
「加油(がんばれ)!」

619 :創る名無しに見る名無し:2020/06/08(月) 12:48:30.58 ID:Dl8tg4dj.net
ベンチへ戻って行くヤーヤの後ろ姿を見送りながら、茨木は思った。

『加油(ジァーヨゥ)、か。いい言葉だ』

『ヤーヤ、俺は君の……DTBのヤンちゃんの、ただの一熱狂的な大ファンのつもりでいた』
『しかし……今の言葉、そう受け取ってもいいんだな?』
『俺と……アイドルとファンの垣根を越えてもいいと……! そういう意味なんだな!?』

620 :創る名無しに見る名無し:2020/06/08(月) 12:51:41.45 ID:Dl8tg4dj.net
「中條! 俺はお前のことは絶対に忘れない!」

茨木は人目を憚らず叫んだ。

「しかし俺は、過去を振り返らない! 俺はあの娘と新しい愛の生活を始める! いいな!? 中條ッ!?」

ヤーヤの言葉が文字通り茨木敬に油を加えた。

「16歳差がなんぼのもんじゃいッ!!」

621 :創る名無しに見る名無し:2020/06/08(月) 12:52:56.97 ID:Dl8tg4dj.net
ベンチに帰ったヤーヤはそんな茨木の姿を見て、少し困ったように呟いた。

「あれ……。なんか。誤解されてる?」

622 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 07:28:57 ID:CHgf6aIw.net
自動車を買おう、茨木敬はそう思った。
思えば中條と暮らしていた時、なぜ自分は自動車を持たなかったのか。
彼女が出来れば自動車を持つのが当然じゃないか。
茨木の幸せな妄想はとどまることを知らぬ爆発のように広がった。
ヤーヤの言葉がまさしく火を注ぎ、真っ赤なオーラが天を赤く染めた。

623 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 07:33:34 ID:CHgf6aIw.net
「どうしたでおじゃる? 急に別人のようになりよったな?」
剛力あやの組長は言葉ほどには驚いた様子もなく、言った。
「それでなければ面白くないが」

「剛力」
茨木は対戦相手を睨みつけた。
「俺は次の段階へ行くぞ」

「そうでおじゃるか」
剛力は見下しながら、言った。
「お前の最大奥義はマロには通じん。それで果たして勝てるかなァ?」

624 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 07:38:03 ID:CHgf6aIw.net
ヨコヤがまだ出番を待っていた。

茨木薪火太郎なのか焚火太郎なのかは物語に関わるその時を待っている。

ヤーヤが胸の前で両手を繋いで組み、神様に祈った。

優太はファミリーマートからタクシーを拾って平山あやめとお城に遊びに行った。

それぞれの思いが交錯する中、ようやくのように、今、戦闘開始の合図がかけられた。

「はじめッ!」

625 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 07:46:40 ID:CHgf6aIw.net
「いきなり死ぬでおじゃる」
そう言うと、剛力あやのは着物を脱いだ。
相変わらず歳の割に綺麗な乳房が露になる。
そしてくるりと背中を向けると、金剛力士が2体に増えていた。
2体の目が同時に赤く光ると、そこから発射された一万三千度の炎が大地を覆い尽くした。
上着を脱いだばかりのところだった茨木は、思わず叫んだ。
「やめろや、この糞馬鹿野郎!」

626 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 07:51:52 ID:CHgf6aIw.net
茨木は背中の桜吹雪を逆走させた。
炎を吸い取った桜の花弁が、茨木の内へと舞い戻っ行く。
「ぬああああちぃ!」

一万三千度の炎を吸って苦しむ茨木を見て、剛力は呆れたように言った。
「……吸い取った?」

「あぶねぇじゃねぇか……」
茨木はベンチのヤーヤが無事なのを確かめると、剛力を叱った。
「観客を巻き込むな馬鹿野郎!!」

627 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 08:01:21 ID:CHgf6aIw.net
茨木の桜吹雪が剛力の身体を覆って渦を巻く。

「ぬおゎ!? これは……」
逃げ場のないピンク色の嵐に剛力は一瞬、慌てた。
しかしすぐに金剛力士が2本の金棒を振り下ろし、吹雪を切り裂く。
「無駄なあがきは見苦しい」

