数々の難事件を自白強要で解決に導いた名刑事「落としの典道（テンドウ）」こと佐藤典道さん逝く [699332515]

埼玉の事件史に名を刻む刑事が８日、静かに旅立った。埼玉・東京で発生した幼女連続誘拐殺人事件や、愛犬家殺人事件など、
数々の難事件で取り調べを担当した元県警捜査１課管理官、佐藤典道（のりみち）さん。享年７３。

　「埼玉を代表する名刑事。自分に厳しく情理に尽くす人だった」。県警ＯＢの阿部正弘さん（６８）は、突然の死を悼んだ。

　容疑者が歩んできた人生や、事件の経緯など、すべてを徹底的に調べ上げ、全面自供の“完落ち”に導く。「落としの典道（テンドウ）」の
異名は県外の刑事にも知られた。上司や同僚に「テンちゃん」と親しまれ、人情味にあふれる一方、被害者の無念、犯人の業をすべて抱き、生きているようでもあったという。

　社会を震撼（しんかん）させた幼女４人連続誘拐殺人事件。黙して語らない宮崎勤元死刑囚に毎朝、「勤ちゃん、おはよう」と声をかけ続けた。
「おはようございます」。初めて返事があった日、妻の文子さん（７８）に弾んだ様子で語った。死刑が執行された日、一人静かに考え込む姿があった。

　凶悪事件を担当する捜査１課に２７年間籍を置いた。「難しいヤマ（事件）を解決してこそ『捜１』」。強烈な矜持（きょうじ）を持つ捜査員の中でも、
存在感は際立った。あるＯＢは「誰もが『最強』と思えるのが典道さんだった」と振り返る。遺体なき殺人や、証拠に乏しい中での黙秘。解決を左右する厳しい決断を何度も迫られ、修羅場をくぐった。

　科学捜査がめまぐるしく進歩し、地面をはいずるような刑事のイメージは変わりつつあるのかもしれない。取り調べの可視化も進む。
だが、元県警刑事部長の横澤完治さん（７０）は言い切る。「時代が変わっても捜査は『人対人』。佐藤さんが貫いた精神は、刑事の根底に生き続ける」

　一人息子が早世した佐藤さんは、譲り受けたひなのインコをわが子のようにかわいがった。インコは足音を聞き分けるほど佐藤さんになつき、長生きした。
「立派な人でした。今でもそばにいる気がする」。文子さんは静かに語った。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/140817/stm14081702060003-n1.htm