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https://digital.asahi.com/articles/ASMBH5RC2MBHOIPE029.html

消えたご当地「キリンラーメン」　再起かけ文鳥とインコ

看板商品「キリンラーメン」の名称が使えなくなった愛知県のご当地即席麺メーカーが、思い切った独自路線を突き進んでいる。窮地の中、万人受けは狙わず、絞り込んだターゲットは鳥好きの人。思わぬヒットにもつながり、光明を見いだしつつある。

　「もう今年は思い切りいろいろ挑戦してみることにした」。小笠原製粉（愛知県碧南市）の小笠原充勇（みつお）社長（４２）は新商品の開発に闘志を燃やす。

　１９６５年に発売された即席麺「キリンラーメン」は、愛知中部の西三河のソウルフードとして親しまれていた。しかし、大手飲料メーカーとの商標権を巡る争いがあったとされ、昨年１２月にキリンの名称が使えなくなってしまった。

　「キリマルラーメン」に改称して再出発したが、約１５０万食（２０１８年）だった生産量は今年は８０万食に届きそうにない。

　生産を盛り返そうと挑戦したのが、６年間放置していた社員提案の文鳥ラーメンの商品化だった。

　発案者の三島純子さん（３７）は幼少期から文鳥と暮らしている愛鳥家。鳥グッズを見つけるとすぐ買ってしまうことから、「文鳥ラーメンをつくれば文鳥好きに絶対売れる」と訴え続けていた。

文鳥のにおいを連想させる風味とは
　問題は文鳥を連想させる風味だった。三島さんは「普段はイグサに近いにおいがするけど、水浴びするとスパイシーなカレーのかおりがする」。そこでスープをカレー風味にして５月下旬に「ブンチョウラーメン」（税別２３８円）として発売した。

　パッケージ裏の調理法ではトッピングにトウモロコシと豆苗を勧めたところ、「ペットの文鳥の好物を私も一緒に食べる」などＳＮＳ上で話題に。８月中旬に年内の販売目標だった３千食が完売した。小笠原社長は「１千食売れればというのが本心だった。すごい意外で驚いた」と顔をほころばせる。今年中に１万食まで増産する計画だ。

　ブンチョウラーメンの手応えから、次は文鳥よりも飼育者が多いと考えられるインコに目をつけた。

　１１月１５日（いいインコの日）に向け、今月１０日に「インコラーメン」（税別２３８円）を売り出した。インコは天日干しした布団やバターのようなクリーミーなにおいがすると言われることもある。
塩とんこつ風味のスープにした。年内に５千食を生産する予定だ。「零細企業からすると決して小さい数ではない。名前を変えたことで失った注文を取り戻すのは難しいからこそ、どんなことも試してみる」と小笠原社長。

　Ｔシャツ、トートバッグ、ステッカー、カレンダーと鳥関連商品も次々製作した。ラーメンとともに小笠原製粉のオンラインショップで購入できる。

鳥の専門家によると
　鳥好きの心をくすぐるにおいとは。掛川花鳥園（静岡県掛川市）のバードスタッフ、副島慎介さん（３０）は「毛が生えている人間とちがって鳥は羽なので独特なにおいがする。
食べているものや飼っている環境によりにおいには個体差がある」と話す。文鳥を飼う複数の同僚に尋ねたところ、「コーンフレークに近いにおい」「水浴び後はものすごくいいにおいというわけではないが、もう１回かぎたくなる」との答えが返ってきたという。

　副島さん自身はインコラーメンのパッケージのイラストと同じオカメインコを飼っている。「クリーミーさは何となくわかる。強いて言葉にするならその表現は正しいと思う」

　ちなみに、副島さんによると、オカメインコはオウム目オウム科。インコ科ではなく、インコではない。

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