そう言うと、左右から金棒が茨木の身体を打った。

628 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 10:03:28.72 ID:CHgf6aIw.net
「ぬぐぉわ!?」
金棒の挟み撃ちに茨木の全身に衝撃が走る。
しかし茨木は背中の桜吹雪を全開でピンク色に咲かせ、剛力に送り続けるのを止めなかった。

「なんでおじゃる」
剛力はなおも2撃、3撃と茨木を打つ。
「主人公とはこんなもんか」

「剛力!」
血だらけになりながら、茨木は吠えた。
「主人公の何たるかをお前に教えてやる!」

629 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 10:06:52.13 ID:CHgf6aIw.net
「ほほう」
剛力は茨木の脳天を金棒で潰しながら、言った。
「聞こう。主人公とは何でおじゃる?」

「教えてやる」
茨木は言った。
「主人公とは、この俺のことだ!」

「ホホホ」
剛力は笑うと、茨木のこめかみを金棒でかち割った。
「今からはこのマロのことでおじゃるよ!」

630 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 10:12:23.48 ID:CHgf6aIw.net
最大の急所を攻撃された。
茨木は防御をすることも出来なかった。
大きく開いた口から桜の花弁を散らせながら、茨木敬は倒れた。

「おとーさん!」
ヤーヤが叫ぶ。
「おとーさん! 立つ!」

その声は茨木の耳に届いた。
しかし身体が言うことを聞かない。
立ち上がるだけのことが、出来ない。

「勝者、剛力あやの!」
審判がその掴み、高く掲げた。
「これにて極道大運動会は終了ッ! 優勝は、剛力組!」

631 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 10:16:07.64 ID:CHgf6aIw.net
「ホホホホ」

剛力あやのは遂に天下を手に入れ、満足そうに笑った。

「ホホホ……ぐ、ぐふっ!?」

その色白の身体が顔までピンク色に染まっていた。

「ぐ……これは……?」

鼻や口から入り込んでいた茨木の桜吹雪が、
剛力あやのの中で爆発を起こした。

632 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 10:21:11.34 ID:CHgf6aIw.net
それはまるで秋の大運動会に華々しく狂い咲きした桜の大樹のようだった。
剛力は自らの内部から沸き起こった大きな力に耐えきれず、身体を痙攣させると、その場で破裂した。
観客達は剛力あやのの死を見るというよりも、まるで大輪の花火を見るように、誰もが笑顔だった。

633 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 18:32:54.36 ID:CHgf6aIw.net
「ざまァ見ろ」
茨木は倒れたまま、言った。
「他人の夢や幸せをさんざん壊しやがった報いだ」

ヤーヤが慌てて駆けて来て、言った。
「病院よんだよ!」

「ありがとう。救急車、な」

634 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 18:37:14.29 ID:CHgf6aIw.net
「剛力……。てめえは死んでも悲しんでくれる人なんか1人もいねぇだろ」

観客がみな美しい花火を見て笑っている中、しかし悲しむ者はいた。

「ごごご剛力さん!」
紫色の髪をした、100歳ぐらいの老婆が杖をついて前に歩み出た。
「死んでしまうとは何事よ!」

635 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 18:39:51.73 ID:CHgf6aIw.net
「あれは……誰だ?」
茨木は応急処置をしてくれている藤あやみに聞いた。

「会長よ」
藤は答えた。
「先代組長。名前は殺屋(あやや)のりこ」

636 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 18:44:15.38 ID:CHgf6aIw.net
「ああ……貴女が死んでしまっては、せっかく大運動会に優勝しても、組を仕切ってくれる人がいないじゃないの!」
殺屋は悲嘆に暮れた。
「上戸はトップを任せるにはまだ若いし、何より脳味噌が筋肉だわ。私が再任するにも……この歳じゃ……」

「もし」
殺屋に横から声を掛けたのは、中條母だった。
「よろしければ、私が組長をやらせてはいただけまへんやろか」

637 :創る名無しに見る名無し:2020/06/10(水) 18:52:39.83 ID:CHgf6aIw.net
上戸を破ったほどの実力の持ち主であり、元広島一の暴力団緒方組のおかみさんをやっていた中條母なら文句があろう筈もなかった。
殺屋のりこ会長はむしろ是非お願いしたいと逆に申し出た。

「可愛い娘を亡きものにした憎き剛力組でしたけれど……」
中條母は、殺屋会長に誓った。
「この私にお任せいただけるのならば、名実ともに日本一の任侠一族に育ててみせますわ」

総レス数 1001
367 KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
read.cgi ver.24052200