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https://digital.asahi.com/articles/DA3S14637060.html

立石涼子さん　俳優

■かれんで達者、愛し愛された

　８月２日死去（肺がん）　６８歳

　芝居がうまくて、華があって、この人が舞台にいると、作品の厚みがぐっと増した。

　つやのある声が、とびきり魅力的だった。時に甘くかわいらしく、時に低いトーンで知性や色気を醸しだし、口跡の良いせりふを豊かに彩った。

　長崎市の高校を卒業し、日本航空の客室乗務員になって空を飛んでいたが、思い立って文学座研究所へ。２４歳で演劇集団円に入った。

　多彩な役を演じたが、２００４年に主演した「ビューティークィーン・オブ・リーナン」は圧巻だった。１９９６年に英国留学した際に初演を見てほれこみ、当時日本ではまったく無名だった劇作家マーティン・マクドナーのデビュー戯曲を持ち帰った。時間をかけて劇団内を説得し、上演にこぎつけた。

　演じたのは、アイルランドの田舎町で、確執を抱えながら老母と暮らす女性。閉塞（へいそく）した日常を、掃除をしてきた鳥小屋の臭いまで漂ってきそうな濃厚な生活感のある表現で描き出した。だが、男性と過ごす夜の場面では一転、陰気な表情を突き破って、みずみずしい美しさと官能性が鮮烈にほとばしる。

　この役と、英国の鬼才サイモン・マクバーニー演出「エレファント・バニッシュ」の演技で紀伊国屋演劇賞に輝いた。

　演出家・蜷川幸雄さんからの信頼は絶大だった。００年の大作「グリークス」に出演して以来、西洋の古典から日本の新作劇まで、ひっきりなしに起用された。「老婆」といった役もおもしろがって引き受け、稽古場で経験の浅い俳優に積極的に助言する姿勢も頼りにされた。

　俳優の吉田鋼太郎さん（６１）は「昔から憧れの人でした」と語る。学生時代、恩師が演出する円の稽古場へ見学に行き、シェークスピア喜劇を演じる姿に目を奪われた。「かれんで、美しくて、芝居も達者で。なんてすてきな女優さんだろうと思いました」

　同じく蜷川作品の常連になり、１３年にはシェークスピア劇「ヘンリー四世」で共演。大酒飲みの老騎士フォルスタッフと居酒屋のおかみの丁々発止のやりとりに客席は大いに沸いた。「こちらがどう仕掛けても、堂々と、かわいらしく受けて、演じ返してくれる。毎日楽しかったですね」と振り返る。

　お酒を飲みながら演劇を語る舌鋒（ぜっぽう）は鋭かった。「歯に衣（きぬ）着せぬダメ出しにちょっとひるんだけれど、言うことはいつも的を射ていたなあ」

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