【産経】外国人だけが知っている美しい日本 [323988998]

隠れた魅力の数々と課題

　「山梨県富士吉田市の忠霊塔って知ってる？　日本人にはあんまり知られてない場所だけど」と某エッセイストに聞かれた。知らない。
「外国人にすごい人気らしいよ。なぜかっていうと…」。その理由が面白かったので、ネタ本を買って読んでみた。

　著者は月間１千万ＰＶという超人気の外国人向け日本観光サイト「ジャパンガイド」を運営する群馬県在住のスイス人。
異邦人の視線で日本や日本人を見ると面白い－という類書はたくさんあるけれど、「観光のプロ」という視点は明快で新鮮だ。
たとえば「ジャパンガイド」による２０１３年のテーマパーク特集。満足度調査で１位東京ディズニーシー、２位東京ディズニーランドに続いて３位に入ったのはどこか？

　答え＝ナガシマリゾート。って、行ったことがあるどころか、どこにあるかわからない人もいるのでは。三重県桑名市ですね。
人気の理由は「スパーランド」のジェットコースター、「なばなの里」の花とイルミネーション、そして温泉施設が一度に楽しめるからだとか。

　基本的には「隠れた魅力の数々」を語っているけれど、手厳しい意見も傾聴に値する。課題のひとつとされているのはローカルバス。
鉄道との接続の悪さ、外国語の情報の乏しさ、そして渋滞と混雑。京都は名指しで、バスを利用せず〈できるだけ地下鉄や鉄道を使い、あとは歩くように〉だって。

　東日本大震災についての章も読みどころ。〈ショックだったのは、欧米でいちばんポピュラーな旅行ガイドブック『ロンリープラネット』の日本編で、
震災後に発行された本から岩手・宮城・福島の三県に関する情報がまったくなくなったことです。世界遺産の平泉すら、紹介されていませんでした〉。
そんな状況で著者は日本からの情報発信を試みた。被災地へ入り、被害の爪痕も含めて「東北はどうなっているのか」をリポートし続けている。

　そうそう、冒頭の忠霊塔が人気の理由。春に「富士山と桜と五重塔」が１枚の写真に収められる場所なんだって。（大和書房・１３００円＋税）
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140914/bks14091408300003-n2.htm