満蒙開拓団　関東軍は私たちを見捨てて真っ先に逃げた [609955129]

千葉から語り継ぐ戦争（５）満蒙開拓団　弱い者一番惨めな思い

　「戦争は、弱い者が一番先に惨めな思いをするんだよな」。白子町の田中茂さん（８０）は、仏壇の位牌（いはい）から四枚の木札を手のひらに取って言った。
一枚に二人ずつ記された名前。終戦直後の旧満州（現中国東北部）で両親と六人のきょうだいを失った。今もどこに眠っているのかすら、分からない。
　長野県芦田村（現立科町）の出身。父利重さんは、家族のために土地を手に入れようと、満蒙（まんもう）開拓団に参加することを決めた。一九三九年、茂さんが五歳の時のことだ。
◆５歳の時に父決断
　当時、全国から約二十七万人が入植。中でも長野県出身者は最多の三万三千人を数えた。一家は、旧ソ連（現ロシア）との国境近くの「長野村」で田畑を耕し暮らした。
妹と二人の弟も生まれ、十人家族となり、長姉は結婚して家を離れた。
　「ソ連が攻めてくる」。四五年八月九日、国民学校から自宅へ戻り、家族や村民とともに馬車に食料を積み、村を後にした。南へ、南へ。
「次の村で、軍がきっと助けてくれる」。ソ連や中国の兵隊に見つからないよう山中を歩き続ける。食料が尽きると、連れていた馬を散弾銃で撃ち、塩ゆでにして食べた。
　軍と出会うことは一度も無かった。どの村もたどり着いた時には焼き払われた後だった。「軍は私たちを見捨てて、一番に逃げてしまったんだ」

◆飢えで３人が死ぬ
　川の上の高い橋を渡っていた時、「日本は負けた」と聞いた。利重さんは、ほっとしたように持っていた日本刀を川の中に投げ捨てた。
日本で玉音放送が流れてから十日後。「逃げながら、父は日本が負けていると思っていたかもしれません」
　九月三日、飢えで三歳と一歳の弟が死んだ。寝ている間に息をしなくなっていた。
翌日には六歳の妹が亡くなった。茂のしを言えず「ちーちゃん、ちーちゃん」と呼びながら。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20140818/CK2014081802000139.html

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