ともさかりえ [488086894]

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https://digital.asahi.com/articles/DA3S14494816.html

妻子失った店主の「抵抗」　ブルキナファソ・ワガドゥグ

　「私は４年前に死んだ。家族を失い、ゾンビになったんだ」。西アフリカにあるブルキナファソの首都ワガドゥグ。特製のタルトやクロワッサンが陳列された人気カフェ「カプチーノ」を営むサントメーナ・ゲータンさん（６２）は、語気を強めた。

　２０１６年１月、武装したイスラム過激派が、カフェの客やスタッフに向けて銃を乱射する事件が起きた。向かいにあるホテルも襲われ、３０人が死亡、７０人以上が負傷した。隣国に出張していたゲータンさんは、ニュース番組で自分の店が映っているのを見て目を疑った。翌日に飛行機で戻ったが、規制されて店内に入れなかった。しばらくして、妻（４０）と息子（１１）が犠牲になったと知った。

　元々はイタリア出身だ。経済成長を続けるアフリカ大陸に商機を感じ、ブルキナファソに移住。１１年に家族と店を開いた。事件後しばらくは無力感に襲われたが、１年半後に店の再開を決めた。「このまま閉店すれば、テロリストの思うつぼ。以前と変わらず経営することが、抵抗の手段だ」。銃を持った警備員を雇い、防弾ガラスを設けた。客は荷物・身体検査を受ける。緊急時には中からドアを閉じ、外から侵入できないようにした。

　正直、経営は苦しい。事件前は昼時になると店内やテラス席が満席になったが、客足は遠のき、売り上げは８割近く減った。それでも、「再開は商売のためじゃない。家族や犠牲になった人たちとの記憶を残すためだ。この国のことは好きだし、息子が育った場所だから」と語った。

　襲撃で精神的なショックを受け、店を去ったスタッフも多いなかで、開店当初から勤めてきたアズスフィアン・ウィドゥラウゴさん（３３）は残った。事件当時は配達中で、たまたま難を逃れた。「また襲われるのではないか、という怖さはある。でも、信頼する店主を支えたいと思った」。店の切り盛りを任され、「大黒柱」と頼られるまでになった。

　新型コロナウイルスの影響で、カフェは４月１７日から閉店を余儀なくされているが、ゲータンさんたちは再開に向けて動きだしている。客やスタッフの体温検査やマスク着用を徹底し、テーブルの間隔も空けるつもりだ。今の願いを聞くと、こう返ってきた。「平和な社会になること。安全でなければ、商売も投資もできないからね」