「死にたい」─いじめで絶望した小人症の男の子を救ったラガーマンたち [144615274]

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「僕にナイフをちょうだい」

ラグビーファンの歓声がとどろくスタジアムに、クエイデン・ベイルズ（9）が屈強なラガーマンたちと一緒に入場してきた。
クエイデンは左手にボールを抱え、右手はスター選手ジョエル・トンプソンの大きな手に引かれていた。
2月22日のその試合は、クエイデンの「嵐のような一週間」を笑顔で締めくくってくれた感動のイベントだった──。

オーストラリア・クイーンズランド州に住むクエイデンは正常な骨の成長が阻害される「軟骨無形成症」を患っている。いわゆる「小人症」の一種だ。
その低身長を他の子供たちにからかわれ、ひどいいじめを受け続けたクエイデンは、自殺を考えるまでに追いつめられた。

母親ヤラカ・ベイルズは先週、クエイデンが「死にたい」と泣き叫ぶ動画をフェイスブックに投稿。いじめが息子の心に深い傷を負わせていることを訴えた。

「僕にナイフをちょうだい」と、クエイデンはその動画で涙ながらに言う。「自分を殺したいんだ。いますぐに死にたいんだ！」
そう叫ぶクエイデンを撮影していた母親はカメラを回しながら言った。
「これが、いじめがもたらしたものです。この子は、いじめのせいでこうなってしまったんです」

その痛ましい動画はすぐに世界中に広がり、多くの人の心を揺さぶった。
米コメディアンで、自身も小人症であるブラッド・ウィリアムズは19日、クエイデンをディズニーランドへ行かせてあげるためのクラウドファンディングを開始。
すでに50万ドル近くが集まっている（24日時点）。

オーストラリア出身の俳優ヒュー・ジャックマンもツイッターに動画を投稿、
「クエイデン、君は自分が思っているより強いはずだ。どんなことがあっても、僕は君の友達だよ」と呼びかけた。

人生最悪の日から最高の日へ

さらに、豪ナショナル・ラグビー・リーグの「先住民オールスターチーム」がクエイデンを22日の試合に招待することを発表。
選手らは動画で、「俺たちはここにいる。俺たちは君の味方だ」と、クエイデンにメッセージを送った。

クエイデンも選手らと同様に、オーストラリアの先住民アボリジニの血を引いている。

試合の前日、クエイデンの母親ヤラカは記者会見を開き、「人生最悪の日にあった息子はいま、人生最高の日を迎えている」と語った。

「世界では、いじめと差別のせいで、とても多くの命が失われています。いじめの要因にはいろいろありますが、アボリジニであり障がいのある息子は、二重の差別に苦しんでいます」
「先住民オールスターチーム」の選手らと一緒にスタジアムに入ってきたクエイデンは、大きな歓声で迎えらえた。
入場のBGMは、アボリジニの木管楽器「ディジェリドゥー」の演奏だった。

レフリーにボールを渡したクエイデンは、両チームのキャプテンと記念撮影に臨み、親指を立てて「サムズアップ」のポーズを世界へ送った。

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