産経「神鋼や日産の隠蔽は余りにもひどい。が、フォルクスワーゲンの方がもっと酷かったよな…？開いた口が塞がらない」 [533895477]

製造業批判、あまりに記憶短いメディア　神戸大学大学院法学研究科教授・簑原俊洋

匠（たくみ）の技と職人根性。日本人はモノづくりに魂を吹き込み、極めて高品質のモノを作り出す。少なくともそれが海外での「メード・イン・ジャパン」に対する一般的な評価である。
誇りをもってよいものを作っているのだから、当然そこには欺瞞（ぎまん）が立ち入る隙などあろうはずもない。否、最近のニュースは、それが事実ではないことを如実に示している。
タカタ、東洋ゴム工業、そして今世間を騒がせている神戸製鋼所などは、日本が築き上げてきたブランドイメージを失墜させ、世界での信頼を大きく損なわせているのである。

昨今の日産自動車やＳＵＢＡＲＵ（スバル）によるルール違反も褒められたものではない。日本を代表する大手企業だからこそ、優れた品質のみならず、より高い倫理基準を持ち合わせていると世間一般では思われているが、昨今の報道により、それが単なる誤謬（ごびゅう）でしかない悲しい現実が露呈した。
産経が１０月２２日付の主張で「安全の基本損ねる背信だ」と企業を糾弾するのはもっともである。しかしながら、こうした事件がメディアの記憶に留（とど）まっている時間が、あまりにも短すぎるということはなかろうか。

神鋼や日産を擁護するつもりは全くないが、私には、一昨年の独フォルクスワーゲンのディーゼル車をめぐる排ガス不正の方がよほど悪質で規模が大きい欺瞞に思える。排ガス計測法の盲点を突いた上で、実際よりはるかにクリーンに見せかけるプログラミングを故意に仕掛けたのだから開いた口も塞がらない。
ところが、同１７日付産経夕刊（大阪本社発行版）の「ＣＡＲとれんど」はフォルクスワーゲン・ゴルフを「世界をリードする優等生」として取り上げ、ドイツ流の合理性と実用性を兼ね備えた小型車の「ベンチマーク」だとしてベタ褒めしている。
むろんゴルフは素晴らしい車なのかもしれないが、同車を製造している会社はユーザーを平然とだますとんでもない不正を行ったのもまた事実である。しかも、それが発覚して騒動を招いたのは遠い昔のことではなく、まだ記憶に新しい一昨年のことだ。
産経が厳しく神鋼などを批判してきただけに、この記事をどのように整合性を持たせて理解すればよいのか、正直、戸惑いを感じた。神鋼も２年を経てよい製品を生み出せば、「世界をリードする優等生」と称賛してもらえるのか…。

新聞を含むメディアはその性質上、新しい情報のフローを追うのが主たる目的なのは理解できる。しかし他方で、過去の積み重ねである情報のストックも重要だ。品質管理で他社に厳しい視線を向けるのなら、自らも一貫性を担保した視点から高水準の報道姿勢を意識する必要があろう。
http://www.sankei.com/column/news/171112/clm1711120006-n1.html