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郊外から都市部へ…大学キャンパスの都心回帰が増加　「学生の確保」以外の理由は？

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大学のキャンパスが、郊外から再び都市部へ移転する動きが目立っています。背景には、学生確保のためだけではなく、時代の変化に伴って求められる学部の改組・再編や、デジタル化への対応などがあります。（イメージ図＝2024年３月竣工予定の東洋大学朝霞キャンパスの鳥瞰　図／東洋大学提供）

東洋大は群馬県・板倉キャンパスを埼玉県に移転
東洋大学の板倉キャンパス（群馬県板倉町）は、東武日光線・板倉東洋大前駅の徒歩圏にあり、広大なキャンパスで生命科学部と食環境科学部の学生が学んでいます。両学部はこのキャンパスから24年4月に朝霞キャンパス（埼玉県朝霞市）に移転する予定です。その理由について、食環境科学部長の福森文康教授はこう語ります。
「総務省の統計では、板倉キャンパスのある群馬県と、茨城県、栃木県を合わせた北関東３県は、関東の中でも人口減少が目立ちます。板倉キャンパスで最も多いのは、埼玉県から通う学生ですが、東京都や千葉県から３時間近くかけて通学する学生もいて、通学時間の短縮が課題の一つでもありました」

東洋大学の調査（23年７月時点）によると、板倉キャンパスに通う学生は学部生、大学院生を合わせて約1800人。このうち自宅から通う学生が77％を占め、１都３県（東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県）から通う学生が半数を超えています。このような状況から、この移転は多くの学生にとって、利便性の向上につながることが期待できるといいます。

キャンパスのデジタル化
キャンパスを移転する理由は、もう一つあります。それは学部の改組・再編に伴うものです。板倉キャンパスにある生命科学部と食環境科学部の２学部４学科に、川越キャンパスにある理工学部生体医工学科を統合し、「生命（いのち）と食」をテーマにした２学部６学科として再編することが決まりました。

「新設するフードデータサイエンス学科（食環境科学部）などで、デジタル化に対応した学習環境が必要になりました。また、既設学科でも、調理などの設備を新しいものにすることを議論した結果、『それならば新しいキャンパスをつくったほうがいいだろう』ということになりました」（福森教授）

実験設備を新しくし、学部学科の垣根を越えた研究や学習ができるスペースをレイアウトすることで、新たなイノベーションの創造を期待しています。
文理横断教育やデジタル化対応など、時代に合わせたキャンパスを設置する動きは他大学でも見られます。例えば、中央大学法学部は23年4月に、茗荷谷キャンパス（東京都文京区）を開設し、多摩キャンパスから移転しました。都心にあった法科大学院（ロースクール）と連携した法曹教育が展開しやすくなったほか、理工学部（後楽園キャンパス）、国際情報学部（市ケ谷田町キャンパス）と3つの都心キャンパスで文理横断教育を始めました。茗荷谷キャンパスでは、情報通信技術（ICT）を活用した授業にも対応し、屋上庭園やラウンジなども備えています。

都心キャンパスは就活にも便利
東洋大学板倉キャンパスの学生たちは、朝霞キャンパスへの移転をどう思っているのでしょうか。生命科学部長の鳴海一成教授は、「予想以上に、歓迎の声が多くて驚きました」と話します。

「『通学が便利になる』という声のほか、『都心に近いので就職活動がしやすい』『アルバイト先がたくさんある』といった声も聞きます。もっとも現在の板倉キャンパスに愛着のある学生も多いと思うので、残り少ない板倉キャンパスでの生活を満喫してほしいと思います」

キャンパスの立地や設備は、思いのほか学生生活を左右します。大学選びの際は、こうした学びの環境も考慮したほうがいいでしょう。

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