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https://digital.asahi.com/articles/DA3S14352406.html

（Ｍｅｄｉａ　Ｔｉｍｅｓ）「スーパーカー番組」疑惑続々　ＭＸ放送

高級外車をかけたゲームに勝ち抜いたホストに賞品が渡っていなかった――。そんな問題が明らかになった東京メトロポリタンテレビジョン（ＭＸ）が放送したバラエティー番組に、別の疑いが浮上している。
■出演者から「集金」／広告放送の恐れ
問題になったのは３０分番組「欲望の塊」。ＭＸによると、都内の企画会社が、番組制作も担う代理店を通じて納品した「持ち込み番組」で、昨年１～３月に放送された。内容は、ホストクラブに勤める男性らが
「２千万円相当の超高級スーパーカー」をかけてゲームで競うものだった。
だが今年１月、優勝者がツイッター上で賞品をもらえていないと訴えた。ＭＸが調べると、賞品だけでなく、出演タレントのギャラや制作会社への制作費も、負担すべき企画会社から支払われていなかった。
ＭＸは、企画・制作に関わっていないため、番組の制作著作権は自社にはないとしつつ「放送責任は当社にあると考えております」との見解をホームページ上で示して謝罪。企画会社と現在連絡が取れないが「
事実確認の調査を進め、番組企画会社と関係当事者との間の解決に向け努力してまいります」とした。ただ、問題発覚後に、企画会社の担当者が自殺とみられる遺体で発見されており、究明はより困難が予想される。
さらに、別の問題も浮上する。参加者の一人によると、出演にあたり１５０万円を支払っていた。「店の宣伝にもなると思った」という。企画会社は、複数の参加者から「広告宣伝費」と
称して番組制作のための資金を集めていたと説明する。番組ではホストクラブの店名と源氏名をテロップなどで示した上で、彼らが終始ゲームをする姿を放送、ＣＭはなかった。
放送現場に詳しい立教大学の砂川浩慶教授（メディア論）は、現在ＭＸの放送番組審議会の副委員長も務めており、今回の事態を重くみる。番組自体が広告放送の恐れがあると指摘。放送局が広告放送するには
視聴者が明確に広告放送だと識別できるよう義務づけた放送法に抵触する可能性があるというのだ。日本民間放送連盟は、番組の合間に挟むＣＭの形をとることで識別できるようにする必要があるとしているが
そうなっていない。民放連の基準で禁じる「個人的な売名を目的とした広告」に該当する恐れもあるという。
広告放送を巡っては昨年、長野放送の番組が広告か番組かが識別しづらかったとして、放送倫理・番組向上機構（ＢＰＯ）が放送倫理違反にあたるとする意見を出した。その後もＢＰＯは２局の番組について
同様の疑いで審議入りしている。砂川教授は「番組と広告の境目を明確にするのは、視聴者の混乱を防ぐためであり、そのルールを破る行為は放送の信頼を低下させるもので、放送局の責任は重い」などと語る。
ＭＸは、番組が広告放送だったかどうかについて、「出演者が金銭を支払っていることは、弊社は把握していなかったので、広告放送にはあたらないと判断しました」と答えた。
■「持ち込み番組」また問題化
ＭＸでは２０１７年にも持ち込み番組だった「ニュース女子」の沖縄基地反対運動の特集で、番組内容を適正に考査せず、事実の裏付けもない内容を放送したとして、ＢＰＯに重大な放送倫理違反を指摘された。
ＭＸはそれを機に組織や人員を強化し、考査体制を改めた。だが、今回、台本や完成したＶＴＲの考査は行ったものの、制作過程のチェックや優勝賞品の受け渡しの確認まではカバーできなかった。
ある在京キー局関係者は「持ち込み番組の場合、局からもプロデューサーを一人立て、内容が広告宣伝にならないようチェックしている」と話すが、今回ＭＸは、そうした体制を取っていない。
持ち込み番組は、制作費の負担がないため局にとってはうまみが大きい。とりわけ経営体力のない地方局は、今後も頼るケースが増えるとみられる。
元毎日放送プロデューサーの影山貴彦・同志社女子大教授も「地方局にとって多少負担になったとしても、企画・制作に関わらない持ち込み番組にこそ、制作過程をチェックできる仕組みが必要だ」と指摘する。