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服作れず・売れず・広告来ず　ファッション誌のコロナ禍

新型コロナウイルスの感染拡大は、出版業界にも影響を与えている。ファッション誌は制作が特に困難で、2カ月分を1冊にまとめる合併号にするなど事実上の臨時休刊状態になる雑誌も相次いでいる。なぜ苦境に立たされているのだろうか。

　集英社は9日、「MORE（モア）」や「Marisol（マリソル）」などファッション7誌について、6月号と7月号を合併号とし、6月号の発売日だった4月下旬～5月に発売すると発表した。14日には、「non―no」の7月号と8月号を合併して5月に発売すると追加発表した。同社広報部は「撮影や取材が難しいため」としている。

　光文社も10日、「VERY」「JJ」などファッション誌を中心に8誌の4～6月発売予定号を合併号にするなどと発表した。主婦と生活社の「LEON」「ar」も同様だ。

　背景には、ファッション誌特有の事情がある。

　モデルに様々な服を着せての撮影が必須だが、ある雑誌の編集者によると、現場にはカメラマンやヘアメイク担当、スタイリスト、編集者ら10人程度が集まるという。貸し切りバスでの移動や室内のスタジオでの撮影は、感染予防のために避けるべき「密閉」「密集」「密接」の状態だ。
緊急事態宣言が出て外出自粛が求められる状況下では、モデルらを確保しての撮影にリスクを伴う。編集者は「順調にいけば、大型連休明けには編集作業が再開されるのではと期待しているが、こればかりは本当にどうなるのか分からない」とこぼす。

　また、各誌に服を貸し出すアパレルメーカーやファッションブランド側も活動に制約があり、誌面で紹介する商品が確保しにくくなっている。イタリアや中国での服の生産や運送状況も見通しがつきにくく、秋冬商品の入荷も不安視されている。

　物理的に作れないだけではない。多くのファッション誌の経営基盤は広告収入だが、広告主である服の作り手が厳しい状況にあり、ファッション誌のビジネスモデルそのものに、さらなる打撃を与えている。

　読者を集め、ブランドなどから協賛を得る媒体主催のイベントも、延期や中止を余儀なくされている。ある女性誌の元編集長は「ブランドは経営危機に陥ると、最初に広告宣伝費を削減する。広告やイベントで成り立っていたファッション誌は、そのダメージをもろに受けやすい」と語る。

　ただでさえ、ネット社会で誌面の広告収入減と読者離れが進み、販売部数は右肩下がり。そこに、「ファッション誌そのものの存在意義が問われるという、違う打撃が加わってしまった」と指摘するのは、「an・an」など数々の雑誌編集長を務めてきた跡見学園女子大学教授の富川淳子さんだ。

　服が作れず、販売する店が営業できず、人々の消費欲も冷え込んでいる。「ファッション誌は消費欲を刺激するもの。求められない、広告が入らない、作る手段もない。ないない尽くしで、休刊や廃刊せざるを得ないところも出るだろう。ただ、騒ぎが収まれば、人々は文化を求める。何とか耐えて欲しい」と話す。

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