イラクで亡くなった香田証生さんの思い出 [264660287]

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中東ヨルダンの首都アンマンに「コーダホテル」と名付けられた安宿がある。２００４年１０月、イラクで武装勢力に拉致され、その後殺害された香田証生（しょうせい）さん（当時２４歳、福岡県直方市出身）を忘れないようにとの思いから命名されたホテルだ。
今月２０日でイラク戦争開戦から１５年。戦争とその後の混乱で、多くのイラク人のほか、ジャーナリストや外交官ら日本人も犠牲になった。ホテルの関係者は「事件は今も無念。日本の若者には彼のことを忘れないでほしい」と話す。

海外支援などに関心があった香田さんは、アンマンからバスで隣国イラクの首都バグダッド入り。現地で、国際テロ組織アルカイダ系武装勢力に拉致された。
「４８時間以内に自衛隊を撤退させなければ人質を殺害する」と要求された日本政府は「テロに屈しない」と拒否。期限が過ぎ、香田さんは遺体で発見された。当時、イラク国内は治安が極めて悪く、外務省は退避勧告を発令していた。

香田さんがイラクに行く際には、アンマンで宿泊していたホテルのヨルダン人従業員、サーメル・アルハメーディさん（４３）がバスのチケットを手配した。
アルハメーディさんは「イラク入りは危険だ」と説得したが止められず、香田さんが殺害されたのを知って深く心を痛めた。その後、すぐ近くのホテルに転職。
オーナーのアリ・アルサイダトさん（５４）と話し合い、０７年にホテルの別名を「コーダホテル（Ｋｏｄａ　Ｈｏｔｅｌ）」とし、日本語の看板も掲げた。

日本人女性と結婚し、現在は石川県で暮らすアルハメーディさんは「香田さんはジャーナリストになりたいと話していた。
負傷したイラクの子供の写真を手に、どうしても現地で確かめたいと譲らなかった。彼のことは今も忘れない」と話す。

アルサイダトさんは、ヨルダン中部の貧しい村の出身で苦学して高校を卒業した。「自分も苦労したから、世界中の若い人たちを応援する仕事がしたい」と２５年前からホテルを経営する。
アルサイダトさんも事件前に香田さんと会っていた。イラクへ出発する前に料理を振る舞い、数人の日本人旅行者らと一緒に食卓を囲んだという。
「香田さんを殺害した武装勢力の行為は、イスラム教徒として許せない。悲劇を繰り返さないためにも、コーダの名前をずっと残したい」

コーダホテルは、中東・アフリカ諸国を渡り歩く日本人バックパッカーの間では有名だ。
今月初旬に宿泊していた名古屋市南区の名城大４年、大山和馬さん（２２）は
「報道だけでなく、現地に行かないと分からないことは多い。（当時の彼と）同年代として、彼の行動は理解できる部分もある」と言う。
イスラエルとパレスチナ自治区に入る予定で「迫害されているというパレスチナ人の現状を見てきたい」と話した。【鵜塚健】

https://mainichi.jp/articles/20180319/ddp/041/030/012000c