http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016053002000125.html
◆記念品代や給与偽装 会員に収益還元か
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富士山の裾野にある陸上自衛隊東富士演習場の土地の一部を所有し、防衛省から賃貸料を受け取っている
一般社団法人「須走（すばしり）彰徳山林会」（静岡県小山町）が、名古屋国税局の税務調査を受け、
二〇一三年三月から一五年三月までの三期分で関連会社と合わせて約三億二千万円の所得隠しを指摘された
ことが分かった。重加算税を含め法人税約一億円を追徴課税され、山林会などは既に修正申告した。
山林会は、小山町須走地区が長らく共有地としてきた演習場内の山林や原野を管理するため、一九五五年に
設立された。会員は現在、須走地区の住民八十数人。信用調査会社などによると、土地賃貸料として防衛省から
年間六億〜七億円の収入があるとみられる。
関係者によると、会員の出資で関連会社「クリーン・サポート」（山梨県山中湖村）をつくり、山林の見回りや
除草作業など山林会の業務全般を委託。だが、実際には作業に従事していない会員にもクリーン社から給与が
支払われ、約一億五千万円が架空と判断されたという。
山林会の帳簿でも経費を水増しするなどして約一億七千万円分の所得を圧縮。一部の経費は「記念品代」
名目だったが実際には品はなく、全会員に現金で配られていたとみられる。
名古屋国税局は昨年秋に関係先を調査。山林会側は国税局に「会員への配分を増やしたかった」と
説明したもようだ。一般社団法人は法律上、会員への剰余金の分配ができない。そのため経費や関連会社の
給与を装った可能性がある。
このほか各会員も行政指導により、山林会などから得た所得を修正。所得税計三千万円程度を追加納税したとみられる。
山林会の当時理事長の男性は本紙の取材に「税務署と見解の相違があった。私どもは経費と考えていたが
指導に基づいて修正した。クリーン社はもう解散する」と話した。
非営利目的の一般社団法人が、記念品代や関連会社の給与を装って会員に収益を還元する−。
陸上自衛隊東富士演習場の地権者として、巨額の不動産賃貸収入を得てきた須走彰徳山林会は、
こうした仕組みで所得を意図的に隠したとして名古屋国税局から追徴課税された。
富士山の裾野に広がる原野は、昔から農家が山野草を採ったり木材を伐採したりする入会（いりあい）地
として利用。明治時代に演習場ができた後も、集落や旧町村ごとに共有地として所有権や入会補償の権益を
主張し、戦後はそれぞれが社団法人などをつくって地域で管理していた。
こうした団体の一つである山林会は、数百ヘクタールに上るとみられる演習場の一部の土地を所有。
賃貸収入を主な財源に、防災施設の管理運営や教育助成金などの公益事業をしてきたが、これに費やしても
余りある収益があった。
だが、一般社団法人は法律上、たまった剰余金を留保することはできるが、会員に分配することはできない。
山林会の事業にクリーン・サポートを介在させた理由について、ある会員は「山林会の収益を会員に還元する
目的があったと思う」と打ち明けた。
同様に演習場の賃貸収入を得る他地域の団体の幹部は「会員の利益を思って仕組みを考えたのだろうが、
言い訳にならない」と冷ややかだ。山林会の幹部の一人は「昔の役員が考えた仕組みだが、税のことを詳しく
聞かずに続けていた」と長年の慣行だったことを示唆し悔やんだ。