坂本龍一「結局、日本の学問というのは、思想をいち早く西洋から取り入れ翻訳して紹介するだけ」 [755456936]

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80年代に、いわゆるニューアカと言われる学問のムーブメントが日本で起きたとき、僕自身はちょっと不満があったんです。
「結局、明治維新以来、日本の学問というのは、ほぼ、西洋のものをいかに早く紹介するか
にとどまっているんじゃないのか」という印象を一方で持っていた。
「研究」とは言うものの、学者もメディアの連中もみんなやっていることは新しい西洋の「紹介」だったような……。
ほんとうに自分のアタマで考えていた人が、近代の日本人研究者には果たしてどのくらい
いたのだろうか、という疑問が当時からあったんです。
まぁ、丸山眞男ぐらいしかいなんじゃないか。あとは、だいたい翻訳者なんだよね。
まだ日本に生まれていない思想をいち早く西洋から取り入れて翻訳して紹介する。
だから、その時点で、「翻訳者」となった人は、もちろん日本の中ではいちばん
詳しいに決まっている。それはいいんです。ただ、その先が……。
西洋から獲得した知識をもとにオリジナリティのある新しい知を構築できたのかと言うと、
日本の場合、常に怪しかった。
新しい西洋の知を非常にカタログ的にきれいに紹介した。
それがニューアカのかっこよさでもあった。でも、不満も残る。
カタログから飛び出た、オリジナリティはどこにあるんだ、と。