【終戦の日】政治と国民の意識の乖離
ことしも「終戦の日」がめぐってきた。戦後の出発点といえる
「不戦の誓い」を新たにする一日ながら、平和主義の先行きに
従来と異なった不安を感じる人も多いに違いない。
世界各地で流血の事態が頻発している。日本の周辺では中国が
海洋進出を活発化させ、北朝鮮が核開発やミサイルによる威嚇行為を
続けるなど、懸念材料が確かにある。
ただ、不安の元は外的な要素だけではないだろう。「日本を取り巻く
安全保障環境は一層悪化している」とことさらに強調し、
抑止力の強化に突き進む安倍政権の動きに、一因があるのは間違いあるまい。
安倍政権は発足以来、国民の「知る権利」を損ないかねない
特定秘密保護法をはじめ、武器や関連技術の輸出を基本的に禁じた
「武器輸出三原則」も全面的に見直した。
そして、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に踏み込んだ。
密接な関係がある他国への攻撃を、わが国への攻撃と見なし、
武力で対抗できる権利である。
憲法９条が許容する「専守防衛」の範囲を超えるから、行使できない―。
歴代政権が積み重ねたこの見解を、安倍政権は国民に是非を問う改憲手続きを経ることなく覆した。
自衛隊員らが海外で戦闘に巻き込まれ、殺し殺される危険性が高まる。
国民の苦い戦争体験から平和憲法の根幹に位置付けられた、
９条の死文化にほかならない行為といえよう。
http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=324578&nwIW=1&nwVt=knd