結構毛だらけ猫灰だらけ、尻のまわりはクソだらけってね

くろしお
警察官の人材育成
2014年5月4日
　こちらは駆け出し記者、先方は巡査のころから知っている県警幹部と先日、酒を酌み交わした。苦く辛（つら）かった事が皆懐かしい思い出として語られる。歳月は偉大な魔術師だ。

　フーテンの寅さんこと渥美清さんに、警察官にまつわる逸話がある。
戦後、焼け野原だった東京で、渥美さんは子どもたちが集める鉄くずや鉛管を買う元締のようなことをなりわいとしていた。とはいえまだ十代の若者。歩道と車道を仕切る鎖を盗んで補導された。

　その時のおまわりさんに「お前の顔は一度見たら忘れられない。フランス座へ行け」と助言されたことが、芸能界入りのきっかけになった。
「フランス座」は幕間の爆笑コントが売り物で、優れた芸能人を輩出したストリップ劇場だった。

　罪をとがめて罰するのではなく、未来ある若者に素っ気ない言葉で助言する。殺伐とした時代、そんな警察官がいた。
その人の存在がなかったら後年国民的な人気者となったフーテンの寅さんが誕生することはなかった（永六輔著「永六輔のお話し供養」小学館）。

　この４月、県警察学校初任科へ入校した若手の警察職員は警察官と一般職合わせて９３人。同校で法律などの基礎教養や逮捕術を学んで第一線に配置される。
県警は目下、ベテランが大量に定年退職を迎える大変動期のまっただ中にある。

　県警幹部との酒席で懐旧談に混じり、人を育てることの大切さも話題になった。罪を憎んで人を憎まずという。
渥美さんの恩人となったおまわりさんみたいな人もいていい。先輩に尻をたたかれながらの夜討ちも懐かしい老記者の願いだ。

http://www.the-miyanichi.co.jp/kuroshio/_5558.html