末近浩太・立命館大教授「イスラム過激派の目指す国造りは尊王攘夷派と同じ」 [311660226]

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015021702000259.html

過激派組織「イスラム国」が日本人を殺害したとする映像を公開した事件をはじめ、イスラム教徒を名乗る組織や
個人によるテロが相次いでいる。日本のイスラム教徒は「危ない宗教」と、誤解や偏見が広がるのを心配している。
実際のイスラム教の教えについて、イスラム政治思想が専門の末近浩太（すえちかこうた）・立命館大教授（４１）に尋ねた。　（聞き手＝奥田哲平）
　－「イスラム教は攻撃的な宗教」という印象を持つ人がいます。
　「イスラムという言葉はアラビア語で『平和』を意味する『アッサラーム』から来ています。森羅万象の神アッラーが
つくったものを破壊するのは、神への冒涜（ぼうとく）。世界の調和、秩序を崩すことは良くないとコーラン（教典）に書かれています」
　－そうなんですか。でも、「聖戦」と訳される「ジハード」という言葉をよく聞きます。
　「ジハードとは『よりよいイスラム教徒になるために努力をする』というのが本来の意味合いです。しっかりコーランを読み、
お祈りする。これもジハードなんですよ」
　－では、イスラム過激派が自らのテロを「ジハード」と主張するのは間違い？
　「具体的な敵が迫ってきた時、信仰や共同体を守るため武器を取るのもジハード。あくまでも防衛が前提です。
問題は、どの時点で武器を取ることが正しいのか。過激派は拡大解釈してテロを発動するんです」
　－ただ、二十一世紀に入ってから、大半のテロはイスラム過激派によるものですよね。
　「いや、ユダヤ教でも一九七〇年代から過激派が現れ、テロを起こしています。どの民族、どの宗教でも排外的で
不寛容な思想の人はいます。つまり、暴力を正当化するために宗教を持ち出しているにすぎない。イスラム教徒が
住む地域の問題を考えた方がいい」
　－というと？
　「中東地域は政治的に独裁体制で自由がない国が多く、欧米からの干渉も長らく受けてきた。産油国を除けば
経済的繁栄ができていない。私はよく日本の幕末に例えるんですが、イスラム過激派の目指す国造りが
（欧米諸国を排除しようとする）尊王攘夷派で、イスラム教世俗主義は西欧近代に近づく開国派と言ってもいい」