お前ら、どこの族入ってた？　俺は幻龍会 [657177689]

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https://digital.asahi.com/articles/ASMDB3DS5MDBPTIL007.html

「暴走族の端くれ」だった社長　縁切れない白血病に決断

主治医が示した選択肢は二つ。
一つは、症状を和らげながらこのまま過ごすこと。余命は半年。
もう一つは、２度目の臍帯血（さいたいけつ）輸血。成功確率、５％。
２０１８年の初め、東京都港区の病院。白血病が再発していた。
「成功確率５％の勝負なんて、ビジネスの世界なら普通にある」。松井理悦（まさよし）（４０）に迷いはなかった。唐揚げ専門店「天下鳥ます」を国内外で３０店舗展開する「アジアンアキンド」社の社長だ。
◇
大阪市港区で生まれ育った。体が小さく、野球はからきし。空手も電子オルガンも続かなかった。勉強も身が入らなかった。
高校では「暴走族の端くれ」に。２年生の時、バイクで暴走中に転倒、警官から逃げようと高所から裸足で飛び降り、両足のかかとの骨を折って入院した。
退院の日が転機になった。多額の入院費用を払う母の姿にハッとした。「今のままではだめだ」。
卒業後に働いてためた５０万円を持って２０歳で上京。昼間は働きながら、専修大学の２部で学んだ。
高田馬場で「天下鳥ます」１号店をオープンしたのは２６歳の時。水道管製造販売業を営む父の背を見て育ち、経営者の道しか考えられなかった。
◇
良い時もあれば悪い時もあるのが商売だ。ローソンのからあげクンに「天下鳥ます監修タルタルソース味」が採用され意気盛ん。業者に売り上げを入金してもらえず、怒り心頭。
おなかにはり出た脱腸が気になって受診した１４年は、不採算店舗の店じまいがうまくいかず、１２００万円の負債を抱えて寝る間もなく働いていたころだった。
「ご結婚されていますか」「独身です」「ご家族を呼べますか」「僕に言ってください」。診察室でのやりとりの後に告げられた白血病という病名に現実感はなく、「映画みたいや」と笑えてきた。
通院し、３割負担でも１錠６千円する薬を毎日飲む。６千円×３０日＝１８万円。月に１８万円の薬代と診察代が重かった。
今ならわかる。いったん支払っても、手続きをすれば返ってくるお金だと。でも、高額療養費制度なんて理解していなかった。何より、お金は目先の商売の支払いに使いたかった。関わってくれている人たちに迷惑をかけられない――。
薬を買わずに半年。一晩中鼻血が止まらず、救急車で運ばれた。慢性から急性へと悪化した白血病の治療は急を要し、１５年に一度目の臍帯血移植を受けた。成功してビジネスの最前線に復帰、白血病とは縁が切れたと思っていた。
なのに。２年半後に再発、余命半年か、成功確率５％という２度目の臍帯血移植かを迫られた。
前だけを見て、移植を選んだ。「しんどい時は、心の中でなんとかなるさを繰り返す。ぐちぐち言わず、開き直る」
メンタルが強い、我慢強い、と言われる。根っこは小柄だった大阪での少年時代にある。小さいからって負けたくない。なめられたくない。そこで培った勝ち気さは商売
、闘病で、生きた。「失敗すると思って商売始めるやつはいないでしょ？病気だって、全部治るという線で考える。シンプルに」
◇
２度目の臍帯血輸血を含む治療では、１年を超える入院を余儀なくされた。６０キロあった体重は半分ほどになった。退院後も車いす生活を送る。昨年末には目の白内障の手術も受けた。
車いすの低い目線で過ごす日常は、これまで知らなかったことばかりだ。車いすの運搬が面倒なのだろう、乗車拒否するタクシー。人混みの中、車いすの前を止まらずに横切る大勢の人。
でも、道路に身を乗り出してタクシーを止めてくれる通りがかりの人がいる。坂道で、そっと車いすを押してくれる人もいる。
輸血で、臍帯血で、名前も知らない多くの人の愛情と応援でながらえた命。病気を経て今、思う。
人生は、いかに多くの人を幸せにするかというゲーム。
どうやって幸せに？
自分にとっては経営だ。ビジネスが成功してこそ、３０店舗で働くスタッフを、その家族を幸せにできる。目指すは、１００店舗。
弱気になる時は寝てしまえ。起きたらまた、負ける気はしなくなる。
ニューヨーカーたちが「天下鳥ます」のからあげを手に闊歩（かっぽ）する日は、すぐそこだ。

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