女さん「旦那が急に「実は、僕は女なんだ。でも、君や息子、仕事も失うかと思うと、怖くて言い出せなかった」とか言い出した」 [372215213]

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「普通」って何？トランスジェンダーの苦悩　イギリス
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結婚１５年を家族で祝った２日後のことだった。スティーブン・テイラー（４９）は妻のデニーズ（４５）に「実は、僕は女なんだ。ずっと言おうと思っていた。でも、君や息子、仕事も失うかと思うと、怖くて言い出せなかった」と打ち明けた。

８歳の頃からだったろうか。男であることに違和感があった。
それがどうしてか分からないまま結婚、息子も生まれた。
だが自分がトランスジェンダー、生まれながらに心と体の「性」が異なっていたことを知り、悩んだ末の告白だった。

「２０１０年１１月１５日よ、あの日は一生忘れないわ」とデニーズ。
傍らで１５歳の息子が「あの日、お父さんがお母さんになっちゃった。お母さんがふたりになったんだ」と、今は屈託ない。

だが、この７年間は一家にとって、偏見と差別の中で「性」という壁を越える闘いでもあった。

幼い頃、男の子の服を着ている自分は醜いから鏡を見るのが嫌だった、でも女の子の服を着るときれいでかわいいと思った。そんな感覚は大人になっても続いた。

「僕は男なんだ、女だと思うことは間違いだと言い聞かせていた。いつも自分の中で男と女が争っていた」。そんな葛藤から逃れたくて、あえて“男社会”の英海軍に入隊、湾岸戦争も経験した。

悩んだ日々を、柔らかなしぐさで、表情豊かに語る。ピンクのＴシャツに花柄のジーンズ、きれいに手入れした爪と指。握手もそっと、優しい。

結婚後も、こっそり女装していた。「デニーズが本当の僕を察してくれるかもしれない」と思い、アクセサリーを洗面台など妻の目に付きそうな所に置いたままにしたことも。
デニーズは「全然分からなかったわ。この人、浮気してるんじゃないかしらって疑っていたんだから」と笑う。

一家の相談相手になり、支えたのがトランスジェンダー支援団体の「ＧＩＲＥＳ」だった。
創設者、リード夫妻の息子はトランスジェンダーで、職場でひどいいじめを受けて自殺未遂、命は取り留めたが、今も車いすの生活だ。
「私たちは何の兆候も気付かなかった。なぜ相談してくれなかったのか」という後悔から１９９７年にＧＩＲＥＳを立ち上げた。

夫妻は自分たちのつらい経験を踏まえ「私たちはトランスジェンダーの何も知らなかった。知識の普及と、特に未成年の患者のケアが大切」と訴える。
９７年に全英で五つだった支援団体は２０１７年末現在で約４００に増え、専門医に相談に訪れた未成年は１２年に約２００人だったが、１６～１７年３月までの１年間では２０１４人に急増した。

理解は徐々に広がり、男女別の制服規定を廃止したパブリックスクールもある。
これを歓迎する声もある一方、異論は根強い。ロンドン近郊のロイヤル・ラッセル校の対外部長グラハム・モズリーは「検討もしていないし、将来の導入も考えていない。男性は男性、女性は女性の服装があって当然だと思う」と言う。

家族に打ち明けた後に社会人入学した大学で、自身がトランスジェンダーであることを告げた。
大学は「君を『ｈｅ（彼）』と呼ぶのか『ｓｈｅ（彼女）』とすべきなのか」などと逆に相談を持ちかけ、スティーブンと協力し全国に先駆けてトランスジェンダーの学生に対する指針を作成。
スティーブンは女として卒業し、ケント州シッティングボーンに住み放射線技師として病院で働く。

１２年にクリスティアーナに改名、戸籍も変更した。女の子が生まれたら付けようとデニーズが考えていた名前だった。保険証、運転免許証などは変えたが、出生証明書だけは変えられなかった。