在日米陸軍司令部がある米軍基地「キャンプ座間」（神奈川県）の消防隊に所属する日本人
従業員の男性（４４）が、正当な理由がないのに無期限の出勤停止を命じられたことで精神障害
となり、厚木労働基準監督署が昨年末、労災認定していたことが分かった。
在日米軍基地の日本人従業員は防衛省の出先機関が雇用しており、男性は
「防衛省は基地内の職場にもっと目を光らせてほしい」と訴えている。
日本人の基地従業員でつくる全駐留軍労働組合（全駐労）によると、同組合が把握する限り、
精神疾患と基地業務の因果関係が認められたのは初めて。
労基署によると、男性は基地の飛行場の消火に当たる消防隊で、米国人の消防隊長や十数人
の日本人隊員と勤務。
男性は二〇一五年十二月、「同僚に男性上司の悪口を言った」といううわさを広められ、
隊長から無期限の出勤停止を命じられた。
男性に釈明の機会はなく、出勤停止中は給与の六割しか支払われず、男性は心的外傷後
ストレス障害（ＰＴＳＤ）や、うつ病などと診断され、一六年三月に労災申請した。
労基署の調査では、男性が言ったとされる悪口は確認されず、労基署は
「ぬれぎぬで無期限の出勤停止という重い処分を命じられ、心理的負荷は強い」
と判断。
同十二月、「業務に起因する適応障害」と労災認定した。
男性は一六年六月、「訴訟を検討している」と基地側に伝えたところ、数日後に出勤停止が
解除され、翌月から別の消防隊で仕事に復帰。減額された給与の差額も支払われた。
男性によると、一〇年に妻の出産を理由に休んだことで、複数の日本人上司から飲酒の席で
土下座させられたり、殴られたりするパワーハラスメントを受けたこともあったという。
在日米陸軍は本紙の取材に「雇用者の防衛省に聞いてほしい」とした。
防衛省の出先機関・座間防衛事務所の豊島浩二所長は「男性が労災認定されたのは本人
から聞いた。重く受け止める」と述べた。
◆「氷山の一角」地位協定の壁
米軍基地で働く日本人従業員の職場環境について、全駐労の紺谷（こんや）智弘委員長は
「異動が少なく、軍ならではのトップダウン気質もあり、人間関係のトラブルが起きやすい」
と明かす。
今回、労災認定された男性は「私は氷山の一角だ」と話す。
全駐労によると、最新の集計の二〇一三年度、心の病を理由に三カ月以上休んだ従業員は
百二十六人。
一方、従業員の募集などを行う駐留軍等労働者労務管理機構によると、一五年に心の病に
よる労災申請は一件だけだった。
申請のハードルを高くする一因に日米地位協定がある。
米軍が管理する基地内に許可なく日本側が入ることはできず、労基署関係者は「中に入って
調べることは現実的には難しい」と言う。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017030702000124.html
今回の男性のケースで労基署は、在日米軍に聴取には応じてもらえなかったが、防衛省を
通じて基地側から提出された書面で分かった事実と、無期限の出勤停止処分の重さなどを
検討して労災を認定した。
在日米軍基地について詳しい沖縄国際大大学院の前泊博盛（まえどまりひろもり）教授は
「私は基地の日本人従業員からパワハラは頻繁にあると聞いた。
全駐労などが申し入れても日本政府はまともに向き合わない。
日本国民をしっかり守る姿勢を政府は示すべきだ」
と注文する。
＜在日米軍基地の日本人従業員＞
キャンプ座間の約１５００人を含め、全国８都府県の基地に約２万５０００人がおり、約１万６０００人
が全駐労に加盟する。防衛省の出先機関が雇用し、各基地に派遣、米軍は使用者となる。
職種は通訳や車両の維持管理など約１３００あり、資格の種別ごとに雇用されるケースが多い。
原則として国内法の適用を受けるが、基地内での業務については日米地位協定に基づき
別個に定めたルールが優先される部分もある。
労基署から業務上の適応障害と認定された書面を示す男性
＝横浜市内で（一部画像処理しています）（井上靖史撮影）
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/images/PK2017030702100042_size0.jpg
期間短えなおい