大技林の思い出 [872146238]

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「食後のおとも」に歴史あり　職人技伝える、楊枝資料館

再開発ビルが立ち並ぶ大通りの裏に入ると、料理屋、しもた屋、小さな2階建てが肩を並べる小路がある。東京都中央区日本橋室町。紺地ののれんを掛けた真っ白な建物が、全国でも珍しいようじの専門店「日本橋さるや」だ。30平方メートルほどの店内の一部が「楊枝（ようじ）資料館」になっており、「食後のおとも」の歴史を垣間見ることができる。

　創業は1704（宝永元）年、5代将軍綱吉の時代という。奈良時代に仏具とともに中国から伝わったとされるようじは、江戸時代に庶民に広まった。

　店内に飾られた歌川国芳の浮世絵には、江戸末期の「さるや」の店先のにぎわいが描かれている。「くしなどの小間物も売っていたことがわかります」。9代目店主、山本亮太さん（38）が説明してくれる。
「これが当時のようじです」と指さしたのは、先が筆状に裂かれた房ようじ。現代の歯ブラシの用途やお歯黒用に使われていた。ようじの店は江戸だけで数百軒あり、多くが「さるや」の屋号だったという。「猿は歯が白いから、とも、猿を連れて売り歩いた人がいたから、とも言われています」

　後年、店が復刻した房ようじが展示されている。筆状の部分の反対側がとがっているのは、いまの歯ブラシとつまようじを兼ねていたかららしい。明治時代に欧米から入った歯ブラシが取ってかわり、つまようじが残って、いまにいたる。

　趣向を凝らした細工ようじの展示が楽しい。節をかたどった切り込みのある「竹」、閉じた扇子の形の「末広」。「のし」「白魚」「キセル」「鉄砲」もある。微妙にくねった「うなぎ」は実際にうなぎ屋で使われていたという。小さな日用品に込められた、江戸っ子の遊び心と職人技が見てとれる。

　材料はすべてクロモジの木だ。現代の消耗品に使われているシラカバに比べて歯あたりがよく、折れにくく、高級ようじの代名詞でもある。料亭や高級和菓子店で使われるほか、縁起物の贈答品としても重宝されている。
「軽くて場所を取らず、うんちくも語れる。しゃれたプレゼントになります」と山本さん。ゆくゆくは、漆塗りなど各地の特徴あるようじも集めて展示したいと考えている。（湯瀬里佐）

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　楊枝資料館（03・5542・1905）＝東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅から徒歩5分。午前10時から午後6時。日曜、祝日は休館。入館無料。

　新型コロナウイルスの感染拡大を受け、楊枝資料館のある「日本橋さるや」は臨時休業や営業時間の短縮をしています。