ブレーキランプ５回点滅ってなんのサインだっけ？ [434383468]

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9・11から生還、運良かったわけじゃない　16年後のPTSD診断

りと違うと言える。「あの日、運が良かった人間なんて、ただの1人もいなかった」

「おい、命が危ない！　逃げろ！」
　01年9月11日は、ニューヨーク市長選の予備選の投票日だった。マンハッタンに住んでいたバージェロンさんは投票を済ませ、いつものようにスターバックスでベンティサイズ（590ミリリットル）のモカを買ってから、午前8時ごろ、世界貿易センター（WTC）ビルの北棟に入った。

　ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社で、広報部長として働いていた。その日は自社のウェブサイトの更新のため、上司と打ち合わせをする予定だった。オフィスは68階。快晴で、窓から自由の女神がくっきりと見えた。

　午前8時46分、北棟が前後に揺れた。相次いでハイジャックされていた旅客機が、まず北棟に突っ込んだ時間だ。デスクとともに3メートルほど前方に押し出され、すぐにまた、元の位置に引き戻される。それまでも強風で揺れることはあったが、異常だった。

　最初の印象は「小さな飛行機がコースからそれたのだろうか」。冷静だった。港湾公社はWTCビルの建設、運営を担っていた。メディアに対応する必要があると考え、近くのホテルに連絡用の部屋を整えるよう、同僚に指示を出した。

　「おい、命が危ない！　逃げろ！」。誰かがフロアに来て、叫んだ。こう返した。「パソコンの電源を切らせてもらっていい？」

　しばらくして避難しようとすると、テレビ局から中継したいと電話がかかってきた。「いまから逃げるので」と答えた。旅客機が、人を殺すために故意に高層ビルに突っ込む――。「そんなこと、想像できなかった」

崩れ落ちた南棟「もうダメだ」
　68階の踊り場に出た。法人向け情報端末「ブラックベリー」で、先に避難を始めた同僚にメッセージを送ると、「まだ58階」という。階段は混雑していた。

　ハイジャックされた旅客機は1機だけではなかった。午前9時3分、南棟に2機目の機体が突っ込む。

　バージェロンさんは非常階段を下り、36階ぐらいまで来たところで、友人からAP通信の速報記事を受け取った。《WTCビルにテロ攻撃》。パニックになってはいけないと周りには知らせず、階段を下りる人たちには「列になって動いて」とだけ告げた。

　しばらく大きな混乱はなかった。ただ、午前9時59分、後から激突された南棟が崩れ落ちた。

　バージェロンさんはそのとき、まだ北棟6階。「大地がうなる音がした」。隣のビルが崩壊したに違いない――。衝撃で北棟もねじれ、パイプが破損し、階段がふさがれた。「もうダメだ」と思った。文字通り、死を覚悟した。

　座り込み、どうすべきかを考えていると、警察官が現れた。「階段を上がってこい」。声に導かれ、迷路のような建物内を歩く。ガラスや電線が散乱している。すると、別の階段にたどり着いた。

　突然、視界が真っ白になった。「吹雪のように」粉じんが舞っている。足元には、水も押し寄せていた。

　「この光が見えたら、光の方向に歩け」。誰かが懐中電灯を照らしてそう叫ぶ。指示に従い、建物の外に出る。敷地内の38段の階段を下がり、ようやく地上に降り立った。

　「生存者の階段」。後にそう呼ばれることになるその階段は、地上に出る最後の手段だった。パンプスにスカート姿のバージェロンさんは、「巨大な黒い煙」にのみ込まれる地上を、息つく暇もなく走った。

　午前10時28分、北棟も崩れた。バージェロンさんが最初に北棟で「揺れ」を感じてから、102分後の出来事だった。

遺族「あなたたちが殺した」
　港湾公社の幹部として、直後から臨時オフィスで仕事に当たった。まずは職員や家族からの連絡を受け、誰が生きのび、誰が亡くなったのか、一人ひとり記していった。最終的に、港湾公社では警察官も含め、84人が命を落としたことがわかった。

　8カ月間、臨時オフィス近くのホテルに泊まり、1日も休まずに働いた。犠牲者のうち、33人の葬式に出た。6～7人の遺族から「あなたたちが殺した」と、ビルの運営者として怒鳴られるときもあった。

　ひたすら目の前の仕事に打ち込み、じゅうぶんに振り返る時間も、同僚を悼む時間も持てなかった。殻に閉じこもるかのように、「ゾーンに入っていた」。

　06年に港湾公社を辞め、フロリダ州の企業で新たに広報の仕事を始めた。温暖な気候にひかれた。だが、11年に経営の悪化を理由に解雇された。ちょうど同じ頃、母親がステージ4の肺がんと診断された