朝鮮通信使、世界遺産へ申請　　日韓両国の民間団体が手を携え提出 [231982652]

朝鮮通信使　国境を超えて記憶遺産へ

　韓国・釜山と長崎県・対馬を結ぶ草の根交流から、新たな日韓友好の懸け橋が誕生することを期待したい。

　江戸時代に朝鮮が日本に送った「朝鮮通信使」の関連資料を世界記憶遺産にしようと、両国の民間団体が
手を携え、きのう国連教育科学文化機関（ユネスコ）に登録申請書を発送した。

　日韓の間では、歴史認識をめぐる不和と対立が、折に触れて表面化してきた。両国の市民が友好の歴史を
掘り起こし、「平和の遺産」として世界にアピールする意義は、極めて大きい。

　通信使の派遣と受け入れには、豊臣秀吉の朝鮮出兵で途絶した国交を回復し、友好関係を築きたいという
両国の願いがあったという。平和と友好の使者である。

　遺産登録を目指すのは、１６０７～１８１１年に計１２回、来日した通信使に関する資料で、日韓合わせて３００
点を超える。

　双方の国家機関が作成した公式文書や、漢陽（ソウル）から江戸まで往復４５００キロに及ぶ長い旅の記録
にとどまらない。両国の文化人の出会いから生まれた書画や詩文も含まれる。

　申請者は対馬市に拠点を置く「朝鮮通信使縁地連絡協議会」と韓国の「釜山文化財団」だ。２００２年から交
流を深め、記憶遺産登録に向けた構想を温めてきた。

　国と国の関係が冷え込んだ時期も親交を絶やさなかった。両国の専門家による学術委員会を設置して、慎
重に資料の選考と評価を積み上げてきた。粘り強い取り組みにあらためて敬意を表したい。

　南京事件資料（中国）やシベリア抑留資料（日本）のように、国家間で評価が異なる資料が記憶遺産に登録
され、これまで何度か摩擦が生じた。

　日本と韓国、中国、東南アジア諸国には長い交流の歴史がある。民間主導による２カ国の共同申請は、記憶
遺産を現代の友好に生かすモデルとしても注目される。

　日韓の友好と親善をさらに深めていくためにも、ユネスコから届く朗報を待ちたい。

＝2016/03/31付西日本新聞朝刊＝

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/234930

朝鮮通信使、世界遺産へ申請 日韓両国の民間団体が手を携え提出 [231982652]

朝鮮通信使、世界遺産へ申請　　日韓両国の民間団体が手を携え提出 [231982652]